Contract
契約締結過程における投信会社と販売会社の民事責任
筑波大学大学院ビジネスサイエンス系准教授
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− 目 次 −
Ⅰ.はじめに
Ⅱ.投資の仕組みとしての投資信託
1. 民法における組合
2. 商法における匿名組合
3. 投資事業有限責任組合
4. 特定目的会社
Ⅲ.投資信託の制度
1. 歴 史
2. 類 型
3. 委託者指図型投資信託
Ⅳ.投資信託の募集・販売における当事者の役割
1. 金商法に基づく開示
2. 適合性原則
3. 説明義務
Ⅴ.裁判例
1. 販売会社の責任
2. 投信会社の責任
Ⅵ.検 討
1. 概 観
2. 販売会社の責任
3. 投信会社の責任
Ⅰ.はじめに
投資信託とは、複数の投資家から資金を集め、資産運用の専門家が、集めた資金を一定の資産に投資・運用し、その運用成果を投資家それぞれに帰属させる仕組み(1)である。
本稿では、契約締結過程において、投信会社と販売会社は、それぞれどのような民事責任を負うかを検討する。
論述の順序は、投資の仕組みとしての投資信託Ⅱ、投資信託の制度Ⅲ、投資信託の募集・販売における当事者の役割Ⅳ、裁判例Ⅴ、検討Ⅵ、とする。
Ⅱ.投資の仕組みとしての投資信託
投資の仕組みには様々なものがある。直接金融、間接金融のほか、市場型間接金融がある(2)。
1. 民法における組合
民法における組合は、 2 人以上の当事者の契約に基づき、当事者全員が出資をし、共同の事業を行うことを目的とした契約である
(民法667条)(3)。組合財産は、総組合員の共有となる(民法668条)。組合の債権者は、組合財産についてその権利を行使することがで
きる(民法675条 1 項)(4)。組合の債権者は、各組合員に対して損失分担割合又は等しい割合でその権利を行使することができ、損失分担割合について悪意の場合には、損失分担割合に拘束されうる(民法675条 2 項)(5)。
2. 商法における匿名組合
商法における匿名組合は、一方(匿名組合員)が相手方(営業者)の営業のために出資をし、その営業により生じる利益の分配を受ける内容の契約である(商法535条)(6)。匿名組合員が複数存在する場合、中心となる営業者がそれぞれの組合員と個別の匿名組合契約を結ぶことになる(7)。匿名組合員の出資は、営業者の財産に属する(商法536条 1 項)。匿名組合員は、第三者に対し、権利を有せず義務を負わない(8)。
3. 投資事業有限責任組合
1998年、「中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律」が制定された。2004年、この法律は、「投資事業有限責任組合契約に関する法律」となり、投資対象・手法を拡充した(9)。組合財産は、総組合員の共有となる
(投資有限組合16条、民法668条)。投資事業有限責任組合は、無限責任組合員と有限責任組合員から構成される。無限責任組合員が複数存在する場合、各無限責任組合員は、それぞれ、組合債務全額について連帯して責任を負う(投資有限組合 9 条 1 項)。有限責任組合員は、その出資の価額を限度として責任を負う(投資有限組合 9 条 2 項)。
4. 特定目的会社
1998年に制定された「特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律」は、2000年の改正のとき、「資産の流動化に関する法律」
(資産流動化法)となった。この法律は、特定目的会社又は特定目的信託を用いて資産の流動化を行う制度を確立し、これらを用いた資産の流動化が適正に行われることを確保す
ること、資産の流動化の一環として発行される各種の証券の購入者等の保護を図ることを目的としている( 1 条)(10)。投資信託及び投資法人に関する法律との違いは、資産流動化法は、資産運用型の取引ではなく、資産流動化型の取引を扱う点にある(11)。
Ⅲ.投資信託の制度
投資信託の制度では、投資信託の歴史⑴、投資信託の類型⑵、委託者指図型投資信託⑶についてみる。
1. 歴 史
1951年(12)、「証券投資信託法」が制定された。この法律は、契約型の証券投資信託について、仕組み、投資者からの出資の募集、運用方法と運用成果の分配、運用業者の義務等を定めていた。
1998年(13)、証券投資信託法は、「証券投資信託及び証券投資法人に関する法律」となった。この改正は、契約型投資信託のみならず会社型投資信託、私募投資信託も可能とした。他に、信託約款が承認制から届出制に変更され、運用指図の外部委託など多様な投資信託が可能になった。
2000年(14)、集団投資スキームに関する横断的な法的整備がなされた。その中で、証券投資信託及び証券投資法人に関する法律は、
「投資信託及び投資法人に関する法律」となった。契約型投資信託では、従来型の投資信託である「委託者指図型投資信託」のほかに、新しい型の投資信託である「委託者非指図型投資信託」が設けられた。従来、主たる投資対象財産は、「主として有価証券」に限定されていたが、「不動産その他の資産で投資を容易にすることが必要であるものとして政令で定めるもの」に拡大した。
2006年(15)、証券取引法は、金融商品取引法(以下、「金商法」という。)となった。改正前まで、証券取引法、投資顧問業法、金融
先物取引法などは、それぞれ、対象となる金融商品の販売、運用、管理に関して、規定を置いていた。改正後、金商法は、金融商品の販売、運用、管理について、横断的な規定を置いた。これに伴い、投信会社の投資運用業務などは、投資信託及び投資法人に関する法律ではなく、金商法で規定されることとなった。
2. 類 型
投資信託の類型には様々なものがある。ここでは、単位型投資信託と追加型投資信託、公募投資信託と私募投資信託(16)についてみる。
まず、単位型投資信託と追加型投資信託の区別である。通常、信託期間を設けることにより、ファンドを設定すると、原則、償還まで新規資金の追加を行わない投資信託を単位型投資信託という(17)。一度設定されたファンドに、その後、新たに追加設定が行われ、当初の信託財産と追加設定分も一緒に運用される投資信託を追加型投資信託という(18)。
次に、公募投資信託と私募投資信託の区別である(19)。公募の場合(①)、新たに発行される受益証券の取得の申込みの勧誘であること(投資法 2 条 8 項)、50名以上の者を相手方とすること(投信法施行令 7 条)、が必要である。
適格機関投資家私募等の場合(②)、新たに発行される受益証券の取得の申込みの勧誘のうち、「適格機関投資家」のみを相手として行う場合で政令で定める場合、「特定投資家」のみを相手として行う場合で政令で定める場合、に該当するものをいうとされる(投信法 2 条 9 項)。
一般投資家私募の場合(③)、新たに発行される受益証券の取得の申込みの勧誘のうち、公募または適格機関投資家私募等のいずれにも該当しないこと(投信法 2 条10項)、が必要である。
3. 委託者指図型投資信託
投資信託には、「委託者指図型投資信託」と「委託者非指図型投資信託」の種類があるが、主として、委託者指図型投資信託が用いられることが多い。そこで、以下では、委託者指図型投資信託の仕組み(⑴)と当事者(⑵)について、xx。
⑴ 委託者指図型投資信託の仕組み
委託者指図型投資信託とは、投信法 2 条 1項によると、①信託財産を委託者の指図(政令で定める者に指図に係る権限の全部または一部を委託する場合における当該政令で定める者の指図を含む。)に基づいて、②主として有価証券、不動産その他の資産で投資を容易にすることが必要であるものとして政令で定めるもの(特定資産)に対する投資として運用することを目的とする信託であって、③投信法に基づき設定され、④その受益権を分配して複数の者に取得させることを目的とするもの、とされる(20)。
投信法施行令 3 条において、「特定資産」の具体的な内容が定められている。有価証券、デリバティブ取引に係る権利、不動産、不動産の賃借権、地上権、約束手形、金銭債権、商品、商品投資等取引に係る権利、再生可能エネルギー発電設備、公共施設等運営xxとされている(21)。
⑵ 委託者指図型投資信託における当事者 委託者指図型投資信託における当事者であ
る委託者(ⅰ)、受託者(ⅱ)、販売会社(ⅲ)、受益者(ⅳ)について、みる。
ⅰ 委 託 者
(α) 委託者の定義
投信法 3 条によると、委託者指図型投資信託契約では、投資運用業を行う一の金融商品取引業者を委託者として契約が締結される必要がある。委託者とされる金融商品取引業者は、投資信託委託会社という(投信法 2 条11
項)。
投資信託委託会社が自己募集により受益証券を直接に販売する場合、金商法では、「第二種金融商品取引業」(金商法28条 2 項 1 号、金商法 2 条 8 項 7 号イ)となる(22)。投資信託委託会社は、第二種金融商品取引業の登録を受けなければならない(23)。
(β) 主な業務の内容
委託者は、信託財産の運用の指図(投信法 2 条 1 項)、信託約款の作成、届出および投資信託契約の締結(投信法 3 条、投信法 4 条 1 項)、受益証券の発行(金商法 2 条 5 項、
定義府令14条 2 項 2 号イ)、投資信託約款等の内容を記載した書面の交付(投信法 5 条 1項)、投資信託財産として有する有価証券に係る議決xxの行使に関する指図(投信法10条)、運用報告書の作成および交付(投信法 14条)、投資信託財産に関する帳簿書類の作成および保存(投信法15条)、投資信託約款の解約(投信法19条)などの業務を引き受ける(24)。
ⅱ 受 託 者
(α) 受託者の定義
投信法 3 条によると、委託者指図型投資信託では、受託者は、一の信託会社(信託会社又は信託業務を営む金融機関)でなければならない。
「信託会社」とは、信託業法 2 条 2 項に定める信託会社をいう。すなわち、信託業法に基づき免許(信託業法 3 条)または登録(信託業法 7 条)を受けた者をいう。管理型信託会社、運用型信託会社双方を含むとされる(25)。
(β) 主な業務の内容
運用の指図および投資信託に関する業務の多くは委託者が行うので、受託者は、①信託契約の締結、②信託財産の保管および管理、
③信託財産の計算(基準価額の計算を含む)、
