物質・材料研究機構(NIMS)における企業との共同研究開発の進め方と契約のポイント
物質・材料研究機構(NIMS)における企業との共同研究開発の進め方と契約のポイント
xx xx,xx xxx
(国研)物質・材料研究機構
物質・材料研究機構(NIMS)における企業との共同研究開発の進め方と契約のポイント
(国研)物質・材料研究機構 xx xx,xx xxx
はじめに
わが国の科学技術イノベーション立国に向けた政策の検討が,2021 年度からの第 6 期科学技術基本計画の策定を中心に行われている。国研・大学に強く求められているのは,デジタル化など技術革新の急速な進展にともなう社会の変化に対応しうる多様性や柔軟性を備え,知の基盤として産業界への新たなソリューションを提供することである。産業界が労働集約型,資本集約型をへて現代の知識集約型へと進化する中で,国研・大学も必然的に産官学の知識集約型価値創造システムの中核として機能強化していくことになる。その指針として,“大学等の持つ知の価値が適切に評価され,組織と組織の大型の産学協創を実現し,大型の民間投資を呼び込み,大学等は一部を基礎研究,人材育成に投資”がまとめられている 1)。NIMS は,このような状況に先駆けて,周辺環境の変化に応じて企業連携の研究開発システムを絶え間なく改善するダイナミックな事業活動とともに,それを支える基礎研究および基盤的研究開発によって着実にシーズ育成するスタティックな事業活動のバランス良い経営に取組んできた。
企業連携に係る実務を担うのは人であり,いかに良い戦略が構築されても,それを実行する人材なくしては企業の課題解決に貢献するのは難しい。また社会が知識集約型からその先のスピード型への変遷過程にあること 2)を考えれば,今後益々スピーディーに業務遂行する必要がある。NIMS では,研究拠点・部門の研究者と外部連携部門の企業連携コーディネータ,契約担当,事務担当がまさに「ONE TEAM(ワンチーム)」として企業から与えられた研究課題に対するソリューションの方向性を共有し,各自が担当すべきことを明確にした上で,企業との共同研究の準備からフォローアップまで円滑かつ効果的に推進されるように努めている。後述する企業との組織的な連携においては,外部連携部門を通じて共有された研究課題に対応するために,研究拠点や部門の枠を超えて組織横断的な研究チームが編成される(図 1)。
機能性材料研究拠点
構造材料研究拠点
エネルギー・環境材料研究拠点
液体水素材料研究センター 蓄電池基盤プラットフォーム
国際ナノアーキテクトニクス研究拠点
先端材料解析研究拠点
磁性・スピントロニクス材料研究拠点
元素戦略磁性材料研究拠点
統合型材料開発・情報基盤部門
【外部連携部門】
・企業連携コーディネータ
・契約担当
・事務担当
組織横断チーム
企業
共同研究
研究課題共有
チーム編成
図 1 企業連携への NIMS の組織的な対応
1
本稿では,10 年以上にわたる「組織」対「組織」の企業連携経験に裏づけられた NIMS の特長ある共同研究開発の進め方を紹介した後,基礎から応用に至る研究開発フェーズおよび技術レベルに合わせて用意する多彩な連携および契約形態について述べる。
1. NIMS における企業との共同研究
NIMS の多彩な企業連携の仕組み 3,4)のうち,代表的なのは,世界トップクラスのグローバル企業と「組織」対「組織」
の二者間連携を行う“企業連携センター(Center of Excellence : CoE)”である。2006 年に最初の CoE を設置して以来,国内外の企業と個別の研究領域を扱う 15 の CoE を運営してきた(表 1)。2020年度は 12 の CoE を運営してい
る。企業が注力する事業分野の 3 年以上先までの技術ロードマップを共有し,材料に係る研究課題について,NIMSは基礎研究および基盤的研究開発,企業は実用化研究を分担して取組む。企業との共同研究を関連部門が連携して効率的かつ効果的に推進するために CoE を外部連携組織として NIMS に設置し,CoE 運営における NIMS 各部門の役割を規程に定めている。扱う課題数や内容,企業の要望に応じて運営体制は異なるが,デンカ株式会社と 2013 年 6月に設立した“NIMS-DENAK 次世代材料研究センター”では,「環境」「エネルギー」「健康」「インフラ」を重点分野と定め,定期的に連携推進会議を行って両機関の役員への研究課題毎の報告および研究マネジメント上の課題についての対策協議などを議題として取り上げている 5)。
もう一つは,特定業界の複数企業とオープンイノベーションを推進する“マテリアルズ・オープンプラットフォー ム(MOP)”である。2017 年に鉄鋼業界 3 社および化学業界 4 社とのオープンプラットフォームを形成し,同業社 間の水平連携によって協調領域の課題解決に取り組んでいる。この取組では企業の基礎研究所の機能の一部を NIMS に誘致し, 中長期的な研究開発の場とすることを目指している。 たとえば化学 MOP では, 世界最大級の物質・材料データプラットフォームの拠点となるNIMS xx地区のM-cube 棟に実験xxを設置し,高分子材料の構造や物性デー タ取得などマテリアルズ・インフォマティクス(MI)に基づく材料設計のための要素技術開発を行っている 6)。各 社はその成果を持ち帰り,個別に用途別の材料高性能化を行うことが可能である。オープンプラットフォームは二階
