Contract
9-5 解除の効力
1.概要
・PFI事業契約が解除された場合の効力として、①原状回復義務の取り扱い、具体的には選定事業の進捗に応じた各種の財産の取り扱い、②解除により生じた損害賠償の支払い義務等について規定される。
2.趣旨
・PFI事業契約においては、解除の効力として、選定事業者に原状回復義務を課したならば、解除後の施設等の合理的な取扱いが困難になる。このため、個々の選定事業の特性に応じた解除の効力について規定される。
3.選定事業者の帰責事由による解除の効力 -施設の完工前の解除-
・施設の完工前にPFI事業契約が解除された場合、原状回復を図るのではなく、管理者等が契約解除後に施設の出来形部分を利用して建設工事を継続することが妥当と判断するとき、又は、施設の建設工事の進捗度が高い段階にあるなど出来形部分の買受が社会通念上合理的と認められるとき、管理者等は選定事業者から施設の出来形部分を合理的な対価で買い受けることができる旨規定し、法定解除の効力の規定(原状回復義務を課すこと)を約定にて修正する。施設の出来形部分の買受の判断にあたっては、①第三者が当該出来形部分を利用して建設工事を継続した場合に瑕疵担保責任の所在の見極めが困難になる可能性があること、②特に、運営業務の比重の重い選定事業については、当該事業を継承する第三者からみた当該施設の利便性の良否という観点からの判断が必要である一方、③選定事業者に施設の出来形部分の取り壊し及び原状回復を求めた場合、施設の出来形部分を活用して建設工事を継続した場合よりも、公共サービスの提供の開始が遅延する可能性があること、及びその遅延の影響について留意する必要がある。
・管理者等による施設の出来形部分の買受手続きについては、管理者等が施設について検査を実施し、検査に合格した部分の引渡しを受けることとし、かかる対価の支払い方法については、PFI事業契約上、管理者等が一括払い又は割賦払いとするかを選択できることとし、割賦払いを選択する場合は、最長、当初定められたスケジュールに従って支払う旨規定を置くことが通例である。支払い方法の選択に際しては、一方で、選定事業者と融資金融機関等との間で締結されている融資契約上は、PFI事業契約解除により、選定事業者は期限の利益を喪失し、融資金融機関等は選定事業者に対して一括弁済を求める権利を取得することとなっている。このため、実際の施設の買受対価の支払方法の決定にあたっては、直接協定等に基づく協議が行われることなども想定される。この協議の結果、割賦払いとされた場合、管理者等は財政支出を平準化できる。
・直接協定等による融資金融機関等と管理者等の協議の上で、選定事業者を介さずに直接、管理者等から融資金融機関等への買受対価の支払いが行われることとなった場合には、もはや、事業リスクの要素がなくなり管理者等の信用リスクと同視し得る場合も考えられる。前述の通り、管理者等と融資金融機関等の交渉の結果、割賦払いとされた場合、融資金融機関等による新たな与信判断に基づき、支払金利に相当する額を含めた対価の支払条件を変更すること(国の場合であれば、支払期間に対応した国債の利回り水準を反映した支払金利水準に見直すなど)も考えられる。
・また、PFI事業契約において、管理者等の施設買受け義務が課されている場合であっても、当該年度における歳出予算や、すでに議決を受けた国庫債務負担行為の目的、債務負担年限及び金額の上限を超える支出又は債務負担を行う場合には、解除の時点で改めて歳出ないし国庫債務負担行為の議決が必要とされることに留意が必要である。13
・管理者等が施設の出来形部分を買い受ける場合のかかる支払い額は、設計図書に基づく施設の出来高に相当する金額となることが通例である。
・一方、管理者等が施設の出来形部分を買い受けることが適当でないと判断した場合、管理者等は選定事業者に対して施設の取壊し及び事業用地の原状回復を求めることができる旨規定する。この費用は、解除の帰責に応じて選定事業者又は管理者等が負担することとし、選定事業者が正当な理由なく期間以内に原状回復の処分を行わない場合は、これを放置することは経済合理性に欠くため、管理者等が自ら代わってその処分を行い、選定事業者に対してかかる費用を請求できる旨規定される。この際、選定事業者は自ら行うべき処分を行わないのであるから、管理者等の処分について異議を申し出ることもできないこととする。
・その他選定事業者に管理者等に対する違約金の支払い義務が規定される。(関連:5-5違約金、6-4 履行保証)
4.選定事業者の帰責事由による解除の効力 -施設の完工後の解除-
・施設の完工後、BTO方式の選定事業においては、管理者等は施設の所有権を既に有している。また、BOT方式の選定事業においても、通例、契約解除に伴い管理者等が施設の所有権を取得・保持する旨規定される。その際、BTO方式の選定事業については、施設の維持・管理状態が要求水準を満たしているかについて確認すること、BOT方式の選定事業については、施設の譲渡前検査を実施し、施設があらかじめ合意された利用に支障のない状態にあること等を確認する必要がある(関連:3-7 契約期間終了前の検査)。これらの検査によって、施設の状態が規定された水準に達していないことを確
13 なお、地方公共団体が管理者等となる場合において、地方自治法第96条第1項第8号の規定により、同項第6号及び第7号に定めるものを除くほか、その種類及び金額について政令で定める基準に従い条例で定める財産の取得又は処分をすることは、議会の議決事件とされている。
認した場合には、当事者間の施設の買取価格と後述する違約金等の決済に加え、選定事業者は管理者等に対し必要な修繕費を支払うこと、若しくは、必要な修繕を実施することを規定する必要がある。
・BOT方式の選定事業の場合の施設の買取価格は、建設工事費元本の未払総額とその支払金利(割賦払いの場合)となることが通例である。
・解除後の施設の買受対価の支払方法については、PFI事業契約上、管理者等が一括払い又は割賦払いとするかを選択できることとし、割賦払いを選択する場合は、最長、当初定められたスケジュールに従って支払う旨規定を置くことが通例である。支払い方法の選択に際しては、一方で、選定事業者と融資金融機関等との間で締結されている融資契約上は、PFI事業契約解除により、選定事業者は期限の利益を喪失し、融資金融機関等は選定事業者に対して一括弁済を求める権利を取得することとなっている。このため、実際の施設の買受対価の支払方法の決定にあたっては、直接協定等に基づく協議が行われることなども想定される。この協議の結果、割賦払いとされた場合、管理者等は財政支出を平準化できる。
・直接協定等による融資金融機関等と管理者等の協議の上で、選定事業者を介さずに直接、管理者等から融資金融機関等への買受対価の支払いが行われることとなった場合には、もはや、事業リスクの要素がなくなり管理者等の信用リスクと同視し得る場合も考えられる。前述の通り、管理者等と融資金融機関等の交渉の結果、割賦払いとされた場合、融資金融機関等による新たな与信判断に基づき、支払金利に相当する額を含めた対価の支払条件を変更すること(国の場合であれば、支払期間に対応した国債の利回り水準を反映した支払金利水準に見直すなど)も考えられる。
・また、PFI事業契約において、管理者等の施設買受け義務が課されている場合であっても、当該年度における歳出予算や、すでに議決を受けた国庫債務負担行為の目的、債務負担年限及び金額の上限を超える支出又は債務負担を行う場合には、解除の時点で改めて歳出ないし国庫債務負担行為の議決が必要とされることに留意が必要である。14
・その他選定事業者に管理者等に対する違約金の支払い義務が規定される。(関連:5-5違約金、6-4 履行保証)
5.管理者等の帰責事由による解除の効力15
・管理者等の帰責事由によりPFI事業契約が解除される場合、管理者等は、施設の所有
