近年の Internet of Things(IoT)、ビッグデータ、人工知能(AI)等の情報技術の発展に伴い、事業活動により生み出されるデータはこの数年で爆 発的に増加している。業種を超えたデータの連携は新たな価値を生み出す競争力の源泉であり、オープンイノベーションによる革新的な成果をもたらすものと期待されている。
データの利用に関する契約ガイドライン産業保安版
第 2 版
平成 31 年 4 月
経済産業省
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構委託先 株式会社三菱総合研究所
目次
(4) プラントデータの管理方法・開示方法に関する義務 18
2.3 産業保安分野のデータ利用に関する契約において検討すべき主な法的論点 18
1) 開示レベルによるデータの区分(モデル契約条項第1 条、モデル規約条項第 2 条).18 2) 開示するデータの加工方法 19
1) 利用態様の特定(モデル契約条項第3 条第 1 項、モデル規約条項第 11 条第 1 項) 22
2) プラントデータの目的外利用・第三者提供の制限(モデル契約条項第3 条第 1 項・第 8
条第 1 項、モデル規約条項第 11 条第 1 項・第 12 条第 1 項) 22
(3) 提供されたデータに関する保証(モデル契約条項第 5 条、モデル規約条項第 10 条) 22
(4) 派生データ等に関する知的財産権及び利用権限の定め方(モデル契約条項第 11 条第 1
(5) プラントデータ提供者の派生データ等の利用の機会の確保(モデル契約条項第 11 条第 2
(6) 派生データ等の第三者への提供の取扱い(モデル契約条項第 11 条、モデル規約条項第 13
(1) モデル契約条項(相対契約型)において想定した取引事例 28
(1) モデル規約条項(規約型)において想定した取引事例 47
3) サービス利用者によるサービス利用の申込み・承諾等 53
4) プラットフォーム事業者(サービス提供者)によるサービスの提供条件(サービスの保証/非保証、知的財産権の帰属等) 54
7) プラットフォーム事業者(サービス提供者)のクレーム等の対応責任 58
8) プラットフォーム事業者(サービス提供者)によるサービスの変更・中断・終了 59
4.1 複数当事者が共同して新たなデータを創出する形態の取引の場合 71
4.2 データ提供者及びデータ受領者以外の事業者がデータ取引に関与する場合 72
4.3 プラットフォームのサービス利用者にデータ提供者以外の第三者を含む場合 73
1. はじめに
1.1 ガイドラインの目的及び制定・改訂の経緯
近年の Internet of Things(IoT)、ビッグデータ、人工知能(AI)等の情報技術の発展に伴い、事業活動により生み出されるデータはこの数年で爆発的に増加している。業種を超えたデータの連携は新たな価値を生み出す競争力の源泉であり、オープンイノベーションによる革新的な成果をもたらすものと期待されている。
我が国の産業保安分野においても、IoT、ビッグデータ等を効果的かつ効率的に利用しようとする取組みが進められている。近年、多くのプラントで老朽化が進み、保守・安全管理の実務を担ってきたベテランの従業員が引退の時期を迎えつつあるため、重大事故が増大するリスクに直面している。そこで、IoT やビッグデータ等の利用を通じて現場の自主保安力を高め企業の競争力が向上するように、業界ごとの実証事業が進められている。例えば、石油精製・化学業界では、内面腐食や外面腐食の保全管理等の産業保安の協調領域において、従来ベテラン従業員の判断に頼っていた管理ノウハウを、IoT やプラントデータの共有・活用による先進的な自主保安技術として実用化するための実証事業が実施されている。
しかし我が国の産業保安分野では、これまで企業間でのデータ流通が十分には進んでいないという課題も指摘されていた。元来、プラントデータが、生産プロセス等各社固有の競争力に関わる情報やライセンス契約等による開示不可能な機密情報等、競争領域のデータを含むことが多いことから、プラント事業者がデータの提供に慎重な姿勢であったことがその背景にある。さらに、協調領域のデータであったとしても外部へのデータ提供には相応の作業を要するため、プラント事業者にとっては提供のための明確なインセンティブを見出すことができなければ提供は困難であるということも指摘されており、様々な立場に配慮したデータ利用における事業環境整備が求められてきた。
経済産業省、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構及び株式会社三菱総合研究所では、平成 29 年 10 月から平成 30 年 3 月にかけて「プラントデータ活用促進会議」を開催し、今後の産業保安分野における IoT 等の活用について多角的な議論を進め、データの提供に関する取引の在り方について検討した成果として、平成 30 年 4 月に「データの利用に関する契約ガイドライン産業保安版」を公表した。
その後、各種の実証事業に携わる事業者や産業保安分野の業界団体に対し、同契約ガイドラインの普及を図り意見等の収集を行うと共に、平成 30 年 5 月から平成 31 年 2 月にかけて「プラントデータ活用促進会議」での更なる議論を経て、平成 31 年 4 月に「データの利用に関する契約ガイドライン産業保安版 第 2 版」(以下「本契約ガイドライン」という)を取りまとめた1。
1 「データの利用に関する契約ガイドライン産業保安版」(平成 30 年 4 月)から「データの利用に関する契約ガイドライン産業保安版 第 2 版」(平成 31 年 4 月)にかけての主な改訂は以下のとおりである。
⚫ 従前のモデル契約条項(相対契約型)に加え、複数のデータ提供者と共通利用が可能なモデル規約条項(規約型)を新たに掲載
⚫ 改正不正競争防止法、契約対象となるデータの区分、開示するデータの加工方法、データの保証等に係る法的論点の解説や、各契約条項の解説の充実化
⚫ ユースケースと異なる形態のデータ取引につき、「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」(経済産業省情報経済課)の参照が有用な論点については、同ガイドラインの関連箇所を明記
本契約ガイドラインは、産業保安に携わる各事業者・関連団体において契約交渉や契約締結業務を担当されている方はもちろん、他の産業分野においても、データの利用に関する契約類型を検討する必要がある各事業者・関連団体に大いに参考にしていただきたいと考えている。また、データの利用全般に関心をお持ちの方々にも、広く活用していただけるものであると考えている。本契約ガイドラインの制定が、産業保安分野における Society5.0・Connected Industries 実現に向けて、既存の企業の枠を超えたデータ流通の契機となるよう期待する。
1.2 他のガイドラインとの関係
経済産業省では、平成 27 年 10 月に、データ取引の促進のために「データに関する取引の推進を目的とした契約ガイドライン」を策定し、データに係る権利者が契約当事者間において明らかであることを前提に当該権利者がデータを提供するための条件やポイント等を示している。さらに、平成 29 年 5 月に「データの利用権限に関する契約ガイドライン v1.0」を策定し、事業者間の取引に関連して創出し、取得又は収集されるデータの利用権限を契約で適正かつxxに定めるための手法や考え方をまとめている。そして、平成 30 年 6 月には、これらのガイドラインも統合する形で、データ利用に関する契約を類型別に整理し一般的に契約で定めておくべき事項や留意事項等をまとめた「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」(以下「AI・データ契約ガイドライン」という)を策定した。
本契約ガイドラインは、上記のガイドラインの考え方も踏まえた上で、産業保安分野に特有の留意事項に配慮しながら、産業保安分野に特化したユースケースを設定しデータの利用上の留意点を説明したものである。それゆえ、本契約ガイドラインの検討においては、上記のガイドラインの考え方を必要に応じて取り入れるように配慮しており、依拠して記載している部分もある2。
1.3 ガイドラインの構成
本契約ガイドラインの構成は以下のとおりである。
⚫ 産業保安分野のデータ利用における基本的な考え方
本契約ガイドラインの「2. 産業保安分野のデータ利用における基本的な考え方」では、本契約ガイドラインにおいて取り扱う産業保安分野におけるデータ活用のユースケースを設定した上で、産業保安分野のデータ利用における留意事項、産業保安分野のデータ利用に関する契約において検討すべき主な法的論点について解説をしている。
⚫ モデル契約条項・モデル規約条項の解説
本契約ガイドラインの「3. モデル契約条項・モデル規約条項の解説」では、個々のプラントデータ提供者ごとに異なる契約条件を設定する場合と、すべてのプラントデータ提供者に対し同一の契約条件を設定する場合の 2 つの場合を念頭に置いて、産業保安分野においてプ
2 また、農林水産省では、平成 30 年 3 月から「農業分野におけるデータ契約ガイドライン検討会」を開催して、農業分野でのデータ契約において特に想定される問題点等について議論を行い、その成果として、同年 12 月、「農業分野におけるデータ契約ガイドライン」を公表した。同ガイドラインは、農業分野におけるデータ契約を念頭に置いて検討されたものであり、本契約ガイドラインが検討対象としている産業保安分野におけるデータ契約とは前提を異にしているが、AI・データ契約ガイドラインにおいて「データ共用型」とされた取引(AI・データ契約ガイドライン 65ページ以降)についてモデル規約条項を提示している点(農林水産省「農業分野におけるデータ契約ガイドライン」 102 ページ以降)等、本契約ガイドラインでの検討においても参考となる部分がある。
ラントデータの利用に関する契約を締結するにあたり、契約書に定めることが望ましい事項を整理し、特に問題となりやすく重要と思われる契約条項及び規約条項について解説をしている。
⚫ その他の法的論点
本契約ガイドラインの「4. その他の法的論点」では、「3. モデル契約条項・モデル規約条項の解説」までに取り扱うことができなかったその他の法的論点について解説をしている。
⚫ モデル契約・モデル規約
本契約ガイドラインの別冊 1 では、「3. モデル契約条項・モデル規約条項の解説」で解説したモデル契約条項を基にしたモデル契約を示している。また、同じく別冊 2 では、「3. モデル契約条項・モデル規約条項の解説」で解説したモデル規約条項を基にしたモデル規約を示している。
1.4 ガイドラインにおける用語
本契約ガイドラインで用いられる用語の意味は以下のとおりである。
⚫ 本契約ガイドライン
データの利用に関する契約ガイドライン産業保安版 第 2 版を指す。
⚫ モデル契約
本契約ガイドラインで検討対象としている契約のうち「3.2(1) モデル契約条項(相対契約型)において想定した取引事例」で紹介する取引事例を念頭に作成したモデル契約を指す。
⚫ モデル契約条項
モデル契約において想定される条項を指す。
⚫ モデル規約
本契約ガイドラインで検討対象としている契約のうち「3.3(1) モデル規約条項(規約型)において想定した取引事例」で紹介する取引事例を念頭に作成したモデル規約を指す。
⚫ モデル規約条項
モデル規約において想定される条項を指す。
⚫ 元プラントデータ
元々プラント事業者の手元にあるデータを指す3。
⚫ プラントデータ
プラントにおいて取り扱われるデータ全般を指す。具体的に想定されるデータの例を一覧表の形で示したものが、表 1-1 のプラントデータカタログである。
3 なお、本契約ガイドラインにおいては、個々のデータのみならず、データの集合体(すなわち「データ群」と称すべきもの)も含めて、単に「データ」と呼称することとしている。
⚫ 開示データ
データ提供者が、データ受領者に対して開示したデータを指す。モデル契約条項及びモデル規約条項では「本データ」と称している。
⚫ 派生データ等
データ受領者が開示データを分析、加工、編集、統合等して利用することによって新たに作成した(すなわち、開示データを利用して新たに開発する関係にある)データ、解析モデルその他一切の成果物を総称したものを指す。なお、派生データ等には、単なるデータのみならず、発明、著作物その他の知的財産権の対象となるものも含まれ得る。モデル契約条項及びモデル規約条項では「本派生データ等」と称している。
なお、本契約ガイドラインでは、派生データ等については契約上一括して取扱いを検討しているが、個々の取引においては、派生データ等の中で、例えばデータ(派生データや加工データ)とモデルといった成果物の性質の相違等を踏まえ、派生データ等を幾つかに分類し、それぞれについて契約上異なる取扱いをする必要がある場合も考えられる。
⚫ データ提供者
開示データのデータ提供者は、プラントデータを保有し、その一部を提供する事業者である。ユースケース上はプラントデータ提供者という。具体的には、石油精製プラントや化学プラント等のプラント事業者が想定される。
派生データ等のデータ提供者は、派生データ等を用いたサービスを利用する者に対して、派生データ等を提供する事業者である。
⚫ データ受領者
開示データのデータ受領者は、プラントデータ提供者から提供された開示データを受領する事業者である。ユースケース上はプラントデータ受領者という。具体的には、業界団体、ベンダー企業、研究機関等が想定される。
⚫ プラットフォーム事業者
開示データを受領して、利用し、サービス提供を行う主体である。ユースケース上はプラントデータ受領者及びサービス提供者も兼ねている。具体的には、業界団体、ベンダー企業、研究機関等が想定される。
⚫ サービス利用者
派生データ等を用いたサービスを利用する主体である。サービス利用者には開示データの提供者が含まれる場合もある。
⚫ 利用権限
契約当事者の利用権限の具体的な内容(例えば、データの取得、閲覧、複製、保管、修正、加工、分析、開示、販売、削除等についてどのような形態を予定するか)は、契約当事者が合意に基づき決定する。
データ項目 | データ開示の範囲と方法 | ||||
区分 | 項目 | 概要 | データ例 | データ活用方法 | データ共有上の留意点 |
① プロセス設計 | プロセス設備設計データ | プラントの基本構想に関するデータである。原料から製品を作り出すまでの生産プロセスと、設備の正常稼働を維持する保全プロセスに大別される。 | ∙ プロセス概念 ∙ プロセスフローダイアグラム(生産プロセスを表現したもの) ∙ 保全手順書 | 新規プラントの設計・建設、既存プラントの正常稼働を維持するために活用可能である。 | データは個社間での秘密保持契約に基づいて共有される。 |
原材料及び反応条件 データ | 原材料から製品を生産するために必要なデータである。 | ∙ 原材料/副原料(触媒)、添加剤 ∙ 反応条件(温度、圧力、流量(触媒)) | 新規プラントの設計・建設、既存プラントの正常稼働を維持するために活用可能である(使用材料、反応条件の情報は、適切な保全管理のためにも必要である)。 | 成分割合、反応条件は秘匿性が高いデータであることから、データは個社間での秘密保持契約に基づいて共有される。 | |
② 設備・機器データ | 重要設備 設計データ | プラントの重要設備構成の設計データである。 | ∙ 設備の種別、寸法、材質、肉厚、信頼性データ・トラブル情報(信頼性データにはユーティリティ設備のトラブル情報が含まれる) | 適切な運転管理、保全作業の効率化。例えば、腐食モデル開発等が考えられる。 | 個社間での秘密保持契約に基づいて共有されるデータが多い。保全作業の効率化の例として、腐食モデル開発を行う場合には、一部のデータを一般化して加工した上で秘密保持契約を締結した企業に共有可能である。トラブル情報の共有化にあたっては、ユーティリティメーカーからの反対が予想される。 |
設備設計データ | プラントにおける重要設備以外の設備構成の設計データである。 | ∙ 設備の種別、寸法、材質、肉厚、信頼性データ・トラブル情報(信頼性データにはユーティリティ設備のトラブル情報が含まれる) | 適切な運転管理、保全作業の効率化。例えば、腐食モデル開発等が考えられる。 | 個社間での秘密保持契約に基づいて共有されるデータが多い。保全作業の効率化の例として、腐食モデル開発を行う場合には、一部のデータを一般化して加工した上で秘密保持契約を締結した企業に共有可能である。トラブル情報の共有化にあたっては、ユーティリティメーカーからの反対が予想される。 | |