建て構造になっており,MOP の成果を用いて各社が個別に実用化研究を行う場合には, NIMS との二者間共同研究の仕組みを利用することができる。以下に個別のテーマについての二者間共同研究の実際の進め方を紹介する。
表 1 CoE 設立経緯
時期 | トピックス | 備考 |
2006 年 6 月 | ロールス・ロイス航空宇宙材料センター設立 | 2011 年に終了 |
2008 年 7 月 | NIMS- トヨタ次世代自動車材料研究センター設立 | 2019 年 4 月改称: NIMS- トヨタ連携センター |
2010 年 9 月 | NIMS- サンゴバン先端材料研究センター設立 | 2019 年 1 月改組: NIMS-CNRS- サンゴバン国際共同研究センター |
2013 年 6 月 | NIMS XXXXX x世代材料研究センター設立 | |
同年 7 月 | NIMS-LG 材料科学センターを設立 | |
2015 年 12 月 | NIMS-MCC 次世代機能性材料開発センター設立 | |
2016 年 7 月 | NIMS- 日立金属次世代材料開発センター設立 | |
同年 11 月 | NIMS- パナソニック先端機能材料研究センター設立 | |
2018 年 4 月 | NIMS-SoftBank 先端技術開発センター設立 | |
同年 7 月 | NIMS-L' ORÉAL マテリアルイノベーションセンター設立 | |
2019 年 1 月 | NIMS-IHI 次世代構造材料センター設立 |
2020 年 6 月 NIMS-三菱マテリアル情報統合型材料開発センター設立
(公表可能な CoE のみ掲載) 2
1.1 企業との二者間共同研究の進め方
1.1.1 個別的共同研究
(1)業務分担
NIMS の研究組織は,6 つの研究拠点と 1 つの技術基盤部門のもとに研究グループが置かれた階層構造となっている(図 1)。企業との共同研究をスタートさせる際には,研究代表者が計画を作成し,参画研究者の調整などの準備を行う。計画作成において,組織のコンプライアンスの観点から注意している事項に関しては次章に詳しく述べる。外部連携部門では,企業および大学・公的研究機関などとの共同研究の契約・知的財産に係る業務を扱う(図 2)。特に高度な対応が必要となる企業連携業務に関しては,各研究領域を得意とする企業連携コーディネータおよび事務担当を研究組織別に配置している。
企業連携コーディネータの役割は,来訪者への対応,適切な連携形態の提案および企業と NIMS の役割分担の調整といった渉外業務,それから契約書案の作成から締結に至るまでの契約業務が主である。企業での事業企画,法務などの業務経験のある特別専門職員が担当する。事務担当は,NIMS の規程にそって関連部門と連携して契約事務業務を進める。業務内容は企業からの外来研究者や研究費の受入,資産の借用や譲渡,それから法規制の改正への規定改訂を含めた対応など多岐にわたるが,事務系職員は定期異動により NIMS 内での複数の事務部門での業務経験を積んでいるので,それらを統括的に処理する能力を有している。統合イノベーション戦略 20197)などで要として注目される新たなテクノロジーに関して,たとえば AI 技術は統合型材料開発・情報基盤部門が主として扱っているが,実験や計算から得られたデータの扱いなど新たな契約上の課題に対応していかなければならない。現行の業務分担は,このような変化の著しい研究領域に順応するのに適している。なお,新規で高度な法務上の扱いに関しては,随時顧問弁護士の助言を得て対応する。
外部連携部門部門長
企業連携室xx
x的財産室室長
契約渉外・技術移転業務 組織的企業連携の企画・推進
知的財産業務全般
・二者間企業連携センター(CoE)
(企業・公的機関との三者間含む)
・多者間領域連携センター
・オープンプラットフォーム(MOP)
センター長・プラットフォーム長
図 2 外部連携部門の組織図
(2) 業務フロー
研究代表者からの契約締結申込書および研究計画書の提出を受けた後,外部連携部門では規程に基づいて研究費の算出,契約書案の作成を行い,相手方企業との調整を進める。契約書の内容が合意され,当事者双方の決裁を終えて契約締結された後,共同研究がスタートとなる。
1.1.2 組織的共同研究
(1)業務分担
NIMS が積極的に推進している企業連携センターにおける組織的共同研究においては,前項の個別のテーマに対する二者間共同研究と異なり,CoE(センター長)が日常の連携研究活動を統括し,事務局として外部連携部門がセンター長のサポートを行う。
センター長には原則として CoE の主要研究テーマを担う研究者が指名される。CoE の共同研究に参画するセンター長および研究者には,年間の活動を通じての貢献度と成果に応じた個人業績評価の特別ポイントが付与される。研究者にとっての CoE 参画のインセンティブは,この評価上のメリットのほか,企業と共に自身の技術をより実用に近いものに仕上げていく機会が取得できることにある。
つぎに外部連携部門のサポート体制だが,企業と定めた重点的な研究領域の課題について NIMS が組織的に取り組むという CoE の特徴を考慮して組まれている。外部連携部門では企業毎に企業連携コーディネータおよび事務担当に加え,契約担当を配置している。企業連携コーディネータは,渉外業務のうち特に企業が要望する課題に対応できる適切な研究者を探しだす業務に注力する。与えられた研究テーマについて研究拠点やグループなどの組織にまたがる横断的な研究チームを編成して臨むためには,NIMS 全体の研究を幅広く把握し,研究内容だけでなくパーソナリティなどにも配慮した研究者の選択が必要となる。このため CoE 担当の企業連携コーディネータは,主として, NIMS 内の状況を良く知る定年を迎えた研究者がセカンドキャリアとして務めている。なお,契約担当は前出の企業出身の特別専門職が担っている。