14 なお、地方公共団体が管理者等となる場合において、地方自治法第96条第1項第8号の規定により、同項第6号及び第7号に定めるものを除くほか、その種類及び金額について政令で定める基準に従い条例で定める財産の取得又は処分をすることは、議会の議決事件とされている。
15 なお、地方公共団体が管理者等となる場合において、地方自治法第96条第1項第13号の規定により、法律xxx義務に属する損害賠償の額を定めることは、議会の議決事件とされている。
権を取得し、その対価として、施設の完工の前後に応じて、施設の出来高に相当する金額又は建設工事費の未払総額及びこれにかかる支払利息(割賦払いの場合)を支払う旨規定される。こうした出来形部分又は施設の対価に加えて、選定事業者は当該解除により生じた金融費用(融資の期限前弁済に伴い融資金融機関等に支払う期限前弁済費用)を含む損害賠償請求権を取得する旨規定されることが通例である。(関連:5-3 不可抗力等の場合の解除xx)。
・また、PFI事業契約において、管理者等の施設買受け義務が課されている場合であっても、当該年度における歳出予算や、すでに議決を受けた国庫債務負担行為の目的、債務負担年限及び金額の上限を超える支出又は債務負担を行う場合には、解除の時点で改めて歳出ないし国庫債務負担行為の議決が必要とされることに留意が必要である。16
・民法第416条は、損害賠償の範囲について、債務の不履行により通常生ずべき損害(相当因果関係の範囲内にあるもの)は賠償されるべきであること、また、特別の事情によって生じた損害であっても当事者がその事情を予見し又は予見可能性があったときは、債務者はその賠償を求めることができることを定めている。この規定から、損害賠償の範囲に、選定事業者が既に支出した費用に加え、解除されなければ選定事業者が得たであろう利益を含むものと解されるものの、これに含める具体的範囲については(例えば、得べかりし利益のうち、解除時以降に管理者等が支払う予定であった「サービス対価」の数ヶ月分とするなど)当事者間での検討が必要な点である。
6.条文例
(本件工事対象施設引渡日前の解除の効力)
第 96 条 甲は、本件工事対象施設の引渡日前に本契約が解除された場合においては、病院施設整備業務の設計業務のうち既に完了した部分(以下「既履行部分」という。)の引渡しを受ける必要があると認めたときの既履行部分、及び本件病院施設(ただし、既に甲が乙から引渡しを受けているものを除く。)の出来形部分を確認のうえ、当該確認を受けた部分の引渡しを受けるものとし、当該引渡しを受けたときは、当該引渡しを受けた既履行部分及び出来形部分に相応する施設整備業務費を一括又は分割により乙に支払わなければならない。この場合において、甲は、必要があると認めるときは、その理由を事業者に通知して、出来形部分を最小限度破壊して確認することができる。
2 前項の場合において、確認又は復旧に直接要する費用は、乙の負担とする。
3 第1項にかかわらず、本件工事対象施設の引渡前に本契約が解除された場合において、
16 なお、地方公共団体が管理者等となる場合において、地方自治法第96条第1項第8号の規定により、同項第6号及び第7号に定めるものを除くほか、その種類及び金額について政令で定める基準に従い条例で定める財産の取得又は処分をすることは、議会の議決事件とされている。
本件解体工事終了部分及び甲に引渡し済みの本件病院施設があるときは、甲は、当該履行済み分に相当する施設整備業務費の未払額を一括又は分割により乙に支払わなければならない。
4 乙は、本件工事対象施設の引渡日前に本契約が解除された場合において、本件土地に乙が所有又は管理する工事材料、建設機械器具、仮設物その他の物件(設計協力企業若しくは建設協力企業又は第 15 条若しくは第 35 条の規定により設計協力企業若しくは建設協力企業から病院施設整備業務の一部を委任され若しくは請け負った者の所有又は管理するこれらの物件を含む。以下本条において同じ。)があるときは、乙は、当該物件を撤去するとともに、本件土地を修復し、取り片付けて、甲に明け渡さなければならない。
5 前項の場合において、乙が正当な理由なく、相当の期間内に当該物件を撤去せず、又は本件土地の修復若しくは取片付けを行わないときは、甲は、乙に代わって当該物件を処分し、本件土地を修復若しくは取片付けを行うことができる。この場合において、乙は、甲の処分又は修復若しくは取片付けについて異議を申し出ることができず、また、甲の処分又は修復若しくは取片付けに要した費用を負担しなければならない。
(本件工事対象施設の引渡日後の解除の効力)
第 97 条 本件工事対象施設のすべての引渡終了日後に本契約が解除された場合、本契約は将来に向かって終了するものとする。
2 甲は、本契約が解除された日から 10 日以内に、本件病院施設の現況を確認するものとし、当該確認により、本件病院施設等に乙の責めに帰すべき事由による損傷等が認められるときは、甲は、乙に対してその修補を求めることができる。この場合において、乙は、自らの費用で必要な修補を実施した後、速やかにその旨を甲に通知しなければならないこととし、甲は、当該通知の受領後 10 日以内に当該修補の完了の確認を行わなければならない。
3 乙は、甲又は甲の指定する者に対して、本件病院施設等の運営ができるよう運営業務等に関して必要な事項を説明し、かつ、乙が用いた運営業務等の業務仕様書、業務マニュアル、申し送り事項その他の資料を提供するほか、必要な引継ぎを行わなければならない。
4 乙は、別段の合意のある場合を除き、運営業務等の終了に際し、自らの費用で整備した備品、情報システム、什器等を撤去しなければならない。
5 乙は、第 73 条により甲から提供を受けていた場所を運営業務等開始前の原状に復して甲に返還しなければならない。ただし、甲の承諾を受けた部分についてはこの限りではない。
6 乙は、運営業務等の終了に際し、甲の指示に従い、自己の保有する医療情報及び物品管理情報に係るデータを医療情報システムに移行しなければならない。
7 乙は、運営業務等の終了に際し、甲から貸与を受けた備品等がある場合には、当該備品等を甲に返還しなければならない。この場合において、当該備品等が乙の故意若しくは過失により滅失若しくは毀損した場合には、代品を納め、若しくは原状に回復して返還し、又は返還に代えてその損害を賠償しなければならない。
8 本契約が解除され、第3項の規定に従い、甲又は甲の指定する者が運営業務等の引継ぎを受けた場合、甲は、施設整備業務費の支払残額を一括又は分割にて支払う。ただし、乙の責めに帰すべき事由により本件病院施設が損傷しており、全壊又は損傷がひどく修繕を施しても利用が困難と客観的に判断され、かつ、甲の被る損害額が施設整備業務費の支払残額を上回る場合には、甲は、施設整備業務費の支払残額の支払期限が到来したものとみなして、かかる施設整備業務費の支払残額と当該損害額を相殺することにより、施設整備業務費の支払残額の支払義務を免れることができるものとし、なお、損害あるときは、甲はその賠償を乙に請求することができるものとする。
9 乙は、別段の合意のある場合を除き、本契約が解除された後、第3項の引継ぎが終了するまで、運営業務等を継続しなければならない。
10 本契約が解除され、第3項の引継ぎ終了後、乙は、運営業務等を終了し、運営業務等に係る費用相当分の未払い期間についての業務報告書を速やかに甲に提出し、その確認を受けるものとする。甲は、モニタリング実施計画書に従いモニタリングを行い、必要な場合は運営業務等に係る費用相当分の減額を行ったうえで、乙の請求に基づき、未払い部分の運営業務等に係る費用相当分を支払うものとする。
11 本契約解除後、乙に運営業務等に係る費用が生じた場合は、実際の運営業務等が実施された期間に応じた日割り額を別紙 12 に規定された支払のスケジュールに従って乙に支払うものとする。
12 運営業務の一部が解除された場合、「運営業務等」を「当該運営業務」と読み替えて、第4項ないし第7項、第9項ないし前項を適用する。
9-6 違約金
1.概要
