(Economy)と効率性(Efficiency)、さらに有効性(Effectiveness)の見地から、評価判定を行うべきことを求められているといえよう。そ こで、長野市においても、今回の特定の事件(テーマ)について、事務の執行が適正に処理されているか、問題点の把握、検討を行う。
xx市監査委員告示 第2号
地方自治法第252 条の37 第5項の規定に基づき、包括外部監査人 xx xx xから、別紙のとおり平成 25 年度包括外部監査契約に基づく監査の結果に関する報
告の提出がありましたので、同法第 252 条の 38 第3項の規定により、次のとおり公表します。
平成 26 年2月 25 日
長野市監査委員 | x | x | x | x |
x | x | x | x | |
同 | x | x | x | x |
同 | x | x | x | x |
xx 25 年度
長野市包括外部監査の結果に関する報告書
監査テーマ
「財産管理の事務の執行について」
平成 25 年度xx市包括外部監査人
外部監査人 | 税理士 | xxxx |
補 助 者 | 税理士 | xxxx |
補 助 者 | 税理士 | xxxx |
補 助 者 | 税理士 | xxxx |
目 次
Ⅰ 包括外部監査の概要 8
1.外部監査の種類 8
2.選定した特定の事件(テーマ) 8
3.特定の事件(テーマ)として選定した理由 8
4.外部監査対象期間 8
5.外部監査の実施期間 8
6.監査の着眼点 8
7.主な監査手続・手法 9
8.外部監査人及び補助者 10
9.利害関係 10
10.その他 10
Ⅱ 公有財産の資産評価 11
1.資産評価について 11
(1)はじめに 11
①企業とディスクロージャー 11
②地方公共団体とディスクロージャー 11
(2)地方公会計制度の整備 12
①財務書類整備の目的 12
②財務書類整備の効果(現金主義による会計の補完) 13
③財務書類の活用の視点 15
④公会計と企業会計 16
(3)財務書類 4 表 19
①財務書類の種類 19
②xx市の財務書類作成方法 22
③平成 24 年度xx市財務書類 24
(4)財務書類の作成モデル 28
①公会計モデル一覧 28
②総務省方式改訂モデルの特徴 30
(5)売却可能資産 31
①xx市の『公共施設白書』 31
②財務書類上の表示 34
③固定資産評価について(売却可能資産の定義) 34
(6)普通財産と行政財産の区分 37
①公有財産の範囲と分類 37
②地方自治法 40
(7)行政改革推進法 44
①国の取組み 44
②国と地方の協働 44
(8)売却可能資産に関する個別検討 46
①xx駅東西自由通路 46
②もんぜんぷら座 50
(9)監査の結果等 60
<長野駅東西自由通路> 60
①実施した監査手続 60
②実施した監査の結果等 60
<もんぜんぷら座> 61
①実施した監査手続 61
②実施した監査の結果等 61
2.減価償却について 62
(1)企業会計の減価償却 62
①固定資産 62
②減価償却 63
③取得価額 65
④残存価額 67
⑤耐用年数 67
⑥減価償却の方法 75
⑦資本的支出と修繕費 76
⑧リース会計 76
⑨減損会計 77
⑩資産除却債務 77
(2)従来の自治体会計と新地方公会計について 77
①従来の自治体会計の概要 77
②従来の自治体会計の問題点 79
③新地方公会計制度における減価償却の内容 80
④財務書類の活用について 81
(3)減価償却に関わる固定資産台帳の整備 93
①固定資産台帳の必要性 93
②固定資産台帳整備の効果 94
③基準モデルにおける減価償却の取り扱い 94
④総務省方式改訂モデルにおける減価償却の取り扱い 97
(4)監査の結果等 98
①実施した監査手続 98
②実施した監査の結果等 98
Ⅲ 未収金等 100
1.自治体の有する債権 100
(1)債権 100
(2)債権の種類 100
(3)債権管理の流れと時効期間 100
①債権管理の流れ 100
②時効期間 101
③時効の援用の要否と時効利益の放棄の可否 101
④時効の中断 101
(4)債権区分に応じた管理フロー図 102
①強制徴収公債権の場合 102
②非強制徴収公債権・私債権の場合 103
(5)市の債権一覧表 104
(6)債権管理監査視点 104
2.租税債権 105
(1)概要 105
(2)監査の結果等 113
①実施した監査手続 129
②実施した監査の結果等 129
3.保育所保育料 153
(1)概要 153
(2)監査の結果等 156
①実施した監査手続 171
②実施した監査の結果等 171
4.改良住宅使用料 174
(1)概要 174
(2)監査の結果等 175
①実施した監査手続 183
②実施した監査の結果等 183
5.市営住宅及び駐車場使用料 184
(1)概要 184
(2)監査の結果等 189
①実施した監査手続 195
②実施した監査の結果等 195
6.し尿処理手数料 199
(1)概要 199
(2)監査の結果等 202
①実施した監査手続 207
②実施した監査の結果等 207
7.住宅新築資金等貸付金 209
(1)概要 209
(2)監査の結果等 210
①実施した監査手続 215
②実施した監査の結果等 215
8.南長野運動公園野球場フェンス広告掲載料 217
(1)概要 217
(2)監査の結果等 218
①実施した監査手続 221
②実施した監査の結果等 221
9.空き店舗活用事業補助金 223
(1)概要 223
(2)監査の結果等 224
①実施した監査手続 227
②実施した監査の結果等 227
10.廃棄物撤去委託費 229
(1)概要 229
(2)監査の結果等 230
①実施した監査手続 236
②実施した監査の結果等 236
11.生活保護法に基づく返還金 237
(1)生活保護費について 237
①申請保護の原則 237
②保護の補足性 237
③世帯単位の原則 237
④生活保護の種類 237
(2)生活保護法に基づく返還金 237
①資力があるにもかかわらず保護を受けた場合の返還 238
②不正受給の費用徴収 238
③扶養義務者からの費用の徴収した監査手続 239
④xx市の返還金・徴収金等のフローチャート 240
(3)監査の結果等 241
①実施した監査手続 244
②実施した監査の結果等 244
12.児童手当返還金 246
(1)概要 246
(2)監査の結果等 247
①実施した監査手続 250
②実施した監査の結果等 250
13.児童扶養手当返還金 252
(1)概要 252
①児童扶養手当返還金について 252
②制度の趣旨 252
③根拠法令等 252
④未収金が発生する状況 253
⑤資格喪失の理由 254
(2)監査の結果等 255
①実施した監査手続 258
②実施した監査の結果等 258
14.母子寡婦福祉資金貸付金 260
(1)概要 260
①はじめに 260
②制度について 261
③貸付手続 263
④償還手続 263
⑤回収手続 264
⑥一時償還及び違約金 267
(2)監査の結果等 268
①実施した監査手続 271
②実施した監査の結果等 271
15.学校給食費(旧xx町学校給食) 273
(1)概要 273
(2)監査の結果等 275
①実施した監査手続 278
②実施した監査の結果等 278
16.国民健康保険料 280
(1)概要 280
①被保険者数の推移 280
②保険料の賦課 280
③保険料の平均額及び最高、最低年額 281
④保険料の納付状況 282
⑤収納率について 283
⑥滞納処分の状況 285
(2)監査の結果等 286
①実施した監査手続き 290
②実施した監査の結果等 290
17.後期高齢者医療保険料 291
(1)概要 291
①後期高齢者医療制度 291
②xx市の後期高齢者医療保険料の滞納整理基本方針 291
③収納率 292
(2)監査の結果等 294
①実施した監査手続き 297
②実施した監査の結果等 297
18.介護保険料 299
(1)概要 299
①第 1 号被保険者(65 歳以上)の状況 299
②保険料減免の状況 299
③収納率等の状況 299
④収納事務に関する事務フローと給付制限に関する事務フロー 301
(2)監査の結果等 303
①実施した監査手続 306
②実施した監査の結果等 306
19.長野市民病院診療費 307
(1)概要 307
①目的 307
②事業 307
(2)監査の結果等 309
①実施した監査手続 312
②実施した監査の結果等 312
20.水道料金 315
(1)概要 315
(2)監査の結果等 322
①実施した監査手続 325
②実施した監査の結果等 325
21.下水道使用料 328
(1)概要 328
(2)監査の結果等 330
①実施した監査手続 333
②実施した監査の結果等 333
22.xx市収納向上対策協議会 334
(1)協議会の設置目的 334
(2)協議会の構成メンバー(平成 25 年度) 334
(3)協議会で検討される内容 334
①徴収体制の整備 334
②未収金を発生させない制度の確立 334
(4)設置日 335
(5)協議会の事務局 335
(6)活動の状況 335
(7)実施した監査手続 335
(8)実施した監査の結果等 335
23.総括 337
(1)債権の回収のための環境整備 337
①債権管理条例等の整備 337
②債権管理マニュアルの整備 337
③市長専決の整備 338
(2)滞納者情報共有についての整備 338
(3)連帯保証人への請求について 339
(4)延滞金管理の整備 339
(5)全市的な収納組織の整備 339
(6)債権回収業務の民間委託 340
※参考法令等 341
Ⅰ 包括外部監査の概要
1.外部監査の種類
地方自治法第 252 条の 37 第 1 項、第 2 項及びxx市外部監査契約に基づく監
査に関する条例(平成 11 年 3 月 30 日xx市条例第 4 号)の規定に基づく監査
2.選定した特定の事件(テーマ)
地方自治法第 252 条の 37 第 1 項に規定する特定の事件として、以下を選定した。
「財産管理の事務の執行について」
3.特定の事件(テーマ)として選定した理由
近年、地方公共団体の地方公会計において、総務省から新たな会計基準モデルが示された。新会計基準では、固定資産台帳の整備と民間企業並みの複式簿記を自治体に要請しており、会計基準は発生主義及び複式簿記に基づくものとなる。
現在、地方公共団体の現場では、新地方公会計の導入が進んでいる最中にある。そこで、上記した事件(テーマ)の中でも「公有財産の資産評価」と「未収金等について」に重点を置き、それらの現状が法令に準拠し、xx性が確保され、また効率的に執行されているかについての検証を行っていく。
自治体における新たな会計基準と公有財産等の現況を監査することは、今後の地方行財政運営のためにも大きな意義があると判断し、当該事件を監査テーマとして選定した。
4.外部監査対象期間
平成 24 年度(平成 24 年 4 月 1 日から平成 25 年 3 月 31 日)。ただし、必要に応じ他の年度についても監査の対象とした。
5.外部監査の実施期間
平成 25 年 7 月 19 日から平成 26 年 1 月 31 日まで
6.監査の着眼点
※地方自治法第 2 条第 14 項
地方公共団体は、その事務を処理するに当たっては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。
※地方自治法第 2 条第 15 項
地方公共団体は、常にその組織及び運営の合理化に努めるとともに、他の地方公共団体に協力を求めてその規模の適正化を図らなければならない。
・包括外部監査人は、上記の規定の趣旨に則ってなされているかどうかに、意を用いなければならないと定めている。これは包括外部監査が、経済性
(Economy)と効率性(Efficiency)、さらに有効性(Effectiveness)の見地から、評価判定を行うべきことを求められているといえよう。そこで、xx市においても、今回の特定の事件(テーマ)について、事務の執行が適正に処理されているか、問題点の把握、検討を行う。
財務書類の作成にあたっては、決算統計データの入力のほか、売却可能資産、長期延滞債権、未収金、退職手当引当金、損失補償等引当金など決算統計データ*には含まれない数値を反映させる必要がある。そこで、特に「売却可能資産」、
「減価償却」、「未収金等」について着眼し、問題点の把握と検討を行った。
*決算統計データ・・・「地方財政状況調査(決算統計)の数値」。決算統計は「地方自治法等の規定に基づく地方公共団体の報告に関する総理府令」(昭和 28 年)に基づいて、毎年度各自治体で作成される会計資料である。決算統計が対象とする会計は、普通会計(各自治体における一般会計と公営事業会計以外の特別会計を合算処理した会計)と公営事業会計であり、その結果は総務省に報告される。
7.主な監査手続・手法
(1)関係書類の閲覧
①「公有財産の資産評価」の中でも「売却可能資産」と「減価償却」等に関係、関連のある担当部署より、関係書類や資料の提供を受け、検証し問題点を把握する。
②「未収金等」に関係、関連のある担当部署より、関係書類や資料の提供を受け、検証し問題点を把握する。
(2)関係者への質問(ヒアリング) 担当部署に対して質問、確認を行う。
(3)現場往査
必要と判断される財産については往査し、現状を把握する。
8.外部監査人及び補助者
外部監査人 | 税理士 | xx | xx |
補助者 | 税理士 | xx | xx |
補助者 | 税理士 | xx | xx |
補助者 | 税理士 | xx | xx |
0.利害関係
選定した特定の事件について、包括外部監査人及び補助者は、地方自治法第
252 条の 29 の規定により記載すべき利害関係はない。
10.その他
本報告書における金額、数値の表示については各項目における端数処理の関係上、合計欄の値が一致していない場合がある。
Ⅱ 公有財産の資産評価
1.資産評価について
(1)はじめに
①企業とディスクロージャー
ディスクロージャーとは「情報開示」の総称であり、資本市場におけるディスクロージャーは、制度上のディスクロージャーと、任意のディスクロージャーに大別される。企業がディスクロージャーをする目的は、投資家の判断のために自社の経営状態についての情報を公開・提供することにある。
制度上のディスクロージャーは、証券取引法に定められた情報開示など、法律及び規則による規制があり、その内容や時期が強制されている。具体的な内容としては、毎年の有価証券報告書の開示、決算短信発表、会社への影響の大きい出来事のプレスリリースなどがある。関連法規としては、証券取引法、証券取引所規則、商法などが主なものとなる。また、その特徴としては、情報の公開と提供が強制される制度であり、投資家保護を目的としている点にある。
任意のディスクロージャーは、一般に IR(Investors Relations)といわれるものを指し、企業が投資家に対して PR をするような情報開示も含んでいる。xxな情報提供であれば基本的に規制はなく、企業がその方法や内容を決定することができる。具体的な内容としては、決算発表説明会やアナリスト説明会、月次データの開示、HP 上での情報提供などが挙げられる。その特徴は、投資家への PR を目的とした、企業の任意の取組みである点にある。また、ディスクロージャーには情報管理や人員に必要な費用に加えて、開示した情報による他企業との競争上の不利益や、誤った情報提供による訴訟リスクといったデメリットも存在している。
②地方公共団体とディスクロージャー
地方公共団体の財政状況についての情報を整理し、会計の原則に沿って作成したものが、各地方公共団体が作成している財務書類である。その公表・説明は、市町村などから住民へ向けて行うディスクロージャーだといえる。地方公共団体の貸借対照表などを含んだ「財務書類 4 表」の整備については、総務省
通知(平成 18 年)によって、全国の地方公共団体へ要請されるとともに、新地
方公会計制度実務研究会(平成 19 年)においても、早急な整備と公開の要望が示された。
地方公共団体の財政状況を表す財務書類は行財政運営上、非常に多くの情報
を備えた重要な書類である。このような財務書類は、議会や住民に公表することが求められており、住民の意思を代表する議会や、一般市民に対する説明責任(アカウンタビリティ)を高めることを目的として作成されている。
企業はディスクロージャーによって、投資家の信頼を得ることを可能とし、投資対象としての魅力を表すことができる。すなわち、積極的に情報にコミットをしながら、開示された情報を整理活用する対象が多数存在している。しかしながら、地方公共団体においては、投資家のように自らの営利を目的とした投資対象は存在しない。そのため、住民が地方公共団体の財務書類等に積極的にコミットし、その情報を整理活用するという行為は現状において限定的であるといえよう。また、財務書類は専門的な会計知識をもたない一般市民にはわかりにくいものであり、作成された書類を単に公表しただけでは、議会及び住民に対しての十分な説明責任を果たすことは難しい。
そこで、まずは地方公会計制度の整備が必要な背景を整理し、公会計と企業会計という 2 つの会計制度についての比較を行うことにより、新たな会計基準を用いた財務書類を作成する事の意義と必要性を明らかにする。続いて、xx市が作成した財務書類 4 表の中から、疑問に思われる箇所に着眼し、その問題点についての監査を実施していく。
(2)地方公会計制度の整備
①財務書類整備の目的
地方公共団体において財務書類を整備する目的については、「新地方公会計制度研究会報告書」(平成 18 年 5 月)の中で、「地方分権の進展に伴い、これまで以上に自由でかつ責任ある地域経営が地方公共団体に求められている。そうした経営を進めていくためには、内部管理強化と外部へのわかりやすい財務情報の開示が不可欠である。」とされており、具体的な目的として、1.資産・債務管理、2.費用管理、3.財務情報のわかりやすい開示、4.政策評価・予算編成・決算分析との関係付け、5.地方議会における予算・決算審議での利用が挙げられている。
これらの目的は、「説明責任の履行」と「財政の効率化・適正化」という観点からさらに整理することが可能である。すなわち、3.財務情報のわかりやすい開示は、地方公共団体の説明責任の履行に資するものであり、1.資産・債務管理、 2.費用管理、4.政策評価・予算編成・決算分析との関係付け、5.地方議会における予算・決算審議での利用は、内部管理強化を通じて最終的に財政の効率化・適正化を目指すものであるといえる。
したがって、財務書類整備の目的は大きく次の二点であると言える。
ア 説明責任の履行
地方公共団体は、住民から徴収した対価性のない税財源をもとに行政活動を行っており、付託された行政資源について住民や議会に対する説明責任を有しているが、財務書類を作成・公表することによって、財政状態の透明性を高め、その責任をより適切に果たすことができる。このことは、財政民主主義の観点から、財政の統制を議会にゆだねるだけでなく、住民も直接に財政運営の監視に関与すべきとの考え方からも求められるものである。
イ 財政の効率化・適正化
地方公共団体の財政の健全化に関する法律(以下「財政健全化法」という。)が施行され、地方公共団体には、自らの権限と責任において、規律ある財政運営を行うことが求められている。財務書類から得られる情報を資産・債務管理、費用管理等に有効に活用することによって、財政運営に関するマネジメント力を高め、財政の効率化・適正化を図ることができる。
前記した内容を簡潔にまとめると以下のようになる。
●財務書類整備の目的
説明責任の履行財務情報のわかりやすい開示
財政の効率化・適正化内部管理の強化(資産・債務管理、費用管理、
政策評価・予算編成・決算分析との関係付け、地方議会における予算・決算審議での利用等)
②財務書類整備の効果(現金主義による会計の補完)
地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として地域における行政を実施する団体であり、住民に対して地方税を賦課徴収する一方(地方自治法第 223 条)、予算については議会の議決を経て定めることとされている(同法
第 96 条、第 233 条)。
このような普通地方公共団体の会計処理は、現金の収支を基準とするいわゆる現金主義によっている。すなわち、歳入とは、一会計年度における一切の収入をいい、歳出とは、一会計年度における一切の支出をいうが、ここでの収入とは現金の収納をいい、支出とは現金の支払をいう事とされている(財政法第 2条を参照)。
これに対して、企業会計において用いられる発生主義とは、現金の収支のみならず、全ての財産物品等の増減及び異動をその発生した事実に基づいて、経
理をおこなっている。
現金主義による地方公共団体の予算・決算制度を前提とした場合、新たに発生主義に基づく財務書類を整備することによる効果としては、以下のものが挙げられる。
ア 発生主義による正確な行政コストの把握
企業は営利を目的として活動を行っていることから、企業会計は経済的事実を正確に反映させた適正な期間損益計算を行うことを主要な任務としている。そのため、企業会計は発生主義に基づき、経済活動の成果を表す「収益」とそれを得るために費やされた「費用」を厳密に対応づけることによって、各会計期間の経営成績である「利益」を算定する。その際、減価償却費や退職給付費用などは、発生主義により認識することが求められる。
