Contract
山岳遭難捜索救助費用カバレージ制度規約
第1条(目的、名称)
1 この規約は日本山岳救助機構会員制度規則第11条第6項の条項に基づき、本機構会員(以下「会員」という)の山岳遭難の捜索・救助費用の補填を適正に行うために「山岳遭難捜索救助費用カバレージ制度(以下「カバレージ制度」という)規約」として定める。
2 カバレージ制度は、登山者等の山岳スポーツ愛好家の相互扶助の精神に基づき、会員が日本国内の山岳地域において山岳スポーツ活動中に山岳遭難事故に遭遇し、その捜索及び救助活動の実施に要した費用(限度額は別途定める)負担を、事後的に本機構全会員でxx分担することにより軽減させることをその目的とする。
第2条(山岳スポ-ツ活動と山岳遭難事故の定義)
1 カバレージ制度の対象となる山岳スポーツ活動とは登山・ハイキング・キャンピング・縦走・岩登り・アルパインクライミング・沢登り・雪山・アイスクライミング・トレイルランニング・フリークライミング・スポーツクライミング・ボルダリング・山スキー・スノーボード・キャニオニング・ケイビング・マウンテンバイク・山菜採り・茸狩り・渓流つり等とする。
2 山岳遭難事故(以下遭難という)とは,万全の備えをした登山者が日本国内の山岳地域内で上記山岳スポーツ活動中に予測不可能な事態に遭遇し、自力での行動が不可能な状態となり、登山者の生死確認が不能な状態や緊急な捜索救助活動を要する状態になったことが確知されることをいう。自力での行動ができるにもかかわらず、行動しなかった場合や天候の悪化による停滞や行程の遅れなどは遭難には含まれない。
第3条(カバレージ制度の対象者と対象期間)
1 カバレージ制度の対象者は会員のみであり、カバレージの対象期間は会員証記載の会員期間(入会日または継続更新日より1年間)とする。
2 1名の会員は1山岳遭難事故に対し一つの会員資格としてのみ、カバレージ対象とすることができる。1名で複数の会員資格の申込を行った場合でも、補填金の上限は550万円とする。
第4条(カバレージ制度の対象とならない遭難)
1 犯罪、故意、重大な過失、自招、偽装、自殺、闘争行為、飲酒による酩酊に起因する遭難。
2 パラグライダー、ラフティング、カヌー及びこれらに類似する山岳地域内の空中または河川湖沼などのxx・水中等で行われるアウトドアスポーツ活動中の事故によるもの。
第5条(カバレージ制度補填金の対象となる費用)
1 会員が第2条で定義される遭難に際し、その捜索救助活動の実施により会員が負担した捜索救助費用の実費及び臨時費用の実費をその対象とする。
2 前項記載の対象費用の限度額は会員1名1会員期間あたり550万円をその上限とする。
3 対象となる費用は下記の通りとする。
(1)遭難した会員を山岳地域内で捜索及び救助するために直接発生した費用で、かつ支払事由及び金額、支払先等を証憑で確認できるもの。
(2)遭難した会員を山岳地域内の事故発生地点または行動不能に陥っている地点から、登xxや最寄の病院、警察等山岳地域外へ救助・移送するための費用とする。結果として遺体の回収となった場合も同様とする。
(3)交通費・日当・宿泊費・食費・消耗品費など各費目について別表1に定める費用。 (4)関係者現場駆けつけ費用等
捜索・救助活動に従事しない親族や関係者が捜索救助現場まで赴く交通費・宿泊費用および救助後に関係官公署等との捜索救助活動に関する手続き等を行うために赴く費用・宿泊費。ただし、1事故当たりの限度額を合計30万円とする。
(5)謝礼費用
捜索救助活動に従事した人員や諸機関等に対して行った謝礼。ただし、1人または1機関につき限度額を1万円、かつ、10人または 10機関、または人・機関の合算数10までを限度とする。謝礼に赴く際に発生した交通費及び、救助費用等を請求している機関などに対する謝礼は対象外とする。
(6)遺体搬送費用
捜索救助活動が終了した後に死亡が確認された場合、遺体を収容先から自宅等へ搬送する費用実費。ただし、限度額を30万円とする。