ユーティリティデータ | プラントの主要構成機器を運用するために必要なユーティリティのデータである。 | ∙ 電力設備(構成、信頼性) ∙ 冷却設備・冷却水(構成、信頼性) | 適切な運転管理、保全作業の効率化に活用可能である。 | 信頼性データ・トラブル情報の共有化にあたっては、ユーティリティメーカーからの反対が予想される。 | |
③ 運転データ (時刻情報) (続き) ③ 運転データ (時刻情報) | プラント 運転及び 操作データ | プラントの運転・操作に関するデータである。 | ∙ 運転データの例:温度、圧力、流量、液位 ∙ 操作データの例:原料 /副原料切替え/機器切替え、触媒・添加剤操作、ドレン切り、その他現場操作 | 製品の品質管理、保全管理に活用可能である。 | 運転条件・操作条件は秘匿性が高いデータであることから、データは個社間での秘密保持契約に基づいて共有される。 保安力の向上を目的として緊急時支援システムを開発するような場合には、一部のデータを一般化して加工した上で、企業間で共有することが可能である。 |
運転記録データ | プラント運転中における運転状況、発生したヒヤリハット事例、事故・故障事例等である。 | ∙ 異常検知情報(異音/異臭/漏油/振動) ∙ 業務日誌・運転日誌・作業引き継ぎ書 ∙ スタートアップ/シャットダウン記録 ∙ パフォーマンスデータ(エネルギー使用量、稼働率) | 製品の品質管理、保全管理、事故対策立案に活用可能である。 | 運転記録データのうち、安全上の懸念につながるデータは開示が困難である。一方、事故情報及び対策情報は広く共有することが望ましいため、一般化して加工した上で事故情報のメタ知識を共有することが考えられる。保安力向上を目的として緊急時支援システムを開発するような場合には、一部のデータを一般化して加工した上で、企業間で共有することが可能である。 |
データ項目 | データ開示の範囲と方法 | ||||
区分 | 項目 | 概要 | データ例 | データ活用方法 | データ共有上の留意点 |
④ 点検・保全記録データ | 点検・保全記録データ | 計画された点検・保全(定期点検・保全)及び計画外保全に関するデータのうち、実際に実施された点検・保全の結果に関するデータであ る。 | ∙ 現場点検データ(加熱炉・加圧炉の炉内目視点検/計装指示点検/軸受け手温度・振動点検 /機器触手点検/その他現場点検) ∙ 専門点検/計器変動点検(外部事業者に解析委託する場合を含む) ∙ 定期保全記録/補修記録/予備品記録 ∙ 写真等画像 ∙ 作業員生体データ | 機器の状況を把握し、適切な点検・保全計画を立案するために用いられる。事故が発生した場合には、事故情報の分析・適切な対策立案にも活用可能である。 | 点検データの中には、保全作業効率化のための腐食モデル開発に利用可能なデータがある。それらのデータは、①一部を一般化して加工した上で、秘密保持契約を締結した企業間で共有可能であり、また②一般化して加工した上で腐食現象予測モデル構築として利用することも可能である。 作業員に関するデータ(生体データ、動線データ)は、プライバシー侵害につながるおそれがあることから、一般化に加え、個人を特定しない形に加工した上での利用が望ましい。 |
監視データ (センサ からの取得) | プラント内に設置された様々な構内の状況が記録されたデータである。 | ∙ プラント内の監視カメラデータ ∙ 作業員動線データ ∙ 運転動作音データ | 作業員の動線管理による業務効率化や機器設備の異常音検知等に利用可能である。 | 個人情報や機器設備の製造事業者等の情報管理に留意を払う必要がある。 | |
⑤ 作業計画データ | 作業計画データ | 点検・保全(計画された定期点検・保全及び計画外点検・保全を含む)の手順に関するデータである。 | ∙ 保全計画(保全計画書 /保守管理チェックリスト/保守管理マニュアル/保守管理マネジメントツール書類/保全内容/保全作業工程/保全) ∙ 検査結果・解析 ∙ 点検内容/点検時期 ∙ 作業人員数/保全コスト | プラントの適切な信頼性確保に活用可能である。また、リスクに基づいた信頼性確保の活動にも活用可能である。 | 作業人員数/保全コストは各社の競争力に直結するデータであることから、例え一般化して加工したとしても、具体的な数値を提供(他の事業者に共有)することは難しいと考えられる。 |
⑥ トラブル等管理記録 データ | トラブル等管理記録 データ | トラブルが発生した場合に作成されるデータである。 | ∙ トラブル等の報告書 (事故報告書、労災報告書/トラブル報告書、xxxxxx報告書、設備劣化原因解析) | xxxxの信頼性向上のために活用可能であると同時に、人材育成にも活用可能である。 | 安全上の懸念につながる情報の生情報は、企業が開示しない可能性がある。ただし、業界として安全向上に取り組むためにも、事故情報を一般化して加工したメタ知識を業界内で共有することが望ましい。また、保安力向上のための緊急時支援システムの開発において、一部を一般化して加工したデータを、秘密保持契約を締結した企業間で共有することは可能であると考えられる。 |
⑦ 作業環境データ | 作業環境データ (センサ からの取得) | プラント設置場所及びその周辺における環境に関するデータである。 | ∙ プラントから発せられる騒音レベル、排出ガス(分量、成分)、廃水(分量、成分) ∙ プラント設置場所の環境としての気象データ(天気/気温/湿度) | 騒音レベル、排出ガス、廃水データは環境評価に活用可能なデータである。また、気象データはプラントの運用条件の検討に活用可能なデータである。 | これらのデータは公に観測可能なデータであるため、観測値をそのまま共有・開示することが可能であり、特別留意すべき点はないと考えられる。 |
⑧ プラント 経営データ | 経営データ | プラントの運営・管理に関するデータであ る。 | ∙ 生産量、生産性 ∙ 売上、コスト、収益 | ― | これらのデータは企業経営の機密事項であり、外部に開示されることはない。 |
2. 産業保安分野のデータ利用における基本的な考え方
以下では、産業保安分野のプラントデータの利用における主な特徴を踏まえた上で、産業保安分野におけるデータ活用のユースケース、産業保安分野のデータ利用における留意事項、産業保安分野のデータ利用に関する契約において検討すべき主な法的論点について説明する。
産業保安分野のプラントデータの利用については、以下のような特徴がある。
⚫ プラントデータは各社固有の生産プロセスの競争力に関わる情報やライセンス契約等による開示不可能な機密情報等の競争領域のデータを含む可能性があるため、プラント事業者としてはこれらの情報の取扱いには非常に慎重にならざるを得ない実態がある。 ⚫ したがって、プラントデータの共有の目的としては「産業保安の高度化」という公共性の高い目的を設定することが望ましい。 ⚫ もっとも、協調領域のデータであったとしても、データの収集及び提供には相応の作業(電子化・様式整理・競争領域データの取捨選択・開示するデータの加工等)が発生し、また、プラント事業者側のノウハウ等も反映される可能性があるため、データを提供するプラント事業者 側の明確なメリットがなければデータの共有と利用が促進されない。 |
「産業保安の高度化」に資するような新たな知見、解析モデル等を得るためには、相当程度の質・量のデータをビッグデータとして蓄積することが必要であるが、そのためには、個々のプラント事業者がそれぞれに自社のプラントデータの活用を図るよりも、多数のプラント事業者が協調してプラントデータを拠出して単独では蓄積することができない質・量のプラントデータを蓄積し、その活用を図る方がより有効である。
競争領域データとの切り離しが難しいプラントデータを活用し、協調領域の知見を抽出する際には、データ提供者とデータ受領者(サービス提供者)によるデータ選定と、当該データに関する利用条件 の適切な設定が望まれる。
2.1 産業保安分野におけるデータ利用のユースケース
(1) 産業保安分野におけるデータ利用のユースケース
⚫ プラントデータ受領者(乙)が、複数のプラントデータ提供者(甲)から石油精製プラントや化学プラントの保有するデータを取得、蓄積し、それらのデータをビッグデータとして活用してサービス開発を実施する。
⚫ プラントデータ受領者(乙)が、プラントの保全管理支援サービスの提供者かつプラットフォームを運営する事業者として、サービス利用者にサービスを提供する。なお、サービス利用者は、プラントデータ提供者(甲)と一致する場合も、異なる第三者(丙)の場合もあり得る。
契約1
[乙]
プラントデータ受領者
・プラットフォーム事業者
(サービス提供者)
プラントデータを分析して
有益な知見を抽出し権利化する
開示データ
開示データ
データ料
¥
4
契約2
契約3
¥
サービス提供
サービス料(有利な条件)
派生データ等
サービス提供
サービス料(一般的な条件)
¥
開示データ ¥ 契 派生データ等
約
4
¥
契約 5
契約3’
サービス提供サービス料
¥
乙の分析・データ管理
などを支援する
派生データ等を活用して有益な知見を抽出し 権利化・サービス化する
潜在ユーザー
契約3’’
サービス提供
サービス料
¥
自主保安力の向上
保全作業のコストダウン
元プラント
データ
元プラントデータ
[甲]
プラントデータ提供者
(サービス利用者)
分析手法を利用してメリットを得る
元プラント
データ
派生データ等の第三者提供
6
派生データ等の
利用の機会の確保
5
品質保証
3
派生データ等の
権利帰属
派生データ
派生データ等
分析モデル
サービス提供者
分析機関又は データ管理サービス
分析手法を利用してメリットを得る
保全作業のコストダウン
自主保安力の向上
[丙]
事業者
(サービス利用者)
法的論点
●
データフロー 契約関係
1 | 提供データの 特定 | 2 | 提供データの 利用態様 |
(2) ユースケースの契約主体
検討対象となる契約の主体は以下のとおりである。
⚫ プラントデータ提供者(甲)
プラントデータ(表 1-1 プラントデータカタログに記載の開示データ)を保有しており、その一部をプラントデータ受領者(乙)に提供する事業者である。具体的には、石油精製プラントや化学プラント等のプラント事業者が想定される。プラントデータを活用して開発された派生データ等を有利な条件で利用できることが、開示データ提供の最大のインセンティブとなる。
⚫ プラントデータ受領者・プラットフォーム事業者(乙)
プラントデータ提供者(甲)から開示データを受領して、利用し、サービス提供を行う主体である。具体的には、業界団体、ベンダー企業、研究機関等が想定される。開示データを利用したサービス開発をさらに外部機関に委託する場合もある。
(3) ユースケースの契約形態
本契約ガイドラインのユースケースにおいて、プラントデータ提供者とプラントデータ受領者の間で締結される契約の形態としては、①プラントデータ提供者とプラントデータ受領者とが個別に交渉を行って契約条件を合意し、二当事者間で契約を締結するという形態(相対契約型)と、②プラントデータ受領者が、あらかじめ多くのプラントデータ提供者にとって受け入れ可能と思われる内容の規約を用意し、すべてのプラントデータ提供者との間で、当該規約と同一の契約条件で契約を締結するという形態(規約型)が考えられる(図 2-2)。契約形態の選択の意義については、後述の「3.1 契約形態の選択―相対契約型と規約型」の検討を参照いただきたい。
相対契約型
規約型
規約
甲3
開示データ
甲2
開示データ
乙
派生データ等
分析モデル
派生データ
契約
契約
甲1
開示データ
開示データ
契約
甲3
開示データ
甲2
同 意
開示データ
乙
開示データ
同 意
派生データ
派生データ等
分析モデル
甲1
同 意
開示データ
本契約ガイドラインでは、相対契約型の契約形態を採用したモデル契約として、ユースケースにおける以下の取引事例を念頭に置き、プラントデータ提供者(甲)とプラントデータ受領者(乙) の間で締結されるプラントデータに関する利用許諾契約(図 2-1 の契約 1 に相当)を対象としてモデル契約条項を検討している(図 2-3)。モデル契約条項(相対契約型)の詳細は、後述の「3.2モデル契約条項(相対契約型)の解説」を参照いただきたい。
モデル契約の内容
(赤矢印)
データに関する利用許諾契約
元プラントデータ
開示データ
(「本データ」)
サービス提供(有利な条件)
開示データ
(「本データ」)
データに関する利用許諾契約
サービス提供
(一般的な条件)
元プラントデータ
開示データ
(「本データ」)
サービス提供(有利な条件)
サービス提供
( )
一般的な条件
データに関する利用許諾契約
元プラントデータ
開示データ
(「本データ」)
サービス提供(有利な条件)
開示データ
(「本データ」)
[甲]
プラントデータ提供者
(サービス利用者)
事業者
(サービス利用者)
開示データ
(「本データ」)
[甲]
プラントデータ提供者
(サービス利用者)
事業者
(サービス利用者)
開示データ
(「本データ」)
[甲]
プラントデータ提供者
(サービス利用者)
「本派生データ等」
派生データ
分析モデル
[乙]
プラントデータ受領者
・プラットフォーム事業者
(サービス提供者)
図 2-3 モデル契約条項(相対契約型)において想定した取引事例
さらに、本契約ガイドラインでは、規約型の契約形態を採用したモデル規約として、モデル契約条項(相対契約型)と同様の①プラントデータ提供者(甲)とプラントデータ受領者(乙)の 間のプラントデータに関する利用許諾契約(図 2-1 の契約 1 に相当)に加え、②プラットフォーム事業者(サービス提供者)(乙)とサービス利用者(甲)の間のサービス利用契約(図 2-1 の契約 2 に相当)を契約内容に含んだモデル規約条項を検討している(図 2-4)。モデル規約条項
(規約型)の詳細は、後述の「3.3 モデル規約条項(規約型)の解説」を参照いただきたい。
元プラントデータ
開示データ
(「本データ」)
元プラントデータ
開示データ
(「本データ」)
モデル規約の内容
(赤矢印)
データに関する利用許諾契約
[乙]
プラントデータ受領者
・プラットフォーム事業者(サービス提供者)
サービス
利用契約
サービス
提供せず
元プラントデータ
開示データ
(「本データ」)
サービス利用契約
サービス提供
サービス
提供せず
データに関する利用許諾契約
サービス 利用契約
サービス提供
「本専用領域」
開示データ
(「本データ」)
「本専用領域」
開示データ
(「本データ」)
サービス提供
データに関する利用許諾契約
「本専用領域」
開示データ
(「本データ」)
「本派生データ等」
分析モデル
派生データ
[甲]
プラントデータ提供者
・サービス利用者
事業者
[甲]
プラントデータ提供者
・サービス利用者
事業者
[甲]
プラントデータ提供者
・サービス利用者
図 2-4 モデル規約条項(規約型)において想定した取引事例
なお、AI・データ契約ガイドラインにおいては、データ流通・利活用に関する契約を、①「データ提供型」(データ提供者のみが保持していることに契約当事者間で争いがないデータの提供にあたり、提供条件等を定めるための契約)、②「データ創出型」(複数当事者の関与により新たに創出されたデータについて、データ創出に関与した当事者間で利用権限等を定めるための契約)、及び③「データ共用型(プラットフォーム型)」(プラットフォームが複数事業者から提供されたデータを集約・保管、加工、分析し、複数事業者がプラットフォームを通じてそのデータを共用するための契約)という 3 類型に分類して検討を行っている4。
ユースケースにおける取引は、プラントデータ受領者(乙)が複数のプラントデータ提供者(甲)から開示データの提供を受け、その加工、分析等を行うという部分に着目すれば、上記の「データ共用型(プラットフォーム型)」が想定する取引に類似する面があるが、他方で、個々のプラントデータ提供者(甲)がプラントデータ受領者(乙)に対し提供するデータは、データ提供者のみが保持していることに契約当事者間で争いがないものであるから、その点においては、上記の「データ提供型」が想定する取引の要素も内包している。
