http://www.pref.osaka.lg.jp/sogorodo/sougi-koui-yokoku/index.html
一. 労働組合について
会社や事業主などに雇用され、労務を提供し、その対価として賃金の支払を受ける人々を
「労働者」といい、雇用契約や就業規則において、賃金や労働時間などの労働条件が定められています。
わが国では、様々な法制度により、労働者の労働条件の最低基準や、労働者の諸権利が定められています。
■日本国憲法
第 27 条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う。
2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
3 児童は、これを酷使してはならない。
第 28 条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。
憲法第 27 条では、国民すべてが労働の権利と義務を有していること、賃金、労働時間、休
日などの労働条件について法律でその基準を定めるべきことが規定されています。同第 28 条では、労働者が団結して労働組合をつくり(団結権)、団体交渉を行い(団体交渉権)、労働争議や組合活動を行う(団体行動権)こと(いわゆる労働三権)が保障されています。
これらの規定に基づいて、労働組合法(以下、「労組法」という。)、労働基準法(以下、「労基法」という。)、労働関係調整法(以下、「労xx」という。)〔いわゆる労働三法〕が制定されているほか、労働契約法、職業安定法、雇用保険法などが整えられており、労働者保護に関する法体系が形成されています。
労働法の内容は、採用から退職に至るまでの労働者と使用者の関係についてのものですが、それは二つの側面から整理することができます。
一つは、労働者個人と使用者との関係〔個別的労使関係〕であり、雇用の確保や労働条件の“最低基準”を定めて労働者の生活の安定が図られています。
もう一つは、労働組合と使用者の関係〔集団的労使関係〕であり、労働者が権利を行使して使用者と“団体交渉”を行い、これを通じて労働者の生活や地位の向上を図ることとされています(A図)。
(A図)
最低基準を下回らない労働条件の保障
(憲法第 27 条)
労働者
団結
労働組合
労働契約
(個別的労使関係)
労働協約
(集団的労使関係)
使用者
労働条件に関する団体交渉
(憲法第 28 条)
■労働組合法
第2条 この法律で「労働組合」とは、労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体をいう。但し、左の各号の一に該当するものは、この限りでない。
一 役員、雇入解雇昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある労働者、使用者の労働関係についての計画と方針とに関する機密の事項に接し、そのためにその職務上の義務と責任とが当該労働組合の組合員としての誠意と責任とに直接にてい触する監督的地位にある労働者その他使用者の利益を代表する者の参加を許すもの
二 団体の運営のための経費の支出につき使用者の経理上の援助を受けるもの。但し、労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すことを妨げるものではなく、且つ、厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し、若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附及び最小限の広さの事務所の供与を除くものとする。
三 共済事業その他福利事業のみを目的とするもの四 主として政治運動又は社会運動を目的とするもの
A 労働組合は労働者自身が主体となって自主的につくる団体です。
ここで「自主的に」というのは、使用者との関係で対等であるということであり、会社の役員や総務部長といった「使用者の利益代表者」が加入する組合や、使用者から経費の援助を受けたりする組合は自主性を有しないとみなされることがあります。
ただし、労働組合への経費援助に関しては、勤務時間中に有給で使用者と交渉を行うことや、必要最小限の組合事務所を貸与することなどはこれに当たらないとされています。
B 労働組合は労働条件の維持改善とその他経済的地位の向上を主たる目的とする団体です。
政治運動や社会運動、あるいは福利事業のみを主たる目的とする団体は、労働組合とは認められません。
上記A及びBは<自主的要件>といわれ、これを満たしていれば、労働組合は自由につくることができるとされています(労組法第 2 条)。
