Contract
xx区情報漏えい事件及び工事発注の方法等についての報告書(答申)
令和 3 年 11 月
足立区公契約等審議会
目 次
Ⅰ はじめに
Ⅱ 情報漏えいに至った原因及び問題点の検証
第2 本件事件発生の要因の分析・再発防止に向けた改善策 11
1 入札参加資格要件等の工事発注の方法等に係る制度及び運用の見直しの必要性 11
(1) 要因:十分な数の入札参加事業者が確保されない中で、一定期間内に工事を行わなければならない場合があること 11
(2) 改善策:入札参加資格要件や受注制限等の工事発注の方法等に係る制度や運用を見直す 12
(1) 要因:事後公表制度の試行時に研修が行われていなかったこと 15
Ⅲ 予定価格の公表のあり方、工事発注の方法等についての提言
1 xx区の工事請負契約における予定価格の公表制度の経緯について 17
(1) 平成 17 年度:事後公表制度から事前公表制度への変更 17
(2) 予定価格の事後公表を定めた閣議決定及び地方公共団体への通知 17
(4) 平成 30 年度:予定価格 1 億円以上の工事の入札について事後公表とする試行. 19
2 予定価格の事後公表及び事前公表の検証結果と今後の方向性 19
(1) 落札率等から見た予定価格の事後公表及び事前公表の検証結果 19
(2) 競争条件が異なる場合の予定価格事前公表の入札結果の検証について 22
(4) 予定価格の事後公表の拡大の必要性と当面の拡大範囲 23
3 予定価格事後公表案件に関する発注予定価格帯の事前公表について 24
(1) xx区における建設共同企業体(JV)対象工事の概況 46
(3) 建設共同企業体(JV)の望ましい在り方について 47
(4) 他の 17 区の建設共同企業体(JV)結成対象工事に関する状況 47
(5) xx区における建設共同企業体(JV)への発注方法の見直しについて 48
(7) 他の区における受注制限等の措置の状況等について 58
(9) 受注制限等に関するxx取引委員会等の見解について 58
(4) 区が取るべき不落随契及び入札不調による再公告入札の方法について 61
7 最低制限価格未満での入札による不落への対応について 61
(2) 最低制限価格及び低入札調査基準価格の動きとその影響 62
(4) 区における最低制限価格制度及び低入札価格調査制度の運用の改善 63
13 本報告書で検討した予定価格の公表のあり方、工事発注の方法等についての課題と改善の方向性について 67
Ⅳ 結語
参考資料 令和元年度工事入札 主な業種別落札率等の状況(契約課契約分)
Ⅰ はじめに
1 本報告書について
令和元年 11 月 22 日に逮捕された学校運営部学校施設課の職員(当時)の収賄事件をきっかけに、xx区が内部調査を続けていたところ、同時期に学校運営部の課長職にあった職員が、令和元年 5 月から同年 6 月頃、事業者に対し、10 件の該当工事のう
ち予定価格 1 億円以上の 4 件の工事に係る予定価格を公表前に漏えいしたという情報漏えい事案があったことが判明した(以下「本件事件」という。)。
本件事件は、刑事事件としては立件されていないものの、警察において捜査が行われ、その過程において、当該職員が区に対して上記事実を供述したこと等から、令和 3 年 3 月 4 日付けで区長が当該職員に対して守秘義務違反(地方公務員法第 34 条第 1
項)等に抵触するとして懲戒処分(停職 6 月)を行った。
令和 3 年 3 月 30 日付け 2 足xx発第 2616 号において、xxxxより、xx区公契約等審議会(以下「当審議会」という。)に対して、「情報漏洩に至った原因及び問題点の検証、並びに予定価格の公表のあり方、工事発注の方法などについての提言」を行うよう、xx区公契約条例第 16 条第 2 項第 3 号の規定による、調査、審議の諮問がなされた。
当審議会は、同年 3 月 30 日以降、事務局(総務部契約課)から提出された資料等を
中心に 6 回の臨時会を開催して調査、審議するとともに、同年 5 月以降は補助者とし
て 3 名の弁護士を起用して関係資料の調査及び関係者のヒアリング等を行わせた。また、その間、事務局をして庁内の工事関係技術管理職の意見の聴取・報告をさせるとともに 8 月 10 日、11 日には、建築等 4 業種 8 事業者に対するヒアリングを行い、審議会の問題意識等に関する各事業者の認識、見解等の把握に努めた。
本報告書は、当審議会として、前記諮問に対する調査及び審議の結果を報告するものである。
2 当審議会について
(1) 委員の構成
氏名 | 推薦所属団体等 | 役職 |
xxxx | 弁護士 | 会長 |
xxxxx | xxxx大学モチベーション行動科学部 教授 | 副会長 |
xxxx | 公認会計士 | 委員 |
x xx | 前区代表監査委員 | 委員 |
(2) 開催の状況
開催回数 | 開催日 |
第 1 回 | 令和 3 年 3 月 30 日 |
第 2 回 | 令和 3 年 5 月 7 日 |
開催回数 | 開催日 |
第 3 回 | 令和 3 年 6 月 25 日 |
第 4 回 | 令和 3 年 9 月 2 日 |
第 5 回 | 令和 3 年 9 月 17 日 |
第 6 回 | 令和 3 年 10 月 20 日 |
3 調査の方法等
(1) 関係資料の調査
足立区から提供を受けた関係資料一式及びデータ、並びにxx区が行った他区
(東京 23 区のうちxx区を除く 22 区等)の実態調査の結果に基づいて調査を行った。
なお、本報告書は、xx区から提供を受けた関係資料及びデータ、並びに他区の実態調査の結果の内容が真正であることを前提として検討・提案を行っているものであり、当該関係資料やデータの内容の真正は当審議会の調査対象外であることに留意されたい。
(2) xx区の職員を対象としたヒアリングの実施
以下の者を対象に、補助者である弁護士をして、ヒアリングを行わせた(実施日はいずれも令和 3 年であり、対象者の役職等は、平成 31(令和元)年度時点のものを記載している。)。
実施日 | 対象者の役職等(平成 31(令和元)年度当時) | |
1 | 6 月 1 日 | 学校運営部 主事 |
2 | 6 月 1 日 | 学校運営部 係長 |
3 | 6 月 2 日 | 総務部 契約課 工事契約係 主事 |
4 | 6 月 2 日 | 総務部 契約課長 |
5 | 6 月 17 日 | 都市建設部 まちづくり課長(元学校運営部 課長) |
6 | 6 月 17 日 | 総務部長 |
7 | 6 月 18 日 | 学校運営部 課長(対象職員) |
なお、ヒアリングの実施にあたっては、対象者に対し、ヒアリングの目的について、事件発生の要因、現行の入札制度とその運用などについて検証し、再発防止策について提言することであり、対象者の懲戒処分等の責任追及を行うことではない旨を伝え、実態をありのままに説明するよう依頼している。
(3) 事業者を対象としたアンケート調査及びヒアリングの実施
令和 3 年 8 月 10 日及び 11 日には、xx区内に事業所を置く 4 業種(建築、一般
土木、電気、空調・給排水)の 8 事業者に対するヒアリング(以下「事業者ヒアリング」という。)を実施した。ヒアリングの方法は、予め会社名と回答内容が公開されないことを前提に各事業者に回答を依頼した「xx区の入札制度に関するルール
についてのアンケート」に対する回答票をもとに、1 事業者 40 分前後の時間で、個別に公契約審議会の委員等と事業者が質疑応答する形で行ったものである。
4 調査の範囲・対象について
本報告書の調査は、主として契約課契約についての問題点に焦点を当てて実施しており、調査の範囲・対象は、それに限定されていることに留意されたい。
Ⅱ 情報漏えいに至った原因及び問題点の検証
第1 本件事件について
1 本件事件の経過
令和元年 5 月から同年 6 月頃、当時学校運営部の課長であったxx区職員(以下
「対象職員」という。)が、xx区に本店を置く特定の建築事業者に対し、当該年度の予定価格 1 億円以上の事後公表工事のうち 4 件の工事に係る予定価格を公表前に漏えいしたことが発覚した。
令和 3 年 3 月 4 日、xx区は、本件漏えい行為が地方公務員法 32 条(法令等及び上
司の職務上の命令に従う義務)、同法 33 条(信用失墜行為の禁止)及び同法 34 条 1 項
(秘密を守る義務)に違反するものとして、対象職員を停職 6 月の懲戒処分とした。
2 本件事件の内容
(1) 予定価格を漏えいした経緯ア 対象職員の業務の概要
対象職員は、平成 29 年 4 月 1 日から令和 2 年 3 月 31 日までの間、xx区教育委員会事務局学校教育部の課長職として、同人が所管する課(以下「対象課」という。)全体のマネジメント業務及び議会対応業務(答弁書の作成、委員会の出席等)等の職務に従事していた。
イ 区立学校のトイレ洋式化工事計画の短縮の経緯と対象職員の対応業務
(ア) 平成 27 年・28 年:7 年計画の策定
足立区においては、平成 27 年度に、建設コストの急激な上昇により区立学校の改築や大規模改修を円滑に推進することができなくなったことから、それまで改築や大規模改修の際に実施していたトイレの洋式化工事を短期集中的に実施するとの方針変更がされた。
平成 28 年 2 月 24 日のxx区議会定例会において、xx区は、平成 29 年度
から平成 35 年度(令和 5 年度)までの 7 年間で、区立学校のうち 67 校(小学
校 44 校、中学校 23 校)のトイレ洋式化工事を実施することを答弁した。
(イ) 平成 29 年:7 年計画から 6 年計画への短縮
平成 29 年 4 月 20 日には、区議会文教委員会において、前記トイレ洋式化工
事を、平成 29 年度から平成 34 年度(令和 4 年度)までの 6 年間に短縮して実施することが答弁された。
(ウ) 平成 30 年:6 年計画から 4 年計画への短縮
その後、平成 29 年度・平成 30 年度は、年度計画どおりにトイレ洋式化工事
を含めた工事の発注が行われていたところ、平成 30 年 7 月 14 日に開催された
「子ども議会」において、生徒から学校のトイレを綺麗にしてほしい旨の要望が出された。
xx区としては、子ども議会の要望を真摯に受け止め、また、給排水設備事
業者団体との間で、年間の発注件数が 2 倍になっても対応できるとの見通しがついたことを踏まえ、令和4 年度までと計画されていたトイレ洋式化計画(6 年計画)を、令和 2 年度までに終わらせる計画(4 年計画。実際には、平成 31
(令和元)年度から令和 4 年度の 4 年間で行う工事を、平成 31(令和元)年
度・令和 2 年度の 2 年間で行う計画)に短縮して進めることとし、平成 30 年
10 月 15 日に、区議会文教委員会において答弁した。
この結果、トイレ洋式化工事の工事計画は、下記表 1 のとおり変更された。ただし、当時、職員の中には、上記の短縮により発注業務(設計委託作業・
起工作業等)の負担が倍増することや、トイレ洋式化工事を受注できる A 又は B ランクの区内本店の給排水設備事業者数が足りないこと等から、短縮した計画どおりに実行することは難しいと考える者もいたようである。
表 1 トイレ洋式化工事実施計画の変更
トイレ洋式化工事実施学校数 | ||
実施年度 | 変更前(6 年計画) | 変更後(4 年計画) |
平成 31(令和元)年度 | 20 校 | 35 校 |
令和 2 年度 | 23 校 | 37 校 |
令和 3 年度 | 22 校 | 0 校 |
令和 4 年度 | 7 校 | 0 校 |
(エ) トイレ洋式化工事の契約事務
トイレ洋式化工事は、児童・生徒らに支障をきたさないように授業がない夏休み中に騒音や振動が激しい工事を行わなければならない。また、夏休み中であっても課外活動や地域イベント等で学校が使用されるので、トイレが全て使用できない状況になることを避けるため、学校ごとに工事を2 回に分けて、2 年間かけて行うのが通常である。
そして、工期は、契約締結日の翌日から 10 月下旬までの間の 5 か月程度を見
込むのが一般的であり、契約締結日は入札が行われる 5 月下旬頃になる。
その上で、7 月 21 日から 8 月 31 日までの夏休み期間に、既存トイレの撤去
工事(騒音振動が大きい工事)を行い、授業が始まる 9 月 1 日からは、比較的音の出ない内装工事や衛生器具設置工事などを行って、授業に影響のある工事を土日に行うというのが一般的な工事日程となる。
したがって、例えば、ひとつの学校のトイレ洋式化工事を平成 31(令和元)年度までに終える場合、①平成 29 年度に設計委託を発注し、②平成 30 年度に
1 回目の工事を発注し、③平成 31(令和元)年度に 2 回目の工事を発注するという、3 回の発注手続きを踏むことになる。
(オ) 短縮に伴う対応
平成 30 年 10 月に 6 年計画から 4 年計画に短縮となった際は、平成 31(令和
元)年度の工事件数を増やすために、平成 30 年度中に設計委託を発注する必要
のあった合計 15 校分の設計委託について、追加発注業務が発生している。
また、平成 31(令和元)年度については、令和 2 年度に発注する工事の設計委託の追加発注業務に加えて、平成 31(令和元)年度分の工事発注業務も 15
校分増加し、合計 35 校分発生している。
令和 2 年度については、37 校分の工事発注業務が発生する予定であったが、新型コロナウィルスの影響により多くの工事が延期された。
(カ) 平成 31 年 2 月:設備から建築への発注業種の変更
その後、平成 31 年 2 月頃、教育委員会内で平成 31(令和元)年度の工事計
画を立てるための会議を行い、xx区内の給排水設備事業者だけでは平成 31
(令和元)年度に発注されるトイレ洋式化工事 27 件に対応するのは難しいと判
断し、そのうち 10 件は、建築事業者に発注するという方針を決定した。
そして、対象職員は、給排水設備事業者と建築事業者の業者数も考慮しつつ、双方に同程度の発注額となるよう 10 件のトイレ洋式化工事の発注を建築事業者 に振り分け、年度計画を策定した。
(キ) 平成 31 年 3 月・4 月:受注制限・入札参加制限の緩和・変更の決定
また、平成 31(令和元)年度に予定されていた 27 件(給排水設備工事 17 件、
建築工事 10 件)のトイレの洋式化工事は、従来に比べて発注件数が急増しているため、xx区が定めている入札及び受注に関する規制措置(各規制措置の内容及び定義は、後記(2)イ参照。)が適用されると、入札が不調になることが懸念された。
そのため、平成 31 年 3 月 28 日の入札参加資格要件審査委員会で、給排水工事については、公表時期・入札方法が同一の入札期間に「事業者は空調工事と給排水設備工事を合わせて 1 件しか受注できない」とする受注制限を「空調工
事と給排水設備工事について各 1 件ずつ、最大 2 件受注を可能」と緩和することが決定された。
また、建築工事についても、平成 31 年 4 月 12 日付で、トイレの洋式化工事
6 件を含む同年 4 月 10 日から 5 月 31 日までに公表される予定価格 6000 万円以
上の 16 件の工事については、異なる公表時期、異なる入札方式であっても受注
制限を適用するものの、落札した場合でも 2 か月間の入札参加制限の対象外とするという緩和措置が公表された。
ウ 予定価格の漏えい
対象職員は、令和元年 5 月から 6 月頃に、xx区に本店を置く特定の建築事業者(以下「A 社」という。)の役職員(以下「B 氏」という。)に、本来事後公表
(入札手続終了(落札決定)後に公表する)である予定価格(落札決定の上限額)を入札前に漏えいしたことを認めているが、その具体的な事実は概ね以下であっ たことを述べている1(※ただし、B 氏は、区の聴取に際して、学校運営部の課長
(対象職員)から予定価格の漏えいを受けたことに関しては、「記憶がない」と説明している)。
対象職員によると、X xから、平成 31(令和元)年度の初めに挨拶を受けた際、
1 対象職員の供述は、同人が情報を漏洩したと供述している 4 件の小中学校のトイレ洋式化工事の客観的な入札及び落札経過や、それらの工事入札に関する落札率が 99%台後半以上と極めて高いものとなっていることと整合している。また、対象職員は、懲戒処分の際の事情聴取に際しても、本件調査におけるヒアリングと同様の具体的かつ詳細な供述をしており、その供述内容は基本的に一貫している。これらのことからすると、対象職員が、少なくとも小中学校のトイレの洋式化工事の予定価格を漏えいしたとする事実に関する供述の信用性は高いものと認められる。
庁舎内の一室において、公表された工事計画について、トイレ洋式化工事が建築業種での発注となった理由や、トイレ洋式化工事は一体いくら位の金額なのかと問われ、どれくらいの金額の工事なのかが分かっていればこちらで何とかするといった趣旨の話をされたとのことである。対象職員は、これに対し、当初は予定価格等を教えることはできないと断ったものの、最終的には、建築事業者側が受注してくれなければ工事が年度内にできなくなり、トイレ洋式化計画が実現できないと思い、設備発注の工事と建築発注の工事に分けて、予定価格が事後公表である 4 件のトイレの洋式化工事の予定価格や発注時期、決裁日等が記載された資料を見せたとのことである。
ところが、トイレ洋式化工事の各案件の開札手続きが行われたところ、建築事業者に発注したトイレ洋式化工事 10 件のうち 6 件(事後公表 4 件中 3 件、事前公
表 6 件中 3 件)もの入札が不調となった。対象職員は、夏休みの工期に間に合わせるためにはすぐさま次の入札手続きの段取りをしなければならないと焦りを強く感じ、自分から前記 B 氏に架電し、不調になった旨を伝えるとともに、再度、区庁舎内の一室において面会した際に、何とか建築事業者で落札してもらうよう依頼をしたとのことである。
エ その後の経過
その後、建築発注のトイレ洋式化工事 10 件のうち不調となった 6 件について 2
回目の入札手続きが行われた。そのうち、予定価格を漏えいした 2 件を含む 3 件
は落札されたが、残る 3 件はいずれも不調で終了した。最終的に不調となった 3件の工事については、夏休み中の工期との関係から当該年度中に工事を行うことはできない状況となった。
なお、対象職員からのヒアリングでは、前記以外に事業者に対して予定価格を漏えいした具体的な事実は確認できなかった。
(2) 制度等の状況
ア 予定価格の算定・管理・公表について
(ア) 予定価格の設定・算出方法
予定価格 130 万円以上の契約課契約の工事案件については、原則として、工事を予定している前年度までに設計業者に設計委託を発注し、xx区が成果物として図面や内訳書(工事単価・金額は記載なし)を受領した上で、それらを元に担当職員が各工事の起工書(起案文書、工事概括書、図面、内訳書)を作成する。
その際、工事の予定価格の算定のために、職員は積算システムを利用しており、積算システムに職員が設計事務所から受領した内訳書記載の工事項目・数量を打ち込むと、区が採用している各工事の価格が自動的に入力される仕組みとなっている。
(イ) 予定価格の管理
予定価格は、起工書のうち起案文書や内訳書に記載されているが、担当者はパソコンで内訳書等の書面を作成し、紙に出力した上で、係長、計画調整係、課長、部長、副区長、区長と、決裁区分に応じて決裁に回される。
積算システムにログインするためのパソコンは共用で、ログインする際のパ
スワードも固定されているため、他の案件の工事予定価格を課内の他の職員が見ようと思えば見られる状況であり、また、決裁時は起工書を紙で決裁権者に持ち込む必要があるので、決裁前に、印刷した予定価格が記載されている起工書がデスク上に置かれたままの状況であることもしばしばあるとのことであった。
契約決定後は、予定価格が記載された書類は対象課のキャビネットに保管される。当該キャビネットには鍵がついているものの、対象課の職員は誰でも見られる状況にあるとのことである。
イ 予定価格が6000 万円以上の工事の入札参加資格要件・受注に関する制限等、予定価格の公表(事前・事後)及び事業者数
トイレの洋式化工事は、予定価格 6000 万円以上の工事に該当する工事が多数
であるところ、xx区においては、予定価格 6000 万円以上の工事について、入
札参加資格要件として以下の表 2 の①、②が設けられ、入札参加資格要件を満たす場合でも、受注の方法や入札に参加できる期間等について、以下③、④の制限
(以下、③、④の制限を総称して「受注制限等」という。)が設けられている。 さらに、後記Ⅲの第1のとおり、予定価格 1 億円以上の工事については、平成
30 年度より解体工事を除いて予定価格を事後公表とする試行が継続している。
入札参加資格要件・制限等 | 略称 | |||
① | 事業者の等級格付が A 又は B ランクであること2 | 等級要件 | ||
② | 区内本店事業者であること3 | 区内本店要件 | ||
③ | 同種工事等の入札案件で、公表時期・入札方法が同一かつ適正な入札を執行するために十分な事業者数を確保できる場合は、当該落札した入 札案件以降に開札を行う入札案件に参加する資 | 受注制限 | ||
格を有しない |
表 2 予定価格 6000 万円以上の工事等に関する入札参加資格要件等
4
2 xx区においては、地方自治法施行令第 167 条の 5 第 1 項及び同施行令 167 条の 11 第 2 項に基づく建設工事等競争入札参加者の資格に関する公示(xx区告示第 203 号)により、申請者の施工能力に基づき、業種ごとに等級を定めて、競争入札参加資格を定めることとしている。また、建築、土木、電気、空調・給排水の業種の各事業者は、経営事項審査を受けることとされ、当該事業者の従業員数、経営の近代性、営業年数、会計監査や過去 7 年間の最高完成工事高などを点数化して、建築、土木系業種は Aから E、電気・空調・給排水は A から D の等級格付を取得する。区の指名基準によって、予定価格の金額区分ごとに、受注することができる等級が指定されている。個別の入札案件によっては、入札参加資格要件審査委員会において、予定価格の金額区分ごとの等級要件などを緩和するということが行われている。
3 区内本店事業者とは、区内に登記上の本店所在地として営業所等を置き、又は区内に法令等により許
可等を受けた本店(建設業においては建設業法上の主たる営業所)を置き、営業を行う者をいう。
4 xx区公共工事の入札に係る受注制限基準第 3 条
入札参加資格要件・制限等 | 略称 | |||
④ | 建築、一般土木及び電気等の工事業者は、予定価格 6000 万円以上(空調・給排水工事業者は 500 万円以上)の工事を落札した場合は、開札日 から 2 か月以内(空調・給排水工事業者は1か月以内)に公表される同種工事等の入札に参加 | 入札参加制限 | ||
することができない |
5
xx区において、前記①及び②を満たす区内本店事業者数は、現在、建築事業者、給排水設備事業者とも 24 社あるが、事業者には民間向けの工事しか受注しない者もおり、また、事業者が抱える技術者の数にも限りがあり、必ずしも常に受注できる事業者がいるというものでもない。そのため、多数の工事を発注する際などには、後記ウ(ウ)の入札参加資格要件審査委員会において、入札参加資格要件・受注に関する制限等を緩和し、工事を受注できる事業者数を確保できるように調整をした上で発注しているとのことである。
ウ 入札手続きに係る契約事務
(ア) 年度計画の策定
足立区では、発注業務を担当する各課が、次年度の発注工事について、前年度の 2 月頃までに各課内で取りまとめ(部によっては所管課の課長・部長等が参加する調整会議を開催することもある。)、工事計画を策定している。
各部課で策定した年度計画については、契約課に提出され、予算案が議決された後の翌年度 4 月以降、契約課から事業者に対して、「公共工事年間発注予定表」(当該年度に発注予定の工事として各案件の工事概要・工事種別・入札予定時期・工期等が記載されているもの)として公表している。各事業者はこれを見て、当該年度に、業種ごとにどのような工事が発注されるかを把握し、どの案件の入札に参加するかを検討するとのことである。
(イ) 区立学校の改修工事の流れ
区立学校の改修工事の場合、児童・生徒のいない夏休み中に工事を行う必要があることから、通常は、毎年、予算議決後の 4 月以降、対象課の各係で起工作業及び決裁区分に応じた決裁を経て契約課に契約請求がされる。そして、契約課において 5 月中には入札手続を行って受注業者を決定し、6 月は現場等の準備期間とし、7 月から8 月に施工をする、という流れをとるのが通常である。
(ウ) 入札参加資格要件審査委員会
足立区においては、xx区入札参加資格要件審査委員会設置要綱(平成 19 年
3 月 29 日助役決定 18 足xx発第 1089 号。以下「設置要綱」という。)に基づき、xx区が発注する工事の請負契約並びに設計、測量及び地質調査の委託契約に関し、競争入札のxx性を確保し、その適正かつ円滑な執行を確保するため、xx区入札参加資格要件審査委員会(以下「入札参加資格要件審査委員会」
5 xx区公共工事に係る入札参加制限実施基準第 3 条
という。)が設置されている。
同委員会は、総務部長を委員長とし、当該契約請求主管部長、総務部契約課長、当該契約請求主管課長、総務部契約課工事契約係長をもって組織され(設置要綱第 3 条)、予定価格 6000 万円以上の工事請負契約又は予定価格 3000 万円以上の設計、測量及び地質調査の委託契約があるときに開催されている。
同委員会の所管事項は、設置要綱第 2 条により、①契約事務規則第 5 条の規
定に基づく一般競争入札及び同規則第 34 条の規定に基づく指名競争入札を行うにあたっての参加資格要件設定に関すること、及び②入札及び契約手続に係る重要事項に関することとされている(予定価格 6000 万円以上の工事請負契約
又は予定価格 3000 万円以上の設計、測量及び地質調査の委託契約に限るものとされている。)。
具体的には、各工事案件の入札参加資格要件について、次の月の発注工事について、各要件の緩和の要否等について検討したうえ、個別案件ごとに、入札参加資格要件を決定している。
同委員会の運営の実態として、予定価格 6000 万円以上の工事請負契約に関して、等級要件や受注制限、入札参加制限等については、工事件数が多い場合には、本件トイレの洋式化工事に見られるように適宜、議論されて、要件の緩和が行われているとのことである。
しかし、少なくとも平成 31(令和元)年度までは、区内本店要件の緩和(区 内支店事業者6や区外事業者7の入札参加を認めること)については、区内本店 事業者に実績がないような工事(橋りょう工事や防災井戸のような専門工事等)の場合を除いて行われることはほとんどなかったとのことである。
(エ) 入札が不調となった場合
足立区においては、予定価格 1 億円以上の工事案件(事後公表案件)につい
ては合計 3 回まで入札を行うこと(再度入札)を可能とする運用とされている
ところ(「工事請負、物品供給等競争入札参加者心得(電子入札用)」第 21 条 4
項)、結果的に当該入札が不調となった場合は、発注担当課が改めて起工作業
(起工書の作成等)をした上で決裁区分に応じた決裁を経て契約課に契約請求をすることになる。そのうえで、契約課が改めて公告を実施して入札手続きを進める必要があるため、2 回目の入札(以下、一般競争入札案件において入札手続きが不調に終わった際に、公告からやり直す場合の 2 回目の入札手続き、及び指名競争入札案件において入札手続きが不調に終わった場合に指名からやり直す 2 回目の入札手続きを「再公告入札」という。)が開札されるまでには普
通、約 1 か月の事務手続期間が発生する。
また、再公告入札にかける場合は、1 回目の入札が不調になった要因を分析し、要因に応じて予定価格や工事内容の変更等を行うことになる。
例えば、入札額が予定価格を超過して不調(不落)となった場合には、入札者にヒアリング等を行って予定価格が低いと判断される場合には、予定価格を引き上げることになる。入札者がいなかった場合などには、入札参加制限等が適用されない指名競争入札に切り替えて再公告入札にする場合もあり、状況によっては、予定価格を変更することなく、同じ条件で工事件名だけを変更して
6 区内本店事業者以外の者で、区内に契約権限を有する代理人を設置し、かつ、支店、支社等として営業所等を置いて営業している者をいう。
7 区内本店事業者又は区内支店事業者以外の区内に営業所等を置いて営業していない者をいう。
再公告入札をする場合もあるとのことである。
なお、区立学校の工事については、再公告入札や、再公告入札も不調に終わった場合に公告又は指名からやり直す 3 回目の入札では、当初の夏休み中の工期を維持できない(間に合わない)ことがあり、この場合は、学校側とも当初の予定から工期を変更する調整をするものの、多くの場合は、学校行事等との関係で当年度の工事を見送り、次年度に工事を持ち越すことになるとのことである。
(オ) 不落随契の不適用