・選定事業者の義務の履行を確保するために、選定事業者の帰責事由によりPFI事業契約が解除となった場合、①選定事業者が管理者等に対して違約金を支払うこと、支払うべき違約金の額、②違約金と損害賠償額との関係、履行保証保険と違約金との調整、管理者等の金銭債務と違約金との対等額の相殺決済の可否等について規定される。
2.関係法令の規定
・会計法等において、債務不履行の場合における損害金等を契約書にて定めることとされている(会計法第29条の8第1項、予決令第100条第1項第4号及び支払遅延防止法第4条第1項第3号17)。
3.違約金の支払い額
(施設の完工前)
・施設完工前の選定事業者の帰責事由による解除時に、選定事業者が管理者等に支払う違約金の額の設定については、標準約款第47条第2項の規定における〔注〕を参考として、建設工事費相当の対価の額の100分の10(場合によっては100分の20)に相当する額とする考え方などがある。
(施設の完工後)
・施設完工後の選定事業者の帰責事由による解除時に、選定事業者が管理者等に支払う違約金の額については以下に示す例などがある。
1)選定事業者が負担した建設工事費のうちの残額及びこれにかかる支払利息相当の合計額のうち100分の10(場合によっては100分の20)に相当する額等、建設工事費のうちの残額の一定割合を違約金とする考え方。
2)残存契約期間に対応する維持・管理費及び運営費の相当の対価の100分の10(場合によっては100分の20)に相当する額、解除された事業年度1年間分の維持・管理費及び運営費相当の対価の100分の10(場合によっては100分の20)に相当する額等、選定事業者に支払われる予定であった維持・管理費及び運営費の一定割合を違約金とする考え方。
・違約金の額の設定にあたっては、①選定事業の内容等により解除によって管理者等が被る損害額の見込み額が異なること、②額が過小な場合には選定事業者に対する事業継続への経済的動機付けが小さくなる一方、額が過大な場合には選定事業の資金調達費用が
17 地方公共団体が管理者等となる場合は、当該規定は支払遅延防止法第14条の規定により準用される。
高まり、これが契約金額に転嫁される結果ともなり得ること等にも留意して、適正な額を設定する必要がある。
・また、違約金の額の設定について、解除時の残存契約期間に応じて設定するという考え方においては、上記2)前段のように残存契約期間に応じて違約金の額を低減させる場合、契約期間の初期の段階により高い違約金の額が設定されるため、一般に利益を生みにくい初期の段階に選定事業者に対して契約上の義務の履行に相対的に強い経済的動機付けを与えることができる一方、融資金融機関等による融資の範囲を狭める可能性があることに留意が必要である。
4.違約金と損害賠償額との関係
・違約金と損害賠償額との関係について規定される。違約金が損害賠償額の予定ではない旨が契約書上明確にされない場合、違約金は損害賠償額の予定であると推定され(民法第420条第3項)、裁判所は違約金以上の金額を管理者等が被った損害額として認定することはない(同条1項)。したがって、この場合における法的効果は、管理者等が被った実損害額が違約金の額を超えたことを挙証しても裁判所がその超過額を損害として認定することはないが、逆に、損害の発生及びその額を証明せずに予定賠償額を請求することができるので、管理者等は損害賠償請求の困難を排除することができることである。また、場合によっては多額になりうる賠償を限定することは、選定事業者のリスク計算を容易にし、これが、選定事業者の事業に要する費用に影響を与え、ひいては契約価格にも影響を与える可能性がある点に留意が必要である。
・もっとも、違約金を損害賠償額の予定としない旨をPFI事業契約書上明確にしたうえで、管理者等が被った実損害額が違約金の額を超える場合、管理者等は、別途超過額について選定事業者に追徴することができる旨の規定を置くこともできる。(関連:5-4解除の効力)
5.履行保証保険と違約金との調整
・施設の建設工事について管理者等を被保険者とする履行保証保険契約が締結されているときは、管理者等は、当該履行保証保険契約の保険金を受領した場合、これをもって違約金に充当する規定を設ける。これは、管理者等を被保険者とする履行保証保険をxxする場合に、管理者等が違約金と保険金を二重に受け取ることがなきよう、履行保証保険金と違約金とを調整する規定である。(関連:6-4 履行保証)
・なお、選定事業者を被保険者とした履行保証保険をxxさせる場合、違約金の支払いを担保するため、選定事業者がxxする履行保証保険の保険金支払い請求権に対して選定事業者の費用をもって管理者等を質権者とする質権を設定し、かつ、かかる質権設定に対して第三者の対抗要件を具備させる規定を設ける。
6.管理者等の金銭債務と違約金との相殺決済
・選定事業者の債務不履行により管理者等が損害を被った場合、管理者等は、選定事業者に対して損害の賠償を求めることとなる。しかし、BTO方式の選定事業の維持・管理、運営段階においては、管理者等が損害賠償を有効に担保できる選定事業者の資産はない事態も想定される。この場合、管理者等が契約保証金の納付を免除し、その代替として、履行保証保険のxxを義務付けることが考えられる。(関連:6-4 履行保証)
・なお、管理者等が契約保証金の納付を免除し、かつ、維持・管理、運営業務について履行保証保険がxxされていない場合においても、管理者等が損害の賠償を受けることができるように、別途選定事業者に対し負担する「サービス対価」の支払債務と選定事業者が負担する損害賠償債務を対当額につき相殺することにより、損害の賠償を確実に受けることが考えられる(民法第505条第1項)。
・しかしながら、サービス対価請求債権には、融資金融機関等が質権又は譲渡担保権を設定することが通例である。サービス対価請求債権に質権又は譲渡担保権が設定されている場合、管理者等は相殺の手段によることが困難となる。すなわち、債権(サービス対価請求債権)が譲渡された場合、債務者(管理者等)が異議を留める承諾をした場合であっても、債務者が債権の譲受人(融資金融機関等)に対抗できるのは管理者等が承諾をする時点までに譲渡人(選定事業者)に対抗できる事由のみであり、管理者等が承諾をした時点以降に生じた事由を融資金融機関等に対抗することはできない(民法第46
7条及び第468条)。したがって、例えば、サービス対価請求債権の融資金融機関等への譲渡を管理者等が異議を留めて承諾した場合であっても、この承諾の時点以降に選定事業者の債務不履行が発生した場合、管理者等は、かかる選定事業者の債務不履行により発生した損害賠償債権と、サービス対価支払債務とを対当額で相殺することができないこととなる。ここで、サービス対価請求債権が融資金融機関等に対し担保に供されている場合にも、管理者等が相殺により損害の賠償を受けるためには、サービス対価請求債権の譲渡担保等の後であっても、「サービス対価」の支払債務と選定事業者が負担する損害賠償債務を対当額につき相殺できるとし、その協議の手続きをあらかじめ定めておくことなどが考えられる。
・また、管理者等が確実に自らの債権を回収するためには、契約保証金の納付、又は、維持・管理、運営業務について履行保証保険のxxを求めるなどの措置を講じることが必要になると考えられる。
・一方で、かかる措置は、選定事業者の資金調達の可能性や資金調達費用に影響を与える点にも留意が必要である。
7.条文例
(違約金)
第 95 条 第 92 条(ただし、同条第1項第3号を除く。)の規定により本契約が解除された場合、乙は、次の各号に従い、当該各号に定める額を違約金として、甲の指定する期限までに支払わなければならない。
(1) 本件工事対象施設引渡終了日前に解除された場合
施設整備業務費相当額から本件工事対象施設の設計業務費相当額及び工事監理業務費相当額を控除した額の 10 分の1に相当する金額。
(2) 本件工事対象施設の引渡終了日後に解除された場合
●●に相当する額に 10 分の1を乗じた金額
2 甲は、前項の場合において、第5条の契約保証金をもって違約金に充当することができるものとする。