第5条 労働組合は、労働委員会に証拠を提出して第2条及び第2項の規定に適合することを立証しなければ、この法律に規定する手続に参与する資格を有せず、且つ、この法律に規定する救済を与えられない。但し、第7条第1号の規定に基く個々の労働者に対する保護を否定する趣旨に解釈されるべきではない。
2 労働組合の規約には、左の各号に掲げる規定を含まなければならない。一 名称
二 主たる事務所の所在地
三 連合団体である労働組合以外の労働組合(以下「単位労働組合」という。)の組合員は、その労働組合のすべての問題に参与する権利及び均等の取扱を受ける権利を有すること。
四 何人も、いかなる場合においても、人種、宗教、性別、門地又は身分によって組合員たる資格を奪われないこと。
五 単位労働組合にあっては、その役員は、組合員の直接無記名投票により選挙されること、及び連合団体である労働組合又は全国的規模をもつ労働組合にあっては、その役員は、単位労働組合の組合員又はその組合員の直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票により選挙されること。
六 総会は、少くとも毎年一回開催すること。
七 すべての財源及び使途、主要な寄附者の氏名並びに現在の経理状況を示す会計報告は、組合員によって委嘱された職業的に資格がある会計監査人による正確であることの証明書とともに、少くとも毎年1回組合員に公表されること。
八 同盟罷業は、組合員又は組合員の直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票の過半数による決定を経なければ開始しないこと。
九 単位労働組合にあっては、その規約は、組合員の直接無記名投票による過半数の支持を得なければ改正しないこと、及び連合団体である労働組合又は全国的規模をもつ労働組合にあっては、その規約は、単位労働組合の組合員又はその組合員の直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票による過半数の支持を得なければ改正しないこと。
労組法では、このほかに<民主的要件>が定められています(労組法第 5 条第 2 項)。これは、労働組合の規約に“大会は少なくとも年1回開催する”ことや“ストライキは組合員の過半数の支持を得て行う”ことなどの規定を設けなければならないとするもので、労働組合の民主的な運営を図るという目的をもっています。
しかし、この要件は、労組法に定める諸手続(労働委員会への不当労働行為の救済申立て、法人登記、労働者供給事業など)に参与する資格を得るために必要とされるもので、この要件の一部が欠けていたとしても必ずしも労働組合ではないとはいえません。
労働組合には、組織の形態、範囲により次の種類があります。
(1) 組織形態による分類
➀ 企業別組合
一つの企業、事業所を組織単位とし、その企業の従業員だけで組織する労働組合です。わが国の労働組合は、大多数がこの企業別組合です。
➁ 産業別組合
同じ産業の労働者が、職種等に関係なく組織する横断的な労働組合です。
わが国においては、一般的に、企業別組合単位で加盟する連合体または協議体などをいいます。
③ 一般組合
様々な職業や産業に分散する労働者を一つの組合の中に広く包含する労働組合です。
④ 職業別組合(職能別組合)
同じ職種の労働者が、所属する産業や雇用されている企業の枠を超え、職業の共通性を基礎として組織する労働組合です。
⑤ 合同労組(ユニオン)
主に中小企業の労働者などが、所属する産業や企業にとらわれず、同一地域等の中で一人でも入れるという個人加盟方式により結成する労働組合です。
(2) 組織範囲による分類
➀ 単位組合
個々の労働者個人を構成員とする(個人加入)労働組合をいいます。
➁ 連合体・協議体
単位組合等を構成員とする(団体加盟)労働組合をいいます。
③ 混合組合
労働者個人と労働組合の双方を構成員とする労働組合をいいます。
なお、組合員への適用法規(一般民間企業の組合員は労組法が適用され、公務員等には、国家公務員法や地方公務員法等が適用されます。)が混在する構成員を持つ労働組合をいう場合もあります。
労働組合は、労働者が二人以上集まれば自由に結成することができ、官公庁への届出や使用者の承認は不要です。
労働組合の結成は、次のような流れが一般的です。
【労働組合結成までの流れ】
1.準備段階
xxによる結成準備(会)発足
・労働組合加入の呼びかけ
・労働組合規約・活動方針素案の作成
・要求のとりまとめ
・学習会の開催
・結成大会の準備
2.結成
結成大会で以下の項目を決定
・労働組合規約
・活動方針
・要求書
・役員
3.活動