④外国証券を保管、管理する外国の保管銀行への指示及び連絡、を行う(26)。
信託の受託者は、信託の本旨に従い、信託事務を処理しなければならず、信託事務を処理するに当たっては、善良な管理者の注意をもって、しなければならない(信託法29条)(27)。また、信託の受託者は、受益者のためにxxに信託事務の処理その他の行為をしなければならない(信託法30条)(28)。
ⅲ 販売会社
(α) 販売会社の定義
販売会社は、委託者が発行する受益証券を販売する。金商法において、受益証券の販売行為は、「第一種金融商品取引業」(金商法28条 1 項 1 号、 2 条 8 項 9 号)に当たる(29)。
銀行などの金融機関は、登録金融機関として、受益証券の販売を行うことができる。銀行、共同組織金融機関その他政令で定める金融機関は、有価証券関連業または投資運用業を行うことができない(金商法33条 1 項)。金商法33条 2 項は、金融機関が、内閣総理大臣の登録を受けることにより、禁止を免れることができる業務を挙げている。そのうちの一つとして、金融機関は投資信託商品の窓口販売を行うことができる(30)。
販売会社は、金融商品取引業者に、受益証券の販売行為を委託することができる(金商法 2 条11項(31)、金商法66条(32))。
(β) 主な業務の内容
①受益証券の募集及び販売の取扱い、②追加設定の申込み事務、③受益者に対する収益分配金再投資事務、④信託の一部解約事務、買取請求の受付及び解約代金・買取代金、償還金、収益分配金の支払い、⑤目論見書の交付、⑥運用報告書の交付、⑦取引報告書、残高照合書、計算書、取引明細書等の交付、⑧「社債、株式等の振替に関する法律」及び振替機関の業務規程に定める「口座管理機関」としての業務、⑨受益証券の振替機関への移行申
請手続き、などの業務を行う(33)。
販売会社は、多くの場合、販売手数料を得て、受益者に対し、分配金の支払いなどの業務を継続的に提供し、投資信託の組成のイニシアティブを持つことも多い、とされる(34)。
ⅳ 受 益 者
委託者が発行する受益証券を購入した投資家は、投資信託の受益者となる。投資信託約款は委託者と受託者を当事者とする契約であり、受益者は契約の当事者とはならない。
Ⅳ.投資信託の募集・販売における当事者の役割
金商法に基づく開示⑴、適合性原則⑵、説明義務⑶の場合について、当事者はどのような役割を担うかについてみる。
1. 金商法に基づく開示
投資信託の受益証券は、金商法上の有価証券に該当する(金商法 2 条 1 項10号)(35)。原則として、有価証券届出書の提出(⑴)や目論見書の交付(⑵)といった、金商法上の発行開示規制を遵守する必要がある(36)。
⑴ 有価証券届出書の提出
ⅰ 投資信託における有価証券届出書
有価証券届出書とは、有価証券の募集や売出しをするとき、当該有価証券の発行者が内閣総理大臣に提出する資料である(金商法 4条 1 項)。委託者指図型投資信託の場合、投信法によると、委託者が有価証券を発行することになる(投信法 2 条 7 項)(37)。
ⅱ 有価証券届出書の虚偽記載
有価証券届出書のうちに、重要な事項について虚偽の記載があり、または記載すべき重用な事項もしくは誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が欠けているとき、当該有価証券届出書の届出者は、当該有価証
券を取得した者に対し、損害賠償責任を負う
(金商法18条 1 項)(38)。
⑵ 目論見書の交付
ⅰ 目論見書の作成
目論見書とは、有価証券の募集もしくは売出し等のために当該有価証券の発行者の事業その他の事項に関する説明を記載する文書であって、相手方に交付し、または相手方からの交付の請求があった場合に交付するものをいう(金商法 2 条10項)(39)。有価証券の募集につき有価証券届出書を提出しなければならない有価証券の発行者は、目論見書を作成しなければならない(金商法13条 1 項)(40)。目論見書は、①目論見書の情報により有価証券の価格付けが適正なものになっているか否か、②当該有価証券が自己の属性や投資目的にふさわしいものであるか否か、についての投資家の判断に役立つ(41)。
目論見書には、交付目論見書(金商法15条 2 項)と請求目論見書がある(金商法15条 3項)。一定の例外を除き、投資家に必ず交付しなければならない目論見書が交付目論見書であり、投資家からの請求があった場合にのみ交付すればよい目論見書が請求目論見書である(42)。
交付目論見書には、特定有価証券開示府令第25号様式により、記載すべき事項を記載しなければならず(金商法13条 2 項 1 号イ、特定有価証券開示15条 1 号)、さらに、一定の特記事項を記載しなければならない(特定有価証券開示15条の 2 )(43)。
請求目論見書には、特定有価証券開示府令第 4 号様式により、記載すべき事項を記載しなければならず(金商法13条 2 項 2 号イ、特定有価証券開示16条 1 号)、さらに、一定の特記事項を記載しなければならない(特定有価証券開示16条の 2 )(44)。
ⅱ 目論見書の交付
発行者、売出人、引受人、金融商品取引業者、
登録金融機関、又は金融商品仲介業者は、投資信託の受益証券を取得させる場合、または、売り付ける場合、交付目論見書を、あらかじめ又は同時に交付しなければならない(金商法15条 2 項)(45)。
この規定に違反して、目論見書をあらかじめ又は同時に交付することなく、有価証券を取得させた者は、有価証券を取得した者に対して、交付義務違反によって生じた損害を賠償しなければならない(金商法16条)(46)。
ⅲ 目論見書の虚偽記載
有価証券の募集または売出しのとき、重要な事項について虚偽の記載があり、もしくは、記載すべき重要な事項もしくは誤解を生じさせないために必要な事実の記載が欠けた目論見書を用いて有価証券を取得させた者は、表示が不実であることを知らないで当該有価証券を取得した者に対し、損害賠償責任を負う
(金商法17条)(47)。
金商法18条 2 項により、目論見書を作成した発行者は、重要な事項について虚偽の記載があり、もしくは、記載すべき重要な事項もしくは誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が欠けていた場合、損害賠償責任を負う(48)。
ⅳ 交付目論見書の作成に関する規則
投資信託協会は、『交付目論見書の作成に関する規則』を定めている(49)。 3 条では、交付目論見書の本文において、①ファンドの目的・特色、②投資リスク、③運用実績、④手続・手数料等について記載をする必要があるとする。 4 条は、 3 条の記載事項の他、ファンドの特色やリスク等として投資者に開示すべき情報のあるファンドは、「追加的記載事項」と明記して、情報の内容を記載する、とする。その場合の留意事項の 1 つとして、毎月分配型投資信託、隔月分配型投資信託については、①分配金は投資信託の純資産から支払われる旨、②分配金が収益を超えて支払
われる場合がある旨、③分配金の一部又は全部が元本の一部払戻しに相当する場合がある旨、を記載しなければならないとする。
2. 適合性原則
適合性原則とは、顧客の属性に照らして不適当と認められる勧誘を行ってはならないという原則である(50)。金商法40条 1 号は、金融商品取引業者に対し、業務の運営の状況が、金融商品取引行為について、顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして、不適当と認められる勧誘を行って投資者の保護に欠けることとなる、又は欠けることとなるおそれがあること、がないように業務を行うことを義務づけている。
この狭義の適合性原則違反が民事上責任を生じさせるか、議論があった。最一小判平成 17年 7 月14日( 民集59巻 6 号1323頁)(51)は、
「証券会社の担当者が、顧客の意向と実情に反して、明らかに過大な危険を伴う取引を積極的に勧誘するなど、適合性の原則から著しく逸脱した証券取引の勧誘をしてこれを行わせたときは、当該行為は不法行為法上も違法となると解するのが相当である。・・顧客の適合性を判断するに当たっては、・・取引類型における一般的抽象的なリスクのみを考慮するのではなく、・・具体的な商品特性を踏まえて、これとの相関関係において、顧客の投資経験、証券取引の知識、投資意向、財産状態等の諸要素を総合的に考慮する必要があるというべきである。」と判示した。
3. 説明義務
ここでは、xxxxの説明義務(⑴)、金融サービス提供法上の説明義務(⑵)、金商法上の説明義務(⑶)、その他(⑷)についてみる。
⑴ xxx上の説明義務(52)
ⅰ 根 拠
自己責任の原則を貫くと不都合が生じる場合、契約締結過程における説明義務が一方当事者に認められることがある。
第一に、情報収集力・情報分析力における平等の確保の要請により説明義務を認める見解がある。情報優位者が一定程度までの情報を開示するほうが社会全体のコストがかからないことを理由に、情報格差のある取引主体の間では、その格差はある程度まで情報優位者の負担によって埋められるべきとする見解(53)、一方当事者にとって、相手方よりも情報へのアクセスが容易である場合には情報提供義務が生じるとする見解(54)などがある。第二に、自己決定の基盤の確保の要請によ り説明義務を認める見解(55)がある。意思決定の環境を構成する情報を整備し契約の拘束力や自己責任を認めるためには、情報収集力・情報分析力において優位する者に説明義務を
負わせる必要があるという考え方である。 第三に、専門家責任の要請により説明義務
を認める見解(56)がある。この見解によると、専門家は、まず、顧客による自己決定の確保に必要な説明義務を負い、取引または依頼の内容が顧客の目的に適合しない点があることを認識した場合、その事柄について説明義務を負う。
第四に、情報の性質に着目し説明義務を認める見解もある。この見解は、当該契約を締結することによって相手方の生命・身体・財産に損害が生じる可能性が強い場合には、当事者の属性に関わりなく、その危険性と程度を相手方に伝える義務があるとする(57)。
債権法改正の議論では、要綱仮案を作成する段階で、説明義務の規定を民法の中に設けることは見送られた(部会資料81-3)。これは、説明義務が認められる場合は様々であり、要件や効果を規定することは難しいため、今までのように、柔軟な判断を可能にするために、説明義務はxxxを根拠とするのが望ましい
