Contract
xx・中立な第三者活用促進マニュアル
平成25年7月
国土交通省 土地・建設産業局
【 目 次 】
1. はじめに 1
1.1 マニュアル作成の背景と目的 1
1.2 第三者活用制度の概要 3
1.2.1 第三者活用制度の全体像 3
1.2.2 第三者の位置付けと契約関係 3
1.2.3 第三者活用の標準的な手続き 4
1.3 第三者の活用に期待される効果 5
2. 第三者活用の導入(準備段階) 6
2.1 第三者活用の検討 6
2.2 第三者の業務内容の検討 8
2.2.1 第三者の業務 8
(1) トラブルの未然防止のための業務【トラブル初期段階】(基本業務) 8
(2) トラブルの早期解決のための業務【トラブル発展段階】(基本業務) 8
(3) トラブルの可能性確認の業務【トラブル発生前段階】(オプション業務) 8
2.2.2 第三者の実施内容 9
(1) 第三者による参考見解・意見あるいは裁定の提示 9
(2) 現地訪問・ヒアリング【必要時】 10
1) 当初訪問 10
2) 随時訪問 10
3) 設計変更前訪問 10
(3) 契約図書及び施工計画書等のチェック【トラブル発生前段階】 12
(4) 工事進捗等のチェック【トラブル発生前段階】 12
(5) 受発注者へのトラブルに発展する可能性の通知【トラブル発生前段階】 12
2.3 第三者に求められる要件 13
2.4 第三者の実施体制 15
2.5 第三者の報酬 16
2.5.1 トラブルの未然防止・早期解決のための業務 17
2.5.2 トラブルの可能性確認のための業務 17
(1) 定常的な作業に対する基本報酬 18
(2) 非定常的な作業に対する報酬 18
1) 時間単価 18
2) 直接経費 18
3) 諸経費等 19
2.6 第三者の選定 25
2.7 三者合意書の締結 25
2.7.1 契約内容の確認・調整 25
2.7.2 三者合意書への作成 26
(1) 三者合意書に記載すべき事項 26
1) 対象工事の基本事項 26
2) 契約対象者の基本事項 26
3) 受発注者及び第三者の順守すべき事項 26
4) 第三者の業務内容・報酬等 27
5) 三者契約における手続きルール 27
(2) 三者合意書への署名 28
3. 第三者の活用(履行段階) 29
3.1 第三者によるトラブルの未然防止・早期解決のための業務 29
3.1.1 第三者への参考見解・意見又は裁定の依頼【発注者又は受注者】 29
3.1.2 第三者による参考見解・意見又は裁定の提示【第三者】 30
3.1.3 受発注者によるトラブルのある事案の協議・調整 30
3.2 第三者によるトラブルの可能性確認の業務【オプション業務】 31
3.2.1 契約図書及び施工計画書のチェック【第三者】 31
3.2.2 工事進捗等のチェック【第三者】 32
3.2.3 受発注者へのトラブルに発展する可能性の通知【第三者】 32
3.2.4 第三者による参考見解・意見の提示【第三者】 33
3.2.5 受発注者によるトラブルに発展する可能性のある事案の協議・調整 33
3.3 現地訪問・ヒアリング 34
3.3.1 現地訪問・ヒアリングの準備 34
3.3.2 現地訪問・ヒアリング時の実施内容 34
4. 第三者活用にあたっての留意事項 36
4.1 第三者のxx・中立性の担保 36
4.2 第三者による参考見解・意見あるいは裁定の解釈 36
4.3 裁定のための専門的な調査・分析 37
4.4 新たな第三者の追加 38
4.5 三者契約の変更及び解除 38
4.5.1 三者契約の変更 38
4.5.2 三者契約の解除 39
4.6 第三者活用と仲裁機関活用の関係性 39
4.7 三者間における紛争処理 40
5. 第三者活用事例 41
5.1 モデル工事の概要 41
5.2 第三者の選定及び報酬 42
5.3 第三者の業務内容及び活動状況 42
< 参 考 資 料 >
参考資料 1. xx・中立な第三者の活用スキーム例
参考資料 2. xx・中立な第三者の活用における実施フロー
(1) 第三者の選定
(2) トラブルの可能性確認
(3) トラブルの未然防止・早期解決
参考資料 3. 建設工事標準請負契約約款の条項ごとの主なトラブル要因例と第三者の実施内容例
参考資料 4. xx・中立な第三者の活用に関する様式例
様式例-A xx・中立な第三者の活用に関する申出書様式例-B xx・中立な第三者の活用に関する合意書
様式例-C トラブルに発展する可能性のある事案の報告書様式例-D(1) 参考見解・意見、裁定の依頼書
様式例-D(2) 参考見解・意見、裁定の再依頼書様式例-E(1) 参考見解・意見、裁定(提案書
(受発注者からの依頼書に基づく提案の場合)様式例-E(2) 参考見解・意見、裁定の再提案書
(受発注者からの依頼書に基づく提案の再提案の場合)様式例-E(3) 参考見解・意見、裁定の提案書
(受発注者からの依頼に基づかない提案の場合)様式例-F 現地訪問・ヒアリング 業務日誌の記載例
1. はじめに
1.1 マニュアル作成の背景と目的
建設産業においては、発注者と受注者の実質的な請負契約の対等性の確保・向上が課題となっていることから、国土交通大臣が平成 22 年 3 月 16 日に発表した「入札契約制度の更なる改善について」では、請負契約の明確化・対等化を図るため、中央建設業審議会における検討を踏まえ、標準請負契約約款の改正を行う方針が示された。
平成 22 年 7 月 26 日の中央建設業審議会では、公共工事標準請負契約約款が改正され「、第
52 条(A) あっせん又は調停」において、受発注者間の協議が不調となった場合や紛争が生じた後に調停人を活用するだけでなく、受発注者間の協議の段階から調停人を活用することができる新たな条項(第 4 項)が追加された。
参考1. 標準請負契約約款における「あっせん又は調停」に関する規定
(あっせん又は調停)
第 52 条(A) この約款の各条項において発注者と受注者とが協議して定めるものにつき協議が整わなかった場合その他この契約に関して発注者と受注者との間に紛争を生じた場合には、発注者及び受注者は、契約書記載の調停人のあっせん又は調停によりその解決を図る。この場合において、紛争の処理に要する費用については、発注者と受注者とが協議して特別の定めをしたものを除き、発注者と受注者とがそれぞれ負担する。
2 発注者及び受注者は、前項の調停人があっせん又は調停を打ち切ったときは、建設業法による建設工事紛争審査会のあっせん又は調停によりその解決を図る。
3 第 1 項の規定にかかわらず、現場代理人の職務の執行に関する紛争、xx技術者(監理技術
者)専門技術者その他受注者が工事を施工するために使用している下請負人、労働者等の工事の施工又は管理に関する紛争及び監督員の職務の執行に関する紛争については、第 12 条第 3 項の
規定により受注者が決定を行った後若しくは同条第 5 項の規定により発注者が決定を行った後、
又は発注者若しくは受注者が決定を行わずに同条第 3 項若しくは第 5 項の期間が経過した後で
なければ、発注者及び受注者は、第 1 項のあっせん又は調停を請求することができない。
4 発注者又は受注者は、申し出により、この約款の各条項の規定により行う発注者と受注者との間の協議に第一項の調停人を立ち会わせ、当該協議が円滑に整うよう必要な助言又は意見を求めることができる。この場合における必要な費用の負担については、同項後段の規定を準用する。
5 前項の規定により調停人の立会いのもとで行われた協議が整わなかったときに発注者が定め
たものに受注者が不服である場合で、発注者又は受注者の一方又は双方が第 1 項の調停人のあっせん又は調停により紛争を解決する見込みがないと認めたときは、同項の規定にかかわらず、発注者及び受注者は、審査会のあっせん又は調停によりその解決を図る。
国土交通省では、工事請負契約における受発注者間の対等性の向上、双方の認識の不一致に起因するトラブル(※)の未然防止と早期解決を図り、建設業における取引慣行を構造的に改善していくことを目的として、紛争が生じる前の受発注者間の協議段階だけでなく、受発注者間でトラブルにつながる前段階までを含め、受発注者の間に立つ「xx・中立な第三者」(以下、「第三者」という。)の活用を進めている。具体的には、第三者活用の促進の一環として、平成 22 年度より「xx・中立な第三者の活用モデル事業」(以下、「モデル事業」という。)を通じて、第三者活用の意義・効果・課題等を明らかにし、第三者活用の制度化に向けた検討を行ってきたところである。
『公共工事における紛争解決・未然防止のためのxx・中立な第三者の活用促進マニュアル』(以下、「マニュアル」という。)は、第三者活用の普及促進を図るため、モデル事業における検証結果等を踏まえ、第三者の活用を図るための標準的な手続・留意事項等をとりまとめたものである。
※トラブルとは:
⇨ 本マニュアルでは、発注者と受注者とが協議して定めるものについて、受発注者間の意見の相違及び協議が整わなかった事案を指す
1.2 第三者活用制度の概要
第三者活用制度の概要は、以下に示すとおりである。
1.2.1 第三者活用制度の全体像
第三者の導入目的は、前述のとおり、建設工事標準請負契約約款の第 52 条(A)に基づくものであるが、第三者の役割・業務内容は、以下に示すとおりである。
《第三者活用制度の導入方法》
⚫ 受発注者の一方からの第三者の活用を申し出に基づき第三者を選定し、受発注者及び第三者において契約内容を協議・合意した上で、三者契約を締結する。
《第三者の役割》
⚫ 受発注者に対して、xx・中立な立場から、トラブル事案に対して、「参考見解・意見」あるいは「裁定」を提示する。
《第三者の業務内容》
⚫ 受発注者において見解・意見の相違が顕在化した「トラブル初期段階」において、トラブル解決に向けた方法・手段その他として、「参考見解・意見」を提案する。
⚫ 受発注者において見解・意見の相違に対する協議が調わない「トラブル発展段階」において、トラブル解決のための協議の参考となる具体的な「裁定」を提案する。
⚫ なお、受発注者は、第三者による「参考見解・意見」あるいは「裁定」を参考に、トラブル事案について協議を行う。
1.2.2 第三者の位置付けと契約関係
第三者は、受発注者との雇用関係、財務上その他の利害関係がない者とし、第三者への報酬を発注者及び受注者の双方によって同等負担することにより、第三者のxx・中立な立場を担保するものである。
なお、第三者が受発注者と何らかの関係性がある場合において、その事実を受発注者が合意・承諾した場合、第三者として選定できるものとする。
図 1 受発注者と第三者の関係性
1.2.3 第三者活用の標準的な手続き
第三者を活用する場合の標準的な手続を図 2 に示す。
第三者は、発注者又は受注者の一方からの申し出に基づいて活用を検討するものとし、受発注者の合意に基づき第三者を指名・選定するとともに、第三者の業務内容・報酬その他を設定する。
図 2 第三者活用の標準的な手続き
なお、発注者は、当該工事の入札公告等において、受発注者の一方からの申し出により、第三者を活用できる旨を明示しておかなければならない。
1.3 第三者の活用に期待される効果
建設工事における請負契約では、契約上の片務性に起因した契約上のトラブルが指摘されており、これまでの取引慣行を構造的に改善する一方策として、第三者の活用の促進が期待されている。
第三者は、発注者及び受注者に対してxx・中立な立場であることから、トラブルの回避や解決に適切な能力を有するものを活用することで次の効果が期待されている。
① 契約上のトラブルの未然防止と早期解決
⚫ トラブルの発生前から、トラブル発生時の対応方針が明確化されるため、工事手戻り・中断等のリスクが軽減できる。
⚫ 工事進捗の実態に即し、第三者からの適切な参考見解・意見あるいは裁定により、トラブルが発生する可能性を指摘できる。
⚫ トラブルが発生した場合、第三者からの適切な参考見解・意見あるいは裁定により、トラブルの早期解決、紛争・係争等への発展を抑制することができる。
⇨ 発注者は、工事目的物の建設による効果発現の時期が担保される。
⇨ 受注者は、計画とおりの建設機械・作業員等の配置が可能となる。
② 発注者・受注者間の契約の対等性の確保
⚫ xx・中立な立場で、専門的な知見・経験を有する第三者による参考見解・意見あるいは裁定により、これまで以上に、発注者と受注者が対等な立場で協議・調整等を行うことが期待できる。
⇨ 受注者は、契約の対等性により、適正な工事費・利益を確保することができる。
⇨ 発注者、受注者が適正な工事費・利益を確保することで、一層の工事品質の確保が期待できる。
③ 契約変更に対する説明性の向上
⚫ xx・中立な立場による第三者の参考見解・意見あるいは裁定に基づいて変更内容を協議・調整するため、契約部局・議会等への説明性が向上する。
⇨ 発注者は、契約変更に対する契約部局・議会等への説明の負担低減が期待できる。
2. 第三者活用の導入(準備段階)
2.1 第三者活用の検討
第三者を活用する目的は、発注者と受注者による契約上のトラブルの未然防止及び早期解決を図ることであり、第三者を活用する対象工事に制限はない。そのため、特に、発注者と受注者での主張や見解に大きな隔たりが生じ易い大規模な工事や輻輳した工事を対象とし、第三者を活用することが適切と考えられる。
発注者又は受注者が当該工事において第三者の活用が望ましいと判断した場合、「xx・中立な第三者の活用に関する申出書」(様式例-A)を作成し、発注者及び受注者との間で、本マニュアルを参考とした上で、第三者の業務その他について協議する。
☞ 第三者活用の対象工事は、契約上のトラブルが懸念される工事への適用が望ましく、工事規模やトラブルが発生する可能性を勘案し、対象工事を選定することが適切である。
参考2. 第三者活用のモデル事業における対象事業への意見
モデル事業において、第三者活用が適する工事においてヒアリング調査したところ、以下に示す回答が得られている。
⚫ 建築工事の場合は設計者に工事監理を委託することから、第三者活用は土木工事の方が望ましい。特に、大規模工事や災害復旧時に、契約上のトラブルが発生する可能性がある。【発注者】
⚫ 契約上のトラブルの多くは地質に関する事案が多く、工事規模が大きいほど、地質の問題が関係してくる可能性が高くなる。【第三者】
参考3. アンケート調査における対象工事への意見
国土交通省が実施したアンケート調査(※)において、第三者活用が適する工事として、以下に示す回答が得られている。
【トラブルが発生する内容】
⚫ 現地条件と契約条件(設計図面等)の相違、契約額の変更契約(単価、数量等)、関係機関との協議・調整(公安協議等)
【工事の内容、現場条件等】
⚫ 全ての工事、道路改良工事、橋梁工事、河川工事、土工・地盤改良工事、共同溝工事
⚫ 都市部での工事、用地が未確定の工事、支障物が多い工事
※公共建設工事におけるxx・中立な第三者の活用に関するアンケート調査
○xx・中立な第三者の一層の促進に向けて、第三者の活用の制度化に向けた課題抽出及び環境整備の方向性を検討するために実施したアンケート調査である。
表 1 アンケート調査の実施状況
参考4. アンケート調査の概要と受発注者で主張や見解に大きな隔たりが生じ易い工事工種
