IASB における検討状況
日付 2015 年 10 月 22 日
プロジェクト 保険契約
IASB における検討状況
項目 (保険契約:有配当契約に関する会計処理)
I. 本資料の目的
1. 本資料は、IASB の保険契約プロジェクトにおける有配当契約に関する 9 月 IASB 会議における暫定決定事項の内容と当該会議に先立ち開催された保険契約専門委員会での審議の状況をご説明することを目的としている。
2. 本資料上、IASB が 2010 年 7 月に公表した公開草案「保険契約」を「2010 年 ED」、 2013 年 6 月に公表した改訂公開草案「保険契約」を「改訂 ED」と称する。
II. IASB における有配当契約に関するこれまでの検討状況
3. IASBは、有配当契約を「直接連動の有配当契約」と「間接連動の有配当契約」に区分して検討してきた。そして、2015 年 6 月IASB会議において、直接連動の有配当契約に関して、その対象範囲とこれに対して適用する会計処理(以下「変動手数料アプローチ」という。)などを暫定決定している。変動手数料アプローチでは、金融面の見積りの変更(金利変動など)も非金融面の見積りの変更(死亡率などの変更))も手数料の変動と捉え、契約上のサービス・マージン(CSM)で調整される(CSMはフルアンロックされる)。また、2015 年 9 月IASB会議において、純損益に表示する「保険の投資費用」1の計算に使用する金利2などに関して暫定決定が行われている。
4. 保険契約の分類と適用される会計モデルとの関係については、これまでの IASB における審議を踏まえると、次表の通り整理される。このうち、網掛け部分が 2015年 9 月 IASB 会議での暫定決定事項である。
1「保険の投資費用」とは、従来、「(保険契約負債の)金利費用」と呼ばれていたものである。
2上記の他、企業が保険契約の測定に変動手数料アプローチを使用しており、かつ、保険契約に組み込まれ
た保証から生じる金融市場リスクを軽減するために FVPL で測定されるデリバティブを使用する場合には、保険契約に組み込まれた保証の価値(履行キャッシュ・フローを用いて算定)の変動を純損益に認識することが認めることを暫定決定している。
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図表 1:保険契約の分類と適用される会計モデル(概要:2015 年 9 月時点)3
論点 | 無配当契約 | 間接連動の 有配当契約 | 直接連動の有配当契約 |
対象範囲 | 右記以外 | 保険契約者へ支払うキャッシュ・フローが基礎となる項目からのリタ ーンに連動する。 | |
右記以外 | ・企業の義務が、保険契約者へ基礎となる項目の価値の同額から変動手数料を控除した金額を支払うことである。具体的には次の 3 要件を満たすこと。 ⯎ 契約上、保険契約者は、明確に特定された基礎となる項目のプールにおける定められた持分に参加していること ⯎ 企業は、基礎となる項目からのリターンの重要な持分と同額を保険契約者に支払うことを予測していること ⯎ 企業が保険契約者に支払うことを予測しているキャッシュ・フローの重要な部分は、基礎となる項目からのキャッシュ・フローに連動するこ とが予測されていること | ||
モデル | 一般モデル | 変動手数料アプローチ | |
見積りの変更 | 金融面の見積りの変更:純損益又は OCI で認識する。 非金融面の見積りの変更:CSM で調整する。 | 金融面の見積りの変更及び非金融面の見積りの変更はともに CSM で調整する。(CSM はフルアンロック) | |
保険の投資費用の計算に使用する 金利 | 市場変数の変動の影響を OCI 又は純損益に表示することを会計方針の選択とする。 ⯎ 純損益に表示することを選択した場合、現在の金利を使用する ⯎ OCI に表示することを選択した場合、下記の通り | ||
実効利回り法 | 右記以外 実効利回り法 | 企業が当該基礎となる項目を保有している場合(経済的ミスマッチがない 場合) 当期簿価利回り法 | |
CSM 償却 | 時の経過及び 有効契約件数 | 時の経過(実質的に無配当契約と同じである。) |
5. IASB は、2015 年10 月会議において、有配当契約に関して次の事項を審議しており、
2015 年中に保険契約基準の開発に向けた審議を概ね最終化する予定である。
3 有配当契約に関するこれまでの審議の詳細については、参考資料 1「有配当契約に関する IASB
によるこれまでの審議の概要」を参照。
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(1) ミラーリング・アプローチを残すべきか
(2) 表示及び開示
III. 2015 年 9 月 IASB 会議における有配当契約に関する審議(概要)
6. 有配当契約の会計処理について、2015 年 9 月 IASB 会議では、主に次の論点を議論している。
(1) 市場変数の変動の影響を純損益又はその他の包括利益(OCI)のいずれで表示するか、及び、その場合に使用する金利
(2) その他の包括利益の累計額(AOCI)残高に関する移行時の簡便法
7. 今回のIASB会議における暫定決定事項の概要は、次の通りである4(詳細は、参考資料 2 を参照。)