企業連携コーディネータは相手方企業の窓口担当とともに CoE 事務局として, 共有されたロードマップに基づいて,新規研究テーマを担当する研究者の探索から双方の担当研究者および関係者の打合せ設定などの共同研究開始に向けた準備,共同研究中の双方役員と連携した研究マネジメント上の課題解決やメンバー補充・変更,共同研究中あるいは事後の成果公表や特許出願などの手続サポートなどに対応する。基本的に,CoE に係る業務の窓口は企業連携コーディネータに一本化している。
(2)業務フロー
研究代表者からの契約締結申込書および研究計画書の提出後のxxxは個別的共同研究と同等である。ただし, CoE を共同運営する企業の多くとは共同研究基本契約を締結して,共同研究中の秘密保持や成果の扱いについてあらかじめ取り決めている。このため個々の共同研究の契約締結時には,当該基本契約と結びついた個別共同研究契約書に研究内容と分担,参画研究者,期間,研究費などの基本事項のみ記せばよく,共同研究を速やかにスタートできる。
研究代表者からの申込に至る前のプロセスでは,事務局と研究者が一体となって相手方企業のロードマップ等の戦略を意識しながら業務を進めることとなる。当該業務は主として新規研究テーマ探索に係るものである。共同研究基本契約とあわせて,新規テーマ検討のための双務的な秘密保持契約についてもあらかじめ取り交わしているケースが多く,双方研究者間の打合せがスムースに行え,また協議の深化につながっている。また,領域を絞り込んだ,あるいは領域を限定しない NIMS の研究紹介を行い,企業の研究者との意見交換を通じて新規テーマ化の確度を上げるワークショップの開催を行うこともある。
共同研究中や事後においては,事務局が設定した双方役員が同席する CoE 運営会議等で研究者が進捗報告を行い,問題があればその解決策を会議メンバーにて検討する。また,成果の公表時には,研究者からの連絡を受けて事務局が相手方に内容の確認等を行う。特許出願時には,研究者間で内容や貢献度の確認を行った後,事務局が連絡を受けて契約担当や知財担当と連携して共同出願契約の準備を行う。
(3)運営上の工夫 1 ~トップマネジメント~
CoE における複数の連携研究は共同研究契約に基づいて研究代表者が実施し,それら全体をセンター長が統括しているが,センター長は研究グループのリーダークラスが務めているので,グループを超えて研究者を組織しなければならない場合,CoE センター長の管轄外となる。グループや拠点の枠を超えて研究者を組織するために,CoE では双方の役員が同席する運営会議の場を設け,一定期間毎に進捗管理を行っている。運営会議では,研究者から進捗報告を受け,特定技術の専門家の研究参画が必要な場合には適任者を割り当てるなどの対策提示が双方役員の同意のもと
なされる。これにより,当該適任者は NIMS 役員の指示による組織的なミッションとして CoE の共同研究に関与することとなる。図 3 に,企業と NIMS による運営会議を含む CoE 運営体制の概念図を示す。CoE の運営方針は,事業戦略・研究開発戦略にそった企業の 3-5 年程度の中長期的な技術開発ロードマップをベースにして,NIMS の研究シーズや研究リソースなどを考慮して策定される。
役員クラスの立場では,個々の課題にとどまらずによりスケールの大きい視点から判断することが可能である。産業界のイノベーションにつながるブレークスルーとなる技術の確立には,短期間にしばしば発生する予算,人員等の研究リソース不足や事業環境の急激な変化に関わらず一貫して中長期的な目標に向けて強固な連携を継続するのだという強い意志が双方で共有されることが不可欠である。そのような持続的な連携とするためにも,CoE 発足時には NIMS 理事長と企業経営層の同意を確認し,運営中も役員クラスがその意志を受けついでいる。
企業研究者が外来研究者として参画
Z 課題担当チーム
部門 A
Y 課題担当チーム
X 課題担当チーム
部門 C
部門 B
センター長
研究拠点・部門
研究開発部門
企業連携戦略
CoE 運営方針
事業戦略・研究開発戦略
CTO 等
CTO・研究企画部門等
事務局
研究担当理事
研究担当理事・外部連携部門
CoE 運営会議
企業
図 3 CoE の運営体制概念図
(4)運営上の工夫 2 ~運営形態~
各 CoE の運営形態は,扱う研究領域や研究開発フェーズに応じて NIMS,企業が共に築き上げるもので,企業毎に異なっている。基本的には,技術研究組合などで用いられてきた研究マネジメント方式 8,9)である,①分担・持ち帰り方式(並行開発方式)あるいは②一体化方式に分類される。分担・持ち帰り方式では,並行するいくつかの研究プロジェクトについて,通常はプロジェクトを担当する研究チーム内で進捗管理をおこない,一定期間ごとに計画とのずれなどマネジメント上の課題のみを運営会議の場で共有して解決の方向を探る。一体化方式では,双方機関間で協議できる場を構築し,その場でいくつかの研究プロジェクトの進捗詳細を把握し,より詳細な課題への対応策等の検討を行う。一体化方式ではより短い間隔で頻繁に運営会議を設ける必要がある。CoE では,図 3 のように NIMS 内に組織横断的な課題別の担当チームを置き,日常の研究活動を推進している。より円滑な連携のため,企業からの外来研究者を当該チームに受入れるケースが多い。また,企業関連部門の研究者らとの打合せを定期的に行っている。研究活動が計画通りに進むことは少なく,研究費や研究者などのリソース補充や計画変更などプロジェクト続行に 不可欠な要素に関する対応策をあらかじめ考慮したリスクマネジメントが重要である。プロジェクト成否に関わる進
