(出典:決算書、H25,26 は当初予算。委託料には指定管理料も含まれている。)
静岡市報 平成 27 年3月 30 日号別冊
xxxxxxxx 00 x
平成26年度
包括外部監査結果報告書
委託契約の事務の執行について
静岡市包括外部監査人
目 次
第1 監査の概要 .............................................. - 1 -
1.外部監査の種類 ...................................................... - 1 -
2.特定の事件(テーマ) ............................................... - 1 -
(1)選定した特定の事件 ............................................... - 1 -
(2)事件を選定した理由 ............................................... - 1 -
3.監査の対象........................................................... - 2 -
(1)監査の対象とした部局等........................................... - 2 -
(2)監査対象期間 ............................................... - 2 -
4.監査の方法........................................................... - 2 -
(1)監査の視点 ................................................. - 2 -
(2)主な監査手続 ............................................... - 2 -
5.監査実施期間 ........................................................ - 2 -
6.監査実施者........................................................... - 3 -
(1)包括外部監査人 ............................................. - 3 -
(2)補助者 ..................................................... - 3 -
7.利害関係............................................................. - 3 -
第2 監査対象の概要 .......................................... - 4 -
1.委託契約の概要 ...................................................... - 4 -
(1)委託とは........................................................... - 4 -
(2)委託契約の締結方法 ............................................... - 5 -
2.静岡市の委託契約事務の概要 ........................................ - 7 -
(1)業務別の契約方法 ................................................. - 7 -
(2)委託業務等業者選定委員会・部会.................................. - 8 -
(3)事務処理の流れ.................................................... - 9 -
(4)再委託について................................................... - 10 -
(5)前金払いについて ................................................ - 11 -
3.静岡市の取り組み................................................... - 13 -
(1)国の方針.......................................................... - 13 -
(2)静岡市の方針 ..................................................... - 13 -
第3 監査の結果 ............................................. - 15 -
A.監査対象............................................................ - 15 -
1.委託料の推移 ....................................................... - 15 -
2.委託契約の部局別内訳 .............................................. - 16 -
3.監査対象とした委託契約............................................ - 17 -
(6)委託料の積算と実績との比較について .. - | 93 | - |
(7)市が委託する業務と受託先が行う独自業務との区分について ..... - | 95 | - |
15.xx遺跡発掘調査業務 .. - | 97 | - |
(1)特記仕様書の虚偽記載について .. - | 97 | - |
16.xxxxガイダンスブース観光案内・管理業務 .. - | 99 | - |
(1)前金払いの適用について .. - | 100 | - |
(2)人件費単価の割り増しについて .. - | 100 | - |
(3)契約率 99%の新規事業について .. - | 102 | - |
17.旧マッケンジー邸管理業務委託 .. - | 104 | - |
(1)文化財施設の運営の見直しについて .. - | 105 | - |
18.xxx文学記念館管理運営業務 .. - | 106 | - |
(1)事業の成果測定について .. - | 107 | - |
(2)記念館開館日の見直しについて .. - | 107 | - |
(3)委託の理由の具体性について .. - | 108 | - |
19.静岡市民文化会館前駐車場使用料徴収業務 .. - | 109 | - |
(1)委託の理由について .. - | 109 | - |
(2)機械式駐車場の導入について .. - | 110 | - |
20.静岡市生涯学習センター、女性会館及び南部勤労者福祉センター使用料徴
収事務委託 .. - | 112 | - |
(1)前金払いの適用について .. - | 113 | - |
21.xx区生涯学習交流館使用料徴収事務委託 .. - | 114 | - |
(1)積算方法の見直しについて .. - | 115 | - |
22.生涯学習センター社会教育事業企画運営業務 .. - | 117 | - |
(1)委託の理由の未記載について .. - | 118 | - |
(2)前金払いの適用について .. - | 118 | - |
23.静岡xx生涯学習交流館生涯学習事業企画運営業務委託 .. - | 120 | - |
(1)委託の理由未記載について .. - | 121 | - |
(2)事業報告の内容について .. - | 121 | - |
24.静岡市霊園管理業務委託 .. - | 123 | - |
(1)契約書別紙編纂もれ .. - | 124 | - |
25.静岡市民ギャラリー運営等業務委託他4業務 .. - | 125 | - |
(1)委託の理由の具体性について .. - | 125 | - |
26.静岡市手話奉仕員養成講座(入門課程)業務 .. - | 128 | - |
(1)事業の効果について .. - | 130 | - |
27.障害者等相談支援事業 .. - | 131 | - |
(1)積算と実績の乖離について .. - | 133 | - |
28.静岡地区放置自転車等移送業務 .. - | 135 | - |
(1)業務仕様書と積算の整合性について .. - | 136 | - |
① 移送班の業務時間について .. - | 136 | - |
② 補助員の人件費について .. - | 137 | - |
29.道路パトロール管理業務 .. - | 140 | - |
(1)不測の事態への対応について .. - | 141 | - |
30.入院患者給食業務委託 .. - | 144 | - |
(1)「一般食」と「特別食」の契約単価について .. - | 146 | - |
① 変動費について .. - | 148 | - |
② 固定費について .. - | 150 | - |
(2)経腸栄養(経管流動)の契約単価について .. - | 154 | - |
(3)調乳の契約単価について .. - | 155 | - |
(4)静岡病院と清水病院との比較検討について .. - | 157 | - |
31.上下水道検針事務委託 .. - | 158 | - |
(1)私人検針員の契約単価の相違について .. - | 159 | - |
(2)法人委託への全面移行について .. - | 161 | - |
32.平成 17 年度包括外部監査の措置状況 .. - | 167 | - |
(1)積算金額の算定方法について .. - | 184 | - |
(2)収入印紙の貼付もれについて .. - | 186 | - |
(3)再委託の事務手続について .. - | 187 | - |
① 再委託の承認 .. - | 187 | - |
② 再委託承認書の交付 .. - | 188 | - |
③ 再委託契約書の入手 .. - | 189 | - |
④「暴力団排除に関する誓約書兼同意書」等の入手 .. - | 190 | - |
第1 監査の概要
1.外部監査の種類
地方自治法第 252 条の 37 第 1 項の規定に基づく包括外部監査
2.特定の事件(テーマ)
(1)選定した特定の事件
委託契約の事務の執行について
(2)事件を選定した理由
いわゆる「官から民へ」のスローガンのもと、地方公共団体においても、行財政改革の一環として、民間委託の推進への取り組みを強化して約 10 年が経過する。
その間、静岡市においても、民間活力の活用に取り組んできており、委託料は増加を続けてきた。一般会計の委託料は、平成 16 年度には 211 億円(決
算額)であったが、平成 26 年度には 312 億円(当初予算)となり、約 100 億円増加している。また、一般会計に占める委託料の割合も 10%を超えており、委託料が財政に与える影響も大きくなっている。
一方で、委託料が増加しているということは、市の職員ではない、外部の業者等によって行われる市民サービスの提供の比重が高まってきているということでもある。こうした外部による市民サービスの提供についても、業務の管理監督責任は市にあり、外部による市民サービスの品質は、市の委託業務の管理能力に左右されることになる。
民間委託の推進が進展を見せる中で、外部による市民サービスが継続して安定的に提供され、業務が適法かつ妥当に行われるためには、市の委託業務の管理体制が、これまで以上に重要な役割を果たしている。
こうした状況下において、委託契約の事務の執行について、現状を把握するとともに、問題点や課題を見出し、改善案を提示することは、市民にとっても有意義なことであると考え、外部監査のテーマを選定した。
3.監査の対象
(1)監査の対象とした部局等
〇財政局財政部契約課
〇委託契約を所管するすべての課
(2)監査対象期間
原則として平成 25 年度
ただし、必要に応じて、他の年度も監査対象としている。
4.監査の方法
(1)監査の視点
① 委託契約の事務の執行が、関連する法令及び条例・規則等にしたがい、適正に処理されているか
② 委託契約の事務の執行が、いわゆる3E(経済性・効率性・有効性)の観点から、適正に実施されているか
主な監査要点は、次のとおりである。
① 委託事業のあり方、業務内容について事前に十分に検討されているか
② 業務を外部へ委託する理由は明確かつ合理的か
③ 積算金額は適正に算定されているか
④ 契約事務は適正に実施されているか
⑤ 事業の事後評価は適正に実施されているか
⑥ 再委託の事務手続は適正に実施されているか
(2)主な監査手続
主な監査手続として、関連書類一式の閲覧、関連規則等との照合、担当部署に対するヒアリング、調査・分析などを実施している。
5.監査実施期間
平成 26 年 6 月 20 日から平成 27 年 3 月 31 日まで
6.監査実施者
(1)包括外部監査人
公認会計士 xx xx
(2)補助者
公認会計士 | xx | xx |
公認会計士 | xx | xx |
公認会計士 | xx | xx |
日本公認会計士協会準会員 | xx | xx |
7.利害関係
監査の対象とした事件につき、地方自治法第 252 条の 29 の規定により記載すべき利害関係はない。
<注意事項>
報告書中、表の中の金額は単位未満を四捨五入して表示している。したがって、内訳の集計値と合計値とが一致しない場合がある。
第2 監査対象の概要
1.委託契約の概要
(1)委託とは
委託について、「委託業務等各種契約事務 処務事務お助けマニュアル」(静岡市財政局財政部契約課)では、次のとおり記載している。
① 委託の定義
市が行う委託とは、本来市がなすべき法律行為または事実行為を、契約という法形式により、他の機関や人に依頼することである。
② 委託に適する業務
委託の対象範囲や方法等については、自治法上、特に制限規定はない。
ただし、公権力の行使に関わるものや、行政に固有の判断作用を伴うもの等は、法律で特に認められた場合を除き、委託することはできない。
委託に適する業務は、次のようなものである。
(1)市が直接実施するよりも、他の者へ委託し、実施させるほうが効率的なもの (2)高度または専門的な知識、技術、技能および経験を必要とするもの
(3)特殊な設備、装置等を必要とするもの
(4)多量の事務を短期間に処理しなければならないもの
③ 委託の必要条件
(1)法令等により、その事務(業務)の民間委託について禁止されていないこと (2)委託することにより、市民サービスの低下を招かないこと
(3)その事務(業務)が、委託に適するものであること
(4)経費の節減や事務の効率化等について、あらゆる角度から検討し、委託が妥当であると判断できること
(5)個人情報の保護に万全を期すること
④ 受託者の選定要件
(1)受託者が、暴力団員等、暴力団員の配偶者および暴力団員等と密接な関係を有するものでないこと
(2)受託者が、受託事務(業務)を能率的に処理する能力を持っていること (3)受託者に対する市の管理、監督を十分に行い得るものであること
(4)選定にあたっては、競争契約の原則に立ち、候補となる者(入札・見積参加者)を原則として複数選定、その中から受託者を選定すること
⑤ 契約履行の確保
契約の性質や目的によっては、契約履行の最終段階における確認(検査・検収)だけでは十分でないもの、または、その確認が困難なものもあるので、履行途中において作業に立ち会う等の方法によって、適正な履行が確認されるよう必要な措置(指示、調整等)を講ずること
(2)委託契約の締結方法
委託契約は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約の方法によって締結される。
① 一般競争入札
一般競争入札とは、市があらかじめ、契約の目的、条件等を公告したうえで、不特定多数の申込者を集めて入札を行い、市にとって最も有利な条件により入札した者と契約する方法である。
市にとって最も有利な条件については、価格により決定する方法(価格競争)と、価格以外の要素も考慮して決定する方法(総合評価)とがある。
② 指名競争入札
指名競争入札とは、市が指名する特定の者によって入札を行い、市にとって最も有利な条件により入札した者と契約する方法である。
③ 随意契約
随意契約とは、競争入札によることなく、市が任意に選定した特定の者と契約する方法である。
地方自治法では、指名競争入札と随意契約は、「政令で定める場合に該当するときに限り」認められると規定している(第 234 条第2項)。したがって、上記のうち、原則的な方法は、一般競争入札であり、指名競争入札と随意契約は、例外的な方法であることがわかる。
◆指名競争入札が認められる場合
地方自治法施行令第 167 条では、指名競争入札が認められる場合について、次のように定めている。
①工事又は製造の請負、物件の売買その他の契約でその性質又は目的が一般競争入札に適しないものをするとき
②その性質又は目的により競争に加わるべき者の数が一般競争入札に付する必要がないと認められる程度に少数である契約をするとき
③一般競争入札に付することが不利と認められるとき
◆随意契約が認められる場合
地方自治法施行令 167 条の2第1項では、随意契約が認められる場合について、次のように定めている。
① 委託契約の予定価格が 100 万円を超えないとき
② その性質又は目的が競争入札に適しないとき
③ 障害者支援施設、シルバー人材センター、母子福祉団体等から、規則で定める手続により、物品等の買い入れ、役務の提供を受けるとき
④ 総務省令で定めるところにより、市長の認定を受けた者から物品を買い入れるとき
⑤ 緊急の必要により、競争入札に付することができないとき
⑥ 競争入札に付することが不利と認められるとき
⑦ 時価に比して著しく有利な価格で契約できる見込みのあるとき
⑧ 競争入札に付し入札者がないとき、または、再度の入札に付し落札者がないとき
⑨ 落札者が契約を締結しないとき
… 原則的な方法
… 例外的な方法①
… 例外的な方法②
◆委託契約の締結方法
一般競争入札 | ||||
競争入札によるもの | ||||
指名競争入札 | ||||
競争入札によらないもの | 随意契約 | |||
2.静岡市の委託契約事務の概要
(1)業務別の契約方法
静岡市では、委託業務(これに準じた契約手続を必要とする業務も含む)について、「競争入札対象業務」と「随意契約対象業務」(建設業関連業務を除く)に区分して、契約方法が決められている。
「競争入札対象業務」 … 入札参加資格認定制度がある 12 業務のみ
(WTO対象業務を含む)
「随意契約対象業務」 … 上記以外の業務
① 競争入札対象業務
委託業務(これに準じた契約手続を必要とする業務も含む)のうち、静岡市で競争入札の対象となるのは、以下の 12 業務に限られている。
このうち、①~⑦の7業務については、入札参加資格の申請・審査・認定に係る基準を告示し、あわせて客観的な積算標準を設けることにより、競争入札の対象としている。
また、⑧~⑫の5業務については、客観的な積算標準はないが、WTO(世界貿易機関)政府調達協定を受け、競争入札の対象となっている。
① | 建築物環境衛生管理業務 | 入札参加資格基準、積算標準がある |
② | 建築物清掃業務 | |
③ | 建築物空気環境測定業務 | |
④ | 建築物飲料水貯水槽清掃業務 | |
⑤ | 建築物ねずみ・こん虫等防除業務 | |
⑥ | 警備業務(機械警備業務を除く) | |
⑦ | 消防用設備等保守点検業務 | |
⑧ | 電算業務 | WTOに該当する業務 入札参加資格基準はあるが、積算標準はない |
⑨ | 下水道処理施設維持管理業務 | |
⑩ | 下水汚泥処理業務 | |
⑪ | 物品等及び仮設建物の借入契約 | |
⑫ | 運転手付きのバスの借入契約 |
競争入札を行う場合、競争性確保とあわせて、適正な履行の確保が必須条件であるので、静岡市では、あらかじめ入札参加資格を告示し、資格要件を満たす業者のみを入札に参加させることとしている。
入札参加資格は、詳細に定められたうえで告示され、これに基づき、契約課において、参加資格の認定事務を行っている。
② 随意契約対象業務
上記の競争入札対象業務以外の業務については、業務内容、業者ともに多様であり、一定の入札参加資格の基準や客観的な積算標準を設けにくいことから、競争入札には付さないこととしている。
これらの業務については、見積執行(競争入札形式の見積xxx)により、できるだけ競争性を確保することとしている。
(2)委託業務等業者選定委員会・部会
静岡市では、業者選定を適正かつ合理的に行うため、「静岡市委託業務等業者選定委員会」を設置している。入札または随意契約の対象となる業務のうち、一定金額を超えるものについては、この委員会・部会に業者選定を依頼する。
委員会 | 部会 | ||
構成 | 委員長 | 副市長 | 各部局長 |
委 員 | 財政・生活文化・環境・経済の各局長、上下水道局次長、教育次長、財政 部長 | 各部会庶務担当課長、部会長が指定する職にある者 | |
選定案件 (委託業務) | 競争入札業務 | 2,700 万円以上 | 100 万円超 2,700 万円未満 |
随意契約業務 | 2億円以上 (新規1億円以上) | 100 万円超2億円未満 (新規1億円未満) |
(※)金額は1件当たりの積算金額(単価契約の場合は年間見込み)である。
