1.対象事業名 中華人民共和国 山西省西龍池揚水発電所建設事業(貸付契約調印日:2002 年 3 月 29 日、承諾金額:23,241 百万円、借入人:中華人民共和国政府) 2.本行が支援することの必要性・妥当性 中国は、GDP 規模が世界第 7 位(99 年)に達する等、総じて経済発展は著しいものの、かかる経済発展に伴い、次の通り、開発課題が変化している。・沿海部と内陸部の格差是正・貧困問題への対応・WTO 加盟に向けた体制整備・地球規模問題への対応中国政府は、2001 年 3 月に第 10 次...
事業事前評価表
1.対象事業名 |
中華人民共和国 xxx西xxxx発電所建設事業 (貸付契約調印日:2002 年 3 月 29 日、承諾金額:23,241 百万円、借入人:中華人民共和国政府) |
2.本行が支援することの必要性・妥当性 |
中国は、GDP 規模が世界第 7 位(99 年)に達する等、総じて経済発展は著しいものの、かかる経済発展に伴い、次の通り、開発課題が変化している。 ・沿海部と内陸部の格差是正 ・貧困問題への対応 ・WTO 加盟に向けた体制整備 ・地球規模問題への対応 中国政府は、2001 年 3 月に第 10 次 5 ヶ年計画を策定・公表し、2001 年~2005年の中国の国民経済と社会発展のあり方について、成長、構造調整、改革・開放、科学技術の発展、国民の生活水準の向上、経済と社会の協調的発展の促進といった点から課題及び重点を明らかにしている。我が国政府も、昨今の対中 ODA見直しの議論を踏まえ、「対中国経済協力計画」を 2001 年 10 月に公表し、「汚染や破壊が深刻になっている環境や生態系の保全、内陸部のxx向上や社会開発、人材育成、制度作り、技術移転などを中心とする分野をより重視する」との方針を打ち出している。 本事業はxxx忻州市五台県にて揚水発電所を建設し、省内石炭火力発電所の運転条件の改善、石炭燃料消費の抑制を目的とするものであり、中国の環境保全に資するところが大きく、日本政府の政策とも合致することから、本事業 実施は必要なものと認められる。 |
3.事業の目的等 |
(1)中国における電力セクターの現状・課題 中国政府は高い経済成長を支える原動力として電源開発を重視し、1991 ~ 2000 年の 10 年間に発電設備出力を約 2.3 倍、発電量を約 2.1 倍に増加させた。但し発電量の約7割は環境面への影響が大きい石炭火力に依存しており、また全国送電網の未整備等により電力需給の地域的アンバランスが発生している。更に地域レベルにおいては電力需要の日較差等最大負荷と最小負荷のギャップ が拡大しており、その対応が急務となっている。 |
(2)xxxの電気事業の現状 比較的貧困な省であるxxxの電力網においても設備出力のほとんど(約 9割)を石炭火力に依存しており、最大負荷と最小負荷間の出力調整を石炭火力の DSS(Daily Start and Stop =発電・停止の繰り返し)運転や出力調整を中心とした運転で対応している。これらの運転方法は発電開始時及び停止時の排出ガス増大による環境負荷の増大をはじめとして、発電効率の低下と発電設備寿命の短命化、コスト増大等の問題を生じている。特に大気環境への影響は著しく、国家環境保護総局の発表によれば、1999 年の省都太原市の大気汚染は全国ワースト1位、省北部の鉱工業都市大同市は同3位となっている。また、xxx電力網における最大負荷と最小負荷のギャップは下表の通り今後も拡大することが見込まれている。 【xxxにおける電力需要予測】 (出所)事業実施機関提供資料 (3)本事業の必要性 本事業は、xxxに揚水発電所(300MW×4基)及びその関連施設を建設することにより、ピーク需要対応力の向上、電力網運用上の安定性向上に加えて、 SO2、NOX 等の削減による大気汚染防止及び CO2 削減による地球温暖化ガスの排出量抑制を目的とする。さらに本事業は、同省の電力のピーク需要に対応し て経済発展を促進するとともに、省民の所得向上を促すことも期待される。 |
4.事業の内容 |
(1) 対象地域名 xxx忻州市五台県 (2) 事業概要 落差約 700m の揚水発電所を建設するもの。主要スコープは以下の通り。 ・上部調整池:有効貯水容量約 420 万 m3 ・下部調整池:有効貯水容量約 420 万 m3 ・導・放水路 ・地下発電所:発電設備 300MW×4 基=1,200MW ・スイッチヤード:変圧器 340MVA×4 基、500kV 引出設備 ・コンサルティング・サービス:入札補助、詳細設計チェック、施工監理補助等 |