図表 2:暫定決定事項の概要
(論点 1:市場変数の変動の影響の純損益又は OCI のいずれで表示するか) (1) 有配当契約に対しても、無配当契約と同様に、企業は、会計方針の選択によって市場変数の変動の影響を純損益又は OCI に表示することを認める。 (論点 2:純損益に表示する「保険の投資費用」の計算に使用する金利) (2) 純損益に表示する「保険の投資費用」の計算に使用する金利は、市場変数の変動の影響を純損益で表示することを会計方針として選択した場合は「現在の金利」であり、OCI で表示することを会計方針として選択した場合は、次の通り、 「実効利回り法」又は「当期簿価利回り法」である。 | ||||
条件 | 目的 | 純損益の計算に使用 する金利 | ||
原則 (下記以外) | 原価測定基礎を用い て純損益に保険投資費用を表示すること | 実効利回り法 | ||
経済的ミスマッチがない | 会計上のミスマッチ | 当期簿価利回り法 |
4 2015 年 9 月 IASB 会議の暫定決定の冒頭に、有配当は「企業が、保険事故の発生時に被った損失に見合う支払の他に追加して行う支払を通じて、報酬とリスクを保険契約者と共有する仕組み」を指すものであり、保険契約者へのそれらの追加的な支払は、市場変数の変動によって影響を受ける可能性があると記載されていた。
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(直接連動有配当契約で、企業が当該基礎とな る項目を保有) | を解消すること | |||
(3) 実効利回り法の詳細なメカニズムは、公表予定の新保険契約基準上、規定しないこととする。 (論点 3:市場変数の変動に伴うキャッシュ・フローの変動の取扱い5) (4) 多くの有配当契約において、市場変数が変動した場合、割引率が変動することに加えて、保険契約者へ支払うキャッシュ・フローの名目額も変動する。市場変数の変動の影響に関して、両者を整合的に包括利益計算書の同じ場所(両方とも純損益、又は、両方ともOCI)に表示する。 (論点 4:有配当契約における AOCI 残高に関する移行時の簡便法) (5) 市場変数の変動がキャッシュ・フローの金額に影響を及ぼす有配当契約であり、かつ、実効利回り法が適用される契約については、遡及計算が実務上不可能な場合には(キャッシュ・フローの金額の変動を遡及して把握することが困難なため)、移行時の AOCI 残高をゼロとする簡便法を認める。 |
IV. 第 21 回保険契約専門委員会(9 月 18 日)での審議状況
8. 9 月 18 日に開催された第 21 回保険契約専門委員会では、2015 年 9 月 IASB 会議に先立ち、IASB 会議用のペーパー及び当該ペーパーにおける IASB スタッフによる分析や見解に対する ASBJ 事務局による主な気付き事項を踏まえ、専門委員による検討が行われた。ASBJ 事務局が提示した主な気付き事項、及び、これに対して専門委員会において示された主な見解は次の通りである。
ASBJ 事務局の主な気付き事項
9. 第 21 回保険契約専門委員会において、ASBJ 事務局から主に次の気づき事項を提示した。
(総論)
(1) IASB は、2015 年 6 月会議と今回の会議において、有配当契約に関する主要論点に関する審議を概ね終える予定と考えられる。IASB の審議は、幅広い市場関
5 IASB 会議において、解約に伴うキャッシュ・フローの変動は、市場変数の変動に伴うキャッシュ・フローの変動には含まれないという見解が IASB スタッフより示された。
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係者からの見解を踏まえたものであるが、改訂 ED と比較して複雑性が高まっているという指摘があるほか、改訂 ED から大幅な変更が行われてきている。このため、最終化する前に、基準が理解可能で適用可能であることを確保する観点から、フィールドテストを十分に実施するほか、再公開草案の必要性について、デュー・プロセス遵守の観点から真剣に検討する必要があると考えられる。
(論点1 純損益表示と OCI 表示を会計方針の選択とすべきか)
(2) 市場変数の変動の影響を純損益に表示するか又はOCI に表示するかの選択を会計方針の選択とするという考え方については、無配当契約における検討と同様に、適当でないと考えられる。むしろ、割引率の変動の影響を OCI に表示することを原則としつつ、当該取扱いによって新たに創出されうる会計上のミスマッチに対応するため、一定の状況が満たされる場合に限って、割引率の変動に起因する保険契約負債の再測定差額を純損益に表示することを許容すべきと考えられる。
(論点2 純損益に表示する保険投資費用の計算に使用する金利)
OCIによる表示
(3) 財務諸表の測定基礎については、財務業績(純損益)の表示の観点と財政状態の表示の観点とで各々測定基礎を識別するとともに、仮に両者で目的適合的な測定基礎が異なる場合には、その差額を OCI に表示するという考え方は、当委員会がこれまで概念フレームワークにおける議論において主張してきた考え方と整合的であり、考え方としては一定の支持ができる。
当期簿価利回り法と実効利回り法の使い分け
