124条「代理人の名前によって行われた法律行為」(JP100)
ラオス民法典草案条文抜粋
第Ⅱ編 人及び法人第3章 代理
120条「代理」
代理とは,代理人が第三者との間で,本人の為に1法律行為を行い,本人に対して直接権利義務を生じさせるものである
本人とは,契約に基づき委任し又は法律
に従い権利の主体となる者である。
代理は,法定代理2と契約による代理からなる
121条「法定代理」
法定代理は,法令の定めによる又は法律に基づき権限を有する組織の任命による代理である
法定代理には父母,後見人,管理人又はその他の者などがある
122条「契約による代理」
契約による代理は,委任が定めるところにより為される代理である。
123条「法律行為の本人に対する効果」
代理人によって行われた法律行為は,代理人が法に従って適正な権利を有し且つ自身が代理人であることを第三者に対して通知したときは,本人に対して効果を有する
124条「代理人の名前によって行われた法律行為」(JP100)
代理人が自己の名前によって第三者と法律行為を行い,代理の意思を示さなかったときは,その法律行為は自己の為のものとなる。但し,第三者において,代理人が本
1 「為に」と訳した部分は「ナイナーム」。直訳は「…を代表して」であるが「…の名において」という意味もある。後者のニュアンスを含んだ
「…の為に」であると考えるのが妥当。すなわちラオ語のニュアンスとして,「…の名において」と「…を代表して(…の為に)」は厳密に区別されるものではない。その意味で,「…の名において」というニュアンスはあるものの,いわゆる
「顕名」の意味まで読み取るのは現実的ではない。
2 「ターンナータームゴッマーイ」。直訳すると
「法律による代理」
人の為に法律行為を行っていることを知り又は知ることができたときはこの限りでない
125条「代理人の権利及び義務」
代理人は契約又は法律の規定に従って権利及び義務を有する
代理人は,自分自身との間で又は自分と利害を有する第三者との間で法律行為をすることができず,また,その第三者の代理人となることができない。
126条「本人の権利及び義務」
代理人は契約又は法律の規定に従って権利及び義務を有する
127条「復代理」
法定代理人は他人を復代理人として選任し又は委任する権利を有するが,自ら復代理人の行為の結果に対して責任を負う。
客観的に避けることができない場合,契約による代理人は復代理人を選任し又は委任する権利を有するが,本人に対して,すみやかに復代理人の人となり,能力について通知しなければならない。
128条「復代理人の権利及び義務」
復代理人は本人及び第三者に対して代理人と同様の権利義務を有し,当該権利を委任の範囲内で行使しなければならない。
129条「代理人たる権限3を有さない者による法律行為の効果」
代理人たる権限を有しない者が行った法律行為は本人に対して権利及び義務を生じさせない。但し本人が同意し許容するときはこの限りでない。
本人が,代理人たる権限を有しない者の法律行為の成立を知り又は知るべきでありながら,反対せず又は異議を述べず又は支援したときは,当該法律行為は本人に受け入れられたものとみなす。損害が生じたときは,本人も責任を負う。
第三者において,代理人の権限を有しない者と法律行為を行ったことを知ったとき
3 直訳は「代理人になる権限」であるが,この言葉自体を「代理権」と置き換えることも可能。
は,その設定する期限に従い回答を求めるため,本人又は代理人に文章で通知することができる。前記期限が経過しても回答を得られないときは,当該法律行為は本人に許容されなかったものとみなす。この場合第三者は当該法律行為を一方的に解除することができ,且つ損害が生じたときは賠償を求める権利を有する。但し,その者が,法律行為の時に知り又は知りうべきときはこの限りでない
130条「代理人の範囲を超えた法律行為の効果」
代理人の権限の範囲を超えて行われた法律行為は本人に対して権利及び義務を生じさせない。但し本人が同意して許容するときはこの限りでないが,その者が同意しないときは,代理人は自身の行為に対して責任を負う。
