Contract
委託契約平成22年度調査研究
投資事業有限責任組合モデル契約
平成22年11月
経済産業省
委託先 xxxxx法律事務所
平 成 年 月 日
投資事業有限責任組合契約
[ ] 投資事業有限責任組合
目 次
第 1 章 x x 1
第 1 条 定 義 1
第 2 条 名 称 7
第 3 条 所 在 地 8
第 4 条 組 合 員 8
第 5 条 組 合 の 事 業 9
第 6 条 x x 約 の 効 力 発 生 日 及 び 組 合 の 存 続 期 間 10
第 7 条 登 記 11
第 2 章 x x 12
第 8 条 x x 12
第 9 条 組 合 員 の x x x x の 免 除 及 び 除 外 16
第 10 条 x x 約 束 期 間 の 中 断 及 び 早 期 終 了 18
第 11 条 x x 約 束 金 額 の 減 額 19
第 12 条 追 加 x x 及 び x x 金 の 払 戻 19
第 13 条 x x 払 込 等 の 不 履 行 20
第 3 章 組 合 業 務 の 執 行 22
第 14 条 無 限 責 任 組 合 員 の 権 限 22
第 15 条 無 限 責 任 組 合 員 の 注 意 x x 26
第 16 条 有 限 責 任 組 合 員 の 権 限 26
第 17 条 組 合 員 集 会 28
第 18 条 利 益 相 反 29
第 19 条 諮 問 委 員 会 31
第 4 章 組 合 員 の 責 任 34
第 20 条 組 合 債 務 に 対 す る 対 外 的 責 任 34
第 21 条 組 合 財 産 に よ る 補 償 35
第 5 章 組 合 財 産 の 運 用 及 び x x 35
第 22 条 組 合 財 産 の 運 用 36
第 23 条 組 合 財 産 の x x 38
第 6 章 会 計 38
第 24 条 会 計 38
第 25 条 x x 諸 x x の x x 及 び 組 合 員 に 対 す る 送 付 39
第 7 章 投 資 先 事 業 者 の 育 成 40
第 26 条 投 資 先 事 業 者 の 育 成 40
第 8 章 組 合 財 産 の 持 分 と 分 配 41
第 27 条 組 合 財 産 の 帰 属 41
第 28 条 損 益 の 帰 属 割 合 41
第 29 条 組 合 財 産 の 分 配 43
第 30 条 分 配 制 限 49
第 31 条 公 租 公 課 50
第 9 章 費 用 及 び 報 酬 52
第 32 条 費 用 52
第 33 条 無 限 責 任 組 合 員 に 対 す る 報 酬 53
第 10 章 組 合 員 の 地 位 の 変 動 56
第 34 条 持 分 処 分 の 禁 止 56
第 35 条 組 合 員 た る 地 位 の 譲 x x 56
第 36 条 組 合 員 の 加 入 60
第 37 条 組 合 員 の 脱 退 60
第 38 条 組 合 員 の 死 亡 62
第 39 条 有 限 責 任 組 合 員 の 除 名 63
第 40 条 無 限 責 任 組 合 員 の 除 名 63
第 41 条 脱 退 組 合 員 の 持 分 及 び 責 任 64
第 42 条 組 合 員 の 地 位 の 変 動 の 通 知 65
第 11 章 解 散 及 び 清 算 65
第 43 条 解 散 65
第 44 条 清 算 人 の 選 任 66
第 45 条 清 算 人 の 権 限 67
第 46 条 清 算 手 続 67
第 47 条 清 算 方 法 68
第 12 章 雑 則 68
第 48 条 x x 可 等 69
第 49 条 通 知 及 び 銀 行 口 座 69
第 50 条 秘 密 保 持 70
第 51 条 x x 商 品 取 引 法 等 に 係 る 確 認 事 項 71
第 52 条 適 格 機 関 投 資 家 等 特 例 業 務 に 関 す る 特 則 72
第 53 条 反 社 会 的 勢 力 等 の 排 除 72
第 54 条 x x x 証 等 の 違 反 に よ る 補 償 73
第 55 条 x x 約 の 変 更 73
第 56 条 x x 約 の 有 効 性 、 個 別 性 74
第 57 条 言 語 、 準 拠 法 及 び 合 意 管 轄 74
別紙 | 1 | 組合員名簿 |
2 | 投資ガイドライン( 例) | |
3 | 投資資産時価評価準則 | |
4 | 累積内部収益率計算方法書 |
投資事業有限責任組合契約
本契約書末尾の署名欄に記載された者は、事業者(以下に定義される。)に対する投資事業を行うた め、有限責任組合法(以下に定義される。)の規定に従い、平成 年 月 日(以下「本締結日」という。)をもって、以下のとおり、投資事業有限責任組合契約(以下「本契約」という。)を締結す る。
第 1 章 x x
第 1 条 定 義
1. 本契約において、下記の用語は、文脈上別段の意味を有することが明らかな場合を除き、以下の意味を有するものとする。
「外国有限責任組合員」 所得税法上の非居住者又は外国法人である有限責任組合員。
「監査人」 監査法人[ ]/公認会計士[ ]及び/又は無限責任組合員が同人に代え若しくは同人に加えて適宜選任し、その旨組合員に通知したその他の監査法人又は公認会計士(但し、辞任し、又は解任された者を除く。)。
[「既存出資比率」 ある時点における、当該時点において出資の不履行がない組合員の
出資履行金額の出資約束金額に対する比率。]
「金融商品取引法」 金融商品取引法(昭和 23 年法律第 25 号、その後の改正を含
む。)。
「 組 合 員 」 無 限 責 任 組 合 員 及 び 有 限 責 任 組 合 員 の 総 称 。
「組合会計規則」 中小企業等投資事業有限責任組合会計規則(平成 10 年 8 月 20 日
10・8・7 企庁第 2 号、その後の改正を含む。)及び日本公認会計士協会により公表された「投資事業有限責任組合における会計処理及び監査上の取扱い」(平成 19 年 3 月 15 日業種別監査委員会報告第 38 号、その後の改正を含む。)。
「組合口座」 本組合の事業のためにのみ利用される[ ]銀行に開設された本
組合名義の普通預金口座(口座番号: )又は無限責任組合員が随時開設し組合員に通知した本組合名義のその他の銀行口座。
「組合財産」 出資金及びこれを運用して取得した投資証券等、投資知的財産権そ
の他財産で本組合に帰属すべきもの。
「 組 合 持 分 」 本 組 合 に お け る 組 合 員 の 持 分 。
「 事 業 者 」 法 人 ( 外 国 法 人 を 除 く 。 ) 及 び 事 業 を 行 う 個 人 。
「市場性のある有価証券」 金融商品取引法第 2 条第 16 項に規定する金融商品取引所若しくは
これに類似するものであって外国に所在するものに上場され、又は同法第 67 条の 11 第 1 項の店頭売買有価証券登録原簿若しくはこれに類似するものであって外国に備えられているものに登録されている有価証券。
「指定有価証券」 金融商品取引法第 2 条第 1 項各号(同項第 9 号及び第 14 号を除
く。)に掲げる有価証券(同項第 1 号から第 8 号まで、第 10 号か
ら第 13 号まで、及び第 15 号から第 21 号までに掲げる有価証券に
表示されるべき権利であって同条第 2 項の規定により有価証券とみなされるものを含む。)のうち社債その他の事業者の資金調達に資するものとして以下に定める有価証券。
① 金融商品取引法第 2 条第 1 項第 3 号に掲げる債券
② 金融商品取引法第 2 条第 1 項第 4 号に掲げる特定社債券
③ 金融商品取引法第 2 条第 1 項第 5 号に掲げる社債券
④ 金融商品取引法第 2 条第 1 項第 6 号に掲げる出資証券
⑤ 金融商品取引法第 2 条第 1 項第 7 号に掲げる優先出資証券又は優先出資引受権を表示する証書
⑥ 金融商品取引法第 2 条第 1 項第 8 号に掲げる優先出資証券又は新優先出資引受権を表示する証券
⑦ 金融商品取引法第 2 条第 1 項第 10 号に掲げる受益証券
⑧ 金融商品取引法第 2 条第 1 項第 11 号に掲げる投資証券又は投資法人債券
⑨ 金融商品取引法第 2 条第 1 項第 12 号に掲げる受益証券
⑩ 金融商品取引法第 2 条第 1 項第 13 号に掲げる受益証券
⑪ 金融商品取引法第 2 条第 1 項第 15 号に掲げる約束手形
⑫ 金融商品取引法第 2 条第 1 項第 9 号若しくは第①号から第⑪号の各号に掲げる有価証券又は第⑬号に掲げる権利に係る同法第 2 条第 1 項第 19 号に規定するオプションを表示する証券又は証書
⑬ 第①号から第⑪号までに掲げる有価証券に表示されるべき権利であって、金融商品取引法第 2 条第 2 項により、有価証券とみなされるもの
「出資口数」 各組合員が本組合において有する出資の口数をいう。但し、本契約
における総有限責任組合員の出資口数の合計に対する一定割合の比率の計算について、不履行有限責任組合員が有する出資口数は、第 13 条第 5 項に従い除外される。なお、本契約において総有限責任組合員の出資口数の合計に対する一定割合の比率を満たすことが求められる場合、複数の有限責任組合員の出資口数を合計して当該比率を満たす場合を含む。
「出資未履行金額」 出資約束金額のうち未だ払込みをしていない金額。但し、本契約の
規定に従い、出資未履行金額の増減がなされた場合には、当該増減後の金額とする。
「出資約束期間」 効力発生日から[ ]年間。但し、本契約の規定により出資約束期
間がそれより早く終了する場合は当該終了の日までの期間とする。
「出資約束金額」 各組合員において第 8 条第 2 項に基づき本組合に出資することを約
した金額。[但し、第 11 条に従い、出資約束金額の減額がなされた場合には、当該減額後の金額とする。]
「出資履行金額」 各組合員において出資約束金額のうち第 8 条第 3 項から第 7 項まで
の規定に基づき出資の履行として本組合に現実に払い込んだ金額の総額(但し、追加出資手数料を除く。)。
「 主 要 担 当 者 」 [ ] 、 [ ] 、 [ ] 及 び [ ] 並 び に 第 10 条 第 2 項 に 基 づ き
選任された者。但し、第 10 条第 2 項に基づき後任者が選任された上で主要担当者でなくなった者を除く。
「主要担当者事由」 主要担当者の[全て/うち[ ]名]が、組合財産の運用に実質的
に関与しなくなったこと。
「 所 得 税 法 」 所 得 税 法 ( 昭 和 40 年 法 律 第 33 号 、 そ の 後 の 改 正 を 含 む 。 ) 。
「租税特別措置法」 租税特別措置法(昭和 32 年法律第 26 号、その後の改正を含
む。)。
「対象持分割合」 あるポートフォリオ投資に関して、当該ポートフォリオ投資に参加
した各組合員が出資した金額の、当該ポートフォリオ投資に参加した全組合員の出資の総額に対する割合。
「脱退組合員」 本組合の組合員だった者で、第 37 条に基づき本組合を脱退した
者。
「適格機関投資家」 金融商品取引法第 2 条第 3 項第 1 号に規定する適格機関投資家。
「投資組合等」 投資事業有限責任組合若しくは民法第 667 条第 1 項に規定する組合
契約で投資事業を営むことを約するものによって成立する組合又は外国に所在するこれらの組合に類似する団体。
「投資先事業者」 第 5 条第①号から第⑦号までの規定により本組合がその株式、持
分、新株予約権、指定有価証券、金銭債権、工業所有権、著作権、又は信託の受益権を保有している事業者。
「投資先事業者等」 投資先事業者、第 5 条第⑨号により本組合が出資している投資組合
等及び第 5 条第⑪号により外国法人向け出資等を保有している外国法人の総称。
「投資事業有限責任組合」 有限責任組合法第 2 条第 2 項に規定される投資事業有限責任組合。
「投資証券等」 第 5 条第①号から第⑥号、[第⑨号]から[第⑪号まで]の規定に
従い、本組合が取得した又は取得する予定の株式、持分、新株予約権、指定有価証券、金銭債権、信託の受益権、[投資組合等に対する出資]、約束手形、譲渡性預金証書若しくは動産又は[外国法人向け出資等]。
「投資総額」 ある時点までに本組合が取得した全ての投資証券等及び投資知的財
産権の取得価額の合計額。
「投資知的財産権」 第 5 条第⑦号に従い、本組合が取得した又は取得する予定の工業所
有権及び著作権。
「反社会的勢力」 以下のいずれかに該当するもの。
① 暴 力 団
② 暴 力 団 員
③ 暴力団準構成員
④ 暴力団関係企業
⑤ 総会屋等(総会屋、会社ゴロ等企業等を対象に不正な利益を求めて暴力的不法行為等を行うおそれがあり、市民生活の安全に脅威を与える者をいう。)
⑥ 社会運動等標ぼうゴロ(社会運動若しくは政治活動を仮装し、又は標ぼうして、不正な利益を求めて暴力的不法行為等を行うおそれがあり、市民生活の安全に脅威を与える者をいう。)
⑦ 特殊知能暴力集団等(第①号から第⑥号までに掲げる者以外の
、暴力団との関係を背景に、その威力を用い、又は暴力団と資金的なつながりを有し、構造的な不正の中核となっている集団又は個人をいう。)
⑧ その他第①号から第⑦号までに準ずる者
「不適格投資家」 金融商品取引法第 63 条第 1 項第 1 号イからハまでのいずれかに該
当するもの。
「ブリッジ・ファイナンシング」 ポートフォリオ投資のうち、無限責任組合員が投資後[ ]ヶ
月以内に処分等することを意図したものであって、追加出資請求通知においてブリッジ・ファイナンシングであると指定されたもの。
「分配時評価額」 投資証券等を現物により分配する場合における当該投資証券等の現
物分配基準日における評価額。なお、かかる現物分配基準日の評価額は、(ⅰ)当該分配の対象が市場性のある有価証券である場合、現物分配基準日に先立つ直近の 5 取引日(現物分配基準日を含まな
い。)における最終価格の平均値(取引日が 5 日に満たない場合、現物分配基準日に先立つ全ての取引日(現物分配基準日を含まない。)における最終価格の平均値)とし、(ⅱ)当該分配の対象が市場性のある有価証券ではない場合、第 29 条第 3 項に従い有限責任組合員の承認を得て、当該投資証券等の現物分配基準日の時価として定めた価額とする。
なお、本条において、「最終価格」とは、投資証券等に関し金融商品取引所における最終売買値若しくは日本証券業協会により公表される最終売買値又は外国の取引所若しくは店頭市場におけるこれらに準ずる価格とし、「取引日」とは、当該投資証券等に係る金融商品取引所が営業している日若しくは日本証券業協会により運営される店頭市場が開設されている日又は外国におけるこれらに準ずる日とする。但し、最終価格がない取引日についてはかかる日を除外するものとする。
「 法 人 税 法 」 法 人 税 法 ( 昭 和 40 年 法 律 第 34 号 、 そ の 後 の 改 正 を 含 む 。 ) 。
「 暴 力 団 」 暴 力 団 対 策 法 第 2 条 第 2 号 に 規 定 す る 暴 力 団 ( そ の 団 体 の 構 成 員
(その団体の構成団体の構成員を含む。)が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体をいう。)。
「暴力団員」 暴力団対策法第 2 条第 6 号に規定する暴力団員(暴力団の構成員を
いう。)。
「暴力団関係企業」 暴力団員が実質的にその経営に関与している企業、暴力団準構成員
若しくは元暴力団員が経営する企業で暴力団に資金提供を行うなど暴力団の維持若しくは運営に積極的に協力し若しくは関与する企業、又は業務の遂行等において積極的に暴力団を利用し暴力団の維持若しくは運営に協力している企業。
「暴力団準構成員」 暴力団員以外の暴力団と関係を有するものであって、暴力団の威力
を背景に暴力的不法行為等を行うおそれがあるもの、又は暴力団若しくは暴力団員に対し、資金、武器等の供給を行うなど暴力団の維持若しくは運営に協力し、若しくは関与するもの。
「暴力団対策法」 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成 3 年法律第 77 号、その後の改正を含む。)。
「暴力的不法行為等」 暴力団対策法第 2 条第 1 号に規定する暴力的不法行為等。
「ポートフォリオ投資」 投資証券等又は投資知的財産権に対して行う、又は行った投資。
「本組合」 投資事業有限責任組合であって、本契約に基づき組成されるもの。
「 民 法 」 民 法 ( 明 治 29 年 法 律 第 89 号 、 そ の 後 の 改 正 を 含 む 。 ) 。
「 無 限 責 任 組 合 員 」 [ ] に 本 店 を 有 す る [ ] 及 び 同 人
の後任者として第 37 条第 3 項に基づき選任された者(但し、本組合を脱退し又はその地位の全部を譲渡した無限責任組合員を除く。)。
「持分金額」 各組合員について、その出資履行金額に、事業年度ごとに第 28 条
により当該組合員に帰属すべき損益を加減し、当該組合員に対し本契約の規定により分配された金銭又は投資証券等の価額を減じた金額。
「有限責任組合員」 本契約添付別紙 1 に有限責任組合員として記載される者、及び第 35
条又は第 36 条に従い有限責任組合員として本組合に加入した者
(但し、本組合を脱退し又はその地位の全部を譲渡した有限責任組合員を除く。)。
「有限責任組合法」 投資事業有限責任組合契約に関する法律(平成 10 年法律第 90 号、
その後の改正を含む。)。
2. 以下に記載される各用語は、それぞれ対応する右欄に記載された条項にて定義されるものとする。
定義された用語
義されている条項
外 国 法 人 向 け x x 等 第 5 条 第 ⑪ 号
仮 持 分 金 額 第 28 条 第 1 項 【 免 除 / 除 外 条 項 を 設 け る 場 合 】
x x 報 酬 控 除 額 第 33 条 第 4 項
既 存 組 合 員 第 36 条 第 1 項
既 存 フ ァ ン ド 第 18 条 第 3 項
組 合 員 等 第 29 条 第 2 項 柱 書 き 【 免 除 / 除 外 条 項 を 設 け る 場 合 】
組 合 員 等 第 29 条 第 4 項 第 ① 号 【 免 除 / 除 外 条 項 を 設 け な い 場 合 】
ク ロ ー バ ッ ク 金 額 第 33 条 第 5 項
x 継 フ ァ ン ド 第 18 条 第 2 項
現 物 分 配 基 準 日 第 29 条 第 3 項
控 除 対 象 手 数 料 等 第 33 条 第 4 項
効 力 発 生 日 第 6 条 第 1 項
x x 諸 x x 第 25 条 第 1 項
諮 問 委 員 会 第 19 条 第 1 項
処 分 収 益 第 29 条 第 2 項 第 ① 号
処 分 等 第 29 条 第 2 項 第 ① 号
新 規 加 入 組 合 員 第 8 条 第 8 項
成 功 報 酬 累 計 額 第 29 条 第 4 項 第 ③ 号
そ の 他 投 資 収 益 第 29 条 第 2 項 第 ② 号
対 象 組 合 員 等 第 29 条 第 2 項 第 ① 号 【 免 除 / 除 外 条 項 を 設 け る 場 合 】
対 象 成 功 報 酬 累 計 額 第 33 条 第 5 項
対 象 分 配 累 計 額 第 33 条 第 5 項
追 加 ク ロ ー ジ ン グ 日 第 8 条 第 8 項
追 加 x x 組 合 員 第 8 条 第 8 項
追 加 x x 請 求 第 8 条 第 4 項
追 加 x x 請 求 通 知 第 8 条 第 4 項
追 加 x x 手 数 料 第 8 条 第 8 項
当 初 ク ロ ー ジ ン グ 日 第 8 条 第 3 項
特 別 収 益 第 29 条 第 2 項 第 ③ 号
半期財務諸表等
被補償者
不履行有限責任組合員分配可能額
分配累計額本契約
本契約期間本締結日
優先分配金額
第 25 条第 3 項
第 21 条第 2 項第 13 条第 5 項
第 29 条第 4 項第①号
第 29 条第 4 項第①号柱書
第 6 条第 2 項柱書
第 33 条第 5 項
3. 本契約において、日時は全て日本時間によるものとする。
4. 本契約において、報酬、原価及び費用等に関する言及は、これらに関して課される消費税、付加価値税又はそれと類似の公租公課(外税)を[含む/含まない]ものとする。
【 第 1 条解説】
1. 第1条第1項は、本契約において繰り返し使用される用語、独立に定義規定を置くことによって条文が理解し易くなる用語等を定義している。
2. 本契約においては、出資の払込の方法として無限責任組合員の要請があった場合にxx払込 を行ういわゆるキャピタル・コール方式を採用している(一括払込方式については第8条解説2.x x)。この方式に対応して、第1条では、各組合員が出資することを約束した額を「出資約束金額」、無限責任組合員からの出資の履行請求に基づき現実に払込がなされた金額を「出資履行金額」、払 込がなされていない金額を「出資未履行金額」と定義している。
なお、有限責任組合法第9条第2項は、「有限責任組合員は、その出資の価額を限度として組合の債務を弁済する責任を負う。」と規定するが、これは、有限責任組合員は、組合に対する出資義務を履行していない範囲内で、組合の債権者に対して直接責任を負うことを意味するものと考えられる。この点、キャピタル・コール方式を採る組合では、キャピタル・コールが有効に行われてはじめて、かかる出資義務が発生すると考えられる。従って、上記有限責任組合法の規定との関係では、有限責任組合員の責任は当然に出資約束金額全額につき発生するものではなく、キャピタル・コールが有効に行われた範囲でのみ発生すると考えられる。
3. 第1条は、投資対象について、その性質に応じて、「投資証券等」、「投資知的財産権」及び
「投資組合向け出資等」の定義を置いている。「組合財産」と各々の関係を図で表すと、以下のとおりとなる。
投資証券等
組合財産
投資知的財産権
・ 株式、新株予約権、新株予約権付社債等
・ 投資組合向け出資等
・ 金銭債権
・ 匿名組合出資
・ 担保目的動産
・ その他の投資証券等
・ 著作権
・ 工業所有権
・ 業務上のxxx
・ その他
さらに、投資証券等及び投資知的財産権の取得を「ポートフォリオ投資」と定義している。
4. 第 1 条は、本組合がキャピタル・コールを行うことのできる期間として「出資約束期間」という定義を置いている。「投資期間」(Investment Period)という用語が使用されることも多いが、キャピタル・コールを行い得る期間を意味することが多いため、本契約ではよりその趣旨に親和的な用語として「出資約束期間」(Commitment Period)を採用した。海外ファンドではいずれの用語も採用されている。
通常のファンド事業においては、投資をした後、投資を回収するまで一定の期間が必要となるため、組合の全存続期間にわたり新規投資を行うのではなく、新規投資を行う期間を効力発生後一定の期間(ファンドの存続期間にもよるが、存続期間 10 年のファンドであれば 4、5 年間程度)に限定することも少なくなく、それにあわせて、出資約束期間が設定される。
上記とは別に、いわゆるキーパースン条項を、この出資約束期間と関連づけて規定することも考えられる。これらの詳細は第 10 条参照。
5. 「投資証券等」の定義においては、第 5 条の「組合の事業」に応じて、括弧内(投資組合向け出資等、外国法人向け出資等)を規定し、又は規定しないこととなろう。
6. 本契約においては、投資知的財産権を現物分配することは予定されていない。一般に投資知的財産権は、その性質上現物分配という分配方法に馴染みにくく、換価した上、金銭で分配するのが原則と考えられるからである。そのため、「分配時評価額」の定義は、投資証券等のみが現物分配される前提で、投資証券等の現物分配時の評価額について定める規定となっている。なお、市場性のある有価証券ではない投資証券等を現物分配するに際して必要とされる「分配時評価額」についての有限責任組合員の承認の割合は、第 29 条第 3 項における割合と同一とされることが予定されている。
7. 「無限責任組合員」及び「有限責任組合員」の定義においては、本組合を脱退した組合員、その地位の全部を譲渡した組合員を除く旨を確認的に規定している。
8. 海外の投資家が組合に参加する場合における解釈の争いを避けるため、第 1 条第 3 項は、日時は日本時間によることを規定する。
9. 第 1 条第 4 項は、組合契約における報酬等の金額に、消費税その他の税額を含むか否かを規定する。
第 2 条 名 称
本組合の名称は、「[ ]投資事業有限責任組合」とする。[英文では、●● Investment Limited Partnership と表記する。]
【第 2 条解説】
1. 第 2 条は本組合の名称を規定する。有限責任組合法第 3 条第 2 項第 2 号は、「組合の名称」を組合契約において規定すべきとしている。
2. 有限責任組合法第5条第1項は、組合には、その名称中に投資事業有限責任組合という文字を用いるものとしているので、本組合契約においても、「[ ]投資事業有限責任組合」という名称にしている。なお、「投資事業有限責任組合[ ]」、「[ ] 投資事業有限責任組合
[ ]」といった名称を定めることも可能である。海外の投資家が組合に参加する場合には、組合の名称の英文表記を定めておくことが便宜かと思われる。
なお、有限責任組合法第5条第4項においては、有限責任組合員は、xxx、氏名又は名称を組合の名称中に用いることを許諾したときは、その使用以後に生じた組合の債務については、無限責任組合員と同一の責任を負うものとされている。
第 3 条 所 在 地
1. 本組合の事務所の所在場所は、[
]とする。
2. [無限責任組合員は、組合員に対し事前に書面による通知を行うことにより、本組合の事務所の
所在場所を変更することができる。/無限責任組合員は、その裁量に基づき、本組合の所在場所を変更することができる。無限責任組合員は、本組合の所在場所を変更した場合には、組合員に対
し当該変更について遅滞なく書面による通知を行うものとする。]
【第 3 条解説】
1. 有限責任組合法第 3 条第 2 項第 3 号は、「組合の事務所の所在地」を組合契約において規定すべき事項としている。他方、有限責任組合法第 17 条第 3 号は、「組合の事務所の所在場所」を組合契約の登記事項としている。組合の事務所の所在地(location)とは、その所在する最小行政区画
(市町村又はxxx特別区)を指し、地名番地の表示は必要ない。他方、組合の事務所の所在場所
(address)とは、地名地番を含む概念である。従って、組合契約においては、組合の事務所の地名地番を記載せず、最小行政区画まで特定すれば足りる。しかし、その場合、組合の事務所の所在場所の決定方法及び変更方法を別途定めるとともに、組合契約の効力の発生の登記までに、当該決定方法に基づき事務所の所在場所を決定し、当該決定がなされたことを証する書面を登記申請書に添付しなければならないこととなる。これに対し、一般的な実務では、組合契約において組合の事務所の所在場所まで記載し、登記申請に際しては組合契約書のみを添付している。そこで、本契約においても、第 3 条は、本組合の事務所の所在場所(同条第 1 項)及び同事務所の所在場所の変更方
法(同条第 2 項)を規定している。
2. 有限責任組合法第 17 条第 3 号は、組合契約の登記事項として、「組合の事務所の所在場所」を掲げ、有限責任組合法第 18 条は、その変更があった場合は、変更の登記をしなければならないとしている。登記事項の変更登記申請書には、当該事項の変更を証する書面を添付しなければならない
(有限責任組合法第 28 条)。従って、組合員に対する書面による通知を、組合の事務所の所在場所の変更の要件とした場合、当該通知の写しを変更登記申請書に添付することを法務局に求められることがあり得る。これに対し、無限責任組合員の単独の裁量による決定のみを、組合事務所の所在場所の変更の要件とし、単に無限責任組合員の義務として組合員への通知を要件として規定しておけば、変更登記申請書には、無限責任組合員が作成する決定書を添付すれば足りることとなる。そこで、本モデル契約においては、上記 2 つの場合の例を選択的に規定することとした。
3. なお、有限責任組合法第 3 条第 3 項において、組合に対してする通知又は催告は、組合の事務 所の所在地又は無限責任組合員の住所にあててすれば足りるものとされている。同項は、組合の債 権者の便宜を図る趣旨の規定であり、各組合員に対する通知等組合の内部関係には適用がないもの と解される。そこで、組合の内部関係については、第 49 条第 1 項に通知に関する規定をおいている。
第 4 条 組 合 員
1. 組合員の氏名又は名称及び住所並びに無限責任組合員と有限責任組合員との別は、本契約添付別紙 1 に記載のとおりとする。
2. 有限責任組合員は、自己に関し本契約添付別紙 1 記載事項の変更がある場合は、速やかに無限責任組合員に書面で通知するものとする。
3. 無限責任組合員は、前項若しくは第 42 条の通知があった場合、又は自己に関し本契約添付別紙 1記載事項の変更がある場合、すみやかに本契約添付別紙 1 を変更し、変更後の別紙 1 の写しを組合員に送付するものとする。
【第 4 条解説】
1. 第 4 条は、組合員の氏名又は名称及び住所並びに無限責任組合員と有限責任組合員との別を別紙 1 に記載することを規定する。有限責任組合法第 3 条第 2 項第 4 号において、「組合員の氏名又は名称及び住所並びに無限責任組合員と有限責任組合員との別」は、組合契約において規定すべき事項とされているので、これを省略することは許されない。なお、本契約では、閲覧の便宜上別紙に記載することとした。
2. なお、有限責任組合法第 8 条第 3 項において、組合の債権者は、営業時間内は、いつでも、組合の事務所に備え置かれた組合契約書の閲覧又は謄写を請求することができるとされている。そこで、実際上は、有限責任組合員になろうとする者に対し、その氏名又は名称及び住所等が組合の債権者に対し開示され得る点を説明する必要が生じると思われる。
第5条 組合の事業
組合員は、本組合の事業として、共同で次に掲げる事業を行うことを約する。
① 株式会社の設立に際して発行する株式の取得及び保有並びに企業組合の設立に際しての持分の取得及び当該取得に係る持分の保有
② 株式会社の発行する株式若しくは新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)又は企業組合の持分の取得及び保有
③ 指定有価証券の取得及び保有
④ 事業者に対する金銭債権の取得及び保有並びに事業者の所有する金銭債権の取得及び保有
⑤ 事業者に対する金銭の新たな貸付け
⑥ 事業者を相手方とする匿名組合契約の出資の持分又は信託の受益権の取得及び保有
⑦ 事業者の所有する工業所有権又は著作権の取得及び保有(これらの権利に関して利用を許諾することを含む。)
⑧ 第 5 条第①号から第⑦号までの規定により本組合がその株式、持分、新株予約権、指定有価証券、金銭債権、工業所有権、著作権又は信託の受益権を保有している事業者に対して経営又は技術の指導を行う事業
⑨ 投資組合等に対する出資
⑩ 第 5 条第①号から第⑨号の事業に付随する事業であって、次に掲げるもの。
(ⅰ) 事業者が発行し又は所有する約束手形(金融商品取引法第 2 条第 1 項第 15 号に掲げるものを除く。)の取得及び保有を行う事業
(ⅱ) 譲渡性預金証書の取得及び保有を行う事業
(ⅲ)(ⅰ)に規定する約束手形、金融商品取引法第 2 条第 1 項第 3 号に掲げる債券、同法第 2 条第
1 項第 4 号に掲げる特定社債券、同法第 2 条第 1 項第 5 号に掲げる社債券、同法第 2 条第 1
号第 11 号に掲げる投資法人債券若しくは同法第 2 条第 1 項第 15 号に掲げる約束手形に表示されるべき権利又は事業者に対する金銭債権に係る担保権の目的である動産の売買、交換若しくは貸借又はその代理若しくは媒介を行う事業
⑪ 外国法人の発行する株式、新株予約権若しくは指定有価証券若しくは外国法人の持分又はこれらに類似するもの(以下「外国法人向け出資等」という。)の取得及び保有であって、その取得の価額の合計額の総組合員の出資履行金額の合計額に対する割合が[100]分の[50]に満たない範囲内において、前各号に掲げる事業の遂行を妨げない限度において行うもの
⑫ 本契約の目的を達成するため、次に掲げる方法により行う業務上の余裕金の運用(ⅰ) 銀行その他の金融機関への預金
(ⅱ) 国債又は地方債の取得
(ⅲ) 外国の政府若しくは地方公共団体、国際機関、外国の政府関係機関(その機関の本店又は主たる事務所の所在する国の政府が主たる出資者となっている機関をいう。)、外国の地方公共団体が主たる出資者となっている法人又は外国の銀行その他の金融機関が発行し、又は債務を保証する債券の取得
【第 5 条解説】
1. 有限責任組合法第 3 条第 1 項は、同項に掲げられた事業の全部又は一部を営むことの合意があることを、組合契約の効力発生要件としている。有限責任組合法第 3 条第 1 項に掲げられた事業の全部を本組合の事業とすることも、その一部のみを合意することも認められる。
2. 有限責任組合法第 3 条第 2 項第 1 号により、「組合の事業」は組合契約書に記載すべき事項とされているので、第 5 条において、その事業の内容を有限責任組合法第 3 条第 1 項の規定に従い列挙している。なお、有限責任組合法第 3 条第 1 項に掲げられた事業である限り、その内容を、個別の組合の目的に従いより詳細に具体化することは可能である。
3. 第 5 条に定める事業の目的の範囲を逸脱した無限責任組合員の行為は、法的には無権代理行為と考えられ、民法上無権代理行為は本人の追認があれば有効な代理行為とすることができる(民法第 113 条第 1 項)。但し、当該無権代理行為が有限責任組合法第 3 条第 1 項に掲げる事業以外の行為である場合には、組合員は追認することができないとされているため、当該法律行為については、組合との関係では確定的に無効な行為となる。なお、この無権代理人の責任は、民法第 117 条に従い処理されることとなり、当該法律行為の相手方が履行を選択した場合には、無限責任組合員は履行義務を負うことになる。
4. 第 5 条第⑪号に掲げる外国法人の発行する株式の取得等については、有限責任組合法施行令第 3 条において、「法第 3 条第 1 項第 11 号に掲げる事業については、同号の規定による取得の価額の合計額の総組合員の出資の総額に対する割合が 100 分の 50 に満たない範囲内において、組合契約の定めるところにより、行われなければならない。」と規定されている。本契約においては、出資の履行につきキャピタル・コール方式を採用しているところ、かかる場合には、政令に定める「総組合員の出資の総額」は、出資履行金額の合計額をいうものと考えられる。
5. 有限責任組合法上認められている組合の事業の中には、許認可の取得が必要なものもあることに留意が必要である。例えば、事業者に対する新たな金銭の貸付けを業として行うのであれば貸金業の登録(貸金業法第 3 条第 1 項)、不動産の取得を業として行うのであれば不動産特定共同事業の許可(不動産特定共同事業法第 3 条第 1 項)の要否が問題となり得る。不動産特定共同事業の許可については、特に不動産の取得を予定していない限り通常は許可を取得しないものと思われることから、本契約では不動産の売買等については第 5 条に規定していない。
第6条 本契約の効力発生日及び組合の存続期間
1. 本契約の効力は、平成[ ]年[ ]月[ ]日(以下「効力発生日」という。)をもって発生するものとする。
2. 本組合の存続期間(以下「本契約期間」という。)は、効力発生日より[ ]年間とする。但し、無限責任組合員は、総有限責任組合員の出資口数の合計の[ ]分の[ ]以上に相当する出資口数を有する有限責任組合員の承認を得た場合には、かかる期間の満了日の翌日からさらに
[ ]年間を限度として、本契約期間を延長することができる。
【第 6 条解説】
1. 有限責任組合法第 3 条第 2 項第 6 号及び第 7 号は、「組合契約の効力が発生する年月日」及び
「組合の存続期間」を組合契約書に記載すべきとしていることから、第 6 条第 1 項は、組合契約の
効力が発生する年月日を、第 6 条第 2 項は、組合の存続期間を規定している。
2. 第 6 条第 2 項但書きは、存続期間の延長の方法について定めている。なお、組合の存続期間の延長は、追加的な管理報酬の発生や組合財産の分配の遅延等により、無限責任組合員と有限責任組合員との間で利害対立が生じるおそれのある事項であるため、無限責任組合員が存続期間を延長するにあたっては、有限責任組合員の承認を得ることとしている。
3. 私的独占の禁止及びxx取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)第 11 条第 1項但書き第 4 号本文は、銀行業又は保険業を営む会社の議決権取得制限について、当該会社が有限責任組合の有限責任組合員となり、組合財産として株式を取得し、又は所有することにより議決権を取得し、又は保有する場合を除外するとしている。但し、かかる除外規定は、①有限責任組合員が議決権を行使することができる場合、②議決権の行使について有限責任組合員が無限責任組合員に指図を行うことができる場合及び③議決権を有することとなった日から政令で定める期間(10 年間)を超えて当該議決権を保有する場合には適用されない(同法第 11 条第 1 項但書き第 4 号但書き)。そのため、有限責任組合員に銀行業又は保険業を営む会社が含まれる場合においては、当該有限責任組合員が上記除外規定の適用を受けるため、本組合の存続期間を 10 年以内とすることが一般的である。もっとも、上記除外規定の適用を受けるためには、清算手続中における議決権の保有期間を合算してその要件を充足する必要がある点についても留意しなければならない。
第 7 条 登 記
1. 無限責任組合員は、有限責任組合法第 17 条に従い、本組合の事務所の所在地において組合契約の登記をするものとする。
2. 前項に定める登記事項に変更が生じた場合、無限責任組合員は、有限責任組合法第 18 条に従い、変更の登記をするものとする。
【第 7 条解説】
1. 第 7 条第 1 項は、無限責任組合員は、本組合の事務所の所在地において、組合契約の登記を行うべきことを規定している。有限責任組合法第 17 条は、登記事項として、「組合の事業」、「組合の名称」、「組合契約の効力が発生する年月日」、「組合の存続期間」、「無限責任組合員の氏名又は名称及び住所」、「組合の事務所の所在場所」及び「組合契約で(有限責任組合)法第 13 条第
1 号から第 3 号までに掲げる事由以外の解散の事由を定めたときは、その事由」を掲げている。なお、登記の申請は、有限責任組合法第 26 条により、無限責任組合員の申請によるものと規定されている。よって、本組合においても、無限責任組合員の義務として、法律上の登記事項を登記すべきものとして規定している。
2. 有限責任組合法第 18 条は、登記事項に変更が生じたときは、2 週間以内に、本組合の事務所の所在地において変更の登記をしなければならないと規定している。なお、有限責任組合法第 18 条の規定による登記についても、無限責任組合員の申請によるものと規定されている(同法第 26 条)。そこで、第 7 条第 2 項において、無限責任組合員が変更の登記をすべきものと規定している。
3. 組合契約の効力は契約締結によって発生するとされており(有限責任組合法第 3 条第 1 項)、登記は組合契約の効力発生要件ではない。但し、有限責任組合法第 4 条第 1 項により、登記事項は、登記の後でなければ、善意の第三者に対抗することができないとされている。
第 2 章 x x
第 8 条 x x
1. 本組合の出資一口の金額は[ ]円とする。
2. 組合員は、本契約添付別紙 1 に記載された当該組合員の出資口数に前項に規定する出資一口の金額を乗じた額を上限額として、本条第 3 項から第 7 項までの規定に基づき本組合に出資することを約する。[無限責任組合員は、自らの出資口数が総有限責任組合員の出資口数の合計の[ ]以上になるよう維持するものとし、自らの出資口数が当該割合を下回ることとなる場合は、第 36条に従い出資約束金額を増額させることにより自らの出資口数を増加させるものとする。]
3. 組合員は、[効力発生日に/効力発生日から[ ]日以内の無限責任組合員が別途書面により指定する日(以下「当初クロージング日」という。)までに]、出資約束金額の[ ]に相当する額の金銭を組合口座に振込送金して払い込むものとする。
4. 組合員は、出資約束期間中、ポートフォリオ投資を目的として、出資未履行金額の範囲内で、無限責任組合員からの[ ]日前までの書面による通知(以下「追加出資請求通知」といい、追加出資請求通知による出資請求を「追加出資請求」という。)に従い、無限責任組合員が指定した日までに、ポートフォリオ投資に関して必要となる金額につき、各組合員がその[出資約束金額/出資未履行金額]に応じて按分した額を組合口座に振込送金して払い込むものとする。
5. 組合員は、出資約束期間満了後においては、(ⅰ)投資先事業者等に対する追加的なポートフォリオ投資を目的とする場合、又は(ⅱ)出資約束期間満了前に本組合がポートフォリオ投資の主な準備行為を行っていた場合において当該ポートフォリオ投資を完了するために必要とされるときに限り、出資未履行金額の範囲内で、無限責任組合員からの[ ]日前までの追加出資請求通知に従い、無限責任組合員が指定した日までに、かかるポートフォリオ投資に関して必要となる金額につき、[(ⅰ)の場合は当該ポートフォリオ投資の前に行われた当該投資先事業者等へのポートフォリオ投資に係る対象持分割合に応じて按分した額、また、(ⅱ)の場合は[出資約束金額/出資未履行金額]に応じて按分した額を]組合口座に振込送金して払い込むものとする。但し、(ⅰ)の場合、追加出資請求の対象となる金額は、各組合員の出資約束金額の[ ]に相当する額を超えないものとする。