(4) 当期簿価利回り法は、資産側(基礎となる項目)で純損益に認識したものを、保険負債側の保険投資費用として認識するものであり、会計上のミスマッチを 全く発生させないための例外的な会計処理である。このため、当期簿価利回り 法の適用は、経済的ミスマッチが発生しない場合に限定して要求するとともに、実効利回り法を適用する場合とでOCI に表示する目的が異なる旨を明確化する ことは妥当と考えられる。
(5) 経済的ミスマッチが存在しない場合の要件についても、当期簿価利回り法の趣旨を踏まえると、概ね妥当と考えられる。
実効利回り法の詳細なメカニズムを規定しない点
(6) 原価ベースの測定基礎を使用して「保険の投資費用を」決定する詳細なメカニズムを定めないという提案については、会計基準上でメカニズムを網羅的に記載することが困難であると考えられることから、詳細な定めを記載しないことに同意する。
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(7) しかし、採用されるメカニズムによって財務諸表に与える影響が大きいと考えられることを踏まえると、次のような措置が必要と考えられる。
① 企業が「保険の投資費用」を決定するために使用するメカニズムを決定するにあたって、保険契約の性質と使用するメカニズムの目的とが整合的なものであることを確保する必要がある旨を要求すること
② 考えられるメカニズムの目的と長所、短所について適用指針において記載すること
③ 使用したメカニズムの内容及び理由について開示要求で定めること
(論点 3 市場変数の変動によるキャッシュ・フローの変動額の表示方法)
(8) 今回の提案では、次の点について、さらなる検討が必要と考えられる。
① 市場変数の変動がキャッシュ・フロー見積りと割引率に与える影響の双方をOCIで表示すべきとの提案については、次の 2 つの見解があり得る点6。
⚫ 仮に変動利付債券において市場変数が変動した場合、キャッシュ・フ ローの見積りへの影響と割引率への影響の双方を考慮することによ って、金利変動による経済的な影響がxxに表現されると考えられる。このため、市場変数の変動がキャッシュ・フローの見積りに影響を及 ぼす有配当契約の保険契約についても、当該考え方と整合的に、キャ ッシュ・フローの見積りと割引率の変動の双方を整合的に取り扱うべ きである。
⚫ 割引率の変動の影響を OCI に表示すべきと考えた理由の一つに、保険契約から生じる当初の将来キャッシュ・フローの見積りが比較的確度の高いものとしたうえで、割引率は時の経過に応じて巻き戻るという考え方があった。当該考え方を踏まえると、金利変動によるキャッシュ・フロー見積りの変動の影響を OCI に表示すべきでない。
② 金利が変動した場合、有配当契約に関するキャッシュ・フロー見積りは、次の 3 つの要因によって変動しうると考えられるが、こうした要因のすべてを他のキャッシュ・フロー見積りと区分して表示することは、実務上、非常に困難と考えられる点。
⚫ 保険契約者に対する支払キャッシュ・フローの変動
⚫ 基礎となる項目のパフォーマンスの変動
⚫ 保険契約の解約や新規加入
(論点 4 有配当契約における AOCI 残高に関する移行時の簡便法)
6「原価ベースの測定基礎」を用いて純損益を表示することと市場変数の変動をキャッシュ・フ
ロー見積りに反映するか否かとは、必ずしも直接的な因果関係はないと考えられる。
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(9) 移行時において、AOCI 残高をゼロとする提案については、考え方としては整理が困難と考えられる。
(その他:検討を要する主な検討事項)
(10) 9 月の IASB 会議で議論対象とはなっていないが、間接連動の有配当契約については、特に次の点に関する検討や明確化が必要と考えられる。
① 「相互扶助」について、直接連動型の有配当契約だけでなく、間接連動型の有配当契約に対しても適用されるべきか
② 会社持分と保険契約者持分の決定に関して企業が裁量権を行使する場合における具体的な会計処理
保険契約専門委員会において示された主な見解
10. IASB 会議の審議資料及び ASBJ 事務局の気付き事項に対して第 21 回保険契約専門委員会において示された主な見解は次の通りである。
(論点1 純損益表示と OCI 表示を会計方針の選択とすべきか)
(1) ASBJ の事務局の気づき事項に賛同する。無配当契約も有配当契約も、純損益表示と OCI 表示を会計方針の選択とすべきではない。(監査人)
(論点2 純損益に表示する「保険の投資費用」の計算に使用する金利)
OCI表示することの原則的な目的
(2) OCI に表示する目的が、原価ベースの測定基礎を用いた「保険の投資費用」を純損益に表示するとされている点は、超長期契約である保険ビジネスの財務業績を反映するために目的適合的であると考えているため、IASB スタッフの提案を支持する。(作成者)