回答者の属性 | 回答数 |
都道府県の発注担当部局 | 34 件 |
各県の建設業協会 | 22 件 |
日本建設業連合会会員企業 | 42 件 |
表 2 発注者と受注者での主張に大きな隔たりが生じ易い工事工種
事 象 | 工事工種 |
現地条件と契約条件(設計図面等)との相違 | 全ての工事、道路改良、河川工事、橋梁工事、 土工 地盤改良工事 |
契約額の変更契約(単価・数量等) | 全ての工事 |
関係機関との協議・調整(公安協議等) | 共同溝工事、電線共同溝工事 |
発注者と受注者での主張や見解に大きな隔たりが生じ易い事象の工事工種
0 20 40 60
80
100
① 現場条件と契約条件(設計図面等)との相違 13 11
15 11 3 2 12 4 9
⑤ 工期の変更契約(一時中止、延長等)に係る解釈等の隔たり 12 21211 15
⑦ 契約額の変更契約(単価・数量等)に係る解釈等の隔たり 7 11 3 21 4 15
⑧ 不可抗力(台風等)に対する変更契約に係る解釈の隔たり 6 4 11 6
⑩ 地元等との調整に係る解釈の隔たり 3 5 2112 18
➃ 関係機関との協議・調整(公安協議等)に係る解釈の隔たり 4 9 21 9
全ての工事 道路改良 河川工事 橋梁 トンネル 共同溝 土工・地盤改良 建築 その他
図 3 発注者と受注者での主張や見解に大きな隔たりが生じ易い工事工種
2.2 第三者の業務内容の検討
第三者の標準的な役割は、契約上のトラブルの未然防止・早期解決のための参考見解・意見あるいは裁定を示すだけでなく、受発注者が把握していないトラブルに繋がる恐れがある事案を指摘し、受発注者の要請に基づいて参考見解・意見を提示することである。
2.2.1 第三者の業務
第三者の業務は、前述のとおり、①トラブルの未然防止のための業務、②トラブルの早期解決のための業務、③トラブル可能性確認のための業務に大別され、以下に、それぞれの業務内容を整理する。
(1) トラブルの未然防止のための業務【トラブル初期段階】(基本業務)
本業務は、発注者と受注者の間において、主張や見解の相違が顕在化した際、発注者あるいは受注者からの要請に応じて、トラブル解決の協議・調整の参考となる参考見解・意見を提示するものである。
☞ 受発注者からの要請に基づき、事実関係を確認するための資料を入手する。
☞ 入手した資料による事実確認に基づき、参考見解・意見を提示する。
(2) トラブルの早期解決のための業務【トラブル発展段階】(基本業務)
本業務は、トラブル事案に対する発注者と受注者の協議が整わない場合において、受注者あるいは発注者からの要請に基づき、トラブル解決の協議・調整の参考となる裁定を提示するものである。
第三者は、受発注者に対して、トラブル内容の事実関係を確認するための資料、裁定の検討に必要となる資料等の提出を求め、これら資料に基づいて、裁定を検討するものとする。
☞ 受発注者からの要請に基づき、事実関係の確認、裁定を検討するための資料を入手する。
☞ 入手した資料の分析に基づき、裁定を提示する。
(3) トラブルの可能性確認の業務【トラブル発生前段階】(オプション業務)
本業務は、第三者の基本業務とは異なり、受発注者が必要と認めた場合に、三者合意時に第三者に業務を要請するもので、第三者活用のオプション業務としての位置付けである。
本業務は、工事着工前あるいは工事着工後できるだけ速やかに、発注者から契約図書
(契約書、特記仕様書、その他入札関係資料)、受注者から施工計画書を入手し、請負契約においてトラブルに発展する可能性をチェックするものである。
なお、受発注者から入手した契約図書及び施工計画書において、トラブルに発展する可能性が認められる場合、受発注者に対して、トラブルに発展する可能性がある旨及び内容、必要に応じて参考見解・意見を提示する。
☞ 第三者は、請負契約においてトラブルに発展する可能性をチェックする。
☞ トラブルへの発展の可能性が認められる場合、受発注者に対して、その内容、参考見解・意見を提示する。
2.2.2 第三者の実施内容
前述の第三者の業務について、第三者の実施内容を以下に整理する。
なお、第三者の実施内容として、標準請負契約約款において、トラブルの発生が想定される契約変更に係る事項について、想定されるトラブルの要因例、第三者の実施内容例を参考
-2 に示す。
(1) 第三者による参考見解・意見あるいは裁定の提示
第三者は、受発注者からの依頼に基づき、現に発生しているトラブルの事案について、自らの専門的な知見・経験に基づき、トラブルの未然防止及び早期解決の協議・調整の参考となる参考見解・意見あるいは裁定を提示する。
第三者による参考見解・意見は、トラブル発展段階に進展しないための方法・手段その他を提示するものである。また、第三者による裁定は、受発注者間のトラブル解決のための協議の参考となる解決案の提案である。
なお、受発注者のトラブルの未然防止ならびに早期解決に向けた協議・調整において、第三者による参考見解・意見あるいは裁定は、その内容の実行性に拘束力を有するものではない。
第三者は、参考見解・意見あるいは裁定を提示するために、受発注者から提供された資料では事実関係が明確にできないと判断した場合、受発注者に対して、追加資料の提供あるいは専門的な調査・分析の必要性とその内容を通知できるものとする。
なお、「専門的な調査・分析」の実施方法は、「4.3 裁定のための専門的な調査・分析」において記述する。
(2) 現地訪問・ヒアリング【必要時】
現地訪問・ヒアリングは、第三者がトラブル未然防止のための業務、トラブル早期解決のための業務の一環として、工事現場あるいは別途指定する場所において、第三者と受発注者あるいはトラブル内容に関係する者によって、工事現場(あるいは資機材)の状況確認及び打合せ協議等を行うものである。なお、現地訪問・ヒアリングでは、受発注者(その他関係者を含む)及び第三者の三者が必ず出席できるよう調整する。
現地訪問・ヒアリングは、発注者あるいは受注者からの要請のほか、第三者が必要と認めた場合に実施するものとし、その内容は、受発注者の意見を踏まえた上で、第三者が主体的に取り決めるものとする。
☞ 第三者による現地訪問・ヒアリングは、発注者あるいは受注者からの要請、あるいは第三者が必要と認めた場合に実施する。
☞ なお、現地訪問・ヒアリングの内容は、第三者が取り決めるものとする。
以下に、現地訪問・ヒアリングの実施例を示す。
1) 当初訪問
当初訪問は、三者合意書に関する協議・確認・署名(三者合意書は巻末の様式例-Bに示す)、受発注者間の請負契約の内容、現地・施工条件等の理解を深めることを目的とし、当初訪問時の業務内容は、請負契約の内容、現地・施工条件等の確認、現地訪問に係る業務日誌の作成・確認等が挙げられる。
当初訪問は、工事着工前あるいは工事着工後速やかに実施することが望ましい。
2) 随時訪問
随時訪問は、受発注者及び第三者において事前に取り決めた時期、トラブルが発生した場合において、発注者あるいは受注者からの要請、第三者が必要と認めた場合に実施するものとする。
随時訪問時の業務内容は、現地・施工条件等の確認、トラブル内容の確認、第三者による参考見解・意見あるいは裁定の提示、現地訪問に係る業務日誌の作成・確認等が挙げられる。
3) 設計変更前訪問
契約変更前訪問は、受発注者及び第三者との取り決めに応じて、設計変更前において実施するものとし、設計変更前訪問時の業務内容は、予定される契約変更内容確認、受発注者からの要請に基づく参考見解・意見あるいは裁定の提示、訪問に係る業務日誌の作成・確認が挙げられる。
参考5. 現地訪問・ヒアリングの設定例
【当初訪問】・・・ 工事着工前あるいは工事着工後速やかに
① 三者合意書の内容の確認、署名
② 請負契約内容の確認、現地・施工条件等の確認(資料による説明、現地視察)
③ 請負契約の履行、現地・施工条件等における懸念事項の把握
④ 受発注者及び第三者における情報共有・伝達・記録等の運用ルールの確認
⑤ 現地訪問・ヒアリングに係る業務日誌の作成、内容の確認、三者による署名
⑥ その他、①~⑤に付帯する事項
【随時訪問】・・・ 三者によって取り決めた時期又はトラブル対応
① 受発注者から要請のあったトラブル内容の確認(資料による説明、現地視察)
② トラブル内容の事実確認結果の報告
③ 第三者からの参考見解・意見あるいは裁定の提示・説明
④ 現地訪問・ヒアリングに係る業務日誌の作成、内容の確認、三者による署名
⑤ その他、①~④に付帯する事項
【設計変更前訪問】・・・設計変更協議の前
① 設計変更内容の確認(資料による説明)
② 受発注者からの要請に基づく設計変更内容に対する参考見解・意見あるいは裁定の提示・説明
③ 現地訪問・ヒアリングに係る業務日誌の作成、内容の確認、三者による署名
④ その他、①~③に付帯する事項
(3) 契約図書及び施工計画書等のチェック【トラブル発生前段階】
第三者は、トラブルの可能性確認のために、工事着工前あるいは工事着工後速やかに、発注者から当該請負契約の契約図書、受注者から施工計画書を入手し、トラブルに発展する可能性の有無をチェックするものとする。
なお、契約図書及び施工計画書等のチェック時の着眼点は、以下に示すとおりである。
【 契約図書・施工計画書のチェックの着眼点 】
着眼点 1. 発注者に起因する事項
⚫ 関連工事との調整(第 2 条)、工事用地の確保(第 16 条)、設計図書の表示が不明確(第
18 条)等、受注者に起因しない事項によって、トラブルに発展する可能性はないか。
着眼点 2. 受注者に起因する事項
⚫ 受注者の工程表の妥当性(第 3 条)、工事目的物の仕様に対する施工計画の妥当性(施工計画書)等、受注者に起因する事項によって、トラブルに発展する可能性はないか。
着眼点 3. 受発注者に起因しない事項
⚫ 賃金又は物価の変動に基づく単価の設定方法(第 25 条)、その他制約等、受発注者に起因せず不可抗力によって、トラブルに発展する可能性はないか。
(4) 工事進捗等のチェック【トラブル発生前段階】
第三者は、トラブルの可能性確認のために、工事施工段階において、受発注者と合意した時期・間隔に基づき、受発注者から、工事進捗や現場・施工状況ならびに作業日報、工事施工において懸念される事項等の関係資料(以下、「工事進捗等資料」という。)を入手し、トラブルに発展する可能性の有無をチェックする。
なお、工事進捗等のチェック時の着眼点は、以下に示すとおりである。
【 工事進捗等のチェックの着眼点 】
着眼点 1. 工事進捗の確認
⚫ 工程計画と実績工程の差異、計画時の施工方法と実際の施工方法の差異等を確認し、請負契約の履行期間内での完成遅延の可能性をチェックする。
着眼点 2. 設計図書との不整合内容の整理
⚫ 設計図書と現地の不整合等、当初の条件明示と異なっている内容を把握する。
(5) 受発注者へのトラブルに発展する可能性の通知【トラブル発生前段階】
第三者は、トラブルの可能性確認のために、前述の契約図書・施工計画書のチェック、工事進捗等資料のチェックから、トラブルに発展する可能性が認められた場合、受発注者に対して、その旨及び内容を通知する。
2.3 第三者に求められる要件
第三者の役割は、トラブルの未然防止のための参考見解・意見の提示ならびに早期解決のための裁定を提示することである。このため、第三者には、当該請負契約の内容や工事特性
(規模、難易度、制約条件、条件変更の可能性等)に基づき、第三者に求める要件を設定することが重要である。
前述(P.7)のアンケート調査では、図 4 に示すとおり、第三者の活用が考えられる事案として、「現場条件と契約条件との相違」「工期・契約額の変更契約に係る解釈等」「地元等との調整に係る解釈等」が挙げられている。
参考6. アンケート調査における第三者の活用が考えられる事案
⚫ 都道府県及び関係業団体では、第三者の活用が考えられる事業として、「現場条件と契約条件
との相違」「工期・契約額の変更契約に係る解釈等」「地元等との調整に係る解釈等」が挙げられている。
図 4 第三者の活用が考えられる事案【アンケート調査結果】
第三者の活用が考えられる事象
0 20 40
60
80
①現場条件と契約条件(設計図面等)との相違
36
15 10
②当初契約条件に対する解釈等 8 2 4
③入札時の技術提案書の内容に対する解釈等 21 6
④施工計画書(工程、手順等)の内容に対する解釈等 4 22
⑤工期の変更契約(一時中止、延長等)に係る解釈等 18 11 5
⑥中間払い(出来高数量、支払い額)に係る解釈等
⑦契約額の変更契約(単価・数量等)に係る解釈等
⑨近接工事等との調整に係る解釈
⑩地元等との調整に係る解釈
17
5 6
4 3
16
7 8
⑧不可抗力(台風等)に対する変更契約に係る解釈
6
9
6
➃関係機関との協議・調整(公安協議等)に係る解釈 10 5 1 日建連
建設業協会
⑫成績評定結果に対する解釈等 3 5
都道府県
⑬その他 13
図 4 に挙げられる事案において第三者を活用するには、標準請負契約約款に精通していることが共通的な能力として第三者に求められる。また、対象となる請負契約の工事特性(規模、難易度、制約条件、変更条件の可能性等)に対する専門技術及び知見を有することも必要な能力として挙げられる。
これら第三者に求める能力を有する者として、「弁護士」、設計又は施工経験を有する「建設技術者」等が挙げられ、これらの能力の担保方法として資格保有者とする。
【弁護士の場合:弁護士資格、建設技術者の場合:技術士資格(部門等は工事に応じて規定)】
☞ 契約上の解釈を適切に理解できることが、共通的な能力として求められる。また、対象となる請負契約の工事特性に応じて、専門技術の能力が求められる。
☞ よって、第三者には、当該請負工事に対して、適切な資格を保有していることを要件とする。
なお、第三者は、現場で発生するトラブル等に対して、迅速かつ柔軟に対応できることが求められるため、第三者の能力の担保方法として、弁護士の場合は建設紛争処理に関する実務経験、建設技術者の場合は設計又は施工の実務経験を課すことが考えられる。
☞ 第三者が的確に活動できることの担保として、資格保有のほか、実務経験を有することを要件とする。(実務経験の内容は、当該工事ごとに規定する)
参考7. 第三者に求められる要件の設定例
⚫ 契約内容を適切に解釈できる者
⇨ 弁護士資格を有し、建設工事の紛争処理等の実務経験を○年以上有すること
⚫ 工事特性に応じて専門技術の能力を有する者
⇨ 技術士資格を有し、同種構造物の設計又は施工の実務経験を○年以上有すること
⇨ 一級建築士資格を有し、同種構造物の設計又は工事監理あるいは施工の実務経験を○年以上有すること
※上記の第三者の要件の設定例は、対象案件ごとに設定すること
2.4 第三者の実施体制
第三者の実施体制は、工事特性(規模、難易度、制約条件、条件変更の可能性等)、第三者に求める業務内容に応じて、必要人数を設定するものとする。なお、事前に実施体制が的確に把握できない場合、1 名体制を基本とし、必要に応じて第三者を追加し、第三者としての役割を果たすことができる実施体制とする。
第三者を 1 名体制で履行中において、トラブルの質・量等が当初予想を大きく超えた場合、第三者からの実施体制の見直しの申し出、あるいは発注者又は受注者から第三者の実施体制の見直しの必要性が認められる場合において、受発注者の合意に基づいて第三者の実施体制を柔軟に見直すことができるものとする。