新地方公会計モデルは発生主義の考え方を導入するものであるが、ここで留意すべき点は、企業の場合には、会計期間の活動の成果は収益として定量的に把握することが可能であるのに対して、地方公共団体の活動は前述のとおり住民への生活福祉の増進を目的として行われるものであるため、その成果を収益として定量的に把握することが難しいことにある。
したがって、新地方公会計モデルの行政コスト計算書において、経常的な費用と収益を対比させる意義は、企業会計のように一会計期間の経営成績を算出するためではなく、一会計年度に発生した純資産の減少をもたらす(税収等でまかなうべき)純経常費用(純経常行政コスト)を算出することにあるといえる。
財政の効率化には正確な行政コストの把握が不可欠であるが、行政コスト計算書を作成することによって、経常費用(経常行政コスト)あるいは、純経常費用(純経常行政コスト)として、減価償却費などの見えにくいコストを含めたフルコストを把握することが出来るようになり、これを住民に対して開示するとともに、職員のコストに対する意識改革につなげることも可能になる。
イ 資産・負債(ストック)の総体の一覧的把握
現金主義による会計処理は、現金(公金)の適正かつ客観的な経理に適合するものであり、国や地方公共団体を通じて適用されているが、地方公共団体の資産全体から見た場合には、その一部である「歳計現金」に関する収支(キャッシュ・フロー)が示されるにすぎず、毎年の歳出の結果としての資産形成に関する情報(ストック情報)に関しては不十分といえる(現行の決算制度においても「財産に関する調書」(地方自治法施行令第 166 条)が添付されるが、これによって財産の適正な評価額までは明らかにされない)。
その点、貸借対照表を作成すれば、xx価値による資産評価が行われることになるため、地方公共団体がこれまでの行政活動により蓄積したすべての資産について、その評価額も含めたストック情報が明示されるとともに、資産形成に要した負債の額とあわせて見ることで、資産と負債(ストック)の総体を一覧的に把握することが可能となる。これらは、地方公共団体が適切な資産・負債管理を行う上で有用な情報といえよう。なお、資産及び負債の状況を把握するためには、複式簿記に基づく貸借対照表の作成が不可欠となる。
ウ 連結ベースでの財務状況の把握
普通地方公共団体は、一部事務組合、広域連合、第三セクター等の関係団体と連携協力して地域の行政サービスを実施しており、現行の決算制度の下では、一般会計・特別会計ごとに歳入歳出決算が調整される(地方自治法第 209 条)。また、地方公営企業法適用企業については、別途決算が調整されることになる
(地方公営企業法第 30 条)。さらに一部事務組合、広域連合、第三セクター等の関係団体についてもそれぞれに決算が調整されている。これらの決算書類に加え、普通地方公共団体と関係団体を統合した連結財務書類を作成することにより、公的資金等によって形成された資産の状況、その財源とされた負債・純資産の状況、さらには行政サービス提供に要したコストおよび資金収支の状況等、普通地方公共団体を中心とする行政サービス提供主体の財務状況を一体的に把握することが可能になる。
③財務書類の活用の視点
地方公共団体における財務書類の活用については、以下の二つに区分される。
ア 分析とわかりやすい公表
財務書類の活用は、財務書類の分析が出発点となるが、分析を行うにあたっては、財務書類の主たる利用者である住民のニーズを踏まえた分析を行い、住民にとって有益な情報を的確に示していくことが重要となる。すなわち、住民は企業会計の利害関係者(利用者)に比して、会計的知見を十分に有しているとは限らないことから、財務書類の公表に際しては、必要な説明や分析を加えて、わかりやすく公表することが望ましい。これは、住民に対する説明責任の履行という観点からも求められるものである。
イ 内部管理(マネジメント)への活用
財務書類は公表にとどまらず、地方公共団体の内部管理(マネジメント)のツールとして活用していくことが重要となる。
財務書類の分析から得られる情報は、外部へのわかりやすい公表に活用するのみならず、地方公共団体の財政運営上の目標設定・方向性の検討に活用することができる。くわえて、行政評価との連携や施策の見直し、資産管理や職員の意識改革等、行財政改革のツールとして活用することも可能である。
地方公共団体においては、これらを通じて財務書類を内部管理(マネジメント)に積極的に活用することによって、財政の効率化および適正化を図っていくことが期待される。
また、財務書類は財政運営上の政策形成(意思決定)等を行ううえでの、基礎情報を提供するものといえるが、このような情報を住民に対して開示することにより、政策形成のプロセスに関する説明責任を果たすことにもつながる。
■財務書類の活用
①分析とわかりやすい公表
説明責任の履行
②内部管理(マネジメント)
財政の効率化・適正化
すなわち、財政の効率化と適正化を図り、住民への説明責任の履行を行うために、地方公共団体における会計制度の整備が重要となるのである。その際、従来の公会計制度による「現金主義」「単式簿記」を用いた形式から、「発生主義」「複式簿記」を採用した、新たな地方公会計制度への転換が急務となる。
④公会計と企業会計
国や地方公共団体の財務書類作成にあたっては、公会計が用いられているが、一般企業では企業会計という会計の原則によって、財務書類が作られている。そこで、以下では公会計と企業会計の主な違いや、それぞれの会計制度の目的について説明をしている。
xxxx著では、
「1 公会計とは
ここでは、公会計の仕組みについて理解してもらいたいと思います。会計は会社の地味な経理マンだけがわかっている特殊な分野から、経営者がマネジメントに使う情報ツールとして大きく変貌しています。まずは、会計の基礎として企業会計についての最近の動きを見てみたいと思います。それから、国や地方自治体の運営システムである財政制度と企業会計を見比べます。それらの違いを理解したうえで、これからの公会計制度の在り方について現状を見据えな
がら考えて見たいと思います。
(1)日本の会計制度
① あらためて企業会計とは(発生主義と複式簿記)
これから、説明する公会計をよりよく理解してもらうために、まずは簡単に企業会計について説明しておきたいと思います。企業会計は、営利企業である株式会社等が使う会計です。株式会社であれば、トヨタやソニーなどの大企業から町の小企業まで同じ会計処理のルールによって会計処理が行われます。会計処理の基本は、発生主義でかつ複式簿記により会計処理がされることです。 発生主義は現金主義と対比して使用される考え方で、単に現金が実際に動いた ことを記録するのではなく、現金が動く要因が発生した時点から会計の記録として帳簿に記載することを意味します。会計は、古くは、大航海時代に貿易船に投資した投資家の損益を図るものとして生まれ、資本主義の発展に合わせて改良が加えられてきました。初期の企業会計では、現金主義と呼ばれる現金の入りと出を台帳等に記入するシンプルな方法でした。この方法では、掛けで商品を売買した場合には、商品の販売時点では現金は入ってこないのでなんら記録されず、やがて掛け売りの代金が入金された時点で記帳されます。これでは、企業の活動を正確に把握できません。そのため、やがて、現金の動く要因が発生したときに記帳する発生主義へ移行していきました。発生主義による会計では、企業が将来に現金が動くであろう取引を行った場合にも帳簿に記帳します。掛けで商品を売買した場合には、商品を売った時点で記帳し、また、掛け売りの代金が回収された時点で記帳します。一つの取引で売買時点と入金時点の 2回記入しますので、現金主義に比べると手間は増えますが、正確に企業の状態を記録することができます。
複式簿記は単式簿記と対比される会計帳簿への記載方法のことです。会計帳
簿へ記載すべき要因が起こった場合に、必ずその要因についての原因と結果の両面について記載を行う方法です。掛けで商品を買った場合には、掛けによる負債(買掛金)の増加と購入した商品である資産(棚卸資産=在庫商品)の増加が記録されます。単式簿記の場合には、負債の増加のみが記帳されます。複式簿記の場合には、必ず一取引が二つの勘定(買掛金や棚卸資産等の項目)に記帳されますので、年間を通じて勘定を集計すればそれらの勘定の合計額は一致しますので、記帳漏れや記入ミスを容易に見つけることができ、正確性の高い記帳方法です。以上のように、企業会計は、発生主義で複式簿記により会計処理が行われますので、細やかで正確性の高い信頼できる会計情報を提供することができるのです。
② 企業会計で作成する決算書
次に企業会計で作成する財務報告書の様式を見てみましょう。企業は 1 年間
に 1 回年間の経営活動をとりまとめる決算を行いますが、そこで作成される財務報告資料が決算書です。決算書は財務諸表とも呼ばれ、決算時点での会社の財政状態を示す「貸借対照表」、決算期間(通常は 1 年間)の経営成績を示す「損益計算書」、そして獲得した利益の処分内容を示す「未処分利益計算書」が財務の基本 3 表と呼ばれる財務諸表です。これらの財務諸表のほかに、「損益計算書」や「貸借対照表」では表示されない現金の動きに着目して年間に現金の動きをその要因別にまとめた「キャッシュ・フロー計算書」を作成する場合もあります。また、これらの財務諸表は、対象範囲により個別財務諸表と連結財務諸表に区別されます。個別財務諸表はある単独の企業のみを対象とした財務諸表ですが、連結財務諸表は親会社に子会社や関係会社を含めた企業グループ全体の経営成績や財政状態を表すものです。トヨタや新日鉄等の大企業になると、多数の子会社を抱えて経済活動を行っていますので、個別財務諸表より連結財務諸表のほうが企業の実態を端的に表しています。これらの財務諸表の様式も、より企業活動の実態を表すように変化しています。「貸借対照表」「損益計算書」
「未処分利益計算書」が基本 3 表ですが、国際会計基準(IAS/IFRS)で求められているのは、「財務状態計算書」「包括利益計算書」「株主持分変動計算書」
「キャッシュ・フロー計算書」とされており、日本でもこれらの財務諸表へ統一が進んでいます。
③ 企業会計と公会計
ここまで説明した企業会計は、株式会社などの営利企業の経営成績や財務情報を記録し表示するものでしたが、公会計は、国や地方自治体の会計的な業務活動を記録し、国や地方自治体の財務報告を取り扱うものです。企業は営利活動を目的とした法人ですので、企業会計の測定のポイントは一定期間の損益の正確な測定にありますが、公会計は、期間損益を計算することが目的ではありません。国や地方自治体の財務報告は、国民から負託された財産や徴収された税金等の「資源」の使用状況についてのアカウンタビリティー(説明責任)を満たすことが重要であり、以下の情報を提供することが求められています。このような情報提供の要求を満たした財務報告書を作成することが公会計の目的であると言えます。
ア 資源が予算に準拠して獲得され、かつ、使用されていることを示す
イ 資源が法律及び契約に準拠して獲得され、かつ、使用されていることを示す
ウ 財務資源の源泉、配分及び使用に関する情報を提供すること
エ 国や地方自治体がどのような資金調達等の財務活動を行い、その現金需要を満たしているかに関する情報を提供すること
オ 国や地方自治体の資金調達等の財務活動についての能力を評価するに役立つ情報を提供すること
カ 財政状態及びその変化に関する情報を提供すること
キ サービスコスト、効率性、達成の程度等の業績を評価するうえで役立つ総合的な情報を提供すること」
『国会議員が解説する公会計マネジメント入門』xxxx著 より
公会計と企業会計の目的の違いについては、次章の減価償却に関する記述においても触れることとするが、上記にて引用したように、会計数値を用いた財務報告を作成するための目的に対する違いがあるので、単純に企業会計の会計基準を公会計の基準に全て移行するという措置をとることは難しい。しかしながら、一般の市民へ向けたわかりやすい財務情報の開示や、地方公共団体の有している資産や債務などのストック状況を整備することによって、将来へ向けての財政運営のさらなる健全化を実現させるためには、民間で磨かれた企業会計の基準を、適切な形で公会計へ導入していくことが重要となってくる。この点にこそ、地方公会計制度の整備を迅速に実現させることの大きな意義があるといえよう。
(3)財務書類 4 表
①財務書類の種類
地方公共団体が作成する財務諸表は、貸借対照表、行政コスト計算書、純資産変動計算書、資金収支計算書の 4 表から構成されており、各諸表から読み取れる主な情報は次のものとなる。
ア 貸借対照表(B/S)
貸借対照表は、会計年度末(基準日)時点で、地方公共団体がどのような資産を保有しているのか(資産保有状況)、その資産がどのような財源によって賄われているのか(財源調達状況)について、対象表示した財務書類である。貸借対照表は、基準日時点における地方公共団体の財政状態(資産・負債・純資産といったストックの残高)を明らかにするものである。
「資産」は、将来の資金流入をもたらすもの、将来の行政サービス提供能力を有するものに整理される。「負債」は、債権者に対する支払や返済により地方公共団体から、将来的に資金流出をもたらすものであり、地方公共団体におい
ては地方債がその主なものとなっている。「純資産」は、資産と負債の差額であり、地方税、地方交付税、国庫補助金等、将来の資金の流出を伴わない財源や資産評価差額等が計上される。
企業会計では、原則として貸借対照表の科目を流動性の高い順に配列している(流動性配列法)。基準モデルにおいては、この配列を採用しているが、総務省方式改訂モデルでは、固定的な科目から順に配列をしている(固定性配列法)。これは、地方公共団体においては、長期的な資産保有形態である固定資産の割合が高く、その財源調達についても長期的な負債である地方債の比重が高いことも重視したものであるといえる。
◆貸借対照表は、会計年度末における地方公共団体の財政状態(資産保有状況とイ
財源調達状況)を表す財務書類である。
イ 行政コスト計算書(P/L)
行政コスト計算書は、一会計期間において、資産形成に結びつかない経常的な行政活動に係る費用(経常的な費用)と、その行政活動と直接の対価性のある使用料・手数料等の収益(経常的な収益)を対比させた財務書類である。
行政コスト計算書における費用と収益の差額として、地方公共団体の一会計期間中の行政活動のうち、資産形成に結びつかない経常的な活動について税収等でまかなうべき行政コスト(純経常費用(純経常行政コスト))が明らかにされる。
行政コスト計算書は、企業会計における損益計算書に対応するものといえるが、損益計算書が一会計期間の営業活動に伴う収益・費用を対比して「当期純利益」を計算するのに対し、行政コスト計算書は一会計期間の経常的な行政活動に伴う費用と上述の収益を対比して「純経常費用(純経常行政コスト)」を算出する点で異なっている。
このことは、地方公共団体の行政活動は企業のように利益の獲得を目的としないこと、新地方公会計モデルでは、税収を行政コスト計算書ではなく、純資産変動計算書に計上していることと関係している。これは、損益計算書の収益として計上される売上高は、企業が提供する財貨やサービスの直接の対価であるのに対して、税収は対価性なく住民から徴収される財源であり、行政コスト計算書が対象とする経常的な行政活動のほかに、インフラ資産などの資産形成等にも用いられることを予定した財源であることによる。
「性質別行政コスト計算書」では、資産形成に結びつかない経常的な行政活動を行うに当たって、人件費や物件費、補助金といったどのような性質の経費が用いられたか、またそのような行政活動の対価として使用料や手数料などの
受益者負担がどの程度あったのかを把握することが可能となる。さらに、改訂モデルでは「目的別行政コスト計算書」が作成されるが、これにより、経常行政コストと経常収益を、生活インフラ・国土保全・教育・福祉といった行政目的別に把握することができる。
◆行政コスト計算書は、一会計期間における、資産形成を伴わない経常的な行政活動に伴う純経常経費(純経常行政コスト)を表す財務書類である。
ウ 純資産変動計算書(NWM)
純資産変動計算書は、貸借対照表の純資産の部に計上されている各項目が、1年間でどのように変動したかを表す財務書類である。
純資産変動計算書においては、地方税、地方交付税等の一般財源、国県支出金等の特定財源が純資産の増加要因として直接計上され、行政コスト計算書で算出された純経常費用(純経常行政コスト)が純資産の減少要因として計上されること等を通じて、1年間の純資産総額の変動が明らかとなる。
純資産総額は、基準モデルでは「財源」「資産形成充当財源」「その他の純資産」に分類され、改訂モデルでは「公共資産等整備国県補助金等」「公共資産等整備一般財源等」「その他一般財源等」「資産評価差額」に分類されるが、これは、純資産がどのような資産形成に用いられているかを明らかにするものである。
純資産変動計算書は、企業会計の株主資本等変動計算書に対応するものといえるが、株主資本等変動計算書では、資本取引に関連する「資本金」「資本剰余金」と、損益取引に関連する「利益剰余金」を区分し、新株の発行などの資本取引は「資本金」「資本剰余金」の変動要因とし、損益計算書上の損益取引から生じた当期純利益やその一部の株主への配当は「利益剰余金」の変動要因として計上するなど、資本取引と損益取引の区別が重視されるのに対して、純資産変動計算書では、純資産の財源の充当先による区分が重視されるという点が異なっている。
◆純資産変動計算書は、一会計期間において、貸借対照表の純資産の部に計上されている各項目がどのように変動したかを表す財務書類である。
エ 資金収支計算書(C/F)
資金収支計算書は、一会計期間における、地方公共団体の行政活動に伴う現 金等の資金の流れを性質の異なる三つの活動に分けて表示した財務書類である。現金等の収支の流れを表したものであることから、キャッシュ・フロー計算書
とも呼ばれる。
現金収支については、現行の歳入歳出決算書においても明らかにされるが、資金収支計算書では、基準モデルにおいて「経常的収支」「資本的収支」「財務的収支」。改訂モデルにおいては「経常的収支」「公共資産整備収支」「投資・財務的収支」という性質の異なる三つの活動に大別して記載され、地方公共団体の資金が期首残高から期末残高へと増減した原因が明らかにされているのが特徴となる。この点、企業会計のキャッシュ・フロー計算書では、「営業活動」「投資活動」「財務活動」という三つの活動に区分される。
「経常的収支」が対象とする「支出」は、基本的に行政コスト計算書が発生主義で計上する資産形成を伴わない経常的な行政活動に伴う費用を、現金主義によって捉え直したものとなり、「収入」は、地方税、地方交付等の経常的な収入を計上している。地方公共団体は、資産形成を伴わない経常的な行政活動のほか、施設の建設や、道路、橋梁などインフラ資産の形成等も行っていかなくてはならない為、経常的収支は黒字に保たれるのが通常である。
経常的収支以外の二つの区分の仕方は、基準モデルと改訂モデルで異なっている。基準モデルでは、固定資産形成や長期金融資産形成といった資本形成活動に関する「資本的収支」と公債費の償還・発行といった負債の管理に関する
「財務的収支」に区分することにより、「経常的収支」と「資本的収支」の合算により基礎的財政収支(プライマリーバランス)を明らかにしている。改訂モデルでは、自団体・他団体等を併せた公共資産整備に関する「公共資産整備収支」と、投資及び出資金、貸付金や基金積立などに関する「投資・財務的収支」に区分し、基礎的財政収支(プライマリーバランス)に関する情報は資金収支計算書に注記されることになる。
◆資金収支計算書は、一会計期間における、地方公共団体の行政活動に伴う現金等の資金の流れを性質の異なる三つの活動に分けて表示した財務書類である。
②xx市の財務書類作成方法
長野市では、国の示す統一書式である「総務省方式改訂モデル」によって財務書類 4 表(貸借対照表・行政コスト計算書・純資産変動計算書・資金収支計算書)を作成しており、市の財務状況を表している。また、普通会計及び全ての公営事業会計、市の関与の下で市と密接な関連がある業務を行っている団体・法人などの会計を連結した、「連結財務書類」も併せて作成している。
以下では、xx市の財務書類作成方法についての説明及び連結範囲について記載している。
※普通会計は、一般会計に 3 つの特別会計(住宅新築資金等貸付事業特別会計・母子寡婦福祉資金貸付事業特別会計・授産施設特別会計)を加えたものである。
ア xx市財務書類の作成方法について
a 財務書類の作成様式は、「総務省方式改訂モデル」を用いている。
b 財務書類に計上する数値は、「地方財政状況調査(決算統計)」の数値を主に使用している。
c 貸借対照表の売却可能資産については、時価評価を行い、その価額を計上している。
d 売却可能資産の範囲は、普通財産及び用途廃止を予定している行政財産としている。
e 全ての資産の再評価価額(時価評価)の計上等、総務省の手引きに沿い、段階的に整備することとしている。
イ 連結財務書類の作成方法について
a 連結の対象範囲は、xx市及びxx市が共同して事務処理を行っている一部事務組合、広域連合、土地開発公社、出資比率が 50 パーセント以上、又はxx市が役員を派遣しているなど、実質的に主導的な立場をしている第三セクターとしている。