3 第1項の場合において、乙は、解除に起因して甲が被った損害額が違約金の額を上回るときは、その差額を甲の請求に基づき支払わなければならない。
4 第 93 条又は第 94 条の規定により本契約が解除された場合、乙は、甲に対して、当該終了により被った合理的な損害の賠償を請求することができるものとする。
9-7 契約期間終了前の検査
1.概要
・契約期間終了に伴う事業実施主体の交替等に備えて、管理者等が契約期間終了前に施設の状態を検査する旨規定される。
・選定事業者は、契約期間が終了する一定期間前までに施設の状態を検査し、その結果を管理者等に報告する義務を負う旨規定される(関連:2-3-2 完工検査、2-4-
1 施設の引渡し(BTO方式))。
2.趣旨
・BOT方式の選定事業においては、契約期間の終了とともに対象施設の所有権が管理者等に移転するため、対象施設があらかじめPFI事業契約で定められた状態にあるかを確認する必要がある。このため、BOT方式の選定事業は、BTO方式のものと比べて相対的に詳細な検査が行われる。
・本検査の実施ための管理者等の立入り権と管理者等による検査に対する選定事業者の協力義務が規定される必要がある。
3.施設の所有形式ごとの検査内容等
(BOT方式の場合)
・管理者等が契約期間終了後に施設を業務のために継続して使用することを予定している場合には、管理者等が引渡しを受ける施設の状態が、業務のために継続して使用するに支障のない状態にて引渡しを受けること、施設がその状態にあることを契約終了前に管理者等が検査することが規定される。当事者間のリスク分担をあらかじめ明確にする観点から、引渡し前に実施する検査項目及びかかる項目ごとに要求する状態を具体的に取り決めておくことが望ましい。また、施設の状態について管理者等が要求した水準が満たされていない場合で、かつ、選定事業者が瑕疵担保責任を負う場合又は選定事業者が PFI事業契約に従った適正な維持・管理業務を履行しなかったと認められる場合には、管理者等はこれを選定事業者に通知し、選定事業者はこの通知に従い速やかに当該箇所を修繕すべき義務を負う旨規定される。(関連:2―4―3 施設の瑕疵担保)
・引渡し時に施設に制限物権が設定されていない状態とする旨、確認的に規定することも考えられる。
・PFI事業契約の終了に伴い施設の所有権を管理者等が有償で譲り受ける場合は、その代金の額と支払方法について規定される。
(BTO方式の場合)
・契約終了に伴う管理者等への維持・管理業務の引継ぎの一環として、契約期間終了前に、
施設に毀損等のないことを確認するため、管理者等は施設の状態を検査する旨規定される。
4.瑕疵担保責任との関係
・BOT方式、BTO方式ともに、管理者等への引渡し後の施設の隠れたる瑕疵については、瑕疵担保責任の問題となる(関連:2-4-3 施設の瑕疵担保)。
5.条文例
(期間満了による契約の終了)
第 98 条 乙は、本契約が期間満了により終了する場合は、第 91 条に規定する契約期間終了予
定日の 14 日前までに、本件病院施設等の現況を検査し、その結果を甲に報告する。この場合において、本件病院施設等に乙の責めに帰すべき事由による損傷が認められたときは、甲は、乙に対し、その修補を求めることができる。
2 乙は、前項の規定により甲から修補を求められたときは、必要な修補を実施した後速
やかに、甲に対し、修補が完了した旨を通知しなければならない。甲は、前項の通知を受領後 10 日以内に修補の完了の検査を行わなければならない。
(以下略)
9-8 契約終了時の事務
1.概要
・管理者等が、PFI事業契約期間の満了や解除によるPFI事業契約終了後も施設の継続使用を予定する場合には、①施設から選定事業者が所有する物件の撤去と管理者等によるその確認、②選定事業者から事業を継承する者に対する業務の引継ぎ、業務の実施に必要な書類一切の引渡し等について規定される。一方、管理者等が事業そのものの終了を予定する場合には、当該施設の撤去と原状復帰義務等について規定される。
2.物件撤去とその確認
・事業終了後に管理者等又は管理者等の指示する者による施設の継続使用に支障なきよう、選定事業終了時に施設内に選定事業者が所有する用具、機器その他の物件(「受託・請負企業」等の所有するこれらの物件を含む。)があるときの当該物件の撤去と、管理者等によるその確認が規定される。この物件撤去に係る費用及び3.の業務の引継ぎに要する費用などに関する負担(選定事業者が負担することが通例である。)も規定されることがある。
・事業用地の原状回復の処分と同様に、相当な期間以内に選定事業者が正当な理由なく物件撤去を行わない場合には管理者等が代わって自らこれを行うことができ、その費用を選定事業者に請求する旨規定される場合もある。一方、管理者等と選定事業者間の協議により、選定事業者等が所有する物件を購入することができる旨定める場合もある。
3.業務の引継ぎと必要な書類一切の引渡し
・PFI事業契約終了後、円滑に事業を継承するため、選定事業者から管理者等又は管理者等の指示する者に対し維持・管理、運営業務の引継ぎを行うことが規定される。維持・管理、運営業務の比重が重いため、申し送りやマニュアル等必要な書類の引渡しにとどまらず、新たな職員の訓練等を行う必要がある場合には、PFI事業終了前にそのための期間を設けることも検討を要する。
・また、通例、選定事業者から管理者等又は管理者等の指示する者に対し設計図書、竣工図書等、施設の建設工事及び補修に係る書類一切その他維持・管理及び保守点検に必要な書類一切の引渡しが規定される。円滑な事業継承の観点から、この引渡しの対象となる書類の詳細について定めておくこともxxである。
4.条文例
(期間満了による契約の終了)
第 98 条 乙は、本契約が期間満了により終了する場合は、第 91 条に規定する契約期間終了予
定日の 14 日前までに、本件病院施設等の現況を検査し、その結果を甲に報告する。この場合において、本件病院施設等に乙の責めに帰すべき事由による損傷が認められたときは、甲は、乙に対し、その修補を求めることができる。
2 乙は、前項の規定により甲から修補を求められたときは、必要な修補を実施した後速
やかに、甲に対し、修補が完了した旨を通知しなければならない。甲は、前項の通知を受領後 10 日以内に修補の完了の検査を行わなければならない。
3 乙は、甲又は甲の指定する者に対して、本件病院施設等の運営ができるよう運営業務等に関して必要な事項を説明し、かつ、乙が用いた運営業務等の業務仕様書、業務マニュアル、申し送り事項その他の資料を提供するほか、必要な引継ぎを行わなければならない。
4 乙は、別段の合意のある場合を除き、運営業務等の終了に際し、自らの費用で整備した備品、情報システム、什器等を撤去しなければならない。
5 乙は、第 73 条により甲から提供を受けていた場所を運営業務等開始前の原状に復して甲に返還しなければならない。ただし、甲の承諾を受けた部分についてはこの限りではない。
6 乙は、運営業務等の終了に際し、甲の指示に従い、自己の保有する医療情報及び物品管理情報に係るデータを医療情報システムに移行しなければならない。
7 乙は、運営業務等の終了に際し、甲から貸与を受けた備品等がある場合には、当該備品等を甲に返還しなければならない。この場合において、当該備品等が乙の故意若しくは過失により滅失若しくは毀損した場合には、代品を納め、若しくは原状に回復して返還し、又は返還に変えてその損害を賠償しなければならない。
8 乙は、本契約終了日までに前7項の業務をすべて終了したうえで、最終支払対象期間に係る報告書を作成して甲に提出し、甲の確認を受けるものとする。
第 10 章 損害賠償等
10-1 遅延損害金
1.概要
・管理者等又は選定事業者は、PFI事業契約に基づいて履行すべき支払いを遅延した場合に、未払金につき遅延日数に応じ一定の割合で計算した額を遅延損害金として相手方に支払うことが規定される。
2.関係法令の規定
