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地方自治法第24 2条第1 項の規定に基づき、平成3 1 年1 月24 日付けをもって提出された「xx市職員措置請求書( 健康福祉会館の土地建物売買契約及び賃貸借契約に係る措置請求) 」について、同条第4 項の規定により監査を実施したので、その結果を次のとおり公表します。
平成3 1 年3 月18 日
松戸市監査委員 | x | x | x | x |
同 | x | x | x | |
同 | x | x | x | x |
x | x | x | x | x |
請求人 | |||||
請求人 | 氏 | 名 | 省 | 略 | |
代理人 | 氏 | 名 | 省 | 略 |
第2 請求の受理
平成31 年1 月24 日にxx市職員措置請求書が提出され、所定の法定要件を具備しているものと認められることから、 同年
2 月1 日に受理の決定を行った。第3 監査の実施
1 請求人の証拠の提出及び陳述
請求人に対して、地方自治法第242 条第6項の規定に基づき、平成31 年2 月21 日、陳述の機会を与え、これを行った。
なお、追加の証拠の提出はなかった。
2 請求の要旨その1
xx市職員措置請求書及び請求人代理人の陳述内容から、請求の要旨を次のように解した。
(1) 松戸市長は、平成30年1 月31日、土地所有者A 氏・B 氏との間で、同人らが所有する土地建物(以下「本件不動産」という。)を1 6億円で買い受ける契約を締結した。
上記契約に基づいて、同年2月2 8日の第1 02号議案の議 決を経て、 松戸市長は、同年3月末日までに売買代金全額を市の財産から支出してA氏らに支払った。
(2) 本件契約及び本件支出行為は、いずれも違法又は不当な財務会計行為であって、不必要な出費により、市に損害を発生させたことは明らかである。
( 3) 本件建物の建築費は、xx市が賃貸借期間中の20 年間で その全額を支出している。
それにもかかわらず、本件契約には建物代金3億6 ,111 万
1 , 112円及び消費税2 , 888万8 , 888円が含まれている。
これは、A氏らに対する二重払いであり、不必要な出費であ
って市に損害を発生させた。
(4 ) 本件建物は築造から2 0年経過しているのにもかかわらず、 A氏らによる大規模修繕が行われたという事実はない。
このような老朽化した建物を3 億6 , 11 1万1 ,112円及び消費税2 , 88 8 万8 , 888 円で買い受けることは、 不必要 な出費であって市に損害を発生させた。
(5 )本件不動産の買い受け価格が過大であり、その結果不必要な出費がなされ、市に損害を発生させた。
そもそも合計54億にものぼる不必要に過大な賃料を2 0年 間支払い続けたことを考えれば、交渉を重ねて、 無償取得する ことも社会通念上可能であったとみられる。
(6 )土地については、路線価等の市価と乖離した不相当に高額なものであるといわざるを得ない。
本件土地の路線価は、1平方メートル当たり11万円である。 なぜなら、本件土地のうち地番7- 1及び7- 2は、実際は緑地と歩道によって公道と完全に隔てられており、公道上に出るための土地は地番8- 2のみだからである。しかも、本件土地は、上記形状に鑑み、中抜け方式による不整形地として評価することも可能である。
しかるに、本件契約においては、1平方メートル当たり1 5万
6 ,0 00 円として計算され、土地の購入価格が1 2億1 ,00 0万円と定められている。
(7 )本件契約及び本件支出行為は、不必要かつ少なくても1平方メートル当たり単価の差の分、過大な価格でなされたものというほかない。
(8) よって、請求者は、松戸市長に対し、違法又は不当な財務 会計行為によってxx市の被った損害を補填するために必要な措置をとるように求める。
3 請求の要旨その2
xx市職員措置請求書及び請求人代理人の陳述内容から、請求の要旨を次のように解した。
(1)松戸市長は、20 年間にわたって、A氏らとの間で、賃料年額2億6 ,96 2万1 ,0 76 円( 年額は平成28 年度による)で本件不動産の賃貸借契約を締結したうえ、「健康福祉会館(ふれあい22 )」開設後の平成1 0年4 月から平成30年3 月まで、市の財産からこれを支出した。
(2) 本件賃貸借の賃料は、異常な高額であり、その支払いが違法又は不当な財務会計行為であって、市に損害を発生させたことは明らかである。
