Contract
1. 第一号事業・対象不動産変更型契約(匿名組合契約型)モデル約款の解説
対象不動産変更型契約(匿名組合契約型)不動産特定共同事業契約約款
不動産特定共同事業法(平成 6 年法律第 77 号、その後の改正を含む。以下「法」という。)第 2 条第 5項に規定される不動産特定共同事業者である○(以下「本事業者」という。)と (以下「本出資者」という。)は、以下のとおり合意し、ここに同条第 3 項に規定される不動産特定共同事業契約(以下「本契約」という。)を締結する。
■前提条件
① 本モデル約款は、第一号事業者の対象不動産変更型契約(施行規則第 11 条第 1 項に定義される。
以下同じ。)に関する不特法第 2 条第 3 項第 2 号に掲げる契約に係る約款(第一号事業・対象不動産変更型契約(匿名組合契約型)約款)である。本モデル約款は、対象不動産変更型契約を想定しない第一号事業・匿名組合契約型モデル約款を基礎とし、対象不動産変更型契約の約款として必要な追加・変更を行ったものである。
② 本モデル約款は、基本的に、不動産特定共同事業者が、各事業参加者との間で匿名組合契約を締結し、事業参加者からの出資金をもって第三者又は不動産特定共同事業者の固有財産から開発後の完成物件を対象不動産として取得し、当該対象不動産の賃貸及び売却等を行う事業のうち、対象不動産の入れ替えを行いながら長期的に運用を行うものを想定して作成している。また、平成 29 年の不特法改正により、特例投資家のみを事業参加者とする不動産特定共同事業契約であって、当該不動産特定共同事業契約により当該不動産特定共同事業契約上の権利義務を他の特例投資家に譲渡 する場合以外の譲渡が禁止される旨の制限が付されている場合には、約款規制は適用されなくなったため、事業参加者は特例投資家以外の投資家(以下、「一般投資家」という。)を想定している。
③ 本モデル約款別紙 1 物件目録には、いわゆる開発型の仕組みを想定して新築建物に関する記載欄も設けているが、対象不動産の開発を想定した約款を作成する場合には、約款本体においても開発に関する条項を追加するなど、対象不動産の開発を踏まえた約款の内容にする必要がある。
④ 不動産特定共同事業者は、事業参加者からの出資によって不動産特定共同事業に係る資金調達を行うことを想定しており、本モデル約款は不動産特定共同事業に係る資金調達のために金融機関等から借入れを行うことを前提にした内容にはなっていない。不動産特定共同事業についてレバレッジを効かせるための借入れを行うことを想定した約款にする場合には、これを踏まえた約款の内容にする必要がある。
⑤ 本モデル約款においては、事業参加者及び不動産特定共同事業者の出資について優先劣後構造を採用しない場合と、事業参加者の出資を優先出資とし、不動産特定共同事業者の出資(その意味については第 2 条第 3 項の解説で述べる。)を劣後出資にするという優先劣後構造を採用する場合の条項案を記載している。これは、第一号事業・匿名組合契約型の約款については、従前の実務において、事業参加者の利回りや元本の安全性を確保するためにこのような優先劣後構造を採用する例が多かったことを踏まえたものである。なお、実際の約款の作成にあっては、優先劣後構造を採用しない場合又は優先劣後構造を採用する場合のいずれかを選択し、必要のない記載は削除されることを想定しており、1 つの約款に優先劣後構造を採用する場合の規定と採用しない場合の規定の双方を記載することは想定していない。また、事業参加者の出資について複数に階層を分け、各階層の事業参加者間に優先劣後構造を採用することも考えられるが、この場合には、各階層の事業参加者との間の契約に係る約款を、相互に関連させた内容にしてそれぞれ作成することになると考えられる。
■前文の解説 旧標準約款には前文は記載されていなかったが、本モデル約款には前文を記載している。 これは、本モデル約款の○部分及び空欄部分(下線部分)に必要な記載を追記することによって、そのまま不動産特定共同事業契約に係る契約書(以下、「個別契約書」という場合がある。)として利用できるようにするためである。 前文においては、不動産特定共同事業者及び本契約の不特法上の位置付けを明確にしているほか、一般的な契約書における前文の内容を踏まえた内容にしている。 本事業者の名称については約款作成時に○の箇所に具体的に記載し、本出資者の名称については約款作成時には空欄のままにしておき、個別契約書の作成時に具体的な記載をすることを想定している。 なお、本モデル約款においては、約款記載事項として「欄」を記載すべきとされているもののほか(第 1 条第 2 項の解説参照)、約款作成時に具体的な記載をすることが想定されない事項については空欄にしており、約款作成時に具体的な記載をすることも可能な事項については○としている。○とされている箇所であっても、約款作成時に必ずしもすべて具体的な記載をしなければならないものではないが、箇所によっては、約款の審査にあたり、具体的な記載をすることを求められる可能性がある。 | |
(本契約及び本事業) 第 1 条 本契約は、法第 2 条第 3 項各号に掲げる契約の種別のうち、同項第 2 号に規定する不動産特定共 同事業契約とする。また、本契約は、商法(明治 32 年法律第 48 号、その後の改正を含む。以下同じ。)第 535 条に規定する匿名組合契約とする。 【施行令第 6 条第 1 項第 1 号、施行規則第 11 条第 2 項第 1 号】 【法第 25 条第 1 項第 1 号】 2 本事業者は、別紙 1 記載の不動産(以下「変更前対象不動産」という。)及び本契約に従い追加取得する不動産を本契約に係る不動産取引の目的となる不動産(以下「対象不動産」という。)として、本契約に基づく不動産特定共同事業(以下「本事業」という。)を行うものとする。 【施行令第 6 条第 1 項第 2 号、施行規則第 11 条第 2 項第 2 号イ】 【法第 25 条第 1 項第 2 号、施行規則第 47 条第 3 項第 1 号】 | ■第 1 条の解説 第 1 条は、本契約の契約の種別や性質、及び本事業の概要について規定する。 1. 第 1 項について 不動産特定共同事業者の約款には、不特法第 2 条第 3 項各号に掲げる契約の種別に関する事項とし て、不特法第 2 条第 3 項各号に掲げる契約の種別のいずれに該当するかを明示して記載する必要があ る(施行令第 6 条第 1 項第 1 号及び施行規則第 11 条第 2 項第 1 号)。 契約成立時交付書面には、不動産特定共同事業契約の第 2 条第 3 項各号に掲げる契約の種別を記載 する必要がある(不特法第 25 条第 1 項第 1 号)。 第 1 条第 1 項前段は、本契約が不特法第 2 条第 3 項第 2 号に規定する不動産特定共同事業契約であることを明記することによって、これらの約款記載事項及び契約成立時交付書面記載事項について規定するものである。 また、第 1 条第 1 項後段においては、本契約が商法第 535 条に規定する匿名組合契約であることを記載することによって、本契約の法的性質を確認している。かかる規定によって、本契約について、本契約に記載される内容のほか、商法第 2 編第 4 章の規定やこれに係る判例が適用されることが明らかになる。 2. 第 2 項について 約款には、不動産特定共同事業契約に係る不動産取引の目的となる不動産の特定に関する事項として、不動産特定共同事業契約を締結するときに対象不動産の所在、地番、用途、土地面積、延べ床面積その他の対象不動産を特定するために必要な事項を記載する欄(対象不動産変更型契約にあっては、変更前の対象不動産に関するものに限る。)を記載する必要がある(施行令第 6 条第 1 項第 2 号 及び施行規則第 11 条第 2 項第 2 号イ)。 第 1 条第 2 項は、本契約における不動産取引の目的となる不動産が別紙 1 記載の不動産であること |
を明示すると共に、別紙 1 において、当該対象不動産の所在、地番、用途、土地面積、延べ床面積そ | |
の他の変更前の対象不動産を特定するために必要な事項を記載する欄を設けることにより、かかる約 | |
款記載事項について規定するものである。 | |
契約成立時交付書面には、不動産特定共同事業契約に係る不動産取引の目的となる不動産を特定す | |
るために必要な表示として、対象不動産の所在、地番、用途、土地面積、延べ床面積その他の対象不 | |
動産を特定するために必要な表示に関する事項を記載する必要がある(不特法第 25 条第 1 項第 2 号 | |
及び施行規則第 47 条第 3 項第 1 号)。 | |
個別契約書の作成時に別紙 1 の各項目に当該契約における対象不動産に関する具体的な記載をす | |
ることによって、かかる契約成立時交付書面記載事項が充足されることになる。 | |
なお、施行規則第 47 条第 3 項第 1 号には、施行規則第 11 条第 2 項第 2 号イと異なり、「対象不動 | |
産変更型契約にあっては、変更前の対象不動産に関するものに限る。」との記載はない。もっとも、 | |
対象不動産変更型契約において、契約成立時に変更後の対象不動産を特定することは不可能であるこ | |
と、同項第 15 号において追加取得する不動産に係る事項について別途約款記載事項とされているこ | |
と、また、施行規則第 47 条第 3 項第 1 号に掲げる事項は施行規則第 11 条第 2 項第 2 号イに掲げる事 | |
項に対応し、個別契約書作成時に同号イに定める「欄」に具体的な記載をすることを想定した規定と | |
考えられることからすると、同号イと同様に、対象不動産変更型契約において記載するべきなのは、 | |
変更前の対象不動産に関するものに限られると解される。 | |
また、第 1 条第 2 項は、本契約の対象となる匿名組合事業が別紙 1 の不動産及び本契約に従い追加 | |
取得する不動産を対象不動産として不動産取引を行う不動産特定共同事業であることを明らかにす | |
るものでもある。対象不動産変更型契約の約款においては、将来追加取得する不動産も対象不動産に | |
なるため、別紙 1 に記載することになる変更前の対象不動産を「変更前対象不動産」と定義し、変更 | |
前対象不動産と将来追加取得する不動産を合わせた本事業における投資資産としての不動産全体を | |
「対象不動産」と定義している。 | |
3. 施行規則の改正について | |
平成 29 年の改正前の施行規則第 8 条第 2 項第 2 号ロにおいては、「売買、交換又は賃貸借のいずれ | |
の方法により対象不動産の取引を行うかが明示されているもの」であることが約款記載事項とされて | |
いたが、同改正によってかかる規定は削除された。したがって、本モデル約款においては、旧標準約 | |
款と異なり、この点についての直接的な記載は行っていない。 | |
(出資) | |
第 2 条 本事業に対する出資予定総額は金 円とし、本出資者は、本事業に対して 金 円(出資予定総額に対する出資の割合: %)を出資するものとし、 年 月 日までに本事業者に対し出資金を支払うものとする。本契約に基づき出資された金額を以下「本出資額」と | ■第 2 条の解説 第 2 条は、本出資者による出資等について規定する。 1. 第 1 項について |
いう。 | 本契約は、出資を伴う契約のうち金銭をもって出資の目的とする契約であるため、約款に、不動産 |
【施行令第 6 条第 1 項第 4 号、施行規則第 11 条第 2 項第 4 号イ】 | 特定共同事業契約に係る財産の管理に関する事項として、本契約を締結するときに支払期日又は支払 |
【施行規則第 47 条第 2 項第 6 号ニ】 | 期限及び出資総額の限度額又は出資予定総額を記載する欄を設ける必要がある(施行令第 6 条第 1 項 |
2 本事業者は、本事業につき、本出資者以外の出資者と別途、前項に定める出資の金額、出資金の支払期 | 第 4 号、施行規則第 11 条第 2 項第 4 号イ)。 |
日及び出資予定総額に対する出資の割合を除いて本契約と同一内容の匿名組合契約を締結の上、出資を受 | 第 2 条第 1 項は、これを踏まえ、本出資者の出資金の支払期限及び出資予定総額を記載する欄を規 |
けることができるものとする。
3 本事業者は、本事業を行うにあたり、第 1 項及び第 2 項に基づき受けた出資と併せて自らの資金を利用することができるものとし、当該資金は本事業に対する本事業者の出資とみなすものとする。
4 本出資者は、本事業に追加して出資する義務を負わない。
【施行令第 6 条第 1 項第 4 号、施行規則第 11 条第 2 項第 4 号ニ】
5 本事業者は、本出資者に本出資額の返還を保証する義務を負わない。本出資者及び本事業者は、本出資額の返還について保証されたものではないことをここに確認する。
【施行規則第 11 条第 1 項第 2 号、同条第 2 項第 10 号イ】
【施行規則第 47 条第 2 項第 10 号、同条第 3 項第 3 号イ】
6 本事業に係る損失は、第 8 条第 4 項に基づき、本出資者に帰属する。但し、本出資者の損失の分担額は、本出資額を限度とする。
【施行規則第 11 条第 1 項第 2 号】
【施行規則第 47 条第 2 項第 10 号】
7 本事業に関して本事業者が取得した対象不動産その他の資産の所有権は、全て本事業者に帰属するものとし、本契約の定めに従って金銭の支払を受けることができることを除き、本出資者は、本事業に帰属する財産の全てについて所有権その他いかなる権利も有しない。
【施行規則第 11 条第 1 項第 1 号、同条第 2 項第 9 号】
【施行規則第 47 条第 2 項第 9 号】
8 本事業に係る第三者に対する債務は本事業者が負担し、本出資者は、本事業に関して、第三者に対し、債務を負担しない。
【施行規則第 47 条第 2 項第 6 号ロ】
定したものである。
なお、平成 29 年の改正により、施行規則の文言が「表示」から「欄」に変更されたため、支払期限の日付及び出資予定総額の金額を記載する箇所を空欄としている。
本契約は、出資を伴う契約のうち金銭をもって出資の目的とする契約に該当するため、契約成立時交付書面記載事項として、事業参加者の出資額又は出資の限度額及び出資予定総額に対する出資の割合に関する事項を記載する必要がある(施行規則第 47 条第 2 項第 6 号ニ)。
第 2 条第 1 項は、これを踏まえ、本出資者の出資額及び出資予定総額に対する出資の割合を記載する欄も設けることにより、個別契約書の作成時にかかる欄に具体的な金額及び割合を補充することによって当該契約成立時交付書面記載事項が充足されるようにしている。
平成 29 年の施行規則の改正によって、「出資額又は出資の限度額」及び「出資予定総額に対する出資の割合」は約款記載事項ではなくなったため、これらを約款に記載する必要はなくなった。しかし、これらは新たに契約成立時交付書面記載事項として追加されているため、本モデル約款のように約款の空欄に具体的な記載を補充することによって個別契約書を作成し、当該契約書をもって契約成立時交付書面とすることを想定する場合には、約款にこれらを記載する欄も設ける必要があるので留意されたい。
第 2 条第 1 項第 2 文の「本出資額」の定義について、対象不動産変更型契約においては、追加募集
による出資も想定されることから、対象不動産変更型契約を想定しない 1 号事業・匿名組合契約型モデル約款とは異なり、「本項に基づき出資された金額」ではなく、「本契約に基づき出資された金額」としている。
2. 第 2 項について
第 2 条第 2 項は、本事業者が、本事業に関し、他の事業参加者との間でも基本的に本契約と同一内容の匿名組合契約を締結し、出資を受けることを注意的に規定するものである。
なお、匿名組合契約においては、各匿名組合員が営業者との間で締結する契約はそれぞれ別個独立の契約であり、他の匿名組合契約の効力は本契約の効力に影響を及ぼさない。
対象不動産変更型契約においては追加募集により他の匿名組合契約が締結されることも想定されるところ、当該他の匿名組合契約における出資については出資金の支払期日が異なることから、かかる点についても同一ではない事項として記載している。
3. 第 3 項について
第 2 条第 3 項は、出資予定総額の出資金が集まらない場合において本事業者が資金を負担することによって本事業を行ったり、優先劣後構造を採用するために本事業者が劣後出資に相当する資金を負担したりするための規定である。本事業者は、営業者として本事業を行うため、匿名組合契約上の概念としては出資を行う立場ではないが、本事業に係る損益の分配等において本事業者の負担した金銭をxxに評価するため、出資とみなすものとしている。
なお、本モデル約款において、優先劣後構造を採用した場合には、かかる出資は劣後出資として扱うこととしている(第 8 条第 4 項第(1)号①)。
4. 第 4 項について
不動産特定共同事業契約においてあらかじめ定められた出資又は費用の額を超えて負担を求める
場合にあっては、その要件及び事業参加者の同意に係る手続その他これに準ずるxxな手続に関する定めが約款記載事項となる(施行令第 6 条第 1 項第 4 号、施行規則第 11 条第 2 項第 4 号ニ)。
そのため、かかる要件及びxxな手続に関する定めを約款に記載することによって、事業参加者に一定限度の追加出資義務を課す内容の特約を規定することも可能である。
しかし、本モデル約款においては、本出資者に追加出資義務を負わせないこととし、追加出資の要件及びxxな手続に関する定めは置いていない。