6. 本条第 3 項から第 5 項までの規定に加え、組合員は、いつでも、第 32 条第 1 項に規定する本組合の費用に充当することを目的として、出資未履行金額の範囲内で、無限責任組合員からの[ ]日前までの追加出資請求通知に従い、無限責任組合員が指定した日までに、かかる費用につき、各組合員の[出資約束金額/出資未履行金額]に応じて按分した額を組合口座に振込送金して払い込むものとする。
[但し、本組合の費用のうちポートフォリオ投資に関する費用のための追加出資請求については、各組合員が払い込むべき金額は、かかる費用につき、当該ポートフォリオ投資に係る対象持分割合に応じて按分した額によるものとし、さらに、無限責任組合員は、その裁量に基づき、よりxxと認める方法による分担方法を定めることができる。]
7. 本条第 3 項から第 5 項までの規定に加え、組合員は、いつでも、第 33 条第 2 項に規定する管理報酬に充当することを目的として、出資未履行金額の範囲内で、無限責任組合員からの[ ]日前までの追加出資請求通知に従い、無限責任組合員が指定した日までに、かかる管理報酬につき、第 33 条第 2 項第①号又は第②号に定める場合においては出資約束金額に応じて按分した金額、また、同項第③号に定める場合においては出資履行金額に応じて按分した額を組合口座に振込送金して払い込むものとする。
8. 第 36 条第 1 項に従い、本組合に新たに加入する者(以下「新規加入組合員」という。)及び既存組合員のうち追加出資を行う組合員(新規加入組合員と併せて以下「追加出資組合員」と総称する。)は、それぞれ無限責任組合員が書面により指定する日(以下「追加クロージング日」とい
う。)までに、
【免除/除外条項を設けず、かつ、既存組合員への払戻しを行わない場合】
(ⅰ)各追加出資組合員の出資約束金額に追加クロージング日時点における既存出資比率を乗じて算出した額の出資金に、(ⅱ)本条第 3 項から第 7 項までの規定に基づき当該追加クロージング日までに行われた各払込につき、当該払込時点の既存出資比率を当該追加出資組合員の出資約束金額に乗じて算出した額に関し、当該払込のなされるべきであった日の翌日から追加クロージング日までの期間について年利[ ](年 365 日の日割り計算とする。)でそれぞれ算出された利息金の合計額(以下「追加出資手数料」という。)を加算した合計額を、組合口座に振込送金して払い込むものとする。
【免除/除外条項を設け、かつ、既存組合員への払戻しを行う場合】以下の金額の合計額を組合口座に振込送金して払い込むものとする。
① (a)本条第 11 項に従って効力発生日から組合員とされることにより各追加出資組合員が負担することとなる管理報酬に相当する出資金、及び(b)その金額に、第 33 条第 2 項の規定に従い無限責任組合員が管理報酬をそれぞれ受領した日の翌日から追加クロージング日までの期間について年利[ ](年 365 日の日割り計算とする。)でそれぞれ算出された利息金の合計額に相当する追加出資手数料を合計した額
② (a)ポートフォリオ投資に対応して、追加クロージング日までになされた出資につき、本条第 11 項に従って効力発生日から組合員とされることにより当該追加出資組合員が本条第 4
項又は第 5 項に従って按分して負担すべきであった額の出資金、及び(b)その金額に、当該ポートフォリオ投資がなされた時にかかる出資を行っていればそれぞれ払込みのなされるべきであった日の翌日から追加クロージング日までの期間について年利[ ](年 365 日の日割り計算とする。)でそれぞれ算出された利息金の合計額に相当する追加出資手数料を合計した額
③ (a)本組合によって支払われるべき本組合の費用につき、本条第 11 項に従って効力発生日から組合員とされることにより当該追加出資組合員が本条第 6 項に従って負担すべきであった
額の出資金、及び(b)その金額に、本条第 11 項に従って効力発生日から組合員とされることにより当該追加出資組合員が負担すべきであった本組合の費用の支払いがそれぞれ行われた日の翌日から追加クロージング日までの期間について年利[ ](年 365 日の日割り計算とする。)でそれぞれ算出された利息金の合計額に相当する追加出資手数料を合計した額。第①号、第②号及び本第③号のそれぞれに規定するかかる追加出資手数料を、以下併せて
「追加出資手数料」という。
9. 前項第②号及び第③号の規定にかかわらず、[(ⅰ)無限責任組合員が、その誠実な判断により、かかる金額の支払いが、ポートフォリオ投資について生じた重大な価値の変動のため、追加出資組合員の当該ポートフォリオ投資に関する持分割合が不xxなものとなると認める場合【免除/除外条項を設ける場合】[又は、第 9 条に掲げる状況に該当するため追加出資組合員が当該ポートフォリオ投資へ参加することが適切でないと同条の規定に準じて無限責任組合員が合理的に判断する場合]には、無限責任組合員は、当該追加出資組合員を、当該ポートフォリオ投資への参加から排除することができ、(ⅱ)]追加クロージング日までに、本組合が第 29 条に従い既に分配を行っていた場合には、無限責任組合員は、当該追加出資組合員が払い込む額に、その裁量により適切と考える調整を加えることができるものとする。
10. 無限責任組合員は、[【免除/除外条項を設けない場合】本条第 8 項に従い払込がなされた額から、本条第 11 項に従って効力発生日から組合員とされることにより追加出資組合員が負担することとなる管理報酬の額を、管理報酬として受領するものとする。/【免除/除外条項を設ける場合】(ⅰ)本条第 8 項第①号の額を管理報酬として受領するものとし、(ⅱ)同項第②号の額につき、他の組合員に対して各組合員の当該ポートフォリオ投資に係る対象持分割合(当該追加クロージング日における変動前の割合)に応じて、出資金についてはこれを払い戻し、追加出資手
数料についてはこれを交付するものとし、(ⅲ)同項第③号の額につき、他の組合員に対して[出資約束金額/出資未履行金額](当該追加クロージング日における増額前の金額)の割合(但し、ポートフォリオ投資に関する費用については当該ポートフォリオ投資に係る対象持分割合(当該追加クロージング日における変動前の割合))に応じて、出資金についてはこれを払い戻し、追加出資手数料についてはこれを交付するものとする。]
11. 追加出資組合員は、本条第 8 項に定める払込みにより、当初クロージング日(及び追加出資請求通知に応じた出資がなされている場合には、その払込日)に当該出資をなした場合と同様に本契約に基づく権利及び義務を取得する。
[12. 【免除/除外条項を設ける場合】本条第 8 項第①号(b)の金額は無限責任組合員に対して、また、同項第②号(b)及び第③号(b)に定める金額は、他の組合員に対して直接に支払われたのと同様に取り扱われ、かかる支払いを行った追加出資組合員の出資とはみなされず、いずれの組合員についてもそれぞれの出資履行金額及び出資未履行金額に変動をもたらさないものとする。]
【第 8 条解説】
1. 有限責任組合法第 6 条においては、組合員は出資一口以上を有すること(第 1 項)、出資の内容は金銭その他の財産のみとし(第 2 項)労務出資を認めないこと、及び出資一口の金額は均一でなければならないこと(第 3 項)が規定されている。これらの規定に基づき、第 8 条第 2 項においては、組合員が所定の出資約束金額を上限額として第 8 条第 3 項以降の規定に基づき本組合に払込をすることを約束する旨規定している。なお、当然のことながら、各組合員の出資約束金額は、出資一口の金額以上であることを要する。
2. 第 8 条においては、余資運用を最小限化するために、あらかじめ合意した出資約束金額の枠内で投資等のために都度必要な金額を払い込ませるキャピタル・コール方式を採用している。これに対し、組合組成時に出資金の全額を一括して払い込む方法も存する(下記 4.参照)。出資金の払込をキャピタル・コール方式により行う場合、その具体的方法が問題になるが、本契約においては、必要な金額を各組合員の出資約束金額又は出資未履行金額(いずれによるかにつき下記第 3 段落参照)で按分した額を払い込むものとしている。キャピタル・コールのなされる頻度については、海外ファンドではバイアウト・ファンドかベンチャー・キャピタル・ファンドかを問わず組合による新規投資の都度行われる場合が多いようであるが、国内ベンチャー・キャピタル・ファンドにおいては、一つの投資案件における投資金額が必ずしも大きくならないこと等を勘案し、特定の投資案件を前提としてキャピタル・コールを行うのではなく、例えば一定の金額まで出資金を使用した場合に次のキャピタル・コールを可能としているケース、特にキャピタル・コールの条件は指定せず代わりに(少額の出資を繰り返すのは煩雑なため)1 回のキャピタル・コールで出資すべき金額を出資約束金額の一定割合といった形で指定しているケース等がみられる。
また、キャピタル・コールを特定の投資案件を前提として行う場合、キャピタル・コールの際に、投資先事業者等の概要等の投資案件の内容を組合員に通知することを求めることも考えられる。少なくとも有限責任組合員による出資義務の免除(Excuse、第 9 条参照)の規定を設ける場合には、キャピタル・コールでの通知において投資先事業者等の業種や事業内容等について有限責任組合員に示す必要がある。他方、特定の投資案件を前提とせずにキャピタル・コールをなし得る方式を採用するときは、キャピタル・コールを行う際に資金使途は通知せず、ほかに組合契約上定められたキャピタル・コールの条件があるときはこれを充足している旨を通知することも考えられる。もっとも、この場合、キャピタル・コール後に実行した投資案件の内容を無限責任組合員が組合員に事後的に通知することは適切と考えられ、かかる通知について第 22 条第 7 項で規定している。
ポートフォリオ投資ごとに有限責任組合員が出資の履行を免れ(Excuse)又は無限責任組合員がある有限責任組合員を投資に参加させないものとする(Exclusion)規定が設けられる場合(第 9 条参照)(出資の不履行を発生させた組合員に特定の投資に係る損益を配分しない規定が設けられる場合はその場合を含む。以下同じ。)、組合員ごとに出資約束金額のうち出資の履行が未了である金額(出資未履行金額)の割合が異なり得ることとなる。Excuse/Exclusion の規定(以下「免除/除
外条項」という。)がない場合には、組合員による出資の不履行がない限り各組合員の出資未履行金額は出資約束金額に比例するため、各組合員の出資金額が出資約束金額に比例するようキャピタル・コールを行えば足りる一方、免除/除外条項を設ける場合には、組合員ごとの出資約束金額の割合と組合員ごとの出資未履行金額の割合とが異なり得ることになる。この場合、出資約束金額に応じたキャピタル・コールを行うと、最終的に一部の組合員については出資約束金額全額を使い果たしたものの他の組合員については出資約束金額全額を使い果たしていないという事態が生じ得る。そこで、出資未履行金額の全額を使い切ることができるようにするために、キャピタル・コールは出資未履行金額をベースに行うことも考えられる。
3. 本組合の行う事業者に対する投資は、投下資本の回収に相当な期間を要するのが通常である。かかる実態を踏まえ、本契約においては、契約期間を、出資約束期間と出資約束期間満了後の回収のための期間に二分し、原則として、出資約束期間中に限り、投資証券等及び投資知的財産権の取得を目的としたキャピタル・コールを行うことができるとしている。但し、出資約束期間満了後においても、一定程度の投資の柔軟性を確保できるように、(ⅰ)追加投資(follow-on investment)を目的とする場合と(ⅱ)投資すべき株式につきその取得に係る株式売買契約を出資約束期間内に締結した等、投資に向けられた一定の行為が出資約束期間内に既に行われていた場合(かかる投資は follow-up investment と呼ばれることもある)については、投資目的でキャピタル・コールを行うことができるものとされていることが多い。追加投資については、バイアウト・ファンドにおいては個々の投資についてあらかじめ Exit までの詳細な計画を定めた上で投資が行われるため出資約束期間の例外は比較的定型的な要件でも支障はさほど大きくないのに対し、特に国内のベンチャー・キャピタル・ファンドにおいては、個々の投資案件の規模が比較的小さくファンド組成後ある程度時間が経過してから新規に投資することもあるためそもそも出資約束期間の規定を設けないこともあり、また追加投資を複数回にわたって行う必要が生じることも多いため出資約束期間が経過したとして追加投資に強い制約を設けるのにはなじまないという側面を有している。もっとも、ベンチャー・キャピタル・ファンドでも投資先救済のための無理な追加投資を行うことを避けるべく追加投資に何らかの制約を設けるケースも存在している。
これら(ⅰ)及び(ⅱ)の例外の範囲の定め方としては、上記の規定による定め方のほか、(ⅰ)については出資約束期間経過後一定年数に限る、(ⅱ)については契約書、基本協定書等を締結した場合に限る等の方法も考えられる。(ⅱ)については、後日の争いを避ける観点からは、いかなる行為が行われている必要があるのかについて明確に定めておくことが適切である。
なお、この場合に出資すべき金額については、(ⅰ)の場合、追加投資における、各投資先事業者等に対する投資毎の各有限責任組合員に関する免除/除外条項が設けられるのであれば、各有限責任組合員の出資約束金額のうち払込のなされていない金額×一定の割合(本契約における「既存出資比率」)ではなく、各ポートフォリオ投資に係る各組合員の対象持分割合の比率で、キャピタル・コールを行う旨規定されることになるものと思われる。他方、(ⅱ)の場合については、通常の投資と同様、出資約束金額(免除/除外条項が設けられるのであれば出資未履行金額の割合とすることもあり得る)で、キャピタル・コールを行う旨規定されることとなろう。
また、組合の費用に充当するためのキャピタル・コールについては、特定のポートフォリオ投資に関するものは当該ポートフォリオ投資に係る対象持分割合に応じて、それ以外については出資約束金額(免除/除外条項が設けられるのであれば出資未履行金額とすることもあり得る)に応じて行うこととしている(第 6 項)。管理報酬に充当するためのキャピタル・コールについては、その算定の基礎が出資約束金額である場合は出資約束金額に応じて、算定の基礎が投資金額である場合は、実際に出資が履行された金額について組合財産の運用を行っているという考え方のもと、出資履行金額に応じて、キャピタル・コールを行うこととしている(第 7 項)。
4. 組合員の出資を、組合の組成時における一括払込とする旨合意することも可能である。その場合、第 8 条第 2 項以下に代えて以下のとおり規定するとともに、本契約のその他の規定に所要の変更を行うことになろう。
「組合員は、[ ]年[ ]月[ ]日までに、別紙 1 記載の当該組合員の口数に出資一口の額を乗じた合計金額全額を組合口座に振込送金して払い込むものとする。」
5. 第 8 条第 8 項は、新規加入組合員が本組合に加入する際又は既存組合員の出資約束金額を増額
する際(本契約ではこれらの組合員を「追加出資組合員」と定義している)に出資するべき金額についての規定である。本契約において、免除/除外条項が設けられない場合、追加出資組合員は、既存出資比率を当該追加出資組合員の出資約束金額に乗じた金額(既存組合員が出資約束金額を増額した場合はそのうち増額分)を払い込むものとしている。これにより払い込まれた金額は、本組合の組合財産を増加させるが、これによる増加額は管理報酬に充当されたり、将来の投資等に利用されることとなろう。なお、かかる出資の時点までに分配が行われていた場合に、当該分配のなされた投資証券等の元本相当額については、払込を求めないことも考えられる。その場合の調整を可能にする規定が第 9 項(ⅱ)の規定である(括弧書き参照)。
これに対して、追加出資組合員が加入時に払い込んだ額のうち管理報酬に充当するべき額以外の額については、そのまま組合財産としてプールしておくと投資ファンドとしての資金効率の低下を招くため、他の組合員に対して、追加出資組合員が当初より出資していれば払い込まずに済んだ額及び利息相当分を払い戻すという方法も考えられ、実務上もこのような取扱いをしている投資ファンドも多数存在している。本契約では、免除/除外条項が設けられる場合につきこの形での規定の仕方を示している。この場合、出資金として拠出された資金はいったん組合財産を構成し、その後他の組合員に対し出資金の払戻しが行われる形になり、利息については出資金とはならず直接他の組合員に支払われたのと同様に扱うこととしている(第 11 項)。それゆえ、かかる追加出資により本組合の財産は最終的には原則として増加しないことになる(なお、管理報酬については、無限責任組合員が受領する)。追加出資組合員が払い込む額及び他の組合員に出資金の払戻しが行われるべき額は、いずれも当該追加出資組合員が効力発生日から出資していれば負担すべきであった割合に応じて算出され、ポートフォリオ投資に対応する出資金及びポートフォリオ投資に応じて負担すべき費用は対象持分割合に応じて、その余については費用及び管理報酬につきそれぞれ各組合員が負担すべき額に応じて、それぞれ定められる(第 8 項及び第 10 項)。
第 9 項(ⅰ)の前段については、追加出資組合員がポートフォリオ投資ごとに取得する対象持分金額を、追加出資組合員の出資金額に応じた額とはせず調整することで、実行済みのポートフォリオ投資の価値の増加又は減損分を考慮するというアレンジメントを念頭に置いた規定である。
免除/除外条項を設ける場合、ポートフォリオ投資ごとに払い込むべき出資金を定める必要があ る。従って、当該追加出資組合員についての免除/除外条項も加味して、追加出資時に出資すべき金額を決する必要があると思われる。第 9 項(ⅰ)の後段はこのような取扱いを念頭に置いた規定である。
6. 無限責任組合員に対する投資パフォーマンス向上のインセンティブを付与し、また、有限責任組合員の利益と無限責任組合員の利益を可及的に一致させるために、無限責任組合員が有する出資口数の合計については、総有限責任組合員の出資口数の総数の一定割合を維持することを義務づける条項を追加で規定することも考えられる。なお、海外のバイアウト・ファンドにおいては無限責任組合員の出資比率が比較的高めであることが多いが、他方、海外のベンチャー・キャピタル・ファンドにおいては出資比率が大きな問題となることは少ないようであり、国内のベンチャー・キャピタル・ファンドでもかかる条項はあまり多くはみられないように思われる。
7. 以上のとおり、本契約においては、各資金使途に応じて必要な額を設定した上でこれを按分した額の出資を求める形でキャピタル・コールを行うこととしており、組合員ごとに負担すべき出資金の額については、免除/除外条項を設ける場合は、ポートフォリオ投資に関して用い得る出資金
(ポートフォリオ投資に関する費用を含む。)についてはポートフォリオ投資に係る対象持分割合に応じて、その余については出資約束金額(算定の基礎が投資金額となった後の管理報酬は出資履行金額)に応じて、それぞれ各組合員に按分して出資金の額を設定し、追加出資組合員が現れた場合もその仕組みが維持されるようにしている。これに対し、免除/除外条項が設けられない場合は、より単純に出資約束金額に応じて組合員ごとの出資金額を設定している。
第9条 組合員の出資義務の免除及び除外
1. 有限責任組合員は、以下の場合には、ポートフォリオ投資について、出資義務を免れる。
① 当該有限責任組合員が、当該ポートフォリオ投資に係る追加出資請求通知において示された出資をなすことが、当該有限責任組合員に対し、法令又は投資に関する内部規則(但し、本組合加入時に無限責任組合員に通知されたものに限る。)の違反その他の重大な悪影響を生じさせる蓋然性があると合理的に判断し、無限責任組合員に対して出資義務の免除を請求した場合。但し、当該有限責任組合員が出資義務を免れるためには、当該有限責任組合員は、 (ⅰ)無限責任組合員に対し、当該追加出資請求通知の到達の日から[ ]日以内(又はその後の日で無限責任組合員がその裁量により決定する日まで)に、(1)本項第①号に基づく請求を行う旨書面により通知し、(2)法律顧問の意見書(当該法律顧問及び意見書の内容は無限責任組合員が合理的に満足できるもので、本項第①号に定める趣旨の、有限責任組合員の判断に関するものでなければならない。)を提出し、かつ、(ⅱ)無限責任組合員が合理的に要求する、当該重大な悪影響を生じさせる蓋然性についてのその他の情報を提供しなければならない。
② 無限責任組合員が、当該有限責任組合員が当該ポートフォリオ投資につき出資を行うことが本組合の業務、又は他の組合員に重大な悪影響を有する蓋然性があると合理的に判断し、当該ポートフォリオ投資から有限責任組合員を除外することを選択した場合。但し、無限責任組合員は、かかる選択を行った場合、当該有限責任組合員に対し、当該追加出資請求通知の到達の日から[ ]日以内に、かかる除外を行うことを書面により通知しなければならない。
2. 前項の免除又は除外の対象となる有限責任組合員は、前項に定める重大な悪影響を生じさせる蓋然性がある状況を解決するよう合理的な努力をしなければならず、かかる努力の結果、当該状況の全部又は一部が解決された場合、前項の規定は適用されず、又は、当該状況が解消されていない限度でのみ前項の規定は適用されるものとする。
3. 有限責任組合員が本条第 1 項に従い出資義務の免除又は除外を受けた場合、無限責任組合員は、その裁量により、当該有限責任組合員の出資なしに当該ポートフォリオ投資を行うか否かを選択することができる。無限責任組合員が当該ポートフォリオ投資を行うことを決定した場合、無限責任組合員は、当該免除又は除外がなければ当該有限責任組合員が当該ポートフォリオ投資に関して出資すべきであった金額について、他の組合員に対して、[出資約束金額/出資未履行金額]に応じて按分した額につき、出資未履行金額を超えない限度で、第 8 条第 4 項に準じて、追加での出資請求を行うことができる。
【第 9 条解説】
海外ファンドで一般に規定されている契約条項として、Excuse 及び Exclusion の規定がある。各ポートフォリオ投資におけるキャピタル・コールに基づく各有限責任組合員の出資義務につき、有限責任組合員の選択で免除を受けること、又は無限責任組合員の選択で特定の有限責任組合員を投資から除外することを定めるものである。年金関係の投資家等においては、一定の産業や事業等に投資することができないケースもあり、このような投資家にとっては重要な条項となる。しかしながら、 Excuse を認める場合であっても、出資を約束した有限責任組合員が容易に出資の履行を免れては投資ファンドとしての目的を達し得ないことから、Excuse が認められる要件は、法令やファンド加入時に無限責任組合員に通知された内部規定に違反する場合等、厳格に限られるのが通常である。ま た、本契約においては、追加出資請求通知がなされてから一定期間内にExcuse の請求をすること、法律意見書を提出することも義務付けている。さらに、本条の発動を最小限にするため本契約では有限責任組合員側にも本条が発動されないように努める努力義務を課している。海外のファンド実務において、当該規定が発動されることはまれであるとの指摘もある。本条が発動された場合の損益の帰属については第 28 条(損益の帰属割合)の解説参照。かかる免除/除外条項が発動された場合、投資
に必要な資金が足りなくなることもあることから、第 3 項において他の組合員に対して追加でのキャピタル・コールができるよう規定している。なお、本契約においては、いったん免除/除外条項により投資から除外を受けた組合員は、その後同一の投資先事業者等に対する追加投資においても投資から除外されることを前提としている。
第 10 条 出資約束期間の中断及び早期終了
1. 無限責任組合員は、主要担当者事由が発生した場合には、かかる事由の発生につき、有限責任組合員に速やかに書面にて通知するものとする。主要担当者事由が生じた場合、本条第 3 項の規定に従って、本組合の組合財産の運用に実質的に関与しなくなった主要担当者に代わる者が選任されるまでの間、本組合の出資約束期間は中断し、かかる出資約束期間の中断中は、本組合は、出資約束期間経過後にのみ許容される事業のみ行うことができるものとする。
2. 前項の規定にかかわらず、総有限責任組合員の出資口数の合計の[ ]分の[ ]以上に相当する出資口数を有する有限責任組合員の承認を得た場合、又は、本条第 3 項に従って、本組合の組合財産の運用に実質的に関与しなくなった主要担当者に代わる者が、主要担当者事由の発生後
[ ]ヶ月以内に選任された場合、出資約束期間の停止は解除されるものとし、かかる解除がなされない場合、主要担当者事由の発生後[ ]ヶ月を経過した日に出資約束期間は終了するものとする。
3. 無限責任組合員は、各有限責任組合員に書面により通知することにより、主要担当者の後任の候補者、又は追加的な候補者を指名することができる。かかる場合、無限責任組合員は、各有限責任組合員に当該候補者の情報を提供し、有限責任組合員から求められた場合、当該候補者と当該有限責任組合員との面談の機会を設定するものとする。候補者の選任は、総有限責任組合員の出資口数の合計の[ ]分の[ ]以上に相当する出資口数を有する有限責任組合員の承認を得ることを要するものとする。
【第 10 条解説】
1. 本条では、出資約束期間の中断及び早期終了に係る条項として、主要担当者の喪失によるものを規定している。主要担当者の喪失による出資約束期間の中断及び終了は、海外ではキーパースン条項と言われ、バイアウト・ファンドでは一般的にみられ、ベンチャー・キャピタル・ファンドでもしばしばみられる。但し、日本では、特にベンチャー・キャピタル・ファンドの場合はベンチャー・キャピタルの社内やグループ会社との間の人事異動により担当者の変更が頻繁であることから、そのようなベンチャー・キャピタルにおいてはかかる条項を設けるのは現実的ではなく、それゆえ上記の意味でのキーパースン条項が一般的とまではいえないのが現状のように思われる。キーパースン条項の要否やキーパースンの人数設定如何は、バイアウト・ファンドかベンチャー・キャピタル・ファンドかというファンドの性質のほか、何を信頼して出資するよう投資家に対し求めるかにもより、例えば無限責任組合員の有する人的経営資源(スタッフの数やグループ会社とのネットワーク等)やトラックレコードの差(会社としてトラックレコードがあるかや構成員たる個人への信頼を基礎に出資を求めるか)にもよると思われる。キーパースン条項には、本契約のように主要担当者の喪失により自動的に発動するケースと有限責任組合員の投票により発動するケースとがみられる。また、キーパースン条項の発動の効果については、本契約のように出資約束期間の中断及び早期終了に結びつける建付けのほか、組合の解散という効果に結びつける建付けもあり得る。また、キーパースンを複数の層に分け、最も重要なキーパースンと他の層のキーパースンとでキーパースン条項発動の要件及び効果を異なるものとする例も存在する。
2. かかるキーパースン条項のほか、出資約束期間の中断及び終了に係る条項として、no fault divorce(cancellation)が規定されることがある。これについては、特段の事由なしに発動される点に特徴があり、近時の全世界規模での金融危機の経験を通じて、投資家においてかかる条項の重要性が認識され、海外ファンドの契約上規定される例が増えているとされる。他方、我が国では、解散事由としての規定以外は、従来かかる条項は必ずしも一般的ではなかったように思われる。有限責任組合員の都合により何らの合理的な理由なく組合の活動等が停止されることは、投資先事業者等にとっても当初の計画に沿った事業活動が困難となる等その影響が甚大である場合が多いと思われること、特に組合の活動を終了させる場合には清算の際に未公開株式等処分の容易でない投資証券等の処分に時間がかかる場合もあり得ること等から、かかる条項を規定するか否か、また無限責任組合員に
何らの非もない場合にかかる規定を実際に発動させるか否かは、有限責任組合員においても投資先事業者等への影響を考慮し慎重に検討することが必要となろう。当該条項の効果としては、出資約束期間の終了、無限責任組合員の解任若しくは除名、又は組合の解散という効果に結びつける建付けが考えられるところである。
第 11 条 出資約束金額の減額
1. 効力発生日から[ ]年を経過した日の属する事業年度末において、総組合員の出資約束金額の合計額に対する投資総額の割合が[ ]を超えていない場合、無限責任組合員は各有限責任組合員に対し、当該事業年度の末日から[ ]ヶ月以内にその旨を書面により通知するものとする。
2. 前項の通知がなされた場合、総有限責任組合員の出資口数の合計の[ ]分の[ ]以上に相当する出資口数を有する有限責任組合員は、無限責任組合員に対し、当該事業年度の末日から
[ ]ヶ月以内に限り、書面により出資約束金額の減額を請求することができる。
3. 有限責任組合員から前項に規定される請求がなされた場合、無限責任組合員は、本契約期間の残存期間における投資予定額及び管理報酬の総額並びに既発生の費用の額及び将来発生することが予想される費用の見積額等の諸事情を勘案の上、減額の是非並びに(減額する場合には)減額後の出資約束金額及び減額の効力発生時期を決定し、有限責任組合員に速やかに書面により通知するものとする。
【第 11 条解説】
第 10 条の規定とは別に、国内のベンチャー・キャピタル・ファンドにおいては、組合による投資が一定期間に進まない場合の出資約束期間の取扱いについての規定を設けている例がみられる。本契約においては、本条第 3 項で、有限責任組合員から出資約束金額の減額請求があった場合にも、実際に減額をするか否かの決定は、最終的には無限責任組合員が行うことができるとしている。最終的な決定権を無限責任組合員に残しているのは、無限責任組合員が善管注意義務に従い諸般の事情を踏まえて判断する結果に委ねる趣旨である。もっとも、一定の割合の有限責任組合員からの請求がなされれば、無限責任組合員に減額義務を課すという構成も十分考えられる。このような構成を採る場合には、前条において解説したいわゆる no fault cancellation 条項の一種とみることも可能であろう。
第 12 条 追加出資及び出資金の払戻
1. 第 30 条第 2 項に規定する場合及び総組合員が同意した場合を除き、組合員は、本章に規定する出資義務以外に、本組合に対し出資をなす義務を負わない。
2. 第 29 条に基づく組合財産の分配及び第 41 条に基づく脱退組合員に対するその持分の払戻を除き、出資金は、理由の如何を問わず、いかなる組合員に対しても、本契約期間中払い戻されないものとする。
[但し、第 8 条第 10 項に規定する場合のほか、以下の各号に定める場合には、無限責任組合員は、以下の各号に定める出資金を組合員に払い戻すものとする。これらの払戻しのなされた金額は、本組合には一度も出資されていないものと扱われ、組合員の出資未履行金額に追加されたものとみなされ、追加出資請求の対象となるものとする。
① 無限責任組合員は、ポートフォリオ投資が実現しないと判断した場合には、当該ポートフォリオ投資のために出資された出資金を、本組合の費用の支払いのために合理的に必要と見込まれる額及び他のポートフォリオ投資のために合理的に必要と見込まれる額を留保して払い戻すものとする。
② 無限責任組合員は、ポートフォリオ投資を実行するのに、当該ポートフォリオ投資のために
出資された出資金の全額を要しないと判断した場合には、当該ポートフォリオ投資のために必要である金額を超える部分を、本組合の費用の支払いのために合理的に必要と見込まれる額及び他のポートフォリオ投資のために合理的に必要と見込まれる額を留保して払い戻すものとする。]
【第 12 条解説】
1. 第 12 条第 1 項は、組合員は第 2 章及び第 30 条第 2 項に規定する以外に追加出資義務を負わない旨を、第 12 条第 2 項は、払込がなされた出資金は原則として払戻さない旨を規定する。
2. 第 8 条において、追加出資組合員の出資金を他の組合員に払戻す規定や、余剰資金の払戻しの規定(本条第 2 項但書きとして記載されている条項)を盛り込む場合には、例外的な払戻事由を第 2項に列挙することになる。特定の投資案件を前提とせずにキャピタル・コールを行うことを認める方式を採用する場合には、無限責任組合員において余剰資金を組合財産として保持することをさほど懸念しないのが通常と思われるため、キャピタル・コールの頻度等を勘案して規定の要否を検討することとなるであろうし、また特定の投資案件を前提としてキャピタル・コールを行う方式を採用する場合でも、事務の煩雑さを勘案して払戻しの規定は設けないことも考えられる。本契約においては、払戻しを行う場合、本組合の費用の支払いのために合理的に必要と見込まれる額及び他のポートフォリオ投資のために合理的に必要と見込まれる額を組合に留保できるものとしている。さらに、払い戻された資金がキャピタル・コールの対象となるかどうかについて、本契約においては再度キャピタル・コールの対象となる旨規定している。なお、組合に留保された資金を別のポートフォリオ投資に用いることを可能にするのであれば、少なくとも無限責任組合員による出資義務の免除( Excuse)を認める組合では、当該資金を用いるポートフォリオ投資に係る情報を事前に組合員に提供し、組合員が投資から除外を受ける機会を確保する必要があり、また、それ以外の場合にもキャピタル・コールに関して投資案件の内容の情報等を提供している場合にはかかる情報を提供することが適切であると思われるため、この点を組合契約上規定することも考えられる。
3. なお、有限責任組合法第 10 条第 2 項本文により、有限責任組合員は、貸借対照xxの純資産額を超えて分配を受けた場合は、当該分配を受けた金額の範囲内において、組合の債務を弁済する責任を負うものとされている。かかる有限責任組合員の義務は、分配財産の返還であり出資義務そのものではないが、有限責任組合法第 10 条の責任が発生し得ることを確認する趣旨から、第 12 条第 1項において第 30 条第 2 項を例外として規定している。
第 13 条 出資払込等の不履行
1. 本契約に基づく支払義務の履行を怠った組合員は、本契約に基づき支払いを行うべき日の翌日から支払いを行うべき金額の全額が払い込まれた日までの期間につき、本組合に対し当該金額の未払込残高に対して年[ ]の割合(年 365 日の日割計算とする。)で計算した遅延損害金を支払うものとする。
2. 組合員が本契約に基づく支払義務の履行を怠ったことにより本組合又は他の組合員に損害が発生した場合には、当該組合員は当該不履行により本組合又は他の組合員が被った一切の損害を賠償する責任を負うものとする。
3. 組合員は、他の組合員の支払義務の不履行を理由に、自己の支払義務の履行を拒絶することはできない。
4. 組合員が本組合に対する出資の履行を怠った場合、無限責任組合員は、当該出資の履行を怠った組合員以外の組合員に対し、かかる不履行のなされた出資金額に相当する分だけ、当該出資の履行を怠った組合員以外の組合員に対し、無限責任組合員からの[ ]日前までの書面による通知に従い、無限責任組合員が指定した日までに、かかる金額を第 8 条第 3 項から第 7 項までの規定に従い按分した額につき、本組合への出資を行うよう求めることができる。但し、各組合員は、
自己の出資未履行金額を超えて出資を求められることはないものとする。
5. 有限責任組合員が本契約上の支払義務の履行を怠った場合には、無限責任組合員は、当該有限責任組合員に対して履行の懈怠を書面により通知するものとし、当該有限責任組合員がかかる通知の到達の日から[ ]日以内に支払いを行わない場合において、無限責任組合員が通知したときは、当該有限責任組合員は、「不履行有限責任組合員」となる。無限責任組合員は、その裁量により、不履行有限責任組合員に関して、以下の一又は複数の取扱いを行うことができる。
① 本契約のいかなる規定にかかわらず、不履行有限責任組合員が有する組合持分に関して、組合員集会において議決権を行使できず、その他本契約において意思決定に係る出資口数及び対象持分割合に基づく比率の計算から除外されるものとすること。
② 不履行有限責任組合員に対して、将来のポートフォリオ投資への参加を認めず、そのための出資の履行も認めないこと。
③ 不履行有限責任組合員に対して支払われるべき分配金から当該不履行有限責任組合員が負担すべき費用を差し引いた金額を、出資の払戻しに相当する部分を除いて没収して不履行のない組合員に分配すること。上記没収分は、他の組合員に対し、第 29 条第 2 項及び第 3 項に定める組合財産の分配割合に準じて分配される。
④ 不履行有限責任組合員に対する組合財産の分配比率を[ ]減じること。上記減額分は、他の組合員に対し、第 29 条第 2 項及び第 3 項に定める組合財産の分配割合に準じて分配される。
【第 13 条解説】
1. 第 13 条第 1 項は、本契約上の支払義務の履行を怠った場合の遅延損害金を、第 13 条第 2 項 は、支払義務の履行の懈怠に基づく損害賠償義務を、第 13 条第 3 項は、いずれかの組合員の支払義務の履行の懈怠をもって他の組合員は支払いの拒絶を行うことができない旨を規定する。
2. 組合員は、支払義務の履行の懈怠がある場合、組合に対しその不履行に基づく損害を賠償しなければならないが、遅延損害金の率については年 14として合意されることが多い。なお、支払義務の履行の懈怠がある場合、第 39 条及び第 40 条において、有限責任組合員・無限責任組合員のいずれについても除名事由とされている。
3. 民法上の組合契約において、組合員はほかに未履行の組合員がいることをもって出資義務の履行を拒絶できず、同時履行の抗弁権の適用がないとされており、投資事業有限責任組合においても同様であるものと考えられる。同時履行の抗弁権がない旨を確認するため第 13 条第 3 項が規定されている。なお、有限責任組合法は、第 16 条において、金銭出資を怠った者の責任について規定した民法第 669 条を準用している。
4. キャピタル・コールに対する組合員の支払義務の不履行に対して支払われた遅延損害金については、第 13 条第 1 項では組合財産として留保することを前提としているが、支払われた金銭を他の組合員に対して収益として分配してしまうことも考えられる。
5. 有限責任組合員による組合契約上の支払義務の不履行が生じた場合、組合による投資と組合員からの出資が対応する多くのバイアウト・ファンドにおいては、速やかに当該不履行分に相当する資金を改めて調達する必要が生じる。その場合、(ⅰ)不履行を起こした有限責任組合員以外の有限責任組合員に対して、かかる不履行を補うため追加での出資を請求することや(第 4 項)、(ⅱ)第三者より一時的に借入れを行うことなどが考えられる(借入れにつき第 14 条第 2 項参照)。
6. 組合員による組合契約上の支払義務の不履行に関しては、上記のような不履行が生じた場合の賠償の規定のほか、組合員のかかる不履行を防止するため、意図的に厳しい制裁を設けることが多い。特に、海外ファンドの契約においては多様な制裁が設けられることがあり、代表的な制裁例としては、出資約束金額を出資履行金額まで減額する(すなわち、将来の投資に参加させない)、ま
た組合における意思決定に係る議決権の停止や諮問委員会の委員としての資格の剥奪などがあり、特に厳しい制裁としては、組合持分の無償での没収という手段が規定されることもある。日本の組合契約においても、本条第 5 項の規定のほか、除名(有限責任組合法第 12 条第 4 号)による脱退の規定を盛り込むことが考えられる。また、組合契約上の支払義務の不履行を生じさせた有限責任組合員の組合持分の他の組合員への譲渡を強制する規定を定める例もみられ、その価格を持分相当額より低い額として設定するケースもあるが、この場合、価格によっては税務上の効果に留意が必要である。
第3章 組合業務の執行
第 14 条 無限責任組合員の権限
1. 無限責任組合員は、第 5 条に規定する本組合の事業の遂行のため、本組合の名において下記の事項その他本組合の業務を執行し、裁判上及び裁判外において本組合を代表するものとする。
① 組合財産の運用、管理及び処分
② 投資証券等に関する議決権その他組合財産に係る権利の行使
③ 投資先事業者に対する経営又は技術の指導
④ 本組合の業務上必要な弁護士、公認会計士、税理士、鑑定人、アドバイザーその他の専門家の選任、並びに、これらの者への相談及び業務委託
⑤ 組合財産の分配及び組合持分の払戻に関する事項
⑥ 会計帳簿及び記録の作成及び保管等本組合の会計に関する事務
⑦ 本組合の事業に関し発生した本組合の負担すべき費用、経費及び報酬等債務の支払いに関する事項
⑧ その他本組合の事業の目的の達成のために必要な一切の事項
2. 無限責任組合員は、ポートフォリオ投資又は本組合の費用の支払いのために本組合による金銭の借入れ及び組合財産の担保提供を行うこと、並びに、ポートフォリオ投資に関連して投資先事業者等又はその投資先が金銭の借入れを行う場合の本組合による債務の保証及び組合財産の担保提供を行うことができる。但し、本組合による借入れに係る債務、並びに、投資先事業者等又はその投資先のための債務の保証及び物上保証に係る被担保債務の合計額は、総組合員の出資約束金額の合計額の[ ]を上限とし、かつ、組合員の出資未履行金額の合計額を超えない範囲で行われるものとする。
3. 無限責任組合員は、本条第 1 項第④号[その他本契約]において許容されている場合、その裁量により適当と認める者に本組合の事務の一部を委任又は準委任することができる。