捗管理を行うために,計画上のマイルストーンを設け,そこまでにクリアすべき事項を明確にする。2019 年度に当初計画の最終年度を迎えた CoE では,次期計画に基づく共同研究の継続,企業で成果を受け取って本格的な実用化
の研究開発に移行するかどうかなどの重要な判断を下す必要がある。このため,限られた時間でプロジェクトの内容を理解し,問題の根源と解決の方向性を見出しやすくするために,項目を定めたフォーマットに従って運営会議での進捗報告を行うべく事務局間で準備を進めている。報告項目は次のようなものである。
・当初計画と進捗との乖離の有無(乖離有の場合は内容および理由,リカバリー策の提示)
・技術およびマネジメントの両面からの問題の有無(問題有の場合は内容および理由,リカバリー策の提示)
・論文等公表,特許(アイデア段階のものも含む),企業の事業貢献などの成果まとめ
・次期計画において想定されるリスクと対策の提示
・その他,CoE 内の他プロジェクトの参考となるような共同研究の推進に効果的だった事項など
(5)運営上の工夫 3 ~共同研究マネジメントの根幹となる企業の事業戦略を意識した運営~
企業の「中央研究所」の使命は,当初,目的とする研究開発を組織的に行って効率的に成果をあげることにあったが,社会の変化にともなって現在では従来発想では捉えづらい非連続的イノベーションや融合型イノベーションへの対応まで要請が拡がってきた 8)。このため,企業内の研究所という独立した組織から,その周辺を取り巻く企業内外の組織および関係者にも開かれたオープンイノベーションを採用するケースが増えている。従来担っていた技術動向調査およびロードマップ策定,要素技術開発,人材育成などのうち,技術動向や事業環境を把握してロードマップ策定する機能,つまり研究戦略立案を除くすべての機能が外部連携の対象となっている。
NIMS は以下の 4 つのミッションを掲げている。企業の研究所が連携する外部機関に必要とする機能の多くは NIMS のミッションと整合していると言える。
・物質・材料科学技術に関する基礎研究および基盤的研究開発
・研究開発成果の普及とその活用の促進
・NIMS の施設および設備の共用
・研究者・技術者の養成およびその資質の向上
企業が研究開発に国研や大学などの外部機関を利用するにあたっては,自社の事業全体をながめ,開発しているシステムの構成要素をブレークダウンして対象とすべき要素技術を見定めるところからスタートすべきである。事業戦略に合わせて,対象とする要素技術が製品開発へのブレークスルーひいてはコストダウンや機能アップなどの効果を発揮するキーとなる技術となることを明確にしておく必要がある。その共同研究のパートナーとして NIMS を選ぶ場合には,材料の機能改善,製法の簡略化などの物質・材料に係る基礎研究が貢献できるかを判断基準とするのが有効である。ところが,企業内のセクションの壁やそれぞれの要素技術の高度化にともなうシステム全体を理解する人材の不足などの企業側の事情や,実用化重視の企業と基礎研究・論文化重視の大学・公的研究機関の考え方の差異などによって有効な外部機関の活用に至らないケースが少なくない。国研・大学が企業の研究開発の基盤研究の受け皿と
なり,わが国全体のイノベーション・エコシステムを支える必要性が叫ばれる中,NIMS では企業の中長期事業戦略に結びついた材料の研究課題について社内のシステム開発部門なども巻き込んだ大型連携を検討し始めている。従来
は,ターゲットとする応用が同じでも,企業内のセクションの縦割りによって関連する複数の共同研究課題がこれら複数のセクションとNIMSでそれぞれ独立に進められる場合もあった。ターゲット製品が同じものについては,本来企業内の複数のセクションが連携して取組み,必要に応じて企業内の設計部門にも協力してもらうなどして製品への
展開をより確実なものとすべきであった。その反省から,まず企業側で事業化が必須となるアイ
テムを見出し,そのアイテムの技術的な構成要素と担当部門を整理した後,NIMSが得意とする材料分野の課題に問題を落とし込んでいく作業を行うことから始めるよう,連携フローの改善を目指している。
研究開発活動が高度で複雑なものとなる一方で,企業の開発現場の課題解決は緊急を要するものが多く,短期的な
目標設定を迫られることもある。しかしながら,イノベーションにつなげるためには将来を見すえて中期的に取り組む戦略的な研究活動も重要である。すなわち現場からのボトムアップ型の研究活動と戦略・企画部門とのトップダウン型の研究活動をバランス良く並進させていかなくてはならず,NIMS としてはそれぞれの活動への適切な研究者の
選択,企業の様々なセクションとの調整などしっかりした考えをもって臨む必要がある。今はそのバランス運営の生みの苦しみの最中だが,実質的に機能するイノベーション・エコシステムを実現するにはこれを乗り越えていかなくてはならない。
1.2 企業との共同研究をサポートする仕組み
1.2.1 基礎研究および基盤的研究開発によるシーズ育成