平成 17 年度から全ての工事の予定価格が事前公表とされたことから、いわゆる不落随契(再度入札を行った入札者の入札額が予定価格を上回り、落札者がいない場合に、最も予定価格に近い入札者等と予定価格以下の金額での随意契約を行うこと)も行われないこととなった。
平成 30 年度からは、解体工事を除く 1 億円以上の工事の予定価格が事後公表となったことから不落となる入札も生じているが、特別なケースを除いて不落随契は行わない原則は継続されている。
不落随契が行われていない理由としては、全件事前公表のときの方針、他の入札者から見たxx性及び具体的な不落随契の方法等が決められていないことなどがあるものと考える。
いずれにしても、予定価格と入札額の差が小さい場合であっても再公告入札の手続を行わなければならず、工期の延期が困難な工事においては、不落随契を行わないこととする原則の継続は、職員へのプレッシャーとなる場合もあるとのことである。
第2 本件事件発生の要因の分析・再発防止に向けた改善策
前記第1の2を踏まえると、本件事件発生の要因及び再発防止に向けた改善策として、以下が考えられる。
1 入札参加資格要件等の工事発注の方法等に係る制度及び運用の見直しの必要性
(1) 要因:十分な数の入札参加事業者が確保されない中で、一定期間内に工事を行わなければならない場合があること
前記第1の2(2)イのとおり、現状、xx区においては、予定価格 6000 万円以上 の工事について、入札参加資格要件として①等級要件、②区内本店要件が設けられ、さらに入札参加資格要件を満たす場合でも、受注の方法や入札に参加できる期間等 について、③受注制限、④入札参加制限といった制限が設けられている。
これらの制限は、入札参加資格要件審査委員会において、本件トイレ洋式化工事等、短期間で多数の同種工事を行う必要が生じる場合には、入札が不調にならないように緩和されている。しかし、区内本店事業者が既に多くの工事を受注して施工できる技術者が不足している場合や工事の内容や価格に魅力がない場合などには、想定どおりには入札参加者数が増えないことがあるとのことである。
これらの状況と前記のとおり一定期間内に工事を実施しなければならないといった事情が重なると、工事の担当職員に、何としてもいずれかの事業者に落札させなければならないとのプレッシャーが生じ、特定の業者に受注をさせようとの不正を行う動機が生ずるものと考えられる。
本件でも、前記第1の2(1)イ(キ)のとおり、制限の緩和及び発注業種の変更の対
応が取られていたものの、対象職員においては、入札参加者の確保に懸念が生じており、これと一定期間内に工事を実施しなければならない事情が相まって、事業者に予定価格を漏えいして受注をさせようとの不正を行う動機が生じたものと思料される。結果としても、対象職員が 4 件の事後公表のトイレ洋式化工事の予定価格を施工事業者に漏えいしたにもかかわらず、3 件の工事について入札不調となり、再公告入札になったことからしても、区内に本店のある A 又は B ランクの建築事業者において、入札参加者を確保することは難しかったと考えられる。
この点、ヒアリングによると、仮に本件が当初から区外事業者に対しても入札参加資格を与えていた場合は、短縮された 4 年計画であっても不調とならずに発注できていたと考える職員が多数であった。
したがって、xx区の現在の入札参加資格要件・受注に関する制限等の規定及び運用状況が、入札不調を避けるために、対象職員をして区内事業者に予定価格の漏えいを含む受注の依頼を行わせた要因の一つとなったと考えられる。
(2) 改善策:入札参加資格要件や受注制限等の工事発注の方法等に係る制度や運用を見直す
発注件数に対して十分な数の入札参加事業者が確保され、また、工事を予定どおりに発注・完了させることを目指して、現行の入札参加資格要件、受注制限等の工事発注の方法等に係る制度やその運用の見直しを行う必要があると考えられる。この点については、後記Ⅲで詳述する。
2 職場環境に関する要因・改善策
(1) 工事計画の策定について
ア 要因:実現困難な工期の設定
前記のとおり、予定価格が漏えいされたトイレ洋式化工事については、当初は 7 年計画であったものを 4 年間で行う旨の計画変更がされたところ、この短縮を可能と考えた背景には、①給排水設備事業者から受注可能との見通しが示されたこと、②本来は給排水設備事業者に発注する工事であるトイレ洋式化工事を建築業者にも発注することでより円滑な入札が可能になると判断されたことがあったと考えられる。
もっとも、今回ヒアリングした多数の職員が、区外事業者が入札に参加できない状況において、4 年計画へ短縮することは業務上困難なものであると考えていた。また、実際上も、建築事業者側としては、トイレ洋式化工事を受注すると自社施工ができず、下請けに給排水設備事業者を入れることになり、自社で建築工事を行うよりも利益分が少なくなること等から、トイレ洋式化工事の受注に消極的な業者もおり、スムーズな実現には困難な面があったと考えられる。
このことは、平成 31(令和元)年度の建築発注のトイレ洋式化工事 10 件のうち 3 件(事後公表 1 件、事前公表 2 件)が再公告入札も不調で当該年度に工事をすることができずに終了しているという入札結果とも整合している。
これらのことから、トイレ洋式化工事について、入札参加事業者を区内本店事業者に限定したままで建築事業者にも発注する 4 年計画の円滑な実現は難しかったと考えられる。
このように実現が難しい工事計画が策定されたことを含めて、計画遂行に係る対象職員のプレッシャーが大きくなったことも本件の要因の一つと考えられる。
なお、工事計画の前倒しについては、業務量の増加により職員の工事監督・設
計業務がおろそかになる可能性がある。
イ 改善策:公共調達計画等に関する第三者機関による助言
大型の公共調達計画を立案する場合など、必要と認められる場合には、公契約等審議会等の第三者による専門機関に報告し、工事の発注件数と受注可能事業者数などの需給要因の観点や労務的観点等を踏まえた適正な入札参加資格要件の設定等に関する助言を受けられることとする。
(2) 業務量・人員配置について
ア 要因:業務過多ないし人手不足
対象課においては、他の区保有・管理施設と比して築年数の古い学校施設が多いことから、自然災害等による緊急対応業務が生じる場合も多い。また、計画的な修繕工事についても、夏休みを工期とする工事の要望が多いことから、年度当初に起工業務が集中するといった特性がある。これらにより、対象課は、他の発注課と比べて、業務過多ないし人手不足があったことがヒアリングからうかがわれた。
以上のように、元々の業務の繁忙さに加えて、トイレ洋式化計画による対応業務が発生したことで、対象職員のみならず、他の担当職員、係長等も含めた対象課全体が業務過多の状況になり、入札の不調による追加業務が生じることを避けようという動機が生まれやすい環境であったことも、本件事件発生の背景事情の一つとなっていたと考えられる。
イ 改善策:管理職を含めた職員の人員配置の見直し
対象課職員の業務量について見直し、年次計画にはない主管課契約となる工事が発生することや過去の実際の業務量等も踏まえた上で必要な人員が配置されているかについて検討する。
もっとも、令和 3 年 4 月 1 日より組織体制が変更されており、本件当時の状況からは改善が図られているとのことであるため、これらも踏まえ継続的に人員配置の見直しを検討することが望まれる。
3 機密情報の管理等について
(1) 事業者との面会
ア 要因:一対一で面会をすることが可能な状況であったこと
今般、予定価格の漏えいが行われたのは、庁舎内の個室であるところ、事業者からは、受注・契約後の具体的な工事に関するやり取りだけではなく、年度始まりの挨拶等での連絡がくることもあるが、職員と事業者が一対一で面会をすることについて制限がされていなかったとのことである。
そのような状況にあっても、一対一の面会にはリスクがあることを熟知しているはずの管理職である対象職員が、庁舎内の個室において事業者に予定価格を漏えいしたことは極めて残念なことである。
いずれにしても、職員と事業者との癒着を生み出しやすい状況となっていたことが、本件事件発生の要因の一つとして挙げられる。
イ 改善策:複数対応原則、面会記録の作成等の形骸化を防ぐ取り組みを継続する
足立区では、令和 3 年 3 月末に「利害関係者等との接触に関する指針」と「xx区への提言・要望等に関する取扱規程」を全面改正し、職員に対して利害関係者(事業者等)との面会は原則複数で行うとともに、さぐり行為(予定価格や入
札参加者に関する情報などを得ようとする行為)があった場合の上司への報告、 特定要求(正当な理由なく、特定の者に対して有利又は不利な取扱いを求めるこ となど)等に関する記録の作成と公益監察事務局(コンプライアンス推進担当課)への通報など、組織的に対応する方針を定め、令和 3 年 6 月から職員を対象に研 修も開始しているとのことである。
これらの規程改正は極めて有意義と思料されるが、改正された規定が形骸化し ないよう、事業者等との面会、要望については、記録の作成を徹底するとともに、継続的に、研修やコンプライアンス推進通信等を通じて、規程改正の趣旨や具体 例等を示して、職員及び管理職の理解を深めていく必要がある。
また、事業者に対しても、予定価格等の厳格管理情報の入手、さぐり行為等を行うことが違法行為であることを強く認識させるため、当該行為について『xx区競争入札参加停止及び指名停止措置要綱』による制裁の見直し(厳格化)等を行うべきである。
(2) 個別案件に関する問合せについて
ア 要因:事業者からの連絡が直接発注担当者に来る状況であること
入札案件については、対象課において起工業務を終えると、契約課に契約請求をして契約課から事業者に対して入札情報が公表されるところ、入札情報とともに、「担当課連絡票」が公開され、「担当課連絡票」には、当該工事の発注業務を担当した対象課職員の名前と電話番号(係ごとのもの)が記載され、入札参加事業者から対象課の発注担当職員に対して直接問合せがくる制度となっている。
例えば、入札参加業者に対して公表される「内訳表」(金額の記載なし)には、
「~その他資料一式」といった記載がされることが多いところ、その「資料一式」の内容について、入札参加事業者から問合せが来るという場合である。
この問合せについては、書面で来る場合と電話で来る場合があり、担当者は適宜係長に相談する等して回答をしているとのことであるが、ルール化はされていないとのことである。
「入札・調達業務従事職員研修」(後述)受講後の職員アンケートにおいても、
「さぐり行為を行ってくる事業者への具体的な対処方法を知っておきたい」「業者が窓口を通さず入室し職員の自席まで来ることが見受けられる」などの要望や指摘もあった。
このように、担当者が入札参加事業者と直接連絡をすることが可能である状況も、本件の要因の一つと考えられる。
イ 改善策:契約課を通じた連絡体制とする、2 名での対応ルールを徹底する
事業者からの問合せの窓口を、入札業務を担当する契約課とし、事業者は契約課に対して質問事項を書面で提出し、契約課が担当課に連絡の上、担当者から契約課に書面での回答をする体制とすることが考えられる。
もっとも、事業者が契約課に対して質問事項を書面で提出し、担当課から契約課を通じて書面で回答をする方法をとると、事務処理に時間が必要になることから、開札までの期間が長くなることが想定されるため、従来どおり担当課で対応する場合は、改正された利害関係者等との接触に関する指針に定められているとおり、担当職員と係長の 2 名で対応することが考えられる。
あわせて、職員に対する研修はもちろんのこと、事業者に対する周知も必要となると考えられる。
(3) 機密情報の管理について
ア 問題点:予定価格の管理体制について
予定価格を含む機密情報の管理の観点からは、前記のとおり、①積算システムにログインするためのパソコンは共用で、ログインする際のパスワードも固定されているため、他の案件の工事予定価格を課内の他の職員が見ようと思えば見られる状況であること、②予定価格が記載された起案文書については、各担当者がパソコンで書面を作成し紙媒体で出力しているところ、決裁前に印刷をした予定価格が記載されている起案文書がデスク上に置かれたままの状況となることもよくあること、③契約決定後は、予定価格が記載された書類が対象課のキャビネットに保管されるところ、当該キャビネットには鍵がついているものの、課の職員は誰でも見られる状況にあること等の状況も、改善の余地があると思料する。
本件においては、これらの予定価格の管理体制の不備が漏えいの直接の要因となったものではないが、予定価格の管理体制が厳格に行われていない状況は、予定価格の秘匿性の意識の欠如につながる可能性もあるため、実務の状況を見ながら、必要に応じて改善することが望ましい。
もっとも、ヒアリング結果によると、工事の起案の際に、他の案件の予定価格を参考にすることもあるとのことであり、業務の効率化をもたらす側面もあるようであることに留意すべきである。
イ 改善策:予定価格の管理体制の見直し(厳格化)の検討
他の案件の予定価格を参考にする場合の具体的な態様、どのような情報が必要であるか等を改めて確認したうえ、原則として、必要のある情報を、必要な者のみが参照できるように、パスワードや文書の管理体制を見直すよう検討する必要があると考えられる。
4 職員の法的素養・遵法意識について
(1) 要因:事後公表制度の試行時に研修が行われていなかったこと
後述のとおり、xx区においては、平成 30 年度から予定価格が 1 億円以上の入札案件について事後公表制度を試行的に導入しているところ、事後公表制度を導入する際に、予定価格の取り扱いや漏えいの禁止に関する研修等は行われていなかったようであった。
職員らに研修は行われていなかったとはいうものの、予定価格を事業者に漏えいしてはいけないことは、少なくとも技術職員には常識として広く共有されているはずである。本来、機密情報管理を指導するべき立場の対象職員の法的素養・遵法意識の欠如も本件事件発生の一つの要因となったものと考えられる。
(2) 改善策:研修等の定期的、継続的な実施
全庁的に、発注に携わる職員を中心に、独占禁止法(入札談合)、入札談合等関与行為防止法(官製談合)、刑法(贈収賄、談合罪、入札妨害罪)、地方公務員法(秘密漏えい)、クレーム対応、特定要求、利害関係者等との接触等についての研修その他の教育を継続的に実施することが必要と考えられる。
この点は、令和元年 11 月に発覚した主管課契約に係る贈収賄事件の再発防止策と
して、既に令和 3 年 2 月にコンプライアンス推進担当課が独占禁止法、入札談合等関与行為防止法及び刑法等に関するテキスト及び確認テスト等を作成し、工事入札等に係る課の職員 493 名に対して自席学習方式で「入札・調達業務従事職員研修」を実施している。
当該研修は、受講率 100%を達成するとともに、受講後のアンケート(確認テストを含む。)では、受講した職員の 96.8%が「職務に活用できる内容だった」と評価し、受講した工事入札等に係る課の職員の 42.6%がテキストの内容(入札談合や官製談合等)に関して「知らないことが多かった(「どちらかといえば知らないことが多かった」を含む)」と回答されており、職員の法的素養の向上が図られていることが伺える。
xx区では、令和 3 年度から前記の研修を全庁展開する方針とし、庁内各課に研修実施を求めているが、各課の具体的な受講人数、確認テストの結果の把握等は行っていないとのことである。しかし、研修の実施が各課任せになり、形骸化しないためにも、職員の異動時期に合わせてこれらの研修を継続し、対象者の受講の確認などを行う等、全庁的に法的素養・遵法意識の向上が図られていることを把握する体制を構築し、徹底していくべきでる。
また、xx区では、職員に対するコンプライアンスに関する情報提供及び啓発として「コンプライアンス推進通信」を配信し、確認テストも行っているとのことであり、このような職員への周知活動も、引き続き継続することが重要である。
Ⅲ 予定価格の公表のあり方、工事発注の方法等についての提言
第1 予定価格の公表のあり方について
1 xx区の工事請負契約における予定価格の公表制度の経緯について
(1) 平成 17 年度:事後公表制度から事前公表制度への変更
足立区においては、元々、工事請負契約の入札について、予定価格(落札上限価格)を事後公表としていたが、その後、「入札・契約制度改革プラン」(平成 17 年 1
月)により、不正な働きかけをなくすため、平成 17 年度から工事請負契約の電子入札案件について、予定価格を事前公表とした。
(2) 予定価格の事後公表を定めた閣議決定及び地方公共団体への通知
国においては、平成 23 年 8 月に「公共工事の入札及び契約の適正化を図るための
措置に関する指針(平成 13 年 3 月 9 日 閣議決定、平成 23 年 8 月 9 日・令和元年 10
月 18 日一部変更。以下「入xx適正化指針」という。)」が改定され、「予定価格については、入札前に公表すると、予定価格が目安となって競争が制限され、落札価格が高止まりになること、建設業者の見積努力を損なわせること、入札談合が容易に行われる可能性があること、低入札価格調査の基準価格又は最低制限価格を強く類推させ、これらを入札前に公表した場合と同様の弊害が生じかねないこと等の問題があることから、入札の前には公表しないものとする。」として、事前公表を行わないことが確認された。
一方、地方公共団体に対しても、平成 23 年 8 月 25 日の総務大臣及び国土交通大
臣通知「公共工事の入札及び契約の適正化の推進について(総行行第 126 号、国土
入企第 14 号。以下、「総務大臣通知」という。)」において、「低入札価格調査基準価格及び最低制限価格は、その事前公表により、当該近傍価格へ入札が誘導されるとともに、入札価格が同額の入札者のくじ引きによる落札等が増加する結果、適切な積算を行わずに入札を行った建設企業が受注する事態が生じるなど、建設企業の真の技術力・経営力による競争を損ねる弊害が生じうること、地域の建設業の経営を巡る環境が極めて厳しい状況にあることにかんがみ、事前公表は取りやめ、契約締結後の公表とすること。また、予定価格についても、その事前公表によって同様の弊害が生じかねないこと等の問題があることから、事前公表の適否について十分に検討した上で、弊害が生じた場合には速やかに事前公表の取りやめ等の適切な対応を行うものとすること」等が要請された。
(3) 平成 29 年度:事後公表制度の試行的導入
足立区においては、予定価格を事前公表にした平成 17 年度以降、業界等から、積算しないで安値入札が可能になることなどから予定価格の事前公表は止めるよう要請を受けており、また、平成 23 年 8 月の入xx適正化指針及び総務大臣通知への対応を含めて、事後公表の導入が検討課題とされていた。一方で、平均落札額及び落札率も平成 25 年頃から上昇傾向となり、後記表 3 のとおり、平成 28 年度の予定価
格 1 億 8000 万円以上の工事では、一部の業種(解体)を除いて、ほとんどの工事の落札率が 99.9%台(最高 99.99%~最低 98.39%)と、落札額は予定価格近傍に高止まりする状況が出現した。
表 3 平成 28 年度の各業種の高額工事の落札率等の状況(予定価格事前公表)(単位:円)
入札工事名称 | 業種 | 予定価格(税込) | 契約額(税込) | 落札率 | 落札者 |
鹿浜菜の花中学校新築 工事 | 建築 | 4,399,920,000 | 4,396,680,000 | 99.93% | 3JV |
小台・宮城地区公共施 設新築工事 | 建築 | 907,956,000 | 907,740,000 | 99.98% | 2JV |
江北地域学習センター 大規模改修工事 | 建築 | 381,434,400 | 375,300,000 | 98.39% | A 社 |
伊興小学校外構その他 工事 | 建築 | 384,685,200 | 383,292,000 | 99.64% | B 社 |
鹿浜菜の花中学校電気 設備工事 | 電気 | 390,225,600 | 389,880,000 | 99.91% | 2JV |
xx菜の花中学校空調 設備工事 | 空調 | 346,302,000 | 346,140,000 | 99.95% | 2JV |
xx菜の花中学校給排 水設備工事 | 給排水 | 361,173,600 | 361,119,600 | 99.99% | 2JV |
xx小学校旧校舎その 他解体工事 | 解体 | 299,937,600 | 246,132,000 | 82.06% | 2JV |
江北中学校旧校舎その 他解体工事 | 解体 | 291,891,600 | 237,276,000 | 81.29% | 2JV |
区画整理工事(xx 12-2 期) | 下水道 | 214,935,120 | 212,760,000 | 98.99% | C 社 |
注1 本表は平成 28 年度の予定価格 1 億 8000 万円以上の工事の落札状況である。
注2 いずれの工事も、原則として等級格付A又はBで、区内に本店を置く事業者のみが参加できる工事である。
注3 落札者の 3JV とは 3 者による、2JV とは 2 者による建設共同企業体が落札したことを示している。
平成 28 年度の公契約等審議会において、前記のとおり落札率が高くなって競争性
が確保されているか疑問であること等について議論がなされ、その結果、平成 29 年
度に 8 件の工事(2 件の学校の新築工事について各 4 業種)に関して、予定価格の事
後公表を試行することとした。試行の結果が以下の表 4 である。
表 4 平成 29 年度の予定価格を事後公表とした工事の落札率等の状況 (単位:円)
入札工事名称 | 業種 | 予定価格(税込) | 契約額(税込) | 落札率 | 落札者 |
千寿小学校改築工事 | 建築 | 3,949,246,800 | 3,618,000,000 | 91.61% | 3JV |
xx小学校改築電気設備工事 | 電気 | 438,004,800 | 433,080,000 | 98.88% | 2JV |
xx小学校改築空調設備工事 | 空調 | 361,303,200 | 352,080,000 | 97.45% | 2JV |
xx小学校改築給排水設備工事 | 給排水 | 388,778,400 | 374,760,000 | 96.39% | 2JV |
差額:3 億 5941 万円 | 小計 | 5,137,333,200 | 4,777,920,000 | 93.00% |
入札工事名称 | 業種 | 予定価格(税込) | 契約額(税込) | 落札率 | 落札者 |
xxx中学校新築工事 | 建築 | 3,466,854,000 | 3,330,828,000 | 96.08% | 3JV |
xxx中新築電気設備工事 | 電気 | 435,434,400 | 432,000,000 | 99.21% | 2JV |
xxx中新築空調設備工事 | 空調 | 349,833,600 | 333,959,760 | 95.46% | 2JV |
xxx中新築給排水設備工事 | 給排水 | 306,590,400 | 296,784,000 | 96.80% | 2JV |
差額:1 億 6514 万円 | 小計 | 4,558,712,400 | 4,393,571,760 | 96.38% |
業種 | 予定価格(税込) | 契約額(税込) | 合計落札率 | 差額合計 | |
2校合計 | 合 計 | 9,696,045,600 | 9,171,491,760 | 94.59% | 524,553,840 |
(4) 平成 30 年度:予定価格 1 億円以上の工事の入札について事後公表とする試行
表 4 の記載のとおり、平成 29 年度の予定価格の事後公表の試行の結果、落札率が
2 校合計で 94.59%と、事前公表であった前年度と比較して約 5 ポイント低下し、5
億円以上の経費の節減が確認されたことから、平成 30 年度から、解体を除く全ての
業種で予定価格 1 億円以上の工事の入札について、予定価格を事後公表とする試行を実施することを決定し、現在まで継続されてきた。
2 予定価格の事後公表及び事前公表の検証結果と今後の方向性
(1) 落札率等から見た予定価格の事後公表及び事前公表の検証結果
下記の表 5 は、平成 29 年度以降令和 2 年度まで、予定価格を事後公表に変更した
工事(平成 29 年度を除いて予定価格 1 億円以上)と予定価格を事前公表に維持した
工事(平成 29 年度を除いて予定価格 6000 万円以上 1 億円未満)の平均落札率を工事業種ごとに算出したものである(いずれの工事も入札に参加できる事業者は、等級格付がA又はBで、区内に本店を置く事業者に限られている)。
表 5 工事業種ごとの予定価格の公表方法等の差異等による平均落札率の比較
平成 29 年度 | 平成 30 年度 | 令和元年度 | 令和 2 年度 | ||||||
件数 | 落札率 | 件数 | 落札率 | 件数 | 落札率 | 件数 | 落札率 | ||
建築工 事 | 事後公表 | 2 ⓪ | 93.8% | 7 ⓪ | 93.2% | 11 ⑦ | 98.5% | 4 ① | 98.0% |
事前公表 | 10 | 98.9% | - | - | 5 | 98.2% | 1 | 99.7% | |
電気工 事 | 事後公表 | 2 ⓪ | 99.0% | 2 ⓪ | 91.8% | 5 ⓪ | 94.9% | 5 ⓪ | 97.4% |
事前公表 | 3 | 98.0% | - | - | 1 | 97.9% | 6 | 97.8% | |
空調工 事 | 事後公表 | 2 ⓪ | 96.5% | 2 ⓪ | 92.1% | 2 ⓪ | 98.3% | 7 ⓪ | 95.8% |
事前公表 | 13 | 97.6% | 1 | 92.0% | 4 | 95.4% | 3 | 97.0% | |
給排水 工事 | 事後公表 | 2 ⓪ | 96.6% | 4 ⓪ | 95.3% | 6 ② | 97.6% | 2 ⓪ | 99.7% |
事前公表 | 4 | 97.1% | 6 | 99.6% | 4 | 99.9% | 4 | 91.1% | |
土木工 事 | 事後公表 | - | - | 4 ② | 98.1% | 4 ① | 99.4% | 4 ② | 99.4% |
事前公表 | 9 | 99.8% | 5 | 99.5% | 4 | 99.8% | 2 | 99.7% | |
一般塗 装工事 | 事後公表 | - | - | 3 ⓪ | 97.3% | 3 ⓪ | 96.5% | - | - |
事前公表 | 2 | 99.0% | - | - | - | - | - | - |
注1 本表は、予定価格の事後公表の試行(予定価格 1 億円以上、平成 30 年度導入)の前後で、入札結果を落札率により比較したものである。
注2 入札参加資格要件が等級格付A又はBで区内本店事業者に限られる予定価格 6000 万円以上の工事を抽出して比較。
注3 予定価格の事後公表は、平成 29 年度は 8 工事(2 校×4 業種)のみ、30 年度以降は予定価格 1 億円以上の工事が対象(予定価格 1 億円未満の工事は事前公表)である。
注4 〇数字は1者入札(入札者が 1 者しかいない、あるいは有効な入札が 1 者しかなかった入札をいう。)となった工事件数である。
個々の工事の落札率については、事業者の入札方針や競争状況等によって影響を受けるものではあるが、全体的な状況や推移について、事後公表と事前公表の工事について平均落札率を業種ごとに比較すると、以下の傾向が観察された(該当工事の平均落札率による比較であることから、外れ値やサンプル数が少ないことなどによる影響も一定程度受けているものと考えられる。)。
ア 建築工事
平成 29 年度の建築工事は、予定価格が事前公表されていた 10 件の工事の平均落札率が 98.9%であるのに対して、事後公表となった 2 件の学校の建築工事の平均落札率は 93.8%と約 5 ポイント低下した。平成 30 年度も予定価格 1 億円以上の事後公表の 7 件の建築工事の平均落札率は 93.2%と、低下した状況が継続している。
令和元年度は、事前公表の 5 件の平均落札率は 98.2%と高い状況が続いている 一方、事後公表の 11 件の工事の平均落札率は 98.5%と平成 30 年度よりも約 5 ポ イント上昇している。落札率が大幅に上昇した要因としては、前記Ⅱのとおり、 対象職員が、トイレの洋式化工事の予定価格を漏えいした影響が考えられるほか、平成 30 年度は、1 者入札はなかったのに対して、令和元年度は 11 件の工事のうち
7 件の工事が 1 者入札となっており、競争性が低下していたことが考えられる。
令和 2 年度は、事前公表の 1 件の工事の落札率は 99.7%と予定価格の近傍に近づいている。一方、事後公表の 4 件の工事の平均落札率は 98.0%と、令和元年度と同程度の比較的高い状況ではあるが、事前公表の落札率と比べると約 2 ポイン
ト低い。なお、事後公表の 4 件のうち、建設共同企業体(JV)結成対象工事が
3 件あり、入札参加者が限られていたことから、比較的高い落札率となった可能性がある。
イ 電気工事