b 一部組合及び広域連合については、各団体の財務書類を持分比率(負担割合に応じて合算する「比例連結」、その他の団体については、全部を合算する「全部連結」により、連結財務書類を作成している。
c 連結にあたり、各団体の法定決算書類を基礎として、総務省方式改訂モデルの基準に合わせるため、科目や数値の読替・修正、また出資、貸付、繰出などの内部取引の相殺消去、出納整理期間の収支にかかる未収金、未払金の調整などの「統計処理」を行っている。
d 資産の時価評価、売却可能資産の区分表示、退職・貸倒等引当金、回収不能見込額などの見積もり計上など、手引きに従い、段階的に整備することとしている。
ウ 連結財務書類の連結範囲について
a xx市普通会計
(一般会計、住宅新築資金等貸付事業特別会計、母子寡婦福祉資金貸付事業特別会計、授産施設事業特別会計)
b xx市公営事業会計:11 会計
(産業団地事業会計、水道事業会計、下水道事業会計、病院事業会計、戸
隠観光施設事業会計、飯綱高原スキー場事業特別会計、鬼無里xx観光施設特別会計、駐車場事業特別会計、後期高齢者医療特別会計、国民健康保険特別会計(事業勘定・直診勘定)、介護保険特別会計(保険事業・サービス事業)
c xx市の関連団体:15 会計 (対象は一部事務組合や出資比率 50%以上の第三セクター等)長野広域連合、xx県後期高齢者医療広域連合、xx県地方税滞納整理機構、千曲衛生施設組合、xxxx事務組合、北信保険衛生施設組合、長 水部分林組合、xx市土地開発公社、㈳xx市開発公社、㈶xx市体育 協会、㈶xx市保険医療公社、㈶ながの観光コンベンションビューロー、
㈱エムウェーブ、㈶xx市勤労者共済会、㈳xx市農業公社
長野市では、上記した計27 会計を連結し、連結財務書類を作成している。
③平成 24 年度xx市財務書類
次項からはxx市の財務書類について、貸借対照表を「普通会計」「xx市全体」「xx市全体+関連団体」の順で記載をしている。なお、財務書類は平成 24
年度版(平成 24 年 4 月 1 日~平成 25 年 3 月 31 日)となっている。
貸借対照表 [普通会計]
(平成25年3月31日現在)
25
(単位:xx)
借 | 方 | 貸 | 方 | |
資産の部 | 負債の部 1 固定負債 (1)地方債 114,724,810 (2)長期未払金 ①物件の購入費 562,237 ②債務保証又は損失補償 0 ③その他 2,313,289 長期未払金計 2,875,526 (3)退職手当引当金 22,174,559 (4)損失補償等引当金 0 固定負債合計 139,774,895 2 流動負債 (1)翌年度償還予定地方債 16,370,758 (2)短期借入金(翌年度繰上充用金) 0 (3)未払金 1,580,910 (4)翌年度支払予定退職手当 2,045,000 (5)賞与引当金 1,251,072 流動負債合計 21,247,740 負債合計 161,022,635 純資産の部 1 公共資産等整備国県補助金等 140,118,448 2 公共資産等整備一般財源等 629,534,515 3 その他一般財源等 △ 57,297,414 4 資産評価差額 633,063 純資産合計 712,988,612 負債・純資産合計 874,011,247 | |||
1 公共資産 | ||||
(1)有形固定資産 | ||||
①生活インフラ・国土保全 ②教育 ③福祉 ④環境衛生 ⑤産業振興 ⑥消防 ⑦総務 有形固定資産計 (2)売却可能資産 | 474,241,538 199,263,066 15,427,236 22,339,335 47,477,730 8,739,445 26,105,471 | 793,593,821 19,681,625 | ||
公共資産合計 | 813,275,446 | |||
2 投資等 | ||||
(1)投資及び出資金 | ||||
①投資及び出資金 ②投資損失引当金投資及び出資金計 (2)貸付金 (3)基金等 | 14,859,979 0 | 14,859,979 511,535 | ||
①退職手当目的基金 ②その他特定目的基金 ③土地開発基金 ④その他定額運用基金 ⑤退職手当組合積立金 | 3,745,432 13,419,522 1,167,118 191,385 0 | |||
基金等計 | 18,523,457 | |||
(4)長期延滞債権 (5)回収不能見込額投資等計 | 2,018,806 △ 133,991 | 35,779,786 | ||
3 流動資産 | ||||
(1)現金預金 | ||||
①財政調整基金 ②減債基金 ③歳計現金 | 15,599,705 4,051,762 4,621,471 | |||
現金預金計 | 24,272,938 | |||
(2)未収金 | ||||
①地方税 ②その他 ③回収不能見込額 | 639,018 95,006 △ 50,947 | |||
未収金計 | 683,077 | |||
流動資産合計 | 24,956,015 | |||
資産合計 | 874,011,247 |
貸借対照表 [地方公共団体( xx市) 全体]
(平成25年3月31日現在)
26
(単位:xx)
借 | 方 | 貸 方 | ||||
資産の部 | 負債の部 1 固定負債 (1)地方債 ①普通会計地方債 114,724,810 ②公営事業地方債 151,050,940地方債計 (2)長期未払金 (3)引当金 (うち退職手当等引当金) (うちその他の引当金) (4)その他固定負債合計 2 流動負債 (1)翌年度償還予定地方債 (2)短期借入金(翌年度繰上充用金を含む) (3)未払金 (4)翌年度支払予定退職手当 (5)賞与引当金 (6)その他流動負債合計 負債合計 純資産の部 純資産合計 負債・純資産合計 | 265,775,750 2,875,526 24,233,485 22,921,240 1,312,245 0 25,255,505 0 6,773,854 2,169,801 1,336,951 396,161 | 292,884,761 35,932,272 328,817,033 910,234,114 1,239,051,147 | |||
1 公共資産 | ||||||
(1)有形固定資産 | ||||||
①生活インフラ・国土保全 ②教育 ③福祉 ④環境衛生 ⑤産業振興 ⑥消防 ⑦総務 ⑧収益事業 ⑨その他 有形固定資産計 (2)無形固定資産 (3)売却可能資産公共資産合計 | 477,029,783 199,263,066 15,479,551 351,130,778 49,085,872 8,739,445 26,105,471 28,984 31 | 1,126,862,981 1,681,497 21,111,796 | 1,149,656,274 | |||
2 投資等 | ||||||
(1)投資及び出資金 (2)貸付金 (3)基金等 (4)長期延滞債権 (5)その他 (6)回収不能見込額 | 14,246,371 511,535 17,818,655 3,235,510 3,060,723 △ 731,410 | |||||
投資等計 | 38,141,384 | |||||
3 流動資産 | ||||||
(1)資金 (2)未収金 (3)販売用不動産 (4)その他 (5)回収不能見込額 | 43,544,607 6,074,751 1,264,270 51,501 0 | |||||
流動資産合計 | 5,093,529 | |||||
4 繰延勘定 | 318,360 | |||||
資産合計 | 1,239,051,147 |
連結貸借対照表 [xx市全体+関連団体]
(平成25年3月31日現在)
27
(単位:xx)
借 | 方 | 貸 方 | ||||
資産の部 | 負債の部 1 固定負債 (1)地方公共団体 ①普通会計地方債 114,724,810 ②公営事業地方債 151,050,940地方公共団体計 (2)関係団体 ①一部事務組合・広域連合地方債 918,046 ②地方三公社長期借入金 113,560 ③第三セクター等長期借入金 0関係団体計 (3)長期未払金 (4)引当金 (うち退職手当等引当金) (うちその他の引当金) (5)その他固定負債合計 2 流動負債 (1)翌年度償還予定地方債 ①地方公共団体 25,255,505 ②関係団体 125,465翌年度償還予定額計 (2)短期借入金(翌年度繰上充用金を含む) (3)未払金 (4)翌年度支払予定退職手当 (5)賞与引当金 (6)その他流動負債合計 負債合計 純資産の部 純資産合計 負債・純資産合計 | 265,775,750 1,031,606 2,912,651 27,007,584 25,695,339 1,312,245 358,075 25,380,970 6,001,483 7,704,412 2,277,530 1,653,896 1,051,539 | 297,085,666 44,069,830 341,155,496 921,524,044 1,262,679,540 | |||
1 公共資産 | ||||||
(1)有形固定資産 | ||||||
①生活インフラ・国土保全 ②教育 ③福祉 ④環境衛生 ⑤産業振興 ⑥消防 ⑦総務 ⑧収益事業 ⑨その他 有形固定資産計 (2)無形固定資産 (3)売却可能資産公共資産合計 | 483,296,299 199,265,190 18,283,506 353,317,821 49,085,872 8,739,445 26,114,683 294,352 54 | 1,138,397,222 1,683,324 21,227,089 | 1,161,307,635 | |||
2 投資等 | ||||||
(1)投資及び出資金 (2)貸付金 (3)基金等 (4)長期延滞債権 (5)その他 (6)回収不能見込額投資等計 | 13,271,947 665,975 21,933,674 3,235,510 4,000,286 △ 731,410 | 42,375,982 | ||||
3 流動資産 | ||||||
(1)資金 (2)未収金 (3)販売用不動産 (4)その他 (5)回収不能見込額 | 50,385,392 6,159,442 1,855,676 277,265 △ 212 | |||||
流動資産合計 | 58,677,563 | |||||
4 繰延勘定 | 318,360 | |||||
資産合計 | 1,262,679,540 |
(4)財務書類の作成モデル
①公会計モデル一覧
平成 21 年度より地方公共団体は、貸借対照表、行政コスト計算書、資金収支
計算書、純資産変動計算書の財務書類 4 表を、国の主導によって作成公表する
こととなったが(各町村や人口 3 万人未満の都市は平成 23 年度から)、全国に存在する地方公共団体は、人口規模や財政状態をはじめ、それぞれに置かれる状況が異なっており、財務書類の作成にあたっては各公共団体が、どのような方法で書類の作成を行っていくのか、自身で選択することとなった。
前述したように、それまでの地方公共団体が主に採用していた会計基準は、
「現金主義」「単式簿記」を用いたものであり、市などが有している資産や負債の状況についての正確な把握ができず、人件費や光熱費といった費用の内訳等についても分かり辛かった。そこで、資産及び負債の状態が正確に把握できるよう、また、費用対効果が明確となるよう、地方公会計に企業会計の手法を導入するという公会計改革が進められてきた。
新たな財務書類の作成方法については、xxxをはじめとして、全国でも幾つかの地方公共団体において、独自に公会計制度の改革に取り組んでいたが、多くの地方公共団体は、総務省の示した「総務省方式改訂モデル」を採用する運びとなった。そこで、次頁には全国の地方公共団体にて採用されている、主だった財務書類の作成方式を一覧としてまとめている。
なお、xx市の採用した会計モデルは、総務省が示した「総務省方式改訂モデル」となっている。
28
29
項目 | 種類 | 開始時簿価 | 評価替 |
事業用資産 | 土地 | 固定資産税評価額を基礎として評価 | 原則3年毎に再評価 |
建物等 | 再調達価額から減価償却累計額を控除した額 | 毎年度減価償却を行い、原則再評価は行わない | |
機械器具等 | 取得価額(不明の場合は再調達価額)から減価償却累計額を控除した額 | 毎年度減価償却を行い、原則再評価は行わない | |
インフラ資産 | 土地 (底地) | 取得価額(不明の場合は再調達価額) | 原則再評価は行わない |
建物等 | 再調達価額から減価償却累計額を控除した額 | 毎年度減価償却(直接資本減耗)を行い、原則再評価は行わな い | |
販売用土地等 | 帳簿価額と時価評価の価額から販売経費等を控除した価額のいずれか少ない額(低価法) | 毎年度低価法により再評価 |
公会計モデルの対比表(総表)
個別的事項 | 基準モデル | 総務省方式改訂モデル | xxxモデル | 大阪府モデル | 国 ( 省庁別財務書類の作成基準 |
財務書類の体系 | ・貸借対照表 ・行政コスト計算書 ・純資産変動計算書 ・資金収支計算書 ・財務書類に関連する事項についての附属明細表 ・注記 | ・貸借対照表 ・行政コスト計算書 ・純資産変動計算書 ・資金収支計算書 ・財務書類に関連する事項についての附属明細書 ・注記 | ・貸借対照表 ・行政コスト計算書 ・キャッシュ・フロー計算書 ・正味財産変動計算書 ・有形固定資産及び無形固定資産附属明細書 ・注記 | ・貸借対照表 ・行政コスト計算書 ・キャッシュ・フロー計算書 ・純資産変動計算書 ・純資産変動分析表を始めとする附属明細表 ・注記 | ・貸借対照表 ・業務費用計算書 ・資産、負債差額増減計算書 ・区分別収支計算書 ・注記 ・附属明細書 |
複式簿記(日々記帳) | 歳入歳出データから複式仕訳の会計処理を発生の都度又は年度末に一括して行い、財務書類を作成 | 決算統計データを活用し、年度末に一括して仕訳を行い、財務書類を作成 | 官庁会計の処理に連動し、日々の会計処理の段階から自動的に複式簿記・発生主義 会計のデータを蓄積し、財務諸表を作成 | 官庁会計の処理に連動し、日々の会計処理の段階から自動的に複式簿記・発生主義 会計のデータを蓄積し、財務諸表を作成 | 官庁会計システム(ADAMSⅡ)に、官庁会計に係る入力項目に加え、仕訳区分を日々入力 →現金に関する仕訳のみ(現金に基づ かない仕訳(減価償却費等)は台帳等 により財務書類作成時に決算整理) |
台帳整備 | 開始貸借対照表作成時に整備その後、継続的に更新 | 段階的整備を想定 →売却可能資産、土地を優先 | 開始貸借対照表作成時に整備その後、継続的に更新 | 開始貸借対照表作成時に整備その後、継続的に更新 | 官庁会計システム(ADAMSⅡ)とは連動していないが、法令に基づき国有財産台帳、物品管理簿等を整備 |
有形固定資産の評価基準 | ・原則としてxx価値評価を採用 *年度途中の取得は、原則として取得価額評価である | 取得価額(決算統計の積上げ)での評価を認めつつ、段階的に固定資産台帳の整備を行い、xxxx価値評価価額に置換 売却可能資産については、売却可能価額 (時価)で評価し、開始時貸借対照表に計上 | 取得原価モデルを採用。ただし、有価証券等は強制評価減、棚卸資産は低価法を採用 | 取得価額評価。ただし、売却可能な資産については附属明細表で時価情報を表示 | ・国有財産(公共用財産を除く) →国有財産台帳(※)に基づくxx価値評価(土地は原則として相続税路線価を基にした調整額、償却資産は減価償却費相当額を控除した後の価額を計上) ※国有財産法施行令第23条の規定に基づき、原則として毎年度評価(台帳価格の改定)を実施 ・公共用財産 →取得原価 (用地費や事業費等の累積。償却資産は減価償却費相当額を控除した後の価額を計上) ・物品 →取得価格(減価償却費相当額を控除した後の価額を計上) |
税収の取扱い | 「所有者からの拠出」に該当することに鑑み、純資産変動計算書に計上 | 純資産変動計算書の「一般財源」の項目に計上 | 税収と個別の行政サービスの間には、直接的な対価性はないものの、行政サービスの提供に要した経費に対する財源であるという観点から、行政コスト計算書の収入として計上 | 行政コスト計算書の収入として計上 | 資産、負債差額増減計算書において財源として計上 |
補助金収入の取扱い | 「資本的」移転収入と「経常的」移転収入の厳密な区別が困難であることに鑑み、一括して純資産変動計算書に計上 | 純資産変動計算書の「補助金等受入」の項目に計上 | 固定資産を取得するための補助金…貸借 対照表の正味財産に直入し、正味財産変動計算書にその変動状況を表示 それ以外の補助金…行政コスト計算書に計上 | 建設事業の財源として充当するものも含め、行政コスト計算書の収入として計上 | |
減価償却の取扱い | 事業用資産…行政コスト計算書に計上 インフラ資産…直接資本減耗として純資産 変動計算書に計上 | 行政コスト計算書に計上 | 行政コスト計算書に計上なお、インフラ資産のうち、道路については取替法(更新会計)を採用 | 定額法により月を単位に算定し、行政コスト計算書の費用に計上 | 業務費用計算書に計上 |
②総務省方式改訂モデルの特徴
長野市も含め、数多くの地方公共団体で採用されている「総務省方式改訂モデル」は、将来的には複式簿記の導入を目指しつつ、当面は決算統計という既存の集計データに基づいて、容易に財務諸表を作成できることに特徴がある。これは、いわば「簡便方式」とも言うべきものであり、基本的には、従来の決算統計を組み替えて作成していた、バランスシートや行政コスト計算書と同じ作り方となる。このため、作成は簡単だが、伝票を起こした時点で複式簿記の作成に必要な情報入力を行わないため、支出の増減と資産の増減の関係性を追跡すると言った作業については、完全にはできない。
また、他のモデルとの主たる違いは、税収の取り扱いや資産台帳の整備にある。「xxx方式」では、資産を取得原価で計上し、税収を収入として行政コスト計算書に計上しているのに対して、「総務省方式改訂モデル」は資産を原則、時価で評価し、税収は資本(出資)とみて純資産変動計算書に計上している。すなわち、「xxx方式」は、税収を「収入(=売上)」という概念で整理している。これに対して、「総務省方式改訂モデル」では、公共団体の税収は「売上」というよりも、住民からの公共団体への持分の増減というべきものであるといいう考え方に立っている。
税収を住民からの収入とみるのか、出資とみるかについては、税収に対する地方公共団体の考え方の違いとなる。資産台帳に関する詳細は次節にて述べるが、台帳の整備については、貸借対照表作成時に台帳を整備し、その後継続的に更新を行っていくxxxの方式と、売却可能資産及び土地を優先し、台帳を段階的に整備することを目的とした総務省改訂モデルの方式とで、資産台帳整備の扱いが異なっている。新たな公会計の導入に際しては、予め台帳について整備されたものを用いるのか、それとも可能な限り早期に着手し、段階的にその整備を行っていくかの差異はあるが、ともにその目的は、ストック情報やコスト情報についての、正確な数値を把握することにある。すなわち、地方公共団体の間で各種情報の比較と共有を可能にし、将来的に無駄な資産や費用を減らすことで、地方公共団体の債務を減少させていくことが重要となるのである。
「総務省改訂モデル」を採用している地方公共団体も、現在は資産台帳の整備を進めている最中にあり、将来的には他のモデルと同様に取り扱うことが可能となるよう、資産台帳整備を早急かつ着実に実施していく必要がある。
そこで、次節ではxx市が有する公共施設の現状について、考察を行っていく。
(5)売却可能資産
①xx市の『公共施設白書』
xx市では、平成 25 年 10 月に、市が保有している公共施設の現状と課題の公表及び情報収集を目的として、公共施設の建物、利用状況、維持管理コスト、将来の回収・更新費用などをまとめた『xx市公共施設白書』を作成した。
その対象となっている施設は、小・中学校、公民館、保育所、体育館、市営住宅等の 815 施設、2082 棟である。これらの施設全体の延床面積は約 154 万平
方メートルになり、市民一人当たりでは 4.0 平方メートルとなる。そこでまずは、市が有している公共施設には、将来に向けてどのような課題があるのかを公共施設白書を参考にし、その概況をまとめてみる。
ア 公共施設が抱えている問題
長野市では、昭和 40 年代から 50 年代にかけて、急激な人口の増加、市民生活の向上などに対応するため、小・中学校、市営住宅、公民館など多くの施設を整備してきた。
さらに平成 10 年に開催された、冬季オリンピックに伴うエムウェーブ、ビッ
グハットなどの大規模な施設の建設や、旧 6 町村との 2 度の合併等により、さまざまな公共施設を保有することになっていく。
現在、これらの施設のうち、建築から30 年以上が経過した建物の延床面積は、施設全体の 44%となっており、半数近くを占めている。施設の老朽化とともに、その修繕や維持管理費などは、今後ますます増加していくと予想される。また、これらの施設の中には人口減少や少子高齢化など、社会情勢の変化に伴って、建築当時の設置目的が徐々に薄れ、利用が低下しているものも存在している。