☞ 第三者は、1 名体制を基本とし、必要に応じて追加することができる。
☞ 第三者の体制の見直しは、第三者からの申し出、発注者又は受注者からの申し出に基づき、受発注者の合意に基づいて行うものとする。
⚫ 我が国の建設工事紛争審査委員会では、奇数名の委員構成を基本としている。
⚫ FIDIC 契約約款に基づく海外建設工事における仲裁等の紛争処理は 3 名体制が多い。
⚫ 建設工事以外の各種紛争処理では、調停人・仲裁人等を 2 名体制とする事例もある。
表 3 建設工事紛争審査委員会における紛争処理ごとの委員の数
表 4 国内その他機関における紛争処理ごとの委員の数
参考8. 建設工事紛争審査会等における体制
あっせん | 調停 | 仲裁 | |
審理内容 | 当事者双方の主張を聴き、当事者間の歩み寄りを勧め、解決を図る | 当事者双方の主張を聴き、争点を整理し、場合によって、調停案を勧告 して解決を図る | 当事者双方の主張を聴き、必要に応じて証拠調べや立入検査して 仲裁 委員が仲裁判断を行う |
委員の数 | 原則として 1 名 | 3 名 | 3 名 |
審理回数 | 1~2 回程度 | 5~6 回 | 必要な回数 |
調停 | 仲裁 | |
一般社団法人 日本商事仲裁会 | 1 名又は 3 名 | 1 名 協会が認める場合、複数名も可 |
日本知的財産仲裁センター | 2 名 | 3 名 |
一般財団法人 ソフトウェア紛争解決センター | - | 1 名又は 3 名 |
社団法人 日本海運集会所 | 1 名 必要に応じて複数名 | 3 名 簡易・少額の場合は奇数名 |
社団法人 日本不動産鑑定協会不動産鑑定士調停センター | 3 名 | - |
2.5 第三者の報酬
第三者の業務区分は、①トラブルの未然防止のための業務、②トラブルの早期解決のための業務、③トラブルの可能性確認のための業務に大別され、その業務内容及び実施内容は、以下に示すとおりである。受発注者ならびに第三者は、これら業務内容を踏まえた上で、第三者の報酬体系ならびに報酬額を協議・調整し、合意した上で設定するものとする。
なお、表 5 に示すように、第三者の業務は、定常的に作業が発生し事前に作業量が想定できる業務、非定常的な作業で事前に作業量が想定できない業務に大別される。
このことから、第三者の報酬体系は、これら業務内容を踏まえて設定し、受発注者及び第三者において協議・調整する。
表 5 第三者の業務区分ごとの業務内容と実施内容
業務区分 | 業務内容 | 第三者の実施内容 | 作業の特性 | |
定常的な作業 | 非定常的 な作業 | |||
トラブルの未然防止・ | 事実関係の確認 | • 受発注者からの依頼、提供される関係資料に基づき、トラブル内容の事実確認について事 実確認する。 | ○ | |
早期解決のための業務 | ||||
現地訪問・ ヒアリング | • トラブル内容の事実確認や参考見解・意見あ るいは裁定を提示する際に、現地訪問する。 | ○ | ||
【基本業務】 | 参考見解・意見 あるいは裁定 | • トラブル内容への今後の対応方法について参 考見解・意見あるいは裁定を提示する。 | ○ | |
トラブルの | 事実関係の確認 | • 契約図書・施工計画書等から、請負契約上のトラブルの可能性をチェックし、トラブルの 可能性が認められる場合、その内容を報告す | ○ | |
可能性確認の | る。【工事着工前又は工事着工後速やかに】 | |||
ための業務 | 現地訪問・ヒアリング | • トラブルの可能性の事実確認や参考見解・意見を提示する際に、現地訪問する。 | ○ | |
【オプション】 | 参考見解・意見あるいは裁定 | • トラブルの可能性について、今後の対応方法について参考見解・意見あるいは裁定を提示 する。 | ○ |
第三者の報酬体系は、前述に基づき、受発注者及び第三者において協議・調整の上で設定するものとするが、報酬体系の考え方を以下に例示する。
なお、第三者の報酬額は、想定される作業量、作業の難易、第三者の専門性や経験・経歴等を勘案した上で、受発注者及び第三者の合意の上で定めるものとする。
2.5.1 トラブルの未然防止・早期解決のための業務
トラブルの未然防止ならびに早期解決のための業務は、トラブルの内容、発生回数が事前に想定できず、表 5 に示すとおり、作業量が事前に想定できない非定常的な作業であるため、非定常的な作業は、発生した作業量に見合った報酬を支払うことを基本とする。
☞ 第三者への報酬体系は、次式に基づいて算定することを基本とする。
報酬 = 非定常的な作業への報酬
= 時間単価×作業時間+直接経費(※1)+諸経費(※2)
※1 直接経費:基本報酬に含まれない作業における調査・通信・移動・宿泊等に要する費用
※2 諸経費:時間単価に諸経費を含める場合は計上しない
※単位時間あたりの時間単価を規定した場合
2.5.2 トラブルの可能性確認のための業務
トラブルの可能性確認のための業務は、前頁表 5 に示すとおり、作業量が事前に想定できる定常的な作業、作業量が事前に想定できない非定常的な作業がある。
このことから、定常的な作業は、一定期間ごとの基本報酬、非定常的な作業は発生した作業量に見合った報酬を支払うことを基本とする。
☞ 第三者への報酬体系は、次式に基づいて算定することを基本とする。報酬 = 定常的な作業への報酬 + 非定常的な作業への報酬
=(月あたりの基本報酬×月数)+(時間単価×作業時間+直接経費+諸経費)
※基本報酬:契約図書・施工計画書あるいは工事進捗等をチェックするために要する作業への定額報酬
※時間単価:基本報酬に含まれない作業への時間報酬
※直接経費:基本報酬に含まれない作業における調査・通信・移動・宿泊等に要する費用
※基本報酬を 1 ヶ月、単位時間あたりの時間単価を規定した場合
(1) 定常的な作業に対する基本報酬
基本報酬は、受発注者と第三者による合意書の効力が当該月の 1 日から始まる場合、
基本報酬の全額を支払うものとする。合意書の効力が 2 日以降から始まる場合は、基本報酬に対して日割りによって算定した金額を支払うものとする。
また、合意書の効力が当該月の末日の場合、基本報酬の全額を支払うものとする。合意書の効力が末日以前の場合については、基本報酬に対して日割によって算定した全額を支払うものとする。
図 5 基本報酬額の支払いイメージ(月あたりの基本報酬の場合)
(2) 非定常的な作業に対する報酬
非定常的な作業に対する時間給は、当該作業に要した作業時間と受発注者及び第三者において設定した時間単価を乗じた額に、直接経費を加えた額を支払うものとする。
なお、利益等の間接経費の算定方法は、時間給に含める、時間給に対して率計上する等、受発注者及び第三者の合意の上で定めるものとする。
1) 時間単価
時間単価は、現地訪問・ヒアリング時の作業、受発注者の依頼に基づき参考見解・意見あるいは裁定を提示するための作業に対する報酬として支払うもので、受発注者及び第三者による合意の上で定めるものとする。
なお、現地訪問・ヒアリングのための移動時間を時間給の算定対象とするかは、受発注者及び第三者の合意の上で定めるものとする。
2) 直接経費
直接経費は、非定常的な作業に要した費用として、現地訪問・ヒアリングに要する交通費・宿泊費、参考見解・意見あるいは裁定のための関係図書の購入等が挙げられ、その支払い額の算定の考え方は、次頁に示すとおりとする。
表 6 日定常的な作業における直接経費の算定方法の一例
費目 | 算定の考え方 |
交通費 | • 第三者が自宅~訪問場所への移動に要する交通費の実費とする。 |
宿泊費 | • 三者による合意の上で、1 泊あたりの上限額を設定し、その範囲内で宿泊に要した実費とする。 |
その他 | • 関係図書の購入等に要する費用の実費とする。 • ただし、印刷・通信費等、費用算定のための数量積上げが困難な費用については、別途協議の上で、算定方法を定めるものとする。 (例:作業時間に対する率計上、一定の支払い額を定める 等) |
※上記支払いにおいては、契約期間内に可能な限り領収書を提出するものとする。
3) 諸経費等
第三者の活用促進には、第三者を担おうとする者が必要である。そのためには、第 三者への報酬として、人件費と直接経費の他に、諸経費を計上することが考えられる。ただし、諸経費については、受発注者と第三者との協議の上で、適切に設定するこ
とが望まれる。
参考9. 第三者への報酬額の算定例【弁護士を想定した場合】
(第三者:1 名、基本報酬:10 万円/月、現地訪問時報酬:21 万円/回の場合)
試算条件 | 試算額 | |
工事工期 | 12 ケ月 | 10 万円/月×12 ケ月=120 万円 |
現地訪問 | 3 回(着工前、トラブル発生時、工期末) | 21 万円/回×3 回=61 万円 |
合計 | 181 万円 |
※第三者の移動に係る時間経費(日当等)、交通費・宿泊費・その他費用は含まれていない
※下記の試算額の設定根拠では、諸経費が含まれているものと想定される
<試算額の設定根拠>
基本報酬 :「アンケート結果にもとづく中小企業のための弁護士報酬の目安」(H21.3、日本弁護士連合会)を参考とし、月 3 時間程度の業務を含む顧問契約は 4 万円/
月とした場合、これを月 7 時間換算し 10 万円/日(≒9.3 万円/日)と設定。
顧問契約時の月額料金
(すぐ回答できる内容は月額料金内)
1.9% 5.7% 6.7%
1.0%
1.9%
40.0%
45.7%
3.8%
n=105件
1万円
2万円
3万円
4万円
5万円
6万円
7万円
8万円
9万円
10万円その他
顧問契約時の月額料金
(月3h程度の業務は月額料金内)
1.1%
1.1%2.2% 4.9%
33.5%
52.7%
2.2%
n=182件
1万円
2万円
3万円
4万円
5万円
6万円
7万円
8万円
9万円
10万円その他
図 6 弁護士報酬の目安
現地訪問時報酬:上記アンケート結果、「仲裁人報酬規程」(H20.1.1 改正、一般社団法人日本商事仲裁協会)を参考に 21 万円/回(3 万円/時×7h)と設定。
一般事件の時間単価(顧問契約あり)
5千円
1万円
10.3% 3.8% 5.1%
5.1%
2万円
21.8%
19.2%
3万円
4万円
21.8%
5万円
n=78件
その他
図 7 仲裁人報酬の例
仲裁人報酬規程
第 3 条(仲裁時間・時間単価)
2 時間単価は、4 万円、3 万円、2 万 5 千円のいずれかとし、仲裁人の経験、事件の難易度等を考慮し、当事者が選任した仲裁人については、その当事者の意見を聴いた上、単独仲裁人および第三仲裁人については、全当事者の意見を聴いた上協会が決定する。
ただし、第三仲裁人の時間単価は 他仲裁 の時間単価を下回らないものとする。
参考10. 第三者への報酬額の算定例【建設技術者を想定した場合:発注者支援業務】(1/2)
(第三者:1 名、基本報酬:4.5 万円/月、現地訪問時報酬:4.5 万円/回の場合)
試算条件 | 試算額 | |
工事工期 | 12 ケ月 | 4.5 万円/月×12 ケ月=54 万 |
現地訪問 | 3 回(着工前、トラブル発生時、工期末) | 4.5 万円/回×3 回=13.5 万円 |
諸経費 | 間接原価、一般管理費等を含む | 80 万円 |
合計 | 147.5 万円 |
※第三者の諸経費、移動に係る時間経費(日当等)、交通費・宿泊費・その他費用は含まれていない
<試算額の設定根拠>
基本報酬 :工事管理支援業務の「工事監督支援」における担当技術者の直接人件費の積算基準について、下記のとおり設定。
担当技術者の直接人件費 = 基準日額 × 必要人数 × 作業日数 + 超過業務標準相当額基準日額:担当技術者は技師(C)相当を標準とする。
必要人数:対象工事数・予定工期・直接工事に起因しない作業等を考慮した算定式によって求める
作業日数:19.5 人/日・月とする
超過業務標準相当額:月あたり 30 時間相当分とする
このとき、工事監督支援の直接人件費は、種々の業務が対象となっていることから、第三者の定常時の業務内容を勘案した場合、下記の考え方に基づくものとする。
基準日額:主任技師とする(H23 年度単価)≒4.5 万円/日必要人数:第三者 1 名とする
作業日数:1 日/月とする
超過業務標準相当額:考慮しない
第三者の直接人件費 = 44,800 円/日×1 名×1 日 + 0 円 = 44,800 円/月 ≒ 4.5 万円/月なお、国土交通省における業務委託料の算定式は、下式のとおりであるが、本試算では、
「直接経費」「その他原価」「一般管理費等」は考慮せず、上記直接人件費を基本報酬とし
ている。
業務委託料 =(直接人件費+直接経費+その他原価+一般管理費等)×消費税率
参考 10. 第三者への報酬額の算定例【建設技術者を想定した場合:発注者支援業務】(2/2)
現地訪問時報酬:工事管理支援業務の「定例打合せ」における管理技術者の直接人件費の積算
基準について、下記のとおり設定。
管理技術者の直接人件費 = 基準日額 × 必要人数
基準日額:標準歩掛は管理技術者相当の技師(A)であるが、本試算では主任技師とする
必要人数:標準歩掛は 1.0 人(2 回/月、移動時間含む)であるが、現地視察+現地訪問ミーティングで 1 日(移動時間は含まない)と想定し、本
試算では 1 人日/回とする
第三者の直接人件費 = 44,800 円×1 名 = 44,800 円 ≒ 4.5 万円/回
諸経費:国土交通省における積算基準に基づき算定
その他原価 = 直接人件費 × α /(1-α) ・・・・・・・・・・・α=35%一般管理費等 = (直接人件費+その他原価)× β /(1-β) ・・・・β=30%
なお、本試算において、直接経費(旅費交通費等の積上げ部分、電子成果品作成費等の率計上部分)は考慮しない。
参考11. 第三者への報酬額の算定例【建設技術者を想定した場合:技術士】
技術士報酬(H23 年度):技術士業務報酬の手引き1
(1)日ぎめ方式の場合、1 日当たりの報酬額
¥143,000 円 ・・・・・ 旅費宿泊費、交通費は別途実費
(2)定額積算方式の場合の直接人件費
技術士:¥68,100 円/日、¥9,730 円/時間諸経費:直接人件費の 110%~130%
技術料:直接人件費+諸経費の 20%~40%
直接経費:旅費交通費、測定・調査費、機器及び機材の損料並びに運搬費等
(3)鑑定に関する業務の出廷料と文書料
文書料(1 件当たり):¥50,000 円 ・・・・・ 文書が 20 頁を超える場合、割増し可能出廷料(1 回当たり):¥100,000 円
(4)技術に関する指導料、相談料
指導料(1 回当たり):¥90,000 円 相談料(1 時間当たり):¥25,000 円
1 社団法人 日本技術士会 HP(http://www.engineer.or.jp/cmtee/katsuyou/)
⭘ 建築工事における「工事監理業務」では、建築士法第 25 条の規定に基づき、「平成 21 年度国土交通省告示第 15 号」において、建築士における設計業務及び工事監理の業務報酬の算定方法等が明示されている。
⭘ 工事監理業務(設計業務も同様)の業務報酬は、標準的な業務内容について、「実費加算方法」