4. 無限責任組合員が有限責任組合法第 3 条第 1 項に掲げる事業以外の行為を行った場合、組合員はこれを追認することができない。
【第 14 条解説】
1. 有限責任組合法第 7 条第 1 項において、組合の業務は無限責任組合員が執行するものと規定されているが、第 14 条第 1 項は、かかる無限責任組合員の業務の具体的内容を規定している。
2. 第 14 条第 2 項は、金銭の借入れに関する規定である。
民法上の組合による投資事業組合においては、借入れが禁止されることが多いが、その主たる理由は組合員が法律上無限責任を負っていることにある。しかるところ、前述のように、投資事業有
限責任組合においては、有限責任組合法第 9 条第 2 項により、「有限責任組合員は、その出資の価額を限度として組合の債務を弁済する責任を負う。」と規定され、その有限責任性が確保されている。従って、投資事業有限責任組合は、理論上、組合員の出資金のみならず借入金をも原資として投資を行いやすい制度になっている。
本契約では、海外のリミテッド・パートナーシップ契約並びに国内のバイアウト・ファンドの投資事業有限責任組合契約における近時の実務動向を踏まえ、①投資収益率の向上、及び、キャピタル・コールに必要な期間に先立って適時の買収資金を調達するためのつなぎ融資等を目的としたポートフォリオ投資についての借入れ、②本組合の負担する費用の支払いのための借入れ、並びに、③有限責任組合員がキャピタル・コールに基づく出資義務を懈怠した場合に、当該有限責任組合員が出資すべきであった金額の資金を一時的に穴埋めするための借入れを想定し、これらの借入れが許容される内容の規定を設けている。また、投資事業有限責任組合による借入れに関して、貸付人から組合財産を担保に供するよう求めることが合理的に考えられるところであり、本契約では、本組合がかかる担保提供を行うことを許容する旨も明示的に規定している。
バイアウト・ファンドによるファンド投資の実務では、ポートフォリオ投資のため、特別目的ビークル(SPV)が投資の媒介となる中間ビークルとして広く用いられており、当該 SPV において、投資収益率のxxxのため借入れを行うことがある。また、バイアウトに際して、最終的な投資先の既存借入金をリファイナンスしたり、運転資金のためにレボルビング・ファシリティを設定することもある。その際、貸付人より、バイアウト・ファンドが保有する当該 SPV の株式等を担保提供するよう求められることが多いものと思われる。そのため、本契約では、投資事業有限責任組合による借入れ及び担保提供とあわせて、ポートフォリオ投資のために用いる SPV 及び最終的な投資先の信用補完のため、組合財産の担保提供及び債務保証を行えるものと規定している。
この点、投資事業有限責任組合による借入れ、又は担保提供若しくは債務保証は、投資事業有限責任組合の財務に重大な影響を与え得るものであり、有限責任組合員が強く関心をもつ事項である。そのため、これら借入れ、担保提供及び債務保証が可能な場合を明記することのほか、一定の制限を設けることが考えられる。代表的には、借入額及び保証額に一定の制限を設けること(例えば、出資未履行金額の一定割合の範囲に限ること)が考えられる。また、貸付けが、無限責任組合員の関連者から行われる場合には、貸付条件が不xxになる誘因が無限責任組合員において生じ得ることから、貸付条件が独立当事者間の取引と同様の経済条件であることを要する旨の制限を明記することも考えられる。
3. 第 14 条第 3 項は、無限責任組合員において、原則的には自らが業務執行を行う義務(自己執行義務)を負っているとしつつ、本契約において明記されている場合には、組合の業務を第三者に委任することを許容する趣旨の規定である。本契約では、第 14 条第 1 項第④号において、投資事業有限責任組合において想定される業務の第三者への委任が許容されることを規定しているが、このような規定の仕方のほか、無限責任組合員が広く履行補助者を利用できることを規定しておくことも考えられる。なお、第 14 条第 3 項における「[その他本契約]において許容されている場合」とは、本契約の他の条項において、業務執行の委任を認める規定が設けられた場合に挿入することとなる規定である。
ところで、無限責任組合員が組合財産の運用行為を第三者に委任することも可能であると考えられるが、組合財産の運用が、投資事業有限責任組合における中心的な業務執行であることに鑑みれば、当該委任を行う旨については、契約上抽象的に規定を設けるのではなく、委託先、委託業務の内容その他委託に関する事項を契約xxxすることが適切であろう(なお、組合財産の運用の全部を委任する場合、金融商品取引法に基づき金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令第 16 条第 1 項第 10 号所定の要件を充足するよう組合契約上に一定の規定を設ければ、無限責任組合員の行う組合財産の運用は金融商品取引業から除かれることとなり、下記 4.に記載する業規制の対象とならないこととなる(金融商品取引法第 2 条第 8 項、金融商品取引法施行令第 1 条の 8 の 6
第 1 項第 4 号)。)。また、無限責任組合員が投資運用業登録を受けて組合財産の運用を行う場合において、運用権限の委託を行う場合については、以下の解説 5.を参照。
4. なお、無限責任組合員が、投資事業有限責任組合の組合持分につき投資家に対して取得勧誘を
行う場合、及び、出資を受けた組合財産の運用を行う場合には、金融商品取引法上の業規制の対象となり、原則として、それぞれ、第二種金融商品取引業登録、及び、投資運用業登録を受けなければ、これを行うことはできない(金融商品取引法第 28 条第 2 項及び第 4 項、第 29 条)。但し、無限責任組合員は、一定の要件を満たす場合には、適格機関投資家等特例業務として管轄財務局長等に事前に届け出ることで、業者として登録を受けない場合でも、組合持分の取得勧誘及び組合財産の運用を行うことができる(金融商品取引法第 63 条第 2 項)。本契約は、無限責任組合員が、適格機関投資家等特例業務として組合持分の取得勧誘及び組合財産の運用を行うことを前提とした内容となっている(第 35 条第 5 項から第 10 項まで、第 43 条第 1 項第⑥号及び第 52 条参照。なお、適
格機関投資家等特例業務の概要については、第 35 条の解説参照)。
5. 他方、無限責任組合員が、第二種金融商品取引業登録及び投資運用業登録を受けて、組合持分の取得勧誘及び組合財産の運用を行う場合には、投資事業有限責任組合契約上、これとは異なる契約条項を規定する必要がある場合がある。なお、以下では、金融商品取引法に基づく規定のみ解説しているが、その他、無限責任組合員が自主規制機関(社団法人日本証券投資顧問業協会等)の会員である場合には、当該機関のルールにより、組合契約上一定の規定が盛り込まれる場合もある。
① 運用権限の委託
無限責任組合員が、投資運用業登録を受けて組合財産の運用を行う場合、運用権限の全部又は一部を投資運用業者に委託する場合には(但し、全ての運用財産について、その運用権限の全部を委託することはできない。金融商品取引法第 42 条の 3 第 2 項)、組合契約上、以下の事項を記載する必要がある(金融商品取引法第 42 条の 3 第 1 項、金融商品取引業等に関する内閣府令第 131 条)。
(ⅰ) 有限責任組合員のため運用を行う権限の全部又は一部の委託をする旨及びその委託先の商号又は名称
(ⅱ) 委託の概要
(ⅲ) 委託に係る報酬を運用財産から支払う場合には、当該報酬の額(あらかじめ報酬の額が確定しない場合においては、当該報酬の額の計算方法)
② 利益相反取引
無限責任組合員が、投資運用業登録を受けて組合財産の運用を行う場合には、第 18 条第 6項以下の利益相反取引に関する規定を以下のように書き換えることが考えられる(金融商品取引法第 42 条の 2 柱書き、金融商品取引業等に関する内閣府令第 128 条及び第 129 条)。なお、以下の条項案は、外国有限責任組合員が税制特例(第 16 条解説 5.参照)の適用を受けることを想定したものである。
6. 無限責任組合員は、以下に掲げる取引を行うことができない。
① 無限責任組合員(無限責任組合員が法人である場合は、法人税法第 2 条第 15 号に規定する役員及び使用人を含む。)との間において取引を行うことを内容とした組合財産の運用を行うこと。
② 無限責任組合員が金融商品取引法第 42 条第 1 項に規定する権利者のため運用を行う金銭その他の財産との間において取引を行うことを内容とした組合財産の運用を行うこと。
③ 無限責任組合員が自己又は第三者のために本組合と取引すること(本項第①号及び第②号の取引を除く。)。
7. 前項第①号の規定にかかわらず、金融商品取引業等に関する内閣府令第 128 条第 2号に基づき有限責任組合員による以下の規定に基づく同意その他の同号に規定される要件を充足して行う場合、又は、同条第 3 号に定める所轄金融庁長官等の承認を受けた場合については、この限りではない。
全ての有限責任組合員の[半数(※1)]以上であって、かつ、全ての有限責任組
合員の有する出資口数の[4 分の 3(※2)]以上が同意した場合(なお、当該取引を行うことに同意しない有限責任組合員が当該取引の内容及び当該取引を行おうとする理由の説明を受けた日から[20 日(※3)]以内に請求した場合には、当該取引を行った日から[60 日(※4)]を経過する日までに当該有限責任組合員の有する組合持分をxxな価額で組合財産をもって買い取るものとする。)
【※1 半数を下回ることはできない。】
【※2 4 分の 3 を下回ることはできない。】
【※3 20 日を下回ることはできない。】
【※4 60 日を上回ることはできない。】
8. 本条第 6 項第②号の規定にかかわらず、金融商品取引業等に関する内閣府令第 129条第 1 項第 1 号に基づき同号に規定される要件を充足して行う場合、同項第 2 号に基づき有限責任組合員による以下の規定に基づく同意その他の同号に規定される要件を充足して行う場合、又は、同項第 3 号に定める所轄金融庁長官等の承認を受けた場合については、この限りではない。
全ての有限責任組合員の[半数(※1)]以上であって、かつ、全ての有限責任組合員の有する出資口数の[4 分の 3(※2)]以上の同意を得た場合(なお、当該取引を行うことに同意しない有限責任組合員が当該取引の内容及び当該取引を行おうとする理由の説明を受けた日から[20 日(※3)]以内に請求した場合には、当該行為を行った日から[60 日(※4)]を経過する日までに当該有限責任組合員の有する組合持分をxxな価額で運用財産をもって買い取るものとする。)
【※1 半数を下回ることはできない。】
【※2 4 分の 3 を下回ることはできない。】
【※3 20 日を下回ることはできない。】
【※4 60 日を上回ることはできない。】
9. 本条第 6 項第③号の規定にかかわらず、事前に諮問委員会又は有限責任組合員に意見陳述又は助言の提供の機会を与えた場合、無限責任組合員は、自己又は第三者のために本組合と取引(同項第①号及び第②号に規定される取引を除く。)をすることができる。なお、無限責任組合員は、本項に基づく有限責任組合員の意見又は助言に拘束されるものではない。
10. 無限責任組合員は、本条第 7 項及び第 8 項に基づく同意を求める場合又は本条第 9項に基づき意見陳述若しくは助言の機会を与える場合には、それぞれの場合に応じ、諮問委員会の委員又は有限責任組合員に対し、あらかじめ書面により当該取引の内容(取引の対象及びその価額を含む。)を通知するものとする。」
③ 分別管理義務
また、無限責任組合員が、第二種金融商品取引業登録を受けて組合持分の勧誘を行う場合又は無限責任組合員以外の金融商品取引業者に勧誘を委託する場合には、(例えば、第 23 条の組合財産の管理の条項において、)組合財産の分別管理に関する以下のような規定を設けることで、一定の基準の分別管理義務を負うことが明記される必要がある。また、投資運用業者として要求される分別管理義務に沿った組合契約上の規定を設けることも考えられる。
「●. 無限責任組合員は、本契約に基づき出資された金銭を、金融商品取引法第 40 条の 3
及び金融商品取引業等に関する内閣府令第 125 条に掲げる基準を満たす態様で、無限責任組合員の固有財産その他無限責任組合員の行うほかの事業に係る財産と分別して管理するものとする。」
6. 有限責任組合法第 7 条第 4 項は、有限責任組合法による有限責任性が認められる場合を有限責任組合法が予定する投資事業に限定する趣旨から、無限責任組合員が有限責任組合法第 3 条第 1 項に掲げる事業以外の行為を行った場合(すなわち法律上の事業範囲を逸脱した行為)は、組合員は追認することができない旨規定する。第 14 条第 4 項は、かかる法律上の制限を確認する規定である。
第 15 条 無限責任組合員の注意義務
無限責任組合員は、本組合の事業の目的に従い善良なる管理者の注意をもってその業務を執行するものとする。
【第 15 条解説】
有限責任組合法第 16 条は、民法第 671 条(業務執行組合員についての委任の規定の準用)を準用しているので、無限責任組合員は、組合の業務執行に際し、善管注意義務を負うことになる(民法第 644 条)。第 15 条は、かかる趣旨を確認し、無限責任組合員の業務執行の際の注意義務を明示している。
第 16 条 有限責任組合員の権限
1. 有限責任組合員は、本組合の業務を執行し、又は本組合を代表する権限を一切有しないものとする。
2. 有限責任組合員は、投資証券等の議決権の行使につき、無限責任組合員に対して指図をすることができない。有限責任組合員のいずれかが第 14 条に反し投資証券等について議決権を行使した場合は、他の組合員は当該議決権の行使を追認することができない。
3. 有限責任組合員は、無限責任組合員に対しあらかじめ書面によりその旨の通知をなした上で、無限責任組合員の営業時間内において、自己の費用で次の各号に掲げる書類の閲覧又は謄写をなすことができる。
① 第 24 条第 3 項に規定する会計帳簿及び記録
② 第 25 条第 1 項に規定する財務諸表等及び同条第 3 項に規定する半期財務諸表等
③ 第 25 条第 1 項に規定する監査に関する意見書
④ x x 約 書
4. 有限責任組合員は、無限責任組合員に対しあらかじめ書面によりその旨の通知をなした上で、自らの費用で選任した監査法人又は公認会計士に本組合の財産状況及び無限責任組合員による本組合の業務執行状況を監査させることができるものとする。但し、当該監査の結果本組合の会計処理に関して重大な誤りが発見された場合には、当該有限責任組合員は当該監査に要した合理的な費用を本組合に請求することができる。
5. 有限責任組合員は、随時、無限責任組合員に対し、書面で、本組合の財産状況及び無限責任組合員による本組合の業務執行状況につき質問することができる。かかる場合、無限責任組合員は
[ ]日以内に適切な方法で当該質問に答えるものとする。
6. 有限責任組合員による本契約の各規定(第 10 条第 2 項及び第 3 項、本条第 3 項から第 5 項まで、第 17 条第 2 項及び第 3 項、第 18 条第 2 項及び第 6 項、第 19 条第 3 項、第 5 項及び第 8 項、第 22条第 2 項及び第 8 項並びに第 29 条第 3 項を含む。)に基づく権限の行使は、本組合の業務執行に該当しないものとする。
[7. 有限責任組合員は、租税特別措置法第 41 条の 21 第 1 項第 2 号に規定する、本契約に基づいて行う事業に係る業務の執行として租税特別措置法施行令で定める行為を行わないものとする。本項前段に抵触する本契約の規定は本項前段に抵触しないように制限的に解釈して適用されるものとする。]
【第 16 条解説】
1. 有限責任組合法第 7 条第 1 項は、組合の業務は無限責任組合員が執行するものと規定している。第 16 条第 1 項は、有限責任組合員は業務xxx及び代表権を有しない旨の確認規定である。
2. 前述のとおり、独占禁止法第 11 条第 1 項本文は、銀行業又は保険業を営む会社による他の会社の議決権保有を制限する一方、一定の場合その例外を認め、同条第 1 項但書き第 4 号本文で銀行又は保険会社が投資事業有限責任組合の有限責任組合員となり、組合財産として株式を取得し又は所有することにより議決権を取得又は保有する場合には、議決権保有制限は適用されないものとする。但し、かかる例外規定は、前述の①「議決権を有することとなった日から政令で定める期間を超えて当該議決権を保有する場合」のほか、②「有限責任組合員が議決権を行使することができる場合」及び③「議決権の行使について有限責任組合員が投資事業有限責任組合の無限責任組合員に指図を行うことができる場合」には適用されない(同条第 1 項、第 4 号但書き)。そこで、第 14 条において、投資証券等に関する議決権の行使は、無限責任組合員の業務執行権限とされていることに加え、第 16 条第 2 項において、有限責任組合員が無限責任組合員に対し議決権の行使につき指図を行うことができないことを明確にした。さらに、有限責任組合員のいずれかが第 14 条の規定に反し投資証券等について議決権を行使した場合には、有限責任組合法第 7 条第 4 項の追認禁止規定が及ばないため、有限責任組合法上は、追認が可能であることに鑑み、第 16 条第 2 項において、有限責任組合員のいずれかが第 14 条の規定に反し投資証券等について議決権を行使した場合には、他の組合員は当該議決権の行使を追認することができないと規定した。以上のとおり、第 16 条第 2 項では、上記②及び③の点に関して、独占禁止法第 11 条に定める議決権保有の制限からの除外規定の適用の確保を図っている。
3. 第 16 条第 3 項から第 5 項までは、有限責任組合員の業務及び財産の状況の検査権を規定している。
有限責任組合法は、民法 673 条を準用している(有限責任組合法第 16 条)ので、各組合員は、組合の業務及び組合財産の状況についての検査権を有しているほか、各組合員は、「営業時間内、いつでも、財務諸表等並びに前項の組合契約書及び意見書の閲覧又は謄写を請求することができる」とされている(有限責任組合法第 8 条第 3 項)。
本契約では、第 16 条第 3 項において、有限責任組合法第 8 条 3 項に規定されている書類等に加え、有限責任組合員は、半期財務諸表等、組合の会計帳簿及び記録についても閲覧及び謄写ができる旨規定している。なお、有限責任組合法第 8 条第 3 項に規定された財務諸表等及び意見書につい
ては、本契約では、その第 25 条第 1 項により、組合員に直接送付される。組合の業務及び財産の状
況の検査権については、監査法人又は公認会計士を通じて行うことができるものとし(第 16 条第 4
項)、さらに、第 16 条第 5 項において、書面による質問権として規定している。
4. 有限責任組合法第 7 条第 1 項は、「組合の業務は、無限責任組合員がこれを執行する。」と規定し、また同法第 9 条第 3 項は、「有限責任組合員に組合の業務を執行する権限を有する組合員であると誤認させるような行為があった場合には、前項の規定にかかわらず、当該有限責任組合員は、その誤認に基づき組合と取引をした者に対し無限責任組合員と同一の責任を負う。」と規定している。有限責任組合員に組合の業務を執行する権限を有する組合員であると誤認させるような行為があったか否かについては、行為ごとに個別具体的に判断されるが、本組合の共同事業を行う者として有限責任組合員にも本来認められるべき権利ないし責務の行使は当該行為に該当しない。そこで、その旨を組合員相互間において確認する趣旨から第 16 条第 6 項を規定している。
5. 外国有限責任組合員が、平成 21 年度税制改正において導入された「外国有限責任組合員に対す
る課税の特例」(租税特別措置法第 41 条の 21、第 67 条の 16)及び「xx的施設を有しない外国有限責任組合員の課税所得の特例」(租税特別措置法施行令第 26 条の 31、第 39 条の 33 の 2)(以下
「税制特例」と総称する。)の適用を受ける投資事業有限責任組合である場合には、有限責任組合員に認められる権限の行使が、税制特例の適用のための消極的要件(かかる行為を行っていない、という要件)である投資組合事業に係る業務執行又は業務執行の決定についての承認、同意その他これらに類する行為(以下「税法上の業務執行承認」という。)に該当しないことが必要とされる。
この点については、有限責任組合員の権限に関する個別の規定(例えば、第 18 条第 2 項、第 6 項 等)において、有限責任組合員の当該権限が、税法上の業務執行承認に該当しないよう規定を整備する必要がある。しかし、場合によっては、有限責任組合員の権限規定が、税法上の業務執行承認に該当するのではないかとの疑義が生じる可能性もあるところ、かかる契約条項における解釈基準として、第 16 条第 7 項のような規定を設けることが考えられる。すなわち、第 16 条第 7 項では、有限責任組合員の権限規定が税法上の業務執行承認に該当するのではないかとの疑義がある場合において、当該規定を制限的に解釈することとしている。
なお、第 16 条第 7 項はあくまで、疑義が生じる場合の解釈指針を目的とした規定に過ぎないため、それを超えて、明らかに税法上の業務執行承認に該当する承認権限が有限責任組合員に与えられている場合にも税制特例の要件が具備される効果を導こうとすることを意図したものではない点に留意されたい。あくまで、契約書の作成においては、まず、個別の権限規定において税法上の業務執行承認に該当しないよう規定を整備することが目指されるべきである。
また、有限責任組合員の権限行使の運用の実態においても、外国有限責任組合員の権限行使が税法上の業務執行承認に該当しないよう留意する必要がある。
第 17 条 組合員集会
1. 無限責任組合員は、第 25 条第 1 項に従い組合員に対し財務諸表等を送付した後速やかに(但し、遅くとも毎事業年度終了後[ ]日以内に)、組合員集会を招集するものとする。
2. 総有限責任組合員の出資口数の合計の[ ]分の[ ]以上に相当する出資口数を有する有限責任組合員からの請求があったとき又は無限責任組合員が適宜必要と判断したときは、無限責任組合員は組合員に対し、会日の[ ]日前までの書面による通知を行い組合員集会を招集するものとする。
3. 組合員集会において、無限責任組合員は、本組合の運営及び組合財産の運用状況につき報告するものとし、組合員は、無限責任組合員に対しそれらにつき意見を述べることができる。
【第 17 条解説】
1. 第 14 条のとおり、本組合の業務の執行は無限責任組合員に委ねられる。これに対し、有限責任組合員は、組合の業務及び組合財産の状況について検査権を有するが(第 16 条第 3 項から第 5 項までを参照)、通常は、第 25 条に規定されるように、定期的に受領する財務諸表等、すなわち書面を通して、業務・組合財産の状況を確認することが中心となる。しかし、投資家である有限責任組合員からすると、単に書面での報告に止まらず、直接無限責任組合員から報告を受け、意見具申をし、質疑応答の機会を行う場を持てることが望ましい。そこで、第 17 条では、まず、第 1 項で、定期の組合員集会を、毎年一回、第 25 条に定める財務諸表等の送付後速やかに(遅くとも毎事業年度終了後
[ ]日以内に)開催すべきことを規定し、さらに、第 2 項で、定期的な開催のみならず、臨時に組合員集会を開催できることを定め、その際の要件を規定した。そして第 3 項は、これら組合員集会において、組合員が組合財産の運用等につき意見を述べることができることを、規定している。
2. 以上に加え、投資家の便宜を図るという観点から、「有限責任組合員は、その選択に従い、直接又は代理人による参加のほか、書面又は会議電話にて組合員集会に参加し、質問又は意見陳述を行
うことができる。」という規定を置くことも考えられる。この場合、無限責任組合員は、そのために必要となる会議電話の設置等の手配を行うことになる。
3. 組合員集会の開催は、本組合における共同事業性の一つの顕れである。
第 18 条 利益相反
1. 有限責任組合員は、(ⅰ)本組合の事業と同種若しくは類似の事業を行うこと、又は、(ⅱ)本組合の事業と同種若しくは類似の事業を目的とする他の組合(民法上の組合、投資事業有限責任組合、匿名組合、ジェネラル・パートナーシップ、リミテッド・パートナーシップその他これらに類するものを含む。以下本条において同じ。)、会社若しくはその他の団体の組合員(無限責任組合員及びジェネラル・パートナーを含む。)、社員(無限責任社員を含む。)、株主、出資者、取締役若しくは業務執行者となることができる。
2. 無限責任組合員は、(ⅰ)投資総額並びに本組合の費用及び管理報酬にあてられた出資履行金額の合計額が総組合員の出資約束金額の合計額の[ ]分の[ ]に達する時、又は(ⅱ)出資約束期間の満了時のいずれか早い時までの間は、本組合の事業と同種又は類似の事業を行うこと、及び本組合の事業と同種又は類似の事業を目的とする他の組合、会社又はその他の団体(以下「承継ファンド」という。)の無限責任組合員、ジェネラル・パートナー、無限責任社員、取締役又は業務執行者その他これらに類似する役職として当該団体の管理及び運営を行うことができないものとする。但し、(ⅰ)諮問委員会の委員の[ ]分の[ ]以上がかかる行為を承認した場合又は(ⅱ)総有限責任組合員の出資口数の[ ]分の[ ]以上に相当する出資口数を有する有限責任組合員がかかる行為を承認した場合はこの限りではない。
3. 前項の規定にかかわらず、無限責任組合員は、(ⅰ)効力発生日前に組成された本組合の事業と同種又は類似の事業を目的とする組合、会社又はその他の団体で、その無限責任組合員、ジェネラル・パートナー、無限責任社員、取締役又は業務執行者その他これらに類似する役職に就任しているもの(以下「既存ファンド」という。)につき、無限責任組合員、ジェネラル・パートナー、無限責任社員、取締役又は業務執行者その他これらに類似する役職としてその管理及び運営を行うこと、及び(ⅱ)[ ]を目的とする組合、会社又はその他これらに類似する団体の無限責任組合員、ジェネラル・パートナー、無限責任社員、取締役又は業務執行者その他これらに類似する役職としてその管理及び運営を行うことは禁止されない。
4. 無限責任組合員は、既存ファンド及び承継ファンドの無限責任組合員、ジェネラル・パートナー、無限責任社員、取締役又は業務執行者その他これらに類似する役職としてその管理及び運営を行う場合、本組合、既存ファンド及び承継ファンドの間で無限責任組合員がその裁量に基づき適当と認めるところに基づいて投資機会を配分することができる。
5. 有限責任組合員は自己又は第三者のために本組合と取引をすることができる。
6. 無限責任組合員は、自己又は第三者のために本組合と取引をすることができない。但し、[次に掲げる取引については、](ⅰ)諮問委員会の委員の[ ]分の[ ]以上がかかる取引を承認した場合又は(ⅱ)総有限責任組合員の出資口数の合計の[ ]分の[ ]以上に相当する出資口数を有する有限責任組合員がかかる取引を承認した場合[、また、次に掲げる取引以外の取引については、事前に諮問委員会又は有限責任組合員に意見陳述又は助言の提供の機会を与えた場合、]無限責任組合員は、自己又は第三者のために本組合と取引をすることができる。無限責任組合員は、かかる承認を求める場合[又は意見陳述若しくは助言の機会を与える場合]には、諮問委員会の委員又は有限責任組合員に対し、あらかじめ書面により当該取引の内容を通知するものとする。[なお、無限責任組合員は、本項に基づく諮問委員会の委員又は有限責任組合員の意見又は助言に拘束されるものではない。]
[① 無限責任組合員(その法人税法第 2 条第 15 号に規定する役員及び使用人を含む。)との間において取引を行うことを内容とした組合財産の運用を行うこと。
② 無限責任組合員が金融商品取引法第 42 条第 1 項に規定する権利者のため運用を行う金銭その他の財産との間において取引を行うことを内容とした組合財産の運用を行うこと。]
【第 18 条解説】
1. 無限責任組合員は、有限責任組合法第 16 条が準用する民法 671 条(業務執行組合員についての委任の規定の準用)により、民法 644 条に基づき、組合の業務執行にあたり、善管注意義務を負担する。この善管注意義務の一部として、無限責任組合員には、組合の利益の犠牲の上に自己又は第三者の利益を図ってはならないという義務が、一般的に課されていると考えられる。第 18 条は、この無限責任組合員の一般的な義務を前提に、一定の場面に関し、その義務の内容を明確にするとともに、確認的に、業務執行を担当しない有限責任組合員にはこうした義務が課されないことを規定することを目的とする。
2. 無限責任組合員の利益相反行為が具体的に問題となる典型的なケースとしては、第一に、無限責任組合員が本組合の事業と同種又は類似の事業を行うこと等を認めるかという点、第二に、無限責任組合員と組合間の取引を認めるかという点がある。そこで第 18 条では、これら典型的なケースにおける無限責任組合員の義務の内容を明確にするとともに、いずれの場合についても有限責任組合員は特段の規制を受けないことを確認的に規定している。
3. 第一の点については、まず、無限責任組合員が本組合の管理及び運営以外に他の組合の管理及び運営に従事することになると、本組合と他の組合との間で利害が対立する状況が生じるおそれがある。例えば、無限責任組合員が投資対象を得た場合、いずれの組合からどれだけ出資するかという投資機会の配分の問題が生じ、投資家においては、本組合に不利益な配分がなされるのではないかという懸念が生じる。また、無限責任組合員が複数の組合の管理及び運営を行う場合には、投資家においては、無限責任組合員の資源・時間が本組合の運営に集中的に投下されず、十分なリターンが確保できない結果になるのではないかという危惧が生じる。
そこで第 18 条第 2 項においては、投資残高(本契約では採用していないが、ポートフォリオ投資が確約された場合の金額が合算されると規定されることも多い。)並びに組合費用及び管理報酬にあてられた出資履行金額が一定額に達するまで又は遅くとも出資約束期間が満了するまでは、諮問委員会(第 19 条参照)の委員の一定数又は一定の出資口数を有する有限責任組合員の承認を得ることなく、本組合の事業と同種又は類似の事業を行うこと等を認めないとの規定を置いている。この規定によると、一定の段階までは無限責任組合員は他の組合を組成して投資事業を行うことはできなくなるが、反面、投資機会の配分の問題や、資源の分散といった問題は生じない。
もっとも、本契約の条項はあくまで一つの例示に過ぎず、投資事業有限責任組合の無限責任組合員ごとに、前提となる事業活動の方針が異なるところであるため、個別具体的な事情に応じた規定を設けることが適切であると考えられる。
例えば、投資事業有限責任組合の組成を事業目的とする専門会社が、複数の投資事業有限責任組合を組成し、各投資事業有限責任組合の無限責任組合員として、同時期に、各投資事業有限責任組合について投資運用行為を行うことを前提としているような場合もある。このような場合において、第 18 条第 2 項のように一般的に同種又は類似の事業を目的とするファンドの組成を禁止するこ
とは適切ではない。その場合には、そもそも第 18 条第 2 項のような規定を設けないか、設けるとし
ても、第 18 条第 2 項の適用対象をかかる実態に沿って限定するため、条項の文言を工夫することが必要となる。
なお、無限責任組合員が、当該組合の業務の執行のみを行う会社である場合には、上記の文例のままであると、形式的には義務違反が生じないので、投資家としては、実質的に利益相反行為が行われることを回避するために、条項の文言を工夫することが必要となる。
4. 無限責任組合員について、第 18 条第 2 項のような制約を設ける一方で第 18 条第 3 項のように一定のファンド(既存ファンドや本組合が事業目的として掲げない内容の投資を行うファンド)に従事することは明確に例外として規定すること等も考えられる。
また、第 18 条第 4 項では、本組合の事業と同種又は類似の事業を営むことを目的とするファンド
(既存ファンド、承継ファンド)が組成された場合の、本組合と既存ファンド及び承継ファンド間の投資機会の配分について、承継ファンドについては第 2 項の規制を経て、既存ファンドについて
は第 3 項において許容されるところに従って組成されたことに鑑み、無限責任組合員が適当と判断するところに従って投資機会を配分することができることを確認的に規定している。
無限責任組合員の他のファンドの組成に関する規律は、上記の方法以外にも、ファンドの性質や無限責任組合員の事業運営の方法等個別具体的な状況によって様々なバリエーションがあり得よう。
5. 第二の点については、上記のとおり、有限責任組合員は、組合の業務執行につき何らの権限を有しておらず、有限責任組合員と組合が取引を行っても、類型的に組合に不利になるものではない。従って、第 18 条第 5 項においては有限責任組合員と組合の取引については禁止しないことを注意的に規定している。なお、類型的に不利になるものではないとしても、有限責任組合員と組合の現実の取引が組合に不利になる可能性はある。ただ、その点は組合を代理して取引を行う無限責任組合員の善管注意義務に委ねられることになる。一方、無限責任組合員と組合との取引については、いわゆる「利益の対立」があり、類型的に組合に不利であるものとして、原則としてこれを禁止した上で、諮問委員会(第 19 条参照)の委員の一定数又は一定の出資口数を有する有限責任組合員が事前に承認した場合には例外的にかかる取引を行うことができるものとしている。
6. 外国有限責任組合員が税制特例の適用を受ける投資事業有限責任組合契約において、第 18 条第 2 項及び第 6 項における有限責任組合員による承認が、税法上の業務執行承認に該当しないか問題となり得る。
有限責任組合員による第 18 条第 2 項の承認については、第 18 条第 2 項の規制対象となる無限責任組合員の行為が、本組合の業務執行権限者の立場を離れて行う行為と考えられるため、税法上の業務執行承認には該当しないものと考えられる(経済産業省「外国組合員に対する課税の特例、xx的施設を有しない外国組合員の課税所得の特例における『業務執行として政令で定める行為』について」(以下「Q&A」という。)2.(2)③)。
第 18 条第 6 項が規定する無限責任組合員の本組合との取引に関する承認は、租税特別措置法施行
令第 26 条の 30 第 1 項第 3 号の括弧書きのイ及びロの除外事由に該当する場合には、税務上の業務執行承認には該当しないことになる。そのため、当該条項の規定に沿って、無限責任組合員と本組合間の自己取引(同号イ)、及び、無限責任組合員が運用行為を行う他のファンドと本組合との間で運用財産相互間取引(同号ロ)については、諮問委員会又は有限責任組合員の一定数の承認により、それ以外の事項については、諮問委員会又は有限責任組合員の意見陳述若しくは助言の機会を経ることで、かかる行為を行うことができるようになることとしている。なお、無限責任組合員が、有限責任組合員又は諮問委員会の意見又は助言に拘束される場合には、当該意見又は助言は実質的に承認と同等の機能を有し得るため、有限責任組合員又は諮問委員会の当該意見又は助言が、税法上の業務執行承認に該当する可能性が生じる(経済産業省「Q&A」2.(2)③、⑤)。そのため、無限責任組合員は、かかる意見又は助言に拘束されないことを確認的に規定している。
7. 無限責任組合員が、投資運用業の登録を受けて組合財産の運用を行う場合の利益相反取引の条項については、第 14 条の解説 5.を参照されたい。
8. 以上に加え、実務では、投資家の属性、投資家に適用される業法上の規制の差違等を背景に、組合をほぼ同時に複数設立して投資事業を行うことがある(いわゆる並行ファンド(パラレルファンド)の設立)。この場合は、本来ひとつの組合を設立して投資を行って行くことが前提であるから、無限責任組合が得た一切の投資機会については、運用資産額に応じて按分して投資を行うことになるとする規定を設けることになろう。
第 19 条 諮問委員会
1. 無限責任組合員は、本条に定めるところに従い、本組合の諮問委員会(以下「諮問委員会」とい
う。)を設置する。
2. 諮問委員会の委員は[ ]名以内とする。
3. 諮問委員会の委員は、当初の出資約束金額が金[ ]円以上である有限責任組合員が指名する自己の役員又は従業員とする(当該有限責任組合員が個人の場合には当該有限責任組合員とする。)。無限責任組合員は、正当な理由がある場合、(ⅰ)当該有限責任組合員が指名した者が諮問委員会の委員に就任することを拒否することができ、また、(ⅱ)諮問委員会の委員を解任することができる。但し、(ⅱ)の場合には、無限責任組合員は、他の全ての諮問委員会の委員に対して解任を行う意思があることを事前に書面により通知するものとし、当該通知の到達の日から
[ ]日以内に、かかる解任につき当該他の委員の[ ]分の[ ]以上の反対があった場合には、かかる解任は行われないものとする。諮問委員会の委員が辞任し若しくは解任され又は死亡した場合、当該委員を指名した有限責任組合員のみが後任の委員を指名することができる。有限責任組合員が不履行有限責任組合員となった場合、当該有限責任組合員は諮問委員会の委員を指名する権利を失い、当該有限責任組合員が指名した委員は当然に解任されたものとみなす。なお、効力発生日における諮問委員会の委員は、本契約添付別紙[ ]に記載の者とする。
4. 諮問委員会の委員の任期は[期間の定めのないものとする。]
5. 諮問委員会は、次に掲げる事項を行うことができるものとする。無限責任組合員は、本項各号に掲げる行為又は取引については、本項各号に規定されるところに従って、諮問委員会の承認を得ることで又は諮問委員会の意見陳述若しくは助言の機会を設けることで、かかる行為又は取引を行うことができるものとする。なお、本項[第①号、第②号又は]第③号において、諮問委員会は、意見陳述又は助言提供の機会を与えられるにとどまり、無限責任組合員は、かかる意見又は助言に拘束されないものとする。
① 前条第 2 項に定める行為及び前条第 6 項に定める取引について無限責任組合員から事前にその[承認/承認又は意見陳述若しくは助言]を求められたものについての[承認/承認又は意見陳述若しくは助言]。
② 第①号に規定する行為及び取引のほか、本組合の利益と相反し又は相反する可能性のある無限責任組合員又はその役員若しくは従業員の行為又は取引のうち、無限責任組合員から事前にその[承認/意見陳述又は助言]を求められたものについての[承認/意見陳述又は助
言]。
③ その他無限責任組合員から照会を受けた本組合に関する事項についての意見陳述又は助言。
6. 諮問委員会は、無限責任組合員がこれを招集し、無限責任組合員の定める者が議長となる。
7. 無限責任組合員は、無限責任組合員が必要と判断したときに、会日の[ ]日前までに諮問委員会の各委員に招集通知を発送することにより、諮問委員会を開催する。但し、緊急の必要があるときは、この期間を短縮することができる。
8. 諮問委員会の承認は、諮問委員会の委員の[ ]分の[ ]以上の承認をもって行われるものとする。
9. 諮問委員会の委員に報酬は支払わないものとする。
10. 無限責任組合員は諮問委員会の委員に対し、組合財産から合理的な範囲内で交通費その他の実費を支払うことができる。
11. 諮問委員会に委員として参加する有限責任組合員又はその役員若しくは従業員は、諮問委員会の委員であること、又は、諮問委員会における活動を理由として、本組合及び組合員に対していかなる責任も負わないものとする(但し、故意又は重過失による不法行為が行われた場合は、この限りではない。)。
[12. 諮問委員会においては、租税特別措置法第 41 条の 21 第 1 項第 2 号に規定する、本契約に基づいて行う事業に係る業務の執行として租税特別措置法施行令で定める行為を行わないものとす
る。本項前段に抵触する本契約の規定は本項前段に抵触しないように制限的に解釈して適用されるものとする。]
【第 19 条解説】
1. 第 19 条はいわゆる諮問委員会に関する規定である。アドバイザリー・コミティー又はアドバイザリー・ボードその他の名称で呼ばれることもある。法律の規定に基づく機関ではなく、組合契約に基づいて設置される任意の機関であり、必ずしもその設置が強制されるものではない。また、その構成、機能、権限等も、個別の案件ごとに規定することになると考えられる(なお、細則については別途諮問委員会規程等を設けて規定して行くことも考えられる)。
2. 諮問委員会を設置することにした場合、最も重要な点は、どのような者で構成される機関とし、諮問委員会にいかなる権限を認めるかである。この点は、契約に基づいて設置される機関である以上当事者が組合ごとに自由に設計することが可能である(但し、下記 4.に注意する必要がある。)。
3. 本契約では、諮問委員会の委員について、当初の出資約束金額が一定額以上の有限責任組合員の役職員が諮問委員会を構成することとしている(第 19 条第 3 項)。他方、これと異なる設計方法として、諮問委員会の委員を無限責任組合員が選任することとしている例も多い。このような場合には、組合への加入の際の交渉を通じて、有限責任組合員は諮問委員会の委員の席を得て行くこととなろう。
また、本契約では、無限責任組合員は、正当な理由がある場合には、有限責任組合員が指名した者の諮問委員会の委員への就任を拒否し、また、委員を解任することができるとしている。もっとも、無限責任組合員による解任が恣意的なものとならないよう、本契約においては他の委員による異議権を規定している。