官民研究開発の支出拡大などによる産業セクターにおける科学研究の促進は,持続可能な開発目標(SDGs)の一つとしても挙げられているが 10),NIMS と企業の共同研究の足掛かりとなるのは NIMS の研究力である。研究力は有形・無形の研究成果物や設備などの研究資産とそれを使いこなす研究人材によって成り立つものである。
NIMS では,「組織ミッション型研究」と「自由発想型研究」の区分を設け,研究者には等分の寄与がなされるような基本方針を示している。前者は,これまで述べてきた MOP や CoE などの変化対応力が必要なプロジェクトに対して,研究組織の区分にこだわらず必要なメンバーが集うチームとして取り組むものである。後者は,研究者自身が獲得した科研費等の外部資金に加えて,NIMS が一定の研究資金を提供する自由発想研究支援制度によって支えられる。このような業務配分によって,NIMS 全体としての研究力強化を目指している。自由発想研究支援制度は 2017年度より NIMS の特許収入などの自己収入を原資として導入された。現行の科研費には採用され難い挑戦的な提案を支援する制度や,学生がいない国研で優れた採択課題の研究を加速するためにポスドク雇用を支援する制度などがある。年度初めに公募が行われ,NIMS 内の審査をへて採択が決定される。非採択課題については,次年度への申請に向け学識経験者からのアドバイスを受けることができるなど,研究者の提案力を高めるための工夫がなされている。将来的には本支援制度による自由発想型研究を基に育成された技術シーズが,企業との共同研究という組織ミッション型研究に活用されるという 2 つの研究区分が協奏する研究システムの構築を目指している。自由発想型研究の成果を組織ミッション型研究へ展開するために,NIMS では成果を特許権や技術的なノウハウなどに分類して規定し,それぞれに適したライセンスなど企業等に利用してもらうための契約形態を提供している。契約形態の詳細は次章で述べる。
1.2.2 企業や大学の研究者の NIMS への受入
前出の“産官学の知識集約型価値創造システムの中核としての機能強化”という観点から,NIMS は企業や大学の研究者を受入れ,こうした外部の研究者に最先端設備を備えた研究環境を有効活用して頂きながら共に研究活動に取り組んでいる。機関間の共同研究契約に基づいて企業や大学の所属のまま外来研究者として受入れるケースと,機関間の協定書に基づいて企業や大学と NIMS にそれぞれの従事率で就労するクロスアポイントメントとして受入れるケースがある。
外来研究者は共同研究の期間中 NIMS に駐在し,NIMS の研究責任者の指導のもとで研究設備を利用して NIMS ポスドク研究員らと研究を推進することができる。共同研究中の企業や大学と NIMS の円滑なコミュニケーションによる研究進捗および共同研究終了時の速やかな成果の技術移転などが期待できる。なお,CoE を運営する企業については,希望があれば外来研究者が利用可能な専用居室を NIMS に設置している。
大学からの外来研究者やクロスアポイントメントで NIMS のポジションを持つ大学の研究者には,NIMS の立場で NIMS 研究者と企業との共同研究への参画あるいは NIMS 研究者と次世代の技術育成を支える基礎的な研究活動への参画を通じて,NIMS と共にわが国の技術基盤向上に貢献頂いている。また,いくつかの大学との連携大学院制度を用いて NMS 内で学位取得のために物質・材料科学分野の研究課題に携わっている連携大学院生については,NIMSの研究業務との整合性が認められる場合に当該業務に対する賃金支給をする「NIMS ジュニア研究員」というポジションを設けている。NIMS ジュニア研究員は NIMS に所属する研究者として企業等との共同研究に参画することも可能である。さらに,NIMS 研究者を通じて研究費やNIMS 来所旅費を支給する「NIMS 連携拠点推進制度」を用意している。当該制度は,大学の教員やポスドクも対象としている。
1.2.3 企業による NIMS 内研究公募
NIMS 研究者が自発的に取り組める提案型の研究テーマ設定を目的として,CoE を共に運営する企業と 2018 年度に NIMS 内研究公募を行った。その手順を踏襲して,現在までに国内外企業 3 社と実施してきた。メリットは, NIMS の連携コーディネータと企業のみでは探し出すのが困難な技術シーズにアクセスできることである。実際に,研究者がxx温めてきた提案のほか,確立したての新規技術や若手研究者が育成した技術など企業との接点がなかった提案がなされている。
手順は,基本的には以下のようになる。まず,企業が成長分野と考える事業領域への貢献が期待される研究領域,適切な研究期間,費用を設定する。つぎに,背景,研究課題,研究業績などの申請書の内容および事業貢献のポテンシャル,独自性・新規性などの評価のポイントを定める。研究開始時期に合わせて,企業と NIMS で応募,審査,採択のスケジュールを決定する。以上の内容が決まったら,NIMS 研究者にアナウンスし,研究提案を募る。研究者へはメールや所内ホームページのほか,企業による説明会を通じて案内する。
なお,企業の事業への直接の貢献を想定した課題設定とした NIMS 内研究公募では,NIMS の研究組織を横断するチームとして企業と組織的に取り組める体制構築も提案すべき事項に含めた。また,年度毎のピアレビューや成果の公表・扱いについては,企業の要望に応じて設定した。