(3) 保険契約基準に関する議論が長引いている理由は、保険契約に対する考え方が関係者で分かれている点が大きい。一つは保険契約をサービス提供契約と捉えて、原価ベースで業績を測定し、予想と実績の差異は区分して認識した上で、実現した時点で損益に認識するという考え方である。もう一つは、金融商品のように毎期の価値の変動を業績として捉える考え方である。IASB スタッフの提案内容は、会計方針の選択により、この 2 つの考え方に対応可能であり、特に OCI と純損益に区分することは、原価ベースの測定基礎を使用することを目的としており、とても理解しやすい整理であると考える。(作成者)
実効利回り法の詳細なメカニズムを規定しない点
(4) 実効利回り法に関して詳細なメカニズムを規定しない点については、会計基準はプリンシプルベースで規定すべきと考えており、IASB スタッフの提案を支持する。法域によって様々である有配当契約の多様性を踏まえた提案と理解して
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いる。(作成者)
(5) 実効利回り法に関して、詳細を規定しないことによる利益操作が懸念される。例示や各メカニズムの目的や長所等を示すなど、実務で参考にできるような記載を検討すべきである。(監査人)
(6) 実効利回り法に関する詳細なメカニズムを規定しないことにより、企業間・時系列での比較可能性が保たれないことが懸念される。企業の恣意性を排除し、比較可能性を担保するような仕組みが必要である。(利用者)
(論点 3 市場変数の変動によるキャッシュ・フローの変動額の表示方法)
(7) 市場変数の変動の影響について、割引率の変動、配当キャッシュ・フロー及び解約キャッシュ・フローに分けて認識するのではなく、これらを一体で認識する方が保険会社の実務と整合し、投資家にとっても分かりやすい。その場合、有配当契約だけではなく貯蓄性の高い無配当契約も、解約等を想定すると金利変動によるキャッシュ・フローへの影響は大きいので、同様の取扱いとすることを希望する。(作成者)
(8) (保険契約者に支払われる)配当キャッシュ・フローも割引率も金利変動という同じ要因で変動するので、同様に取り扱う方が良い。(監査人)
(論点 4 有配当契約における AOCI 残高に関する移行時の簡便法)
(9) 移行時において、AOCI の残高をゼロとする IASB スタッフの提案を支持する。我々は、改訂 ED に対するコメント・レターの中で、移行時に CSM を再測定し、 AOCI はゼロでフレッシュ・スタートするアプローチを提案しており、その一部が実現したと考えている。(作成者)
(10) 無配当契約では将来の逆ザヤ相当が AOCI に表示される一方で、同様の有配当契約では AOCI 額がゼロとなり、両者の取扱いの差が大きい。遡及 するにあたっての過去のキャッシュ・フローの見積りは、有配当契約に限らず無配当契約も金利変動の影響を受けて煩雑なため、無配当契約も今回の提案と同様の取扱いとすべきである。(作成者)
(11) 市場変数の変動によるキャッシュ・フローへの影響は、契約により程度が異なるため、影響を受けるか否かで取扱いを区分するのは乱暴な印象を受ける。また、今回の提案は遡及処理した場合と結果が大きく異なるため、簡便法としての妥当性にも疑問がある。通常の有配当契約でも ALM 管理をしている会社であれば、AOCI を計上した方が良い場合もあると考えられる。(作成者)
(12) 実務上の困難さを理由にして、移行時の AOCI をゼロとするという結論にして良いのか疑問である。無配当契約との取扱いが異なる点や、資産側のみ AOCI
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が計上される点などの問題があり、また AOCI をゼロにした場合の CSM や利益剰余金等への影響も不明である。(監査人)
V. XXXX による✐後の対応
11. ASBJ は、IASB の審議状況を適時にフォローするとともに、改訂 ED に対するコメント・レターをベースにしつつ、専門委員会及び企業会計基準委員会での審議を踏まえて、IASB 関係者に対して適時に意見発信していくことを予定している。
ディスカッション・ポイント |
IASB における検討状況、及び ASBJ による今後の対応について、コメントがあれば頂きたい。 |
以 上
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(参考資料 1)
有配当契約に関するIASBによるこれまでの審議の概要
有配当契約に対する IASB のアプローチ
1. IASB は、無配当契約について暫定決定された会計上の要求事項を有配当契約に適用するにあたって、有配当契約に特有の性格を踏まえ、どのような修正が必要かを検討するというアプローチを採用している。
保険契約の分類
2. 有配当契約は、xxには、保険契約者へ支払うキャッシュ・フローが基礎となる項目からのリターンに連動する保険契約である。無配当契約はそれ以外の保険契約である。
3. IASBは、有配当契約を、「直接連動の有配当契約(Direct participation contracts)」と「間接連動の有配当契約(Indirect participation contracts)」に区分して検討を行っている。前者は、「企業の義務が、保険契約者へ基礎となる項目の価値の同額から変動手数料を控除した金額を支払うことである有配当契約」と定義され、後述の変動手数料アプローチが適用される。一方、後者はそれ以外の有配当契約と定義され、無配当契約にも適用される一般モデルが適用される7。(2015 年 6 月IASB会議で暫定決定)