第三者において,代理人がその者と行った法律行為が代理人の権限の範囲内であると合理的に信じたときは,その行われた法律行為は正当とみなす
第三者において代理人と行った法律行為が代理人の権限の範囲を超えて行われたことを知ったときは,前記期限に従い回答を求めるため,文書で本人に通知することができる。前記期限が経過しても回答を得られないときは,当該法律行為は本人に許容されなかったものとみなす。この場合第三者は当該法律行為を一方的に解除することができ,且つ損害が生じたときは賠償を求める権利を有する。但し,その者がそのことを知り又は知りうべきときはこの限りでない
代理人及び第三者が本人に対して損害を与える意図で権限を超えた法律行為を行ったときは,両者は当該損害に対して連帯して責任を負う。
131条「代理の終了」
法定代理は以下の場合に終了する
2.未xxであるxの父母の権利及び義務の終了
3.本人又は代理人の死亡又は解散又は破産
4.その他法律で定める場合
契約による代理は以下の場合に終了する
1.代理契約の終了
2.その他法律で定める場合
第Ⅳ編 物,所有権及び物に対するその他の権利
第10章 地役権(Servitudes)
333条「地役権」
地役権とは,自己の土地に利益を付加する為に,契約又はその他の法律行為によって予め定めた目的に沿って,他人の土地を利用することである
承役地から便益を受ける土地のことを要
役地5と呼ぶ
334条「地役権の取得」
地役権は,合法的に登記された時から取得される。
地役権は,継続的に使用され且つ他人に認識されるものは,この民法典37条に規定する要件に従い時効によって取得される。
土地の共同使用権者の1人が地役権を取得するときは,他の土地共同使用権者もその権利を共に取得する
地役権の登記は,土地の法律行為の登記に関する特別の規則に従う。
335条「地役権と要役地使用権」
地役権と要役地使用権は互いに分離することができず,要役地の土地使用権を移転して他人のものとするときは,地役権も共に移転する。但し,地役権にかかる契約又は法律行為で別途定めた場合はこの限りでない。
336条「地役権の利用」
承役地の使用権者(所有権者に相当する。以下同じ)は,地役権にかかる法律行為が 定めた範囲内で地役権を行使することがで きるが,国家,社会及び他人の権利及び利
4 「ティーディンタート」。意味は承役地であるが,直訳は「隷属地」あるいは「奴隷地」。
5 「ティーディンコーンタート」。意味は要役地
であるが,直訳は「支配地」「主人たる土地」等。
益に損害を与え又は抵触してはならない。
337条「承役地の使用権者の義務」
承役地の使用権者は,地役権にかかる契約で合意したところ又は法律に従って,要役地が承役地から十分に利益を得られることを確実なものとしなくてはならない
338条「要役地の使用権者の義務」
要役地の使用権者は,契約で合意したところに,地役権による利益に対して対価を支払わなければならない
339条「地役権の保護」
地役権者は,この民法典の330条及び331条に定めるところに従って,使用権者と同様に,自身の正当な権利及び利益を守るため,法律に定められた措置をとる権利を有する。
340条「地役権の終了」
地役権は以下の場合に終了する
1.地役権にかかる契約又は法律行為で定めた期間の満了
2.地役権にかかる契約又は法律行為で期間を定めなかったときは20年の期間満了
を建築し,樹木を育て,及びその他の物を 通して利益を得る為に使用する権利であり,法律に沿って登記がなければならない
344条「地上権の目的」
地上に加えて,地下及び上空も,大きさ,範囲及び容積を定めることで地上権の目的 とすることができる
借り主又は占有者が既にいる場合,その土地は,借り主又は占有者が同意するときに地上権の目的とすることができる
345条「地上権の取得」
地上権の取得は,地上権を法律にそって適切に登記したときから始まる。
地上権者として権利行使する者は,この民法典34条に定める要件を満たすことで時効によって取得される
地上権の登記は,土地関係の登記に関係する特別規則に従う
346条「地上権の利用」