4. 諮問委員会の権限については、例えば、①無限責任組合員に対し、本組合の業務執行につき、意見具申をし助言提供を行う機関とする、又は、②こうした機能に加え、一定の事項、特に無限責任組合員による利益相反行為について承認・非承認の権限を与える機関とすること等が考えられる。なお、有限責任組合法第 7 条第 1 項は、「組合の業務は、無限責任組合員がこれを執行する。」とあるので、諮問委員会に権限を付与することにより、有限責任組合員が自ら「組合の業務の執行」を行うことにならないよう留意する必要がある。
本契約では、上記の②を前提に、無限責任組合員に対する助言と、利益相反行為の承認又は意見陳述若しくは助言の提供とを担う機関とすることとしている(第 19 条第 5 項)。
この点無限責任組合員の利益相反行為については、まず、前記のとおり第 18 条では、利益相反行
為のうち、(a)本組合の事業と同種又は類似の事業を行うこと等(第 18 条第 2 項)、及び(b)自己又
は第三者のために本組合と取引をすること(第 18 条第 6 項)については、諮問委員会の委員の一定
数が承認した場合にはこれを行うことができると規定することが考えられる。第 19 条第 5 項第①号
も、こうした第 18 条の規定を受け、これらの承認を諮問委員会が行い得ることを規定することが考えられる。
次に、上記(a)又は(b)のほかにも、利益相反のおそれのある行為は存する。無限責任組合員は、第 18 条解説のとおり、組合の利益と相反する行為を行わないという一般的な義務を負っていると考
えられるから、第 18 条で明確に規定されていない事項についても、承認を得た上で当該行為を行い
たいと考える場合があることが想定される。そこで、第 19 条第 5 項第②号は、無限責任組合員は、その他の利益相反行為についても、諮問委員会に承認を求め、その承認を得た上で当該行為を行うことが可能であることを規定することが考えられる。
5. 他方で、外国有限責任組合員が税制特例の適用を受ける投資事業有限責任組合契約の場合、諮問委員会の権限が税法上の業務執行承認に該当しないかという点について留意する必要がある。なお、有限責任組合員で構成される諮問委員会の権限行使が、税法上の業務執行承認に該当するか
は、有限責任組合員による権限行使の場合と同様の観点から判断されるものと考えられる(経済産業省「Q&A」3.)。
有限責任組合員の場合と同様、租税特別措置法施行令第 26 条の 30 第 1 項第 3 号の括弧書きにおいて除外されている、無限責任組合員による本組合との取引及び無限責任組合員が運用する複数の組合間で行う取引に関する承認、並びに、無限責任組合員が、本組合の業務執行権限者の立場を離れて行う行為と考えられる行為に関する承認(経済産業省「Q&A」2.(2)③)、本組合の業務執行そのものではなく、業務執行の前提となる業務執行の権限規定の変更に関する承認(経済産業省
「Q&A」2.(2)④)、及び、無限責任組合員に対して拘束力を有しない意見又は助言にとどまるもの
(経済産業省「Q&A」2.(2)⑤)等については、税法上の業務執行承認には該当しないものと考えられる。
第 19 条第 5 項第①号の承認については、第 18 条の解説 6.を参照されたい。
第 19 条第 5 項第②号の承認については、無限責任組合員による業務執行に関して様々な利益相反取引の承認を定めるものであるため、対象となる取引によっては、税法上の業務執行承認に該当する場合も考えられる。
そのため、第②号については、諮問委員会による承認ではなく、諮問委員会の権限を意見陳述及び助言に留めることが考えられる。他方で、第②号の対象とする利益相反取引の対象が広く、税法上の業務執行承認にはあたらないような場合も考えられるため、本号の諮問委員会の権限を、単に意見陳述又は助言に留めるのではなく、個別の態様に応じて、承認権限を与えるよう、個別に文言を工夫することも考えられよう。
第 19 条第 5 項第③号に規定される意見陳述及び助言についても、これが無限責任組合員に対して拘束力を有しない限りにおいて、税法上の業務執行承認に該当しないものと考えられる。
かかる非拘束性を明示するため、第 19 条第 5 項但書きにおいては、第 19 条第 5 項[第①号、第
②号及び]第③号の意見陳述又は助言について、無限責任組合員に対して拘束力を有しない旨規定している。
6. 諮問委員会における委員の活動は、本組合や組合員に対して特段の義務を負うことは前提としておらず、一有限責任組合員という地位に基づき行われるに過ぎないことから、委員が、諮問委員会における活動により本組合や組合員に責任を負うことがない旨規定している(なお、諮問委員会の委員に対する組合による補償について、第 21 条第 2 項で規定している。)。なお、故意又は重過失による不法行為の場合はこの理が及ばないため、免責の対象から除外している。
7. 外国有限責任組合員が税制特例の適用を受ける投資事業有限責任組合契約について、有限責任組合員の権限行使に関する第 16 条第 5 項と同様の解釈規定を第 19 条第 12 項として規定することも考えられる(第 16 条解説 5.参照)。
第4章 組合員の責任
第 20 条 組合債務に対する対外的責任
1. 本組合の債務は、無限責任組合員が組合財産をもって弁済するものとする。但し、無限責任組合員は自らの固有財産をもって弁済する責任を免れるものではない。
2. 第 30 条第 2 項に規定する場合を除き、有限責任組合員は、出資の価額を限度として債務を弁済する責任を負う。
【第 20 条解説】
1. 有限責任組合法上、無限責任組合員は、組合の債務について自己の固有財産についても責任財
産になるものとして無限責任を負い、有限責任組合員は、その出資の価額を限度として組合の債務を弁済する責任を負うものとされている(有限責任組合法第 9 条第 2 項)。
2. 第 20 条は、無限責任組合員に対し組合の債務は組合財産をもって弁済することを義務付けた上で、以上の有限責任組合法第 9 条の趣旨を確認的に規定するものである。無限責任組合員は、自らの固有財産をもって、自己の負担部分を超えて組合の債務を弁済した場合には、組合財産に対し求償することができる。
3. なお、第 1 条の解説のとおり、有限責任組合法第 9 条第 2 項の規定する「出資の価額を限度として組合の債務を弁済する責任を負う」の意味であるが、ここで「出資の価額」とは、有限責任組合員が、組合に実際に出資した金額を指すものと解されることから、当該現実に出資した財産の限度で責任を負うことになる。なお、キャピタル・コール方式を採る組合では、出資約束金額のうち未だ出資履行されていない金額について、キャピタル・コールが有効に行われてはじめて、有限責任組合員の出資義務が発生すると考えられる。有限責任組合員に対する出資履行請求権は、その時点で組合財産を構成すると解されることから、有限責任組合員は、実際に出資した財産とあわせ、キャピタル・コールが有効に行われたことで発生した当該出資義務の範囲で、組合債務の弁済についての責任を負うことになるものと考えられる。
第 21 条 組合財産による補償
1. 有限責任組合員が第三者から、本組合の事業に関して、請求その他何らかの権利の主張を受けた場合、当該有限責任組合員は直ちにその旨を無限責任組合員に通知するものとする。無限責任組合員は、かかる通知受領後速やかに、当該有限責任組合員が、かかる請求ないし権利の主張を直接に受けることがないようにするために必要な措置を採るものとし、当該有限責任組合員は無限責任組合員の措置に協力するものとする。
2. (ⅰ)組合員並びにその取締役、監査役、執行役、従業員、代理人及び株主、又は(ⅱ)諮問委員会の委員(以下「被補償者」と総称する。)が、本組合の事業又は業務(投資先事業者への助言、指導、投資先事業者の取締役としての職務の遂行を含む。)に関連して、費用を負担し又は損害、損失等を被った場合(自らの固有財産をもって本組合の債務を弁済した場合を含む。)、組合財産より補償を受けることができる。但し、被補償者は、その故意又は重過失に基づきかかる費用、損害、損失等を被った場合には、かかる補償を受けることができないものとする。
【第 21 条解説】
1. 前述のように、有限責任組合法第 9 条第 2 項により、「有限責任組合員は、その出資の価額を限度として組合の債務を弁済する責任を負う。」と規定され、有限責任組合員は、第 8 条に定める出資義務を履行していない範囲及び有限責任組合法第 10 条に規定する場合を除き、組合の債権者より直接請求を受けることはないものと考えられる。ただ、かかる有限責任組合員と、第三者との間において何らかの紛争が生じる場合はあり得る。第 21 条第 1 項は、かかる場合に、無限責任組合員をして適切な措置を採らしめるための規定である。有限責任組合員も無限責任組合員の措置に協力するものとされている。
2. 第 21 条第 2 項は、組合員が自己の負担部分を超えて組合債務を弁済した場合等、組合員又はその関係者が本組合の事業又は業務に関連して損害等を被った場合に、組合財産より補償を行うべき旨規定する。無限責任組合員は、その固有財産も責任財産とされているため、組合の債権者が無限責任組合員の固有財産より満足を受けることが想定されるが、そのような場合でも、原則、無限責任組合員はその全額を組合財産より補償を受けることができることになる。
第5章 組合財産の運用及び管理
第 22 条 組合財産の運用
1. 無限責任組合員は、第 5 条に規定される本組合の事業の範囲内で、組合財産を本契約添付別紙 2記載の投資ガイドラインに従い運用するものとする。
2. 無限責任組合員が投資先事業者等に対し追加的なポートフォリオ投資を行う場合には、事前に有限責任組合員に対しその旨を通知することにより、有限責任組合員に意見を述べる機会を与えなければならない。但し、当該投資先事業者等との間で当初投資する際に締結した投資契約に基づき行われる場合はこの限りではない。なお、無限責任組合員は、追加的なポートフォリオ投資を行う場合、本項に基づく有限責任組合員の意見に拘束されるものではない。
3. 第 29 条第 6 項その他本契約において許容されている場合を除き、無限責任組合員は、ポートフォリオ投資を実行するに際し、第 29 条第 2 項に規定される処分収益又はその他投資収益を用いてはならない。
4. [無限責任組合員は、ポートフォリオ投資を実行する際、当該投資先事業者等との間で、無限責任組合員が当該ポートフォリオ投資に関して適切と認める内容の投資契約を締結するものとする。]
5. 無限責任組合員は、業務上の余裕金を、本契約添付別紙[ ]に記載された方法により運用するものとする。
6. 前各項に定めるほか、投資の時期及び方法、投資証券等及び投資知的財産権の処分の時期及び方法、新株予約権の行使等組合財産の運用、管理及び処分に関する事項は全て、無限責任組合員の裁量により行われるものとする。
[7. 無限責任組合員は、ポートフォリオ投資を実行した場合、次に掲げる事項を、各組合員に対し、遅滞なく、書面により通知するものとする。
① 当該ポートフォリオ投資の対象である投資先事業者等の概要。
② 当該ポートフォリオ投資に係る投資証券等又は投資知的財産権の種類及び数。
③ 当該ポートフォリオ投資の理由及びその保管若しくは管理に関する事項その他適切と認められる事項。]
8. 有限責任組合員は、無限責任組合員に対し、投資証券等及び投資知的財産権の選定その他組合財産の運用について意見を述べることができる。なお、無限責任組合員は、本項に基づく有限責任組合員の意見に拘束されるものではない。
【第 22 条解説】
1. 第 22 条第 1 項は、無限責任組合員は、投資ガイドラインに従い組合財産の運用を行うべき旨規定する。プライベート・エクイティ・ファンドにおいては、通常ファンド組成の際に組合員が出資を約束する時点では未だ具体的な投資対象が特定されていない。しかし、無限責任組合員による運用方針に制限を加えないと、投資家の保護に失するおそれがあるため、あらかじめある程度具体的・明確な投資ガイドラインを定め、これによって無限責任組合員の投資活動に一定の枠組みを設定することが考えられる。また、このようなガイドラインの設定は、組合員の共同事業性を担保する上でも好ましい。また、運用に対する規制としては、以下のようなものが考えられる。
(1) 同一の投資先事業者等に対する投資の限度額として、出資約束金額の一定割合を定めること
(2) 投資の対象とする地域を限定すること
(3) 投資手法(例えば、株式/社債等、上場株/非上場株等の投資対象とする投資証券等の
別)を限定すること
(4) 上記(1)の制限にもかかわらず、ブリッジ・ファイナンシングとして、一定額の投融資を別枠で行えるように定めておくこと
2. これらの投資ガイドライン上の規制については、投資事業有限責任組合の運営上、例外的に規制の適用を除外することが必要となる場面もある。その手法としては、組合員の一定割合の承認を必要とする規定をおくこと等も考えられるが、外国有限責任組合員が税制特例の適用を受ける投資事業有限責任組合契約については、かかる承認が税法上の業務執行承認に該当しないか問題となる。
無限責任組合員の業務執行の前提となる業務執行権限に関する承認であれば、税法上の業務執行承認には該当しないと考えられる一方で、それを超えて、無限責任組合員の業務執行そのものの承認に該当する場合には税法上の業務執行承認に該当するものと考えられる(経済産業省「Q&A」2.(2)②及び④参照)。
この点は、投資ガイドラインの制限の除外又は緩和が問題となる事案ごとに、判断が異なり得るものと思われる。投資ガイドラインにおける規制の除外又は緩和のための組合員(諮問委員会)の承認規定を設ける場合には、この点に留意する必要があろう。
3. 第 22 条第 2 項は、追加投資につき規定する。追加投資は、分散投資の趣旨に反する場合や既に経営が悪化している投資先事業者等に対する救済的な投資に用いられる可能性がある。従って、追加投資につき組合員の意向を確認させることにより、無限責任組合員による投資行為を有限責任組合員が一定の監視をすることができるようにしている。なお、有限責任組合員が意見を述べる機会を確保するため、本項で定める通知はキャピタル・コールに先立って行われることを想定している。
意見陳述の規定を設ける場合には、通常、かかる意見陳述に無限責任組合員に対する拘束力は持たせないことを想定しているものと思われる。
また、外国有限責任組合員が税制特例の適用を受ける投資事業有限責任組合契約については、かかる意見陳述が税法上の業務執行承認に該当しないかについては、留意が必要である。有限責任組合員の無限責任組合員に対する意見陳述や助言は、原則的に、税法上の業務執行承認には該当しないと考えられるが、それが無限責任組合員に対する拘束力を有する場合には、無限責任組合員の業務執行に対する承認と実質的に変わらないため、税法上の業務執行承認に該当することになるものと考えられる(経済産業省「Q&A」2.(2)③及び⑤参照)。
そのため、第 22 条第 2 項では、本項の意見陳述に無限責任組合員に対する拘束力はないことを確認的に規定している。
4. 第 22 条第 3 項は、原則として本組合における再投資を禁止する旨を規定している。一般にプライベート・エクイティ・ファンドにおいては、無限責任組合員が投資先事業者等の価値を時間をかけて向上させ、その投資が一旦回収された場合には、これを分配するのが原則とされ、再投資を行うことは想定されていないことが多い。
他方で、第 29 条の解説 9.のとおり、再投資を許容するメリットは少なからず存在することから、一定の限度でかかる再投資を許容する規定を設けている。
5. 第 22 条第 4 項は、無限責任組合員がポートフォリオ投資を実行する際に投資先事業者等との間で投資契約を締結する義務がある旨規定している。ベンチャー・キャピタル・ファンドについては、投資の実際において、投資先事業者等と投資契約を締結することは必ずしも容易ではない場合もあることは留意すべきであるが、投資家としての本組合の権利を確保するためには、投資契約を締結することが検討されるべきであろう。バイアウト・ファンドについては、投資先事業者等との間で直接に契約が締結されるとは限らず、実情にあわせて規定を設けることとなろう。
6. 第 22 条第 5 項は、業務上の余裕資金の運用方法を明示する。有限責任組合法第 3 条第 1 項第 12 号に規定される業務上の余裕金の運用について、第 5 条において組合の事業として位置付けられているが、第 22 条第 5 項は、その事業範囲の枠内でさらに詳細かつ具体的な運用方法の指定を行うための規定である。
7. 本契約においては、キャピタル・コールにおける組合員に対する通知(追加出資請求通知)において、当該ポートフォリオ投資に係る情報提供をあらかじめ提供することとしている。その場合には、追加出資請求通知内容と重複した投資実行後の通知は必ずしも必須のものではないものと考えられる。もっとも、当初想定した内容と異なる投資がなされることもあり得ることから、投資実行後にもあらためて通知を行う形とすることも考えられる。
他方で、キャピタル・コール通知(追加出資請求通知)において、投資先事業者等の情報の提供を有限責任組合員に対して特に行わないこととしている投資事業有限責任組合契約も少なからず存在しており、かかる投資事業有限責任組合契約においては、第 22 条第 7 項のような情報を提供することのが自然であると考えられる。かかる事後的な通知は、有限責任組合員による無限責任組合員の業務執行(組合財産の運用)に対する一定の監視機能の実効化に資するという意義も認められよう。
8. 第 22 条に規定する個別の投資内容の報告や追加投資についての組合員の意向の確認は、本組合における共同事業性の顕れともいえる。なお、共同事業性に関するこれらの要素と税務上の取扱いとの関係につき、第 17 条の解説 3.参照。
第 23 条 組合財産の管理
1. 無限責任組合員は、新たに組合財産を取得した場合、速やかに、名義の変更その他の対抗要件具備のために必要な手続を行うものとする。
2. 組合財産に属する現金の受領、保管及び支出は、全て組合口座において行うものとする。
3. その他組合財産の管理に関する事項は、無限責任組合員がその裁量により適切と考える方法で行うものとする。
【第 23 条解説】
1. 第 23 条は、組合財産の管理について規定する。本組合の財産を、無限責任組合員の固有財産及び他の組合の財産とは分別して管理させる(分別管理)ことは、無限責任組合員が破綻することを想定した場合には重要である。
会社法上、株券不発行会社が原則的形態とされたこと、及び、上場株の振替制度が、株券の保管振替ではなくペーパーレス化されたことを受け、組合財産の管理として、保護預り口座において管理することまでは当然には要求せず、第 23 条第 3 項に基づき、無限責任組合員が適切と考えられる方法で保管することとしている。
2. 無限責任組合員が、自ら第二種金融商品取引業の登録を受け又は第二種金融商品取引業者に委託して組合持分の取得勧誘を行う場合の分別管理義務の条項について、第 14 条解説 5.③を参照されたい。
第 6 章 会 計
第 24 条 会 計
1. 本組合の事業年度は、毎年[ ]月[ ]日から翌年[ ]月[ ]日までとする。但し、初年度は効力発生日から[ ]年[ ]月[ ]日までの期間とする。
2. 無限責任組合員は、組合会計規則に定めるところに従い会計処理を行うものとする。
3. 無限責任組合員は、本組合の事業に属するあらゆる取引に関する正確な会計帳簿及び記録を作成
し、保管するものとする。
【第 24 条解説】
1. 第 24 条第 1 項は、本組合の事業年度を規定する。
2. 第 24 条第 2 項は、無限責任組合員は、組合会計規則に従い会計処理を行うべき旨規定する。
3. 第 24 条第 3 項は、無限責任組合員は、本組合の事業に属するあらゆる取引に関する正確な会計帳簿及び記録の作成・保管を行うべき旨規定する。これは、第 16 条第 3 項において規定されている会計帳簿及び記録の閲覧及び謄写に関する有限責任組合員の権限の実効性を確保するという機能も有している。
第 25 条 財務諸表等の作成及び組合員に対する送付
1. 無限責任組合員は、事業年度ごとに、組合会計規則に定めるところに従い、その事業年度の貸借対照表、損益計算書及び業務報告書並びにこれらの附属明細書(以下「財務諸表等」と総称する。)を作成し、監査人による日本における一般にxx妥当と認められる監査基準に従った監査
(業務報告書及び附属明細書については会計に関する部分に限る。以下本条において同じ。)を経た後、その事業年度経過後 3 ヶ月以内に、組合員に対し、当該監査に関する意見書の写しとともに財務諸表等を送付するものとする。
2. 無限責任組合員は、前項の附属明細書において、本組合が投資勘定において保有する投資証券等及び投資知的財産権については本契約添付別紙 3 に定めるところに従い、各事業年度期末時点における評価額を記載するものとする。
3. 無限責任組合員は、毎事業年度の上半期終了後、速やかに当該上半期の中間貸借対照表、中間損益計算書及び半期業務報告書並びにそれらの附属明細書(以下「半期財務諸表等」と総称する。)を作成し、組合員に送付するものとする。
4. 本条第 1 項に基づき各組合員に対し財務諸表等を送付する場合、同時に、(ⅰ)当該組合員に帰属すべき収益、費用、資産及び負債等に関して有限責任組合員が税務申告上合理的に必要とする情報を無限責任組合員がその裁量により適切と認める方法により提供し、また、(ⅱ)本契約添付別紙 4 に定める計算方法により計算した累積内部収益率の結果を送付するものとする。
5. 無限責任組合員は、財務諸表等を、本契約書及びその監査に関する意見書とともに 5 年間本組合の主たる事務所に備え置くものとする。
【第 25 条解説】
1. 有限責任組合法第 8 条第 1 項は、無限責任組合員は、毎事業年度経過後 3 ヶ月以内に、その事業年度の貸借対照表、損益計算書及び業務報告書並びにこれらの附属明細書を作成し事務所に備え置くべき旨、同条第 2 項において公認会計士又は監査法人の意見書を併せて備え置くべき旨を定める。第 25 条第 1 項は、かかる法律上の要求よりもさらに進め、事業年度終了後 3 ヶ月以内に、財務諸表等を作成・備置するだけでなく、その監査も終了させた上で財務諸表等を監査人の意見書の写しとともに組合員に送付すべき旨を規定している。また、第 25 条第 3 項は、上半期の中間貸借対照表、中間損益計算書及び半期業務報告書並びにそれらの附属明細書の作成及び送付義務を規定している。
なお、上記に加え、半期毎ではなく四半期毎の報告を行う組合も予想される。この点については、かかる四半期開示に要する費用との見合いにおいて、組合員に対する開示の充実の必要性を検討することになろう。
2. 第 25 条第 2 項は、附属明細書において投資勘定において保有する投資証券等及び投資知的財産権の時価情報を記載すべき旨規定している。投資証券等の時価につきいかなる方法で算定すべきか検討が必要である。ここでは、本契約において、「投資資産時価評価準則」として評価の方法をあらかじめ合意している。
3. 第 25 条第 4 項は、各組合員の税務申告の便宜のために設けられた規定である。
民法上の任意組合による投資事業組合に関し、それが行う投資事業から生じる損益については、組合段階では課税されず、直接組合員の段階で課税されることとなる。損益のパススルーの方法については、所得税法基本xxx 36・37 共-19、36・37 共-19-2、36・37 共-20、法人税法基本通達 14-1-1、14-1-1-2、14-1-2 に次の方法が認められている。
① 当該組合の利益の額又は損益の額をその分配割合に応じて各組合員に分配又は負担させる方法。
② 当該組合の収入金額、その収入金額に係わる原価の額及び費用の額並びに損失の額をその分配割合に応じて各組合員のこれらの金額として計算する方法。
③ 当該組合の収入金額、支出金額、資産、負債等をその分配割合に応じて各組合員のこれらの金額として計算する方法。
投資事業有限責任組合も、これと同様に税務上取り扱われることとなる(中小企業庁から国税庁への平成 10 年 9 月 17 日付「中小企業等投資事業有限責任組合契約に係る税務の取扱いについて」と題する文書による照会に対する国税庁からの同年 10 月 21 日付回答(課審 4-19、課審 3-40))。
4. なお、経済産業省の国税庁に対する平成 16 年 6 月 14 日付「投資事業有限責任組合及び民法上の任意組合を通じた株式等への投資に係る所得税の取扱いについて」と題する事前照会(平成 16・ 06・10 経局第 3 号)について、同月 18 日付で国税庁から回答がなされている(課審 4-19、課審 6- 11、課個 2-10、課資 3-1)。これは、組合を通じて個人投資家が得た所得の所得区分及び投資組合の運営から発生した諸経費の取扱いについて照会したものである。なお、本照会文に記載された処理に従って個人投資家が得た所得の計算を行うにあたっては、前記 3.の③「当該組合の収入金額、支出金額、資産、負債等をその分配割合に応じて各組合員のこれらの金額として計算する方法」によることを前提にしているので注意が必要である。
第7章 投資先事業者の育成
第 26 条 投資先事業者の育成
無限責任組合員は、本組合の事業の目的の達成のため、その裁量により適切と考える方法により、本組合の事業として投資先事業者に対する経営又は技術の指導を行うものとする。
【第 26 条解説】
1. 有限責任組合法は、投資先事業者に対する経営又は技術の指導を行う事業を投資事業有限責任組合の事業の一つとして位置付けている(同法第 3 条第 1 項第 8 号)。投資先事業者の育成方法の具体的内容として、本組合において投資先事業者との間でいわゆるコンサルティング契約を締結する方法のほか、無限責任組合員の取締役又は従業員等が投資先事業者である会社の取締役に就任する場合等が想定される。本契約では、個別の投資先事業者の育成のためにいかなる行為を行うのが適切であるかは、無限責任組合員の裁量に委ねるとの立場に基づき、第 26 条において、一般的な規定を置くにとどめた。ただ、無限責任組合員は、第 15 条において善管注意義務を負っているので、その裁量権の行使についてはかかる善管注意義務を尽しているかの見地からの規制に服することになる。
2. なお、本組合の事業としてではなく、無限責任組合員又はその関連会社の事業として、投資先
事業者に対する経営又は技術の指導が行われることもある。経営又は技術指導の方法としては、コンサルティング契約を締結する方法、投資先事業者に取締役等を派遣する方法等が存する。仮に、これらを本組合の事業として本組合が行うのであれば、これらから生じる収益は本組合のものとなり、逆にこれに要する費用は本組合の費用となろう。他方、これらを無限責任組合員らの事業として行えば、無限責任組合員の別途の収益や費用になることになろう。無限責任組合員らの立場でこれらを行うとすると、無限責任組合員らは本組合との間で実質的に利益相反の関係に立つため、このような行為の是非については、諮問委員会の承認を要件とすることなども考えられるが、本契約では、これを認めたうえ、無限責任組合員が投資先事業者等から受領する手数料や報酬の全部又は一部を、本組合が無限責任組合員に対して支払う管理報酬の額から控除することで利害調整を図っている(第 33 条第 4 項。第 33 条解説 5.参照)。
なお、諮問委員会の承認権限を設ける場合については、外国組合員が税制特例の適用を受ける投資事業有限責任組合契約の場合、かかる承認が税法上の業務執行承認に該当しないかについて留意する必要がある。承認の対象が、無限責任組合員が本組合の業務執行者としての地位を離れて投資先事業者に対してコンサルティング等を行うことについての承認であれば、税法上の業務執行承認には該当しないものと整理しうる(経済産業省「Q&A」2.(2)③参照)。
第8章 組合財産の持分と分配
第 27 条 組合財産の帰属
1. 組合財産は組合員の共有とする。
2. 組合員は、本組合の清算手続が終了するまで組合財産の分割を請求することができない。
【第 27 条解説】
1. 第 27 条第 1 項は、有限責任組合法第 16 条の準用する民法第 668 条の規定に基づき、組合財産は組合員の(準)共有である旨規定する。なお、組合財産における「共有」は、民法第 249 条以下に規定される通常の「共有」とは異なる「合有」であり、各組合員は、包括的な組合財産の上の割合的な支配権である合有持分を有するものであると説明されることがある。
2. 有限責任組合法第 16 条の準用する民法第 676 条第 2 項は、組合員が清算前に組合財産の分割を求めることを認めない。この「清算前」とは、「清算手続が終了するまで」と解されているため
(最判昭 44 年 11 月 18 日判時 580 号 52 頁)、第 27 条第 2 項はその旨を明示的に確認する規定である。
第 28 条 損益の帰属割合
【免除/除外条項を設けない場合】
1. 各事業年度末において、本組合の事業に関する損益は、各組合員にその出資履行金額の割合に応じて帰属するものとする。但し、これにより有限責任組合員の持分金額が零を下回ることとなる場合には、有限責任組合員の持分金額は零とし、当該零を下回る部分に相当する損失は全て無限責任組合員に帰属するものとする。
2. 前項但書きの規定に従い損失が無限責任組合員に帰属した結果その持分金額が零を下回ることとなった場合、無限責任組合員の持分金額が零以上にならない範囲で本組合の損益は全て無限責任組合員に帰属し、当該範囲を超える本組合の利益がある場合、当該利益は各組合員に帰属する。
【免除/除外条項を設ける場合】
1. 各事業年度末において、本組合の事業に関する損益については、(ⅰ)各ポートフォリオ投資の処分からの損益、各ポートフォリオ投資に係る費用その他各ポートフォリオ投資に帰せられる損益は当該各ポートフォリオ投資に参加した各組合員の当該各ポートフォリオ投資に係る対象持分割合に応じて各組合員に帰属し、(ⅱ)いずれのポートフォリオ投資にも帰せられない損益は各組合員の出資約束金額(但し、第 33 条第 2 項第③号に規定する管理報酬については出資履行金額)の割合に応じて各組合員に帰属するものとする。但し、これによりいずれかの有限責任組合員の持分金額が零を下回ることとなる場合(かかる本項但書きを適用せずに計算した持分金額を「仮持分金額」という。)には、当該有限責任組合員の持分金額は零とし、当該零を下回る部分に相当する損失は全て無限責任組合員に帰属するものとする。
2. 前項但書きの規定に従い損失が無限責任組合員に帰属した場合、有限責任組合員の仮持分金額が零以上にならない範囲で、前項本文の規定に従った場合に当該有限責任組合員に帰属すべき本組合の損益は全て無限責任組合員に帰属し、当該範囲を超える本組合の利益がある場合、当該利益は当該有限責任組合員に帰属する。
【第 28 条解説】
1. 第 28 条は、本組合の事業から生じる損益計算書上の利益又は損失が、各組合員にどのように帰属するかを規定したものであり、現実に組合員が受領する金銭又は現物による場合の投資証券等及び/又は投資知的財産権の分配割合を規定したものではない。組合損益に関する抽象的な配分規定である。
2. 第 28 条第 1 項本文は、組合損益の原則的な帰属方法を規定している。免除/除外条項が設けられない場合であれば、各組合員の出資約束金額及び出資履行金額の割合は一定であることから、組合損益も、組合の存続期間を通じて、当該割合に従い各組合員に帰属することとすれば足りる。これに対し、免除/除外条項が設けられる場合には、ポートフォリオ投資ごとに出資を行った組合員の構成が異なり得ることとなり、また、あるポートフォリオ投資に関し免除/除外条項により出資に参加しなかった組合員に対して、当該ポートフォリオ投資より生じた損益を帰属させることは適当でないため、組合損益についてもポートフォリオ投資ごとに把握する必要が生じる。第 28 条第 1 項では、これらの事情を勘案し、免除/除外条項が設けられない場合には、組合損益は単純にその出資履行金額の割合に応じて各組合員に帰属するものとしているのに対し、免除/除外条項が設けられる場合には、組合損益を各ポートフォリオ投資に帰属できるものと帰属できないものに区別の上、前者は当該ポートフォリオ投資に参加した組合員に対して、当該ポートフォリオ投資に係る出資履行金額の割合(対象持分割合)に従い帰属すべきものとし、後者は全組合員に対して出資約束金額の割合に従い帰属するものとしている(但し、管理報酬については、第 33 条第 2 項における算定基礎の取扱いと平仄をあわせるため、出資約束期間においては出資約束金額の割合に従い、出資約束期間終了後においては出資履行金額の割合に従うものとしている。)。
3. 第 28 条第 1 項但書きは、有限責任組合員の対外的責任の有限性及び無限責任組合員の対外的責任の無限性の趣旨を組合の内部関係にも反映させ、有限責任組合員については持分金額が零を下回ることはなく、零を下回る損失は全て無限責任組合員に帰属する旨規定する。第 2 項は、無限責任組合員が第 28 条第 1 項但書きに基づき有限責任組合員に分配されるべき損失の帰属を受けた場合には、以後これを回復させるため、第 28 条第 1 項但書きに基づき負担した損失金額の限度において、当該有限責任組合員に帰属すべき損益が無限責任組合に帰属することを規定するものである。なお、免除/除外条項が設けられる場合には、各組合員に対する組合損益の帰属割合が一致せず、ある有限責任組合員の持分金額が零を下回ったとしても他の有限責任組合員及び無限責任組合員の持分金額が零を下回っているとは限らないため、個別の有限責任組合員ごとに損益の帰属が調整されるよう規定している。その際、第 1 項但書きにおいて「仮持分金額」の概念を設け、損益が有限責任組合員に帰属しなくなった後も当該有限責任組合員に損益が帰属したと仮定して金額を算出し、その後の利益により当該有限責任組合員の仮持分金額が零を上回る時点をもって、当該有限責任組合員の(仮持分金額でない本来の)持分金額に損益が帰属すべき時期を画している。
第 29 条 組合財産の分配
1. 組合員及び脱退組合員は、本契約に定めがある場合を除き、事由の如何を問わず、本組合の解散前に組合財産を分配することを請求することはできない。
【免除/除外条項を設けない場合】
2. 無限責任組合員は、第 30 条により認められる範囲において、以下に定めるところに従い、無限責任組合員がその裁量により決定する時において分配額を確定し、組合員についてはその持分金額、脱退組合員については当該脱退組合員の脱退当時の持分金額の各金額に応じ按分した上、当該組合員及び当該脱退組合員に対しそれぞれ組合財産の分配を行うものとする。[但し、無限責任組合員は、その裁量により、本組合の費用、無限責任組合員に対する管理報酬、本組合の債務及び公租公課の支払等のため必要な場合には、本条に基づく分配を留保することができる。]
① 無限責任組合員は、投資証券等及び/又は投資知的財産権について売却その他の処分、償還、消却、買受け、払戻し、又は弁済がなされること(以下「処分等」と総称する。)により金銭(以下「処分収益」という。)を受領したときは、かかる金銭の受領後[ ]ヶ月以内の無限責任組合員がその裁量により指定する日において、当該処分収益から、処分等に要した諸費用(もしあれば)及び公租公課(もしあれば)並びに当該処分等の時において支払期限が到来していた組合費用(もしあれば)の合計額を控除した上、本条第 4 項の定めに従い成功報酬(もしあれば)の額を控除した残額に相当する金銭を分配するものとする。
② 無限責任組合員は、投資証券等及び/又は投資知的財産権に関して配当、利息、使用許諾料その他の収益に係る金銭(処分収益に含まれるものを除く。)(以下、「その他投資収益」という。) を受領したときは、かかる金銭を受領した日の属する事業年度の末日から
[ ]ヶ月以内の無限責任組合員がその裁量により指定する日において、当該その他投資収益から、当該受領に要した諸費用(もしあれば)及び公租公課(もしあれば)並びに当該受領の時において支払期限が到来している組合費用(もしあれば)の合計額を控除した上、本条第 4 項の定めに従い成功報酬(もしあれば)の額を控除した残額に相当する金銭を分配するものとする。
③ 無限責任組合員は、組合財産に関して生じた収益その他の金銭のうち処分収益及びその他投資収益に含まれないもの(以下「特別収益」という。)を受領したときは、受領の都度これを分配することを要しないものとし、無限責任組合員がその裁量により指定する日において、特別収益のうち無限責任組合員がその裁量により適切と考える額に相当する金銭を分配することができるものとする。
3. 前項に規定する金銭の分配のほか、無限責任組合員は、投資証券等(投資証券等に係る処分等、現物配当、株式分割等により本組合が取得したもののうち金銭以外のものを含む。)を現物で分配することが組合員の利益に適うと合理的に判断する場合(かかる判断がなされた日を「現物分配基準日」という。)、組合員及び脱退組合員に対し、現物分配基準日後速やかに、当該投資証券等の分配時評価額の総額から、分配に要する諸費用(もしあれば)及び公租公課(もしあれば)の合計額を控除した上、本条第 4 項に従い成功報酬(もしあれば)の額(成功報酬を投資証券等の現物で支払う場合には、当該投資証券等の分配時評価額の総額)を控除した残額に相当する当該投資証券等を、第 30 条により認められる範囲において、組合員についてはその持分金額、脱退組合員については当該脱退組合員の脱退当時の持分金額の各金額に応じ按分をした上、それぞれ現物により分配することができるものとする。無限責任組合員は、分配に要する諸費用及び公租公課並びに成功報酬の支払いにあてるため、分配される投資証券等の一部を売却することができるものとし、かかる場合、当該売却に係る投資証券等を控除した後の当該投資証券等を組合員及び脱退組合員に対し分配するものとする。当該投資証券等が市場性のある有価証券ではない場合、無限責任組合員は、(ⅰ)現物分配を行う旨及びその理由、(ⅱ)現物分配する投資証券等の明細、(ⅲ)その現物分配基準日における分配時評価額の案、並びに(ⅳ)その他その適否を判断する上で必要な事項を記載した書面を送付した上、総有限責任組合員の出資口数の合計の[ ]分
の[ ]以上に相当する出資口数を有する有限責任組合員の承認を取得しなければならないものとする。なお、第 49 条第 1 項は、本項に基づき無限責任組合員が行う分配に準用する。
4. 本条第 2 項第①号若しくは第②号に定める処分収益若しくはその他投資収益又は前項に定める投資証券等の分配及び成功報酬の控除は、以下に定める順位及び方法に従い行うものとする。
① 第 1 に、本項に基づき当該分配までに全ての組合員及び脱退組合員(以下「組合員等」という。)に対して行われた組合財産の分配額(現物分配の場合にはその分配時評価額を含む。)の累計額(以下「分配累計額」という。)及び当該分配において前二項に基づき全ての組合員等に対し行う分配額(現物分配の場合にはその分配時評価額を含む。)(以下「分配可能額」という。)の合計額が、全ての組合員等の出資履行金額の合計額と同額となるまで、組合員等に分配可能額の 100を分配する。
② 第 2 に、分配累計額及び分配可能額の合計額から全ての組合員等の出資履行金額の合計額を控除した額が、全ての組合員等の出資履行金額の合計額に[α]を乗じた金額と同額になるまで、組合員等に分配可能額の 100を分配する。
③ 第 3 に、本項に基づき当該分配までに無限責任組合員に支払われた成功報酬額及び当該分配において本号に基づき無限責任組合員に対して帰属する成功報酬額の合計額(以下「成功報酬累計額」という。)が、以下に定める金額の合計額の[β]相当額と同額となるまで、無限責任組合員に成功報酬として分配可能額の[γ] を支払い、組合員等に分配可能額の
[(100-γ)]を分配する。
(ⅰ) 分配累計額及び当該分配において本項第①号から本号までに基づき組合員等に対して行われる分配額の合計額から全ての組合員等の出資履行金額の合計額を控除した額
(ⅱ) 成功報酬累計額
④ 第 4 に、無限責任組合員に成功報酬として分配可能額の[β] を支払い、組合員等に分配可能額の[(100-β)] を分配する。
【免除/除外条項を設ける場合】
2. 無限責任組合員は、第 30 条により認められる範囲において、以下に定めるところに従い、無限責任組合員がその裁量により決定する時において分配額を確定し、各組合員及び各脱退組合員(以下「組合員等」という。)に対しそれぞれ組合財産の分配を行うものとする。[但し、無限責任組合員は、その裁量で、本組合の費用、無限責任組合員に対する管理報酬、本組合の債務及び公租公課の支払等のため必要な場合には、本条に基づく分配を留保することができる。]
① 無限責任組合員は、あるポートフォリオ投資に係る投資証券等及び/又は投資知的財産権について売却その他の処分、償還、消却、買受け、払戻し、又は弁済がなされること(以下
「処分等」と総称する。)により金銭(以下「処分収益」という。)を受領したときは、かかる金銭の受領後[ ]ヶ月以内の無限責任組合員がその裁量により指定する日において、当該ポートフォリオ投資に係る対象組合員等(以下に定義する。)に対し、当該処分収益から、処分等に要した諸費用(もしあれば)及び公租公課(もしあれば)並びに当該処分等の時において支払期限が到来していた当該ポートフォリオ投資に係る本組合の費用(もしあれば)の合計額を控除した上、本条第 4 項の定めに従い成功報酬(もしあれば)の額を控除した残額に相当する金銭を、当該各対象組合員等の対象持分割合(但し、脱退組合員については当該脱退組合員の脱退当時を基準とする。)に応じて按分した割合により分配するものとする。「対象組合員等」とは、あるポートフォリオ投資について、当該ポートフォリオ投資に関し出資をした組合員等をいう。