と考えられた、とされる(58)。
ⅱ 金融商品取引の場合
裁判例は、証券会社と一般投資家との間に情報の格差があること、一般投資家は、証券会社の提供する情報や助言に依存して投資を行っていること、証券会社は一般投資家を取引に誘致することで利益を得ていること等を理由に、証券会社は、一般投資家に対して投資勧誘を行う際、xxx上、商品の概要・取引の仕組みや商品・取引のリスクについて説明しなければならない、とする(59)。
⑵ 金融サービス提供法(60)上の説明義務
ⅰ 従来の状況
2000年、「金融商品の販売等に関する法律」
(以下、「金販法」という。)は制定された。金販法は、金融商品販売業者等の顧客に対する説明義務違反に関する損害賠償責任および損害額の推定などの規定を設けるため、制定された(61)。
2006年、金販法は改正された。主な改正点は、説明義務の拡充、断定的判断の提供等の禁止の新設、対象商品・取引の範囲の拡大などである(62)。
金融商品販売業者等は、重要な事項について説明をしなければならない。重要な事項は、次の①②③④の項目になる。①金利、通貨の価格(為替レート)、有価証券市場における相場その他の指標に係る変動を直接の原因として、「元本欠損が生ずるおそれ」または「当初元本を上回る損失が生ずるおそれ」があるときは、その旨、当該指標、当該取引の仕組みのうちの重要な部分、②金融商品販売業者等の業務または財産の状況の変化を直接の原因として、「元本欠損が生ずるおそれ」または「当初元本を上回る損失が生ずるおそれ」があるときは、その旨、その者、当該取引の仕組みのうちの重要な部分、③①と②以外の原因で顧客の判断に影響を及ぼす事項として政令で定めた事由によって「元本欠損が生ず
るおそれ」または「当初元本を上回る損失が生ずるおそれ」があるときは、その旨、当該事由、当該取引の仕組みのうちの重要な部分、
④当該金融商品の販売の対象である権利を行使する期間の制限または解約期間の制限があるときは、その旨、である(63)。
リスクがあるという説明では足りず、リスクが生じる原因となる取引の仕組みの重要な部分について説明を金融商品販売業者等は、しなければならない(64)。
重要な事項を説明する場合、顧客の知識、経験、財産の状況及び当該金融商品の販売に係る契約を締結する目的に照らして、当該顧客に理解されるために必要な方法及び程度によるものでなければならない(金販法 3 条 2項)。
金融商品販売業者等は、顧客に対し、金販法 3 条の規定により、重要事項を説明しなければならないところ、説明をしなかったとき、これによって生じた顧客の損害を賠償することになる(金販法 5 条)。
ⅱ 金融サービス提供法
令和 2 年の改正により、金販法は、「金融サービスの提供に関する法律」となった。改正法の施行期日は、令和 2 年 6 月12日から 1年 6 ヶ月を越えない範囲とされている。「金融サービスの提供に関する法律」は、多種多様な金融サービスのワンストップ提供への対応、利便性が高く安心・安全な決済サービスへの対応を目的として、制定されたものである(65)。
⑶ 金商法上の説明義務
金商法は、金融商品取引業者等は、金融商品取引契約をしようとするときは、①商号、名称、住所、②登録番号、③当該契約の概要、④手数料・報酬等、⑤市場リスクにより損失または元本超過損を生ずるおそれがあること、その他内閣府令で定める事項を記載した書面を、あらかじめ、顧客に対し、交付
しなければならない、とする(金商法37条の
3 )(66)。
また、金商法は、金融商品取引業者等が37条の 3 第 1 項 3 号から 7 号に掲げる事項について、顧客の知識、経験、財産の状況および金融商品取引契約を締結する目的に照らして、当該顧客に理解されるために必要な方法および程度による説明をすることなく、金融商品取引契約を締結する行為を禁止している
(金商法38条 9 号、金商業府令117条 1 項 1号)(67)。
一定の場合には、契約締結前交付書面の交付は不要とされている(金商法37条の 3 第 1項但書、金商業府令80条)。
⑷ そ の 他
ⅰ 「協会員の投資勧誘、顧客管理等に関する規則」
日本証券業協会の自主規制規則である「協会員の投資勧誘、顧客管理等に関する規則」(68)は、協会員は、有価証券の売買その他の取引等に関し、重要な事項について、顧客に十分な説明を行うとともに、理解を得るよう努めなければならない、とする( 3 条 4 項)。また、高齢者に対する販売について、協会員は、高齢顧客に有価証券等の勧誘による販売を行う場合には、当該協会員の業態、規模、顧客分布および顧客属性並びに社会情勢その他の条件を勘案し、高齢顧客の定義、販売対象となる有価証券等、説明方法、受注方法等に関する社内規則を定め、適正な投資勧誘に努めなければならない、とする( 5 条の 3 )。
ⅱ 「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」
「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」(69)Ⅲ- 2 − 3 − 4 ⑴では、①適合性原則を踏まえた説明態勢の整備、②適切な商品、サービス説明等の実施、③約定内容等の説明、
④インターネットを通じた説明の方法、における留意点が示されている。
その中で、②では、⑴取引による損失の発生やリスク等のデメリットの説明が不足していないか、⑵セールストーク等に虚偽や断定的な判断の表示となるようなものはないか、
⑶商品や取引を説明する際の説明内容が恣意的、主観的なものになっていないか、⑷商品や取引の内容(基本的な商品性、及びリスクの内容、種類や変動要因等)を十分理解させるように説明しているか、特に、顧客が理解をする意欲を失わないよう努めているか、⑸当該金融商品取引に関して誤解を与える説明をしていないか、⑹市場動向の急変や市場に重大なインパクトを与える事象の発生が、投資信託の基準価額に重大な影響を与える場合において、顧客に対して適時適切な情報提供に努め、顧客の投資判断をきめ細かくサポートしているか、また、投資信託委託会社は、市場動向の急変時や市場に重大なインパクトを与える事象の発生時において、運用状況等についてのレポートを速やかに作成し、販売した金融商品取引業者に提供しているか、⑺第三者が作成した相場予測等を記載した資料
(新聞記事、アナリストレポート等を含む。)を用いて勧誘を行う場合において、当該相場予測等の内容が偏ったもののみを恣意的に利用していないか、⑻その他、顧客に不当な負担となる、あるいは経済合理性に欠ける商品や取引の勧誘、又は投資判断上の重要な事項の説明不足はないか、が留意事項となっている。
Ⅳ− 3 − 1 − 2 ⑷では、投資信託は、専門知識や経験等が十分ではない一般顧客を含めて幅広い顧客層に対して勧誘・販売が行われる商品であることから、顧客のライフステージ、財産の状況、投資目的等を踏まえたニーズを把握し、これに見合った商品を提供するとともに、顧客の知識、経験、投資意向に応じて適切な勧誘を行うことが重要であるとし、次の点に留意すべきであるとする。⑴投資信託の勧誘を行う際、販売手数料等の顧客が負担する費用、すなわち、 1 .勧誘を行う投資信
託の販売手数料の料率及び購入代金に応じた販売手数料の金額、 2 .販売手数料は、投資信託の保有期間が長期に及ぶほど 1 年当たりの負担率が逓減していくこと、 3 .勧誘する投資信託の購入後、顧客が負担することになる費用、について分かりやすく説明しているか、⑵投資信託の分配金に関して、分配金の一部又は全てが元本の一部払戻しに相当する場合があることを、顧客に分かり易く説明しているか、⑶通貨選択型ファンドについては、投資対象資産の価格変動リスクに加えて複雑な為替変動リスクを伴うことから、通貨選択型ファンドへの投資経験が無い顧客との契約締結時において、顧客から、商品特性・リスク特性を理解した旨の確認書を受け入れ、これを保存するなどの措置をとっているか。
Ⅴ.裁 判 例
裁判では、販売会社の責任⑴が争われることが多い。しかし、投信会社の責任⑵が争われることもある。以下では、適合性原則違反、信義則上の説明義務違反、金商法上の責任が争われた具体例をいくつかみる。
1. 販売会社の責任
・具体例① 大阪高判平成20年 6 月 3 日(金商1300号45頁)(70)
【事実】
X(昭和13年生、歯学医師の免許を所有)は、大学卒業後、大学病院や開業医で勤務医として働いていた。
平成 9 年、Xは、実母が病に倒れたため、 A(開業医である実兄、後にAはXを養子とした。)の自宅兼診療所に転居し、実母の看護・付添いにあたった。Xは証券投資取引をした経験はなかった。
平成11年 4 月、Aの死亡により、Xは、約
4億6,000万円相当の遺産を相続した。相続税を支払った後、X自身の資産(約3,180万円)と合わせ、約 3 億2,000万円の資産をXは所
有することになった。
平成11年秋、B(Y(証券会社)の担当者)は、 Aの株式等の相続手続きの説明のほか、投資商品の取引を勧誘するようになった。
平成12年 8 月までの間、Xは、Yの勧誘に従い、合計 2 億5,770万円の投資商品の取引を行った。Xは、約 2 億1,630万円を以下の 6 種類の投資信託の受益証券と日経平均ノックイン債であるスウェーデン輸出信用銀行債等の商品に充てた。
「フィデリティ・ジャパン・オープン」は、株式の投資割合に制限がなく、株式組入比率は高位で、投資対象には上場銘柄だけでなく店頭登録銘柄も含まれ、高成長企業への積極投資を行うものであった。アジア株式にも投資可能であり、外貨建資産への投資は30%まで認められていた。
「ノムラ日本株戦略ファンド」は、主として国内株式を投資対象とするが、株式投資割合に制限がなく、株式組入れを高水準とし、店頭登録銘柄も投資対象に含むものだった。大中型バリュー(大中型割安株)、大中型グロース(大中型成長株)、小型ブレンド(小型銘柄、店頭登録銘柄、東証 2 部上場銘柄)の各投資スタイルへの資産配分比率を適宜変更できた。