4 対象とならない費用は下記の通りとする。
(1)xx後または収容後など捜索や救助活動終了後に発生した費用
(2)捜索・救助活動従事者が、捜索・救助活動に従事することにより発生した、各種予約等のキャンセル料や休業損害などの直接の捜索救助活動ではない費用
(3)支払事由や支払先、証憑など本機構が求める資料の確認が出来ない費用 (4)資料などにつき、保有者の開示の同意が出来ない費用
第6条(カバレージ制度の対象認定と支払)
1 本機構は、遭難した会員より提出されたカバレージ制度の各補填金につき全会員にかわり精査し、その対象として費用の認定を行う。
2 認定された金額は、既往症など山岳スポーツ活動開始以前に起因する遭難事故の場合を除き、その全額を本機構より遭難した会員に対して立替払いされる。
第7条(既往症等による遭難時の認定額からの削減)
既往症等、当該山岳スポーツ活動開始以前に起因する遭難事故に対しての捜索・救助活動については、制度のxx性を保つため、認定された金額に対して所定の割合でカバレージの削減を行う(別表2)。
第8条(事故の通知及びカバレージ制度による補填金の請求)
1 捜索や救助活動が行われた場合に、遭難発生日から1ヶ月以内に本機構が指定する書面により遭難の発生を本機構に報告しなければならない。
2 カバレージ制度により損害補填を受けようとする会員は、本機構が指定する書類及びその証憑類を添付して、カバレージ制度による損害補填金支払の申請をしなければならない。
3 証憑とは、領収書原本・レシート原本・価格xxコピー・銀行振込票xxxをいい、宛先・受領者・日付・内容(物品名)・金額が明示されていなければならない。領収書等がない場合は、事由書及び計算書を提出する。
4 会員本人以外のものが請求を行う場合は、念書・委任状など、本機構の求める書類を添付しなければならない。
5 当該山岳スポーツ活動中の発病及び持病に起因する遭難の場合、医師の診断書を提出する。なお、診断書作成等の文書料は、カバレージ制度の対象としない。
6 他の共済・保険等類似する制度により、同一遭難に対する共済金・給付金・保険金等の支払いを受ける場合には、当該会員は必ず本機構に対し申告しなければならない。その際、本機構は同一の費目で他の共済・保険等から支払われる共済金・給付金・保険金等がある場合については、その金額・割合に応じ按分してカバレージ制度対象額の削減を行う。
ただし、他の共済・保険等が支払い対象としていない費目は按分対象としない。
7 カバレージ制度の受給後当該会員の不正が発覚した場合には、受領した補填金全額の返還をしなくてはならない。
8 請求は遭難発生から1年以内、かつカバレージ対象費用の最終の支払が完了した1ヶ月以内に所定の書式をもって行う。ただし、会員の収容が遭難発生から1年以内になされていない場合については、収容捜索活動が継続されており、かつ活動状況が報告されている場合に限り、前記最終支払い完了後1ヶ月以内に請求を行うことができる。
9 期限内に請求のない場合は、機構が特別に認める事由以外は請求を無効とする。
第9条(カバレージ制度対象案件と証憑等の開示)
カバレージ制度の対象となった案件は提出された証憑も含み、当該会員の住所・氏名を除く、発生事由、請求元または支払先、金額、明細などを本機構の他の会員へ開示する場合がある。
第10条(紛争処理・不服の取り扱い)
1 カバレージ制度の支払い等に関して、機構の決定に不服のある場合、会員は書面により機構に対し異議の申し立てを行うことができる。
2 本機構は異議の申し立てを受けた場合、当該案件について再度検討し、その結果をすみやかに会員に対して通知する。
3 前記記載の再検討の結果に対しても不服のある場合、会員は機構に対して審査会の開催を要請することができる。
第11条(適正な請求の義務)
1 カバレージ制度の請求者は請求内容・金額・証憑収集・提出等において適正かつ誠実に行わなければならない。