・会計法令等において、各当事者の債務不履行の場合における遅延利息等を契約書にて定めることと規定している(予決令第100条第1項第4号及び支払遅延防止法第4条第
1項第3号18)。したがって、管理者等が選定事業者に対して及び選定事業者が管理者等に対して支払う遅延損害金の額等について、PFI事業契約書に規定される。
・管理者等が選定事業者に対して支払う遅延損害金の額は、支払遅延防止法第8条に基づき財務大臣が決定する率(平成15年5月現在、年率3.6%)で計算した金額を下回るものであってはならないと定められている(支払遅延防止法第8条、政府契約の支払遅延防止に対する遅延利息の率を定める件の一部改正について(平成15年3月3日財務省告示第76号))。
・国の債権の管理等に関する法律において、国の金銭債権の履行の遅延にかかる賠償金その他の徴収金を延滞金という。選定事業者が管理者等に対して支払う延滞金の額は、国の債権の管理等に関する法律施行令第37条第 1 項に規定する財務大臣が定める率(平成1
5年5月現在、年率5%)で算出した額を下回ってはならないと定められている(国の債権の管理等に関する法律施行令第36条、国の債権の管理等に関する法律施行令第29条第1項本文に規定する財務大臣が定める率を定める件及び国の債権の管理等に関する法律施行令第37条第1項に規定する財務大臣が定める率を定める件の一部改正について
(平成15年3月25日財務省告示第129号))。
3.条文例
(遅延利息)
第 101 条 甲又は乙が本契約に基づいて履行すべきサービスの対価その他の金銭の支払を遅延した場合、当該遅延した金額につき、履行すべき日(以下、本条において「履行期日」
18 地方公共団体が管理者等となる場合は、当該規定は支払遅延防止法第14条の規定により準用される。
という。)の翌日(同日を含む。)から当該金銭債務の支払が完了した日(同日を含む。)までの期間の日数に応じ、甲については、政府契約の支払遅延に対する遅延利息の率(昭和 24 年大蔵省告示第 991 号)に定める履行期日時点における率を乗じて計算した額の遅
延利息を、乙については、国の債権に関する遅延利息の率(昭和 32 年大蔵省告示第 8 号)に定める履行期日時点における率を乗じて計算した額の遅延利息をそれぞれ相手方に支払わなければならない。これらの場合の遅延利息の計算方法は、年 365 日の日割計算とする。
2 前項の規定により計算した遅延利息の額が、100 円未満であるときは、甲及び乙は、遅延利息を支払うことを要せず、その額に 100 円未満の端数があるときは、その端数を切り捨てるものとする。
(損害賠償)
第 102 条 前条に定める場合のほか、甲が本契約上の義務に違反した場合、乙は、甲に対し、当該違反により被った損害の賠償を請求することができる。
2 本契約に別段の定めがある場合を除き、乙が本契約上の義務に違反した場合は、甲は乙に対し当該違反により被った損害の賠償を請求することができる。
第 11 章 法令変更
問題点、課題の整理を入れる。
WG で議論した成果物を入れる。
1.問題状況
2.対処に関わる基本的な考え方
3.具体的な規定の内容
4.留意点
5.条文例
5-3 法令変更による解除xx
1.概要
・法令変更など当事者に帰責性のない事由により選定事業者による業務の全て又は一部の履行が不能となった場合、当事者間の協議の上、管理者等は契約の全部又は一部を解除することができる旨規定される。
2.法令変更による解除権の行使
・法令変更により、PFI事業契約等に従った建設工事業務、維持・管理業務又は運営業 務の履行が不能になった場合、あらかじめ設定された業務要求水準を満たすために必要な 人員若しくは器具等を追加する費用負担、業務要求水準若しくはPFI事業契約等の変更 が必要な事項について、当事者間で一定の協議期間を設けて協議を行うことが規定される。
・一定の協議期間以内に、かかる協議について合意が成立しない場合、管理者等は法令変更に対する対応方法を選定事業者に対して通知し、選定事業者がこれに従い選定事業を継続させるものとする。但し、選定事業の履行不能が永続的なものと判断される場合、又は選定事業の継続に過分の費用を要する場合など、選定事業の継続に経済合理性のない事態も想定されることから、こうした場合には管理者等は、相手方当事者の選定事業者と協議の上、PFI事業契約の一部又は全部を解除することが可能である旨規定される。
・なお、法令変更によるPFI事業契約の一部又は全部解除権を、一方の当事者たる管理
者等のみが有する契約構成とするか、当事者双方が有する契約構成とするか、については検討を要する点である。(関連:2-2-9 不可抗力による損害(設計、建設段階)、
3-6 不可抗力による損害(維持・管理、運営段階)
3.法令変更による義務履行の免除と「サービス対価」の支払
・法令変更により選定事業者による義務の全部又は一部が履行不能となった場合、選定事業者は、管理者等に対し法令変更による履行不能の内容の詳細及びその理由についての通知を発した後、履行不能の状態が継続し協議が整うまでの間、履行期日における、適用法令に違反する範囲において、その履行義務が免除される。併せて、管理者等は、選定事業者が業務を履行できないことによって免れた費用を控除し選定事業者が実際に行ったその他の業務の内容に応じた支払いを行うことが通例である。(関連:6-5 保険加入義務)
5.法令変更による増加費用の分担
・選定事業者により法令変更による履行不能通知の発出後、管理者等が選定事業を継続することを判断し、かつ、一定の期間以内において、当該法令変更による増加費用の分担等対応方法について上述の当事者間協議が合意に達しない場合、あらかじめ定められた増加費用の負担割合等対応方法によることを管理者等が選定事業者に通知し、選定事業者はこれに従う旨規定される。
・法令変更に対応するための増加費用の負担については、当該選定事業に直接関係する法令をあらかじめ特定し、これら法令の変更に基づく増加費用は管理者等の負担とし、あらかじめ特定された法令以外の広く民間企業一般に影響を与える法令の変更に基づく増加費用は選定事業者の負担とすることが通例である。但し、民間企業においては、法令変更による事業の増加費用を、自己の裁量において、当該事業分野から撤退すること等により回避することができるものの、PFI事業契約上の公共サービスの提供という選定事業者の義務の特異性から、一般の企業活動に比べて選定事業者の裁量が一定程度狭くなる場合もあることに配慮することも考えられる。
・また、税制の変更に起因する増加費用の負担割合については、「サービス対価」の外税とした消費税率の変更による増加費用を管理者等の負担とすることが通例である。加えて、資産所有にかかる税率の変更及び新税設立による増加費用を管理者等の負担とすることもあり得る。なお、法人税率の変更等、選定事業者の利益に課される税制度の変更による増加費用は、選定事業者の負担とすることが通例である。
6.法令変更による費用低減の享受
・法令変更により、選定事業者がより低い費用負担でもって当初に定めた業務要求水準の設計・建設工事業務、維持・管理業務及び運営業務を実施することが可能となった場合に、
管理者等が、選定事業者と協議の上、「サービス対価」を減じる改定を求める旨規定を置くことが考えられる。いずれにしても、法令変更により費用が低減した場合、この便益をいずれの方法によってどのように分配するかについて、当事者間で協議することが必要となる。
第 12 章 不可抗力
12-1 不可抗力による損害への対応(再掲)
1.不可抗力の定義の考え方
・不可抗力とは、協定等の当事者の行為とは無関係に外部から生じる障害で通常必要と認められる注意や予防方法を尽くしてもなお防止し得ないものと考えられる。管理者等及び選定事業者のいずれの責めにも帰しがたい天災等、具体的には、暴風、豪雨、洪水、高潮、地滑り、落盤、落雷、地震、火災、有毒ガスの発生等の自然災害に属するものと、騒乱、暴動、戦争、テロ行為等の人為災害に属するものとに分類できる。最終的には当事者間の合意するところに委ねられる(参考:リスクガイドライン二6(1))。
