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政策法務ニュースレター
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２０１１年 早春・特別号
民 法 契 約 講 習 会
xxxx://xxx.xxxx.xxxxx.xx.xx/xxxxxx/xxxxxxxx/xxxxxxxxxx/xxxxx.xxxx
★本 号 の x x★
契約の基礎
地方公共団体を当事者とする契約
契約書作成の落とし穴 ～事例から学ぶ～
xx県 総務部 政策法務課
政策法務x x庁舎６Ｆ電 話 ０４３－２２３－２１５７ ＦＡＸ ０４３－２０１－２６１２
Ｅメール xxxxx00@xx.xxxx.xxxxx.xx.xx
平成２３年２月７日に、xxxx法律事務所のxxxx弁護士を講師にお招きして、民法契約講習会を行いました。約 2 時間の講習会の概要を紹介します。
【 自 己 紹 介 】
以前、県庁に在籍していた。当時の先輩や上司もいるので心苦しいところもあるが、本日は弁護士としての経験や勉強してきたことを伝えられればと思う。
契 約 の 基 礎
１ 契約とは？
(１) 契約の意義 ――――――――-
契約とは、自分ではできないこと、できるけれども低コストで実施したいことを、代わりにしてもらうことを相手方と約することである。
行政は、私人と違って行政処分により一方的に相手方を動かすこともできる。しかし行政処分は、相手方の意に反してでも相手方の権利義務を変動させるものなので、なんでもできるわけではない。また、法令の根拠も必要となるので、機動的に対応できない面もある。よって、行政においても、契約で相手方を動かすべき場面が多く存在するのである。
(2) 契約による拘束 ―――――――
人は自らの約束にのみ拘束されるという原則を「私的自治の原則」といい、このことから契約により相手方に動くことを要求できる。
例えば売買契約の場合、もし物を引き渡さなかったとしても、勝手に相手方の家から物を持ってくることはできない。これを「自力救済禁止の原則」という。ではどうするかというと、裁判で争って主張が認められれば、国（裁判所）が強制執行をして代わりに目的を実現させてくれる。
(3) 契約自由の原則 ―――――――
契約の中身は、原則として相手方との合意により自由に決められる。これを「契約自由の原則」という。契約を締結するか否か、誰と契約するか、石ころを百万円で購入するか、契約を口頭でするかなども、本来は自由なのである。
(4) 契約自由原則の制約 ―――――
しかし、すべてが自由というわけではない。愛人契約などの「公序良俗」に反するものは無効である。また、借地借家法９条が、同法の一部の規定に反して借地権者に不利となる契約は無効である、と定めているように、契約条項を無効としてしまう「強行規定」もある。
なお、強行規定の反対概念として、「任意規定」というものが存在する。法律の規定と異なる契約条項があるときは、その条項が優先され、法律を適用しないものである。例えば民法４７４条には第三者弁済（子供の借金を親が返済するような場合）について規定されているが、同条ただし書には反対の意思表示があったときはこ
の限りでない、とも規定されている。
もっとも、強行規定か任意規定か、法律の条 文上はっきり書かれていないことが少なくない。この場合は個々の法律の趣旨によって解釈する ことになるが、判断が難しいときは『注釈民法』などの本を参照するとよい。
２ 私法上の契約
(1)契約の分類 ――――――――-―
契約は、その内容によって様々に分類することができる。「有名契約」は民法に規定されている１３類型の契約であり、「無名契約」はそれ以外の当事者の合意で成立する契約である。
「双務契約」は当事者が互いに何かを要求する、対価関係にある契約であり、「片務契約」はその一方がなく、対価関係にない契約（例：贈与）をいう。
「諾成契約」は“売る”“買う”といった意思表示の合致のみで成立する契約であり、「要物契約」は民法５８７条に規定する消費貸借契約のように、実際に金銭等の授受があって成立する契約をいう。
契約の種類によって法律規定の適用の有無が決まることもあるので、基本的な分類については知っておいてほしい。
(2)契約の成立 ―――――――――
契約は、申込みという意思表示と相手方の承諾という「意思表示の合致」があって成立する。
１０００万円で売るという申込みに対して、
５００万円で買うという承諾があっても、意思表示が合致していないので契約は成立しない。
(3)契約の効力 ―――――――――
契約が成立すると、原則として相手方に何かを請求できる「債権」という権利が発生する。契約が売買契約であれば、物を所有できる権利 (所有権)などの「物権」という権利にも変動が生じる。大まかにいえば、債権は人を支配し、物権は物を支配する権利である。
(4)契約の瑕疵 ―――――――――
契約に効力を持たせるための要件を「一般的有効要件」というが、次のような要件では契約の効力が認められない。例えば、「いいものをあげる。」という契約は「いいもの」が何なのか確定性がない。「月を持ってくる。」という契約には実現可能性がない。先ほど例に挙げたように借地借家法の強行規定に反する契約には適法性がない。「一緒に犯罪行為をしましょう。」とい
う契約には社会的妥当性がない。
地方公共団体を当事者とする契約
１ 私人間の契約との違い
(1)契約自由の原則の修正 ――――