平成 29 年度の電気工事は、予定価格が事前公表されていた 3 件の工事の平均落札率が 98.0%であるのに対して、事後公表となった 2 件の学校の電気工事の平均落札率は 99.0%とむしろ高くなっているが、平成 30 年度の事後公表の 2 件の工事
の平均落札率は 91.8%と約 7 ポイント低下している。令和元年度の事後公表の 5
件の工事の平均落札率は 94.9%と前年度より少し上がっているが、事前公表の 1
件の工事の落札率(97.9%)よりも低いという状況に変わりはない。令和 2 年度は、事前公表の 6 件の工事の平均落札率は 97.8%と過去の平均落札率と同様の水準が継続しているが、事後公表の 5 件の工事の平均落札率は 97.4%と前年度より
2.5 ポイント上昇している。
ウ 空調工事
平成 29 年度の空調工事は、予定価格が事前公表されていた 13 件の工事の平均落札率が 97.6%であるのに対して、事後公表となった 2 件の学校の工事の平均落札率は 96.5%と低くなっており、平成 30 年度の事後公表の 2 件の工事の平均落札
率も 92.1%と 4 ポイント以上低下している。しかし、令和元年度には、事後公表の 2 件の平均落札率は 98.3%に上昇している。
令和 2 年度は、事前公表の 3 件の平均落札率は 97.0%と前年度より 1.6 ポイン
ト上昇している。一方、事後公表の 7 件の平均落札率は 95.8%と前年度より 2.5
ポイント低下している。
エ 給排水工事
平成 29 年度の給排水工事は、予定価格が事前公表されていた 4 件の工事の平均落札率が 97.1%であるのに対して、事後公表となった 2 件の学校の工事の平均落札率は 96.6%と多少低くなっている。平成 30 年度の事後公表の 4 件の工事の平均落札率は 95.3%に低下する一方、事前公表されていた 6 件の工事の平均落札率は 99.6%、令和元年度の事前公表 4 件の工事の平均落札率は 99.9%と、「事前公表により予定価格の近傍価格へ入札が誘導される」との総務大臣通知の指摘と一致する状況が現れるに至っている。
令和 2 年度は、事後公表の 2 件の工事の平均落札率は 99.7%と前年度より 2.1ポイント上昇している。いずれも建設共同企業体(JV)結成対象工事で入札参加者が限られていること等が影響している可能性がある。一方、事前公表の 4 件の工事の平均落札率は 91.1%と前年度(99.9%)を 8.8 ポイントも下回り、入札参加者数も 4 者から 7 者と多く、この年度は競争性が高まっていたことが示唆されている。
オ 土木工事
土木工事は、予定価格が事前公表されていた平成 29 年度の 9 件の工事の平均落
札率は 99.8%であるのに対して、事後公表となった平成 30 年度の 4 件の工事の平均落札率は 98.1%と多少低下したものの、令和元年度には 4 件の工事の平均落札率は 99.4%に上昇している。
一方、事前公表の工事の平均落札率については、平成 29 年度 99.8%(9 件)、平成 30 年度 99.5%(5 件)、令和元年度 99.8%(4 件)と、事前公表の工事については予定価格近傍での落札が継続している。
令和 2 年度は、事前公表の平均落札率は 99.7%(2 件)、事後公表も 99.4%(4件)、と、前年度とほぼ同値であり、事前公表、事後公表とも平均落札率が高い状況が一貫して継続している。
カ 一般塗装工事
一般塗装工事は、工事件数が少ない状況はあるが、平成 29 年度に事前公表であ
った 2 件の工事の平均落札率が 99.0%であったところ、平成 30 年度の事後公表の
3 件の工事の平均落札率は 97.3%に低下し、令和元年度の事後公表の 3 件の工事の平均落札率も 96.5%と低下傾向が続いている。
平成 29 年度以降令和 2 年度までの予定価格の事後公表及び事前公表の平均落札率
の状況を全体として見ると、事後公表にした工事の平均落札率は、平成 30 年度は 6
業種全てで平成 29 年度の事前公表の平均落札率を下回っており、落札率及び落札金額が高止まりする状況の改善に有効であることがうかがわれた。
令和元年度、2 年度に落札率が上昇する傾向が見られるのは、事業者側が予定価格積算資料の情報公開請求等を通じて、予定価格の積算方法を研究し、積算能力を高めていることも要因として考えられる。そのことを含めて、事後公表だけでは競争性を確保できなくなっている可能性がある。
一方、予定価格 6000 万円以上1億円未満の予定価格を事前公表に維持した工事の平均落札率は、競争性が高まった一部の年度の業種を除いて 99%台を含む高い落札率が継続する状況が見られることから、この予定価格帯の工事においても、今後、
事後公表の導入及び入札参加者の拡大等の対応策が考えられる。
(2) 競争条件が異なる場合の予定価格事前公表の入札結果の検証について
前記(1)において、競争条件(等級格付A又はBで区内本店のみが入札に参加できる)が同一の場合には、全般的に予定価格を事後公表にした場合は、事前公表の場合と比較して落札率が低下する(事前公表の場合は、多くが 90%台後半に高止まりになる)ことが明らかになった。
一方、競争条件(等級要件又は区内本店要件等)が異なる場合に予定価格を事前 公表としたとき、落札価格が高止まりするかどうかについても検証する必要がある。
下記表 6 は、令和元年度における、等級格付がA又はBで、原則として区内本店
事業者のみが入札に参加できる予定価格 6000 万円以上 1 億円未満の工事と、主として等級格付がA、B又はCで、区内本店又は区内支店事業者が入札に参加できる予定価格 4000 万円以上 6000 万円未満の予定価格帯(当該予定価格帯の工事がなかった業種はその下の予定価格帯)の入札結果を比較したものである。
表 6 予定価格を事前公表としている工事の競争条件別入札結果の比較(令和元年度)
工事業種 | 発注予定価格帯 | 等級要件 | 地域要件(区内本店要件) | 工事件数 | x x 落札率 | x x 入 札者数 |
建築 | 6000 万円~1億円 | A、B | 区内本店 | 5 | 98.2% | 3.0 |
4000 万円~6000 万円 | A、B、C | 区内本店・区内支店 | 6 | 96.1% | 2.7 | |
電気 | 6000 万円~1億円 | A、B | 区内本店 | 1 | 97.9% | 1.0 |
4000 万円~6000 万円 | A、B | 区内本店・区内支店 | 12 | 89.8% | 9.9 | |
空調 | 6000 万円~1億円 | A、B | 区内本店 | 4 | 95.4% | 3.3 |
2000 万円~4000 万円 | A、B、C | 区内本店・区内支店 | 4 | 95.1% | 3.5 | |
給 排 水 | 6000 万円~1億円 | A、B | 区内本店 | 4 | 99.9% | 2.3 |
4000 万円~6000 万円 | A、B | 区内本店・区内支店 | 8 | 99.5% | 1.5 | |
土木 | 6000 万円~1億円 | A、B | 区内本店 | 4 | 99.8% | 2.3 |
4000 万円~6000 万円 | A、B、C | 区内本店・区内支店 | 6 | 91.2% | 3.0 | |
造園 | 6000 万円~1億円 | 区内本店 | 2 | 99.7% | 3.0 | |
4000 万円~6000 万円 | 区内本店・区内支店 | 1 | 88.5% | 6.0 |
注 空調は、予定価格 4000 万円以上 6000 万円未満の工事がなかったため、その下の予定価格帯(2000 万円以上 4000 万円未満の工事)の結果を引用した。
本表を概観すると、予定価格 6000 万円以上 1 億円未満の工事の平均落札率は、建築(5 件)98.2%、電気(1 件)97.9%、空調(4 件)95.4%、給排水(4 件) 99.9%、土木(4 件)99.8%、造園(2 件)99.7%と、概ね 2 者から 3 者しか入札に参加していないこともあるが、空調を除いて落札率が高い状況が見られる。
一方、予定価格 4000 万円以上 6000 万円未満の工事(空調は 2000 万円以上 4000万円)の平均落札率は、建築(6 件)96.1%、電気(12 件)89.8%、空調(4 件) 95.1%、給排水(8 件)99.5%、土木(6 件)91.2%、造園(1 件)88.5%と、予定価格 6000 万円以上 1 億円未満の工事と比較して、落札率は空調と給排水を除いて明らかに低く、平均入札者数も建築と給排水を除いて多い状況にある。
なお、空調(95.4%、95.1%)、給排水(99.9%、99.5%)については、予定価格帯の違いによる平均落札率に差が生じていない。これは、後述するが、令和元年度、空調と給排水は、等級格付A、Bの事業者が大半の工事を受注していて、Cラ
ンク以下の事業者は 1 件ずつしか受注しなかったという状況が影響していると考えられる(また、空調の落札率は低いが、給排水の落札率は高いという状況については、空調と給排水は、工事が類似しているため、2 つの業種に重複して登録する事業者が多く、受注制限等についても同種工事として適用されている。それぞれの入札参加者数は、空調が 3.3 者、3.5 者と比較的多いが、給排水は 2.3 者、1.5 者と少ない。入札参加者数やそれぞれの入札に参加した入札者の入札方針が影響している可能性が考えられるところである)。
このように、空調・給排水を除いて、予定価格が事前公表の場合に、6000 万円以上 1 億円未満の工事については、平均落札率が約 98%からほぼ 100%と予定価格近傍の額に高止まりしているのに対して、予定価格 4000 万円以上 6000 万円未満の工事については、96.1%から 88.5%と平均落札率が低い状況にある。
なお、令和 2 年度における予定価格 6000 万円以上 1 億円未満の工事と予定価格
4000 万円以上 6000 万円未満の工事の平均落札率を比較しても、建築(99.7%、
94.4%)、電気(97.8%、90.3%)、空調(97.0%、92.0%)、給排水(91.0%、
95.7%)、土木(99.7%、92.3%)と、各業種全体の平均入札者数も 3.4 者、5.8 者と、給排水を除いて令和元年度と同様の落札率と入札者数の傾向が現れている。
この要因については、予定価格 4000 万円以上 6000 万円未満の工事の入札については、区内支店事業者やCランクの等級格付の事業者も参加できることから、等級格付A又はBの区内本店事業者しか参加できないことを原則とする予定価格 6000 万
円以上 1 億円未満の工事の入札と比較して、入札者数が増加し、予定価格が事前公表であっても、適切な競争が機能していることがあるものと考えられる。
(3) 予定価格の漏えい事件と予定価格の事後公表
前記Ⅱのとおり、対象職員が、小・中学校のトイレの洋式化工事 4 件の予定価格を事業者に漏えいしたことについて、予定価格を事前公表にすることで入札に関する職員の事故や犯罪を防ぐべきとの意見もある。
しかし、前記 2(1)及び 2(2)のとおり、競争性が確保されているとはいえない状況で予定価格を事前公表にすると、予定価格は高止まりすることが明らかになっている。
また、前記 1(2)のとおり、xx区における入札の現状を踏まえると、予定価格 6000 万円以上の工事について、予定価格を事前公表とすることは、入xx適正化指針及び総務大臣通知における要請に反するものであると考えられる上、当該指針及び通知では、むしろ、事後公表を導入した上で「入札前に入札関係職員から予定価格、低入札価格調査の基準価格又は最低制限価格を聞き出して入札のxxを害そうとする不正行為を抑止するため、談合等に対する発注者の関与の排除措置を徹底する」ことが要請されている。
区においては、本件漏えい事件については、予定価格の事後公表を試行的に導入した結果判明した重要な課題と捉えて、今後、事後公表制度を運用していくに当たっては、職員への研修等を通じて予定価格の漏えいや談合の排除措置の徹底を図っていくことが必要である。
(4) 予定価格の事後公表の拡大の必要性と当面の拡大範囲
入xx適正化指針及び総務大臣通知においても、「(予定価格の)事前公表の適否について十分に検討した上で、弊害が生じた場合には速やかに事前公表の取りやめ等の適切な対応を行うものとすること」等が要請されており、xx区では、上述のとおり、事前公表の弊害等を踏まえて、これまで段階的に事後公表への移行を試行
及び検討してきた。そして、それらの検証結果を踏まえ、今後も、事後公表の範囲の拡大等について検討していくことが求められる。
しかし、直ちに全ての工事について予定価格を事後公表に変更することは、特に小規模の事業者にとっては、積算を含めて事務負担が大きくなると考える。
一方、これまでの検証結果を踏まえると、予定価格 6000 万円以上1億円未満の工事は、等級要件(原則としてA・Bランクに限定されていること)及び区内本店要件が設定されていることもあり、入xx適正化指針及び総務大臣通知において指摘されているような、競争が制限され、落札率が高止まりとなる弊害が生じていることが明らかになっており、速やかに事後公表へ移行することが適当と考えられる。
他方で、予定価格 6000 万円未満の工事については、区内支店事業者や等級格付が Cランクの事業者も入札に参加できることから、自由な競争が行われ、落札率も低い状況にあり、未だ入xx適正化指針や総務大臣通知において事後公表への移行が要請されるような弊害が生じているとまでは言えないと考えられる。
以上のことから、予定価格の事後公表への移行については、現在の予定価格1億円以上の工事だけではなく、予定価格 6000 万円以上の工事まで拡大することが重要
であるが、他方、予定価格 6000 万円未満の工事については、現段階で速やかに事後公表にする必要性は弱いと考えられる。
3 予定価格事後公表案件に関する発注予定価格帯の事前公表について
前記のとおり、平成 30 年度から解体工事を除く 1 億円以上の工事について予定価格の事後公表の試行が継続されているが、予定価格の事後公表によって競争性の促進による落札額の全般的な低下やダンピング受注の防止等の効果が出ていると評価することができる。
しかし、試行であることから事後公表に伴う課題の検討や見直しが行われていない問題がある。課題として考えられるものが、入札参加資格要件に関わる完成工事高が決められていないことや不落随契が原則として認められていないことなどである。
事後公表の試行から既に 3 年が経過しており、これらの課題を解決するとともに、試行を終了して本格実施に移行するべきである。
まず、課題の一つである入札参加資格要件に関わる完成工事高の問題を検討する。
(1) 完成工事高による入札参加資格の設定の必要性
予定価格が 1 億円以上の事後公表工事については、建設工事等発注標準に基づい て、原則として等級格付がA又はBの事業者が入札に参加できることとされている。しかし、予定価格が事後公表であるがゆえに予定価格 1 億円未満の事前公表の工事 では適用されている完成工事高による入札参加資格の規制が適用されていない状況 がある。
すなわち、xx区契約事務規則第 5 条 1 項 2 号では、一般競争入札の参加資格として、「特に指定したものを除くほか、その者の見積る契約金額の半額に相当する金額以上の工事を過去 5 年間に直接に官公署、公社、公団、会社等の法人より請負い、これを完成していること。」と定められている。そのため、予定価格が事前公表されている工事案件については、原則として、入札公告に過去 7 年間に官公署等の完成工事高については予定価格の半額、民間工事については予定価格と同額以上の完成工事高の実績を入札参加資格要件とし、当該金額を公表している。
一方、平成 30 年度からの予定価格事後公表の試行の開始以降、予定価格が事後公
表の工事(解体工事を除く予定価格 1 億円以上の工事)については、入札参加資格の要件として完成工事高の金額を明記することは予定価格を事前公表することに等
しくになることから、完成工事高の実績は求めない取り扱いとしている。
しかし、等級格付A又はBの事業者であっても、予定価格が 1 億円以上の工事の全てについて施工できるという訳ではなく、適切な施工及び工事品質の確保を考慮すると、一定の完成工事高による入札参加資格の規制が必要と考えられる。
(2) 国や他の自治体の対応
国の機関は全ての工事の予定価格を事後公表としているが、年度当初などに公表する発注の見通し(発注予定表)において、発注規模として一定の幅で予定価格帯を示している。xxxでも一定規模以上の工事については原則として工事の予定価格を事後公表としたうえで、事業者の入札参加に当たっての参考資料として工事発注規模一覧表を設定している。そして、入札参加者の確保と入札不調を防止する観点から各工事の入札公告において、工事の発注規模として予定価格帯を公表している。
下記の表 7 はxxxの工事発注規模一覧表(建築業種グループ)で、平成 30 年 5
月 24 日にxxx(財務局)が公表した「入札契約制度改革の本格実施について」の別紙 1「予定価格の事後公表及び関連する施策の実施について」において改正されたもの(別表 2)である。
表 7 工事発注規模一覧表(xxxの例)
(建築業種グループ)
工事発注規模 価格帯 |
※4 億 4,000 万円以上の価格帯は省略 |
3 億 5,000 万円以上 4 億 4,000 万円未満 |
2 億 2,000 万円以上 3 億 5,000 万円未満 |
1 億 6,000 万円以上 2 億 2,000 万円未満 |
1 億円以上 1 億 6,000 万円未満 |
6,000 万円以上 1 億円未満 |
4,500 万円以上 6,000 万円未満 |
3、000 万円以上 4,500 万円未満 |
1,600 万円以上 3,000 万円未満 |
1,000 万円以上 1,600 万円未満 |
250 万円以上 1,000 万円未満 |
1 円以上 250 万円以下 |
(3) 事業者ヒアリングにおける要望・意見について
令和 3 年 8 月 10 日、11 日に実施した事業者ヒアリングにおいては、複数の事業者から、現在、事後公表となっている1億円以上の工事について、事前公表に戻してほしい、あるいは事後公表の範囲を縮小してほしいとの意見が出された(なお、ヒアリングとは別に事業者団体からもその旨の要望が出されている)。
一方で、入札における適正な競争の確保や積算能力を確認するため、予定価格の事後公表の範囲を拡大するべき、全ての工事の予定価格を事後公表にすべき、現状の事後公表の制度は維持すべきとの意見も複数の事業者から示された。
また、予定価格の事後公表の制度の縮小や廃止を求める要望について、その理由を尋ねると、単に入札額の積算に手間がかかるなどの意見だけではなく、入札に当
たっては当然、積算をしなければならないが、多数の工事案件の中から積算をするものを選択する前提として工事の規模を知りたいとの意見もあった。
(4) 工事発注規模一覧表の作成等の留意点について
事業者ヒアリングにおける、多数の工事案件の中から積算するものを選択する前提として工事の規模を知りたいとの事業者の前記意見を踏まえると、区においても国やxxxと同様に一定の考え方に基づいて工事発注規模一覧表を作成し、当該工事の発注規模として一定の幅の予定価格帯を事前に公表することが有用であると考えられる。
なお、工事発注規模一覧表の作成における予定価格帯の設定に当たっては、ダンピング等を防止するため、当該予定価格帯における最低額で入札をしても落札できない適切な幅を確保することについても考慮する必要がある。
また、完成工事高を当該工事の入札参加資格要件の基準とする場合において、その完成工事高は、当該予定価格帯における最低額とすることが分かり易く、妥当と考えられる。
第2 工事発注の方法等について
1 現行のxx区の工事入札制度について
公共工事の入札においては、工事を適切に行うとともに競争の効果を確保するため のルールが設定されている。xx区の工事発注についても、発注標準、地域要件、受 注制限、入札参加制限など、様々なルールを設定している。それぞれのルールは、設 定からかなりの年数が経過しており、改めて、設定の目的、根拠及び効果等を確認し、実際の競争の状況等も踏まえた見直しを行う必要がある。
表 8 xx区の工事入札における主なルール(原則)
発注予定価格 | ①建設工事等発注標準 | ②地域要件 | ||
建築・一般 土木・下水道 | 電気・空 調・給排水 | その他(塗 装、造園、解体等) | ||
③ J V ( 建設共同企業体)結成基準 | 5 億円以上 | 3 億円以上 | 3 億円(解体 のみ 2 億円)以上 | 区内に本店を置く事業者のみによるJV 結成 |
1 億円以上 | A,B | A,B | 等級格付の制度のないもの(順位のみ)は、案件ごとに決定 | 区内に本店を置く事 |
6 千万円以上 1 億円未満 | A,B | A,B | 業者による入札が原 | |
則 | ||||
4 千万円以上 6 千万円未満 | A,B,C | A,B | 区内に本店又は支店を置く事業者は入札可。(※区外事業者はいずれの入札にも参加できない) | |
2 千万円以上 4 千万円未満 | B,C,D | A,B,C | ||
1 千万円以上 2 千万円未満 | C,D,E | B,C | ||
5 百万円以上 1 千万円未満 | C,D,E | B,C,D | ||
130 万円以上 5 百万円未満 | D,E | C,D |
2 建設工事等発注標準について
上記表 8 は、xx区工事請負指名競争入札参加者指名基準の別表に定められた建設工事等発注標準(以下「xx区発注標準」という。)で、事業者の施工能力等を示す等級格付(AからD又はEランク)に基づいて、発注する工事の予定価格帯を定めている。
xx区発注標準の目的は、指名競争入札の透明性、競争性及びxx性を図ることに あり、平成 24 年 4 月に工事規模に見合ったより的確な共同運用格付の運用、受注機会 の拡大及び中小企業の育成の観点から等級格付ごとの受注可能予定価格が改正されて いる。具体的には、建築、一般土木等において、Cランクの受注上限額を引き下げ、 Bランクの受注下限額を引き上げる等の調整が行なわれ、設備(電気、空調、給排水)については、Cランクの受注上限額の引き下げ、A、Bランクの受注下限額の引き上 げ等を行っている。なお、設備については、一旦引き上げたA、Bランクの受注下限 額を翌平成 25 年度に引き下げて、現在に至っている。
しかし、現在のxx区発注標準には、入札参加者が不足して落札されず、工事が中止となりやすい予定価格帯や特別区の共通基準である等級格付の運用が他の多くの区
の運用とかい離している部分も見られることから、業種ごとに発注標準を検証し、見直しを行う必要がある。
(1) 建築工事
足立区においては、予定価格 1000 万円から 2000 万円までの建築工事は、等級格
付C、D、Eの事業者に発注することとされているが、令和元年度と令和 2 年度の
発注状況を見ると、令和元年度は受注希望事業者がいないことから 5 件の工事のう
ち 3 件が中止され、令和 2 年度も 14 件の工事のうち、再公告入札となった 7 件の工
事のうちの 3 件が同様の理由で中止となった。
表 9 は、xx区が調査した他の 16 区のデータを集計・分析したものだが、Bランクの発注下限額は、16 区の中央値が 1000 万円となっており、xx区においても同様にBランクの発注下限額を 1000 万円まで引き下げることが入札参加資格要件該当
者の増加による入札不調の回避に有効となる可能性がある(なお、平成 24 年度以前
は、Bランクは 1000 万円まで受注可能であった)。
また、xx区と 16 区の発注標準を比較したところ、Aランクについても現在の発
注下限額 4000 万円は少し高く、中央値である 3000 万円まで引き下げる必要がある。 Cランクについては、発注上限額が 6000 万円となっているが、16 区の中央値・
平均値はともに1億円台であり、xx区と大きくかい離しているうえ、予定価格
6000 万円から 1 億円未満の工事の落札率が高い状況からも、少なくとも 1 億円まで
引き上げる必要がある(なお、平成 24 年度以前は、Cランクは 1 億円まで受注可能であった)。
また、xxxでは建築のCランク事業者は 2 億 2 千万円まで入札参加が可能となっており、Cランクの事業者の育成の観点からも検討する必要がある。
なお、予定価格 6000 万円以上の工事への入札については、特定建設業の許可を必要としていること、また、一定の工事実績が必要であることから、実際に入札に参加できるCランクの事業者はこれらの要件を備えるものに限られる。
下位の等級格付で現在の発注上限額が 16 区の中央値より高いものもあるが、その範囲で受注実績もあることから直ちに見直す必要性は大きくないと考えられる。
表 9 xx区と他の 16 区の発注標準の比較(建築工事) (単位:円)
等級格付 | 発注制限額 | xx区 | xx区を除く 16 区 | |
平均値 | 中央値 | |||
A | 上限額 | 308,000,000 | 300,000,000 | |
下限額 | 40,000,000 | 61,433,333 | 30,000,000 | |
B | 上限額 | 280,000,000 | 275,000,000 | |
下限額 | 20,000,000 | 27,488,889 | 10,000,000 | |
C | 上限額 | 60,000,000 | 107,647,059 | 100,000,000 |
下限額 | 5,000,000 | 9,477,778 | 3,150,000 | |
D | 上限額 | 40,000,000 | 35,000,000 | 30,000,000 |
下限額 | 1,300,000 | 2,850,000 | 1,300,000 | |
E | 上限額 | 20,000,000 | 10,944,444 | 10,000,000 |
下限額 | 1,300,000 | 1,256,250 | 1,300,000 |
(2) 一般土木工事
令和元年度と令和 2 年度の発注状況を見ると、令和元年度に予定価格 3500 万円程
度の工事で、受注希望事業者がいない、希望事業者が 2 者に満たないなどで入札が成立せず、3 回目の入札でようやく落札決定した事案があった。令和 2 年度には 2000 万円台の工事で、受注希望事業者がいないため、工事が中止された事案があった。
以下の表 10 は、一般土木工事について、他の 16 区のデータを集計・分析したものであるが、建築工事とほぼ同様の結果となっており、現行の競争状態も建築工事と類似しており、前記(1)の建築工事と同様の見直しを行うことが妥当と考える。
具体的には、Aランクについては、現在の発注下限額 4000 万円は少し高いと考え
られ、中央値を参考に 3000 万円まで引き下げる必要がある。
Cランクについては、現在の発注上限額が 6000 万円となっているが、16 区の中央値・平均値はともに約1億円であり、xx区と大きくかい離している。xxxの上限額は一般土木 1 億 6 千万円、道路舗装 8000 万円(いずれも未満)であり、6000
万円から 1 億円未満の工事の落札率が高い状況、またCランク事業者の育成の観点
からも 1 億円まで引き上げる必要がある(なお、平成 24 年度以前は、Cランクは 1
億円まで受注可能であった)。
また、Bランクの発注下限額の中央値は 1000 万円となっており、現在 2000 万円
としているxx区においても同様に発注下限額を 1000 万円まで引き下げる必要があ
る(なお、平成 24 年度以前は、Bランクは 1000 万円まで受注可能であった)。
下位の等級格付で現在の発注上限額が 16 区の中央値より高いものもあるが、その範囲で受注実績もあることから直ちに見直す必要はないと考えられる。
表10 xx区と他の16 区の発注標準の比較(一般土木工事) (単位:円)
等級格付 | 発注制限額 | xx区 | xx区を除く 16 区 | |
平均値 | 中央値 | |||
A | 上限額 | 160,000,000 | 125,000,000 | |
下限額 | 40,000,000 | 42,616,667 | 35,000,000 | |
B | 上限額 | 160,000,000 | 125,000,000 | |
下限額 | 20,000,000 | 17,577,778 | 10,000,000 | |
C | 上限額 | 60,000,000 | 97,333,333 | 100,000,000 |
下限額 | 5,000,000 | 8,366,667 | 3,150,000 | |
D | 上限額 | 40,000,000 | 28,055,556 | 20,000,000 |
下限額 | 1,300,000 | 2,350,000 | 1,300,000 | |
E | 上限額 | 20,000,000 | 10,388,889 | 10,000,000 |
下限額 | 1,300,000 | 1,243,750 | 1,300,000 |