このことは、 市自らが鑑定した月額実質賃料が1 , 00 0万円
(年額賃料総額1 億4 ,629 万3 ,724 円) であったことからも明白である。
(3 ) また、建築費を市の側が20 年間全額負担し続けたことに照らしても、賃料をこのような高額に設定したことに合理性があったとは到底いえない。
(4) よって、請求者は、松戸市長に対し、違法又は不当な財務会計行為によってxx市の被った損害を補填するために必要な措 置をとるように求める。
4 監査の対象事項
松戸市職員措置請求書及び請求人代理人の陳述の内容から判断して、次の事項を監査の対象とした。
( 1 ) 請求の要旨その1 について
ア 本件不動産売買契約に建物代金が含まれていることは、 二重払いに当たり、違法又は不当な財務会計行為に該当するか否か。
イ 本件不動産売買契約のうち建物について、 築造から20 年経 過し老朽化しているにもかかわらず3 億9 ,00 0 万円(うち消費税2 ,888 万8 ,888円) で買い受けることは、違法又は不当な財務会計行為に該当するか否か。
ウ 本件不動産売買契約のうち土地について、 12 億1, 000 万円で購入することは、不相当に高額な価格であり、 違法又は不当な財務会計行為に該当するか否か。
( 2 ) 請求の要旨その2 について
ア 健康福祉会館の建築物賃貸借契約に基づく賃借料の支出は、 違法又は不当な公金の支出に該当するか否か。
5 監査の方法
xx市長から関係書類の提出を求めるとともに、平成31 年2月21 日に関係課から事情聴取を行い、監査を実施した。
第4 監査の結果
1 事実関係の確認
本件監査請求について、次のとおり事実を確認した。
(1) 本件不動産売買契約の締結及び公金の支出について
本件不動産売買契約の締結及び公金の支出に至る経緯につい ては、次のとおりである。
ア 平成26 年5 月に、庁内関係課による健康福祉会館の今後のあり方検討プロジェクトを立ち上げ、その後、「地理的優位性、保健事業との連携、常勤医師による療育に特化した専門機関」等の検討を行い、引き続き契約を更新し、事業を維持、発展させていくべきと結論付けた。
イ 平成27 年1 0 月28 日、市は、賃貸借契約を更新した場合の賃料として年額7 ,400 万円をA 氏に提示したのに対し、平成
28年2月10日、A 氏からは、年額2 億円が提示された。 ウ 平成28 年7 月29日及び同年1 1月3 0日に、A 氏及び市側
からそれぞれ不動産鑑定評価書が提出され、当該評価書による評価額を基に、更新賃料の協議を行ったが合意に至らず、さらに売買も視野に入れた交渉を重ねた結果、平成2 9年1 2月6日、A 氏から本件不動産を16 億円で売却する旨の回答があった。
エ 平成29 年1 2 月、本件不動産を購入する費用として、16 億円を計上する平成2 9年度xx市一般会計補正予算(第5回)を議会に上程し、附帯決議が付されたうえで、可決された。
そして、附帯決議を踏まえて、A 氏と交渉し、A 氏が大型設
備更新に係る修繕工事を実施すること及び本件賃貸借契約の契 約期間を平成30 年2月末日までとすることを合意した。
オ 平成30 年1 月31日、市はA 氏と本件契約の仮契約を締結し、同年2月、健康福祉会館の財産を取得する議案を議会に上程し たところ、同月2 8日、原案のとおり可決されたため、同日を もって本件契約の本契約が締結された。
同時に、本件賃貸借契約の契約期間も平成30年2月末日ま でに短縮された。
カ 平成30 年3 月13日、市は、本件契約の取得価格16 億円を支出した。
(2) 本件不動産売買契約の目的及び必要性について
ア 健康福祉会館は、平成1 0 年4月に、市民の健康を保持増進し、児童の早期療育の充実及び障害者の社会活動への参加を促進し、もって福祉の向上を図ることを目的に設置され、地域住民への 総合的な保健サービスの提供、自主的な健康づくりの活動拠点、心身の発達に不安のある子どもたちとその家族への支援、障害 者が自立した社会生活が送れるよう支援し、人のつながりを大 切にした地域社会の実現に先導的な役割を担ってきており、x x行政に不可欠な施設となっている。
したがって、本件賃貸借契約期間経過後の平成30 年4月以 降も、本市の福祉行政を継続するためには、当該施設を確保す ることが必要であった。