「ジャナス・グローバル・テクノロジー・ファンドA」は、ファンド資産のほとんど全てを全世界の普通株式に投資ができ、特定業界への投資には集中しないが、一定の市場圧力に応じて反応する企業に投資ができた。全世界の成長力ある企業に投資することとなっていた。低格付け証券、規制ある市場で取引されていない証券にも投資が可能であった。オプション取引も一定の制限があるが可能であった。
「ジャナス・グローバル・ライフサイエンス・ファンドA」は、「ジャナス・グローバル・テクノロジー・ファンドA」と同様のリスクないし投資制限を有していた。特定業界への投資に集中しない「ジャナス・グローバル・
テクノロジー・ファンドA」と異なり、この商品は、一定の関連業界へ投資を集中させるものであった。
「ファンド R&R」は、株式組入れを高水準とすることを基本とし、投資対象は国内の株式であるが、リバイバル銘柄、リバウンド銘柄の 2 つの観点から投資銘柄を選定するものであった。
「フィデリティ・中小型株・オープン」は、株式への投資割合に制限がなく、株式組入比率は高位であり、外貨建資産への投資は30%まで認められていた。投資対象は、わが国の株式のうち、主として中小型株であり、店頭登録銘柄や箱積み株式等も対象としていた。
合計4,282万8,997円の損失を被ったXは、 Yの担当者Bに対し、適合性原則違反、説明義務違反があったと主張した。
【判旨】
「BのXに対する一連の本件投資商品の勧誘は、これまで投資経験がなかったのに億単位の額を相続し、投資についての知識を持たず積極的な投資意向もないXに対し、Xの投資経験に注意を払わず、Xの投資意向を確認しないまま、Xの意向と実情に反し、堅実な株式投資から転じて、明らかに過大な危険を伴う商品のみの取引に、そして額においても一個人の投資目論見には到底及ばない桁に達する取引へと積極的に誘導したものであり、適合性の原則から著しく逸脱した証券取引勧誘に該当するといわざるを得ない。」
「本件投資商品は、その特質、仕組みを理解することが容易なものではなく、相対的に高いリスクをはらむ投資商品である。また、 Xは、Bからの勧誘までは投資経験がなく、 Yとの取引について積極的な投資意向を有していなかった。
それにもかかわらず、Xは本件投資商品の購入について、Bの勧誘直後にほぼ即決に近い形で取引することを承諾し、しかも、購入原資に、Aから相続したいずれも一部上場有
名企業の比較的安定した株式の売却代金、預金、公社債信託など安定した資産を躊躇なく充てるなどして、約 2 億1,630万円を本件投資商品に投じたものである。
こうした事実は、Xが各種投資商品の中での本件投資商品の位置付けを理解しないままであり、本件投資商品の仕組みやリスクについてほとんど理解していなかったこと、Xがその代金に充てるために処分した上記資産との間でのリスクの区別ができていなかったことを示すものである。
・・本件投資商品の取引の前に、BがXに対し説明文書を交付し、これに基づいて本件投資商品の仕組みやリスクを、Xにわかるように説明したことを認めるに足りる証拠はない。むしろ、BがXの投資経験に注意を払わず、投資意向を確認していないこと(Bも自認している。)に照らせば、そもそもBは、 Xに対して本件投資商品の仕組みやリスクについてXが理解できていたかについて関心が低く、Xが理解できるように説明を尽くそうとの意識をほとんど持ち合わせていなかったと認めることができる。」
裁判所は、B による勧誘行為が適合性原則違反と説明義務違反の不法行為を構成するとし、Y の損害賠償責任を認めた。また、X の過失割合を 4 割として過失相殺を行った。
・具体例② 大阪地判平成22年 8 月26日(金法1907号101頁)(71)
【事実】
X(昭和 3 年生、取引当時79歳、一人暮らし、専業主婦)は、年金(月16万円程度)、賃料収入(月78万円程度)を有していた。預貯金は約5,000万円程度であった。Xは、相続により取得した株式の一部を長男を通じて売却した以外、株式取引を行ったことはなかった。 Xは、Y(銀行)のB支店に普通預金口座を開設して預金していた。
平成20年 3 月から 8 月にかけて、C(B支店に勤務する行員)・D(B支店の支店長)は、
Xに対し、本件各投資信託の購入を勧誘した。 Yは、投資信託の販売について社内ルールを設けていた。社内ルールでは、①75歳以降85歳未満の年齢の顧客に対する銀行からの勧誘禁止、②本人からの申出があった場合、内部管理責任者と本人の面談・電話による意思確認、家族同席による同意確認が必要、③同席ができない場合には同日販売禁止であるが、例外として、リスク商品取引をした既存顧客については、面談記録カードに理由を記入し、営業責任者・内部管理責任者の承認による同日取扱いが可能、とされていた(その後、社内ルールは改定された。)。本件では、社内ルールに違反した勧誘行為が行われていた。
Xは本件投資信託を合計 4 回購入した。本件投資信託①②③④(いずれも500口)の購入代金はそれぞれ500万円であり、合計2,000万円に達した。
本件投資信託①②③は、特定の日経平均連動債(ユーロ円建て債券)を運用対象とし、株価観測期間中(当初株価算出期間の翌日から最終株価算出日まで)に、日経平均株価の終値が一度も当初株価の65%(ワンタッチ水準)を下回らなかった場合は、投資元本が償還価額となるが、一度でもワンタッチ水準を下回った場合は、最終株価の当初株価比により、投資元本が減額され、償還価額が決定される(最終株価が当初株価を上回った場合は、投資元本を上限とする。)とされていた。また、年に 2 回、分配金が支払われ(目標分配額はあらかじめ定められている。)、年 2 回設定された判定日に日経平均株価が早期償還水準以上であった場合には、直後の決算日に投資元本と目標分配額で早期償還され、以後の分配金は支払われないとされていた。
本件投資信託④は、特定の日経平均連動債
(ユーロ円建て債券)を運用対象とし、株価観測期間中に、日経平均株価の終値が一度もワンタッチ水準を下回らなかった場合は、 1口当たり 1 万0,322円が償還価額となるが、 1 度でもワンタッチ水準を下回った場合は、
最終株価の当初株価比により、償還価額が決定される(ただし、最終価額が当初株価比を上回った場合の償還価額は、 1 万0,322円を上限とする。)、とされていた。
X は、主位的請求として、本件各売買契約は成立していない、または、錯誤により無効であると主張し、予備的請求として、本件各売買契約における担当者の勧誘行為には、適合性原則違反、説明義務違反等があると主張した。
【判旨】
「C・Dは、投資経験及び知識がほとんどなく、慎重な投資意向を有する79歳という高齢で一人暮らしのXに対し、相当のリスクがあり、理解が困難な本件各投資信託の購入を勧誘し、定期預金、普通預金や個人年金という安定した資産を同種のリスク内容の投資信託に集中して投資させたものであり、Xの意向と実情に反し、過大な危険を伴う取引を勧誘したものである上、C・Dが、Yの内部基準を形骸化するような運用をして本件各売買契約を成立させたものであるから、適合性の原則から著しく逸脱した投資信託の勧誘といえる。」
「Cは、本件各投資信託を購入するに当たって、本件各投資信託が預金ではなく投資信託であることや、販売用資料のグラフを示しながらワンタッチ水準についての説明をし、販売用資料、説明書、目論見書を交付していることから、本件各投資信託について一応の説明はしたものと認められる。」
「D・Cは、本件各投資信託の投資対象や運用益についての知識は持ち合わせてはおらず、Yにおいてもその研修もされていないというのであるから、そもそも、販売を勧誘する側に知識不足があったというべきであり、そのような者が一般顧客に商品の内容やリスクを、十分に説明することができるかどうか、疑わしい。」
「Cらの説明を受けたXは、本件各投資信
託について、特段の不安も述べず、本件各売買契約につき、いずれも、Cの訪問、勧誘を受け、その場で直ちに購入を決めているのであり、これらの経緯に照らせば、Xは、本件各投資信託の内容を具体的に理解できず、また、そのリスクを現実味を帯びたものとして理解できていなかったものと認められる。
また、C及びDは、Xが元本保証を重視していることを知っているにもかかわらず、過去の株価の変動状況や、今後の株価予測の参考となる情報を提供しないで、ワンタッチ水準となる価格を示したのみであった。したがって、Cは、本件各投資信託の危険性を具体的に理解することができる程度の説明をしたとは認められない。」
裁判所は、主位的請求を棄却したが、予備的請求について、Yの担当者の勧誘行為は、適合性原則違反・説明義務違反による不法行為を構成するとした。裁判所は、Xの過失割合を 2 割として過失相殺を行った。
・具体例③ 大阪高判平成25年 2 月22日(判時2197号29頁)(72)
【事実】
平成16年 2 月、X(昭和 6 年生、取引当時 76歳、大学卒業後、就職することなく、専業主婦として生活)は、正常圧水頭症等に罹患し、その治療のため入院した。
平成17年 3 月、Xは、成年後見開始の審判を受けた。
平成18年 3 月、Xは退院し、その後、一人暮らしをしている。
平成19年11月、Xは、症状が改善したため、成年後見開始取消の審判を受けた。
平成20年 1 月、相続によって承継した株式を売却し、Xは、1,393万6,765円を得た。
平成20年 1 月10日から平成21年 4 月15日までの間、Xは、Y(証券会社)に開設した口座を通じて、A(Yの従業員)の勧誘により、株式売却金を主たる原資として、投資信託を中心とする各種金融商品を購入した(取引回
数は29回)。投資信託ついては、RC リスク分類において、RC 4 (基準価額の変動が大きいファンド)、RC 5 (基準価額の変動が極めて大きいファンド)に分類されるファンドもあった。外貨建て外国債券や他社株転換可能債券(EB 債)もあった。
Xは、Yに対し、X・Y間の投資信託や EB 債等の金融商品取引について、適合性原則違反、説明義務違反ないし助言義務違反、無意味な反復売買・乗換売買があると主張した。
【判旨】
「Xは、かつて株式の現物取引などの経験はあったものの、その後正常圧水頭症などに罹患して一旦は後見が開始され、後見開始が取り消されてからも主体的な判断で証券取引等を行うことが不可能な状態であった、満76歳という高齢で一人暮らしのXに対し、相当のリスクがあり、理解が困難な投資信託や EB 債の購入を勧誘し、投資させたものであり、Xの意向と実情に反し、過大な危険を伴う本件取引を勧誘したものであるといえるから、Aの勧誘は、適合性の原則から著しく逸脱した投資信託等の勧誘であるというべきである。」