(3)事務処理の流れ
予 | 算 | 要 | 求 | 〇委託に適するものであること。 | |
↓ | 〇参考意見書は、なるべく2人以上の者から徴すること。 | ||||
事 | 業 | 決 | 裁 | 〇仕様書には、業務の内容や方法等を正確に記載すること。 | |
〇契約方法とその理由を記載すること。 | |||||
↓ | 〇積算金額は、「積算標準」、参考見積書を基に積算すること。 〇契約書(案)を作成すること。 | ||||
業 | 者 | 選 | 定 | 〇xx金額以上は、業者選定委員会又は部会の審議に付すこと。 |
↓ 〇業者選定は、「業者選定基準」に基づき適切に行うこと。
(業者選定委員会部会) 〇特定の業者に偏らないよう、客観的にもxxな選定を行うこと。
↓ 〇単独随意契約の場合は、明確かつ客観的な理由があること。
(業者選定委員会) 〇指名競争入札及び随意契約についても、業者選定の経過、理由が
具体的にわかるように記載した関連書類を適切に保存すること。
公 告 、 x x x 知
↓
〇業者の適正な見積期間を確保すること。
↓ 〇入札参加者等(入札参加者、指名人、見積参加者、単随理由)の事前公表はしないこと。
予 定 価 格 の 決 定
〇予定価格は、適正に定めること。
↓ 〇予定価格の秘密保持には、万全を期すること。
入札( 見積) 執行
〇入札参加者等、落札者、落札金額を公表すること。
↓
支出負担行為伺・決定
↓ | ||||||
契 | 約 | の | 締 | 結 | 〇契約書は、契約の内容を明確化すること。 | |
↓ | ||||||
業 | 務 | 実 | 施 | |||
↓ | 変 更 契 約 〇局筆頭課長(調整係経由)に合議すること。 | |||||
検 | 査 | ・ | 検 | 収 | ||
↓ | ||||||
支 | 出 | 命 | 令 | |||
↓ | ||||||
代 | 金 | の | 支 | 払 |
「Ⅱ.監査結果(個別各論)」において、再委託と前金払いについての指摘が散見されたので、ここで両者の概要について説明しておくこととする。
(4)再委託について
静岡市では、委託契約における再委託については、原則として、禁止している。これについて、「委託業務等各種契約事務処務事務お助けマニュアル」(契約課作成)では、次のとおり記載している。
地方公共団体の契約は、契約の相手方として特定の者をxxに選定した上で、契約の履行確保を図るものであるため、再委託等により、その相手方以外の者に契約を履行させることは、適正な履行の確保の観点から、認めることは
できない。
ただし、業務の内容によっては、例外として、再委託が認められる。これについて、同マニュアルの記載は次のとおりである。
あくまで例外であるが、再委託が認められるのは、業務の性質や相手方の特殊性から、契約の履行確保を図るために、社会通念上妥当であると認められる場合に限られる。この場合には、契約条項中「再委託の禁止」のただし書として「ただし、〇〇事業(業務)の一部についてあらかじめ甲の書面による承諾
を受けたときは、この限りでない。」等の規定を設けておく必要がある。
また、「委託契約その他各種契約における再委託の適正な執行について(通知)」
(平成 23 年7月 19 日)には、「再委託を承認する基準について」、「具体的な手続について」として、次の記載がある。
4 再委託を承認する基準について
次の4項目を総合的に判断して承認すること。
(1)再委託の業務及び業務内容について主たる業務でないこと。
※ 契約の履行を一括して再委託しようとするもの(一括再委託)は認められないが、電算機等の保守管理契約等で、グループ企業同士の間で営業と役務提供を分業している場合は、一括再委託禁止の例外とする。
(2)再委託の理由について
再委託の理由が社会通念上妥当であること。
(3)再委託の相手先について
ア 再委託の相手方の履行能力に疑義がないこと。
会社更生法に基づき更生手続開始の申立てがなされている者(更生手続開始の決定を受けている者を除く。)、民事再生法に基づき再生手続開始の申立てがなされている者(再生手続開始の手続を受けている者を除く。)や手形不渡りを出した会社など経営状況が不安定な会社でないか、再委託される業務について技術力や必要な許認可がある会社かなどを確認する。
イ 再委託の相手方が当該業務の入札(見積執行)参加者でないこと。ウ 再委託契約金額が妥当であること。
(4)その他契約の適正な履行に支障が生じるおそれがないこと。
5 具体的な手続について
(1)契約締結前に再委託を予定しているかを確認し、予定している場合はただし書の規定を設けた契約書を渡す。
(2)再委託をする場合、あらかじめ承認申請書を提出させる。
(3)申請内容が再委託を承認する基準を満たしているか審査し、決裁後承認書を交付する。
(4)受託者に対して、再受託者との契約書等に、当該委託契約書第〇条から第〇条まで規定を準用する旨を明記するよう指示する。
(5)受託者に対して、(4)の再受託の契約を締結した後、速やかに当該契
約書等の写しを提出させる。
(5)前金払いについて
地方公共団体が締結する契約については、契約の相手方の給付が完了した後に、代金を支払うのが原則である。前金払いは、相手方の給付が完了する前の支出であり、法令で認められた特例と解されている。市の会計事務の手引でも、法の趣旨に則り、「安易に前金払いとするようなことは慎むこと」と記載されている。前金払いの適用にあたっては、合理的な理由がなければならない。
地方自治法施行令第 163 条では、前金払いをすることができる経費として、次のとおり規定している。
一 官公署に対して支払う経費
二 補助金、負担金、交付金及び委託費
三 前金で支払をしなければ契約しがたい請負、買入れ又は借入れに要する経費四 土地又は家屋の買収又は収用によりその移転を必要とすることとなった家
屋又は物件の移転料
五 定期刊行物の代価、定額制供給に係る電灯電力料及び日本放送協会に対し支払う受信料
六 外国で研究又は調査に従事する者に支払う経費七 運賃
八 前各号に掲げるもののほか、経費の性質上前金をもって支払をしなければ事務の取扱いに支障を及ぼすような経費で普通地方公共団体の規則で定めるも
の
上記の第8号を受けて、静岡市会計規則では、前金払いすることができる経費として、次のように定めている。
静岡市会計規則
(前金払をすることができる経費)
第 86 条 政令第 163 条第8号の記載により前金払をすることができる経費は、次に掲げるものとする
(1)打切旅費
(2)保険料
(3)補償費
(4)公社及び公団に対して支払う経費
(5)研修会その他の会議に係る資料代
また、会計室作成の「会計事務の手引」には、以下の記載がある。
(前金払)
前金払とは、債権者および債権金額ともに確定している相手方の給付義務の完了前に支出することである。従って、前金払することによりその契約又はその債務の負担が効果的に行われるという場合に限る。
(前金払の支払)
前金払は相手方の給付義務の完了前に支払うことから、前金払対象経費といっても、その必要性及び支払時期を十分検討し、安易に前金払とするようなことは 慎むこと。また、補助金等の前払金は支出先の資金計画書を添付すること。
3.静岡市の取り組み
(1)国の方針
総務省は、「地方公共団体における行政改革のための新たな指針」(平成 17 年
3月 29 日)において、「行政改革推進上の主要事項」として「民間委託等の推進」について、次のとおり記載している。
1 地方公共団体における行政の担うべき役割の重点化
(1)民間委託等の推進
① 給与・旅費の計算、財務会計、人事管理事務等の総務事務や定型的業務を含めた事務・事業全般にわたり、民間委託等の推進の観点からの総点検を実施すること。
具体的には、類似団体の状況や民間の受託提案などを参考にしながら、組織の規模を踏まえ、メリットが生じるよう委託の可能性について検証すること。その際、企画と実施の切り分けや複数の組織にまたがる共通の事務の集約化、他団体との事務の共同実施、委託実施期間の複数年度化などの様々な手法による委託の可能性の検証を行うこと。
② その上で、事務・事業全般についての民間委託等の実施時期等を示した具体的かつ総合的な指針・計画を策定すること。
③ 委託の実施にあたっては、対象事業、選定基準、契約条項などの透明性を確保するとともに、個人情報の保護や守秘義務の確保に十分留意し、必要な措置を講じること。
④ 委託した事務・事業についての行政としての責任を果たし得るよう、適切に評価・管理を行うことができるような措置を講じること。
⑤ 民間委託等の実施状況については、事務・事業や施設区分ごとに、委託
先、委託理由等を公表すること。
(2)静岡市の方針
静岡市では、「xxxx財政改革推進大綱(平成 22 年度~平成 26 年度)」(平
成 22 年3月)を策定しており、そこでは、民間活力の活用について、次のとおり記載されている。
〇基本方針Ⅰ 役割分担による公共サービスの提供
〇改革の方向 行政の事務事業領域の再構築と民間活力の活用
第一に、事務事業の目的や性質に応じて、本市自ら、または公共的・公益的団体(外郭団体)が担うべきものと、民間に委ねる方が適切といえるものの区分を客観的な手法を通じて示すという課題があります。また、この区分により事務事業が民間活力の活用によって担われる場合には、その方法や形態(例えば、民間委託化、民営化、地方独立行政法人化、指定管理者制度導入等)の選択基準を明確にしておく必要があります。同時に、本市や外郭団体による事務事業の運営の在り方についても多様な改革を実施します。
第二に、民間活力のメリットと同時に民間活力の活用をxxから否定されないように十分注意しながら、そのデメリットについても事前に正確な把握をしておきます。これは、民間活力の活用には、行政にない自由度や柔軟さがある一方、市場の影響を受けて安定を欠き、サービスの公共性に対する理解が十分でない場合もありうる点に十分な注意を払う必要があるからです。第三に、これら以外にも、そうした作業の過程で市民の参加や提案を積極 的に踏まえ、役割分担後の確実なフォローアップや見直し・改善のための諸
措置を備えておくことに努めます。
また、同推進大綱には、「入札・契約制度の改善」について、次のとおり記載されている。
本市が入札等を経て結ぶ契約については、その手続の透明性を確保するため、関係法令の趣旨を踏まえ、一般競争入札の比率をさらに高めていくように努めます。また、契約締結後に、予測を超えた諸事情の発生によって契約金額が増額変更される場合もありますが、当初の設計の精度を高めること等
により、安易な契約額変更に至らないよう努めます。
〇基本方針Ⅲ 多様性と創造性にあふれた市民本位のまちづくり
〇改革の方向 11 情報公開・提供の推進とxx性の確保
〇主要施策 34 入札・契約制度の改善
第3 監査の結果 A.監査対象
1.委託料の推移
(出典:決算書、H25,26 は当初予算。委託料には指定管理料も含まれている。)
平成 16 年度の委託料は 211 億円であったが、平成 26 年度には 312 億円とな
り、約 100 億円増加している。一般会計に占める委託料の割合も、平成 26 年度
が 11.3%と最も高い。平成 15 年度を 100 とすると、平成 26 年度の一般会計は
107、委託料は 142 となっており、委託料の伸びが大きいことがわかる。
2.委託契約の部局別内訳
(単位:千円)
局 | 部 | 件数 | 金額 | 平均単価 | |
1 | 環境局 | 廃棄物対策部 | 99 | 3,636,676 | 36,734 |
2 | 上下水道局 | 下水道部 | 97 | 1,968,804 | 20,297 |
3 | 建設局 | 道路部 | 218 | 1,577,227 | 7,235 |
4 | 都市局 | 都市計画部 | 161 | 1,577,155 | 9,796 |
5 | 病院局 | 静岡病院事務局 | 66 | 1,527,669 | 23,147 |
6 | 教育委員会事務局 | 教育部 | 150 | 1,408,461 | 9,390 |
7 | 財政局 | 財政部 | 42 | 1,366,788 | 32,543 |
8 | 上下水道局 | 水道部 | 91 | 1,320,147 | 14,507 |
9 | 病院x | xx病院事務局 | 55 | 1,009,816 | 18,360 |
10 | 生活文化局 | 文化スポーツ部 | 81 | 707,476 | 8,734 |
11 | 総務x | xx管理部 | 47 | 490,368 | 10,433 |
12 | 保健福祉局 | 福祉部 | 49 | 375,395 | 7,661 |
13 | 経済局 | 商工部 | 46 | 372,919 | 8,107 |
14 | 生活文化局 | 市民生活部 | 31 | 360,427 | 11,627 |
15 | 経済局 | 農林水産部 | 53 | 354,239 | 6,684 |
16 | 建設局 | 土木部 | 52 | 310,554 | 5,972 |
17 | 保健福祉局 | 保健衛生部 | 49 | 233,208 | 4,759 |
18 | 消防局 | 警防部 | 10 | 190,738 | 19,074 |
19 | 財政局 | 税務部 | 16 | 142,094 | 8,881 |
20 | 都市局 | 建築部 | 10 | 111,030 | 11,103 |
21 | その他1億円未満 | 111 | 367,112 | 39,803 | |
合計 | 1,534 | 19,408,303 | 12,652 |
(注)上記の委託契約には、指定管理は含まれていない。
また、原則として、金額 100 万円未満のものは含まれていない。
金額上位には、清掃工場(廃棄物対策部)、病院(静岡病院事務局、xx病院事務局)といった大規模施設、インフラ関連(上下水道局、道路部)が多い。また、それ以外では、公園(都市計画部)、学校給食(教育部)、競輪場(財政部)、動物園(文化スポーツ部)関連が上位に入っている。
3.監査対象とした委託契約
〇監査対象の抽出方法
「平成 25 年度委託業務等一覧」(契約課作成)から、外郭団体との契約を全件、1件1億円以上の契約を全件、再委託が行われている契約を全件抽出した他、監査人の任意抽出により、監査対象を決定している。
ただし、環境局廃棄物対策部については、昨年度に監査を行っているため、当年度は監査対象としていない。監査の結果については、平成 25 年度の包括外部監査結果報告書を参照していただきたい。
〇監査対象一覧表
監査対象の一覧表は、次のとおりである。なお、「Ⅱ.監査の結果(個別各論)」に記載があるものについては、網掛けとして表示している。
(単位:xx)
№ | 所管課 | 業務名 | 契約金額 |
1 | 行政管理課 | 区役所間連絡業務 | 2,490 |
2 | 行政管理課 | 地区センター文書送受業務 | 1,747 |
3 | 行政管理課 | 静岡市xx書館管理業務 | 1,306 |
4 | 情報管理課 | 財務会計システム機能改修(第1回)業務 | 3,444 |
5 | 情報管理課 | xx庁舎用無停電電源装置及び空調機の保守業務 | 1,419 |
6 | 情報管理課 | 人事給与システムソフトウエア保守業務 | 5,932 |
7 | 情報管理課 | 静岡市文書管理システムパッケージ保守業務 | 4,882 |
8 | 情報管理課 | 財務会計システム機器等保守業務 | 5,477 |
9 | 情報管理課 | 財務会計システム保守運用支援業務 | 13,849 |
10 | 情報管理課 | 市政総合ネットワーク保守及び機器保守業務 | 13,645 |
11 | 情報管理課 | ネットワーク管理プログラム保守業務 | 2,364 |
12 | 情報管理課 | 総合行政ネットワーク(LGWAN)機器保守業務 | 1,253 |
13 | 情報管理課 | 光ファイバー保守業務 | 2,576 |
14 | 情報管理課 | xx地区ネットワーク機器等保守及び運用管理業務 | 20,674 |
15 | 情報管理課 | 市政総合ネットワークパソコン等保守業務 | 1,386 |
16 | 情報管理課 | 公的個人認証サービス提供用機器保守業務 | 1,273 |
17 | 情報管理課 | 口座振替データ伝送代行業務 | 1,575 |
18 | 情報管理課 | 財務会計システム機器等更改に伴う設定等業務 | 49,980 |
19 | 情報管理課 | 公衆無線LANポータルサイト構築等業務 | 3,979 |
20 | 管財課 | 静岡庁舎中央監視制御保守点検業務 | 2,766 |
21 | 管財課 | 静岡庁舎建築設備運転保守管理業務 | 101,304 |
22 | 管財課 | 静岡庁舎新館地下駐車場管理業務 | 30,473 |
23 | 管財課 | 静岡庁舎一般廃棄物収集運搬業務 | 1,953 |
24 | 公営競技事務所 | 静岡競輪開催業務等一括委託業務に関する平成 25 年度 年次委託業務 | 825,327 |
25 | 公営競技事務所 | 平成 25 年度静岡競輪場選手宿舎等管理運営業務 | 64,359 |
26 | 納税課 | 市税収納支援システムの運用に伴う技術支援業務 | 8,891 |
№ | 所管課 | 業務名 | 契約金額 |
27 | 納税課 | 電話催告支援システム機器等の保守業務 | 1,523 |
28 | 納税課 | 市税収納支援システム延滞金法改正対応業務 | 5,828 |
29 | 納税課 | 市税収納支援システム一斉催告書機能追加業務 | 4,694 |
30 | 納税課 | 市税収納支援システム還付業務機能追加業務 | 3,990 |
31 | 納税課 | 市税収納支援システム機器更改に係る動作検証・切替支 援業務 | 1,757 |
32 | 市民生活課 | 静岡市戦没戦災等戦争犠牲者慰霊行事実施業務 | 2,999 |
33 | 区政課 | 静岡市霊園管理業務 | 12,652 |
34 | 男女参画・市民協働推 進課 | 静岡市女性会館図書情報システム保守業務 | 1,046 |
35 | 文化振興課 | 静岡市民ギャラリー運営等業務 | 5,166 |
36 | 文化振興課 | 文化活動振興事業業務 | 27,000 |
37 | 文化振興課 | xxx文学記念館管理運営業務 | 3,036 |
38 | 文化振興課 | 静岡市xx文化会館 PFI 維持管理・運営事業モニタリン グ支援業務 | 1,365 |
39 | 文化振興課 | 静岡市民文化会館前駐車場使用料徴収業務 | 16,480 |
40 | 文化振興課 | 静岡科学館展示物更新業務 | 39,998 |
41 | 文化振興課 | 静岡音楽館特殊建築物定期点検外壁打診調査業務 | 1,050 |
42 | 生涯学習推進課 | 静岡市生涯学習センター、女性会館及び南部勤労者福祉 センター使用料徴収事務 | 5,409 |
43 | 生涯学習推進課 | xx区生涯学習交流館使用料徴収事務 | 9,291 |
44 | 生涯学習推進課 | 静岡市生涯学習センター社会教育事業企画運営業務 | 5,880 |
45 | 生涯学習推進課 | 静岡xx生涯学習交流館生涯学習事業企画運営業務 | 9,628 |
46 | 文化財課 | 旧マッケンジー邸管理業務 | 2,849 |
47 | 文化財課 | 市内遺跡出土遺物保存処理業務 | 1,809 |
48 | 文化財課 | xx遺跡発掘調査業務 | 60,900 |
49 | 文化財課 | 静岡市xxxxガイダンスブース観光案内・管理業務 | 3,202 |
50 | 文化財課 | 一丁田遺跡(10・12 区)発掘調査業務 | 81,900 |
51 | スポーツ振興課 | ふれあい健康増進館使用料徴収業務 | 1,489 |
52 | スポーツ振興課 | xxxxx運動公園球技場・庭球場外2件使用料徴収事 務 | 1,481 |
53 | スポーツ振興課 | xxxxxxスポーツ広場トイレ維持管理業務 | 2,625 |
54 | スポーツ振興課 | 静岡市体育館及び総合運動場使用料徴収事務 | 6,179 |
55 | xxx動物園 | xxx動物園園内管理業務 | 177,849 |
56 | xxx動物園 | xxx動物園園内植栽管理等業務 | 5,502 |
57 | 環境保全課 | 大気汚染自動測定記録計定期点検等業務(xx製作所製) | 6,090 |
58 | 福祉総務課 | 特殊建築物定期点検外壁全面打診調査業務(中央福祉セ ンター他1件) | 3,433 |
59 | 障害者福祉課 | 静岡市手話奉仕員養成講座(入門課程)業務 | 1,362 |
60 | 障害者福祉課 | 静岡市障害者等相談支援事業(葵区・身体) | 13,725 |
61 | 障害者福祉課 | 静岡市障害者相談支援事業(駿河区・身体) | 13,725 |
62 | 障害者福祉課 | 静岡市障害者相談支援事業(xx区・身体) | 13,650 |
63 | 障害者福祉課 | 静岡市障害者相談支援事業(葵区・知的) | 11,804 |
64 | 障害者福祉課 | 静岡市障害者相談支援事業(xx区・知的) | 11,799 |
65 | 障害者福祉課 | 静岡市障害者相談支援事業(駿河区・知的) | 12,902 |
66 | 障害者福祉課 | 静岡市障害者相談支援事業(重心) | 6,230 |
№ | 所管課 | 業務名 | 契約金額 |
67 | 高齢者福祉課 | 静岡市ひとり暮らし高齢者等緊急通報体制整備事業(そ の7・8) | 7,754 |