(3) 設備工事(電気、空調、給排水)
電気工事の令和元年度と令和 2 年度の発注状況を見ると、令和元年度は不調とな
った入札はなく、令和 2 年度も希望事業者が 2 者に満たずに再公告入札になったケ
ースが 2 件あったに過ぎない。
一方、空調、給排水については、令和元年度に予定価格約 1200 万円の給排水工事
において、指名希望者の辞退や希望事業者が 2 者に満たないことで入札が成立せず、
3 回目の入札でようやく落札決定した事案があった。空調、給排水は電気工事に比
べ登録事業者数が少ないことがこのようなことが発生する要因と考えられる。
ア 等級格付A,Bの事業者が大半の工事を受注する空調・給排水工事の状況
下記の表 11 は、令和元年度の電気、空調、給排水のAランクからDランクの事
業者数と受注事業者数を一覧にしたものである。令和元年 4 月現在、電気、空調、給排水の各事業者数は、AからDランクまでの合計がそれぞれ 67 者、37 者、50 者と電気と空調・給排水との間には、事業者数にかなりの差異がある。
表 11 電気、空調、給排水の等級別の事業者数、受注事業者数の状況 (単位:者)
等級 格付 | 電気 | 空調 | 給排水 | |
A | 事業者数 | 17( 8) | 17( 6) | 19(13) |
構成比 | 25.4% | 45.9% | 38.0% | |
B | 事業者数 | 30(18) | 11( 5) | 10( 5) |
構成比 | 44.8% | 29.7% | 20.0% | |
小計 | 事業者数小計 | 47(26) | 28(11) | 29(18) |
構成比 | 70.1%(83.9%) | 75.7%(91.7%) | 58.0(94.7%) | |
C | 事業者数 | 10( 5) | 3( 1) | 7( 1) |
構成比 | 14.9% | 8.1% | 14.0% | |
D | 事業者数 | 10( 0) | 6( 0) | 14( 0) |
構成比 | 14.9% | 16.2% | 28.0% | |
合計 | 事業者数合計 | 67(31) | 37(12) | 50(19) |
構成比 | 100%(100%) | 100%(100%) | 100%(100%) |
注1 事業者数、受注事業者数ともに令和元年度の数値である。8
注2 カッコ内の数字は、令和元年度に工事を 1 件以上受注した事業者数である。
特徴的なのは、等級格付A、Bの事業者だけで事業者数の 58%から 75%を占め、受注割合も特に空調と給排水は 92%、95%と非常に高い水準になっていることで ある。
空調、給排水工事については、このような受注構造を考慮した対応が必要になると考えられる。
イ 他区における電気、空調・給排水工事の発注標準の状況と区の対応
なお、他の 16 区の発注標準を確認したところ、他区においても類似した状況があると考えられた。
後記の表 12 を見ると、他の 16 区の発注標準では、Aランクの発注下限額は、
中央値が 1000 万円とxx区の 2000 万円の半額となっており、xx区においても、
1000 万円までの引下げる必要があると考えられる(なお、平成 24 年度以前は、
Aランクは 1000 万円まで受注可能であった)。
また、xx区のCランクの発注上限額は 4000 万円であるが、他の 16 区の中央
値は 2000 万円である。Cランクの事業者が 4000 万円近い工事を受注することは難しい面もあるが、Cランクの事業者の育成等を図る観点から維持するべきと考えられる。
8 本報告書は、予定価格の漏えい事件があった平成 31(令和元)年度の受注データを基本に分析しているが、分析上必要な場合は、令和 2 年度のデータも使用している。
なお、他の 16 区の発注標準を見ると、電気と空調・給排水とで発注標準を分けている区も見られるところである。
表 12 xx区と他の 16 区の発注標準の比較(電気、空調、給排水) (単位:円)
等級格付 | 発注制限額 | xx区 | xx区を除く 16 区 | |
平均値 | 中央値 | |||
A | 上限額 | 154,444,444 | 150,000,000 | |
下限額 | 20,000,000 | 12,045,833 | 10,000,000 | |
B | 上限額 | 68,421,053 | 50,000,000 | |
下限額 | 5,000,000 | 4,812,500 | 3,000,000 | |
C | 上限額 | 40,000,000 | 26,500,000 | 20,000,000 |
下限額 | 1,300,000 | 2,516,667 | 1,300,000 | |
D | 上限額 | 10,000,000 | 9,565,217 | 10,000,000 |
下限額 | 1,300,000 | 1,323,810 | 1,300,000 |
(4) その他の業種の発注標準について
下水道を除くその他の業種では、等級格付はなく、完成工事高等によって順位が付番されるだけで、案件ごとに入札参加資格要件を定めている。その他の業種における案件ごとの入札参加資格要件の設定については、品質管理の面から順位、完成工事高などによる規制を適切に行う必要がある。
3 地域要件について
(1) 法令等の要請
所在地(区内に本店又は支店等を設置している)要件等の地域要件は、地方自治法施行令第 167 条の 5 の 2「一般競争入札により契約を締結しようとする場合において、契約の性質又は目的により、当該入札を適正かつ合理的に行うため特に必要があると認めるときは、前条第1項の資格を有する者につき、更に、当該入札に参加する者の事業所の所在地又はその者の当該契約に係る工事等についての経験若しくは技術的適性の有無等に関する必要な資格を定め、当該資格を有する者により当該入札を行わせることができる。」を法的根拠として設定されている。
前記の条文上、前条第1項(「一般競争入札に参加する者に必要な資格として、あらかじめ、契約の種類及び金額に応じ、工事、製造又は販売等の実績、従業員の数、資本の額その他の経営の規模及び状況を要件とする資格を定めることができる」)が、規定する内容は、概ね経営事項審査で付与される各事業者の等級格付
(AからE等のランク)と考えられる。
つまり、地方自治法施行令は、等級格付を有する事業者に対して、契約の性質又は目的により当該入札を適正かつ合理的に行うために、特に必要があると認めるときに、更に、「事業所の所在地等に関する必要な資格を定めることができる」と規定しているものである。
一方、令和元年 10 月 21 日付の地方公共団体あての総務大臣・国土交通大臣通知
「公共工事の入札及び契約の適正化の推進について」(総行行第 215 号 国土入企第 26 号)では、一般競争入札の適切な活用として、「個別工事の発注に当たっては、一定の資格等級区分内の者による競争を確保するとともに、官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律(昭和 41 年法律第 97 号)に基づく中小企業者に
関する国等の契約の方針の趣旨も踏まえ、適切な競争参加条件(過去の工事実績及び成績、地域要件等)を設定するなど、必要な条件整備を適切に講じること。地域要件の活用については、恣意性を排除した整合的な運用を確保する観点から、各発注者が予め運用方針を定めること。」としている。
前記の法令の規定及び総務大臣・国土交通大臣通知の内容を検討すると、入札参加資格要件の設定にあたって、地域要件については、以下の考え方で整理する必要があると考えられる。
1 入札参加資格要件は等級格付が基本となり、地域要件は付帯的かつ限定的になる。
2 個別工事の発注に当たっては、一定の資格等級区分内の者による競争を確保する。
3 地域要件の活用については、恣意性を排除した整合的な運用を確保する。
地域要件の設定に関する法令の要請
(2) 裁判例
ア 最高裁判所第 1 小法廷判決平成 18 年 10 月 26 日
最高裁判所第 1 小法廷判決平成 18 年 10 月 26 日(最高裁判所裁判集民事 221 号
627 頁)は、地方公共団体が、指名競争入札に参加させようとする者を指名する に当たり、①工事現場等への距離が近く現場に関する知識等を有していることか ら契約の確実な履行が期待できることや、②地元の経済の活性化にも寄与するこ となどを考慮し、地元企業を優先する指名を行うことについては、その合理性を 肯定することができるとする一方で、「地方自治法等の法令は、普通地方公共団 体が締結する公共工事等の契約に関する入札につき、機会均等、xx性、透明性、経済性(価格の有利性)を確保することを図ろうとしている」とし、およそ村内 業者では対応できない工事以外の工事は村内業者のみを指名するという運用につ いて、「常に合理性があり裁量権の範囲内であるということはできない」とした。
イ 水戸地方裁判所判決平成 26 年 7 月 10 日
その後の水戸地方裁判所判決平成 26 年 7 月 10 日(判例時報 2249 号 24 頁)は、 神栖市が災害協定締結要件及び本店所在地要件を設定したことが違法であると主 張された事案である。裁判所は、「地方公共団体が支払をする契約に関して競争 入札に付される場合、原則として、最低価格入札者が契約の相手方となることと されている。これらの法令の趣旨は、地方公共団体の締結する契約に係る経費が、その住民の税金で賄われること等に鑑み、機会均等、xx性、透明性、経済性
(価額の有利性)を確保することにある。」「そして、通常の一般競争入札ではなく制限付一般競争入札を採る場合にも前記の法令の趣旨は妥当するものと解すべきであり、「事業所の所在地」等による制限付一般競争入札が許されるのは、前記の機会均等、xx性、透明性、経済性等の事情を考慮しつつも、なお「当該入札を適正かつ合理的に行うため特に必要」(地方自治法施行令 167 条の 5 の 2)といえる事情がある場合に限られるというべきである。」との判断を示した。
そのうえで、同判決は、施行令 167 条の 5 の 2 の「当該入札を適正かつ合理的に行うため特に必要」との文言や、法令の趣旨に照らせば、入札参加資格の制限
は、飽くまで、「当該入札」、すなわち、その入札の対象となっている工事に係る 契約締結や施工等の適正さ及び合理性の観点によって制限されるべきであるとこ ろ、このような観点とは異なり将来にわたる地元業者の育成を目的として入札参 加資格を制限することは、前記の法令の趣旨等に反するとした。そして、神栖市 内に本店を置くAランク対象業者のみが入札に参加した工事と、それ以外のAラ ンク対象業者が入札に参加した工事との間では、その落札率に顕著な差異がある 以上、災害復旧工事の入札参加資格を地元業者に制限すれば、機会均等やxx性 が損なわれるのみならず、経済性の面で被告に相当程度の不利益が生じることが 容易に想定されるとして、結論として、地元業者(災害協定を締結した業者)に 入札参加資格を制限しなければ、個々の災害復旧工事自体の施工等に関して不適 正あるいは不合理な事態が生じ得るような具体的事情は認め難いことからすれば、災害協定締結要件は、「当該入札を適正かつ合理的に行うため特に必要がある」 ものとは認められず、施行令 167 条の 5 の 2 に反する違法なものであると判断し た。
また、市は、本店所在地要件を設定した理由について、地元業者の育成の観点のみならず、競争性確保の観点から、更に多くの入札参加者による自由でxxな競争性を確保するため、災害協定の締結にこだわらず、近隣に位置し施工能力等の実績も確認できる近隣四市に本店を置く業者にまで拡大したと主張したが、裁判所は、「競争性を確保したいのであれば、それまでは入札に参加する余地のあった「神栖市内に建設業法に基づく許可を受けた支店」等を置く業者の入札参加資格を制限する必要はない。したがって、仮に被告市長が競争性を確保することも考慮して本店所在地要件を設定したと認められるとしても、その内容は、「神栖市内に建設業法に基づく許可を受けた支店」等を置く業者の入札参加資格を制限した点において、必要性及び合理性を欠くものであったというべきである」として、市の主張を容れなかった。
さらに、市は、集中して発注される災害復旧工事の迅速、良質かつ効率的な施工に対応できる業者となると、常時従業員及び資機材が確保されている業者でなければならないため、神栖市又は近隣四市に「本店」を置く業者に入札参加資格を限ることとした旨主張したが、裁判所は、「従前は入札参加を認められてきた
『神栖市内に建設業法に基づく許可を受けた支店』等を置く業者に関して、常時従業員や資機材が確保されていないことを示す具体的事情はないし、これらの業者がそれまでに施工した災害復旧工事において支障が生じたといった具体的事情も認められないことや、従業員や資機材確保の観点から入札参加資格を制限する必要があるのであれば、「従業員の数」や「経営の規模」等の観点から入札参加資格を設定すれば足りる(施行令 167 条の 5 参照)」として、市の主張を採用しなかった。また、前記の各事情に照らせば、仮に当該目的に基づき本店所在地要件が設定されたと認められるとしても、それは合理性を欠く過剰な制約手段であったと評価せざるを得ないとして、結論として、本店所在地要件については、「神栖市内に建設業法に基づく許可を受けた支店」等の入札参加資格を否定した点において、「当該入札を適正かつ合理的に行うため特に必要がある」とは認められず、地方自治法施行令 167 条の 5 の 2 に反する違法なものというべきであると判断した。
そして、市の違法・無効な入札要件の設定によって本来落札すべき工事が落札できなかったことによって事業者が受けた損害等 2750 万円余を支払うよう判決を下した。
前記水戸地裁判決は、前記平成 18 年最高裁判決と同様、地方自治法等の法令が、普通地方公共団体が締結する公共工事等の契約に関する入札につき、「機会均等、
xx性、透明性、経済性(価格の有利性)」を確保することを図ろうとしているとの前提に立ったうえで、地域要件を定める必要性及び合理性を、具体的かつ実質的に検討しているものである。その判断の中では、当該地域要件を定める必要性及び合理性を基礎づける具体的事情の有無や、地域要件を設けた場合とそうでない場合との平均落札率の差異をも根拠として判断を行っているものである。
(3) xx区の地域要件について
現在、xx区では工事入札に当たって、以下の2つの地域要件を設定している。
① 予定価格 6000 万円以上の工事については、入札参加資格要件として(等級格付が A又はBで)区内本店事業者(区内に本店を置く事業者)であることを原則とする(一方、予定価格 6000 万円未満の工事については、区内本店事業者のほか、区内支店事業者(区内に支店を置く事業者)も入札に参加できる)。
② 区内本店事業者又は区内支店事業者のいずれでもない事業者(区外事業者)は、原則としてxx区の工事の入札に参加できない。
ア 地域要件の設定経緯
足立区の地域要件は、平成24 年4 月12 日の区議会総務委員会報告資料「入札・
契約制度の変更について」(以下「平成 24 年度入札・契約制度変更」という。)のなかで、既述した発注標準の改正や入札参加制限の設定等の他の制度改正とともに報告され、同月 16 日から施行されたものである。
そして、これらの入札制度の変更については、平成 23 年末から平成 24 年 3 月にかけて開催されたxx区公契約制度検討委員会(委員長 副区長、委員 学識経験者及び関連する庁内部長・課長)の意見書に基づいて行われた。
同意見書には、当時のxx区の入札制度の課題として、景気の長期低迷による低入札価格による入札(ダンピング)が増加し、契約履行の質の低下、下請けへのしわ寄せ、労働条件の悪化、経営の不健全化などの弊害が懸念されることなどが挙げられていた。一方で、低入札調査、最低制限価格の設定範囲、適用範囲の改正後(平成 23 年 1 月 1 日施行)は、「著しい低入札及び低入札調査件数も減少し、落札比率も上昇傾向が見受けられるが、東日本大震災後の経済状況等を考慮すると、xx区における区内事業者の経営状態や労働環境も依然として不透明な状況にあると思われる」と記されていた。
そして、「地域経済の発展を図るため、可能な限り区内における工事実績や事 業所所在地入札参加資格要件とする区内業者への優先発注を行うなど区内事業者 の活性化に努める」とし、xx性、競争性及び品質を確保することを基本として、
「① 予定価格 6000 万円以上の工事案件については、入札参加資格要件として
『区内本店事業者であること』を原則とする。ただし、案件ごとに、入札参加資格審査委員会の決定により、入札参加資格要件として『区内本店事業者及び区内支店事業者であること』とすることができる」とされた。
つまり、地域経済の発展を図るため、xx性、競争性及び品質を確保することを基本として、予定価格 6000 万円以上の工事案件については、入札参加資格要件として「区内本店事業者であること」を原則としたものである。
予定価格 6000 万円以上の工事案件についての入札参加資格要件について「区内本店事業者であること」を原則とした前提の一つである競争性の確保について、確認していく。
イ 地域要件の設定の結果とその評価
下記の表 13 は、いずれも予定価格事前公表の区内本店事業者だけを入札参加者
としている予定価格 6000 万円以上 1 億円未満の工事(等級格付A又はB)と、区
内本店事業者と区内支店事業者を入札参加者としている予定価格 4000 万円以上
6000 万円未満の工事(等級格付A、B又はA、B、C)及び等級格付が設定されていない造園の平均落札率を、工事業種別に比較したものである。
表を見ると、(工事件数が少ないものや、予定価格 4000 万円以上 6000 万円未満の工事では、建築と一般土木についてCランクの事業者も含まれているものの)競争性の観点からは一定の傾向が観察される。
表 13 予定価格帯別・地域要件別入札結果の比較(予定価格事前公表) (令和元年度)
工事 業種 | 発注予定価格帯 (以上~未満) | 等級格付 | 地域要件 | 工事 件数 | 平均 落札率 | 入札者 数 | 支店落札者数 | 支店落 札率 |
建築 | 6000 万円~1億円 | A、B | 本店 | 5 | 98.2% | 3.0 | - | - |
4000 万円~6000 万円 | A、B、C | 本店・支店 | 6 | 96.1% | 2.7 | 0 | - | |
電気 | 6000 万円~1億円 | A、B | 本店 | 1 | 97.9% | 1.0 | - | - |
4000 万円~6000 万円 | A、B | 本店・支店 | 12 | 89.8% | 9.9 | 2 | 88.5% | |
空調 | 6000 万円~1億円 | A、B | 本店 | 4 | 95.4% | 3.3 | - | - |
2000 万円~4000 万円 | A、B、C | 本店・支店 | 4 | 95.1% | 3.5 | 1 | 90.4% | |
給 排 水 | 6000 万円~1億円 | A、B | 本店 | 4 | 99.9% | 2.3 | - | - |
4000 万円~6000 万円 | A、B | 本店・支店 | 8 | 99.5% | 1.5 | 1 | 99.9% | |
一般土木 | 6000 万円~1億円 | A、B | 本店 | 4 | 99.8% | 2.3 | - | - |
4000 万円~6000 万円 | A、B、C | 本店・支店 | 6 | 91.2% | 3.0 | 2 | 90.8% | |
造園 | 6000 万円~1億円 | 本店 | 2 | 99.7% | 3.0 | - | - | |
4000 万円~6000 万円 | 本店・支店 | 1 | 88.5% | 6.0 | 0 | - |
注 1 入札者数は予定価格帯別の平均値である。
注 2 支店落札者数とは、区内支店事業者が落札した工事の件数をいう。
注 3 支店落札率とは、区内支店事業者が落札した工事の平均落札率をいう。
注 4 空調は、予定価格 4000 万円以上 6000 万円未満の工事がなかったため、その下の予定価格帯(2000 万円以上 4000 万円未満の工事)の結果を引用した。
すなわち、電気については、区内本店事業者のみが入札に参加できる予定価格 6000 万円以上1億円未満の工事は 1 件しかなかったが、入札した事業者も 1 者に過ぎず、落札率は 97.9%であったところ、区内支店事業者も参加できる予定価格が 4000 万円以上 6000 万円未満の 12 件の工事では、平均入札者数は 9.9 者、平均落札率は 89.8%と、区内本店事業者のみが参加できる工事と比較して平均落札率は 8.1 ポイントも低下している。なお、区内支店事業者が落札した 2 件の工事の平均落札率は 88.5%と、競争の促進に貢献している。
空調については、区内本店事業者のみが入札に参加できる予定価格 6000 万円以
上1億円未満の工事 4 件の平均入札者数は 3.3 者、平均落札率は 95.4%となった
が、区内支店事業者も参加できる予定価格 2000 万円以上 4000 万円未満の 4 件の工事でも、平均入札者数は 3.5 者で、平均落札率は 95.1%となっており、区内本店事業者のみが参加できる工事との差がほとんど見られない。
しかし、区内支店事業者が落札した 1 件の工事の落札率は 90.4%と、該当予定価格帯の 4 件の平均落札率 95.1%をかなり下回っており、競争の促進に貢献している。
一般土木についても、区内本店事業者のみが入札に参加できる予定価格 6000 万
円以上1億円未満の工事 4 件の平均入札者数は 2.3 者、平均落札率は 99.8%とほぼ予定価格上限での落札となったが、区内支店事業者及びCランクも参加できる予定価格 4000 万円以上 6000 万円未満の 6 件の工事では、平均入札者数が 3.0 者で、平均落札率は 91.2%となっており、区内本店事業者のみが参加できる工事と比較して 8.6 ポイントも低下している。なお、区内支店事業者が落札した 2 件の工事の平均落札率は 90.8%と、競争の促進に貢献している。
一方で、建築については、予定価格 4000 万円以上 6000 万円未満の工事に区内
支店事業者の落札はなく、造園についても同様である。いずれも予定価格 6000 万
円以上1億円未満の工事と比較して、予定価格 4000 万円以上 6000 万円未満の工
事の落札率が低くなっている。特に造園については、落札率が 11.2 ポイント低下しており、入札者数の増加による競争の効果が示唆されるものである。
また、給排水については、区内本店事業者のみが入札に参加できる予定価格
6000 万円以上1億円未満の工事 4 件の平均入札者数は 2.3 者、平均落札率は
99.9%とほぼ予定価格と一致する一方、区内支店事業者も参加できる予定価格
4000 万円以上 6000 万円未満の 8 件の工事では平均入札者数は 1.5 者と減少し、平均落札率も 99.5%と、区内本店事業者のみが参加できる工事と区内支店事業者が参加できる工事の落札率に差は見られず、むしろ入札参加者は減少するという結果となっている。区内支店事業者が落札した 1 件の工事の落札率も 99.9%と、競争の促進等の効果も見られない。
これは、既述しているが、令和元年度については、給排水工事(空調工事を含む)は、等級格付A、Bの事業者が大半の工事を受注するなか、等級格付A、Bの事業者数(参考 令和元年度 29 事業者(ほとんどの事業者が空調と重複して登録))を上回る給排水と空調の合計工事件数(36 件)が発注されたことなど、競争性の低下が影響していることが考えられる。
このように、区内支店事業者及び当該予定価格帯の平均落札率等は、例外を除いて、A又はBランクの区内本店事業者しか参加できない原則である予定価格 6000 万円以上の工事よりも全体的に入札参加者が多く、平均落札率はかなり低い状況が見られる。
そのため、むしろ予定価格 6000 万円以上の工事の入札についても区内支店事業者を参加させた方が、競争性が向上する可能性が示唆されているということができる。
以上のことから、予定価格 6000 万円以上の工事案件についての入札参加資格要件について「区内本店事業者であること」を原則とした前提の一つである「競争性の確保」については、実現されているとはいえないと考えられる。
ウ 競争条件の設定に関する入札参加資格要件審査委員会の審査
「入札・契約制度の変更について」では、「xx性、競争性及び品質の確保が図れることを条件として」(1)予定価格 6000 万円以上の工事案件については、入札参加資格要件として「区内本店事業者であること」を、原則とする。なお、案件ごとに入札参加資格要件審査委員会が条件を審査し、「区内本店事業者及び区内支店事業者」とすることができる。(2)工事の品質確保と受注機会均等を図るため、予定価格 6000 万円以上の工事案件を受注した事業者については、開札日か
ら 2 ヵ月受注した契約と同業種で予定価格 6000 万円以上の工事について入札参加 を制限する。共同企業体(JV)も同様とし、構成員となって受注した事業者は、別の組合せのJVの構成員になった場合でも受注が制限されることを原則とする。また、制限については案件ごとに入札参加資格要件審査委員会が決定し、入札公
告、発注票に明記する。」と記載されている。
前記の(1)と(2)の入札条件の設定について、入札参加資格要件審査委員会は実際にどのような審査、決定を行ってきたのだろうか。
入札参加資格要件審査委員会の目的、機能等については、前記Ⅱ第1の2(2)ウ(ウ)「入札参加資格要件審査委員会」に記載されているとおりだが、今回、担当課長が予定価格の漏えいを行った小・中学校のトイレの洋式化工事等に関する平成 31 年 3 月の委員会の審査、決定事項は以下のとおりとなっている。
トイレの洋式化工事の急増による入札不調を避けるため、給排水工事については、本来は空調工事との間においても 1 件しか受注できないところ、給排水工事
と空調工事を各 1 件ずつ最大 2 件の受注を可能とする制限緩和措置が決定された。一方、建築工事については、入札参加資格要件審査委員会の決定を受け、平成
31 年 4 月 12 日付の通知「建築工事に係る入札参加制限等の取り扱いについて(入
札参加制限等の変更)」により、「トイレの洋式化工事を含む年度当初の 16 件の工事については、異なる公表時期及び異なる入札方式であっても受注制限を適用するため、各事業者は 1 件しか受注できないものの、2 か月間の入札参加制限は行わない」とする緩和措置が公表された。
もっとも、工事の急増に対して、区内支店事業者を入札に参加させることについては、受注に関する制限緩和措置により区内本店事業者による落札が可能になると判断されたことなどにより議論のテーマにならなかったようである。
ただし、入札参加資格要件審査委員会で、各案件を競争性の観点から審査して区内支店事業者を入札参加者に加えるという判断・決定は、受注機会の喪失の可能性がある区内本店事業者の理解を得る観点からは、必ずしも容易なことではないと考えられる。
このようなことから、予定価格 6000 万円以上の工事案件については、入札参加資格要件として「区内本店事業者であること」を原則としたことに関して、入札参加資格要件審査委員会が通常の意思決定として競争性の確保・促進の観点から区内支店事業者等に入札参加資格要件を認めることは、平成 31(令和元)年度まではほとんど行われてこなかった。
しかし、令和 2 年度に入札参加者がゼロだったケースや不落となった 2 件の一
般土木工事について、工事業種の変更を含めて区外事業者(xx区以外の 22 区内 に本店又は支店を置く事業者)に入札参加資格を拡大する決定を行った。橋りょ う工事に業種変更した工事については、区外事業者のみによる入札となったが、 落札率 87.2%で落札するなどの成果があった。また、同年度には多数の建築工事 の発注が予定されていたことから、当初の入札参加資格要件審査委員会において、入札不調等を防ぐため、予定価格が 6000 万円以上の複数の工事について、特定建 設業の許可を有するCランクの事業者に入札参加資格を認めたことから、入札者 が増えるとともに落札率が 90%代前半まで低下する結果が得られた(表 17「令和
2年度における建築工事等の受注制限等の状況について」参照)。
なお、令和 3 年 4 月にも小・中学校のトイレ洋式化工事について、予め「工事遅延防止の観点から入札不調が発生した場合には、区内支店及び区外事業者にも入札参加資格要件を認める」決定を行い、不調となった 2 件の工事について、区内支店事業者と区外事業者が落札している。
これらの経過から、今後は入札参加資格条件審査委員会において、より一層、業種及び工事ごとの競争条件等を評価し、区内支店事業者、区外事業者及び直近の等級格付の事業者等に入札参加資格要件を拡大すること等について積極的に検討することが重要と考えられる。
エ 区内支店事業者の状況と競争促進可能性について
これまでの各種の分析から、より多くの事業者が入札に参加することが競争性の確保に有効であることが示唆されているといえるが、あわせて、現在の区内支店事業者の競争参加の実態についても把握する必要がある。