4. 直接連動の有配当契約に該当するためには、次の 3 要件をすべて満たす必要がある。
(2015 年 6 月 IASB 会議で暫定決定)
(1) 契約上、保険契約者は、明確に特定された基礎となる項目のプールにおける定められた持分に参加していること
(2) 企業は、基礎となる項目からのリターンの重要な持分と同額を保険契約者に支払うことを予測していること8
(3) 企業が保険契約者に支払うことを予測しているキャッシュ・フローの重要な部 分は、基礎となる項目からのキャッシュ・フローに連動することが予測されていること
直接連動の有配当契約の会計処理(変動手数料アプローチ)
7 直接連動の有配当契約は、基礎となる項目のうちの企業持分を資産関連サービスに係る「変動手数料」(手数料は基礎となる項目に連動する)と捉え、間接連動の有配当契約は、基礎となる項目のうちの企業持分を「企業の経済的権利」(企業自身が基礎となる項目を保有している)と捉えている。
8 2015 年 6 月 IASB 会議の資料では、例示として、契約で 90%を保険契約者に支払うケースのほか、契約では 50%を保険契約者に支払うことが明示されているが、裁量権の行使により 90%を保険契約者に支払うケースも示されている
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5. 変動手数料アプローチでは、実質的には、企業は直接的に資産を保有しておらず、投資ポートフォリオにおける企業の利益は、企業が保険契約者に対して請求する変動手数料と同額という考え方によるものである。会計処理は、次の通りである。(6月 IASB 会議で暫定決定)
(1) 企業の保険契約者に対する義務は、投資ポートフォリオ(「基礎となる項目」と呼ばれるもの)のxx価値と同額を保険契約者に支払うという義務と、保険契約により提供されるサービスと引き換えに企業が控除する変動手数料との純額と考えられる。
(2) 基礎となる項目のxx価値と同額を保険契約者に支払うという義務の見積りの変更は、基礎となる項目のxx価値の変化と同額である。 (バランスシートのミラーリング)
(3) 将来のサービスに対する変動手数料の見積りの変更(金融面の見積りの変更(金利変動など)及び非金融面の見積りの変更(死亡率などの変更))は、将来のサービスに関連する見積りの変更と整合した方法で処理される(変更が生じた報告期間ではなく、将来にわたって認識するように CSM で調整される)。
(1) 企業は、当初認識時点で基礎となる項目を保持することを予定しており、毎期保持しているときは、当期簿価利回り法10又は実効利回り法11を使用できる。
(2) 上記以外は、実効利回り法を使用する。
7. 直接連動の有配当契約においては、時の経過に基づいてCSMを償却する(2015 年 6月IASB会議で暫定決定)。これは、実態的に一般モデルが適用される契約と同じ償却処理となると考えられる12。「時の経過」に基づくとした検討経緯は次の通りである。
9 本項の記載は 2015 年 6 月末現在のものである。2015 年 9 月の IASB 会議において変更された。
10 当期簿価利回り法は、基礎となる項目側で当期に純損益に認識した金額と同額を、保険負債側でも当期に純損益に認識する処理である(純損益のミラーリング)。
11 実効利回りは、将来キャッシュ・フローと現在価値を等価とする割引率(いわゆる内部収益率)である。
12 後述の通り、IASB は、一般モデルが適用される契約においては、時の経過及び有効契約件数に基づいて CSM を償却するとしている。しかし、IASB スタッフは、保険契約基準の目的は個々の保険契約を測定することであり、CSM 償却のドライバーに「有効契約件数」が含まれることはこの目的から読み取れるので、今般は「有効契約件数」を明示的に含めなかったとしている。
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(1) 直接連動の有配当契約は、保険カバーの提供に加え、投資関連サービスの提供も行っている。
(2) 保険カバーのドライバーは、無配当契約と同様に「時の経過」と考えられる。
(3) 投資関連サービスのドライバーは、「時の経過」と「管理対象とされている資産の金額」の 2 つがあると考えられる。
(4) 複数のサービスを提供している時は、各サービスが貢献する方法に応じて CSMの償却を行う方法が最も適切と考えられるという見解が示されつつも、主に次の理由から、時間の経過に応じて償却する方法が適切と考えられる旨が示唆された。
a 保険契約に内在する投資要素は、そもそも当初認識時点で分解できないと判定されたものであり、これを CSM の償却のために細分化することは困難であると考えられる。
b 契約における主要なサービスによって償却パターンを決定する方法があり得るが、何が主要なサービスであるかは契約期間の中で変化し得るため、実際の適用は複雑になると考えられる。