68 | 児童相談所 | 里親家庭支援業務 | 11,403 |
69 | 健康づくり推進課 | 健康増進システムソフトウエア保守委託業務 | 10,147 |
70 | 駿河健康支援課 | 静岡市南部保健福祉センター外壁全面打診調査業務 | 1,260 |
71 | xx健康支援課 | xx保健福祉センター空調設備保守点検業務 | 4,095 |
72 | 保健所生活衛生課 | 災害時医療用セット保守更新等業務 | 8,242 |
73 | 静岡病院病院総務課 | 静岡病院遠隔画像診断業務 | 79,500 |
74 | 静岡病院病院総務課 | 静岡病院外来看護事務支援業務 | 99,127 |
75 | 静岡病院病院総務課 | 静岡病院給食業務 | 106,515 |
76 | 静岡病院病院総務課 | 静岡病院看護補助派遣業務その1 | 25,739 |
77 | 静岡病院病院総務課 | 静岡病院看護補助派遣業務その2 | 44,252 |
78 | 静岡病院病院総務課 | 静岡病院給食業務その2 | 38,087 |
79 | 静岡病院病院総務課 | 静岡病院給食業務その4 | 73,973 |
80 | 静岡病院病院施設課 | CT 装置保守点検業務(GE) | 34,826 |
81 | 静岡病院病院施設課 | 施設管理業務 | 172,620 |
82 | 静岡病院医事課 | 静岡病院クラーク業務 | 105,867 |
83 | 静岡病院医事課 | 静岡病院医事業務 | 183,645 |
84 | 静岡病院医事課 | 静岡病院病歴室業務 | 21,420 |
85 | xx病院病院総務課 | xx病院外来看護事務支援・医療補助業務 | 105,284 |
86 | xx病院病院総務課 | xx病院患者給食業務 | 219,960 |
87 | xx病院医事課 | xx病院医事業務 | 193,761 |
88 | xx病院医事課 | xx病院DPC運用支援業務 | 21,735 |
89 | 産業政策課 | 静岡市中小企業融資制度受付業務 | 5,995 |
90 | 産業政策課 | クリエイティブ産業担い手育成事業業務 | 20,516 |
91 | 産業振興課 | 静岡市工芸と歴史の体験施設「xxx宿」使用料徴収事 務 | 1,680 |
92 | 産業振興課 | 駿府楽市「特産品展示コーナー」管理運営業務 | 16,947 |
93 | 観光・シティプロモー ション課 | 駿府浪漫バス運行業務 | 20,861 |
94 | 観光・シティプロモー ション課 | 静岡駅xx情報提供コーナー管理運営業務 | 7,099 |
95 | 観光・シティプロモー ション課 | 静岡市駿府城跡観光バス駐車場管理運営業務 | 5,724 |
96 | xx港振興課 | 平成 25 年度 経商港委第2号 xx都心ウォーターフ ロント活性化検討調査委託 | 27,531 |
97 | 中央卸売市場 | 汚水処理場運転管理業務 | 12,600 |
98 | 交通政策課 | 静岡地区放置自転車等指導警告業務 | 25,975 |
99 | 交通政策課 | 静岡地区放置自転車等移送業務 | 23,415 |
100 | 公園整備課 | 葵区公園除草清掃等管理業務 | 17,031 |
101 | 公園整備課 | 公園緑地樹木等管理業務その 2 | 24,966 |
102 | 公園整備課 | 公園緑地樹木等管理業務その 6 | 23,730 |
103 | 公園整備課 | 街路樹管理業務その 1 | 14,813 |
104 | 公園整備課 | 街路樹管理業務その 2 | 11,271 |
105 | 公園整備課 | 街路樹管理業務その 3 | 14,490 |
106 | 公園整備課 | 街路樹管理業務その 4 | 14,385 |
№ | 所管課 | 業務名 | 契約金額 |
107 | 公園整備課 | 街路樹管理業務その 5 | 13,728 |
108 | 公園整備課 | 街路樹管理業務その 6 | 17,395 |
109 | 公園整備課 | 街路樹管理業務その 7 | 13,233 |
110 | 公園整備課 | 街路樹管理業務その 8 | 12,075 |
111 | 公園整備課 | 街路樹管理業務その 9 | 12,813 |
112 | 公園整備課 | 街路樹管理業務その 10 | 15,952 |
113 | 公園整備課 | 街路樹管理業務その 11 | 17,756 |
114 | 都市計画事務所 | xx区公園除草清掃等管理業務 | 30,398 |
115 | 都市計画事務所 | xx区内放置自転車等指導撤去業務 | 6,300 |
116 | 道路計画課 | 平成 25 年度 道計委第 1 号 道路工事に伴う現場監理業 務委託 | 20,265 |
117 | 道路計画課 | 平成 25 年度 道計委第 2 号 「道の駅」宇津ノ谷峠管理 業務 | 7,035 |
118 | 道路保全課 | 道路パトロール管理業務 | 10,049 |
119 | 駿河道路整備課 | 平成 25 年度 維駿委第 23 号 道路構造物復旧業務(駿 河3工区その2) | 5,341 |
120 | 駿河道路整備課 | 平成 25 年度 維駿委第3号 道路構造物復旧業務(駿河 3工区その1) | 8,724 |
121 | 葵区地域総務課 | 平成 25 年度 xx地委第 10 号 葵区地域情報マップ作 製業務 | 2,362 |
122 | 葵区地域総務課 | 平成 25 年度 xx地委第1号 行政文書配付業務 | 6,048 |
123 | 駿河区地域総務課 | 平成 25 年度 駿ま委第1号 行政文書配付業務 | 3,248 |
124 | xx区地域総務課 | 平成 25 年度 清地委第8号 行政文書配付業務 | 6,022 |
125 | 指令課 | 映像伝送システム保守点検業務 | 18,900 |
126 | 指令課 | 消防総合情報システム保守点検業務 | 99,750 |
127 | 指令課 | 消防総合情報システム支援系端末更新調整業務 | 1,969 |
128 | 指令課 | 静岡地域消防総合情報システム実施設計業務 | 8,085 |
129 | 営業課 | 水道事業及び下水道事業に係る検針事務委託(xx区) | 26,905 |
130 | 営業課 | 水道料金及び下水道使用料徴収システム業務委託 | 85,549 |
131 | 営業課 | 水道事業及び下水道事業に係る検針事務委託(葵区、駿 河区) | 48,892 |
132 | 営業課 | 水道事業に係る検針事務委託(xx地区) | 1,548 |
133 | 営業課 | 水道及び下水道未納料金収納等業務 | 135,293 |
134 | 営業課 | 新水道料金及び下水道使用料徴収システム保守業務委託 | 3,644 |
135 | 営業課 | 消費税率変更に伴う新水道料金及び下水道使用料徴収シ ステム改修業務委託 | 8,610 |
136 | 給水装置課 | 水道メーター検満取替等及びメーター取付ネジ取替業務 | 295,250 |
137 | 水道施設課 | xx取水場外 10 施設送配水ポンプ設備点検業務委託 | 3,434 |
138 | 下水道施設課 | xx南部・北部浄化センター及びポンプ場外 運転管理業 務 | 409,500 |
139 | 下水道施設課 | 城北浄化センター 脱水汚泥運搬業務 | 14,093 |
140 | 下水道施設課 | xx北部・静清浄化センター築地外6ポンプ場及び花の 木雨水ポンプ所 沈砂・しさ運搬処分業務 | 2,734 |
141 | 下水道施設課 | 高松・城北浄化センター及びxx雨水・xxx雨水ポン プ場 沈砂・しさ運搬業務 | 2,394 |
142 | 下水道施設課 | xx南部浄化センター 脱水汚泥運搬処分業務 | 97,441 |
143 | 下水道施設課 | xx浄化センター 水処理及びポンプ場外運転管理業務 | 133,350 |
№ | 所管課 | 業務名 | 契約金額 |
144 | 下水道施設課 | 静清浄化センター 管理業務 | 299,250 |
145 | 下水道施設課 | 城北外2浄化センター及び築地・xx雨水ポンプ場土木 構造物継手部耐震化実施設計(詳細設計)業務委託 | 16,464 |
146 | 教育総務課 | 教育委員会文書送達業務委託 | 9,671 |
147 | 教育総務課 | 市立高等学校授業料徴収管理システム開発業務 | 1,438 |
148 | 教育施設課 | 学校等可燃ごみ収集運搬業務その1 | 12,071 |
149 | 教育施設課 | 学校等可燃ごみ収集運搬業務その2 | 5,116 |
150 | 教育施設課 | 静岡市立玉川小学校外 3 校特殊建築物定期点検外壁打診 調査業務委託 | 5,544 |
151 | 教育施設課 | xxxxxxxxxxxx 0 住宅特殊建築物定期点検外 壁打診調査業務委託 | 3,759 |
152 | 教育施設課 | 静岡市立xxxx小学校外 2 校特殊建築物定期点検外壁 打診調査業務委託 | 11,025 |
153 | 教育施設課 | 静岡市立xxxx小学校外 3 校特殊建築物定期点検外壁 打診調査業務委託 | 10,447 |
154 | 教育施設課 | 静岡市立xxxxx小学校外 5 校特殊建築物定期点検外 壁打診調査業務委託 | 15,225 |
155 | 教育施設課 | 静岡市立東xx中学校外 2 校特殊建築物定期点検外壁打 診調査業務委託 | 13,755 |
156 | 教育施設課 | 静岡市立xxx小学校外 1 校特殊建築物定期点検外壁打 診調査業務委託 | 7,329 |
157 | 教育施設課 | 静岡市立xxxx小学校外1校特殊建築物定期点検外壁 打診調査業務委託 | 9,429 |
158 | 教育施設課 | 静岡市立xxxx小学校外1校特殊建築物定期点検外壁 打診調査業務委託 | 10,237 |
159 | 教育施設課 | 静岡市立xxx小学校外2校特殊建築物定期点検外壁打 診調査業務委託 | 13,597 |
160 | 教育施設課 | 静岡市立xx西小学校外1校特殊建築物定期点検外壁打 診調査業務委託 | 10,500 |
161 | 教育施設課 | 静岡市立xx西小学校外2校特殊建築物定期点検外壁打 診調査業務委託 | 7,119 |
162 | 教育施設課 | 静岡市立xxxx小学校外4校特殊建築物定期点検外壁 打診調査業務委託 | 13,650 |
163 | 教育施設課 | 静岡市立xx中学校外2校特殊建築物定期点検外壁打診 調査業務委託 | 7,875 |
164 | 学校給食課 | 学校給食配送業務 | 101,835 |
165 | 学校給食課 | 学校給食用物資購入事務及び小・中学校給食補助業務 | 147,710 |
166 | 学校給食課 | 東部・北部・中xx学校給食センター汚水処理施設管理 運転業務 | 15,391 |
167 | 学校給食課 | 中xx学校給食センター給食調理等業務 | 252,000 |
168 | 中央図書館 | 平成 25 年度教図委第 21 号静岡市立図書館電算システム 保守・運用支援業務 | 14,286 |
169 | 中央図書館 | 平成 25 年度教図委第 22 号御幸町図書館データベース閲 覧システム保守業務 | 4,399 |
B.監査結果
監査の結果は、監査人の判断により、次の2つに分類している。
「指摘事項」 … 事務の執行について、措置を講ずる必要がある事項
「 意 見 」 … 事務の執行について、参考にしていただきたい事項
Ⅰ.監査結果のまとめ(総括)
監査結果の詳細は、「Ⅱ.監査結果(個別各論)」に記載のとおりであるが、ここでは、監査の結果、個別に取り上げられた問題点を全体的な視点から整理して、監査結果のまとめ(総括)として記載している。
委託契約は件数が多く、内容も多岐にわたっているが、個別の監査結果を通して全体を見てみると、共通の問題点、共通の要因も多く見受けられる。今回の監査結果の内容を俯瞰し、共通点を整理してみると、主として次の3つの問題に集約することができる。
1.委託業務に対する管理意識の欠如
2.職員の理解不足
3.前例踏襲となっている事務の執行
1.委託業務に対する管理意識の欠如
今回の監査結果を通して、監査人が一番気になったのがこの問題である。 委託業務に対する管理意識の欠如から生じていると思われる問題が随所に見
受けられた。具体的には、所管課が委託業務の事実関係を把握していないもの、業務への取り組み姿勢に問題があると思われたもの、コスト削減への取り組み意識が不十分と思われるものなどが挙げられる。
「Ⅱ.監査結果(個別各論)」のうち、委託業務に対する管理意識の欠如に関連していると考えられる指摘事項は、次のとおりである。
問題点(要約) | 該当 ページ |
●所管課が事実関係を把握・認識していない。 ・再委託が行われているという事実を 17 年間把握していなかった。 ・事実確認が不十分であり、特記仕様書に虚偽の記載がなされていた。 | - |
30 | |
97 |
問題点(要約) | 該当 ページ |
・主たる業務を再委託している(市の禁止事項)という事実認識がなかった。 ・積算と実績とが乖離しているという事実認識がなかった。 | 55,61 |
48 | |
●業務への取り組み姿勢に問題があると思われる。 ・「来客数の減少要因を調査したがその理由が見当たらない」と結論づけている。 ・「他の課ではどのような対応をしているか分かりませんが、当課ではそのような分析を行っておりません」と回答があった。 ・工事業者等を入館者数に含めたうえ、事業の成果をA評価としている。 ・契約課からの通知内容について実施を怠っていた。 | - |
68 | |
71 | |
107 | |
32 | |
●委託料の削減について、十分に検討されていない。 ・現状分析、積算方法などを見直すことにより、コスト削減の余地がある。 | - |
36,48,63 ,79,100, 107,115, 146,154, 155,159 | |
●事業の事後的な分析・評価が適切ではなく、翌期の対応が十分に検討されていない(PDCAサイクルが成り立っていない)。 ・委託料の積算と実績の比較分析を行っていない。 ・類似業務の契約内容について比較検討が行われていない。 ・受託者から業務に役立つ有用な情報が報告されていない。 ・利用者数が減少しているが、翌期の対応が十分に検討されていない。 | - |
93 | |
157 | |
67,76, 121 | |
130 | |
●軽率と思われる事務手続の不備がある。 ・契約書に編纂もれの書類があった。 ・見積執行の実施時間の記載が不適切であった。 ・積算金額の算定根拠資料がない。 ・収入印紙の貼付もれがあった。 | - |
124 | |
82 | |
90 | |
186 |
2.職員の理解不足
次に、委託業務の契約内容、市の基本的な方針や定められた事務手続などについて、職員の理解が不足しているために、問題が生じていると思われるものが散見された。
「Ⅱ.監査結果(個別各論)」のうち、職員の理解不足に関連していると考えられる指摘事項は、次のとおりである。
問題点(要約) | 該当 ページ |
●委託業務の契約内容を理解していない。 ・契約違反(再委託の承認なし)が 17 年間続いていた。 ・契約違反(契約書で禁止している再委託が行われていた)があった。 | - |
31 | |
52 | |
●市の再委託に対する基本的な考え方について、理解が不十分である。 ・再委託は原則禁止という市のルールの認識不足がうかがわれる。 ・主たる業務の再委託(市の禁止事項)と考えられるものがある。 | - |
54 | |
33 | |
●委託代金の支払について、地方自治法の趣旨の理解が不十分である。 ・前金払いを適用する理由の説明が不十分である。 | - |
66,75, 85,89, 100,113, 118 | |
●マニュアルに定められた事務手続の理解が不十分である。 ・参考見積書を徴取することなく、新規業務の積算価格を算定している。 ・再委託を行う場合に必要となる事務手続が行われていない。 | - |
100 | |
52,187, 188,189 |
3.前例踏襲となっている事務の執行
委託業務の効率性、経済性、有効性の観点からすると、業務内容や積算などの見直しが必要と考えられるものがあったが、特に見直しが行われることなく、前年同様の処理が行われている例が多く見受けられた。
また、平成 25 年4月1日より「静岡市暴力団排除条例」が施行されたことに伴い、新たに追加された事務手続もあるが、これへの対応が出来ていないものもあった。これも前年と同じ処理をしていたことに起因する問題と考えられる。
「Ⅱ.監査結果(個別各論)」のうち、前例踏襲となっている事務の執行に関連していると考えられる指摘事項は、次のとおりである。
問題点(要約) | 該当 ページ |
●委託業務の設計、特に事業のあり方についての検討が不十分なまま、事業が実施されている。 ・市と学校給食会との間で給食費の取り扱いの明確な取り決めはない。 ・学校給食会に対し市の監査等は行われていない。 ・業務の発注形態が検討されていない。 ・代替的方法の検討が不十分である。 | - |
44 | |
44 | |
91 | |
110 |
問題点(要約) | 該当 ページ |
・区によって異なる取り扱いをする合理的な根拠はない。 ・不測の事態への対応が十分ではない。 ・委託先を私人から法人へ全面移行するための計画はない。 | 57 |
141 | |
161 | |
●委託業務の範囲、具体的内容が明確にされていないまま、事業が実施されている。 ・仕様書に具体的な業務内容が記載されていない。 ・市の委託業務と受託者独自の業務の範囲が明確にされていない。 | - |
47 | |
95 | |
●業務を委託する理由が明確に記載されていない状態で、委託業務の決裁承認が行われている。 ・委託の理由が記載されていない。 ・委託の理由の記載が適切なものではない。 ・委託の理由が具体的に記載されていない。 | - |
118,121 | |
85,88 | |
79,82, 108,109, 125 | |
●委託業務の事務手続に見直すべき点があるが、特に見直しの検討が行われていない。 ・委託先の管理運営費が委託費という名目で支払われている。 ・積算と実績とが乖離している。 ・積算価格の算定上、不要な調整が行われている。 ・仕様書にもとづく積算が行われていない。 ・仕様書と積算の整合性がとれていない。 ・市の委託業務と受託者の独自業務が合算された報告を受けている。 ・固定費を変動費的な費用として単価契約している。 | - |
42 | |
133 | |
184 | |
91 | |
136,137 | |
82 | |
57,150 | |
●新たな条例施行に対応して、新たに加わった事務手続ができていない。 ・再委託先から「暴力団排除に関する誓約書兼同意書」を入手していない。 | - |
190 |
以上、個別の監査結果から、共通する問題点を整理して見てきたが、このような問題の背景には、次のような要因が存在していると考えられる。
第一に、職員のローテーションにより、担当者が交代すると、業務に精通した者が現場から離れ、新たな担当者へと代わることで、委託業務に対する理解がいったんゼロの状態となってしまう。その際に、市のルール、契約、業務の内容等を詳しく理解しないまま、業務を引き継いでいるケースが発生していると考えられる。このような場合には、特に“前例踏襲”により、事務手続を執行している状態となりやすいはずである。
また、担当者の交代を何回か繰り返すことにより、委託業務を導入した当初にはあったはずの管理意識が、次第に希薄になっているものと考えられる。本来は市が行う業務であったものも、外部への委託が長期間続くと、その業務は、外部の業者が行うのが当たり前という感覚が、職員に生じてきていると推測される。
こうしたことが長期間をかけて積み重なり、委託業務の管理意識の欠如につながってきていると考える。
委託業務に対する職員の理解や管理意識が不足したまま、前例踏襲により、事務が執行されている状態は、委託業務の管理が形骸化していることに他ならない。つまり、民間委託の推進に伴い、委託料が増加し、委託業務の重要性が増す一方で、委託業務の管理は形骸化が進んでいるということである。
委託業務は、業務の実施主体が外部の業者であるとはいえ、業務を管理監督する責任は市にあるということを、職員があらためて認識するとともに、委託業務の管理体制を早急に強化することが必要である。
Ⅱ.監査結果(個別各論)
1.競争性の確保について
【現状】
「第2監査対象の概要」に記載したとおり、委託契約は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約の区分により締結される。地方自治法では、指名競争入札と随意契約は、「政令で定める場合に該当するときに限り」認められると規定している(第 234 条第2項)。したがって、原則的な契約方法は、一般競争入札であり、指名競争入札と随意契約は、例外的な方法であることがわかる。
静岡市の委託契約(平成 25 年度、1件 100 万円以上)について、契約区分別の件数、金額を見てみると、次のとおりである。
(平成 25 年度)
契約区分 | 件数 | 金額 | |||
件数(件) | 割合 | 金額(千円) | 割合 | ||
入 札 | 206 | 13.4% | 2,720,560 | 14.0% | |
随意契約 | プロポーザル方式 | 14 | 0.9% | 410,506 | 2.1% |