下記の表 14 は、令和元年度の業種別・等級格付別の工事事業者数、受注状況と
及び平成 24 年度当時(予定価格 6000 万円以上の工事について区内本店事業者のみによる入札を原則と決定したとき)の工事事業者数等の状況を示している。
表 14 業種別・等級格付別の工事事業者数、受注状況等(令和元年度及び平成 24 年度)
等級格付 | 事業者数 (R1) | 延 べ 受 注 事 業 者 数 (R1) | 受注事業者数 (R1) | 支店受注者数 (R1) | 平成 24 年度事業者 数 | ||||
本店 | 支店 | 支店数 | |||||||
建築 | Aランク | 10 | 10 | 0 | 12 | 8 | - | 13 | 4 |
Bランク | 12 | 11 | 1 | 10 | 7 | 0 | 14 | 2 | |
A、B計 | 22 | 21 | 1 | 22 | 15 | 0 | 27 | 6 | |
Cランク | 16 | 15 | 1 | 8 | 6 | 0 | 13 | 1 | |
Dランク | 14 | 13 | 1 | 3 | 2 | 0 | 19 | 0 | |
Eランク | 15 | 15 | 0 | 1 | 1 | - | 23 | 1 | |
合 計 | 67 | 64 | 3 | 34 | 24 | 0 | 82 | 8 | |
一般土木 | Aランク | 5 | 3 | 2 | 1 | 1 | 0 | 4 | 2 |
Bランク | 12 | 12 | 0 | 10 | 7 | - | 12 | 3 | |
A、B計 | 17 | 15 | 2 | 11 | 8 | 0 | 16 | 5 | |
Cランク | 26 | 22 | 4 | 14 | 7 | 1(3) | 28 | 5 | |
Dランク | 23 | 21 | 2 | 8 | 4 | 0 | 32 | 2 | |
Eランク | 44 | 40 | 4 | 2 | 2 | 0 | 33 | 2 | |
合 計 | 110 | 98 | 12 | 35 | 21 | 1(3) | 109 | 14 | |
電気 | Aランク | 17 | 14 | 3 | 12 | 8 | 0 | 15 | 3 |
Bランク | 30 | 28 | 2 | 25 | 18 | 2(4) | 21 | 1 | |
A、B計 | 47 | 42 | 5 | 37 | 26 | 2(4) | 36 | 4 | |
Cランク | 10 | 9 | 1 | 9 | 5 | 0 | 13 | 3 | |
Dランク | 10 | 9 | 1 | 0 | 0 | 0 | 10 | 2 | |
合 計 | 67 | 60 | 7 | 46 | 31 | 2(4) | 59 | 9 | |
空調 | Aランク | 17 | 13 | 4 | 8 | 6 | 0 | 14 | 4 |
Bランク | 11 | 11 | 0 | 5 | 5 | - | 10 | 1 | |
A、B計 | 28 | 24 | 4 | 13 | 11 | 0 | 24 | 5 | |
Cランク | 3 | 2 | 1 | 3 | 1 | 1(3) | 6 | 1 | |
Dランク | 6 | 6 | 0 | 0 | 0 | - | 7 | 1 | |
合 計 | 37 | 32 | 5 | 16 | 12 | 1(3) | 37 | 7 | |
給排水 | Aランク | 19 | 15 | 4 | 15 | 13 | 1 | 13 | 4 |
Bランク | 10 | 9 | 1 | 6 | 5 | 1 | 13 | 2 | |
A、B計 | 29 | 24 | 5 | 21 | 18 | 2 | 26 | 6 | |
Cランク | 7 | 7 | 0 | 1 | 1 | - | 13 | 2 | |
Dランク | 14 | 14 | 0 | 0 | 0 | - | 12 | 2 |
等級格付 | 事業者数 (R1) | 延 べ 受 注 事 業 者 数 (R1) | 受注事業者数 (R1) | 支店受注者数 (R1) | 平成 24 年度事業者 数 | ||||
本店 | 支店 | 支店数 | |||||||
合 計 | 50 | 45 | 5 | 22 | 19 | 2 | 51 | 10 | |
解体 | 1~99 | 12 | 10 | 2 | 7 | 7 | 0 | ||
100~199 | 11 | 10 | 1 | 4 | 4 | 0 | |||
200~299 | 6 | 6 | 0 | 1 | 1 | - | |||
300~400 | 2 | 2 | 0 | 0 | 0 | - | |||
合 計 | 31 | 28 | 3 | 12 | 12 | 0 | |||
造園 | 1~99 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | ||
100~199 | 4 | 3 | 1 | 3 | 3 | 0 | |||
200~299 | 5 | 3 | 2 | 3 | 2 | 1 | |||
300~399 | 3 | 3 | 0 | 3 | 1 | - | |||
400~499 | 3 | 2 | 1 | 0 | 0 | 0 | |||
500~ | 14 | 12 | 2 | 1 | 1 | 0 | |||
合 計 | 30 | 23 | 7 | 10 | 7 | 1 |
注1 事業者数は令和元年 4 月現在、受注事業者数は令和元年度のデータである。注 2 ( )内の数字は、受注契約数である。
注 3 解体、造園については、等級格付ではなく、順位による分類である。
(ア) 建築は、等級格付がAランクからEランクまでの事業者数は 67 者あるが、そ のうち 64 者(95.5%)が区内本店事業者で、区内支店事業者は 3 者に過ぎない。また、予定価格6000 万円以上の工事に参加可能なA、Bランク(22 者)には、 Bランクに1 者(4.5%)の区内支店事業者があるに過ぎない。ちなみに平成24
年度当時はA、Bランク 27 者のうち区内支店事業者は 6 者(22.2%)存在しており、7 年間に区内支店事業者が大幅に減少している。
いずれにしても区内支店事業者がそもそも 3 者しか存在せず、しかもBラン
ク以上には 1 者しかないという現在の状況では、区内支店事業者が積極的に入札に参加して受注することを期待することは難しいと思われる。
(イ) 一般土木は、同様に事業者数は 110 者あるが、そのうち 98 者(89.1%)が区内本店事業者で、区内支店事業者は12 者(10.9%)に過ぎない。また、6000 万円以上の工事に参加可能なA、Bランク( 17 者)には、Aランクに 2 者
(11.8%)の区内支店事業者があるに過ぎない。しかし、Cランクの区内支店事業者1者が 3 件の工事を受注している。ちなみに平成 24 年度当時は、A、Bランク(16 者)には、区内支店事業者が 5 者(31.3%)存在しており、区内支店事業者の減少が顕著である。
令和 3 年現在、一般土木では、Aランクの区内本店事業者は 2 者に減少しており、5 億円以上の工事に関して建設共同企業体(JV)の結成が困難となっている。
そのことを含め、予定価格 6000 万円以上の工事について区内支店事業者に入 札参加資格を開放することは、競争性という観点から必要なことと考えられる。
(ウ) 電気は、事業者数は 67 者あるが、そのうち 60 者(89.6%)が区内本店事業
者で、区内支店事業者は 7 者(10.4%)に過ぎない。また、予定価格 6000 万円以上の工事に参加可能なA、Bランク(47 者)には、Aランクに 3 者、Bランクに 2 者の計 5 者(10.6%)の区内支店事業者が存在している。平成 24 年度当時は、A、Bランク(36 者)には、4 者(11.1%)の区内支店事業者が存在し
ていた。事業者数の増加のなかで支店事業者の割合については大きな変化は見られない。
なお、競争性の観点からは、Bランクの区内支店事業者 2 者が 2 件ずつ工事
を落札しており、予定価格 6000 万円以上の工事について区内支店事業者に入札参加資格を開放することは競争上有用と考えられる。
(エ) 空調は、事業者数は 37 者あるが、そのうち 32 者(86.5%)が区内本店事業
者で、区内支店事業者は 5 者(13.5%)ある。また、予定価格 6000 万円以上の工事に参加可能なA、Bランク(28 者)には、Aランクに 4 者(14.3%)の区内支店事業者が存在している。平成 24 年度当時は、A、Bランク(24 者)には、5 者(20.8%)が存在していた。また、C、Dランク 9 者のうち、Cランクの 1 者が区内支店事業者であるが、当該事業者1者が 3 件の工事を落札して
いる。このような状況を考慮すると、予定価格 6000 万円以上の工事について区 内支店事業者に入札参加資格を開放することは競争上有用なことと考えられる。
(オ) 給排水は、事業者数は 50 者あるが、そのうち 45 者(90.0%)が区内本店事
業者で、区内支店事業者は 5 者(10.0%)である。また、予定価格 6000 万円以上の工事に参加可能なA、Bランク(29 者)には、Aランクに 4 者、Bランクに 1 者の計 5 者(17.2%)の区内支店事業者が存在している。平成 24 年度当時は、A、Bランク(26 者)には、6 者(23.1%)が存在しており、区内支店事業者の割合は低下している。受注面では、Aランク、Bランクともそれぞれ区内支店事業者 1 者が、1 件ずつ工事を落札している。C、Dランクは 21 者(区
内本店事業者のみ)あるが、区内支店事業者は存在せず、区内本店事業者 1 者
が 1 件落札しているのみである。このような状況から考えると、空調と同様に
予定価格 6000 万円以上の工事について等級格付A、Bを有する区内支店事業者に入札参加資格を開放することは競争上有用なことと考えられる。
(カ) 等級格付がない解体工事についても、順位が付番されている事業者数は 31 者あるが、そのうち 28 者(90.3%)が区内本店事業者で、区内支店事業者は 3 者
(9.7%)である。区内支店事業者の落札実績はないが、順位が最も高く、区内本店事業者しか参加できない予定価格 6000 万円以上の工事の入札参加資格を開放することは競争上有用なことと考えられる。
(キ) 同様に等級格付がない造園については、順位が付番されている事業者数は 30
者あるが、そのうち 23 者(76.7%)が区内本店事業者で、区内支店事業者は 7
者(23.3%)である。区内支店事業者は 1 者が 1 件落札しているに過ぎないが、
区内本店事業者しか参加できない予定価格 6000 万円以上の工事については、平均落札率が 99.7%と高いことから、区内支店事業者に入札参加資格を開放することは競争上有用なことと考えられる。
なお、公共工事の受注割合の高い区内支店事業者にとって、予定価格 6000 万円以上の高額工事の入札に参加できない状況が続くことは、受注機会の喪失あるいは減少を意味することであり、xx区から支店を撤退させる方向で作用することになるものである。
オ 区内支店事業者の入札への参加の競争政策上の必要性について
前記アからエまでの分析からすると、平成 24 年度に予定価格 6000 万円以上の工事について、入札参加資格要件として区内本店事業者であることを原則とし、事実上、区内支店事業者を入札に参加できないこととしたことは、区の入札において競争を制限し、落札額を高める結果となったとともに、産業経済上は、特に建築工事と土木工事において支店事業者を減少させる影響をもたらした可能性が
ある。
今般、他の 22 区について調査したところ、区内支店事業者の入札への参加を直接制限する入札参加資格要件を設定している区は、xx区を含めて極めて少数しかないことが分かった。
また、入札における指名の基準又は入札参加資格において地方公共団体が地域要件を設定・運用したことについて、平成 18 年 10 月 26 日最高裁判所判決及び平
成 26 年 7 月 10 日水戸地方裁判所判決では、いずれも、地方自治法等が定める機会均等、xx性、透明性及び経済性(価格の有利性)の確保に反するとして違法とする判決が下され、水戸地裁判決では市に対して法令違反による賠償金の支払いまで命じられている(前記(2)参照。)。
以上のような区を取り巻く最近の状況等についても合わせて検討すると、予定価格 6000 万円以上の工事について区内本店事業者であることを原則としている入札参加資格要件について、区内支店事業者も入札に参加できるように見直すことは、喫緊の課題と考える。
カ 一定額以上の予定価格の工事に関するより適切な競争条件の確保について
さらに、前記の分析によると、特に区内支店事業者数が少ない業種や予定価格帯については、区内支店事業者の参加だけでは、必ずしも競争条件の改善が十分期待できないこともうかがわれる。
より適切な競争を考慮すると、例えば、より高額な議決案件である予定価格 1
億 8000 万円以上の工事等、一定の予定価格以上の工事については、区外事業者に ついても入札に参加できる入札参加資格要件を設定することが考えられる。また、大規模なプロジェクトや技術的な難度が高い工事についても、区外事業者の参加 を求めることが、施工技術や品質確保の面で有益なケースがある。
他の 22 区を調査したところ、一定額以下の工事については、区内事業者(区内 本店事業者及び区内支店事業者)に入札参加資格要件を設定している区が多いが、工事発注標準に区外事業者の等級格付を明記している区や、区内事業者優先指名 の例外を設けている区も少なくないことが分かった。
具体的には、「制限付き一般競争入札に参加できる者は、本店又は営業所の所在地が東京都内にあること」「予定価格 2 億円以上 5 億円未満の工事案件において
は、区外事業者の参加は、区内事業者の概ね 1 割(最低 2 者)とする」とルールを決めて区外事業者の入札参加を認めている区もある。
また、「仕様内容や業種によっては区外事業者も参加できることとしている」
「区内の本店、支店業者が少なく、競争入札が不利な工事案件の場合は、地域要 件を広げ、近隣区又は東京 23 区内として地域要件を設定する場合がある」「入札 参加資格を持つ区内事業者が少ない案件の場合は、予定価格の半額程度の類似実 績があることを条件に区外事業者の参加を認めている」「大規模工事については、区内事業者優先の例外としている」など、業種、仕様や区内事業者数等に応じて 区外事業者の参入を認めている区もある。
実際に他区においては、学校改築のJVで区外事業者(大手総合建設会社)が建設共同企業体の代表を務める例が複数ある。
一方、xx区でも、令和 2 年度及び 3 年度にいずれも当初の入札で区内事業者が入札に参加あるいは落札しなかった工事案件ではあるが、区外事業者にも入札参加を認めて落札された例がある。すなわち、令和 2 年度の花畑人道橋整備工事
(2 期)に区の土木工事業者で入札する者がいなかったことから、橋梁工事に変更したうえで区外事業者に対象を広げて入札したところ、区外事業者が落札したケースである。
また、令和 3 年度においては、小・中学校のトイレの洋式化工事 25 件(給排水
工事 18 件、建築工事 7 件)の入札が行われ、2 件の建築工事が不調となった。小・中学校の工事については、xx休暇中に施工しなければならない時間的制約があるため、不調となった 2 件の建築工事については、給排水工事に転換したうえで、区内支店事業者と区外事業者も参加可能な再公告入札を実施したところ、区内支店事業者と近隣区の区外事業者が 1 件ずつ落札したものである。
(4) 区外事業者への入札参加資格要件の拡大について
以上の分析を踏まえ、区外事業者の入札参加資格要件の拡大について検討する。例えば、議決案件である予定価格 1 億 8 千万円以上の工事、JV結成対象工事で
ある予定価格 5 億円あるいは 3 億円以上の工事など、技術力や施工能力が必要な一定規模以上の工事について発注標準に区外事業者の参加を具体的に記載する方法がある。
しかし、大手ゼネコンなどの区外事業者が一定規模以上の工事に経常的に参加で きることとなると、区内事業者のなかには工事を受注できずに衰退・廃業する者も 出てきかねず、雇用者数等の減少による区内経済の停滞の懸念を生じさせかねない。
ただし、公共工事の入札において、最も優先されるべきことがらは各事業者の施工能力及び価格競争力であり、区は適切な公共調達を行う立場から、効果的かつ効率的な入札参加資格要件を定める必要がある。
各区においても、学校の改築や複合施設の建築などの大型工事の入札において、入札勧奨の観点を含めて「区外事業者参加可能工事」と銘打って公告している区もある。また、JV、事業者単体との混合入札方式の下で区内事業者と区外事業者を競わせるなど、区外事業者と区内事業者を競争させるとともに、大手事業者の進んだ施工能力等を活用している区も少なくない。
以上の観点から、区外事業者の入札参加資格要件の設定については、当面、発注 標準の欄外に注意書きとして以下の記載を行うこととするのが適当と考える。なお、現実の運用においては、工事の内容や入札における競争状況等に応じて、適切かつ 積極的な対応を行うこととすることが適当である。
注1 技術的難度の高い工事その他工事の規模、性格等に照らして区外事業者の入札への参加が必要と認められる工事、又は入札に参加する区内事業者が少ないと見込まれるなど適正な競争のための環境整備が必要と認められる工事については、入札参加資格要件審査委員会の決定において、当該工事に関して区外事業者の入札への参加を認めることができるものとする。
注2 区内事業者であることを入札参加資格要件とした工事の入札が不調で打切りとなった場合は、当該工事の再公告入札に相当する工事においては、区外事業者の入札への参加を認めることができるものとする。
発注標準注記
4 建設共同企業体(JV)対象工事のあり方等について
足立区では、建築工事、一般土木工事及び下水道工事については予定価格 5 億円以
上、設備工事(電気、空調・給排水)及び造園工事等については予定価格 3 億円以上、
解体工事については予定価格 2 億円以上の工事について、建設共同企業体(JV)の
結成による入札を求めている(xx区建設共同企業体に対する発注取扱要綱第 3 条)。建設共同企業体による入札の目的は、中小企業の受注機会の増大と(施工)能力の 向上を図ることにある(同要綱第 1 条)。共同企業体の構成員の組合せは、最上位等級
(Aランク)同士、又は最上位等級(Aランク)と第2等級(Bランク)の組合せとしているが(同要綱第 6 条)、3 者JVとした場合には第3等級(Cランク)の事業者を含めることができるとしている。また、JVの代表構成員は、構成員のなかでより大きな施工能力を有する者(上位者)であること等が必要である(同要綱第 10 条)。
また、xx区では予定価格 6000 万円以上の工事の入札については、原則として区内本店事業者に限定していることから、建設共同企業体の構成員についても全て区内本店事業者に限定している。
しかし、区内のAランクの事業者数は業種により差はあるものの必ずしも多くないことから、JVの結成数が限定されるなど、競争性が確保されない可能性がある。
特にAランクの事業者が少ない業種では複数のJVが結成されず、JV対象工事でありながら、単体工事で発注せざるを得ない状況も生じている。また、業界団体に加入していない事業者は、JVを組む相手を見つけることが困難で、事実上、工事の規模及び価格が大きいJV対象工事の入札に参加できないなどの声も出ている。
一方で、予定価格が数十億円に上る大規模工事については、区外の大手の工事業者がJV構成員のトップとなることで、区内事業者に大手工事業者が持つ最新の施工ノウハウ等を伝えることが有益との意見もある。
これらの状況を踏まえ、最近の区のJV対象工事の入札状況等を確認・分析する必要がある。
次ページの表 15 は、令和元年度と 2 年度の工事業種ごとの建設共同企業体(JV)結成工事案件の入札状況である。
表 15 建設共同企業体(JV)結成対象工事の入札経過(令和元年度、2年度)
業種 | 年度 | 工事案件名 | (千円) 予定価格 (税込) | 落札率 | 参加申込者 数 | 有効入札者 数 | 落札者 | 第 2 位 | 第 3 位、第 4 位 |
建築 | R1 | xx青葉 中学校改築 | 3,679,874 | 99.8% | 3 | 3 | xx・xx・太和 | xx・xx・丸中 | xx・武家田・xx |
R2 | 綾瀬小学校新築 | 4,875,552 | 99.7% | 3 | 3 | xx・xx・ xx | xx・xx・ 太和 | 武家田・xx・xx | |
xxx学校新築 | 3,748,657 | 99.8% | 3 | 2 | 武 xx・xx・x x | xx・xx・太和 | (無効)xx・xx・xx | ||
鹿浜地域学習センター 大規模改 修 | 592,427 | 99.0% | 4 | 1 | xx・xx | (辞退)xx・ コーセー | ( 無効) xx・xx、武家田・xx | ||
一般土木 | R1 | xx学園新校庭その他工事 | 611,149 | 99.7% | 2 | 1 | 東京xx組・太和 | ( 辞退)ホク リク・x x | |
R2 | 花畑川環境整備その1工事 (指名競争 入札) | 501,239 | 99.96% | 14 | 1 | 東京xx組 (単体入札) | JV入札が見込めず、単体入札で実施するも不調。指名競争入札に切り替えて落札。 | ||
電気 | R1 | xxxx x改築電気工事 | 413,380 | 96.6% | 3 | 3 | ア キ ラ ・雄光 | ト ー テ ッ ク ・ xx | 栗駒・xx |
R2 | 綾瀬小学 校改築電気工事 | 570,130 | 94.5% | 4 | 3 | ト ー テ ッ ク ・ xx | x光・xx | 栗駒・渋谷、 (辞退)ミリオン・ワイズ | |
x x x 学校 新 築 電 気工事 | 453,585 | 98.9% | 4 | 2 | 雄光・xx | 栗駒・渋谷 | (辞退)ミリオン・親幸、(無効) トーテック・青路 | ||
空調 | R1 | xxxxx改築空調工事 | 412,676 | 97.4% | 5 | 4 | xx・水建 | 産栄・xx | 水工房・カンノ、東ガス・東洋、(無効)拓進・東京セントラ ル |
R2 | 綾瀬小学校改築空調工事 | 503,019 | 99.7% | 4 | 3 | や んま・第一冷暖房 | 拓進・xx | 産栄・東京セントラル、(無効)水工房・カンノ |
業種 | 年度 | 工事案件名 | (千円) 予定価格 (税込) | 落札率 | 参加申込者 数 | 有効入札者 数 | 落札者 | 第 2 位 | 第 3 位、第 4 位 |
空調 | R2 | x x x 学校 新 築 空調工事1 回目 (JV入札で は 不 調) | 391,710 | - | 5 | 2 | 予定価格超過で不落 ⇒② 単体工事入札に移行 | 東ガス・東洋、産栄・東京セントラル、(無効) 拓進・xx、やんま・第一冷暖房、(辞退)水工房・カンノ | |
x x x 学校 新 築 空調工事2 回目 ( 単 体 の指 名 競 争入 札 で 落 札) | 396,737 | 86.0% | 10 | 5 | 玉紘工業 (単体入札) | 入札者(入札率):拓進(90.4%)、xx(92.8%)、水工房(95.1%)、東ガス(99.3%) | |||
給排水 | R1 | xxxxx改築給 排水工事 | 449,977 | 92.1% | 4 | 4 | 拓進・東京セン トラル | 水 工房・カン ノ | xx・水建、東ガス・東洋 |
R2 | 綾瀬小学校改築給排水工事 | 511,093 | 99.6% | 4 | 4 | 水 工房・カン ノ | や んま・第一冷暖 房 | 拓進・xx、産栄・東京セン トラル | |
x x x 学 校新 築給排水工事 | 401,148 | 99.8% | 5 | 3 | 拓進・xx | 産栄・東京セントラル、東ガス・東洋、 (無効)水工房・カンノ、やんま・第一冷暖房 | |||
解体 | R1 | x x 青 葉 中学校 | 303,666 | 82.5% | 4 | 2 | xx・x xxx | xx・橘 | (無効)xx・ティーバランス、xx・共栄 |
旧 x x 田小学校 | 299,419 | 81.8% | 7 | 5 | xx・xx | xx・x | xx xx・xxx、xx・xx、xx・xx( 無効) x x・ティーバランス、xx・カシモト | ||
x x x 学 校 | 303,292 | 81.7% | 5 | 2 | xx・xx | xx・ カシモト | (無効)xx・橘、麻生・xx、xx・川口 | ||
旧 x x x 小学校 | 377,473 | 81.8% | 5 | 3 | xx・xx | xx・xx | xx・橘、(無効)xx・カシ モト(不参)ショキタ・一ノ関 | ||
旧 x x xx学校 | 289,168 | 81.6% | 6 | 4 | ショキタ・xxx | xx・橘 | xx・カシモト、xx・xx (辞退)xx・佐賀(無効)xx・xx | ||
R2 | 旧 x x x 学校 | 469,007 | 82.0% | 4 | 4 | xx・xx | xx・xx | xx・ティーバランス、xx・カシモト |
注1 参加申込者数は、入札公告後に入札図書の請求の申込みをした者の数である。
注2 有効入札者数は、実際に入札した者から入札が無効となった者を除いた数である。
注3 落札率は、小数点第2 位を四捨五入しているが、100%となる場合には小数点第3 位を四捨五入している。
(1) xx区における建設共同企業体(JV)対象工事の概況
建築工事を見ると、学校の改築などの大規模工事においては、3 者からなるJVが 3 組結成されている。令和元年度 1 件、同 2 年度 2 件の学校の新・改築工事を 3組がそれぞれ 99%台後半の落札率で落札している。また、各JVの構成は、Aランク 3 者によるもの、AランクとBランクからなるものとに分かれ、主として 3 者J
Vの第 3 順位の事業者に入れ替えが生じているように見受けられる。
一方、一般土木工事においては、令和元年度、同 2 年度の工事とも同一のAランクのJV代表構成員等が 99.7%、99.96%と極めて高い落札率で落札している。令和元年度の工事については申込みの段階ではJVが 2 組成立していたが、その後 1
組が辞退したため、結局 1 者入札になった。また、令和 2 年度は、複数のJVの結成が見込めなかったため、最終的に単体での指名競争入札としてA,Bランクの区内本店事業者 14 者を指名したが、結局入札者は当該事業者1者しかなかったものである。
電気工事においては、2 者JVで 3 組から 4 組が結成されている。構成は、Aランク同士、AランクとBランクからなるが、落札率は 94.5%から 98.9%に分布している。
空調・給排水工事は、2 者JVで 4 組から 5 組が結成されている。構成は、Aランク同士が大半で、ごく一部にAランクとBランクによるJVがあるだけである。落札率は 92.1%から 99.8%に分布しているが、99%台後半が半数を占めている。
解体工事では、等級格付がないため、順位付番の上位と下位の 2 者の組合せのJ Vで入札に参加し、落札率は 81%から 82%台と低くなっている。各JVの構成員は概ね決まっているようである。
これらの概況を見ると、JV工事については、規模の大きい高額の工事を 2 者又
は 3 者で共同して請け負うため、その意味において「中小企業の受注機会の増大」という要綱が定める目的には一定程度寄与しているということができる。一方、もう一つの「能力の向上」という観点でみると、全体としてAランクの事業者同士による組合せが少なくなく、Bランク以下の事業者の育成という面においては顕著な取り組みが行われているとまでは言い難いように思われる。
(2) 建設共同企業体(JV)工事の問題点について
ところで、令和 2 年度の江北小学校改築の空調工事 2 回目については、落札率が 86.0%と極めて低くなっている。この工事は、当初(1 回目)、JV工事として入札したところ、5 組のJVが入札に参加したが、入札が有効であった 2 組のJVはいずれも予定価格を超過していたため、落札されなかった。そのため、再公告入札では、単体工事の指名競争入札に変更して入札したところ、極めて低い落札額で落札したものである。
このことは、xx区においては、単体工事の方が建設共同企業体(JV)に比べて落札額が低くなる可能性を示唆するものと考えることができる。
一方、令和 3 年度の一般土木工事には、Aランク4者のうち区内本店事業者は 2者しかなく、そのうちの1者は区の受注実績が見られないことから、事実上、JVを結成することができなくなっており、単体入札にせざるを得ない状況となっている。
また、同業種の業界団体に加入していない事業者は、業界団体加入者とはJVを組めず、数少ない非加入事業者とでなければJVを組むことが難しいとの指摘もあり、受注の機会と適切な競争を阻害する面も懸念されるところである。
(3) 建設共同企業体(JV)の望ましい在り方について