2. 企業との共同研究を円滑に進めるための契約のポイント
NIMS では成果の普及と活用促進を目的として,企業と様々な研究連携活動を行っている。それぞれの連携形態において想定される秘密情報の管理,成果の扱い,実験等を行う事態に備え,契約のバリエーションを用意している。本章では,その多彩な契約形態について述べる。
2.1 契約の基本体系
NIMS 技術シーズを企業と共に高めて産業応用への貢献を目指す企業との共同研究では,権利関係を明確にした契約業務が必要である。また,共同研究契約に至る前の検討段階では秘密保持契約や研究試料貸与契約が行われ,産業応用の検討段階には技術指導/業務実施契約,知的財産権の実施許諾契約などが発生する。以上の企業連携のベースとなるいくつかの契約形態について基本的な規定内容を表 2 に示す。なお,掲載内容はあくまでも基本的なもので
表 2 NIMS の企業連携に係る契約の基本体系
契約形態 | 目的 | 基本的な規定 | |||
秘密情報の扱い | 知的財産権の扱い | 研究員派遣,装置利用など | |||
NIMS 保有知財 | 発生した知財 | ||||
秘密保持 | 共同研究等の実施可否検討 | 〇 | × | × 秘密情報による 知財創製原則禁止 | × |
研究試料貸与 | 共同研究等の実施可否検討 | 〇 NIMS → 企業へ秘密情報開示 | 〇 | × 秘密情報による 知財創製原則禁止 | × |
技術指導 | 確立された技術によって指導 | 〇 NIMS →企業へ秘密情報開示 | 〇 | × 秘密情報による 知財創製原則禁止 | 〇 |
業務実施 | 確立された技術によって 依頼業務に対応 | 〇 | 〇 | × 秘密情報による 知財創製原則禁止 | × |
共同研究 | 共同研究実施 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
実施許諾 | NIMS 知財のライセンス | 〇 | 〇 | 〇 | × |
共同出願 | 研究成果に係る共同出願 | × | × | 〇 | × |
( 〇:該当する規定あり ×:該当する規定なし)
あり,研究課題の位置づけ等を考慮して,企業担当者との契約交渉において可能な限り柔軟に対応することとしている。
共同研究前の検討段階の連携では,取り交わされた技術に係る秘密情報の使用目的は共同研究等の次のステップを考えることであり,契約では知財創製を想定していない。NIMS が確立した技術をもって行う技術指導/業務実施契約でも同様に知財創製を想定していない。また,試料貸与,技術指導/業務実施の契約においては,基本的に NIMS保有の知的財産権の行使はしない。これらの業務の結果,知的財産権の実施許諾が必要となった場合には改めて実施許諾契約を締結することとしている。
共同出願契約は,共同研究の成果を用いて発明がなされて特許出願をすることとなった場合に,当事者間で当該特許出願に係る手続・費用,権利取得・維持などの内容について規定したものである。NIMS と企業の共有特許の実施に係る内容は,共同出願の基となる共同研究の開始前に決め,共同研究契約に規定しておくことを NIMS の標準手順としている。国研では自己実施により直接収入を得ることができず,NIMS では企業との共有特許を用いて第三者から実施料収入を得ることを基本的な知財活用方針としている。しかしながら,当該共有特許の実施対象となる事業を扱う企業が少数に限られていて,当該企業による特許実施の独占がわが国全体の技術競争力向上につながると判断できるなどのケースにおいては,共有特許の独占実施を許諾することもありうる。これも前出の柔軟な対応の一つであり,NIMS の特許ライセンス実績(NIMS 調査による,2011-2017 年度通算の大学・公的研究機関の特許収入ランキングで 1 位)に裏づけられた特許ライセンスの各種オプションの中から企業ニーズに合った提案が可能である。
以上の契約形態について,基礎から応用,実用化に至る研究開発フェーズおよび技術レベルと対応させて並べたのが図 4 である。各契約はそれぞれ独立というよりは,研究開発フェーズに合わせた移行したり,先行して産業応用するための実施許諾契約とさらなる高度化を目指す共同研究契約を並進させたりと互いに関わり合っている。NIMSの企業連携室では定例ミーティングで企業連携コーディネータらが企業との契約交渉のアップデートを行い,同時に契約経緯と結果を契約情報データベースシステムに各自入力している。事務系職員は,NIMS 各部門からの関連情報
共同研究
•二者間
•多者間
組織的連携
•二者間
- 企業連携センター
•多者間
-MOP
- 領域センター
研究試料貸与
実施許諾
•知的財産権
•ノウハウ
技術提供
•業務実施
•技術指導
秘密保持
装置利用
技術打合せ
研究連携
実用化
企業
技術レベル・オリジナリティなど
研究フェーズ(基礎-応用-実用化)
図 4 NIMS が提供する連携形態の技術レベルおよび研究フェーズによる分類
と合わせて,契約形態毎のひな形に適宜反映させる。このような業務手順にしたがって,交渉現場で得られた契約上のノウハウが NIMS の企業連携の基本ポリシーとしてまとめ上げられていくのである。なお,企業での実用化への橋渡しの最終フェーズとなる組織的連携スキームには前出の MOP,CoE に加えて領域センターがある。領域センターは,研究課題毎に複数企業が集い,基盤技術を共有してそこから創出された成果の一部をフィードバックして当該基盤を強化しながら,一方では実用化に向けた固有の成果を創出・発展させる仕組みである。現在,蛍光体,生体材料,嗅覚センサーを課題として扱っている。