競争見積 | 670 | 43.7% | 5,102,343 | 26.3% | |
単独随意契約 | 644 | 42.0% | 11,174,894 | 57.6% | |
合計 | 1,534 | 100.0% | 19,408,303 | 100.0% |
入札(指名競争入札を含む)の占める割合は、件数、金額ともに 13~14%と低く、随意契約の占める割合が高くなっている。随意契約の内訳を見ると、競争見積と単独随意契約とが約半々の件数となっており、金額的には、単独随意契約の占める割合が高い。
次の表は、平成 16 年度と平成 25 年度の契約区分別の件数と金額とを比較したものである。
(契約件数)
契約区分 | 平成 16 年度 | 平成 25 年度 | 増減 | |||
件数(件) | 割合 | 件数(件) | 割合 | 件数(件) | ||
入 札 | 194 | 11.7% | 206 | 13.4% | +12 | |
随意契約 | プロポーザル方式 | - | -% | 14 | 0.9% | +14 |
競争見積 | 553 | 33.2% | 670 | 43.7% | +117 | |
単独随意契約 | 917 | 55.1% | 644 | 42.0% | △273 | |
合計 | 1,664 | 100.0% | 1,534 | 100.0% | △130 |
これを見ると、随意契約については、単独随意契約が減少し、競争見積が増加していることが把握できる。一方で、入札の件数は若干増加しているものの、特に大きな変化は生じていないといえる。
【指摘事項】
このように、静岡市では、競争見積の件数は増加傾向にあり、競争性の確保に向けて取り組んでいることは伺われる。しかし、平成 25 年度の入札(指名競争入札も含む)は、件数、金額ともに全体の 13~14%と低くなっている。
地方自治法では、一般競争入札が原則的な方法であり、指名競争入札や随意契約は、特別な理由がある場合に限り認められる例外的な方法として定めている。自治法の趣旨からすると、現状は、原則と例外が逆転している状況になっている。
これは、静岡市では入札の対象となる業務が、現状では 12 業務(借入契約も含む)に限定されていることに起因していると考えられる。
「xxxx財政改革推進大綱(平成 22 年度~平成 26 年度)」(平成 22 年3月)には、「本市が入札等を経て結ぶ契約については、その手続の透明性を確保するため、関係法令の趣旨を踏まえ、一般競争入札の比率をさらに高めていくように努めます。」と記載がある。自治法の趣旨に則り、一般競争入札の比率をさらに高めていくためには、競争入札の対象となる業務について見直しを行い、この拡大に取り組むことが必要と考える。
2.静岡庁舎新館地下駐車場管理業務
【概要】
委託業務名 | 静岡庁舎新館地下駐車場管理業務 |
積算金額 | 36,760,500 円 |
予定価格 | 36,760,500 円 |
契約額 | 30,473,100 円 |
担当課 | 財政局財政部管財課 |
委託先名 | 公益財団法人静岡市まちづくり公社 |
【事業の概要】
静岡庁舎新館地下1階来庁者駐車場の管理業務である。
【委託の理由】
委託の理由について、委託業務実施伺いには、次のとおり記載されている。
この業務は、市が直接実施するよりも業者へ委託する方が効率的であるため。
【委託業者の選定】
本業務は、単独随意契約により、(公財)静岡市まちづくり公社へ委託している。【見積参加者が1者である理由】について、見積参加者表には、次のとおり記載されている。
静岡庁舎新館地下駐車場は、来庁者駐車場であるとともに、地元商店街からの要望を受け、中心市街地への来客用として閉庁日に開放されているなど、中心市街地の活性化において貴重な資源となっている。
公益財団法人静岡市まちづくり公社(以下「公社」という。)は、中心市街地の活性化に関する法律(平成 10 年法律第 92 号)第 51 条に基づき、中心市街地の活性化を推進する役割を担う団体として、本市から「中心市街地整備推進機構」の指定を受けた唯一の団体であり、この目的に沿った「閉庁日の駐車場開放事業」を行っている団体である。
来庁者駐車場管理業務を委託するに際し、中心市街地活性化の観点から十分な管理能力を持ち、「閉庁日の駐車場開放事業」と併せ、開庁日・閉庁日を一
連の期間として効率的に管理できる者は、公社をおいてない。
(1)再委託の事実認識について
【現状】
この業務では、委託契約書第3条において、委託先は「事前に委託業務に従事する管理員の名簿を提出するもの」と定めている。この規定により、静岡市まちづくり公社は平成 25 年4月1日現在の「静岡庁舎新館地下駐車場勤務者名簿」を提出しており、所管課では、この名簿が同日付で供覧に付されている。
この名簿には、委託業務の従事者として、委託先である公社の職員4名のほか、静岡市シルバー人材センターの職員9名の氏名等も記載されている。つまり、この業務には、公社の職員だけではなく、シルバー人材センターの職員も従事していることになる。
この事実からすると、この業務では、委託先である公社からシルバー人材センターへ再委託が行われているのではないかと推測される。しかし、再委託の有無について、監査人が事前に調査した結果では、この業務に再委託はない、というのが所管課からの回答であった。
そこで、事実関係を確認するため、公社のほうへ再委託の有無について問い合わせたところ、一部の業務については、公社からシルバー人材センターへの再委託が行われていることが判明した。さらに、この再委託が何年前から行われていたかについても問い合わせたところ、次の回答があった。
現在把握しているのは 17 年前からです(それ以前から行っている可能性あり)。
つまり、所管課では、再委託が行われている事実について、最低でも 17 年間把握できていなかったということになる。
【指摘事項】
静岡市では、原則として、委託業務の再委託を禁止している。この業務で再委託が行われているという事実について、所管課が 17 年間把握していなかったことが監査の過程で判明した。これは、業務の委託者として、管理監督責任が果たせていないということに他ならない。
再委託が行われているという事実は、課内で供覧に付されている公社からの提出資料を見れば、容易に把握できるものである。委託業務の管理者として、通常の注意義務を長期にわたり怠っていたとしか言いようがない。
所管課による委託業務の管理体制を強化する必要がある。
(2)契約違反(再委託の承認)について
【現状】
静岡庁舎新館地下駐車場管理業務では、再委託について、委託契約書に次のように定めている。
(権利義務の譲渡等の禁止)
第 12 条 乙(公益財団法人静岡市まちづくり公社)は、この契約により生ずる権利若しくは義務を第三者に譲渡し、又は承継させてはならない。
2 乙は、第三者に対し、委託業務の全部若しくは一部の実施を委託し、又は
請け負わせてはならない。ただし、作業の一部について甲(静岡市)の承諾を得たときは、この限りではない。
上記第2項にある市の承諾につき、「委託契約その他各種契約における再委託の適正な執行について(通知)」(平成 23 年7月 19 日付 23 静財xx第 966 号)では、下記の事項を再委託の承認手続として定めている。
・再委託をする場合、あらかじめ承認申請書を提出させる。
・申請内容が再委託を承認する基準を満たしているか審査し、決裁後承認書を交付する。
しかし、前述のとおり、所管課では、再委託が行われている事実を把握できていなかったため、上記の手続は実施されていなかった。
【指摘事項】
この委託業務において、市の定めた再委託の承認手続が行われていないということは、公社からシルバー人材センターへの再委託は、市の承諾のないまま行われていたことになる。つまり、これは委託契約書第 12 条第2項に違反して
いることになる。この業務では、契約違反の状態が最低でも 17 年間は続いていたわけである。
再委託について、所管課による適正な承認手続を実施し、契約書の記載内容を遵守する必要がある。
(3)契約課からの通知の実施状況について
【現状】
前述の契約課による通知(平成 23 年 7 月 19 日付)では、再委託について、「最近、その承認等の契約事務について徹底されていないケースが見受けられるので、下記の点に注意し適正な執行をすること」と各課へ注意を促している。そして、注意事項の1つとして、次の記載がある。
6 その他
(2)現在契約中の業務について、未承認の再委託が行われていないか、再委託の手続が適正に行われているか確認すること。
【指摘事項】
前述のとおり、平成 26 年度まで所管課が再委託の事実を把握していなかった
ということは、この通知がなされた平成 23 年度において、上記の確認を怠っていたということになる。
所管課において、通知に記載された内容が確実に実施されるよう、管理体制を強化する必要がある。また、契約課においても、各課の実施状況を確かめ、確実な履行を求めることが必要と考える。
(4)主たる業務の再委託について
【現状】
1.再委託の業務内容
静岡市が公社へ委託している業務内容と、公社がシルバー人材センターへ再委託している業務内容を、業務仕様書より比較すると、次のとおりである。
委託(静岡市→公社) | 再委託(公社→シルバー) |
(1) 静岡庁舎新館地下駐車場(附帯設備及び備品を含む。以下、「地下駐車場」という。)の維持管理に関する業務 ① 地下駐車場の開場(午前 8 時 15 分)及び 閉場(午後 5 時 15 分)作業 ② 地下駐車場営業開始(終了)のための各種機器の始動(停止)及び切替作業 ③ 各種モニターの監視 ④ 設備及び機器の始業点検及び故障への対応(応急措置、関係部署への報告等) | (5) 駐車場の設備等について、供用日の始業時に点検を行い、破損個所を発見した場合は、速やかに臨時の処置をとるとともに振興公社へ報告する。 (6) 駐車場内、供用日に清掃し、常に清潔に保つこと。 |
⑤ 駐車場内の美化・環境整備業務 | |
⑥ その他維持管理に必要な業務 | |
(2) 地下駐車場利用者への応対等に関する業務 ① 駐車整理券の交付及び回収業務 市役所来庁者に限り駐車を許可し、甲の定める駐車整理券の交付及び回収事業を行う。駐車時間は1時間以内とする。 ② 利用者に対する案内業務 利用者からの問い合わせ等に親切かつ適切に応対するものとする。 ③ 駐車の拒否に関する業務 発火性等の危険物を積載した車両及び他 の車両に支障があると認められるときは、入庫を拒否すること。その他規格外の車両 | (1) 来庁者に限り許可し、駐車1時間以内とし、定められた駐車整理券の交付及び回収業務を行う。 |
(3) 発火性等の危険物を積載した車両及び車両に支障があると認めるときは、入庫を拒否すること。 |
委託(静岡市→公社) | 再委託(公社→シルバー) |
について適切に対応するものとする。 ④ 来庁車両に対する安全対策及び待機車両の整理業務 来庁車両の状況を把握し、進入車路(進入口から受付までの間を含む)を巡回して、待機車両の整理をする。また、来庁者の駐車が安全かつ円滑にできるよう適切な処 理をする。 ⑤ 保管車の保全管理 駐車場内で盗難等が発生しないよう駐車車両の施錠等について利用者への指導を行うものとする。 | (2) 来庁車両の状況を把握し、来庁者の駐車が安全かつ円滑に出来るよう適切な処置をする。 (4) 駐車場の利用料金は、無料とする。 |
(3) その他 以下省略 |
(注)上記「委託」については「静岡庁舎新館地下駐車場管理業務仕様書」、「再委託」については公社の作成した「仕様書」より掲載している。
仕様書によると、市が公社へ委託している業務の内容は、(1)地下駐車場の維持管理に関する業務、(2)地下駐車場利用者への応対等に関する業務、(3)その他の業務に大別される。
このうち、シルバー人材センターへ再委託されている業務を見ると、駐車整理券の交付及び回収業務、駐車場設備の点検など、委託業務の履行には必要不可欠と思われる業務も含まれている。また、「車両に支障があると認めるときは、入庫を拒否すること」のように、担当者の判断を必要とする業務も含まれていることがわかる。
2.再委託の業務時間
公社の作成した積算書によれば、シルバー人材センターの業務時間は、次のように見積もられている。
① 標準配置(月曜日~金曜日)
時間 | 人数 | 延時間数 | |
8:30~13:00 | 4.5 時間 | 3人 | 13.5 時間 |
9:30~13:00 | 3.5 時間 | 1人 | 3.5 時間 |
時間 | 人数 | 延時間数 | |
12:00~16:00 | 4.0 時間 | 1人 | 4.0 時間 |
13:00~17:00 | 4.0 時間 | 3人 | 12.0 時間 |
33.0 時間 |
駐車場供用日 243 日 × 33.0 時間 = 8,019.0 時間
② 水曜日と木曜日
時間 | 人数 | 延時間数 | |
8:00~13:00 | 5.0 時間 | 1人 | 5.0 時間 |
13:00~18:00 | 5.0 時間 | 1人 | 5.0 時間 |
10.0 時間 |
供用日のうち水・木曜日 102 日 × 10.0 時間 = 1,020.0 時間 以上①、②より ①8,019.0 時間+②1,020.0 時間=9,039.0 時間
このように、シルバー人材センターの業務時間は、9,039 時間と見積もられている。一方、市の積算書によれば、委託業務の時間数(総合計)は、15,965.5時間となっている。
業務時間数から見ると、再委託の割合は、全体の 56.6%(9,039 時間÷15,965.5時間)である。つまり、仕様書に記載された地下駐車場の維持管理、利用者への応対など、この業務の半分以上は、シルバー人材センターによって行われていることになる。
【指摘事項】
静岡市では、委託業務のうち一部の業務については、例外的に再委託することを認めているが、主たる業務の再委託は認めていない。所管課では、この再委託は、主たる業務の再委託にはあたらないと考えているとのことである。
しかし、これまで見てきたように、再委託の業務内容と業務時間を検討した結果からすると、この再委託は、市が禁止している主たる業務の再委託にあたるのではないかとも考えられる。
そのため、所管課で主たる業務の内容を再度検討し、それらの業務を明確にしたうえで、再委託が可能な業務と再委託できない業務(主たる業務)とを仕様書に明示しておくことが必要と考える。
(5)積算価格の見直しについて
【現状】
静岡市からまちづくり公社への委託、まちづくり公社からシルバー人材センターへの再委託では、人件費の積算は、次のように行われている。
〇静岡市からまちづくり公社への委託
(1)積算表
① 人件費
1,687 円×15,965.500 総合計時間=26,933,798.5 円
(平成 24 年度公共工事設計労務単価普通作業員 13,500 円/8 時間 1,687 円)
〇まちづくり公社からシルバー人材センターへの再委託
(2)積算書
一日当り(人件費)
( 820 円 × 33.0 時間 )= 27,060 円 ①標準配置
これによると、人件費の積算上、静岡市から公社への委託では、1時間当たりの単価は 1,687 円となっているが、公社からシルバー人材センターへの再委
託では 820 円となっている。
つまり、これは、シルバー人材センターが行っている業務について、市がシルバー人材センターへ直接発注すれば、単価 820 円で済んだところ、現状では、
これを単価 1,687 円で積算し、公社へ発注しているということである。この単価の違いによる影響額を試算すると、次のとおりである。
1.まちづくり公社からシルバー人材センターへの再委託(積算書)
1日当たり | |||||||
( | 820 円 | × | 33.0 時間 | ) | = | 27,060 円 | ①標準配置 |
( | 820 円 | × | 10.0 時間 | ) | = | 8,200 円 | ②水・木配置 |
( | 820 円 | × | 10.0 時間 | ) | = | 8,200 円 | ③夏期休暇要員 |
① | 27,060 円 | × | 243 日 | = | 6,575,580 円 | ||
② | 8,200 円 | × | 102 日 | = | 836,400 円 | ||
③ | 8,200 円 | × | 0 日 | = | 0 円 | ||
人件費合計 諸経費 5% | 7,411,980 円 370,599 円 |
積算額 消費税 | 7,782,579 円 389,128 円 | |
積算金額 | 8,171,707 円 | (※1) |
2.上記の単価を 820 円から 1,687 円に変更
1日当たり | |||||||
( | 1,687 円 | × | 33.0 時間 | ) | = | 55,671 円 | ①標準配置 |
( | 1,687 円 | × | 10.0 時間 | ) | = | 16,870 円 | ②水・木配置 |
( | 1,687 円 | × | 10.0 時間 | ) | = | 16,870 円 | ③夏期休暇要員 |
① | 55,671 円 | × | 243 日 | = | 13,528,053 円 | ||
② | 16,870 円 | × | 102 日 | = | 1,720,740 円 | ||
③ | 16,870 円 | × | 0 日 | = | 0 円 | ||
人件費合計 諸経費 5% | 15,248,793 円 762,440 円 | ||||||
積算額 消費税 | 16,011,233 円 800,561 円 | ||||||
積算金額 | 16,811,794 円 | (※2) | |||||
16,811,794 円(※2)- 8,171,707 円(※1)= | 8,640,087 円 |
この試算によれば、市がシルバー人材センターへ直接発注していたならば、積算ベースで最大 8,640,087 円の削減が可能であったことになる。また、委託先である公社は、シルバー人材センターへ再委託するだけで、最大(契約率 100%の場合で)同額の利益が発生することになる。
【指摘事項】
地方自治法第2条第 14 項では、「地方公共団体は、その事務を処理するに当っては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。」と定めている。また、地方財政法第4条第1項では、「地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要且つ最少の限度をこえて、これを支出してはならない。」と定めている。
この委託業務では、市の外郭団体であるまちづくり公社が、単価の低いシルバー人材センターへ再委託することにより、利益が生じている状況となってい
る。公社へ支払っている委託料は、地方自治法の言う「最少の経費」でもなければ、地方財政法の言う「必要且つ最少の限度」の経費でもないと考えられる。市は、業務を分割してシルバー人材センターへ直接発注するか、あるいは、
積算方法の見直しを行うことにより、委託料の削減を図る必要がある。
3.学校給食用物資購入事務及び小・中学校給食補助業務
【概要】
委託業務名 | 学校給食用物資購入事務及び小・中学校給食補助業務 |
積算金額 | 147,779,100 円 |
予定価格 | 147,779,100 円 |
契約額 | 147,710,000 円(当初契約額) 144,325,594 円(変更後契約額) |
担当課 | 教育委員会事務局教育部学校給食課 |
委託先名 | 静岡市学校給食会 |
【事業の概要】
①小・中学校の児童・生徒等に供給する学校給食用物資を購入する業務等
②学校給食センター及び業者から納入された学校給食用物資の受領業務
【委託等の理由】
委託の理由について、委託業務実施伺いには、次のとおり記載されている。
現有職員では当該業務の遂行は困難であり、人件費等の経費面を考慮すると、市が直接実施するよりも、他の者へ委託し、実施させる方が効率的であ
るため。
また、この事業では、前金払いが採用されている。委託業務実施伺いには、前金払いの理由として、次のとおり記載されている。
当該委託料は、人件費等の管理運営経費が主なものであり、通常払いでは業
務に支障をきたす恐れがあるため。
【委託業者の選定】
本業務は、単独随意契約により、静岡市学校給食会へ委託している。【見積参加者が1者である理由】について、見積参加者表には、次のとおり記載されている。
昭和 41 年 12 月 26 日文部省体育局長通知『学校給食用の物資の共同購入促進について』にて、「共同購入のための既存の組織たとえば市町村の学校給食会等の団体がある場合は、じゅうぶんな指導監督のもとに、その活用を図るこ
と。」とされているため。
【契約変更の理由】
契約変更の理由について、決裁書には、次のとおり記載されている。
原契約第6条3項に基づき、平成 26 年 3 月 31 日をもって完了する当該委託
業務の経費が確定し、精算した結果返納が生じたため。
「原契約第6条3項」の内容は、次のとおりである。
前項の規定による委託料については、委託業務遂行に要した経費を年度途中で仮精算ができるものとし、また、業務完了後、年間経費を精算し、その結果
残額を生じた場合、乙は、その残額を甲に返納しなければならない。
【受託者の概要】
受託者である静岡市学校給食会は、昭和 33 年に旧静岡市の学校給食センター化に合わせて、食材の一括購入を主な目的として設立された任意団体である。公益財団法人静岡県学校給食会の支部ではなく、独立した事業体である。