・使用者に対して、
労働組合結成通知や要求書の提出
・団体交渉
(1)結成準備(会)
労働組合の結成に必要な準備を行うために、委員を選任して準備会を組織し、委員を中心に次のアからオの作業を進めます。
ア 労働組合結成の趣意書の作成と賛同の呼びかけイ 労働組合規約案、運動方針案の作成
ウ 組合費の決定及びこれに基づく初年度の予算案の作成エ 役員選出の方法手順の決定
オ 結成大会の日時、場所、大会の次第の決定
(2)学習(会)
労働組合結成の趣旨に賛同した人達で、活動方針や要求内容について共通理解を深める場です。
(3)結成大会
労働組合の意思を決定する最高の機関を大会(総会)といい、結成に当たっての大会を特に結成大会といいます。
結成大会では少なくとも、
➀ 労働組合の組織、運営についての規則となる労働組合規約
➁ 今後、どういう活動を展開するかを示した活動方針
③ 組合員全員の意思として集約した要求書
④ 組合役員の選出(執行委員長、副執行委員長、書記長、会計等、執行委員)についての諸議案
を決定しなければなりません。
大会当日の順序の一例は次のようになります。
開会→議長選出→書記等の大会役員任命→経過報告→議案提案→質疑→採決→閉会
結成大会が終了したら、使用者に対し労働組合の結成通知を行うとともに、要求書を提出し、団体交渉を求めるのが一般的です。
なお、労働組合の結成通知や要求書・団体交渉申入書の形式上の最低条件は、労働組合が結成されたことと代表者(執行委員長)を明らかにすることであり、全役員の氏名、全組合員の氏名、労働組合規約を明らかにすることまでは法的に義務付けられていません。
(4)労働組合の運営
労働組合は、通常、活動方針などを組合員の総意で決める意思決定機関(大会など)と活動を推進する執行機関(執行委員会)が設けられます。労組法でこれらの機関の設置とその民主的運営が求められており、この二つの機関の構成、運営については、労働組合規約に定められるのが一般的です。
大会は通常、xx回以上開催する必要があります。労働組合における最高の議決機関で、活動方針、予算、規約の改廃などの重要な案件を組合員の総意で決める場です。
組合員が多い場合、代議員制を採用したり、代議員会(中央委員会)を大会に次ぐ議決機関として設けている労働組合もあります。
執行委員会は、大会で決定した方針(要求課題とそれを実現するための行動指針)を具体化する機関です。
委員長以下組合役員が任務を分担し、活動を進めます。通常は、次のような専門部制を取り入れることが多いようです。
(総務機能)
労働組合を代表し、総括する役割を持ちます。委員長が組合の代表者となり、副委員長はこれを補佐します。書記長は、労働組合の事務を統括します。会計は、組合費の徴収、活動資金の管理、運用を行います。
(組織機能)
労働組合の維持、拡大を図ります。組合員の加入、脱退に関すること、各種の活動への参加要請などを行います。
(教育宣伝機能)
組合活動への理解を図り、団結を強めるための教育宣伝がその役割です。労働組合の機関紙などを通じ、活動状況の報告、資料の提供を行います。また、組合員の意識向上のための学習会を開催します。
(調査機能)
組合員の労働条件の調査や要求の集約を行い、必要な資料を作成します。
(文化厚生機能)
組合員相互の交流を深める役割を果たします。スポーツ、文化、レクリエーション活動や各種共済活動を行います。
<組合運営について>
下の図は、要求集約の仕方の一例です。まず、➀組合員の声を幅広く吸収・集約し、➁十分な検討を加えて要求書案をつくります。そして、③その案を各組合員に提起し、④大会などの場で決定します。
⑤執行委員会は、使用者に要求書を提出し、団体交渉に入っていきます。執行委員会は、
⑥団体交渉の経過や妥結する内容について、随時組合員に報告します。
参 加
(要求書
の作成
)
④
大会
での議
論
(
団体交渉
)
⑤
要求実現
に向けた活動
組合員
組合員
➀
要求集約
団結
⑥報告
③方針提起
➁十分な検討
執行委員会
二. 団体交渉について
労働組合は使用者に対し、賃金その他の労働条件等について要求書を提出し、要求についての話合い、すなわち団体交渉の申入れを行うことになります。
労働組合の目的は、労働者の労働条件の向上や職場環境の改善にあり、その手段として団体交渉が認められています。
団体交渉は、労働組合が賃金や一時金など労働条件の基準や労使関係事項(※)などに関する“取り決め”をするために、使用者と対等な立場で話し合うことです。この“取り決め”は、文書化し、労働協約としていくことが一般的です。
こうした労働組合の団体交渉を行う権利(団体交渉権)は、憲法が保障しています。そして、これを受けて法律では、“労働組合の代表者”あるいは“その委任を受けた者”が使用者と団体交渉をする権限を有するとされています(労組法第 6 条)。
