Contract
(別 紙)
xx審答申第49号
(諮問第66号)
件名:ラグーナ蒲郡運営事業支援交付金に関する条例第7条の規定で㈱ラグーナテンボスより提出された「事業計画書」及びラグーナ蒲郡運営事業支援交付金に関して交付先と交わした契約書(合意書)の部分公開決定に関する件
答 申
蒲郡市長(以下「実施機関」という。)が、「ラグーナ蒲郡運営事業支援交付金に関する条例第7条の規定で㈱ラグーナテンボスより提出された「事業計画書」(以下「文書1」という。)」について、部分公開により非公開とした部分のうち、担当者名及びE-mailアドレス並びに2⑴事業目標値のうち目標経常利益以外は公開すべきである。
次に、「ラグーナ蒲郡運営事業支援交付金に関して交付先と交わした契約書(合意書)(以下「文書2」という。)」については、文書不存在のため非公開としたことは妥当である。
1 異議申立てに至る経過等
⑴ 公文書の公開の請求
異議申立人(以下「申立人」という。)は、平成27年1月21日付けで実施機関に対して、蒲郡市情報公開条例(平成10年蒲郡市条例第1号。以下「条例」という。)第7条の規定により、文書1及び文書2の公開の請求を行った。
⑵ 実施機関の処分
実施機関は、文書1について、個人に関する情報であって、特定の個人が識別され得る情報であり、及び法人の正当な利益を害するおそれのある情報とし、文書2について、文書を保有していないとして、平成27年3月6日付けで部分公開決定(以下「本件処分」という。)を行うとともに、その旨を申立人に通知した。
⑶ 異議申立て
申立人は本件処分を不服として、平成27年4月3日付けで行政不服審査法
(昭和37年法律第160号)第6条の規定に基づく異議申立てを行った。
なお、申立人は、文書1について部分公開により非公開とされた部分のうち、担当者名及びE-mailアドレスの非公開決定については異議を申立てていない。
2 異議申立ての内容
⑴ 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、本件処分の取消しを求めるというものである。
⑵ 申立人の主張要旨
申立人が異議申立書、意見書及び口頭意見陳述で主張している理由は、次のとおり要約される。
ア 文書1について、事業目標値、目標売上金額、それから目標入場者数及び目標経常利益について実施機関が非公開とした理由は、「法人の正当な利益を害するおそれがある情報のため」という理由だった。理由書において、審査会に対しては、「㈱ラグーナテンボスの出資企業の社会的評価や株価に影響を及ぼす蓋然性が高いと判断したもの」と回答している。一部上場企業の子会社であれば、数値計画を公表することに何ら異論はないはずで、実施機関は当該蓋然性が高いとする根拠を何ら示してない。しかも、今回のケースは特殊で、「支援金」という名前の補助金の受理に関しての件なので、当然公開されることを前提として市としては要請すべきであるし、出す方も、そのつもりで出すものだと考える。
イ ラグーナテンボスの3事業が、観光客、買物客、施設利用客を伸ばして賑わいをさらに創出すること及び雇用の確保のために支援金を交付していると理解している。だとすれば、当然市が期待する投資が計画されているのか市は精査すべきで、㈱ラグーナテンボスとしても、血税である支援金をどのように使うか、市民に公表されることを前提として計画書を提出する義務がある。
ウ 事業計画書は、賑わいが創出されるか、雇用が増えるのか否かを精査するためのもので、目標数値は必須項目である。よって、今回の部分公開の処分は本条例の解釈・運用を誤っており、㈱ラグーナテンボスへの偏った配慮である。市民の利益より法人の利益を優先しており、市税の使途に対する市民の知る権利を阻害していることは明白である。
エ 文書2について、審査会会長からの「交付金の交付等に関する内容の根拠を具体的かつ明確に説明した公文書の作成の必要がないと判断した理由は何か」という質問に対して、実施機関は、「交付金に関する条例及び同条例施行規則が存在するため」と回答した。手続きがあるために、あえて契約書を交わす必要がない、というふうに判断した回答だった。条例と条例施行規則のどこをどう読めば、内容の根拠を具体的かつ明確に説明したことになるのか、まったく理解できない。市民が知りたいことは、交付金の用途条件であり、交付に値する状態(目標入場者数等)であり、交付を止める具体的な状態(営業利益)等である。
オ また、文書2が存在しないというのは、厳密には嘘である。平成26年6月
24日付け「事業再構築に関する基本合意書」には、市が総額30億円となる運営事業支援交付金を、平成26年度から10年間に亘って㈱ラグーナテンボスに交付する旨及び㈱H.I.S.が、市から運営事業支援交付金が支給されないときは、当該合意書を解除することができる旨の記載がされている。これは、契約書だと判断する。
3 実施機関の説明
実施機関が、理由書及び口頭説明で主張している理由は、次のとおり要約される。
(文書1について)
⑴ 「法人の正当な利益を害するおそれのある情報」として非公開とした部分は、
㈱ラグーナテンボスの経営に関する目標数値や今後の設備投資に関する金額が書かれている。目標数値が外部に漏れることにより、例えばSNS等、インターネット上に公開され、競合他社にも戦略が知られる等の被害が予想され、先手を打たれる可能性がある。この業界では、いかに新規性を出せるか、他のテーマパークより選ばれるか、ということが売上に直結するため、他社に情報を知られることは致命的である。