5. 第 5 項について
本契約は出資を伴う契約であるため、元本の返還について保証されたものではない旨を明示することが約款記載事項及び契約成立時交付書面記載事項となる(施行規則第 11 条第 1 項第 2 号、同条第
2 項第 10 号イ、施行規則第 47 条第 2 項第 10 号、同条第 3 項第 3 号イ)。
第 2 条第 5 項前段は、本事業者の義務という観点からこの旨を規定するものであり、同項後段は、約款記載事項及び契約成立時交付書面記載事項をxxに記載する観点から、当該事項を当事者間で確認する旨の規定を設けたものである。
6. 第 6 項について
不動産特定共同事業契約に係る不動産取引から損失が生じた場合における当該損失の負担に関する事項は、約款記載事項であり、かつ、契約成立時交付書面記載事項でもある(施行規則第 11 条第
1 項第 2 号、施行規則第 47 条第 2 項第 10 号)。
第 2 条第 6 項は、本事業における損失の負担について、本事業に係る損益の分配の規定である第 8
条第 4 項を引用し、また、本事業における出資者の損失の分担について、出資の額を限度とすることを定めることによって、かかる約款記載事項及び契約成立時交付書面記載事項が充足されるようにするものである。
第 2 条第 6 項但書の規定により、出資の額を超える損失が発生した場合、本出資者に対しては出資の額の限度で損失が帰属することになり、出資の額を超える部分の損失は営業者たる本事業者(なお、みなし出資の出資者としての本事業者ではない。)の負担となる。
7. 第 7 項について
約款には、対象不動産の所有権の帰属に関する事項として、対象不動産の所有権の帰属する主体に関する定めを規定する必要がある(施行規則第 11 条第 1 項第 1 号、同条第 2 項第 9 号)。
また、契約成立時交付書面についても、同様に、対象不動産の所有権に関する事項を記載する必要がある(施行規則第 47 条第 2 項第 9 号)。
匿名組合においては、匿名組合員の出資は営業者の財産に属し(商法第 536 条第 1 項)、営業者が
自己の営業としてその事業を遂行するものであるから(商法第 535 条及び第 536 条第 3 項)、匿名組合事業に係る財産はすべて営業者に帰属することになる。
第 2 条第 7 項は、これらを踏まえ、対象不動産のみならず、本事業に関し本事業者が取得する財産について、本事業者に帰属し、本出資者は所有権その他の権利を有しないことを確認的に規定するものである。
8. 第 8 項について
契約成立時交付書面には、事業参加者の第三者に対する責任の範囲を記載する必要がある(施行規
則第 47 条第 2 項第 6 号ロ)。 匿名組合における匿名組合員は、匿名組合事業について第三者に対する義務を負わないのが原則である(商法第 536 条第 4 項)。 第 2 条第 8 項は、これらを踏まえ、事業参加者が第三者に対して債務を負担しないことを確認的に 規定するものである。 | |
(追加募集)【施行規則第 47 条第 2 項第 15 号】 第 2 条の 2 本事業においては、本契約及び本事業につき締結された他の匿名組合契約(以下「他の匿名組合契約」という。)に追加して行う本事業に係る匿名組合契約の締結の勧誘(以下「追加募集」という。)を予定する。 【施行規則第 11 条第 1 項第 7 号、同条第 2 項第 15 号へ】 2 本事業者は、第 9 条に定める本契約の契約期間において、追加募集を行い、第 2 条第 1 項に規定される出資予定総額を超えて、新たな出資金を募ることができる。本事業者は、別紙 3 記載の追加募集の手続に従い、追加募集を行うものとする。 【施行規則第 11 条第 1 項第 7 号、同条第 2 項第 15 号ト(2)】 3 本事業者は、追加募集を行う場合、追加募集を行う日の[14]日前までに、本出資者に対し、以下の内容を記載した書面を交付し、又は当該書面に記載すべき事項を電磁的方法(不動産特定共同事業法施行規則 (平成 7 年大蔵省・建設省令第 2 号、その後の改正を含む。以下「規則」という。)第 11 条第 2 項第 15 号ロに定義する。以下同じ。)により提供する。 (1) 当該追加募集に係る募集予定総額 (2) 当該追加募集の方法 (3) 出資された財産により対象不動産を追加取得する場合には、当該対象不動産の所在、地番、用途、土地面積、延べ床面積その他の当該対象不動産を特定するために必要な表示 (4) 当該対象不動産により行う不動産取引の方法 【施行規則第 11 条第 1 項第 7 号、同条第 2 項第 15 号ト(1)】 [4 追加募集に係る募集額の累計額の上限は別紙 3 第(3)号のとおりとし、本事業者は、当該累計額の上限を超えて追加募集を行う場合、別紙 3 第(4)号の手続を行った上で、追加募集を行うものとする。] 【施行規則第 11 条第 1 項第 7 号、同条第 2 項第 15 号ト(3)】 5 本出資者及び本事業者は、追加募集を直接の原因として当該追加募集の開始前から本出資者が有する本契約上の地位の価格が変動するおそれがあること、及び想定されるその変動の概要が別紙 3 第(5)号に記載されるとおりであることを確認する。 【施行規則第 11 条第 1 項第 7 号、同条第 2 項第 15 号ト(4)】 | ■第 2 条の 2 の解説 第 2 条の 2 は、追加募集について規定する。 1. 第 1 項について 対象不動産変更型契約の約款には、対象不動産の変更に係る手続に関する事項として、追加募集の予定の有無に関する定めを規定する必要がある(施行規則第 11 条第 1 項第 7 号、同条第 2 項第 15 号ヘ)。 対象不動産変更型契約においても、対象不動産の追加取得のための原資として対象不動産の売却代金等を利用することを想定し、追加募集を予定しないことも考えられるが、本モデル約款においては、対象不動産の追加取得をするために追加募集をすることを想定している。 第 2 条の 2 第 1 項は、これらを踏まえ、追加募集を予定する旨を規定したものである。 2. 第 2 項について 第 2 条の 2 第 2 項第 1 文は、本事業において、本事業者が、追加募集により、出資予定総額を超えて新たな出資金を募集することができることを明示するものである。 追加募集を予定する場合、対象不動産変更型契約の約款には、対象不動産の変更に係る手続に関する事項として、追加募集に係る募集額の決定方法、当該追加募集の方法その他の当該追加募集に係る公正な手続に関する定めを規定する必要がある(施行規則第 11 条第 1 項第 7 号、同条第 2 項第 15 号ト(2))。 第 2 条の 2 第 2 項第 2 文は、これを踏まえて、追加募集の手続を別紙 3 に記載する内容により行う ことを規定したものである。別紙 3 には、追加募集に関し、募集額の決定方法、募集の方法などについて公正な手続を規定する必要がある。 3. 第 3 項について 追加募集を予定する場合、対象不動産変更型契約の約款には、対象不動産の変更に係る手続に関する事項として、不動産特定共同事業者等は、追加募集を開始する前に、事業参加者に対し、当該追加募集に係る募集予定総額、当該追加募集の方法、出資された財産により追加取得する対象不動産の所在、地番、用途、土地面積、延べ床面積その他の当該対象不動産を特定するために必要な表示及び当該対象不動産により行う不動産取引の方法を記載した書面を交付する旨又は当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供する旨の定めを規定する必要がある(施行規則第 11 条第 1 項第 7 号、 同条第 2 項第 15 号ト(1))。 また、追加募集は、当該書面を交付し又は当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供した日から原則として 2 週間以上の期間をおいて行うこととされる(国交省事務ガイドライン第 3-2(1) ⑪及び金融庁事務ガイドライン 7-2-2(1)⑪)。 |
第 2 条の 2 第 3 項は、これらを踏まえ、本事業者の本出資者に対する書面の交付等に係る義務を規 | |
定するものである。 | |
4. 第 4 項について | |
追加募集を予定する場合で、かつ、追加募集に係る募集額の累積額の上限額を定める場合、対象不 | |
動産変更型契約の約款には、対象不動産の変更に係る手続に関する事項として、不動産特定共同事業 | |
契約の締結をするときに当該累計額の上限を記載する欄及び当該累計額の上限を超える追加募集を | |
行う場合の手続に関する定めを規定する必要がある(施行規則第 11 条第 1 項第 7 号、同条第 2 項第 | |
15 号ト(3))。 | |
第 2 条の 2 第 4 項は、これを踏まえて、別紙 3 第(3)号及び第(4)号に追加募集に係る募集額の | |
累計額の上限を記載する欄及び当該累計額の上限を超える追加募集を行う場合の手続を定めること | |
によって、かかる約款記載事項について規定するものである。 | |
追加募集に係る募集額の累積額の上限を定めることは必須ではなく、これを定めない場合には本項 | |
並びに別紙 3 第(3)号及び第(4)号を規定する必要はない。 | |
5. 第 5 項について | |
追加募集を予定する場合、対象不動産変更型契約の約款には、対象不動産の変更に係る手続に関す | |
る事項として、追加募集を直接の原因として当該追加募集の開始前から事業参加者である者が有する | |
不動産特定共同事業に係る権利の価格が変動するおそれがある旨の定め及び不動産特定共同事業契 | |
約の締結をするときに想定されるその変動の概要を記載する欄を規定する必要がある(施行規則第 | |
11 条第 1 項第 7 号、同条第 2 項第 15 号ト(4))。 | |
第 2 条の 2 第 5 項は、これを踏まえて、かかる定めについて記載し、また、別紙 3 第(5)号に当 | |
該変動の概要を記載する欄を定めることによって、かかる約款記載事項について規定するものであ | |
る。 | |
6. 契約成立時交付書面記載事項について | |
対象不動産変更型契約の契約成立時交付書面には、対象不動産の変更に係る手続に関する事項を記 | |
載する必要がある(施行規則第 47 条第 2 項第 15 号)。 | |
第 2 条の 2 第 1 項ないし第 5 項は、かかる契約成立時交付書面記載事項を規定するものでもある。 | |
(対象不動産の取得) | |
第 3 条 本事業者は、第 2 条第 1 項及び第 3 項並びに他の匿名組合契約に基づき出資された金銭をもって、 | ■第 3 条の解説 |
年 月 日までに変更前対象不動産を金 円で取得する。但し、本事業者は、本出資者 に対して書面又は電磁的方法により通知することにより、合理的な範囲内で当該期限を変更することがで | 第 3 条は、本事業者による対象不動産の取得等について規定する。 1. 第 1 項について |
きるものとする。 | 本契約は、出資を伴う契約のうち金銭をもって出資の目的とする契約であるため、約款において、 |
【施行令第 6 条第 1 項第 2 号、施行規則第 11 条第 2 項第 2 号ハ】 | 不動産特定共同事業契約に係る不動産取引の内容に関する事項として、対象不動産の取得の予定時期 |
【施行令第 6 条第 1 項第 4 号、施行規則第 11 条第 2 項第 4 号ロ】 | に関する定め(対象不動産変更型契約にあっては、変更前の対象不動産に関するものに限る。)を記 |
2 本事業者は、前項に定める期限までに変更前対象不動産のいずれかを取得できなかった場合には、本契 | 載する必要がある(施行令第 6 条第 1 項第 2 号、施行規則第 11 条第 2 項第 2 号ハ)。 |
約及び他の匿名組合契約に基づく出資の総額(以下「出資総額」という。)のうち、当該変更前対象不動産 | 第 3 条第 1 項は、これを踏まえ、変更前の対象不動産の取得の予定時期について規定するものであ |
により営むことを予定していた不動産取引を行うのに必要な額として出資された金員を、出資総額に対す | る。なお、変更前の対象不動産の取得の予定時期については、約款の作成時に具体的な日付を記載す |
る本出資額の割合(以下「出資割合」という。)に応じて本出資者に返還するものとする。
【施行令第 6 条第 1 項第 2 号、施行規則第 11 条第 2 項第 2 号ハ】
3 本事業においては、対象不動産の変更を予定する。
【施行令第 6 条第 1 項第 2 号、施行規則第 11 条第 2 項第 2 号ロ】
4 本事業者は、別紙 2 記載の対象不動産の追加取得の方針に従い、対象不動産の追加取得を相当と判断するときは、追加募集に基づき出資された金銭、対象不動産の売却等(当該対象不動産の売却等により本契約が終了するものを除く。)により得られた金銭(以下「特定金銭」という。)、不動産特定共同事業の業務に係る金銭以外の金銭(以下「業務外金銭」という。)、その他の本事業に係る資産に属する金銭をもって、対象不動産を追加取得することができる。
【施行規則第 11 条第 1 項第 7 号、同条第 2 項第 15 号イ(1)及び(2)】
【施行令第 6 条第 1 項第 4 号、施行規則第 11 条第 2 項第 4 号ロ】
【施行規則第 47 条第 2 項第 15 号】
5 本事業者は、対象不動産の追加取得にあたり、本出資者に対し、当該対象不動産の鑑定評価額又は近傍同種の不動産の取引価格等を示す客観的な資料を添付した書面により、当該追加取得の価格が当該資料に示される価格と比して合理的な価格(当該資料に示される価格を 1 割以上上回らない価格であること、又は当該資料に示される価格を 1 割以上上回る価格であるものの当該価格につき合理的な理由のあることをいう。)であることを説明するものとする。
【施行規則第 11 条第 1 項第 7 号、同条第 2 項第 15 号イ(5)】
【施行規則第 47 条第 2 項第 15 号】
6 本事業者は、対象不動産の追加取得をしたときは、対象不動産を追加取得した日から 30 日以内に、本出資者に対し、以下の内容を記載した書面を交付し、又は当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供する。
(1) 追加取得に係る対象不動産の所在、地番、用途、土地面積、延べ床面積その他の当該対象不動産を特定するために必要な表示
(2) 当該対象不動産の追加取得をした日
(3) 当該対象不動産の追加取得の価格
(4) 当該対象不動産の譲渡人と本事業者との関係
(5) 当該対象不動産の追加取得をした日における財産の状況
(6) 当該対象不動産により営む不動産取引の方法、修繕費、損害保険料その他の当該対象不動産を管理するために必要な費用の負担に関する事項
(7) 当該対象不動産の売却等の予定の有無及び当該対象不動産の売却等を予定する場合における当該対象不動産の売却等の手続
【施行規則第 11 条第 1 項第 7 号、同条第 2 項第 15 号二】
【施行規則第 47 条第 2 項第 15 号】
ることはできないため、日付についてはこれを記載する欄を設けている。
また、約款においては、不動産特定共同事業契約に係る財産の管理に関する事項として、出資又は賃貸若しくは賃貸の委任の目的である財産を、当該不動産特定共同事業契約に係る不動産取引により運用する旨を明示して記載する必要がある(施行令第 6 条第 1 項第 4 号、施行規則第 11 条第 2 項第
4 号ロ)。
本モデル約款においては、本契約及び他の匿名組合契約に基づき当初出資される金銭を、変更前の対象不動産の取得、賃貸及び売却等によって運用する事業を想定している。第 3 条第 1 項は、これらのうち本契約及び他の匿名組合契約に基づき当初出資される金銭が変更前の対象不動産の取得に充てられることを明示するものであり、対象不動産の追加取得について定める第 3 条第 4 項、対象不動
産の賃貸について定める第 4 条第 2 項及び対象不動産の売却等について定める第 5 条とあいまって、かかる約款記載事項が充足されることになる。
本契約締結後に事情の変更があり、本項に記載した予定時期までに変更前の対象不動産を取得できなくなることも考えられる。この場合、第 3 条第 2 項により、当該対象不動産により営むことを予定していた不動産取引を行うのに必要な額として出資された金員を本出資者に対して返還する必要が生ずることになる。もっとも、変更前の対象不動産の取得が一時的に遅延した場合などにおいては、出資された金員の返還を行うのではなく、予定時期を延期し、本事業を遂行することが合理的な場合も考えられる。そこで、但書を設け、本事業者が書面又は電磁的方法によって通知することにより、合理的な範囲内でかかる予定時期を変更できることにしている。
2. 第 2 項について
本契約は、出資を伴う契約のうち金銭をもって出資の目的とする契約であるため、約款に、不動産特定共同事業契約に係る不動産取引の内容に関する事項として、予定時期までに取得できなかった対象不動産がある場合においては、当該対象不動産により営むことを予定していた不動産取引を行うのに必要な額として出資された額について出資総額に対する出資の割合に応じて事業参加者に対し返還する旨その他これに準ずる公正な定めを(対象不動産変更型契約にあっては、変更前の対象不動産に関するものに限る。)記載する必要がある(施行令第 6 条第 1 項第 2 号、施行規則第 11 条第 2 項第