2000 | 2002 | 2004 | 2006 | 2008 | 2010 | |
電力消費量(GWh/年) | 50,210 | 53,700 | 57,400 | 62,010 | 67,590 | 73,500 |
ピーク需要(MW) | 7,614 | 8,320 | 9,100 | 9,950 | 10,870 | 11,910 |
日較差最大値(MW) | 2,485 | 2,800 | 3,300 | 3,880 | 4,240 | 4,640 |
(3) 総事業費 総事業費 77,991 百万円(うち円借款対象額 23,241 百万円) (4) スケジュール 2001 年 11 月~2009 年 8 月予定(中国側資金にて一部着工済み) (5) 実施体制 国家電力公司 (6) 環境及び社会面の配慮 (a)本事業は大規模な発電所(300MW×4 基)の新設プロジェクトであるため、本行環境ガイドライン環境区分「A」種に分類される。 (b)環境影響評価報告書は作成されている。 (c)環境に対する影響と対策 ① 調整池及び下流の水質悪化等:上・下部調整池の湛水及び補給水 は、下部調整池の南側を流れる川沿いの泉からポンプにより取水することとなっており、下流における濁水等水質悪化の懸念はない。また利用される水量は、周辺住民の生活用水等に影響を及ぼさない程度であることを確認済み。 ② 建設工事中の公害:岩石破砕、コンクリートプラントから発生する汚水対策として汚水処理施設を設置する。騒音対策として、車両積載量と運行速度の制限、発破作業夜間禁止等の対策が講じられる。 ③ 建設予定地における動植物への影響:上・下部調整池及びアクセス道路建設予定地には、絶滅危惧種等の貴重動植物は存在しない。建設後の土壌流出対策として緑化、植林等の計画が立案されている。 ④ 本事業の環境モニタリング:五台県政府傘下の環境モニタリングステーションへの委託により実施され、設計内容、工事方法等について十分な対策が採られることとなっている。 (d)社会環境に対する影響と対策 ① 用地取得:本事業により、約 240 ha の用地取得が必要になる見通し。この点、国土資源部の仮承認は 2000 年 6 月 13 日に取得済み(正式 承認は 2002 年 6 月に取得予定)。 ② 住民移転:本事業に伴う住民移転計画は 1999 年 3 月に北京勘測設 計研究院によって作成され、2001 年 4 月に国家発展計画委員会及 |
び国務院より承認済。移転住民数は約 630 人と見込まれており、移転 は 2002 年 8 月までに実施される予定。農地、家屋等に対する補償 は、xxx政府の規定に従い各世帯へ支払われる。1998 年 6 月以降、五台県人民政府、北京勘測設計研究院等の主催により、住民に対し事業概要の説明会やアンケート、補償に係る交渉を行い、2001 年 10 月までに、全ての世帯より基本的同意を得ている。 (7)その他特記事項特になし。 |
5.成果の目標 |
(1)評価指標(運用・効果指標) (2)内部収益率 FIRR:8.1% ①費用:固定資産投資、維持管理費用等 ②便益:売電収入 ③プロジェクトライフ:30 年 |
6.外部要因リスク |
(1)経済環境の悪化に伴う電力需要の停滞 (2)送変電施設等スコープ外の関連施設の進捗 |
7.過去の類似案件の評価結果と本事業への教訓 |
既往の発電所案件での経験から、発電所の効果発現のためには、関連する送電線及び変電所の建設が重要である。本事業の実施にあたっては、このような教訓を踏まえつつ、円借款スコープに密接に関連する送変電事業の進捗状況に 関しても充分把握できるよう実施機関から報告を受けることで合意している。 |
8.今後の評価計画 |
(1) 今後の評価に用いる指標 ①設備出力(MW) ②年間発電量(GWh) |
現状(2001 年) | 2011 年 | |
①設備出力 | - | 1,200 MW |
②年間発電量 | - | 1,796 GWh |
③年間石炭燃焼削減量 | - | 約 26 万トン/年 |
④NOx (窒素酸化物)排出削減量 | - | 約 3,000 トン/年 |
⑤SO2 (二酸化硫黄)排出削減量 | - | 約 6,100 トン/年 |
⑥煤塵排出削減量 | - | 約 2,700 トン/年 |
③年間石炭燃焼削減量(トン/年) ④NOx (窒素酸化物)排出削減量(トン/年) ⑤SO2 (二酸化硫黄)排出削減量(トン/年) ⑥煤塵排出削減量(トン/年) ⑦内部収益率(FIRR)(%) (2)今後の評価のタイミング 事業終了後 |