会員は各学校の校長個人であり、役員構成員は下記のとおりである。
役員名 | 人数 | 任命方法 | x x |
会 長 | 1名 | 静岡市校長会の選任した者 | 代表、会務の総理 |
副会長 | 3名 | 静岡市校長会の選任した者 1 名 静岡市PTA連絡協議会の役員静岡市教育部長 | 会長の職務代理 |
常務理事 | 1名 | 理事のうちから会長が選任 | 会長の指示を受け、 会務を処理する |
理事 | 若干名 | 会長が選任 | 会の運営に関すること。 |
監事 | 4名 | 静岡市立の幼稚園、小学校および中学校の長及び静岡市PTA連絡協議会役員から選任された者 静岡市教育施設課長 | 会の事業及び会計の監査 |
幹事 | 2名 | 学校給食課職員から会長が指名 | 連絡調整等 |
顧問 | 適宜 | 理事会の議決により会長が選任 | 参考意見等の陳述 |
(静岡市学校給食会規約第 4 条より)
静岡市学校給食会の事務室は、静岡市役所xx庁舎内にある。行政財産の目的外使用の許可を受け、庁舎8階の学校給食課(約 110 ㎡)のうち 10 ㎡を、使用料免除により使用している。
学校給食の経費について、学校給食法第 11 条第1項では、「学校給食の実施に必要な施設及び設備に要する経費並びに学校給食の運営に要する経費のうち政令で定めるものは、義務教育諸学校の設置者の負担とする。」と規定している。また、同条第2項では「前項に規定する経費以外の学校給食に要する経費(以下「学校給食費」という。)は、学校給食を受ける児童又は生徒の学校教育法第十六条 に規定する保護者の負担とする」としている。
静岡市では、保護者が負担する「学校給食費」は、給食の材料費だけとしており、その他の必要経費は、公費によってまかなうこととしている。各学校で保護者から収集した「学校給食費」は、静岡市学校給食会に集められ、学校給食会は、これを原資に給食の材料となる物資を購入している。ただし、xx区の単独調理校では、各校が直接、食材の発注、支払を行っているため、静岡市学校給食会の関与はない。
静岡市と静岡市学校給食会の関係は、次の図のとおりである。
保護者
給食費
学校
給食費
静岡市
静岡市学校給食会
委託契約※
延滞管理 延滞管理
※ 学校給食用物資購入事務及び小・中学校給食補助業務委託契約
(1)学校給食会の管理運営費について
【現状】
この委託契約は、市の積算金額と予定価格はともに 147,779,100 円であり、
契約金額(当初)は、学校給食会の予算額と同一の 147,710,000 円である。市の積算金額と給食会の予算額を比較すると、次のとおりとなる。
(単位:xx)
市の積算金額(予定価格) | 学校給食会の予算額(契約金額) | 差額 | ||
1.学校給食用物資購入事務 (直接費) 役員報酬等給料 手当 共済費(退職引当を除く)退職引当金 臨時職員雇用経費 (間接費)旅費 需用費 公認会計士(会計事務年間) その他役務費備品購入費 使用料及び賃借料学校消耗品配当金 2.小・中学校給食補助業務 (直接費)人件費 共済費 需用費 役務費 | 7,157 18,994 11,731 5,921 2,504 340 46,647 165 960 735 1,214 201 30 11,765 15,070 61,717 75,741 303 1,664 1,317 79,025 | 報酬 | 7,157 | - |
給料 | 18,689 | 305 | ||
職員手当 | 11,416 | 315 | ||
共済費 | 5,863 | 58 | ||
退職給与引当金繰入額 | 2,763 | △259 | ||
賃金 | 642 | △302 | ||
46,530 | 117 | |||
旅費 | 189 | △24 | ||
需用費 | 1,665 | △705 | ||
監査事務手数料 | 735 | - | ||
役務費 | 999 | 215 | ||
備品購入費 | 224 | △23 | ||
使用料及び賃借料 | 37 | △7 | ||
消耗品購入受託費 | 11,780 | △15 | ||
15,629 | △559 | |||
62,159 | △442 | |||
賃金 | 75,742 | △1 | ||
共済費 | - | 303 | ||
需用費 | 1,458 | 206 | ||
役務費 | 1,317 | - | ||
78,517 | 508 |
市の積算金額(予定価格) | 学校給食会の予算額(契約金額) | 差額 | ||
1+2 | 140,742 | 1+2 | 140,676 | 66 |
消費税等 | 7,037 | 公租公課 | 7,034 | 3 |
合計 | 147,779 | 合計 | 147,710 | 69 |
市の積算金額と学校給食会の予算金額とを項目別に比較してみると、個々に多少の差は出ているものの、トータルで見た場合には、その差額は 69,100 円しかなく、積算金額とほぼ同額での契約(契約率 99.9%)となっている。
ここでは、学校給食会の予算よりも、市の積算金額(=予定価格)のほうが高いため、給食会が予算と同額の見積もりを提示すれば、結果的には、予定価格の範囲内ということで、予算額と同一の契約が可能となる。つまり、この積算によれば、学校給食会の予算額が、そのまま契約金額となりうる状態であったといえる。
これらの金額の内訳を見ていくと、市の積算金額にも給食会の予算額にも、役員報酬、外部監査費用、備品購入費など、委託業務とは直接関係ない項目が含まれていることがわかる。これは、委託業務と直接関係のない費用が、市の委託費として支払われていることに他ならない。
【指摘事項】
このように、市が学校給食会へ支払っている委託費の中には、役員報酬、外部監査費用、備品購入費などが含まれていることが判明した。これらの費用は、静岡市学校給食会という組織の管理運営費であって、委託業務の対価ではない。つまり、学校給食会の管理運営費が、委託費という名目で支払われているということになる。この支払いは、実質的には、管理運営費の補助である。
現状の市の積算方法は、委託業務の対価を算定しているというよりは、結果として、学校給食会の予算とほぼ同額になるような金額を集計しているにすぎない。本来、委託料の積算は、仕様書に記載されている業務を遂行するために必要な費用を、個別に積み上げ算出するものである。
市は、現状の積算方法を見直し、適正な委託業務の対価を算定する必要がある。また、運営費を支出する場合には、委託費としてではなく、補助金等として支出の妥当性を検討する必要があると考える。
(2)静岡市と静岡市学校給食会の関係について
【現状】
学校
先に示したとおり、静岡市と静岡市学校給食会の関係は、次の図のとおりである(再掲)。
保護者
給食費
給食費※1
静岡市
静岡市学校給食会
委託契約※2
延滞管理 延滞管理
静岡市学校給食会の会計単位は、一般会計、受託会計、物資会計に区分されている。このうち、受託会計は、静岡市と委託契約を締結している「学校給食用物資購入事務及び小・中学校給食補助業務」の受託料を収入として(上記※
2)、静岡市学校給食会の管理、運営を行う会計である。また、物資会計は、保護者から収集した給食費を収入とし(上記※1)、学校給食の材料購入を行う会計である。そして、受託会計、物資会計以外の部分が一般会計である。
平成 25 年度の各会計の収入金額(決算額)は、以下のとおりである。
(単位:xx)
一般会計 | 受託会計 | 物資会計 | |||
基本財産収入 | 8 | 受託事業収入 | 144,325 | 給食費収入 | 1,840,152 |
業務外収入 | 703 | 業務外収入 | - | 業務外収入 | 13 |
収入金額 | 711 | 収入金額 | 144,325 | 収入金額 | 1,840,165 |
保護者から集めた給食費は、静岡市の歳入となるわけではなく、全額が学校給食会の収入となっている。この物資会計の給食費収入は、平成 25 年度の決算
額で 1,840 百万円、月額平均 153 百万円であり、学校給食会では、多額の資金が取り扱われていることがわかる。
その結果、学校給食会では、現金預金の残高も多くなっており、平成 26 年 3
月 31 日現在の残高は、次のとおりとなっている(なお、学校給食会の財務諸表については、公認会計士の監査を受けている)。
(単位:xx)
区分 | 一般会計 | 受託会計 | 物資会計※3 | 合計 |
流動資産 | ||||
現金預金 | 18,241 | 5,275 | 78,073 | 101,589 |
固定資産 | ||||
退職給与特定資産※1 | - | 33,071 | - | 33,071 |
基本金特定資産※2 | 42,700 | - | - | 42,700 |
60,941 | 38,346 | 78,073 | 177,360 |
※1 静岡市学校給食会職員の退職給付引当金(定期預金)
※2 不可避的に発生した事由により学校給食が提供できなかった場合に保護者への返金に備えるために保有(定期預金)
※3 物価急騰時における給食材料の購入に備えるために保有(普通預金と定期預金)
このように、静岡市学校給食会では、保護者から預かった多額の給食費が収入として計上され、多額の資金が取り扱われている。しかし、静岡市と静岡市学校給食会との関係は、先の図にあるとおり、「学校給食用物資購入事務及び小・中学校給食補助業務」の委託関係があるのみである。そこで、保護者から徴収した給食費が、市の収入ではなく、学校給食会の収入となる根拠、すなわち、最終的な徴収権者が学校給食会であるとする根拠について質問したところ、次の回答があった。
「学校給食用の物資の共同購入促進について 昭 41・12・26 国体 75 文部省体育局長から各都道府県教育委員会教育長あて」に基づき、静岡市学校給食会が共同購入を行っていることから、静岡市学校給食会の収入として納入してい
ます。
上記「学校給食用の物資の共同購入促進について」には次の記載がある。
共同購入事務は、原則として市町村が直接行うものとするが、共同購入のための既存の組織たとえば市町村の学校給食会等の団体がある場合は、じゅうぶ
んな指導監督のもとに、その活用を図ること。
これは、市の十分な指導監督のもとに、学校給食会の活用を図ることが、原則に対する例外として記載されているだけで、収入の帰属について記載したものではない。まして、静岡市と静岡市学校給食会との関係を示したものでもない。給食費の取り扱いについて、静岡市と静岡市学校給食会との間には、明文化された取り決めはないとのことであった。
【指摘事項①】
このように、保護者から徴収した学校給食費は、静岡市の収入となるわけではなく、静岡市学校給食会の収入となっており、学校給食会では多額の資金が取り扱われている。しかし、静岡市と学校給食会との関係は、業務の委託以外に明文化されたものはなく、給食費の取り扱いについては、明確な取り決めがない。
つまり、市と学校給食会には、何の取り決めもないにもかかわらず、市は、 保護者から預かった多額の給食費を学校給食会に全権委任している状態であり、不正事故等が生じた場合の責任関係も明確化されていないということになる。
保護者から多額の給食費を徴収している以上、市は、市民への説明責任を果たすことが必要である。静岡市と静岡市学校給食会との間で、学校給食費の取り扱いや両者の関係を明確にし、それらを明文化しておくことが必要と考える。
また、横浜市では「財団法人横浜市学校給食会のあり方について」(こども青少年・教育委員会資料 平成 23 年 12 月 12 日 教育委員会事務局)という文書を市のホームページで公開している。そこでは、給食費について、次のように記載している。
給食費については、現在、各学校長が管理する私会計で処理をしていますが、平成 22 年第4回定例会において「横浜市学校給食費の管理に関する条例」を制
定し、平成 24 年度から本市の歳入歳出予算に計上する公会計へ移行いたします。
静岡市においても、今後は、公会計への移行といった流れも視野に入れ、市と学校給食会のあり方について検討しておくことが必要と考える。
【指摘事項②】
学校給食会は、給食事業とは無関係の独立した収益事業があるわけではない。市は、委託費を通して、学校給食会の管理運営費を支払っており、無償で事務室として庁舎を使用することも許可している。学校給食会は、市からそのような援助を受けなければ、団体の運営を継続することは困難である。学校給食会は、実質的には、市の財政援助団体であると考える。
学校給食会が、市の財政的援助団体であれば、地方自治法 199 条第 7 項の規定により、監査を実施することが可能となるが、現状では、学校給食会は、市の財政援助団体と位置付けられているわけではない。
つまり、学校給食会では多額の資金が取り扱われているが、この保護者から預かった多額の資金について、市の監査等は行われていない状態となっている。
これは、市による学校給食会の管理運営費の援助が、補助金ではなく、委託費を通して行われてきたことに起因するものと考えられる。学校給食会が市の財政援助を必要とするのであれば、それは委託費ではなく、補助金として支出すべきである。それにより、市の財政援助団体として、必要に応じて監査を行うなど、市の積極的な管理監督を強化する必要があると考える。
(3)学校給食の安全検査について
【現状】
学校給食の食材の検査は、静岡市が管理を行っている。その内容は下記のとおりである。
内容 | 検査対象 | 実施者 |
放射性物質検査 | 調理された給食 | 静岡市 |
農薬検査 | 調理前の食材 | 学校給食会 |
安全証明書等の添付義務 | 購入前の食材 | 物資購入委員会(学校給食会が開催) |
細菌検査 | 調理された給食 | 静岡市が委託した検査機関 |
これらのうち、学校給食会が行う農薬検査は、食材購入後、年間5品目を抜き打ちで検査している。また、安全証明書の添付義務は、学校給食会が開催し、毎月行われる物資購入員会において、購入予定のすべての食材に、安全証明書や検査証明書が添付されていることを確認している。
しかし、委託業務の仕様書には「良質かつ新鮮な食材の選定を行うこと」という文言があるのみで、食品の安全検査について、具体的な記載はない。
【指摘事項】
学校給食の安全検査については、市が管理しているが、業務仕様書には、具体的な検査内容が記載されていないため、市と学校給食会との役割分担が不明確となっている。
食品の安全検査については、「良質かつ新鮮な食材の選定を行うこと」という包括的な文言ではなく、個別具体的な検査内容を記載することにより、学校給食会の役割を明確にしておくことが必要と考える。
4.東部・北部・中xx学校給食センター汚水処理施設管理運転業務
【概要】
委託業務名 | 東部・北部・中xx学校給食センター汚水処理施設x x運転業務 |
積算金額 | 16,220,400 円 |
予定価格 | 16,170,000 円 |
契約額 | 15,391,425 円 |
担当課 | 教育委員会事務局教育部学校給食課 |
委託先名 | 一般財団法人静岡市環境公社 |
【事業の概要】
施設の正常な機能を維持するための機器等の点検・調整及び放流水等の水質検査を行う。
【委託の理由】
委託の理由について、委託業務実施伺いには、次のとおり記載されている。
浄化槽法に規定する技術管理者等を、各学校給食センターに常時配置する
ことが困難であるため。
【委託業者の選定】
本業務は、単独随意契約により、一般財団法人静岡市環境公社へ委託している。【見積参加者が1者である理由】について、見積参加者表には、次のとおり記載されている。
当該業務に必要な事業登録、許可、資格及び作業車両を有している業者の中
で業務体制が整っているのは上記の1者のみであるため。
各処理施設によって、処理方法、使用する薬剤が異なるが、中xxの学校給食センター汚水処理施設のフローは、次の図のとおりである。
中xx学校給食センター除害施設フローシート
流入 240 ㎥/日
原水ポンプ槽
沈砂槽
P
流量調整槽
原水ポンプ
B
P
調整槽送風機
5 ㎜目スクリーン
移送ポンプ
汚水計量槽
第1生物流動
第2生物流動
消泡剤
タンク
P
消泡剤注入
ポンプ
菌移送ポンプ P
活性化槽送風機
P 消泡ポンプ
活性化
槽
ヒーター
株菌
培養液
タンク
P
タンク
M
B
メイン送風機
消泡ポンプ槽
活性化注入ポンプ
放流ポンプ槽
放流ポンプ
P
下水放流
(1)積算と実績の乖離について
【現状】
この業務では、前ページの図の左下にある「株菌タンク」と「培養液タンク」から、株菌液、培養液という2種類の薬剤が使用されている。
積算価格の算定上、これらの薬剤はそれぞれ 120ℓ 使用する予定となっている。しかし、実施報告書で報告された実際の使用量は各 36.5ℓ であり、予定使用量の 30%程度に過ぎなかった。これによる影響額は、次のとおりである。
(株菌液単価+培養液単価)×(設計書使用量―実際使用量)× 1.05
=(5,750 円+5,750 円)×(120-36.5)ℓ × 1.05
= 1,008,262 円
このように、薬剤の使用実績からすると、市の積算価格は 1,008,262 円高い
ものとなっている。この委託契約では、市の積算価格は 16,220,400 円、環境公
社の落札価格は 15,391,425 円であり、落札価格と積算金額の差は 828,975 円である。仮に薬剤の使用実績をもとに積算をしていた場合には、市の積算価格と予定価格は、公社の落札価格よりも低くなっていたことがわかる。
薬剤の使用量については、平成 25 年度には特別な事情は発生しておらず、こ
こ数年、特に大きな変動も生じていない。しかし、翌平成 26 年度の積算価格についても、薬剤の予定使用量はそれぞれ 120 ℓ として算定されていた。
【指摘事項①】
この業務において、薬剤の使用実績は、市が予定している使用量の 30%程度に過ぎず、その分、実態よりも、市の積算価格は高く算定されている。つまり、市の積算金額は、公社の実質的な負担額よりも高く見積もられており、契約金額も高いものとなっている。
これは、薬剤の使用量について、市の見積もりと環境公社の実績とが大きく乖離していることに起因するものである。積算金額については、環境公社の薬剤の使用実績を考慮して、算定する必要があると考える。
【指摘事項②】
この業務では、業務完了後に実施報告書を入手し、業務の実施状況について確認を行っている。しかし、所管課では、薬剤使用量について、積算と実績とが乖離していることに気づいてはいなかった。
実施報告書を入手する目的は、業務の適切な実施を確認することだけではなく、現状の問題点を改善し、次年度の仕様書等に反映させるという目的もあるはずである。前年度の実施報告書の結果を精査し、当初の設計と乖離している部分については、原因を究明し、次の年度の契約に反映させるという、PDC Aサイクルの確立に努める必要がある。
5.教育委員会文書送達業務委託
【概要】
委託業務名 | 教育委員会文書送達業務 |
積算金額 | 12,478,200 円 |
予定価格 | 11,550,000 円 |
契約額 | 9,671,760 円 |
担当課 | 教育委員会事務局教育部教育総務課 |
委託先名 | ㈱Q配サービス |
【事業の概要】
静岡市教育委員会と教育機関及び関連施設間における連絡文書等の送達業務。教育機関及び関連施設数は、147 機関とする。
【委託の理由】
委託の理由について、委託業務実施伺いには、次のとおり記載されている。
教育委員会と教育機関等間における事務処理を迅速かつ確実に行うため。また、本業務の送達文書には、「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書(信書)が含まれていることから、特定信書便事業
者による業務委託により文書送達を行う。
【委託業者の選定】
8者(3者入札、3者辞退、2者棄権)による競争見積りの結果、㈱Q配サービスが選定されている。
(1)契約違反(再委託)について
【現状】
業務の再委託について、委託契約書第9条には、次の記載がある。
受託者は、第三者に対し、委託業務の全部若しくは一部の実施を委託し、又は
請け負わせてはならない。
つまり、この委託契約では、業務の再委託を禁止している。しかし、監査の結果、業務の一部について、再委託が行われている事実が見受けられた。
先にも述べたとおり、静岡市では、委託業務の再委託については、原則として禁止している。ただし例外的に、「業務の性質や相手方の特殊性から、契約の履行確保を図るために、社会通念上妥当であると認められる場合」に限り、再委託を認めることとしている。
この場合には、契約書に「ただし、○○事業(業務)の一部についてあらかじめ静岡市の書面による承諾を受けた時はこの限りでない。」等の規定を設けておく必要がある。しかし、委託契約書には、再委託を例外的に認めるための規定が設けられていなかった。
また、再委託を承認するときには、所管課内での決裁や、再委託先から「暴力団員排除に関する誓約書兼同意書」を入手するなど、所定の事務手続が必要となるが、それらの手続も行われていなかった。
【指摘事項①】
この業務委託では、契約書において、再委託を禁止しているにもかかわらず、業務の一部が再委託されている。これは契約違反にあたる。再委託を行うのであれば、契約書の規定を変更しておく必要がある。
【指摘事項②】
また、再委託を実施するにあたり必要となる再委託の承認手続、必要書類の入手など、市の定めた事務手続が行われていない。再委託を行うのであれば、これらの事務手続についても、もれなく実施する必要がある。
(2)再委託が行われた経緯について
【現状】