今後は社会情勢の変化に対応し、将来にわたり持続可能な行財政運営を行っていくためにも、公共施設の在り方を今一度検討し、その「量」と「質」についての見直しを実施することが、大きな課題となっている。
イ 施設の維持管理及び修繕費
長野市の『公共施設白書』では、公共施設の建物については、今ある施設をそのまま維持することを前提として、今後 40 年間の改修・更新費用を試算して
いる。その結果、総額で約 5,858 億円が必要という試算となり、この先 40 年間
で平均すると 1 年当たりでは約 146 億 5 千万円となる(図表参照)。
これは、過去 5 年間の公共施設に係る投資的経費の実績である、1 年当たり
83 億 1 千億円という額と比べても、約 1.8 倍の予算が必要な計算となる。
xx市の施設改修・更新費用試算(今後 40 年間)
『xx市公共施設白書』より
さらに試算では、今後 40 年間に道路・橋りょう・上下水道管などのインフラ
更新に必要な費用は 4,872 億円となり、先の公共施設の大規模改修・更新費用
と合わせると、約 1 兆 730 億円が見込まれる。これは現状の投資的経費の規模を大きく上回る規模である。
また、推計期間当初は、既に大規模改修の時期を過ぎた積み残し分により大規模改修費の占める割合が大きくなっているが、2030 年(平成 42 年)以降は、一挙に更新(建替え)費用が増加することとなる。今後は、xx市においても社会保障関連経費の増加が想定される中、全ての公共施設を維持していくために、この経費を確保し続けていくことは、極めて難しいと考えられる。
つまり、将来にわたって持続可能な行財政運営を行っていくためには、現況を踏まえ、公共施設全体の最適化を実現しなくてはならない。そのためには、社会・経済情勢や地域特性を考慮した「施設の再配置(施設の量と質の見直し)」に向けた検討を進めることが必要となる。
ウ xx市の公共施設見直しの基本的考え方
a 公共施設の「量」の見直し(公共施設の再編・再配置)
ⅰ 公共施設サービスの適正化
ⅱ 施設の複合化、多機能化
ⅲ 適正な利用者エリアの設定による施設の再配置
個々の施設について「将来にわたり真に必要な施設サービスであるか」を検討し、施設の複合化、多機能化などにより、効率的な施設総量の縮小を図る必要がある。
b 公共施設の「質」の見直し(公共施設の長寿命化)
ⅰ 施設の長寿命化と計画的な保全整備
ⅱ 施設の維持管理の効率化
ⅲ 民間活力の導入
継続して保有する公共施設の安全性を確保しながら、できるだけ長く使用していくため、施設の予防保全などの整備を計画的に行う必要がある。
作成された『xx市公共施設白書』について、市は「本白書の作成・公表は、将来の公共施設の在り方を検討するための第 1 ステップと位置付けている」としている。その後に続くステップとして、将来に必要な施設運営などについての検討と、全庁的な公共施設マネジメント指針の策定を予定している。さらに、公共施設の再配置計画や長寿命化計画の策定を検討しており、段階を経た公共施設見直しへ向けた姿勢を示している。
ここまで見てきたように、xx市の有する公共施設は 2,000 棟を超えており、その維持管理にかかる費用についても、現行の予算規模を大きく上回ると試算されている。また、市の財政状況は、人口減少や少子高齢化の進展、生産年齢人口の減少などの要因によって、市税等の自主財源の減少に加え、扶助費などの義務的経費の増大が予想されており、投資的経費に充当する財源の確保は、より一層厳しさを増すと想定されている。
これらの状況から考察すると、市が有する資産情報の正確な把握を行ったうえで、将来へ向けて長期的な視点からの計画的施設運営を実行することが重要となってくるのである。
②財務書類上の表示
新地方公会計制度において、xx市の有する固定資産が、財務書類上で如何に表示されているのかについて、xx市管財課からの説明を受け、その概要及び分類を記したものが以下である。
ア 固定資産評価の概要
a 総務省方式改訂モデルを採用し、財務書類 4 表を作成している。
b 現在は売却可能資産のみ、時価で評価を実施している。
分 類 | 説 明 |
売却可能資産 | 普通財産及び用途廃止することが予定されている行政財産 |
有形固定資産 | 上記を除く行政財産 |
c 有形固定資産については、決算統計を活用して算出している。イ 固定資産の分類
③固定資産評価について(売却可能資産の定義)
上記と同様に、新地方公会計制度における固定資産評価について、その評価方法等を記したものが以下である。
ア 売却可能資産の評価について
a 平成 24 年度(平成 23 年度末決算)から、新システムを使用して、売却可能資産の評価を実施した。
b 評価にあたっては、売却可能資産に含まれる全ての土地・建物について、前年の評価まで使用していた旧システムのデータを精査し、修正・補足を行い、評価を実施した。
c 「普通財産及び用途廃止を予定している行政財産=売却可能資産」は全て評価済み。
d 土地の評価方法は、下記のとおり。
e GIS(地理情報システム)や資料により現地の状況を確認し、固定資産税路線価の評価単価の区分を入力し、評価額を算出している。
資産と計算式 | 備考 |
土地(宅地) 【評価単価】×【面積】÷0.7 | 宅地の評価単価「固定資産税路線価」又は「状況類似価格」を用いるが、時価額に近い地価公示額に換算するためさらに0.7で割る |
土地(宅地以外) 【評価単価】×【面積】 | 宅地以外の評価単価は、地目別の「全市平均価格」を用いる。 |
f 建物の評価方法は下記のとおり
g 用途、構造、取得価額、建築日付、取得日付をシステムに入力し、再調達価額及び耐用年数、評価額を算出している。なお、資料が存在しないため取得価額が不明の 2 棟は、火災保険金額を再調達価額として評価額を算出した。
評価額
減価償却累計額
再調達価額
(取得金額×建築費指数or 火災保険金額)
- =
イ 評価結果
年度 | 評価対象 | 対象数 | 評価額(千円) | 補足説明 |
H19 年度末 | 売却可能資産 (土地のみ) | 22 筆 | 218,978 | 売却収入が予算措置されている普通財産と用途廃止予定の行政財産 |
H20 年度末 | 売却可能資産 (土地及び建物) | 3,153 筆 | 17,793,015 | 対象を全売却可能資産(普通財産等)に拡大 |
223 棟 | 5,004,329 | |||
H21 年度x | xx | 3,270 筆 | 18,017,339 | 信州新町・xx地区を追加 |
246 棟 | 4,819,808 | |||
H22 年度x | xx | 3,292 筆 | 16,914,311 | |
228 棟 | 4,594,292 | |||
H23 年度x | xx | 5,506 筆 | 16,829,252 | 新システムへの移行に伴いデータを精査したため、筆数が増加・建物の評価額が減少した |
193 棟 | 3,274,467 |
ウ 新システムにおける評価データの整備状況について
a 平成 24 年度末において、売却可能資産の評価額を算出するためのデータ整備を完了したため、将来的な全ての資産の評価に向けて、平成 25 年度は売却可能資産以外の有形固定資産(≒行政財産)のデータ整備に取り組む。現在建物を中心に入力を実施している。
b 売却可能資産を除く有形固定資産(≒行政財産)の評価額設定状況
年月 | 土地(設定率) | 建物(設定率) |
H25.3 | 27.6% | 7.1% |
H25.6 | 28.0% | 37.7% |
H25.8 | 31.2% | 75.8% |
xx市管財課提供資料より
(6)普通財産と行政財産の区分
①公有財産の範囲と分類
ア 市の所有・管理する財産の範囲と分類
地方自治法において、普通地方公共団体(市)の財産は、公有財産、物品、債権、基金と分類され、それぞれの範囲が明らかにされている(第 237 条第 1項)。
xx市においても、地方自治法の規定に基づいて財産を分類し、管理、運用及び処分している。
◆地方自治法の適用を受ける財産の範囲と分類は、次のようになる。
土地
不動産
公有財産 (1 号)
(第 238 条 1 項)
土地の定着物
(建物、工作物、xxx)
動 産
財 産
(第 237 条)
用益物権
(4 号)
船舶、浮標、浮き桟橋及び
浮きドック並びに航空機
(2 号)
不動産及び上記動産の従物
(3 号)
地上権地役権鉱業権
上記に準ずる権利(意匠xx) (永xxx、漁業権、入漁権、
租鋼権、採石権、入会xx)
無形財産権
(5 号)
著作権
特許権商標権
実用新案権
上記に準ずる権利(意匠xx)
(監理課)
該当なし
該当なし
土地台帳
道路台帳 建物台帳 工作物台帳xx台帳
備考
長野市の
管理台帳
財産の範囲及び分類
株式 | 有価証券・ | |
社債券 | 出資台帳 | |
有価證券 | 地方債証券 | 〃 |
(6 号) | 国債証券 | 〃 |
上記に準ずる権利 | 〃 | |
(投資信託又は貸付信託の受 益証券等) | ||
出資による権利(出資、出捐、預託) (7 号) | 有価証券・出資台帳 | |
不動産の信託の受益権 | 該当なし | |
(8 号) | ||
物 | 品 (第 239 条) | 物品使用簿 |
債 | 権 (第 240 条) | 債権記録簿 |
基 | 金 (第 241 条) | 基金台帳 |
長野市管財課説明資料より
なお、歳計現金は普通地方公共団体の所有・管理に属するものだが、地方自治法上財産の範囲から除外され、別途その出納保管に関する規定に基づき管理されることとなっている。
イ 公有財産の概念
長野市が所有する財産。
xx市が所有する財産は「公有財産」と呼ばれるが、公有財産は「行政財産」と「普通財産」に分類される(地方自治法第 238 条第 3 項)。
その管理や手続については、それぞれ地方自治法に具体的に規定されている
(第 238 条の 4 及び第 238 条の 5)。
ウ 行政財産の概念
「行政財産」とは、公用又は公共用に供し、又は供することを決定した財産をいう。
a 公用財産(市が事務又は事業を執行するために直接使用することを目的とする財産)
<例>庁舎、消防施設など。
b 公共用財産(住民の一般的共同利用に供することを目的とする財産)
<例>学校、図書館、公民館、市営住宅、公園など。 行政財産については、担当各課がそれぞれ管理している。
エ 普通財産の概念
「普通財産」とは、行政財産以外の公有財産。
行政財産と異なり、直接特定の行政目的のために供されるものではなく、一般私人と同様の立場でこれを保持する財産をいう。
a 貸付けるための財産
b 売却・交換等するための財産
公用財産
市が事業執行のため直接使用する。
行政財産
例:庁舎、支所、消防施設等
公有財産
市が所有する財産
公共用財産
住民の一般的共同利用に供する。
例:学校、図書館、公園、保育園、病院等
普通財産
行政財産以外の公有財産
普通財産については、財務規則に定めるものを除き、管財課が管理している。オ 公有財産の分類図
②地方自治法
地方公共団体が有する「財産」に関しては、地方自治法によって規定、分類されている。以下では「財産」に関連する条文として、地方自治法第 237 条か
ら第 238 条等を記載した。
●地方自治法 第 237 条
<財産の管理及び処分> この法律において「財産」とは、公有財産、物品及び債権並びに基金をいう。
2 第 238 条の 4 第 1 項の規定の適用がある場合を除き、普通地方公共団体の財産は、条例又は議会の議決による場合でなければ、これを交換し、出資の目的とし、若しくは支払手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し、若しくは貸し付けてはならない。
3 普通地方公共団体の財産は、第 238 条の 5 第 2 項の規定の適用がある場
合で議会の議決によるとき又は同条第 3 項の規定の適用がある場合でなければ、これを信託してはならない。
●地方自治法 第 238 条
<公有財産の範囲及び分類> この法律において「公有財産」とは、普通地方公共団体の所有に属する財産のうち次に掲げるもの(基金に属するものを除く。)をいう。
1 不動産
2 船舶、浮標、浮桟橋及び浮ドック並びに航空機
3 前 2 号に掲げる不動産及び動産の従物
4 地上権、地役権、鉱業権その他これらに準ずる権利
5 特許権、著作権、商標権、実用新案権その他これらに準ずる権利
6 株式、社債(特別の法律により設立された法人の発行する債券に表示されるべき権利を含み、短期社債等を除く。)、地方債及び国債その他これらに準ずる権利
7 出資による権利
8 財産の信託の受益権
2 前項第 6 号の「短期社債等」とは、次に掲げるものをいう。
1 社債、株式等の振替に関する法律(平成 13 年法律第 75 号)第 66 条第
1 号に規定する短期社債
2 投資信託及び投資法人に関する法律(昭和 26 年法律第 198 号)第 139
条の 12 第 1 項に規定する短期投資法人債
3 信用金庫法(昭和 26 年法律第 238 号)第 54 条の 4 第 1 項に規定する
短期債
4 保険業法(平成 7 年法律第 105 号)第 61 条の 10 第 1 項に規定する短期社債
5 資産の流動化に関する法律(平成 10 年法律第 105 号)第 2 条第 8 項に規定する特定短期社債
6 農林中央金庫法(平成 13 年法律第 93 号)第 62 条の 2 第 1 項に規定する短期農林債
3 公有財産は、これを行政財産と普通財産とに分類する。
4 行政財産とは、普通地方公共団体において公用又は公共用に供し、又は供することと決定した財産をいい、普通財産とは、行政財産以外の一切の公有財産をいう。
●地方自治法第 238 条の 4
<行政財産の管理及び処分> 行政財産は、次項から第 4 項までに定めるものを除くほか、これを貸し付け、交換し、売り払い、譲与し、出資の目的とし、若しくは信託し、又はこれに私権を設定することができない。
2 行政財産は、次に掲げる場合には、その用途又は目的を妨げない限度において、貸し付け、又は私権を設定することができる。
1 当該普通地方公共団体以外の者が行政財産である土地の上に政令で定める堅固な建物そのその他の土地に定着する工作物であつて当該xxx財産である土地の供用の目的を効果的に達成することに資すると認められるものを所有し、又は所有しようとする場合(当該普通地方公共団体と一棟の建物を区分して所有する場合を除く。)において、その者(当該行政財産を管理する普通地方公共団体が当該行政財産の適正な方法による管理を行う上で適当と認める者に限る。)に当該土地を貸し付けるとき。
2 普通地方公共団体が国、他の地方公共団体又は政令で定める法人と行政財産である土地の上に一棟の建物を区分して所有するためその者に当該土地を貸し付ける場合
3 普通地方公共団体が行政財産である土地及びその隣接地の上に当該普通地方公共団体以外の者と一棟の建物を区分して所有するためその者(当該建物のうち行政財産である部分を管理する普通地方公共団体が当該行政財産の適正な方法による管理を行う上で適当と認める者に限る。)に当該土地を貸し付ける場合
4 行政財産のうち庁舎その他の建物及びその附帯施設並びにこれらの敷地(以下この号において「庁舎等」という。)についてその床面積又は敷地に余裕がある場合として政令で定める場合において、当該普通地方
公共団体以外の者(当該庁舎等を管理する普通地方公共団体が当該庁舎等の適正な方法による管理を行う上で適当と認める者に限る。)に当該余裕がある部分を貸し付けるとき(前 3 号に掲げる場合に該当する場合を除く。)。
5 行政財産である土地を国、他の地方公共団体又は政令で定める法人の経営する鉄道、道路その他政令で定める施設の用に供する場合において、その者のために当該土地に地上権を設定するとき。
6 行政財産である土地を国、他の地方公共団体又は政令で定める法人の使用する電線路その他政令で定める施設の用に供する場合において、その者のために当該土地に地役権を設定するとき。
3 前項第 2 号に掲げる場合において、当該行政財産である土地の貸付けを受けた者が当該土地の上に所有する一棟の建物の一部(以下この項及び次項において「特定施設」という。)を当該普通地方公共団体以外の者に譲渡しようとするときは、当該特定施設を譲り受けようとする者(当該行政財産を管理する普通地方公共団体が当該行政財産の適正な方法による管理を行う上で適当と認める者に限る。)に当該土地を貸し付けることができる。
4 前項の規定は、同項(この項において準用する場合を含む。)の規定により行政財産である土地の貸付けを受けた者が当該特定施設を譲渡しようとする場合について準用する。
5 前 3 項の場合においては、次条第 4 項及び第 5 項の規定を準用する。
6 第 1 項の規定に違反する行為は、これを無効とする。
7 行政財産は、その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができる。
8 前項の規定による許可を受けてする行政財産の使用については、借地借家法(平成 3 年法律第 90 号)の規定は、これを適用しない。
9 第 7 項の規定により行政財産の使用を許可した場合において、公用若しくは公共用に供するため必要を生じたとき、又は許可の条件に違反する行為があると認めるときには、普通地方公共団体の長又は委員会は、その許可を取り消すことができる。
●地方自治法第 238 条の 5
<普通財産の管理及び処分> 普通財産は、これを貸し付け、交換し、売り払い、譲与し、若しくは出資の目的とし、又はこれに私権を設定することができる。
2 普通財産である土地(その土地の定着物を含む。)は、当該普通地方公共団体を受益者として政令で定める信託の目的により、これを信託することが
できる。
3 普通財産のうち国債その他の政令で定める有価証券(以下この項において
「国債等」という。)は、当該普通地方公共団体を受益者として、指定金融機関その他の確実な金融機関に国債等をその価額に相当する担保の提供を受けて貸し付ける方法により当該国債等を運用することを信託の目的とする場合に限り、信託することができる。
4 普通財産を貸し付けた場合において、その貸付期間中に国、地方公共団体その他公共団体において公用又は公共用に供するため必要を生じたときは、普通地方公共団体の長は、その契約を解除することができる。
5 前項の規定により契約を解除した場合においては、借受人は、これによつて生じた損失につきその補償を求めることができる。
6 普通地方公共団体の長が一定の用途並びにその用途に供しなければならない期日及び期間を指定して普通財産を貸し付けた場合において、借受人が指定された期日を経過してもなおこれをその用途に供せず、又はこれをその用途に供した後指定された期間内にその用途を廃止したときは、当該普通地方公共団体の長は、その契約を解除することができる。
7 第 4 項及び第 5 項の規定は貸付け以外の方法により普通財産を使用させる場合に、前項の規定は普通財産を売り払い、又は譲与する場合に準用する。
8 第 4 項から第 6 項までの規定は、普通財産である土地(その土地の定着物を含む。)を信託する場合に準用する。
9 第 7 項に定めるもののほか普通財産の売り払いに関し必要な事項及び普通財産の交換に関し必要な事項は、政令でこれを定める。
(7)行政改革推進法
①国の取組み
地方財政の逼迫度が高まる中で、財政規律を維持しつつ、どのようなお金が、 どのように使われ、結果としてどれだけの資産が形成されたか、あるいは、ど れだけ売却可能資産があるのかといった点を明確にするという試みについては、我が国において避けて通れないものであった。
そのような状況の中で、現在の総務省の前身である自治省は、平成 12 年から翌年にかけて、「地方公共団体の総合的な財政分析に関する調査研究会報告書」を公表し、地方公共団体に対して、発生主義・複式簿記の考え方を導入した財務書類(総務省方式と呼ばれ、普通会計のバランスシート及び行政コスト計算書、地方公共団体全体のバランスシートからなる書類)の作成を促した。この方式は、決算統計データを活用しており、わかり易xx他団体との比較の容易さを謳っていたが、精確な資産調査や評価を行っておらず、財務書類としても不足している部分がある等、多くの課題があった。そのため、地方公共団体においても財務書類を体系的に整備する必要性が認識されはじめた。そこで総務省は、平成 18 年 4 月に「新地方公会計制度研究会」を発足させ、1 ヶ月の間に
5 回もの研究会を開き、同年の 5 月に、『新地方公会計制度研究会報告書』を公表する。これは、「資産・債務の適切な管理、世代間負担のxx、決算情報の予算編成への活用等を推進するとともに、国・民間企業との整合性の確保にも配慮」した、地方公共団体へ向けた新たな財務諸表の提案であった。
②国と地方の協働
行政改革推進法(第 62 条第 1 項)は、「簡素で効率的な政府を実現するため
の行政改革の推進に関する法律」の呼称であり、平成 18 年 6 月に法案が成立した。
行政改革推進法は、地方公共団体に対して資産・債務に関する改革を行うことを求めており、地方公共団体は有している土地や建物の資産を正確に把握し、未利用財産については売却や貸出し等の積極的な活用を求めている。