2.2 契約業務におけるポイント
2.2.1 組織のコンプライアンス上の注意点
コンプライアンスの観点から,研究部門と契約部門の役割分担,責任の所在は明確にしている。研究部門のマネジメントラインに沿って決裁された契約申込書および研究計画書(いずれも NIMS 内のみで使用する書式)を受け,契約部門での研究費見積および契約書案の作成に着手する。NIMS では企業との個々の共同研究間の技術コンタミネーションを避けるため,共同研究に参画する研究者の研究業務全般に関して研究部門でチェックした結果を研究計画書に記入し,契約部門でも当該結果を確認する手順としている。研究費は,提出された研究計画書に基づいて,契約部門で人件費や設備利用費の算出ルールにしたがって見積もられる。共同研究がスタートした以降の注意点としては,共同研究での成果か否かの判断を求められる場合に備えるための研究者によるラボノート作成がある。研究者は,当該共同研究に限らず日常の研究業務内容について各自ラボノートに記録することとしている。
2.2.2 外国企業との連携
外国企業との連携は,可否判断の基準と照らし合わせながら進めている。原則として,日本国内での事業実態(売上,雇用等)があり,日本での税金納付に寄与している企業であること,もしくは日本経済・産業の発展に貢献できる企
業であること,またこれらに該当しない場合でも対象とするシーズ研究に関心を持つ企業が国内に存在しないことを判断基準としている。外国企業との輸出管理に係る案件については内部統制部門での関連法令による制約対象とならないことの審査を受けた後,連携業務を進めることとしている。
2.3 企業連携のパートナー探し
2.3.1 展示会等の活用
研究成果を紹介する場は学会やシンポジウムなど世の中に数多くあるが,NIMS は成果の社会展開を指向して,プッ
シュ型で企業とつながる以下のような場を積極的に用意している。
・研究分野を限定せずに NIMS の最新研究成果について講演・パネル紹介する成果展示会の開催
(NIMSWEEK と称し,例年 70 ~ 80 件ほどのポスターパネルを用意して,その場で直接研究者が説明する。また一部口頭発表も行い,より内容を理解して連携イメージの具体化を促す機会も提供している。)
・特定の研究分野を詳しく知りたい企業向けのパートナーシップ制度の提供
(会員となった企業に特定分野の NIMS 内の研究プロジェクトや国プロの研究成果などを紹介する。現在は磁石材料、インフラ構造材料および データ駆動材料開発について制度を用意している。)
・JST 新技術説明会等の他機関が主催するイベントでの講演会の開催や展示ブースの設置
このような展示会等を介した研究成果紹介は即連携につながるケースがあるが,ウェブ上に公開されたポスター展示資料を数年後に見た方から問合せを受けるケースもあり,プロモーション効果は比較的長期に継続する。また, NIMS 自体と所属する研究者および研究内容が認知されるにはある程度の時間を要するため,定期的なプッシュ型技術紹介が効果的である。
以上の企業向けプロモーションは,次のような企業にとってメリットがあると考えている。
・新しいシーズを探している企業
・保有する技術課題について NIMS とどのような協業ができるか分からない企業
・NIMS の門戸を直接叩くことにハードルを感じている企業
・意見交換会などを通じての他参加企業との情報交換およびネットワーク構築
2.3.2 展示会等の事後フォロー
企業から技術相談や共同研究等の問合せを受けるのは,前項のイベントやパートナーシップ制度の場合もあれば,ホームページの問合せ窓口からの場合もある。いずれの場合でも,より良い連携の取り組みとなるよう,NIMS 企業連携室は以下に配慮しながら調整を進めている。
・特許出願あるいはノウハウ確立を経て論文発表や新規材料開発などの成果を生み出すことができる研究課題設
定となっているか
・NIMS が材料の新しい機能を見出して企業が製品への適応性評価を進めるといった適切な役割分担となっているか
・技術代行による解析装置利用については受託分析会社など民間ではなし得ない先進的あるいは独自の設備を利用したものであるか
・研究試料の販売など公的研究機関として対応できない内容となっていないか
以上を踏まえたうえで,該当する研究者を探し出して企業と情報共有し,面談の調整を行う。材料を専門に扱う研究所であることから,多様な企業から問い合わせを受ける。このため,同一の研究者が同一の研究課題を別な企業と
行うことによる技術コンタミネーションがないように,課題設定におけるターゲットとなる材料の機能や応用分野の既存の企業連携との切り分け,担当研究者の切り分けなどについて研究部門と連携コーディネータが整理しながら,企業との調整を進める必要がある。
3. 今後の展開
国の支援等により,国立研究開発法人が企業連携を促進させる施策を講じる際のオプションは多様化してきた。 2018 年 12 月の研究開発力強化法の改正では,NIMS は NIMS 発ベンチャーへの単独あるいは企業等と共同で出資できることとなった。これにより今後自己収入を拡大し,前出の自由発想研究支援制度などを通じて技術基盤を強化するという循環型の経営につなげられる可能性がある。また,図 4 に示す従来の実用化手前までの関わりに留まらず, NIMS 発ベンチャーへの出資を通じて研究成果の社会展開に貢献できる。ただし,量産安定化などの実用化の壁を超えるブレークスルーは NIMS 発ベンチャーを含む企業の役割であることに変わりはなく,NIMS 発ベンチャー自ら企業等の協力を得てこれを推し進めていく必要があるのは従来と同様である。そのための企業等の第三者機関との連携構築サポートなどは今後の検討課題である 11)。