「略算方法」による算定方法が規定されている。
実費加算方法:
業務報酬 = 直接人件費 +
+ 特別経費 + 技術料等経費
略算方法:
業務報酬 = 直接人件費 ×
(直接経費+間接経費≒直接人件費 として算定)
+ 特別経費 + 技術料等経費
⭘ 工事監理業務における標準業務とは、次のとおりである。
⭘ 略算方法では、建築物の類型別に、床面積ごとに直接人件費(/人·h)が規定されており、主な直接人件費は、次のとおりである。
業務施設:第 2 類_銀行、本社ビル、庁舎等
文化・交流・公益施設:第 2 類_劇場、美術館、博物館、図書館、研修所、警察署、消防署等
参考12. 第三者への報酬額の算定例【建設技術者を想定した場合:建築工事監理業務2】
直接経費 + 間接経費
2.0
工事監理に関する標準業務 | その他の標準業務 |
• 工事監理方針の説明等 • 設計図書の内容の把握等 • 設計図書に照らした施工図等の検討及び報告 • 工事と設計図書との照合及び確認 • 工事と設計図書との照合及び確認結果報告等 • 工事監理報告書等の提出 | • 請負代金内訳書の検討及び報告 • 工程表の検討及び報告 • 設計図書に定めのある施工計画検討及び報告 • 工事と工事請負契約との照合、確認、報告等 • 工事請負契約の目的物の引渡しの立会い • 関係機関の検査の立会い等 • 工事費の支払いの審査 |
500m2 | 750m2 | 1,000m2 | 1,500m2 | 2,000m2 | 3,000m2 | 5,000m2 | 7,500m2 | 10,000m2 | 15,000m2 | 20,000m2 | |
総合 | 890 | 1,000 | 1,100 | 1,200 | 1,300 | 1,500 | 1,700 | 2,000 | 2,100 | 2,400 | 2,600 |
構造 | 160 | 180 | 190 | 220 | 240 | 260 | 310 | 340 | 370 | 420 | 460 |
設備 | 83 | 110 | 140 | 190 | 240 | 330 | 490 | 660 | 830 | 1,100 | 1,400 |
500m2 | 750m2 | 1,000m2 | 1,500m2 | 2,000m2 | 3,000m2 | 5,000m2 | 7,500m2 | 10,000m2 | 15,000m2 | 20,000m2 | |
総合 | 970 | 1,300 | 1,500 | 200 | 2,400 | 460 | 4,400 | 5,700 | 6,900 | 9,000 | 11,000 |
構造 | 170 | 210 | 250 | 310 | 370 | 460 | 610 | 770 | 910 | 1,100 | 1,300 |
設備 | 250 | 320 | 380 | 500 | 600 | 770 | 1,100 | 1,400 | 1,700 | 2,100 | 2,600 |
2 一般社団法人 新·建築士制度普及協会(http://www.icas.or.jp/kenchikushiho/gyoumu.html)
(1)あっせん
(2)調停
(3)仲裁
(※)請求する事項の価額を算定できないときは、その価額を 500 万円として申請手数料を計算する。なお、審査会事務局が書類などを送付する費用として、申請人は、別途、申請時に次の金額を予納する。
あっせん:10,000 円 、 調停:30,000 円 、 仲裁 50,000 円
参考13. 第三者への報酬額の算定例【建設工事紛争審査会3】
請求する事項の価額 | 申請手数料の額 |
100 万円まで | 10,000 円 |
500 万円まで | 価額(1 万円単位)× 0 円 + 8,000 円 |
1 億円まで | 価額(1 万円単位)× 15 円 + 10 500 円 |
1 億円を超えるとき | 価額(1 万 単位)× 10 円 + 23,500 円 |
請求する事項の価額 | 申請手数料の額 |
100 万円まで | 20,000 円 |
500 万円まで | 価額(1 万円単位)× 40 円 + 16,000 円 |
1 億円まで | 価額(1 万円単位)× 25 円 23,500 円 |
1 億円を超えるとき | 価額(1 万円単 )× 15 円 + 123,500 円 |
請求する事項の価額 | 申請手数料の額 |
100 万円まで | 50,000 円 |
500 万円まで | 価額(1 万円 位) 100 円 + 40,000 円 |
1 億円まで | 価 (1 万円単位)× 60 円 + 60,000 円 |
1 億円を超えるとき | 価額(1 万円単位)× 20 円 + 460,000 円 |
3 http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000124.html
2.6 第三者の選定
第三者は、第三者の業務内容ならびに要件を踏まえた上で、受発注者の合意の上で選定するものとする。
第三者の選定にあたっては、案件ごとに公募等の手段によって選定する方法、既存の ADR法に基づく紛争解決認証機関等を活用して第三者を選定する方法がある。なお、ADR 法に基づく紛争解決認証機関等を活用する場合、第三者の業務内容と報酬については、当該機関の規定・規則等を把握した上で、協議・調整することに留意しなければならない。
☞ 第三者は、当該案件ごとに公募等の手段によって選定する方法のほか、ADR 法に基づく紛争解決認証機関を活用する方法がある。
☞ なお、既存の紛争解決認証機関を活用する場合、当該機関の規定を把握した上で、協議・
調整すること。
※ADR 法:裁判外紛争解決手続きの利用促進に関する法律(最終改正 H18.6.2、法律第 50 号)
2.7 三者合意書の締結
受発注者及び第三者において、業務内容及び報酬その他が合意できた場合、三者間において合意書を締結するものとする。
2.7.1 契約内容の確認・調整
受発注者は、第三者に対して、履行期間、業務内容及び報酬その他について、受発注者及び第三者の三者によって確認・調整を行うものとする。
☞ 受発注者及び第三者は、三者契約の履行期間、第三者の業務内容及び報酬その他について整理した上で、三者によって確認・調査を行うものとする。
第三者との三者契約は、三者合意書に署名又は押印していない場合でも、口頭などの方法によってその効力は有効となるため、必要に応じて、電話・電子メール等によって契約内容を確認・調整しておく必要がある。
なお、受発注者が第三者と契約内容について事前に確認・調整する場合、その内容は、受発注者の間において相互に情報共有を図るものとする。
2.7.2 三者合意書への作成
第三者の活用にあたっては、「公正・中立な第三者の活用に関する合意書」(以下、「三者合意書」という。)を作成し、契約内容を書面にて残すことを原則とする。
(1) 三者合意書に記載すべき事項
第三者活用にあたり、適正な契約内容の履行を実現するため、三者合意書には、以下に示す事項を記載することを基本とし、必要に応じて、受発注者及び第三者において記載すべき事項を協議・調整するものとする。
1) 対象工事の基本事項
三者契約において記載すべき対象工事の基本事項は、次に示すとおりである。
⚫ 三者契約の対象工事の名称
⚫ 三者契約の対象工事の概要(施工場所、工事内容、請負額、工事工期、その他)
2) 契約対象者の基本事項
三者契約において記載すべき契約対象者の基本事項は、次に示すとおりである。
⚫ 受発注者の名称、住所、連絡先
⚫ 第三者の氏名、住所、連絡先、保有資格、専門分野
3) 受発注者及び第三者の順守すべき事項
三者契約において記載すべき受発注者及び第三者が順守すべき事項、次に示すとおりである。
⚫ 第三者の公正・中立性に係る事項
⇨ 受発注者と財務上その他の利害関係がないこと
⇨ 受発注者により、コンサルタントその他として雇用されたことがないこと
⇨ 上記の事実が明らかとなった場合、受発注者にその事実を開示すること
⚫ 受発注者が順守すべき事項
⇨ 第三者の業務履行にあたって求められた資料等は、可能な範囲で第三者に速やかに提供すること
⇨ 第三者の参考見解・意見あるいは裁定には拘束力を持たせないため、第三者が誠実に対応している場合、いかなる責任も追及しないこと
⇨ 受発注者の一方のみで、第三者と協議その他行動を同じにしないこと
⚫ 第三者が順守すべき事項
⇨ 受発注者との三者契約の内容に対して、誠実に対応すること
⇨ 受発注者の一方のみと、協議その他行動を同じにしないこと
⇨ 業務に必要となる受理書類等の内容、対象とする工事請負契約の内容、工事の進捗状況等を把握していること
⇨ 受発注者からの依頼に基づき、参考見解・意見あるいは裁定を提案できる状態としていること
⇨ 対象とする工事請負契約の内容、第三者としての活動は機密扱いとし、受発注者の同意なく公表・開示しないこと
4) 第三者の業務内容・報酬等
三者契約において記載すべき第三者の業務内容・報酬等は、次に示すとおりである。
<第三者の業務内容>
⚫ トラブルの未然防止・早期解決のための業務の実施内容【基本業務】
⚫ トラブルの可能性確認のための業務の実施内容【オプション業務】
<第三者の報酬額の算定方法>
⚫ 事前に作業量が想定される定常的な作業に対する報酬額の算定方法
⚫ 事前に作業量が想定できない非定常的な作業に対する報酬額の算定方法
5) 三者契約における手続きルール
三者契約において記載すべき手続きルールは、次に示すとおりである。
<トラブルの未然防止・早期解決のための業務>
⚫ 受発注者から、第三者に対する参考見解・意見あるいは裁定の依頼方法
⚫ 受発注者から提供される資料に対して、第三者から追加資料等の依頼方法
⚫ 受発注者からの依頼に基づく、第三者からの参考見解・意見あるいは裁定の提示方法
<トラブルの可能性確認の業務>
⚫ 受発注者から、第三者に対して提供する資料と提供時期・方法
⚫ 受発注者から提供される資料に対して、第三者から追加資料等の依頼方法
⚫ 受発注者からの提供資料をチェックし、トラブルの可能性が認められた場合の通知内容・方法
<三者契約の変更等に係る事項>
⚫ 三者契約を変更するための手続き
⚫ 受発注者から、第三者との三者契約を解除するための手続き
⚫ 第三者から、受発注者との三者契約を解除するための手続き
⚫ 受発注者及び第三者との契約上の紛争処理に係る手続き
<その他>
⚫ 三者契約の履行期間
⚫ 第三者に参考見解・意見あるいは裁定を依頼した場合でも、その内容に拘束力はなく、受発注者間の協議・調整の内容を制限しない旨
⚫ トラブルに発展した場合、第三者からの参考見解・意見あるいは裁定の提示を求めずに、建設工事紛争審査会に付託することを禁じる旨
(2) 三者合意書への署名
受発注者及び第三者において、三者契約の内容について合意が得られた場合、「公正・中立な第三者の活用に関する合意書」を 3 部作成し、受発注者及び第三者がそれぞれ署名又は押印すること。
なお、三者合意書は、三者契約の履行期間中、それぞれが保管・管理するものとする。
3. 第三者の活用(履行段階)
3.1 第三者によるトラブルの未然防止・早期解決のための業務
第三者活用にあたり、第三者の業務内容として「トラブルの未然防止・早期解決のための業務」を規定する場合、次に示す事項に基づくものとする。
3.1.1 第三者への参考見解・意見又は裁定の依頼【発注者又は受注者】
受発注者は、当該請負契約においてトラブルが発生した場合、第三者に対して、参考見解・意見あるいは裁定の提示を依頼することができる。
第三者への参考見解・意見あるいは裁定の提示を依頼する場合、受発注者は、トラブルの事案について書面をもって説明するとともに、事実関係を示すことができる関係資料を提供する。
☞ 受発注者は、トラブルが発生した事案、第三者に参考見解・意見あるいは裁定を求めることができる。
☞ この場合、受発注者は、当該事案内容を示すとともに、併せて事実関係を示す関係資料を
提供する。
第三者への参考見解・意見又は裁定の依頼を取り下げる場合、速やかにその旨を第三者及び請負契約の相手方に通知し、三者は参考見解・意見又は裁定の依頼の書面を破棄するものとする。
また、第三者への参考見解・意見又は裁定の依頼内容を変更する場合、速やかにその旨を第三者及び請負契約の相手方に通知し、改めて、変更した依頼内容に基づいて第三者に参考見解・意見又は裁定の依頼を行うものとする。
なお、上記、依頼内容の取り下げ及び変更において、既に第三者が参考見解・意見又は裁定のための作業を行っていた場合の報酬は、三者によって協議・調整し、合意された内容で支払いを行うものとする。
3.1.2 第三者による参考見解・意見又は裁定の提示【第三者】
第三者は、受発注者からの参考見解・意見あるいは裁定の提示を依頼された場合、当該トラブルの事案について、自らの専門的な知見・経験に基づき、書面にて参考見解・意見あるいは裁定を提示する。
第三者は、受発注者から参考見解・意見あるいは裁定の提示を求められた場合、第三者は、依頼の内容を確認した上で、依頼書を受領した旨ならびに必要に応じて追加資料について、受発注者に連絡した上で、受発注者及び第三者において合意した期日までに、参考見解・意見あるいは裁定を提示しなければならない。
☞ 受発注者からの依頼に基づき、トラブルの事案について、第三者は三者にて合意した期日
までに参考見解・意見あるいは裁定を提示しなければならない。
第三者は、トラブルの事案に対する参考見解・意見あるいは裁定のとりまとめにあたり、現地訪問・ヒアリングが必要と判断した場合、受発注者と現地訪問・ヒアリングの必要性、実施内容・議題等について通知するものとする。なお、現地訪問・ヒアリングの実施方法等については、「3.3 現地訪問」(P.34)を参考とすること。
なお、第三者は、依頼内容に対して、自らの専門的な知見・経験で参考見解・意見又は裁定の提示が難しいと判断された場合、速やかに受発注者にその旨を通知する。
また、受発注者に対して、参考見解・意見又は裁定を提示した後に、その内容に追加の必要性あるいは誤りが発見された場合、速やかに受発注者にその旨を通知し、改めて参考見解・意見又は裁定を受発注者に提示し、三者は参考見解・意見又は裁定が提示された書面を破棄するものとする。
3.1.3 受発注者によるトラブルのある事案の協議・調整
受発注者は、トラブルの事案について、第三者による参考見解・意見あるいは裁定を参考に、トラブルの未然防止・早期解決のための方法を協議・調整する。
ただし、第三者による参考見解・意見あるいは裁定は、その実施に拘束力を有しないため、トラブルの事案に対して、受発注者の協議・調整を制限するものではない。
☞ 受発注者は、トラブルの事案について協議する際、第三者による参考見解・意見あるいは裁定を参考とすることができる。
なお、第三者を活用する場合、建設工事紛争審査会あるいは裁判所にトラブルを付託する前に、第三者に参考見解・意見あるいは裁定を求めることが望ましく、受発注者間で、その合意を行うことを基本とする。
3.2 第三者によるトラブルの可能性確認の業務【オプション業務】
第三者活用にあたり、第三者の業務内容として「トラブルの可能性確認の業務」を規定する場合、次に示す事項に基づくものとする。