イ 健康福祉会館は、開館当初より2 0年間にわたり、賃貸借契約により使用権限が設定されていた。 そこで、まずは当該契約を 更新することが検討されたが、両者の賃料提示額に著しい乖離 があり、賃貸借契約の継続について合意することは困難な状況 にあった。
そのため、他の公共施設への移転や移設をすることも検討したが、その場合には、建設費のほか設備関係経費、駐車場の周辺整備費など多額の費用がかかるため、購入する方が初期投資を抑えられることが判明した。加えて、現在地は将来的にも汎用性が高
い地域であること、事業を切れ目なく継続的に遂行できること、利用者にとっても引き続き安定的な環境整備が図られること等 を総合的に勘案した結果、現在賃借により利用している健康福祉会館を購入することにより当該建物を継続して利用する方法が、最も適切かつ合理的であると判断したものである。
(3) 議会の議決についてア 平成29 年1 2 月議会
平成2 9年度xx市一般会計補正予算(第5回) は、健康福祉会館の賃貸借契約期間が満了することに伴い、健康福祉会館用地等を購入するために16 億円を計上したものであり、当該予算の審査の過程においては、議案提出に至るまでの経過について、現在の建物の建設費分の費用はこの20年間で支払済みと聞いて いたが、なぜ不動産鑑定に建物も含めたのかについて、これまでの建物等への修繕経過について、用地等購入額16 億円の積算根拠について、買い取り契約の締結までに本日の審査の内容を相手に伝え、金額を含めた交渉をどのように行うと考えているかについて等に対する質疑、討論を経て 、「過去からの経過を踏まえた上で、説明責任が果たせる契約を結ぶこと。」及び「今後は、公共施設再編整備の課題もあることから、本市にとって最適な方法を担当部署にとどまらず全庁的に検討することで、限られた財源を有効活用すること。」を附帯決議したうえで、原案のとおり可決された。
イ 平成30 年3 月議会
地方自治法においては、地方公共団体が行う財産の取得は、成立した予算の執行として、第xx的には長の権限に属し、通常は執行機関限りでなし得るものであるが、重要な経済行為に関しては、その事務処理が住民の代表の意思に基づいて常に適正に行われることを期する趣旨から 、「その種 類及び金額について政令で 定める基準に従い条例で定める」財産の取得等について議会の議決を経なければならないこととされている。
本件においては、本件不動産の取得価格が5千万円を超え、土
地の面積が5千平方メートルを超えていたことから、松戸市議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分に関する条例第
3条の規定に基づき、 平成30年3月議会において、「 財産の取得について」を議会に上程したものである。
そして、当議会の審査の過程において、
・土地及び建物で16 億円とする取得価格の適正性について
・平成2 9年12 月定例会での附帯決議を受けて、再交渉した結果について
・20年間の賃借料と土地・建物の取得価格との合算額と、仮に事業立ち上げ当初から当該地を購入した場合の費用の比較について
・第5期障害福祉計画及び第1期障害児福祉計画における健康福祉会館の位置づけについて
・今後の健康福祉会館の事業展開について
等に対する質疑、討論を経て、原案のとおり可決された。
( 4 ) 不動産鑑定評価について
市は、本件賃貸借契約更新の交渉を行うため、平成2 8年9月
30日付けで、価格時点が平成28 年4月1日の不動産鑑定評価書の提出を受けた。
A氏からは、価格時点が平成28年4月1日( 平成2 8年7月
13日発行)の不動産鑑定評価書の提示を受けた。
これら評価書は、 賃貸借契約更新の交渉を行うために依頼したものではあるが、積算賃料査定の前提として、対象不動産の建物及びその敷地の積算価格が明示されている。
なお 、前記( 1 )の経過において、売買契約の参考とするため、市は、上記不動産鑑定評価を行った不動産鑑定事務所から、対象不動産についての平成28年4月1日から平成30年1月1日までの「時点修正に関する意見書」の提出を受けた。
( 5 ) 健康福祉会館開設の経緯について
健康福祉会館開設の経緯については、次のとおりである。
ア 健康福祉会館は、平成6 年3月に策定されたxx市第5次5 か
年計画(平成6 年度から平成1 0年度)に心身障害児総合通園センター建設計画として盛り込まれた。