「Aとしては、Xにこのような取引を勧誘するに当たり、Xにおいて、勧誘する取引について自らの証券取引の知識、経験、財産状態、投資意向等に適しているか否かを判断できる機会を与えるべく、Xに対し、新たに取引の対象とする商品の内容、仕組み、投資方針、リスクの質と程度についてはもちろんのこと、乗換売買を行うに当たっては、売却する各商品の状況及び通算の損益状況、手数料等の顧客が負担する内容等、乗換売買を行うことのメリット並びにデメリット及びリスクについても、Xの属性等を踏まえ、Xの取引意向に沿うべく十分に説明して理解させる義務があったというべきである。
・・Xは、満76歳と高齢で、疾病の影響も
あって、理解力や判断力に欠けるところがあった上、取引の対象とした投資信託や EB 債は複雑なものが多かったのであるから、Xとしては、当該商品の特質やリスク、投資判断の材料、乗換えの意味、損益状況等について十分理解することができないまま、Aから勧められるままに本件取引を継続したものというべきであり、Aの上記の程度の説明では、上記の事情の説明を十分尽くしたものとは認めがたい。」
裁判所は、Aによる投資信託や EB 債の勧誘行為が適合性原則や説明義務に違反することを認めた。裁判所は、Xの過失割合を 2 割とした上で、過失相殺を行った。
・具体例④ 東京地判平成26年 3 月11日(判時2220号51頁)(73)
【事実】
顧客X1(昭和 9 年生、株式や転換社債などの投資経験あり、投資信託への投資経験はなし)は、B(不動産賃貸業等を目的とする株式会社)の取締役であり、X3(不動産の賃貸業等を目的とする株式会社)の顧問であった。顧客X2は、Bの代表取締役であった。平成22年 4 月、Y2(投信会社)が作成し
たパンフレット①を用いて、Y1(販売会社、銀行)の担当者は、本件投資信託(豪ドル債券ファンド、追加型、毎月分配型の投資信託)についてX1に説明を行った。
パンフレット①には、分配金に、元本の一部払戻しの性格を有する特別分配金が含まれていることを示す説明はなかった。X1は、本件パンフレット①における分配実績は過去の運用成果をそのまま反映したものであるとの誤認を前提に、購入を決意した。平成 22年 4 月16日を約定日として、本件投資信託
1,000万円分(本件投資信託X1分①)をX1は購入した。Y2が作成した平成22年 1 月付けの目論見書①を受領し、説明を受けたが、詳細をX1は検討しなかった。
平成23年 5 月、Y2が作成した平成23年 1
月21日付けのパンフレット②と交付目論見書
②をX1とX3の代表者に交付し、Y1の担当者は本件投資信託の説明をした。これらの記載事項は、パンフレット①の記載事項とほぼ同一であった。X1とX3は、それぞれ、平成23年 6 月 1 日を約定日として、本件投資信託 1,000万円分(本件投資信託X1分②、本件投資信託会社分)を購入した。
平成23年 7 月、Y2が作成した平成23年 7月20日付けの交付目論見書③を交付し、Y1の担当者は、X2に対し、本件投資信託の説明をした。X2は、平成23年 7 月27日を約定日として、本件投資信託4,000万円分(本件投資信託X2分)を購入した。
平成23年11月、X1は、Y1の担当者の説明により、本件投資信託X1分①②の分配金の約75%が特別分配金である、本件投資信託 X2分及び本件投資信託会社分の分配金全額が特別分配金である、ことが分かった。
Xらは、Yらに対し、⑴①実際は、元本払戻しによる分配がされていたにもかかわらず、過去、収益を出し続けていたと誤認させるものであるから、重要な事実についての虚偽記載がある、②分配金の支払により分配基準額が下落すること、委託会社の裁量的判断により分配金が計算期間中に発生した収益を越えて支払われること、基準価額が前期決算日と比べて下落すること、分配金の水準は必ずしもファンドの収益率を示すものではないこと、についての記載がないので、Y1は金商法17条に基づき、Y2は金商法18条に基づき、損害賠償義務を負う、⑵本件投資信託の勧誘に当たり、本件投資信託の分配金には普通分配金と特別分配金があり、特別分配金は収益や売却益を原資とするものではなく、元本の一部払戻しに相当するものであること、分配金の水準はファンドの収益の実績を示すものでないことを説明する義務があったが、これを怠ったので、Yらは説明義務違反を理由とする不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償義務を負うなどと主張した。
【判旨】
「Xらは、Yらには、①本件投資信託の分配金には普通分配金と特別分配金があり、特別分配金は収益を原資とするものではなく元本の一部払戻しに相当するものであること、
②分配金の水準はファンドの収益の実績を示すものではないこと(以下、①の事実を「本件事実A」、②の事実を「本件事実B」という。)の説明義務があった旨主張する。
このうち本件事実Aは、受益者の最大の関心事である毎月支払を受ける収益分配金につき、その原資が何で、いかなる性質の金員の支払であるかを示す事実であり、金融商品としての最も基本的な性質に関わる事実である。また、本件事実Bは、投資判断に当たって決定的に重要な要素となるファンドの過去の運用実績を理解し、投資判断に供するために不可欠の事実である。
したがって、追加型、毎月分配型の投資信託受益証券の何たるかを熟知しているような投資家は別として、平均的な一般投資家に対して本件投資信託を販売しようとする者は、本件事実A、Bを説明すべき義務を負うというべきであり、この説明義務を怠った者は、当該投資家に対する不法行為責任を免れないというべきである。」
「確かに、本件投資信託X1分①の購入前に X1に交付された本件目論見書①(乙A1、乙 B4)には、・・少なくとも本件事実Aの記載は認められる。しかし、当該記載は、・・「費用及び税金」の大項目の「課税上の取扱い」という項目において、収益分配金には課税扱いとなる普通分配金と非課税扱いとなる特別分配金(受益者毎の元本の一部払戻しに相当する分)の区分があるという説明がされているにすぎないものであって、「ファンドの特徴」の大項目の「収益分配方針」、「収益分配金の支払い」の項目は、・・・本件事実A・ Bには、何ら触れられていない。」
「このような本件目論見書①の記載は、本件事実Aが、受益者の最大の関心事である毎
月支払を受ける収益分配金につき、その原資が何でいかなる性質の金員の支払であるかを示す金融商品としての最も基本的な性質に関わる事実であることに対する配慮を欠いた極めて不適切な記載というべきである上、全57頁にも及ぶ本件目論見書①のどこにも、本件事実Bについては全く触れられていない。」
「このような本件目論見書①が交付されたからといって、直ちに、本件事実A、Bの説明義務が尽くされたと認めることはできず、また、本件事実A、Bについて、Y1の担当者からX1に対し、具体的な口頭説明がされたと認めるに足りる証拠もない。むしろ、 X1が、平成23年11月10日頃、収益分配金の課税上の取扱いをY1の担当者から聞いた後にとった対応(前記 1 ⑾)に照らすと、X1は、同日頃まで、課税上の取扱いを含めて、本件事実A、Bを理解、認識していなかったことが明らかである。」
裁判所は、X1とX3に対するY1の説明義務違反を認めた。裁判所は、X1とX3の過失割合を 5 割として過失相殺を行った。
・具体例⑤ 東京高判平成27年 1 月26日(判時2251号47頁)(具体例④の控訴審)(74)
【判旨】
「分配金の由来として運用収益以外のものが含まれていることや、そのため分配金が分配されていることが必ずしも良好な運用実績を意味しないことといった各事実は、投資信託である以上当然の事柄ともいえる反面、顧客のこれまでの投資経験や新たに取引を開始するに当たっての投資意向等の顧客の個別事情いかんによっては、当該投資信託を購入するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報であるということもできる。・・分配金の由来として運用収益以外のものが含まれていること、及び、分配金が分配されていることが必ずしも良好な運用実績を意味しないことの各事実もまた、当該顧客の属性、すなわち、投資経験、金融商品取引の知識、投資意向、
財産状態等の諸要素を踏まえて、当該顧客が具体的に理解することができる程度に説明をすべきものというべきである。」
「対象となる商品の仕組み、特性、リスクの内容と程度等につき、顧客の属性を踏まえて、顧客が具体的に理解できる説明をしたと評価できるか否かを総合判断すべきであるところ、X1が企業経営に関与し、投資信託に係る 5 年以上の投資経験を有していたことに照らせば、本件投資信託を購入するに当たり X1が分配金の分配実績が運用実績であるかのように誤解していたとは想定し難いし、この点を措くとしても、・・本件においては、 Y1の担当者からX1に対しては、本件投資信託の分配金は投資信託の運用収益を原資とするとは限らず、元本の払戻しによることもあり得ることが口頭で説明され、実質的に上記 A及びBの各事実の説明がされているのであるから、いずれにせよ、Y1に信義則上の説明義務の違反は認められないというべきである。」
裁判所は、販売会社の説明義務違反を否定した。
・具体例⑥ 東京地判平成27年11月26日(判時2297号78頁)
【事実】
平成17年11月頃、X1(昭和 6 年生、高校卒業後、68歳頃まで飲食業に従事)とX2
(X1の夫、昭和 7 年生、67歳頃まで飲食店従業員として勤務)は、不動産を売却し、その代金を預金口座に預け入れた。預入額は、 X1が約1,100万円、X2が約2,700万円であった。Xらの収入は年金又は終身保険であった。
平成18年 3 月 6 日、Y1(販売会社、地方銀行)の従業員であるAは、X1とX2に対し、本件投資信託一(Y2を委託会社とする追加型投資信託「財産三分法ファンド(不動産・債券・株式)毎月分配型」)に関する説明を、 Y2が作成した目論見書・販売用資料を示しながら、行った。分配金が特別分配金となる