3.2.1 契約図書及び施工計画書のチェック【第三者】
第三者は、工事施工の初期段階においてトラブルに発展する可能性をチェックするため、工事着工前あるいは工事着工後速やかに、請負契約の内容、現地・施工条件、受注者の施工計画等を事前に把握しなければならない。
そのためには、受発注者は、第三者と業務内容その他について合意が得られた場合、速やかに、契約図書及び施工計画書を第三者に提供するものとする。なお、受発注者から第三者に対して提供する関係資料は、受発注者及び第三者において合意した資料とする。
☞ 第三者は、工事着工前あるいは工事着工後速やかに、契約図書及び施工計画書等をチェックし、トラブルに発展する可能性をチェックする。
☞ 受発注者は、三者合意後速やかに、第三者に対して契約図書及び施工計画書等を提供する。
なお、第三者による契約図書及び施工計画書のチェックは、「2.2.2 (3) 契約図書及び施工計画書等のチェック」(P.12)に示す着眼点に基づいて行うものとする。
参考14. 受発注者から第三者に提供すべき関係資料の例
<発注者→第三者>
⚫ 入札説明書、現場説明書、質疑応答に関する資料、請負契約書、特記仕様書、設計図面
⚫ その他、第三者が求める資料(現場写真、設計成果品等)
<受注者→第三者>
⚫ 施工計画書、工程表、請負代金内訳書、施工体制台帳、施工体系図
⚫ その他、第三者が求める資料
3.2.2 工事進捗等のチェック【第三者】
第三者は、工事施工中においてトラブルへの発展の可能性をチェックするため、定期的に現地・施工状況等の工事進捗等の状況を把握しておかなければならない。
そのためには、受発注者は、第三者と合意した時期・間隔において、工事進捗等の状況を把握できる関係資料を第三者に提供するものとする。なお、受発注者から第三者に対して提供する関係資料は、受発注者及び第三者において合意した資料とする。
☞ 第三者は、受発注者と合意した時期・間隔において、工事進捗等の状況をチェックし、トラブルに発展する可能性をチェックする。
☞ 受発注者は、第三者と合意した時期・間隔において、工事進捗等の状況を把握できる資料を提供する。
なお、第三者による工事進捗等のチェックは、「2.2.2 (4) 工事進捗等のチェック」(P.12)に示す着眼点に基づいて行うものとする。
参考15. 受発注者から第三者に提供すべき関係資料の例
⚫ 工程会議等の資料(工程表:計画及び実績)及び議事録、工事進捗が把握できる現場写真(写真撮影日が把握できること)
⚫ 発注者による作業指示書、受注者による確認所等
⚫ その他、第三者が求める資料
3.2.3 受発注者へのトラブルに発展する可能性の通知【第三者】
第三者は、前述の「3.2.1 契約図書及び施工計画書のチェック」又は「3.2.2 工事進捗等のチェック」において、トラブルに発展する可能性が認められた場合、受発注者に対して、速やかに、その内容を通知する。
☞ トラブルに発展する可能性が認められる場合、第三者は、受発注者に対して、その内容を通知すること。
3.2.4 第三者による参考見解・意見の提示【第三者】
第三者は、「受発注者へのトラブルに発展する可能性の通知」の結果、受発注者からトラブルに発展する可能性のある事案について参考見解・意見の提示を求められた場合、第三者は、自らの専門的な知見・経験に基づき、書面にて参考見解・意見を提示する。
第三者は、受発注者から参考見解・意見の提示を求められた場合、第三者は、依頼の内容を確認した上で、依頼書を受領した旨ならびに必要に応じて追加資料について、受発注者に連絡した上で、受発注者及び第三者において合意した期日までに、参考見解・意見を提示しなければならない。
☞ 受発注者からの依頼に基づき、トラブルに発展する可能性がある事案について、第三者
は、三者にて合意した期日までに参考見解・意見を提示しなければならない。
第三者は、トラブルに発展する可能性のある事案に対する参考見解・意見のとりまとめにあたり、現地訪問・ヒアリングが必要と判断した場合、受発注者と現地訪問・ヒアリングの必要性、実施内容・議題等について協議するものとする。なお、現地訪問・ヒアリングの実施方法等については、「3.3 現地訪問」(P.34)を参考とすること。
なお、「契約図書及び施工計画書のチェック」及び「工事進捗等のチェック」においてトラブルに発展する可能性が認められた場合、受発注者及び第三者の合意により、「第三者による参考見解・意見の提示」をもって、「受発注者へのトラブルに発展する可能性の通知」を省略することを可能とする。
3.2.5 受発注者によるトラブルに発展する可能性のある事案の協議・調整
受発注者は、トラブルに発展する可能性のある事案について、第三者による参考見解・意見を参考に、トラブルに発展する可能性防止のための方法を協議・調整する。
ただし、第三者による参考見解・意見は、その実施に拘束力を有しないため、トラブルに発展する可能性のある事案に対して、受発注者の協議・調整を制限するものではない。
☞ 受発注者は、トラブルに発展する可能性のある事案について、第三者による参考見解・意見を参考とすることができる。
3.3 現地訪問・ヒアリング
現地訪問・ヒアリングは、工事現場あるいは別途指定する場所において、第三者と受発注者あるいはトラブル内容に関係する者によって、工事現場(あるいは資機材)の状況確認及び打合せ協議等を行うものである。
3.3.1 現地訪問・ヒアリングの準備
現地訪問・ヒアリングの実施方法・議題等は、現地訪問・ヒアリングの目的を踏まえて第三者が提案し、受発注者は、現地・施工状況等を考慮した上で、第三者と協議・調整するものとする。なお、現地訪問・ヒアリングにおいて必要となる会議室の確保、資料の印刷その他は、可能な限り受発注者側で準備することが望ましい。
☞ 現地訪問・ヒアリングの実施方法・議題等は、実施目的を踏まえて第三者が提案する。
☞ 受発注者は、現地訪問・ヒアリング時の準備に協力する。
3.3.2 現地訪問・ヒアリング時の実施内容
第三者は、受発注者が提供する関係資料によって現地・施工状況ならびに工事進捗にあたってトラブルに発展する可能性のある事案、現にトラブルとなっている事案等を把握するほか、現地視察においても確認する。
なお、現地訪問・ヒアリング時に明らかになったトラブルに発展する可能性のある事案、現にトラブルとなっている事案について、受発注者の合意が得られ、事実関係が確認できる状況の場合、第三者は参考見解・意見を述べることができる。
第三者は、現地訪問・ヒアリング時の行動内容、現地訪問時の打合せ協議、現地・施工状況等の結果等を業務日誌としてとりまとめ、現地訪問・ヒアリングの最後に、その内容を受発注者及び第三者において確認する。業務日誌の確認について、受発注者及び第三者において合意が得られた場合、業務日誌を 3 部作成し、受発注者及び第三者のそれぞれが署名又は押印し、当該工事の請負契約及び三者契約の履行期間中は、受発注者及び第三者のそれぞれが保管・管理する。
☞ 第三者は、資料説明ならびに現地確認によって、現地・施工状況ならびに工事進捗にあたっての問題点等を把握する。
☞ 第三者は、現地訪問・ヒアリングの内容・結果について、業務日誌を作成し、その内容を
受発注者及び第三者で確認する。
なお、業務日誌では、会議等の結果だけでなく、可能な限り、その経緯・背景、発言者、意思決定者等が把握できるようにとりまとめる。
参考16. 現地訪問・ヒアリングの進め方の例
<現地訪問・ヒアリングの準備>
⚫ 事前に合意した時期・間隔に基づき、現地訪問・ヒアリングの必要性を打診する。【第三者】
⚫ 現地・施工状況等を考慮し、現地訪問・ヒアリングの日程調整を行う。【受発注者】
⚫ 現地訪問・ヒアリングの目的から、現地訪問時の実施内容・議題等を提案する。【第三者】
⚫ 現地訪問・ヒアリング時に必要となる会場、資料等の準備を行う。【受発注者】
<現地訪問・ヒアリング時の実施内容・議題等>
⚫ 受発注者側から、現地・施工状況等、必要に応じて、トラブルの事案、トラブルに発展する可能性がある事案を説明し、第三者と意見交換を行う。
⚫ 資料説明を踏まえ、現地視察によって現地・施工状況等を確認する。
⚫ 現地視察の結果を踏まえ、必要に応じて、受発注者及び第三者にて現地・施工状況等について意見交換する。
⚫ 第三者は、現地訪問の最後に業務日誌を作成し、受発注者及び第三者にてその内容を確認し、その内容に合意が得られれば三者が署名又は押印し、それぞれ 1 部ずつ保管する。
4. 第三者活用にあたっての留意事項
4.1 第三者の公正・中立性の担保
第三者は、トラブルの事案、トラブルに発展する可能性のある事案について、公正・中立な立場から参考見解・意見あるいは裁定を提示するものである。
このことから、第三者の選定にあたっては、以下に示す事項をもって、第三者の公正・中立性が担保されたものととらえる。
⚫ 第三者は、受発注者ならびに対象とする請負契約との間に、財務上その他の利害関係がないこと。
⚫ 第三者は、受発注者から、コンサルタントその他として雇用された経験がないこと。
⇨ これに矛盾する事実又は状況がある場合、第三者は、速やかに受発注者に通知しなければならない。
⇨ 受発注者がこの事実を承諾した場合、第三者として活動することは構わない。
⚫ 受注者あるいは発注者の一方のみで、第三者と協議その他行動を共にしないこと。
⇨ 電話、FAX、電子メールによる連絡その他は、三者が同じ情報を常に共有できる仕組み・ルールを定めること。
⚫ 第三者への報酬支払は、受発注者の折半によることを基本とする。
⇨ 受発注者から、第三者への報酬の支払い方法は、別途合意の上で定めておくこと。
☞ 第三者は、自身が中立で、受発注者から独立していることを原則とする。
4.2 第三者による参考見解・意見あるいは裁定の解釈
第三者による参考見解・意見あるいは裁定は、第三者の専門的な知見・経験に基づくものであり、受発注者におけるトラブルの事案、トラブルに発展する可能性のある事案において、受発注者が協議するための参考材料としての位置付けである。
すなわち、参考見解・意見あるいは裁定は、受発注者に対して実行の拘束力はなく、受発注者の協議内容の制限となるものではない。
☞ 第三者の参考見解・意見あるいは裁定は、その実行に対して拘束力を有するものではなく、
受発注者の協議内容を制限するものではない。
4.3 裁定のための専門的な調査・分析
第三者に、裁定の提示を求める場合において、事実関係の確認、裁定の検討にあたり、受発注者から提供された関係資料では不十分と判断された場合、トラブル内容について詳細な調査・分析等が必要となる可能性がある。この場合において、裁定のための専門的な調査・分析する者を調達することができる。ただし、受発注者がこれを対応する場合、三者間において専門業者の可否を確認することで公平性を確保する。
なお、専門的な調査・分析について、必要な費用を計上することを基本とする。
☞ 第三者が裁定を検討するために、専門的な調査・分析が必要と判断された場合、三者のうち最も適切な者が対応することを基本とする。
☞ なお、受注者あるいは第三者が専門的な調査・分析を行った場合、それに要した適正な費
用を支払うこと。
⚫ 専門的な調査・分析は、以下に示す理由に基づき、受注者が実施(あるいは実施者を調達)することが望ましい。
表 7 専門的な調査・分析の実施者について
参考17. 裁定のための専門的な調査・分析の実施者について
区 分 | 実施者となる場合の特記事項 |
発注者 | • 専門的な調査・分析 実施者の調達手続きに時間を要する。 |
受注者 | • 受注者自らが調査・分析する、あるいは協力業者等を活用することで、調査・分析に要する時間を節約できる。 • ただし、調査・分析に要した費用は、増額変更することを前提とする。 |
第三者 | • 第三者によっては、専門的な調査・分析の実施者の調達手続きに時間を要する。(特に弁護士の場合) • 受発注者に対して、調査・分析結果の責任が課せられるため、第三者への 報酬が高くなる。 |
4.4 新たな第三者の追加
トラブルに発展する可能性のある事案、現に発生しているトラブルの事案について、第三者の専門外の内容、第三者が対応困難な作業量が発生する場合、受発注者及び第三者の合意に基づき、第三者を追加選定することを可能とする。
新たな第三者の選定にあたっては、「2. 第三者活用の導入(準備段階)」と同様の手順を基本とする。ただし、第三者による参考見解・意見あるいは裁定を参考として、受発注者間において速やかに協議・調整する必要がある場合等については、受発注者の合意に基づき、現在の第三者による推薦によって新たな第三者の選定を可能とする。
なお、新たな第三者とは新たな三者契約を締結するため、それぞれの第三者は独立した存在である。
☞ 受発注者及び第三者の合意の上で、新たに第三者を追加選定することができる。
☞ なお、受発注者の合意があれば、現在の第三者によって新たに追加する第三者を推薦することができる。
4.5 三者契約の変更及び解除
受発注者及び第三者による三者契約の変更及び解除は、以下に示すとおりである。
4.5.1 三者契約の変更
受発注者及び第三者は、三者合意書で定めた契約期間その他内容等について、協議した上で変更が必要と認められた場合、受発注者及び第三者の合意に基づき、三者契約の内容を変更することができる。
なお、三者契約の内容変更は、改めて三者合意書(第○回変更)を作成し、受発注者及び第三者による署名又は押印をもって有効とする。
☞ 三者契約は、受発注者及び第三者の合意の上で、内容を変更することができ、この場合、
改めて変更内容に基づく三者合意書が必要となる。
4.5.2 三者契約の解除
受発注者及び第三者による三者契約は、以下に示す場合において、相当の期間を定めて三者契約の解除を通知することで、三者契約を解除できるものとする。三者契約の解除通知から契約解除までの期間は、受発注者及び第三者による合意の上で定めておくこと。
なお、第三者を活用する立場の者へのアンケート結果では、1~2 週間程度の回答が多かった。
<受発注者からの解約解除>
⚫ 第三者が三者合意書に定められた義務を順守していない場合
⚫ 第三者の能力が十分ではないと判断された場合
⚫ その他、受発注者に起因する事項
<第三者からの解約解除>
⚫ 発注者あるいは受注者が三者合意書に定められた義務を順守していない場合
⚫ その他、第三者に起因する事項
☞ 受発注者あるいは第三者が三者合意書に定めた義務を順守していない場合、三者契約を解除することができる。
☞ また、受発注者において、第三者の能力が十分ではないと判断された場合も同様とする。
なお、三者契約の解除に伴う違約金の有無、適用条件ならびに算定方法は、受発注者及び第三者による合意の上で定めること。
4.6 第三者活用と仲裁機関活用の関係性
第三者を活用する場合、第三者に対して参考見解・意見あるいは裁定を求めることでトラブル解決を図ることを基本とする。
このことから、第三者を活用する場合、建設工事紛争審査会あるいは裁判所にトラブルを付託する前に、第三者に参考見解・意見あるいは裁定を求めることが望ましく、受発注者間で、その合意を行うことを基本とする。
☞ 第三者を活用する場合、第三者による参考見解・意見あるいは裁定を求めずに、建設工事紛争審査会その他仲裁機関に、トラブル解決を付託してはならない。