イ 平成8年9月議会に、療育センター設置などを内容とする請願第5 号「早期療育の充実に対する請願」が教育xx常任委員会に付託され、審議の結果全会一致で採択された。
ウ 同年12 月議会で一般会計補正予算(第3回)に(仮称)保健・福祉センター賃借料として、限度額52 億2 ,72 0万円以内に消費税及び地方消費税を加えた額の範囲内、期間は平成8年度から平成2 9 年度の債務負担行為の設定についてを上程し、原案どおり可決された。
エ 平成10 年3 月31日、xx市とA 氏との間で本件賃貸借契約を締結した。
オ 同年4月1日、社会福祉実現への拠点の一つとして、こども 発達センター、障害者福祉センター及び常盤平保健センターの複合施設「xx市健康福祉会館」を開設した。
( 6 ) 本件賃貸借契約に係る公金の支出について
本件賃貸借契約における賃料は、契約書第6 条(賃料)において規定されており、賃料の月額は固定賃料として、建設経費、 xx、火災・ 設備機械保険料、 修繕(引当) 費等の諸経費を含め、算出したものが1 , 951 万6 , 000 円である。 これに、土地及び建物に係る当該年度分の固定資産税等の課税額の12 分の1 の額との合算額が月額の賃料となる。
当該契約に係る執行については、xx市財務規則第63 条( 支出負担行為の決議)及び同規則第6 4条(支出負担行為として 整理する時期等) の規定に基づき、 支出負担行為決議票が各年 度4 月1 日に年額で起票され、 決議されている。 また、同規則 第68 条(支出命令)及び同規則第69条( 請求書による原則) の規定に基づき、貸主の請求により毎月支払われていた。
なお、平成30 年1 月31 日付けで、契約期間が平成10 年4 月1 日から平成3 0年2月28 日までに変更されたため、 最終 の支出は、平成3 0年2 月1 6日である。
2 監査委員の判断
本件請求には理由がないものと判断し、これを棄却する。
(理 由)
(1) 請求の要旨その1 について
地方公共団体の財産の取得については、地方自治法(以下「法」という。)第149 条第6号により、その長の事務とするとの規定の他、法第9 6条第1項第8 号及び松戸市議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分に関する条例第3条において、予定価格5 千万円以上の不動産の買入れ(土地については1件5 千平方メートル以上のものに係るものに限る。) については、議会による議決を経なければならないとされている。
本件不動産の取得の決定については、議会の議決を適正に経ており、手続的な瑕疵は認められない。
法第2条第14項は、「地方公共団体 は、その事務を処理するに当っては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。」とし 、地方財政法第4条第1項では、「地方公共団 体の経費は、その目的を達成するための必要且つ最少の限度をこえて、これを支出してはならない。」と定めている。
したがって、特定の政策目的の実現のためにどのような不動産をいかなる対価をもって取得するかについては、財産を取得する責任と権限を有する長の裁量に委ねられている。
しかし、その財産の取得が、政策目的や取得の経緯等に照らして明らかに合理性を欠く場合、ことさらに売主の利益を図る目的に基づくものである場合、何ら合理的な理由なく適正価格を著しく上回る対価を設定する等の場合は、裁量権の逸脱、濫用であって、違法又は不当な財務会計行為となると解される。
本件では、当該不動産を取得する目的は、市民の健康を保持増進し、児童の早期療育の充実及び障害者の社会活動への参加を促進し、もって福祉の向上を図ることを目的として設置された健康福祉会館の事業の継続である。したがって、本件不動産の取得は
政策目的に照らして、長が、その裁量権の範囲を逸脱し又は濫用したものとは認められず、違法又は不当な財務会計行為とはいえない。
① 監査の対象事項「ア」について
請求人は、賃貸借期間中に、本件建築物の建築費全額を市が支出したのであるから、売買契約において、建築物を有償で取得したことが、A 氏に対する二重払いであると主張している。
その事実証明として、「健康福祉会館 契約更新に係わる交渉経過等(概要版)」に 市側が更新後の賃借料の交渉のために示した
「建設費等は20 年間で支払済み」との記載部分を挙げる。