国土交通省は、「共同企業体の在り方について(昭和 62 年 8 月 17 日建設省xx審
発第 12 号、最新改正 平成 23 年 11 月 11 日)」のなかで、共同企業体の活用に当たっては、「建設業の健全な発展と建設工事の効率的施工を図るため、公共工事の発注は単体発注を基本的前提とするとともに、共同企業体の活用は、技術力の結集等により効果的施工が確保できると認められる適正な範囲にとどめるものとする」としている。また、運用上の留意点として、「共同企業体は、安易な運用が行われた場合には、施工の非効率化、不良・不適格業者の参入等の事態も生じかねないのみならず、建設企業間の適正な競争を阻害し、建設業の健全な発展の支障となるおそれがあることに留意する必要がある」としている。
そして、特定建設工事共同企業体の対象工事の種類・規模は、「大規模工事であって技術的難度の高い特定建設工事(高速道路、橋梁、下水道等の土木構造物であって大規模なもの、大規模建築、大規模設備等の建築工事。)その他工事の規模、性格等に照らし共同企業体による施工が必要と認められる一定規模以上の工事とする」とし、対象工事の規模として、「土木、建築工事にあっては少なくとも 5 億円を下回らず、かつ、発注標準の最上位等級に属する工事のうち相当規模以上のものとすることを原則とし、その他の工種についても、これに準じて定めるものとする」としている。
一方で、「単体で施工できる企業がいると認められるときには、単体企業と特定建設工事共同企業体との混合による入札とすることができるものとする」としている。また、入xx適正化指針においても、「大規模かつ技術的難度の高い工事を単独で確実かつ円滑に施工できる有資格業者があるとき等にあっては、適正な競争のための環境整備等の観点から、当該単独の有資格業者を含めて競争が行われることとなるよう努めるものとする」として混合入札の導入を求めている。
(4) 他の 17 区の建設共同企業体(JV)結成対象工事に関する状況
下記の表 16 は、他区のJV結成対象工事の基準額等についてxx区と比較したものである。
表 16 xx区と他の 17 区のJV結成対象予定価格の比較 (単位:円)
業種 | JV結成に関す る予定価格 | xx区 | xx区を除く 17 区 | |
平均値 | 中央値 | |||
建築工事 | 対象予定価格 | 500,000,000 | 441,176,471 | 400,000,000 |
3 者JV結成価格 | 案件ごとに決定 | 1,833,333,333 | 1,600,000,000 | |
土木工事 | 対象予定価格 | 500,000,000 | 259,333,333 | 200,000,000 |
3 者JV結成価格 | 案件ごとに決定 | 1,433,333,333 | 1,350,000,000 | |
設備工事 | 対象予定価格 | 300,000,000 | 164,117,647 | 130,000,000 |
3 者JV結成価格 | 案件ごとに決定 | 1,350,000,000 | 1,150,000,000 | |
その他工事 * | 対象予定価格 | 200,000,000 | 176,000,000 | 180,000,000 |
3 者JV結成価格 | 案件ごとに決定 | 450,000,000 | 450,000,000 |
注1 xx区の「その他工事」は解体工事であるが、他区については限定されていない。
注2 3 者JV結成価格は、他の 17 区でも定めていない区が多く、回答があった区の集計値である。
xx区と他の 17 区のJV結成対象工事の予定価格を比較してみると、他の 17 区のそれは中央値、平均値でみると、建築工事とその他工事についてはxx区より少
し低い程度であるが、土木工事や設備工事では、xx区の半額程度の工事額からJ V結成対象工事としている区が多い。これは、おそらく比較的低い工事額からJV対象工事に指定することによって事業者の受注機会の拡大を意図したものと思われる。
一方で、工事におけるJV結成基準を廃止し、学校の新築・改築などの数十億円以上の工事のみをJV結成対象としている区や建築工事のJV結成対象を 10 億円以上とする区などもあり、一様ではない。
いずれにしろ、xx区のJV結成対象工事の基準額は、前記「共同企業体の在り方について」に則したものであり、概ね妥当な水準と考えられる。
一方、JVの構成員については、区内事業者(区内本店事業者及び区内支店事業者)をJV構成員とすることを条件に、代表構成員として区外事業者の参加を認めている区が多く、区内本店事業者のみによる結成を求めている区はxx区だけであった。おそらく、他区では、大規模かつ高難度の工事については、安定的施工の確保、区内の優良な中小・中堅建設業者の振興を図る観点から、技術力の高い区外事業者の参加を認めているものと思われる。
(5) xx区における建設共同企業体(JV)への発注方法の見直しについて
足立区においては、建築工事、一般土木工事及び下水道工事については予定価格
5 億円以上、設備工事(電気、空調・給排水)及び造園工事等については予定価格 3
億円以上、解体工事については予定価格 2 億円以上の工事について、建設共同企業体(JV)対象工事としている。前記(3)のとおり、JVの結成対象となる工事の規模面では、政府の「共同企業体の在り方について」に示されている規模と概ね合致しており、妥当と考えられる。
しかし、既に一般土木工事ではAランクの区内本店事業者が限られているため、予定価格 5 億円以上のJV結成対象工事については、単体入札とせざるを得ない状況が生じていること、また、一部の業種では、完成工事高等で当該工事を受注する実績を有する事業者が、JVを組む相手を得ることができないことからJV結成対象の大規模工事の入札に参加できない状況があることは、改善すべき喫緊の課題である。少なくとも完成工事高で必要な実績を有する区内事業者については、単体での入札参加を認め、建設共同企業体(JV)との混合入札を行うべきである。特別区でも既に複数の区が混合入札を実施している。
これらのことから、区としては、JV対象工事について以下のような改善を行うことが妥当である。
1 区内支店事業者についても、対象工事の建設共同企業体(JV)の構成員又は代表構成員となることを認める。
2 建設共同企業体(JV)対象工事については、完成工事高で概ね当該工事を受注する実績を有する区内事業者については、単体での入札参加を認める。
3 一定規模以上の大規模工事については、区外事業者をJVの代表構成員として参加を認める。その場合には、原則としてJVの構成員の 2 分の 1 以上を区内事業者とする。
建設共同企業体(JV)結成基準の改善
5 受注制限及び入札参加制限について
(1) xx区における受注制限及び入札参加制限の概要
足立区の入札においては、いずれも同種工事の入札案件を対象に、公表時期及び入札方法が同一である場合に事業者が複数の工事を受注することを制限する「受注制限」(xx区公共工事の入札に係る受注制限基準第 2 条 1 号。同基準を、以下「受注制限基準」という。)と、一定金額以上の工事を受注した事業者(建設共同企業体の各構成員も含む。)について、受注以降は一定期間、同種工事等に関する入札に参加することができないとする「入札参加制限」(xx区公共工事の入札に係る入札参加制限実施基準 2 条 1 号。同基準を、以下「入札参加制限実施基準」とい
う。」)の 2 つの制限が設けられている。
具体的には、受注制限は、同種工事等の入札案件において公表時期及び入札方式 が同一(一般競争入札同士、公募型指名競争入札同士)のものについて、適正な入 札を執行するために十分な事業者数を確保できるときは、原則として、複数の入札 案件のうち 1 件を落札した事業者について、当該落札した入札案件以降に開札を行 う同種工事等の入札に参加する資格がなくなる(落札後の案件の入札は無効になる)としている(受注制限基準第 3 条 1 項、同 2 項)。
一方、入札参加制限は、一般競争入札及び公募型指名競争入札の案件(総合評価方式は除く)を対象に、建築、土木、電気等の各業種の入札で予定価格 6000 万円以
上の工事を受注した事業者は、開札日から 2 か月以内に公表される同種工事等の入
札に参加することができず(入札参加制限実施基準 3 条 2 項)、また、空調・給排水
は、予定価格 500 万円以上の工事を落札した場合は開札日から 1 か月以内に公表さ
れる同種工事等の入札に参加することができない(同基準 3 条 2 項、付則(28 足x
x発第 2061 号 平成 29 年 3 月 29 日総務部長決定)第 2 項)としている。
(2) 受注制限等の目的と設定経過
受注制限は、公共工事の品質の確保と事業者の受注の機会均等を図ることを目的として、平成 23 年 1 月 1 日から施行されたもので、入札方式が異なる一般競争入札と公募型指名競争入札との間の受注は制限されていない。
一方、入札参加制限は、平成 24 年 4 月の入札・契約制度の変更により設けられた
制限で、設置目的は受注制限と同一であるが、予定価格 6000 万円(空調・給排水は
500 万円)以上の工事を受注した場合は、その後 2 か月間(空調・給排水は1か月間)入札に参加することができなくなる制限である。
なお、入札参加制限が導入された平成 24 年 4 月から平成 28 年 8 月末までは、「予
定価格 6000 万円(空調・給排水は 500 万円)以上の工事を受注した場合は、予定価
格 6000 万円(空調・給排水は 500 万円)以上の工事への入札参加を禁止する制限で
あったが、平成 29 年度からは、入札参加を禁止する対象工事の予定価格の下限額
(6000 万円(空調・給排水は 500 万円)以上)が撤廃され、同種工事への入札が全てできないことになっている。
入札参加制限は、同時期の受注を事実上 2 件までに制限する受注制限に加えて、
受注した 1 件の工事が予定価格 6000 万円以上(空調・給排水は予定価格 500 万円以
上)であれば当該受注者について、新たな受注を 2 か月間(空調・給排水は1か月間)禁止することで、より多くの事業者に受注の機会を確保する一方、入札参加者が減少することで競争性が低下し、結果的に落札率が上昇する影響が生じうる。
受注制限が設定されたわずか 1 年後に、事実上同一事業者が一定額以上の工事を複数受注することを防ぐ効果を有する入札参加制限が設定された背景には、当時、
ある事業者が一定金額以上の工事について多数、落札して受注した事象があり、それに対する業界団体等の要望があったとのことである。
また、平成 28 年 9 月以降、入札参加制限の対象が予定価格 6000 万円以上の工事から全ての工事になったことについても、業界団体等から同様の要望があったとのことである。
(3) 受注制限等の年度当初の運用
受注制限と入札参加制限は、年度当初の工事入札が集中する時期においては、発注件数の多い業種について、入札参加資格要件審査委員会の決定を受けて、前記の規定とは異なる運用が行われている。例えば、令和 2 年度では、4 月 3 日付の通知
「建築工事に係る入札参加制限等の取り扱いについて(入札参加制限等の変更)」には、概ね以下の内容が記載されている。
【建築工事】
ア 令和 2 年 4 月中に公表予定の工事案件については、入札参加制限の対象外とする。
イ 令和 2 年 4 月中に公表予定の工事案件については、異なる公表時期及び異なる入札方式であっても受注制限を適用する。
ウ 建設共同企業体(JV)案件とJV案件以外(単体工事案件)との間では、受注制限を適用しない。
エ 1者当たりの受注可能件数は、最大でJV案件1件とJV案件以外1件の合計 2 件になる。
オ 令和 2 年 5 月 1 日以降に公表する案件については、受注制限及び入札参加制限を適用する。
なお、給排水工事と空調工事に関しても、同日付の「給排水設備工事および空調工事に係る入札参加制限等の取り扱いについて(入札参加制限等の変更)」の通知に、1 者当たりの受注可能件数等は異なるが、概ね同様の内容が記載されている。
このような運用は、平成 31 年度、令和 3 年度においても行われており、発注工事が多く、年度当初に集中する業種において、受注者の分散化とともに、各工事における入札不調(入札者がいないこと)を防止することも考慮して行われている。
また、予定価格が高い工事から順番に開札する運用についても、入札参加制限等の変更によって受注件数が制限されている事業者に、複数の工事の入札への参加を促すとともに、入札者にとってより条件の良い高額工事から落札できるように配慮したものと考えられる。
(4) 受注制限等の課題
受注制限等は、いずれもできるだけ多くの事業者に落札・受注の機会を均等に、より確実に与えることを主な目的とした制限であるが、一方で、入札参加者を減少させることになるため、競争が制限され、落札額や落札率が高止まりする可能性がある。また、等級格付が同じであっても、事業者によって施工能力や雇用している技術者の人数が異なるなかで、一定金額以上の工事を1件落札したら同日及び同時期の入札から排除され、また、2 か月又は 1 か月間、受注できなくする仕組みは実態に合っていないとの意見がある。
そこで、実際の入札結果等から状況を確認する。後記の表 17 は、令和 2 年度の予
定価格 6000 万円以上の建築工事、一般土木工事、電気工事及び空調・給排水工事
(一部予定価格 6000 万円未満を含む)の一部の入札結果について分類を行ったものである。
表 17 令和2年度における建築工事等の受注制限等の状況について
工事案件名 | 予定価 格 | 入札方 法 | (単位:円)予定価格(税込) ※入札参加資格要件緩和 | 開 札日 | 落札率 (%) | 申込者 数 | 入札者 数 | 辞退等 | 無効 | 落 札 事 業 者 名称 |
【建築】 | ||||||||||
綾瀬小学校改築工事 | 事後 | 一般 | 4,875,552,000 | 5/25 | 99.7% | 3 | 3 | 0 | x x ・x x ・x x X X | |
江北小学校新築工事 | 事後 | 一般 | 3,748,657,000 | 5/26 | 99.8% | 3 | 2 | 0 | 1 | 武 xx ・ xx ・ x xJV |
xx地域学習センター大規模改修工事 | 事後 | 一般 | 592,427,000 | 5/27 | 99.0% | 4 | 1 | 1 | 2 | x x ・ x x JV |
xx住区センター大規模改 修工事 | 事後 | 一般 | 156,420,000 ※C ランク入札可 | 5/28 | 92.1% | 14 | 3 | 11 | コーセー | |
舎人地域学習センター外壁改修 その他工事 | 事後 | 一般 | 127,160,000 ※C ランク入札可 | 5/28 | 91.3% | 11 | 5 | 6 | ハヤカワ | |
六町安全安心 ステーション新築工事 | 事後 | 一般 | 114,950,000 ※C ランク入札可 | 5/28 | - | 10 | 4 | 6 | 不 調 ( 不落) | |
障がい福祉センターあしすと外部改修工事 | 事後 | 一般 | 112,365,000 ※C ランク入札可 | 5/28 | 91.2% | 11 | 4 | 6 | 1 | ラ イズ・ホ ーム |
サイクルパーク綾瀬自転車駐車場大規模 改修工事 | 事前 | 公募 | 77,698,500 ※C ランク入札可 | 5/29 | 90.6% | 7 | 2 | 5 | xx工務店 | |
xxx袋保育園内装改修そ の他工事 | 事前 | 公募 | 69,960,000 | 6/11 | 99.7% | 5 | 2 | 3 | xx製作所 | |
xxx住区センター大規模改修工事 | 事後 | 一般 | 155,100,000 | 7/16 | 93.6% | 6 | 3 | 3 | 丸中工務店 | |
六町安全安心ステーション新築工事② | 事後 | 一般 | 114,950,000 ※C ランク入札可 ※区外事業者(Aランク) に拡大 | 7/16 | - | - | - | - | 入札中止 | |
六町安全安心ステーション新築工事③ | 事後 | 一般 | 158,950,000 ※C ランク入札可 ※区外事業者(Aランク) に拡大 | 11/13 | 93.1% | 9 | 6 | 3 | xx工務店 |
工事案件名 | 予定価 格 | 入札方 法 | (単位:円)予定価格(税込) ※入札参加資格要件緩和 | 開 札日 | 落札率 (%) | 申込者 数 | 入札者 数 | 辞退等 | 無効 | 落札事業者名称 |
【一般土木】 | ||||||||||
スペシャル・ クライフコート整備工事 | 事前 | 指名 | 79,244,000 ※C ランク入札可 | 5/21 | 92.0% | 29 | 3 | 26 | 東京xx組 | |
花畑人道橋下部工及び左岸取付道路整備 工事 A | 事後 | 一般 | 293,361,200 | 5/22 | - | 4 | 0 | 4 | 不 調 (4 者辞退) | |
主要区画道路 ② Ⅱ 区間道路整備工事 | 事後 | 総合 | 147,499,000 | 5/26 | 99.2% | 4 | 1 | 3 | xx建設 | |
おしべ通り道 路改良その6工事 | 事後 | 総合 | 129,872,600 | 5/27 | 99.1% | 3 | 1 | 2 | ユウト建設 | |
花畑人道橋整備工事( その 1)② A′ | 事後 | 一般 | 296,754,700 ※区外事業者に拡大 | 7/6 | - | 3 | 1 | 2 | 不 調 ( 不落) | |
裏門堰親水水路デッキ改修 その4工事 | 事後 | 一般 | 101,365,000 | 8/20 | 98.6% | 6 | 3 | 2 | 1 | 太和工業 |
上xx第六公 園改修工事 | 事 後 | 一 般 | 187,176,000 | 8/24 | 99.9% | 5 | 3 | 1 | 1 | xxx 務店 |
花畑人道橋整備 工 事 ( 1 期)③ A″ | 事後 | 指名 | 338,543,700 指名競争に変更 | 9/10 | 99.1% | 14 | 1 | 13 | 東京xx組 | |
舗装改修工事 ( 工事課工事第12号) | 事前 | 公募 | 69,064,600 | 10/15 | 99.5% | 4 | 3 | 1 | 丸藤小林土木 | |
花畑人道橋整備 工 事 ( 2 期) B | 事後 | 一般 | 224,141,500 | 10/28 | - | - | - | - | - | 希望事業者な し |
花畑人道橋整備 工 事 ( 2期)② B′ | 事後 | 一般 | 224,141,500 ※橋りょう工事に業種変更 ※区外事業者に拡大 | 11/19 | 87.2% | 4 | 2 | 2 | 大達土木(区外事業 者) | |
花畑川環境整備その1 工事 C | 事後 | 一般 | 501,001,600 | 1/15 | - | 5 | 0 | 4 | 1 | 不 調 (無効不落) |
スペシャル・クライフコート周 辺整備工事 | 事前 | 公募 | 96,949,600 | 2/19 | 99.8% | 5 | 3 | 2 | 誠xxx | |
花畑川環境整備その1 工事 ② C′ | 事後 | 指名 | 501,239,200 指名競争に変更 | 2/22 | 99.96% | 14 | 1 | 13 | 東京xx組 |
工事案件名 | 予定価 格 | 入札方 法 | (単位:円)予定価格(税込) ※入札参加資格要件緩和 | 開 札日 | 落札率 (%) | 申込者 数 | 入札者 数 | 辞退等 | 無効 | 落札事業者名称 |
【電気】 | ||||||||||
綾瀬小学校改築電気設備工 事 | 事後 | 一般 | 570,130,000 | 5/26 | 94.5% | 4 | 3 | 1 | ト ー テ ッ ク ・ 青 路JV | |
江北小学校新 築電気設備工事 | 事後 | 一般 | 453,585,000 | 5/27 | 98.9% | 4 | 2 | 1 | 1 | 雄光・ xxJ V |
xx地域学習セ ンター大規模改修 電気設備工事 | 事後 | 一般 | 220,220,000 | 5/28 | 99.9% | 8 | 6 | 0 | 2 | ミリオンテッ ク |
北千住駅xx広場ほか街路照明設備改修 工事 | 事後 | 一般 | 101,137,300 | 5/29 | 99.8% | 6 | 3 | 1 | 2 | 栗駒電気工事 |
xxx小学校電気設備改修 工事 | 事前 | 公募 | 88,748,000 | 5/29 | 99.2% | 6 | 4 | 2 | xxx建工業 | |
入谷住区センター 大規模改修電気設備工事 | 事前 | 公募 | 78,867,800 | 5/29 | 99.3% | 6 | 2 | 0 | 4 | アキラ電設 |
千寿本町小学校電気設備改 修工事 | 事前 | 公募 | 76,860,300 | 5/29 | 99.6% | 6 | 2 | 0 | 4 | 洸新電気工事 |
梅島第一小学校電気設備改修工事 | 事前 | 公募 | 68,871,000 | 5/29 | 99.8% | 6 | 1 | 0 | 5 | ケ ー ・ ディ・ エヌ |
本庁舎中央館・ xxxx設備改修工事(第4期) | 事後 | 一般 | 139,810,000 | 6/18 | 93.9% | 4 | 2 | 2 | xx電気 | |
西伊興住区センタ ー大規模改修電気設備工事 | 事前 | 公募 | 85,600,900 | 7/16 | - | 1 | - | - | - | 不 調 (希望 者 不足) |
xxx住区センタ ー大規模改修電気設備工事② | 事前 | 指名 | 83,521,900 | 7/30 | 94.2% | 10 | 3 | 7 | xxx業 | |
4号街路アンダー パス路面冠水装置改修その他工事 | 事前 | 公募 | 61,014,800 | 9/4 | 94.5% | 7 | 2 | 5 | xx | |
【空調・給排水】 | ||||||||||
xxxxx給排水衛生設備工事 | 事後 | 一般 | 511,093,000 | 5/26 | 99.6% | 4 | 4 | 0 | 水 工房・カン ノJV |
工事案件名 | 予定価 格 | 入札方 法 | (単位:円)予定価格(税込) ※入札参加資格要件緩和 | 開 札日 | 落札率 (%) | 申込者 数 | 入札者 数 | 辞退等 | 無効 | 落 札 事 業 者 名称 |
綾瀬小学校改築空調工事 | 事後 | 一般 | 503,019,000 | 5/27 | 99.7% | 4 | 3 | 0 | 1 | や んま・第 一冷暖 房 JV |
江北小学校新 築給排水工事 | 事後 | 一般 | 401,148,000 | 5/28 | 99.8% | 5 | 3 | 0 | 2 | 拓進・x x JV |
xxx新築空調工事① 【不落で② で再公 告】 | 事後 | 一般 | 391,710,000 | 5/29 | 不落 | 5 | 2 | 1 | 2 | JV結成工事不落 |
xx住区センター 大規模改修機械設備工事 | 事前 | 公募 | 47,572,800 | 5/29 | 90.5% | 10 | 6 | 4 | 東京セ ントラルヒ ー テ イ ン グ | |
xx地域学習セ ンター大規模改修機械設備工事 | 事後 | 一般 | 272,107,000 | 6/1 | 88.4% | 4 | 4 | 0 | 産栄空調 | |
特別養護老人ホーム扇空調 改修他工事 | 事後 | 一般 | 190,960,000 | 6/2 | 99.7% | 4 | 3 | 0 | 1 | やんま |
障がい福祉センタ ーあしすと空調 改修工事 | 事後 | 一般 | 154,891,000 | 6/4 | 99.3% | 8 | 5 | 3 | 東京セ ントラルヒ ー テ イ ン グ | |
西部福祉課・ 押xx住区センタ ー空調改修工事 | 事後 | 一般 | 107,075,100 | 6/4 | 98.3% | 8 | 5 | 2 | 1 | xx設備 |
中央本町地域 学習センター空調改修工事 | 事前 | 公募 | 83,985,000 | 6/4 | 99.97% | 9 | 5 | 2 | 2 | 拓進設備工業 |
工事案件名 | 予定価 格 | 入札方 法 | (単位:円)予定価格(税込) ※入札参加資格要件緩和 | 開 札日 | 落札率 (%) | 申込者 数 | 入札者 数 | 辞退等 | 無効 | 落 札 事 業 者 名称 |
生涯学習総合施設ヒートポンプチラー 改修工事 | 事後 | 一般 | 149,292,000 | 6/15 | 99.2% | 7 | 4 | 2 | 1 | xx設備 |
江北小学校新築空調工事② 【単体工事で 落札】 | 事後 | 指名 | 396,737,000 | 7/1 | 86.0% | 10 | 5 | 5 | 玉紘工業 |
注1 申込者数とは、入札公告後に当該工事案件について入札図書等の請求の申込みをした者の数をいう。注2 入札者数とは、申込者のうち実際に有効な入札をした者の数(辞退者及び受注制限や入札参加制限
によって当該入札が無効となった者を除く)をいう。
注3 工事案件名欄に②、③が付されているものは、1 回目の入札が不調で打ち切られ、新たな入札(再公告入札)又は 3 回目の入札(再々入札)を行ったことを示す。
注4 辞退等には、辞退及び無効以外のもの(不参加その他)が含まれる。
注5 指名競争入札の場合の申込者数とは、区が一方的に入札図書を送付した者の数である。
注6 A´、B´などの表記は、当初の入札工事(A、Bなど)の再公告入札であることを示している。
注7 落札率は、小数点第 2 位を四捨五入しているが、100%となる場合には小数点第 3 位を四捨五入している。
(5) 受注制限等の分析と評価
令和 2 年度は、建築工事と空調・給排水工事で、令和 2 年 4 月中に公表された工事案件については、以下の受注制限等の変更が行われている。
【建築工事】
ア 令和 2 年 4 月中に公表予定(開札日 5 月 25 日から 29 日)の工事案件については、入札参加制限の対象外とする一方、異なる入札方式であっても受注制限を適用する。
イ 建設共同企業体(JV)案件とJV案件以外(単体工事案件)との間では、受注制限を適用しないため、1者当たりの受注可能件数は、最大でJV案件1件とJV案件以外1件の合計 2 件になる。
ウ 令和 2 年 5 月 1 日(開札日 6 月 11 日)以降に公表する案件については、受注制限及び入札参加制限を適用する。
【空調工事・給排水工事】
ア 令和 2 年 4 月中に公表予定(開札日 5 月 26 日から 6 月 4 日)の工事案件については、建設共同企業体(JV)案件は、空調と給排水を同種工事とするが、それ以外の案件は同種工事としない(各々落札できる)。
イ 前記アの案件は、入札参加制限の対象外とする。
ウ 前記アの案件は、異なる入札方式であっても受注制限の対象とするが、建設共同企業体(JV)案件とJV案件以外(単体工事案件)との間では、受注制限を適用しない。
エ 1者当たりの受注可能件数は、最大でJV案件1件、給排水工事は 2 件、空調工事は 1 件の合計 4 件まで受注可能とする
オ 令和 2 年 5 月 1 日(開札日 6 月 15 日)以降に公表する案件については、受注制限及び入札参加制限を適用する。
要するに、建築工事については、「開札日 5 月 25 日から 29 日までの 8 件について
は、受注後 2 か月間入札に参加できない入札参加制限は適用しないが、受注制限については、JV受注案件と単体受注案件を除いて、一般競争入札と公募型指名競争入札との間においても適用する。」ということである。
また、令和 2 年度の建築工事においては、小・中学校のトイレ洋式化工事が急増するとの年度当初の見通しの下で、入札不調を防ぐ観点から、通常はCランクの事業者が入札に参加できない予定価格 6000 万円以上の工事についても、施工可能な工事については、特定建設業の許可を得ているCランクの事業者の入札参加を認める入札参加資格要件の緩和を行っている。
このような条件の下での入札状況は以下のものとなっている。
ア 建築工事
入札不調を除く建築工事 10 件の落札者を見ると、JV構成事業者 1 者を除く落札
者は全て異なっており、年度当初の 7 件を含む受注制限等の規制が受注を均等化させていると考えられる。
一方、詳細に見ると以下の状況が観察される。JV対象工事の 3 件(綾瀬小学校、江北小学校及びxx地域学習センター)については、受注制限によって無効となる 入札が 1 件、2 件と増えて行き、入札者数も 3 者、2 者と減少し、最後のxx地域学 習センターは 1 者入札となっている。また、落札率も 99.7%、99.8%、99.0%と高 い状況である。この理由は、xx区においては、建築の 3 者JVは現時点では 3 組 しか結成することができない状況があり、競争性が弱くなっていることがあると考 xられる。