業務の再委託が、契約書上、禁止されているにもかかわらず、行われていた経緯は、以下のとおりである。
〇平成 24 年度
平成 24 年度の契約後に、受託者から所管課の担当者に「教育委員会文書送達業務を当社(受託者)の請負が行うことは可能であるか」という質問が電話であり、当時の担当者は口頭でこれを了承した。
〇平成 25 年度
平成 25 年度も、競争見積により、同じ受託者と契約を締結している。ただし、担当者が、再委託が契約書第9条に違反していることに気づいたため、受託者に対し、第三者に請け負わせずに業務を履行することを要請した。
しかし、受託者は、前年度に担当者へ確認した際に、請負が行うことが可能である旨を確認しているとして、第三者に業務を請け負わせてしまった。
結果、所管課では、契約書第9条に反しているという事実を知りながらも、そのまま放置した状態が続いていた。
【指摘事項】
この業務では、契約書上、再委託の禁止を明記している。しかし、平成 24 年には、当時の担当者が受託者に対し、受託者の請負が業務を行うことは可能である旨の返答を口頭で行っている。受託者の請負に業務を行わせることが、契約書に違反していることは明らかであった。契約内容についての担当者の理解不足、再委託禁止という市のルールの認識不足がうかがわれる。
また、平成 25 年度においては、契約書に違反している事実を知りながら、結果的には、そのまま放置していたことにも問題がある。こうした問題を契約課に相談したうえで、受託先と話し合いをしていれば、事後的とはいえ、契約書の条項を変更する、再委託の承認手続を経るといった対応も可能であったはずである。契約書に違反しているという事実については、もっと重く受け取らなければならない。
このような事態を避けるため、委託契約の業務内容について、担当者の理解、認識を高めるとともに、契約課との連携についても、強化しておく必要があると考える。
(3)主たる業務の再委託について
【現状】
この委託契約の業務内容は、「静岡市教育委員会と教育機関等間における連絡文書等の送達」業務である。そして、再委託されている業務も「静岡市教育委員会と教育機関等間における連絡文書等の送達」業務である。
これは、主たる業務の再委託である。静岡市では、主たる業務の再委託を禁止している。つまり、この業務の再委託は、市が禁止している事項に該当する。
【指摘事項①】
所管課には、主たる業務を再委託しているという認識がなかったとのことである。課内において、市のルールの理解の徹底を図り、委託業務の管理体制を強化する必要があると考える。
【指摘事項②】
この業務では、市のルールに反し、主たる業務の再委託が行われていた。ただし、配送業には、貨物運送について、会社の協力個人事業主に委託する業界の慣行がある。特定信書便の認可を有する受託者が自社ですべての業務を行う場合と、会社の協力個人事業主に再委託する場合の経費を比較すると、再委託するほうが、50%近く経費を削減することができる。また、実務上、業務を再委託することによる弊害が、特に生じているわけでもない。
これらを考えると、主たる業務の再委託を行っていることが、静岡市のルールに抵触していること以外に実務上の問題はなく、現状のやり方のほうが、コスト効率もいいことがわかる。
主たる業務の再委託については、やはり、市のルールに抵触していることを理由に止めるべきなのか、あるいは、コスト効率等を考慮して継続するべきなのか、まずは所管課と契約課で検討する必要がある。そのうえで、主たる業務の再委託を継続すると決めた場合には、この再委託を例外的に妥当と判断した合理的な理由について、市民に対し明確に説明する必要があると考える。
6.学校等可燃ごみ収集運搬業務
【概要】
〇葵区・駿河区
委託業務名 | 学校等可燃ごみ収集運搬業務その1 |
積算金額 | 収集運搬1回あたり 27,300 円 |
予定価格 | 収集運搬1回あたり 27,300 円 |
契約額 | 収集運搬1回あたり 24,150 円 |
担当課 | 教育委員会事務局教育部教育施設課 |
委託先名 | 一般財団法人静岡市環境公社 |
〇xx区
委託業務名 | 学校等可燃ごみ収集運搬業務その2 |
積算金額 | 収集運搬1回あたり 17,010 円 |
予定価格 | 収集運搬1回あたり 17,010 円 |
契約額 | 収集運搬1回あたり 13,965 円 |
担当課 | 教育委員会事務局教育部教育施設課 |
委託先名 | ㈲xx商店 |
【事業の概要】
葵区・駿河区の市立小、中学校、幼稚園及び高等学校から排出される可燃ごみを収集し、市清掃工場等へ運搬する。
xx区(xx・xx地区を除く)の市立小、中学校、幼稚園及び高等学校から排出される可燃ごみを収集し、市清掃工場等へ運搬する。
【委託の理由】
委託の理由について、業務実施伺いには、ともに次のとおり記載されている。
一般廃棄物の収集・運搬は、許可をもつ特定の者でなければ取り扱いがで
きないため。
【委託業者の選定】
葵区・駿河区では、7者による競争見積りの結果、一般財団法人静岡市環境公社が選定されている。xx区では、5者による競争見積りの結果、㈲xx商店が選定されている。
(1)ごみ収集箱の取り扱いについて
【現状】
この委託契約は単価契約である。どのような契約が単価契約になるのかについて、特に規程は存在しないが、学校等可燃ごみ収集運搬業務が単価契約となっている理由は、以下の2点である。
1)業務の性質上、収集回数に応じて弾力的に金額が変動する(変動的な費用で構成されている)こと。
2)業務開始前において、ごみ収集運搬の年間見込回数を算出しているものの、
樹木の伐採等の臨時的な収集運搬が行われることから、業務が完了するまで収集運搬回数が確定しないこと。
積算上の単価の内訳は、以下のとおりである。
内容 | 葵・駿河区 | xx区 | 摘要 |
労務費 | 13,750 円 | 13,750 円 | 運転手、積込作業員 |
燃料費 | 1,245 円 | 1,245 円 | 軽油代 |
車両損料 | 500 円 | 500 円 | |
容器設置料 | 9,333 円 | ― | ※下記参照 |
委託原価計 | 24,828 円 | 15,495 円 | |
諸経費 | 1,241 円 | 774 円 | 委託原価計の 5% |
小計 | 26,069 円 | 16,269 円 | |
委託費計 | 26,000 円 | 16,200 円 | 100 円未満切り捨て |
消費税 | 1,300 円 | 810 円 | |
合計 | 27,300 円 | 17,010 円 |
※容器設置料はダストボックスの設置料総額(小売価格の 75%掛け)を耐用年数の5年で割り、年間予定収集回数(270 回)で除して、1回当たり金額を算出している。
これを見ると、葵・駿河区の予定価格単価は 27,300 円、xx区の予定価格単
価は 17,010 円と大きく乖離しており、葵・駿河区の単価は、xx区の単価よりも 60%高くなっていることがわかる。
この違いは、葵・駿河区には、xx区にはない「容器設置料」(とそれに伴う
「諸経費」、「消費税」)があることに起因している。「容器設置料」の「容器」とは、ごみ収集箱のことである。
ごみ収集箱の取り扱いについて、仕様書には、次のとおり記載されている。
葵・駿河区 | xx区 |
ごみ収集箱(プラスチック類の容器でキャスター及び蓋付きで、容量は 45 ㍑ごみ袋 30 袋相当が入る物)は、 受託者が用意する。 | ごみ収集箱(プラスチック類の容器でキャスター及び蓋付きで、容量は 45 ㍑ごみ袋 30 袋相当が入る物)は、 静岡市が用意する。 |
このように、仕様書では、葵・駿河区はごみ収集箱を受託者が用意するのに対し、xx区は静岡市が用意すると定められている。この取り扱いの違いによって、積算単価に差が生じている。
このごみ収集箱の設置料(容器設置料)は、ごみの収集回数に応じて金額が変動する変動費ではなく、収集回数とは関係なく一定金額の固定費である。積算金額の算定方法からしても、ごみ収集箱は、耐用年数5年の固定資産であることを前提としている。
しかし、この契約は単価契約であり、ごみ収集箱の支払金額は、収集回数によって変動することになる。前述のとおり、この契約が単価契約となっているのは、「業務の性質上、収集回数に応じて弾力的に金額が変動する(変動的な費用で構成されている)」からである。
固定費が単価の3分の1超を占めていながら、「変動的な費用で構成されている」として単価契約とすることは、整合性が欠けていると考えられる。
また、固定費を変動費的に取り扱う単価契約では、積算単価の算定に使用している年間予定収集回数よりも、実際の収集回数が上回った場合には、委託料の支払額が必要以上に大きくなってしまう。実際に、平成 25 年度の年間予定収
集回収は 270 回であったが、実際の収集回数は 296 回と実績の方が多くなっていた。年間予定収集回数は、曜日別ごみ収集日程表に基づいて算出した回数に、臨時収集の見込み回数を加算して算出しているが、ごみの量等の関係で、実際の収集回数のほうが、年間予定収集回数を上回る可能性は高いといえる。
【指摘事項①】
葵・駿河区の積算単価には、固定費が3分の1以上を占めている。多額の固定費を「変動費的な費用で構成されている」として単価契約することには、やはり無理があり、委託料が過大となる可能性も高い。
葵・駿河の変動費については単価、固定費については総価を前提として、積算方法等を見直す必要があると考える。
【指摘事項②】
この委託契約では、葵・駿河区では受託者がごみ収集箱を用意するのに対し、xx区では市が用意するものとしている。つまり、xx区では、市がごみ収集箱を購入し、それらは市の所有物となっているが、葵・駿河区では、委託業者がごみ収集箱を購入し、委託業者の所有物となっているということになる。
しかし、ごみ収集箱は、本来、学校や幼稚園に常備すべき固定資産のはずである。ごみ収集箱は、学校や幼稚園が固定資産として購入、管理すべきものであって、委託業者が購入し、学校に設置すべきものとは思えない。
葵・駿河区では、競争見積によって委託者を選定しているが、競争見積の結果、委託業者が変更すると、その都度、ごみ収集箱が取り替えられることになってしまう。ごみ収集箱が耐用年数の到来前であり、使用可能な状態であったとしても、それらを取り替えるというのは、本来ならば不要な行為である。
また、現状の方法では、葵・駿河区の業者は、ごみ収集箱を償却し終える前に、業務が終了してしまうリスクを負うことになるが、xx区の業者は、このようなリスクを負ってはいない。同じ市内の業務でありながら、業者間のxx性も保たれていない。
ごみ収集箱について、葵・駿河区と清水区とで、あえて異なる取り扱いをする合理的な根拠はないと考える。葵区・駿河区のごみ収集箱についても、xx区と同様、静岡市が用意すべきである。
7.区役所間連絡業務、地区センター文書送受業務
【概要】
委託業務名 | 区役所間連絡業務 | 地区センター文書送受業務 |
積算金額 | 2,723,918 円 | 1,904,202 円 |
予定価格 | 2,723,700 円 | 1,903,650 円 |
契約額 | 2,490,264 円 | 1,747,746 円 |
担当課 | 総務xxx管理部行政管理課 | |
委託先名 | ㈱Q配サービス |
【事業の概要】
(区役所間連絡業務)
葵区役所(静岡庁舎)、駿河区役所及びxx区役所(xx庁舎)における相互連絡文書等の送受(1日2回)
(地区センター文書送受業務)
文書集配センター(静岡庁舎)と各地区センター(xx、xx、玉川、xxx及び梅ヶ島)との週3回(月、水、金)の文書送受
【委託の理由】
委託の理由について、業務実施伺いには、ともに次のとおり記載されている。
年間を通した文書送受を外部に委託することで、効率的な運用と経費節減
を図る。
【委託業者の選定】
両業務ともに、5者(2者入札、2者辞退、1者棄権)による競争見積りの結果、㈱Q配サービスが選定されている。
(1)主たる業務の再委託について
【現状】
①区役所間連絡業務
「区役所間連絡業務仕様書」には、業務の概要として、次のとおり記載されている。
(業務の概要)
1 乙は、甲の指示に従い、甲の相互連絡文書等を区役所間において送受する業務(以下「業務」という。)を履行する。
※ 甲は静岡市、乙は業務の受託者をいう。
業務の受託者である㈱Q配サービスが再委託を行うにあたり、市へ提出した
「一部再委託承認申請書」には、「一部再委託する業務内容」として、次の記載がある。
(一部再委託する業務内容)区役所間連絡文書等の送受
この再委託の承認申請を受け、所管課の決裁が行われているが、決裁書には
「承認理由」として次の記載がある。
職員が職務上作成し、又は取得した文書を、各区役所間において送受する業
務は、安定的且つ円滑に遂行されなければならないことから、一部再委託することは妥当と判断される。
②地区センター文書送受業務
また、「地区センター文書送受業務仕様書」には、業務の概要として、次のとおり記載されている。
(業務の概要)
1 乙は、甲の指示に従い、甲の相互連絡文書等を文書集配センターと各地区センター間において送受する業務(以下「業務」という。)を履行する。
※ 甲は静岡市、乙は業務の受託者をいう。
同じく業務の受託者である㈱Q配サービスが再委託を行うにあたり、市へ提出した「一部再委託承認申請書」には、「一部再委託する業務内容」として、次の記載がある。
(一部再委託する業務内容)地区センター文書等の送受
この再委託の承認申請を受け、所管課の決裁が行われているが、決裁書には
「承認理由」として次の記載がある。
職員が職務上作成し、又は取得した文書を、静岡庁舎と各地区センター間において送受する業務は、安定的且つ円滑に遂行されなければならないことから、
一部再委託することは妥当と判断される。
【指摘事項①】
区役所間連絡業務では、「区役所間連絡文書等の送受」が再委託されており、地区センター文書送受業務では、「地区センター文書等の送受」が再委託されている。どちらも再委託されているのは、主たる業務そのものである。静岡市では、主たる業務の再委託を禁止している。
所管課には、主たる業務を再委託しているという認識がなかったとのことである。課内において、市のルールの理解の徹底を図り、委託業務の管理体制を強化する必要があると考える。
【指摘事項②】
この2業務では、市のルールに反し、主たる業務の再委託が行われていたことは事実である。ただし、配送業には、貨物運送について、会社の協力個人事業主に委託する業界の慣行がある。特定信書便の認可を有する受託者が自社ですべての業務を行う場合と、会社の協力個人事業主に再委託する場合の経費を比較すると、再委託するほうが、50%近く経費を削減することができる。また、実務上、業務を再委託することによる弊害が、特に生じているわけでもない。
これらを考えると、主たる業務の再委託を行っていることが、静岡市のルールに抵触していること以外に実務上の問題はなく、現状のやり方のほうが、コスト効率もいいことがわかる。
主たる業務の再委託については、やはり、市のルールに抵触していることを理由に止めるべきなのか、あるいは、コスト効率等を考慮して継続するべきなのか、まずは所管課と契約課で検討する必要がある。そのうえで、主たる業務の再委託を継続すると決めた場合には、この再委託を例外的に妥当と判断した合理的な理由について、市民に対し明確に説明する必要があると考える。
(2)積算価格の算定方法について
【現状】
区役所間連絡業務では、車両経費の積算について、次のとおり算定している。
4,866 円(※)× 244 日 = 1,187,304 円
※HPより、レンタカー会社5社の単価を調査し、平均した金額である。
この車両経費について、輸送原価計算を行う際の指標となる計算方法(注)により算出すると、積算金額は次のとおりとなる。
(注)「中小トラック輸送事業者のための経営改善対策ガイドブック(輸送原価計算の基本と留意点)」(社団法人全日本トラック協会発行)による。
内容 | 経費 | 計算方法 |
減価償却費 | 26,000 円/月 | 車両の取得原価 936,000 円÷使用期間 3 年÷12 か月 |
自動車関連諸税 | 986 円/月 | ①自動車取得税(軽自動車) 取得価格 936,000 円×2%÷3 年÷12 か月=520 円 ②自動車税 年額(軽自動車営業用貨物)3,000 円÷12 か月=250 円 ③自動車重量税 2 年分(軽貨物)5,200 円÷2 年÷12 か月=216 円 |
保険料 | 2,391 円/月 | ①自賠責保険 保険料(営業用小型貨物車)26,370 円÷契約月数 24 か月= 1,099 円 ②任意保険 保険料(営業用小型貨物車)15,510 円÷契約月数 12 か月= 1,292 円 |
燃料費 | 12,566 円/月 | ・年間稼働月数 243 日×1 日当たりの走行距離 61.4 ㎞ =年間走行距離 14,920 ㎞ ・年間走行距離 14,920 ㎞÷12 か月=月間走行距離 1,243 ㎞ ・月間走行距離 1,243 ㎞÷燃費 15.53 ㎞/ℓ×ガソリン単価※ 157 円 =12,566 円 ※ガソリン単価は平成 26 年 10 月 10 日現在のものを使用 |
油脂費 | 497 円/月 | ・オイル交換目安(JAF データ使用)7,500 ㎞÷オイル量 3ℓ =オイル効率 2,500 ㎞/ℓ ・月間走行距離 1,243 ㎞÷オイル効率 2,500 ㎞/ℓ ×オイル購入単価 1,000 円/ℓ=497 円 |
内容 | 経費 | 計算方法 |
修繕費 | 11,952 円/月 | ①一般修繕費 年間修繕費※99,537 円÷12 か月=8,295 円 ※平成 27 年度当初予算要求 科目別見積基準単価表を使用 ②車検、点検整備費 車検点検費用(軽自動車)87,777 円÷車検有効期間 24 か月 =3,657 円 |
タイヤ費 | 912 円/月 | 月間走行距離 1,243 ㎞÷タイヤ交換目安 30,000 ㎞×本数 4 本 ×タイヤ単価※5,500 円=912 円 ※タイヤ単価は平成 26 年 10 月 10 日現在のものを使用 |
合計 | 55,304 円/月 | |
年間当たり 車両経費 | 663,648 円/年 | 55,304 円/月×12 か月=663,648 円 |
このように、車両経費については、レンタカーの賃借料を用いて算出すると 1,187,304 円となるが、輸送原価計算を行う際の指標となる計算方法により算出すると 663,648 円となる。これにより、積算金額は 40%以上少なくなることがわかる。
【指摘事項】
レンタカーの賃借料には、事業者の利益も含まれているため、運搬頻度が高い業務にレンタカーの単価を適用すると、実例価格に比べて相対的に高い金額となる。区役所間連絡文書等の送受は、すべての開庁日に1日2便(午前 8 時
45 分から午後 3 時 30 分まで)の運搬が行われており、車両の運搬頻度は高いものとなっている。
区役所間連絡業務のように、車両の運搬頻度が高い業務では、適正な原価計算にもとづいて、車両経費の積算価格を計算するべきである。
8.静岡駅xx情報提供コーナー管理運営業務
【概要】
委託業務名 | 静岡駅xx情報提供コーナー管理運営業務 |
積算金額 | 7,117,702 円 |
予定価格 | 7,108,500 円 |
契約額 | 7,099,050 円 |
担当課 | 経済局商工部観光・シティプロモーション課 |
委託先名 | (公財)静岡市まちづくり公社 |
【事業の概要】
静岡駅xx地下広場に設置した情報提供コーナー「しずチカ情報ポケット」の管理運営並びに展示作品の警備及びシティプロモーション情報の提供等を行う。
【委託の理由等】
委託の理由について、委託業務実施伺いには、次のとおり記載されている。
静岡駅xx情報提供コーナーの効率的な運用と、来訪者や市民に対し、シティプロモーション情報等の提供及びまちなかの賑わい創出を図るため、ま
ちづくり事業・情報発信事業等の実績を有する事業者に業務を委託する。
また、この事業では、前金払いが採用されている。委託業務実施伺いには、前金払いの理由として、次のとおり記載されている。
当該業務従事者に対する給与の支払いを確実に行う必要があることから、受
託者において人件費等の経費に係る資金の確保が必要とされるため。
【委託業者の選定】
本業務は、単独随意契約により、(公財)静岡市まちづくり公社へ委託している。【見積参加者が1者である理由】について、見積参加者表には、次のとおり記載されている。
当該事業者は、静岡市中心市街地活性化基本計画において、本市より中心市街地整備推進機構としての指定を受けるとともに、中心市街地における都市機能増進やまちづくり事業を業務のひとつとしている公益法人である。
また、来訪者や市民に対し、静岡駅xx地下広場に設置されたマルチビジョ
ン及びデジタルサイネージを活用し、シティプロモーション情報、まちなか情
報の発信等も実施していることからも、本業務を併せもつことによる情報発信
の相乗効果と、さらなるシティプロモーションの推進が期待できるため。
(1)前金払いの適用について
【現状】
地方公共団体が締結する契約については、契約の相手方の給付が完了した後に、代金を支払うのが原則である。前金払いは、相手方の給付が完了する前の支出であり、法令で認められた特例と解されている。市の会計事務の手引でも、法の趣旨に則り、「安易に前金払いとするようなことは慎むこと」と記載されている。前金払いの適用にあたっては、合理的な理由がなければならない。
本業務で前金払いを適用する理由について、委託業務実施伺いには、「当該業務従事者に対する給与の支払いを確実に行う必要があることから、受託者において人件費等の経費に係る資金の確保が必要とされるため」と記載されている。