地方公共団体を当事者とする契約については、法令により一般私人以上に契約自由の原則が 様々な制約を受ける。例えば地方自治法２３４ 条には、契約は一般競争入札、指名競争入札、 随意契約又はせり売りの方法により締結する、 とされている。また、同法２３４条の２には契 約の履行を確保するための監督や検査が義務付 けられており、xx県財務規則９６条１項には 契約の内容に応じて契約書に記載しなければな らない事項が列挙されている。
(2)要綱と契約 ―――――――――
補助金要綱による契約をする場合に、注意してもらいたい点がある（なお、自治体の補助金は、一般に負担付贈与契約であると解されている）。要綱は法律や条例と違って法規ではないので、それのみで相手方や裁判所を拘束することはできない。したがって、要綱に詳細な契約内容が記載されていても、契約書にその内容が記載されておらず、相手方にその内容を知らないと主張された場合は、要綱の内容が契約内容となっていると思わない方がよいだろう。なぜなら、相手方が知りようもないことについて意思の合致があったと裁判所が判断するとは考えにくいからである。したがって、意思の合致があったことを明白にするため、契約書に割印をして要綱を添付しておくとよい。
(3)議会の議決 ―――――――――
地方自治法９６条には、一定の金額以上の契約や不動産の信託など、議会の議決が必要となる契約が列記されている。議決が必要なのに議決を経ないで契約してしまうと、その契約は無効となる。条文に「契約」という用語が使われていなくても契約の存在を前提とするものが列記されているので、注意してほしい。
契約締結について、実務上は、議決までの間
に翻意しないように相手方を拘束する必要があるので、仮契約書を作成しておいて議決後に本契約を結んだり、又は議決があったときに効力を有する、という停止条件付きの契約を結んで対応することになる。
２ 契約書の作成
(1)契約書の意義 ――――――――
契約の目的は相手方を動かすことなので、どうやって相手を動かすかを明確にするため、契約書の作成が求められる。
また、契約は守られるのが前提だが、守られずに紛争が生じてしまった場合には裁判所に持ち込まれる。裁判所は事実の有無を認定して、これに法律を当てはめて判断することになる。しかし、裁判所もxxx象を把握しているわけではないので、事実自体は当事者が立証しなければならず、その主張する事実に証拠がない場合は事実として採用されないことがある。そこで、契約書には、契約内容の解釈に争いが生じたときのための証拠にするという意義もある。
なお、地方公共団体の場合は、住民への説明責任を果たすという公共的意義もある。
(2)留意事項 ――――――――――
契約書作成に当たって留意してもらいたい事項を、５つほど提示する。
１つ目は、こう言っては何だが、相手方を信用しないことである。契約が守られなかったとしても次に進めるように、契約書中に手段を用意しておく必要がある。
２つ目は、契約書に記載のないことは相手方にさせることはできないと心得ておくことである。たしかに契約に定めのない場合でも適用できる任意規定（例：民法５７０条に規定する瑕疵担保責任）もあるが、必ずしもこちらに有利に解釈されるとは限らない。したがって、相手方にさせたいことは契約書に定めた方がよい。
３つ目は、解釈に争いが生じないようにするため、契約文言は可能な限り明確に記載することである。
４つ目は、“If～,then～”（もし～なら～であ る）を意識することである。If は要件で then は 効果であり、こういう要件を満たしたら、こう いう効果が発生する、という文体になる。法律 の条文もほとんどがこのような形になっている。
５つ目は、“5W1H”を意識することである。
「行為の主体は？」「契約期間は？」「履行場所は？」「契約の中身は？」「どんな方法？」― これらをきちんと定めないと望んだ結果が得られないこともある。
(3)契約の主体 ―――――――――
【県側】
契約の主体は法人たる県だが、契約を結べるのは誰か。財務規則９６条１項本文には「契約担当者は、契約をしようとするときは…」とあり、同規則２条９号に契約担当者は「知事又は第９５条に規定する事務の委任を受けた者」と規定されている。さらに同規則９５条には「…契約の締結を、かい長に委任する。」とある。つまり、知事又はかい長が契約担当者となる。これ以外の者が契約を結ぶと、権限がないのに契約を結んだことになってしまう。
契約書における当事者の記載は、どこの誰かをアイデンティファイする必要がある。知事権限の場合、本庁舎の住所、法人であるxx県、代表者である知事の氏名を記載しなければならない。ただ、法人である「xx県」は意思表示ができないので、代表権を有する機関である知事の氏名を記載することになる。
【相手側】
会社も法人であり、取締役や代表取締役の役員がいるが、相手方が会社の場合は代表権が誰にあるのかを調査しなければならない。例えば代表取締役がいるのに取締役と契約を結んでしまった場合、無効となる。
相手方が権利能力なき社団の場合、厄介である。訴訟能力はあるが法人格はないため、誰が代表者なのかもわかりづらく、原則として社団名義の財産も保有できないので、仮に訴訟で勝っても強制執行ができないことがよくある。よって、代表者などを当事者に加え、その個人保証も求めておいた方がよい。
契約書作成の落とし穴
～ 事例から学ぶ ～
ある委託契約書を事例として、契約書作成に当たってのスキルを教えていただきました!!