2.概要(設計、建設段階)
・施設の設計、建設段階において、不可抗力の発生により、PFI事業契約等に従った設計、建設業務の履行が不能になった場合の規定である。不可抗力事由の発生時における債務の取扱い、履行不能発生時の選定事業者による管理者等への通知等の手続き、不可抗力に起因する損害等の分担、施設の引渡し(又は運営開始)予定日の変更などについて規定される。
(1)不可抗力発生時の手続き等
・不可抗力事由の発生により、PFI事業契約等に従った設計又は建設工事業務の全部又は一部の履行が不能となった場合、選定事業者はその履行不能の内容の詳細及びその理由について書面をもって直ちに管理者等に通知することが規定される。選定事業者は、この履行不能通知の発出後、履行不能状況が継続する期間中、選定事業者の履行期日における PFI事業契約等に基づく自己の債務について当該不可抗力による影響を受ける範囲において業務履行義務が免除される。但し、選定事業者は損害を最小限にする義務を負う。
・管理者等は選定事業者から履行不能通知の受領後、速やかに当該不可抗力による損害状況の確認のための調査を行い、その結果を選定事業者に通知する義務が規定される。また、管理者等は、設計や建設工事等の内容の変更、引渡し(又は運営開始)の遅延、当該不可抗力事由による合理的な損害又は増加費用の分担等対応方法につき選定事業者と協議を行うことが規定される。
・上述の当事者間による協議において一定期間以内に合意が成立しない場合、管理者等は、事業継続に向けた対応方法を選定事業者に通知し、選定事業者は、かかる対応方法に従い選定事業を継続する義務を負うことが規定される。また、選定事業者の履行不能の状態が永続的なものと判断されるとき又は選定事業の継続に過分の費用を要するときなどには、
管理者等は、選定事業者と事業の継続の是非について協議の上、PFI事業契約の一部又は全部を解除できることが規定される。なお、管理者等と選定事業者の当事者双方が解除権を有する契約構成とすることも考えられる。
(2)不可抗力による損害等の分担
・設計、建設段階に、不可抗力の発生により施設及び仮設物、工事現場に搬入済みの工事材料、その他建設機械器具等に対し損害が生じた場合、選定事業者に不可抗力等による損害を最小限にとどめる経済的動機付けを与えるため、生じた損害又は増加費用の一部を選定事業者が負担することとし、その余を管理者等が負担する規定を置くことが通例である。例えば、同期間中の累計で建設工事費に相当する金額に一定比率を乗じた額に至るまでの額、又は一定金額に至るまでの額を選定事業者の負担とし、これを超過する部分については、「合理的な範囲」で管理者等が負担すると規定されることが考えられる。選定事業者の負担割合の検討にあたっては、選定事業者がより多くの不可抗力の損害金を負担することとした場合、不可抗力のリスクを適正に定量化できないこと及び保険技術上の制約から、選定事業者が不可抗力のリスクを負担するための費用が過大となり、結果として、かかる費用が契約金額に転嫁される結果ともなり得ることに留意する必要がある。なお、選定事業者が善良なる管理者としての注意義務を怠ったことに起因する損害等については、選定事業者が負担するものと規定される。
・ここでの損害の範囲について検討が必要である。具体的には、損害の範囲を積極損害(施設、仮設物等のみを対象とした損害)のみとするか、あるいはこれらに関連する選定事業者の損害と増加費用一般まで含むか、という点を明確にすることが望ましい。
・建設工事費に相当する額に一定比率を乗じた額又は一定金額を超過する部分について、
「合理的な範囲」で管理者等が不可抗力による損害又は増加費用を負担する旨規定されることが通例である。この場合、この一定比率を乗じた額又は一定金額を超過する部分についても選定事業者が不可抗力による損害等を負担することが想定され、かかる負担についてできる限り具体的に規定することも考えられる。
・従来型の公共工事の請負契約においては、請負代金額の100分の1を超える部分を発注者が負うことにより請負者の負担を軽減している(標準約款第29条第4項)。かかる規定は、不可抗力による損害の負担をすべて請負者に帰するのではなく、何らかの形で発注者が負担しているという実態をも考慮し、請負契約における片務性の排除、建設業の健全な発達の促進をも考慮して、損害の負担を転嫁している。
(3)引渡し(又は運営開始)予定日の変更
・上記の損害の範囲と関連する問題として、不可抗力に起因する損害負担とあわせて、引渡し(又は運営開始)予定日の延期について検討が必要である点に留意が必要である。対応の選択肢としては、当初設定した引渡し(又は運営開始)予定日は変更せず、その引渡
し(又は運営開始)予定日までに施設を完成させることを前提とした損害額(増加費用等 を含む)を負担の基礎とするというものと、逆に合理的な期間引渡し(又は運営開始)予 定日を延期した上で、それを前提とした損害額(積極損害のみ)を負担の基礎とする、と いうものが考えられる。一定の期日までに施設の運営が開始されることを重視するならば、前者が選択されることになる。この場合、負担の基礎となる損害額は相対的に大きくなる ことが一般に予想される。これに対し、後者を選択した場合、引渡し(又は運営開始)予 定日が当初より遅れる以上、当然に「サービス対価」の支払開始も遅れることになる。従 って、この「サービス対価」の支払開始の遅延が選定事業者による融資返済に与える影響、 ひいては、管理者等の負担に与える影響について留意する必要がある。
・上記に関し、引渡し(又は運営開始)予定日を延期した場合、それに伴って維持・管理、運営期間の終期も同様に延期するのか、あるいは維持・管理、運営期間の終期は変更せず、維持・管理、運営期間を短縮することとするのか、という問題について検討を要する。前者を選択した場合、維持・管理、運営の期間は変わらないが、「サービス対価」の支払が全体として遅くなり、後者の場合には、維持・管理、運営期間の短縮の結果、選定事業者が失うことになる「サービス対価」をどのように考えるかについて検討を要する。(関連:
1-4 事業日程)
(4)保険金の不可抗力による損害等の分担額からの控除
・不可抗力に起因して損害が生じたことにより選定事業者が施設の保全に関する保険の保険金を受領した場合で、当該保険金の額が選定事業者の負担する損害等の額を超えるときには、当該超過額は管理者等が負担すべき損害等の金額から控除するものとする規定を置くことが通例である。
3.概要(維持・管理、運営段階)
・施設の維持・管理、運営段階において、不可抗力の発生により、PFI事業契約等に従った維持・管理、運営業務の履行が不能になった場合の規定である。不可抗力事由の発生時における債務の取扱い、履行不能発生時の選定事業者による管理者等への通知等の手続き、不可抗力に起因する損害等の分担などが規定される。
(1)不可抗力発生時の手続き等
・不可抗力事由の発生により、PFI事業契約等に従った維持・管理業務又は運営業務の一部又は全部の履行が不能となった場合、選定事業者は、その履行不能の内容の詳細及びその理由について書面をもって直ちに管理者等に通知することが規定される。選定事業者は、この履行不能通知の発出後、履行不能状況が継続する期間中、選定事業者の履行期日におけるPFI事業契約に基づく自己の債務について当該不可抗力による影響を受ける範囲において業務履行義務が免除される。但し、選定事業者は、損害を最小限にする義務
を負う。
・管理者等は、業務履行不能の状態が存続している間、選定事業者が業務を履行できなかったことによって免れた費用を控除して選定事業者が実際に行ったその他の業務の内容に応じた支払いを行う旨規定されることが考えられる。
・管理者等は選定事業者から履行不能通知の受領後、速やかに当該不可抗力による損害状況の確認のための調査を行い、その結果を選定事業者に通知する義務が規定される。また、管理者等は、業務内容の変更、当該不可抗力事由による合理的な損害又は増加費用の分担等対応方法につき選定事業者と協議を行うことが規定される。