この法案の成立を契機に、地方の資産・債務改革における一環として「新地方公会計制度の整備」が位置付けられ、多くの地方公共団体は「新地方公会計制度研究会」が提示した「基準モデル」又は「総務省方式改訂モデル」に沿った形で、発生主義及び複式簿記の考え方を導入し、地方公共団体及び関連団体
(一部事務組合等)の連結ベースでの 4 つの財務書類を整備するという方向性
が示された。さらに、平成 19 年には、総務省自治財政局長通知等により、「地
方公共団体財政健全化法」の本格施行に併せて、平成 21 年度までの決算に係る財務諸表の整備又は財務諸表作成に必要な情報の開示に取り組むことが、地方
公共団体に要請された。これらは、財務諸表の作成によって、対前年度及び他の地方公共団体の財政状況等を比較することが容易となるため、各団体が保有する財産の現況や債務残高等の負債についての概況が明らかになるとともに、現役世代の負担や将来世代への負担等の把握をすることも期待された。また、先にも記したが、財務書類の作成とその開示及び説明は、財政情報の住民に対する透明性の向上や説明責任の履行、すなわち、地方公共団体から住民へ向けたディスクロージャーの実施だとも言える。
ここまでの経緯の中で、国の主導のもと法的整備が進められ、地方公共団体への新たな会計制度導入へ至るまでの大きな流れが理解できよう。全国において統一性のある財務書類の作成を促しつつ、財政情報の比較共有を可能とするようなモデルを作るためには、国による法整備や学識者等による研究会の意見も重要なものとなる。加えて、制度導入にあたっては、実際に運用を行っていく地方公共団体の理解や協力が不可欠であるのは言うまでもない。
現在、地方公共団体の現場では、新たな会計制度の導入を進める最中にある。そのため、本制度は「国と地方の協働」によって推し進めることが重要であり、その成否が、今後の地方会計制度改革に大きな影響を与えるだろう。
本節では、現在までの財務書類の整備及び新たな地方公会計制度の導入に向けた、国の取組みについて「行政改革推進法」を中心にして記してきた。そこで、次節からはここまでの経緯を踏まえた上で、xx市の作成した財務書類(貸借対照表)を精査し、検討が必要と思われる資産(施設)について、個別の監査を行っていく。
(8)売却可能資産に関する個別検討
①長野駅東西自由通路
ア 長野駅東西自由通路について
「xx駅東西自由通路」はオリンピック開催を控えたxx市によって、JR xx駅が新幹線開業に伴ったxx駅として整備されることにあわせ、長野駅周辺の東西地域の連絡性・回遊性の確保を目的として計画された連絡通路である。この、長野駅を東西で結ぶ連絡通路は、市民や長野を訪れる人々の交流の場として、また安全で快適な歩行者空間の創出等、xx市の玄関口にふさわしい空間と都市拠点の形成に重要な役割を果たすものとして整備された。
xx駅東西自由通路
<JR 長野駅xxから東口方面へ向けて>
イ xx市の売却可能資産
―xx市の売却可能資産についての概要―
売却可能資産→普通財産及び用途廃止を予定している行政財産を時価評価 |
xx市における平成 24 年度末の売却可能資産→ 196 億 8,162 万円 |
土地→ 165 億 2,064 万円(固定資産税評価額を基に算定) ・教員住宅土地、職員住宅土地、貸付中土地、貸付予定地など |
建物→ 31 億 6,098 万円(取得価額か火災保険金額を基にした再調達価額から、 減価償却相当額を引いて算定) ・もんぜんぷら座、教員住宅、職員住宅、長野駅東西自由通路など |
『平成 24 年度xx市財務書類 4 表(地方公会計改革)』より
上記の、xx市財務書類の売却可能資産の中から「長野駅東西自由通路」の記載があることに着眼し、検証する。
ウ 現在の資産区分
現在は、公有財産としての「長野駅東西自由通路」を一括して全て、普通財産として分類している。普通財産及び用途廃止を予定している行政財産は、全て売却可能資産の範囲にて括られることから「xx駅東西自由通路」は、売却可能資産扱いとなっている。
「長野駅東西自由通路」 → 普通財産 →
売却可能資産
エ 「長野駅東西自由通路」について検討した事項
a 公有財産台帳(建物)
b 市街地整備局副局長(現:駅周辺整備局)と管財課長との協議書※(平成 8
年 6 月 22 日)
c 長野駅東西自由通路について(平成 22 年 1 月 27 日駅周辺整備局)まえがき 経過 施設概要 東西自由通路維持管理区分図
長野駅東西自由通路平面図
d xx駅平面図
e 所有建物明細(兼保険台帳)
f 実地における目視による事実確認
※所管に関する協議書の締結
平成 8 年 6 月 22 日、市街地整備局(現:駅周辺整備局)と管財課の間で、所管に関する協議書(次項参照)を締結し、その中で本施設の財産区分を普通財産とし、財産管理は市街地整備局が行うものとした。
オ <参考資料>
資料 1
協議書
市街地整備局副局長(以下「甲」という。)と管財課長(以下「乙」という。)
とは、xx駅東西自由通路(以下「自由通路」という。)の所管について次のとおり協議して定める。
記
1.自由通路の財産区分を普通財産とする。
2.普通財産としての自由通路の管理に関する事務は、xx市財務規則第 134
条第 2 項ただし書きの規定により、xが担任する。
平成 8 年 6 月 22 日
甲
乙
長野市都市開発部市街地整備局副局長
長野市財政部管財課長
※xx市財務規則集 134 条:長野市例規集①p.1611(公有財産の所管)
資料 2.(1)判例
公有財産が行政財産と普通財産のいずれに分類されるかは専らその用途によって決せられ、普通地方公共団体が内部処理として如何なる分類をしているかは関係ない。(昭和 55 年・6・23 広島高裁)
(2)判例
道路法施行法第 5 条第 1 項に基づく使用貸借による権利は、地方自治法第 238
条第 1 項第 4 号にいう「地上権、地役権、鉱業権その他これらに準ずる権利」に当たらない。(平成 2・10・25 最高裁)
②もんぜんぷら座
ア もんぜんぷら座について
「もんぜんぷら座」は、多様な市民活動の機会と場所を提供することで、その活動を総合的に支援するとともに、市とまちづくり会社などとの協働により、にぎわいと活気のある中心市街地の活性化に寄与するための施設として、xx市が有している公益施設である。以下には、建物外観の他に各階の見取り図、利用者数の推移を記載している。
もんぜんぷら座
『xx市公共施設白書』より
<住所:長野市新田町 1485-1>
「もんぜんぷら座」の各フロアー見取り図
上記した「もんぜんぷら座」の、各フロアーにおける施設等の利用状況を示した見取り図から、それぞれの階におけるテナント等の利用状況が確認できる。
「もんぜんぷら座」の年間利用者数の推移
「もんぜんぷら座」の公益施設利用者数*は増加の傾向にあり、平成 24 年
度は 301,544 人が利用している。
*TOMATO 食品は除く
―もんぜんぷら座の公益施設利用者数の推移―
平成 21 年度 | 平成 22 年度 | 平成 23 年度 | 平成 24 年度 | |
公益施設利用者数 | 289,283 人 | 306,821 人 | 300,418 人 | 301,544 人 |
イ xx市の売却可能資産
前述の「xx駅東西自由通路」と同様に、xx市貸借対照表の売却可能資産の中に、「もんぜんぷら座」の記載がある。そこで「もんぜんぷら座」についても着眼し、検証を実施する。
ウ 現在の資産区分
現在「もんぜんぷら座」は、行政財産である、もんぜんぷら座の建物のうち、テナント等に貸付をしている部分を普通財産としており、貸付部分は売却可能資産という扱いになっている。なお、土地は全て行政財産となっている。
エ 「もんぜんぷら座」について検討した事項
a 売却可能資産明細表を求めた。〔財政部管財課〕
平成23年度 売却可能資産(建物)
単位:円
整理番号 | 施設、 所管課名称 | 施設、名称 | 施設、町字名称 | 施設、地番 | 施設、xx | 棟、棟用途名称 |
36 | まちづくり推進課 | もんぜんぷら座( 普通財産) | 大字南長野 | 1485 | 1 | 事務所 |
棟、構造主体名称 | 棟、構造屋根名称 | 棟、構造外壁名称 | 棟、xxx床面積 | 棟、非xxx床面積 | 棟、建築日付 | 棟、取得日付 |
鉄骨鉄筋コンクリート造 | 陸屋根 | モルタル | 0 | 7 , 196 . 69 | 1976 / 4 / 1 | 2002 / 6 / 25 |
取得価格 | 売却可能価額 | 参照年度 | 経過年数 | 決算統計上の区分 | 決算統計上の区分に基づく耐用年数 | 差引評価差額 |
135 , 356 , 612 | 76 , 882 , 559 | 1976 | 35 | 都市計画費 | 25 | 76 , 882 , 559 |
b 土地・建物の登記事項の確認
○登記事項要約書 土地
1 | 表題部 | 長野市大字南長野字新田町並 | |||
1485 番 1 | 宅地 | 1397.46 ㎡ | |||
権利部所有権 | xx市 | 平成 14 年 12 月 3 日 第 31716 号 |
○登記事項要約書 建物
2 | 表題部 | 長野市大字南xx字新田町並 1485 番地 1(他省略) | |||
1485 番 1 | |||||
1階 2572.20 | |||||
2 階 2351.75 | |||||
3 階 2404.24 | |||||
鉄骨・鉄筋 | 4 階 2340.78 | ||||
コンクリー | 5 階 2340.78 | 昭和 51 年 | |||
店舗 | ト造陸屋根 | 6 階 2340.78 | 3 月 23 日 | ||
地下 1 階付 | 7 階 2340.78 | 新築 | |||
10 階建 | 8 階 2340.78 | ||||
9 階 475.60 | |||||
10 階 43.52 | |||||
地下1 階 3221.98 | |||||
権利部所有権 | xx市 | 平成 14 年 6 月 25 日 第 17490 号 |
※附記:土地面積合計 3,936.26 ㎡
(内訳 所有地 2,705.40 ㎡、借地 1,230.86 ㎡ )
c 敷地利用権について
敷地利用権とは・・・「建物の区分所有等に関する法律」いわゆる区分所有法(以下「法」という。)における敷地利用権とは、区分所有建物の専有部分を所有するための敷地に関する権利を示している。この区分所有法とは、主に 1 棟の建物を区分し、その各部を所有権の目的とする場合の所
有関係を定めるとともに、一体不可分の 1 棟の建物を区分して所有する建物及びその敷地等共同して管理する定めについて、さらには団地関係における施設管理等の方法についても定め、その共同管理組織や管理運営方法等について定めた法律である。その区分所有の対象である建物の敷地は、区分所有建物が存する建築敷地としての法定敷地と、管理組合の規約により建物の敷地とされる規約敷地の 2 種類がある。
この法律においては、専有部分と敷地利用権の分離処分の原則的禁止を規定しているため(法第 22 条)、やむを得ず敷地分離せざるを得ない場合にも、区分所有者が建物及び建物が所在する土地と一体的に管理または使用することが客観的に可能な庭、通路、その他駐車場、付属建物等の土地については、対応ができるように「規約による建物の敷地」として規定している(法第 5 条)。
また、各専有部分に係わる敷地利用権の割合(実際には敷地における共有持分または準共有持分を意味する。)は、各専有部分の内、法面積比で共用部分の共有持分の割合を定める法第 14 条第 1 項から第 3 項までの規定条項によるが、留意する点として、共用部分の共有持分を規約で別段の定めがあるように(法第 14 条第 4 項)、規約でこの割合と異なる割合が定
められている場合には、その割合となる規定(法第 22 条第 2 項)がある。
d 実地における目視による事実確認
「もんぜんぷら座」については、往査し、現状の貸付等の状況を確認した。
オ 参考資料
第 1 条
●建物の区分所有等に関する法律
<建物の区分所有> 1 棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる。
第 2 条
<定義> この法律において「区分所有権」とは、前条に規定する建物の部分(第 4 条第 2 項の規定により共用部分とされたものを除く。)を目的とする所有権をいう。
2 この法律において「区分所有者」とは、区分所有権を有する者をいう。
3 この法律において「専有部分」とは、区分所有権の目的たる建物の部分をいう。
4 この法律において「共用部分」とは、専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の附属物及び第 4 条第 2 項の規定により共用部分とされた附属の建物をいう。
5 この法律において「建物の敷地」とは、建物が所在する土地及び第 5 条第
1 項の規定により建物の敷地とされた土地をいう。
6 この法律において「敷地利用権」とは、専有部分を所有するための建物の敷地に関する権利をいう。
第 5 条
<規約による建物の敷地> 区分所有者が建物及び建物が所在する土地と一体として管理又は使用をする庭、通路その他の土地は、規約により建物の敷地とすることができる。
2 建物が所在する土地が建物の一部の滅失により建物が所在する土地以外の土地となつたときは、その土地は、前項の規定により規約で建物の敷地と定められたものとみなす。建物が所在する土地の一部が分割により建物が所在する土地以外の土地となつたときも、同様とする。
第 14 条
<共用部分の持分の割合> 各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。
2 前項の場合において、一部共用部分(附属の建物であるものを除く。)で
床面積を有するものがあるときは、その一部共用部分の床面積は、これを共用すべき各区分所有者の専有部分の床面積の割合により配分して、それぞれその区分所有者の専有部分の床面積に算入するものとする。
3 前 2 項の床面積は、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積による。
4 前 3 項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。
第 22 条
<分離処分の禁止> 敷地利用権がxxで有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない。
2 前項本文の場合において、区分所有者が数個の専有部分を所有するときは、各専有部分に係る敷地利用権の割合は、第 14 条第 1 項から第 3 項までに定める割合による。ただし、規約でこの割合と異なる割合が定められているときは、その割合による。
3 前 2 項の規定は、建物の専有部分の全部を所有する者の敷地利用権が単独で有する所有権その他の権利である場合に準用する。
(9)監査の結果等
<xx駅東西自由通路>
①実施した監査手続
ア 「長野駅東西自由通路」に関係、関連のある担当部署より、関係書類や資料の提供を受け、検証した。
イ 実地において目視をする等、事実確認の監査を行った。
②実施した監査の結果等
【 意 見 】
普通財産は、原則として売却可能資産に分類しうるものだが、それは「現に公用もしくは公共用に供されていない公有資産」を云うのであって、「長野駅東西自由通路」には、公共用に供されている通路も含まれている。
「長野駅東西自由通路」は、〔通路〕と〔自由通路広場等〕に大別されるが、当初の協議における財産区分では「長野駅東西自由通路」を一括して、全てを普通財産としている。それ故、当初の協議における財産区分に問題ありと考えられる。
当時の条例に於いて、貸付の発生が想定される場合には、普通財産として取り扱った経緯があるとはいえ、〔通路〕として使用している部分と、イベント等で多目的に活用する〔自由通路広場等〕の部分に区分し、現状の用途に則した分類をされたい。
〔通路〕
行政財産
「長野駅東西自由通路」
〔自由通路広場等〕
普通財産
<もんぜんぷら座>
①実施した監査手続
ア 「もんぜんぷら座」に関係、関連のある担当部署より、関係書類や資料の提供を受け、検証した。
イ 実地において目視をする等、事実確認の監査を行った。
②実施した監査の結果等
【 意 見 】
「もんぜんぷら座」については、行政財産である「もんぜんぷら座の建物」のうち、テナント等に貸付をしている部分を普通財産としている。
売却可能資産は、普通財産及び用途廃止を予定している行政財産であるため、建物の普通財産は売却可能資産となる。その一方で「もんぜんぷら座の土地」は全て行政財産となっている。
「建物の区分所有等に関する法律」いわゆる、区分所有法※における敷地利用権の考え方からすれば、建物のうちテナント等に貸付をしている部分は普通財産として、当該部分を行政財産から区分をしているので、区分所有建物の専有部分と考えられる。
そこで、建物だけでなく土地についても、区分所有法の考え方を取り入れれば、土地も普通財産に区分される部分が出てくる。普通財産とした建物面積に対応するところの土地(敷地利用権相当分)については、建物と同様に普通財産として分類する方法も考えられる。
「売却可能資産」は市場性を有し、市場価値が客観的に把握され、且つ資産・債務改革の推進にあたり重要となる資産である。また、財務書類の貸借対照表では別建てで計上を行う。
その背景には、資産・債務に関する情報開示と適正な管理を一層進めるとともに、債務圧縮や財源確保を図るため、遊休資産や未利用資産等については、売却や貸付等に積極的に取り組むことが求められていることにある。
今後、総務省から示される新地方公会計制度の基準に基づき「売却可能資産」と「有形固定資産」を明確に区分し、適切な減価償却を行うことを望む。
※区分所有法・・・〈建物の区分所有者等に関する法律(第 22 条)〉において、専有部分(建物)と敷地利用権(土地)の分離処分の原則的禁止を規定している。
2.減価償却について
(1)企業会計の減価償却
①固定資産
ア 定義と分類
固定資産とは、企業の営業活動に使用するため、または投資等のために 1 年以上にわたって保有される資産である。
「企業会計原則」では、「固定資産は、有形固定資産、無形固定資産、及び投資その他の資産に区分しなければならない。建物、構築物、機械装置、船舶、車両運搬具、工具器具備品、土地、建設仮勘定等は、有形固定資産に属するものとする。営業権、特許権、地上権、商標xxは、無形固定資産に属するものとする。子会社株式その他流動資産に属しない有価証券、出資金、長期貸付金並びに有形固定資産、無形固定資産及び繰延資産に属するもの以外の長期資産は、投資その他の資産に属するものとする。」と規定している。
たとえば、企業が所有する工場用地は有形固定資産の「土地」に該当し、工場そのものは有形固定資産の「建物」に該当する。工場で稼動している機械は
「機械及び装置」に該当する。ビルや工場を建設中で事業年度終了までに完成しなかった場合、それまでに支払った資材、機械等の購入費や工事代金は、「建設仮勘定」に集計される。また、対価を支払って特許の使用許諾権を取得した場合には、その権利は無形固定資産の「特許権」に該当する。ソフトウェアの製作費は無形固定資産の「ソフトウェア」に該当する。
イ 法人税法上の分類
法人税法第 2 条第 22 号において、「固定資産 土地(土地の上に存する権利を含む。)、減価償却資産、電話加入権その他の資産で政令に定めるものをいう。」と規定している。同法第 2 条第 23 号において「減価償却資産 建物、構築物、機械及び装置、船舶、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、鉱業権その他の資産で償却をすべきものとして政令で定めるものをいう。」と規定している。法人税法上の固定資産の範囲と企業会計上の固定資産の範囲は同様と考えてよいが、法人税では減価償却資産という概念を用いているのが特徴的である。
法人税法は減価償却の対象とならない資産についても定めており、これを非減価償却資産という。非減価償却資産は、使用または保有によって必ずしも減価するとは限らない資産または事業の用に供していない資産である。以下に示したようなものが該当する。
区分 | 資産の例示 |
使用または保有により必ずしも価値が減少しない資産 | 土地 |
土地の上に存する権利(借地権、地上xx) | |
電話加入権 | |
書画骨とう等 | |
貴金属の素材の価額が大部分を占める固定資産 | |
事業の用に供していない資産 | 建設中の資産(建設仮勘定) |
稼働休止中の資産 | |
生育中の生物 |
②減価償却ア 意義
「企業会計原則」では、「有形固定資産は、当該資産の耐用期間にわたり、定額法、定率法等の一定の減価償却の方法によって、その取得原価を各事業年度に配分し、無形固定資産は、当該資産の有効期間にわたり、一定の減価償却方法によって、その取得原価を各事業年度に配分しなければならない。」と規定している。
固定資産は使用や時の経過によって価値が減少していくが、その減価を測定することは極めて困難である。そこで何らかの方法によって固定資産の価値を減少させる処理が必要になる。その役割を担うのが減価償却である。
イ 目的