2 号ハ)。
第 3 条第 2 項は、かかる約款記載事項を規定するものである。
3. 第 3 項について
約款には、対象不動産の変更の予定の有無に関する定めを記載する必要がある(施行令第 6 条第 1
項第 2 号、施行規則第 11 条第 2 項第 2 号ロ)。
第 3 条第 3 項は、かかる約款記載事項を規定するものである。
なお、かかる約款記載事項については、本契約の対象となる事業が対象不動産の変更を行う事業であるという観点から、本事業について定める第 1 条に規定することも考えられるが、本モデル約款においては、対象不動産の変更は新たな対象不動産の取得を伴うことから、対象不動産の取得について定める第 3 条に規定している。
4. 第 4 項について
対象不動産変更型契約の約款には、対象不動産の変更に係る手続に関する事項として、対象不動産
の追加取得の方針及び手続について、追加取得の方針に関する一定の事項(追加取得する不動産の選定基準、地域・用途別の割合等)を記載する欄及び対象不動産の追加取得の手続に関する定めを規定する必要がある(施行規則第 11 条第 1 項第 7 号、同条第 2 項第 15 号イ(1)及び(2))。
第 3 条第 4 項は、これを踏まえて、対象不動産の追加取得の手続について定めるとともに、別紙 2に対象不動産の追加取得の方針を記載する欄を設けることにより、かかる約款記載事項項を規定するものである。
また、約款においては、不動産特定共同事業契約に係る財産の管理に関する事項として、出資又は賃貸若しくは賃貸の委任の目的である財産を、当該不動産特定共同事業契約に係る不動産取引により運用する旨を明示して記載する必要がある(施行令第 6 条第 1 項第 4 号、施行規則第 11 条第 2 項第
4 号ロ)。
第 3 条第 4 項は、追加募集に基づき出資された金銭、特定金銭(対象不動産の売却等により得られ
た金銭をいう(施行規則第 11 条第 2 項第 2 号ニ)。以下同じ。)、業務外金銭(不動産特定共同事業に基づき出資された金銭のうち不動産特定共同事業の業務に係る金銭以外の金銭をいう(施行規則第 11 条第 1 項第 8 号)。以下同じ。)、その他の本事業に係る資産に属する金銭が対象不動産の追加取得
に充てられることを明示するものであり、変更前の対象不動産の取得について定める第 3 条第 1 項、
対象不動産の賃貸について定める第 4 条第 2 項及び対象不動産の売却等について定める第 5 条とあいまって、かかる約款記載事項が充足されることになる。
5. 第 5 項について
対象不動産変更型契約の約款には、対象不動産の変更に係る手続に関する事項として、対象不動産の追加取得の価格が当該対象不動産の鑑定評価額又は近傍同種の不動産の取引価格等に照らし合理的なものであることを担保するために必要かつ適切な措置に関する定めを規定する必要がある(施行規則第 11 条第 1 項第 7 号、同条第 2 項第 15 号イ(5))。
かかる「必要かつ適切な措置」については、国交省事務ガイドライン第 3-2(1)④及び金融庁事務ガイドライン 7-2-2(1)④において、例えば、当該不動産の鑑定評価額や近傍同種の不動産の取引価格等を示す客観的な資料を示すことにより、当該追加取得の価格がこれらの資料により示した価格と比して、合理的な価格となっていることを事業参加者に説明する等の措置をいうとされている。そして、かかる「合理的な価格」については、国交省事務ガイドライン第 3-2(1)⑤及び金融庁事務ガイドライン 7-2-2(1)⑤において、例えば、客観的な資料により示した価格を、概ね 1 割以上上回るような追加取得の価格であって、合理的な理由がないものはこれに該当しないとされる。
第 3 条第 5 項は、これらを踏まえて、かかる約款記載事項を規定するものである。
6. 第 6 項について
対象不動産変更型契約の約款には、対象不動産の変更に係る手続に関する事項として、不動産特定共同事業者等は、対象不動産の追加取得をしたときは、当該対象不動産の追加取得をした日から 30日以内に、事業参加者に対し、当該対象不動産の追加取得に係る対象不動産の所在、地番、用途、土地面積、延べ床面積その他の当該対象不動産を特定するために必要な表示、当該対象不動産の追加取得をした日、当該対象不動産の追加取得の価格、譲渡人と不動産特定共同事業者等との関係、当該対象不動産の追加取得をした日における財産の状況、当該対象不動産により営む不動産取引の方法、修
繕費、損害保険料その他の当該対象不動産を管理するために必要な費用の負担に関する事項、当該対象不動産の売却等の予定の有無及び当該対象不動産の売却等を予定する場合における当該対象不動産の売却等の手続を記載した書面を交付する旨又は当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供する旨の定めを規定する必要がある(施行規則第 11 条第 1 項第 7 号、同条第 2 項第 15 号二)。 第 3 条第 6 項は、これを踏まえて、かかる約款記載事項を規定するものである。 7. 契約成立時交付書面記載事項について 対象不動産変更型契約の契約成立時交付書面には、対象不動産の変更に係る手続に関する事項を記載する必要がある(施行規則第 47 条第 2 項第 15 号)。 第 3 条第 4 項ないし第 6 項は、かかる契約成立時交付書面記載事項を規定するものでもある。 | |
(対象不動産の追加取得の方針又は手続の変更) 第3 条の2 別紙2 記載の対象不動産の追加取得の方針又は前条に定める対象不動産の追加取得の手続を変更する場合、本事業者は、当該変更の[20]日前までに、本出資者に対し、対象不動産の追加取得の方針又は手続の変更の内容及び時期等を書面又は電磁的方法により通知するものとする。 2 前項の場合、本出資者は、当該変更の日の前日までに、本事業者に対し、当該変更について反対する旨及び本契約上の地位の買取又は第三者への譲渡を求める旨を書面により通知することにより、その保有する本契約上の地位の全部の買取又は第三者による取得を請求することができる(以下、当該請求をした本出資者を「反対出資者」という。)。 3 前項の請求があった場合、本事業者は、反対出資者の保有する本契約上の地位の全部について、本事業の時価純資産額(本事業に係る資産の時価評価額(対象不動産については直近に取得した鑑定評価額によるものとする。)から時価評価した負債の額を控除した額をいう。以下同じ。)に本出資者の出資割合を乗じた金額により、自ら買い取り、又は第三者に取得させなければならない。但し、本事業者がかかる本契約上の地位の買取等が相当でないと判断する場合、本事業者は、反対出資者に対し、反対出資者による本契約の解除を認める旨を書面により通知することができる。かかる通知を受領した反対出資者は、本契約を解除することができる。 【施行規則第 11 条第 1 項第 7 号、同条第 2 項第 15 号イ(3)及び(4)】 【施行規則第 47 条第 2 項第 15 号】 | ■第 3 条の 2 の解説 第 3 条の 2 は、対象不動産の追加取得の方針又は手続の変更について規定する。 対象不動産変更型契約の約款には、対象不動産の変更に係る手続に関する事項として、対象不動産の追加取得の方針及び手続について、対象不動産の追加取得の方針及び手続の変更に関する明確かつ公正な定め及び対象不動産の追加取得の方針及び手続の変更に反対する旨を通知した事業参加者の契約上の権利及び義務を取得し、又は第三者に取得させることその他の事業参加者の保護のために必要かつ適切な措置に関する定めを規定する必要がある(施行規則第 11 条第 1 項第 7 号、同条第 2 項第 15 号イ(3)及び(4))。 かかる「明瞭かつ公正な定め」については、国交省事務ガイドライン第 3-2(1)⑧及び金融庁事務ガイドライン 7-2-2(1)⑧において、例えば、対象不動産の追加取得の方針の変更の内容及び時期等を事業参加者に通知する方法、通知から変更までの期間の目安並びに当該変更に反対する事業参加者が契約上の権利及び義務の買取等を求める方法等についての具体的な定めをいい、事業参加者が当該変更を踏まえて引き続き事業に参加するか否か等の判断を行うために十分な情報及び期間を事業参加者に提供することなく対象不動産の追加取得の方針を変更することができるとする規定は、「明確かつ公正な定め」に該当しないとされる。また、かかる「その他の事業参加者の保護のために必要かつ適切な措置」については、国交省事務ガイドライン第 3-2(1)⑨及び金融庁事務ガイドライン 7-2-2(1)⑨において、例えば、対象不動産の追加取得の方針の変更に反対する事業参加者の契約の解除等を認める旨の定めをいうとされる。 また、対象不動産変更型契約の契約成立時交付書面には、対象不動産の変更に係る手続に関する事項を記載する必要がある(施行規則第 47 条第 2 項第 15 号)。 第 3 条の 2 は、これらを踏まえ、これらの約款記載事項及び契約成立時交付書面記載事項を規定するものである。 第 3 条の 2 第 2 項及び第 3 項における本契約上の地位の買取の手続については、会社法に定められる株 式会社における反対株主の株式買取請求の制度と利害状況が類似すると考えられることから、会社法第 116条等の規定を参考にしている。 第 3 条の 2 第 2 項及び第 3 項に定める本契約上の地位の買取請求は、対象不動産の追加取得の方針又は手続の変更が行われる場合に、当該変更に反対する事業参加者が自己の保有する本契約上の地位を公正な価格で買い取ることを請求することによって投下資本の回収を図る機会を与え、もって事業参加者の保護 を図るものと考えられる。これはすなわち、対象不動産の追加取得の方針又は手続の変更が行われる場合 |
(対象不動産等の運用)
第 4 条 本事業者は、本契約に定める対象不動産に係る不動産取引その他本事業の目的を達成するために必要と判断する行為を行うことができる。本事業者は、善良な管理者の注意義務をもって誠実かつ忠実に本事業を遂行するものとする。
2 本事業者は、対象不動産を賃貸して運用するものとする。
【施行令第 6 条第 1 項第 4 号、施行規則第 11 条第 2 項第 4 号ロ】
3 本事業者は、対象不動産を本事業の目的以外のために担保に提供し、又は出資の目的としてはならない。
【施行令第 6 条第 1 項第 4 号、施行規則第 11 条第 2 項第 4 号ホ】
4 本事業者は、本事業に係る資産に属する金銭(但し、業務外金銭及び特定金銭を除く。)を運用する場合(第 2 条第 1 項及び他の匿名組合契約に基づく出資金を第 3 条第 1 項に定める期限までの間運用する場合を含む。)、金融機関(規則第 11 条第 2 項第 14 号ロに規定するものに限る。)の預金口座に預金する方法により運用するものとする。
【施行規則第 11 条第 1 項第 6 号、同条第 2 項第 14 号】
【施行令第 6 条第 1 項第 2 号、施行規則第 11 条第 2 項第 2 号ニ】
【施行規則第 47 条第 2 項第 14 号】
5 本事業者は、業務外金銭又は特定金銭を運用する場合、以下のいずれかに掲げる方法により運用するものとする。
(1) 規則第 11 条第 2 項第 14 号イ又はロに掲げる方法
(2) 不動産の小口化・証券化商品への投資
(3) 不動産を信託財産とする信託の受益権の取得
(4) リスクヘッジ目的で行われるオプション取引等
【施行規則第 11 条第 1 項第 7 号、同項第 8 号、同条第 2 項第 15 号ハ、同項第 16 号イ】
【施行規則第 47 条第 2 項第 15 号、同項第 16 号】
6 本事業者は、業務外金銭及び特定金銭の合計額が、1 年以上継続して本事業に係る財産の額から特定金銭の額を控除した額の 7 分の 3 を超過した場合、超過額に係る金銭を出資割合に応じて本出資者及び他の匿名組合契約の匿名組合員に対し速やかに返還し、又は対象不動産を追加取得することにより、当該超過を解消するものとする。
【施行規則第 11 条第 1 項第 8 号、同条第 2 項第 16 号ロ及びハ】
に、事業参加者に対して、当該変更が行われた後においても引き続き本事業に対する投資を継続するか否かの選択権を与えるものと理解できる。そうだとすれば、本契約上の地位の一部の買取を認める必要はないと考えられるため、本モデル約款においては、買取の対象を反対出資者の保有する本契約上の地位の全部としている。
また、本契約上の地位の公正な価格については、私募 REIT における基準価額の算定方法を参考に、第 4条第 9 項において定期的に鑑定評価書を取得することにした上で、対象不動産を鑑定評価額によって時価評価すること等によって算出される時価純資産額を基準とすることにした。定期的な鑑定評価書の取得については費用等の負担が発生することにはなるが、鑑定評価書は不動産の時価についての第三者による客観的な評価であり、公正な価格を算出するための根拠として最も適切であると考えられる。
■第 4 条の解説
第 4 条は、期中における対象不動産などの本事業の財産の運用等について規定する。
1. 第 1 項について
匿名組合においては、営業者が業務執行を行う権限を有する(商法第 535 条及び第 536 条第 3 項参照)。
第 4 条第 1 項第 1 文は、この点を踏まえ、本事業者が本事業に必要な行為を行う権限を有することを確認的に規定するものである。
匿名組合における営業者は善良な管理者の注意をもって営業を遂行しなければならないと解釈されている(民法第 671 条、第 644 条類推適用)。また、不動産特定共同事業者は、信義を旨とし、誠
実にその業務を行わなければならない(不特法第 14 条)。
第 4 条第 1 項第 2 文は、これらを踏まえ、本事業者の善良な管理者としての注意義務及び誠実かつ忠実に事業を遂行する義務を規定するものである。
2. 第 2 項について
約款においては、不動産特定共同事業契約に係る財産の管理に関する事項として、出資又は賃貸若しくは賃貸の委任の目的である財産を、当該不動産特定共同事業契約に係る不動産取引により運用する旨を明示して記載する必要がある(施行令第 6 条第 1 項第 4 号、施行規則第 11 条第 2 項第 4 号ロ)。
第 3 条第 1 項の解説で述べたとおり、本モデル約款においては、本契約及び他の匿名組合契約に基づき出資される金銭を、対象不動産の取得、賃貸及び売却等によって運用する事業を想定している。第 4 条第 2 項は、これらのうち、本契約及び他の匿名組合契約に基づき出資される金銭によって取得する対象不動産を賃貸によって運用することを明示するものであり、対象不動産の取得について定める第 3 条第 1 項及び第 4 項並びに対象不動産の売却等について定める第 5 条とあいまって、かかる約款記載事項が充足されることになる。
3. 第 3 項について
本契約は出資を伴う契約であるため、約款に、不動産特定共同事業契約に係る財産の管理に関する事項として、対象不動産を当該不動産特定共同事業契約に基づく不動産特定共同事業の目的以外のために担保に供し、又は出資の目的とすることを禁ずる旨を明示して記載する必要がある(施行令第 6
条第 1 項第 4 号、施行規則第 11 条第 2 項第 4 号ホ)。
【施行規則第 47 条第 2 項第 16 号】
7 本事業者は、法第 27 条に基づき、本事業に係る財産を自己の固有財産及び他の不動産特定共同事業に係る財産と分別して管理するものとする。本出資者及び本事業者は、本項に基づく分別管理が信託法(平成 18 年法律第 108 号、その後の改正を含む。)第 34 条に基づく分別管理とは異なることを確認する。
【法第 25 条第 1 項第 4 号、施行規則第 47 条第 3 項第 2 号イ及びロ】
8 修繕費、損害保険料その他対象不動産を管理するために必要な費用は、本事業の費用として本事業に係る資産から支出する。
【施行令第 6 条第 1 項第 4 号、施行規則第 11 条第 2 項第 4 号ハ】
【法第 25 条第 1 項第 4 号、施行規則第 47 条第 3 項第 2 号ハ】
9 本事業者は、対象不動産について、毎年 月 日までに、各営業年度(毎年 月 日から[翌年] 月 日までをいう。以下同じ。)の末日を基準時点とする鑑定評価書(時点修正によるものを含む。)を取得するものとする。
第 4 条第 3 項は、かかる約款記載事項を規定するものである。
4. 第 4 項について
約款には、不動産特定共同事業の業務を行う上での余裕金(以下、「業務上の余裕金」という。)の運用に関する事項として、施行規則第 11 条第 2 項第 14 号イ及びロに掲げる方法によるほか、業務上
の余裕金を運用しない旨を記載する必要がある(施行規則第 11 条第 1 項第 6 号、同条第 2 項第 14 号)。また、対象不動産の取得の予定時期までに出資された金銭を運用する場合にあっては、約款に、不
動産特定共同事業契約に係る不動産取引の内容に関する事項として、当該出資された金銭について約款に定められた施行規則第 11 条第 1 項第 6 号に掲げる事項に関する規定を適用する旨の表示を記載
する必要がある(施行令第 6 条第 1 項第 2 号、施行規則第 11 条第 2 項第 2 号ニ)。
さらに、契約成立時交付書面には、業務上の余裕金の運用に関する事項を記載する必要がある(施行規則第 47 条第 2 項第 14 号)。
第 4 条第 4 項は、これらを踏まえ、対象不動産の取得の予定時期までに出資された金銭を含む本事