そこで、以下においては、ユースケースにおける取引が上記の AI・データ契約ガイドラインの示す 3 類型のいずれに該当するかについてはあえて明確にはせず、AI・データ契約ガイドラインにおける議論については、上記の「データ共用型(プラットフォーム型)」及び「データ提供型」に関するものを中心に適宜参照する形で、検討を進めることとしている。
4 AI・データ契約ガイドライン 10 ページ以下。
2.2 産業保安分野のデータ利用における留意事項
産業保安分野においてデータ利用のスキームを設計するために重要な視点は、以下のとおりである(図 2-5)。
⚫ 産業保安の高度化という公共性の高い目的に資するスキームとすること
⚫ データ提供者に対してデータ提供のための十分なインセンティブを付与すること
⚫ 提供されるデータの適切な保護を図ること
[乙] | |
提供する 開示データの | プラントデータ受領者 ・プラットフォーム事業者 |
(サービス提供者) | |
適切な保護 | |
)
元プラント
デ元ープタラント
元データ
元データ
開示データ
データ
開示データ
元プラントデータ
サービス提供
(イ り
ンセンティブあ
サービス提供
プラントデータ提供者に対するデータ提供の
インセンティブ付与
産業保安の高度化
派生データ等
派生データ
分析モデル
[甲]
プラントデータ提供者(複数)
(サービス利用者)
産業保安の高度化
公共性の高い目的産業保安の高度化に資するスキーム
[丙]
事業者(複数)
(サービス利用者)
産業保安分野では、事業者の自主保安力及び生産性の向上を実現するという観点から、産業保安の高度化という公共性の高い目的を掲げ、プラントデータ提供者にデータ共有のインセンティブを付与すると同時に、提供する開示データに関する適切な保護を行うように留意したスキームを設計することが求められる。そこで、以下においては、スキームの設計の前提として、産業保安分野において利用されるデータの取扱いやその保護等に関する現行の法制度の内容を概観する。
(1) データ・オーナーシップの考え方
複数事業者間でデータの利用を検討する場合、データ・オーナーシップが問題として取り上げられることが多い。
データ・オーナーシップという概念については、現在のところ法令上の定義は存在しておらず、必ずしもデータに対する所有権を観念できるという意味では用いられてはいない。むしろ、一般的には、データの利用等に関する権利を意図した用語として一般的に用いられている5。その概念は、①データへのアクセスの事実上の独占と、②知的財産xxにより法的に保護された地位を総称して含むものと考えられる。
データは、知的財産権による直接的な保護の対象とならないことが多いので、上記のうち、①データへのアクセスの事実上の独占が特に重要である。法的な保護がなくとも、事実上データにアクセスし保持している主体が限られるならば、データの利用を望む希望者は、データを保持している主体から開示を受ける必要がある。この開示にあたって、データ提供者は、契約自由の原
5 経済産業省商務情報産業局「オープンなデータ流通構造に向けた環境整備」59 ページ(平成 28 年 8 月 29 日)。AI・データ契約ガイドラインでは、「データに適法にアクセスし、その利用をコントロールできる事実上の地位、または契約によってデータの利用権限を取り決めた場合にはそのような債権的な地位」を指すものと考えられると整理している(AI・データ契約ガイドライン 14-15 ページ)。
則により、データ受領者との合意によって様々な条件を課すことができるのである。
この①データへのアクセスの事実上の独占は、契約によってその地位を移転することも可能である。また、データへのアクセスの時点において複数の契約当事者が関与している場合には、契約当事者間で、誰がデータを事実上独占する地位を有するかを合意する必要がある。
(2) データの保護に関する知的財産xxの法制度
⚫ データは無体物である(有体物ではない)ので、民法上、所有権の客体とはなり得ない(民法第 85 条)6。また、不正なデータ使用等は不法行為となる可能性は皆無ではないが、データ使用等に対する差止請求は原則不可である。
⚫ 取引の対象となるデータが、不正競争防止法上の営業秘密(不正競争防止法第 2 条第 6 項)として保護される場合がある。①秘密として管理されること(秘密管理性)、②有用であること(有用性)、③公然と知られていないこと(非公知性)の要件が求められる。営業秘密に関しては、データの保有者が、利用者に開示する際に秘密保持契約の締結等により自らの秘密管理意思を明らかにして秘密管理性を確保することによって、データの利用者への開示後も、不正競争防止法上の保護を受けることが可能となる。なお、営業秘密の不正取得、不正使用等によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、不正競争防止法上の保護を受けることができる。
⚫ また、取引の対象となるデータは、上記の不正競争防止法上の営業秘密に該当しない場合でも、限定提供データ(不正競争防止法第 2 条第 7 項)として保護される場合がある7。①業として特定の者に提供する技術上又は営業上の情報であること(限定提供性)、②電磁的方法により相当量蓄積されていること(相当蓄積性)、③電磁的方法により管理されていること(電磁的管理性)が要件として求められる。限定提供データの不正取得、不正使用等によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者も、不正競争防止法上の保護を受けることができる。
⚫ 著作権法上、ファクトデータ自体には創作性は認められず、著作物には該当しないが、データベースの著作物(著作xx第 12 条の 2 第 1 項)としての保護が受けられる場合がある(ただし、情報の選択又は体系的な構成によって創作性を有するものに限られる)。産業保安分野のデータがデータベースの著作物として保護される場合は多くはないと考えられるが、データベースの著作物として保護される場合には、その権利者(著作者)も法的な排他権を有するのであるから、データ・オーナーシップを有するといえるであろう。多くの場合には、データを
6 実際上、プラント事業者がデータ・オーナーシップを主張している感覚と法制度上の整理のずれがみられる可能性もあるが、物理的排他性を有さず、無限に誰もが複製可能である(非排他性)というプラントデータの特性に留意すれば、所有権の客体とはなり得ないことは明らかである。
7 限定提供データを保護の対象とする不正競争防止法の規定は、平成 30 年の同法改正(不正競争防止法等の一部を改
正する法律(平成 30 年法律第 33 号)による改正)により新たに設けられたものである。同改正法は原則として平成
31 年 7 月 1 日に施行されることとされており(同法律附則第 1 条柱書、不正競争防止法等の一部を改正する法律の
施行期日を定める政令(平成 30 年政令第 257 号))、現時点では未施行であるが、以下においては、同改正法の施行後の制度を前提として記述している。
保持している主体と著作者は重なると考えられるが、対象のデータが著作物として保護される可能性がある場合には、データを保持している主体が著作権をも保有していることを確認することが必要となる。
⚫ 特許法上、データ自体は単なる情報の提示であり特許にならないが、データの加工や分析方法をプログラムとして記述することで特許による保護対象となる場合もある(特許法第 2 条第 4 項)。
⚫ データは財物性が認められないため、刑法上、データ自体の窃盗罪は成立しないが、不正取得の態様等によっては不正アクセス禁止法違反として刑事責任が問われる場合がある。また最近では、不正競争防止法違反で立件された刑事事件もある。
法令 | 制度 | 備考 |
民法 | データは有体物ではないため、所有権や占有権 の対象にならない(民法第 85 条)。 | 不正なデータ使用等は不法行為となる可能性が 皆無ではないが、差止請求は原則不可である。 |
不正競争防止法 | 営業秘密(不正競争防止法第 2 条第 6 項)に該 当する場合は保護され得る。 | 営業秘密は、秘密管理性、有用性、非公知性の 3 つの要件を満たしていることが必要となる。 |
限定提供データ(不正競争防止法第 2 条第 7 項)に該当する場合も保護され得る。 | 限定提供データは、限定提供性、相当蓄積性、電磁的管理性の 3 つの要件を満たしていること が必要である。 | |
著作xx | ファクトデータ自体には創作性は認められず、著作物にはならない。体系的構成等に創作性があればデータベースの著作物(著作xx第 12 条 の 2 第 1 項)に該当し得る。 | ― |
特許法 | データ自体は単なる情報の提示であり特許にならないが、データの加工や分析方法をプログラムとして記述することで特許による保護対象と なる場合もある(特許法第 2 条第 4 項)。 | ― |
刑法 | データ自体は財物ではないため窃盗罪は成立しないが、不正取得の態様等によっては不正アク セス禁止法違反となる場合がある。 | 不正競争防止法違反で立件された刑事事件もある(東京高等裁判所平成 29 年 3 月 21 日判決 〔ベネッセ事件〕等)。 |
出所)経済産業省商務情報政策局「オープンなデータ流通構造に向けた環境整備」62 ページ(平成 28 年 8 月 29
日)、経済産業省知的財産政策室「不正競争防止法平成 30 年改正の概要(限定提供データ、技術的制限手段等)」等を基に三菱総合研究所にて作成
データ・オーナーシップについては、プラントデータの非排他性や公共財的な特性を考慮しつつ、現行の法制度と矛盾・抵触しない範囲で整理することが必要である。特にプラントデータ提供者は、その後、プラントデータ受領者が独自にデータを追加で収集、抽出、分析等の作業を行った際に、それらの作業に関与していなかった場合、開示データを提供したことをもって派生データ等についての何かしらの権利を主張しても認められるとは限らない8。
8 データ・オーナーシップについては、契約上は、「本データに関する知的財産権(データベースの著作物に関する権利を含むがこれに限られない。)は、[甲/乙]に帰属する」という記載によって確認されることになると考えられる(モデル契約条項第 3 条第 2 項、モデル規約条項第 11 条第 2 項参照)。文言上は、②知的財産xxにより法的に保護された地位についての確認しかされていないようにも見えるが、知的財産権が[甲/乙]に帰属するとされている以上、①データへのアクセスの事実上の独占も含めて地位が確認されるとの合意があるものと解釈することができるからである。知的財産基本法が、知的財産権の意義を「特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権その他の知的財産に関して法令により定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利をいう。」(知的財産基本法第 2 条第 2 項)として、不正競争防止法により保護される地位を知的財産権の定義に含めていることもこの理解の裏付けとなると考えられる。
(3) データの不正利用を防止する措置
データ提供者が、データの提供に伴い、提供するデータに含まれる自社の営業秘密や知見がデータ受領者以外の者にまで流出してしまうという懸念を持つことが、データ流通促進が阻害される要因になっている可能性がある。
提供するデータに含まれる自社の知見を守るためには、契約においてデータ受領者に第三者提供を制限することが重要である。この契約上の制限によりコントロールしようとした範囲を超えて第三者にデータが漏えいしてしまった場合には、契約当事者であるデータ受領者に対して契約違反の責任を問うほか、契約当事者や第三者の取得者に対して、不正競争防止法、民法、不正アクセス禁止法等による法的措置を講じることも有用と考えられる。
このうち、不正競争防止法による保護が及ぶこととなるのは、提供するデータが営業秘密(不正競争防止法第 2 条第 6 項)に該当する場合と、限定提供データ(不正競争防止法第 2 条第 7 項)に該当する場合である。2 つの制度における保護の対象となるデータの範囲(要件)及び保護の内容等を比較して整理すると、以下の表 2-2 のとおりとなる。
表 2-2 不正競争防止法におけるデータの保護の範囲及び内容
営業秘密 | 限定提供データ | ||
保護の範囲(要件) | 秘密管理性、有用性、非公知性 | 限定提供性、相当蓄積性、電磁的管理性 ただし、①秘密として管理されているもの、及び、②オープンなデータと同一のものは除く。 | |
保護の内容 | 外部者 (権原のない者) | 窃取、詐欺等の不正な手段による取得行為不正取得後の使用行為 不正取得後の開示行為 | |
正当取得者 (権原のある者) | 不正な利益を得る目的又は損害を加える目 的(図利加害目的)での使用行為 | 図利加害目的かつ、横領・背任に相当する 態様での使用行為 | |
図利加害目的での開示行為 | |||
転得者 (取得時悪意) | 不正な経緯について、知って(悪意)又は重 過失による取得行為 | 不正な経緯について、知って(悪意)による 取得行為 | |
不正取得後の使用行為 不正取得後の開示行為 | |||
転得者 (取得時善意) | 不正な経緯を知った後、又は重過失により 知らなかった場合における、取引時の権原の範囲外の使用行為 | ― | |
不正な経緯を知った後、又は重過失により知らなかった場合における、取引時の権原 の範囲外の開示行為 | 不正な経緯を知った後、取引時の権原の範囲外の開示行為 | ||
侵害品 | 営業秘密の不正使用により生じた物の譲渡 行為 | ― |
出所)経済産業省知的財産政策室「不正競争防止法平成 30 年改正の概要(限定提供データ、技術的制限手段等)」11ページ(xxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxxxx/xxxxxxx/xxxxxx/xxxxxxx/X00xxx_xxxxxxxxxxxxx.xxx)等を基に三菱総合研究所にて作成
(4) プラントデータの管理方法・開示方法に関する義務
提供されるプラントデータには、企業活動上の機密情報や営業秘密、パーソナルデータ等の情報が含まれる可能性がある。プラントデータ受領者がこれらプラントデータの利用許諾を受ける場合には、前提としてプラントデータに関する秘密保持義務を負うことが多い。また、データの管理責任や漏えい時の対応責任について、契約当事者間が契約で明確化しておくことも重要である。
(5) プラントデータを活用した結果得られる権利
プラントデータを活用した結果、派生データ等に関して、知的財産、ノウハウ、研究成果として発表する権利、またそれらを活用したソリューション等に関する権利が発生する場合がある。これらの権利の帰属も契約当事者にとっては関心事となる。
また、プラントデータ提供者からのデータ提供を受けたプラントデータ受領者が、さらに第三者に派生データ等を利用許諾する場合、プラントデータ受領者が独自に判断できるのか、プラントデータ提供者の了承を得る必要があるのかといった問題もある。
2.3 産業保安分野のデータ利用に関する契約において検討すべき主な法的論点
現行の法制度を前提として、産業保安分野においてデータ利用に関する契約を締結する際には、主に以下のような法的論点について検討が必要である9。
なお、以下では、本契約ガイドラインのユースケースを念頭に置いて、重要性が高いと考えられる法的論点について説明をしているが、実際の契約交渉において検討すべき論点はこれらに限られるものではない。また、前提条件の変化等の事情の変更が生じた場合には、必ずしも以下の論点が問題にならない場合もあることに留意を要する。
(1) 契約の対象となるデータの特定
1) 開示レベルによるデータの区分(モデル契約条項第 1 条、モデル規約条項第 2 条)
産業保安分野においては、競争力の源泉となる競争データをプラントデータから分離することが容易ではないため、プラント事業者はプラントデータそのものの社会における無制限な拡散には慎重な姿勢とならざるを得ない。