CoE などの組織的連携については,企業と技術開発ロードマップを策定し,それを基に当該技術領域に関する国と産業界の役割分担を考えるといったわが国の産業発展につながる大局的な動きがあっても良い。そのためには従来は企業から共有されたロードマップにそって組織的連携の運営方針を作り上げていたのを,NIMS が把握している学会等の情報や双方による調査の結果なども考慮して共に中長期的な方針を策定するスタイルへと変えていかなくてはならない。また,企業側にも単年度毎のチェックは行いつつも中長期的に取り組むという強い意志をもって臨んで頂く必要がある。前出のように CoE ではトップダウン型の運営によってこのような持続的な取り組みを一つでも増えせるように努めているところである。企業の研究開発現場での迅速な対応が必要な案件も少なくないため,適切な案件を選定して成功例を積み重ねることが重要であると考えている。
最後に,企業連携コーディネートの現場で蓄積されたコーディネータの知見をデータベース化し,これを次のコーディネートの場で活用するといった業務フロー改善は始まったばかりであり,今後も継続する必要がある。文書決裁
などの他の業務システムとの連携などによって,企業とのファーストコンタクトから共同研究契約の締結に至るまでの業務フローの見える化を進め,コーディネータがより特殊で複雑なケースへの対応に注力できるようになれば, NIMS 独自の有用な知見が蓄積されることとなる。今後 NIMS に期待されるより高度で質の高い企業連携を実現する
ためには,連携を担う人材の確保および能力開発に加え,社会の変化に応じて迅速かつ柔軟にできるよう継続的に業務の質を高める工夫も欠かせない。
文 x
1)総合科学技術・イノベーション会議 第 1 回基本計画専門調査会,「資料 6 文部科学省 科学技術・学術審議会総合政策特別委員会 資料」: xxxxx://xxx0.xxx.xx.xx/xxxx/xxxxxxxxx/xxxxx0/0xxx/xxxxx0.xxx
2)NTT データ先端技術株式会社ホームページ ,「第 1 回 社会とビジネスを変える AI」: xxxx://xxx.xxxxxxxxxxx.xx.xx/xxxxxxx/xxxxxx/xx00.xxxx
3)xx xx,第 9 章 第 3 節(3)物質・材料研究機構が提供する「会員制研究連携制度 NIMS オープンイノベーションセンター(NOIC)」におけるオープンイノベーションの取り組み,「オープンイノベーションによる新事業創出,早期事業化とその実践事例」,株式会社技術情報協会 発行・編集,(2017 年),375 ページ
4)xx xx,「産学連携(4)NIMS における産学連携に関する知的財産への取組み」,一般社団法人日本鉄鋼協会会報ふぇらむ,第 20 巻,第 11 号,516 ページ(2015 年)
5)国立研究開発法人物質・材料研究機構ホームページ,「NIMS-XXXXX x世代材料研究センター」: xxxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxxxxxx/xxxx-xxxxx/
6)国立研究開発法人物質・材料研究機構プレスリリース,「物質・材料研究機構(NIMS)と化学 4 社によるオープンイノベーションを推進する枠組みの構築」,2017 年 6 月 19 日: xxxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxx/xxxxx/0000/00/000000000.xxxx
7)「統合イノベーション戦略 2019」,2019 年 6 月 21 日閣議決定 : xxxxx://xxx0.xxx.xx.xx/xxxx/xxxx0000_xxxxxx.xxx
8)x xxx,第 1 章 共同研究開発・研究委託の形態と効果的な進め方,「共同研究開発・研究委託の進め方と契約実務」,株式会社技術情報センター 発行,(2004 年),14 ページ
9)平成 28 年度産業技術調査事業(事業スキームに対する研究開発プロジェクトの成果の分析)調査報告書,株式会社 NTT データ経営研究所 事業戦略コンサルティングユニット 産業戦略グループ,(2017 年),27 ページ: xxxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxx_xxx/xxxxxx/X00XX/000000.xxx
10)外務省ホームページ,「持続可能な開発目標」(SDGs)について,2019 年 1 月 : xxxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxxx/xxxxx/xxx/xxxx/xxx/xxxxx_xxxx_xxxxxxx.xxx
11)国立研究開発法人審議会 物質・材料研究機構部会(第 11 回)配布資料,資料 2「NIMS ベンチャー支援について」, 2019 年 1 月 22 日:xxxxx://xxx.xxxx.xx.xx/x_xxxx/xxxxxx/xxxxxxxxxxx/000/xxxxxx/0000000.xxx