地上権者は契約で定めたところに従い自 身の権利を行使することができるが,国家,社会又は他人に損害を引き起こし又はその 利益を侵害してはならない。
3.地役権の目的,承役地又は要役地の消滅
4.10年間継続して地役権を使用し
ない
341条「地役権登記の抹消」
地役権が終了した時は承役地の使用権者は規則に従って地役権の登記を抹消するよう申請しなければならない。
342条「地役権終了の効果」
地役権が終了したときは,要役地の使用権者は土地を元の状態に回復する責任を負う。但し別段の合意がある場合はこの限りでない。
第11章 地上権(Superficies)
343条「地上権」
347条「地上権提供者6の義務」
地上権提供者は,地上権利用者が契約で合意したところに従ってその地上権を十分に使用できることを確実に(ハッパンカン)しなければならない
348条「地上権利用者7の義務」
地上権利用者は,契約で合意したところに従って土地使用料を払う義務及び法律に従いその他の義務を履行しなければならない
349条「地上権の保護」
地上権利用者は,自身の適正な権利及び利益を保護する為に,この民法典330条及
6 ラオ語にxxに訳しているが,この言葉自体を
「地上権設定者」と置き換えて理解することも可能
地上権とは,他人の土地を,契約により,7 ラオ語にxxに訳しているが,この言葉自体を
その者がその土地に自らの所有物たる何か
「地上権者」と置き換えて理解することも可能
び331条に定めるところに従い,所有者と同じように法律に定められた措置をとることができる。
350条「地上権の譲渡」
地上権利用者は自身の地上権を他人に譲渡することができる
351条「地上権の相続」
地上権は相続することができる。
352条「地上権の終了」
地上権は以下の場合の終了する
1.地上権に関する契約で定めた期間の満了
意した価格および期間に従って賃料を支払わなければならない,契約当事者の合意である。
賃貸借契約は,期間を定めずに締結する ことができる。この場合は,賃貸人又は賃 借人はいつでも契約の解除をする権利を有 するが,不動産,例えば土地,家屋および 建物等,については3箇月前以内に,動産,例えば車,船および動物等,の場合は1箇 月以内に,契約の相手方に対して,事前に 通知しなければならない。
xx地の賃貸借については,契約の解除 を,収穫期の後又は次のxx期の前までに,通知しなければならない。
賃貸物の引渡しの前に,賃貸人は,物の
2.契約で期間を定めていない場合,瑕疵又は特別事情について貸借人に通知し
地上権者が地上権設定者に1年前に通知するか又は地上権使用料をあと1年分払うことにより自身の地上権を放棄する
なければならない。
賃貸人が,その物の瑕疵又は特別事情について通知しなかった場合に,通知しなかったことに起因して棄損又は故障が生じた
3.契約で期間を定めていない場合,ときは,賃借人は,いかなる責任も負わな
土地使用目的の種類及び状況に応じ,且つ地上権に関する合意をした時の状況に応じて20年から30年
353条「地上権登記の抹消」
地上権が終了した時は,地上権利用者は規則に従って地上権登記の抹消を申し出なければならない
354条「地上権の終了の効果」
地上権が終了した時は,地上権利用者は土地を原状に回復する責任を負う。但し,別段の合意がある場合はこの限りでない
第Ⅴ編 契約内債務 第10章 契約の種類 I.賃貸借契約
428条「賃貸借契約」
賃貸借契約は,賃貸人が自己の所有する物を,賃借人が一時的に使用するために引き渡し,賃借人は,契約及び賃貸物の効用
8に適切で且つ合致するように利用し,合
8 「クンパニョート」。効用のほか,性質,目的,効能等と訳すことが可能。例えば「辞書のクンパ ニョートは言葉の意味を明らかにすること」「こ
い。
賃貸借契約は書面でしなくてはならない
429条「賃借料の支払い」
賃貸借において,賃借人は賃料を,日払い,週払い,月払い,年払い又は先払いによって支払うことができる。賃借人が先払いをした場合で期限前に契約が解除されたときは,賃貸人は先払いされた賃料の残額を返還しなければならず,その者(プーキヤオ)は契約不履行を行った賃借人に対して損害賠償を請求する権利を有する。