8. 保険契約のなかには、保険契約者間で基礎となる項目の同じプールを共有する他の保険契約者のリスクを負担することに同意している場合( 「 相互扶助 (mutualisation)」と称している)があり、直接連動の有配当契約においては、「相 互扶助」を適用することが検討されている。13これによって、保険者の直接的なエクスポージャーはグループの集積リスクまで減額されることになる。
間接連動の有配当契約及び無配当契約の会計処理(一般モデル)
9. 一般モデルは、これまで無配当契約に対して適用することを検討してきたモデルであるが、間接連動の有配当契約に対しても適用する方向で検討されている14。
10. 一般モデルの会計処理は次の通りである。
(1) 金融面の見積りの変更は純損益又は OCI で認識される。非金融面の見積りの変更は CSM で調整される。
(2) 金利変動の影響をOCIに表示することを会計方針として選択した場合における、純損益に認識する金利費用の算定に使用する金利に関しては、実効利回り法15を使用する。
13 間接連動の有配当契約において、どのような場合に「相互扶助」が適用されるのか、将来の
IASB 会議で検討される予定である。
14 IASB は、無配当契約と間接連動の有配当契約は、基礎となる項目からのリターンへの依存性
(資産依存性)の程度の差と考えている。
15 無配当契約は、資産依存性がない(金利変動を反映しない)ため、当初認識時の実効利回り
(=ロックイン金利)がその後も引き続き使用される契約と整理されている。
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11. 一般モデルが適用される契約においては、時の経過及び有効契約件数に基づいて
CSM を償却する。
12. 間接連動の有配当契約においては、会社持分と保険契約者持分の決定に関して企業が裁量権を行使することがあるが、その裁量権の行使の影響は CSM で調整することが検討されている。特に、金利は変動したが将来xxxxxxx・xxxは変更しなかった場合には、次の二つに分解してその効果を認識するとされている。
(1) 金利変動によって、将来キャッシュ・フローも変動したと仮定する。その効果は、純損益又は OCI で認識する。
(2) 将来キャッシュ・フローを変動させないために、企業は裁量権を行使して相殺的な将来キャッシュ・フロー変動を行ったと仮定する。その効果は、CSM で調整する。
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(参考資料 2)
2015 年 9 月 IASB 会議における有配当契約に関する審議(詳細)
論点 1:市場変数の変動の影響の純損益又は OCI のいずれで表示するか
背景(無配当契約における暫定決定)
12. 無配当契約においては、IASB は会計方針の選択を認めることを暫定決定している。
(1) 現在金利をベースとした測定基礎を使用して保険投資費用を純損益に表示する。
(2) 原価ベースの測定基礎を使用して保険投資費用を純損益に表示することにより、市場変数の変動を純損益と OCI に分解する。
13. IASB は、上記の暫定決定を行うに当たって、以下の点を考慮した。
(1) 原価ベースの測定基礎を使用して保険投資費用を純損益に表示することにより、市場変数の変動を純損益とOCI に分解することが適切である可能性がある。
(2) 原価ベースの測定基礎を使用して純損益を計算する場合、会計上のミスマッチが発生する可能性がある。そこで、会計上のミスマッチを解消するために、現在金利ベースの測定基礎を使用して保険投資費用を純損益に表示することを許容する。
(3) 便益がコストを上回る場合、企業が OCI を使用することによるコストを避けることを許容する。
有配当契約への拡張
14. IASB スタッフは、IASB が無配当契約に会計方針の選択を許容した論拠は、有配当契約にも適用できると考えている。このため、有配当契約についても、次の理由から、会計方針の選択を許容することが適当と考えられる。
(1) 原価ベースの測定基礎を使用して保険投資費用を純損益に表示することにより、市場変数の変動を純損益とOCI に分解することが適切である可能性がある。
(2) 会計上のミスマッチを解消するため、現在金利ベースの測定基礎を使用して保険投資費用を純損益に表示することを許容する。(但し、当期簿価利回り法適用の契約においては、会計上のミスマッチは既に解消されているので、この理由は、当てはまらない。)
(3) 原則的な方法によって保険投資費用を表示する便益がコストを上回る場合、当該方法で投資費用を表示するためのコスト及び複雑性を回避することを許容する。
論点 2:純損益に表示する保険投資費用の計算に用いる金利
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(論点 2-1 市場変数の変動の影響を純損益に表示することを選択した場合)
15. 市場変数の変動の影響を純損益に表示することを選択した場合は、純損益に表示する保険投資費用の計算に使用する金利は現在の金利となる。
(論点 2-2 市場変数の変動の影響を OCI に表示することを選択した場合)
(条件(目的)による実効利回り法と当期簿価利回り法の使い分け)