業に係る資産に属する金銭(但し、業務外金銭及び特定金銭を除く。)について、施行規則第 11 条
第 2 項第 14 号ロに規定される金融機関の預金口座に預金する方法により運用することを規定するものである。
なお、かかる記載は 1 つの参考例にすぎない。約款の作成にあたっては、想定される金銭の運用方
法に応じて、金融機関の範囲を「銀行」等に限定したり、「施行規則第 11 条第 2 条第 14 号イ又はハに定める方法」全てを対象とすることなども考えられる。
5. 第 5 項について
対象不動産変更型契約の約款においては、対象不動産の変更に係る手続に関する事項として、特定金銭の運用方法について明確かつ公正な定めを規定する必要があり(施行規則第 11 条第 1 項第 7 号、
同条第 2 項第 15 号ハ)、また、業務外金銭の運用に関する事項として、業務外金銭の運用方法について当該特定金銭の運用方法に関する定めを準用する旨の定めその他これに準ずる明確かつ公正な定めを規定する必要がある(施行規則第 11 条第 1 項第 8 号、同条第 2 項第 16 号イ)。
これらの「公正な定め」については、国交省事務ガイドライン第 3-2(1)⑩及び金融庁事務ガイドライン 7-2-2(1)⑩において、例えば、施行規則第 11 条第 14 号イ又はロに掲げる方法、他の不動産の小口化・証券化商品への投資、不動産を信託する信託の受益権の取得、リスクヘッジ目的で行われるオプション取引等に運用方法が限定されているものをいい、不動産とは無関係の高リスクな運用方法を可能とする規定は「公正な定め」に該当しないとされる。
第 4 条第 5 項は、これらを踏まえ、特定金銭及び業務外金銭の運用方法について規定するものである。
また、対象不動産変更型契約の契約成立時交付書面には、対象不動産の変更に係る手続に関する事項(施行規則第 47 条第 2 項第 15 号)及び業務外金銭の運用に関する事項(施行規則第 47 条第 2 項
第 16 号)を記載する必要がある。
第 4 条第 5 項は、これらの契約成立時交付書面記載事項を規定するものでもある。
6. 第 6 項について
対象不動産変更型契約の約款においては、業務外金銭の運用に関する事項として、業務外金銭及び
特定金銭の合計額が、1 年以上継続して不動産特定共同事業の業務に係る財産の額から特定金銭の額を控除した額の 7 分の 3 を超えない旨の定め、並びに業務外金銭及び特定金銭の合計額が当該定めに反することとなった場合において、当該割合を超える部分に係る金銭について出資総額に対する出資の割合に応じて事業参加者に対し速やかに返還する旨の定めその他これに準ずる明確かつ公正な定めを規定する必要がある(施行規則第 11 条第 1 項第 8 号、同条第 2 項第 16 号ロ及びハ)。
第 4 条第 6 項は、これを踏まえて、業務外金銭及び特定金銭の合計額の上限と、かかる上限を超過した場合の超過解消措置について規定するものである。
また、対象不動産変更型契約の契約成立時交付書面には、業務外金銭の運用に関する事項を記載する必要がある(施行規則第 47 条第 2 項第 16 号)。
第 4 条第 6 項は、かかる契約成立時交付書面記載事項を規定するものでもある。
7. 第 7 項について
契約成立時交付書面には、不動産特定共同事業契約に係る財産の管理に関する事項として、不特法第 27 条に規定する財産の分別管理を行っている旨、及び当該分別管理が信託法第 34 条に基づく分別
管理とは異なるときは、その旨を記載する必要がある(不特法第 25 条第 1 項第 4 号、施行規則第 47
条第 3 項第 2 号イ及びロ)。
第 4 条第 7 項は、これらの契約成立時交付書面記載事項を規定するものである。
なお、信託法第 34 条に基づく分別管理においては、信託不動産について信託の登記を行うことによって分別管理をすることができるが、匿名組合においては、そのような制度はなく、対象不動産は営業者名義で登記されることになるため、本項に基づく分別管理が信託法第 34 条に基づく分別管理とは異なることを確認する規定にしている。
8. 第 8 項について
約款には、不動産特定共同事業契約に係る財産の管理に関する事項として、修繕費、損害保険料その他対象不動産を管理するために必要な費用の負担に関する定めを記載する必要がある(施行令第 6
条第 1 項第 4 号、施行規則第 11 条第 2 項第 4 号ハ)。
また、契約成立時交付書面についても、不動産特定共同事業契約に係る財産の管理に関する事項として、修繕費、損害保険料その他対象不動産を管理するために必要な費用の負担に関する事項を記載する必要がある(不特法第 25 条第 1 項第 4 号、施行規則第 47 条第 3 項第 2 号ハ)。
第 4 条第 8 項は、これらを踏まえ、修繕費、損害保険料その他対象不動産を管理するために必要な費用を本事業に係る資産の負担とする旨を規定するものである。
なお、旧標準約款においては、対象不動産の修繕の費用に充てるため相当額の金銭の積立てを行う旨の規定や、対象不動産に相当と認められる方式及び額の損害保険契約を締結する旨の規定があったが、これらは約款記載事項でも契約成立時交付書面記載事項でもないため、本モデル約款においては記載していない。もっとも、約款の作成にあたり、これらの事項など、本事業者が行う事業の遂行について具体的な定めを置き、本事業者が遂行すべき事業の内容を明確化することも考えられるところである。
9. 第 9 項について
本契約においては、第 3 条の 2 に基づく対象不動産の追加取得の方針又は手続の変更に反対した場
合の本契約上の地位の買取請求における買取価格や、第 13 条に基づく本契約の全部又は一部の解除の場合に返還すべき出資の価額の算定において、対象不動産の時価評価額を基礎とすることとし、当該時価評価額については直近に取得した鑑定評価額によることにしているが、かかる算定を行えるようにするためには、対象不動産について定期的に鑑定評価書を取得する必要がある。 第 4 条第 9 項は、かかる趣旨により鑑定評価書の取得についての規定を設けたものである。 | |
(対象不動産の処分) 第 5 条 本事業者は、対象不動産の売却等(売却し、又は本事業者の固有財産とし、若しくは他の不動産特定共同事業契約に係る財産とする行為をいう。以下同じ。)を相当と判断するときは、適切な手続により対象不動産の売却等を行うものとする。 【施行令第 6 条第 1 項第 4 号、施行規則第 11 条第 2 項第 4 号ロ】 【施行規則第 11 条第 1 項第 4 号、同条第 2 項第 12 号イ】 【施行規則第 47 条第 2 項第 12 号】 2 本事業者は、対象不動産の売却等にあたり、本出資者に対し、当該対象不動産の鑑定評価額又は近傍同種の不動産の取引価格等を示す客観的な資料を添付した書面により、当該売却等の価格が当該資料に示される価格と比して合理的な価格(当該資料に示される価格を 1 割以上下回らない価格であること、又は当該資料に示される価格を 1 割以上下回る価格であるものの当該価格につき合理的な理由のあることをいう。)であることを説明するものとする。 【施行規則第 11 条第 1 項第 4 号、同条第 2 項第 12 号ロ】 【施行規則第 47 条第 2 項第 12 号】 3 本事業者は、対象不動産の売却等をしたときは、対象不動産の売却等をした日から 30 日以内に、本出資者に対し、以下の内容を記載した書面を交付し、又は当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供する。但し、当該売却等により本契約が終了する場合についてはこの限りではない。 (1) 当該対象不動産の売却等に係る対象不動産の所在、地番、用途、土地面積、延べ床面積その他の当該対象不動産を特定するために必要な表示 (2) 当該対象不動産の売却等をした日 (3) 当該対象不動産の売却等の価格 (4) 当該対象不動産の譲受人と本事業者との関係 (5) 当該対象不動産の売却等をした日における財産の状況並びに対象不動産の追加取得の方針及び手続 (6) 対象不動産の追加取得の予定時期の定めがある場合にあっては当該予定時期 【施行規則第 11 条第 1 項第 7 号、同条第 2 項第 15 号ロ】 【施行規則第 47 条第 2 項第 15 号】 | ■第 5 条の解説 第 5 条は、対象不動産の処分について規定する。 1. 第 1 項について 約款には、不動産特定共同事業契約に係る財産の管理に関する事項として、出資又は賃貸若しくは賃貸の委任の目的である財産を、当該不動産特定共同事業契約に係る不動産取引により運用する旨を明示して記載する必要がある(施行令第 6 条第 1 項第 4 号、施行規則第 11 条第 2 項第 4 号ロ)。 第 3 条第 1 項の解説で述べたとおり、本モデル約款においては、本契約及び他の匿名組合契約に基づき出資される金銭を、対象不動産の取得、賃貸及び売却等によって運用する事業を想定している。第 5 条は、これらのうち、本契約及び他の匿名組合契約に基づき出資される金銭によって取得する対象不動産を売却等によって運用することを明示するものであり、対象不動産の取得について定める第 3 条第 1 項及び第 4 項並びに対象不動産の賃貸について定める第 4 条第 2 項とあいまって、かかる約款記載事項が充足されることになる。 また、約款には、対象不動産を売却し、又は自己の固有財産とし、若しくは他の不動産特定共同事業契約に係る財産とする行為(以下、「対象不動産の売却等」という。)に関する事項として、対象不動産の売却等の予定の有無並びに対象不動産の売却等を予定する場合においては、当該対象不動産の売却等の手続に関する定めを記載する必要がある(施行規則第 11 条第 1 項第 4 号、同条第 2 項第 12号イ)。 さらに、契約成立時交付書面には、対象不動産の売却等に関する事項を記載する必要がある(施行規則第 47 条第 2 項第 12 号)。 第 5 条第 1 項は、これらを踏まえ、対象不動産の売却等の予定があること、及び対象不動産の売却等の手続を規定するものである。 対象不動産の売却等の手続については、出資者全員にとっての重大な関心事であるため、約款作成にあたり、商品設計に応じて、出資者の意思を反映させるための手続等を詳細に規定することも考えられる。もっとも、適時に売却を行うためには意思決定を迅速に行う要請もあるところ、匿名組合における業務執行は営業者が行うものであることから(商法第 535 条、第 536 条第 3 項)、本モデル約款においては、旧標準約款と同様に、本事業者が相当と判断するときに適切な手続によって対象不動産の売却等を行う旨を規定するに留めている。 なお、平成 29 年の施行規則の改正により、対象不動産の売却等の時期については、約款記載事項ではなくなった。 2. 第 2 項について 平成 31 年の施行規則の改正により、対象不動産の売却等に関する約款記載事項として、「対象不動 |
(利益相反取引)
第 5 条の 2 本事業者は、次に掲げる行為又は取引をする場合、これらの行為又は取引を行う日の[14]日以上前までに、本出資者に対し、当該行為又は取引に係る財産を特定するために必要な表示、当該行為又は取引の予定時期並びに当該財産の評価額及びその算出根拠を記載した書面を交付し、又は当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供するものとする。
(1) 本事業に係る財産を、自己の固有財産又は他の不動産特定共同事業契約に係る財産とする行為
(2) 自己の固有財産又は他の不動産特定共同事業契約に係る財産を本事業に係る財産とする行為
(3) 利害関係人(規則第 11 条第 2 項第 15 号ホ(3)に規定する利害関係人をいう。以下同じ。)との間における本事業に係る財産に関する取引
【施行規則第 11 条第 1 項第 7 号、同条第 2 項第 15 号ホ】
産の売却等を予定する場合にあっては、当該対象不動産の売却等の手続及び当該対象不動産の売却等の価格が当該不動産の鑑定評価額又は近傍同種の不動産の取引価格等に照らし合理的なものであることを担保するために必要かつ適切な措置に関する定め」が追加された(施行規則第 11 条第 2 項第 12号ロ)。
かかる「必要かつ適切な措置」については、国交省事務ガイドライン第 3-2(1)④及び金融庁事務ガイドライン 7-2-2(1)④において、例えば、当該不動産の鑑定評価額や近傍同種の不動産の取引価格等を示す客観的な資料を示すことにより、当該売却等の価格がこれらの資料により示した価格と比して、合理的な価格となっていることを事業参加者に説明する等の措置をいうとされている。そして、かかる「合理的な価格」については、国交省事務ガイドライン第 3-2(1)⑤及び金融庁事務ガイドライン 7-2-2(1)⑤において、例えば、客観的な資料により示した価格を、概ね 1 割以上下回るような売却等の価格であって、合理的な理由がないものはこれに該当しないとされる。
第 5 条第 2 項は、これらを踏まえ、対象不動産を売却等する際における本出資者に対する説明に関する規定を設けるものである。
3. 第 3 項について
対象不動産変更型契約の約款には、対象不動産の変更に係る手続に関する事項として、不動産特定共同事業者等は、対象不動産の売却等(当該対象不動産の売却等により契約が終了するものを除く。)をしたときは、当該対象不動産の売却等をした日から 30 日以内に、事業参加者に対し、当該対象不動産の売却等に係る対象不動産の所在、地番、用途、土地面積、延べ床面積その他の当該対象不動産を特定するために必要な表示、当該対象不動産の売却等をした日、当該対象不動産の売却等の価格、譲受人と不動産特定共同事業者等との関係、当該対象不動産の売却等をした日における財産の状況並びに対象不動産の追加取得の方針及び手続並びに対象不動産の追加取得の予定時期の定めがある場合にあっては当該予定時期を記載した書面を交付する旨又は当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供する旨の定めを規定する必要がある(施行規則第 11 条第 1 項第 7 号、同条第 2 項第 15 号ロ)。また、対象不動産変更型契約の契約成立時交付書面には、対象不動産の変更に係る手続に関する事
項を記載する必要がある(施行規則第 47 条第 2 項第 15 号)。
第 5 条第 3 項は、これらを踏まえて、これらの約款記載事項及び契約成立時交付書面記載事項を規定するものである。
■第 5 条の 2 の解説
第 5 条の 2 は、本事業者が利益相反取引を行う場合の取扱いについて規定する。
対象不動産変更型契約の約款には、対象不動産の変更に係る手続に関する事項として、不動産特定共同事業者等は、次に掲げる行為又は取引をする場合においては、事業参加者に対し、当該行為又は取引に係る財産を特定するために必要な表示、当該行為又は取引の予定時期並びに当該財産の評価額及びその算出根拠を記載した書面を事前に交付する旨又は当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供する旨の定めを規定する必要がある(施行規則第 11 条第 1 項第 7 号、同条第 2 項第 15 号ホ)。
(1) 不動産特定共同事業契約に係る財産を、自己の固有財産又は他の不動産特定共同事業契約に係る財産とする行為
【施行規則第 47 条第 2 項第 15 号】 | (2) 自己の固有財産又は他の不動産特定共同事業契約に係る財産を不動産特定共同事業契約に係る財産とする行為 (3) 利害関係人との間における不動産特定共同事業契約に係る財産に関する取引 また、当該行為又は取引は、当該書面を交付し又は当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供した日から原則として 2 週間以上の期間をおいて行うこととされる(国交省事務ガイドライン第 3-2(1) ⑪及び金融庁事務ガイドライン 7-2-2(1)⑪)。 また、対象不動産変更型契約の契約成立時交付書面には、対象不動産の変更に係る手続に関する事項を記載する必要がある(施行規則第 47 条第 2 項第 15 号)。 第 5 条の 2 は、これらを踏まえて、これらの約款記載事項及び契約成立時交付書面記載事項を規定する ものである。 |