(労働組合法)
第6条 労働組合の代表者又は労働組合の委任を受けた者は、労働組合又は組合員のために使用者又はその団体と労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有する。
※労使関係事項
労使関係事項とは、「団体交渉のルール」、「就業時間中の組合活動のあり方」、「会社施設の利用」等、労働組合と使用者の関係に関する事項をいいます。
<団体交渉おける留意事項>
要求、主張ついて資料を整えること
要求や主張が正当なものであることは当然ですが、要求や主張の内容ついて労使が相互理解しあえるよう、十分な資料を整えて交渉が行われることが望ましい姿です。
秩序正しい運営
団体交渉は、労働組合が団結を背景行うものですが、むやみ大勢でおしかけて主張するのではなく、使用者の立場も理解して、あくまでも秩序正しく、冷静な態度で話し合いを進めていくことが大切です。
交渉ルールの確立
交渉出席する労使双方の人数や交渉の時間、場所、交渉申入れの手続きなど、労使間で十分話し合い、交渉ルールを確立しておくことが必要です。法律で定められているわけではありませんが、冷静な話合いをするためは、人数や時間一定の限界もあるでしょう。
確認事項の整理
労使相互確認事項を整理して進めていくことなども次の交渉をスムーズし、また、合理的運営していく上で役立つものとなります。
このよう、団体交渉はあくまでも労使が自主的行うことが原則ですが、労使の主張へだたりが大きい場合や、交渉が前進まない場合は、労働委員会のあっせんなどを利用することも選択肢の一つです。
使用者が正当な理由なく団体交渉を拒むことは“不当労働行為”として禁止されています。次のような理由はいずれも団体交渉を拒否する正当な理由は当たらないとされています。
・「多忙である」
・「組合の要求が過大すぎる」
・「従業員以外の者(上部団体の役員)が出席している」
・「要求の中使用者の経営権属する事項が含まれている」
※経営権や人事権は使用者の専権事項であるとされていますが、これらが組合員の労働条件影響を与える場合(経営規模の縮小よる配置転換、リストラなど)は、その範囲 おいて交渉事項となります。
三.労働協約について
労働組合の目的は、団体交渉や争議行為を経て、労働協約が締結されることよって実現されます。
労働協約とは、労働組合と使用者が団体交渉よって、組合員の労働条件や労使関係事項ついて合意達したことがらを文書化し、双方の代表者が署名または記名押印したものをいいます(労組法第 14 条)。たとえその名称が覚書、協定などであっても、あるいは一項目関する合意であったとしても、それは労働協約となります。
(労働組合法)
第 14 条 労働組合と使用者又はその団体との間の労働条件その他関する労働協約は、書面作成し、両当事者が署名し、又は記名押印することよってその効力を生ずる。
“労働協約”、“労働契約”と“就業規則”の関係は、次のとおりです。
労働契約は、労働条件ついての一人ひとりの労働者と使用者との間の約束であり、就業規則は、使用者が定める職場の規律で、賃金や就業時間等の労働条件を定めたものです。このとき、労働協約の内容と労働契約や就業規則の規定矛盾が生じるケースがあります。
そこで法律では、労使の合意を優先させ、労働協約で決めた労働条件よりも悪い条件を労働契約や就業規則で決めても無効となり、労働協約で決めた内容なる(労組法第 16 条、労
基法第 92 条)と定められています。
もちろん、労働協約の内容は、労基法及びその他の法令反することはできません。
法 令 > 労 働 協 約 > 就 業 規 則 > 労 働 契 約
労働協約では、労使の納得の上で労働条件が決められますから、一定期間労働条件は確定し、労働者は安心して業務励むことができ、ひいては、職場の作業能率を向上させ、企業の発展もつながります。
労働協約の有効期間ついて、労組法第 15 条では3年を超える有効期間を定めることがで
きないとしています(3年を超える有効期間を定めた労働協約であっても、3年の有効期間を定めた労働協約とされます)。これは、同じ協約を長く続けて労働条件等を固定することは、職場の実情や経済事情の変化そぐわない点が生じることがあるからです。
(労働組合法)
第 15 条 労働協約は、3年をこえる有効期間の定をすることができない。
2 3年をこえる有効期間の定をした労働協約は、3年の有効期間の定をした労働協約とみなす。
3 有効期間の定がない労働協約は、当事者の一方が、署名し、又は記名押印した文書よって相手方予告して、解約することができる。一定の期間を定める労働協約であ