「企業会計原則と関係諸法令との調整に関する連続意見書第三」(以下、「連続意見書第三」という)では、「減価償却の最も重要な目的は、適正な費用配分を行うことによって、毎期の損益計算を正確ならしめることである。このためには、減価償却は所定の減価償却方法に従い、計画的、規則的に実施されねばならない。利益におよぼす影響を顧慮して減価償却費を任意に増減することは、右に述べたxxの減価償却に反するとともに、損益計算をゆがめるものであり、是認し得ないところである。」と規定している。
毎期の損益計算を正確に行うということを、設例を使ってみていくことにする。
設例 A 社は取得原価 100 万円の機械を使用し、5 年間にわたって毎年 40 万円の収益をあげた。この機械は 5 年後に使用不可能となったため廃棄処分した。減価償却費以外の費用は一切生じないものとする。
ケース 1
収益 | 費用 | 利益 | |
1 年目 | 400,000 円 | 0 円 | 400,000 円 |
2 年目 | 400,000 | 0 | 400,000 |
3 年目 | 400,000 | 0 | 400,000 |
4 年目 | 400,000 | 0 | 400,000 |
5 年目 | 400,000 | 1,000,000 | ▲600,000 |
ケース 2
収益 | 費用 | 利益 | |
1 年目 | 400,000 円 | 200,000 円 | 200,000 円 |
2 年目 | 400,000 | 200,000 | 200,000 |
3 年目 | 400,000 | 200,000 | 200,000 |
4 年目 | 400,000 | 200,000 | 200,000 |
5 年目 | 400,000 | 200,000 | 200,000 |
ケース 1 では、廃棄処分を行った 5 年目に取得原価 100 万円がいっきに費用
とされるため、過去 4 年間の経営成績と比較できなくなっている。
ケース 2 では、機械の取得原価を収益に対応させるかたちで毎期費用化しているので、各期の利益は、収益とそれを獲得するために使用した資産の減価部分を対応させた金額となる。この方が企業の経営成績を適切に反映させているといえる。
ウ 効果
減価償却には、固定資産の流動化効果と自己金融効果の二つの効果がある。固定資産の流動化効果とは、減価償却費を計上することは、固定資産の貸借
対照表計上額を減価償却費と同額減額すると同時に、同額の収益に見合う貨幣性資産(=流動資産)を企業内に留保することである。
自己金融効果とは、減価償却費は現金支出を伴わない費用であるから、その分だけ企業内に資金が蓄積されるというものである。設例を使って自己金融効果を見ていく。
設例 取得原価 20 万円、耐用年数 4 年の機械を期首に購入したとする。減価償却方法は定額法を採用する。
(単位:万円)
年度 | 固定資産の簿価 | 現金支出 | 費用(減価償 却費) | 内部留保(現金 収入) |
1 | 15 | ▲20 | 5 | 5 |
2 | 10 | 0 | 5 | 10 |
3 | 5 | 0 | 5 | 15 |
4 | 0 | 0 | 5 | 20 |
機械を購入して使用していくうえで実際に現金支出が生じているのは第 1 年度だけである。その後一切現金支出は生じない。損益計算上は、耐用年数にわたって配分された 5 万円は費用計上され、各期の収益から差し引かれることになる。すなわち、現金支出を伴わない費用が計上される。
このことは、現金支出を伴わない費用は企業内部に留保されることを意味する。そして、それらは運転資金などとして営業活動に回されていく。もし、その資金を運用しないで預金等に貯蓄をしておけば、耐用年数の終了時点で減価償却に等しい資金が企業に蓄積されていることになる。
減価償却費に等しい額を営業活動に利用できるということは、株式市場や銀行等の外部から資金を調達したことと同じ効果を発揮する。また、営業活動に利用しないで預金等に貯蓄することによって、外部からの資金調達なしで同額の固定資産を購入することができる。
③取得価額
ア 取得価額の算定方法
「連続意見書第三」において購入、自家建設、交換等の取得の態様ごとに規定されている。また、法人税法施行令第 54 条においても同様に取得の態様ごと
に取得価額の算定方法が規定されている。
まず、購入した場合の取得原価は、その資産の購入代価に買入手数料、運送費、荷役費、据付費、試運転費等の付随費用を加えて取得価額とする。
自家消費の場合は、適正な原価計算基準に従って計算した製造原価に基づいて決定される。
現物出資の場合は、出資者に対して交付された株式の発行価額をもって取得価額とする。
交換の場合は、交換に供された自己の資産の時価または適正な簿価が取得価額となる。
贈与の場合は、時価等を基準としてxxな評価額をもって取得価額とする。
イ 取得価額に含めなくてよい費用
固定資産の取得に関する付随費用はその取得価額に含めて処理するのが原則だが、法人税法基本通達 7-3-3 の 2 において、取得価額に含めなくてもよい費用を例示している。
a 租税公課等
・不動産取得税または自動車取得税
・特別土地保有税のうち土地の取得に対して課されるもの
・新増設に係る事業所税
・登録免許税その他登記または登録のために要する費用
これらについては、固定資産の取得に際して必ず納付すべき税金ではあるが、取得の事後に課されるものであり、税の性格としても流通税的なものや法的な第三者対応要件を具備するためのもの等、事業の用に供するために不可避のものとは必ずしもいえない。したがって、取得価額に含めることを要しないとされている。
b 建物の建設等のために行った調査、測量、設計、基礎工事等でその建設計画を変更したことにより不要となったものに係る費用の額
無駄となってしまった以上は新たな計画に基づく取得資産の取得原価に含めることは強制できないという考えから、取得価額に含めないことが許容されている。
c いったん契約した固定資産の取得に関する契約を解除して他の固定資産を取得することとした場合に支出する違約金の額
新規取得に係る契約とは別個の契約に基づくものであるから、取得資産の取得価額に含めることを強制することは適切ではない。
④残存価額
ア 残存価額とは
残存価額とは、耐用年数経過時に固定資産を処分する際に、廃材として売却または中古品としての売却によって回収することが見込まれる金額である。
残存価額相当額は耐用年数経過後に固定資産を処分することによって回収されるので、減価償却によって費用配分する金額、すなわち、要償却額は取得価額から残存価額を差し引いた残額になる。
イ 法人税法の規定
残存価額は個々の資産ごとに適切に見積もることが原則であるが、法人税法においては、見積りのばらつきによって課税のxxが阻害されないよう、残存価額を取得価額の一定割合としている。
法人税法においては、平成 19 年度の税制改正によって残存価額は撤廃されたが、それ以前は、有形固定資産の残存割合は 10%(償却可能限度額は取得価額の 5%まで)、無形固定資産の残存割合はゼロとされていた。
ウ 残存価額と償却可能限度額の撤廃
a 残存価額の撤廃
平成 19 年度の税制改正において、平成 20 年 4 月 1 日以後に事業の用 に供する減価償却資産については残存価額が撤廃された。これによって、備忘価額の 1 円を残して取得価額のほぼ全額が減価償却の対象とされる こととなった。
b 償却可能限度の撤廃
平成 19 年 3 月 31 日以前に取得した資産については、従来取得価額の 95%までとされていた償却可能限度が撤廃されたため、減価償却累計額が取得価額の95%に達し5%の帳簿価額を残したまま継続使用されていた資産について、備忘価額の 1 円まで費用処理する方法が新設された。
⑤耐用年数
ア 耐用年数とは
耐用年数とは、通常の維持修繕を行った場合に固定資産が使用可能と見込まれる期間のことである。この使用可能期間を決める要因は物理的原価と機能的原価である。
物理的原価とは、固定資産が使用や保有によって摩耗や劣化することによる減価である。機能的原価とは、新しい技術の出現によりその固定資産の競争力が落ちて陳腐化したり、新しい製品が出現して製品の需要が著しく減退して固
定資産が不適応化したりすることによって生じる。耐用年数は単に物理的に使用可能な期間ではなく、物理的原価と機能的原価を併せて考慮し、企業が合理的に決定すべきものとされている。
イ 法定耐用年数
しかし、耐用年数の見積もりは困難であり、企業の自主性に任せた場合、同じ種類で同じ用途に使用されている資産について、企業によって異なる耐用年数を設定することが起こりえる。また、耐用年数は減価償却費の計算結果に大きな影響を及ぼすので、期間損益計算の観点から、企業が自社の都合によって恣意的に決定する危険もある。
こうしたことは、課税のxxを著しく阻害することになるので、法人税法は、減価償却資産の種類ごとに一律の耐用年数を定めている。実務上は、この法定耐用年数を用いて減価償却費を算定している。参考までに、財務省の「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」の抜粋を示しておく。
●減価償却資産の耐用年数表
別表第1 機械及び装置以外の有形減価償却資産の耐用年数表(抜粋)
種類 | 構造又は用途 | 細目 | 耐用年数 ( 年) | |||
建物 | 鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄筋コンクリート造のもの | 事務所用又は美術館用のもの及び下記以外のもの | 50 | |||
住宅用、寄宿舎用、宿泊所用、学校用又は体育館用のもの | 47 | |||||
飲食店用、貸席用、劇場用、演奏場用、映画館用又は舞踏場用のもの | ||||||
飲食店用又は貸席用のもので、延べ面積のうちに占める木造内装部分の面積が3割を超えるもの | 34 | |||||
その他のもの | 41 | |||||
旅館用又はホテル用のもの | ||||||
延べ面積のうちに占める木造内装部分の面積が 3割を超えるもの | 31 | |||||
その他のもの | 39 | |||||
店舗用のもの | 39 | |||||
病院用のもの | 39 | |||||
変電所用、発電所用、送受信所用、停車場用、車庫用、格納庫用、荷扱所用、映画製作ステージ用、屋内スケート場用、魚市場用又はと畜場用のもの | 38 | |||||
公衆浴場用のもの | 31 | |||||
工場( 作業場を含む)用又は倉庫用のもの | ||||||
塩素、塩酸、硫酸、硝酸その他の著しい腐食性を有する液体又は気体の影響を直接全面的に受けるもの、冷蔵倉庫用のもの( 倉庫事業の倉庫用のものを除く) 及び放射性同位元素の放射線を直接受けるもの | 24 | |||||
塩、チリ硝石その他の著しい潮解性を有する固体を常時蔵置するためのもの及び著しい蒸気の影響を直接全面的に受けるもの | 31 | |||||
その他のもの | ||||||
倉庫事業の倉庫用のもの | ||||||
冷蔵倉庫用のもの | 21 | |||||
その他のもの | 31 | |||||
その他のもの | 38 |
建物附属 | 電気設備( 照明設備を | 蓄電池電源設備 | 6 |
設備 | 含む) | その他のもの | 15 |
給排水又は衛生設備及 | 15 | ||
びガス設備 | |||
冷房、暖房、通風又は | 冷暖房設備( 冷凍機の出力が22キロワット以下のもの) | 13 | |
ボイラー設備 | その他のもの | 15 | |
昇降機設備 | エスカレーター | 15 | |
エレベーター | 17 | ||
消火、排煙又は災害報 | 8 | ||
知設備及び格納式避難 | |||
設備 | |||
エヤーカーテン又はド | 12 | ||
アー自動開閉設備 | |||
アーケード又は日よけ | 主として金属製のもの | 15 | |
設備 | その他のもの | 8 | |
店用簡易装備 | 3 | ||
可動間仕切り | 簡易なもの | 3 | |
その他のもの | 15 | ||
前掲のもの以外のもの | 主として金属製のもの | 18 | |
及び前掲の区分によら | その他のもの | 10 | |
ないもの |
構築物 | 競技場用、運動場用、遊園地用又は学校用のもの | スタンド | |||
主として鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄筋コンクリート造のもの | 45 | ||||
主として鉄骨造のもの | 30 | ||||
主として木造のもの | 10 | ||||
競輪場用競走路 | |||||
コンクリート敷のもの | 15 | ||||
その他のもの | 10 | ||||
ネット設備 | 15 | ||||
野球場、陸上競技場、ゴルフコースその他のスポーツ場の排水その他の土工施設 | 30 | ||||
水泳プール | 30 | ||||
その他のもの | |||||
児童用のもの | |||||
すべり台、ぶらんこ、ジャングルジムその他の遊戯用のもの | 10 | ||||
その他のもの | 15 | ||||
その他のもの | |||||
主として木造のもの | 15 | ||||
その他のもの | 30 | ||||
緑化施設及び庭園 | 工場緑化施設 | 7 | |||
その他の緑化施設及び庭園( 工場緑化施設に含まれるものを除く) | 20 | ||||
舗装道路及び舗装路面 | コンクリート敷、ブロック敷、れんが敷又は石敷のもの | 15 | |||
アスファルト敷又は木れんが敷のもの | 10 | ||||
ビチューマルス敷のもの | 3 |
船舶 | ( 省略) | ||
航空機 | ( 省略) |
車両及び運搬具 | 前掲のもの以外のもの | 自動車( 二輪又はxx自動車を除く) | ||||
小型車(総排気量が0.66リットル以下のものをいう) | 4 | |||||
その他のもの | ||||||
貨物自動車 | ||||||
ダンプ式のもの | 4 | |||||
その他のもの | 5 | |||||
報道通信用のもの | 5 | |||||
その他のもの | 6 | |||||
二輪又はxx自動車 | 3 | |||||
自転車 | 2 | |||||
鉱山用人車、炭車、鉱車及び台車 | ||||||
金属製のもの | 7 | |||||
その他のもの | 4 | |||||
フォークリフト | 4 | |||||
トロッコ | ||||||
金属製のもの | 5 | |||||
その他のもの | 3 | |||||
その他のもの | ||||||
自走能力を有するもの | 7 | |||||
その他のもの | 4 |
工具 | 測定工具及び検査工具 ( 電気又は電子を利用するものを含む) | 5 | |
治具及び取付工事 | 3 | ||
ロール | 金属圧延用のもの | 4 | |
なつ染ロール、粉砕ロール、混練ロールその他のもの | 3 | ||
型( 型枠を含む)、鍛圧工具及び打抜工具 | プレスその他の金属加工用金型、合成樹脂、ゴム又はガラス成型用金型及び鋳造用型 | 2 | |
その他のもの | 3 | ||
切削工具 | 2 | ||
金属製柱及びカッペ | 3 | ||
活字及び活字に常用される金属 | 購入活字(活字の形状のまま反復使用するものに限る) | 2 | |
自製活字及び活字に常用される金属 | 8 | ||
前掲のもの以外のもの | 白金ノズル | 13 | |
その他のもの | 3 | ||
前掲の区分によらないもの | 白金ノズル | 13 | |
その他主として金属製のもの | 8 | ||
その他のもの | 4 |
器具及び備品 | 1.家具、電気機器、ガス機器及び家庭用品 ( 他の項に掲げるものを除く) | 事務机、事務いす及びキャビネット | |||
主として金属製のもの | 15 | ||||
その他のもの | 8 | ||||
応接セット | |||||
接客業用のもの | 5 | ||||
その他のもの | 8 | ||||
ベッド | 8 | ||||
児童用机及びいす | 5 | ||||
陳列だな及び陳列ケース | |||||
冷凍機付又は冷蔵機付のもの | 6 | ||||
その他のもの | 8 | ||||
その他の家具 | |||||
接客業用のもの | 5 | ||||
その他のもの | |||||
主として金属製のもの その他のもの | 15 8 | ||||
ラジオ、テレビジョン、テープレコーダーその他の音響機器 | 5 | ||||
冷房用又は暖房用機器 | 6 | ||||
電気冷蔵庫、電気洗濯機その他これらに類する電気又はガス機器 | 6 | ||||
氷冷蔵庫及び冷蔵ストッカー(電気式のものを除く) | 4 | ||||
カーテン、座ぶとん、寝具、丹前その他これらに類する繊維製品 | 3 | ||||
じゅうたんその他の床用敷物 | |||||
小売業用、接客業用、放送用、レコード吹込用又は劇場用のもの | 3 | ||||
その他のもの | 6 | ||||
室内装飾品 | |||||
主として金属製のもの | 15 | ||||
その他のもの | 8 | ||||
食事又はちゅう房用品 | |||||
陶磁器製又はガラス製のもの | 2 | ||||
その他のもの | 5 | ||||
その他のもの | |||||
主として金属製のもの | 15 | ||||
その他のもの | 8 |
別表第2機械及び装置の耐用年数表(抜粋)
種類 | 細目 | 耐用年数(年) |
食料品製造業用設備 | 10 | |
飲料、たばこ又は飼料製造業 用設備 | 10 | |
繊維工業用設備 | 炭素繊維製造設備 黒鉛化炉 | 3 |
その他の設備 | 7 | |
その他の設備 | 7 | |
木造又は木製品(家具を除く) 製造業用設備 | 8 | |
家具又は装備品製造業用設備 | 11 | |
パルプ、紙又は紙加工品製造業用設備 | 12 | |
印刷業又は印刷関連業用設備 | デジタル印刷システム設備 | 4 |
製本業用設備 | 7 | |
新聞業用設備 モノタイプ、写真又は通信設備 | 3 | |
その他の設備 | 10 | |
その他の設備 | 10 | |
化学工業用設備 | 臭素、よう素又は塩素、臭素若しくはよう素化合物製造設備 | 5 |
塩化りん製造設備 | 4 | |
活性炭製造設備 | 5 | |
ゼラチン又はにかわ製造設備 | 5 | |
半導体用フォトレジスト製造設備 | 5 | |
フラットパネル用カラーフィルター、偏光板又は偏光板用フィルム製造設備 | 5 | |
その他の設備 | 8 | |
石油製品又は石炭製品製造業 用設備 | 7 | |
プラスチック製品製造業用設備( 他の号に掲げるものを除 く) | 8 | |
ゴム製品製造業用設備 | 9 |
別表第3無形減価償却資産の耐用年数(抜粋)
漁業権 | 10 | |
ダム使用権 | 55 | |
水利権 | 20 | |
特許権 | 8 | |
実用新案権 | 5 | |
意匠権 | 7 | |
商標権 | 10 | |
ソフトウエア | 複写して販売するための原本 | 3 |
その他のもの | 5 | |
育成者権 | 種苗法(平成十年法律第八十三号) 第四条第二項に規定する品種 | 10 |
その他 | 8 | |
営業権 | 5 |
別表第4生物の耐用年数表(抜粋)
牛 | 繁殖用 役肉用牛 | 6 |
乳用牛 | 4 | |
種付用 | 4 | |
その他用 | 6 | |
馬 | 繁殖用 | 6 |
種付用 | 6 | |
競走用 | 4 | |
その他用 | 8 | |
豚 | 3 | |
綿羊及びやぎ | 種付用 | 4 |
その他用 | 6 | |
かんきつ樹 | 温州みかん | 28 |
その他 | 30 | |
りんご樹 | わい化りんご | 20 |
その他 | 29 | |
ぶどう樹 | 温室ぶどう | 12 |
その他 | 15 |
ウ 中古の耐用年数
a 中古資産の耐用年数の見積り
中古資産については、法人税法上、新品の法定耐用年数を用いずに、 その事業の用に供した時以降の使用可能期間(残存耐用年数)を見積り、その期間を耐用年数として償却限度額の計算をすることができるとされている。
b 中古資産の耐用年数見積りの簡便法
また、中古資産の使用可能期間を見積ることが困難な場合には、次により計算した年数を残存耐用年数とすることが認められている。
ⅰ法定耐用年数の全部を経過した資産
法定耐用年数×20/100=残存耐用年数
ⅱ法定耐用年数の一部を経過した資産
(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20/100=残存耐用年数
(注)残存耐用年数に 1 年未満の端数が生じたときは、これを切り
捨て、その年数が 2 年未満の場合は 2 年とする。
c 簡便法が認められない場合
ⅰ事業の用に供するための資本的支出が取得価額の 50%を超える場合 中古資産を取得してこれを事業の用に供するために改良や耐久性を 高める資本的支出を行う場合がある。この資本的支出の金額が、この資産の取得価額の 50%を超えるときは、改良等に伴い中古資産の効用
が相当高まると考えられるため簡便法の適用は出来ない。この場合、中古資産部分は簡便法による見積耐用年数によって減価償却すると 仮定し、資本的支出部分は新規取得資産と同様に法定耐用年数によって減価償却すると仮定して、両者を加重平均した耐用年数を使用することになる。