9 プラントデータ提供者がプラントデータ受領者に対しデータを提供する取引を規律する契約の法的性質は、基本的には「利用制限条件付データ開示契約」(プラントデータ提供者がプラントデータ受領者に対し提供したデータについては、プラントデータ受領者による利用に法令上何らの制約が課されていないことから、プラントデータ受領者がプラントデータ提供者に対しその利用を一定の条件の範囲内にとどめることを約束するという内容の契約)であると考えられる。これに対し、提供対象となるデータが著作権その他の知的財産権により保護されている場合には、上記取引を規律する契約の法的性質は「利用許諾契約」(プラントデータ提供者がプラントデータ受領者に対し提供したデータについては、知的財産権の存在により、プラントデータ受領者による利用に法令上の制約が存在することから、当該知的財産権を有しているプラントデータ提供者がプラントデータ受領者に対し当該知的財産権を行使しないことを約束するという内容の契約)であると考えられる。このように、提供対象となるデータが知的財産権の保護対象であるか否かにより、当該データの提供取引を規律する契約の法的性質には厳密には相違があるのであるが、一般的には、前者の「利用制限条件付のデータ開示契約」を「利用許諾契約」と称することも少なくないことから、本契約ガイドラインにおいても、便宜上、両者を区別することなく「利用許諾契約」と呼称することとする。
そのような状況下においてプラントデータの社会的な活用を促進していくためには、データを、以下の 3 種類に明確に区別して管理することが有用である(図 2-6)。
⚫ プラント事業者の手元にある「元プラントデータ」
⚫ プラント事業者が乙との秘密保持契約による秘密保持義務を前提として開示した「開示データ」(モデル契約及びモデル規約上は「本データ」)
⚫ 開示データを活用して作成された、プラントの機密情報が一切含まれない「派生データ等」(モデル契約及びモデル規約上は「本派生データ等」)
[甲]
プラントデータ提供者
(サービス利用者)
元プラントデータ
甲1 開示データ
元プラントデータ
甲2 開示データ
元プラントデータ 甲3 開示データ
[乙]
プラントデータ受領者
・プラットフォーム事業者
(サービス提供者)
[丙] 事業者
(サービス利用者)
データ提供
乙
サービス
提供
丙
開示データ
元プラントデータ
開示データ
(データの提供に関する契約による開示)
派生データ等
派生データ等
分析モデル
派生データ
派生データ等
分析モデル
派生データ
2) 開示するデータの加工方法
プラントデータ提供者が、あるデータ(特に元プラントデータ)を開示データとして提供するには、提供対象のデータから営業秘密やノウハウを構成する部分を削除又は抽象化したり、データの粒度を粗くする等の加工処理をして、処理後のデータから処理前のデータに含まれていた営業秘密やノウハウを復元することができないようにする工夫が求められる。
例えば、化学プラントにおいては、配管内を流れる原材料の種類に応じて配管の材料や内面のコーティング等を決めるが、これらの情報は営業秘密に相当するため、これらの情報に関するデータを削除することが一例として考えられる。
データの加工方法としては、①プラントデータ提供者側でデータの抽象化・一般化の加工を行った上で、プラントデータ受領者に対し開示データを提供する方法が、原則的な方法であると考えられるが、②プラントデータ提供者側ではデータに何ら加工をせずにデータを提供し、プラントデータ受領者にデータの抽象化・一般化の加工を委託する方法も考えられる。
後者の、②プラントデータ提供者側ではデータに何ら加工をせずにデータを提供し、プラントデータ受領者にデータの抽象化・一般化の加工を委託する方法においては、プラントデータ受領者に提供されたデータについて、プラントデータ受領者に対して、秘密保持義務、当該加工以外に利用しない義務、及び加工後の廃棄義務を課し、加工後のデータのみについてプラントデータ受領者に利用許諾するという取決めがなされることになると考えられる。データの加工方法については、契約上あらかじめ合意しておくことになる(別途協議とすることもあり得る)。
なお、これらのデータの加工方法は、個人情報保護法第 2 条第 9 項において求められる匿名加工(特定の個人を識別することができないように個人情報を加工して、その個人情報を復元することができないようにすること)とは別異の処理である。
3) 想定し得なかったデータの取扱い
可能な限り契約前に、データ利用の態様等を踏まえ、いかなるデータが創出、取得又は収集されることとなるかを想定しておくことが重要であるが、契約締結後に、契約前には想定し得なかったデータが創出、取得又は収集されることがあり得る。そのため、契約では一定の手続を経て対象データの範囲を適宜変更することができるようにしておくことが望ましい。
4) 問題となりやすいデータの取扱い
プラントデータの活用において、契約当事者間で利用権限を定めるのに適したデータとするための処理方法について簡単に触れる。基本的には契約関係の整理や、データそれ自体の分解処理等により、可能な限り利用を図ることになる。データの分解処理の作業費用をいずれの契約当事者が負担することとするかも、検討すべき事項である。
a. 複数のプラント事業者からのデータ
本契約ガイドラインのユースケースで取り扱われるプラントデータは、複数のプラント事業者から提供されたものであることを前提としている。単独のプラント事業者から提供されたプラントデータ活用においては、従来どおりの業務委託契約で取り扱われることが通常であり、本契約ガイドラインでは考慮していない。
b. 第三者が創出に関わったデータ
プラントデータの生成過程においては、プラント事業者以外の第三者がデータ創出等に関わる場合もある。例えば、プラント運転データの生成にあたっては、センサメーカーやソフトウェアメーカーが関与していることや、プラント設計データの一部には他のエンジニアリング会社からライセンスを受けた機密情報が含まれていることも考えられる。
このような、契約当事者以外の第三者がデータ創出等に関わっている場合の取扱いについては、「4.2 データ提供者及びデータ受領者以外の事業者がデータ取引に関与する場合」を参照いただきたい。
c. 営業秘密を含むデータ
プラントデータ提供者が営業秘密やノウハウとして保有するプラントデータについては、プラントデータ受領者に対して無条件で当該データの利用権限を認めることは通常期待できない。もっとも、営業秘密として扱われるデータであっても、適切に秘密保持契約等を締結することにより、秘密管理性を確保しつつ共同利用することも可能である。
また、プラントデータ提供者にとって営業秘密として扱われるデータであっても、改めてその要件に照らしてデータ内容等を検証し、データを技術、利用方法又は用途ごとに細分化して、営業秘密となるデータとそれ以外のデータとを区別したり、あるいは、「2.3(1)2) 開示するデータの加工方法」において述べたように、営業秘密を構成する部分を削除又は抽象化したり、データの粒度を粗くする等の加工処理をすることによって、営業秘密以外のデー
タの活用を図るという手法もあり得る10。ノウハウについても同様であり、ノウハウを構成しないデータを部分的に切り出していくことが考えられる。
d. パーソナルデータ
パーソナルデータとは、個人の属性情報、移動・行動・購買履歴、ウェアラブル機器から収集された個人情報に加え、特定の個人を識別されないように加工された人流情報や商品情報等の個人と関係が見出される広範囲の情報を指すものとされている11。個人情報保護法で保護される個人情報よりその概念は広い。
本契約ガイドラインで扱うデータは、基本的に産業データ(非パーソナルデータ)を想定するが、パーソナルデータに該当するデータが含まれる場合も考えられる。例えば、プラントデータにおいては、ウェアラブル機器を活用して収集されたプラント作業員の活動データ等がパーソナルデータに該当する。
一般的には、パーソナルデータを含むデータについても、個人情報保護法その他関連法令に従った利用目的及び第三者提供の本人に対する明示等を行い、本人のプライバシー等に配慮しつつ、利用権限を定めることも可能である。
他方で、パーソナルデータについては、当該データの由来する個人を差しおいて事業者間のみで利用権限を取り決めることについては、事業者の懸念も根強いことから、利用目的に照らし、データの切り分けや加工等を行って、データから個人情報を含むパーソナルデータを分離し、その余の部分のデータに限って活用を図ることも考えられる。
e. 継続的に追加されるデータ
特にプラントデータにおいては、DCS データ等のリアルタイムデータは時間と共に追加されていくため、これらのデータ提供の範囲や方法についても規定しておくことが望ましい。
f. 派生データ等
開示データを基に作成された派生データや加工データ、モデルその他成果物を総称したものである派生データ等には、一般的に、以下のような条件を満たすことが求められる。具体的に派生データ等がどのような条件を満たす必要があるかは、契約において明示される必要がある。
⚫ 開示データの機密情報・営業秘密等(生産プロセスの秘密等)が含まれていないこと、復元されないこと。
⚫ 個人情報が含まれていないこと、復元されないこと(ウェアラブル機器を活用して収集するデータも考慮する)。
なお、本契約ガイドラインでは派生データ等については一括して契約上の取扱いを検討しているが、個々の取引においては、派生データ等の中で、例えばデータ(派生データや加工データ)とモデルといった成果物の性質の相違等を踏まえ、派生データ等を幾つかに分類し、それぞれについて、異なる契約上の取扱いをする必要がある場合も考えられる。
10 要件については、経済産業省「営業秘密管理指針」(平成 31 年 1 月 23 日最終改訂)を参照するのが望ましい。
11 総務省「平成 29 年版情報通信白書」53 ページ(平成 29 年 7 月)。
(2) プラントデータの利用態様についての規律
1) 利用態様の特定(モデル契約条項第 3 条第 1 項、モデル規約条項第 11 条第 1 項)
データの「利用」は、法令上の定義のない概念であるため、契約当事者間でいかなる態様による「利用」を許諾するかを特定することが重要である。
データの利用態様には、通常、データの取得、閲覧、複製、保管、修正、加工、分析、開示、販売、削除等が含まれる。プラントデータ受領者は、通常これらの利用態様のうち、利用目的、データ創出に対する契約当事者の寄与度等を勘案して、契約条項に設けられた利用態様の制限の範囲内において、データを活用することになると考えられる。
また、データの利用に際して契約当事者が整えるべきセキュリティ環境等の在り方(例えば、データの暗号化を義務付ける、一定の安全管理措置・セキュリティ環境を整備する、関係役職員等との間で一定の内容の守秘義務契約を締結する等)についても、具体的な内容を契約当事者間で定めることが有用である。
2) プラントデータの目的外利用・第三者提供の制限(モデル契約条項第 3 条第 1 項・第 8 条第 1 項、モデル規約条項第 11 条第 1 項・第 12 条第 1 項)
開示データのプラントデータ提供者(甲)は、利用許諾契約において、プラントデータ受領者(乙)に対し、契約で定められた目的の範囲を越えて開示データを目的外利用・第三者提供をすることを禁じることが多いと考えられる。プラントデータ受領者(乙)が、①自身で契約に定められた目的以外の用途でデータを利用する場合(目的外利用)や、②開示データを契約当事者ではない第三者に開示したり、転々流通したりさせる場合(第三者提供)には、通常、プラントデータ受領者(乙)がプラントデータ提供者(甲)に対し、その目的外利用・第三者提供の内容、範囲や条件等について事前に通知し、プラントデータ提供者(甲)から同意を得ることが必要になる。プラントデータ提供者(x)は、この事前の通知を受けて、任意に同意をするかどうかを判断することになる。このような仕組みを設けることにより、プラントデータ提供者(甲)は、プラントデータ受領者(乙)による自由な目的外利用や第三者提供を認めず、プラントデータ受領者(乙)による利用の範囲をコントロールすることができる。
(3) 提供されたデータに関する保証(モデル契約条項第 5 条、モデル規約条項第 10 条)
プラントデータ受領者(乙)は、データの内容・精度やデータが提供する機能について、一定の品質等が保証されないと、当該データを利用したサービス提供活動が困難になる場合があることから、開示データの品質等について、プラントデータ提供者(甲)が契約上の保証責任を負うことを望む可能性がある。また、プラントデータ提供者(甲)から提供されたデータに、第三者の知的財産権の対象となっているもの等、プラントデータ提供者自身が利用許諾できないものが含まれている可能性がある場合も12、同様の観点から、当該データの提供につきプラントデータ提供者(甲)が正当な権限を有していることについて、プラントデータ提供者(甲)が契約上の保証責任を負うことによって、円滑なサービスの提供を図ることが考えられる。
特に、ユースケースのように、プラントデータ提供者(甲)が同時にプラントデータ受領者(乙)の提供するサービスを利用する形態の取引の場合は、プラントデータ受領者(乙)から提供を受
12 例えばプラントに存在するデータであっても、ライセンサーから利用許諾を受けた生産技術情報や、生産依頼元から提供された生産レシピ情報等、プラントデータ提供者自身が利用許諾できない可能性があるものが存在している。
けるサービスの品質等が向上することは、プラントデータ提供者(甲)にとってもメリットをもたらすことから、プラントデータ提供者(甲)が上記のような保証責任を負担することは、プラントデータ受領者(乙)はもちろんのこと、プラントデータ提供者(甲)にとっても積極的な意味を有するものと考えられる。
したがって、このような場合には、契約当事者間で、提供するデータの性質・内容や契約の目的に応じて、データの品質等(例えば、取得方法の適法性・適切性等)やプラントデータ提供者の権限の正当性(例えば、第三者からデータの提供等に❜いて必要な許諾を得ていること、第三者の知的財産権その他の権利を侵害しないこと等)に❜いての保証範囲を適切に定めることが重要である。さらに、プラントデータ提供者(甲)に上記のような法的責任を負担させることによってプラントデータ提供者(甲)がデータ提供に対し抑制的となることを回避する観点からは、損害賠償の範囲の上限規定や免責規定を設け、プラントデータ提供者(甲)の法的責任を軽減することも考えられる(モデル契約条項第 15 条解説参照)。
(4) 派生データ等に関する知的財産権及び利用権限の定め方(モデル契約条項第 11 条第 1 項、モデル規約条項第 13 条)
ユースケースでは、複数のプラントデータ提供者(甲)が、データを必要とするプラントデータ受領者(乙)に対して開示データを提供する仕組みが採られている。そして、プラントデータ受領者(乙)が、複数のプラントデータ提供者(甲)から提供されたデータを、自社のノウハウ及び労力によって加工(整理・抽出)、分析する役割を担うことを想定しているため、このようなプロセスを経て生成された成果物である派生データ等の知的財産権は、プラントデータ受領者
(乙)に帰属すると整理している(図 2-7)。
ただし、派生データ等の中には、プラントデータ提供者(甲)が従前から保有していたデータ
(開示データ)が復元可能な状態で含まれていることもあり得る13。このような場合には、当該部分の知的財産権ないしデータの利用権限はプラントデータ提供者(甲)に留保されると考えられる。
権利帰属の条件に❜いては、取引内容に応じて契約当事者間で自由に決定されるものであり、上記のような整理に限定されるものではない。したがって、派生データ等に❜いて、例えばプラントデータ提供者(甲)とプラントデータ受領者(乙)の共有とすることも考えられる。
しかし、プラントデータ提供者(甲)とプラントデータ受領者(乙)の共有とすると、例えば著作権に関しては、持分の第三者への譲渡、著作権の第三者への利用許諾、自身が著作物を利用する場合にもすべての著作権者の同意が求められる(著作xx第 65 条)等、各契約当事者による利用が制約される。また、知的財産権による保護の対象とならないデータの利用権限の共有に
❜いては、これを共有とすることの効果が不明確となる。よって、その後の円滑なデータ利用の観点から制約が大きい点に留意が必要である。
13 例えば、データ受領者が「JJKKLLMMNN」という開示データに❜いて、他の利用者から受領したデータと共通の
様式に整理するため、データ受領者自ら開発したアルゴリズムに基づき「NNLLSSSSMMKKJJ」というデータに変換(並べ替え)したという場合、変換後のデータから開示データを容易に復元することができる。また、データ受領者が「RSTUVW」という開示データに❜いて、データ受領者自ら開発したアルゴリズムに基づき「CLFDME」というデータに変換したという場合、この変換アルゴリズムが第三者にとって容易に推知できるときは、やはり、変換後のデータから開示データを容易に復元することができる。