② 無限責任組合員は、あるポートフォリオ投資に係る投資証券等及び/又は投資知的財産権に関して配当、利息、使用許諾料その他の収益に係る金銭(処分収益に含まれるものを除く。)(以下、「その他投資収益」という。)を受領したときは、かかる金銭を受領した日
の属する事業年度の末日から[ ]ヶ月以内の無限責任組合員がその裁量により指定する日において、当該ポートフォリオ投資に係る対象組合員等に対し、当該その他投資収益から、当該受領に要した諸費用(もしあれば)及び公租公課(もしあれば)並びに当該受領の時において支払期限が到来している当該ポートフォリオ投資に係る組合費用(もしあれば)の合計額を控除した上、本条第 4 項の定めに従い成功報酬(もしあれば)の額を控除した残額に相当する金銭を、当該各対象組合員等の対象持分割合(但し、脱退組合員については当該脱退組合員の脱退当時を基準とする。)に応じて按分した割合により分配するものとする。
③ 無限責任組合員は、組合財産に関して生じたポートフォリオ投資に関連しない収益その他の金銭(以下「特別収益」という。)を受領したときは、受領の都度これを分配することを要しないものとし、無限責任組合員がその裁量により指定する日において、特別収益のうち無限責任組合員がその裁量により適切と考える額に相当する金銭を、組合員についてはその持分金額、脱退組合員については当該脱退組合員の脱退当時の持分金額の各金額に応じ按分した上、分配することができるものとする。
3. 前項に規定する金銭の分配のほか、無限責任組合員は、あるポートフォリオ投資に係る投資証券等(投資証券等に係る処分等、現物配当、株式分割等により本組合が取得したもののうち金銭以外のものを含む。)を現物で分配することが当該ポートフォリオ投資に関し出資をした組合員の利益に適うと合理的に判断する場合( かかる判断がなされた日を「現物分配基準日」という。)、当該ポートフォリオ投資に係る対象組合員等に対し、現物分配基準日後速やかに、当該投資証券等の分配時評価額の総額から、分配に要する諸費用(もしあれば)及び公租公課(もしあれば)の合計額を控除した上、本条第 4 項に従い成功報酬(もしあれば)の額(成功報酬を投資証券等の現物で支払う場合には、当該投資証券等の分配時評価額の総額)を控除した残額に相当する当該投資証券等を、第 30 条により認められる範囲において、対象持分割合(但し、脱退組合員については当該脱退組合員の脱退当時を基準とする。)に応じ按分をした割合により、それぞれ現物により分配することができるものとする。無限責任組合員は、分配に要する諸費用及び公租公課並びに成功報酬の支払いにあてるため、分配される投資証券等の一部を売却することができるものとし、かかる場合、当該売却に係る投資証券等を控除した後の当該投資証券等を対象組合員等に対し分配するものとする。当該投資証券等が市場性のある有価証券ではない場合、無限責任組合員は、(ⅰ)現物分配を行う旨及びその理由、(ⅱ)現物分配する投資証券等の明細、 (ⅲ)その現物分配基準日における分配時評価額の案、並びに(ⅳ)その他その適否を判断する上で必要な事項を記載した書面を送付した上、当該ポートフォリオ投資に関し出資をした有限責任組合員の対象持分割合の合計の[ ]分の[ ]以上に相当する持分を有する有限責任組合員の承認を取得しなければならないものとする。なお、第 49 条第 1 項は、本項の規定に基づき無限責任組合員が行う分配に準用する。
4. あるポートフォリオ投資に係る本条第 2 項第①号若しくは第②号に定める処分収益若しくはその他投資収益又は前項に定める投資証券等の分配及び成功報酬の控除は、当該ポートフォリオ投資に係る各対象組合員等について、以下に定める順位及び方法に従い行うものとする。
① 第 1 に、当該分配までに本項に基づき行われた当該対象組合員等に対する組合財産の分配額
(現物分配の場合にはその分配時評価額を含む。)の累計額(以下「分配累計額」という。)及び当該分配において前 2 項に基づき当該対象組合員等に対し行う分配額(現物分配の場合にはその分配時評価額を含む。)(以下「分配可能額」という。)の合計額が、当該対象組合員等の出資履行金額と同額となるまで、当該対象組合員等に分配可能額の 100を分配する。
② 第 2 に、分配累計額及び分配可能額の合計額から当該対象組合員等の出資履行金額を控除した額が、当該対象組合員等の出資履行金額に[α]を乗じた金額と同額になるまで、当該対象組合員等に分配可能額の 100を分配する。
③ 第 3 に、当該分配までに本項に基づき当該対象組合員等に関し無限責任組合員に支払われた成功報酬額及び当該分配において当該対象組合員等に関し本号に基づき無限責任組合員に対して支払われる成功報酬額の合計額(以下「成功報酬累計額」という。)が、以下に定める
金額の合計額の[β]相当額と同額となるまで、無限責任組合員に成功報酬として分配可能額の[γ]を支払い、当該対象組合員等に分配可能額の[(100-γ)]を分配する。
(ⅰ) 分配累計額及び当該分配において本項第①号から本号までに基づき当該対象組合員等に対して行われる分配額の合計額から当該対象組合員等の出資履行金額を控除した額
(ⅱ) 成功報酬累計額
④ 第 4 に、無限責任組合員に成功報酬として分配可能額の[β] を支払い、当該対象組合員等に分配可能額の[(100-β)] を分配する。
5. 無限責任組合員は、本条第 3 項に基づき現物による分配を行う場合、現物分配基準日の少なくとも[ ]日前までに、当該現物分配の対象である組合員に対し、(A)分配の対象となる投資証券等を現物で受け取る方法、又は(B)当該投資証券等の全部若しくは一部の処分を無限責任組合員に依頼し、当該処分に係る処分代金を受け取る方法のいずれかを選択するよう申し出るものとする。無限責任組合員は、かかる申出から[ ]日以内に(B)の方法による処分代金の受領を希望する旨の連絡があった組合員については、無限責任組合員がその裁量により判断する時期及び価格(但し、当該連絡のあった日から現物分配を行う日までの任意の日における最終価格又はこれに準ずる価格を原則とする。)によって当該投資証券等を処分の上、現物分配を行う日にその処分代金を交付するものとし、その他の場合については、当該投資証券等の現物を交付するものとする。本項に基づく無限責任組合員による投資証券等の処分に関して発生した費用は処分を希望した組合員が負担する。
6. 本条第 2 項第①号にもかかわらず、無限責任組合員は、(ⅰ)出資約束期間内において、投資証券等若しくは投資知的財産権を取得してから[ ]ヶ月以内に当該投資証券等若しくは投資知的財産権を処分等することにより金銭を受領した場合、又は(ⅱ)ブリッジ・ファイナンシングを行った場合で、ブリッジ・ファイナンシングの期間内に当該ブリッジ・ファイナンシングを処分等することにより金銭を受領した場合は、その裁量により、当該処分等により受領した金銭から、処分等に要した諸費用(もしあれば)及び公租公課の額(もしあれば)を控除した残額のうち、当該投資証券等若しくは投資知的財産権の取得又はブリッジ・ファイナンシングの実行に関して出資された額を限度として、再投資のために用いることができるものとする。
7. 本条に従って組合員に対し分配を行う場合、無限責任組合員は、当該分配の対象となる各組合員に対し、遅滞なく、(ⅰ)処分収益の分配又は投資証券等の現物による分配の場合には、その分配に係る金銭又は投資証券等の明細(投資証券等を現物で分配する場合、当該投資証券等の分配時評価額を含む。)、当該分配に係る投資先事業者等の事業の状況、当該分配の理由その他適切と考える事項を、(ⅱ)その他投資収益又は特別収益の分配の場合には、当該収益の明細、当該分配の理由その他適切と考える事項を、書面により通知するものとする。
8. 無限責任組合員は、本条に規定する組合財産の分配に際し、その裁量により、相当と認める端数調整を行うことができる。
9. 本条に基づき分配された組合財産は、分配をした日の翌日から各組合員の固有財産になるものとする。
10. 無限責任組合員は、分配後に生じた当該分配に係る財産の価額の変動に関し、その理由の如何を問わずいかなる責任も負わないものとする。
【第 29 条解説】
1. 投資事業有限責任組合においては、貸借対照xxの純資産額を超えて組合財産の分配をすることの制限(有限責任組合法第 10 条第 1 項)を除けば、組合財産の分配について原則として自由に合意することができる(但し、営利組合の一部の組合員が利益分配を全く受けない旨の規定については認められない可能性がある)。第 29 条は、本組合の解散前に組合員及び脱退組合員に対して行われる組合財産の分配の割合、時期、方法等について規定する。
2. 第 29 条においては、組合財産の分配は、原則として金銭に換価された後に当該金銭を分配するものとするが、無限責任組合員が現物分配の方が組合員の利益に適うと判断した場合には投資証券等についての現物分配を認める。但し、現物分配の対象である投資証券等が市場性のある有価証券ではない場合には、一定の割合の有限責任組合員の承認を得ることを条件とする。この点、新興企業を対象としたベンチャー・キャピタル・ファンドであれば、投資先事業者等が公開した場合に原則として分配が行われるものとすることも考えられるが、成熟企業をも対象とするバイアウト・ファンドや企業再生ファンド等においては、投資先事業者等の株式公開が必ずしも典型的なエグジットの方法ではないため、株式公開を原則的な分配時期として扱うのは必ずしも適切とは言えず、本契約においてはそのような基準は用いていない。なお、投資証券等が市場性のある有価証券である場合の現物分配の承認については、有限責任組合員の承認は要件とはせず、第 5 項により現物と現金のいずれの形で受領するか各有限責任組合員にて選択できる形としている。
3. 第 29 条第 2 項から第 4 項までについては、本契約における組合財産の分配方法に関する中心的な規定となるが、免除/除外条項が設けられる場合と規定されない場合に分けて規定している。これは、免除/除外条項が設けられない場合には、各投資案件について全組合員が一定の割合で出資を行うのに対し、免除/除外条項が設けられる場合には、ポートフォリオ投資ごとに出資を行う組合員の構成が異なる可能性があり、また、各ポートフォリオ投資により出資割合が異なり得るためである。さらに、成功報酬の算定方法及び支払時期についても、かかる相違に対応し、免除/除外条項が設けられない場合には、全ての組合員による出資履行金額(及び、ハードルレートに対応する金額)の全額の分配が行われることを成功報酬が支払われる条件としているが、免除/除外条項が設けられる場合には、各組合員等の出資比率や回収比率が異なるため、成功報酬が支払われる条件も各組合員等について個別に判断することとし、特定の組合員等の出資履行金額(及び、ハードルレートに対応する金額)が分配された場合には、当該組合員等との関係において成功報酬が支払われるものとしている。
また、本契約による規定以外にも、成功報酬の支払われる条件としては、当該ポートフォリオ投資に係る出資金額とそれまでに処分されたポートフォリオ投資に係る出資金額をベースとする方法も実務上しばしばみられる。また、ベンチャー・キャピタル・ファンドにおいては、出資約束金額をべースとする方法も存在している。
なお、クローバック条項については第 33 条第 5 項参照。
4. 第 29 条第 2 項においては、現金分配がなされる場合として、(ⅰ)投資証券等や投資知的財産権がにつき売却その他の処分、償還、消却、買受け、払戻し、又は弁済がなされること(「処分等」)により金銭(「処分収益」)を受領した場合、(ⅱ)投資証券等や投資知的財産権に関して配当、利息、使用許諾料その他の収益に係る金銭(処分収益に含まれるものを除き、「その他投資収益」)を受領した場合、(ⅲ)組合財産に関して生じた収益その他の金銭のうち処分収益及びその他投資収益に含まれないもの(「特別収益」)を受領した場合に大別する。免除/除外条項が設けられる場合には、(ⅰ)及び(ⅱ)が特定のポートフォリオ投資に関連する収益であり、(ⅲ)がポートフォリオ投資に関連しない収益として整理している。まず、本組合が投資証券等や投資知的財産権に関して金銭を受領した場合、これが処分収益に該当するかを検討する。処分収益に該当する場合には、受領後一定期間内に分配が行われる。次に、処分収益に該当しないもののうち、投資証券等や投資知的財産権に関して(免除/除外条項が設けられる場合には、特定のポートフォリオ投資に関して)受領した配当、利息等の収益については、その他投資収益として、これを受領した事業年度終了後一定期間内に分配が行われる。さらに、その他組合財産から生じた収益等(例えば、余裕金の運用収益など)については、無限責任組合員の裁量において適切な金額を適切な時期に分配が行われる。この特別収益を、成功報酬を算出する際の基礎に換算するかについては立場が分かれよう。本契約においては特別収益は成功報酬の算定基礎としていない。なお、本契約における分配のタイミングについては、あくまで一例であり、別途の定めをすることもあり得るところである。
5. 第 29 条第 3 項は、無限責任組合員が、現物分配をすることが組合員の利益に適うと合理的に判断した場合には、投資証券等のうち市場性のある有価証券については分配時評価額による現物分配を認め、市場性のある有価証券以外の投資証券等については所定の有限責任組合員の承認を得ることを条件として現物分配をすることを認める。現物分配の対象としては、本契約のように、投資証
券等全般を含めるケースもあれば、投資証券等のうち市場性のある有価証券のみとするケースなどが考えられよう。なお、投資知的財産権の現物分配は、実務xxx必要性が低いと思われるため、本契約においては如何なる場合にも認めていない。また、投資証券等の時価については、第 1 条において、「分配時評価額」としてその算定方法につき規定を置いている。
6. 第 29 条第 4 項は、第 29 条第 2 項に定める処分収益若しくはその他投資収益又は第 3 項に定める現物分配を行う場合における各組合員への分配と無限責任組合員に対する成功報酬の配分に関する取決めを規定する。組合員に対する分配金の算定方法に関する規定と無限責任組合員の成功報酬に関する規定とを別に定めることも考えられるが、両者の算定方法は相互に密接に関係することになることから、両者の関係が容易に把握できるよう、本項においてまとめて規定することとしている。なお、このような規定方法は、海外のプライベート・エクイティ・ファンドのパートナーシップ契約におけるキャリード・インタレストの取決めと類似するものであるが、海外のキャリード・インタレストは、一般的に、報酬(費用)ではなく分配金として取り扱われており、また、分配方法についても、まず無限責任組合員を含めた各組合員間において比例按分により配分し、その上で、有限責任組合員に配分された部分を対象として、その一部を(本契約第 29 条第 4 項と類似の方法により)キャリード・インタレストとして無限責任組合員に分配するとの構造を採るものもみられる。本契約では、損益分配との平仄の観点を重視し、そのような構成は採っていない。
7. 以下、第 29 条第 4 項各号の規定に基づく具体的な処理について説明する。なお、免除/除外条項が設けられる場合には、以下の処理を、各組合員等について個別に行うことに留意されたい。 (ⅰ)まず、本項第①号は、当該分配が行われるまでに既に行われた分配に係る分配金の累計額
(「分配累計額」)と新たに分配される分配金の額(「分配可能額」)との合計額が、組合員等の出資履行金額に達するまでは、分配可能額の 100が組合員等に対して分配されるものとする。組合員等による出資分の回収を成功報酬の支払いに先行させる趣旨である。(ⅱ)第 2 に、本項第②号は、組合員等に対する優先分配額を規定する。組合員等に対して一定のリターンを確保し、かかる一定のリターンが分配されて始めて成功報酬が支払われるものとする趣旨である。具体的には、組合員等に対する分配額から組合員等の出資履行金額を控除した額が、当該出資履行金額の一定割合
(α)に相当する金額に達するまで、分配可能額の 100が組合員等に対して分配されるものとする
( かかる優先分配額を決定するための割合であるαは、一般的にハードル・レートと呼ばれる。)。(ⅲ)第 3 に、本項第③号は、組合員等に対する優先分配額が確保された場合には、成功報酬額が優先分配額の一定割合(β)に達するまで優先的に成功報酬が支払われることを定めるものであり、いわゆるキャッチアップ条項と呼ばれる規定である。具体的には、当該分配までに既に支払われた成功報酬額の累計額と新たに無限責任組合員に支払われる成功報酬額の合計額(「成功報酬累計額」)が、それまでに組合員等に対して行われた分配金の累計額から組合員等の出資履行金額を控除した残額と成功報酬累計額の合計額のβに相当する金額に達するまで、無限責任組合員に対する成功報酬としてγ、組合員等に対する分配として 100-γ の割合で配分することを定める。 βは組合の利益に対する成功報酬の取り分の割合を示す数値であり、海外では 20 とされることが多いようであるが、さらに、場合によっては、無限責任組合員のインセンティブ等の観点から、βの割合を変動的なものとし、一定の運用成績を達成した場合には、成功報酬の配分割合を増加させるなどの規定を設けることも考えられる。なお、本号における分配金と成功報酬額の具体的な配分割合であるγ:100-γの値をどうするかは自由であり、20:80 とする場合や、成功報酬として 100
分配する場合も少なくない。(ⅳ)第 4 に、本項第④号は、(ⅲ)において成功報酬額が組合収益のβに相当する金額に達したことを前提として、分配可能額の残余を、当該割合が維持されるよう、組合員等に対する分配金として 100-β、成功報酬としてβの割合で配分する。以上が本契約の規定の構造となるが、このような配分構造はあくまで一例に過ぎず、例えば、ハードル・レートやキャッチアップ条項を設けず、単純に出資履行金額又は出資約束金額が回収されるまでは分配金とし、その後は一定の割合を成功報酬として支払うとすることも少なくない。この点について、ベンチャー・キャピタル・ファンドにおいては、ハードル・レートやキャッチアップ条項を設けない場合も多いようである。
8. 第 29 条第 5 項は、第 3 項に基づき現物分配を行う場合、無限責任組合員は、事前に当該現物分配の対象となる組合員等に対し、現物による分配を受けるか、又は、当該現物の処分を無限責任組合員に依頼し、その処分代金により分配を受けるかを選択するよう申し出るものとする。無限責任
組合員が現物分配を行うことを選択した場合であっても、必ずしも全ての組合員等が現物による分配を望んでいるわけではない場合もあるものと思われるし、また、銀行等の一定の金融機関については法令により株式等の一定数以上の保有が制限されているので(詳細については、「逐条解説」 138 頁以下参照)、組合員等に金銭による分配を受けることを選択できる機会を与えたものである。本項に基づき有限責任組合員より投資証券等の処分を依頼された場合、無限責任組合員は、当該依頼を行った有限責任組合員に対し分配されるべきであった投資証券等を処分し、かかる処分に係る処分代金を交付することになる。
9. 第 29 条第 6 項は、一定の投資に係る回収金について、分配を行わず、再投資に用いることを認めるものである。第 2 項に定めるとおり、投資の回収金については、これを分配するのが原則であるが、短期で回収された投資資金や、一時的なつなぎ資金目的のブリッジ・ファイナンシングについては、回収後、再投資にあてることを許容する例が多い。これは、多様な投資方法を認めることによって、より高い収益機会を獲得することを可能とし、また、分配された金額を別のファンドに対して出資することにより運用した場合、追加的な管理報酬を支払うことが必要になるが、同一のファンドにおいて再投資を認めれば、追加的なコストの負担なく投資機会を得ることが可能となる等のメリットもあると考えられる。本契約では、一例として、投資から一定期間以内に回収された資金、及びブリッジ・ファイナンシングを行い、予定期間内に回収された資金を再投資可能な資金としているが、より広く再投資を認めることも当然可能である。また、回収された資金のうち再投資が可能な額は、当該回収資金の原因である投資において現実に出資された金額の範囲内に限定されることが一般的であるようである。なお、かかる再投資は、一度回収された資金を組合員に分配の上、再度出資を受けることと同様であることから、再投資を行う場合には組合員に追加出資を請求する場合と同様に考え、組合員に対し一定の事項を通知し、また、免除/除外条項に関する規定と同様の処理がなされるよう規定することも考えられる。
10. 第 29 条に基づき行われる分配行為が金銭でなされる場合には、金銭の授受について定めた第 49条第 2 項の規定が適用される。しかし、第 29 条第 3 項の現物分配については、当然には第 49 条第 2項の適用はなされないため、第 29 条第 3 項のなお書きにて第 49 条第 1 項を準用することとした。
第 30 条 分配制限
1. 前条にかかわらず、無限責任組合員は、貸借対照xxの純資産額を超えて組合財産の分配を行うことができない。なお、貸借対照xxの純資産額の算定に際し未実現利益は算入しないものとする。
2. 有限責任組合員は、前項の規定に違反して貸借対照xxの純資産額を超えて分配を受けた場合は、当該超過して分配を受けた額の範囲内において、本組合の債務を弁済する責に任ずる。但し、有限責任組合員が当該分配を受けた日から 5 年を経過したときは、この限りではない。
3. 本条第 1 項に違反して組合員に対し分配された現金又は現物の相当額の範囲内において、無限責任組合員は、本組合に対し、自ら分配を受けた組合財産、並びに第 33 条及び第 44 条第 2 項に規定する報酬を返還しなければならない。
【第 30 条解説】
1. 有限責任組合法第 10 条第 1 項は、「組合財産は、貸借対照xxの純資産額を超えて、これを分配することができない。」と規定する。第 30 条第 1 項は、この有限責任組合法第 10 条第 1 項によって制限される範囲で無限責任組合員による分配の裁量権が制約を受ける旨明らかにする。なお、中小企業等投資事業有限責任組合会計規則第 17 条第 1 項は、有限責任組合法第 10 条により財産分配の対象となる純資産額は未実現利益を除くものとしており、これを受けて、第 30 条第 1 項においても、貸借対照xxの純資産額の算定に際し未実現利益は算入しないことを規定している。
2. 第 30 条第 2 項は、有限責任組合法第 10 条第 2 項において、貸借対照xxの純資産額を超えて
分配を受けた場合、有限責任組合員は、当該分配を受けた金額の範囲内において、組合の債務を弁済する責任を負うものとされているので、その旨を契約上確認する規定である。
3. 第 30 条第 3 項は、有限責任組合法第 10 条第 1 項に反する分配が行われたため、本来有限責任組合員の固有財産たるべき既分配分についても責任財産となる事態が生じた場合に、無限責任組合員にその分配を受けた財産だけでなく、報酬分についても本組合に返還させる規定である。
第 31 条 公租公課
1. 本組合の事業に関し各組合員に課される公租公課については、各組合員が負担するものとし、組合財産からは支払われないものとする。但し、組合財産の処分等に関して課される公租公課については、各組合員がその[持分金額の割合/関連する対象持分割合]に応じて負担するものである限り、無限責任組合員は、これを組合財産から支払うことができるものとする。
2. 各組合員が、本組合の事業に関し当該組合員に課される公租公課に関して、管轄行政機関から書類、資料、証明書等の提出を求められた場合、無限責任組合員は、適宜、当該組合員が必要とする様式でこれを作成し、当該組合員に送付するものとする。但し、無限責任組合員は、この作成及び送付に要する費用を、その裁量により適切と認める方法で、当該組合員に負担させることができるものとする。
3. 組合員等が正当な事由なく本組合の事業に関し各自が負担すべき公租公課を滞納した場合、又は無限責任組合員若しくは本組合が適用法令上組合員等に関連して源泉徴収を行い若しくは組合員等に代わり若しくは組合員等に関連して公租公課の納付(更正通知、決定通知、納税告知その他日本の税務当局によりなされた課税査定により必要とされる納税を含む。)を行うことが必要とされるものと無限責任組合員が合理的に判断する場合、無限責任組合員は、その裁量により、第 29 条に基づく分配を行うに際し、当該組合員等に分配すべき組合財産の中から当該滞納額又は納付額に相当する現金又は現物を控除し、現物についてはその裁量により適切と認める方法によりこれを売却した上、当該公租公課を支払うことができるものとする。この場合、無限責任組合員は、かかる源泉徴収又は公租公課の納付を行った上で、かかる方法により現金又は現物を収受することもできる。組合員等は、かかる支払いに必要な金額又は支払った金額につき、無限責任組合員から請求があれば、無限責任組合員において既にかかる支払いを行った後であればかかる支払いの日から組合員等による現実の支払いがなされた日までの期間につき年[ ](年 365 日の日割り計算とする。)の利息を付して、無限責任組合員に対し直ちにこれを支払うものとする。かかる支払いは本組合への出資とはみなされない。なお、無限責任組合員は、本項の判断(売却の決定、方法及び結果を含む。)につき、いかなる責任も負わないものとする。
4. 外国有限責任組合員は、自らが組合員でなければ日本の租税法上のxx的施設を有することにはならず、かつ、当該外国有限責任組合員が本契約に基づき国内において事業を行っていないとすれば所得税法第 164 条第 1 項第 4 号に掲げる非居住者又は法人税法第 141 条第 4 号に掲げる外国法人に該当することがxxかつ正確であることを表明し、保証する。かかる表明及び保証の内容がxx若しくは正確でないことが判明した場合、又は外国有限責任組合員が租税特別措置法第 41条の 21 第 1 項に掲げる要件のいずれかを充足しなくなったとき若しくはそのおそれが生じた場合は、当該外国有限責任組合員は直ちにかかる事実を無限責任組合員に書面にて通知するものとする。無限責任組合員は、組合財産の分配にあたり行う源泉徴収につき、本項に定める外国有限責任組合員の表明及び保証に依拠した上で日本法及び適用ある租税条約の定めに従った源泉徴収を行う限り、かかる源泉徴収の結果につき本組合及び組合員等に対して責任を負わないものとする。
5. 外国有限責任組合員は、租税特別措置法第 41 条の 21 第 1 項及び/又は同法第 67 条の 16 第 1 項の適用を受けるために必要な書面(これらの適用を受けるための管轄税務署長に対する申告書、その変更申告書を含むがこれらに限られない。)を、全て適時に(但し、無限責任組合員が期限を指定した場合は当該期限までに)作成し無限責任組合員に提出し、その他合理的に必要な協力
(本人確認への対応を含むがこれに限られない。)を行う。
6. 本組合に対する出資、組合財産の分配、本組合の事業収益に関する組合員等における税務上の取扱いについては無限責任組合員は責任を負わず、組合員が各自の責任において確認を行うものとする。
【第 31 条解説】
1. 第 31 条は、本組合における公租公課の取扱いにつき規定する。特に、第 31 条第 4 項及び第 5項は、本組合の有限責任組合員として非居住者及び/又は外国法人が参加している場合で、平成 21年度税制改正により導入された投資事業有限責任組合等に関する外国組合員に関する特例(租税特別措置法第 41 条の 21、同法第 67 条の 16)(以下「PE 特例」という。)を利用する場合を想定した規定である。
2. 第 31 条第 3 項の適用される具体例としては、破産を原因として脱退した組合員が公租公課を滞納していた場合に、当該脱退組合員の第 41 条に基づく払戻請求権について税務当局が差押等をする場合、又は外国有限責任組合員が PE 特例を利用し本組合の事業から生じる利益について源泉徴収を受けないことが予定されていたにもかかわらず、何らかの理由で当該外国組合員が PE 特例の要件を充足しなくなったことを無限責任組合員が認識した場合が考えられる。これらの場合、税務当局が債権者として出現することにより、組合の業務執行に支障が生じることをあらかじめ防止すること、又は無限責任組合員が外国有限責任組合員の源泉徴収に係る公租公課の納付を行わないことによる責任を負うことを免れること等を目的として、第 31 条第 3 項は、無限責任組合員がその裁量により当該脱退した組合員に代わり公租公課を支払うことや外国有限責任組合員等に係る源泉徴収税の支払いを認める趣旨の規定である。また、無限責任組合員が組合員等のために公租公課を立て替えた場合、無限責任組合員はかかる立替金を当該組合員等に対して求償する必要があるので、その場合には組合員等は支払いを行うまでの期間に係る利息を付して返還する旨を規定している。なお、無限責任組合員が外国有限責任組合員に代わり公租公課を納付する等の対応を行ったものの、外国有限責任組合員がこれに必要な資金の提供又は補償をしない場合には、無限責任組合員において当該外国有限責任組合員から資金を回収する手段として、当該外国有限責任組合員を除名し、組合が当該外国有限責任組合員の出資金を没収して資金を回収する、当該外国有限責任組合員の持分の譲渡を強制しその売却代金から資金を回収する、といった方法が考えられる。
3. 第 31 条第 4 項及び第 5 項は、PE 特例が利用される場合における外国有限責任組合員に関する事項について規定している。まず、第 4 項は、PE 特例の要件のうち無限責任組合員においては確認が困難な「当該投資組合契約に基づいて国内において事業を行つていないとしたならば、所得税法第 164 条第 1 項第 4 号に掲げる非居住者又は法人税法第 141 条第 4 号に掲げる外国法人に該当すること」(租税特別措置法第 41 条の 21 第 1 項第 5 号、同法第 67 条の 16 第 1 項)の表明保証を外国有限責任組合員に求めている。また、一度 PE 特例の要件を充足し手続を履践したとしても、期中において要件が満たされないこととなった場合には、その日から PE 特例の適用はないこととされているところ(租税特別措置法第 41 条の 21 第 4 項、同法第 67 条の 16 第 2 項)、無限責任組合員がかかる事情を知らず当該外国有限責任組合員に分配等を行うと、源泉徴収税等の不払いという事態も生じかねないことから、当該要件が不充足になった場合又はそのおそれが生じた場合には、直ちに無限責任組合員にその旨を知らせるよう、通知義務を課している。次に、第 31 条第 5 項は、外国有限責任組合員の協力義務について規定している。無限責任組合員は、外国有限責任組合員が PE 特例に関して作成する特例適用申告書(租税特別措置法第 41 条の 21 第 3 項、同法第 67 条の 16 第 2 項)や、その記載内容に変更が生じた場合に必要となる変更申告書(租税特別措置法第 41 条の 21第 7 項、同法第 67 条の 16 第 2 項)を当該外国有限責任組合員に代わり税務署長に提出する必要があるほか、当該外国有限責任組合員の本人確認(租税特別措置法第 41 条の 21 第 6 項、同法第 67 条の 16 第 2 項)や組合員所得に関する計算書への一定事項の記載(租税特別措置法第 41 条の 21 第 10項)等の事務も発生することから、かかる無限責任組合員の事務について外国有限責任組合員に協力義務を課すことにより、PE 特例に関連する手続の円滑な履践を可能にし、もって外国有限責任組合員による PE 特例の利用を促進することを図るものである。
第9章 費用及び報酬
第 32 条 費 用
1. 本組合の事業に関連して発生した次に掲げる費用は、全て組合財産より支払われるものとする。
① 本組合の組成に関する費用(本契約の作成費用、登記費用、弁護士、公認会計士、税理士その他の専門家に対する報酬を含む。但し、総組合員の出資約束金額の合計額の[ ]に相当する額を上限とする。)
② 組合財産の取得、投資先事業者等における合併、株式交換、株式移転、会社分割、事業提携その他の組織再編行為、並びに、組合財産の処分等に要する費用(事業調査に係る弁護士、公認会計士、税理士その他の専門家に対する報酬を含む。)
③ 組合財産に関する権利行使に係る費用(サービサーその他の第三者に対する委託費用を含む。)
④ 組合員集会及び諮問委員会の招集及び開催に係る費用
⑤ 次の(ⅰ)から(ⅲ)までに規定する費用
(ⅰ) 第 24 条第 3 項に規定する会計帳簿その他会計記録の作成費用
(ⅱ) 第 25 条第 1 項に規定する財務諸表等の作成・送付費用
(ⅲ) 第 25 条第 3 項に規定する半期財務諸表等の作成・送付費用
⑥ 第 25 条第 1 項に規定する監査人の監査及び意見書作成並びに意見聴取に係る費用
⑦ 組合財産の名義変更その他の対抗要件具備のための費用その他組合財産の管理に係る費用
⑧ 本組合の事業に合理的に必要な、弁護士、公認会計士、税理士、鑑定人、アドバイザーその他の専門家の費用
⑨ 投資先事業者の指導及び育成に要する費用
⑩ 本組合の事業に関連する法令等を遵守するための費用又は本組合の事業に係る法的手続に要する費用(訴訟その他の裁判手続及び行政機関による検査・調査に要する費用を含む。)
⑪ 本組合の事業に関する保険の保険料(無限責任組合員の取締役又は従業員が投資先事業者である会社の取締役その他の役員に就任した場合における当該取締役又は従業員の役員賠償責任保険の保険料を含む。)
⑫ 本組合の事業に関して発生する公租公課(消費税及び地方消費税を含む。)
⑬ 本組合の解散及び清算に要する費用
⑭ [本組合に関し、又は本組合の業務執行に際し、合理的に発生したその他の費用]
2. [本組合の業務執行に要する費用のうち、前項に規定される費用以外のものについては、無限責任組合員の管理報酬より支出するものとする。]
3. 無限責任組合員が、本組合の業務に関し、本組合の負担すべき費用等を支出した場合、かかる支出について組合財産から支払いを受けることができる。
【第 32 条解説】
1. 第 32 条第 1 項は、本組合の費用となるべき項目を明示し、第 32 条第 3 項は、無限責任組合員が本組合の費用を支弁した際に求償できる旨を規定する。
2. 無限責任組合員の取締役又は従業員が投資先事業者である会社の取締役その他の役員に就任した場合における当該取締役又は従業員の賠償責任保険料については、本組合の費用としている。
3. 第 32 条第 2 項は、個別具体列挙された費用以外は全て無限責任組合員の管理報酬により賄われるべき旨規定する。このような規定を設ける場合には、本契約に掲げた一般的な組合費用のほか、必要な組合費用が全て第 1 項に規定されているか特に慎重に検討する必要がある。
第 33 条 無限責任組合員に対する報酬
1. 無限責任組合員は、本組合の業務執行に対する報酬として、本条第 2 項に定める管理報酬及び第 3 項に定める成功報酬を、組合財産から受領するものとする。
2. 無限責任組合員は、各事業年度の管理報酬として、以下の各号に定める額(年額)を、当該事業年度の期初から[ ]日以内に、毎年前払いで現金にて受領するものとする。
① 最初の事業年度については、総組合員の出資約束金額の合計額の[ ]に相当する額(年 365 日の日割り計算とする。)
② 第二事業年度以降出資約束期間の満了日が属する事業年度までについては、各事業年度につき、総組合員の出資約束金額の合計額の[ ]に相当する額
③ 出資約束期間の満了日が属する事業年度の翌事業年度以降については、各事業年度につき、当該事業年度の直前事業年度の末日における投資総額の[ ]に相当する額
3. 無限責任組合員は、第 29 条に従い組合財産の分配を行うに際し、成功報酬(もしあれば)として、同条第 4 項に従い算定される金額又は投資証券等を受領するものとする。なお、同条第 3 項 に基づき投資証券等を現物により分配する場合には、当該成功報酬の金額は、当該分配に係る投資証券等の分配時評価額により計算されるものとする。
4. 無限責任組合員は、ポートフォリオ投資、又は無限責任組合員による経営若しくは技術の指導若しくは助言その他の経営支援に関連して、投資先事業者等から手数料又は報酬その他の対価(以下「控除対象手数料等」という。)を受領することができる。無限責任組合員が控除対象手数料等を受領したときは、当該控除対象手数料等の[ ]に相当する額(以下「管理報酬控除額」という。)を、直後の管理報酬の支払日に支払われるべき管理報酬から減額するものとし、[【免除/除外条項を設けない場合】各組合員は、管理報酬控除額のうち、その持分金額/【免除/除外条項を設ける場合】当該投資先事業者等へのポートフォリオ投資に出資した各組合員は、管理報酬控除額のうち、当該ポートフォリオ投資に係る対象持分割合]に応じて按分した金額につき、当該支払日に支払われるべき管理報酬の負担を免れるものとする。なお、当該管理報酬の支払日において支払われるべき管理報酬の総額が管理報酬控除額を下回る場合には、管理報酬控除額の全額が控除されるまで、次回以降の各支払日において支払われるべき管理報酬よりxx控除するものとする。
5. 【免除/除外条項を設けない場合】 第 47 条に基づく本組合の清算手続における分配を行う日の時点において、無限責任組合員が成功報酬を受領している場合で、かつ、(ⅰ)第 29 条又は第 47条に基づき組合員等に対して行われた組合財産の分配額(現物分配の場合にはその分配時評価額を含む。以下本条において同じ。)の累計額(以下「対象分配累計額」という。)が、組合員等によりなされた出資履行金額の総額及び同金額の[α]に相当する金額の合計額(以下「優先分配金額」という。)を下回るか、又は(ⅱ)無限責任組合員が受領した成功報酬の合計額(以下
「対象成功報酬累計額」という。)が、対象分配累計額から組合員等の出資履行金額の合計額を控除した金額及び対象成功報酬累計額の合計額の[β] を超える場合、無限責任組合員は、(x)以下の各号に定める金額のうちいずれか大きい金額又は(y)対象成功報酬累計額の金額のうち、いずれか小さい金額に相当する額を、本組合に速やかに返還するものとする。かかる返還金(以下
「クローバック金額」という。)は、本組合への支払いをもって、各組合員等へその持分金額
(脱退組合員については脱退当時の持分金額)に応じ按分の上帰属する。
① クローバック金額が組合員等に支払われるとしたら、対象分配累計額(クローバック金額の支払いによる増額後の金額。以下本条において同じ。)が、優先分配金額に相当することとなる金額
② クローバック金額が組合員等に対して支払われるとしたら、対象成功報酬累計額(クローバック金額の支払いによる減額後の金額。以下本条において同じ。)が、対象分配累計額から組合員等の出資履行金額の合計額を控除した金額及び対象成功報酬累計額の合計額の
[β] に相当することとなる金額
【免除/除外条項を設ける場合】 第 47 条に基づく本組合の清算手続における分配を行う日の時点において、各組合員等に関し、当該組合員等が出資を行うポートフォリオ投資において無限責任組合員が成功報酬を受領している場合で、かつ、(ⅰ)第 29 条又は第 47 条に基づき当該組合員等に対して行われた組合財産の分配額(現物分配の場合にはその分配時評価額を含む。以下本条において同じ。)の累計額(以下「対象分配累計額」という。)が、当該組合員等によりなされた出資履行金額の総額及び同金額の[α]に相当する金額の合計額(以下「優先分配金額」という。)を下回るか、又は(ⅱ)当該組合員等が出資を行う各ポートフォリオ投資に関し無限責任組合員が受領した各成功報酬のそれぞれの金額のうち、対応する各ポートフォリオ投資に出資をする当該各組合員等の対象持分割合に相当する金額の合計額(以下「対象成功報酬累計額」という。)が、当該組合員等に係る対象分配累計額から当該組合員等の出資履行金額を控除した金額及び対象成功報酬累計額の合計額の[β] を超える場合、無限責任組合員は、(x)以下の各号に定める金額のうちいずれか大きい金額又は(y)対象成功報酬累計額の金額のうち、いずれか小さい金額に相当する額を、本組合に速やかに返還するものとする。かかる返還金(以下「クローバック金額」という。)は、本組合への支払いをもって、当該組合員等の持分金額に帰属する。
① クローバック金額が当該組合員等に支払われるとしたら、当該組合員等に係る対象分配累計額(クローバック金額の支払いによる増額後の金額。以下本条において同じ。)が、優先分配金額に相当することとなる金額
② クローバック金額が当該組合員等に対して支払われるとしたら、当該組合員等に係る対象成功報酬累計額(クローバック金額の支払いによる減額後の金額。以下本条において同じ。)が、当該組合員等に係る対象分配累計額から当該組合員等の出資履行金額を控除した金額及び対象成功報酬累計額の合計額の[β]に相当することとなる金額
【第 33 条解説】
1. 第 33 条は、無限責任組合員の報酬を規定する。無限責任組合員の報酬は、管理報酬と成功報酬から構成され、管理報酬については第 2 項において、成功報酬については第 3 項においてそれぞれ規定の上、第 4 項において無限責任組合員が投資先事業者等から受領した手数料等の管理報酬からの控除を、第 5 項において一定の場合における無限責任組合員による成功報酬の返還を規定している。