4.7 三者間における紛争処理
受発注者及び第三者における三者契約において、合意内容の義務違反、三者合意書の解除・終了その他関連する事項について、受発注者あるいは第三者の間でトラブルが生じた場合には、仲裁によって解決を図るものとし、仲裁の方法・場所及び仲裁人の数等は、受発注者及び第三者による協議に基づき、三者契約の締結時に定めておくものとする。
☞ 三者契約におけるトラブルは、仲裁によって解決を図るものとする。
☞ なお、仲裁の方法・場所・仲裁人の数等は、予め三者合意書において仲裁条項として規定することが望ましい。
仲裁判断は、仲裁法第 45 条において、確定判決と同一の効力を有するものと規定されて
いる。仲裁判断を履行しない場合、同法第 46 条に基づき、裁判所に対して民事執行を申し立てることができる。
受発注者及び第三者において仲裁合意の規定がある場合、同法第 14 条の規定に基づき、仲裁合意の対象となる紛争は、裁判所に提訴した場合でも、その訴えは却下される。
参考18. 仲裁法における仲裁合意、仲裁判断等の規定
(仲裁合意と本案訴訟)
第 14 条 仲裁合意の対象となる民事上の紛争について訴えが提起されたときは、受訴裁判所は、被告の申立てにより、訴えを却下しなければならない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。(以下、省略)
(仲裁判断の承認)
第 45 条 仲裁判断は、確定判決と同一の効力を有する。ただし、当該仲裁判断に基づく民事執行をするには、次条の規定による執行決定がなければならない。(以下、省略)
(仲裁判断の執行決定)
第 46 条 仲裁判断に基づいて民事執行をしようとする当事者は、債務者を被申立人として、裁判所に対し、執行決定を求める申立てをすることができる。(以下、省略)
5. 第三者活用事例
我が国における第三者活用の事例として、「椎葉村役場庁舎新築工事」(宮崎県椎葉村)を対象とした「公正・中立な第三者の活用モデル事業」の概要を紹介する。
なお、モデル事業の募集にあたっては、以下に示す工事特性を条件としていた。
⚫ 設計変更や工期変更等が多いと想定される工事
⚫ 技術的難易度が高い等の理由で発注者の経験が少なく、受発注者間の協議において適切な判断が困難と想定される工事
⚫ 発注者間で請負契約に基づき行われる協議事項に関して、双方の認識の不一致や疑問等から紛争・トラブルが生じるおそれのある工事
5.1 モデル工事の概要
宮崎県椎葉村は、①専門技術者がいない、②近年にない大規模事業であることを理由として、当該工事を対象として第三者を活用することとした。
表 8 第三者の活用事例における工事概要
所在地 | 宮崎県東臼杵郡椎葉村大字下福良 1747 番地 |
工事目的 | • 椎葉村役場庁舎は築後 53 年を経過しており、耐震診断によって耐震補強の必要があると判断されている。 • 老朽化や近年の行政需要に対する不足を補うために新築移転する。 |
工事の内容 | 敷地面積:5,769m2 建築面積:1,554m2 延床面積:2,509m2 構造 :鉄骨造 3 階建 (設計者が工事監理者として参画している) |
工事規模 | ¥697,599,000 円(当初契約) (1F:駐車場、2F:執務室、3F:議場及び会議室) |
工期 | 平成 23 年 3 月 30 日 ~ 平成 24 年 1 月 31 日(当初契約) |
図 8 椎葉村役場庁舎外観イメージ(「広報しいば」(2010.10 月号)より)
5.2 第三者の選定及び報酬
宮崎県椎葉村においては、FIDIC 公認の DB(Dispute Board)の者 1 名を公正・中立な第三者として国土交通省が選定した。
【モデル事業における第三者の経歴】
⚫ 30 年超えにわたる海外プロジェクトの経験を通じ、欧米の建設マネジメントや契約管理の知識が豊富であり、英国における ADR(裁判外紛争解決)組織の 1 つである英国仲裁人協会準会員の資格を取得している。
⚫ 日本コンサルティング・エンジニア協会が日本で初めて実施した FIDIC 認定のアジュディケーター(裁定人)審査ワークショップのトレーニングを受けている。
5.3 第三者の業務内容及び活動状況
モデル事業における第三者の業務内容は三者合意書において明示されており、これら活動又は省略された行動は、それらが不誠実なものでない限り、いかなる責任も問われないものと規定している。なお、「技術的観点からの見解・意見」等は、依頼文書を受理してから 7日以内又は第三者からの提案に基づき発注者及び受注者双方が承認した他の期間内に、文書によって発注者及び受注者の双方に対して提示することを規定している。
工事履行中は、工事進捗報告として、毎月、発注者を通して受注者から第三者に対して、工程計画・現況写真及び工程会議の議事録が提供されており、第三者はこれら月次報告に基づいて現地状況等の把握・分析を行った。
当該工事では、契約上のトラブルは発生しなかったものの、工程遅れが想定されたことから、第三者は今後の工事進捗の見込み等について分析を行った。
なお、現地訪問は、工事着工前と工事工期末の 2 回行っている。
現地訪問及び現地訪問以外における第三者の具体的な業務内容は、次のとおりである。
表 9 モデル事業における第三者の具体的な業務内容
区分 | 第三者の業務内容 | |
現地訪問以外 | • 月間工程及び進捗報告に基づく現状把握・分析 → 工事進捗に基づくコスト分析及び工期延長の可能性を検討 | |
現地訪問 | 第 1 回 | • 合意書の内容確認、第三者の任命承諾、合意書の締結 |
(当初訪問) | • 工事概要及び契約内容の把握、第三者による助言等 | |
• 工事現場の現地視察 | ||
• 次回の現地訪問の実施時期の調整 | ||
• 発注者・受注者及び第三者による情報交換ルールの確認 | ||
• 業務日誌の作成及び内容確認・署名 | ||
第 2 回 | • 工事進捗、施工にあたっての問題点等に対する助言等 | |
(完成前訪問) | • 業務日誌の作成及び内容確認・署名 |
参考19. モデル事業における「公正・中立な第三者の活用に関する合意書」
参考20. モデル事業における現地訪問ミーティングの様子
第 1 回現地訪問ミーティング
第三者
発注者
工事監理者
受注者
第 2 回現地訪問ミーティング
第三者
発注者
工事監理者
受注者
第 2 回現地訪問 現地視察
受注者
第三者
図 9 モデル事業における現地訪問ミーティングの様子
参考資料
参考資料 1. 公正・中立な第三者の活用スキーム例
参考資料 2. 公正・中立な第三者の活用における実施フロー
参考資料 3. 建設工事標準請負契約約款の条項ごとの主なトラブル要因例と第三者の実施内容例(契約変更に係る条項)
参考資料 4. 公正・中立な第三者の活用に関する様式例
様式例-A 公正・中立な第三者の活用に関する申出書様式例-B 公正・中立な第三者の活用に関する合意書様式例-C 参考見解・意見、裁定の依頼書
様式例-D(1) 公正・中立な第三者による参考見解・意見、裁定の提案書
(受発注者からの依頼書に基づく提案の場合)様式例-D(2) 公正・中立な第三者による参考見解・意見、裁定の提案書
(受発注者からの依頼書に基づかない提案の場合)様式例-E 現地訪問ミーティング 業務日誌の記載例
参考-1
参考資料 1. 公正・中立な第三者の活用スキーム例
図 10 建設工事における第三者の活用スキーム例(基本業務:トラブルの未然防止・早期解決)
参考-2
図 11 建設工事における第三者の活用スキーム例(オプション業務:トラブルの可能性確認、トラブルの未然防止+早期解決)
参考資料 2. 公正・中立な第三者の活用における実施フロー
(1) 第三者の選定
発注者
受注者
第三者
請負契約の締結
第三者活用の要請
【様式例-A】
どちらか一方からの申し出で可
第三者活用の要請
【様式例-A】
工事特性等に基づいた第三者の選定
【既存の仲裁機関等の活用: 独自に公募も可】
第三者の業務内容・報酬その他の協議・決定
第三者活用に関する三者合意の締結
【様式例-B】
請負契約の変更
【第三者の活用、第三者の業務内容は合意書に基づく旨を追記】
図 12 第三者の選定における実施フロー
(2) トラブルの可能性確認【オプション業務】
発注者
受注者
第三者
第三者活用に関する三者合意の締結
契約図書の提供
契約図書の確認
施工計画、工事進捗の提供
施工計画、工事進捗の確認
契約図書、施工計画・工事進捗によるトラブルの可能性の確認
トラブルの可能性に対する参考見解の依頼
【様式例-D】
トラブルの可能性の報告
【様式例-C】
参考見解・意見の提案
【様式例-E】
参考見解・意見の確認
参考見解・意見の確認
参考見解・意見を参考とした協議・調整
合意した場合:合意内容を協議簿・指示簿等において記録
合意できない場合:
第三者に裁定の依頼 or
建設工事紛争審査委員会に付託
図 13 トラブルの可能性確認における実施フロー
(3) トラブルの未然防止・早期解決【基本業務】
発注者
受注者
第三者
紛争の発生
トラブルに対する参考見解・意見、裁定の依頼
【様式例-D】
受発注者の一方からでも可
トラブルに係る関係資料の提供
トラブルに係る関係資料の確認
【事実関係の確認】
参考見解・意見、裁定の提案
【様式例-E】
参考見解・意見、裁定の確認
参考見解・意見、裁定の確認
参考見解・意見、裁定を参考とした協議・調整
合意した場合:合意内容を協議簿・指示簿等において記録
合意できない場合:
第三者に裁定の依頼 or
建設工事紛争審査委員会に付託
図 14 トラブルの未然防止・早期解決における実施フロー
参考資料 3. 公正建設工事標準請負契約約款の条項ごとの主なトラブル要因例と第三者の実施内容例(契約変更に係る条項)
表 10 主なトラブル要因と第三者の実施内容例(1/2)
条項 | 条文 | 主なトラブル要因例 | 第三者の実施内容例 | 未然防止 | 早期解決 | |
定常的作業 | 非定常的作業 | 非定常的作業 | ||||
第 16 条 工事用地の確保等 | 発注者は、工事用地その他設計図書において定められた工事の施工上必要な用地(以下「工事用地等」という。)を受注者が工事の施工上必要とする日(設計図書に特別の定めがある ときは、その定められた日)までに確保しなければならない。 | ⚫ 受注者が工事の施工上必要とする日までに工事用地等を確保できない場合。 | ✓ 工事用地を確保できる日の確認 ✓ 工事用地を期日までの確保できない場合の対応方法に関する参考見解・意見の提示 | ○ | ○ | |
第 18 条 条件変更等 | 受注者は、工事の施工に当たり、次の各号のいずれかに該当する事実を発見したときは、その旨を直ちに監督員に通知し、その確認を請求しなければならない。 | ⚫ 図面、仕様書、現場説明書及び現場説明に対する質問回答書が不整合の場合。 | ✓ 全ての設計図書の整合性の確認ならびに不整合・不明確な箇所の指摘 ✓ 設計図書に明示された施工条件と工事現場の整合性の確認 ✓ 不整合と判断される場合、対応方法に関する参考見解・意見の提示 ✓ 施工条件の変化について、入札時に予期できるものであったかの確認 ✓ 予期できないものと判断された場合、対応方法に 関する参考見解・意見の提示 | ○ | ||
一 図面、仕様書、現場説明書及び現場説明に対する質問回答書が一致しないこと(これ | ⚫ 設計図書と現地に不整合がある場合。 | ○ | ||||
らの優先順位が定められている場合を除く。)。 | ||||||
二 設計図書に誤謬又は脱漏があること。 | ○ | |||||
三 設計図書の表示が明確でないこと。 | ||||||
四 工事現場の形状、地質、湧水等の状態、施工上の制約等設計図書に示された自然的又 は人為的な施工条件と実際の工事現場が一致しないこと。 | ⚫ 設計図書で明示されていない施工条件が予 期できなかった場合。 | ○ | ||||
五 設計図書で明示されていない施工条件について予期することのできない特別な状態が | ||||||
生じたこと。 | ||||||
第 19 条 設計図書の変更 | 発注者は、必要があると認めるときは、設計図書の変更内容を受注者に通知して、設計図書を変更することができる。この場合において、発注者は、必要があると認められるときは工期若しくは請負代金額を変更し、又は受注者に損害を及ぼしたときは必要な費用を負 担しなければならない。 | ⚫ 設計図書の変更内容の可否。 ⚫ 工期若しくは請負代金額の変更、受注者の損害額について協議が不調だった場合。 | ✓ 設計変更の可否に関する発注者・受注者の主張・見解及び事実確認 ✓ 設計変更の可否と対応方法に関する参考見解・意 見の提示 | ○ | ||
第 20 条 工事の中止 | 工事用地等の確保ができない等のため又は暴風、豪雨、洪水、高潮、地震、地すべり、落 盤、火災、騒乱、暴動その他の自然的又は人為的な事象(以下「天災等」という。)であっ | ⚫ 工事目的物が損害を受けた際の責任の所在。 ⚫ 工事現場の状態が変動した場合 | ✓ 工事目的物が損害の原因の確認 ✓ 工事目的物の損害が受注者の責めによらない場 | ○ | ||
て受注者の責めに帰すことができないものにより工事目的物等に損害を生じ若しくは工事 | 合の対応方法に関する参考見解・意見の提示 | |||||
現場の状態が変動したため、受注者が工事を施工できないと認められるときは、発注者は、 | ||||||
工事の中止内容を直ちに受注者に通知して、工事の全部又は一部の施工を一時中止させな | ||||||
ければならない。 3 発注者は、前二項の規定により工事の施工を一時中止させた場合において、必要があ ると認められるときは工期若しくは請負代金額を変更し、又は受注者が工事の続行に備え工事現場を維持し若しくは労働者、建設機械器具等を保持するための費用その他の工事の | ✓ 工事現場の状態が変動した原因の確認 ✓ 工事現場の状態によって工事中止せざる得ない場合の対応方法に関する参考見解・意見の提示 | ○ | ||||
施工の一時中止に伴う増加費用を必要とし若しくは受注者に損害を及ぼしたときは必要な | ||||||
費用を負担しなければならない。 | ||||||
第 21 条 受注者の請求による工期の延長 | 受注者は、天候の不良、第二条の規定に基づく関連工事の調整への協力その他受注者の責めに帰すことができない事由により工期内に工事を完成することができないときは、その理由を明示した書面により、発注者に工期の延長変更を請求することができる。 2 発注者は、前項の規定による請求があった場合において、必要があると認められるときは、工期を延長しなければならない。発注者は、その工期の延長が発注者の責めに帰すべき事由による場合においては、請負代金額について必要と認められる変更を行い、又は 受注者に損害を及ぼしたときは必要な費用を負担しなければならない。 | ⚫ 工期内に工事を完成できない責任の所在。 ⚫ 工期延長に伴う増加費用、受注者が損害を被った費用の算定。 | ✓ 工期内に工事を完成できない原因の確認 ✓ 工期内に工事を完成できない場の対応方法に関する参考見解・意見の提示 | ○ | ||