って、その期間の経過後も期限を定めず効力を存続する旨の定があるもの ついて、その期間の経過後も、同様とする。
4 前項の予告は、解約しようとする日の少なくとも 90 日前しなければならない。
第 16 条 労働協約定める労働条件その他の労働者の待遇関する基準違反する労働契約の部分は、無効とする。この場合おいて無効となった部分は、基準の定めるところ よる。労働契約定がない部分ついても、同様とする。
(労働基準法)
第 92 条 就業規則は、法令又は当該事業場ついて適用される労働協約反してはならない。
しかし、労働協約有効期間を設けない場合は、このような制限はなく、自動更新規定を設けている場合も多いようです。その場合、労使のいずれかが労働協約を破棄したいと思ったときは、相手方その旨を署名または記名押印した文書で通告すると、90日経てば自動的失効するとされています。しかし、労働協約締結が労使の共同作業である以上、その改定や解約も労使協議の上、共同作業で行うのが原則です。
労働協約の効力は、原則として労働協約を締結した労働組合の組合員しか及びません。例外として、一工場(事業場)常時使用される同種の労働者の4分の3以上の数の労働者
又は一地域おいて従事する同種の労働者の大部分が同じ労働協約の適用を受けるとなっ た場合は、他の同種の労働者おいても拡張して適用されます(労組法第 17 条、同 18 条)。
(労働組合法)
第 17 条 一の工場事業場常時使用される同種の労働者の4分の3以上の数の労働者が一の労働協約の適用を受ける至ったときは、当該工場事業場使用される他の同種の労働者関しても、当該労働協約が適用されるものとする。
第 18 条 一の地域おいて従業する同種の労働者の大部分が一の労働協約の適用を受ける至ったときは、当該労働協約の当事者の双方又は一方の申立て基づき、労働委員会の決議より、厚生労働大臣又は都道府県知事は、当該地域おいて従業する他の同種の労働者及びその使用者も当該労働協約(第2項の規定より修正があったものを含む。)の適用を受けるべきことの決定をすることができる。
2 労働委員会は、前項の決議をする場合おいて、当該労働協約不適当な部分があると認めたときは、これを修正することができる。
3 第1項の決定は、公告よってする。
労働協約は、賃金、労働時間等の個々のことがらついて、そのつど締結する「個別協約」と、これらの事項を体系的とりまとめた「包括協約」とがあります。
労働協約は、公序良俗や法反しない限り、労使が自由決めることができますが、表現があいまいだったり内容が抽象的だったりすると、その解釈や運用をめぐり争いが生じかねません。したがって、協約締結際しては、適切かつ明確な表現を使うことが必要です。
労働条件関する部分
賃金、労働時間、休日、休暇、人事事項事業の縮小・廃止 伴う事前協議、
福利厚生 等
労働基本権関する部分
組合員の範囲、ユニオン・ショップ(※2)、争議行為の予告、団体交渉事項、
労使協議事項 等
組合活動関する部分
就業時間中の組合活動、
企業施設利用、組合専従者の取扱い、チェックオフ(※1)等
労働協約
<包括労働協約の全体イメージ>
(※1)チェックオフとは、使用者が組合員の賃金から、組合費等の徴収金を控除し、労働組合へ直接渡す取り決めのことです。
(※2)ユニオン・ショップ協定(ユ・シ協定)とは、使用者が、雇入れ後当該労働組合加入しない者、当該労働組合を除名された者または脱退した者を解雇することを義務付ける労働協約のことです。
四. 労働争議と争議行為について
労働者の賃金やその他の労働条件ついては、労使が対等な立場で団体交渉を行い自主的決定することが原則ですが、双方の主張へだたりが大きい場合や、いくら団体交渉を行っても意見が一致しない場合があります。この状況で、争議行為が発生しているまたはそのおそれがある状態を労働争議と呼びます。
このような場合、労働組合は自らの要求を実現させるため、労働組合の統制のもと労務の提供を拒否する(同盟罷業=ストライキ)などの争議行為は憲法第 28 条より手段として認められています。
したがって、民主的で適正な手続を経て行われるストライキなどの争議行為は正当な組合活動です。法律は、労働組合の正当な争議行為ついて、刑法上・民事上の免責を与え、さら不当労働行為救済制度を設けています。しかし、法的認められているからといって、暴行、傷害や脅迫など当たる行為は正当とはいえません。
免責事項
・正当な争議行為は正当な組合業務(行為)として罰せられない
(労組法第1条第2項、刑法第 35 条)。
・争議行為を行ったことを理由解雇されたり不利益な取扱いを受けたりしない
(労組法第7条第1号)。