16. 市場変数の変動の影響をOCIに表示することを選択した場合、その目的は、原則と して、原価ベースの測定基礎を用いて純損益に保険投資費用を表示することと考えられる。この場合、原価ベースの測定基礎を使用して測定された保険投資費用と、現在金利ベースの測定基礎を使用した保険投資費用の差額はOCIで認識されることになる。使用する金利は原価測定基礎である実効利回り法となる。
17. 一方、経済的ミスマッチが存在しない場合(直接連動有配当契約でかつ、基礎となる資産を保有している場合)は、当該経済実態をxxに表現するためには会計上の ミスマッチを発生させないことが必要となる。この場合、使用する金利は当期簿価利回り法となる。
図表 1:経済的なミスマッチが存在しない場合における OCI 表示の目的等
条件 | 目的 | 保険投資費用の計算 に使用する金利 |
下記以外の場合 | 原価ベースの測定基礎を使用し て、保険投資費用を純損益に表示すること | 実効利回り法 |
経済的ミスマッチがない(直接連動有配当契約で、企業が当該基礎 となる項目を保有) | 会計上のミスマッチを解消すること | 当期簿価利回り法 |
18. なお、当期簿価利回り法が適用される場合、市場変数の変動の影響を純損益と OCI
に分解する方法は、次の通りである。
図表 2:当期簿価利回り法適用時における純損益と OCI への保険投資費用の分解
保険負債 | 計上金額 |
包括利益計算書(全体)の変動 | A :基礎となる項目のxx価値の変動額 |
純損益に認識する投資費用 | B :基礎となる項目に関して純損益認識した金 額(投資マージンはゼロとなる) |
OCI に認識する金額 | A と B の差額 |
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(論点 2-3 市場変数の変動の影響を OCI に表示することを選択した場合)
(新基準書上、目的は明示するが、詳細なメカニズムは規定しないこと)
暫定決定
19. 次の通り暫定決定されている。
⚫ 新保険契約基準において、OCI表示する目的は、原則として、原価測定基礎を 使用して保険投資費用を純損益に表示することである旨を明記する。
⚫ 原価測定基礎を使用して保険投資費用を決定する詳細なメカニズム(割引率の 算定方法を含む)16は、新保険契約基準上、規定しない。ただし、当該仕組みは契約期間にわたり規則的に利回りを配分すべきであるとする追加的なガイダンスを示すとともに、次の例示を含めることになる。
図表 3:新基準に含まれる例示
契約種類 | 適用方法 |
市場変数の変動が、保険契約者へ支払う名目金額に影響を 及ぼさない契約 | 保険投資費用を、当初認識時にロックインした金利で測定することが、原価ベースの測定基礎と整合する。 原価ベースの測定基礎と現在価値の測定基礎との差額は、OCI に認識され、保険契約の期間 にわたって純損益に認識される。 |
市場変数の変動が、保険契約者へ支払う名目金額に一定の 影響を及ぼす契約 | 企業は、キャッシュ・フローの主要な部分が市場変数の影響を受けているか否かを判断して、適切な手法を適用する。 報告期間における主要なキャッシュ・フローのあり方を考慮することによって、原価ベースの測定基礎を使用して保険投資費用を表示す る目的を満たし得ると考えられる。 |
市場変数の変動が、殆ど又は全ての状況において、保険契約者へ支払う名目金額に影響 を及ぼす契約 | 保険投資費用を、保険契約者へ支払名目金額に影響を及ぼす程度を反映した金利で計算することが、原価ベースの測定基礎と整合する。 実効利回り法の適用にあたって、状況によって、予測貸記法が適切な場合もあるし、期末毎 にリセットを行う平準実効利回り法が適切な |
16(ASBJ 注)原価ベースの測定基礎には、割引率として、イールドカーブ法、平準実効利回り法、予測貸記法等(いずれも、xxxxの変動は反映されない)を用いる測定基礎が含まれる。他方、現在の測定基礎における割引率には、xxxxの変動が反映される
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契約種類 | 適用方法 |
場合もあり得る。 |
暫定決定に至った理由
20. 上記暫定決定に至った理由は以下の通りである。
(1) 適切な割引率の決定方法を詳細に記述せず、目的に依拠することによって、有配当契約にあまねく適用される手法を特定する困難さが避けられるほか、企業が純損益で認識する投資費用を計算する適切な方法を決定することができるようになる。
(2) この目的が無配当契約にも適用される場合、要求事項の複雑性が削減できる。
(3) 詳細な方法を規定しない場合、利益操作の余地が増大することを懸念する者がいるが、企業は原価ベースで測定した資産との会計上のミスマッチを削減しようとするはずと考えられるため、当該懸念は当たらないと考えられる。
(論点 2-4 簿価利回り法から実効利回り法への切り替え(又はその逆)の処理)
21. 企業が実効利回りアプローチと当期簿価利回りアプローチ(及びその逆)との間での変更を要求される場合には、企業は次のようにしなければならないと暫定的に決定した。
(1) OCI の期首累計残高を修正再表示しない。
(2) 変更の期間及び将来の期間において、変更日における OCI 累計残高を純損益に以下のように認識する。
①. 企業がこれまで実効利回りアプローチを適用していた場合には、企業は、変更前に適用した同じ仮定を適用し算定した実効利回りを用いて純損益に OCI の累計残高を認識すべきである。