ただし、仮に受注制限を外しても、同時期に数十億円に及ぶ学校改築工事を 2 件適正に施工することは、困難なことと思われる。
他方、Cランク(一部は区外事業者にも)に入札参加を認めた 5 件の落札率は、 90.6%から 93.1%と低くなっている。多数の事業者が入札した工事が多く、競争性が高まっていることが認識される。
イ 一般土木工事
一般土木工事は、年度当初から受注制限と入札参加制限が適用されているが、発注件数自体が年間 10 件と決して多くないこともあって、指名競争入札の受注者を除いて、各工事の受注者は全て異なっており、受注者の分散化の効果は出ていると考えられる。
一方で、1 者入札が指名競争入札を含めて 5 件に及び、落札した 4 件の落札率はいずれも 99%台と、競争性が弱いように感じられる。
xx区における一般土木工事は、道路舗装とそれ以外の専門的な土木工事からなるが、舗装工事等に関しては複数の事業者が申込みをするが、金額が大きい専門的な土木工事については、受注できる事業者が限られているようである。
そのため、それらの工事では入札不調が増え、最終的に 1 者が受注する形となっている。また、橋梁工事などについては、受注・施工できる区内事業者がいないことから、区外事業者に入札参加を求めている。
ウ 電気工事
電気工事も年度当初から受注制限と入札参加制限が適用されているが、11 件の対象工事を見ると、全ての工事で受注者が異なっており、受注者の分散化の効果は出ていると考えられる。
年度当初の 5 月 26 日から 29 日までの 8 件の入札のうち、6 件の落札率が 99%を超える高い落札率となっている。
また、5 月 29 日に開札された予定価格事前公表の公募型指名競争入札 4 件については、工事の開札とともに無効入札が増えていき、最後の入札では 5 者の入札が無効となって 1 者入札による落札で、落札率は 99.8%となっている。
エ 空調・給排水工事
空調・給排水工事では、受注制限が適用された 5 月 26 日から 6 月 4 日までの 10件の工事のうち、6 件の工事で落札率が 99%を超えている。特にJV対象工事 3 件の落札率は 99.6%、99.7%、99.8%と落札率が切り上がるなか、江北小学校新築空調工事では予定価格を超過して不落となってしまうが、7月1日にJV対象工事ではなく、単体入札として指名競争入札を行ったところ、5 者が入札し、86.0%で落札するなど、理解しにくい結果となっている。一方で、予定価格事前公表の案件ではあるが、5 者が入札しながら落札率が 99.97%と極めて高くなるものもあった。
これらの状況を前提とすると、区の受注制限等については、以下のとおり評価することができる。
1 現状では、年度当初など工事の発注が集中する時期においては、受注制限は実質的に入札参加制限と同様の受注者の分散効果がある。
2 等級格付A、Bの区内本店事業者だけという限られた入札参加資格要件の下で受注制限、入札参加制限を行うと、受注者の分散化は強まる一方で、競争性は低下し、落札率が上昇する。
3 一方で、等級格付Cの事業者や区外事業者が参加した入札の落札率は、
90%台前半と低くなっており、競争性の確保に有効である。
受注制限等の評価
(6) 受注制限等の構造的な問題点について
以上の分析を踏まえれば、区の現行の受注制限等の仕組みは、落札者を分散させる一方で、入札参加者が少なく、限定・固定化された状況においては、競争性が低下し、無効による 1 者入札や高い落札額(落札率)を生じさせる影響があるといえる。
その要因を検討すると、受注制限等に内在する以下の構造的問題があると考えられる。
すなわち、年度当初に集中して発注される工事等については、入札件数が入札参加者数と同程度ある場合、受注制限及び入札参加制限により同種工事は 1 件落札し
たら 2 件目以降の入札は無効とされるのだから、多くの事業者にとって価格競争をしようとする動機が働きにくい。
なぜなら、価格競争をするよりも、予定価格近辺の高い価格での入札を繰り返していけば、先に落札した事業者の入札は無効になり、結果的に自らが望む高い落札額で受注することも可能になるからである。特に予定価格が事前公表されている 6000 万円以上 1 億円未満の工事においては、その傾向が顕著になる。
受注制限に加えて、予定価格 6000 万円又は 500 万円以上の工事を受注した場合に
2 か月又は 1 か月の間、入札に参加できないとする入札参加制限は、自由な入札参 加を制約するとともに、事実上入札参加者を予測できることから、落札額(落札率)をさらに高める方向で作用する可能性がある。
(7) 他の区における受注制限等の措置の状況等について
足立区における受注制限及び入札参加制限に相当する制度に関して、他区の状況等を調査した結果は、下記の表 18 のとおりであった。
表 18 他の区における受注制限等の措置の状況等
受注制限 | 他区の状況 |
行っていない | 5 区 |
同日開札等の同種工事について受注件数を制限※ | 10 区 |
その他 | 2 区 |
※ 同日開札・同種工事の受注件数制限の具体例:同一の議会案件 1 件、同日開札の同種工事 1 件(6 区)、同日開札の同種工事 1 件~2 件、同時受注区内本店 3
件・区内支店 1 件、同一週公表の同種工事 2 件
入札参加制限 | 他区の状況 |
行っていない | 11 区 |
手持ち工事件数による制限※ | 8 区 |
その他 | 2 区 |
※ 手持ち工事件数(1年間)による制限の具体例:区内事業者 5 件・区外事業者
2 件、区内本店事業者 5 件・区内支店事業者 3 件、区内事業者 3 件・区外事業者
1 件、同一工種を区内事業者 2 件・準区内事業者 1 件、区内本店事業者 6 件・区
内支店 3 件、道路舗装・建築各 5 件・設備 2 件など
他区では受注制限を行っていない区が 5 区、xx区と類似の受注制限を行ってい
る区は、複数件数の受注を認めている区も含めて 10 区あった。
また、xx区のような一定期間入札への参加を制限する入札参加制限を行っている区はなく、手持ち工事件数で制限をしている区が 8 区あることが分かった。
さらに、受注制限と手持ち件数制限の両方を設けている区は少数だった。
以上のことから、xx区においては、入札参加制限については大幅に緩和あるいは廃止するとともに、現行の受注制限等についても見直して、競争できる入札者を増やしていくことが、競争性の回復に有効と考えられる。
(8) 事業者ヒアリングにおける指摘・要望について
事業者ヒアリングにおいては、現行の受注制限と入札参加制限については、多くの事業者から「より多くの事業者に受注機会が与えられるため、妥当である」との意見が出される一方で、複数の事業者から「事業者によって技術力、技術者の雇用人数等が異なるため、見直すことが妥当」との意見が出され、「受注制限だけで十分で入札参加制限は不要なのではないか」との意見も出されている。
また、総合評価型の入札を採用・拡大し、受注制限等の対象外として複数受注を認めるべきであるとの意見も出された。
(9) 受注制限等に関するxx取引委員会等の見解について
xx取引委員会は、「公共調達における改革の取組・推進に関する検討会報告書
(平成 20 年 5 月)」の中で、地元事業者の育成とxxな競争の確保について、地方公共団体等の発注機関においては、地域振興の観点から地元事業者の健全な育成を目的とした施策が進められているところ、発注機関において、地元事業者の受注の
「機会」の確保にとどまらず、「結果」の確保まで配慮された運用が行われる場合は、地元事業者の競争的な体質を弱め、地元事業者の健全な育成を阻害する結果となっ てしまうと考えられるとしている。
(10) 入札参加制限及び受注制限の改正案について
現行の区の受注制限及び入札参加制限は、落札者を分散させる一方で、年度当初に集中して発注される予定価格 6000 万円以上の工事(地域要件が設けられる工事)について、競争性を阻害し、1 者入札や高い落札額(落札率)を生じさせる弊害をもたらしている可能性があることが分かった。
xx取引委員会が指摘するように、区内事業者に対する受注の「機会の確保」だけでなく「結果の確保」にまで繋がることのないよう、また、区内事業者の競争的な体質を弱める結果とならないように制度設計の方法に一層配慮することが必要と考えられる。そこで、現行の区の受注制限及び入札参加制限については、適切な競争性を確保するとともに、区内事業者の受注の機会を確保することのバランスを考慮し、以下のとおり改正することを検討することが妥当である。
1 現行の入札参加制限については、大幅に緩和又は廃止を検討するとともに、受注制限についても、競争性を高める観点から内容を見直す。
2 前記 1 の見直し状況を考慮したうえで、必要と判断される場合には、入札参加制限に代えて、一定金額以上の区発注工事について年間受注件数による制限について検討する。
3 年間受注件数による制限を行う場合には、業種ごとの工事案件数、受注事業 者数及び競争状況等の観点から、業種ごとに件数を決めるべきである。ただし、区の必要性から実施した指名競争入札等については、従来どおり、受注件数の 制限は適用しないものとする。
4 現在、予定価格 6000 万円未満とされているCランク事業者のうち、一定の工事実績等がある者については、1 億円を超える額まで受注を可能とし、入札における競争性を高める。
5 入札においては、他の先進団体を参考に現行の総合評価制度を見直し、受注制限の対象とならない施工能力評価型総合評価方式の入札を拡大する。
受注制限等の見直し案
この改正によって複数案件を受注する事業者が現れる一方、従来は受注できた事業者が受注できなくなる結果が生じることも考えられる。
しかし、受注制限等の見直しについては、公共調達を行う区に求められた適切な競争性の確保と区内事業者の育成とのバランスを図るものであることについて、説明し、理解を求めることが必要である。
6 入札における不調・不落と不落随xxの実施について
入札参加者がゼロであったことなどにより入札が成立しなかったことを不調、入札者全員が予定価格を超過した又は最低制限価格未満であったため、落札されない場合を不落と称した上で、区における不調及び不落の状況について概観する。
これまで主に分析してきた 5 業種(建築、一般土木、電気、空調及び給排水)の工
事については、令和 2 年度の入札 152 件のうち、21 件(13.8%)が初度入札において不調・不落となり、再公告入札となっている。
不調・不落の主な内訳は、申込みをした全者が辞退したケース 8 件、申込み者がゼ
ロ又は1者だけだったケース 8 件、入札が無効になったケース 3 件及び予定価格が事
後公表の工事において予定価格を超過して不落となったケース 2 件である。
これらの不調・不落のうち、予定価格が事後公表の場合に発生する不落の状況について、以下により検討する。
(1) 入札における不落の状況と要因
令和2年度に予定価格が事後公表であった 5 業種の工事は 29 件あったが、そのう
ち 5 件(17.2%)が不調・不落となっている。
不調・不落となった理由は、入札者全員が予定価格を超過した工事(不落)が 2件、入札参加希望者ゼロの工事が1件、入札参加希望者が全者辞退して入札が成立しなかった工事が 1 件、入札が無効となった工事が1件であった。
予定価格が事後公表の工事については、入札者は最大 3 回までの入札ができることとされているが(「工事請負、物品供給等競争入札参加者心得(電子入札用)」第 21 条 4 項。以下、この場合の 2 回目及び 3 回目の入札を「再度入札」という。)、再度入札を行っても予定価格以内に入札額が入らないことは、ありうることである。
令和 2 年度に不落となった 2 件の入札額は、予定価格に対してそれぞれ、28.1%、 9.2%超過しており、予定価格とのかい離が比較的大きかった。しかし、令和元年 度には入札額が予定価格を 2.6%超過していて不落となった工事もあった。
また、今後、入札参加者側の積算能力が高まるにつれて、予定価格と入札額のかい離が小さい入札不調が増えてくることも考えられる。実際、令和 3 年度においても、予定価格をわずか 0.23%超過しただけで不落となった入札も生じている。
入札額が予定価格を超過する要因として、発注側の区と受注側の入札者との間に 設計図面や工事方法等の理解・認識等にズレがあり、予定価格と積算額に大きなか い離が生じることも少なくなく、この場合は予定価格と入札額との差は大きくなる。
一方、入札者のなかには、初度入札で落札できなかった場合に、再度入札によって落札しようとする者も少なくなく、その場合に最終的な入札額が予定価格以内に入らなかったことから不落となってしまう場合もある。
しかし、予定価格と入札額のかい離が小さい場合などには、入札者は、入札額を 予定価格以下の額まで引き下げて受注する意欲があるケースも少なくないのである。
一方、区側においても、再公告入札に伴う工事期間の延長や再公告入札に関する事務負担だけではなく、工事期間が夏休み中などに制限される学校工事などでは、再公告入札等の手続によって工事ができなくなるケースも生じている。
そのため、区側としても、入札者が予定価格内まで入札額を引き下げて受注する意欲がある場合には、当該入札において契約を決定したいと考えることには十分な合理性がある。
しかし、現在、区は不落随契を原則として認めていないため、最終的に入札額が予定価格を少しでも超過していれば入札は打ち切りとなり、再び入札の手続(再入札公告)をやり直さざるを得ない状況がある。
(2) 地方自治法で認められた不調・不落随契
本来、再度入札を行った結果、落札者がいない場合には、地方自治法施行令第 167 条の 2 第 1 項 8 号(競争入札に付し入札者がないとき、又は再度の入札に付し落札者がないとき)による不落随契の対象になるものである。
区においては、平成 17 年度から工事に関する予定価格が全て事前公表とされたこ
とから不落随契は不要となり、原則禁止とされたが、予定価格 1 億円以上の工事が
事後公表となった平成 30 年度以降においても不落随契の禁止が継続されている。 予定価格が事後公表となった工事については、一定の条件のもとで不落随契は復
活されるべきである。
(3) 不落随契に関する他区等の状況
特別区においては、xx区を含めて予定価格の事後公表を行っている 15 区のうち
少なくとも 12 区で不落随契を実施している。
不落随契の具体的な方法としては、「予定価格と入札額の差が僅差である場合に協議を行い、協議が成立すれば随意契約を締結する」「予定価格と入札額が近い場合は、予定価格に近い入札者から順番に不落随契の交渉を行い、金額調整がつけば随意契約を締結する」「再度入札で予定価格超過となった事業者のうち最も予定価格に近い事業者と価格交渉を行う」などが行われている。
また、政令指定都市のなかには、予定価格と入札額の差が予定価格の 5%以内の場合に不落随契を認めている市もある。
(4) 区が取るべき不落随契及び入札不調による再公告入札の方法について
足立区においても予定価格事後公表の工事については、一定の条件の下で不落随契を認めることが考えられる。
一方で、不落随契に該当しないケースや入札参加者がいないことで入札が成立しないケースなど、再公告入札にかけなければならない場合もある。
これらの区における不落随契、入札不調による再公告入札に関するルールは以下のものが考えられる。
a 再度入札を行った結果、落札者がいない場合には、予定価格と入札額の差が、原則として予定価格の一定割合以内である場合に不落随契の手続を認めることとする(ただし、工事期間に制約がある場合等には当該割合に限られないこととする)。
b 不落随契の手続は、予定価格に最も近い入札者(当該落札者が辞退した場合は次順位者)に対して不落随契の範囲にあることを伝え、新たに当該工事の見積書を提出する意思があるか否かを確認するとともに、当該入札者が不落随契の手続に同意した場合は、当該入札者が新たに見積書を提出することによって行うものとする。
c 入札参加者がいなかったことによる入札不調の場合も含め、再公告入札においては、落札を確実にするために区内支店事業者及び区外事業者に入札参加資格要件を広げることとする(指名競争入札を行う場合においても、同様とする)。
d 再公告入札の際に工事内容や予定価格を見直す場合には、入札者に予定価格等が察知されることなどが無いように発言内容等に十分留意すること。
7 最低制限価格未満での入札による不落への対応について
地方公共団体の公共入札においては、いわゆるダンピング受注(当該請負代金の額によっては公共工事の適正な施工が通常見込まれない契約)を防止する観点から、最低制限価格制度と低入札価格調査制度を設けている。
最低制限価格制度とは、契約内容に適合した履行を確保するため特に必要があると認めるときは最低制限価格を設定して、予定価格の制限の範囲内の価格で最低制限価
格以上の価格をもって入札した者のうち最低の価格をもって申込みをした者を落札者とすることができるとするものである(地方自治法施行令第 167 条の 10 第 2 項)。
一方、低入札価格調査制度とは、予定価格の制限の範囲内で最低の価格で申込みをした者の入札価格によっては契約内容に適合した履行がされないおそれがあると認めるとき、又はその者と契約を締結することがxxな取引の秩序を乱すこととなるおそれがあって著しく不適当であると認めるときは、その者を落札者とせず、予定価格の制限の範囲内の価格をもって申込みをした他の者のうち、最低の価格をもつて申込みをした者を落札者とすることができるとするものである(地方自治法施行令第 167 条
の 10 第 1 項)。
(1) 最低制限価格制度と低入札価格調査制度の運用
足立区においては、平成 26 年 4 月 1 日から、最低制限価格の設定範囲は予定価格
の 10 分の 8 以上とされ(xx区契約事務規則第 30 条、xx区公共工事等最低制限
価格運用事務処理要綱(25 足xx発第 1788 号 平成 26 年 2 月 28 日 総務部長決
定。以下、同要綱を「最低制限価格要綱」という。)第 3 条1項、同付則第 3 条)、
調査基準価格の設定範囲は 10 分の 9 以上予定価格を下回る範囲内とし(xx区低入
札価格調査実施要綱第3 条1 項、同付則第4 条。以下、同要綱を「低入札価格要綱」
という。)、調査基準価格の 10 分の 9 の額(失格価格)を下回った入札者は失格とし
ている(低入札価格要綱第 7 条 3 項、付則第 5 条)。
最低制限価格制度と低入札価格調査制度のいずれかが適用されるかは、入札公告
(または発注票)に明記され、原則として予定価格 1 億 8000 万円以上の工事及び総合評価制度による入札について低入札価格調査制度が適用され、1 億 8000 万円未満の工事については、最低制限価格制度が適用されている(最低制限価格要綱、第 2
条、同付則第 2 条)。
区の最低制限価格及び低入札調査基準価格の算定方法は、国のモデル(工事請負契約に係る低入札価格調査基準中央公共工事契約制度連絡協議会モデル)に準じている。
これらの状況を踏まえ、最低制限価格と低入札調査価格の差異を確認すると、あくまで単純化したモデルではあるが、最低制限価格を仮に予定価格の 90%に設定した場合、計算上は、最低制限価格が適用される 1 億 8000 万円未満の入札では 90%に
満たなければ失格となるのに対して、低入札調査基準価格が適用される 1 億 8000 万円以上の工事においては、81%(90%×10 分の 9)の金額から低入札価格調査の対象となり、ダンピング等がなければ落札決定が行われることになるという大きな差が生じることになる。
一方、低入札価格調査において、入札額が低入札調査基準価格以下となった要因を聴取したところ、当該入札者の強みで仕入れ先からの機器等の購入見積額が想定以上に低かったケース、所有している工具等を使うことで見積額が抑えられているケースなどであり、ダンピングに該当するケースは聞いていないとのことである。
(2) 最低制限価格及び低入札調査基準価格の動きとその影響
近年、ダンピング対策の更なる徹底に向けて低入札価格調査基準価格及び最低制限価格の逐次の引き上げが行われ、予定価格帯によって差異はあるものの、全体的に予定価格との差が狭いものになってきている。
そのため、1 億円を超える大型工事においても、最低制限価格を数百万円下回っただけで失格となるケースや数千万円規模の工事で入札額が最低制限価格を数十万円下回るだけで不落となり、当該入札が打ち切られるケースなども生じている。そのため、工事期間が限られる学校関連の工事などについては、日程的に再公告入札が行えず、支障が生じかねない状況もある。
(3) 他の自治体の取組み
自治体のなかには、最低制限価格等の算定に当たって、国のモデルは採用せず、入札価格を基準とするいわゆる変動型最低制限価格制度といわれる算定方法を導入しているところもある。変動型最低制限価格制度にもいくつかのタイプがあるが、一定の入札者の入札価格の平均額の一定割合を最低制限価格とする例が多い。特別区においても一部に変動型の低入札価格調査制度を導入している区もある。これらの自治体においては、総じて最低制限価格や低入札調査基準価格は大きく低下している。
しかし、国のモデルと基本的に異なるという問題もあり、慎重に検討する必要があると考える。
(4) 区における最低制限価格制度及び低入札価格調査制度の運用の改善
低入札価格調査の適用対象となる工事は、低入札価格要綱が施行された平成 17
年 7 月から平成 22 年 12 月までは予定価格 6000 万円以上の工事を対象としていた
が、平成 23 年 1 月 1 日から、当分の間、予定価格 1 億 8000 万円以上の工事を対象
とすることなどに変更され、現在に至っている(低入札価格要綱第2 条付則第3 条、
第 7 条第 3 項付則第 5 条)。
具体的には、平成 23 年 1 月 1 日から低入札価格調査の適用対象が予定価格 6000
万円以上の工事から予定価格 1 億 8000 万円に引き上げられるとともに、入札額が調
査基準価格の 10 分の 9 未満の場合には落札者とすることができないことになった
(平成 22 年 12 月末までは、入札額が調査基準価格の 10 分の 9 未満の場合でも契約内容に適合した履行が確保されることについての相当な理由がある場合と認められる場合は、落札者とすることができた)。
これらの制度の改正後は、「著しい低入札及び低入札価格調査件数も減少し、落札比率も上昇傾向が見受けられる」(「公契約制度検討委員会意見書(平成 24 年 3 月 27日)」)としている。
このような低入札価格調査制度の見直しの背景には、競争の激化による平均落札率の低下傾向や多大な労力と時間を要する低入札価格調査件数の急増などがあったものと考えられる。
しかし、現在、特別区において低入札価格調査制度を導入しているxx区を除く
11 区の適用する工事の予定価格は、中央値が 9000 万円(平均予定価格は約 8300 万
円)であり、xx区の 1 億 8000 万円以上という低入札価格調査の適用基準は、他区に比べてかなり高い水準といえる。
区は、低入札価格調査制度の適用対象工事を拡大した場合の影響や他の競争性の確保策の実効性等を慎重に検討するとともに、他の自治体等を参考に、低入札価格調査の手順等の見直し、職員等の業務負担等の緩和を行い、より実情に合った低入札価格調査制度及び最低制限価格制度に運用を改善していく必要がある。
(5) 最低制限価格未満の入札者の再度入札への参加
地方自治法施行令では、最低制限価格が設定されている案件の入札の際に、初度入札(当該工事案件の最初の入札)で予定価格の制限の範囲内の価格で最低制限価格以上の価格の入札がないときは、(最低制限価格未満の入札者を含めて)再度入札(当該工事案件の 2 回目以降の入札)をすることができるとされている(地方自
治法施行令 167 条の 8 第 4 項)。
一方、xx区においては、公共工事等最低制限価格運用事務処理要綱第 4 条を受けた「工事請負、物品供給等競争入札参加者心得(電子入札用)」において、「再度入札に参加できる者はその前回の入札に参加した者のうち、最低制限価格以上の価格で入札した者に限る」(第 21 条第 2 項)とし、最低制限価格未満で入札した者は
再度入札に参加できないことにしている。
初度入札において、予定価格を上回った者は再度入札に参加できる一方、最低制限価格を下回った者を再度入札に参加させないと判断したことは、当時、最低制限価格を下回った入札者はダンピング入札であるとの位置づけをしたことによるものと思われる。実際、xx区と同様に最低制限価格未満の入札者を再度入札に参加させない自治体も少なくない。
しかし、事業者によって原材料の仕入れ額等を含め価格競争性は異なっており、最低制限価格が上昇しているなか、「当該工事に関する入札額が最低制限価格未満であれば直ちにダンピング価格である」とは言えない状況がある。また、入札額の内訳(直接工事費、共通仮設費、現場管理費及び一般管理費等)のなかの一般管理費等については、事業者の本社経費や利益に相当する額でもあり、初度入札において最低制限価格を下回ったから再度入札に参加させずに直ちに失格とすることは、必ずしも妥当ではないと考える。
実際、当該工事を低入札調査価格の対象と位置付けた場合には、直ちに失格とはならず、調査の上、ダンピング等の疑いが無ければ当該価格で落札決定している例が少なくないのである。
このような観点から、既に札幌市を始め、いくつかの自治体が初度入札において最低制限価格を下回った入札者についても再度入札に参加できるように入札に関する要綱の規定を改正している。
以上のことから、区においては、まず、工事請負、物品供給等競争入札参加者心得(電子入札用)を見直して、再度入札に参加できる者として、地方自治法施行令 167 条の 8 第 4 項の規定どおりに、前回の入札に参加した者のうち、最低制限価格未満の価格で入札した者も含めることを検討するべきである。
その場合、必要に応じて、都内の自治体が参加する電子入札システムである東京電子自治体共同運営サービスのシステム等の変更についても検討するべきである。
なお、再度入札の後においても入札額が最低制限価格を下回ることで、当該入札が打ち切られた場合においては、予定価格を超過して入札手続が終了した場合と同様に不落随契(地方自治法施行令第 167 条の 2 第 1 項 8 号)の手続を行うことができるものと考えられる。
8 1者申込みの際の入札中止措置の見直しについて
現在、xx区の競争入札において、入札参加の申込みが 1 者しかなかった場合は、競争性がない入札になるとして入札関係図書の交付等を含めた入札手続は中止され、契約請求課において、入札参加者が 1 者しかなかった要因等を検討し、改めて再公告入札を行う取扱いとなっている。
1 者申込みとなる要因としては、もともと入札に参加できる事業者が少ない、地域要件など入札参加資格要件が制限されている、発注内容自体に魅力がないことなどが考えられるところである。
一方で、入札参加の申込みの際に複数の事業者が申込みを行ったことで入札手続が続行され、入札関係図書の交付等を受けた後、金額が合わないことなどを理由として入札参加を辞退して入札者が 1 者となった場合には、結果的に競争性はなくなったと
しても入札手続は続行され、残った 1 者は落札することができることとなっている。
(1) 1 者申込みによる競争性及び入札中止の問題点
いわゆる 1 者申込みに競争性がないという見方は、全員が同時期に入札の申込み を行い、申込みの状況が入札参加者に分かるケースでは該当するが、現在の電子入 札による入札方法においては、他に入札者がいるのかどうかが分からないことから、
必ずしも該当するとは言えない。
また、入札参加の申込みが 1 者しかなかった場合に入札手続を中止し、契約請求課に返付して改めて再公告入札の手続を行っても、当該入札に関心を持つ別の事業者が現れるとも限らず、当初の入札に申込みをした事業者が再公告入札に再度申込むとも限らない。そのため、再公告入札においても入札が成立しない場合もあり、業務の停滞や工事の遅延等を招くケースが少なくない。
(2) 他の自治体等の状況
特別区のなかでこのような 1 者申込みについて規制をしていない区は 15 区、何ら
かの規制をしている区はxx区を含めて 7 区ある。xx区と同様に入札参加希望者
が 1 者である場合に入札を中止している区が 2 区、指名競争入札の場合に 1 者しか
参加しない場合に中止している区が 1 区であった。そのなかには、当初の入札では
2 者以上の参加がなければ入札を中止するが、再公告入札の場合は 1 者しか参加申し込みが無くても入札を続行する区もある。1 者申込みであった場合に再公告入札とする都内のある市では、再公告入札の際には都内全域の本支店に入札参加資格要件を拡大して入札を行っているところもある。
また、入札参加希望者が 1 者である場合には、予定価格に応じて定める指名数まで事業者を任意に指名するなどの方法により入札を続行する区も複数あった。
(3) 1 者申込みの際の入札の改善
足立区においても、入札参加の申込者が 1 者である場合には、区内事業者及び区外事業者を含めて、一定数の事業者を任意に指名するなどの方法により入札を続行するべきである。