2. 第 33 条第 2 項における管理報酬は、出資約束期間中と出資約束期間満了後において、その算出の基礎を分けることとしている。すなわち、投資が行われることが予定されている出資約束期間中においては、投資がこれから行われるのであるから、総組合員の出資約束金額をその算出の基礎とし、投資が原則として完了している出資約束期間満了後においては、投資約束金額ではなく、実際に投資がなされた投資総額を算出の基礎としている。もっとも、本契約で示した方法以外にも、全組合期間を通じ、算出の基礎を出資約束金額の合計額とする方法や、組合財産の純資産額とすることも少なくない。また、管理報酬の割合についても、一定割合に固定する方法や、出資約束期間の満了時の前後によってその割合を変動させる方法等も考えられる。さらに、管理報酬の受領時期についても、本契約におけるように事業年度毎とする場合のほか、半期又は四半期ベースで受領することとする場合も少なくない。
3. 本契約においては、第 32 条に規定する組合費用とは別に、管理報酬を規定しているが、組合費
用を管理報酬に統合した上で管理報酬の割合を合意することも可能である。その場合、組合の費用は、管理報酬及び成功報酬のみとなり、組合員においてあらかじめ費用額を算定することが可能になる。
4. 第 33 条第 3 項は成功報酬について規定しているが、成功報酬の算定方法の詳細については第 29 条第 4 項において組合員に対する分配金の算定方法とまとめて規定していることから、本項は無限責任組合員が成功報酬を受領することを認める根拠規定としての意味を有するにとどまる。
5. 第 33 条第 4 項は、無限責任組合員が、本組合による投資案件の実施又は無限責任組合員による投資先事業者等への経営指導等の対価として当該投資先事業者等から手数料や報酬等を受領することを認めた上、実際に受領した手数料や報酬等の全部又は一部を管理報酬から控除する方法により実質的に本組合へ提供することを義務付ける規定である。本組合による投資や無限責任組合員による投資先事業者等への経営指導等も、本組合の組成又は組合員の出資に基づく投資を前提とするものであるため、手数料や報酬等については有限責任組合員に利益として分配することも考えられ、また、かかる取扱いを行うことで、無限責任組合員と本組合との間の実質的な利益相反を抑止する効果も有する。海外のバイアウト・ファンドにおいてはよくみられる規定である。もっとも、ベンチャー・キャピタル・ファンドでは、そもそも手数料等による収入額が大きくないことも多く、国内外を問わずかかる規定はあまりみられないようである。なお、無限責任組合員の管理報酬から手数料や報酬等の相当額が控除されることにより、組合員の負担する損失額が当該控除額相当額につき減額されることとなるが、かかる損失の減額分は、免除/除外条項が設けられない場合には単純に各組合員がその持分金額に応じて享受するものとしているのに対し、免除/除外条項が設けられる場合には、ポートフォリオ投資単位での取扱いとしており、当該手数料等を支払った投資先事業者等に係るポートフォリオ投資に参加した組合員が、当該ポートフォリオ投資に係る対象持分割合に応じて享受することとしている。
6. 第 33 条第 5 項は、第 29 条第 4 項に従い本組合財産を分配した結果、本組合の清算時において、無限責任組合員に支払われた成功報酬の累計額が、全ての投資を通じて算定した場合、同項で想定する成功報酬の分配割合を超えることとなる場合には、無限責任組合員にその超過額を組合財産へ返還させることによって調整を行うものであり、いわゆるクローバック(Clawback)条項と呼ばれる規定である。具体的には、無限責任組合員が成功報酬を受領している場合において、(ⅰ)組合員が受領した分配額の累計額が、出資履行金額及びそのハードル・レートに相当する額の合計額に不足する場合、又は、(ⅱ)当該金額の分配は受けているが、無限責任組合員が受領した成功報酬の累計額が、当該累計額と組合員が分配を受けたリターン(分配額の累計額から出資履行金額を控除した金額)との合計額のβに相当する金額を超過する場合には、その不足額又は超過額を是正する限度において(但し、無限責任組合員が受領した成功報酬額を限度として)、無限責任組合員は成功報酬額の全部又は一部を組合財産へ返還するものとし、かかる返還金は各組合員の持分金額に帰属することとしている。本項に記載するα及びβは、それぞれ第 29 条第 4 項で使用した意味と同様であり、αはハードル・レートを、βは組合員に対する分配金と成功報酬の配分割合を表す。また、免除/除外条項が設けられる場合には、各組合員によって成功報酬の超過額の有無及びその割合が異なり得ることから、各組合員について個別の計算がされるよう規定している。クローバック条項が規定される場合には、無限責任組合員にその現実の取得額以上の金額を返還させるという扱いは極めて厳しい対応であるため、無限責任組合員が負担した税額を控除することも十分に考えられる(もっとも、実務上は課税額を正確に算定することは困難な場合も多いと思われることから、実際の規定上は、事前に一定の税率を合意しておく等、何らかの工夫が必要であろう。)。なお、クローバック条項が規定される場合であっても、支払済みの成功報酬が清算時には既に費消されてしまっており、返還する資金が無限責任組合員に残存していない可能性もあることから、そのような事態を避けるための手段を確保することも考えられ、海外の組合契約ではそのような例もみられる。但し、第 29 条第 4 項の規定のように、出資履行金額(及び、ハードルレートに対応する金額)の全額が回収されて始めて成功報酬が支払われるとする場合には、分配額と成功報酬額の配分割合は概ね一定に保たれることになることから、例えば各ポートフォリオ投資に係る出資履行金額及びそれ以前に処分されたポートフォリオ投資に係る出資履行金額をベースとして成功報酬の支払いがなされる場合に比較すると、クローバック条項が適用される可能性は相対的に低いものと思われる。
第 10 章 組合員の地位の変動
第 34 条 持分処分の禁止
1. 組合員は、組合財産に対する持分を、裁判上及び裁判外の事由の如何を問わず、譲渡、質入れ、担保権設定その他一切処分することができない。但し、次条の規定に従って組合員たる地位を譲渡する場合はこの限りでない。
2. 前項に違反して組合員がなした組合財産に対する持分の処分は無効とし、本組合はかかる処分に関し譲受人その他第三者に対していかなる義務も負わない。
【第 34 条解説】
1. 有限責任組合法第 16 条により準用された民法第 676 条第 1 項により、組合員の持分処分は組合及び組合と取引した第三者に対抗できないものとされている。そこで、第 34 条第 1 項本文は、かかる持分処分の禁止について規定し、同条第 2 項は、かかる禁止規定に違反する処分を絶対的に無効とする。
2. 組合財産に対する持分の処分が禁止されるとしても、組合員たる地位の譲渡は、組合契約で許容する場合にはできると解するのが通説である(「新版注釈民法(17)」159 頁)。本モデル契約においても第 35 条において組合員たる地位の譲渡が許容されている。組合員たる地位の譲渡がある場合、それに伴い、譲渡組合員の持分が譲受組合員に移転することとなる。かかる持分の移転については、第 34 条第 1 項本文の持分処分の禁止の適用外であることを確認的に規定したものが同項但書きである。
第 35 条 組合員たる地位の譲渡等
1. 有限責任組合員は、無限責任組合員の書面による承諾がある場合を除き、その組合員たる地位について、裁判上及び裁判外の事由の如何を問わず、譲渡、質入れ、担保権設定その他一切処分することができない。
2. 無限責任組合員は、合理的な理由なく有限責任組合員による組合員たる地位の譲渡の承諾を拒絶し得ないものとし、当該譲渡により有限責任組合員が 500 名以上となる譲渡を承諾しないものとする。
3. 組合員たる地位を譲渡しようとする有限責任組合員は、譲り受けようとする者をして、無限責任組合員が指定する日までに、本契約に拘束されることに同意する旨の書面を無限責任組合員に対して提出させるものとする。
4. 前各項の規定にかかわらず、有限責任組合員がその組合員たる地位の全部[又は一部]を無限責任組合員又は他の有限責任組合員に対して譲渡するには、無限責任組合員に[ ]日前の書面による通知をすることをもって足りる。
5. 前各項の規定にかかわらず、有限責任組合員は、その取得又は買付けに係る組合員たる地位を不適格投資家に対して譲渡することが禁止される。適格機関投資家である有限責任組合員がその発行に応じて取得した組合員たる地位については、当該有限責任組合員及びその後当該組合員たる地位を承継した有限責任組合員は、当該組合員たる地位を適格機関投資家以外の者に対して譲渡することが禁止される。また、適格機関投資家以外の者である有限責任組合員がその発行に応じて取得した組合員たる地位については、当該有限責任組合員及びその後当該組合員たる地位を買付けた有限責任組合員は当該組合員たる地位を一括して譲渡する場合以外に譲渡することが禁止
される。
6. 有限責任組合員が、その組合員たる地位を譲渡する場合には、譲り受けようとする者に対し、以下の(ⅰ)及び(ⅱ)に掲げる事項について告知し、かつ、あらかじめ又は同時に、かかる告知事項を記載した書面を交付しなければならないものとする。
(ⅰ)当該組合員たる地位の買付けの申込みの勧誘が、金融商品取引法第 2 条第 3 項第 3 号に該当
せず、金融商品取引法第 23 条の 13 第 4 項に定義される少人数向け勧誘に該当することにより、
当該買付けの申込みの勧誘に関し、金融商品取引法第 4 条第 1 項の規定による届出が行われていないこと。
(ⅱ)当該組合員たる地位が、特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令第 1 条第 5 号の 2 イ に掲げる内国有価証券投資事業権利等に該当する特定有価証券であり、当該組合員たる地位は金融商品取引法第 2 条第 2 項第 5 号に掲げる権利に該当すること。
7. 無限責任組合員は、他の組合員の全員の書面による同意がある場合を除きその組合員たる地位を譲渡することができない。
8. 出資一口に相当する組合員たる地位は不可分とし、本条に定める組合員たる地位の譲渡は、出資一口を単位としてのみ行うことができる。
9. 前各項に違反して組合員がなした組合員たる地位の処分は無効とし、本組合はかかる処分に関し譲受人その他第三者に対していかなる義務も負わない。
10. 組合員が合併又は会社分割を行う場合、当該組合員の組合員たる地位は包括承継されるものとする。
【第 35 条解説】
1. 第 35 条は、組合員の地位の譲渡等につき規定する。組合員の地位の譲渡について、有限責任組合法及び同法により準用される民法のいずれにも、規定はない。しかし、民法上の組合について、通説は、組合契約で許容するときは組合員たる地位を譲渡し得ると解しており(「新版注釈民法 (17)」159 頁参照)、有限責任組合法のもとにおいても別異に解すべき理由は存しないものと考えられる。
2. 第 35 条第 1 項では、組合員たる地位の譲渡等には無限責任組合員の承諾が必要であることを原則とした上で、同条第 2 項では、無限責任組合員は組合員たる地位の譲渡については合理的な理由なくこれを拒絶し得ないものとしている。なお、組合員たる地位を譲り受けた者は、次条に基づく本組合への新規の加入と異なり本契約上規定されている表明保証を当然に行うものではないので、実務上は無限責任組合員による承諾にあたり、譲受人に表明及び保証させることとなろう。
3. 本契約は、本組合の組成・運用が金融商品取引法第 63 条第 2 項に定める適格機関投資家等特例業務として行われることを前提として作成されている(投資事業有限責任組合の組成・運用に係る金融商品取引法上の規制の概要については、第 35 条解説 5.参照)。そのため、本組合の組成は金融商品取引法第 63 条第 1 項第 1 号が要件とする「私募」でなければならないため、本契約締結時の有限責任組合員(厳密に言えば、「取得勧誘に応じることにより当該取得勧誘に係る有価証券を所有することとなる者」)は、500 名未満でなければならない(金融商品取引法第 2 条第 3 項第 3 号、同法施行令第 1 条の 7 の 2 参照)。また、本組合の成立後に有限責任組合員が 500 名以上となった場合には、無限責任組合員は有価証券報告書を提出しなければならない(金融商品取引法第 27 条、第 24 条第 5 項、第 24 条第 1 項第 4 号、同法施行令第 4 条の 2 第 4 項、第 5 項)。そこで、有価証券報告書の提出義務を負うことがないよう、第 35 条第 2 項後段において、無限責任組合員は、当該譲渡により有限責任組合員が 500 名以上となる譲渡を承諾しない旨を明記した。
4. 第 35 条第 1 項において組合員たる地位の譲渡に無限責任組合員の承諾を要求した主たる趣旨は、組合に参加することが好ましくない者を排除することにある。従って、第 35 条第 4 項におい
て、有限責任組合員がその組合員たる地位を、既に組合に参加している他の組合員へ譲渡することについては、譲渡・譲受当事者間で合意が成立すれば無限責任組合員の承諾を要することなく、無限責任組合員への通知によって譲渡できることとしている。もっとも、各組合員の持分割合について、組合員の関心が高い場合もあり、場合に応じて、要件を加重することも考えられる。
5. 投資事業有限責任組合契約に基づく権利(組合持分)は、原則として有価証券とみなされ(金融商品取引第 2 条第 2 項第 5 号)、金融商品取引法の適用を受ける。従って、組合持分の募集(金融商品取引法第 2 条第 3 項第 3 号)を行う場合には、原則として、有価証券届出書を提出するとともに、目論見書の作成が必要となり、またその後有価証券報告書等による継続開示を行うことを要する(金融商品取引法第 4 条第 1 項、第 13 条第 1 項、第 24 条等)。一方、私募に該当する場合、すなわち組合持分の取得勧誘に応じることにより当該取得勧誘に係る取得持分を所有することとなる者が 500 名未満である場合には、有価証券届出書の提出等は不要である(金融商品取引法第 2 条第 3項第 3 号、同法施行令第 1 条の 7 の 2 参照)。
6. 投資事業有限責任組合の無限責任組合員が、有限責任組合員として出資するよう投資家に対して勧誘を行うこと(自己募集)は、金融商品取引法第 2 条第 8 項第 7 号に掲げる集団投資スキーム持分の「募集又は私募」に該当し、また、組合財産の運用を行うこと(自己運用)は、同項第 15 号に掲げる行為に該当するのが通常である。従って、これらを業として行う無限責任組合員は、第二種金融商品取引業(金融商品取引法第 28 条第 2 項第 1 号)及び投資運用業(同条第 4 項第 3 号)を行うものとして、登録を行う必要があるほか(同法第 29 条以下)、その業務に関して様々な規制を受けることとなる(同法第 35 条以下)。
これらの金融商品取引法上の登録義務及び規制の多くの適用を受けない方法として、投資事業有限責任組合の組成及び運用は、金融商品取引法第 63 条第 2 項に定める適格機関投資家等特例業務として行われることが多く、本契約はかかる適格機関投資家等特例業務として行うことを前提とした規定を設けている。
投資事業有限責任組合の組成が適格機関投資家等特例業務に該当するためには、大要以下の要件を充足しなければならない(金融商品取引法第 63 条第 1 項第 1 号)。なお、有限責任組合員が投資事業有限責任組合である場合等の例外に留意されたい。
① 組成時に、有限責任組合員が 500 名未満であること(金融商品取引法第 2 条第 3 項第 3号、同法施行令第 1 条の 7 の 2。但し、④に該当することを要する。)
② 組成時に、有限責任組合員に不適格投資家(金融商品取引法第 63 条第 1 項第 1 号イからハまでのいずれかに該当するものをいう。以下同じ。)がいないこと
③ 組成時に、有限責任組合員に 1 名以上の適格機関投資家がいること
④ 組成時に、適格機関投資家以外の有限責任組合員が 49 名以下であること(金融商品取引法施行令第 17 条の 12 第 1 項及び第 2 項)
⑤ 組合員となった日において適格機関投資家であった有限責任組合員が保有する組合持分について、適格機関投資家に譲渡する場合以外の譲渡が、組合契約において禁止されていること(金融商品取引法施行令第 17 条の 12 第 3 項第 1 号)
⑥ 組合員となった日において適格機関投資家以外の者であった有限責任組合員が保有する組合持分について、他の一の者に一括して譲渡する場合以外の譲渡が、組合契約において禁止されていること(金融商品取引法施行令第 17 条の 12 第 3 項第 2 号イ)
投資事業有限責任組合の運用が適格機関投資家等特例業務に該当するためには、大要以下の要件を充足しなければならない(金融商品取引法第 63 条第 1 項第 2 号)。
⑦ 運用期間中継続して、不適格投資家が有限責任組合員とならないこと
⑧ 運用期間中継続して、有限責任組合員に 1 名以上の適格機関投資家がいること
⑨ 運用期間中継続して、適格機関投資家以外の有限責任組合員が 49 名以下であること(金融商品取引法施行令第 17 条の 12 第 1 項及び第 2 項)
上記①及び④の要件充足については、組合員の名簿により確認ができ、組合契約に特段の規定を設ける必要はない。但し、有限責任組合員が適格機関投資家に該当するか否かについては、必ずしも自明ではない場合もあることに留意されたい。
上記②及び③の要件充足については、第 52 条第 1 項及び第 3 項の規定により担保することとなる。
上記⑤及び⑥の要件については、第 35 条第 5 項第 2 文及び第 3 文の規定により充足されることとなる。
上記⑦の要件充足については、第 52 条第 2 項、第 35 条第 5 項第 1 文、及び第 39 条第 1 項第③号の規定により担保することとなる。
上記⑧の要件充足については、第 52 条第 4 項、第 35 条第 5 項第 2 文、及び第 43 条第 1 項第⑥号の規定により担保することとなる。
上記⑨の要件充足については、組成時の組合員名簿による確認及び第 35 条第 5 項第 3 文の規定により担保することとなる。
7. 無限責任組合員は、投資事業有限責任組合の組成を私募として行い、有価証券届出書による開示を行わずに、組合持分の取得の勧誘を行う場合には、かかる開示が行われていない旨等を勧誘の相手方に告知するとともに、組合持分を取得させる場合には、あらかじめ又は同時に当該相手方に当該告知事項を記載した書面を交付しなければならない(金融商品取引法第 23 条の 13 第 4 項、第 5項、特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令第 20 条)。
かかる義務が遵守されたことを確認するため、第 51 条第 1 項から第 3 項までの規定が設けられている。
これに対し、組合持分を転売する場合に、かかる告知義務及び書面交付義務を履行しなければならないかについては、金融商品取引法第 23 条の 13 第 4 項第 2 号において、「同法第 2 条第 4 項第 3
号に掲げる場合に該当しない場合」(既発行の組合持分の売付け勧誘の相手方が 500 人未満の場合)が掲げられていないことを根拠として、有価証券の売付け勧誘等が売出しに該当しない場合は告知が不要と解されている。従って、第 35 条第 6 項は不要であるとも考えられるが、トラブルを避けるため好ましいこと、及び組合員に過重な負担を負わせるともいえないことから、念のため、同条項を規定している。
8. 投資事業有限責任組合は、無限責任組合員の業務執行に係る能力を信頼して組成されるのが通常である。よって、出資者からすると、無限責任組合員が変更されることは望ましい事態ではないとの考え方に基づき、第 35 条第 7 項において、無限責任組合員は、他の組合員の全員の書面による同意がある場合を除きその組合員たる地位を譲渡することができないものとしている。
9. 組合員が存続会社となるか消滅会社となるかを問わず、合併の場合には、組合員の地位の承継を認める例が多く、本契約でもそのように規定している。この場合でも、合併又は会社分割により当該組合員が反社会的勢力となるような場合には誓約違反(第 53 条第 2 項)による除名(第 39 条第 1 項第③号又は第 40 条第 1 項第③号)及び補償義務(第 54 条)の対象となる。もっとも、実務上、例えば無限責任組合員にとっての競合他社が有限責任組合員と合併するような場合には、組合員の地位の承継を拒絶することを望む場合もあり得よう。そのため、合併には無限責任組合員(無限責任組合員が合併又は会社分割を行う場合には全有限責任組合員)の書面による承諾必要とする旨の規定が設けることも考えられる。また、会社分割による承継の場合の取扱いに関する規定は、従前においては組合契約で定められないことが多かった。このような規定がない場合、無限責任組
合員の承諾なく当然に組合員の地位が移転すると解釈される可能性がある。そのため、合併同様に組合員の地位の移転を避ける必要がある場合には、無限責任組合員(無限責任組合員が合併又は会社分割を行う場合には全有限責任組合員)の書面による承諾必要とする旨の規定が設けることも考えられる。これらの場合、必要な承諾が得られないときには当該組合員の脱退事由となる旨規定することとなろう。
第 36 条 組合員の加入
1. 無限責任組合員は、[ ]年[ ]月[ ]日までの間に限り、全組合員を代理して、本契約添付別紙 1 記載の組合員(以下「既存組合員」という。)以外の者を本組合に加入させること、及び、既存組合員による出資約束金額の増額を承認することができるものとする。かかる加入及び出資約束金額の増額に際しては、無限責任組合員は、これらの者との間で全組合員を代理してその裁量により適切と考える内容及び様式による加入契約(出資約束金額の増額の場合はその旨の本契約の変更契約。以下、本条において同じ。)を締結する(当該加入契約は、当該新規加入組合員が本契約に拘束されることに同意する旨の条項を含むものでなければならない。)。
2. 全組合員の出資約束金額の合計額は[ ]円以下でなければならない。但し、総有限責任組合員の出資口数の合計の[ ]分の[ ]以上に相当する出資口数を有する有限責任組合員の同意を得た場合はこの限りでない。
3. 前条又は本条の規定による場合を除き、いかなる者も新たに組合員となることはできない。
【第 36 条解説】
1. 第 36 条は、組合員の加入について規定する。民法上の組合につき、民法は、組合員の加入、すなわち、既存の組合員以外の者が新たに組合員たる資格を取得し、その組合が、新加入者を加えた全ての者の間の組合として同一性を失わずに存続することについて規定していない。しかし、組合を単純な契約関係とみず、組合の団体性を重要視して、組合員の脱退を認めていることから、加入も当然可能であると解されている(「新版注釈民法(17)」154 頁参照)。有限責任組合法のもとにおいても、別異に解すべき理由は存しない。
2. 加入を認めるか否か、また、認めるとしていかなる要件のもとにこれを認めるかについては個別の組合契約ごとに決せられることになる。本契約においては、組合契約の効力発生日から一定期間に限り、無限責任組合員が全組合員を代理して新規加入者と加入契約を締結する方法により、加入が認められるとしている。新たに組合員を加入させることは、組合業務の執行の範囲に属さず、無限責任組合員の代理権に当然にそのような権限が含まれることにならないので、第 36 条で無限責任組合員に対して、全組合員を代理して新規加入者と加入契約を締結する権限を付与するものである(新版注釈民法(17)155 頁参照)。
3. 既存の組合員にとっては、出資約束期間においては管理報酬が出資約束金額の合計額を基準に計算されることから、無限責任組合員において、想定する投資内容に比して過大な出資口数の出資の勧誘を行う誘因が生じ得るため、海外ファンドでは、あらかじめ、全組合員の出資約束金額の合計額に限度を設けておくこともある。また、追加の組合員の加入により組合員間での出資割合が減り既存組合員において意思決定への影響力が減殺されることもファンドサイズについて限定を設けておく理由として挙げ得る。実務上は、上限額を超えて応募があった場合には新規の組合員には共同投資を行う他の組合に出資してもらう場合もあるようである。
第 37 条 組合員の脱退
1. 組合員は、やむを得ない理由のある場合に限り、本組合を脱退することができる。本項に基づき脱退する組合員は、有限責任組合員である場合は無限責任組合員に対し、無限責任組合員である
場合は有限責任組合員の全員に対し、[ ]日以上前に、その理由を記載した書面による通知をなすものとする。
2. 前項に定める場合のほか、組合員は、次のいずれかの事由により本組合を脱退する。
① 解散(但し、合併による解散を除く。)
② 死亡(但し、第 38 条に基づく承継がある場合を除く。)
③ 破産手続開始の決定
④ 後見開始の審判を受けたこと
⑤ 第 39 条による除名
⑥ 第 40 条による除名
3. 無限責任組合員が本条に基づき脱退した場合、その事由が生じた日から 2 週間以内であって本組合の解散の登記がなされる日までに、有限責任組合員は、その全員一致により、後任の無限責任組合員を選任することができる。
4. 本条に基づき脱退した無限責任組合員は、後任の無限責任組合員が前項に従い選任されるまで又は第 43 条第 1 項第④号により本組合が解散するまでのいずれか早い時まで、引続き無限責任組合員としての権利を有し、義務を負う。
5. 本条第 3 項の規定に基づき、脱退した無限責任組合員の後任として無限責任組合員に選任された組合員は、当該選任以前に生じた本組合に関する責任を負担しないものとし、脱退した無限責任組合員がかかる責任を負担するものとする。
6. 無限責任組合員は、有限責任組合員が脱退したことを知らずに行った業務執行について、重過失が存しない限り、その責を免れるものとする。
【第 37 条解説】
1. 第 37 条第 1 項は、任意脱退につき規定する。有限責任組合員のみならず無限責任組合員もやむ得ない理由がある場合は脱退することができるものとされている。任意脱退について、民法は、組合の存続期間を定めている場合でも、やむを得ない事由があるときは脱退できるものとしているが
(民法第 678 条第 2 項)、有限責任組合法も、第 3 条第 2 項第 7 号において組合の存続期間を必ず
定めるものとした上で、第 11 条でやむを得ない場合には脱退できるものとしている。これらの規定
が強行規定であるかが問題となるが、民法第 678 条については、やむ得ない事由があれば脱退し得るという点で強行規定であるとされており(「新版注釈民法(17)」166 頁)、有限責任組合の場合も無限責任組合員を含めいかなる場合も任意脱退を許さないとすることはできないと考えられるので、有限責任組合法第 11 条も、民法第 678 条と同様、強行規定であると解される。なお、脱退の意思表示は、本来、他の組合員全員に対して行われるべきものであるが、組合契約で別段の定めをなすことは妨げられない(「新版注釈民法(17)」163 頁)。本契約では、有限責任組合員の脱退については無限責任組合員に対する通知を要件としている。ただ、無限責任組合員の任意脱退は、組合の運営上重要な事項であるため、有限責任組合員全員に対し、通知をすべきものと規定している。
2. 第 37 条第 2 項は、非任意脱退につき規定する。有限責任組合法第 12 条は、組合員の非任意脱退事由として、①死亡、②破産手続開始の決定、③後見開始の審判を受けたこと及び④除名を掲げている。死亡及び後見開始の審判について、組合契約で別途の合意をすることは可能と解されており(「新版注釈民法(17)」169 頁、174 頁参照)、本契約においても第 38 条において組合員の死亡につき別途の規定をおいている。本契約では、さらに、組合員の解散も非任意脱退事由とした。
3. 組合員が合併や会社分割を行う場合に、組合員の地位の承継を認めるかを検討すべきこと、認めないときは脱退事由に追加すべきことについては、第 35 条解説 9.参照。
4. 本契約においては、投資事業有限責任組合法第 12 条第 2 号に掲げる破産手続開始の決定を脱退
事由と規定しているが、民事再生手続開始の決定、会社更生手続の開始決定及び外国法に基づく同様の事由の発生について、脱退事由として追加することも考えられる。なお、特別清算手続は株式会社の解散後に行われることが前提となっているため、解散が脱退事由として掲げられていれば追加する必要はない。
5. 後見開始の審判を受けた場合であっても、脱退しない旨を規定することも可能である(「新版注釈民法(17)」174 頁参照)。
6. 第 37 条第 3 項は、無限責任組合員が脱退した場合の取扱いにつき規定する。有限責任組合法第
13 条において、無限責任組合員の脱退は組合の解散事由と規定されているが、同条但書きでは、その事由が生じた日から 2 週間以内であって解散の登記をする日までに、残存する組合員の一致によって新たに無限責任組合員を加入させたときは解散事由とならない旨規定されている。本契約においても、かかる有限責任組合法第 13 条但書きの規定に従い、有限責任組合員が全員一致で無限責任組合員を選任するとの手続規定をおいている。
7. 第 37 条第 3 項のとおり無限責任組合員が脱退した場合であっても、脱退した日から 2 週間以内に新たな無限責任組合員が選任されれば、本組合は解散しないことになる。問題はこの間の本組合の業務執行を誰が担うかであるが、第 4 項では、脱退した無限責任組合員が引き続き担当するものとした。
8. 第 37 条第 5 項は、同条第 3 項の規定に基づき脱退した無限責任組合員の後任として選任された無限責任組合員は、その選任以前に生じた責任については負担しないことを明確に規定するものである。
9. 本契約で規定する組合員の脱退事由には、必ずしも第三者においては直ちに知り得ない事由もある。従って、有限責任組合員に脱退事由(例えば、死亡、破産等)が生じたにもかかわらず、無限責任組合員は、これを知らずに、例えば、組合財産の分配を行ってしまう可能性もある。そこで、第 37 条第 6 項では、無限責任組合員が、有限責任組合員が脱退したことを知らずに行った業務執行については、重過失がない限り免責されるものとしている。
第 38 条 組合員の死亡
1. 自然人である組合員が死亡し、その相続人が、無限責任組合員に対し、死亡後[3]ヶ月以内に無限責任組合員が別途要請する資料とともに被相続人の組合員たる地位を承継する旨を通知した場合、相続人は当該組合員の地位を承継することができる。但し、当該相続人が反社会的勢力に該当すると無限責任組合員が合理的に判断した場合又は当該相続人を組合員として認めることにより無限責任組合員が金融商品取引法第 63 条第 1 項に規定する要件を充足しないこととなる場合には、無限責任組合員は当該相続人による組合員の地位の承継を拒むことができる。
2. 前項本文の場合において相続人が複数ある場合、その一人を当該相続人の代理人として定め無限責任組合員に対しその旨書面により通知しなければならない。
【第 38 条解説】
1. 有限責任組合法第 12 条は、民法第 679 条と同様に、組合員の死亡を脱退事由として規定している。民法第 679 条において、死亡が脱退事由とされている理由は、組合員間の信頼関係に求められ、同条は組合員の利益保護のための規定であるから、組合契約であらかじめ組合員たる地位の相続を認めるときは、当該規定は有効であるものと解されている(「新版注釈民法(17)」169 頁参照)。有限責任組合法第 12 条も、民法第 679 条と別異に解すべき理由はないので、組合契約において相続を認めることは可能と解される。
2. 組合員たる地位が相続されるとした場合の規定についてはさまざまなものが考えられるが、本契約においては、相続人側に、相続の有無の選択権を付与することとしている。ただ、相続か脱退か権利関係が不確定な期間が長期間継続することは好ましくないので、死亡後 3 ヶ月以内に限り、
相続人による承継を認めている。
3. 相続人が組合員の地位の承継を希望する場合であっても、当該相続人が反社会的勢力に該当するときや当該相続人の組合への参加により適格機関投資家等特例業務の要件を充足しなくなるときには、当該承継を認めないことが適切であることから、本契約においては、第 38 条第 1 項但書きで無限責任組合員が相続人による承継を拒むことができる旨を規定した。
4. 相続人が組合員たる地位を相続しない場合、第 37 条に従い、脱退することになる。なお、相続人が複数いる場合に、組合員たる地位を分割して各自が独立に組合員になることを認める規定をおくことも可能であるが、本契約では、相続人が複数いる場合に、遺産が分割される前のみならず、複数の相続人が共同して相続した場合も、相続人が共同してのみその権利を行使し義務を履行することになる。
第 39 条 有限責任組合員の除名
1. 有限責任組合員が以下の事由のいずれかに該当する場合、無限責任組合員は、総有限責任組合員の出資口数の合計の[ ]分の[ ]以上に相当する出資口数を有する有限責任組合員の同意を得て当該有限責任組合員を除名することができる。この場合、無限責任組合員は、除名の対象となった有限責任組合員に対し、除名されたことを速やかに通知するものとする。
① 本契約に基づく支払義務の履行を[ ]日以上怠った場合
② 正当な事由なく、本組合に対しその業務を妨害する等重大な背信行為を為した場合
③ 不適格投資家又は[第 53 条第 1 項若しくは第 2 項]に定める表明及び保証若しくは誓約に違反する者であると無限責任組合員が合理的に判断した場合
④ その他本契約上の重大な義務に違反した場合
2. 前項の規定は、除名により本組合を脱退した有限責任組合員に対する損害賠償請求を妨げるものではない。
【第 39 条解説】
1. 第 39 条は、有限責任組合員の除名につき規定する。次条のとおり、無限責任組合員の除名要件と完全に一致しないため別条項としている。有限責任組合法第 16 条が準用する民法第 680 条は、組合員の除名は、正当の事由がある場合に限り、他の組合員の一致をもってなすことができると規定するが、こうした除名要件に関する規定は強行規定ではなく、組合契約において別段の定めをすることは差支えないとされる(新版注釈民法(17)177 頁)。なお民法第 680 条によると、組合員の除名は、除名した組合員にその旨を通知しなければ、当該組合員に対抗できないとされる。
2. 有限責任組合員が外国為替及び外国貿易法第 26 条第 1 項に定める「外国投資家」である場合に、投資有限責任組合を通じて行う株式の取得等が同条第 2 項に定める「対内直接投資等」に該当し、事前の届出義務があるにもかかわらず、当該有限責任組合員がかかる義務を懈怠するとき、その他第 48 条第 1 項第 1 文の規定に違反するとき、当該有限責任組合員は第 39 条第 1 項第④号に基づいて除名されることがある。
第 40 条 無限責任組合員の除名
1. 無限責任組合員が以下の事由のいずれかに該当する場合、総有限責任組合員の出資口数の合計の
[ ]分の[ ]以上に相当する出資口数を有する有限責任組合員は、無限責任組合員を除名することができる。この場合、かかる有限責任組合員は、無限責任組合員に対し、除名されたことを速やかに通知するものとする。
① 本契約に基づく支払義務の履行を[ ]日以上怠った場合
② 本組合の業務を執行し、又は本組合を代表するに際し、重大な違法行為を行った場合
③ その他本契約上の表明及び保証又は重大な義務に違反した場合
2. 前項の規定は、除名により本組合を脱退した無限責任組合員に対する損害賠償請求を妨げるものではない。
【第 40 条解説】
1. 第 40 条は、無限責任組合員の除名について規定する。
無限責任組合員の除名は、違法行為を行った場合の無限責任組合員の更迭のメカニズムの一つであり、組合員は、第 40 条第 1 項に基づき、組合員の一定数の同意により、無限責任組合員を除名し、新たな無限責任組合員を選任する方法が考えられる。なお、新たな無限責任組合員については、有限責任組合員から新たな無限責任組合員を選任する場合のほか、新たに組合員として加入した者を無限責任組合員として選任できることとしている(第 37 条第 3 項参照)。
なお、無限責任組合員の更迭の方法として、無限責任組合員を除名(脱退)までさせず、解任に留め、有限責任組合員として組合に残存させること、又は、無限責任組合員を投資事業有限責任組合から脱退させるのではなくその組合持分を一定の者に強制的に譲渡させる等の規定を設けることも考えられる。
2. 第 40 条第 1 項第③号で言及されている「表明及び保証」(representations and warranties)とは、契約当事者が、一定の時点における事実及び権利関係の存在又は不存在を表明し、その内容がxxかつ正確であることを保証することをいい、xxの契約実務では広く普及している条項である が、我が国の契約実務でも近年広く浸透してきている。表明及び保証には、いくつかの機能が認められるが、契約の前提として必要とされる各契約当事者に関する事実及び権利関係を列挙し、かかる必要事項が確認されることで契約を締結するための前提が確認されることが、第一の意義として考えられる。本契約では、無限責任組合員が、外国組合員が税制特例の適用を受けることを前提とした対応を行うことについて、外国有限責任組合員が、税制特例の適用を受けるための要件を具備していることを表明保証しており(第 31 条第 4 項)、また、無限責任組合員が、適格機関投資家等特例業務として組合持分の取得勧誘及び組合財産の運用行為を行うために、有限責任組合員が、そのために満たす必要のある法令上の要件を具備していることを表明保証しており(第 52 条第 1 項及び第 3 項)、その他にも、各組合員が、反社会的勢力との関係排除に関する表明保証を行っている(第 53 条)。なお、表明保証条項に加え、事実及び権利関係として表明保証した内容がxx又は正確でない場合 で、それに起因して他の当事者に損害が生じた場合には、補償条項(indemnification)により補償義務を負うことが定められることが多いが、本契約でも、第 54 条において補償条項を置いている。
第 41 条 脱退組合員の持分及び責任
組合員が本組合を脱退する場合、脱退組合員は、脱退の時点における当該組合員の持分金額に相当する金額の払戻しを受けるものとする。無限責任組合員は、かかる持分金額の払戻しを、第 29 条に従い他の組合員に対し組合財産の分配を行う場合に、その都度、同条に従い当該脱退組合員に対しても現金又は投資証券等の現物をその累計額が脱退の時点における当該脱退組合員の持分金額に達するまで分配し、これを持分金額の払戻しにあてる方法により行うものとする。
【第 41 条解説】
1. 第 41 条は脱退組合員の持分の取扱いにつき規定する。実際上、即座に脱退した組合員に対する持分金額の払戻しにあてることは難しいため、脱退組合員も、脱退の当時の持分金額をもって、その後の第 29 条の規定に従った組合員に対する分配の都度xx払戻しを受けることと規定している。
すなわち、一般に、脱退組合員の組合に対する持分払戻請求権は脱退時に組合に対する債権として成立し、特段の定めがなければ期限の定めのない債権として、脱退組合員が催告したときから遅滞となると考えられているが、本契約はかかる持分払戻請求権の期限を定めるものである。第 41 条のような定めは、組合員の脱退自体を制限するものではないので、有効と考えられる。
2. また、除名による脱退等、一定の場合には、脱退組合員に払い戻す金額を、脱退の時における脱退組合員の持分金額に一定割合(例えば、50~70)を乗じた金額に減額することも許容されると考える。
第 42 条 組合員の地位の変動の通知
有限責任組合員は、自己に関し本章に規定する組合員の地位の変動があった場合、速やかに無限責任組合員にかかる変動を書面で通知するものとする。
【第 42 条解説】
第 42 条は、有限責任組合員の地位の譲渡、加入、脱退等組合員の地位の変動の通知につき規定する。
第 11 章 解散及び清算
第 43 条 解 散
1. 本組合は、下記のいずれかの事由に該当する場合、解散するものとする。
① 本組合の存続期間の満了。
② 無限責任組合員が、総有限責任組合員の出資口数の合計の[ ]分の[ ]以上に相当する出資口数を有する有限責任組合員の同意を得た上、本組合が第 5 条に定める本組合の事業の目的を達成し又は達成することが不能に至ったと決定したこと。
③ 有限責任組合員の全員の脱退。
④ 無限責任組合員が脱退した日から 2 週間以内であって本組合の解散の登記がなされる日までに、有限責任組合員の全員一致により、後任の無限責任組合員が選任されないこと。
⑤ 有限責任組合員の全員一致により本組合の解散が決定されたこと。
⑥ 全ての有限責任組合員が適格機関投資家でなくなり、本組合を適法に運営することが困難であると無限責任組合員が判断した場合。
2. 組合員が本組合の解散前に本組合に対し負担していた債務は、本組合の解散によってその効力に影響を受けないものとする。
3. 本組合が解散した場合、清算人は、有限責任組合法第 21 条に従い、解散の登記をするものとする。
【第 43 条解説】
1. 有限責任組合法第 13 条は、解散の事由として、「目的たる事業の成功又はその成功の不能」、
「無限責任組合員又は有限責任組合員の全員の脱退」、「存続期間の満了」及び「組合契約で前三号に掲げる事由以外の解散の事由を定めたときは、その事由の発生」を規定する。第 43 条第 1 項は、かかる法条に基づき、解散事由について規定する。
2. 登記実務において、存続期間の満了により解散する場合、解散の日は当該満了日の翌日とされる。