賃貸人が契約不履行を行った場合には,賃借人は,賃貸人に対して,先払いをした賃貸料の残額とともに損害賠償を請求する権利を有する。
430条「賃貸物の使用及び修理」
賃借人は,貸借した物を,契約および貸 借物の効用に沿って使用し,適切な状況に おいて管理,維持し,契約が終了した後に,その物を原状で賃貸人に返還しなければな らない。賃借人は,自らの落ち度により生 じた棄損又は故障に対して責任を負う。
の薬のクンパニョートは頭痛を和らげること」といった使い方をする
賃貸した賃貸物の使用において,鍵の修 繕,船の水漏れ,車のパンクの修繕等,小 規模な修繕が生じたときは,賃借人が修繕 をする義務を負う。屋根の葺替え,車のオ ーバーホール等,大規模な修繕については,賃貸人が修繕をする義務を負う。
賃借人が,賃貸人の合意を得て,自己の資金によって大規模な修繕の費用を支出したときは,賃借人は,賃貸人に対し,その費用の償還を請求する,又は賃料として計算するように請求する権利を有する。
賃借人が大規模な修繕を請求し,賃貸人が能力を有するにも関わらず修繕を行わない場合は,賃借人は,契約を解除し,先払いをした賃料の償還を請求する権利を有する。
431条「賃貸物の所有者の変更」
賃貸人が賃貸物を他人に贈与又は売却した場合は,その受贈者又は買主を新しい所有者とすることによって,賃貸借契約は引き続き効力を有するが,賃貸人は,その物を賃借人が使用している旨を,新しい所有者に通知しなければならない。
432条「転貸借」
賃借人は,賃貸人の同意を得て,賃借物を他人に転貸することができるが,その転貸は,元の賃貸借契約の期間及び条件の範囲内で行わなければならない。
J.コンセッション契約
433条「コンセッション契約」
コンセッション契約とは,契約当事者間の合意であり,そこでは政府から委任を受けた国家機関又は国営企業が法人との間でコンセッション契約に署名するのであり,それは国家所有権及びその他の国家の権利を使用することの許可を規則に沿って国家から与えられることを伴うような投資事業に関するものであり,そしてそれは何らかの開発及び事業,例えば土地のコンセッション,鉱山,電力,航空,通信,保険,金融などであって政府の定める事業リストに沿ったものを目的とするものである。
434条「契約当事者の権利及び義務」
コンセッション契約の当事者はラオス人民民主共和国の関係法令に沿って自らの権利及び義務を規定できる
439 条「委任契約」
委任契約は,受任者が委任者の名義及び計算で何かを行わなければならず,委任者は契約又は法律に定めがある場合は受任者に報酬を支払う義務を負う,契約当事者の合意である。
受任者は,委任状がある場合に限り,委任されたことをすることができる。但し,重要性の低いものはすることができる。
委任は3年を超えてはならない。期間の定めがない場合,委任は委任状を作成した日から1年間効力を有する。
第Ⅶ編 契約外債務第2章 不法行為
513条「不法行為」
不法行為とは,ある者の法令に抵触する,故意又は不注意による行為又は懈怠であり,その不法行為者はその引き起こした損害を 賠償する責任を負う。但し,その損害が, 自己防衛,法律に沿った義務の履行又は被 害者自身の落ち度による場合はこの限りで ない
514条「損害の性質」
損害は,既に確実に生じている又は将来において確実に生じるような性質を有さなければならない。
将来において起こりうる又は起こり得ない損害は,確実な損害とはみなさない。
何人も,以下の事由のように,その者の
行為と生じた損害の間に原因と結果の関係がある場合に損害賠償の責任を負う
1.原因は,損害を生じさせるために不可欠な事象でなくてはならない。
2.原因は,損害の前に発生してい
9 専門用語として定着するか不明のため原語にxxに訳している。意味は因果関係
なければならない。
3.原因は,損害の直接的な事由でなければならない。
516条「損害の種類」
損害は,3つの種類から構成する。
1.物的損害
2.生命又は健康上の損害