また、市民や観光客に現実的な経営計画や設備投資、修繕の計画の数値等が公開されることにより、施設の現実が見えてしまい、㈱ラグーナテンボスの使命である、人々に経験したことのない、非日常の時間を提供し、夢の世界を演出することが困難となり、客足の減少、業績の低下に繋がると考える。
よって、法人の正当な利益を害するおそれがあるため、条例第6条第1項第3号に該当する。
(文書2について)
⑵ 今回の請求内容は「交付金に関して「交付先」と交わした契約書(合意書)」であったが、「交付先」である㈱ラグーナテンボスとの契約書又は合意書は交わしておらず、存在しない。
なお、「事業再構築に関する基本合意書」の中で、交付金の交付について触れている箇所があるが、これは、愛知県、蒲郡市、蒲郡海洋開発㈱、㈱H.I.S.及びトヨタ自動車㈱の五者で締結したものであり、交付金の「交付先」である㈱ラグーナテンボスと結んだものではないので、今回の請求文書には該当しないと判断した。
よって、文書不存在であるため、条例第8条第1項に該当する。
4 審査会の判断
⑴ 条例の基本的な考え方
条例の目的は、市民の公文書の公開を請求する権利を明らかにするとともに、市民の市政に対する理解と信頼を深め、xxで民主的な開かれた市政の発展に寄与する、というものである。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を公開することにより、個人のプライバシーや法人等の正当な利益を侵害したり、行政のxxかつ円滑な執行が阻害され、ひいては市民全体の利益を損なうものもある。このため、条例においては個人及び法人等の権利利益や公益と市民の公文書の公開を請求する権利との調和を図る観点から、原則公開の例外として公開しないことができる情報を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、申立人及び実施機関のそれぞれの主張から本件を具体的に検討した結果、以下のように判断す
る。
⑵ 文書1について
① 文書1の内容について
文書1は、平成26年6月23日に公布・施行されたラグーナ蒲郡運営事業支援交付金に関する条例(平成26年蒲郡市条例第12号)第7条の規定に基づき、平成27年1月7日付けでラグーナ蒲郡運営事業支援交付金(以下「交付金」という。)の交付先である㈱ラグーナテンボスから実施機関宛に提出された交付金交付申請書の添付書類で、当該法人の第2期(平成26年10月から平成27年9月まで)に係る事業の計画が記載されているものであり、次のような内容から構成されている。
基本情報(企業名、代表者名、設立年月日、所在地、従業員数、担当者名、
連絡先(電話番号、FAX番号、E-mailアドレス)等)
1 会社の概要
⑴ 沿革
⑵ 業務内容
2 事業計画(平成26年10月~平成27年9月)
⑴ 事業目標値
⑵ 基本方針
具体的な事業展開
ア 新規大規模設備投資(5,000万円以上)イ 大規模修繕(3,000万円以上)
3 交通アクセス(現状/今期の追加、変更予定)
4 地域貢献・地域との連携について
5 安定的な管理・運営を行う体制
ア 施設の安全対策について
イ 緊急事態(事故・災害時等)への対応についてウ 採用計画について
実施機関は、これらの内容のうち、2⑴事業目標値の目標売上金額、目標入場者数の一部及び目標経常利益並びに2⑵具体的な事業展開 ア 新規大規模投資(5,000万円以上)及びイ 大規模修繕(3,000万円以上)の概算金額(1,000万円単位)について、法人の経営に関する目標数値や今後の設備投資に関する情報で、公開されることにより法人の業績の低下につながるなどとし、条例第6条第1項第3号(事業活動情報)に該当するため非公開としている。
これに対し、申立人は、一般論として法人は事前に事業計画(値を含めて)を公表し、事業を推進するもので、数値計画を公表することに何ら異論はないはずであり、実施機関は法人の正当な利益を害するおそれの蓋然性が高いとする根拠を何ら示してないと主張しているので、条例第6条第1項第3号の該当
性について、検討する。
なお、実施機関は、担当者名及びE-mailアドレスについて、条例第6条第1項第2号(個人情報)に該当するため非公開としているが、これについては、申立人が異議を申し立てていないため、当審査会としては判断しないものとする。
② 条例第6条第1項第3号(事業活動情報)の該当性について
条例第6条第1項第3号は、法人等又は事業を営む個人の事業活動の自由を保障する必要があることから、事業活動に係る情報のうち、公開することにより、その競争上の地位その他正当な利益を害するおそれのあるものが記録されている公文書は、非公開とすることを定めたものである。
「競争上の地位その他正当な利益を害するおそれのあるもの」とは、生産技術や販売上のノウハウ等他の法人等や個人との事業競争上の立場が損なわれるおそれのある情報、営業方針や経理・人事等必ずしも他の競争に限定されない内部管理に関する事項などへの不当な干渉となるおそれのある情報、名誉や社会的評価を低下させるおそれのある情報等が挙げられる。