3. 有限責任組合法第 13 条第 1 号は、「目的たる事業の成功又はその成功の不能」を解散事由とするが、実務的には客観的に「目的たる事業の成功又はその成功の不能」が発生したか否かを判断することは難しい面がある。そのため、第 43 条第 1 項第②号のように、一定の持分割合を有する有限責任組合員の同意を得て、無限責任組合員が事業の目的を達成し又は達成することが不能に至ったと決定したことを解散事由として規定するのが一般的である。かかる解散事由は、有限責任組合法第 13 条第 4 号に掲げる組合契約で定めた解散事由となるため、登記することが必要である(有限責任組合法第 17 条第 4 号)。なお、理論的には、第 43 条第 1 項第②号に掲げる無限責任組合員の決定がなされない場合であっても、客観的に「目的たる事業の成功又はその成功の不能」が発生したときは、有限責任組合法第 13 条第 1 号に基づき組合は解散しなければならないことになるので、留意が必要である。
4. 有限責任組合法第 13 条第 2 号は「無限責任組合員又は有限責任組合員の全員の脱退」を解散事由と規定するが、同条但書きでは、その事由が生じた日から 2 週間以内であって解散の登記をする日までに、残存する組合員の一致によって新たに無限責任組合員又は有限責任組合員を加入させたときは、この限りでない旨規定されている。本契約においては、有限責任組合員の全員が脱退した場合には直ちに解散事由とされ、他方、無限責任組合員が脱退した場合には、第 37 条第 4 項をうけて有限責任組合員が全員一致で無限責任組合員を選任するとの手続規定によっても後任の無限責任組合員が選任されないことを要件としている。
5. 全組合員の同意は解散事由になると解されるが(新版注釈民法(17)183 頁)、第 43 条第 1 項第
⑤号は、無限責任組合員の同意がなくとも、有限責任組合員の全員一致による解散を認めている
(no fault divorce 条項に関する第 10 条解説 2.参照)。
6. 本組合の運用は適格機関投資家等特例業務として行うことを前提としていることから、「全ての有限責任組合員が適格機関投資家でなくなり、本組合を適法に運営することが困難であると無限責任組合員が判断した場合」を解散事由に加えている。
7. 他に契約で定めることが考えられる解散事由としては、例えば「総組合員の総出資口数の
[ ]分の[ ]以上に相当する出資口数を有する組合員との関係で本契約が無効とせられ又は取消された場合」というものがある。
8. 第 43 条第 2 項は、各組合員が組合に対して負担する債務が、組合の解散によっても影響を受けず存続することを確認した規定である。当該債務を負担する組合員は、清算中の組合に対してこれを履行することになる。
第 44 条 清算人の選任
1. 第 43 条第 1 項第④号に規定される無限責任組合員の脱退以外の事由により本組合が解散した場合、無限責任組合員が清算人となる。無限責任組合員の脱退による本組合の解散の場合、総有限責任組合員の出資口数の合計の[ ]分の[ ]以上に相当する出資口数を有する有限責任組合員の合意をもって清算人を選任する。
2. 清算人は、その役務の提供に対し、適正な報酬を得ることができる。
3. 清算人の選任があった場合、清算人は、有限責任組合法第 22 条に従い、清算人の氏名又は名称及び住所を登記するものとする。
【第 44 条解説】
1. 第 44 条は、解散した場合の清算人の選任、その報酬及び清算人の選任の登記につき規定する。
2. 清算人の報酬額については、実務上問題となることが多いようであり、清算期間中、管理報酬
及び成功報酬の扱いがどのようになるか、組合契約においてより具体的に規定を設けることが望ましいと考えられる。具体的な規定を検討するに際しては例えば以下の要素等を考慮することが考えられる。
① 無限責任組合員が清算人に就任する場合とそれ以外の者が清算人に就任する場合を分ける。
② (無限責任組合員が清算人に就任する場合には特に問題とはならないが)第 33 条第 3 項に規定する成功報酬は清算人ではなく、無限責任組合員に帰属することを明確にする。この場合、クローバック条項も無限責任組合員について適用されるべきこととなる。なお、無限責任組合員以外の者が清算人に就任する場合、清算人が投資証券等の処分を行うことに鑑み、第 33 条第 3 項に規定する成功報酬の調整の仕組みを設けることも検討に値すると考える。
③ 清算人に組合財産をより高い価格で処分するインセンティブを付与するための仕組みを取り入れる。例えば、報酬の全部又は一部を、組合財産の処分価格に応じて増減させる。
④ 清算人に清算結了をより早く行うインセンティブを付与するための仕組みを取り入れる。例えば、(a)報酬の支払時期を清算結了時(その直前)とする、(b)報酬算定に用いる料率を、清算期間が長期化するに従い逓減させる。
⑤ 無限責任組合員以外の者が清算人に就任する場合、その報酬額は就任時の合意により決定されるべきことになり、当該合意において上記②から④までを考慮することが考えられるが、組合契約においても清算人の報酬の上限を設定しておく。
第 45 条 清算人の権限
清算人は下記の事項に関し、職務を執行し、本組合を代表する裁判上及び裁判外の一切の権限を有する。
① 現務の結了
② 債権の取立て及び債務の弁済
③ 組合員への本組合の残余財産の分配
④ その他上記の職務を行うため必要な一切の行為
【第 45 条解説】
第 45 条は、有限責任組合法第 16 条が準用する民法第 688 条第 1 項及び第 2 項をうけて、清算人の権限につき規定する。
第 46 条 清算手続
1. 清算人は就任後遅滞なく組合財産の現況を調査し、財産目録及び貸借対照表を作成し、財産処分の具体案を定め、これらの書類を組合員に送付するものとする。当該組合財産の現況調査及び評価額の算定に関し、清算人は、弁護士、公認会計士、税理士、鑑定人、アドバイザーその他の専門家を本組合の費用で選任することができる。
2. 清算人は、その就任後速やかに、組合財産から一切の組合債務及び清算手続に要する費用等を弁済した残余財産を、第 29 条第 2 項及び第 3 項に規定する組合員等への組合財産の分配割合に準じて、組合員等に対し分配するものとする。但し、債務の存在又はその額につき争いがある場合、清算人は、その弁済に必要と認める財産を留保した上で、その余の残余財産を分配することができる。その他清算に関する事項は全て、清算人がその裁量により適切と考える方法で行うものとする。
3. 清算人は、本組合の清算を結了したときは、有限責任組合法第 23 条に従い、清算結了の登記をするものとする。
4. 第 4 条第 2 項及び第 3 項、第 14 条、第 15 条、第 18 条第 2 項、第 3 項及び第 6 項、第 21 条、第 23 条、第 31 条、第 32 条、第 35 条、第 48 条、第 49 条、第 50 条並びに第 53 条第 2 項の各規定は清算人に準用する。
【第 46 条解説】
1. 第 46 条は、清算手続につき規定する。
2. 第 1 項及び第 2 項は、清算人の職務として、組合財産の現況調査、財産目録及び貸借対照表の作成、財産処分の具体案の決定、組合員への書類送付、残余財産分配を規定するが、組合財産の状況は組合によって千差万別であるため、その他清算に関する事項は全て、善管注意義務のもとにおける清算人の裁量に委ねられている。免除/除外条項の有無、第 44 条において清算期間における成功報酬の取扱いをどのように規定するかに応じて、第 46 条第 2 項をより詳細に規定することが考えられる。
第 47 条 清算方法
1. 本組合の解散の場合に、本組合の残余財産中に、投資証券等又は投資知的財産権が残存する場合、清算人は、その裁量により、当該投資証券等が市場性のある有価証券であるか否かを問わず、以下のいずれかの方法を選択することができるものとする。
① 当該投資証券等の現物により分配する方法。
② 当該投資証券等又は投資知的財産権を売却し、その売却手取金から当該売却に要した費用及び公租公課を控除した残額を分配する方法。
2. 前項による分配につき、第 29 条第 5 項及び第 8 項から第 10 項までの規定を準用する。
【第 47 条解説】
1. 第 47 条は、本契約の清算方法として、現物分配と売却という二つの方法のいずれかを清算人が選択できる旨規定する。なお、本組合の存続期間が満了するに際して、売却すべき組合財産が多く残されているような場合には、無限責任組合員は、第 6 条第 2 項により本組合の存続期間を延長することも可能である。
2. 上記のほか、組合の存続期間の満了後に、未処分の投資証券等が存する場合の対応策として、清算人が売却又は現物分配のいずれを選択するかを直ちに決定せず、その決定を将来に延期する旨明示的に規定することもある。
3. 有限責任組合員の中に銀行、銀行持株会社若しくは保険会社(又はそれらの子会社)が含まれる場合、投資証券等を取得することとなった日から 10 年間を超えて当該投資証券等を所有する(ないし議決権を保有する)場合、銀行法、保険業法又は独占禁止法の議決権保有制限規制の適用除外に該当しないこととなる(第 6 条解説参照)。従って、かかる場合に対処するため、清算手続においても投資証券等の取得日から 10 年以内に売却又は現物分配が行われるように、第 1 項但書きとして、「但し、当該投資証券等については、その所有することとなった日から 10 年以内に以下のいずれかの方法により現物の分配又は売却を完了しなければならない。」という規定をおくことが考えられる。
第 12 章 雑 則
第 48 条 許認可等
1. 本組合による投資先事業者等の投資証券等又は投資知的財産権の取得又は処分等に関し、日本国又は外国の適用法令に基づき、組合員のいずれかについて許可、認可、承認、届出、報告その他の手続が必要とされる場合、有限責任組合員は、自ら又は無限責任組合員の指示に従い、かかる手続を行い、かかる手続の完了後速やかにその旨を無限責任組合員に報告するものとする。この場合、無限責任組合員は、当該有限責任組合員のために当該有限責任組合員の費用でかかる手続をなす権限を有するものとし、無限責任組合員がかかる手続を行うときは、当該有限責任組合員は無限責任組合員に協力するものとする。
2. 無限責任組合員は、前項の手続が投資証券等又は投資知的財産権の取得又は処分等の前に必要である旨了知した場合には、当該手続が完了するまで投資証券等又は投資知的財産権を取得又は処分等してはならないものとする。
3. 組合員は、本組合の事業に関して組合員に対し適用される日本国及び外国の適用法令に基づく諸規制を遵守するものとし、無限責任組合員は、組合員のために必要な手続を、当該組合員の費用で合理的に可能な範囲内で履行する権限を有するものとする。
【第 48 条解説】
1. 第 48 条は、許認可等につき規定する。
2. 第 48 条第 1 項は、組合員に係る許認可等の手続が投資証券等又は投資知的財産権の取得又は処分について必要な場合に、当該手続が必要とされる有限責任組合員の履行義務及び報告義務を規定するとともに、無限責任組合員が当該手続を代行する権限と有限責任組合員の協力義務を規定している。
3. 第 48 条第 2 項は、事前の手続が必要な場合には、無限責任組合員が投資証券等又は投資知的財産権の取得又は処分は手続完了後に行うべきことを規定している。
4. 第 48 条第 3 項は、各組合員の法令遵守を規定するとともに、無限責任組合員が各組合員のために必要な手続を代行する権限を一般的に規定している。
第 49 条 通知及び銀行口座
1. 本契約に基づく全ての通知又は請求は、手渡しにより交付するか、郵便料金前払の郵便(海外の場合は航空便)若しくはファクシミリ(但し、ファクシミリの場合は直ちに郵便料金前払の郵便で確認することを条件とする。)により、本契約添付別紙 1 記載の各組合員の住所若しくはファックス番号(又は組合員が随時変更し、その旨を本項に定める方法に従い無限責任組合員に通知したその他の住所若しくはファックス番号)に宛てて発送するものとし、かつそれをもって足りるものとする。本項に規定する郵便による通知又は請求は発送の日から[ ]日後に、またファクシミリによる通知又は請求は発送の時に到達したものとみなされる。
2. 本組合と組合員との間の本契約に基づく金銭の授受は、本契約添付別紙 1 記載の各組合員の銀行口座(又は組合員が随時変更し、その旨を前項に定める方法に従い無限責任組合員に通知したその他の銀行口座)を通じて振込送金の方法により行うものとし、かつそれをもって足りるものとする。
3. 前項の振込送金に係る振込手数料は[送金者/各組合員]の負担とする。
【第 49 条解説】
1. 第 49 条第 1 項は、通知につき規定する。通知の方法としては、手渡しによる交付と郵便とファクシミリによる送付を定めている。また、通知先として別紙 1 記載の組合員住所に対して発送すれば、有効な通知となり、不着等のリスクから免責されることも定めている。ファクシミリによる場合は、事後に郵便で確認することを条件として、発送時に到達したものとみなされる。なお、電子メールによる通知を認める場合には、ファクシミリによる場合と同様の方法を契約で定めることも考えられるが、不着、機器・ソフトウエアの不具合、閲覧されないこと等の事実上のリスクについても留意した規定とする必要があろう。
2. 第 49 条第 2 項は、組合と組合員間の金銭授受の方法につき規定する。金銭授受の方法としては、銀行口座を通じて振込送金の方法により行うものとし、また、別紙 1 記載の届出口座に対して送金すれば足りる。
3. 第 49 条第 3 項は、同条第 2 項に定める振込送金手数料の負担者を定める。
第 50 条 秘密保持
1. 有限責任組合員は、(ⅰ)本組合に関して本組合、他の組合員若しくは投資先事業者等から受領した情報、及び(ⅱ)本契約に基づき又は有限責任組合員たる地位に基づき若しくは有限責任組合員に本契約において与えられたいずれかの権利の行使により取得した情報(第 25 条に定める財務諸表等及び半期財務諸表等を含む。)を、第三者に対し開示又は漏洩してはならないものとし、また、かかる情報を本契約に定められる目的以外のために使用してはならないものとする。但し、かかる情報には、(ⅰ)受領時に既に公知であったもの、(ⅱ)受領時に当該有限責任組合員が既に保有していたもの、(ⅲ)当該有限責任組合員が受領した後に当該有限責任組合員の責に帰すべき事由によらず公知となったもの、(ⅳ)当該有限責任組合員が、秘密保持義務を負うことなく、第三者から正当に入手したもの及び(ⅴ)無限責任組合員が開示することを承認したものは含まれないものとする。
2. 無限責任組合員は、(ⅰ)本組合に関して有限責任組合員から受領した情報、及び(ⅱ)本契約に基づき又は無限責任組合員たる地位に基づき若しくは無限責任組合員に本契約において与えられたいずれかの権利の行使により取得した有限責任組合員に関する情報を、第三者に対し開示又は漏洩してはならないものとし、また、かかる情報を本契約に定められる目的以外のために使用してはならないものとする。但し、かかる情報には、(ⅰ)受領時に既に公知であったもの、(ⅱ)受領時に無限責任組合員が既に保有していたもの、(ⅲ)無限責任組合員が受領した後に無限責任組合員の責に帰すべき事由によらず公知となったもの、(ⅳ)無限責任組合員が、秘密保持義務を負わない第三者から正当に入手したもの及び(ⅴ)当該有限責任組合員が開示することを承認したものは含まれないものとする。
3. 前二項にかかわらず、無限責任組合員及び有限責任組合員は、法令、行政庁、裁判所、金融商品取引所若しくは認可金融商品取引業協会により開示することが組合員、本組合若しくは投資先事業者等に対して要請される場合、投資証券等の上場若しくは店頭登録のための引受証券会社による審査に服するために必要な場合、又は弁護士、公認会計士、税理士並びに前二項に規定するのと同等の義務を負う鑑定人、アドバイザーその他の専門家に開示する場合、当該情報を開示することができる。
4. 組合員は、その役員、職員、従業員及び代理人が、前三項に規定する義務を確実に遵守するようにさせるものとする。組合員の役員、職員、従業員又は代理人によるかかる義務の違反は、当該組合員による前三項に規定する義務の違反とみなす。
5. 組合員が故意又は過失により本条に違反して本組合に損失を与えた場合、当該組合員はかかる損失を補填するものとする。
【第 50 条解説】
1. 第 50 条は、組合の運営に関して伝達される情報に関する秘密保持につき規定する。
2. 有限責任組合員は、第 50 条第 1 項により、組合を通じて得られた情報について秘密保持と他目的利用禁止の義務を負う。秘密保持義務の適用除外となる場合は、同項但書きと第 3 項に定める場合である。
3. 無限責任組合員は、第 50 条第 2 項により、組合を通じて得られた有限責任組合員に関する情報について秘密保持と他目的利用禁止の義務を負う。秘密保持義務の適用除外となる場合は、同項但書きと第 3 項に定める場合である。特に、近時は行政当局や金融商品取引所から有限責任組合員について一定の情報の提供を求められる場合があり、組合契約上はこれに対応できるようにしておくことが重要となろう。
4. 第 50 条第 4 項は、組合員の役職員等による秘密保持と他目的利用禁止の義務の遵守を担保するための規定である。
第 51 条 金融商品取引法等に係る確認事項
1. 有限責任組合員は、その組合員たる地位に係る取得の申込みの勧誘が、金融商品取引法第 2 条第 3 項第 3 号に該当せず、金融商品取引法第 23 条の 13 第 4 項に定義される少人数向け勧誘に該当することにより、当該取得の申込みの勧誘に関し、金融商品取引法第 4 条第 1 項の規定による届出が行われていない旨を、無限責任組合員より告知を受けたことを、本契約書をもって確認する。
2. 有限責任組合員は、その組合員たる地位が、特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令第 1条第 5 号の 2 イに掲げる内国有価証券投資事業権利等に該当する特定有価証券であり、当該組合員たる地位は金融商品取引法第 2 条第 2 項第 5 号に掲げる権利に該当する旨を、無限責任組合員より告知を受けたことを、本契約書をもって確認する。
3. 有限責任組合員は、本契約書が金融商品取引法第 23 条の 13 第 5 項に規定する書面に該当すること及び本契約書に署名又は記名捺印した上で有限責任組合員がその副本 1 通を保有する方法により、有限責任組合員がかかる書面の交付を受けたことを、本契約書をもって確認する。
4. 有限責任組合員は、本契約に基づく本組合に対する出資に伴い、その元本欠損が生じるおそれがあることその他金融商品の販売等に関する法律(平成 12 年法律第 101 号、その後の改正を含む。)第 3 条第 1 項に定める重要事項について、無限責任組合員より十分な説明を受け、当該重要事項について記載された書面の交付を受けたことを、本契約書をもって確認する。
5. 有限責任組合員は、犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成 19 年法律第 22 号、その後の改正を含む。)第 4 条第 1 項並びに同法施行規則(平成 20 年内閣府・総務省・法務省・財務省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省・国土交通省令第 1 号、その後の改正を含む。)第 3 条及び第 4 条に基づき、本契約の締結に際して無限責任組合員に提示する当該有限責任組合員の設立の登記に係る登記事項証明書その他の本人確認のための書類の記載内容が効力発生日において正確であることを、本契約書をもって確認する。
【第 51 条解説】
1. 本契約は、本組合の組成が金融商品取引法第 63 条第 1 項第 1 号に掲げる行為として行われる
(適格機関投資家等特例業務として行われる。)を前提として作成している。従って、本組合組成時の無限責任組合員による有限責任組合員への勧誘は、同法第 2 条第 3 項第 3 号に掲げる場合に該
当しない「私募」であり、その勧誘に際しては同法第 23 条の 13 第 4 項に定める告知義務及び同条
第 5 項に定める書面の告知義務を履行しなければならない。第 51 条第 1 項から第 3 項までは、これらの義務が履行されたことを有限責任組合員が確認する旨の規定である。
2. 無限責任組合員が有限責任組合員に組合持分を取得させる行為は、金融商品の販売等に関する
法律(以下「金融商品販売法」という。)第 2 条第 1 項第 5 号に該当し、金融商品の販売となる。
従って、無限責任組合員は金融商品販売業者等(金融商品販売法第 2 条第 3 項)として、組合契約
締結までに、有限責任組合員に対し、元本欠損が生じるおそれがある旨、その他の同法第 3 条第 1項各号に掲げる重要事項(リスク情報)について説明をしなければならない(同法第 3 条第 1項)。また、実務では、かかる重要事項を記載した書面を無限責任組合員が有限責任組合員に対して組合契約締結前に交付をすることが一般的である。第 51 条第 4 項は、無限責任組合員から重要事項について十分な説明を受け、重要事項が記載された書面の交付を受けたことを有限責任組合員が確認する旨の規定である。
なお、金融商品販売法第 3 条第 7 項は、顧客が金融商品の販売等に関する専門的知識及び経験を有
する者として同法施行令第 10 条に定める者(特定顧客)である場合(同項第 1 号)、並びに、重要
事項について説明を要しない旨の顧客の意思表明があった場合(同項第 2 号)、金融商品販売法第 3
条第 1 項を適用しない旨を定める。かかる適用除外を利用する場合には、組合契約において、有限責任組合員が、特定顧客であることを表明保証する規定、又は重要事項について説明を要しない旨の意思表明を行ったことを確認する規定を定めることが考えられる。
3. 金融商品取引法第 2 条第 9 項に規定する金融商品取引業者及び同法第 63 条第 3 項に規定する特例業務届出者は、犯罪による収益の移転防止に関する法律(以下「犯罪収益移転防止法」という。)に規定する特定事業者に該当し(犯罪収益移転防止法第 2 条第 2 項第 20 号、第 22 号)、無限責任組合員が有限責任組合員と組合契約を締結するに際しては、本人特定事項の確認を行わなければならない(犯罪収益移転防止法第 4 条、同法施行令第 7 条第 7 号、第 8 号、第 8 条第 1 項第 1号リ、同法施行規則第 3 条、第 4 条)。第 51 条第 5 項は、有限責任組合員が、本人確認のために無限責任組合員に提示した書類の記載内容が組合契約締結日において正確であることを確認する旨の規定である。
第 52 条 適格機関投資家等特例業務に関する特則
1. 有限責任組合員は、無限責任組合員に対し、組合員となった日において不適格投資家のいずれにも該当していないことを表明し、保証する。
2. 有限責任組合員は、組合員たる地位にある間、不適格投資家のいずれにも該当することになってはならないものとし、前項の表明及び保証がxx若しくは正確でないことが判明した場合、又は不適格投資家のいずれかに該当することとなった場合は、直ちに無限責任組合員に通知するものとする。
3. 適格機関投資家として本組合に加入する有限責任組合員は、無限責任組合員に対し、組合員となった日において、適格機関投資家であることを表明し、保証する。
4. 前項に定める有限責任組合員は、組合員たる地位にある間、法令の変更に基づく場合及び無限責任組合員の事前の書面による承諾がある場合を除き、適格機関投資家であり続けるものとし、前項の表明及び保証がxx若しくは正確でないことが判明した場合、又は適格機関投資家でなくなった場合は、直ちに無限責任組合員に通知するものとする。
【第 52 条解説】
本契約は、本組合の組成・運用が金融商品取引法第 63 条第 1 項に該当する行為(適格機関投資家
等特例業務として行われる。)ことを前提として作成している。第 52 条は適格機関投資家等特例業務の要件を充足することを担保するための規定である(第 35 条解説 6.参照)。
第 53 条 反社会的勢力等の排除
1. 組合員は、反社会的勢力ではないこと、並びに反社会的勢力に対する資金提供若しくはこれに準
ずる行為を通じて反社会的勢力の維持、運営に協力又は関与していないこと、反社会的勢力と交流を持っていないことを表明し、保証する。
2. 組合員は、組合員たる地位にある間、反社会的勢力の維持、運営への協力又は関与を行わず、交流を持たないことを誓約し、前項の表明若しくは保証がxx若しくは正確でないことが判明した場合、又はかかる協力、関与又は交流の事実が生じた場合には、無限責任組合員(無限責任組合員である場合は有限責任組合員全員)に対し、直ちにその旨及びその内容を通知し、可能な限り速やかに事実関係を把握及び確認し、無限責任組合員(無限責任組合員である場合は有限責任組合員)に対し、当該事実関係を通知するものとする。
【第 53 条解説】
昨今、企業と反社会的勢力との断絶が強く求められており、金融商品取引所の規則、日本証券業協会の規則や金融機関の監督指針等において反社会的勢力の排除のための措置が求められることから、反社会的勢力との断絶に係る組合員の表明・保証、誓約、通知義務を第 53 条は規定する。な
お、反社会的勢力の定義は、日本証券業協会の定款の施行に関する規則第 15 条を参考にしている。
第 54 条 表明保証等の違反による補償
組合員は、自らの第 31 条第 4 項、第 52 条第 1 項若しくは第 3 項又は第 53 条第 1 項における表明及
び保証がxxではなく又は正確でないこと、その他第 31 条第 3 項から第 6 項まで、第 52 条又は第 53 条の規定に違反したことにより、本組合若しくは被補償者が費用を負担し、又は損害、損失等を被った場合(自らの固有財産をもって本組合の債務を弁済した場合を含む。)、本組合又は被補償者に対し、かかる費用、損害、損失等を補償するものとする。
【第 54 条解説】
第 54 条は、組合員が本契約上の表明保証等の違反が生じた場合の補償義務について規定してい
る。なお、表明保証及び補償については、第 40 条の解説参照。
第 55 条 本契約の変更
1. 本契約は、無限責任組合員が、その裁量により、総有限責任組合員の出資口数の合計の[ ]分の[ ]以上に相当する出資口数を有する有限責任組合員の同意を得て適宜変更することができる。但し、組合員の出資約束金額の変更は当該組合員の同意がなければ行うことができないものとする。
2. 前項にかかわらず、有限責任組合員の有限責任性に影響を与え得る本契約の変更は、組合員全員の合意がなければ行うことができないものとする。
3. 前二項にかかわらず、無限責任組合員は、有限責任組合員の同意なくして、(ⅰ)自らの義務を加重し、又は権利を縮減するための変更、及び(ⅱ)本契約の条項の明白な過誤を訂正することができる。
【第 55 条解説】
1. 第 55 条は、本契約の変更の方法につき規定する。
2. 第 55 条第 1 項但書きは、組合員の出資約束金額の変更について、組合員の一定割合の賛成があ
ることに加え、当該組合員の同意も要件としている。
第 56 条 本契約の有効性、個別性
1. 本契約のいずれかの規定が無効であっても、本契約の他の規定はそれに何ら影響を受けることなく有効であるものとする。
2. 本契約がいずれかの組合員との関係で無効であり又は取消された場合でも、本契約は他の組合員との関係では完全に有効であるものとする。
【第 56 条解説】
1. 第 56 条は、本契約の有効性及び個別性につき規定する。
2. 第 56 条第 2 項については、無効・取消事由の生じた者が、無限責任組合員、アンカーインベスター(組合の信用を増大させる等の目的で出資を行う、無限責任組合員と特別な関係等を有する有限責任組合員)又は適格機関投資家等特例業務に関して唯一の適格機関投資家である有限責任組合員である場合には、組合契約全体を無効・取消しとする旨を規定することも考えられる。また、組合契約全体を無効・取消しとする場合であっても、無効・取消しの主張が第三者との取引開始後
(組合による投資実行後等)になされたときは、当該無効・取消しの効果は将来に向かってのみ生じる旨を規定することも考えられる。
3. 海外のプライベート・エクイティ・ファンドにおいては、組合契約とは別に、組合契約の規定とは異なる取扱いを希望する有限責任組合員は、個別に無限責任組合員とサイドレターと称する契約を締結する慣行がある。かかるサイドレターの存在を許容する場合には、投資者に対して、あらかじめ組合契約において、各有限責任組合員が無限責任組合員とサイドレターを締結できる旨を明記するとともに、サイドレターをもって変更できない組合契約の条項を特定する規定を設けることがある。
第 57 条 言語、準拠法及び合意管轄
1. 本契約は、日本語で作成される。本契約の外国語訳が作成される場合であっても、当該外国語訳と原本との間で意味又は意図に矛盾又は相違がある場合は、原本が優先する。
2. 本契約は、日本法に準拠し、日本法に従い解釈されるものとする。
3. 本契約に基づき又は本契約に関して生じる全ての紛争は、東京地方裁判所をその第xxにおける専属的合意管轄裁判所とする。
【第 57 条解説】
1. 第 57 条は、言語、準拠法及び合意管轄につき規定する。
2. 海外の投資家が組合に参加するとしても、当該投資家の本店所在地など海外で訴訟を行うことは、他の国内の組合員にとっては非常に煩瑣であるため、日本国内の裁判所を専属的合意管轄裁判所として指定することが望ましいと考えられる。他方、海外の投資家の利害にも配慮の上、仲裁合意に関する規定を設けることも考えられる。
本契約成立の証として、平成[ ]年[ ]月[ ]日付で本契約書原本 1 通を作成し、各組合員がこれに署名又は記名捺印したうえ、無限責任組合員はこれを、有限責任組合員の各自はその副本をそれぞれ保有する。
組合員
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別紙 1
組合員名簿
氏名又は 名称 | 住 所 | 電話番号 ファクシミリ番号 | 銀行口座 | 無限責任組合員と有限 責任組合員との別 | 出資口数 |
別紙 2
投資ガイドライン(例)
1. 投資先事業者等発掘プロセス
2. 投資先事業者等選定基準(地域、業種、規模、成長段階等)
3. 投資種類決定基準
4. 投資規模決定基準
5. 投資先事業者育成方針
6. 無限責任組合員及び他ファンドとの共同投資
7. 投資回数(時期、方法)
別紙 3
投資資産時価評価準則
※ 平成 10 年 5 月通商産業省「投資事業組合の運営方法に関する研究会報告書」資料 6「投資事業有限責任組合における有価証券の評価基準モデル」(xxxx監査法人作成)によっている(なお、その後の法改正に伴う用語の修正を加えている。)。
無限責任組合員は、投資事業有限責任組合の財産及び損益の状況を算定するために、投資先企業への投資資産について適正な評価額を付さなければならない。その評価額は、「市場性」ないしは「客観的な事象」に基づく価額とすべきである。但し、市場性のない有価証券を評価減とする場合、組合員が評価時点で受取れると合理的に期待できる金額(回収可能価額)と客観的な事象に基づく金額とを比較していずれか低い価額を付さなければならない。
市場性のある有価証券 | 市場性のない有価証券 | |
評価増 | 決算日の最終の価格等 | 直近ファイナンス価格 |
評価減 | 決算日の最終の価格等 | 直近ファイナンス価格又は回収可能価額のいずれか低い価額 |
1. 決算日の最終の価格等とは以下の価格とする。
① 金融商品取引所に上場されている有価証券は、主要な一金融商品取引所における最終の価格
(決算日に公表される最終の価格がない場合、同日前直近において公表された最終の価格)とする。
② 店頭売買有価証券は、日本証券業協会が公表する最終の売買価格(売買価格がない場合、売り気配の最安値又は買い気配の最高値とする。)とする。
③ 上記以外の有価証券で市場性のあるものは、公表されている価格、売買価格又は気配等とする。
④ 市場性のある有価証券で、権利落ちのあった株式で事業年度終了の日において当該株式に係わる新株の発行がなされていないものについては、最終の価格に当該株式の権利の価格に相当する金額を加算した金額とする。
2. 直近ファイナンス価格は、新株の種類、株式数、発行価額、引受人を勘案し、適正な価格で実施したものと認められる場合に限られるものとする。
3. 評価額には、委託手数料等の取引に付随して発生する費用は含めないものとする。
4. 外貨建有価証券は決済日の直物為替相場を用いて換算する。但し、為替予約が付されている場合には、当該予約相場を用いて換算するものとする。
5. 有価証券の流動性等を勘案し、最終の価格等から割り引き評価することが望ましい。
6. 株主割当増資、株式分割等が実施された場合には、一株あたりの評価額を見直すものとする。なお、潜在株式がある場合にはその行使価格を考慮して一株あたりの評価額を算定しなければならない。
7. 新株予約権、新株予約権付社債等は直近に行われたファイナンス価格に基づき算定した価額とする。
8. 市場性のない有価証券を発行する投資先企業において、業績が見込みより悪化している場合に は、評価減を検討する必要がある。また、投資直後においても、業績が見込みより著しく悪化している場合には、評価減を検討する必要がある。
9. 回収可能価額を下記の区分に応じた簡便的な方法により見積ることも認められる。
ランク | 状況 | 評価額 |
A | 投資の短期的な状況について懸念がある場合 | 取得価額の 75 |
B | 投資の長期的な状況について懸念がある場合 | 取得価額の 50 |
C | 業績回復のため梃入れしなければ投資原価が回収できないと懸念される場合 | 取得価額の 25 |
D | 投資原価が回収される見込みがなくなった場合 | 備忘価額 |
10. 状況を具体的に例示すれば、下記のとおりである。なお、その他資産価値に影響を与えると思われる事象についても考慮する。
① 投資の短期的な状況について懸念がある場合としては、
• 業績が見込みより悪化
• 事業計画が達成されていない
• 業績が改善する見込みが不明
• 資金繰りが悪化
② 投資の長期的な状況について懸念がある場合とは、
• 事業計画の実現が困難で、大幅な見直しが必要と判断される
• 投資時点より純資産が半分以下となっている
• 業績が回復する見込みが乏しい
• 資金繰りが不透明
③ 業績回復のため梃入れしなければ投資原価が回収できないと懸念される場合とは、
• 債務超過の状態が 3 年以上継続
• 業績が回復する見込みがない
• 事業計画の実現は不可能である
• 資金繰りがいきづまる見込みがある
④ 投資原価が回収される見込みがなくなった場合とは、
• 民事再生法・会社更生法申請
• 銀行取引停止
• 営 業 停 止
• 経営者と音信不通
• 破 産
【別紙 3 解説】
1. 別紙 3 は、第 25 条第 2 項の規定に基づき、組合の附属明細書の記載に関して、組合が保有する投資資産の時価評価の準則を規定する。
2. 組合会計規則第 19 条は、組合の附属明細書において、投資の明細及び投資の時価の明細を記載することとしている。その投資の時価の評価方法については、貸借対照表の記載に関する組合会計規則第 7 条において、原則として組合契約に定めるところによることとされている。従って、組合の投資資産の時価の評価方法については、各組合員の合意により、組合契約において自由に決定することができる。
本契約では、組合の投資資産の時価評価方法として、別紙 3 において有価証券の時価評価方法を規定している。なお、組合の投資資産としては、有価証券のほかにも金銭債権、匿名組合出資、知的財産xxが含まれることがある。その場合には、別紙 3 においてそれらの資産の時価評価方法についても規定しておく必要があろう。
3. なお、投資資産に属さない余裕金等その他の資産の時価評価方法については、一般にxx妥当と認められる企業会計の基準に従うこととなる。
別紙 4
累積内部収益率計算方法書
累積内部収益率の算式は以下のとおりとする。
Vn
m Cj
Vo =
(1+r)tn + Σ
j=0
(1+r)tj
Vo: 当初出資金(円)
Vn: 第 n 事業年度末の組合財産の残存価額(円)
Cj: j 番目の分配額(円)
tj: 本組合の設立時から j 番目の分配までの期間(日割で計算の上、年単位で表示する。)
r: 内部収益率(IRR)
tn : 本組合の設立時から第 n 事業年度末までの期間(日割で計算の上、年単位で表示する。)
m: 第 n 事業年度末までに行われた最後の分配をm 番目の分配とする
キャピタル・コールに基づき払込がなされた場合にはマイナスのキャッシュフローと考えて、追加払込金=(-)分配金として計算する。
また、本組合の中間時点現在の IRR を算定する場合には、第n 事業年度末の組合財産の残存価額を評価時点の組合財産の残存価額に置き換えて(公開されていない株式を時価評価して)計算する。
なお、本組合への出資が一括でなされ、かつ、本組合の終了時にIRR を算定する場合には、次の式に単純化される。
l Cj
Vo = Σ
j=0
(1+r)tj
l: 本組合の終了時までの最後の分配を l 番目の分配とする。
[Translation]
2010 Entrustment Agreement Research study
MODEL AGREEMENT FOR
INVESTMENT LIMITED PARTNERSHIP
November 2010
Ministry of Economy, Trade and Industry Xxxxxxxxx & Asahi
INVESTMENT LIMITED PARTNERSHIP AGREEMENT
Dated
[ ] Investment Limited Partnership
Table of Contents
CHAPTER I GENERAL PROVISIONS 1
Article 1 Definitions 1
Article 2. Name 9
Article 3. Location… 9
Article 4. Partner 9
Article 5. Businesses of the Partnership… 10
Article 6. Effective Date of This Agreement and Term of the Partnership… 11
Article 7. Registration… 11
CHAPTER II. CAPITAL CONTRIBUTIONS 12
Article 8. Capital Contributions 12
Article 9. Excuse and Exclusion 15
Article 10. Suspension and Early Termination of the Commitment Period… 16
Article 11. Reduction of Capital Commitment 17
Article 12. Additional Contributions and Refund of Contributions 17
Article 13. Failure to Make Contributions, etc 18
CHAPTER III. CONDUCT OF PARTNERSHIP BUSINESS AFFAIRS 19
Article 14. Power of the General Partner 19
Article 15. Duty of Care of the General Partner 20
Article 16. Power of the Limited Partners 20
Article 17. Partners’ Meetings 21
Article 18. Conflicts of Interest 21
Article 19. Advisory Board… 23
CHAPTER IV. PARTNERS’ LIABILITIES 25
Article 20. Liabilities to Third Parties for Partnership’s Debts 25
Article 21. Indemnification out of Partnership Assets 25
CHAPTER V. MANAGEMENT AND ADMINISTRATION OF PARTNERSHIP ASSETS 25
Article 22. Management of Partnership Assets 25
Article 23. Administration of Partnership Assets 26
CHAPTER VI. ACCOUNTING 27
Article 24. Accounting 27
Article 25. Preparation of Financial Statements and Sending thereof to Partners 27
CHAPTER VII. DEVELOPMENT OF TARGET COMPANIES 28
Article 26. Development of Target Companies 28
CHAPTER VIII. INTERESTS IN AND DISTRIBUTION OF PARTNERSHIP ASSETS 28
Article 27. Ownership of Partnership Assets 28
Article 28. Allocations of Gains and Losses 28
Article 29. Distribution of Partnership Assets 29
Article 30. Distribution Limitations 35
Article 31. Taxes and Other Public Duties 36
CHAPTER IX. EXPENSES AND FEES 37
Article 32. Expenses 37
Article 33. Fees for the General Partner 39