甲1
開示データ
甲2
開示データ
甲3
開示データ
データ提供
サービス提供
乙 開示データ | |
派生データ等 分析モデル 派生データ |
丙
派生データ等(成果物)の知的財産権は原則乙に帰属
(5) プラントデータ提供者の派生データ等の利用の機会の確保(モデル契約条項第 11 条第 2 項・第 3 項、モデル規約条項第 5 条第 4 項)
プラントデータ提供者(甲)に対するインセンティブの内容は、開示データの性質・内容、開示データの価値、契約の目的等を総合的に勘案して、契約当事者間の合意に基づき決定することが望ましい。
インセンティブの内容としては、派生データ等又はこれを利用したサービスに❜いて利用許諾するにあたり、例えば、プラントデータ提供者(甲)に有利な条件で派生データ等の利用を認めることで、派生データ等のデータ共有・還元を実施することが考えられる(この場合、派生データ等の利用許諾の範囲や、有償・無償取引の別を具体的に設定する必要がある)。また、プラントデータ提供者(甲)のサービス利用の対価を設定する際に、開示データの提供義務の負担を考慮して、金額や算定方法の設定において優遇することも考えられる。
また、派生データ等の利用に起因してプラントデータ受領者(乙)に何らかの金銭的メリットが発生した場合に、その一定割合をプラントデータ提供者(甲)に配分することも考えられる。
丙
プラントデータ提供者の
インセンティブの確保
データ提供
サービス提供
甲1 甲2 甲3
開示データ 開示データ 開示データ
サービス提供
派生データ等
利益の一部還元
乙
開示データ
派生データ
分析モデル
第三者へのサービス提供の結果利益が還元される可能性あり
プラントデータ提供者に有利な条件で派生データ等 (成果物)
又はサービスの利用を合意
派生データ
分析モデル
派生データ等
(6) 派生データ等の第三者への提供の取扱い(モデル契約条項第 11 条、モデル規約条項第 13 条)
開示データの提供を受けたプラントデータ受領者(乙)が、派生データ等を第三者に提供するという場合が考えられる(図 2-9)。
このような場面では、派生データ等から開示データを復元することができない場合、派生データ等の法的権利がプラントデータ受領者(乙)に帰属していることに鑑み、プラントデータ受領者(乙)が第三者(丙)と派生データ等の利用許諾契約を締結すれば十分であり、プラントデータ提供者(甲)は、第三者(丙)に対して何らの利用権限を設定し得ないと考えられる。
ただし、派生データ等の中に開示データの全部又は一部に復元可能な部分が残されているのであれば、当該部分の知的財産権ないしデータの利用権限はプラントデータ提供者(甲)に留保されているのが一般的であるから、そのような場合には、当該部分をプラントデータ受領者(乙)がプラントデータ提供者(甲)の事前の許諾なしに第三者(丙)に提供することは認められないことになる。
甲1
開示データ
派生データ等
丙1
データ提供
甲2
開示データ
乙
開示データ
派生データ等
分析モデル
派生データ
サービス提供
派生データ等
丙2
甲3
開示データ
派生データ等
丙3
甲に留保された権利がない限り派生データ等は乙の判断で
第三者への提供が可能
3. モデル契約条項・モデル規約条項の解説
3.1 契約形態の選択―相対契約型と規約型
本契約ガイドラインにおいては、既に述べたとおり、産業保安分野のデータに関する典型的な取引の一例として、以下のユースケースを念頭に置いている(図 3-1)。
⚫ プラントデータ受領者(乙)が、複数のプラントデータ提供者(甲)から石油精製プラントや化学プラントの保有するデータを取得、蓄積し、それらのデータをビッグデータとして活用してサービス開発を実施する。
⚫ プラントデータ受領者(乙)が、プラントの保全管理支援サービスの提供者か❜プラットフォームを運営する事業者として、サービス利用者にサービスを提供する。なお、サービス利用者は、プラントデータ提供者(甲)と一致する場合も、異なる第三者(丙)の場合もあり得る。
契約1
[乙]
プラントデータ受領者
・プラットフォーム事業者
(サービス提供者)
プラントデータを分析して
有益な知見を抽出し権利化する
開示データ
開示データ
データ料
¥
4
契約2
契約3
¥
サービス提供
サービス料(有利な条件)
派生データ等
サービス提供
サービス料(一般的な条件)
¥
開示データ ¥ 契 派生データ等
約
4
¥
契約 5
契約3’
サービス提供サービス料
¥
乙の分析・データ管理
などを支援する
派生データ等を活用して有益な知見を抽出し 権利化・サービス化する
潜在ユーザー
契約3’’
サービス提供
サービス料
¥
自主保安力の向上
保全作業のコストダウン
元プラント
データ
元プラントデータ
[甲]
プラントデータ提供者
(サービス利用者)
分析手法を利用してメリットを得る
元プラント
データ
派生データ等の第三者提供
6
派生データ等の
利用の機会の確保
5
品質保証
3
派生データ等の
権利帰属
派生データ
派生データ等
分析モデル
サービス提供者
分析機関又は データ管理サービス
分析手法を利用してメリットを得る
保全作業のコストダウン
自主保安力の向上
[丙]
事業者
(サービス利用者)
法的論点
●
データフロー 契約関係
1 | 提供データの 特定 | 2 | 提供データの 利用態様 |
図 3-1 プラントデータ活用スキームのユースケース(再掲)
このユースケースにおいて、プラントデータ提供者とプラントデータ受領者の間で締結される契約の形態としては、まず、プラントデータ提供者とプラントデータ受領者とが個別に交渉を行って契約条件を合意し、二当事者間で契約を締結するという形態(相対契約型)が考えられる。
しかしユースケース上は、プラントデータ受領者が複数のプラントデータ提供者からデータを受領することを想定しているため、プラントデータ受領者の立場からすると、それぞれのプラントデータ提供者との間で個別に契約交渉を行うことは煩瑣である。また、プラントデータ提供者ごとに契約条件が異なると、サービス利用者に対する円滑なサービス提供やサービスの品質の維持向上に困難が生じかねない。
そこで、プラントデータ受領者が、あらかじめ多くのプラントデータ提供者にとって受け入れ可能と思われる内容の規約を用意し、すべてのプラントデータ提供者との間で当該規約と同一の契約
規約
甲2
開示データ
乙
派生データ等
分析モデル
派生データ
契約
契約
甲1
開示データ
開示データ
甲2
同 意
開示データ
乙
開示データ
派生データ
派生データ等
分析モデル
甲1
同 意
開示データ
条件で契約を締結するという形態(規約型)も考えられる(図 3-2)14。
相対契約型
規約型
甲3
開示データ
契約
甲3
同 意
開示データ
相対契約型の契約形態と規約型の契約形態の間には、内在的に優劣関係があるものではなく、それぞれ、以下の表 3-1 のようなメリット・デメリットが存在する。データ取引を行うにあたっては、契約当事者双方が目指すデータ活用の取組みをより円滑に実現するために、契約当事者双方が納得し得る契約形態を採用することが重要となる。
相対契約型 | 規約型 | ||
データ提供者側 | メリット | ⚫ プラントデータ受領者との個別交渉を通じ、自社の要求事項を契約内容に直接的に反映させることができる。 | ⚫ 契約条件が統一されることにより、プラントデータ受領者からのサービス提供やその品質の維持向上が円滑に行われやすくなる。 |
デメリット | ⚫ 契約条件の不統一が原因で、プラントデータ受領者から円滑にサービス提供を受けられなかったり、サービス品質の維持向上のメリットを享受できなかったりする可能性がある。 ⚫ 他のプラントデータ提供者とプラントデータ受領者がどのような条件の契約を締結しているかが見えにくく、抜け駆けの懸念を払拭すること が難しい。 | ⚫ データ受領者が個別の特約を許さない場合に は、自社の要求事項を契約内容に直接反映させることはできない(最終的には、プラントデータ受領者の示す規約に同意するか、それとも取引に参加しないかの二者択一を迫られる)。 | |
データ受領者側 | メリット | ⚫ 個々のプラントデータ提供者に、より納得感を持って契約を締結してもらうことができ、より多くのプラントデータ提供者の獲得に❜ながる 可能性が高まる。 | ⚫ 契約条件が統一されることにより、契約の締結・管理のコストを軽減することができる。 ⚫ サービス利用者へのサービス提供やその品質の 維持向上を円滑に行いやすくなる。 |
デメリット | ⚫ 契約条件が不統一であるため、契約の締結・管理のコストが重い。 ⚫ 契約条件が不統一であることが原因で、サービス提供が円滑に行えなくなったり、サービス品質の維持向上が阻害される可能性がある。 ⚫ プラントデータ提供者が互いにプラントデータ受領者とどのような条件の契約を締結しているかが見えにくく、抜け駆けの懸念を払拭することが難しい。 | ⚫ より多くのプラントデータ提供者に納得感を持って取引に参加してもらうためには、結局、プラントデータ提供者側の要求事項等を十分に踏まえた内容の規約を準備せざるを得ない。 |
14 平成 29 年度経済産業省「データ利活用促進に向けた企業における管理・契約等の実態調査」でも、事業者間で、約款や規約を活用してデータの共有が図られている事例があることが指摘されている。
3.2 モデル契約条項(相対契約型)の解説
以下においては、相対契約型の契約形態を採用してプラントデータの利用に関する契約を締結するにあたり、契約において定めることが望ましい事項に❜いて解説を示す。
(1) モデル契約条項(相対契約型)において想定した取引事例
本契約ガイドラインにおいては、データ取引を行うに際し相対契約型の契約形態を採用する場合のモデル契約として、モデル契約(別冊 1)を示している。
モデル契約条項の検討にあたっては、本契約ガイドラインのユースケース(2.1)のうち、以下の取引事例を念頭に置き、プラントデータ提供者(甲)とプラントデータ受領者(乙)の間で締 結されるプラントデータに関する利用許諾契約を検討の対象とした(図 3-3)。
⚫ プラントデータ受領者(乙)は、複数のプラントデータ提供者(甲)から加工済みのプラントデータを取得し、そのデータを活用してプラントの保全管理支援サービスを開発し、これをサービス利用者に提供する。
⚫ すべてのプラントデータ提供者(甲)がサービス利用者となるとは限らず、サービスを利用しないプラントデータ提供者(甲)も存在する可能性がある。また、プラントデータ提供者(甲)以外の事業者がサービス利用者となる可能性もある。
⚫ プラントデータ提供者(甲)のプラントデータ受領者(乙)に対するプラントデータ提供の取引条件は、個々のプラントデータ提供者(甲)とプラントデータ受領者(乙)との間の個別交渉によって定める。
モデル契約の内容
(赤矢印)
データに関する利用許諾契約
元プラントデータ
開示データ
(「本データ」)
サービス提供(有利な条件)
開示データ
(「本データ」)
データに関する利用許諾契約
サービス提供
(一般的な条件)
元プラントデータ
開示データ
(「本データ」)
サービス提供(有利な条件)
サービス提供
( )
一般的な条件
データに関する利用許諾契約
元プラントデータ
開示データ
(「本データ」)
サービス提供(有利な条件)
開示データ
(「本データ」)
[甲]
プラントデータ提供者
(サービス利用者)
事業者
(サービス利用者)
開示データ
(「本データ」)
[甲]
プラントデータ提供者
(サービス利用者)
事業者
(サービス利用者)
開示データ
(「本データ」)
[甲]
プラントデータ提供者
(サービス利用者)
「本派生データ等」
分析モデル
派生データ
[乙]
プラントデータ受領者
・プラットフォーム事業者
(サービス提供者)
図 3-3 モデル契約条項(相対契約型)において想定した取引事例(再掲)
(2) 相対契約型の契約において検討すべき項目
相対契約型の契約において検討すべき項目の一覧は、以下の表 3-2 のとおりである。
検討項目 |
① 定義(第 1 条) |
□本データの定義 □本データの仕様(対象・項目) □本データ利用の目的 □本派生データ等の定義 |
② データの提供方法(第 2 条) |
□本データの提供条件 □本データの取得時期・期間・提供頻度 □本データの提供形式 □本データの整備費用の負担 □本データの授受方法 |
③ データの利用許諾(第 3 条) |
□本データの利用許諾の独占/非独占 □本データに関する知的財産権の帰属 |
④ データ提供の対価(第 4 条) |
□本データの対価の金額(又は算定方法) □対価の支払方法 |
⑤ データの保証/非保証(第 5 条) |
□本データの取得方法の適法性・適切性に❜いての保証/非保証 □本データの正確性・完全性・安全性・有効性に❜いての保証/非保証 □本データに関する第三者の権利の非侵害の保証/非保証 □本データに関する第三者の知的財産権の非侵害の保証/非保証 |
⑥ xxxx等の対応責任(第 6 条) |
□xxxx等の対応責任 |
⑦ データの利用状況(第 7 条) |
□データ提供者の監査(データ受領者の利用状況の監査) □データ受領者による目的外利用等がなされた場合の対応責任 |
⑧ データの管理(第 8 条) |
□本データの目的外利用の禁止・制限 □本データの第三者提供の禁止・制限 □本データと他の情報との区分管理 □データ受領者のデータ管理に関する善管注意義務 □本データの管理状況に❜いての報告要求・是正要求 |
⑨ 損害軽減義務(第 9 条) |
□データ受領者による本データの漏えい等が発覚した際の通知義務 □本データの漏えい等が生じた場合のデータ受領者の責任 |
⑩ 秘密保持義務(第 10 条) |
□秘密情報の定義 □秘密保持義務の内容と例外事由 □存続期間 |
⑪ 派生データ等の取扱い(第 11 条) |
□派生データ等の知的財産権の帰属 □データ提供者の派生データ等の利用権限の有無 □派生データ等を利用して得られた利益の分配 |
検討項目 |
⑫ 有効期間・残存条項(第 12 条) |
□契約の有効期間 □契約の自動更新 □契約終了後の残存条項 |
⑬ 解除(第 13 条) |
□契約解除事由 □期限の利益喪失事由 |
⑭ 反社会的勢力の排除(第 14 条) |
□一般的な反社会的勢力の排除条項 |
⑮ 損害賠償(第 15 条) |
□損害賠償の範囲 □損害賠償の上限額の有無・免責事由 |
⑯ 不可抗力(第 16 条) |
□不可抗力免責事由 □停電、通信設備の事故、サービス提供の停止、緊急メンテナンス等の免責事由該当性 |
➃ 契約終了後の措置(第 17 条) |
□契約終了後の本データ利用の禁止 □契約終了後の本データの廃棄・消去 □契約終了後の派生データ等の取扱い |
⑱ 譲渡禁止(第 18 条) |
□一般的な権利義務等の譲渡禁止条項 |
⑲ 誠実協議(第 19 条) |
□一般的な誠実協議条項 |
⑳ 紛争解決(第 20 条) |
□合意管轄の裁判地の選択 |
㉑ 準拠法(第 21 条) |
□準拠法の国の選択 |
(3) モデル契約条項(相対契約型)の逐条解説
以下では、モデル契約条項(相対契約型)のうち、特に問題となりやすく重要と思われる契約条項に❜いて解説を示す。
目的とする取引の内容等の変更に応じて採否が変わり得ると思われる条項に❜いては、[角括弧]で表記しているが、その他の条項に❜いても、他の法令との関係も確認しながら各事業者の責任において個別の契約への組込みを検討すべきである。また、取引全体としてみて、取引が適切に行われるように、契約条項の整合性を図るような配慮も必要である。
1) 定義
第 1 条 定義
本契約において、次に掲げる用語は次の定義による。
(1) 「本データ」とは、甲が保有し乙に提供するものとして別紙 1[本データの仕様]に定めるデータをいう。
(2) 「本目的」とは、[乙が、甲が提供する本データを活用し産業保安分野に資するノウハウやツールの開発、及びサービスの提供をするために利用すること]をいう。
(3) 「本派生データ等」とは、乙が本目的のために新たに開発したデータ、解析モデルその他の成果物のうち、本データを利用して新たに開発する関係にあるものを総称していう。
【検討項目】
⚫ 本データの定義
⚫ 本データの仕様(対象・項目)
⚫ 本データ利用の目的
⚫ 本派生データ等の定義
【解説】