当審査会が文書1を実際に見分したところ、2⑴事業目標値のうち目標経常利益については、目標値であっても、法人の営業状況及び財産状況を示す指標であって、当該事業以外の損益を加えたものであり、企業上の秘密に属する性質を有するものと認められることから、公開されることにより当該法人等の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあることは否定できない。
ただし、2⑴事業目標値のうち目標売上金額及び目標入場者数の一部並びに
2⑵具体的な事業展開 ア 新規大規模投資(5,000万円以上)及びイ 大規模修繕(3,000万円以上)の概算金額(1,000万円単位)については、具体的な数値が記載されているわけではなく、あくまで目標値であり、実施機関が主張する新規性の創出や、夢の世界を演出するためのノウハウが反映されたものとは言い難く、これを公開したとしても当該法人等の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるとは認められない。
よって、文書1において非公開とされた情報(担当者名及びE-mailアドレスを除く。)は、2⑴事業目標値のうち目標経常利益を除き、条例第6条第1項第3号に該当せず、公開することが妥当と判断する。
⑶ 文書2について
① 交付金の交付に係る記載がされた文書について
交付金の交付に関しては、ラグーナ蒲郡運営事業支援交付金に関する条例に、交付金の交付対象者、総額、及び交付期間並びに交付金の取消し等に係る内容が規定されており、同条例施行規則に、交付の申請、決定、請求等の手続に係る内容が規定されている。また、これらの規定に基づき、第1回目の交付金の交付に係るものとして、平成27年1月7日付けで交付金交付申請書が㈱ラグーナテンボスから実施機関に提出され、平成27年1月27日付けで交付金交
付決定通知書が実施機関から㈱ラグーナテンボスに送付されている。加えて、同条例の公布・施行日の翌日である平成26年6月24日に愛知県、蒲郡市、蒲郡海洋開発㈱、㈱H.I.S.及びトヨタ自動車㈱の五者で締結された「事業再構築に関する基本合意書」には、実施機関が㈱ラグーナテンボスに交付金を交付する旨の内容が規定されている。これらの文書については、当審査会が実施機関に対し提出を求め、その存在及び内容を確認した。
② 文書2の存否について
当審査会が文書2の存否について実施機関に説明を求めたところ、実施機関は、今回の請求内容である、「交付金に関して「交付先」と交わした契約書(合意書)」について、請求の趣旨を正確に捉えた結果、「交付先」である㈱ラグーナテンボスとの契約書又は合意書は交わしておらず、交付金に関する規定の記載がされた「事業再構築に関する基本合意書」については、交付金の「交付先」である㈱ラグーナテンボスと交わしたものではないので、今回の請求文書には該当しないと判断したとの回答がなされた。
一方で、申立人は、市が多額な交付金を交付するにもかかわらず、交付金の用途条件、交付に値する状態(目標入場者数等)、交付を止める具体的な状態(営業利益)等について契約書を交わさないことは理解し難く、交付金に関する規定の記載がされた「事業再構築に関する基本合意書」は契約書に当たるものだと判断すると主張した。
以上のことを踏まえ当審査会が検討を行ったところ、文書2は次の理由により不存在であると認められる。
(ア) 「交付先」である㈱ラグーナテンボスと交わした文書は存在しないとする実施機関担当職員からの口頭説明及び質疑に対する回答に不自然な点がないこと。
(イ) 実施機関より提出された交付金に関する条例及び同条例施行規則並びに交付金交付申請書及び交付金交付決定通知書に、交付金に関する契約書又は合意書の存在に係る記載がされていないこと。
(ウ) その他交付金に関する契約書又は合意書の存在を窺わせる具体的な事情が存在しないこと。
よって、申立人が公開の請求をした対象文書が存在しないとの実施機関の主張には理由があり、申立人の各主張は、いずれもこれを覆すに足りるものではない。
③ 付言
交付金に関する規定の記載がされた「事業再構築に関する基本合意書」が本 件対象文書に当たるかという点について、公開の請求のあった件名から実施機 関が形式的に判断を行い、当該文書を本件対象文書としなかったことは違法、 不当とまではいえないが、申立人と実施機関の当初の文書の特定段階で、その 請求の対象について双方の認識に少なからず相違が存在していたことは否めず、実施機関側の条例の趣旨に沿った対応がなされていないといえる。
この点について、実施機関は、当初の文書の特定段階において請求者の意思や公開を求める文書の内容をよく確認すべきであり、その内容を広く汲み取ることが重要である。
実施機関においては、条例の趣旨に沿った柔軟かつ弾力的な運用に努めるよう要望するものである。
5 結論
以上のことから、当審査会は冒頭のとおり判断する。
○審査会の処理経過
年 月 x | x x |
平成27年 5月 8日 | 実施機関からの諮問(企画部企画政策課) |
平成27年 6月 5日 | 実施機関から理由書収受 |
平成27年 6月30日 | 申立人から意見書収受 |
平成27年 8月10日 | 申立人による口頭意見陳述 |
平成27年 9月30日 | 実施機関の口頭説明 審議 |
平成27年11月20日 | 審議及び答申の検討 |