(公正な第三者の関与) 第 5 条の 3 本事業者は、対象不動産の追加取得又は売却等を行う場合、次の各号のいずれかの手続を経るものとする。 (1) 弁護士、公認会計士、不動産鑑定士その他の者であって、不動産取引に関する実務に関する知識を有する者(利害関係人に該当する者を除く。以下「第三者専門家」という。)を構成員に含む投資判断に関する委員会を開催し、第三者専門家の意見を聴取し、当該取引が本出資者及び他の匿名組合契約の匿名組合員にとって必要かつ合理的な取引であること等について第三者専門家の同意を得ること (2) 第三者専門家から意見書の提出を受けることによって、当該取引が本出資者及び他の匿名組合契約の匿名組合員にとって必要かつ合理的な取引であること等について第三者専門家の同意を得ること 【施行規則第 11 条第 1 項第 7 号、同条第 2 項第 15 号リ】 【施行規則第 47 条第 2 項第 15 号】 | ■第 5 条の 3 の解説 第 5 条の 3 は、対象不動産の追加取得又は売却等を行う場合における公正な第三者の関与に係る手続について規定する。 対象不動産変更型契約の約款には、対象不動産の変更に係る手続に関する事項として、対象不動産の売却等及び追加取得に係る判断が弁護士、公認会計士又は不動産鑑定士その他の者であって不動産取引に係る実務に関する知識を有する公正な第三者が関与して適正に行われることを担保するための必要かつ適切な措置に関する定めを規定する必要がある(施行規則第 11 条第 1 項第 7 号、同条第 2 項第 15 号リ)。 かかる「必要かつ適切な措置」については、国交省事務ガイドライン第 3-2(1)⑭及び金融庁事務ガイドライン 7-2-2(1)⑭において、対象不動産の売却等及び追加取得を行う際に、投資判断に関する委員会の開催や、意見書の提出を受けることにより、弁護士、公認会計士、不動産鑑定士その他の者であって、不動産取引に係る実務に関する知識を有する者(同⑫に掲げる利害関係人に該当する者を除く。)の意見を聴取し、当該取引が事業参加者にとって必要かつ合理的な取引であること等について同意を得る旨の定めをいい、例えば古民家再生に資するファンド等と銘打ちながら、都心部のワンルームマンションに相当部分入れ替えるようなことは、「事業参加者にとって必要かつ合理的な取引」に該当しないとされる。 第 5 条の 3 は、これらを踏まえて、かかる約款記載事項として、対象不動産の追加取得又は売却等を行う場合における公正な第三者の関与に係る手続を規定するものである。 また、対象不動産変更型契約の契約成立時交付書面には、対象不動産の変更に係る手続に関する事項を記載する必要がある(施行規則第 47 条第 2 項第 15 号)。 第 5 条の 3 は、かかる契約成立時交付書面記載事項を規定するものでもある。 |
[(助言契約) 第 5 条の 4 本事業者は、別紙 4 助言契約の相手方記載の者との間で、対象不動産の変更に係る対象不動産の選定並びに当該対象不動産の変更の時期及び方法に関し助言を受けることを内容とする契約を締結する。] 【施行規則第 11 条第 1 項第 7 号、同条第 2 項第 15 号チ】 【施行規則第 47 条第 2 項第 15 号】 | ■第 5 条の 4 の解説 第 5 条の 4 は、対象不動産の変更に係る対象不動産の選定並びに当該対象不動産の変更の時期及び方法に関する助言契約について規定する。 不動産特定共同事業者等が対象不動産の変更をするときに、当該対象不動産の変更に係る対象不動産の選定並びに当該対象不動産の変更の時期及び方法に関し助言を受けることを内容とする契約(以下、「助言 契約」という。)を締結する場合、対象不動産変更型契約の約款には、対象不動産の変更に係る手続に関す |
る事項として、不動産特定共同事業契約の締結をするときに、当該助言契約の相手方の商号若しくは名称 | |
又は氏名、住所、法人にあってはその代表者の氏名及び当該助言契約の内容を記載する欄(当該助言契約 | |
の相手方が不動産投資顧問業者である場合にあっては、不動産特定共同事業契約の締結をするときに、当 | |
該助言契約の相手方の商号又は名称、住所、その代表者の氏名、当該助言契約の内容及び不動産投資顧問 | |
業者の登録を受けている旨を記載する欄)を設ける必要がある。 | |
第 5 条の 4 は、これを踏まえて、助言契約を締結する場合を想定して、別紙 4 にこれらの事項を記載す | |
る欄を設けることにより、かかる約款記載事項について規定するものである。 | |
また、対象不動産変更型契約の契約成立時交付書面には、対象不動産の変更に係る手続に関する事項を | |
記載する必要がある(施行規則第 47 条第 2 項第 15 号)。 | |
第 5 条の 4 は、かかる契約成立時交付書面記載事項を規定するものでもある。 | |
もっとも、助言契約を締結しない場合は、本条を設ける必要はない。 | |
(本事業の状況に係る報告等)【施行規則第 47 条第 2 項第 6 号イ、同項第 11 号】 | |
第 6 条 本事業者は、毎年 月 日までに、法第 28 条第 2 項に定める本事業に係る財産の管理の状況 について報告書を作成し、本出資者に対し書面により交付し、又は電磁的方法により提供するものとする。 | ■第 6 条の解説 第 6 条は、本事業の状況に係る報告等について規定する。 |
【施行規則第 11 条第 1 項第 3 号、同条第 2 項第 11 号イ】 | 1. 第 1 項について |
2 本事業者は、本出資者が請求する場合には、財産の管理の状況について説明するものとする。 | 不動産特定共同事業者の約款には、業務及び財産の状況に係る情報の開示に関する事項として、不 |
3 本事業者は、法第 29 条に定める本事業に係る業務及び財産の状況を記載した書類を事業所ごとに備え | 特法第 28 条第 2 項の規定により交付される財産の管理の状況についての報告書(以下、「財産管理報 |
置き、本出資者の請求に応じてこれを閲覧させるものとする。 | 告書」という。)の記載事項が事業参加者に開示されるための方法に関する定めを記載する必要があ |
【施行規則第 11 条第 1 項第 3 号、同条第 2 項第 11 号ロ】 | る(施行規則第 11 条第 1 項第 3 号、同条第 2 項第 11 号イ)。 |
4 本事業者は、法第 30 条第 1 項に定める本事業に係る事業参加者名簿を作成して保存し、本出資者の請 | 第 6 条第 1 項は、かかる約款記載事項を規定するものである。 |
求に応じてこれを閲覧させるものとする。 | 平成 29 年の不特法改正により、電磁的方法によって財産管理報告書を交付することが可能になっ |
【施行規則第 11 条第 1 項第 3 号、同条第 2 項第 11 号ハ】 | た(不特法第 28 条第 4 項)。そこで、第 6 条第 1 項についても、電磁的方法による財産管理報告書の |
交付を想定した規定にしている。なお、電磁的方法による財産管理報告書の交付を行うにあたっては、 | |
交付先たる本出資者の承諾を取得するなど不特法第 28 条第 4 項が準用する同第 24 条第 3 項の要件を | |
充足する必要があるため、留意する必要がある。 | |
2. 第 2 項について | |
不動産特定共同事業者は、不特法第 28 条第 1 項に基づき、事業参加者の求めに応じ、不動産特定 | |
共同事業契約に係る財産の管理の状況について説明する義務を負う。 | |
第 6 条第 2 項は、本事業者のかかる義務について確認的に規定するものである。 | |
3. 第 3 項について | |
不動産特定共同事業者の約款には、業務及び財産の状況に係る情報の開示に関する事項として、不 | |
特法第 29 条の規定により閲覧される業務及び財産の状況を記載した書類の記載事項が事業参加者に | |
開示されるための方法に関する定めを記載する必要がある(施行規則第 11 条第 1 項第 3 号、同条第 | |
2 項第 11 号ロ)。 | |
第 6 条第 3 項は、かかる約款記載事項を規定するものである。 | |
4. 第 4 項について | |
不動産特定共同事業者の約款には、業務及び財産の状況に係る情報の開示に関する事項として、不 |
特法第 30 条第 2 項の規定により閲覧される事業参加者名簿の記載事項が事業参加者に開示されるた | |
めの方法に関する定めを記載する必要がある(施行規則第 11 条第 1 項第 3 号、同条第 2 項第 11 号ハ)。 | |
第 6 条第 4 項は、かかる約款記載事項を規定するものである。 | |
5. 契約成立時交付書面記載事項について | |
契約成立時交付書面には、出資又は賃貸若しくは賃貸の委任の目的である財産に関する事業参加者 | |
の監視権の有無及びその内容(施行規則第 47 条第 2 項第 6 号イ)、並びに業務及び財産の状況に係る | |
情報の開示に関する事項を記載する必要がある(施行規則第 47 条第 2 項第 11 号)。 | |
第 6 条は、これらの契約成立時交付書面記載事項を規定するものでもある。 | |
(本事業者の報酬) | |
第 7 条 本事業者は、本契約に定める業務執行の対価として以下の金額(以下「本事業者報酬」という。) | ■第 7 条の解説 |
を本事業に係る資産から本事業者の固有財産とする(但し、第(4)号に定める報酬については本出資者か | 第 7 条は、本事業者の報酬について規定する。 |
ら受領する)ことができるものとする。 | 不動産特定共同事業者の約款には、不動産特定共同事業者の報酬に関する事項として、不動産特定共同 |
(1) [アップフロントフィー/本事業の組成の対価]として、対象不動産の取得時に、[取得価格の○% | 事業者の報酬の額の算定の方法並びに収受の時期及び方法に関する定めを記載する必要がある(施行令第 6 |
/金○円] | 条第 1 項第 8 号、施行規則第 11 条第 2 項第 8 号)。 |
(2) 各計算期間(第 8 条第 2 項に定める。以下同じ。)に係る対象不動産の管理運営の対価として、第 8 | そして、対象不動産変更型契約の約款においては、かかる報酬の額の算定方法は、対象不動産の価額又 |
条第 5 項及び第 10 条第 2 項の金銭の分配時に、[[対象不動産の取得価格/対象不動産の賃料収入/ | は収益若しくは利益に対する割合を基礎として算定する方法その他の公正な方法である必要がある(施行 |
本事業に係る分配金の合計額/本事業に係る税引前利益]の○%[(但し、当該金額が対象不動産の | 規則第 11 条第 2 項第 8 号の 2)。かかる「公正な方法」については、国交省事務ガイドライン第 3-2(1) |
取得価格の○%を下回る場合には、対象不動産の取得価格の○%)]/金○円](但し、計算期間が | ③及び金融庁事務ガイドライン 7-2-2(1)③において、例えば、対象不動産の価額や不動産取引により生 |
○ヶ月に満たない場合又は○ヶ月を超える場合には、実日数に基づく日割計算(1 円未満の端数は | じた収益又は利益に一定割合を乗じた金額を不動産特定共同事業者の報酬とするなど、事業参加者と不動 |
切り捨て)により算出する。) | 産特定共同事業者の利益が連動することにより、対象不動産変更型契約に基づく不動産特定共同事業を事 |
(3) 対象不動産の全部又は一部の売却等の対価として、売却等に係る代金の受領時に、売却等の価格の | 業参加者のために適切に実施することを動機付けるような方法をいい、対象不動産の価額や不動産取引に |
○% | より生じた収益又は利益に一切連動することなく、契約時のみに一定額を不動産特定共同事業者の報酬と |
(4) 本契約上の地位の譲渡に伴う事務手続の対価として、譲渡の完了時に、金○円 | すること等の方法は、原則として「公正な方法」に該当しないとされる。 |
【施行令第 6 条第 1 項第 8 号、施行規則第 11 条第 2 項第 8 号、同項第 8 号の 2】 | また、契約成立時交付書面には、不動産特定共同事業者の報酬に関する事項を記載する必要がある(施 |
【施行規則第 47 条第 2 項第 7 号】 | 行規則第 47 条第 2 項第 7 号)。 |
第 7 条は、これらを踏まえ、本事業者の報酬の額の算定の方法、収受の時期、及び収受の方法について | |
規定するものである。 | |
報酬の定め方は各不動産特定共同事業者毎に異なるため、本モデル約款においては、約款作成に際して | |
参考になるようにいくつかのサンプルを記載している。約款の作成にあたっては、商品設計に応じて、不 | |
要な記載は削除し、報酬の額の算定方法を選択するなどして、第一号事業者の報酬につき明確に定めるこ | |
(出資者に対する損益及び金銭の分配)【施行令第 6 条第 1 項第 3 号、施行規則第 11 条第 2 項第 3 号】【法 | とが重要である。 |
第 25 条第 1 項第 3 号】【施行規則第 47 条第 2 項第 6 号ハ】 | |
第 8 条 本事業の損益は、法令及び本契約に従って計算されるものとする。本事業者は、商法第 19 条に基 | ■第 8 条の解説 |
づき、一般に公正妥当と認められる会計の慣行に従い、本事業に関する全ての取引に関する正確な帳簿及 | 第 8 条は、出資者に対する損益及び金銭の分配について規定する。 |
び記録を作成し、かつ、保持するものとする。 | 約款には、事業参加者に対する収益又は利益の分配に関する事項として、事業参加者に対し分配すべき |
2 本事業の計算期間は、各計算期日(計算期間の末日をいい、初回を 年 月 日とし、以降毎年 月 日及び本事業の清算手続において本事業に係る一切の債務を弁済した日又は本事業に帰属する | 収益又は利益の額の算定の方法並びにその分配の時期及び方法に関する定めを記載する必要がある(施行 令第 6 条第 1 項第 3 号、施行規則第 11 条第 2 項第 3 号)。 |
財産の全てが本事業に係る債務の弁済に充てられた日とする。以下同じ。)の翌日(但し、最初の計算期間については 年 月 日)から直後の計算期日までとする。[但し、最後の計算期間を除き、各計算期日において当該計算期日が属する計算期間に対応する匿名組合損益(次項に定義する。)として損失が生じることが見込まれる場合、当該計算期間の末日は翌計算期日に延期されるものとする。]
3 本事業者は、各計算期間末に、当該計算期間の第(1)号に規定される本事業から生じた収益から第(2)号に規定される本事業から生じた費用を控除することにより、本事業に係る税引前利益(以下「匿名組合利益」という。)又は税引前損失(以下「匿名組合損失」といい、匿名組合利益及び匿名組合損失を総称して「匿名組合損益」という。)を計算する。
(1) 本事業から生じた収益
① 対象不動産から生じる賃料収入
② 対象不動産の売却益
③ 対象不動産に係る保険金
④ 本事業に係る金銭の運用から得られる受取利息
⑤ 匿名組合出資金償還益及び本事業に関連する債務の債務免除益
⑥ 本事業に係るその他の収益
(2) 本事業から生じた費用
① 対象不動産の取得、管理、修繕及び売却等に要する諸費用
② 対象不動産の売却損
③ 対象不動産に係る損害保険料
④ 対象不動産に係る公租公課
⑤ 本事業に係る日常的な経理業務や一般管理業務に要する費用その他の一切の営業費用
⑥ 匿名組合出資金償還損
⑦ 本事業の遂行に係る本事業者報酬
≪優先劣後構造にしない場合≫
4 各計算期間に対応する匿名組合損益は、出資割合に応じて、本出資者に帰属するものとする。なお、匿名組合利益がある場合で、当該計算期間の前の計算期間まで(以下「経過済計算期間」という。)に本項に従って本出資者に分配された匿名組合損失(もしあれば。但し、経過済計算期間までに本項に従って補てんされた金額を控除する。)があるときは、当該匿名組合利益はまず当該匿名組合損失の補てんに充当するものとする。また、当該計算期間中に本出資額又は他の匿名組合員の出資額に変動があった場合には、これらの額を実日数で加重平均して算出された割合を出資割合とする。
≪優先劣後構造にする場合≫
4 各計算期間に対応する匿名組合損益は、以下のとおり本出資者、本事業に対する本出資者及び本事業者以外の出資者(以下、本出資者並びに本事業に対する本出資者及び本事業者以外の出資者を総称して「優先出資者」という。)並びに本事業者に帰属するものとする。
(1) 当該計算期間について匿名組合損失が生じた場合、当該匿名組合損失を以下の順序で分配する。
① まず、第 2 条第 3 項に基づく本事業に対する出資(以下「劣後出資」という。)に係る損失の分配として、劣後出資の額から当該計算期間の前の計算期間まで(以下「経過済計算期間」という。)
契約成立時交付書面には、事業参加者に対する収益又は利益の分配に関する事項を記載する必要がある
(不特法第 25 条第 1 項第 3 号)。
第 8 条は、これらを踏まえて本事業に係る損益及び金銭の分配について定めている。
また、契約成立時交付書面には、事業参加者の権利及び責任の範囲等に関する事項として、収益又は利益の受領権に関する事項を記載する必要がある(施行規則第 47 条第 2 項第 6 号ハ)。
第 8 条は、かかる契約成立時交付書面記載事項を規定するものでもある。
1. 第 1 項について
第 8 条第 1 項は、本事業における損益の計算方法について規定するものである。
匿名組合が組成された場合、匿名組合に係る損益の計算と営業者に係る損益の計算の 2 つの損益の計算がなされることになる。このうち、匿名組合における損益の計算については、「一般に公正妥当と認められた会計基準」は存在しないため、第 8 条第 1 項前段は「法令及び本契約」に従って計算することを定めている。
営業者に係る損益の計算に関しては、商法第 19 条の適用があり、営業者は、その営業のために使用する財産について、一般に公正妥当と認められる会計の慣行に従って、適時に、正確な商業帳簿を作成し、保存しなければならない。匿名組合事業は、営業者の事業であり(商法第 535 条)、通常は、匿名組合の貸借対照表は営業者の貸借対照表の一部と整理されている。そのため、本事業者は、本事業に関する取引についても、一般に公正妥当と認められる会計の慣行に従って正確な帳簿及び記録を作成し、保存する必要があることになる。第 8 条第 1 項後段は、この点を確認的に規定するものである。
2. 第 2 項について
第 8 条第 2 項は、本事業における計算期間を規定するものである。