4.精神的損害
517条「物的損害」
物的損害は,ある物が破壊,故障又は質の低下を被り,全部又は一部を使うことができず,被害者に対して不利益をもたらすことから生じる損害である。
518条「生命又は健康上の損害」
生命又は健康上の損害とは,何人かに対して生じる損害であり,生命又は身体に傷害を与え又は死に至らしめるものである
519条「評判,名誉又は尊厳の損害」
評判,名誉又は尊厳の損害とは,何人かに生じる損害であって,断言11,中傷12,侮辱又は個人的な情報の流布による
520条「精神的損害」
精神的損害とは,何人かの行為により衝撃13を受けた人の傷心,悲しみ及び落ち込みをいう。
10 「スーシヤン」は評判,「キヤット」は尊厳や名誉,「サクシー」は尊厳や評判。これら 3 つの言葉に厳格な意味の区別があって 3 つ列挙してい
521条「損害額の計算」
損害額の算定は,不法行為者の落ち度に適合しなければならない。
被害者が不法行為の一部に寄与している場合,その者はその生じた損害に対する責任についても,その一部を負わなければならない14
被害者が生じた損害全部の主たる原因である場合,その者は責任を負わなければならない
損害賠償の計算は,現実の価額に従う
522条「損害の種類毎の損害額の決定」
種類毎の損害額の決定は,被害者の申出に基づき,被害者と損害を引き起こした者の合意により又は裁判所が以下の様に検討して定める。
2.生命の:葬式及び儀式費用,慰
謝料,死亡した者の養育下にあるxxに達していない子どもに加え 精神障害の又は仕事をする能力を 有しない18歳以上の子の養育費。 3.健康上の:肉体的な治療費及び療養費,逸失利益,治療の間の介 護者費用,儀式費用及びその他の
費用。
4.評判,名誉及び尊厳の:謝罪による被害者の評判,名誉及び尊厳の回復,マスメディアを通じたニュースの訂正,逸失利益の支払
5.精神の:精神の回復は合理的な金銭による
るのではなく,類語を 3 つ重ねて言いたいことを
明確にしようと試みていると思われる。よって訳語もその観点から 3 つを列挙しているに過ぎず,客ラオ語-日本語が厳密に対応しているわけではないことに留意されたい。
11 不確実なことをあたかもxxであるかのように断言することをいうらしい。
12 事実と異なることを流布することらしい。
13 物理的なものと精神的なものを含む意味での衝撃。例えば,頭を強く打ったときに,打撃そのものではなく,結果として生じる脳へのインパクトも「ガトップガトゥーアン」という。また近親者が殺されたときに「心がガトップガトゥーアンを受ける」という。
14 直訳は「被害者が不法行為において一部を持っている(ミースワン)場合,その者は生じた損害の責任の一部もまた持たなければならない(ミースワン)」。
15 「カーポワイカーンサップ」。一般に「逸失利 益」と訳している「カーポワイカーン」とは異な る概念。例えば物が生み出すべきであった果実な どであるという。いずれも逸失利益とも思われる が,他方で議論を聞いているとこちらの「カーポ ワイカーンサップ」はより曖昧に付随的な損害と いう意味で使っているように思われる場面も多い。訳を分けるためにもこちらを「拡大損害」として いる。
A. 自らの行為による不法行為の責任
523条「権利濫用から生じる損害」
故意に自己の権利を濫用するものはその権利濫用から生じる損害を賠償する責任を負う
524条「緊急事態による損害に対する責任」
緊急事態から生じた損害は賠償されなければならないが,裁判所は,現実の状況に応じて,不法行為者の行為により利益を得た行為者又は第三者に損害を賠償させるよう審理判決する
525条「過剰防衛から生じる損害に対する責任」
国家又は社会の利益,自身の又は他人の生命,健康,権利及び適正な利益の防衛から生じた損害は,正当防衛であって,生じた損害に対して責任を負わない。但し,正当防衛がその程度を超えたときは,不法行為者はその生じた損害を賠償する責任を負う。
526条「複数人が引き起こした損害に対する責任」