CHAPTER X. CHANGE IN THE STATUS OF A PARTNER 41
Article 34. Prohibition of Disposition of Interest 41
Article 35. Transfer of Status as a Partner 41
Article 36. Admission of Partners 43
Article 37. Withdrawal of a Partner 43
Article 38. Death of Partner 44
Article 39. Required Withdrawal of Limited Partners 44
Article 40. Required Withdrawal of General Partner 45
Article 41. Interest and Liability of Withdrawing Partner 45
Article 42. Notice of Change in the status of a Partner 46
CHAPTER XI. DISSOLUTION AND LIQUIDATION 46
Article 43. Dissolution 46
Article 44. Appointment of Liquidator 47
Article 45. Power of Liquidator 47
Article 46. Liquidation Procedures 47
Article 47. Method of Liquidation… 48
CHAPTER XII. GENERAL PROVISIONS 48
Article 48. Permission, etc 48
Article 49. Notice and Bank Account 49
Article 50. Confidentiality 49
Article 51. Confirmation concerning the FIEA, etc 50
Article 52. Special Provisions concerning Specially Permitted Businesses for Qualified Institutional Investor, etc 51
Article 53. Elimination of Anti-social Forces, etc 51
Article 54. Indemnification due to Violation of Representation or Warranty 52
Article 55. Amendments to this Agreement 52
Article 56. Effectiveness and Severability of this Agreement 52
Article 57. Language, Governing Law and Jurisdiction… 53
[Exhibit]
1. List of Partners
2. Investment Guidelines (Example)
3. Valuation Rules of Market Value of Investment Assets
4. Method of Calculation of Cumulative Internal Rate of Return
INVESTMENT LIMITED PARTNERSHIP AGREEMENT
This Investment Limited Partnership Agreement (this “Agreement”) is made and entered into as of [date] (the “Execution Date”) among the persons named on the signature pages at the end of this Agreement in order to conduct investments in Business Entities (as defined below) pursuant to the Limited Partnership Act (as defined below).
CHAPTER I GENERAL PROVISIONS
Article 1. Definitions
(1) As used herein, unless the context otherwise clearly requires, the following terms shall have the following meanings. [NB: The terms below are rearranged from the original Japanese version in an alphabetical order for ease of reference.]
“Anti-organized Crime Group Act”:
The Act on Prevention of Unjust Acts by Organized Crime Groups (Act No. 77 of 1991, as amended).
“Anti-social Forces”: A person falling under any of the following items:
(i) Organized Crime Group;
(ii) Organized Crime Group Member;
(iii) Quasi Organized Crime Group Member;
(iv) Organized Crime Group-associated Company;
(v) corporate extortionists (sokaiya to) (meaning persons who are likely to engage in Violent and Unlawful Acts seeking unfair benefits from corporations and thereby threaten the safety of civil society);
(vi) rogue person or group proclaiming itself as a social activist (xxxxxx xxxx xxxxx xxxx) (meaning persons pretending or proclaiming themselves to be social or political activists, who are likely to engage in Violent and Unlawful Acts seeking unfair benefits and threatening the safety of civil society);
(vii) organized special intellectual crime group (tokushu chinou boryoku shudan to) (meaning groups or persons other than those set forth in items (i) to (vi) who constitute the core of a structural evil by using power of an Organized Crime Group based on a relationship with an Organized Crime Group, or by having financial relations with an Organized Crime Group); or
(viii) any other persons considered to be analogous to any of item
(i) to item (vii).
“Bridge Financing”: A Portfolio Investment that the General Partner intends to make a Disposition of within [ ] months after the investment and
designated as a Bridge Financing in the Capital Call Notice therefor.
“Business Entity”: A legal person (excluding foreign legal persons) or an individual person engaged in business.
“Capital Commitment”: The amount that a Partner agrees to contribute to the Partnership pursuant to Article 8(2) [; provided that, if such amount is reduced pursuant to Article 11, the reduced amount].
“Capital Contribution”: The total amount of the Capital Commitment that is actually
contributed by each Partner to the Partnership pursuant to the provisions of Article 8(3) to (7) (excluding the Additional Admission Fees).
“Civil Code”: Civil Code (Act No. 89 of 1896, as amended). “Commitment Period”: The [ ]-year period from the Effective Date (or, if the
Commitment Period ends earlier pursuant to the provisions of this Agreement, to the date on which it ends).
“Corporate Tax Act”: The Corporate Tax Act (Act No. 34 of 1965, as amended). “Disqualified Investor”: A person who falls under any of sub-items (a) to (c) of Article
63(1)(i) of the FIEA.
[“Existing Contributed Share”:
As to any Partner which does not fail to make any contribution at any given time, the percentage of such Partner’s Capital Contribution to such Partner’s Capital Commitment at such given time.]
“External Auditor”: [ ] Accounting Firm/[ ], certified public accountant, and/or any other accounting firm or certified public accountant who is appointed by the General Partner in place of or in addition to the foregoing from time to time and whose appointment is notified by the General Partner to the Partners (excluding those resigned or dismissed).
“FIEA”: The Financial Instruments and Exchange Act (Act No. 25 of 1948, as amended).
“Foreign Limited Partner”:
A Limited Partner who is a non-resident or a foreign corporation under the Income Tax Act.
“General Partner”: [ ] having the main office located at
[ ] or any person who will be appointed as its successor pursuant to Article 37(3) (but excluding the General Partner if it withdraws from the Partnership or transfers all of its
status as General Partner).
“Income Tax Act”: The Income Tax Act (Act No. 33 of 1965, as amended). “Interest Amount”: With respect to each Partner, its Capital Contribution after (x)
addition or deduction of profit or loss, as the case may be, to be allotted to the Partner to or from its Capital Contribution pursuant to Article 28 and (y) deduction of the amount of money or the value of the Portfolio Securities distributed to the Partner pursuant to the provisions of this Agreement.
“Investment Amount”: The total amount of the acquisition prices of all of the Portfolio Securities and the Portfolio Intellectual Property that have been acquired by the Partnership at any given time.
“Investment Limited Partnership”:
“Investment Partnership”:
An investment limited partnership as defined in Article 2(2) of the Limited Partnership Act.
An Investment Limited Partnership or a partnership that is formed by a partnership agreement as set forth in Article 667(1) of the Civil Code for the purpose of conducting the investment business or an organization similar thereto located in any foreign country.
“Key Person”: [ ], [ ], [ ] and [ ] as well as a person
appointed pursuant to Article 10(2), but excluding persons who cease to be a Key Person upon appointment of their successor pursuant to Article 10(2).
“Key Person Event”: Case where [all/[ ]] of the Key Persons are no longer
substantially involved in the investment of the Partnership Assets.
“Limited Partner”: Each person listed as a limited partner in Exhibit 1 attached hereto and each person who is admitted to the Partnership pursuant to Article 35 or 36 (excluding Limited Partners who withdraw from the Partnership or transfer all of their status as Limited Partners).
“Limited Partnership Act”:
“Marketable Securities”:
“Number of Partnership Units”:
The Act Concerning Investment Business Limited Partnership Agreement (Act No. 90 of 1998, as amended).
Securities that are (i) listed on a financial instruments exchange as defined in Article 2(16) of the FIEA or any other similar financial instruments exchange located in any foreign country or (ii) registered in a registry of over-the-counter traded securities as defined in Article 67-11(1) of the FIEA or any other similar registry kept in any foreign country.
The number of the units of contribution held by each Partner in the Partnership; provided that for the purpose of calculating a certain percentage of the aggregate Number of Partnership Units of all of
“Organized Crime Group (boryokudan)”:
“Organized Crime Group Member (boryokudan-in)”:
“Organized Crime Group-associated Company (boryokudan kankei kigyo)”:
the Limited Partners, the Number of Partnership Units held by any Defaulting Limited Partner is excluded pursuant to Article 13(5). If this Agreement requires that a certain ratio to the aggregate Number of Partnership Units of all of the Limited Partners be satisfied, such ratio may be satisfied by aggregating the Number of Partnership Units of more than one Limited Partner.
An organized crime group as defined in Article 2(ii) of the Anti- organized Crime Group Act (meaning a group whose members (including members of its affiliated group) collectively or regularly encourage Violent and Unlawful Acts).
An organized crime group member as defined in Article 2(vi) of the Anti-organized Crime Group Act (meaning a member of an Organized Crime Group).
A company in which an Organized Crime Group Members are substantially involved in management, a company managed by Quasi Organized Crime Group Members or former Organized Crime Group Members which actively cooperates with or are involved in the maintenance or operation of an Organized Crime Group, including funding to an Organized Crime Group, or a company which cooperates in the maintenance or operation of an Organized Crime Group by actively using it as it conducts business.
“Partner”: Collectively, the General Partner and the Limited Partners.
“Partnership Accounting Regulations”:
The Accounting Regulations for Investment Limited Partnerships for Medium and Small Companies (August 20, 1998, 10/8/7 Kicho No. 2, as amended) and the “Accounting Procedures for Investment Limited Partnerships and Audits thereof” (Industry Audit Committee’s Report No. 38 of March 15, 2007, as amended) issued by the Japanese Institute of Certified Public Accountants.
“Partnership Assets”: Cash contributions, and all assets that are acquired, or derived
from, cash contributions including Portfolio Securities and Portfolio Intellectual Property which should belong to the Partnership.
“Partnership Bank Account”:
The ordinary deposit account (account no.: ) opened with [ ] Bank in the name of the Partnership which will be utilized solely to conduct business of the Partnership, or any bank account that the General Partner opens from time to time in the name of the Partnership, and in respect of which notice is given to the Partners designating such account as a Partnership Bank Account.
“Partnership Interest”: A Partner’s interest in the Partnership.
“Partnership”: An Investment Limited Partnership that will be formed under this Agreement.
“Percentage Interest”: With respect to a Portfolio Investment, the percentage that the
amount contributed by a Partner who participates in such Portfolio Investment comprises of the total amount contributed by all Partners who participates in such Portfolio Investment.
“Portfolio Company”: Collectively, a Target Company, an Investment Partnership to
which the Partnership has made a contribution pursuant to Article 5(ix), and a foreign corporation in which the Partnership holds Foreign Target Securities pursuant to Article 5(xi).
“Portfolio Intellectual Property”:
Industrial property rights and copyrights that the Partnership acquired or will acquire pursuant to Article 5(vii).
“Portfolio Investment”: Any investment to be made, or made, in any Portfolio Security or Portfolio Intellectual Property.
“Portfolio Securities”: Shares, interests, share purchase warrants, Specified Securities, pecuniary receivables, trust beneficial interests, [contributions to Investment Partnerships,] promissory notes, negotiable deposit certificates, movables or [the Foreign Target Securities] that the Partnership acquired or will acquire pursuant to the provisions of items (i) to (vi), [and items (ix)] to [(xi)] of Article 5.
“Qualified Institutional Investor”:
“Quasi Organized Crime Group Member (xxxxxxxxxx xxx xxxxxxx)”:
“Special Taxation Measures Act”:
A qualified institutional investor as defined in Article 2(3)(i) of the FIEA.
A person, other than an Organized Crime Member, who maintains a relationship with an Organized Crime Group, and who (i) is likely to engage in Violent and Unlawful Acts based on the power of an Organized Crime Group, or (ii) cooperates or is involved with the maintenance and operation of an Organized Crime Group, including providing money, weapons, etc. to an Organized Crime Group or Organized Crime Group Member.
Act on Special Measures Concerning Taxation (Act No. 26 of 1957, as amended).
“Specified Securities”: Of the securities set forth in the items (excluding items (ix) and (xiv)) of paragraph (1) of Article 2 of the FIEA (including the rights to be represented by the securities set forth in items (i) to (viii), items (x) to (xiii) and items (xv) to (xxi) of that paragraph which are deemed to be securities in accordance with the provisions of paragraph (2) of that article), bonds or other securities set forth in the following items, which help a Business
Entity raise financing:
(i) debentures set forth in Article 2(1)(iii) of the FIEA;
(ii) specified bonds set forth in Article 2(1)(iv) of the FIEA;
(iii) bonds set forth in Article 2(1)(v) of the FIEA;
(iv) investment securities set forth in Article 2(1)(vi) of the FIEA;
(v) preferred equity investment certificates set forth in Article 2(1)(vii) of the FIEA;
(vi) preferred equity investment certificates or certificates indicating preemptive rights for new preferred equity investment set forth in Article 2(1)(viii) of the FIEA;
(vii) beneficiary securities set forth in Article 2(1)(x) of the FIEA;
(viii) investment securities or investment corporation debentures set forth in Article 2(1)(xi) of the FIEA;
(ix) beneficiary securities set forth in Article 2(1)(xii) of the FIEA;
(x) beneficiary securities set forth in Article 2(1)(xiii) of the FIEA;
(xi) promissory notes set forth in Article 2(1)(xv) of the FIEA;
(xii) securities or certificates indicating options defined in Article 2(1)(xix) of the FIEA pertaining to the securities set forth in Article 2(1)(ix) of the FIEA or items (i) to (xi) or the rights set forth in item (xiii); and
(xiii) rights to be indicated on securities set forth in items (i) to
(xi) which shall be deemed as securities pursuant to Article 2(2) of the FIEA.
“Target Company”: A Business Entity in or to which the Partnership holds shares,
interests, share purchase warrants, Specified Securities, pecuniary receivables, industrial property rights, copyrights or trust beneficial interest pursuant to the provisions of Article 5(i) to (vii).
“Unpaid Capital Commitment”:
“Value at the Time of Distribution”:
The amount of the Capital Commitment which remains unpaid; provided that if such amount is changed pursuant to the provisions of this Agreement, the changed amount.
The value of any Portfolio Securities as of the Reference Date where they are distributed in kind. The value as of the Reference Date shall be (i) if the Portfolio Securities to be distributed are the Marketable Securities, the average closing price for the latest five trading days immediately preceding (and excluding) the Reference Date (or if there are fewer than five trading days prior to the
“Violent and Unlawful Act”:
Reference Date, the average of the closing price for all trading dates immediately preceding (and excluding) the Reference Date), or (ii) if the Portfolio Securities to be distributed are not Marketable Securities, the value determined as fair market value by the General Partner with the approval of the Limited Partners pursuant to Article 29(3). Under this Article, the “closing price” of the Portfolio Securities means the closing selling and purchase price on the relevant financial instruments exchange or published by the Japan Securities Dealers Association or any other similar prices quoted on any foreign exchange or over-the-counter market, and the “trading day” means the day on which the financial instruments exchange concerning the Portfolio Securities opens or the day on which the over-the-counter-market operated by the Japan Securities Dealers Association opens, or any similar day in foreign countries; provided that any day on which no closing price is available shall be excluded.
Violent and unlawful acts as defined in Article 2(1) of the Anti- organized Crime Group Act.
“Withdrawing Partner”: A Person who used to be a Partner and has withdrawn pursuant to Article 37.
(2) The following terms set forth below shall be defined in article indicated opposite each term. [NB: The terms below are rearranged from the original Japanese version in an alphabetical order for ease of reference.]
Defined Term Articles in which they are defined
Additional Admission Fee Article 8(8)
Advisory Board Article 19(1)
Aggregate Distributed Amount Article 29(4)(i) Aggregate Incentive Fee Amount Article 29(4)(iii) Agreement Preamble
Capital Call Article 8(4)
Capital Call Notice Article 8(4)
Clawback Amount Article 33(5)
Cumulative Distributed Amount Article 33(5)
Deductible Fees Article 33(4)
Defaulting Limited Partner Article 13(5)
Disposition Article 29(2)(i)
Disposition Profit Article 29(2)(i)
Distributable Amount Article 26(4)(i)
Effective Date Article 6(1)
Execution Date Preamble
Existing Fund Article 18(2)
Existing Partner Article 36(1)
Financial Statements Article 25(1)
Foreign Target Securities Article 5(xi)
Indemnified Party Article 21(2)
Initial Closing Date Article 8(3)
Interested Partner Initial paragraph of Article 29(2) [If an Excuse/Exclusion clause is included]
Interested Partner Article 29(4)(i) [If an Excuse/Exclusion clause is not included]
Management Fee Deduction Article 33(4)
New Partner Article 8(8)
Other Profit Article 29(2)(ii)
Participating Interested Partner Article 29(2)(i) [If an Excuse/Exclusion
clause is included]
Partnership Period Article 6(2)
Preferred Distribution Amount Article 33(5)
Provisional Interest Amount Article 28(1) [If an Excuse/Exclusion
clause is included]
Reference Date Article 29(3)
Semi-annual Financial Statements Article 25(3)