場合がある旨の説明をAは口頭で行わなかった。説明後、総合取引申込書兼保護預り口座設定申込書兼投資信託申込確認書、証券投資信託応募・買付申込書兼申込確認書をX1・ X2は作成した。
Aから交付されたY2が作成した目論見書には、収益分配金には、課税扱いになる「普通分配金」と非課税扱いになる「特別分配金」があること、収益分配金落ち後の基準価額が、受益者の一口当たりの個別元本を下回っている場合には、収益分配金の範囲内でその下回っている部分の額が特別分配金となり、収益分配金から特別分配金を控除した金額が普通分配金となること、が示されていた。本件投資信託一について、X1は、1,000万円分、 X2(X1の夫)は、2,500万円分、購入した。
平成19年 2 月27日、X2は、本件投資信託一の一部を売却し、代金809万5,080円を受領した。同日、X1は、本件投資信託一を800万円分購入した。Y1の従業員であるBは、X1に対し、以前Aが交付したY2が作成した目論見書と同じ記載がなされた目論見書を交付した。
平成19年 4 月23日、X2は、本件投資信託二(Zを委託会社とする追加型投資信託「Z・マルチアセット・ファンド・シリーズ 成長重視ポートフォリオ(奇数月分配型)」)をY1の従業員であるCから、200万円分購入した。
本件投資信託二は、内外の証券、不動産投資信託証券及び株式を実質的な主要投資対象として分散投資を行うものであり、「安定重視ポートフォリオ」「インカム重視ポートフォリオ」「成長重視ポートフォリオ」の 3 種類があった。
平成23年11月29日に保有していた本件投資信託一全部をX1は売却し、代金670万4,817円を受領した。平成18年 3 月16日から平成23年11月16日まで、X1が受領した本件投資信託一の分配金は、638万8,003円であった。
同日、保有していた本件投資信託一全部を X2は売却し、代金687万5,470円を受領した。
平成18年 3 月16日から平成23年11月16日まで、X2が受領した本件投資信託一の分配金は、合計737万6,622円であった。X2は、保有していた本件投資信託二全部も売却し、代金93万5,532円を受領した。
X1、X2は、Y1に対し、本件投資信託一について、⑴①本件投資信託一における分配金は普通分配金になる場合と特別分配金になる場合があり、特別分配金は収益を原資とするものではなく元本の一部払戻しに相当すること(本件事実A)、②分配金の水準はファンドの実績を示すものではないということ(本件事実B)について、十分な説明がなく、信義則上の説明義務違反がある、⑵目論見書には重要な事項について誤解を生じさせないために必要な事実の表示が欠けていたので、これを使用したY1は、金商法17条に基づく損害賠償責任を負う、⑶老後資金の大半を本件投資信託一の購入に充てさせたことは、適合原則違反であるなどと主張した。
本件投資信託二について、⑴X2に本件投資信託二の購入を勧誘したことは適合性原則に違反する、⑵X2に対し本件投資信託二を購入するか否かを決定できる程度に、その仕組みやリスク等について説明すべき信義則上の義務を負っていたにもかかわらず、説明を怠った、などと主張した。
【判旨】
⑴ 本件投資信託一について
「A及びBがXらに交付した本件投資信託一に係る目論見書には認定事実⑹のとおりの記載があったところ、通常人が同イの各記載を読めば、本件事実Aを理解することが可能であると認められる。また、これと同アの記載をあわせ読めば、本件事実Bを理解することも可能であると考えられる。」
「Xらが本件投資信託一を購入するに当たり、分配金実績を重視していたなどとの事情もうかがわれない状況下においては、上記目論見書を示して説明を行い、これを交付した
ことをもって、Xらに対し本件事実A及び本件事実Bを具体的に理解できる状況は提供されていたものというべきであり、Y1は説明義務を履行していたものと認められる。」
「Y1が使用した目論見書は本件事実A及び本件事実Bを理解するに足りる記載を含むものだったのであるから、重要な事項について誤解を生じさせないために必要な事実の表示が欠けていたとは認められない。したがって、 Y1が金融商品取引法17条に基づく損害賠償責任を負うことはない。」
「本件投資信託一は、性質上当然に元本割れのリスクはあるものの、投資信託一般との比較において、投資経験に乏しい者への勧誘を避けるべき程度にリスクの高い商品であったとは考え難いこと、Xらは平成18年 2 月時点において少なくとも認定事実⑵記載の預金債権を有しており、これが生活資金以外の余裕資金である旨を述べていたこと(認定事実
⑸)、購入額の決定についてA又はBが過剰な働きかけをしたなどとの事情もうかがわれないことなどを総合すれば、Xらに対して本件投資信託一の購入を勧誘したことが、金融商品取引法40条 1 号に違反する適合性違反行為であったとは認められない。」
⑵ 本件投資信託二について
「本件投資信託二は、三種類のポートフォリオの中では最もリスクの高い商品であったものの、投資信託一般との比較において、投資経験に乏しい者への勧誘を避けるべき程度にリスクの高い商品であったとは考え難いこと、X2はX2第二取引時点において本件投資信託一を一年以上保有していたのであり、これについて損失の発生を認識しながらも直ちに解約することなく保有を継続するなどとの判断をするに足りる程度の知識経験を有していたと考えられること(認定事実⑿)などの事情を総合すれば、Xに対して本件投資信託二の購入を勧誘したことが、金融商品取引法 40条 1 号に違反する適合性原則違反行為であ
ったとは認められない。」
「X2はX2第二取引時点において投資信託に関する相応の知識経験を有していたこと、 CはX2に対して本件投資信託二に係る目論見書を交付して説明をしていること、上記説明のいかなる点が不十分であったのかについての具体的指摘はされていないことなどの事情を総合すれば、Cによる説明が、不法行為を構成する程度に不十分なものであったとは認められないというべきである。」
裁判所は、販売会社の適合性原則違反、説明義務違反、金商法上の責任を否定した。
2. 投信会社の責任
・具体例④ 東京地判平成26年 3 月11日(判時2220号51頁)
【判旨】
「Xらは、Yらには、①本件投資信託の分配金には普通分配金と特別分配金があり、特別分配金は収益を原資とするものではなく元本の一部払戻しに相当するものであること、
②分配金の水準はファンドの収益の実績を示すものではないこと(以下、①の事実を「本件事実A」、②の事実を「本件事実B」という。)の説明義務があった旨主張する。」
「上記説明義務を負う主体は、第一義的には、Xらに対して本件投資信託の販売を勧誘し、直接の売買契約関係に立つY1であると解される。
他方、Y1の担当者は、本件投資信託の発行者であるY2の作成した販売用資料及び目論見書を使用して、これに基づいた説明をするのが通常であると考えられる。そうすると、販売用資料及び目論見書の記述が不適切で、そのために、本件事実A、Bに関する説明が不十分になってしまったという場合には、これら資料の作成者であるY2は、第一義的な説明義務者である Y1とともに、共同不法行為責任を負うというべきである。
その場合のY2の責任の内容は、金融商品取引法17条所定の責任と重複ないし競合する
可能性があるが、そうだとしても、一般不法行為の成立を妨げるものではないというべきである。」
裁判所は、Y2は、Y1とともに共同不法行為責任を負うと判断した。
・具体例⑤ 東京高判平成27年 1 月26日(判時2251号47頁)(具体例④の控訴審)
【判旨】
「投資信託の販売において、顧客への説明に関する業務は、委託会社が受益証券発行の際に目論見書の作成を行い、販売会社が受益証券の募集の際に目論見書の交付を行うという形で分担されるから、本件において説明義務を負う主体は、第一義的には、Xらに対して本件投資信託の販売を勧誘し、直接の売買契約関係に立つY1であると解される。したがって、この点からして、Y2には、特段の事情のない限り、信義則上の説明義務を認めることはできない。さらに、本件においては・・・Y1において信義則上の説明義務違反が認められないのであるから、特段の事情があるともいえず、Y2の信義則上の説明義務違反は認められないというべきである。」
「・・同法17条又は18条の責任の成立要件としての「重要な事項」、「記載すべき重要な事項」又は「誤解を生じさせないために必要な事実」の解釈に当たり、その解釈が同法の委任を受けた政省令等の定めによって限定されるものと解すべき根拠はない。」
「法17条及び18条の責任の趣旨は、投資判断の前提となる資料を確実にし、投資者の保護を図ることにあると解されるが、このような趣旨は、先に述べた信義則上の説明義務による投資者保護と共通する。本件投資信託についていえば、作成された目論見書と資料のいずれも、販売会社が顧客に対して説明を行う際に使用されることが予定されているところ、その際信義則上説明すべきものとされる事項の内容や程度は、当該顧客の属性を踏まえて個別具体的にしか定まらないものであ
る。・・分配金の由来として運用収益以外のものが含まれていること、及び、分配金が分配されていることが必ずしも良好な運用実績を意味しないことの各事実は、当該顧客の投資判断において重要な事実となり得るが、この点も顧客の属性に応じた説明が予定されている。
そうすると、本件各目論見書においては、上記記載はそれ自体直ちに不備ということはできず、重要事項についての虚偽記載に該当するとはいえない・・。」
裁判所は、Y2の説明義務違反、金商法上の責任を否定した。
・具体例⑥ 東京地判平成27年11月26日(判時2297号78頁)
・X1、X2は、Y2に対し、⑴「基準価額が当初元本(一万口当たり一万円)を下回っている場合においても、分配を行う可能性があります」、「収益分配金落ち後の基準金額が、受益者の一口当たりの個別元本を下回っている場合には、収益分配金の範囲内でその下回っている部分の額が特別分配金となり、収益分配金から特別分配金を控除した金額が普通分配金となります」、「収益分配金には課税扱いとなる『普通分配金』と非課税扱いとなる『特別分配金』(元本の一部払戻しに相当する部分)の区別があります」との目論見書及び販売用資料の記載から、本件投資信託一における分配金は普通分配金になる場合と特別分配金になる場合があり、特別分配金は収益を原資とするものではなく元本の一部払戻しに相当すること(本件事実A)、分配金の水準はファンドの実績を示すものではないということ(本件事実B)、を認識することは困難であったので、Y2はY1とともに共同不法行為責任を負う、⑵本件投資信託一に係る目論見書は、重要な事項について誤解を生じさせないために必要な事実(本件事実A及び本件事実B)の表示が欠け、Y2は金融商品取引法 17条や18条に基づく損害賠償責任を負う、と