9 債務負担行為等の活用による工事発注の平準化
一般的に、公共工事については、年度初めに工事量が少なくなる一方、年度末には工事量が集中する傾向にある。このように、工事量の偏りが生じることで、工事の閑散期には仕事が不足する一方、繁忙期には仕事量が集中することになり、工事業者の就労環境が不安定になるとともに、資機材等の円滑な調達が困難となる等の弊害が指摘されるところである。
一方、xx区の入札・契約業務においては、区立学校の改修工事を児童・生徒のいない夏休み中に工事を行う必要があることなどから、年度当初の 4 月から 6 月にかけて発注が集中することにより、担当職員等の超過勤務の急増など、勤務環境の悪化を招くとともに、事業者側の受注余力の減少、受注制限等による入札参加者の減少などにより、入札不調等の一因ともなっている。
このような状況を改善するためには、年度当初の工事発注をできる限り前倒しし、前年度中に入札・契約等を行うことが有効である。
一方で、契約に伴う前払金等の会計処理を含め、債務負担行為がより活用されるよう具体的な対応について、改めて検討する必要がある。
また、年度末の履行期限に合わせた工事の完了、検査の集中等を防ぐため、補正予算の計上と同時に繰越明許費を設定して履行期限を翌年度の前半に定めている自治体もあり、繰越明許費の活用についても検討する必要がある。
10 総合評価制度の課題と活用について
公共工事の品質は、建設工事が、目的物が使用されて初めてその品質を確認できる
こと、その品質が工事等の受注者の技術的能力に負うところが大きいこと、個別の工事により条件が異なること等の特性を有することに鑑み、経済性に配慮しつつ価格以外の多様な要素をも考慮し、価格及び品質が総合的に優れた内容の契約がなされることにより、確保されなければならないとされている(公共工事の品質確保の促進に関する法律第3条)。
総合評価方式は、価格と品質の両面から落札者を決めるものであり、入札者の工事成績評価点、配置予定技術者の資格点・実績点等からなる技術点と入札した金額である価格点を総合的に評価して、落札者を決定することになる。
そのため、総合評価制度は、施工事業者に対して、工事の評定点を良くしようという意識付けを図るメリットがある一方、評価の基準等で過度な地域要件等を設定すると、結果的に、客観性や競争性がない入札制度となってしまう危険がある。
xx区は、施工能力審査型総合評価方式試行要綱(以下、「試行要綱」という。)を定めているものの、現在の入札においては、原則として価格のみによる一般競争入札方式が採用され、総合評価型の一般競争入札は、実際には一般土木事業の国庫補助事業で例があるに過ぎない。
一方で、現行の試行要綱で実施されている一般土木事業の入札においては、入札参加者が少ないという課題がある。入札に当たって提出する資料が多いことなど、入札参加者にとって煩雑な面が指摘されている。
事業者ヒアリングでは、区内事業者として区の施策に協力している点を評価してほしいという声がある一方で、区は業界団体に加入しなくても地域貢献の加点対象となる指標を出してほしいなどの要望もあった。
また、試行要綱では、技術点の評価を構成する過去の工事の評価点等は、区の評価基準によるものとなっており、事実上、区外事業者については、参加してもこれらの技術点が得られない状況となっている。
国や東京xxの評価方式を検討し、xxな評価の基準の見直しが不可欠である。 xx区は、担当者の事務負担の増加等にも配慮したうえで、現在の総合評価制度を
見直すとともに、現在行われている国庫補助事業以外の工事においても総合評価制度が適用される入札を拡大するべきである。
11 地元企業の育成策・優遇施策の実施について
足立区では、これまで予定価格 6000 万円以上の工事の入札について、原則として等級格付がA又はBの区内本店事業者だけに入札参加資格を認めており、これは入札における事実上の地元企業の育成策として位置づけられてきた。
しかし、前記3(2)のとおり、入札における指名の基準又は入札参加資格に地方公共団体が地域要件を設定・運用したことについて、地方自治法等が定める機会均等、xx性、透明性及び経済性(価格の有利性)の確保に反するとして違法とする判決が出ていることや、その他のxx区を取り巻く最近の状況等についても合わせて検討すると、競争性の確保との関係において、区内本店事業者を過度に有利に取扱う、又は支店事業者を不利な立場に置くことは妥当とは言えない。
また、区の基本的立場は、納税者が収めた税金を無駄なく、効果的、効率的に使用して公共調達の目的を達成することにある。
そのなかで、他の区では区内事業者に対する育成策、優遇施策として以下のような対応を行っている。
「工事成績の評定結果に基づき、区内事業者は等級格付よりも 1 ランク上の工事まで入札参加を認めている」
「入札参加における実績要件(完成工事高)について、区内事業者は要件を緩和している」「入札参加における実績要件(完成工事高)について、官公庁工事について
は4分の1(本則は 2 分の 1)、民間工事については 2 分の 1(本則は同額)の実績で入札参加を可能としている」
「総合評価方式における加点」「工事成績が 75 点以上の場合は、年度内受注件数を
基準より 1 件多く認めている」などである。
これらのなかで、区内本店事業者の育成・支援策として実効性が高いものは以下のものと考えられる。
1 入札参加における実績要件(完成工事高)について、区内本店事業者は要件を緩和する。
2 区内本店事業者は、工事成績の評定結果や完成工事高に基づいて、等級格付よりも 1 ランク上の工事まで入札参加を認める。
地元企業の育成・支援策
12 区内事業者認定基準の改正と運用について
足立区では、令和 3 年 11 月から「xx区競争入札参加資格における区内事業者認定基準」等を改正し、従来、届出制であった区内事業者としての取り扱いを認定制に改正した。
改正認定基準による適切な認定及び運用等により、ペーパーカンパニー等が区内事業者として区の公共工事を受注することがなくなるものと思われる。
区が公共調達においてよるべき原則は、地方自治法等が定める「機会均等」「xx性」「透明性」「経済性(価格の有利性)」であり、その原則に基づきつつ、区内事業者の適切な支援を行っていく必要がある。
13 本報告書で検討した予定価格の公表のあり方、工事発注の方法等についての課題と改善の方向性について
本報告書でこれまで述べてきたxx区の入札制度の課題と改善の方向性の要点については、以下の表にまとめることができる。
表 19 xx区の予定価格の公表のあり方、工事発注の方法等についての課題と改善の方向性
課題項目 | 改善の方向性 | |
1 | 予定価格の公表のあり方 | 予定価格を事後公表とする工事の範囲を予定価格6000 万円以上の工事まで拡大することが重要である。一方、工事規模の目安になる工事発注規模一覧表を作成して公表することが有用である。 |
2 | 建設工事等発注標準のあり方 | 他の特別区との均衡、入札不調の抑制及び落札率等の観点から、建築、土木におけるCランク事業者の受注上限額の引き上げ等を含め、業種ごとに発注標準を見直す必要があ る。 |
3 | 地域要件の設定のあり方 | 最高裁判例、裁判例への適合性及び競争条件の確保等の観点から、区内支店事業者が予定価格6000 万円以上の工事の入札に参加できるように見直すことは喫緊の課題である。また、難度の高い工事等に関する区外事業者の入札参加に関して発注標準に注記し、適切か つ積極的な対応を行うことが適当である。 |
4 | 建設共同企業体(JV)対象工事のあり方等 | 区内支店事業者がJVの代表・構成員となること、実績を有する区内事業者が単体で入札することを認めること、また、一定規模以上の大規模工事については、区外事業者を代表構成員とするJVの参加を認めることが妥当 である。 |
5 | 受注制限及び入札参加制限のあり方 | 現行の入札参加制限については、大幅な緩和等を検討、受注制限も競争性を高める観点から見直す。見直し状況を考慮したうえで、必要な場合は受注件数による制限を検討する。また、工事実績等があるCランク事業者については、受注可能額を拡大して競争性を高める。現行の総合評価制度を見直し、受注制限の対象とならない施工能力評価型の総合評価方式による入札を拡大すること等を検討することが妥当である。 |
6 | 入札における不調・不落と不落随契及び再公告入札の手続 | 予定価格事後公表の入札において、再度入札を行っても落札者がいない場合に、一定の条件の下で、不落随契の手続を認める。また、入札参加者がいない入札不調の場合も含めて、再公告入札においては、落札を確実にするため、区内支店事業者及び区外事業者に入札参加資格要件を広げるなどのルールを決め ることが考えられる。 |
7 | 最低制限価格未満での入札による不xxへの対応 | 低入札価格調査制度の適用対象工事を拡大した場合の影響や他の競争性の確保策の実効性等を慎重に検討するとともに、より実情に合った低入札価格調査制度及び最低制限価格制度に運用を改善していく必要がある。また、地方自治法施行令の規定や他の自治体を参考に、初度入札で最低制限価格未満の入札となった者についても再度入札(当日の 2 回目の入札)に参加させることを検討するべきであ る。 |
8 | 1者申込みの際の入札中止措置の見直し | 1 者申込みとなった場合には、区内事業者及び区外事業者を含めた指名競争入札などの方法により入札を続行するべきである。 |
9 | 債務負担行為等の活用による工事発注の平準化 | 工事の時期的な偏りによる事業者の受注余力の減少、担当職員等の超過勤務の急増等を抑制するため、年度当初の工事をできる限り前倒しして発注することが有効であり、検査等の集中を防ぐ観点から繰越明許費の活用につ いても検討する必要がある。 |
10 | 総合評価制度の課題と活用 | 総合評価制度については、施工事業者に対して工事の評定点を良くしようとする意識付け |
を図るメリットがあるが、現行の制度については客観性や競争性を高めるxxな評価基準への見直しが不可欠である。現行の総合評価制度を見直すとともに、総合評価制度が適用 される入札を拡大するべきである。 | ||
11 | 地元企業の育成策・優遇施策の実施 | 地方自治法等が定める機会均等、xx性、透明性及び経済性(価格の有利性)の範囲のなかで、区内本店事業者については、入札参加における実績要件(完成工事高)や等級要件の緩和などが実効性の高い育成・支援策である。これらにより、区内本店事業者が入札に 参加する機会を拡大する。 |
12 | 区内事業者認定基準の改正と運用 | 区内事業者認定基準等は、従来の届出制から認定制に改正された。公共調達に関する原則に基づき、改正認定基準等を適切に運用することで、区内事業者の適正な受注を支援して いく必要がある。 |
Ⅳ 結語
以上のとおり、本件事件において情報漏えいに至った原因及び問題点を検証するとともに、予定価格の公表のあり方、工事発注の方法等についての調査及び審議の結果を報告する。
区においては、本報告書の趣旨を真摯に受け止め、再発防止並びに予定価格公表のあり方及び工事発注の方法等についての提言を講じられるよう要望するとともに、これらにより、より適正な入札、契約制度等を確立し、もって区民の信頼を早急に回復されることを望む。
以上
参 考 資 料
令和元年度工事入札 主な業種別落札率等の状況(契約課契約分)
令和元年度工事入札 主な業種別落札率等の状況(契約課契約分)
【建築工事】
業種・予定価格帯 | 等級格付 | 地域要件 | その他の要件 | 予 定 価 格公表 | 工 事件数 | 落札率 (平均) | 有 効 入 札者数 (平均) | 当初参加 申込者数 (平均) |
5億円以上 | A、B | 区内本店 | 一般競争 3 者JV結成 | 事後 | 1 | 99.8% | 3.0 | 3.0 |
1億円以上 | A、B | 区内本店 | 一般競争 | 事後 | 10 | 98.3% | 1.4 | 9.4 |
6000 万円~ 1億円 | A、B | 区内本店 | 公募型 | 事前 | 5 | 98.2% | 3.0 | 5.4 |
区内本店のみ小計 | 16 | 98.4% | 2.0 | 7.8 | ||||
6000 万円~ 1億円 | (A、B、 C) | 区内本店 | 公募型・指 名競争 | 事前 | 2 | 91.6% | 4.5 | 16.0 |
4000 万円~ 6000 万円 | A、B、C | 区内本店・ 区内支店 | 公募型 | 事前 | 6 | 96.1% | 2.7 | 5.8 |
2000 万円~ 4000 万円 | B、C、D | 区内本店・ 区内支店 | 公募型 | 事前 | 5 | 93.8% | 3.4 | 6.4 |
1000 万円~ 2000 万円 | C、D、E | 区内本店・ 区内支店 | 公募型 | 事前 | 2 | 91.7% | 2.5 | 4.0 |
130 万円~ 500 万円 | D、E | 区内本店・ 区内支店 | 指名競争 | 事前 | 1 | 99.8% | 2.0 | 11.0 |
区内支店・Cランク以下を含む小計 | 16 | 94.5% | 3.1 | 7.4 | ||||
合 計 | 32 | 96.4% | 2.5 | 7.6 |
【建築工事事業者等の状況】 (平成 31 年4月等級格付データ)
等級格付 | 事業者数 | 区内本店 | 区内支店 | 延べ受注事 業者数 | 受注事業者累計内訳 (丸数字は受注工事件数) |
Aランク | 10 | 10 | 0 | 12 | ③1者、②2者、①5者 |
Bランク | 12 | 11 | 1 | 10 | ②3者、①4者 |
Cランク | 16 | 15 | 1 | 8 | ②2者、①4者 |
Dランク | 14 | 13 | 1 | 3 | ②1者、①1者 |
Eランク | 15 | 15 | 0 | 1 | ①1者 |
合 計 | 67 | 64 | 3 | 34 | ※区内支店受注件数0者0件 |
※注1 延べ受注事業者数:JV結成工事は、結成事業者数(3JVの場合3者)を計上
【一般土木工事】
業種・予定価格帯 | 等 級 格付 | 地域要件 | その他の要件 | 予 定 価 格公表 | 工 事件数 | 落札率 (平均) | 有 効 入 札者数 (平均) | 当初参加申込者数 (平均) |
5億円以上 | A、B | 区内本店 | 一般競争 2 者JV結成 | 事後 | 1 | 99.7% | 1.0 | 2.0 |
1億円以上 | A、B | 区内本店 | 一般競争・ 指名競争 | 事後 | 3 | 99.3% | 3.0 | 12.3 |
6000 万円~ 1億円 | A、B | 区内本店 | 公募型 | 事前 | 4 | 99.8% | 2.3 | 3.0 |
区内本店のみ小計 | 8 | 99.6% | 2.4 | 6.4 | ||||
4000 万円~ 6000 万円 | A、B、 C | 区内本店・ 区内支店 | 公募型 | 事前 | 6 | 91.2% | 3.0 | 5.7 |
2000 万円~ 4000 万円 | B、C、 D | 区内本店・ 区内支店 | 公募型・指 名競争 | 事前 | 7 | 90.0% | 5.7 | 15.0 |
1000 万円~ 2000 万円 | C、D、 E | 区内本店・ 区内支店 | 公募型 | 事前 | 4 | 90.2% | 5.5 | 7.0 |
500 万円~ 1000 万円 | C、D、 E | 区内本店・ 区内支店 | 公募型・指 名競争 | 事前 | 5 | 94.0% | 2.2 | 19.2 |
130 万円~ 500 万円 | D、E | 区内本店・ 区内支店 | 指名競争 | 事前 | 4 | 96.1% | 2.5 | 10.5 |
区内支店・Cランク以下を含む小計 | 26 | 92.0% | 3.9 | 11.7 | ||||
合 計 | 34 | 93.8% | 3.5 | 10.5 |
【一般土木工事事業者等の状況】 (平成 31 年4月等級格付データ)
等級格付 | 事業者数 | 区内本店 | 区内支店 | 延べ受注事 業者数 | 受注事業者累計内訳 (丸数字は受注工事件数) |
Aランク | 5 | 3 | 2 | 1 | ①1者 |
Bランク | 12 | 12 | 0 | 10 | ③1者、②1者、①5者 |
Cランク | 26 | 22 | 4 | 14 | ③3者、②1者、①3者 |
Dランク | 23 | 21 | 2 | 8 | ⑤1者、①3者 |
Eランク | 44 | 40 | 4 | 2 | ①2者 |
合 計 | 110 | 98 | 12 | 35 | ※区内支店受注件数1者3件 |
※注1 延べ受注事業者数:JV結成工事は、結成事業者数(2JVの場合2者)を計上注2 区内支店受注件数3件は、Cランクの事業者が1者3件である。
【電気工事】
業種・予定価格帯 | 等級格付 | 地域要件 | その他の要件 | 予定価格公表 | 工 事件数 | 落札率 (平均) | 有 効 入 札者数 (平均) | 当初参加申込者数 (平均) |
3億円以上 | A、B | 区内本店 | 一般競争 2 者JV | 事後 | 1 | 96.6% | 3.0 | 3.0 |
1億円以上 | A、B | 区内本店 | 一般競争 | 事後 | 4 | 94.5% | 3.8 | 6.0 |
6000 万円~ 1億円 | A、B | 区内本店 | 公募型 | 事前 | 1 | 97.9% | 1.0 | 5.0 |
区内本店のみ小計 | 6 | 95.4% | 3.2 | 5.3 | ||||
4000 万円~ 6000 万円 | A、B | 区内本店・ 区内支店 | 公募型・ 指名競争 | 事前 | 12 | 89.8% | 9.9 | 18.8 |
2000 万円~ 4000 万円 | A、B、C | 区内本店・ 区内支店 | 公募型 | 事前 | 17 | 89.6% | 8.5 | 17.7 |
1000 万円~ 2000 万円 | B、C | 区内本店・ 区内支店 | 公募型 | 事前 | 5 | 91.5% | 4.6 | 11.8 |
500 万円~ 1000 万円 | B、C、D | 区内本店・ 区内支店 | 公募型 | 事前 | 3 | 98.4% | 2.7 | 7.3 |
130 万円~ 500 万円 | C、D | 区内本店・ 区内支店 | 指名競争 | 事前 | 2 | 91.0% | 2.0 | 10.0 |
区内支店・Cランク以下を含む小計 | 39 | 90.7% | 7.6 | 16.1 | ||||
合 計 | 45 | 91.3% | 7.0 | 14.7 |
【電気工事事業者等の状況】 (平成 31 年4月等級格付データ)
等級格付 | 事業者数 | 区内本店 | 区内支店 | 延べ受注事 業者数 | 受注事業者累計内訳 (丸数字は受注工事件数) |
Aランク | 17 | 14 | 3 | 12 | ③1者、②2者、①5者 |
Bランク | 30 | 28 | 2 | 25 | ③2者、②3者、①13者 |
Cランク | 10 | 9 | 1 | 9 | ③2者、①3者 |
Dランク | 10 | 9 | 1 | 0 | |
合 計 | 67 | 60 | 7 | 46 | ※区内支店受注件数2者4件 |
※注1 延べ受注事業者数:JV結成工事は、結成事業者数(2JVの場合2者)を計上注2 区内支店受注件数4件は、Bランクの事業者2者が各2件である。
【空調工事】
業種・予定価格帯 | 等 級 格付 | 地域要件 | その他の要件 | 予 定 価 格公表 | 工 事件数 | 落札率 (平均) | 有 効 入 札者数 (平均) | 当初参加申込者数 (平均) |
3億円以上 | A、B | 区内本店 | 一般競争 2者JV結成 | 事後 | 1 | 97.4% | 4.0 | 5.0 |
1億円以上 | A、B | 区内本店 | 一般競争 | 事後 | 1 | 99.1% | 2.0 | 8.0 |
6000 万円~ 1億円 | A、B | 区内本店 | 公募型 | 事前 | 4 | 95.4% | 3.3 | 5.0 |
区内本店のみ小計 | 6 | 96.4% | 3.2 | 5.5 | ||||
4000 万円~ 6000 万円 | A、B | 区 内 本店・区内 支店 | 公募型 | 事前 | 0 | - | - | - |
2000 万円~ 4000 万円 | A、B、 C | 区 内 本店・区内 支店 | 公募型 | 事前 | 4 | 95.1% | 3.5 | 6.5 |
1000 万円~ 2000 万円 | B、C | 区 内 本店・区内 支店 | 公募型 | 事前 | 3 | 92.8% | 3.3 | 8.3 |
130 万円~ 500 万円 | C、D | 区 内 本店・区内 支店 | 指名競争 | 事前 | 2 | 89.6% | 1.0 | 9.0 |
区内支店・Cランク以下を含む小計 | 9 | 93.1% | 2.9 | 7.7 | ||||
合 計 | 15 | 94.4% | 3.0 | 6.8 |
【空調工事事業者等の状況】 (平成 31 年4月等級格付データ)
等級格付 | 事業者数 | 区内本店 | 区内支店 | 延べ受注事 業者数 | 受注事業者累計内訳 (丸数字は受注工事件数) |
Aランク | 17 | 13 | 4 | 8 | ③1者、①5者 |
Bランク | 11 | 11 | 0 | 5 | ①5者 |
Cランク | 3 | 2 | 1 | 3 | ③1者 |
Dランク | 6 | 6 | 0 | 0 | |
合 計 | 37 | 32 | 5 | 16 | ※区内支店受注件数1者3件 |
※注1 延べ受注事業者数:JV結成工事は、結成事業者数(2JVの場合2者)を計上注2 区内支店受注件数3件は、Cランクの事業者が1者3件である。
【給排水衛生工事】
業種・予定価格帯 | 等級格付 | 地域要件 | その他の要件 | 予 定 価 格公表 | 工 事件数 | 落札率 (平均) | 有 効 入 札者数 (平均) | 当初参加申込者数 (平均) |
3億円以上 | A、B | 区内本店 | 一般競争 2JV結成 | 事後 | 1 | 92.1% | 4.0 | 4.0 |
1億円以上 | A、B | 区内本店 | 一般競争 | 事後 | 5 | 98.7% | 2.0 | 5.6 |
6000 万円~ 1億円 | A、B | 区内本店 | 公募型 | 事前 | 4 | 99.9% | 2.3 | 5.0 |
区内本店のみ小計 | 10 | 98.5% | 2.3 | 5.2 | ||||
4000 万円~ 6000 万円 | A、B | 区内本店・ 区内支店 | 公募型 | 事前 | 8 | 99.5% | 1.5 | 8.0 |
2000 万円~ 4000 万円 | A、B、C | 区内本店・ 区内支店 | 公募型 | 事前 | 1 | 99.2% | 1.0 | 2.0 |
1000 万円~ 2000 万円 | B、C | 区内本店・ 区内支店 | 指名競争 | 事前 | 1 | 92.0% | 3.0 | 15.0 |
500 万円~ 1000 万円 | B、C、D | 区内本店・ 区内支店 | 公募型 | 事前 | 1 | 98.5% | 2.0 | 3.0 |
区内支店・Cランク以下を含む小計 | 11 | 98.7% | 1.6 | 7.6 | ||||
合 計 | 21 | 98.6% | 1.9 | 6.5 |
【給排水衛生工事事業者等の状況】 (平成 31 年4月等級格付データ)
等級格付 | 事業者数 | 区内本店 | 区内支店 | 延べ受注 事業者数 | 受注事業者累計内訳 (丸数字は受注工事件数) |
Aランク | 19 | 15 | 4 | 15 | ②2者、①11者 |
Bランク | 10 | 9 | 1 | 6 | ②1者、①4者 |
Cランク | 7 | 7 | 0 | 1 | ①1者 |
Dランク | 14 | 14 | 0 | 0 | |
合 計 | 50 | 45 | 5 | 22 | ※区内支店受注件数2者2件 |
※注1 延べ受注事業者数:JV結成工事は、結成事業者数(2JVの場合2者)を計上注2 区内支店受注件数2件は、Aランク、Bランクの事業者が各1件である。
【解体工事】
業種・予定価格帯 | 順位付番 | 地域要件 | その他の要件 | 予 定 価 格公表 | 工 事件数 | 落札率 (平均) | 有 効 入 札者数 (平均) | 当初参加申込者数 (平均) |
2億円以上 | 区内本店 | 一般競争 2JV結成 | 事前 | 5 | 81.9% | 4.0 | 5.4 | |
1億円以上 | 区内本店 | 一般競争 | 事前 | 0 | - | - | - | |
6000 万円~ 1億円 | 区内本店 | 公募型 | 事前 | 1 | 89.8% | 4.0 | 6.0 | |
区内本店のみ小計 | 6 | 83.2% | 4.0 | 5.5 | ||||
4000 万円~ 6000 万円 | 区内本店・ 区内支店 | 公募型 | 事前 | 0 | - | - | - | |
2000 万円~ 4000 万円 | 区内本店・ 区内支店 | 公募型 | 事前 | 0 | - | - | - | |
1000 万円~ 2000 万円 | 区内本店・ 区内支店 | 公募型 | 事前 | 0 | - | - | - | |
500 万円~ 1000 万円 | 区内本店・ 区内支店 | 公募型 | 事前 | 1 | 99.95% | 1.0 | 2.0 | |
区内支店を含む小計 | 1 | 99.95% | 1.0 | 2.0 | ||||
合 計 | 7 | 85.6% | 3.6 | 5.0 |
【解体工事事業者等の状況の状況】 (平成 31 年4月格付データ)
順位付番 | 事業者数 | 区内本店 | 区内支店 | 延べ受注 事業者数 | 受注事業者累計内訳 (丸数字は受注工事件数) |
1~99 | 12 | 10 | 2 | 7 | ① 7者 |
100~199 | 11 | 10 | 1 | 4 | ① 4者 |
200~299 | 6 | 6 | 0 | 1 | ① 1者 |
300~400 | 2 | 2 | 0 | 0 | |
合 計 | 31 | 28 | 3 | 12 | ※区内支店受注件数0件 |
※注1 延べ受注事業者数:JV結成工事は、結成事業者数(2JVの場合2者)を計上
注2 受注実績があれば順位が付番され、完成工事高(官公庁は 1/2)が予定価格を上回っていれば当該工事への入札参加が可能。
【造園工事】
業種・予定価格帯 | 順位付番 | 地域要件 | その他の要件 | 予 定 価 格公表 | 工 事件数 | 落札率 (平均) | 有 効 入 札者数 (平均) | 当初参加申込者数 (平均) |
3億円以上 | 区内本店 | 一般競争 JV結成 | 事前 | 0 | - | - | - | |
1億円以上 | 区内本店 | 一般競争 | 事前 | 0 | - | - | - | |
6000 万円~ 1億円 | 区内本店 | 公募型 | 事前 | 2 | 99.7% | 3.0 | 4.0 | |
区内本店のみ小計 | 2 | 99.7% | 3.0 | 4.0 | ||||
4000 万円~ 6000 万円 | 区内本店・ 区内支店 | 公募型 | 事前 | 1 | 88.5% | 6.0 | 9.0 | |
2000 万円~ 4000 万円 | 区内本店・ 区内支店 | 公募型 | 事前 | 1 | 99.5% | 3.0 | 6.0 | |
1000 万円~ 2000 万円 | 区内本店・ 区内支店 | 指名競争 | 事前 | 1 | 87.8% | 8.0 | 10.0 | |
500 万円~ 1000 万円 | 区内本店・ 区内支店 | 公募型 | 事前 | 3 | 95.7% | 3.0 | 5.3 | |
500 万円~ 130 万円 | 区内本店・ 区内支店 | 指名競争 入札 | 事前 | 2 | 90.9% | 5.0 | 8.5 | |
区内支店を含む小計 | 8 | 93.1% | 4.5 | 7.3 | ||||
合 計 | 10 | 94.4% | 4.2 | 6.6 |
【造園工事事業者等の状況】 (平成 31 年4月格付データ)
順位付番 | 事業者数 | 区内本店 | 区内支店 | 延べ受注 事業者数 | 受注事業者累計内訳 (丸数字は受注工事件数) |
1~99 | 1 | 0 | 1 | 0 | |
100~199 | 4 | 3 | 1 | 3 | ① 3者 |
200~299 | 5 | 3 | 2 | 3 | ② 1者、①1者 |
300~399 | 3 | 3 | 0 | 3 | ③ 1者 |
400~499 | 3 | 2 | 1 | 0 | |
500~ | 14 | 12 | 2 | 1 | ① 1者 |
合 計 | 30 | 23 | 7 | 10 | ※区内支店受注件数1者1件 |
注1 区内支店受注件数1件は、200 番台の事業者が1件である。
注2 受注実績があれば順位が付番され、完成工事高(官公庁は 1/2)が予定価格を上回っていれば当該工事への入札が可能。
xx区情報漏えい事件及び工事発注の方法等についての報告書
令和3年11月
足立区公契約等審議会