複数人が一緒になって損害を引き起こした場合,それらの者は共同してその生じた損害を賠償する責任を負う。裁判所はその損害を引き起こした1人又は複数人に分割して先に損害を全額賠償させるよう審理判決することができるが,その者が代わって払った者に対して,返すよう請求する権利を有する
B.自らの管理下にある別の人の不法行為から,動物から又は物から生じる責任16
16 本セクションの規定は文言上過失責任,無過失責任,証明責任の転換があるように見えるが,そこまでの意味はない。また,このセクションを設けること自体が一般の不法行為との関係でいかなる意味を持つかについても十分な議論はない。概ね注意的,教育的に様々な類型を呈示するという趣旨である。
これらの点は議論が発展途上であるため,読む際は,必ずしも意識的に表現を変えているわけで
527条「使用者の責任」
使用者は,自身の被用者が与えられた仕事にそって職務を果たす中で他人に対して引き起こした損害を賠償する責任を負う
損害が被用者の重大な落ち度から生じたときはその者は損害を賠償する責任を負うが,その使用者はその損害賠償を先に払わなければならず,その後に支払った損害の補填を被用者に請求することができる
自己の利益の為に他人を働かせるときは,本条1項に従う。
528条「父母,後見人又は管理者の責任」
父母,後見人又は管理者,例えば学校,病院及びその他など,は,その管理下にあるxxに達しない子ども又は精神障害者の落ち度によって生じた損害に対して責任を負う
529条「動物の所有者又は占有者の責任」
動物の所有者又は占有者は,その動物の所有者又は占有者の落ち度によって,その動物が引き起こした損害に対して責任を負う。但し,所有者又は占有者が,自身が動物をその動物の種類17,性質又は振る舞いに応じて管理に注意を払ったこと又は被害者自身の落ち度によることを証明することができる場合はこの限りでない
第三者がけしかけ又は動物をして損害を生じさせた場合は,所有者又は占有者は先に損害を賠償しなければならず,その後その第三者に返還を請求する
530条「物から生じる損害に対する責任」
物の所有者又は占有者の落ち度によって物から生じた損害は,その者がその損害を賠償する責任を負う
531条「樹木の所有者又は占有者の損害に対する責任」
はないといったことに注意されたい。なおxxxの民事裁判上,証明責任の明確な理解や制度はない。
17 「サニット」「パペット」という 2 語であるが,類語を重ねて明確化しているだけでそれぞれに異 なる意味があるわけではない。
樹木の所有者は,例えば枝が落ちる,果実が落ちる,木が折れる及びその他など,自身の樹木に起因して生じた他人への損害を賠償する責任を負う。
532条「家又はその他の建築物の所有者の損害に対する責任」
家又はその他の建築物の所有者又は[こ れらを]管理,維持若しくは使用する者は,自身の又は自身が責任を持つ家又は建築物 を放置して,管理不足のために倒壊,腐朽 させて他人に損害を生じさせたときは,そ の生じた損害を賠償する責任を負う。
533条「建築請負人の損害に対する責任」
建築請負人は,建築又は自身の維持管理 の瑕疵から生じた損害に対して責任を負う。例えば,建築物の損傷,建築材が水準を満 たしてない,適正な技術を使っていない, 安全措置なしに溝を掘削し,穴を掘削し, 障害を設けることなど。
534条「製品又は商品から生じる損害に対する責任」
製造を行い,営業を行う人,法人又は組織は,品質を備えず,消費者又は使用者に損害を与えるような製品又は商品が引き起こした損害に対して責任を負う。
535条「危険物から生じる損害に対する責任」
危険物,例えばエンジンで走る乗り物, 送電システム,産業分野の製造工場,兵器,爆発物,感染性のもの,毒,放射性物質, 化学物質又はその他の危険物の所有者又は 占有者は,生じた損害に対して責任を負う。但しその損害が自身の落ち度から生じたも のでない場合はこの限りでない。
536条「環境への損害に対する責任」
汚染を引き起こし,環境及び他人に損害をもたらす人,法人又は組織は,生じた損害を賠償する責任を負う。但しその損害が自身の落ち度から生じたものでない場合はこの限りでない。