この業務の受託者は、市の外郭団体である公益財団法人静岡市まちづくり公社であり、ホームページで決算書を開示している。平成 25 年度の決算書を見る
と、年間の経常費用は 1,951 百万円、経常収益は 1,879 百万円であり、減価償
却費を 25 百万円計上している。また、平成 26 年 3 月 31 日現在の貸借対照表によれば、273 百万円の現金預金の他、245 百万円の定期預金(基本財産)を保有していることもわかる。これらを総合的に勘案すると、総額約7百万円の本業務の委託料を前金払いとしなかったとしても、受託先が運転資金不足となる可能性は見当たらない。
【指摘事項】
前金払いの適用については、本報告書の他の箇所でも指摘をしているが、指摘の対象となっている委託先は、すべて市の外郭団体である。ここで指摘している外郭団体への代金支払いが、原則的な給付完了後の支払いではなく、例外的な前払いとなっている以上、市はその合理性を説明する必要がある。しかし、現状の記載内容は、説明が不十分なものとなっている。
まずは、給付完了後の支払いとして、部分払いの適用が可能かどうか、検討する必要がある。そして、部分払いの適用が困難で、前金払いを適用する場合には、合理的な根拠を具体的に記載し、市民への説明責任を果たす必要がある。
(2)事業報告の内容について
【現状】
委託業務について、契約書と仕様書上で定められている報告事項は、次のとおりである。
報告事項 | 根拠 |
1 委託業務完了報告書(年度末) | 契約書第6条 |
2 情報コーナー及び展示コーナー来訪者の毎月の利用状況(人数・件数)の取りまとめ及び市への 利用状況の報告 | 仕様書1業務内容(4) |
3 事業実績報告書(市が別に定める、月次) | 仕様書8一般管理事項(6) |
上記2と3の定めにより、実際に月次で報告されている情報は、以下のとおりとなっている。
・しずチカ来場者内訳(案内・xx・xxx・xxxごと、日ごとの来場者数)
・マルチビジョン放映件数
・しずチカ電気使用料(メーター測定値)
・しずチカ水道使用料(メーター測定値)
上記の情報はすべて数値ベースでのものであり、来訪者の属性や多い問い合わせ内容といった、シティプロモーション情報の提供等に関する具体的な内容については、まったく記載されていない。
現状の報告内容は事業実態を把握するのに十分であるか、担当課に確認したところ、以下の回答があった。
利用者数及び光熱水費の使用料は、業務の実態を把握するのに必要な数値であると考えております。平成 25 年度まではその他の報告は口頭で受けていたた
め、平成 26 年度は口頭での報告に加えて月毎の報告書にも記載するよう、様式
を調整しました。
そこで、平成 26 年度(平成 25 年度と同じ業務を同じ業者に委託している)
の報告書(平成 26 年 10 月分まで)を確認したところ、平成 26 年度から追加された「その他」欄に記載されていた事項は、以下のとおりであった。
平成 26 年 4 月分 | 記載なし |
平成 26 年 5 月分 | 記載なし |
平成 26 年 6 月分 | 記載なし |
平成 26 年 7 月分 | 記載なし |
平成 26 年 8 月分 | 「消防用設備等緊急点検」の実施 |
平成 26 年 9 月分 | 台風 16 号の影響に伴う開館時間の見合わせ |
平成 26 年 10 月分 | (1)台風 18 号の影響に伴う開館時間の見合わせ (2)台風 19 号の被害はなし (3)開館時間の遅延(出勤予定者による出社時間の錯誤による) (4)閉館時間の延長(大道芸ワールドカップ開催に伴う) |
報告書の様式を調整し、「その他」欄が追加されたとはいえ、記載されている内容は、設備点検や仕様書外の開館状況といった施設管理についてのものがほとんどである。
【見積参加者が1者である理由】に記載されている「さらなるシティプロモーションの推進が期待できる」内容については、平成 26 年度になっても文書報告が行われていない。
【指摘事項】
例えば、生活文化局の委託事業である「静岡市xxxxガイダンスブース観光案内・管理業務」では、利用者数を「市内」「県内」「県外」「その他」に区分して、受託者に報告させている。また、それに加え、「多く尋ねられたこと」や
「特記事項(苦情、施設以上など)」についても、日報により文書で報告させている。特記事項等には、利用者からの建設的な意見が多々記載されており、今後事業を行うにあたり、有用な報告内容にもなっている。
このような事例を参考に、シティプロモーションの推進に資する有用な情報を受託者から報告させるよう、報告書の様式の改定等を行う必要がある。
(3)事業の効果について
【現状】
この事業では、事務事業総点検による評価の活動指標として、来客者数を採用している。
平成 25 年度は、目標来場者数 2,800 人/月(平成 24 年度実績 2,679 人/月に
4%増加で設定)に対し、実績は 1,943 人/月と、目標を 30%以上も下回る結果となり、事業評価はC評価となっている。
この評価につき、事務事業総点検表の「今後の課題と取組内容」には、次の記載があった。
来客数の減少要因を調査したがその理由が見当たらない。しかし、来客数が減少した結果を真摯に受け止め、情報コーナーの運営について改善点を検討し
たい。
【指摘事項】
この委託事業では、単独随意契約の理由として、「さらなるシティプロモーションの推進が期待できる」と記載している。しかし、平成 25 年度の来場者数は、
目標 2,800 人/月に対し、実績は 1,943 人/月と 30%以上も下回る結果となっている。この結果につき、担当課は、事務事業総点検表の「今後の課題と取組内容」として、「来客数の減少要因を調査したがその理由が見当たらない」と明記している。また、前述のとおり、現状の受託者からの報告事項には、シティプロモーションの推進に資する情報は何ら記載されていない。
こうしたことから勘案すると、担当課が来客数の減少理由を把握する努力を怠っているように見受けられる。
将来の目標人口を設定する静岡市にとって、シティプロモーションの推進は不可欠な業務であり、重要性も高いはずである。担当課として、来客数の減少理由を不明で終わらせてしまうのではなく、原因を把握できる体制を整える必要がある。そして、早急に来客数の減少要因を究明し、適切な改善策を実施していく必要があると考える。
9.駿府浪漫バス運行業務委託
【概要】
委託業務名 | 駿府浪漫バス運行業務委託 |
積算金額 | 20,335,831 円(税抜) |
支出見込額 | 14,970,325 円(※) |
契約額 | 19,868,000 円(税抜) |
担当課 | 経済局商工部観光・シティプロモーション課 |
委託先名 | しずてつジャストライン㈱ |
(※)(積算金額 20,335,831 円 - 収入見込額 6,078,379 円)× 1.05
【事業の概要】
静岡中心市街地における「まち歩き観光」の促進と観光交流客の利便向上を図り、消費の活性化と交流人口の増大を目的とした巡回バスを「駿府浪漫バス運行実施要綱」および業務概要仕様書に基づいて運行する業務の実施
平成 25 年 4 月 1 日より、以下のとおり、事業内容の変更を行っている。
〇変更趣旨
事業目的に照らし、バスの主たる乗車対象とする観光交流客が、静岡中心市街地の各所散策や買い物、飲食などを通じて、「まちを楽しむことができるバス」となるよう、より適した運行経路、時間等に変更する。
〇変更内容
(1)運行経路 経路変更を行い約 0.5km 運行距離延長
(2)運行時間
変更前 | 変更後 | |
平日 | 始発 10:00 終発 16:20 | (土日祝日とも) |
20 分間隔 20 便/日 | 始発 10:00 終発 18:00 | |
土日祝日 | 始発 10:00 終発 16:15 | 30 分間隔 17 便/日 |
15 分間隔 26 便/日 |
【委託の理由】
委託の理由について、委託業務実施伺いには、次のとおり記載されている。
本業務の実施については、専門的な資格を必要とするため。
【委託業者の選定】
本業務は単独随意契約により、しずてつジャストライン㈱へ委託している。
【見積参加者が1者である理由】について、見積参加者表には、次のとおり記載されている。
本業務の運行経路である静岡市街地において、道路運送法第4条の一般乗合旅客自動車運送事業の許可を得て運行業務に実績があり、近隣に営業所を有して不測の事態に対応でき、レトロ調ボンネットバスを所有しているバス事業者
は、しずてつジャストライン株式会社の他にないため。
(1)参考見積書の分析について
【現状】
本業務は単独随意契約であり、積算は、本契約の相手方から参考見積を聴取し、その内容を協議して行われている。平成 25 年度においては、相手方の見積書の内容が、そのまま市の積算となっている。
平成 24 年度と 25 年度の積算書の内訳は、以下のとおりである。
(単位:円)
項目 | 平成 24 年度 | 平成 25 年度 | 増減 | |
人件費 | 乗務員給与手当 | 12,996,873 | 12,933,479 | △63,394 |
燃料油脂費 | 燃料代 | 1,590,425 | 1,181,177 | △409,248 |
車両修繕費 | 車両修繕 | 1,427,256 | 2,048,124 | +620,868 |
保険料 | 自動車保険 | 267,840 | 267,840 | - |
施設賦課税 | 重量税・自動車税 | 129,900 | 84,600 | △45,300 |
その他経費 | 車庫等使用料・回送経 費・営業外費用 | 1,449,869 | 1,196,557 | △253,312 |
一般管理費 | 本部の運行管理人件費 | 1,141,991 | 1,472,970 | +330,979 |
小計 | 19,004,154 | 19,184,747 | +180,593 | |
管理料 | 諸経費 | 1,140,249 | 1,151,084 | △10,835 |
合計 | 20,144,403 | 20,335,831 | +202,263 |
(注)上記金額は消費税抜きの金額である。なお、受託業者からの見積書では、上記項目のうち、「人件費」については「xxジャストライン全社の営業所業務担当、営業所長、序xx管理営業の人件費を路線キロ按分」して算出し、「一般管理費」については「本社人件費等事務経費」を算出基礎としているとの説明書きがある。
【事業の概要】に記載のとおり、この事業は、平成 25 年 4 月 1 日より、運行経路と運行時間の変更を行っている。
この変更により、運行経路は1経路あたり約 0.5km 増加しているが、運行便数が平日で1日3便、土日祝日で1日9便減少しているため、トータルの路線キロ数は減少している。監査人の試算では、平成 24 年度に比べて、年間総路線キロ数は 17%程度減少している。
ここで、受託業者の見積書には、「人件費」については、路線キロ数按分で算出していると記載されている。年間総路線キロ数が 17%程度減少することに伴い、人件費も当然減少するものと思われるが、平成 25 年度の人件費は、前年より 0.5%しか減少しておらず、ほとんど同額となっている。つまり、路線キロ数の減少と見積書の「人件費」には、連動性が見当たらない。
この点について、担当課に確認したところ、回答は以下のとおりであった。
浪漫バスは H25.4.1 より減便しておりますが、便数を一部落としても当路線の運行に必要な人工(運転士人工)が落ちなければ運転士の人件費が下がるこ
とはありません。
この回答を受けて、担当課が具体的に数値等で確認した資料の提出を求めたところ、以下の回答があった。
他の課でどのような対応をしているか分かりませんが、当課ではそのような
分析を行っておりません。
また、平成 25 年度の一般管理費については、24 年度に比べ、3割近く増加している。この原因を担当課に確認したところ、回答は以下のとおりであった。
一般管理費には、広告宣伝費等も含まれます。乗務員不足解消の為、求人広告絡みでxx費が近年特に増大しております。
キロ按分の減少分も加味する必要がありますが、対前年で経費が増加してい
る為、最終的に上昇しました。
この回答を受けて、キロ按分の減少がどのくらいの影響で、広告宣伝費の増大がどのくらいの影響であるのかを、数値的に分析した資料の提出を求めたところ、回答は以下のとおりであった。
他の課でどのような対応をしているか分かりませんが、当課ではそのような
分析を行っておりません。
【指摘事項】
このように、担当課では、受託業者が提出した見積書の「人件費」、「一般管理費」ともに、定性的な原因の把握は行っているが、定量的な分析は行っていないことが判明した。
「委託業務各種契約事務処務事務お助けマニュアル」(契約課作成)では、「予算要求時の留意点」として、次の記載がある。
予算要求時の留意点
(ウ)随意契約業務で積算ができない場合に、やむを得ず外部(業者等)に「参考見積書」作成を依頼するときは、次の点に留意すること。
③ 参考見積書の内容は、他都市も含む前例との比較、市販の物価単価表その他参考資料により可能な限りチェックを行い、不明な点等は、解析可能
な課の意見や指導を求めること。
担当課の「他の課でどのような対応をしているか分かりませんが、当課ではそのような分析を行っておりません。」という回答を見る限り、参考見積書の内容について、担当課が十分なチェックを行っているとは言えない。
特にこの業務は単独随意契約であり、競争原理が働かない契約である。マニュアルに記載のとおり、参考見積書の内容については、相手方から数値による説明等を求めるなどの方法により、可能な限りチェックを行う必要がある。
10.静岡市駿府城跡観光バス駐車場管理運営業務
【概要】
委託業務名 | 静岡市駿府城跡観光バス駐車場管理運営業務 |
積算金額 | 5,723,550 円 |
予定価格 | 5,723,550 円 |
契約額 | 5,723,550 円 |
担当課 | 経済局商工部観光・シティプロモーション課 |
委託先名 | (公財)静岡観光コンベンション協会 |
【事業の概要】
静岡市駿府城跡観光バス駐車場管理運営業務の業務内容は、次のとおりとなっている(仕様書より抜粋)。
Ⅱ 管理委託業務内容
3 受託者の業務内容
(1)駐車場の維持管理に関すること。
(2)駐車場の利用者への便宜の供与に関すること。
(3)駐車場の利用を禁止し、又は制限すること。
5 運営業務
(1)従業員配置(2)駐車場施設の開閉等(3)利用案内、接遇業務(4)駐車場利用者ニーズの把握とサービス向上に関する業務(5)利用料金の徴収業務(6)駐車予約の受付(7)観光案内等(8)緊急・救急対応に関する業務(9)駐車場巡視及び利用指導に関する業務
6 施設運営業務
(1)建築物、建築物付属備品、工作物管理業務(2)清掃業務(3)樹木管理等
【委託の理由】
委託の理由について、委託業務実施伺いには、次のとおり記載されている。
当事業は、葵区の中心部に観光バス専用の駐車場を開設するものであり、駐車料金の徴収、観光案内等を主目的としているため、専門的な技能及び知
識を有する民間事業者に業務を委託するものである。
また、この事業では、前金払いが採用されている。委託業務実施伺いには、前金払いの理由として、次のとおり記載されている。
当該業務の委託料は、給与賃金を主体とした人件費が大部分を占めているた
め、支出は前金払とする。
【委託業者の選定】
本業務は、単独随意契約により、(公財)静岡観光コンベンション協会へ委託している。【見積参加者が1者である理由】について、見積参加者表には、次のとおり記載されている。
当該施設は、観光バス専用の駐車場として整備したものであり、利用促進のためバス会社等に対して誘致を行う際にはコンベンションに関する知識が必要である。
また、当該駐車場は単なる駐車場管理だけではなく、来場した観光客に対して市街地の旧跡や文化施設等の観光コースの案内、市内のイベントや観光情報と提供する等、観光客へのもてなしを行うこととともに、利用者の情報を収集し、今後の観光振興等に活用することも目的としている。
これら幅広い業務をxx的かつ総合的に実施できるのは当該一者のみであ
る。
(1)前金払いの適用について
【現状】
地方公共団体が締結する契約については、契約の相手方の給付が完了した後に、代金を支払うのが原則である。前金払いは、相手方の給付が完了する前の支出であり、法令で認められた特例と解されている。市の会計事務の手引でも、法の趣旨に則り、「安易に前金払いとするようなことは慎むこと」と記載されている。前金払いの適用にあたっては、合理的な理由がなければならない。
本業務で前金払いを適用する理由について、委託業務実施伺いには、「当該業務の委託料は、給与賃金を主体とした人件費が大部分を占めているため、支出は前金払とする。」と記載されている。
この業務の受託者は、市の外郭団体である公益財団法人静岡観光コンベンション協会であり、ホームページで決算書を開示している。平成 25 年度の決算書
を見ると、年間の経常費用は 210 百万円であるが、経常収益は 211 百万円であ
り、減価償却費も 1 百万円計上している。また、平成 26 年 3 月 31 日現在で 101百万円の現金預金を保有していることもわかる。これらを総合的に勘案すると、総額が6百万円に満たない本業務の委託料を前金払いとしなかったとしても、受託先が運転資金不足となる可能性は見当たらない。
【指摘事項】
前金払いの適用については、本報告書の他の箇所でも指摘をしているが、指摘の対象となっている委託先は、すべて市の外郭団体である。ここで指摘している外郭団体への代金支払いが、原則的な給付完了後の支払いではなく、例外的な前払いとなっている以上、市はその合理性を説明する必要がある。しかし、現状の記載内容は、説明が不十分なものとなっている。
まずは、給付完了後の支払いとして、部分払いの適用が可能かどうか、検討する必要がある。そして、部分払いの適用が困難で、前金払いを適用する場合には、合理的な根拠を具体的に記載し、市民への説明責任を果たす必要がある。
(2)事業報告の内容について
【現状】
この業務では、受託者の運営業務として「観光案内等」が含まれており、仕様書には、以下の事項が規定されている。
5 運営業務
(7)観光案内等
① 観光施設、観光地、公共施設、ホテル・旅館、飲食店、商店街、道路、土産物等各種問い合わせに対し応じること。
② 静岡市、(財)静岡観光コンベンション協会、その他関係機関等が作成した各種パンフレット、リーフレット等を積極的に収集し、問い合わせに対し常に配布できるよう必要数を備えること。収集に係る費用については、受託者が負担すること。
③ 従業員が対応できない内容については、対応可能な関係機関を紹介すること。
④ 予約電話等の際に観光案内等の送付を求められた場合は、無料で送付すること。この際、送付に係る費用は受託者が負担すること。
⑤ 利用促進のため、誘致活動を行うこと。
この委託契約は、(公財)静岡観光コンベンション協会との単独随意契約である。【見積参加者が1者である理由】には、誘致活動、観光案内、観光客のもてなしなど、幅広い業務を実施できるのは、(公財)静岡観光コンベンション協会しかいないとしている。また、そこには、「利用者の情報を収集し、今後の観光振興等に活用することも目的としている」と明記されている。本業務において、観光案内等の実施は、重要な業務であると判断できる。
【指摘事項】
しかし、現状、委託業者から受けている月次報告には、駐車場の利用状況・ 料金徴収に係る事項と施設の運営業務に係る事項が記載されているのみであり、観光案内等についての情報は、何ら記載されていない。
市は、観光振興に役立つ情報を委託者と共有し、実際に今後の観光振興に役立てることができるよう、業務内容の報告を行わせるべきである。
11.静岡市工芸と歴史の体験施設「xxx宿」使用料徴収業務
【概要】
委託業務名 | 静岡市工芸と歴史の体験施設「xxx宿」使用料徴収業務 |
積算金額 | 1,739,850 円 |
予定価格 | 1,732,500 円 |
契約額 | 1,680,000 円 |
担当課 | 経済局商工部地域産業課(現 産業振興課) |
委託先名 | ㈱駿府楽市 |
【事業の概要】
本業務は、静岡市工芸と歴史の体験施設「xxx宿」の各種使用料の徴収に係る以下の業務を委託するものである。
(1)静岡市工芸と歴史の体験施設「xxx宿」における創作体験施設使用料、展示・映像体験施設使用料及び駐車場使用料の徴収事務
(2)記帳事務、保管事務及び納付事務
(3)クーポン整理表記帳事務
【委託の理由】
委託の理由について、委託業務実施伺いには、次のとおり記載されている。
当施設の使用料は、本市が徴収すべきであるが、委託で実施することによ
り、利用者の利便性を高め、効率的に事務を進めることができるため。
【委託業者の選定】
本業務は、単独随意契約により、㈱駿府楽市へ委託している。【見積参加者が
1者である理由】について、見積参加者表には、次のとおり記載されている。
当該施設の使用許可は指定管理者が行うこととなっており、使用料徴収事務は使用許可と一体の業務であることから、本業務を実施できるのは当該施設の
指定管理者である㈱駿府楽市しかいないため。
(1)委託の理由の具体性について
【指摘事項】
業務を委託する理由は、前述のとおりであるが、「利用者の利便性を高め、効率的に事務を進める」ことにつき、具体的には記載されていない。
【見積参加者が1者である理由】に記載のとおり、対象施設は指定管理者が設置されており、市の職員は常駐していない。そのような状況下では、常駐者である指定管理者に業務を委託するほうが、利用者の利便性を高め、効率的に事務を進めることができるという判断になると考えられる。