・上述の当事者間による協議において一定期間以内に合意が成立しない場合、管理者等は、事業継続に向けた対応方法を選定事業者に通知し、選定事業者は、この対応方法に従い選定事業を継続する義務を負う。また、選定事業者の履行不能が永続的であると判断されるとき又は選定事業の継続に過分の費用を要するときには、管理者等は、選定事業者と協議の上、PFI事業契約の一部又は全部解除できることとなる。なお、管理者等と選定事業者の当事者双方が解除権を有する契約構成とすることも考えられる。
(2)不可抗力による損害等の分担
・維持・管理、運営期間中に、不可抗力事由の発生による損害が生じた場合、選定事業者に対し不可抗力による損害を最小限にとどめる経済的動機付けを与える必要がある。そこで、不可抗力に起因する選定事業者の損害又は増加費用のうちの一部を選定事業者が負担し、それを超過する部分について、合理的な範囲で、管理者等が負担する規定を置くことが通例である。選定事業者の負担する損害等の額としては、
1)維持・管理、運営期間中の累計で、維持・管理、運営期間中の維持・管理費及び運営費の総額に相当する額に一定の比率を乗じた額に至るまでの損害等の額
2)一事業年度中に生じた不可抗力に起因する損害金の累計で、一事業年度の維持・管理費及び運営費に相当する金額に一定の比率を乗じた額に至るまでの損害等の額
3)定額
等が考えられる。
・但し、選定事業者が善良なる管理者としての注意義務を怠ったことに起因する損害については、選定事業者が負担することが規定される。
4.概要(不可抗力による解除権の行使)
・不可抗力により選定事業者による業務の全て又は一部の履行が不能となった場合、当事者間の協議の上、管理者等は契約の全部又は一部を解除することができる旨規定される。
(1)不可抗力の発生による解除権の行使
・不可抗力により、PFI事業契約等に従った建設工事業務、維持・管理業務又は運営業
務の履行が不能になった場合、あらかじめ設定された業務要求水準を満たすために必要な 人員若しくは器具等を追加する費用負担、業務要求水準若しくはPFI事業契約等の変更 が必要な事項について、当事者間で一定の協議期間を設けて協議を行うことが規定される。
・一定の協議期間以内に、かかる協議について合意が成立しない場合、管理者等は不可抗力に対する対応方法を選定事業者に対して通知し、選定事業者がこれに従い選定事業を継続させるものとする。但し、選定事業の履行不能が永続的なものと判断される場合、又は選定事業の継続に過分の費用を要する場合など、選定事業の継続に経済合理性のない事態も想定されることから、こうした場合には管理者等は、相手方当事者の選定事業者と協議の上、PFI事業契約の一部又は全部を解除することが可能である旨規定される。
・なお、不可抗力等によるPFI事業契約の一部又は全部解除権を、一方の当事者たる管理者等のみが有する契約構成とするか、当事者双方が有する契約構成とするか、については検討を要する点である。
・不可抗力によるPFI事業契約の解除の効力については、管理者等が施設を買い受けることとし、かかる対価とその他選定事業者に生じる合理的費用を負担することが考えられる。その他合理的費用については、選定事業者が開業に要した費用及び解散に要した費用があげられる。
(2)不可抗力による義務履行の免除と「サービス対価」の支払
・不可抗力により選定事業者による義務の全部又は一部が履行不能となった場合、選定事業者は、管理者等に対し不可抗力による履行不能の内容の詳細及びその理由についての通知を発した後、履行不能の状態が継続し協議が整うまでの間、履行期日における、当該不可抗力による影響を受ける範囲において、その履行義務が免除される。併せて、管理者等は、選定事業者が業務を履行できないことによって免れた費用を控除し選定事業者が実際に行ったその他の業務の内容に応じた支払いを行うことが通例である。
(3)不可抗力による損害等の分担
・選定事業者により不可抗力の発生による履行不能通知の発出後、管理者等が選定事業を継続することを判断し、かつ、一定の期間以内において、当該不可抗力による損害又は増加費用の負担等対応方法について上述の当事者間協議が合意に達しない場合、あらかじめ定められた損害等の負担割合等対応方法によることを管理者等が選定事業者に通知し、選定事業者はこれに従う旨規定される。
5.条文例
(通知の付与)
第 106 条 甲又は乙は、不可抗力により本契約上の義務の履行が不能となった場合には、速や
かにその内容の詳細を本契約の相手方当事者に対して通知する。この場合、当該通知を行った者は、当該不可抗力が発生した日以降、当該不可抗力により履行不能となった義務について、本契約に基づく履行義務を免れる。ただし、当該通知を行った本契約の当事者は、当該不可抗力により本契約の相手方当事者に発生する損失を最小限にするよう努めなければならない。
(協議及び損害額の負担等)
第 107 条 甲及び乙は、本契約に別段の定めがある場合を除き、不可抗力に対応するため速やかに本件病院施設の設計・施工(改修及び解体を含む。)、本契約又は要求水準書の変更及び損害額の負担等について協議しなければならない。
2 前項の協議にかかわらず、当該不可抗力が生じた日から 60 日以内に甲及び乙が合意に
至らない場合、甲は当該不可抗力に対する合理的な範囲の対応方法を乙に対して通知し、乙は、これに従い本事業を継続するものとする。この場合における損害の負担割合は、別紙 16 の定めによるものとする。
3 不可抗力により乙が運営業務等の一部を履行できなかった場合、甲は、乙が当該業務を実施しなかったことにより免れた費用に相当する金額をサービス対価から減額することができるものとする。
4 不可抗力に起因して、本件工事対象施設の引渡しの遅延が見込まれる場合、甲及び乙は協議のうえ、引渡予定日を変更することができる。
(不可抗力への対応)
第 108 条 不可抗力により本契約の一部若しくは全部が履行不能となった場合又は本件病院施設に重大な損害が発生した場合、乙は当該不可抗力の影響を早期に除去すべく、要求水準書で求める範囲内で対応を行うものとする。
別紙2 定義集
51 「不可抗力」とは、暴風、豪雨、洪水、高潮、地滑り、落盤、落雷、地震、火災その他の自然災害又は騒擾、騒乱、暴動その他の人為的な現象(ただし、要求水準書又は入札説明書等に基準の定めがあるものについては、当該基準を超えたものに限る。)のうち、通常の予見可能な範囲外のものであって、甲及び乙のいずれの責めにも帰すことのできないものをいう。
別紙 16 不可抗力による損害等の負担割合
1. 不可抗力による損害の対象
不可抗力による損害の対象は、以下のとおりとする。
① 設計・施工期間及び運営期間の変更、延期及び短縮に伴う施設整備業務費及び運営業務費
② 原因、被害状況調査及び復旧方法検討等に必要な調査研究費用、再調査・設計及び事業者提案又は設計図書の変更等に伴う増加費用
③ 損害防止費用、損害軽減費用、応急措置費用
④ 損壊した対象施設等の修復及び復旧費用、残存物及び土砂等の解体、撤去及び清掃費用、工事用機械及び設備、仮設工事、仮設建物等の損傷・復旧費用
⑤ 設計・施工期間及び運営期間の変更、延期及び短縮に伴う各種契約条件変更及び解除に伴う増加費用
⑥ 設計・施工期間及び運営期間の変更、延期及び短縮に伴う乙の間接損害及び出費(経常費、営業継続費用等。ただし、乙の逸失利益は除く。)
2. 不可抗力による損害の分担
(1) 設計・施工期間
設計・施工期間中に不可抗力が生じ、病院施設整備業務に関して事業者に損害が発生した場合、合理的な範囲における当該損害に関しては、設計・施工期間中の累計で施設整備業務費相当額の 100 分の1に至る金額までは乙が負担し、これを超える金額については甲が負担する。ただし、当該不可抗力事由に関して保険金が支払われた場合には、当該保険金相当額のうち設計・施工期間中は施設整備業務費等相当額の 100分の1を超える部分を甲の負担部分から控除する。