第22条 発注者の請求による工期の短縮等 | 発注者は、特別の理由により工期を短縮する必要があるときは、工期の短縮変更を受注者に請求することができる。 2 発注者は、この約款の他の条項の規定により工期を延長すべき場合において、特別の理由があるときは、延長する工期について、通常必要とされる工期に満たない工期への変更を請求することができる。 3 発注者は、前二項の場合において、必要があると認められるときは請負代金額を変更 し、又は受注者に損害を及ぼしたときは必要な費用を負担しなければならない。 | ⚫ 工期短縮に伴う受注者が被った費用の算定。 | ✓ 工期短縮に伴う発注者の対応方法に関する参考見解・意見の提示 | ○ |
未然防止:トラブルの未然防止のための業務、早期解決:トラブルの早期解決のための業務 定常的作業:事前に作業量が想定できる作業内容、非定常的作業:事前に作業量の想定が難しい作業内容
表 11 主なトラブル要因と第三者の実施内容例(2/2)
条項 | 条文 | 主なトラブル要因例 | 第三者の実施内容例 | 未然防止 | 早期解決 | |
定常的作業 | 非定常的作業 | 非定常的作業 | ||||
第23条 工期の変更方法 | 工期の変更については、発注者と受注者とが協議して定める。ただし、協議開始の日から○日以内に協議が整わない場合には、発注者が定め、受注者に通知する。 2 前項の協議開始の日については、発注者が受注者の意見を聴いて定め、受注者に通知するものとする。ただし、発注者が工期の変更事由が生じた日(第二十一条の場合にあっては発注者が工期変更の請求を受けた日、前条の場合にあっては受注者が工期変更の請求を受けた日)から○日以内に協議開始の日を通知しない場合には、受注者は、協議開始の日を定め、 発注者に通知することができる。 | ⚫ 工期変更に係る解釈の相違。 | ✓ 工期変更の原因の確認 ✓ 工期変更に関する参考見解・意見の提示 | ○ | ||
第24条(A) 請負代金額の変更方法等 | 請負代金額の変更については、数量の増減が内訳書記載の数量の百分の○を超える場合、施工条件が異なる場合、内訳書に記載のない項目が生じた場合若しくは内訳書によることが不適当な場合で特別な理由がないとき又は内訳書が未だ承認を受けていない場合にあっては変更時の価格を基礎として発注者と受注者とが協議して定め、その他の場合にあっては内訳書記載の単価を基礎として定める。ただし、協議開始の日から○日以内に協議が整わない場合 には、発注者が定め、受注者に通知する。 | ⚫ 施工条件の変更に係る解釈の相違。 ⚫ 内訳書によることが不適当あるかどうかの解釈の相違。 | ✓ 現場の施工条件の確認 ✓ 請負代金額の変更に関する参考見解・意見の提示 | ○ | ||
第25条 賃金又は物価の変動に基づく請負代金額の変更 | 発注者又は受注者は、工期内で請負契約締結の日から十二月を経過した後に日本国内における賃金水準又は物価水準の変動により請負代金額が不適当となったと認めたときは、相手方に対して請負代金額の変更を請求することができる。 2 発注者又は受注者は、前項の規定による請求があったときは、変動前残工事代金額(請負代金額から当該請求時の出来形部分に相応する請負代金額を控除した額をいう。以下この条において同じ。)と変動後残工事代金額(変動後の賃金又は物価を基礎として算出した変動前残工事代金額に相応する額をいう。以下この条において同じ。)との差額のうち変動前残工事代金額の千分の十五を超える額につき、請負代金額の変更に応じなければならない。 5 特別な要因により工期内に主要な工事材料の日本国内における価格に著しい変動を生じ、請負代金額が不適当となったときは、発注者又は受注者は、前各項の規定によるほか、請負代金額の変更を請求することができる。 6 予期することのできない特別の事情により、工期内に日本国内において急激なインフレーション又はデフレーションを生じ、請負代金額が著しく不適当となったときは、発注者又は受注者は、前各項の規定にかかわらず、請負代金額の変更を請求することができる。 7 前二項の場合において、請負代金額の変更額については、発注者と受注者とが協議して定 める。ただし、協議開始の日から○日以内に協議が整わない場合にあっては、発注者が定め、受注者に通知する。 | ⚫ 賃金水準・物価水準等の変動後の単価の設定方法。 ⚫ 賃金水準・物価水準等の変動に係る解釈の相違。 | ✓ 賃金水準・物価水準等の設定方法の確認 ✓ 賃金水準・物価水準等の設定方法に関する参考見解・意見の提示 ✓ 賃金水準・物価水準等の変動状況の確認 ✓ 変動が大きい場合の対応方法に関する参考見解・意見あるいは裁定(案)の提示 | ○ | ○ | ○ |
第27条 一般的損害 | 工事目的物の引渡し前に、工事目的物又は工事材料について生じた損害その他工事の施工に関して生じた損害(次条第一項若しくは第二項又は第二十九条第一項に規定する損害を除 く。)については、受注者がその費用を負担する。ただし、その損害(第五十一条第一項の規定により付された保険等によりてん補された部分を除く。)のうち発注者の責めに帰すべき事 由により生じたものについては、発注者が負担する。 | ⚫ 工事目的物の損害等の責任の所在。 ⚫ 受注者あるいは発注者が負担すべき費用に係る解釈の相違 | ✓ 工事目的物の損害等の原因の確認 ✓ 損害額の算定に関する参考見解・意見の提示 | ○ | ||
第29条 不可抗力による損害 | 工事目的物の引渡し前に、天災等(設計図書で基準を定めたものにあっては、当該基準を超えるものに限る。)発注者と受注者のいずれの責めにも帰すことができないもの(以下この条において「不可抗力」という。)により、工事目的物、仮設物又は工事現場に搬入済みの工事材料若しくは建設機械器具に損害が生じたときは、受注者は、その事実の発生後直ちにその状況を発注者に通知しなければならない。 2 発注者は、前項の規定による通知を受けたときは、直ちに調査を行い、同項の損害(受注者が善良な管理者の注意義務を怠ったことに基づくもの及び第五十一条第一項の規定により付された保険等によりてん補された部分を除く。以下この条において「損害」という。)の状況を確認し、その結果を受注者に通知しなければならない。 3 受注者は、前項の規定により損害の状況が確認されたときは、損害による費用の負担を発 注者に請求することができる。 | ⚫ 工事目的物の損害等に対する責任の所在。 ⚫ 損害に対する費用負担に係る解釈の相違 | ✓ 工事目的物の損害等の原因の確認 ✓ 損害額の算定に関する参考見解・意見の提示 | ○ |
未然防止:トラブルの未然防止のための業務、早期解決:トラブルの早期解決のための業務 定常的作業:事前に作業量が想定できる作業内容、非定常的作業:事前に作業量の想定が難しい作業内容
参考資料 4. 公正・中立な第三者の活用に関する様式例
様式例-A 公正・中立な第三者の活用に関する申出書
⚫ 発注者あるいは受注者から、契約の相手方の一方に、第三者の活用を申し出る場合に提出する書面である。
様式例-B 公正・中立な第三者の活用に関する合意書
⚫ 受発注者及び第三者の間において、第三者の業務内容・報酬その他を規定した書面で、合意書への署名・押印によって三者契約の締結となる
様式例-C トラブルに発展する可能性のある事案の報告書
⚫ 第三者が契約図書・施工計画書、工事進捗等のチェックにおいて、トラブルに発展する可能性を確認した場合に受発注者へ報告する書面である。
様式例-D(1) 参考見解・意見、裁定の依頼書
⚫ トラブルの事案、トラブルに発展する可能性のある事案に対して、その事案の内容を記載し、第三者に参考見解・意見あるいは裁定を依頼する場合に提出する書面である。
様式例-D(2) 参考見解・意見、裁定の再依頼書
⚫ 第三者による参考見解・意見あるいは裁定において、受発注者間の協議・調整に不十分と判断された場合に、第三者に対して、再度、参考見解・意見あるいは裁定を依頼する場合に提出する書面である。
様式例-E(1) 参考見解・意見、裁定の提案書
(受発注者からの依頼書に基づく提案の場合)
⚫ 受発注者からの依頼に基づき、第三者が参考見解・意見あるいは裁定を提案する場合に、その内容を記して提出する書面である。
様式例-E(2) 参考見解・意見、裁定の再提案書
⚫ 受発注者からの再依頼に基づき、第三者が参考見解・意見あるいは裁定を最提案する場合に、その内容を記して提出する書面である。
様式例-E(3) 参考見解・意見、裁定の提案書
(受発注者からの依頼書に基づかない提案の場合)
⚫ 第三者がトラブルに発展する可能性を確認し、受発注者からの依頼書の提出がなく、第三者自らが参考見解・意見あるいは裁定に提案する書面である。
様式例-F 現地訪問・ヒアリング 業務日誌の記載例
⚫ 現地訪問・ヒアリング後、第三者が活動内容や協議内容等を記録するための業務日誌の標準的な記載例である。
図 15 第三者活用における様式例の流れ
様式例-A
平成 年 月 日
公正・中立な第三者の活用に関する申出書
本工事請負契約の履行にあたり、下記の内容によって、公正・中立な第三者(以下、「第三者」という。)を活用することを申し出ます。
1. 申出人
代表者 : 印
申立者 :
住所 :
電話番号 :
E-mail :
2. 対象となる工事
工事名称 :
工事場所 :
契約の相手方 :
3. 指名する第三者(申出において第三者を指名できる場合)
所属先 | : |
氏名 | : |
住所 | : |
連絡先 | 電話: E-mail: |
職種 | : |
専門分野 | : |
担当地区 | : |
第三者の業務内容・報酬その他は、申出人と契約の相手方による協議によって定め、「公正・中立な第三者の活用に関する合意書」(以下、「合意書」という。)にその内容をとりまとめるものとします。なお、合意書の内容について第三者との間で合意が得られない場合、申出人と契約の相手方によって、第三者の業務内容・報酬その他を協議した上で、改めて合意書を作成する、あるいは本申出書を破棄し、他の第三者を指名した上で、改めて申出書を提出します。
様式例-B
公正・中立な第三者の活用に関する合意書
工事名及び内容: 詳細は別紙 1 のとおり
発注者名及び住所: 受注者名及び住所: 公正・中立な第三者の氏名及び住所:
:
上記の工事における発注者及び受注者は、工事の契約に際し、公正・中立な第三者(以下「第三者」という。)として業務を行う者を連名で任命する。
第三者は、「公正・中立な第三者の活用に関する合意書」(以下「本合意書」という。)に定められた内容について合意する。
発注者、受注者及び第三者は、連名で以下の項目について合意をする。
1. 公正・中立な第三者の活用に関する合意書は、次の各項目及び別紙 2 の一般条件をもって構成されるものとする。
2. 第三者の業務内容は、次の各号に掲げるとおりとする。
① 発注者又は受注者からの求め(様式例-D(1))に応じ、トラブルに発展する可能性のある事案について、契約内容及び技術的観点から参考見解・意見を述べること(様式例-E(1))。
③ 本合意直後及び第 4 項に定める業務期間中、工事の図面など契約関係図書の閲覧や契約当事者から受ける現地の状況説明を通じて、施工途中でトラブルに発展する可能性のある事案についてあらかじめ把握し、契約当事者にその旨ならびに内容を通知すること(様式例
-C)。
④ 発注者又は受注者からの求め(様式例-D(1))に応じ、契約図書や工事の実施に関する疑義について、契約内容及び技術的観点からの参考見解・意見あるいは裁定を述べること(様式例-E(1))。
② 発注者又は受注者からの求め(様式例-D(1))に応じ、現に発生しているトラブルの事案について、契約内容及び技術的観点から裁定を述べること(様式例-E(1))。
⑤ ②~④の業務に付帯する業務
3. 第三者は、本合意書に従って第 2 項に定める業務を行うものとする。また、弁護士法第 72
条に基づく法律事務を行わないものとする。
4. 第三者の業務期間は、平成 年 月 日から工事完了日までとする(平成 年 月 日までに工事が完了しない場合は、平成 年 月 日までとする)。
5. 第三者は、受発注者と第三者間での書面合意がない限り、第三者が第 2 項の業務として行った活動又は省略された活動について、それらが不誠実なものでない限り、いかなる責任も問われない。
※枠内は、「トラブルの可能性確認のための業務」(オプション業務)を含む場合
6. 第三者に対する報酬は、発注者・受注者による等分負担とし、一般条件第 6 条の規定に基づくものとする。
平成 年 月 日
(発注者) (受注者) (第三者)
印 印 印
(別紙 1)
「公正・中立な第三者の活用」に関する対象工事について
1. 工事名 :
2. 施工場所 :
3. 発注者 :
4. 受注者 :
5. 工事内容:
① 工事概要 :
② 工事請負額(税込) : 円
③ 工期 :平成 年 月 日~平成 年 月 日
④ その他特記事項 :
(別紙 2)
公正・中立な第三者の活用に関する合意書の一般条件
(定義)
第 1 条 「公正・中立な第三者の活用に関する合意書(以下「本合意書」という。)」は、以下の当事者間で締結された三者間契約である。
(a)発注者
(b)受注者
(c)公正・中立な立場の第三者(以下「第三者」という。)
2 本合意書における用語及び表現は、他に定義されていない限り、本合意書の対象となる工事請負契約(以下、「対象契約」という。)に定義された用語及び表現と同じ意味を有する。
(a)トラブルとは、発注者と受注者とが協議して定めるものについて、受発注者間の意見の相違及び協議が整わなかった事案を指す。
(b)参考見解・意見とは、第三者の専門的な知見・経験に基づき、トラブルに発展する可能性のある事案に対して、第三者が示す今後の対応方法・手段その他
(c)裁定とは、第三者の専門的な知見・経験に基づき、現に発生しているトラブルの事案に対して、第三者が提案する具体的な合意内容の提案。
(d)なお、上記、参考見解・意見及び裁定は、受発注者間の協議・調整において、制限を与えるものではない。
(一般規定)
第 2 条 本合意書は、発注者、受注者及び第三者によって、三者契約及び契約の内容が合意された日をもって効力を発するものとする。
2 第三者の任命は個人の学識経験に基づいて行われるものとする。
(表明保証条項)
第 3 条 第三者は、自身が中立であり、発注者及び受注者から独立していることを保証し、かつ、これに合意する。第三者は、本合意書の締結時及び締結後を通じて、中立性又は独立性に関する保証や合意に矛盾する事実又は状況がある場合には、発注者、受注者に速やかにその旨を開示するものとする。
(第三者の一般義務)
第 4 条 第三者は、以下の要件を満たしていなければならない。
(a)発注者又は受注者との間に財務上その他の利害関係を持たず、また、対象契約に関してなんら財務上の利害関係を持たないこと。
(b)発注者又は受注者により、コンサルタントその他として雇用された経験がないこと。ただし、本合意書の締結前に当該雇用された経験が発注者及び受注者に書面で開示された場合を除く。
(c)発注者及び受注者が書面で合意する場合を除き、本合意書による業務期間中、発注者又は受注者によってコンサルタントその他として雇用されていないこと。