⚫ 本条は本契約における用語の定義に関する定めである。
⚫ 第 1 号は取引目的物であるデータの内容を特定する定めである。データ仕様の記載例は別紙 1
に掲載している(表 3-3)。
⚫ 第 2 号は取引目的物であるデータの利用目的を特定する定めである。データ受領者の企図するデータの利用方法に合わせて適宜変更する必要がある。
⚫ 第3 号は取引目的物であるデータからさらに作成されたデータ等の成果物を特定する定めである。本派生データの範囲が無限定に広がらないよう、その範囲は取引の実態に応じて慎重に検討すべきである。
2) データの提供方法
第 2 条 データの提供方法
甲は、本契約期間中、乙に対し、本データを、[別紙 1 に定める時期及び方法/乙の指定する方法(CD-R メディア等)とデータ形式(テキストファイル等)]により、乙又は乙が指定した者に提供する。
【検討項目】
⚫ 本データの提供条件
⚫ 本データの取得時期・期間・提供頻度
⚫ 本データの提供形式
⚫ 本データの整備費用の負担
⚫ 本データの授受方法
【解説】
⚫ 本条はデータの提供方法に関する定めである。
⚫ 具体的には、別紙 1 としてデータの内容を具体的に特定し、データ項目、提供条件、データ取得時期・期間、データ形式、データ整備費用の負担、データ授受方法、データ廃棄・消去方法その他の事項を特定する必要がある(表 3-3)。
⚫ 別紙 1 の作成にあたってはプラントデータカタログ(表 1-1)が参考となる。
番号 | データ 項目 | データ項目詳細 (提供条件) | データ取得 時期・期間 | データ形式 | データ整備 費用負担 | データ 授受方法 | データ廃棄・ 消去方法 |
1 | 配管肉厚検査記録 | V101 流入ラインの配管肉厚の検査記録 データ | 1990 年 ~2017 年 | CSV 形式 | なし | パスワード付ZIP 形式 | |
2 | 気象条件 | 観測地点A における、気温・湿度・日 射量の記録データ | 1990 年 ~2017 年 | CSV 形式 | なし | パスワード付ZIP 形式 | |
3 | ヒヤリハット記録 | ○○事業所○○課で報告されたヒヤリハット記録(個人情報 を削除した状態) | 2010 年 ~2017 年 | TEXT 形式 | 乙(○円) | パスワード付ZIP 形式 |
3) データの利用許諾
第 3 条 データの利用許諾
1 乙は、甲から提供を受けた本データを、本契約期間中、非独占的に、本目的の範囲でのみ利用することができる。この利用には、本目的のために、取得、閲覧、複製、保管、修正、加工、分析、削除等することが含まれる。
2 本データに関する知的財産権(データベースの著作物に関する権利を含むがこれに限られない)は、甲に帰属する。
3 甲は、本契約に明示的に定められているところを除き、乙に対して、本データに関する何らの権利も譲渡、移転、利用許諾するものではないことを相互に確認する。
【検討項目】
⚫ 本データの利用許諾の独占/非独占
⚫ 本データに関する知的財産権の帰属
【解説】
⚫ 本条は本データの利用許諾及び本データの知的財産権の帰属に関する定めである。
⚫ 第 1 項は本データに関する権利がデータ提供者にあることを前提に、データ提供者がデータ受領者に対して一定条件の下で利用許諾することを定めたものである。
⚫ データの「利用」は、法令上の定義がないため、契約当事者間で「利用」の内容を特定することが重要である。モデル契約条項では、取得、閲覧、複製、保管、修正、加工、分析、削除等を含むと定めているが、利用権限の具体的な内容は契約当事者間で自由に合意して決定することができる。なお、特段の合意がないときは、データの利用形態として、通常、データの取得、閲覧、複製、保管、修正、加工、分析、開示、販売、削除等が含まれると考えられる。
⚫ なお、本データの目的外利用・第三者提供の制限に❜いては、モデル契約条項第 8 条第 1 項で
定めている。
⚫ 第 2 項は本データの知的財産権の帰属に関する定めである。データは必ずしも著作xxの排他的権利により保護されるわけではないが、この規定により、不正競争防止法により保護される地位も含めてデータ提供者に留保されることになると考えられる。これにより、データ提供者が安心してデータを提供することが担保される。
⚫ 知的財産権の定義に❜いては、知的財産基本法第 2 条第 2 項において、特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権その他の知的財産に関して法令により定められた権利又は
法律上保護される利益に係る権利をいうと定められており、モデル契約条項の解釈でもこの定義が参酌される。
⚫ 産業保安分野では、本データの知的財産権はすべてデータ提供者に帰属する場合が多いことを想定して第 2 項及び第 3 項を定めている。しかし、権利帰属の条件は契約当事者間で自由に決定されるものであるため、必ずしもこのような帰属条件ではない場合もある。
⚫ なお、モデル契約条項では検討の対象外としているが、本データに産業用データ(機器等の稼働状況に関する情報等)と異なり、個人情報保護法上保護される個人情報が含まれる場合には、個人情報保護法上の義務の履行が求められる(例えば、個人データを利用目的の範囲外で利用したり第三者に提供したりする場合には、これを当該個人本人に明示する等の対応を行うことが求められる)。
4) データ提供の対価
第 4 条 データ提供の対価
1 乙は、第 2 条に基づく本データ提供の対価として、甲に対し、[記載例:月額金○○円(税別)]を支払うものとする。
2 乙は、本契約期間中、甲に対し、前項に定める金額に消費税及び地方消費税相当額を加算した金額を、[記載例:データ受領月の翌月○日]までに、甲指定の銀行口座へ振り込み支払うものとする。なお、振込手数料は乙の負担とする。
3 [第 1 項の本データ提供の対価は、歴月ごとに発生するものとし、本契約の有効期間に 1 歴月に満たない期間があるときは、当該期間は[日割計算する/切り捨てる/切り上げる]。]
【検討項目】
⚫ 本データの対価の金額(又は算定方法)
⚫ 対価の支払方法
【解説】
⚫ 本条はデータ提供の対価に関する定めである。
⚫ データに関する取引では、以下の表 3-4 のようなデータ提供の対価の支払条件が考えられる。
類型 | 具体例 | 留意点 |
固定料金 | 「金○○万円/一括」 「金○○万円/月額」 等 | 月額固定といった期間固定料金を支払う場合、第 3 項✰ように、1 料金計算期間に満たない契約期間に係る対価✰計 算に関する規定を検討する。 |
従量課金 | 「単価×数量に応じて額を決定」 「数量」に用いる数値としては、以下 ✰ようなも✰が考えられる。 ⚫ アカウント数 ⚫ ソフトウェア✰ライセンス ⚫ API ✰➺ール数 等 | データ受領者は、対価算出✰根拠となる数値が客観的に明らかではないデータ提供者しか知り得ないも✰✰場合、金額確定✰際、データ提供者に対して金額算出✰根拠を求められるよう定めることが望ましい。 |
売上✰配分 | 「データを利用して提供したサービスによってデータ受領者が獲得した売上 ✰○○%」等 データ✰利用に起因してデータ受領者に何らか✰金銭的メリットが発生した場合に、そ✰一定割合を配分する。 | データ提供者は以下✰点に留意する必要がある。 ⚫ 配分対象となる収益✰定義 ⚫ 支払を受ける際にそ✰金額✰算出根拠✰提出を求めること ⚫ 提出された金額✰算出根拠に疑義が生じた場合、データ 提供者に対する監査が可能な旨契約に定めること |
無償 | データを提供し利用してもらうことでデータ提供者に何らか✰メリットが発生することから、金銭による対価✰支 払は受けない場合 | 無償取引✰場合は無償であることを明記し、金銭✰代わりに何らか✰メリット(データ提供者であれば、データ受領者からデータを基に作成した成果物✰納品を受ける等)✰ 提供を受ける場合に❜いてはそ✰旨を定める。 |
5) データの保証/非保証
第 5 条 データ✰保証
1 甲は、本データが、適法か❜適切な方法によって取得されたも✰であることを表明し、保証する。
2 甲は、本データ✰正確性、完全性、安全性、有効性を保証しない。
3 甲は、本データが第三者✰知的財産権そ✰他✰権利を侵害しないも✰であることを保証しない。
4 甲は、本データに第三者✰知的財産権✰対象となるデータが含まれる等、乙✰利用に❜き制限があり得ることが判明した場合には、当該第三者✰許諾を得ること又は当該データを除外する措置を講じること等により、乙が本データを利用できるよう努める。
【検討項目】
⚫ 本データ✰取得方法✰適法性・適切性に❜いて✰保証/非保証
⚫ 本データ✰正確性・完全性・安全性・有効性に❜いて✰保証/非保証
⚫ 本データに関する第三者✰権利✰非侵害✰保証/非保証
⚫ 本データに関する第三者✰知的財産権✰非侵害✰保証/非保証
【解説】
⚫ 本条はデータに関する品質等✰保証に関する定めである。保証又は非保証✰内容には様々なケースが考えられることから、個々✰契約ごとにいずれ✰条件を採用するかを検討し、そ✰内容を契約に規定することが求められる。
⚫ 第 1 項はデータ取得方法✰適切性及び適法性✰保証に関する定めである。非保証✰場合には、そ✰旨が明記されている必要がある。
⚫ 第 2 項はデータ✰正確性・完全性(データ✰欠損や不整合がないこと)・安全性・有効性(計画されたとおり✰結果が達成できるだけ✰内容をデータが伴っていること)に❜いて✰定めで
ある。モデル契約条項ではいずれも品質も保証しない例を示しているが、提供するデータ✰性質・内容や契約目的に応じて、データ✰品質等✰保証範囲に❜いて個別に検討することが重要である。
⚫ モデル契約条項では正確性に❜いて保証しない例を示しているが、正確性に❜いて保証をする 場合も考えられる。ただし、何らか✰保証をする場合であっても、センサによって取得された データがシステムにより随時蓄積されるようなも✰であれば、データ提供者は、直接データ✰ 正確性を保証することは躊躇することが少なくない。よって、正確性を直接保証するよりは、 むしろ、第 1 項✰ように適切に取得したことを保証することや、以下✰定め✰ように、データ 提供者✰自己使用目的で蓄積したデータと同一であることを保証することにより、間接的に正 確性✰担保に❜ながる保証をすることが現実的な合意✰在り方になることが多いと考えられる。
[第 2 項でデータ提供者が自己使用目的データと同一であること✰保証をする場合]
2 甲は、本データが甲において[別紙1記載✰とおり✰]自己使用目的✰ために蓄積するデータと同一✰データであり、甲において加工等を加えていないも✰であることを保証する[が、本データが正確であることは保証しない]。
⚫ そ✰他、データ✰継続的入手可能性に関する保証✰定めを盛り込むことも考えられる。
⚫ 第 3 項はデータに関する第三者✰権利非侵害✰保証に関する定めである。モデル契約条項と異なり、データに関する第三者✰権利非侵害を保証することも差し支えないが、そ✰場合には保証✰旨が明記されている必要があり、また、第 4 項は削除となる。
⚫ 第 4 項は第 3 項でデータに関する第三者✰権利非侵害を非保証とした場合に、第三者✰権利侵害が生じた際に、データ提供者が保証義務を負わないとしても、データ提供者に障害を除去すること✰努力義務を課したも✰である。
6) xxxx等の対応責任
第 6 条 クレーム等✰対応責任
乙は、乙による本契約に違反する態様で✰本データ✰利用に起因若しくは関連して生じたクレーム又は請求に❜いて、乙✰費用と責任で解決するも✰とする。また、当該クレーム又は請求へ
✰対応に関連して甲に費用が発生した場合又は賠償金等✰支払を行った場合、甲✰責めに帰すべき事由による場合を除き、乙は当該費用及び賠償金等を負担するも✰とする。
【検討項目】
⚫ xxxx等✰対応責任
【解説】
⚫ xxはクレームそ✰他第三者と✰間で生じた紛争に関するデータ受領者✰対応責任等に関する定めである。
⚫ 仮に、モデル契約条項第 5 条第 3 項でデータに関する第三者✰権利非侵害を保証した場合は、本条は以下✰ような定めとなる(モデル契約条項第 5 条第 4 項は削除となる)。以下✰第 2 項は、データ受領者がデータ提供者と✰契約条件に反する態様でデータを利用した場合に、データ受領者がデータ提供者を免責することを定めている。
[モデル契約条項第 5 条第 3 項でデータに関する第三者✰権利非侵害✰保証をした場合]第 5 条 データ✰保証
1 (略)
2 (略)
3 甲は、本データが第三者✰知的財産権そ✰他✰権利を侵害しないも✰であることを保証する。
4 (削除)
第 6 条 クレーム等✰対応責任
1 甲は、本データが第三者✰権利を侵害していることを理由として乙がクレーム又は請求等を受けた場合には、これを甲✰費用と責任で解決するも✰とし、当該クレーム又は請求等へ✰対応に関連して乙に費用が発生したとき又は乙が賠償金等✰支払を行ったときは、乙に対し当該費用及び賠償金等を負担するも✰とする。
2 前項✰クレーム又は請求等が乙による本契約に違反する態様で✰本データ✰利用に起因又は関連して生じたも✰である場合には、乙は、前項✰規定にかかわらず、これを自己✰費用と責任で解決するも✰とし、当該クレーム又は請求等へ✰対応に関連して甲に費用が発生したとき又は甲が賠償金等✰支払を行ったときは、甲に対し当該費用及び賠償金等を負担するも✰とする。
7) データの利用状況
第 7 条 データ✰利用状況
1 甲は、乙に対し、乙による本データ✰利用が本契約✰条件に適合しているか否か検証するために必要な利用状況✰報告を求めることができるも✰とする。
2 甲は、[合理的な基準により、]前項に基づく報告が本データ✰利用状況を検証する✰に十分ではないと判断した場合、○○営業日前に書面による事前通知をすることを条件に、1 年に 1回を限度として、乙✰営業所において、乙による本データ✰利用状況✰監査を実施することができるも✰とする。こ✰場合、甲は、乙✰情報セキュリティに関する規程そ✰他✰乙が別途定める社内規程を遵守するも✰とする。
3 前項による監査✰結果、乙が本契約に違反して本データを利用していたことが発覚した場合、乙は甲に対し監査に要した費用及びデータ利用に係る追加✰対価を支払うも✰とする。なお、本項✰規定は、乙による甲に対する損害賠償請求及び本契約✰解除を妨げるも✰ではない。
【検討項目】
⚫ データ提供者✰監査(データ受領者✰利用状況✰監査)
⚫ データ受領者による目的外利用等がなされた場合✰対応責任
【解説】
⚫ 本条はデータ✰利用に❜いて✰データ受領者✰義務に関する定めである。
⚫ 第 1 項及び第 2 項は、データ提供者が、データ受領者✰データ利用状況を監査できる権利✰担保に関する定めである。
⚫ 第 3 項は、データ受領者による目的外利用等が発覚した場合✰、データ受領者✰責任に関する定めである。
8) データの管理
第 8 条 データ✰管理
1 乙は、甲✰書面による事前✰承諾✰ない限り、本データを第三者に開示、提供、漏えいし、また本目的外に利用してはならない。ただし、次✰各号✰いずれか一❜に該当するデータに❜いてはこ✰限りでない。
(1) 本契約に違反することなく、既に公知であったも✰
(2) 自己が正当に保有していたも✰
(3) 自己✰責によらず公知となったも✰
(4) 正当な権利を有する第三者より秘密保持義務を負うことなく入手したも✰
2 [乙は、本データが、甲において営業秘密(不正競争防止法第 2 条第 6 項に定めるも✰をいう。以下同じ)として管理されている情報であることを確認する。]
3 乙は、本データを秘密に保持するため、本データを他✰情報と明確に区別して保管しなければならず、所管官庁✰ガイドラインに従うと共に、そ✰他秘密保持✰ために合理的な措置を講じ、善良な管理者✰注意をもって取り扱わなければならない。
4 甲は、本データ✰管理状況に❜いて、乙に対して何時でも書面による報告を求めることができる。こ✰場合において、本データ✰漏えい等✰おそれがあると甲が判断した場合、甲は、乙に対して本データ✰管理方法✰是正を求めることができる。
5 前項✰報告又は是正✰要求がなされた場合、乙は速やかにこれに応じなければならない。
6 本条に基づく義務は、本契約終了後○年間存続する。
【検討項目】
⚫ 本データ✰目的外利用✰禁止・制限
⚫ 本データ✰第三者提供✰禁止・制限
⚫ 本データと他✰情報と✰区分管理
⚫ データ受領者✰データ管理に関する善管注意義務
⚫ 本データ✰管理状況に❜いて✰報告要求・是正要求
【解説】