・正当な争議行為をしたこと よって生じた損害対して損害賠償を請求されない
(労組法第8条)。
(労働組合法) 第1条 1(略)
2 刑法第 35 条の規定は、労働組合の団体交渉その他の行為であって前項掲げる目的を達成するためした正当なものついて適用があるものとする。但し、いかなる場合 おいても、暴力の行使は、労働組合の正当な行為と解釈されてはならない。
第8条 使用者は、同盟罷業その他の争議行為であって正当なものよって損害を受けたことの故をもって、労働組合又はその組合員対し賠償を請求することができない。
(刑法)
第 35 条 法令又は正当な業務よる行為は、罰しない。
争議行為はさまざまな形のものがありますが、なかでもストライキを行う場合ついては、労組法第5条第2項第8号で、ストライキ権確立ついての規定を組合規約定めるよう義務付けられています。したがって、ストライキを開始するは、事前組合員の意思を確認する必要があります。
ストライキ権の確立は、組合員の直接無記名投票(批准投票)で行います。
公益事業 係る労働組合が争議行為をしようとするときは
予告の通知が必要です。
運輸事業、郵便・信書便・電気通信事業、水道・電気・ガスの供給事業、医療・公衆
衛生事業などのいわゆる公益事業の労働組合は、争議行為を開始する日の10日前まで 労働委員会と厚生労働大臣又は都道府県知事 、争議の目的、日時、場所などを通知しなければなりません(労xx第8条、第37条)。
大阪府では、労働環境課が窓口となっております。当課のホームページで様式のひな型
を掲載していますので、下記リンクからご活用ください。
xxxx://xxx.xxxx.xxxxx.xx.xx/xxxxxxxx/xxxxx-xxxx-xxxxxx/xxxxx.xxxx
五. 不当労働行為について
労働組合と使用者は、互い立場を尊重しながら信頼関係を築いていくことが大切ですが、使用者が正当な組合活動対して不当な圧力や攻撃を加えるような行為を不当労働行為といい、労組法ではこれらの行為が禁止されています(労組法第7条)。
使用者が不当労働行為を行ったときは、労働者(組合員)または労働組合は、労働委員会救済を申し立てることができます。労働委員会は、申立てもとづき審査を行い、不当労働行為の事実があると認めたときは、使用者対し「原職復帰させよ」、「誠実団体交渉応じよ」などという命令を出します。
これは不当労働行為を刑罰で処罰したり、損害賠償を実現させたりすることを目的とするのではなく、不当労働行為よる権利侵害のなかった状態戻すこと、即ち、“原状回復”を命ずることよって、労使間の正しいルール基づき、正常な労使関係を構築しようとするものです。
なお、使用者は労働委員会の命令を守らなければならず、命令違反は罰則が科せられる場合があります。また、命令の内容不服がある場合は、中央労働委員会へ再審査の申立てができます。
労働組合が不当労働行為の救済申立てを行い、法律上の救済を受けようとするときは、労組法上の労働組合であることが求められます。労働組合は、労働委員会証拠を提出して、労組法第2条の規定適合すること、労働組合規約が一定の要件適合することを立証しなければなりません(労組法第5条第1項、第2項)。これを労働組合の資格審査といいます。
大阪府労働委員会では資格審査と不当労働行為の審査は並行して行われるため、資格審査を終えていないと不当労働行為の救済申立てができない訳ではありません。なお、労働委員会が行う調整(あっせん等)ついては、資格審査の必要はありません。
法律で不当労働行為として禁止されている行為類型は次の表のとおりです。
◇不当労働行為の類型(労組法第7条)
号数 | 種類 | 不当労働行為として禁止されている使用者の行為 |
1号 | 不利益取扱 | 下記を理由、労働者を解雇したり、その他不利益な取扱をすること。 ・労働組合の組合員であること ・労働組合を結成しようとしたこと ・労働組合加入しようとしたこと ・労働組合の正当な行為をしたこと |
黄犬契約 | 下記を労働者の雇用条件とすること。 ・労働組合加入しないこと ・労働組合から脱退すること | |
2号 | 団体交渉拒否 | 雇用する労働者の代表者と団体交渉することを正当な理由がなく拒むこと |
3号 | 支配介入 | 下記を支配したり、介入すること ・労働組合を結成すること ・労働組合を運営すること |
経費援助 | 労働組合の運営要する経費の支払ついて、経理上の援助をすること | |
4号 | 報復的 不利益取扱 | 下記を理由労働者を解雇したり、その他不利益な取扱をすること。 ・不当労働行為の申立てをしたこと ・再審査の申立てをしたこと ・上記申立ての審査及び争議行為の調整の場合証拠を提出したり、発言したこと |