記載事項に漏れはないか？
財務規則９６条１項に、契約金額や履行期限など契約書に記載しなければならない事項が定められている。これらは、きちんと記載しなければならない。
仕様書はどうするの？
何をやるかという本体債務はかなり詳細な規定になるので、別の仕様書に書いておくのも一つの方法である。この場合、仕様書も契約書に割印をして添付しておかないと意思の合致がないとみなされるおそれがある。
約束違反にどう対処する？
契約が守られなかったらどうするかを定めることが必要である。「お金を払え」「なかったことにする」という２つの方法を発動できる要件を明確に定めておくべきである。すなわち、違約金や解除について、きちんと定めるべきなのである。
したがって、端的にいうと「守らせるものは何か」「守らなかったらどうするか」をきちんと定めることが大事である。さらに、契約中や契約後に生じるトラブルについても定めておくことが必要である。
例えば、業務に着手すべき時期を過ぎても着 手しないときは契約を解除できるとの条項が規 定されているが、契約書にも仕様書にも「業務 に着手すべき時期」が明記されていない場合は、解除権の行使が困難である。また、損害賠償に 関する規定はあるが、賠償額は「協議して定め る」となっていた場合、どうなるか。相手方と 解釈が一致せず、又は協議が調わない場合には これらの条項がうまく機能しなくなってしまう。
本講習会には、約１３０名のxx県職員が参加しました。
xx先生には、有意義な御講義をいただき、また、事後質問にも丁寧にお答えいただきました。深く感謝申し上げるとともに、今後とも御指導
のほど、よろしくお願い申し上げます。
そもそも解除の規定が契約書になかったらどうなるか。この場合、原則として法律の規定により、相当の期間を定めて催告をしても履行しないことが解除要件となる。これを債権者である県が立証するのは大変なので、きちんと機能するように契約書に解除要件等を定めておく必要がある。
再委託は怖い！
業務委託契約の場合、再委託を禁止する条項を入れるのが一般的である。これは、委任契約
は再委任が禁止されていると解されているが、請負契約は下請が禁止されていないため、業務委託契約の性質が請負契約だと判断されると、およそ県の知りえない業者にまで下請けに出されるかもしれないからである。こうなると個人情報などが漏出してしまう可能性が高くなるので、契約ではっきりと禁止する必要があるのである。
「疑義」⇒「協議」でいいの？
「この契約書に定めのない事項又は疑義の生 じた事項については、甲乙協議してこれを定め る。」との条項をよく目にする。そもそもすべて のことを明確に規定していれば、この条項は不 要なはずである。協議不調の場合、結局裁判に なってしまうし、この条項が入っていることに より、明確な条項も明確でないと主張されてし まうおそれがあることを踏まえておいてほしい。
「立証責任」を制する！
損害賠償規定についても、裁判所の立証責任ルールから、その規定の仕方によって県に不利になってしまうことがある。一番良いのは、「債務不履行があったら○○円賠償する」と規定しておくことであり、そうすれば県としては相手方に債務不履行があったことのみ証明すればよいことになる。これでは相手方が承諾しない場合は、「債務不履行があったら損害として相当な範囲を賠償する」と規定するのでもよいだろう。
県側が過重な立証負担を強いられるような契約条項の作成は、回避すべきである。
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皆さんは善意を持って公務員として働いてい るのにこのようなことを言うのは申し訳ないが、相手方を信用しないで契約を結ぶのが基本的な 姿勢だと言える。