主張した。
【判旨】
「Y2が作成した本件投資信託一に係る目論見書は本件事実A及び本件事実Bを理解するに足りる記載を含むものだったのであるから、Y2に説明義務違反があったとは認められない。」
「本件投資信託一に係る目論見書は本件事実A及び本件事実Bを理解するに足りる記載を含むものだったのであるから、Y2が金融商品取引法17条又は18条に基づく損害賠償責任を負うことはない。」
裁判所は、Y2の説明義務違反、金商法上の責任を否定した。
Ⅵ.検 討
1. 概 観
Ⅴでいくつかの具体例を示した。示した具体例では、様々な取引相手が問題となっている。例えば、取引経験がない者に対して投資勧誘が行われた例(①)、成年後見開始取消審判から 2 か月経過していない高齢者に対して投資勧誘が行われた例(③)がある。また、様々な取引商品(リスクが高い商品、仕組みが複雑な商品)が問題となっている(75)。例えば、ノックイン型投資信託が問題となった 例(②)、分配型投資信託が問題となった例(④
⑤⑥)がある。民事責任を追及された相手方は、投資信託の販売会社のみの場合(①②③)もあるが、投資信託の運用を担う投信会社も含む場合(④⑤⑥)もある。
結論として、裁判所は、適合性原則違反と信義則上の説明義務違反を販売会社に認めた場合(①②③)、販売会社と投信会社に説明義務違反を認めた場合(④)、販売会社と投信会社に説明義務違反はないと判断した場合
(⑤⑥)、がある。
2. 販売会社の責任
販売会社は、受益証券の募集及び販売の取扱い、目論見書の交付などの業務を行う。
まず、顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして、勧誘が不適当と認められるか否か、販売会社は、判断しなければならない。
次に、販売会社は、第一次的に説明義務を負う。①②③判決によると、説明義務の根拠には、販売会社と顧客の間には知識・経験・情報収集能力・分析能力の格差があること、顧客は、販売会社の提供する情報や助言に依存して投資を行っていること、販売会社は顧客を得ることで利益を得ていること等がある。説明義務の対象は、主として、商品の概要・取引の仕組みや商品・取引のリスクである。当該顧客がそれらを具体的に理解することができる程度の説明を、当該顧客の投資経験、知識、理解力に応じて、販売会社は行う。
④判決の特徴は、⑴説明義務の対象を、(事実A)投資信託の分配金には普通分配金と特別分配金があり、特別分配金は収益や売却益を原資とするものではなく、元本の一部払戻しに相当するものであること、(事実B)分配金の水準はファンドの収益の実績を示すものでないこと、としていること、⑵説明義務の基準を、当該顧客ではなく平均的な一般投資家、としていることにある。裁判所は、交付したパンフレットや目論見書では、事実A・事実Bの記載が不十分であるとし、説明義務を販売会社は十分に尽くしていないと判断した。
この判断に対し、④判決の控訴審である⑤判決は、④判決と同様、事実A・事実Bを説明義務の対象とした。しかし、⑤判決は、
「X1が企業経営に関与し、投資信託に係る 5年以上の投資経験を有していたことに照らせば、本件投資信託を購入するに当たりX1が分配金の分配実績が運用実績であるかのように誤解していたとは想定し難い」として、当該顧客を説明義務の基準とした。結論として、
「本件においては、Y1の担当者からX1に対しては、本件投資信託の分配金は投資信託の運用収益を原資とするとは限らず、元本の払戻しによることもあり得ることが口頭で説明され」としつつ、⑤判決は、販売会社に説明義務違反は認められないと判断した。
⑥判決も、⑤判決と同様、事実A・事実Bを説明義務の対象とし、当該顧客を説明義務の基準とした。⑥判決は、「Xらが本件投資信託一を購入するに当たり、分配金実績を重視していたなどとの事情もうかがわれない状況下においては、上記目論見書を示して説明を行い、これを交付したことをもって、Xらに対し本件事実A及び本件事実Bを具体的に理解できる状況は提供されていたものというべきであり、Y1は説明義務を履行していたものと認められる。」、「Y1が使用した目論見書は本件事実A及び本件事実Bを理解するに足りる記載を含むものだったのであるから、重要な事項について誤解を生じさせないために必要な事実の表示が欠けていたとは認められない。したがって、Y1が金融商品取引法 17条に基づく損害賠償責任を負うことはない。」とし、販売会社の説明義務違反や金商法上の責任を否定した。
事実A・事実Bについては、「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」や投資信託協会による『交付目論見書の作成に関する規則』で、対応が図られている。
④判決では、説明義務違反の検討において、裁判所は、誤解を生じさせないために必要な事実の記載が欠けた目論見書や資料を販売会社が用いたことに着目している。ここでは、実質的には「目論見書責任」(金商法17条)が問題になっていたとの指摘もある(76)。目論見書は、①目論見書の情報により有価証券の価格付けが適正なものになっているか否か、②当該有価証券が自己の属性や投資目的にふさわしいものであるか否か、についての投資家の判断に資する。記載事項は決まっている(交付目論見書については、金商法13条
2 項 1 号イ、特定有価証券開示15条 1 号、特定有価証券開示15条の 2 )(77)。このように、金商法17条にいう目論見書責任は、特定個人ではなく、市場一般に対する責任とされ(78)、
「重要性」は、投資家一般、市場一般にとっての抽象的・客観的な重要性とされる(79)。目論見書責任と説明義務違反による責任は制度の趣旨が異なる。
3. 投信会社の責任
投信会社は、信託約款の作成、届出および投資信託契約の締結(投信法 3 条、投信法 4条 1 項)などを行い、商品の開発の役割を担っている(80)。また、委託者指図型投資信託の場合、投信会社が有価証券を発行し(投信法 2 条 7 項)、目論見書を作成する(金商法 13条 1 項)。
④⑤⑥判決は、いずれも、第一義的には、説明義務を負う主体は、販売会社であるとした。その上で、④判決は、「販売用資料及び目論見書の記述が不適切で、そのために、本件事実A、Bに関する説明が不十分になってしまったという場合には、これら資料の作成者であるY2は、第一義的な説明義務者であるY1とともに、共同不法行為責任を負うというべきである」とし、投信会社の説明義務違反を肯定している。
⑤⑥判決は、反対に、投信会社の説明義務違反を否定した。⑤判決は、「投信会社には、特段の事情のない限り、信義則上の説明義務を認めることはできない。さらに、本件においては・・・販売会社において信義則上の説明義務違反が認められないのであるから、特段の事情があるともいえず、投信会社の信義則上の説明義務違反は認められないというべきである。」と判断し、⑥判決は、投信会社が作成した本件投資信託一に係る目論見書は本件事実A及び本件事実Bを理解するに足りる記載を含むものだったのであるから、説明義務違反、金融商品取引法17条又は18条に基づく責任を投信会社は負わない、と判断した。
⑤判決における「特段の事情」については、商品が複雑・高度化されたもので、販売を担当する業者は、発行者やファンド設定者が作成した目論見書に絶対的に依拠するほか、商品の内容を理解することができず、説明する方法がなかったという場合、が考えられるという見解(81)もある。
しかし、直販以外では、投信会社の中心的な役割は、適切かつ十分な内容の目論見書・販売用資料を作成することにある(82)。投信会社が重要な不備のある目論見書を作成した場合、投信会社は目論見書の記載を訂正しなければならない(83)。信義則上の説明義務が問題となる場合は限られるとされる(84)。
⑤判決は、目論見書責任について、「作成された目論見書と資料のいずれも、販売会社が顧客に対して説明を行う際に使用されることが予定されているところ、その際信義則上説明すべきものとされる事項の内容や程度は、当該顧客の属性を踏まえて個別具体的にしか定まらないものである。」としている。説明義務違反の有無の判断と同様に、属性を踏まえて個別具体的に判断するとしているが、目論見書責任の制度趣旨は、先に述べた通り、説明義務違反による責任とは異なる(85)。
【注】
(1)本柳祐介・河原雄亮『投資信託の法制と実務対応』(商事法務、2015) 1 頁。
(2)大塚英明・川島いづみ・中東正文・石川真衣『商法総則・商行為法[第 3 版]』(有斐閣、2021)329頁。
(3)潮見佳男『新契約各論Ⅱ 』(信山社、 2021)405頁、中田裕康『契約法』(有斐閣、2017)553-585頁。
(4)潮見佳男『民法(債権関係)改正法の概要』(きんざい、2017)338頁、山本豊(編)
『新注釈民法⒁債権⑺』(有斐閣、2018) 557-566頁、平野裕之『新債権法の論点と解釈[第 2 版]』(慶應義塾大学出版会、
2021)547-548頁。
(5)潮見佳男・千葉恵美子・片山直也・山野目章夫(編)『詳解 改正民法』(商事法務、2018)545頁、松岡久和・松本恒雄・鹿野菜穂子・中井康之(編)『改正債権法コンメンタール』(法律文化社、2020) 935-937頁、潮見佳男・北居功・高須順一・赫高規・中込一洋・松岡久和(編著)『Before/After 民法改正』(弘文堂、 2017)452-453頁。
(6)弥永真生『リーガルマインド商法総則・商行為法[第 3 版]』(有斐閣、2019)161頁。
(7)近藤光男『商法総則・商行為法[第 8 版]』
(有斐閣、2019)171頁。
(8)近藤・前掲(注7)173頁。
(9)岡橋寛明「投資事業有限責任組合法(ファンド法)の抜本改正」金法1708号20頁以下(2004)、篠原倫太郎「投資事業有限責任組合法の改正の概要」商事法務 1698号17頁以下(2004)。