第 8 条第 2 項但書は、対象不動産の開発・改修を行うような場合の個人投資家の税務を考慮した規定案である。事業開始当初は損失が発生し、開発・改修が終了した後に利益が発生するようなケースにおいて、当初の計算期間において損失が帰属し、後の計算期間において利益が帰属することとなった場合、個人の投資家については、損失は切り捨てられ、利益部分について課税されることになる。このようなことを避けるための方策として、損失が発生することが見込まれる場合については計算期日を延期し、利益が出るまでの期間を 1 つの計算期間として損益を分配することが考えられる。かかる但書については、個別の事業特性に応じて、会計税務的な観点からの検討を経た上で規定することを想定している。なお、法人が事業参加者に含まれることが想定される場合には、当該法人にとって匿名組合事業の計算期間が 1 年を超えることについて支障がないかを確認する必要があるため留意されたい。
3. 第 3 項について
第 8 条第 3 項は、損益の計算の時期及び計算方法について規定するものである。
4. 第 4 項について
第 8 条第 4 項は、損益の分配について規定するものである。
優先劣後構造にしない場合と優先劣後構造にする場合に場合分けして記載しているが、約款の作成にあたっては、いずれかを選択して記載することを想定している。
に本①に従って本事業者に分配された劣後出資に係る損失(もしあれば)を控除した額(但し、経過済計算期間までに第(2)号③に従って補てんされた金額を加算する。)を限度として、本事業者に帰属させる。
② 前①による匿名組合損失の分配後になお残損失がある場合、第 2 条第 1 項及び他の匿名組合契約に基づく出資(以下「優先出資」という。)に係る損失の分配として、優先出資の総額(以下「優先出資総額」という。)から経過済計算期間に本②に従って優先出資者に分配された優先出資に係る損失(もしあれば)を控除した額(但し、経過済計算期間までに第(2)号②に従って補てんされた金額を加算する。)を限度として、優先出資総額に対する各優先出資者の出資額の割合(以下「優先出資割合」という。)に応じて各優先出資者に帰属させる。なお、当該計算期間中に優先出資者の出資額に変動があった場合には、当該出資額を実日数で加重平均して算出された割合を本項における「優先出資割合」とする。
③ 前②による匿名組合損失の分配後になお残損失がある場合、本事業者がその固有の勘定において残損失を負担する。
(2) 当該計算期間について匿名組合利益が生じた場合、当該匿名組合利益を以下の順序で分配する。
① まず、経過済計算期間に第(1)号③に従って本事業者の固有勘定に分配された匿名組合損失(もしあれば)の合計額(但し、経過済計算期間までに本①に従って補てんされた金額を控除する。)に満つるまでの金額を、本事業者の固有勘定に分配し、本事業者の固有勘定に係る匿名組合損失の補てんに充当するものとする。
② 前①による匿名組合損失の補てん後になお残利益がある場合、経過済計算期間に第(1)号②に従って優先出資者に分配された優先出資に係る損失(もしあれば)の合計額(但し、経過済計算期間までに本②に従って補てんされた金額を控除する。)に満つるまでの金額を、優先出資割合に応じて各優先出資者に分配し、各優先出資者の優先出資に係る匿名組合損失の補てんに充当するものとする。
③ 前②による匿名組合損失の補てん後になお残利益がある場合、経過済計算期間に第(1)号①に従って本事業者に分配された劣後出資に係る損失(もしあれば)の合計額(但し、経過済計算期間までに本③に従って補てんされた金額を控除する。)に満つるまでの金額を、本事業者に分配し、本事業者の劣後出資に係る匿名組合損失の補てんに充当するものとする。
④ 前③による匿名組合損失の補てん後になお残利益がある場合、優先出資に係る利益の分配として、当該計算期間の末日時点における優先出資者の出資額に当該計算期間の実日数を乗じ 365 で除し
○%を乗じた金額に満つるまでの金額を、優先出資割合に応じて優先出資者に帰属させる。
⑤ 前④による匿名組合利益の分配後になお残利益がある場合、劣後出資に係る利益の分配として、残利益を本事業者に帰属させる。
≪優先劣後構造にしない場合≫
5 本事業者は、各計算期間末の属する月の 2 ヶ月後応当月の最終営業日までの間で、本事業者が裁量により指定する日(以下「金銭配当日」という。)に、本出資者に分配された当該計算期間に係る匿名組合利益
(もしあれば。但し、前項に基づき匿名組合損失の補てんに充当された匿名組合利益は含まれない。)相当額の金銭を本出資者に支払うものとする。
優先劣後構造にする場合の規定については、事業参加者の利回りや元本の安全性を確保するスキー ムを想定し、事業参加者の出資を優先出資とし、不動産特定共同事業者の出資を劣後出資としている。損失が発生した場合には、第(1)号①ないし③に従って、①本事業者の劣後出資→②優先出資者
の優先出資→③本事業者の固有の勘定の順序で分配される例を規定した。また、利益が発生した場合には、基本的には、第(2)号④及び⑤に従って、④優先出資者に対して出資額の○%の固定利回りを優先的に分配し、⑤残りの利益は本事業者に対して分配される例を規定した。但し、経過済計算期間(当該計算期間の前の計算期間までを意味する(第 8 条第 4 項第(1)号①)。)において損失が発生した場合、当該損失がすべて補てんされるまでは、第(2)号①ないし③に従って、④及び⑤の利益の分配の前に、①本事業者の固有勘定に係る損失の補てん→②優先出資者の優先出資に係る損失の補てん→③本事業者の劣後出資に係る損失の補てんの順序で発生した利益が損失の補てんに充てられることとした。
本モデル約款においては、優先出資者に対する利益の分配について、累積的なものとはしていない。すなわち、ある計算期間において○%の固定利回りの分配を受けられなかった場合、かかる不足分について翌計算期間以降の利益によって補充される内容にはなっていない。しかし、そのような内容の約款にすることも可能である。
優先劣後構造を採用する場合の損益の分配についての定めは各事業者の商品設計によるところが大きいと考えられ、本モデル約款の記載は 1 つの例にすぎない。約款の作成にあたっては、各事業者が商品設計をし、また、損益の分配についてシミュレーションを行った上で、商品に応じて適切に条項を定めることが重要である。
なお、対象不動産変更型契約においては、計算期間中に追加募集や本契約上の地位の買取等によって各事業参加者の出資額に変動が生じる場合も考えられるため、その場合の出資割合の扱いについての規定を設けている。
5. 第 5 項について
第 8 条第 5 項は、現金の分配について規定するものである。
匿名組合における現金の分配は、必ずしも利益の分配と連動させる必要はないが、本モデル約款においては、一般投資家のわかりやすさを考え、分配される利益(但し、損失の補てんに充当された利益は含まれない。)と同額の金銭を分配するものとしている。
もっとも、計算上利益が発生する場合において利益と同額の金銭の支払を行ったときに事業に支障が生じることが見込まれる場合には、そのような事態が生じないような規定にする必要があるため、想定する事業に応じた検討が必要である。
6. 第 6 項について
第 8 条第 6 項は、損失が分配された場合及び損失が補てんされた場合の会計処理の根拠となる規定を定めるものである。
≪優先劣後構造にする場合≫ | |
5 本事業者は、各計算期間末の属する月の 2 ヶ月後応当月の最終営業日までの間で、本事業者が裁量によ | |
り指定する日(以下「金銭配当日」という。)に、前項第(2)号④及び⑤に基づき各優先出資者及び本事 | |
業者に分配された当該計算期間に係る匿名組合利益(もしあれば。但し、前項第(2)号①ないし③に基づ | |
き匿名組合損失の補てんに充当された匿名組合利益は含まれない。)相当額の金銭を各優先出資者に支払い | |
又は本事業者が収受するものとする。 | |
6 本条に基づき分配された匿名組合損失については、同額の出資の払戻しとして会計処理する。また、当 | |
該匿名組合損失が本条に基づき匿名組合利益によって補てんされた場合、同額について出資の増加があっ | |
たものとして会計処理する。 | |
(契約期間) | |
第 9 条 本契約の契約期間は、 年 月 日から 年 月 日までとする。 2 前項にかかわらず、本契約の契約期間内に対象不動産全部の売却等が完了しない場合には、本事業者は、 | ■第 9 条の解説 第 9 条は、本契約の契約期間について規定する。 |
本契約の契約期間の満了日の○ヶ月前までに本出資者に書面又は電磁的方法により通知をすることによ | 約款には、契約期間に関する事項として、不動産特定共同事業契約を締結するときに契約期間を記載す |
り、○年を超えない範囲で本契約の契約期間を延長することができる。 | る欄並びに契約期間の延長を予定する場合にあってはその要件及び手続に関する定め(契約期間を定めな |
【施行令第 6 条第 1 項第 5 号、施行規則第 11 条第 2 項第 5 号】 | い場合にあっては、その旨の定め)を記載する必要がある(施行令第 6 条第 1 項第 5 号、施行規則第 11 条 |
【法第 25 条第 1 項第 5 号】 | 第 2 項第 5 号)。 |
第 9 条第 1 項は、これを踏まえ、契約期間を記載する欄を規定するものであり、第 9 条第 2 項は、契約 | |
期間の延長の要件及び手続を規定するものである。 | |
また、契約成立時交付書面には、契約期間に関する事項を記載する必要がある(不特法第 25 条第 1 項第 | |
5 号)。 | |
個別契約書の作成時に契約期間を記載する欄に具体的な日付を記載することによって、かかる契約成立 | |
(本契約の終了・本事業の清算)【施行令第 6 条第 1 項第 6 号、施行規則第 11 条第 2 項第 6 号イ及びロ】【法 | 時交付書面記載事項が充足されることになる。 |
第 25 条第 1 項第 6 号】 | |
第 10 条 本契約は、以下のいずれかの事由が生じた場合には終了する。かかる事由の発生により本契約が | ■第 10 条の解説 |
終了した場合、本事業者は、本出資者に直ちに通知するものとする。 | 第 10 条は、本契約の終了及び本事業の清算について規定する。 |
(1) 第 9 条に定める本契約の契約期間の満了 | 約款には、契約終了時の清算に関する事項として、契約終了の原因となる事由及び契約終了時の残余財 |
(2) 新たな対象不動産の取得を予定しない場合の対象不動産全部の売却等の完了 | 産の分配の方法その他の清算の手続について明確かつ公正な定めを記載する必要がある(施行令第 6 条第 1 |
(3) 本事業の継続の不能 | 項第 6 号、施行規則第 11 条第 2 項第 6 号イ)。 |
(4) 本事業者に係る破産手続開始の決定 | 契約成立時交付書面には、契約終了時の清算に関する事項を記載する必要がある(不特法第 25 条第 1 項 |
(5) 出資総額が第 2 条第 1 項に定める出資予定総額に満たない場合であって、本事業者が第 2 条第 3 項 | 第 6 号)。 |
に基づき自ら出資を行わないときその他のやむを得ない事由があるとき | 第 10 条は、これらを踏まえ、第 1 項において契約終了の原因となる事由を規定し、第 2 項において契約 |
≪優先劣後構造にしない場合≫ | 終了時の残余財産の分配の方法その他の清算の手続について規定するものである。 |
2 前項の規定によって本契約が終了した場合、本事業者は、本事業において金銭以外の資産があればこれ | 1. 第 1 項について |
を換価処分した上、本事業に係る資産から本事業者報酬を含む本事業に係る一切の債務を弁済し、第 8 条 | 前述のとおり、第 10 条第 1 項は、契約終了の原因となる事由を規定するものである。 |
第 4 項に従い、速やかに最終の計算期間に係る匿名組合損益及び本出資者に分配すべき匿名組合損益を確 | 第 2 条第 2 項の解説で述べたとおり、匿名組合においては、各匿名組合員が営業者との間で締結す |
定し、本事業に属する金銭から清算手続に要する費用その他の残余財産から支払われるべき費用を控除し | る契約はそれぞれ別個独立の契約であるため、契約の終了についても、匿名組合契約ごとに終了事由 |
た金額に出資割合を乗じた金額を本出資者に支払うものとする。
≪優先劣後構造にする場合≫
2 前項の規定によって本契約が終了した場合、本事業者は、本事業において金銭以外の資産があればこれを換価処分した上、本事業に係る資産から本事業者報酬を含む本事業に係る一切の債務を弁済し、第 8 条第 4 項に従い、速やかに最終の計算期間に係る匿名組合損益及び本出資者に分配すべき匿名組合損益を確定し、本事業に属する金銭から清算手続に要する費用その他の残余財産から支払われるべき費用を控除した金額をもって、以下の順序で優先出資者及び本事業者に対して出資の価額の返還を行うものとする。
(1) まず、優先出資総額に満つるまでの金額をもって、優先出資割合に応じて各優先出資者に対して出資の価額を返還する。
(2) 前号の返還後になお残額がある場合、本事業者に対して出資の価額を返還する。
【施行規則第 11 条第 1 項第 4 号、同条第 2 項第 12 号ロ】
【施行規則第 47 条第 2 項第 6 号ハ】
の発生の有無が判断され、また、終了の効果が発生することになる。しかし、本事業者、本出資者及び他の匿名組合契約の匿名組合員は、本事業全体について共通の利害関係を有しており、契約の終了事由についても、本事業に係るすべての匿名組合契約に共通する終了事由と、本契約のみを対象とする終了事由の 2 つが存在する。第 10 条第 1 項は、これらのうち本事業に係るすべての匿名組合契約に共通する終了事由を規定するものである。
対象不動産変更型契約においては、新たな対象不動産を追加取得する予定で対象不動産全部の売却等を行うことも考えられるため、第 11 条第 1 項第(2)号の終了事由を新たな対象不動産の取得を予定しない場合に限定している。
第 10 条第 1 項第(4)号は、商法第 541 条第 3 号を踏まえた終了事由である。商法第 541 条第 3 号においては、匿名組合員が破産手続開始決定を受けたことも終了事由と定められているが、本出資者の破産は本事業全体を終了させるべき事由ではないため、第 10 条第 1 項には規定せず、本契約のみ
を対象とする終了事由として、第 12 条第 3 項に規定している。
約款には、契約終了時の清算に関する事項として、出資が予定した財産に満たない場合であって不動産特定共同事業者等が出資を行わないときその他のやむを得ない事由があるときには、不動産特定共同事業契約が終了する旨の定めを記載する必要がある(施行令第 6 条第 1 項第 6 号、施行規則第
11 条第 2 項第 6 号ロ)。
そこで、第 10 条第 1 項第(5)号において、かかる約款記載事項を踏まえた終了事由を規定している。
2. 第 2 項について
第 10 条第 2 項は、第 10 条第 1 項によって本契約が終了した場合の清算について規定している。匿名組合契約が終了したときは、営業者は、匿名組合員にその出資の価額を返還しなければならな
い(商法第 542 条)。第 10 条第 2 項は、その具体的な手続を定めるものである。
優先劣後構造にしない場合と優先劣後構造にする場合に場合分けして記載しているが、第 8 条第 4
項及び第 5 項と同様に、約款の作成にあたり、いずれか一方を採用して記載することを想定している。
優先劣後構造にする場合の規定については、第 8 条第 4 項の解説で述べたとおり、事業参加者の利回りや元本の安全性を確保するスキームを想定しているため、優先出資に係る出資の価額の返還を優先し、これを行ってなお残余財産がある場合に劣後出資に係る出資の価額の返還を行うこととしている。
また、第 10 条第 2 項は、本契約終了時までに対象不動産の売却が行われていない場合における対
象不動産の売却の手続を定めるものであるため、施行規則第 11 条第 1 項第 4 号及び同条第 2 項第 12号ロの約款記載事項を記載するものでもある。
契約成立時交付書面には、収益又は利益及び契約終了時における残余財産の受領権並びに出資を伴う契約にあっては出資の返還を受ける権利に関する事項を記載する必要がある(施行規則第 47 条第
2 項第 6 号ハ)。
第 10 条第 2 項により、第 10 条第 1 項によって本契約が終了した場合における残余財産の受領権及び出資の返還を受ける権利に関する事項が記載されることになる。
(本契約上の地位の譲渡)
第 11 条 本出資者は、本事業者の事前の書面又は電磁的方法による承諾がある場合に限り、本契約上の地位を譲渡することができる。但し、本事業者は、当該承諾を正当な理由なく拒否できないものとする。
【施行規則第 11 条第 1 項第 5 号、同条第 2 項第 13 号】
【施行規則第 47 条第 2 項第 13 号】
2 本出資者は、前項に基づき本契約上の地位を譲渡した場合、本事業者に対し、本契約上の地位の譲渡に伴う事務手続の対価として、金○円を支払うものとする。
[3 本出資者は、第 1 項に基づき本契約上の地位を譲渡する場合、本事業者に対し、当該譲渡の代理又は媒介に係る契約の締結を申し込むことができる。かかる申込みがあった場合、本事業者は、当該契約の締結を正当な理由なく拒否できないものとする。なお、本出資者が本事業者に対して当該譲渡の代理又は媒介に係る業務を委託する場合、本出資者は、本事業者と別途合意するところにより、本事業者に対し、当該業務に係る報酬を支払うものとする。]
■第 11 条の解説
第 11 条は、本契約上の地位の譲渡について規定する。
1. 第 1 項について