ⅱ事業の用に供するための資本的支出が再取得価額の 50%を超える場合中古資産を取得して、事業の用に供するに当たって支出した資本的支出の金額が、その中古資産を新品の状態で再取得するのに必要な価額
(再取得価額)の 50%を超える場合には、残存耐用年数により減価償却することは認められない。これだけの支出を行うことは中古資産を新品の状態まで復元するに等しいと考えられるため、法定耐用年数を適用することになる。
エ 耐用年数の変更
減価償却は適正な期間損益計算を行うために毎期計画的、規則的に行うものであるが、耐用年数が設定にあたって予見することのできなかった機能的原因等により、著しく不合理となった場合等に耐用年数を変更する場合がある。これに基づいて一時に行われる減価償却累計額の修正のための減価償却を臨時償却という。
⑥減価償却の方法
減価償却の方法は次の通りである。
ア 定額法:固定資産の耐用年数にわたって、毎期均等額の減価償却費を計上する方法。
イ 定率法:固定資産の耐用年数にわたって、毎期首の未償却残高に一定率を乗じた減価償却費を計上する方法。定額法と比べると減価償費は早期に多く計上され、徐々に減少していくことになる。
ウ 級数法:固定資産の耐用年数にわたって、算術級数の和を分母、耐用 年数の逆順序の数字を分子として、それを要償却額に掛けて求める。定率法と同様、減価償費は早期に多く計上され、徐々に減少していくことになる。
エ 生産高比例法:固定資産の耐用年数にわたって、毎期その資産による生産または用役の提供の度合いに比例した減価償却費を 計上する方法。この方法が適用できるのは、その資産の総利用可能量が正確に把握でき、かつ、減価が固定資産の利用に比例して発生する場合に限定される。鉱山業における機械設備等が該当する。
固定資産の中には減価償却を行わず、取替法という方法が適用されるものがある。電力会社の電柱や送電線、鉄道会社のレールや枕木など、同種の物品が多数集まることによって利用可能となる固定資産が該当する。老朽化した部分を取り替えることで、固定資産全体が維持される。このような固定資産については、取得価額はそのままで、実際に取り替えが行われて新資産を取得したときに、それに要した支出額が修繕費として処理される。
⑦資本的支出と修繕費
固定資産を使用していると、その機能を維持するために様々な費用が発生する。たとえば、機械の調整、損耗部分の補修・部品の取替、分解・点検等の費用である。企業会計上は、固定資産の使用可能期間を延長させるような効果がなく、かつ、資産の経済的価値を高めない支出で、固定資産の機能・効力を維持するためのものを修繕費といい、発生した期間の費用として処理される。
一方、固定資産の使用可能期間を延長させる効果又は固定資産の経済価値を高める効果を持つ支出は資本的支出とされ、固定資産として資産計上のうえ減価償却によって費用配分される。
実務上、資本的支出と修繕費の区別は非常に難しい場合が多い。法人税法の基本通達で詳細に規定されているので、その規定に従って処理を行っている。
⑧リース会計
リース会計とは、特定の物件の所有者である貸手が、その物件の借手に対しリース期間にわたりこれを使用収益する権利を与え、借手はリース料を貸手に支払う取引をいう。
リース契約に基づくリース期間の中途において契約を解除することができないリース取引またはこれに準ずるリース取引で、借手が、契約に基づきリース物件からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、リース物件の使用に伴って生じるコストを実質的に負担することとなるリース取引をxxxxxx・xxx取引といい、このうち、リース契約上の諸条件に照らしてリース物件の所有権が借手に移転すると認められるもの以外の取引を所有権移転外ファイナンス・リース取引という。
ファイナンス・リース取引については通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理を行うことになる。減価償却については、所有権移転リース取引は自己所有の固定資産と同一の方法で行い、所有権移転外リース取引は原則として、リース期間を耐用年数とした方法で行う。
⑨減損会計
固定資産の減損とは、資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった状態をいう。減損処理とは、そのような場合に、資産の回収可能性を反映させるように貸借対照表の帳簿価額を減額させる会計処理をいう。
わが国ではバブル崩壊以降、不動産をはじめとする固定資産の価格や収益性が著しく低下しており、そうした固定資産の帳簿価額は、その価値を過大評価したまま、将来に損失を繰り延べている可能性が高い。
そこで、上場会社等には、平成 17 年 4 月 1 日以降開始する事業年度から、固定資産の減損に関する会計基準(減損会計)が適用されることとなったのである。
⑩資産除却債務
資産除却債務に関する会計基準が平成 20 年 3 月に公表され、上場会社等には、
平成 22 年 4 月以降開始する事業年度から適用されることになった。それは、有形固定資産の除却に伴う将来の支出について資産除却債務として負債に計上するとともに、これに対応する除却費用を有形固定資産に計上するという会計処理である。
有形固定資産の耐用年数が到来したとき、解体、撤去、処分等に多額の支出が見込まれるとき、あらかじめ支出額を資産除却債務として負債に計上するとともに、対応する除去費用を当該有形固定資産の帳簿価額に加えて有形固定資産に計上し、毎期の減価償却の対象にしようというものである。原子力発電施設の解体に関する除去債務が典型的なものである。
(2)従来の自治体会計と新地方公会計について
① 従来の自治体会計の概要ア 公会計
わが国で「公会計」は公的部門の会計の意味で用いられている。公的部門には、中央政府である国と地方政府である自治体が含まれ、この政府以外の特殊法人、政府企業、第三セクター等の公企業が含まれる。
公会計は官庁会計ともいわれ、一般会計、特別会計、公営企業会計からなっている。国の会計は財政法を背景に会計法があり、詳細は予算決算および会計令により実施される。地方自治体の会計は地方自治法に基づいて行われ、詳細については条例・規則に規定されている。自治体会計とは地方自治体が行う公会計のことである。
イ 企業会計との違い
a 目的の違い
民間企業の代表である株式会社を例にとると、目的は出資者である株主の利益を最大化することである。そのため、決算では株主の利益がどうなったのかを報告することに焦点が当てられる。そこで、貸借対照表や損益計算書を作成して、株主の利益がどうなったかを報告する。
貸借対照表では株主の持分がどう変化したかがわかる。すなわち、貸借対照表には将来の収入となる資産と、将来支払わなければならない負債が計上され、その差額として株主の持分が表示される。
これに対して、地方公共団体は端的にいうと住民の福祉を向上させることが目的である。そのために税金の使途が決められ、それに従ってサービスが提供されなければならない。また、サービス提供に必要な税金等の収入が入ってこなければならない。
このため、決算では税金が決められたとおりに使われたかどうかに焦点が当てられる。地方公共団体の決算では、歳入歳出決算書が作成され、予算額と実際の収入額、支出額が比較される。歳入の部では予定どおりに税金や補助金が入ってきたかが分かる。歳出の部では決められた目的に従って支出が行われたが分かる。
b 収入の違い
株式会社の収入は商品の販売やサービスの提供の対価として顧客が支払ったものである。顧客は自らの意思で商品を買ったり、サービスの提供を受けるのである。
地方公共団体の収入は主に税金である。これは、住民が地方公共団体から受ける行政サービスの対価として支払っているものではない。行政サービスを受けるか否かに関わらず法律に従って納めるものである。
c 資産の性質の違い
株式会社の土地や建物などの資産は、その資産が将来、会社の利益をもたらすものとしてとらえられる。これに対して、地方公共団体の土地や 建物などの資産は、基本的に利益を生むのもとしてはとらえられない。
こうした決定的な違いがあるにせよ、現状の自治体会計では資産や負債の状況や行政サービスに係るコスト情報などを十分に把握することは困難であり、これを補うために企業会計の方法を取り入れていこうというのがxx会計である。
②従来の自治体会計の問題点
従来の自治体会計の問題点について、減価償却の観点から見ていくことにする。
ア ストック(残高)情報の把握の困難
現行の公会計は、単式簿記・現金主義会計に基づいている。単式簿記とは、1つの取引について 1 つの側面からのみ記録する会計のことをいう。また、現金主義会計とは、現金の収入・支出に基づいて記録する会計のことをいう。
単式簿記・現金主義会計は、予算の執行や現金収支の把握には適している。しかし、例えば借金の増加や積立金の取崩しが収入としてのみとらえられるなど、資産や負債の増加・減少の結果としてのストック(残高)情報が認識されないため、全体的な財政状況がわかりにくいという問題点がある。
例えば、地方公共団体が学校の校舎を 1 億円支払って建てた場合、現行の会
計では、学校の校舎を建設するために現金 1 億円支出したという記録がされるのみで、学校の校舎という資産の増加は支出記録と一体的には記録されない。このため、ストック(残高)情報は別途に現物管理として記録される公有財産台帳に記録される。また、学校の校舎を取り壊した場合、学校の校舎という資産が減少したという事実が会計上記録されない。
イ フルコスト情報の把握の困難
単式簿記・現金主義会計では、現金の収入・支出がないと記録されないため、現金の収入・支出を伴わない経済的に価値があるもの、あるいは経済的な負担の増加・減少が記録されない。
例えば、資産価値の減少に伴う資産の減価償却費や将来の経済的負担である退職手当負担額の当年度増加分は、現金の支出を伴わないため、コストとして把握されないことになる。学校の校舎の例でみると、学校の校舎はその使用期間に応じて徐々に老朽化し、経済的価値が低下するが、現行の公会計では、このような校舎が老朽化した分はコストとして把握されず、校舎の建設時に支出した金額が現物管理としての公有財産台帳に支出額として記録されるだけである。
ウ 単年度主義会計の問題点
現行の公会計は単年度主義会計によっている。単年度会計とは、その年度の支出はその年度の収入で賄うというものであり、その年度で使える支出額を予算で管理するというものである。
単年度主義によると、予算を使い切ることが前提となっており、節約するというインセンティブが働きにくいというデメリットがある。
また、地方公共団体はxx的に存続するものだから、長期的な視点での財政情報が有用であるにもかかわらず、単年度の財政情報しか入手できない。ここでも、過去の支出額や将来の財政負担といったストック情報が得られないという問題がある。
③新地方公会計制度における減価償却の内容ア 従来の自治体会計との違い
従来の自治体会計では、歳入と歳出だけをみてきたが、新地方公会計制度では発生主義を取り入れている。発生主義とは、歳入と歳出という現金収支が生じた事実に基づき会計記録を行うのではなく、資産価値の減価、支払義務等の費用が発生した事実に基づき会計記録を行うという考え方である。従来の自治体会計では先述したように現金主義に基づいて会計記録を行っているため、建物等を購入した場合にはその購入時に支出についての会計記録を行うだけで、減価償却は取り入れていない。
新地方公会計制度は減価償却の仕組みを取り入れている。すなわち、施設の建設や設備の購入のように、翌年度以降でも使えるものに対する支出はその年度の行政コストにはしないで、ひとまず、固定資産として貸借対照表にその取得のための支出金額を計上しておくことになる。固定資産は何年間にもわたって行政サービスを提供するので、その施設や設備を使用している年度で均等に行政サービスに対するコストを負担させることが必要である。これが、固定資産の取得にかかった支出を分割して将来のコストにする仕組み、すなわち、減価償却である。
イ xx会計モデルの対比
それぞれのxx会計モデルにおいて、減価償却がどのように取り扱われているかもう一度見ておく。
a 基準モデル:事業用資産については行政コスト計算書に計上。
インフラ資産については直接資本減耗として純資産変動計算書に計上。
b 総務省方式改定モデル:行政コスト計算書に計上。
c xxx:行政コスト計算書に計上。
d 大阪府:行政コスト計算書に計上。
ウ 総務省方式改定モデルにおける減価償却
貸借対照表、行政コスト計算書、純資産変動計算書、資金収支計算書において、減価償却がどのように関わっているか簡単に見ておく。
a 貸借対照表
有形固定資産は、具体的には土地、建物、機械装置などが該当するが、土地、建物といった科目ではなく、生活インフラ、国土保全、教育といった行政目的別に区分して表示される。取得価額は過去の普通建設事業費を積み上げて計算する。そこから減価償却累計額を差し引いて算定される。
b 行政コスト計算書
物にかかるコストとして、物件費、維持修繕費とともに減価償却費が表示される。
c 純資産変動計算書
「科目振替」の中に「減価償却による財源増」がある。これは、公共資産の減価償却により財源が「公共資産等整備一般財源等」から「その他一般財源」へ振り替えられることを表している。
資金収支計算書では、減価償却は直接的には関わらない。
いずれにしても、減価償却を行うことによって従来の自治体会計の欠点であるストック情報の欠如、フルコスト情報の欠如といったことが解消されるのである。
④財務書類の活用について
減価償却を行うことによって財務書類の分析が有益なものとなる。財務書類の主たる利用者である住民のニーズを踏まえた分析を行い、住民にとって有益な情報を示していくことが重要である。ここでは、減価償却に関わる分析について見ていくことにする。
ア 財務書類から読み取れる情報
a 貸借対照表(B/S)
貸借対照表は、会計年度末(基準日)時点で、地方公共団体がどのような資産を保有しているかと(資産保有状況)、その資産がどのような財源でまかなわれているのかを(財源調達状況)対照表示した財務書類である。
b 行政コスト計算書(P/L)
行政コスト計算書は、一会計期間において、資産形成に結びつかない経常的な行政活動に係る費用(経常的な費用)と、その行政活動と直接の対価性のある使用料・手数料などの収益(経常的な収益)を対比させた財務書類である。これにより、その差額として、税収等でまかなうべき行政コスト(純経常費用(純経常行政コスト))が明らかにされる。
c 純資産変動計算書(NWM)
純資産変動計算書は、貸借対照表の純資産の部に計上されている各項目が 1 年間でどのように変動したかを表す財務書類である。地方税、地方交付税などの一般財源、国県支出金などの特定財源が純資産の増加要因として計上され、行政コスト計算書で算出された純経常費用(純経常行政コスト)が純資産の減少要因として計上されることなどを通じて、1 年間の純資産総額の変動が明らかにされる。
d 資金収支計算書(C/F)
資金収支計算書は、一会計期間における、地方公共団体の行政活動に伴う現金等の資金の流れを、性質の異なる 3 つの活動に分けて表示した財務書類である。現金等の収支の流れを表したものであることから、キャッシュ・フロー計算書とも呼ばれている。
イ 分析の視点と指標
分析の視点 | 住民等のニーズ | 指標 | |
資産形成度 | 将来世代に残る資産はどれくらいあるのか | ① ② ③ ④ | 住民一人当たり資産額 有形固定資産の行政目的別割合歳入額対資産比率 資産老朽化比率 |
世代xxx性 | 将来世代と現世代との負担の分担は適切か | ⑤ ⑥ | 純資産比率 社会資本等形成の世代間負担比率(将来世代負担比率) |
持続可能性 (健全性) | 財政に持続可能性があるのか(どれくらい借金があるか) | ⑦ ⑧ | 住民一人当たり負債額 基礎的財政収支(関係指標)健全化判断比率(実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率、将来負担比率) |
効率性 | 行政サービスは効率的に提供されているか | ⑨ ⑩ ⑪ | 住民一人当たり行政コスト 住民一人当たり人件費・物件費等行政コスト対公共資産比率 |
弾力性 | 資産形成を行う余裕はどのくらいあるか | ⑫ | 行政コスト対税収等比率(関係指標)経常収支比率、実質公債費比率(再掲) |
自律性 | 歳入はどれくらい税金等でまかなわれているか(受益者負担の水準はどうなっているか) | ⑬ 受益者負担の割合(関係指標)財政力指数 |
ウ 分析の手法
a 経年比較
経年比較は、当期の財務書類の数値を過年度の数値と比較する手法である。数値の推移から傾向を読み取るためには、単に前年度との比較を行うのみならず、少なくとも 5 年程度の期間を対象として分析を行う必要といえる。
また、地方公共団体を取り巻く環境の変化、すなわち、市町村合併や地方財政制度の変化などの影響を受けることにも留意が必要である。
b 類似団体比較
類似団体比較は、同一時点において当該団体の数値や指標を類似団体と比較する手法である。類似団体の選定に当たっては、都道府県、政令指定都市、中核市、特例市、一般市町村という類型によることができるが、都道府県、一般市町村にあっては、さらに人口規模、財政力などを考慮することが必要である。また、類似団体平均値との比較を行うことも可能である。なお、住民に対しては、近隣団体との比較も身近な情報として有用な場合もある。
c 基準値(目標値)比較
基準値(目標値)比較は、指標の数値を基準値(目標値)と比較するものである。このようなものには、財政健全化法の健全化判断比率である実質公債費比率について 25%が早期健全化基準として明確に定められているものや、何々比率について何%未満が望ましいなど、目標値(目安)として参考にされるものがある。
d セグメント比較
企業会計において、セグメント情報とは、連結財務諸表の作成に際して、連結集団の多角化した事業内容に関する詳細な財務情報を提供するため、事業の種類別、親会社及び子会社の所在地別等の区分単位(セグメント)に分けたものとされる。
エ 減価償却に関わる分析方法
減価償却を行うことによって可能となる分析として、ここでは、資産老朽化比率と住民 1 人当たり人件費・物件費等について見ていくことにする。
a 「資産老朽化比率」(B/S)
有形固定資産のうち、償却資産の取得価格に対する減価償却累計額の割合を計算することにより、耐用年数に対して資産の取得からどの程度経過しているのかを全体として把握することができる。さらに、「有形固定資産明細表」(改訂モデル附属明細表 2-1)、「主な施設の状況」(改訂モデル 附属明細表 2-2)を使用すれば、行政目的別あるいは施設別の資産老朽 化比率も算定することができる。
資産老朽化比率=減価償却累計額/(有形固定資産-土地+減価償却累計額)
xx市の普通会計について、経年比較と類似団体比較を挙げておく。
*減価償却累計額、有形固定資産有形固定資産-土地+減価償却累計額の単位は千円。
xxx | xx 00 年度 | 平成 22 年度 | 平成 23 年度 | 平成 24 年度 |
減価償却累計 額 | 380,822,390 | 385,321,860 | 406,174,649 | 427,267,654 |
有形固定資産 - 土地+ 減価償却累計額 | 897,687,476 | 900,665,646 | 921,401,629 | 939,942,511 |
資産老朽化比 率 | 42.4% | 42.8% | 44.1% | 45.5% |
(xx市は基準モデルのため財務書類上に数値なし)
xxx | xx 00 年度 | 平成 22 年度 | 平成 23 年度 | 平成 24 年度 |
減価償却累計 額 | ― | ― | ― | ― |
有形固定資産 - 土地+ 減価償却累計額 | ― | ― | ― | ― |
資産老朽化比 率 | ― | ― | ― | ― |
xxx | xx 00 年度 | 平成 22 年度 | 平成 23 年度 | 平成 24 年度 |
減価償却累計 額 | 301,359,448 | 317,910,660 | 334,684,315 | ― |
有形固定資産 - 土地+ 減価償却累計額 | 704,419,125 | 724,414,215 | 734,942,765 | ― |
資産老朽化比 率 | 42.8% | 43.9% | 45.5% | ― |
xxx | xx 00 年度 | 平成 22 年度 | 平成 23 年度 | 平成 24 年度 |
減価償却累計 額 | 135,811,442 | 142,824,481 | 149,859,592 | ― |
有形固定資産 - 土地+ 減価償却累計額 | 299,492,474 | 305,701,334 | 311,083,545 | ― |
資産老朽化比 率 | 45.3% | 46.7% | 48.2% | ― |
xxx | xx 00 年度 | 平成 22 年度 | 平成 23 年度 | 平成 24 年度 |
減価償却累計 額 | 258,215,621 | 271,872,594 | 285,533,536 | ― |
有形固定資産 - 土地+ 減価償却累計額 | 540,549,357 | 549,701,930 | 559,111,589 | ― |
資産老朽化比 率 | 47.8% | 49.5% | 51.1% | ― |