(2) 運営期間中
運営期間中に不可抗力が生じ、運営業務等に関して乙に損害が発生した場合、合理的な範囲における当該損害に関しては、事業年度ごとに累計し、当該事業年度の統括マネジメント業務費相当額及び運営業務費相当額の合計額(別紙 12 の改定がなされ、
かつ別紙 12 の減額がなされていない金額とする。以下本号において「運営業務費相
当額」という。)の 100 分の1に至る金額までは乙が負担し、これを超える金額については、xが負担する。ただし、当該不可抗力事由に関して保険金が支払われた場合には、当該保険金相当額のうち運営業務費相当額の 100 分の1を超える部分は甲の負担部分から控除する。
(3) 前2号に定める金額には、いずれも消費税及び地方消費税を含む。
12-2 不可抗力等による解除xx
1.概要
・不可抗力など当事者に帰責性のない事由により選定事業者による業務の全て又は一部の履行が不能となった場合、当事者間の協議の上、管理者等は契約の全部又は一部を解除することができる旨規定される。
2.不可抗力による解除権の行使
・不可抗力の定義の考え方については「2-2-9 不可抗力による損害(設計、建設段階)」参照。
・不可抗力により、PFI事業契約等に従った建設工事業務、維持・管理業務又は運営業 務の履行が不能になった場合、あらかじめ設定された業務要求水準を満たすために必要な 人員若しくは器具等を追加する費用負担、業務要求水準若しくはPFI事業契約等の変更 が必要な事項について、当事者間で一定の協議期間を設けて協議を行うことが規定される。
・一定の協議期間以内に、かかる協議について合意が成立しない場合、管理者等は不可抗力に対する対応方法を選定事業者に対して通知し、選定事業者がこれに従い選定事業を継続させるものとする。但し、選定事業の履行不能が永続的なものと判断される場合、又は選定事業の継続に過分の費用を要する場合など、選定事業の継続に経済合理性のない事態も想定されることから、こうした場合には管理者等は、相手方当事者の選定事業者と協議の上、PFI事業契約の一部又は全部を解除することが可能である旨規定される。
・なお、不可抗力等によるPFI事業契約の一部又は全部解除権を、一方の当事者たる管理者等のみが有する契約構成とするか、当事者双方が有する契約構成とするか、については検討を要する点である。(関連:2-2-9 不可抗力による損害(設計、建設段階)、
3-6 不可抗力による損害(維持・管理、運営段階)
・不可抗力によるPFI事業契約の解除の効力については、管理者等が施設を買い受けることとし、かかる対価とその他選定事業者に生じる合理的費用を負担することが考えられる。その他合理的費用については、選定事業者が開業に要した費用及び解散に要した費用があげられる。
・事業用地の瑕疵及び埋蔵文化財の発見等により選定事業者の業務の履行が不能となった場合についても不可抗力等により業務の履行が不能となった場合と同様の措置がとられることと規定する場合が多い。
3.不可抗力による義務履行の免除と「サービス対価」の支払
・不可抗力により選定事業者による義務の全部又は一部が履行不能となった場合、選定事業者は、管理者等に対し不可抗力による履行不能の内容の詳細及びその理由についての
通知を発した後、履行不能の状態が継続し協議が整うまでの間、履行期日における、当該不可抗力による影響を受ける範囲において、その履行義務が免除される。併せて、管理者等は、選定事業者が業務を履行できないことによって免れた費用を控除し選定事業者が実際に行ったその他の業務の内容に応じた支払いを行うことが通例である。(関連:
6-5 保険加入義務)
4.不可抗力による損害等の分担
・選定事業者により不可抗力の発生による履行不能通知の発出後、管理者等が選定事業を継続することを判断し、かつ、一定の期間以内において、当該不可抗力による損害又は増加費用の負担等対応方法について上述の当事者間協議が合意に達しない場合、あらかじめ定められた損害等の負担割合等対応方法によることを管理者等が選定事業者に通知し、選定事業者はこれに従う旨規定される。(関連:2-2-9 不可抗力による損害(設計・建設段階)及び3-6 不可抗力による損害(維持・管理、運営段階))
5.条文例
(不可抗力による契約の終了)
第 109 条 第 107 条の規定にかかわらず、不可抗力により、甲が本事業の継続が困難と判断した場合又は本契約の履行のために多大な費用を要すると判断した場合、甲は、乙と協議のうえ、本契約の全部又は一部を解除により終了させることができる。
2 前項に基づき本契約の全部又は一部が終了した場合の措置は、第 96 条ないし第 97 条
の規定に従う。
3 第1項の規定に基づき本契約の全部又は一部が終了した場合において発生した損害の甲と乙の負担割合は、別紙 16 のとおりとする。
別紙 16 (略)
第 13 章 協議会等の設置
13-1 疑義に関する協議
1.概要
・管理者等及び選定事業者は、PFI事業契約に定めのない事項について定める必要が生じた場合、又はPFI事業契約の解釈に関して疑義が生じた場合、誠意をもって協議しなければならない旨が規定される。
2.趣旨
・PFI事業契約は、選定事業を円滑に実施するために必要な一切の事項を定めることを 目的としたものである。この目的に鑑み、PFI事業契約において当事者の権利義務関 係をできる限り具体的かつ明確に規定する必要がある。一方、PFI事業契約締結時に は想定し得ないリスクの顕在化などPFI事業契約に定めのない事項、その他PFI事 業契約の実施にあたって生じた疑義について解決しなければならないことも起こり得る。こうした場合に、当事者間で誠意をもって協議する旨規定される。さらに、当事者間で の協議が整わず、紛争が生じる場合に備え、契約に関する紛争の処理方法を規定しなけ ればならない(支払遅延防止法第4条第4号19及び予決令第100条第1項第7号)。
3.関係者協議会の設置
・協議を行うための機関として、当事者その他関係者で構成する関係者協議会を設置することがあり、その構成員、開催手続き等についてPFI事業契約においてあらかじめ定める場合がある。さらに、当事者のリスク分担に及ぼす影響度など重要度に応じて協議事項を分類し、重要事項に関する協議を目的とした協議会と日常的な業務の実施に関する詳細協議を目的とした協議会とを併設させることをあらかじめ規定することもあり得る。
・また、PFI事業契約に関する紛争の処理方法として、専門家等の第三者を加えて意見を求めるといった手続きを規定することも考えられる。
4.条文例
(経営に関する会議等)
第 110 条 甲及び乙は、本事業の実施及び本件病院の経営改善等に関する重要な方針等について協議するため、経営に関する会議を設置する。
19 地方公共団体が管理者等となる場合は、当該規定は支払遅延防止法第14条の規定により準用される。
2 甲及び乙は、本事業の実施及び本件病院の経営改善等に関する情報交換等を行うため、実務者による会議を設置する。
3 前2項に定める会議の構成及び開催方法等については、甲と乙が協議して別に定める。
4 甲及び乙は、別紙 11 に基づき定期モニタリングにおける評価の事実認定及び確定行為をするため、定期モニタリング委員会を設置する。
5 甲は、別紙 11 に基づき前項の定期モニタリング委員会における評価の確認及びサービス対価の減額を決定するため、事業評価委員会を設置する。
6 乙は、甲が要求したときは、第1項及び第2項の会議並びに前2項の委員会の開催に必要な資料の作成等を行う。
7 乙は、甲が本件病院の機関として設置している各種委員会への出席又は資料提供を求められたときは、これらの求めに応じなければならない。
第 14 章 紛争解決(中立的第三者の関与)
問題点、課題の整理を入れる。
WG で議論した成果物を入れる。
1.問題状況
2.対処に関わる基本的な考え方
3.具体的な規定の内容
4.留意点
5.条文例
6.SoPC4で参考となる規定