約款には、事業参加者の契約上の権利及び義務の譲渡に関する事項として、契約の相手方である不動産特定共同事業者等の同意を得た場合に限り、事業参加者の契約上の権利及び義務を譲渡することができる旨の定めを記載する必要がある(施行規則第 11 条第 1 項第 5 号、同条第 2 項第 13 号)。
また、契約成立時交付書面には、事業参加者の契約上の権利及び義務の譲渡に関する事項を記載する必要がある(施行規則第 47 条第 2 項第 13 号)。
第 11 条第 1 項は、これらを踏まえ、本事業者の事前の書面又は電磁的方法による承諾がある場合に限り、本出資者が本契約上の地位を譲渡することができることを規定するものである。
本契約においては、本出資者の主導によって本契約を終了させることができる方法として、第 12
条第 1 項に定めるやむを得ない事由が存在する場合等の解除及び第 14 条に定めるクーリングオフに
係る解除のほか、第 12 条第 2 項に定める本契約の全部又は一部の解除があるが、かかる解除はその全部又は一部が認められないことがあるため、本契約上の地位の譲渡は、本出資者にとって、投下資本の回収のための重要な手段である。そこで、本モデル約款においては、第 11 条第 1 項但書を設け、本事業者は本項の承諾を正当な理由なく拒否できないことを定めている。
2. 第 2 項について
第 11 条第 2 項は、第 7 条第 1 項第(4)号に対応し、本事業者の報酬として、本契約上の地位の譲
渡に伴う事務手続の対価を定める。第 7 条第(4)号は本事業者が当該報酬を収受する根拠を定めて
いるが、別途第 11 条第 2 項を定めたのは、当該報酬に係る本出資者の義務を明確にするためである。
なお、第 7 条において当該報酬を規定しない場合には第 11 条第 2 項の規定は不要となる。
3. 第 3 項について
第 11 条第 3 項は、本出資者が本契約上の地位の譲渡をする場合に、本事業者に対して代理又は媒介を委託できる旨の規定である。前述のように、本契約上の地位の譲渡は本出資者の投下資本回収手段として重要であるが、不動産特定共同事業契約上の地位については流通市場があるわけではなく、事業参加者が自ら譲渡先を見つけることは困難である場合も少なくないと考えられる。そのため、本出資者が求めた場合に本事業者が当該譲渡を支援するような仕組みを設けることは、事業参加者保護の観点から有用である。そこで、本モデル約款においては、第 11 条第 3 項の規定を置いている。
但し、かかる代理及び媒介は、不動産特定共同事業契約の締結の代理又は媒介として、第二号事業に該当するため、本事業者がこれを行うためには、第一号事業だけでなく、第二号事業について許可を受けている必要があることに留意する必要がある。そのため、第 11 条第 3 項は、本事業者が第一号事業及び第二号事業の双方について許可を受けている場合のみを対象とする規定ということになる。
なお、施行規則第 11 条第 2 項第 8 号は「不動産特定共同事業者等の報酬の額の算定の方法並びに収受の時期及び方法に関する定め」を約款記載事項とするが、同号の「報酬」は第一号事業者、第三号事業者及び小規模不動産特定共同事業者の報酬を意味し、第二号事業者としての報酬は含まれない
(本契約の解除等)【法第 25 条第 1 項第 7 号、施行規則第 47 条第 1 項第 1 号ないし第 4 号】
第 12 条 本出資者は、やむを得ない事由が存在する場合には、本事業者に対して書面によって通知することにより、本契約を解除することができる。また、本出資者が死亡した場合又は後見開始の審判を受けた場合には、その相続人又は成年後見人は、本事業者に対して書面によって通知することにより、本契約を解除することができる。
2 前項にかかわらず、本出資者は、本項の定めに従い、本契約の全部又は一部を解除することができる。
(1) 本出資者は、毎年 月 1 日から 月末日までの期間(以下「解除希望受付期間」という。)、本事業者に対し、本契約の全部又は一部の解除を希望する旨を書面によって通知(以下「解除希望通知」といい、解除希望通知に記載される解除対象に係る出資の価額を「解除希望価額」という。)することができる。但し、本契約の一部の解除を希望する場合は、解除対象に係る本出資額が○円単位になるように記載しなければならない。
(2) 当該解除希望受付期間における本契約及び他の匿名組合契約に係る解除希望価額の合計(以下「解除希望総額」という。)が直前の営業年度の末日の出資総額の○%(以下「返還上限額」という。)を超えない場合、解除希望受付期間の直後の計算期間の末日をもって、解除希望通知の記載に従って本契約の全部又は一部が解除されるものとする。
(3) 当該解除希望受付期間における解除希望総額が返還上限額を超える場合、解除希望受付期間の直後の計算期間の末日をもって、返還上限額に解除希望価額を乗じ解除希望総額で除した金額に対応する本契約の一部が解除されるものとし、その余の金額に対応する解除希望通知は効力を失うものとする。
(4) 前各号にかかわらず、以下のいずれかの事由に該当する場合、本出資者は本項に基づき本契約を解除することができないものとする。この場合、本出資者の解除希望通知は効力を失うものとし、本事業者は、本出資者に対し、その旨を書面又は電磁的方法により通知するものとする。
① ○年○月○日が経過していない場合
② 当該営業年度における本契約及び他の匿名組合契約の解除に伴う出資の価額の返還を行うことにより、本事業に重大な悪影響が生じるおそれがあると本事業者が合理的に判断する場合
【施行令第 6 条第 1 項第 7 号、施行規則第 11 条第 2 項第 7 号、同項第 7 号の 2】
3 本出資者が破産手続開始の決定を受けた場合には、本契約は当然に終了する。
≪優先劣後構造にしない場合≫
4 前三項又は第 3 条の 2 第 3 項の規定によって本契約の全部又は一部が終了した場合、本事業者は、第 8条第 4 項に準じて、速やかに本出資者に分配すべき本契約の全部又は一部の終了日までの匿名組合損益を算定し、当該損益を分配した場合に生ずる本出資者に対する債権債務を計上した上で、本出資者に対し、出資の価額の返還として、本契約の全部又は一部の終了後[1]ヶ月以内に、本事業の時価純資産額に本出資者の出資割合(但し、本契約の一部の終了の場合には、終了部分に係る出資割合に限る。)を乗じた金額を本出資者の指定する金融機関口座に送金する方法により支払うものとする。
≪優先劣後構造にする場合≫
(平成 29 年の施行規則改正に係るパブリックコメント回答 No.25)。そのため、第 11 条第 3 項に記載される代理・媒介業務の報酬の額の算定の方法等については約款に記載する必要はない。
■第 12 条の解説
第 12 条は、本契約の解除等について規定する。
第 10 条第 1 項の解説で述べたとおり、本契約の終了事由については、本事業に係るすべての匿名組合契
約に共通する終了事由と、本契約のみを対象とする終了事由の 2 つが存在するが、第 12 条第 1 項ないし第
3 項は、これらのうち本契約のみを対象とする終了事由を規定するものである。
1. 第 1 項について
約款には、契約の解除に関する事項として、やむを得ない事由が存する場合に契約を解除し、又は組合から脱退することができる旨の定め、並びにかかる場合を除き、契約を解除し、又は組合から脱退することができる場合にあっては、その条件及び手続に関する定めを記載する必要がある(施行令第 6 条第 1 項第 7 号、施行規則第 11 条第 2 項第 7 号、同項第 7 号の 2)。
また、商法第 540 条第 2 項は、匿名組合の存続期間を定めたか否かにかかわらず、やむを得ない事由があるときは、各当事者はいつでも匿名組合契約の解除をすることができると定める。
第 12 条第 1 項前段は、これらを踏まえ、やむを得ない事由が存在する場合に本出資者が本契約を解除することができる旨を規定するものである。やむを得ない事由については、当事者の重要な義務、例えば、出資・利益分配・営業執行義務等の懈怠、又はその義務の履行不能のような場合をいうと解されている(西原寛一『商行為法』(有斐閣、第三版、昭和 60 年)183 頁、服部榮三・星川長七編『別冊法学セミナーNo.147 基本法コンメンタール[第四版]商法総則・商行為法』(日本評論社、平成 9年)129〔和座一清〕等)。また、国交省事務ガイドライン第 3-2(1)①及び金融庁事務ガイドライン 7-2-2(1)①は、かかる「やむを得ない事由」について、例えば、不動産特定共同事業者が対象不動産に係る不動産取引や収益又は利益の分配等の不動産特定共同事業契約上の重要な義務を正当な理由なく履行しない場合や、当該義務を履行することができなくなった場合、施行規則第 11 条第
2 項第 12 号ロ又は第 15 号イ(5)に掲げる合理的な価格に該当しない価格により対象不動産の売却等又は追加取得を行った場合など、不動産特定共同事業者に不動産特定共同事業契約上の重大な契約違反がある場合や、不動産特定共同事業者に重大な法令違反がある場合のほか、任意組合型において、事業参加者が属する組合の営業方針の変更により、当該事業参加者の利益が著しく害され、共同経営をするに耐えない程度に至った場合を含み、事業参加者が重篤な病気に罹患した場合や重傷を負った場合、地震・火災等に罹災した場合等の事業参加者の自己都合は、「やむを得ない事由」に含まれないとする。
商法第 541 条第 2 号は、営業者の死亡又は営業者が後見開始の審判を受けたことを匿名組合契約の終了事由として定めるが、営業者に該当する本事業者は法人であるので、その適用がない。本モデル約款においては、商法と同様に、匿名組合員の死亡又は匿名組合員が後見開始の審判を受けたことは匿名組合契約の終了事由とはしていない。第一号事業・任意組合契約型モデル約款においては、民法第 679 条第 1 号及び第 3 号を踏まえ、組合員の死亡及び組合員が後見開始の審判を受けたことを組合からの脱退事由として規定している。本モデル約款においても、第一号事業・任意組合契約型モデル
4 前三項又は第 3 条の 2 第 3 項の規定によって本契約の全部又は一部が終了した場合、本事業者は、第 8条第 4 項に準じて、速やかに本出資者に分配すべき本契約の全部又は一部の終了日までの匿名組合損益を算定し、当該損益を分配した場合に生ずる本出資者に対する債権債務を計上した上で、本出資者に対し、出資の価額の返還として、本契約の全部又は一部の終了後[1]ヶ月以内に、本出資者の出資額から本契約の全部又は一部の終了日までに本出資者に分配された匿名組合損失(もしあれば)を控除した額(但し、本契約の終了日までに第 8 条第 4 項第(2)号②に従って補てんされた金額を加算する。)(但し、当該額が本事業の時価純資産額に本出資者の優先出資割合を乗じた金額を上回る場合には、本事業の純資産額に本出資者の優先出資割合を乗じた金額)(但し、本契約の一部の終了の場合には、当該額のうち終了部分に対応する部分に限る。)を本出資者の指定する金融機関口座に送金する方法により支払うものとする。
【施行令第 6 条第 1 項第 6 号、施行規則第 11 条第 2 項第 6 号イ、同項第 7 号の 2】
【法第 25 条第 1 項第 6 号】
【施行規則第 47 条第 2 項第 6 号ハ】
5 本事業者は、業務上の余裕金、特定金銭又は業務外金銭の一部又は全部の運用の中止、流動性の高い対象不動産の売却、新規の借入れ、追加募集等によって調達した資金をもって、前項に定める出資の価額の返還を行うものとする。
6 本出資者及び本事業者は、本事業に対して出資を行う匿名組合契約の解除が多発したときは、本事業を継続できなくなるおそれがあることを確認する。
【法第 25 条第 1 項第 7 号、施行規則第 47 条第 1 項第 5 号】
約款と同様に本契約が当然に終了するという規定を置くことも考えられるが、匿名組合員は出資者としての立場で事業に関与するにすぎず、当然に本契約を終了させる必要はないことから、旧標準約款と同様に、相続人や後見人が本契約上の地位を一旦承継した上で解除することができるものとしている。
契約成立時交付書面には、契約の解除に関する定めがあるときには、その内容として、契約の解除又は組合からの脱退の可否及びその条件、契約の解除又は組合からの脱退の方法、契約の解除又は組合からの脱退に係る手数料、契約の解除又は組合からの脱退の申込期間を記載する必要がある(不特法第 25 条第 1 項第 7 号、施行規則第 47 条第 1 項第 1 号ないし第 4 号)。
第 12 条第 1 項は、これらを踏まえ、契約の解除の可否及びその条件として、やむを得ない事由が存在する場合、本出資者が死亡した場合及び後見開始の審判を受けた場合に本契約の解除が可能であること、契約の解除の方法として、書面によって通知する方法によるべきことを規定している。契約の解除に係る手数料及び契約の解除の申込期間については、記載しないことによって手数料及び申込期間がないことを意味するものと考えられ、記載しなくとも契約成立時交付書面記載事項の充足に問題はないと解されるため、記載していない。
2. 第 2 項について
第 12 条第 1 項の解説で述べたとおり、約款には、契約の解除に関する事項として、やむを得ない事由が存する場合を除き、契約を解除し、又は組合から脱退することができる場合にあっては、その条件及び手続に関する定めを記載する必要がある(施行令第 6 条第 1 項第 7 号、施行規則第 11 条第
2 項第 7 号、同項第 7 号の 2)。
国交省事務ガイドライン第 3-2(1)②及び金融庁事務ガイドライン 7-2-2(1)②は、対象不動産変更型契約に基づき不動産特定共同事業を行う場合であって、特に特例投資家に該当しない者を事業参加者とし、契約期間が長期にわたる場合には、当該定めとして、例えば営業年度ごとに発行済み出資口数の一定割合について、契約の解除又は組合からの脱退が可能である旨の定め等があることが望ましいとする。
第 12 条第 2 項は、これらを踏まえ、一定の条件の下、本出資者による本契約の全部又は一部の解除を認める規定を設けたものである。
かかる解除については、これを無制限に認めると本事業への悪影響が生じる可能性があるため、一定の範囲に限定せざるを得ないが、事業参加者の解除の希望がかかる範囲を超える場合をどのように取り扱うかについては、様々な制度設計があり得るものと考えられる。先着順又は抽選によって解除できる者を選別することも考えられるが、先後関係の認定や抽選の客観性・平等性の確保が難しいなど実務的な課題があることから、本モデル約款においては、解除を希望する対象に対応する出資の価額に応じて割合的に解除を認めることとした。
第 12 条第 2 項第(1)号但書における本契約の一部の解除を希望する場合の解除対象に係る本出資額の単位は、募集時における出資の単位と同じ金額とすることを想定している。同項第(3)号に基づく本契約の一部の解約により、本出資者に係る本出資額の残額が当該単位を下回ることも考えられるが、その場合でも、残額すべての解除であれば「本契約の一部の解除を希望する場合」には該当しないため、同項(1)号本文に基づき解除を希望することができるものと考えられる。
本事業の状況によっては第 12 条第 2 項の解除を認めると本事業に重大な悪影響が生じ、他の匿名
組合契約に係る事業参加者が不利益を被ることになることも考えられるため、第 12 条第 2 項第(4)号に、解除が認められない場合の規定を設けている。
3. 第 3 項について
第 10 条第 1 項の解説で述べたとおり、第 12 条第 3 項は、商法第 541 条第 3 号を踏まえた本契約の終了事由である。
4. 第 4 項について
前述のとおり、約款には、契約終了時の清算に関する事項として、契約終了の原因となる事由及び契約終了時の残余財産の分配の方法その他の清算の手続について明確かつ公正な定めを記載する必要がある(施行令第 6 条第 1 項第 6 号、施行規則第 11 条第 2 項第 6 号イ)。
また、契約成立時交付書面には、契約終了時の清算に関する事項を記載する必要がある(不特法第 25 条第 1 項第 6 号)。
第 12 条第 4 項は、これらを踏まえ、第 12 条第 1 項ないし第 3 項又は第 3 条の 2 第 3 項によって本契約の全部又は一部が終了した場合の清算手続について規定したものである。
第 10 条第 2 項の解説で述べたとおり、匿名組合契約が終了したときは、営業者は、匿名組合員に
その出資の価額を返還しなければならない(商法第 542 条)。第 12 条第 4 項は、第 10 条第 2 項と同様に、その具体的な手続を定めるものである。
第 12 条第 4 項に基づく清算は、本事業に係るすべての匿名組合契約に共通する終了事由ではないため、本契約の終了にかかわらず、他の匿名組合契約は終了せず、本事業は存続することになる。本事業に係る出資金を対象不動産の取得に充てている場合、本事業に係る財産には第 12 条第 4 項の出資の価額の返還を行うだけの現金が存しないことも想定されるところであり、これを行うと本事業に悪影響が生じる可能性がある。いわゆる GK-TK スキームにおける匿名組合契約では、出資の価額の返還によって事業の継続に支障が生じる場合には当該支障が解消されるまでこれを延期することができる旨の規定を置くことがあるが、本モデル約款は、一般投資家が事業参加者になる事業を想定しており、事業参加者の投下資本の回収が制限されることになるこのような規定は設けなかった。もっとも、出資の価額の返還を行うことによって事業に悪影響が生じた場合、他の匿名組合契約に係る事業参加者が不利益を被ることになる。これを避けるための方策としては、第 12 条第 1 項又は第 3 項に