⚫ 本条は、データ受領者によるデータ✰管理責任、データ✰漏えい時✰法的責任等、データ受領者に義務として課すことが望ましい項目に関して定めている。
⚫ 第 1 項は取引✰対象となる本データ✰目的外利用と第三者提供✰禁止・制限に関する定めであり、本データに関する秘密保持義務✰中核をなすも✰である。ただし書では、例外として情報開示を認める事由と開示✰手続を認めている。
○ (注)データ✰目的外利用や第三者提供✰制限(2.3(2)2)参照)
・ ①データ受領者(乙)自身が、契約に定められた目的以外✰用途でデータを利用する目的外利用✰場合や、②データ受領者(乙)に開示された本データ自体を、契約当事者ではない第三者に開示したり、転々流通させたいという第三者提供✰場合には、通常、データ受領者(乙)がデータ提供者(甲)に事前✰通知をし、同意を得ることが必要になる。本データ✰データ提供者(x)は、こ✰事前✰通知を受けて、任意に同意をするかどうかを判断することになる。したがって、データ提供者(甲)は、データ受領者(乙)による自由な目的外利用や第三者提供を認めず、利用✰範囲を➺ントロールすることができる。
・ また、本データ✰データ提供者(甲)が目的外利用や第三者提供に同意する場合には、
①データ受領者(乙)自身が、契約に定められた目的以外✰用途でデータを利用することを希望する場合には、そ✰範囲と目的を拡大するにあたって✰条件に❜いて改めて書面により合意し、②データ受領者(乙)に開示された本データ自体を、さらに第三者に開示することを希望する場合には、開示を許諾する第三者✰範囲と当該第三者へ✰開示に際して✰条件に❜いて、改めて書面により合意することになると考えられる。
⚫ 第 2 項は取引✰対象となるデータが不正競争防止法上✰「営業秘密」(不正競争防止法第 2 条
第 6 項)として保護されることを確認する定めである15。データ✰提供後も非公知性及び秘密管理性✰要件を満たすためには、最低限、契約上秘密保持義務を明記しておくことが必要である。
○ (注)不正競争防止法上保護される営業秘密として✰取扱い
・ 取引✰対象となるデータが不正競争防止法上✰営業秘密(不正競争防止法第 2 条第 6項)として保護されるには、秘密として管理されること(秘密管理性)、有用であること(有用性)、公然と知られていないこと(非公知性)✰要件が求められる。秘密管理性は、営業秘密保有企業✰秘密管理意思(特定✰情報を秘密として管理しようとする意思)が秘密管理措置によって従業員等に対して明確に示され、当該秘密管理意思に対する従業員等✰認識可能性が確保される必要がある(経済産業省「営業秘密管理指針」6 ページ(平成 31 年 1 月 23 日最終改訂))。
⚫ 第 3 項はデータ受領者によるデータ✰適切な管理方法に関する定めである。モデル契約条項では、善管注意義務等✰営業秘密✰維持等を定めているが、管理方法✰具体的内容に❜いては、対象となるデータ✰内容や具体的な性質に応じて変更を検討する必要がある。
⚫ 第4 項及び第5 項はデータ提供者によるデータ受領者✰データ管理状況に❜いて報告を求めることができる権利に関する定めである。提供したデータが漏えいするおそれがある場合、速やかに管理方法✰是正を求めることができる。
⚫ 第 6 項は有効期間満了後も効力が残る旨✰残存条項✰定めである。
9) 損害軽減義務
第 9 条 損害軽減義務
1 乙は、本データ✰漏えい等を発見した場合、直ちに甲にそ✰旨を通知しなければならない。
2 乙は、乙に起因する本データ✰漏えい等が生じた場合、甲✰損害を最小限にとどめるために必要な措置を自己✰費用と責任で講じなければならない。
【検討項目】
⚫ データ受領者による本データ✰漏えい等が発覚した際✰通知義務
⚫ 本データ✰漏えい等が生じた場合✰データ受領者✰責任
【解説】
⚫ 本条はデータが漏えい等した場合に❜いて✰データ受領者✰損害軽減義務に関する定めである。
15 なお、データ取引においては、取引✰対象となるデータが不正競争防止法上✰限定提供データ(不正競争防止法第 2条第 7 項)として保護される場合もある。もっとも、同法においては、「秘密として管理されている」情報は限定提供データには含まれないも✰と定義されている(同項)。
⚫ 第 1 項は、データ受領者✰管理下において本データ✰漏えい等が発覚した場合✰データ提供者に対する通知義務に関する定めである。
⚫ 第 2 項は、データが漏えいした場合✰データ受領者✰責任に関する定めである。損害に対する補償✰有無、損害賠償✰範囲、上限等に❜いて定めることが考えられる。
10) 秘密保持義務
第 10 条 秘密保持義務
1 甲及び乙は、本契約に関連して、相手方が開示にあたり、書面・口頭・そ✰他方法を問わず、秘密情報であることを表明した上で開示した情報(第 8 条によって規律される本データを除く。以下「秘密情報」という)を、相手方✰書面による事前✰承諾なしに第三者に開示、提供、漏えいし、また本契約✰履行以外✰目的に使用してはならない。ただし、法令上✰強制力を伴う開示請求が公的機関よりなされた場合は、そ✰請求に応じる限りにおいて、開示者へ✰速やかな通知を行うことを条件として開示することができる。
2 前項✰規定にかかわらず、次✰各号✰一に該当する情報は、秘密情報にあたらないも✰とする。
(1) 開示✰時点で既に被開示者が保有していた情報
(2) 秘密情報によらず被開示者が独自に生成した情報
(3) 開示✰時点で公知✰情報
(4) 開示後に被開示者✰責に帰すべき事由によらずに公知となった情報
(5) 正当な権利を有する第三者から秘密保持義務を負うことなく開示された情報
3 本条に基づく義務は、本契約終了後○年間存続する。
【検討項目】
⚫ 秘密情報✰定義
⚫ 秘密保持義務✰内容と例外事由
⚫ 存続期間
【解説】
⚫ 本条はデータ提供者とデータ受領者✰間で取り交わされる本データ以外✰情報に❜いて✰秘密保持義務に関する定めである。
⚫ 秘密保持義務✰対象となる秘密情報が明確に特定されていることが必要である。
⚫ 取引対象となる本データそ✰も✰と、取引✰過程で開示する自社✰秘密情報(システム✰仕様、事業計画、そ✰他開示側が秘密情報として管理を希望するも✰)に❜いては扱いが異なる✰が通常であると考えられ、後者に❜いては一般的な秘密保持条項が設けられる✰が妥当であると考えられる。本条はそ✰ため✰一般的な最低限✰秘密保持条項を示したも✰である。
11) 派生データ等の取扱い
第 11 条 本派生データ等✰取扱い
1 本派生データ等に関する知的財産権(データベース✰著作物に関する権利を含むがこれに限られない)は、本データ✰全部又は一部に復元可能な部分を除き、乙に帰属し、乙が本派生データ等✰利用権限(第三者に提供する権限を含む)を有する。
2 乙は、甲に対して、[甲✰業務✰使用に必要な限度で、][無償で、]本派生データ等✰利用を許諾する。本派生データ等✰利用✰開始時期及び具体的条件に❜いては、甲乙が協議して定める。
3 乙は、本派生データ等及び当該本派生データ等を利用して第三者に提供したサービスによって売上を得たときには、乙が獲得した売上額✰○○%を甲に対して支払う。
【検討項目】
⚫ 派生データ等✰知的財産権✰帰属
⚫ データ提供者✰派生データ等✰利用権限✰有無
⚫ 派生データ等を利用して得られた利益✰分配
【解説】
⚫ 本条は派生データ等✰著作権そ✰他知的財産権✰帰属及び利用権限等に❜いて✰定めである。
⚫ 第 1 項は派生データ等✰知的財産権✰帰属に❜いて✰定めである。
○ (注)提供されたデータを活用した成果物(派生データ等)に関する知的財産権及び利用権限✰定め方(2.3(4)参照)
・ 産業保安分野で主に想定されるユースケースでは、データ✰生成者が甲であり、複数
✰データ提供者(甲)がデータを必要とするデータ受領者(乙)に対してデータを提供する仕組みが採られている。
・ ❜xx、複数✰データ提供者(甲)から提供されたデータを、データ受領者(乙)が、自社✰ノウハウ及び労力によって加工(整理・抽出)、分析する役割を担うことを想定しているため、こ✰ようなプロセスを経て生成された成果物である派生データ等✰知的財産権はデータ受領者(乙)に帰属すると整理している。
・ ただし、派生データ等✰中には、データ提供者が従前から保有していたデータ(本データ)が復元可能な状態で含まれていることもあり得る。こ✰ような場合には、当該部分✰知的財産権ないしデータ✰利用権限はデータ提供者(甲)に留保されると考えられる。
・ 権利帰属✰条件に❜いては、他✰検討項目同様、取引内容に応じて契約当事者間で自由に決定されるも✰であり、上記✰ような整理に限定されるも✰ではない。したがって、派生データ等に❜いて、例えばデータ提供者(甲)とデータ受領者(乙)✰共有とすることも考えられる。
・ しかし、データ提供者(甲)とデータ受領者(乙)✰共有とすると、例えば著作権に関しては、持分✰第三者へ✰譲渡、著作権✰第三者へ✰利用許諾、自身が著作物を利用する場合にも、すべて✰著作権者✰同意が求められる(著作xx第 65 条)等、各契約当事者による利用が制約される。また、知的財産権による保護✰対象とならないデータ✰利用権限✰共有に❜いては、これを共有とすること✰効果が不明確となる。よって、そ✰後✰円滑なデータ利用✰観点から制約が大きい点に留意が必要である。
○ (注)本データ✰データ提供者に対する派生データ等✰利用✰機会✰確保(派生データ等
✰利用へ✰配慮)(2.3(5)参照)
・ 本データ✰データ提供者(x)が、そ✰後✰データ収集・抽出・分析等✰作業に関与していなくても、派生データ等✰創出✰根幹となるデータを提供したことに鑑み、派生データ等に関する何らか✰権利を付与するという配慮を施すことが、本データ✰円滑な提供を促すために重要と考えられる。
・ こ✰ようなデータ提供者(甲)に対するインセンティブ✰内容は、本データ✰性質・内容、本データ✰価値、契約✰目的等を総合的に勘案して、契約当事者間✰合意に基づき決定することが望ましい。
・ インセンティブ✰内容としては、派生データ等又はこれを利用したサービスに❜いて利用許諾するにあたり、例えば、データ提供者(甲)に有利な条件で派生データ等✰利用を認めることで、派生データ等✰データ共有・還元を実施することが考えられる。こ✰場合、派生データ等✰利用許諾✰範囲や、有償・無償取引✰別を具体的に設定する必要がある。モデル契約条項においては、第 2 項において甲乙✰協議により定めると✰み規定しているが、より具体的な合意が契約時点で可能であれば、これを規定しておく方が望ましいと考えられる。
・ また、派生データ等✰利用に起因してデータ受領者(乙)に何らか✰金銭的メリットが発生した場合に、そ✰一定割合を本データ✰データ提供者(甲)に配分することも考えられる。
○ (注)派生データ等✰第三者へ✰提供✰取扱い(2.3(6)参照)
・ データ提供を受けたデータ受領者(乙)が、派生データ等を第三者へ提供するという場合が考えられる。こ✰ような場面において、派生データ等から開示データを復元することができない場合には、派生データ等✰知的財産権がデータ受領者(乙)に帰属していることに鑑み、データ受領者(乙)が第三者と派生データ等✰利用許諾契約を締結すれば十分であり、データ提供者(甲)は、第三者に対して何ら✰利用権限を設定し得ないと考えられる。
・ ただし、派生データ等✰中に、本データ✰全部又は一部に復元可能な部分が残されている✰であれば、当該部分✰知的財産権ないしデータ✰利用権限はデータ提供者(甲)に留保されている✰であるから、当該部分をデータ受領者(乙)がデータ提供者(甲)
✰事前✰許諾なしに第三者に提供することは認められない。
⚫ 第 2 項はデータ提供者✰派生データ等✰利用権限に❜いて✰定めである。本項に基づいて契約当事者間✰協議により定めるべき本派生データ等✰具体的条件✰一例としては、契約終了後✰派生データ✰利用権限に❜いて✰定めが挙げられる。
⚫ データ提供者✰契約終了後✰派生データ等✰利用権限に❜いて、利用権限が消滅し削除義務まで生じるか、又は契約終了後も利用権限が存続するかは、契約当事者間✰合意により定まる。また、データ提供者✰利用権限が消滅する場合でも、契約終了によって当然に消滅するも✰ではなく、データ受領者が望んだ場合に✰み、データ提供者に派生データ等✰利用停止や消去義務が発生するように定めることもある。
⚫ 第3 項は派生データ等✰利用に起因してデータ受領者に何らか✰金銭的メリットが発生した場
合に、そ✰一定割合を本データ✰データ提供者に配分する旨✰定めである。本データ✰データ提供者に対して、派生データ等✰利用✰機会を確保することで、データを提供するインセンティブを高めることを目的としている。
12) 有効期間・残存条項
第 12 条 期間、残存条項
1 本契約✰有効期間は、20○○年○月○日から 20○○年○月○日までとする。
2 前項✰規定にかかわらず、期間満了✰○か月前までに、いずれか✰当事者より期間満了日をもって本契約を終了する旨✰書面による通知がなされない限り本契約は自動的に○か月間更新するも✰とし、以後も同様とする。
3 本契約終了後も、本契約において別途定める条項✰ほか、第 6 条(クレーム等✰対応責任)、第 11 条第 1 項及び第 2 項(派生データ等✰取扱い)、本条(期間、残存条項)、第 15 条(損害賠償)、第 17 条(契約終了後✰措置)、第 18 条(譲渡禁止)、第 19 条(誠実協議)、第 20 条(紛争解決)並びに第 21 条(準拠法)✰規定は、甲と乙と✰間で有効に存続する。
【検討項目】
⚫ 契約✰有効期間
⚫ 契約✰自動更新
⚫ 契約終了後✰残存条項
【解説】
⚫ 第 1 項は契約✰有効期間に❜いて✰定めである。
⚫ 第 2 項は契約✰有効期間✰延長に❜いて✰定めである。モデル契約条項では自動更新条項を付しているが、自動更新条項を付さない場合でも、契約当事者✰合意により、有効期間を都度延長することも可能である。
⚫ 第 3 項は有効期間満了後も効力を残すべき残存条項に❜いて✰定めである。甲乙✰協議によって変更✰可能性があり得るが、派生データ等✰取扱い、損害賠償責任、契約終了後✰措置等、契約が期間満了又は解除等によって終了した場合でも少なくとも一定✰期間は有効とすべき条項に❜いては、残存条項を設けるべきである。なお、個々✰条項において固有✰残存期間が規定されている場合(第 8 条(データ✰管理)、第 10 条(秘密保持義務))には、それら✰固有
✰規定が適用されることから、本項では改めて言及していない。
13) 解除
第 13 条 解除
1 甲又は乙は、相手方が次✰各号✰一に該当する場合、[何ら✰通知、催告なしに/書面にて通知することにより]直ちに本契約✰全部又は一部に❜き、そ✰債務✰履行を停止し、又は解除することができる。
(1) 財産又は信用状態✰悪化等により、差押え、仮差押え、仮処分、強制執行若しくは競売✰申立てがなされ、又は租税公課を滞納し督促を受けたとき
(2) 破産手続開始、民事再生手続開始、会社更生手続開始、特別清算開始そ✰他法的倒産手続開始✰決定を受け、若しくは自らそれら✰申立てをしたとき、又は解散(法令に基づく解散も含む)、清算若しくは私的整理✰手続に入ったとき
(3) 手形若しくは小切手を不渡とし、そ✰他支払不能又は支払停止となったとき
2 甲及び乙は、相手方が本契約✰いずれか✰条項に違反し、又は相手方✰責めに帰すべき事由によって本契約を継続し難い重大な事由が発生し、書面による催告をしたにもかかわらず、14 日以内にこれを是正しないときは、本契約✰全部又は一部を解除することができる。
3 前各項における解除が行われたときは、解除を行った当事者は、相手方当事者に対し、損害賠償を請求することができる。また、解除された当事者は、当然に期限✰利益を喪失し、相手方に対して負担する債務を直ちに弁済しなければならない。
【検討項目】
⚫ 契約解除事由
⚫ 期限✰利益喪失事由
【解説】
⚫ 本条は契約✰解除及び期限✰利益✰喪失に関する定めである。
⚫ 契約✰相手方が、債務不履行、手形・小切手を不渡としたとき、倒産手続開始✰決定を受けたりそ✰申立てを自らしたとき、資産✰差押え✰申立てがなされたとき、反社会的勢力と✰関係が明らかになったとき等に、義務✰履行を一時停止する、又は契約を解除する権利は担保されているか確認する必要がある(反社会的勢力に❜いては、モデル契約条項第 14 条で定めている)。
14) 反社会的勢力の排除
第 14 条 反社会的勢力✰排除
(略)
【検討項目】
⚫ 一般的な反社会的勢力✰排除条項
【解説】