(10)長崎幸太郎(編著)『逐条解説 資産流動化法』(きんざい、2003)51-52頁。
(11)西村あさひ法律事務所(編)『資産・債券の証券化・流動化[第 3 版]』(きんざい、2020)56-80頁。
(12)神作裕之「運用型集団投資スキームの業規制―投資信託・投資法人制度とプロ向けファンド規制の見直し―」金法2023号39頁(2015)。
(13)田村威『投資信託 基礎と実務[17訂]』
(経済法令研究会、2020)74-79頁。
(14)田村・前掲(注13)79-82頁。
(15)田村・前掲(注13)83-88頁。
(16)田村威・杉田浩治・林皓二・青山直子『プロフェッショナル投資信託実務[16訂]』
(経済法令研究会、2020)100-105頁。
(17)森・濱田松本法律事務所編『投資信託・投資法人の法務』(商事法務、2018) 43-44頁。
(18)森・濱田松本法律事務所編・前掲(注 17)43-44頁。
(19)田村威・杉田浩治・林皓二・青山直子・前掲(注16)101-102頁。
(20)本柳・河原・前掲(注1) 3 頁。
(21)本柳・河原・前掲(注1) 3 頁。
(22)山下友信・神田秀樹(編)『金融商品取引法概説[第 2 版]』(有斐閣、2017)385頁。
(23)森・濱田松本法律事務所編・前掲(注 17)67頁。
(24)野村アセットマネジメント株式会社(編著)『投資信託の法務と実務[第 5 版]』(きんざい、2019)36-37頁。
(25)澤飯敦・大越有人・滝琢磨(編著)・大橋英樹・有里貴夫・太田昌男・大井修平・前田禎夫・白澤光音(著)『投資信託・投資法人法コンメンタール』(商事法務、 2019)25頁。
(26)野村アセットマネジメント株式会社(編著)・前掲(注24)37頁。
(27)道垣内弘人(編著)『条解 信託法』(弘文堂、2017)162-185頁。
(28)道垣内弘人(編著)・前掲(注27)185- 204頁。
(29)松尾直彦『金融商品取引法[第 6 版]』(商事法務、2021)374-375頁。
(30)黒沼悦郎『金融商品取引法[第 2 版]』(有斐閣、2020)664-665頁。
(31)山下・神田(編)・前掲(注22)396頁。
(32)岸田雅雄(監修)『注釈金融商品取引法
【第 2 巻】業者規制』(きんざい、2009) 842-850頁。
(33)野村アセットマネジメント株式会社(編著)・前掲(注24)38-39頁。
(34)森・濱田松本法律事務所編・前掲(注 17)21頁。
(35)黒沼・前掲(注30)34頁。
(36)近藤光男・志谷匡史・石田眞得・鎌田薫子『基礎から学べる金融商品取引法[第 4 版]』(弘文堂、2018)42-54頁。
(37)本柳・河原・前掲(注1)45頁。
(38)黒沼・前掲(注30)221-223頁。
(39)松尾・前掲(注29)156頁。
(40)森・濱田松本法律事務所編・前掲(注 17)32頁。
(41)黒沼・前掲(注30)107頁。
(42)森・濱田松本法律事務所編・前掲(注 17)32頁。
(43)本柳祐介『投資信託法制の現状と展望(別冊商事法務376号)』(商事法務、 2013)68-69頁。
(44)本柳・前掲(注43)70頁。
(45)黒沼・前掲(注30)118頁。
(46)黒沼・前掲(注30)119頁。
(47)黒沼・前掲(注30)119頁。
(48)角田美穂子「取引における自己決定権の法的保護―金融商品取引を中心に」『不法行為法の立法的課題』別冊 NBL155号
(商事法務、2015)151頁。
(49)35 交付目論見書の作成に関する規則. pdf(toushin.or.jp)。2020年 6 月に改正があり、2022年 1 月から新たな規則は施行される予定である。
(50)河内隆史(編集代表)・野田博・三浦治・山下典孝・木下崇・松嶋隆弘(編)『金融商品取引法の理論・実務・判例』(勁草書房、2019)359頁。
(51)神田秀樹・神作裕之・大崎貞和・松尾直彦(編著)『金商法実務ケースブック
Ⅰ判例編』(商事法務、2008)154-165頁。
(52)横山美夏「契約締結過程における情報提供義務」 ジュリ1094号130-131頁
(1996)。
(53)沖野眞已 「消費者契約法(仮称)」の一検討⑶ 」NBL654号40頁(1998)、 大村敦志『消費者法[第 4 版]』(有斐閣、 2011)94-95頁。
(54)三枝健治「アメリカ契約法における開示義務―契約交渉における「沈黙による詐欺」の限界づけを目指して(二・完)」早法72巻 3 号158頁以下(1997)。
(55)潮見佳男「説明義務・情報提供義務と自己決定」判タ1178号 9 頁以下(2005)、小粥太郎「説明義務違反による不法行為
と民法理論―ワラント投資の勧誘を素材として(上)(下)」ジュリ1087号118頁以下(1996)、ジュリ1088号91頁以下
(1996)、小粥太郎「「説明義務違反による損害賠償」に関する二、三の覚書」自正47巻10号36頁以下(1996)。
(56)横山美夏「説明義務と専門性」判タ 1178号18頁以下(2005)。
(57)山本敬三「民法における『合意の瑕疵』論の展開とその検討」棚瀬孝雄編『契約法理と契約慣行』(弘文堂、1999)169頁以下。
(58)潮見佳男『新債権総論Ⅰ 』(信山社、 2017)145頁。
(59)例えば、大阪地判平成 6 年 3 月30日判タ855号220頁がある。
(60)木村健太郎「新しい金融サービス仲介業に関する実務的検討」NBL1188号17頁以下(2021)、岡田大・小長谷章人・名取裕之・林崎由莉子・宗川帆南 「金融サービスの利用者の利便の向上及び保護を図るための金融商品の販売等に関する法律等の一部を改正する法律」の解説
( 2 ・完)」NBL1191号 7 頁以下(2021)。
(61)日本弁護士連合会消費者問題対策委員会編『金融商品取引被害救済の手引[ 6訂版]』(民事法研究会、2015)81-86頁。
(62)池田和世「金融商品販売法の改正」商事法務1782号17-18頁(2006)。
(63)田村・前掲(注13)252-253頁。
(64)田村・前掲(注13)253頁。
(65)岡田大・荒井伴介「金融サービスの利用者の利便の向上及び保護を図るための金融商品の販売等に関する法律等の一部を改正する法律の概要」NBL1182号24頁(2020)。
(66)黒沼・前掲(注30)568頁。
(67)黒沼・前掲(注30)570頁。
(68)200616_toushikanyu.pdf(jsda.or.jp)。
(69)kinyushohin.pdf(fsa.go.jp)。長島・大野・常松法律事務所編『アドバンス 金融商
品取引法[第 3 版]』(商事法務、2019) 862頁。
(70)判例評釈には、神谷隆一「判批」学習院法務研究 1 号89頁以下(2010)、神谷隆一「判批」銀行法務21第700号48頁以下(2009)、鳥谷部茂「判批」別冊ジュリ200号136頁以下(2010)、鳥谷部茂「判批」別冊ジュリ249号156頁以下(2020)、松岡啓祐「判批」金判1335号 2 頁以下
(2010)、松嶋隆弘「判批」金判1336号 226頁以下(2010)がある。
(71)判例評釈には、浅井弘章「判批」銀行法務21第728号30頁(2011)、大澤一記「判批」金商1511号120頁以下(2017)、亀井洋一「判批」金法1956号14頁以下(2012)、香月裕爾「判批」銀行法務21第725号 4頁以下(2011)、香月裕爾「判批」金商 1356号 1 頁(2011)、潮見佳男「判批」金商1350号 1 頁(2010)、志谷匡史「判批」商事法務1971号 4 頁以下(2012)、鈴木雄介「判批」金商1355号 2 頁以下(2010)、松尾直彦「判批」ジュリ1439号118頁以下(2012)がある。
(72)判例評釈には、浅井弘章「判批」銀行法務21第767号60頁(2014)、 大原寛史
「判批」金商1486号20頁以下(2016)、カライスコス・アントニオス「判批」金商 1511号76頁以下(2017)、熊谷士郎「判批」現代消費者法26号100頁(2015)、倉重八千代「判批」法学研究99号137頁以下(2015)、執行秀幸「判批」リマ51号 42頁以下(2015)、山下純司「判批」金法2025号71頁以下(2015)。
(73)判例評釈には、青木則幸「判批」リマ 51号34頁以下(2015)、青木浩子「判批」 NBL1039号 8 頁 以 下(2014)、 香 月 裕爾「判批」銀行法務21第774号 4 頁以下
(2014)、山中眞人「判批」金法2006号 6頁以下(2014)がある。
(74)判例評釈には、青木浩子「判批」金法 2016号 6 頁以下(2015)、岩佐祐希「判批」
金商1511号70頁以下(2017)、 香月裕爾「判批」銀行法務21第785号 4 頁以下
(2015)、桜井健夫「判批」リマ54号38頁以下(2017)、角田美穂子「判批」民事判例11号86頁以下(2015)、高橋陽一「判批」商事法務2182号62頁以下(2018)、谷本誠司「判批」銀行法務21第786号56頁(2015)、中根大輔「判批」金法2030号46頁以下(2015)、野田耕志「判批」ジュリ1490号115頁以下(2016)、浜辺陽一郎「判批」20150407.pdf(westlawjapan. com)、山中眞人「判批」銀行法務21第 788号17頁以下(2015)がある。
(75)桜井健夫・上柳敏郎・石戸谷豊『新・金融商品取引法ハンドブック[第 4 版]』
(日本評論社、2018)516頁。
(76)角田・前掲(注74)86頁。
(77)森・濱田松本法律事務所編・前掲(注 17)58頁。
(78)山下・神田(編)・前掲(注22)196頁。
(79)山下・神田(編)・前掲(注22)196頁。
(80)角田美穂子「投資信託の販売・勧誘に関する私法上の問題」金法2023号55-56頁(2015)。
(81)野田・前掲(注74)118頁。
(82)和田亮裕・山中眞人「MMF 等の投資信託に関する説明義務の理論的整理―投資信託と販売会社の説明義務の関係―」金法2006号45頁(2002)。
(83)山中・前掲(注73)7-8頁。
(84)香月・前掲(注74) 8 頁。
(85)岩佐・前掲(注74)74頁、高橋・前掲(注 74)67頁。
(こばやし・かずこ)