定める事由が発生した場合に、契約の終了及び出資の価額の返還という方法ではなく、第 11 条に基づく本契約上の地位の譲渡によって本出資者の本事業からの離脱及び投下資本の回収を図ることが考えられる。そのため、第 12 条第 1 項又は第 3 項に定める事由が発生した場合、本事業者としては、本出資者等と協議し、本契約上の地位の譲渡を行うように誘導・説得することも検討に値するものと思われる(但し、第 12 条第 3 項に定める事由が発生した場合については、破産管財人や裁判所との協議が必要であり、かかる方法を採り得るとは限らないことに留意されたい。)。本事業者が第二号事業の許可を受けている場合には、第 11 条第 3 項に規定する代理又は媒介という手段によってこれを支援することもできる。
5. 第 5 項について
国交省事務ガイドライン第 7-6(1)④及び金融庁事務ガイドライン 7-6-6(1)④は、契約成立前交
付書面に記載するべき「契約の解除又は組合からの脱退に当たり事業参加者が出資の返還を受けることができる金額の計算方法及び支払方法」(施行規則第 43 条第 1 項第 15 号ハ)について、業務上の余裕金や追加取得準備金等(特定金銭及び業務外金銭を意味する(国交省事務ガイドライン第 5(1) ①及び金融庁事務ガイドライン 7-4(1)①)。)の一部又は全部の運用の中止、流動性の高い対象不動産の売却、新規の借入れや追加募集等、事業参加者に償還する金銭を調達する方法が具体的に記載されている必要があるとする。かかる事項は、約款記載事項ではないが、契約成立前交付書面は不動産特定共同事業契約の内容及びその履行に関する事項を記載するものであるから(不特法第 24 条第 1 項)、本契約においてかかる事項の記載をする必要があるものと考えられる。 本モデル約款は、基本的にそのまま個別契約書として利用することを想定したものであるため、第 12 条第 5 項にかかる事項についての規定を設けたものである。 6. 第 6 項について 契約成立時交付書面には、契約の解除に関する定めがあるときには、その内容として、契約の解除又は組合からの脱退が多発したときは、不動産取引を行うことができなくなるおそれがある旨を記載する必要がある(不特法第 25 条第 1 項第 7 号、施行規則第 47 条第 1 項第 5 号)。 第 12 条第 6 項は、これを踏まえ、本事業に対して出資を行う匿名組合契約の解除が多発したときは、本事業を継続できなくなるおそれがあることを本出資者及び本事業者の間において確認する旨の 規定を設けたものである。 | |
(反社会的勢力排除条項) 第 13 条 本出資者及び本事業者は、反社会的勢力を排除すべく、別紙 5 の規定に従うものとする。 | ■第 13 条の解説 第 13 条は、反社会的勢力排除条項について規定する。 反社会的勢力排除条項は、約款記載事項でも契約成立時交付書面記載事項でもないが、社会的に要請の強い事項であり、また、不動産特定共同事業者において反社会的勢力との関係を遮断すべきことは、国交省事務ガイドライン第 10 及び金融庁事務ガイドライン 7-9 が求めるところでもある。そこで、第 13 条として、反社会的勢力排除条項を規定している。 反社会的勢力排除条項は、様々な表現の規定があり、各事業者において雛形を有していることも考えられることから、本モデル約款においては、具体的な規定を設けるのではなく、別紙 5 に各事業者における反社会的勢力排除条項を記載できるようにしている。 反社会的勢力排除条項においては、反社会的勢力との関係を遮断できるようにするため、解除条項を定めるべきであるが、契約の解除に関する事項は約款記載事項であるため(施行令第 6 条第 1 項第 7 号)、約 款の作成にあたっては別紙 5 などに解除に関する記載をする必要があると考えられる。 |
(クーリングオフ)【法第 25 条第 1 項第 7 号、施行規則第 47 条第 1 項第 1 号ないし第 4 号】 第 14 条 本出資者は、法第 25 条の書面の交付を受けた日から起算して 8 日を経過するまでの間、本事業者に対して書面によって通知することにより、本契約を解除することができる。 2 前項に基づく解除は、本出資者が本契約の解除を行う旨の書面を発したときに効力を生じる。前項に基づく本契約の解除によって、本出資者は何らの手続を要することなく当然に本事業に係る出資者でなかったものとみなされる。 【法第 25 条第 1 項第 7 号、施行規則第 47 条第 1 項第 6 号】 | ■第 14 条の解説 第 14 条は、クーリングオフについて規定する。 事業参加者は、不特法第 26 条に基づき、クーリングオフをすることができる。不動産特定共同事業契約 において同条第 1 項ないし第 3 項より事業参加者に不利な定めを設けたとしても、無効となる(不特法第 26 条第 4 項)。第 14 条は、これを踏まえ、不特法第 26 条に基づくクーリングオフについて確認的に規定するものである。 |
3 第 1 項に基づき本契約が解除された場合、本事業者は、本出資者に対し、出資金額を返還するものとし、その解除に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することはできないものとする。 | 1. 第 1 項について 第 14 条第 1 項は、不特法第 26 条第 1 項の内容を確認的に規定したものである。 第 12 条第 1 項の解説で述べたとおり、契約成立時交付書面には、契約の解除に関する定めがあるときには、その内容として、契約の解除又は組合からの脱退の可否及びその条件、契約の解除又は組合からの脱退の方法、契約の解除又は組合からの脱退に係る手数料、契約の解除又は組合からの脱退の申込期間を記載する必要がある(不特法第 25 条第 1 項第 7 号、施行規則第 47 条第 1 項第 1 号ない し第 4 号)。 第 14 条第 1 項は、クーリングオフに係る解除について、かかる契約成立時交付書面記載事項を定めるものでもある。 2. 第 2 項について 第 14 条第 2 項は、不特法第 26 条第 2 項の内容を確認的に規定したものである。 契約成立時交付書面には、契約の解除に関する定めがあるときには、その内容として、不特法第 26 条第 1 項の規定による契約の解除は、当該契約の解除をする旨の書面を発した時に、その効力を 生ずる旨を記載する必要がある(不特法第 25 条第 1 項第 7 号、施行規則第 47 条第 1 項第 6 号)。 第 14 条第 2 項は、かかる契約成立時交付書面記載事項を定めるものでもある。 3. 第 3 項について 第 14 条第 3 項は、不特法第 26 条第 3 項の内容を確認的に規定すると共に、本出資者に対する出資金額の返還について規定したものである。 4. 実務上の工夫について 本出資者から出資を受け、それによって対象不動産を取得した後にクーリングオフがなされると、本出資者に対する出資金の返還原資が本事業に係る財産にないというような事態も想定されるところである。 そのため、実務上は、クーリングオフの期間が終了するまでの間は本出資者に出資させない又は対 象不動産を取得しないといった工夫をする必要があると考えられる。 |
(準拠法・管轄) 第 15 条 本契約は、日本国の法律に準拠し、日本国の法律に基づき解釈され、日本国の法律に基づき執行されるものとする。 2 本契約に関する紛争については○地方裁判所を専属的合意管轄裁判所とする。 | ■第 15 条の解説 第 15 条は、準拠法及び管轄について規定する。 一般的な契約書における準拠法・管轄に係る規定を踏まえたものとしている。 |
(規定外事項) 第 16 条 本契約に定めのない事項については、商法その他の関係法規に従うほか、本出資者及び本事業者が信義に則り誠意をもって協議の上定めるものとする。 | ■第 16 条の解説 第 16 条は、規定外事項について規定する。 一般的な契約書において規定される内容を踏まえたものとしている。 |
[以下余白] |
上記を証するため、本契約を 2 通作成し、本出資者及び本事業者が各自記名捺印の上、各 1 通を保有する。
年 月 日本出資者
本事業者 [許可番号]
[本店所在地]
[社名]
[代表者]
【施行規則第 47 条第 2 項第 1 号、同項第 3 号、同項第 5 号】業務管理者
[業務管理者名]
【法第 25 条第 2 項】
■記名・押印頁の解説
契約成立時交付書面には、次の事項を記載する必要がある。
・当事者の商号若しくは名称又は氏名及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名(事業参加者にあっては、その商号若しくは名称又は氏名)(施行規則第 47 条第 2 項第 1 号)
・不動産特定共同事業者の許可番号(施行規則第 47 条第 2 項第 3 号)
・不動産特定共同事業契約を締結した年月日(施行規則第 47 条第 2 項第 5 号)
また、契約成立時交付書面には、業務管理者が記名押印する必要がある(不特法第 25 条第 2 項)。
記名・押印頁には、これらを踏まえて、契約締結日を記載する欄、本出資者及び本事業者に関する事項を記載する欄並びに業務管理者が記名押印する欄を設けている。
別紙 1
物件目録
(所在、地番、土地面積、延べ床面積その他の対象不動産を特定するために必要な事項を記載する)
(例示) 1.土地
所 在:
地 番:
地 目:
地 積:
2.建物
所 在:家屋番号:種 類:
構 造:床 面 積:
3.新築建物
所 在:
種 類:
構 造:床 面 積:
(土地及び建物については登記簿記載事項、新築建物については計画概要)
別紙 2
対象不動産の追加取得の方針
(1) 追加取得する不動産の所在地域、延べ床面積、構造方法、用途及び建築後の経過年数並びに敷地面積その他の追加取得する不動産の選定の基準
(2) 地域別、用途別その他の追加取得する対象不動産に係る分類別の比率の予定
(3) 追加取得に係る借入れに関する制限
(4) 追加取得する対象不動産の稼働率の基準
(5) その他本事業に係る出資者の判断に重大な影響を与える事項
■別紙 2 対象不動産の追加取得の方針の解説
第 3 条第 4 項の解説において述べたとおり、別紙 2 対象不動産の追加取得の方針は、追加取得の方針に関する事項を記載する欄を設けるものである。
施行規則第 11 条第 1 項第 2 項第 15 号イ(1)は、不動産特定共同事業契約の締結をするときに対象不動産の追加取得の方針に関する次に掲げる事項を記載する欄を設けることを求めている。
(i) 追加取得する不動産の所在地域、延べ床面積、構造方法、用途及び建築後の経過年数並びに敷地面積その他の追加取得する不動産の選定の基準に関する事項
(ii) 地域別、用途別その他の追加取得する対象不動産に係る分類別の比率の予定が明らかである場合にあっては、当該比率に関する事項
(iii) 追加取得に係る借入れに関する制限に関する事項
(iv) その他事業参加者の判断に重大な影響を与える事項
別紙 2 第(1)号ないし第(3)号及び第(5)号は、これらの事項についての欄を設けたものである。また、国交省事務ガイドライン第 3-2(1)⑦及び金融庁事務ガイドライン 7-2-2(1)⑦は、施行規則第
11 条第 1 項第 2 項第 15 号イ(1)(iv)に規定する「その他事業参加者の判断に重大な影響を与える事項」とは、例えば、追加取得する対象不動産の稼働率の基準等、当該不動産に係る収益やコンプライアンス等に関わる事項であって、事業参加者の保護や投資判断に重大な影響を与えるものをいうとする。
別紙 2 第(4)号は、これを踏まえ、追加取得する対象不動産の稼働率の基準について記載する欄を設けたものである。もっとも、対象不動産の稼働率を追加取得する不動産の選定の基準にしない場合には、必ずしもかかる欄を設ける必要はないと考えられる。
かかる事務ガイドラインからすれば、別紙 2 第(5)号には、本契約を締結するときに、予定する事業に応じて、対象不動産の追加取得の方針のうち、追加取得する対象不動産に係る収益に関する事項(追加取得する対象不動産の利回りに関する基準等)やコンプライアンス等に関する事項(本事業者やその利害関係人からの対象不動産の追加取得に関する事項等)など、事業参加者の保護や投資判断に重大な影響を与えるものを記載することが考えられる。事業参加者の適切な投資判断の確保の観点からは、どのような方
別紙 3 針で運用がなされるのかがなるべく明確になっていることが重要であると考えられる。
(1) 追加募集に係る募集額の決定方法
追加募集の手続
■別紙 3 追加募集の手続の解説
第 2 条の 2 第 2 項、第 4 項及び第 5 項の解説において述べたとおり、別紙 3 追加募集の手続は、追加募集に係る手続等、追加募集に関する事項を規定するものである。
本事業者は、対象不動産の追加取得その他の本事業の遂行又は継続に関し合理的に必要な資金需要を踏まえ、追加募集に係る募集額を決定することができる。
(2) 追加募集の方法その他追加募集の手続
① 本事業者は、追加募集を行う場合、まず、本出資者及び他の匿名組合契約の匿名組合員(以下「既存出資者」と総称する。)に対し、出資割合に応じて追加募集を行う。
② 本事業者は、前①の追加募集に基づく既存出資者による出資が追加募集に係る募集額に不足する場合、当該不足額について、他の既存出資者に対して追加募集を行う。かかる追加募集については、出資割合に応じて行う必要はないものとする。
③ 本事業者は、前①及び②の追加募集に応じた既存出資者による出資が追加募集に係る募集額に不足する場合、当該不足額について、第三者との間で匿名組合契約を締結し、当該第三者から出資を受けることができる。
[(3) 追加募集に係る募集額の累計額の上限
(4) 前号記載の累計額の上限を超える追加募集を行う場合の手続
前号記載の累計額の上限を超える追加募集を行う場合、本事業者は、既存出資者の出資割合の 3 分
の 2 の事前の承諾を得るものとする。]
(5) 想定される既存の権利の価格変動の概要
1. 別紙 3 第(1)号について
本モデル約款においては、追加募集に係る募集額の決定方法について、機動的な資金調達ができるように、第(3)号に記載される追加募集に係る募集額の累計額の上限を超える場合でない限り、本事業者に裁量を与える内容にしている。
2. 別紙 3 第(2)号について
追加募集の手続については、既存の出資者の保護の観点から、1 口あたりの出資額の算定方法を定め、追加募集時点の 1 口あたりの時価純資産額によって募集することとすることも考えられるが、本モデル約款においては、「口」という単位を設ける内容になっていないため、かかる手続にはしていない。
この点、本モデル約款においては、第 2 条の 2 第 5 項及び別紙 3 第(5)号において、既存の権利
の価格が変動するリスクが指摘されるとともに、別紙 3 第(2)号において、既存の出資者に対して優先的に追加募集を行うこととし、既存の出資者に希薄化を防ぐ機会を与えることによって、一定程度既存の投資家の保護が図られていると考えられる。
3. 別紙 3 第(3)号及び第(4)号について
第 2 条の 2 第 4 項の解説において述べたとおり、追加募集に係る募集額の累積額の上限を定めるこ
とは必須ではなく、これを定めない場合には別紙 3 第(3)号及び第(4)号を規定する必要はない。本モデル約款においては、追加募集に係る募集額の累計額の上限を超える追加募集を行う場合の手
続について、株式会社の発行可能株式総数の増加に係る定款変更に関し株主総会の特別決議が必要とされていることを参考にして(会社法第 466 条、第 309 条第 2 項第 11 号)、既存出資者の出資割合の
3 分の 2 の事前の承諾を必要とした。
4. 別紙 3 第(5)号について
第 2 条の 2 第 5 項の解説において述べたとおり、別紙 3 第(5)号は不動産特定共同事業契約の締
結をするときに想定されるその変動の概要を記載する欄(施行規則第 11 条第 2 項第 15 号ト(4))を規定するものである。
当該欄については、個別契約書を作成する際に具体的な記載がなされることになる。
なお、かかる「想定されるその変動の概要」については、国交省事務ガイドライン第 3-2(1)⑬及び金融庁事務ガイドライン 7-2-2(1)⑬において、例えば、優先劣後構造がある場合において、優先出資部分に係る追加募集を行う場合における劣後出資部分の既存の事業参加者や、同順位の出資であっても追加募集の条件がそれ以前の募集に係るものより有利なものである場合における既存の事業参加者が有する不動産特定共同事業に係る権利の価格が下落すること等、当該追加募集により事業参加者の権利の価格に生ずることが想定される主な変動の概ねの内容が分かるものをいうとされている。
■別紙 4 助言契約の相手方の説明
第 5 条の 4 の解説において述べたとおり、別紙 4 助言契約の相手方は、助言契約を締結する場合にのみ必要となるものである。
各欄の具体的な記載については、個別契約書を作成する際に記載することになる。
反社会的勢力排除条項
別紙 5
(5) 不動産投資顧問業者の場合は、不動産投資顧問業者の登録を受けている旨
(4) 契約の内容
(3) 代表者の氏名
(2) 住所
(1) 商号若しくは名称又は氏名
助言契約の相手方
別紙 4