2 カバレージ制度の請求者が万一、故意または重過失により請求を行った場合には請求自体を無効とし、本機構から補填金を支払済みの場合は補填金及び支払時から本機構への返金時までの年利10%の遅延損害金の支払義務を負う。また、それ以降の会員資格を喪失するものとする。
第12条(共同遭難・二重遭難の取扱い)
1 雪崩など複数名が同時に遭難し、それら複数の遭難者に対して捜索・救助活動が合同的に行われた場合、その費用は複数の遭難者に按分されるものとし、ガバレージ額の金額は按分比により算出する。
2 会員の遭難において、捜索・救助活動従事者がその活動中に遭難し、その捜索・救助に関わる費用が会員の負担となった場合、例外的に捜索救助費用実費補填金の対象とする。
別表1 捜索救助費用実費補填金費目主要費目【第5条3(3)に準拠】
1.日当
捜索・救助活動従事者への日当とし、派遣元機関等においてxxの報酬規定がある場合はその規定額とする。規定のない場合は、捜索・救助活動従事者及びその捜索救助活動内容が確認され、かつ開示への同意が得られた場合、次の金額を日当金額とする。
■岩場(積雪期)15,000円 ■岩場(無雪期)13,000円
■一般ルート(積雪期)12,000円 ■一般ルート(無雪期)10,000円
2.交通費
遭難発生後、捜索・救助に向かうための交通費(公共交通機関、レンタカー代、ガソリン代、有料道路代、駐車場代、ヘリコプターチャーター代等)及び輸送費
備考:(1)捜索・救助活動終了後の日当及び交通費
遠隔地で発生した遭難事故などで現地へ到着前に救助活動が終了した場合、現地へ向かう途中の救助者の日当は認められない。
また交通費に関しては、救助活動の終了が確認されているにも関わらず、新たに発生したものは原則として認められない。 (2)同行者(同一パーティーのもの)の日当及び交通費
遭難者と同一パーティーの同行者が救助活動に従事した場合、その日当及び交通費は原則としてカバレージ対象とならない。 (3)親族・友人・同僚・同一山岳会員等の日当
原則として日当等カバレージ制度の対象とはならない。 (4)自宅待機中等の日当及び交通費
自宅等における出動待機中の日当及び交通費はカバレージ対象とならない。
3.消耗品費
捜索・救助活動において消耗品が発生した場合、発生経緯が明らかでかつ以下の内容を満たすものをカバレージ対象とする。 (1)損傷した物品に関しては実物か写真が提示できるもの
(2)回収不能になってしまった場合は、上記活動中に使用していたことが写真で提示できるもの (3)当該消耗品の所有者及び購入金額・購入時期・購入場所が明らかなもの
(4)原則として本人及び同一パーティー内のものに対しては時価額を基準に、他パーティーなど第三者のものに関しては再購入価格
(新品・店頭価格)をカバレージ額とする。
4.宿泊費
捜索・救助活動従事者の山小屋・旅館等の宿泊費
5.食費
捜索・救助活動従事者の食事代・弁当代・非常食代
備考:宿泊費・食費等のうち、著しく高額な経費・アルコール飲料等が含まれていると判断される場合、それらについて認定額の減額が行われる場合がある。
別表2 既往症等による遭難時の認定額からの削減【本規約第8条に準拠】
当該山岳スポーツ活動以前からの既往症等の状況 | 削減割合 |
既往症に起因しない遭難事故 山岳スポーツ活動中に発病した疾病による遭難事故 | 0% |
既往症等によるもの、山岳スポーツ活動前に発病した病気によるもの:すでに発病、既往症・持病によるものなど健康上の問題があるにも拘らず出発し、その身体健康状態に起因する遭難事故の場合 | 30%以上 |
重い既往症によるもの:症状が出た場合至急に医療機関へ行かないと、生命身体に大きな危険があるにも拘らず出発し、その身体健康状態に起因する遭難事故の場合 例:持病の心臓発作を起こした場合など | 80%以上 |
上記に加え、入院や手術等を勧奨されている場合、日常生活において疾病者として生活し、かつ運動等は行わないよう医師や家族等から指示されているにも拘らず山岳スポーツ活動を行い、その健康上の理由により遭難した場合 | 100% |