(富山市は基準モデルのため財務書類上に数値なし)
xxx | xx 00 年度 | 平成 22 年度 | 平成 23 年度 | 平成 24 年度 |
減価償却累計 額 | ― | ― | ― | ― |
有形固定資産 - 土地+ 減価償却累計額 | ― | ― | ― | ― |
資産老朽化比 率 | ― | ― | ― | ― |
xxx | xx 00 年度 | 平成 22 年度 | 平成 23 年度 | 平成 24 年度 |
減価償却累計 額 | ― | ― | ― | 449,704,804 |
有形固定資産 - 土地+ 減価償却累計額 | ― | ― | ― | 952,109,178 |
資産老朽化比 率 | ― | ― | ― | 47.2% |
xx市の有形固定資産明細表から作成した行政目的別の資産老朽化比率を挙げておく。
*取得価額、減価償却累計額の単位は千円。
(平成 22 年度) | 取得価額 | 減価償却累計額 | 資産老朽化比率 |
生活インフラ | 443,524,860 | 164,945,010 | 37.2% |
教育 | 239,052,271 | 85,288,494 | 35.7% |
福祉 | 26,949,659 | 16,336,706 | 60.6% |
環境衛生 | 47,504,935 | 29,652,070 | 62.4% |
産業振興 | 95,945,858 | 64,487,416 | 67.2% |
消防(警察) | 11,315,473 | 8,187,850 | 72.4% |
総務 | 36,372,590 | 16,424,314 | 45.2% |
(平成 23 年度) | 取得価額 | 減価償却累計額 | 資産老朽化比率 |
生活インフラ | 453,386,376 | 174,740,705 | 38.5% |
教育 | 246,205,376 | 90,069,543 | 36.6% |
福祉 | 27,527,286 | 17,153,518 | 62.3% |
環境衛生 | 48,317,015 | 31,096,638 | 64.4% |
産業振興 | 97,401,744 | 67,176,154 | 69.0% |
消防(警察) | 11,829,010 | 8,474,187 | 71.6% |
総務 | 36,734,822 | 17,463,904 | 47.5% |
(平成 24 年度) | 取得価額 | 減価償却累計額 | 資産老朽化比率 |
生活インフラ | 460,810,752 | 184,631,054 | 40.1% |
教育 | 253,573,601 | 94,993,654 | 37.5% |
福祉 | 27,836,766 | 17,971,364 | 64.6% |
環境衛生 | 49,263,841 | 32,547,459 | 66.1% |
産業振興 | 98,438,791 | 69,820,596 | 70.9% |
消防(警察) | 12,441,703 | 8,793,109 | 70.7% |
総務 | 37,577,057 | 18,510,418 | 49.3% |
b 「住民一人当たり人件費・物件費等」(P/L)
発生主義で計上した人件費・物件費等の額を次式により住民一人当たり人件費・物件費等とすることにより、地方公共団体の経常的な行政活動に係る効率性を測定することができる。また、この指標を類似団体と比較することで、当該団体の効率性の評価が可能になる。
住民一人当たり人件費・物件費等=人件費・物件費等/住民基本台帳人口
長野市の普通会計について、経年比較と類似団体比較を挙げておく。
*人件費・物件費等及び住民一人当たり人件費・物件費等の単位は千円、住民基本台帳人口の単位は人。
xxx | xx 00 年度 | 平成 22 年度 | 平成 23 年度 | 平成 24 年度 |
人件費・物件 費等 | 65,187,911 | 62,966,237 | 63,916,953 | 63,962,871 |
住民基本台帳 人口 | 381,905 | 388,687 | 387,892 | 386,979 |
住民一人当た り人件費・物件費等 | 171 | 162 | 165 | 165 |
xx市 | 平成 21 年度 | 平成 22 年度 | 平成 23 年度 | 平成 24 年度 |
人件費・物件 費等 | 33,776,337 | 35,148,485 | 35,814,217 | ― |
住民基本台帳 人口 | 241,478 | 243,037 | 243,439 | ― |
住民一人当たり人件費・物 件費等 | 140 | 145 | 147 | ― |
xx市 | 平成 21 年度 | 平成 22 年度 | 平成 23 年度 | 平成 24 年度 |
人件費・物件 費等 | 59,003,191 | 59,011,984 | 56,831,272 | ― |
住民基本台帳 人口 | 374,749 | 375,288 | 375,761 | ― |
住民一人当たり人件費・物 件費等 | 157 | 157 | 151 | ― |
xxx | xx 00 年度 | 平成 22 年度 | 平成 23 年度 | 平成 24 年度 |
人件費・物件 費等 | 24,208,957 | 24,212,197 | 24,416,448 | ― |
住民基本台帳 人口 | 159,657 | 159,536 | 159,116 | ― |
住民一人当たり人件費・物 件費等 | 152 | 152 | 153 | ― |
xxx | xx 00 年度 | 平成 22 年度 | 平成 23 年度 | 平成 24 年度 |
人件費・物件 費等 | 47,827,783 | 46,291,404 | 48,379,546 | ― |
住民基本台帳 人口 | 207,497 | 206,499 | 205,145 | ― |
住民一人当たり人件費・物 件費等 | 230 | 224 | 236 | ― |
xxx | xx 00 年度 | 平成 22 年度 | 平成 23 年度 | 平成 24 年度 |
人件費・物件 費等(注) | 89,493,000 | 93,120,000 | 89,011,000 | ― |
住民基本台帳 人口 | 417,790 | 417,734 | 417,108 | ― |
住民一人当たり人件費・物 件費等 | 214 | 223 | 213 | ― |
(注)普通会計+特別会計+公営企業会計
xxx | xx 00 年度 | 平成 22 年度 | 平成 23 年度 | 平成 24 年度 |
人件費・物件 費等 | ― | ― | ― | 66,367,961 |
住民基本台帳 人口 | ― | ― | ― | 451,729 |
住民一人当たり人件費・物 件費等 | ― | ― | ― | 147 |
オ 近隣各市で公開している指標の種類
長野市では、歳入額対資産比率、純資産比率、社会資本等形成の世代間負担比率、基礎的財政収支の 4 つの指標を公開しているが、近隣各市で公開している指標の種類について調査した。
*指標番号は、上記、イ分析の視点と指標の番号である。
指標番号 | xxx xxxxx 000 千人 | xxx xxxxx 000 千人 | xx市 改訂モデル 375 千人 | xxx xxxxx 000 千人 | xxx xxxxx 000 千人 | xxx xxxxx 000 千人 | xx市 改訂モデル 464 千人 |
① | ○ | ○ | ○ | ○ | |||
② | ○ | ○ | ○ | ||||
③ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||
④ | ○ | ○ | ○ | ||||
⑤ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
⑥ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
⑦ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||
○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
⑨ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||
⑩ | ○ | ○ | |||||
⑪ | ○ | ○ | ○ | ||||
⑫ | ○ | ○ | ○ | ||||
⑬ | ○ | ○ | ○ | ||||
他に ・地方債の償還可能年数 | 他に ・地方債の償還可能年数 ・市民一人当たり資産額対負債額 ・将来負債比率と純資産比率 ・連結赤字比率と将来負 担比率 | 他に ・地方債の償還可能年数 |
○が付いている箇所が、各市において財務書類 4 表と共に掲載されている指標である。
カ 財務書類の内部管理への活用
行政コスト計算書は、一会計期間における人件費、物件費等のほか、減価償却費や退職給付費用(退職手当引当金繰入)も含めたフルコストを計上するものである。したがって、行政コスト計算書を事業別・施設別に細分化して作成し(事業別・施設別行政コスト計算書)、行政評価と連携させることにより、正確なコストに基づいた行政サービスの評価が可能となる。
また、事業別・施設別行政コスト計算書を作成することによって、受益者負担の適正化や施設管理の効率化に資する情報を提供することが可能となる。
すなわち、事業別・施設別行政コスト計算書を作成することにより、セグメント分析を行うことが可能となり、財務書類の内部管理情報としての質を高めるのである。
施設別行政コスト計算書の例を 2 つ挙げておく。
例 1 図書館運営に係る行政評価
行政コスト計算書 (単位:千円)
項 目 | 平成 23 年度 | 平成 24 年度 | 増減 |
人にかかるコスト人件費 退職手当引当金繰入額 | ××× | ××× | ××× |
××× ××× | ××× ××× | ××× ××× | |
物にかかるコスト物件費 維持修繕費 減価償却費 | ××× | ××× | ××× |
××× ××× ××× | ××× ××× ××× | ××× ××× ××× | |
その他のコスト公債x利子 その他 | ××× | ××× | ××× |
××× ××× | ××× ××× | ××× ××× | |
合 計 | ××× | ××× | ××× |
内訳 貸出サービス施設サービス 講座サービス | ××× | ××× | ××× |
××× | ××× | ××× | |
××× | ××× | ××× |
利用状況等
項 目 | 平成 23 年度 | 平成 24 年度 | 増減 |
図書館貸出サービス業務 | |||
貸出利用者数(人) 貸出冊数(冊) | ××× | ××× | ××× |
××× | ××× | ××× | |
施設サービス業務 | |||
施設利用回数(回) | ××× | ××× | ××× |
講座サービス業務 | |||
講座受講者数(人) | ××× | ××× | ××× |
評価指標 (単位:円)
項 目 | 平成 23 年度 | 平成 24 年度 | 増減 |
貸出利用者 1 人当コスト | ××× | ××× | ××× |
貸出 1 冊当コスト | ××× | ××× | ××× |
施設サービス利用 1 回当コ スト | ××× | ××× | ××× |
講座サービス受講者 1 人当 コスト | ××× | ××× | ××× |
例 2 施設使用料の改定
行政コスト計算書 (単位:千円)
文化会館 | ||
平成 24 年度 (改訂前) | 平成 24 年度 (改訂後) | |
[経常費用] | ||
1.経常業務費用 | ××× | ××× |
①人件費 | ××× | ××× |
②物件費 | ××× | ××× |
消耗品費 | ××× | ××× |
維持修繕費 | ××× | ××× |
減価償却費 | ××× | ××× |
その他の物件費 | ××× | ××× |
③経費 | ××× | ××× |
業務費 | ××× | ××× |
委託費 | ××× | ××× |
貸倒引当金繰入 | ××× | ××× |
その他の経費 | ××× | ××× |
④業務関連費用 | ××× | ××× |
公債費(利払分) | ××× | ××× |
2.移転支出 | ××× | ××× |
経常費用合計 | ××× | ××× |
[経常収益] | ||
経常業務収益 | ××× | ××× |
①業務収益 | ××× | ××× |
自己収入 | ××× | ××× |
その他の業務収益 | ××× | ××× |
②業務関連収益 | ××× | ××× |
経常収益合計 | ××× | ××× |
純経常費用(純行政コスト) | ××× | ××× |
アウトプット指標
利用者数(延べ) | ××× | ××× |
一人当たりコスト(円) | ××× | ××× |
税外負担金(受益者負担の割合) | ××% | ××% |
(3)減価償却に関わる固定資産台帳の整備
①固定資産台帳の必要性
現在、地方公共団体で作成している公有財産台帳は、資産計上が「庁舎」、「消防」のように大枠の単位で行われている。つまり、「庁舎」の中身について、建物、建物附属設備、構築物等の種類別に分かれてはいないのである。「庁舎」には、建物本体、給排水設備、冷暖房設備、駐車場、事務机、パソコン等様々なものがある。各資産は個別に修繕や取替を行うことになる。したがって、資産管理の観点からは、資産計上は修繕や取替を行う単位で管理することが必要である。また、公有資産台帳からは、資産の種類ごとの減価償却を行うことはできない。各資産は耐用年数が異なるので、別個に把握する必要がある。
そこで、固定資産台帳が必要となってくる。すなわち、固定資産台帳とは、財務書類に計上される公有財産の種類・資産名・用途・構造等を記載した台帳
で、財務書類作成の基礎となる補助簿の役割をはたすとともに、公有財産の管理及び有効活用に役立てる台帳のことである。
②固定資産台帳整備の効果
固定資産台帳を作成することにより、従来、部署ごとに公有資産台帳や道路台帳により管理されていたものが、評価額等も含めたストック情報としてxx的に管理されることになるため、資産の有効活用策の検討など、全庁的な観点からの適正な資産管理が可能となる。
また、固定資産台帳によりxx的に整備された資産情報(資産価格、耐用年数、減価償却費、維持費、管理費等)をもとに、行政コストの分析や資産管理の将来推計などの活用を行うことができる。
③基準モデルにおける減価償却の取り扱い
地方公会計の整備促進に関するワーキンググループ 平成 20 年 12 月「新地方公会計モデルにおける資産評価実務手引」から、減価償却に関わるところを説明する。
ア 原則
建物・工作物(以下、建物等という。)の評価は、取得価額から減価償却累計額を控除することにより行う。工作物とは、道路、橋梁、公園、港湾、河川、水路等である。
イ 取得価額
取得価額とは、当該建物等を取得して事業の用に供するために投下された資金の総額である。取得価額には建物附属設備も含まれる。建物等を購入した場合の取得価額には、消費税、購入手数料、測量・登記費用等、当該建物等を取得のために要した付随費用も含まれる。
寄付等により無償で取得した場合の取得価額は、xx価値により評価を行う。xx価値は、鑑定評価、類似の建物等の取得価額、保険金額等を活用して算定する。
大きく時価と乖離した低廉な価額で取得した場合の取得価額も、無償で取得した場合と同様、xx価値により評価を行う。
ウ 資本的支出と修繕費等の区分
資本的支出と修繕費の区分については、法人税基本通達の定めに従って区分を行う。
a 資本的支出
資本的支出とは、固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち、当該固定資産の価値を高め、又はその耐久性を増すこととなると認められる部分に対応する金額である。例としては、
ⅰ建物の避難階段の取付け等物理的に付加した部分に係る費用の額
ⅱ用途変更のための模様替え等改造又は改装に直接要した費用の額
ⅲ機械の部分品を特に品質又は性能の高いものに取り替えた場合のそ の取替えに要した費用の額のうち、通常の取替えの場合にその取替えに要すると認められる費用の額を超える部分の金額
(注)建物の増築、構築物の拡張、延長等は建物等の取得に当たる。
b 修繕費
修繕費とは、通常の維持管理のため、又はき損した固定資産につきその現状を回復するために要したと認められる部分の金額である。
c 区分が不明な場合
区分が不明な場合は、金額が 60 万円未満の場合、又は固定資産の前期末における取得価額のおおむね 10%相当額以下である場合には修繕費として取り扱うことができる。
エ 耐用年数
耐用年数及び償却率は原則として「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」に従う。省令の別表第一から第四に挙げられている減価償却資産の耐用年数表については、(1)企業会計の減価償却でその抜粋を掲載したので、そちらを参考にしていただきたい。
建物附属設備については建物等の取得価額に含めて計上するが、建物本体とは耐用年数が異なるので、原則として建物本体とは区分して管理する必要がある。この場合、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第一」に従って構造・用途、細目、耐用年数を分類し、管理する。
オ 減価償却の方法
減価償却は、定額法(平成 19 年度税制改正における平成 19 年 4 月 1 日以降
取得資産の償却限度額計算方法)により算定する。平成 19 年 4 月 1 日以前に取得した資産についても同様である。
減価償却の開始は取得年度の翌年度からとし、端数処理は 1 円未満切捨て、
耐用年数経過後は備忘価額として 1 円(残存価額なし)を計上する。
建物等の簿価は、この方法により各年度行った減価償却の累計額を控除して求める。
カ 中古建物等を取得した場合の耐用年数
「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」に従って処理を行う。この点については、(1)企業会計の減価償却で詳しく説明したので省略する。
キ 開始時の評価方法
開始時とは、新地方公会計モデルを最初に適用する年度のことである。この時点ですでに存在する建物等については、取得価額ではなく再調達価額を採用する。再調達価額とは、当該建物等と同等の物を開始時において新たに建築あるいは購入するために必要な金額をいう。
再調達価額の範囲は、取得価額と同様で、建物等自体(附属設備も含む)の対価のほか、消費税、購入手数料、測量・登記費用等、当該建物購入のために要した付随費用も含む。
再調達価額の求め方は、当時の取得価額が判明する場合には取得価額に取得価額にデフレータを乗じて求め、取得価額が不明の場合には不動産鑑定評価や保険金額を用いて算定する。
なお、工作物については、類似の工作物との比較が困難であると思われるので、困難な場合は直近(5~7 年)工事実績総額、または必要に応じて構造等別の工事費実績から、単位あたりの平均工事費を求め、現在単価とすることができる。
ク 開始時の減価償却
開始時の建物等の簿価は、原則として、各建物等の取得時から開始時までの 期間について減価償却を行い、この累計額を再調達価額から控除して算定する。開始時の減価償却を行うにあたっては、当該建物等がいつ建設されたのか、
また、外部から購入したものであればいつ取得したのかが分からなければならない。建設時期、取得時期が不明な場合にはそれぞれの計算方法に従って行うこととなる。
ケ 物品等の評価
機械器具、物品、船舶、航空機、車輛(物品等という)の評価についても、取得価額から減価償却累計額を控除することにより行う。
開始時において、残存価額が 50 万円未満のものや小規模資産等重要性が低いものは資産として計上しない。
④総務省方式改訂モデルにおける減価償却の取り扱い
取得価額は決算統計の普通建設事業費の積上げによって算定する。減価償却の方法は残存価額をゼロとして定額法で行う。
耐用年数は決算統計上の区分に基づいた耐用年数を用いる。
[耐用年数表]
決算統計上の区分 | 耐用年数 | 決算統計上の区分 | 耐用年数 |
総務費 | 土木費 | ||
庁舎等 | 50 | 道路 | 48 |
その他 | 25 | 橋りょう | 60 |
xx費 | 河川 | 49 | |
保育所 | 30 | 砂防 | 50 |
その他 | 25 | 海岸保全 | 30 |
衛生費 | 25 | 港湾 | 49 |
労働費 | 25 | 都市計画 | |
農林水産業費 | 街路 | 48 | |
造林 | 25 | 都市下水路 | 20 |
林道 | 48 | 区画整理 | 40 |
治山 | 30 | 公園 | 40 |
砂防 | 50 | その他 | 25 |
漁港 | 50 | 住宅 | 40 |
農業農村整備 | 20 | 空港 | 25 |
海岸保全 | 30 | その他 | 25 |
その他 | 25 | 消防費 | |
商工費 | 25 | 庁舎 | 50 |
その他 | 10 | ||
教育費 | 50 | ||
その他 | 25 |