(d)この一般条件及び別添の手続規則を遵守すること。
(e)この一般条件及び別添の手続規則に従う場合を除くほか、本合意書に基づく業務の実施に関して発注者若しくは受注者又はこれらの役職員に助言をしないこと。
(g)現行の作業ファイルに保管する受理書類は熟読し、対象契約や工事の進捗(必要に応じて、対象契約がその一部であるプロジェクトの他の部分についても)に精通しているこ
と。
(f)現地訪問・ヒアリングの依頼があった場合は、受発注者と実施内容、実施日等を調整した上で、全ての現地訪問に対応できること。
(h)対象契約の詳細及び第三者の活動は機密扱いとし、発注者及び受注者との事前の文書による同意がないときは、これらを公表し、又は開示しないこと。
(i)発注者及び受注者の双方から要請があったときは、対象契約に関する事項について助言及び意見を与えられる状態にしておくこと。
(j)本合意書に基づく活動を行う場合、発注者あるいは受注者の一方とのみと協議その他行動があってはならない。
(発注者及び受注者の一般義務)
第 5 条 発注者及び受注者は、発注者及び受注者の役職員それぞれにこの一般条件書を遵守させなければならない。
2 発注者及び受注者は、以下の行為を行わないものとする。ただし、発注者、受注者及び第三者が書面で別途合意する場合はこの限りでない。
(a)対象契約に基づく仲裁の仲裁委員として第三者を選定すること。
(b)対象契約に関する紛争について第三者に対する証人尋問の実施を求めること。
(c)第三者に意図的な不誠実がある場合を除き、本合意書に基づく第三者の業務に関して第三者の責任を追求すること。
(d)発注者あるいは受注者の一方のみで、第三者と協議その他行動を同じにすること。
3 発注者及び受注者は、連帯して、第三者が前項(c)により責任を負わない請求から第三者を補償し、被害が及ばないようにする。
(支払い)
第 6 条 発注者及び受注者は、本合意書に基づく第三者の業務について、以下の規定に基づき報酬を支払うものとする。
本合意書の 2 項①~②に示す業務ならびに別添手続規定第 1 に規定する業務の遂行(以下、
「現地訪問」という。)の報酬・費用として、以下の時間報酬・費用を支払うものとする。
(a)作業に要した報酬は、時間単価 円(発注者・受注者及び第三者による協議の上で設定)とする。
(b)なお、現地訪問・ヒアリングのための移動に要する時間を現地訪問の活動時間に含めるかは、発注者・受注者及び第三者との協議の上で別途定めるものとする。
(c)現地訪問・ヒアリング時の交通費は、第三者の自宅から現地訪問地までの実費精算とし、航空機・列車・船舶その他の移動手段による費用は、通常料金(運賃)とする。なお、第三者は、交通費の請求にあたり、移動手段について契約期間中に可能な範囲で領収書を提出すること。
(d)現地訪問が複数日にわたる場合、第三者の宿泊費用は、 円/泊(発注者・受注者及び第三者による協議の上で設定)を上限として支払う。
2 月あたりの基本報酬として、以下の報酬を支払うものとする。
(a)本合意書の 2 項③~④に示す業務に対する月あたりの基本報酬は、月額受注者及び第三者による協議の上で設定)とする。
円(発注者・
(b)本合意書の効力が当該月の 1 日から始まる場合、当該月の基本報酬は全額支払われるも
のとする。なお、本合意書の効力が当該月の 2 日以降から始まる場合、基本報酬を日割りによって算定した金額を支払うものとする。
(c)本合意書の終了が当該月の末日の場合、当該月の基本報酬は全額支払われるものとする。なお、本合意書の終了が当該月の末日以前の場合、基本報酬を日割りによって算定した
金額を支払うものとする。
(e)本合意書の 2 項①~②に示す業務ならびに現地訪問に要するその他費用は、発注者・受注者及び第三者との協議の上で別途定めるものとする。
3 第三者への報酬の支払い日及びその方法は、発注者及び受注者と第三者との協議の上で別途定めるものとする。
(合意書の終了)
第 7 条 本合意書は、発注者、受注者及び第三者の合意により、合意によって定めた日をもって終了させることができる。
2 発注者及び受注者は、第三者が本合意書の義務の遵守を怠った場合、第三者の資質等が十分ではないと判断された場合において、発注者及び受注者が第三者に対して 日前(1~2週間程度の中で、三者による合意で取り決めた期間を入れる)までに通知することにより、発注者及び受注者が定めた日をもって本合意書を終了させることができる。
3 第三者は、発注者又は受注者が本合意書の義務を怠った場合、発注者及び受注者に対して日前(1~2 週間程度の中で、三者による合意で取り決めた期間を入れる)までに通知す
ることにより、第三者が定めた日をもって本合意書を終了させることができる。
(第三者の義務不履行時の対応)
第8 条 発注者又は受注者は、第三者が本合意書の義務を遵守しなかったことに気付いた場合、速やかに発注者又は受注者の他方に通知するものとする。
(三者間契約における紛争処理)
第 9 条 本合意書の違反、解約、終了もしくは有効性においてあるいはこれらに関連して生じる全ての紛争は、仲裁により終局的に解決されるものとする。なお、仲裁は、「 仲裁規定」
(発注者・受注者及び第三者による協議の上で設定)に従って行われるものとする。仲裁地は
「 」(発注者・受注者及び第三者による協議の上で設定)とし、仲裁人の数は 名とする
(発注者・受注者及び第三者による協議の上で設定)。
(第三者による契約内容及び技術的観点からの参考見解・意見、裁定)
第 10 条 発注者又は受注者は、契約図書及び工事の実施に関し疑義が生じたときは、第三者 に対し、この条項の規定に基づくことを記載した文書(様式例-D(1))をもって、当該疑義に関 する契約内容及び技術的観点からの参考見解・意見あるいは裁定を提示するよう(様式例-E(1))、発注者又は受注者は依頼することができる。
3 第三者は、発注者及び受注者が定めた期日までに、この条項の規定に基づくものであることを明記した文書をもって、発注者及び受注者の双方に対し参考見解・意見あるいは裁定を提示する(様式例-E(1)(2))ものとする。なお、発注者及び受注者が定めた期日までに参考見解・意見あるいは裁定の提示が困難な場合、発注者・受注者及び第三者による協議の上で期日を設定する。
4 第三者は、対象契約や現地・工事進捗等の把握・分析からトラブルに発展する可能性のある事案が認められるときは、発注者及び受注者から参考見解・意見あるいは裁定の求めがない場合でも、あらかじめ発注者及び受注者との合意があれば、発注者及び受注者の双方に対して参考見解・意見あるいは裁定を提示できるものとする(様式例-E(2))。
5 発注者又は受注者は、第三者から前項の提示を受けた後、なお設計図書及び工事の実施に関し疑義があるときは、速やかに、第三者に対し、この条項の規定に基づくことを記載した文書(様式例-D(2))をもって、第三者から提示された参考見解・意見あるいは裁定によっては解消されない疑義について、更なる参考見解・意見あるいは裁定を提示するよう、依頼することができる(様式例-E(2))。
6 第 1 項及び第 2 項の規定は、前項の依頼を行う場合に準用する。
7 発注者及び受注者は、第三者から第 3 項又は第 4 項の規定による参考意見の提示(様式例
-E(1)(2)(3))があったときは、相互の意見交換等を通じて、第 1 項に規定する疑義を解消するよう努めるものとする。
2 発注者及び受注者は、第三者からの求めに応じ、共同で、第三者が第1項に規定する参考見解・意見あるいは裁定の提示を行うために必要とする追加的な情報を発注者・受注者及び第三者によって定めた期日までに提供し、現地訪問・ヒアリングへの対応その他の適切な便宜の利用ができるようにするものとする。
8 この条の規定に従って第三者が行った参考意見の提示は、仲裁その他の法律事務の取扱又は仲裁その他の法律事務の周旋と解してはならず、発注者及び受注者の協議・調整において実行の拘束力を有しないものとする。
9 トラブルが発生した場合、第三者に対して参考見解・意見あるいは裁定を求めずに、請負契約書第 52 条に規定された建設工事紛争審査会によって解決を図ってはならない。ただし、以下に示す場合はその限りではない。
(a)第三者から、自らの専門的な知見・経験に基づき、参考見解・意見あるいは裁定を提案できない旨の回答があった場合。
(b)三者契約の解除について、受発注者又は第三者から通知を行っている場合。
別添 手続規則
1 第三者による現地訪問・ヒアリングの実施日・間隔・回数等は、発注者・受注者及び第三者による協議の上で、別途定めるものとする。
2 各現地訪問・ヒアリングの議事項目は、受発注者からの要請の内容、自らが現地訪問・ヒアリングの必要性を認めた内容に基づき、第三者が決定するものとする。
3 現地訪問・ヒアリングには、発注者、受注者ならびに当該トラブルに関する者が同伴する。現地訪問・ヒアリングに必要な調整は、受注者の協力を得て発注者が行う。発注者は、適当な会議施設、事務サービス及び複写サービスを提供する。第三者は、現地訪問・ヒアリングが終了し現地を離れる前に、当該現地訪問・ヒアリングにおける活動について業務日誌を作成し、その内容を三者において確認し、三者で内容を合意した場合は、業務日誌に三者で署名し、各々が保管する。
4 発注者及び受注者は、契約図書、進捗報告書、変更指示書、各種証明書、その他契約の遂行に関連する文書など、第三者が請求した書類全部の写し(一部)を第三者に提出する。第三者と発注者又は受注者との間の連絡は、第三者、発注者及び受注者による別段の合意がある場合を除き、書面又は電子メールによるものとし、すべて他方の契約当事者に写しを送らなければならない。
様式例-C
平成 年 月 日
○○○○建設工事
発注者: 殿受注者: 殿
トラブルに発展する可能性のある事案の報告書(第 回)
本請負契約の履行にあたり、「公正・中立な第三者の活用に関する合意書」の 2 項の規定に基づき、下記の内容について、発注者及び受注者に対してトラブルに発展する可能性のある事案の内容を報告します。
1. トラブルに発展する可能性のある事案が確認された資料等
2. トラブルに発展する可能性のある事案の内容
○○○○建設工事 公正・中立な第三者
印
様式例-D(1)
平成 年 月 日
○○○○建設工事 公正・中立な第三者
○○ ○○ 殿
参考見解・意見、裁定の依頼書(第 回)
本請負契約の履行にあたり、「公正・中立な第三者の活用に関する合意書」の 2 項の規定に基づき、下記の内容について、公正・中立な第三者(以下、「第三者」という。)に対して、専門的な知見に基づいた参考見解・意見、裁定の提案を依頼します。
依頼人 発注者: 印受注者: 印
3. 参考見解・意見、裁定を求める事案
4. 回答期限
本依頼書の回答の期限は、平成 年 月 日とします。この回答期限の遵守が困難な場合、その理由と回答可能な期日について、回答期限の 日前までに書面(書式自由)にて回答してください。
5. 添付資料
資料 1 :
資料 2 :
資料 3 :
資料 4 :
資料 5 :
※「参考見解・意見」「裁定」のうち、該当しない方を消して使用すること。
様式例-D(2)
平成 年 月 日
○○○○建設工事 公正・中立な第三者
○○ ○○ 殿
参考見解・意見、裁定の再依頼書(第 回)
本請負契約の履行にあたり、「公正・中立な第三者の活用に関する合意書の一般条件」の第 10 条第 5 項の規定に基づき、下記の内容について、公正・中立な第三者(以下、「第三者」という。)に対して、「参考見解・意見、裁定の提案書」(第 回、平成 年 月 日付)に基づく参考見解・意見、裁定の提案内容について、トラブルのある事案が解消されない疑義があるため、以下に示す理由により再依頼するものです。
依頼人 発注者: 印受注者: 印
1. 参考見解・意見、裁定を求める事案、解消されない疑義の内容
2. 回答期限
本依頼書の回答の期限は、平成 年 月 日とします。この回答期限の遵守が困難な場合、その理由と回答可能な期日について、回答期限の 日前までに書面(書式自由)にて回答してください。
3. 添付資料
資料 1 :
資料 2 :
資料 3 :
資料 4 :
資料 5 :
※「参考見解・意見」「裁定」のうち、該当しない方を消して使用すること。
様式例-E(1)
平成 年 月 日
○○○○建設工事
発注者: 殿受注者: 殿
公正・中立な第三者による参考見解・意見、裁定の提案書(第 回)
本請負契約の履行にあたり、「公正・中立な第三者の活用に関する合意書」の 2 項の規定に基づき、「参考見解・意見の依頼書」(第 回、平成 年 月 日付)に対し、下記のとおり参考意見解・意見、裁定を提案します。
1. 依頼事項に対する参考見解・意見、裁定
2. 添付資料
資料 1 :
資料 2 :
資料 3 :
資料 4 :
資料 5 :
様式例-E(2)
平成 年 月 日
○○○○建設工事
発注者: 殿受注者: 殿
公正・中立な第三者による参考見解・意見、裁定の再提案書(第 回)
本請負契約の履行にあたり、「公正・中立な第三者の活用に関する合意書の一般条件」の第 10 条第 5 項の規定に基づき、「参考見解・意見の再依頼書」(第 回、平成 年 月 日付)に対し、下記のとおり参考意見解・意見、裁定を再提案します。
1. 依頼事項に対する参考見解・意見、裁定
2. 添付資料
資料 1 :
資料 2 :
資料 3 :
資料 4 :
資料 5 :
様式例-E(3)
平成 年 月 日
○○○○建設工事
発注者: 殿受注者: 殿
公正・中立な第三者による参考見解・意見の提案書(第 回)
公正・中立な第三者を活用する対象工事について、「公正・中立な第三者の活用に関する合意書の一般条件」第 10 条第 4 項の規定に基づき、請負契約の内容、施工条件等に関して課題・留意すべき事項が以下のとおりあるものと考えるため、これに対して、参考見解・意見を提案します。
1. 請負契約の内容、施工条件等に対する参考見解・意見
【上記に対する参考見解・意見】
【請負契約の内容、施工条件等に関する課題・留意すべき事項】
2. 添付資料
資料 1 :
資料 2 :
資料 3 :
資料 4 :
資料 5 :
○○○○建設工事 公正・中立な第三者
印
※枠内は、「トラブルの可能性確認のための業務」(オプション業務)を含む場合
様式例-F
○○○○建設工事
公正・中立な第三者による現地訪問
(第 回)
業務日誌
平成 年 月 日
公正・中立な第三者 ○○ ○○
【業務日誌の記載内容の例:当初訪問】
公正・中立な第三者による現地訪問・ヒアリング(第 1 回)
(1) 現地訪問の概要 現地訪問の日時:会議場所 :
出席者 :
議事内容 :
会議資料 :
(2) 会議内容
議題 1. 合意書の内容確認
•
•
議題 2. 工事概要及び契約内容の説明
•
•
•
議題 3. 現地視察
•
•
議題 4. 契約内容又は現地・施工条件に対する参考見解・意見、裁定
•
議題 5. 情報交換ルールの確認
•
【発注者】
【第三者】
【発注者】
【受注者】
【第三者】
【第三者】
【受注者】
【第三者】
【発注者】
本業務日誌は、公正・中立な第三者が作成し、その内容を下記の三者によって確認・合意したものである。
発 注 者 | 受 注 者 | 第 三 者 |
印 | 印 | 印 |