委託の理由については、より具体的に記載する必要がある。
(2)積算と実績の乖離について
【現状】
委託料の積算は、各使用料徴収業務の1件当たりの所要時間に処理件数を乗じて総所要時間を算定し、従事者の時間単価を乗ずる方法によって行われている。使用料ごとの積算件数と平成 22 年度から 24 年度までの実績件数は、以下のとおりである。
積算上の件数 | 平成 22 年度 | 平成 23 年度 | 平成 24 年度 | |
創作体験施設 | 27,000 | 22,577 | 22,730 | 21,952 |
展示・映像体験施設 | 13,500 | 8,551 | 7,296 | 8,774 |
駐車場 | 21,000 | 19,611 | 19,611 | 20,679 |
積算上の件数は、平成 22 年度の指定管理者更新手続の際に、財政課が過去3
年間(平成 19 年度から 21 年度)の徴収件数の平均値をもとに査定した数値を使用している。
ここで指定管理料の積算は、使用料徴収業務も含めた「xxx宿」の管理に係る総費用を算定し、その中から使用料徴収業務に係る時間を控除するという方法によっている。本委託業務は、指定管理業務と深く関係していることから、現在の指定管理期間である平成 23 年度から 27 年度までの5年間は、同一の根拠により積算を行っているとのことであった。
しかし、実際の使用料発生件数を見ると、平成 24 年度の実績は、積算上の件数と比較して、創作体験施設 18.7%減少、展示・映像体験施設 35.0%減少、駐車場 1.5%減少と、駐車場以外は大きく乖離していることがわかる。
【指摘事項】
このように、使用料徴収業務で実際に行われている業務量は、積算上の件数よりも少ないものとなっている。本業務が指定管理業務と深く関係しているのは確かであるが、積算と実績との乖離状況からすると、業務量については、委託契約と指定管理とは分けて考えるべきである。
委託料の積算については、契約年度において予想される発生件数を使用して算定を行うべきである。
12.駿府楽市「特産品展示コーナー」管理運営業務
【概要】
委託業務名 | 駿府楽市「特産品展示コーナー」管理運営業務 |
積算金額 | 16,951,200 円 |
予定価格 | 16,947,000 円 |
契約額 | 16,947,000 円 |
担当課 | 経済局商工部地域産業課(現 産業振興課) |
委託先名 | ㈱駿府楽市 |
【事業の概要】
駿府楽市「特産品展示コーナー」管理運営業務
JR静岡駅構内アスティ静岡内の特産品展示コーナーにおいて、静岡市特産品の情報発信基地として、各種特産品の企画展示及びそれに付随する業務を行う。
① 静岡市産業の宣伝等の実施
② 展示品及び施設の安全管理
③ 展示品の選択及び入替え
④ 展示品等の説明サービス
⑤ 企画展示看板製作(吊り看板・立て看板…計 2 枚×年間 30 回程度)
【委託の理由】
委託の理由について、委託業務実施伺いには、次のとおり記載されている。
市が直接実施するよりも、他の者へ委託し、実施させる方が効率的なため。
【委託業者の選定】
本業務は、単独随意契約により、㈱駿府楽市へ委託している。【見積参加者が
1者である理由】について、見積参加者表には、次のとおり記載されている。
静岡市が地場産業の振興を目的に出資、設立した㈱駿府楽市が運営する「販売コーナー」の店内と一体性を保ちつつ、地場産品等の展示や企画、来場者への説明等のサービスを行える業者は、平成3年創業以来の営業経験とノウハウ
を有し、地場産業界にネットワークを構築した㈱駿府楽市しかいないため。
(1)委託の理由の具体性について
【指摘事項】
業務を委託する理由は、前述のとおりであるが、何がどのように「効率的」なのかについて、具体的には記載されていない。
この点について、担当課に確認したところ、以下の回答があった。
本委託業務の目的は、「伝統工芸品、地場産品の展示を通した本市地場産業の情報発信、PR、振興」である。
①委託先である㈱駿府楽市は静岡市が 51%を出資する第 3 セクターで、静岡市の地場産業を「販売」という観点から応援するために設立された会社である。
②㈱駿府楽市は、展示コーナー横に販売店舗を持ち、展示品を効果的に販売に導くことができる。また、地場工芸品の販売実績や商品開発提案、展示ノウハウ、業界団体との調整機能を有している。
③市が展示から直接販売に結び付くような提案を行うことは、xx性やリスク管理の観点から好ましくない。
以上の観点から、市と比較して㈱駿府楽市が同業務を実施する方が、効率的
に目的を達成できると判断した。
このような理由が付記されていれば、業務を委託する合理性を見い出すことができるが、現状の記載だけでは、内容が不十分であると言わざるを得ない。
委託の理由については、より具体的に記載する必要がある。
(2)見積執行の実施時間について
【指摘事項】
見積結果表によると、この業務の見積執行日時は「平成 25 年 3 月 25 日 午
前 10 時 00 分」となっている。一方で「静岡市工芸と歴史の体験施設「xxx
宿」使用料徴収事務」委託業務の見積執行日時も「平成 25 年 3 月 25 日 午前
10 時 00 分」と同一時刻となっている。
この点について、担当課に確認したところ、「2つの業務とも同一事業者を対象にした単独随意契約の見積執行であったため、同一時刻とした」とのことである。しかし、「2件を同時に執行したわけではなく、実際に時間差も生じている」とのことであった。
見積結果表は、適切に見積執行が行われたことを証する書面である。事実にもとづいた適切な記載を行う必要がある。
(3)事業報告の内容について
【指摘事項】
市へ毎月提出される「駿府楽市「特産品展示コーナー」管理運営業務完了報告書」には、従事者を報告する項目がある。ここでは、「特産品展示コーナー」の従事者だけではなく、特産品展示コーナーに隣接する「販売コーナー」の従事者も併せて記載されている。つまり、この報告は、市の委託業務と㈱駿府楽市の固有の業務が合算された報告となっている。
市が、委託業務が適切に履行されていることを確認するためには、本来、委託業務の該当者のみを従事者として報告させるべきである。
(4)事業の効果について
【現状】
この事業では、事務事業総点検による評価の活動指標として、駿府楽市年間来場者数を採用している。来場者数の集計は、買物客数の4倍の数値を、来場者数としてカウントすることにより行っている。
平成 25 年度は、目標来場者数 500,000 人に対し、実績は 411,230 人と大きく下回る結果となり、事業評価はB評価となっている。また、この実績は、平成 24 年度実績の 529,120 人に対しても大幅な減少となっている。
この状況を受け、担当課では、㈱駿府楽市と協働で次の対応を行っている。
1.アスティ内の他の店舗で取扱う商品の差別化を図るべく、流通の専門家の意見を聞きながら商品仕入れ、配置、開発を行う。
2.しずチカ情報ポケットや駅構内の観光協会と共同で、楽市店舗への誘導対策を行う。
3.中小企業診断士の指導を受けながら、店舗ディスプレイの研究を行うなど、
楽市店舗、展示コーナーへの誘客を図る。
【意見】
特産品展示コーナーは、静岡市の特産品の情報発信基地として、来場者へ特産品の説明等を行うことにより、静岡市の伝統産業をPRしていくために設置されているものである。そのためには、来場者数の確保が必須となる。
今後も来場者数が大きく減少するような状況が続くようであれば、特産品展示コーナーの設置意義について、xx的に見直す必要性も出てくるものと考える。来場者数を増加させ、特産品コーナーの設置意義を十分なものにするためにも、上記の対応策を効果的に実施していく必要がある。
13.静岡市中小企業融資制度受付業務委託
【概要】
委託業務名 | 静岡市中小企業融資制度受付業務委託 |
積算金額 | 5,998,881 円 |
予定価格 | 5,998,650 円 |
契約額 | 5,995,500 円 |
担当課 | 経済局商工部産業政策課 |
委託先名 | (公財)静岡産業振興協会 |
【事業の概要】
制度融資及び中小企業信用保険法第2条第5項に係る認定の相談、受付事務
【委託の理由等】
委託の理由について、委託業務実施伺いには、次のとおり記載されている。
中小企業への円滑な資金供給を促進するため、中小企業の経営相談に関す
る高度に専門的な知識とノウハウを持った専門業者に委託するものである。
また、この事業では、前金払いが採用されている。委託業務実施伺いには、前金払いの理由として、次のとおり記載されている。
本契約に係る委託経費はすべて人件費と運営費であり、毎月々被雇用者に支払われなければならず、前金払いとしなければ運転資金不足となるため。
また、事務の簡素化のために3ヶ月ごとに支払うものとする。
【委託業者の選定】
本業務は、単独随意契約により、(公財)静岡産業振興協会へ委託している。
【見積参加者が1者である理由】について、見積参加者表には、次のとおり記載されている。
本業務は、中小企業に対する経営相談等を実施している静岡市中小企業支援センターが設置されている静岡市産学交流センター内で実施することにより、経営指導から市融資制度の相談・受付に至るまでの包括的な中小企業支援や経営相談のワンストップ化が可能となる。
本業務とともにこれらのサービスを包括的に実施可能な団体は、静岡市中小
企業支援センターの指定法人である(財)静岡産業振興協会しかいないため。
(1)委託の理由の妥当性について
【現状】
中小企業融資制度の受付業務は、産業政策課と産学交流センターの2箇所で実施されている。
【見積参加者が1者である理由】に記載のあるとおり、産学交流センターでは、包括的な中小企業支援や経営相談が行われており、実際に制度融資に関する相談等も行われている。こうした状況の中で、産学交流センター内で制度融資の受付が可能であれば、サービスのワンストップ化が可能となり、利用者の利便性は高まると考えられる。
このような中小企業に対するサービスのワンストップ化を可能にするためには、産業政策課内だけでなく、産学交流センター内においても、制度融資の受付業務を行う必要がある。そして、産学交流センターで受付業務を行うにあたっては、産学交流センターの指定管理者である(公財)静岡産業振興協会に、業務を委託するのが合理的かつ効率的である。こうした理由から、受付業務を委託しているのが現状である。
【指摘事項】
しかし、委託業務実施伺いには、委託の理由として、「中小企業の経営相談に関する高度に専門的な知識とノウハウを持った専門業者に委託する」と記載されている。通常の受付業務自体は、必要項目の記入内容の確認がメインとなっており、必ずしも高度で専門的な知識を有している必要はないとのことである。
委託の理由については、実態に合わせた適切な記載に改める必要がある。
(2)前金払いの適用について
【現状】
地方公共団体が締結する契約については、契約の相手方の給付が完了した後に、代金を支払うのが原則である。前金払いは、相手方の給付が完了する前の支出であり、法令で認められた特例と解されている。市の会計事務の手引でも、法の趣旨に則り、「安易に前金払いとするようなことは慎むこと」と記載されている。前金払いの適用にあたっては、合理的な理由がなければならない。
本業務で前金払いを適用する理由について、委託業務実施伺いには、「本契約に係る委託経費はすべて人件費と運営費であり、毎月々被雇用者に支払われなければならず、前金払いとしなければ運転資金不足となるため」と記載されている。
この業務の受託者は、市の外郭団体である公益財団法人静岡産業振興協会であり、ホームページで決算書を開示している。平成 25 年度の決算書を見ると、
年間の経常費用は 884 百万円で、借入金の返済支出も 358 百万円あるが、経常
収益は 939 百万円であり、減価償却費も 338 百万円計上している。また、平成
26 年 3 月 31 日現在で 317 百万円の現金預金を保有していることもわかる。これらを総合的に勘案すると、6百万円に満たない本業務の委託料を前金払いとしなかったとしても、受託先が運転資金不足となる可能性は見当たらない。
【指摘事項】
前金払いの適用については、本報告書の他の箇所でも指摘をしているが、指摘の対象となっている委託先は、すべて市の外郭団体である。ここで指摘している外郭団体への代金支払いが、原則的な給付完了後の支払いではなく、例外的な前払いとなっている以上、市はその合理性を説明する必要がある。しかし、現状の記載内容は、説明が不十分なものとなっている。
まずは、給付完了後の支払いとして、部分払いの適用が可能かどうか、検討する必要がある。そして、部分払いの適用が困難で、前金払いを適用する場合には、合理的な根拠を具体的に記載し、市民への説明責任を果たす必要がある。
14.静岡市xxx動物園園内管理業務
【概要】
委託業務名 | 静岡市xxx動物園園内管理業務 |
積算金額 | 178,423,350 円 |
予定価格 | 178,416,000 円 |
契約額 | 177,849,000 円 |
担当課 | 生活文化局文化スポーツ部xxx動物園 |
委託先名 | (一財)静岡市動物園協会 |
【事業の概要】
業務内容について、委託事業実施伺いは、次のとおり記載されている。
静岡市立xxx動物園の運営に係る次の園内管理業務を行う。
(1)売改札(入園等使用料徴収業務を含む)及び案内業務、遊具施設の運転・始業点検及び軽微な故障時のメンテナンス、駐車場の運営並びに園内の清掃及びゴミの回収
(2)入園者誘致及び教育普及事業に係る各種事業の共同開発・実施(夜間開園等各種イベント、誘致宣伝キャンペーン、渋滞緩和対策及びゴミの
分別・タバコの分煙等の啓発等)
また、仕様書には、より詳細に委託業務の内容が記載されている(以下、仕様書より抜粋)。
3 委託業務の内容
(1)入園者に対する売改札(徴収)および案内業務
(2)駐車場の運営
(3)遊戯施設の運営
(4)動物園(動物収容施設を除く)内の清掃業務
(5)入園者誘致および教育普及事業にかかる各種事業の共同開発・実施
(6)「ふしぎな森の城」の巡視
(7)前各号の業務を行うために必要な施設及び機材の管理に関すること
(8)その他市長が必要と認める事項
【委託の理由等】
委託の理由について、委託業務実施伺いには、次のとおり記載されている。
本業務は定型的な管理業務であり、これについては、市職員が行うより委
託する方が効率的であるため。
また、この事業では、前金払いが採用されている。委託業務実施伺いには、前金払いの理由として、次のとおり記載されている。
委託料の大半が、人件費のため、前金払いによらなければ事業運営に支障を
きたすことになるため、年 12 回の前金払いとしたい。
【委託業者の選定】
本業務は、単独随意契約により、(一財)静岡市動物園協会へ委託している。
【見積参加者が1者である理由】について、見積参加者表には、次のとおり記載されている。
当該業者は、開園以来 43 年間xxx動物園の運営に貢献してきた実績をもつ。
当該業者が行うボランティア組織の運営や各種教育普及活動などの業務と一体的に園内管理業務を実施することが、園として全体的な事業効果を高め、来園者へのサービスの維持向上が確保できる。
以上により、当該業者との単独随意契約としたい。
(1)委託の理由について
【現状】
委託業務実施伺いには、「本業務は定型的な管理業務」であることが、この業務を委託する理由として記載されている。一方、【見積参加者が1者である理由】には、「当該業者が行うボランティア組織の運営や各種教育普及活動などの業務と一体的に園内管理業務をすることが、園として全体的な事業効果を高め、来園者へのサービスの維持向上が確保できる」と記載がある。この【見積参加者が1者である理由】からは、本業務が「定型的な管理業務」であるとは判断できない。
この点について、担当課に確認したところ、「委託の理由は市が直接管理するより、民間に委託した方が効率的である理由を記載して」いると回答があった。
【指摘事項】
しかし、業務の実施伺いや仕様書には、園内管理業務の1つとして、「入園者誘致及び教育普及事業に係る各種事業の共同開発・実施」と明記されている。この委託業務を全体で捉えた場合に「本業務は定型的な管理業務」と言い切ることは困難である。
「本業務は定型的な管理業務」であるとする、現状の委託の理由は不適切であると考える。委託の理由を適切な表現に改めるべきである。
(2)前金払いの適用について
【現状】
地方公共団体が締結する契約については、契約の相手方の給付が完了した後に、代金を支払うのが原則である。前金払いは、相手方の給付が完了する前の支出であり、法令で認められた特例と解されている。市の会計事務の手引でも、法の趣旨に則り、「安易に前金払いとするようなことは慎むこと」と記載されている。前金払いの適用にあたっては、合理的な理由がなければならない。
本業務で前金払いを適用する理由について、委託業務実施伺いには、「委託料の大半が、人件費のため、前金払いによらなければ事業運営に支障をきたすことになるため、年 12 回の前金払いとしたい」と記載されている。
この業務の受託者は、市の外郭団体である一般財団法人静岡市動物園協会であり、ホームページで決算書を開示している。平成 25 年度の決算書を見ると、
年間の経常費用は 345 百万円であり、1ヶ月当たりの経常費用は 28 百万円であ
る。また、平成 26 年 3 月 31 日現在で 139 百万円の現金預金を保有していることもわかる。仮に毎月の業務完了後に部分払いを行うこととした場合には、現状と比べ、1ヶ月多くの資金が必要となるが、受託者の1ヶ月分の必要資金は概算で 28 百万円である。現金預金の保有残高が 139 百万円であることからすると、部分払いを適用すれば、前金払いを行わなくても資金不足とはならないはずである。よって、前金払いを行わなかったとしても、事業運営に支障をきたすとは考えられない。
【指摘事項】
前金払いの適用については、本報告書の他の箇所でも指摘をしているが、指摘の対象となっている委託先は、すべて市の外郭団体である。ここで指摘している外郭団体への代金支払いが、原則的な給付完了後の支払いではなく、例外的な前払いとなっている以上、市はその合理性を説明する必要がある。しかし、
現状の記載内容は、説明が不十分なものとなっている。
まずは、給付完了後の支払いとして、部分払いの適用が可能かどうか、検討する必要がある。そして、部分払いの適用が困難で、前金払いを適用する場合には、合理的な根拠を具体的に記載し、市民への説明責任を果たす必要がある。
(3)積算金額の算定根拠について
【現状】
本業務の管理ファイルに編纂されていた積算金額の内訳は、以下のとおりである。
項目 | 金額(円) |
職員給料 | 51,472,000 |
諸手当 | 35,183,000 |
賃金 | 31,254,000 |
福利厚生 | 18,109,000 |
物件費その他 | 10,224,000 |
小計 | 146,242,000 |
管理費 | 23,685,000 |
租税公課 | 8,496,350 |
合計 | 178,423,350 |
平成 25 年度の積算は、まずは、平成 24 年度の財政課の査定をベースに、受
託者である動物園協会が作成した平成 24 年度予算要求明細書を参考として、担
当課で 178,694 千円と算定している。その後、財政課の査定を受け、査定額が
178,424 千円となったため、これを参考に再度積算を行い、上記の積算書を作成するに至っている。
【指摘事項】
このような積算作成過程の中で、担当課には、大まかな数値の積算書しか資料が残っていない。すなわち、積算金額のうち、個別の項目の数値に結び付き、算出根拠の明細となる資料は存在していない。
積算は、予定価格決定や契約締結の根拠となるものである。その数値の算出根拠を詳細に記載した積算書の作成を行うべきである。
(4)仕様書に基づく積算書の作成について
【現状】
「委託業務等各種契約事務処務事務お助けマニュアル」(契約課作成)には、
「予算要求時の留意点」として、以下の事項が記載されている(以下、本業務に関係する部分のみを抜粋している)。
予算要求時の留意点
(ア)仕様書を作成し、これに基づく積算を行うこと
(ウ)随意契約業務で積算ができない場合に、やむを得ず外部(業者等)に「参考見積書」作成を依頼するときは、次の点に注意すること。
③ 参考見積書の内容は、他都市も含む前例との比較、市販の物価単価表その他参考資料により可能な限りチェックを行い、不明な点等は、解析可能
な課の意見や指導を求めること
本業務では、仕様書に基づく積算は行われていない。この点について、担当課に「業務ごとの所要日数や必要人員を算出して積算を行うべきではないか」と質問したところ、「今後、算出し把握に努めます」と回答があった。
【指摘事項】
現状の積算は、動物園協会が作成した予算要求明細書の所要経費がベースとなっているため、標準的な経費水準との関係がわかりにくい状態となっている。上記のマニュアルにもあるように、仕様書に基づく積算を行うことによって、より適切な内容の積算となり、適切な水準の委託料を把握することも可能になる。現状の積算方法を改め、仕様書に基づいた積算を行う必要がある。
(5)業務の発注形態について
【現状】
【概要】に記載したとおり、xxx動物園園内管理業務は、仕様書上、以下の8つの業務で構成されている。
(1)入園者に対する売改札(徴収)および案内業務
(2)駐車場の運営
(3)遊技施設の運営
(4)動物園(動物収容施設を除く。)内の清掃業務