②. 企業がこれまで当期簿価利回りアプローチを適用していた場合には、企業は、変更前に適用した同じ仮定を用いて純損益に OCI の累計残高を引き続き認識すべきである。
それらの仮定はその後に更新されない。
(3) 過去の期間の比較情報を修正再表示しない。
論点 3:市場変数の変動によるキャッシュ・フローの変動額の表示方法
背景
22. 改訂 ED では、市場変数の変動によるキャッシュ・フローの変動は純損益で認識することを提案していた。これは、金融商品のキャッシュ・フローの見積り変更(例えば、期限前償還オプションの見積り変更)を純損益で認識することと整合するという理由からであった。
暫定決定事項
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23.暫定決定は次の通りである。
市場変数の変動によって生じるキャッシュ・フロー見積の変動額は、割引率の変
動による影響と整合的に包括利益計算書の同じ場所に表示する。
24.暫定決定に至った理由は次の通りである。
(1) 割引率の変動もキャッシュ・フローの変動も、共に、市場変数の変動から発生する。
(2) 両者を整合的に扱うことは、財務諸表利用者の理解を促進し、財務諸表作成者の事務負担を軽減する。
論点 4:有配当契約における AOCI 残高に関する移行時の簡便法
背景
25. 無配当契約における暫定決定において、新保険契約基準を最初に適用するときは、実務的に可能な場合、契約開始時の割引率を推計して遡及計算しなければならないとしている。なお、履行キャッシュ・フローは現在の測定基礎で測定されるため、移行時点の情報だけで測定できる。しかし、①CSM、②収益金額、③保険投資費用及び AOCI(OCI 表示を選択した場合)の項目を遡及測定するためには過去の情報が必要となる。
26. 市場変数の変動がキャッシュ・フローの金額にも影響を及ぼす有配当契約の場合、 AOCI の金額は、割引率の変動の影響に加え、キャッシュ・フローの変動の影響を受ける。
図表 4:市場変数の変動の影響
区分 | 市場変数の変動の影響 | AOCI |
無配当 契約 | 市場変数の変動はキャッシ ュ・フローの金額には影響を及ぼさない。 | 割引率の変動の影響のみを受ける |
有配当 契約 | 市場変数の変動はキャッシュ・フローの金額にも影響を 及ぼす。 | 割引率の変動の影響に加え、キャッシュ・フローの変動の影響を受ける |
(有配当契約のなかには、キャッシュ・フローの金額にも影響を及ぼさないものもあるが、それらは無配当契約と同様に扱うことが考えら れる。) |
17 なお、当期簿価利回り法を適用する有配当契約に対しても、新たな簡便法が暫定決定された。
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27. 有配当契約(市場変数の変動がキャッシュ・フローの金額にも影響を及ぼす契約)の保険投資費用や AOCI を遡及計算するためには、割引率に加え、過去のキャッシュ・フローの変動額を推定し、さらに、それに基づき各期に投資費用に計上した額と OCI の巻き戻し額を推定する必要がある。
28. IASB スタッフは、有配当契約(市場変数の変動がキャッシュ・フローの金額にも影響を及ぼす契約)の保険投資費用や AOCI の適切な簡便計算方法を開発することは難しいと考え、以下の 2 つの方法を検討した。
(案 1)無配当契約の方法を適用する。すなわち、移行日時点のキャッシュ・フローに対して契約当初時の金利を割引率として、適用する。
(案 2)原価ベースの測定基礎を使用する保険投資費用に関して考慮すべき最も古い市場変数の前提は、当該企業が初めて新保険契約基準を適用するときのものとする。この結果、企業が初めて新保険契約基準を適用するときは、AOCI残高 はゼロとなる。
29. 上記いずれの手法によっても、計算される AOCI は、遡及計算した AOCI とは異なる金額となり、金利が低下している現状では、遡及計算した場合には、AOCI は負の値であると考えられる。また、両者で計算される AOCI と遡及計算した場合を比較すると、以下のとおりである。
(1) 無配当契約の方法を適用する場合と遡及計算した場合とでは AOCI の金額は著しく異なると考えられる。遡及計算していた場合には、実効利回り法によると、一部は過去の投資損益として認識されていたと考えられる。(その結果、今後の投資損益は異なってくる。)
(2) AOCI残高をゼロとする場合、遡及計算した場合はAOCIの金額と著しく異なると考えられる。また、金利低下局面では、移行後の投資マージンはより大きくなると考えられる。18
30. いずれの方法によっても遡及計算した AOCI とは近似しないことから、よりコスト負担の少ない、案 2「移行時点の AOCI をゼロにする」に暫定決定した。
以 上
18 ASBJ 事務局注 当該分析は、本手法による実効利回り法の金利(移行時点の金利を参照して決定される)が、遡及計算した場合の実効利回り法の金利(過去の金利を参照して決められていた)より低いためと思われる。
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