しかしながら、当該記載は、更新後の賃借料の算定においては建設経費等の経費が除外されるべきであると市が交渉の過程で主張したことを示すものに過ぎず、本件賃貸借契約に基づき、建築物とその敷地を使用する対価として支払った賃料をもって、建築物の所有権を無償で市に移転するべき根拠とはならない。
本件賃貸借契約書においても、期間満了後に当該建築物を賃借人に譲渡するといった権利関係に関する定めはなく、本件建築物に関する市の権利が使用権限である本件賃貸借契約と、本件建築物に関する市の権利を所有権とするための本件売買契約とは別個の契約であると解さざるを得ない。
したがって、本件不動産売買契約に建物代金が含まれていることが二重払いであるとする請求人の主張には理由がない。
② 監査の対象事項「イ」について
請求人は、築造から20年経過しているという老朽化の程度に鑑み、取得価格が過大であると主張している。
そこで、本件建築物の取得価格の決定が、合理的な理由なく適正価格を著しく上回る等、長の裁量権を逸脱・濫用していると認められるかどうかが問題となる。
本件建築物の取得価格は、A 氏及び市の双方が提出した不動産鑑定評価額を参考にしている。
鑑定に当たっては、対象建物と類似の建物の建築費を参考とし
て、価格時点において建物を新規に再調達する場合の再調達原価を査定し、建築後経過年数、経済的残存耐用年数、経年減価率等を考慮したうえで査定されており、建物の老朽化についても鑑定評価額の内容に含まれたものとなっている。
この鑑定評価額を基にして、1 年以上をかけて更なる減額交渉を重ねた結果、A氏の提示した評価額よりも低い市の評価額に比してもさらに低い価格で合意に至ったものである。
さらに、平成29 年12 月議会において、本件不動産購入費用を計上する議案第50 号「平成2 9年度xx市一般会計補正予算
( 第5回)」が可決された際の附帯決議を踏まえ、貸主側が大型 の設備修繕を実施することも合意し、平成3 0年1月から2月に、約2 ,80 0万円をかけて空調設備中央監視盤等の修繕が実施さ れた。
以上のことから、当該建築物の取得価格の決定について何ら違法性、不当性はなく、買い受け価格が過大であり、その結果、市に損害を発生させたとする請求人の主張は理由がない。
③ 監査の対象事項「ウ」について
請求人は、土地の取得価格について、路線価等と乖離した不相当に高額なものとなっていると主張している。
そこで、本件土地の取得価格の決定が、合理的な理由なく適正価格を著しく上回る等、長の裁量権を逸脱・濫用していると認められるかどうかが問題となる。
地方公共団体が土地又は建物を任意取得する場合、その売買契約は、不動産鑑定による客観的な評価額を基準にしつつ、取引の必要に応じて、最終的には、双方当事者の合意が成立する価格で締結されるものである。
本件土地の取得価格は、A 氏及び市の双方が提出した不動産鑑定評価額を参考にしている。
鑑定に当たっては、取引事例比較法による比準価格と、標準地 の公示価格を規準とした価格との均衡を考慮し、査定されている。
この鑑定評価額を基にし、双方当事者が1年以上をかけて交渉
を重ねた結果、市の評価額で合意に至っている。
以上のことから、本件土地の取得価格の決定について何ら違法性、不当性はなく、相続税の課税標準となる路線価等を基準に、本件契約における土地の取得価格が不相当に高額であり、その結果、市に損害を発生させたとする請求人の主張は理由がない。
(2) 請求の要旨その2 について
① 監査の対象事項「ア」について
請求人は、本件賃貸借契約の賃料は、異常な高額であり、その契約の締結が違法又は不当な財務会計行為であるから、契約に基づく公金の支出もまた違法又は不当な財務会計行為であって市 に損害を生じさせたと主張しているものと解される。
しかしながら、児童の早期療育の充実及び障害者の社会活動への参加を促進する保健・福祉行政の拠点施設を確保するという本件賃貸借の目的や、施設の長期利用の必要性、契約の内容に影響を及ぼす経済的要因としての施設の性質に伴う用途変更の困難 性といった事情、さらに、賃借料限度額を定めた予算が債務負担行為として議会で承認され適正な事務手続を経ていることを考 慮すると、本件賃貸借契約の締結における松戸市長の判断が、その裁量権の範囲を逸脱し又は濫用するものであったということ はできない。
そして、本件賃貸借契約の締結が違法、不当でないとすれば、本件賃貸借契約に基づく賃料の支払も、違法又は不当な公金の支出には当たらない。
したがって、請求人の主張は理由がないものである。