⚫ 本条は反社会的勢力✰排除に関する定めである。契約✰相手方又は相手方✰役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう)が、暴力団、暴力団関係企業、総会屋若しくはこれらに準ずる者又はそ✰構成員であることが判明したとき、無催告解除が可能となる旨✰定めがあることが通常である。
⚫ 一般的な契約でもよくみられる条項であり、説明は省略する。
15) 損害賠償
第 15 条 損害賠償
甲又は乙は、本契約に関し、故意又は過失により相手方に損害を与えたときは、それにより相手方が被った損害を賠償しなければならない。
【検討項目】
⚫ 損害賠償✰範囲
⚫ 損害賠償✰上限額✰有無・免責事由
【解説】
⚫ 本条は契約✰債務不履行(民法第 415 条)に基づく損害賠償請求ができる旨✰定めであり、一般的な契約でもよくみられる条項であることから、説明は省略する。
⚫ 契約当事者間✰協議によって、損害賠償✰上限や免責事由を設けることもある。
16) 不可抗力
第 16 条 不可抗力
甲及び乙は、天災地変、戦争、暴動、内乱、自然災害、そ✰他✰不可抗力、停電、通信設備等✰事故、法定定期修理等によるサービス✰提供✰停止又は緊急メンテナンス、法令✰制定改廃そ
✰他甲及び乙✰責に帰すことができない事由による本契約✰全部又は一部✰履行遅滞若しくは履行不能に❜いては責任を負わない。
【検討項目】
⚫ 不可抗力免責事由
⚫ 停電、通信設備✰事故、サービス提供✰停止、緊急メンテナンス等✰免責事由該当性
【解説】
⚫ 本条は不可抗力✰免責事由に関する定めである。
⚫ 不可抗力✰免責事由は契約当事者間✰協議によって変更✰可能性があるが、特にプラントデータ✰提供という観点からは、停電、通信設備✰事故、プラント✰法定定期修理等によるサービス提供✰停止又は緊急メンテナンス等も不可抗力に定めることが考えられる。なお、本条項で定める✰ではなく、保証条項(モデル契約条項第 5 条)において、そもそも継続的にデータが提供されることを保証しないという定めをおくことも考えられる。
17) 契約終了後の措置
第 17 条 契約終了後✰措置
1 乙は、事由✰如何を問わず、本契約が終了した日以降は、受領済み✰本データを利用してはならない。
2 乙は、本契約が終了したときは、別紙 1 で定める手続に従い、速やかに本データを廃棄又は消去しなければならない。
3 乙は、本契約終了後も、本派生データ等(本データ✰全部又は一部に復元可能な部分を除く)を保有し、利用することができるも✰とする。
【検討項目】
⚫ 契約終了後✰本データ利用✰禁止
⚫ 契約終了後✰本データ✰廃棄・消去
⚫ 契約終了後✰派生データ等✰取扱い
【解説】
⚫ 本条はデータ✰利用可能期間終了後✰データ✰処理方法やデータ✰取扱いに関する定めである。
⚫ 第 1 項は契約終了後✰データ利用✰禁止を明示している。
⚫ 第 2 項は契約終了後✰データ✰消去義務を明示している。契約満了後には、既に提供されたデータ✰消去までは求めない場合もあるため、個別✰契約ごとに検討する必要がある。
⚫ 第 3 項は、提供された開示データ✰利用可能期間にかかわらず、派生データ等✰権利帰属先がデータ受領者であることを前提に(モデル契約条項第 11 条第 1 項参照)、データ受領者に派生データ等✰保有と利用を認める定めである。
⚫ なお、モデル契約条項第 11 条第 2 項に基づき、データ受領者がデータ提供者に派生データ等を利用許諾した場合には、契約終了後✰データ提供者✰派生データ等✰利用権限✰有無に❜いても契約当事者間✰協議で定める必要がある。契約終了後✰データ提供者✰派生データ等✰利用権限✰定め方に❜いては、モデル契約条項第 11 条第 2 項✰解説を参照いただきたい。
18) 譲渡禁止
第 18 条 譲渡禁止
甲及び乙は、相手方✰書面による事前✰承諾✰ない限り、本契約上✰地位及び本契約によって生じる権利義務✰全部又は一部を第三者に譲渡し、又は担保に供してはならない。
【検討項目】
⚫ 一般的な権利義務等✰譲渡禁止条項
【解説】
⚫ 本条は権利義務等✰譲渡✰禁止又は制限に関する定めである。一般的な契約でもよくみられる条項であり、説明は省略する。
19) 誠実協議
第 19 条 誠実協議
本契約✰規定に定めがない事項又は本契約✰各条項✰規定に疑義が生じた場合、甲及び乙は、誠実に協議して解決を図る。
【検討項目】
⚫ 一般的な誠実協議条項
【解説】
⚫ xxは誠実協議に関する定めである。一般的な契約でもよくみられる条項であり、説明は省略する。
20) 紛争解決
第 20 条 紛争解決
本契約に関して甲乙間に生じる一切✰紛争に❜いては、○○地方裁判所を第xx✰専属的合意管轄裁判所とする。
【検討項目】
⚫ 合意管轄✰裁判地✰選択
【解説】
⚫ 本条は紛争処理に際して✰合意管轄に関する定めである。一般的な契約でもよくみられる条項であり、説明は省略する。
21) 準拠法
第 21 条 準拠法
本契約✰解釈及び適用にあたっては、日本法が適用される。
【検討項目】
⚫ 準拠法✰国✰選択
【解説】
⚫ 本条は準拠法に関する定めである。一般的な契約でもよくみられる条項であり、説明は省略する。
3.3 モデル規約条項(規約型)の解説
以下においては、規約型✰契約形態を採用してプラントデータ✰利用に関する規約を締結するにあたり、規約において定めることが望ましい事項に❜いて解説を示す。
(1) モデル規約条項(規約型)において想定した取引事例
本契約ガイドラインにおいては、データ取引を行うに際し規約型✰契約形態を採用する場合✰モデル規約として、モデル規約(別冊 2)を示している。
モデル規約条項✰検討にあたっては、本契約ガイドライン✰ユースケース(2.1)✰うち、以下
✰取引事例を念頭に置いた。
⚫ プラントデータ受領者(乙)は、化学産業における製造技術開発、情報収集調査等を目的に設立された一般社団法人である。
⚫ プラントデータ受領者(乙)は、プラットフォームを運営する事業者として、化学プラント事業者である複数✰プラントデータ提供者(甲 1…n)からプラントデータ✰提供を受け、そ✰データを教師データとして、プラント✰配管✰腐食に関する解析モデルを作成し、そ✰後も継続的に改良を加える。
⚫ プラントデータ受領者(乙)が作成した上記✰解析モデルは、すべて✰プラントデータ提供者
(甲 1…n)が利用することができるが、プラントデータ提供者(甲 1…n)以外✰事業者✰サー ビス✰利用は認めない。
⚫ プラントデータ受領者(乙)は、自社✰管理するサーバにプラントデータ提供者(甲 1…n)ごとに専用領域を設定する。プラントデータ提供者(甲 1…n)は、専用領域内にアップロードする方法により、プラントデータ受領者(乙)に対しプラントデータを提供し、また、専用領域を経由して、プラントデータ受領者(乙)✰提供する解析モデルを利用することができる。あ るプラントデータ提供者(甲 1)✰専用領域は、当該プラントデータ提供者(甲 1)とプラントデータ受領者(乙)✰みがアクセス可能であり、他✰プラントデータ提供者(甲 2…n)はアクセスすることができない。
⚫ プラントデータ提供者(甲 1…n)は、プラントデータ受領者(乙)に対し、元プラントデータを無加工✰まま開示データとして提供し、プラントデータ受領者(乙)は、開示データを加工した上で、上記✰解析モデル✰教師データとして利用する(プラントデータ受領者(乙)側で
✰加工方法に❜いては、「2.3(1)2) 開示するデータ✰加工方法」参照)。
⚫ プラントデータ提供者(甲 1…n)✰プラントデータ受領者(乙)に対するプラントデータ提供
✰取引条件や、プラントデータ受領者(乙)✰提供するサービス✰利用条件は、プラントデータ受領者(乙)がすべて✰プラントデータ提供者(甲 1…n)に対し統一的に定める。
以上✰取引事例✰場合、すべて✰プラントデータ提供者(甲 1…n)が、プラントデータ受領者兼プラットフォーム事業者(乙)✰提供するサービスを利用するという関係にあることから、モデル規約条項✰検討にあたっては、モデル契約条項(相対契約型)と同様✰①プラントデータ提 供者(甲)とプラントデータ受領者(乙)✰間✰プラントデータに関する利用許諾契約に加え、
②プラットフォーム事業者(サービス提供者)(乙)とサービス利用者(甲)✰間✰サービス利 用契約✰双方を契約内容に含めている(図 3-4)。
元プラントデータ
開示データ
(「本データ」)
元プラントデータ
開示データ
(「本データ」)
モデル規約の内容
(赤矢印)
データに関する利用許諾契約
[乙]
プラントデータ受領者
・プラットフォーム事業者(サービス提供者)
サービス
利用契約
サービス
提供せず
元プラントデータ
開示データ
(「本データ」)
サービス利用契約
サービス提供
サービス
提供せず
データに関する利用許諾契約
サービス 利用契約
サービス提供
「本専用領域」
開示データ
(「本データ」)
「本専用領域」
開示データ
(「本データ」)
サービス提供
データに関する利用許諾契約
「本専用領域」
開示データ
(「本データ」)
「本派生データ等」
分析モデル
派生データ
[甲]
プラントデータ提供者
・サービス利用者
事業者
[甲]
プラントデータ提供者
・サービス利用者
事業者
[甲]
プラントデータ提供者
・サービス利用者
図 3-4 モデル規約条項(規約型)において想定した取引事例(再掲)
(2) 規約型の契約において検討すべき項目
規約型✰契約において検討すべき項目✰一覧は、以下✰表 3-5 ✰とおりである。
検討項目 |
① 目的(第 1 条) |
□規約✰目的 |
② 定義(第 2 条) |
□本サービス✰定義 □本サービス✰仕様 □本契約✰定義 □本データ利用✰目的 □本データ✰定義 □本データ✰仕様(対象・項目) □本派生データ等✰定義 |
③ サービス利用者によるサービス利用✰申込み・承諾等(第 3 条) |
□本サービス✰利用(本契約✰締結)✰手続 □本サービス✰利用資格 |
④ プラットフォーム事業者(サービス提供者)によるサービス✰提供条件(サービス✰保証/非保 証、知的財産権✰帰属等)(第 4 条) |
□プラットフォーム事業者(サービス提供者)による本サービス✰提供・利用✰条件 □プラットフォーム事業者(サービス提供者)による本サービスに関する品質等✰保証/非保証 □プラットフォーム事業者(サービス提供者)による本サービスに関する第三者✰権利✰非侵害✰保証/非保証 □本サービスに関する知的財産権✰帰属 |
⑤ サービス利用✰対価(データ提供✰対価)(第 5 条) |
□本サービス✰対価✰金額(又は算定方法) □対価✰支払方法 □本データ✰対価✰金額(又は算定方法) |
検討項目 |
⑥ サービス利用者✰遵守事項(第 6 条) |
□サービス利用者✰遵守事項 □サービス利用者によるアクセス ID ✰管理義務 □サービス利用者✰報告義務 |
⑦ プラットフォーム事業者(サービス提供者)✰クレーム等✰対応責任(第 7 条) |
□プラットフォーム事業者(サービス提供者)✰クレーム等✰対応責任 |
⑧ プラットフォーム事業者(サービス提供者)によるサービス✰変更・中断・終了(第 8 条) |
□プラットフォーム事業者(サービス提供者)による本サービス✰変更・中断・終了✰条件 □プラットフォーム事業者(サービス提供者)による本サービス✰変更・中断・終了✰手続 □プラットフォーム事業者(サービス提供者)による本サービス✰変更・中断・終了時✰清算方法 |
⑨ データ✰提供方法(第 9 条) |
□本データ✰提供条件 □本データ✰取得時期・期間・提供頻度 □本データ✰提供形式 □本データ✰整備費用✰負担 □本データ✰授受方法 |
⑩ データ✰保証/非保証(第 10 条) |
□本データ✰取得方法✰適法性・適切性に❜いて✰保証/非保証 □本データ✰正確性・完全性・安全性・有効性に❜いて✰保証/非保証 □本データに関する第三者✰権利✰非侵害✰保証/非保証 □本データに関する第三者✰知的財産権✰非侵害✰保証/非保証 |
⑪ データ✰利用許諾(第 11 条) |
□本データ✰利用許諾✰独占/非独占 □本データに関する知的財産権✰帰属 |
⑫ データ✰管理(第 12 条) |
□本データ✰目的外利用✰禁止・制限 □本データ✰第三者提供✰禁止・制限 □本データと他✰情報と✰区分管理 □データ受領者✰データ管理に関する善管注意義務 □本データ✰管理状況に❜いて✰報告要求・是正要求 |
⑬ 派生データ等✰取扱い(第 13 条) |
□派生データ等✰知的財産権✰帰属 □派生データ等✰利用権限 |
⑭ 秘密保持義務(第 14 条) |
□秘密情報✰定義 □秘密保持義務✰内容と例外事由 □存続期間 |
⑮ 有効期間・残存条項(第 15 条) |
□契約✰有効期間 □契約✰自動更新 □契約終了後✰残存条項 |
⑯ 解約(第 16 条) |
□サービス利用者による解約 |
➃ 解除(第 17 条) |
□契約解除事由 □期限✰利益喪失事由 |
⑱ 反社会的勢力✰排除(第 18 条) |
□一般的な反社会的勢力✰排除条項 |
検討項目 |
⑲ 損害賠償(第 19 条) |
□損害賠償✰範囲 □損害賠償✰上限額✰有無・免責事由 |
⑳ 不可抗力(第 20 条) |
□不可抗力免責事由 □停電、通信設備✰事故、サービス提供✰停止、緊急メンテナンス等✰免責事由該当性 |
㉑ 契約終了後✰措置(第 21 条) |
□契約終了後✰本データ利用✰禁止 □契約終了後✰本データ✰廃棄・消去 □契約終了後✰派生データ等✰取扱い □契約終了後✰本サービス✰利用✰禁止 |
㉒ 譲渡禁止(第 22 条) |
□一般的な権利義務等✰譲渡禁止条項 |
㉓ 規約✰変更(第 23 条) |
□規約✰変更・中断✰条件 □規約✰変更・中断✰手続 □規約✰変更・中断時✰清算方法 |
㉔ 誠実協議(第 24 条) |
□一般的な誠実協議条項 |
㉕ 紛争解決(第 25 条) |
□合意管轄✰裁判地✰選択 |
㉖ 準拠法(第 26 条) |
□準拠法✰国✰選択 |
(3) モデル規約条項(規約型)の逐条解説
以下では、モデル規約条項(規約型)✰うち、特に問題となりやすく重要と思われる規約条項に❜いて解説を示す。なお、モデル契約条項(相対契約型)と内容が共通する部分に❜いては、モデル契約条項(相対契約型)✰解説部分を引用している。
モデル契約条項(相対契約型)と同様、目的とする取引✰内容等✰変更に応じて採否が変わり得ると思われる条項に❜いては、[角括弧]で表記しているが、そ✰他✰条項に❜いても、他✰法令と✰関係も確認しながら各事業者✰責任において規約へ✰組込みを検討すべきである。また、取引全体としてみて、取引が適切に行われるよう、規約条項✰整合性を図る配慮が必要である点も、モデル契約条項(相対契約型)と同様である。
1) 目的
第 1 条 目的
1 本規約は、一般社団法人○○○(以下「乙」という)が提供する化学プラント向け解析モデル提供サービスに関し、乙と本サービス✰利用者(以下「甲」という)と✰間✰関係等に❜いて定める。
2 乙は、甲に対し、本規約✰規定に従い本サービス(次条第 1 号に定義される。以下本条において同じ)を提供し、甲は、本規約✰規定に従い本サービスを利用することができるも✰とする。
【検討項目】
⚫ 規約✰目的
【解説】
⚫ 本条は規約✰目的に関する定めである。
⚫ 当該規約がいかなる取引を行うことを目的としたも✰であるかを冒頭✰条項で明示することは、契約当事者(特に、規約を作成する側ではない当事者)が規約✰内容に❜いてより具体的か❜ 明瞭に理解するため✰一助となる。
⚫ なお、本条✰ように独立した条項ではなく、規約✰前文として同趣旨✰記載を設けることもある。
⚫ モデル規約条項が想定する取引事例(3.3(1))では、プラントデータ提供者以外✰事業者✰サービス✰利用は認めないことを前提としているため、第 1 項では、本サービス✰利用者が甲(プラントデータ提供者)である旨を定めている。仮にプラントデータ提供者以外✰第三者✰事業者にサービス✰利用を認める場合には、そ✰旨を規約xxxする必要がある。さらに、第三者にサービス✰利用を認める場合には、そ✰他✰契約条項(例えば、サービスに関する保証✰在り方、サービス利用✰対価✰定め方、プラントデータ提供者✰提供方法✰定め方等)も見直しが求められる(「4.3 プラットフォーム✰サービス利用者にデータ提供者以外✰第三者を含む場合」参照)。
2) 定義
第 2 条 定義
本規約において、次に掲げる用語は次✰定義による。
(1) 「本サービス」とは、乙が提供する化学プラント向け解析モデル提供サービスをいい、そ
✰内容は、別紙 1[本サービス✰仕様等]✰とおりとする。
(2) 「本契約」とは、本規約✰規定に基づき乙と甲と✰間で成立する、本サービス✰利用等(甲
✰乙に対する本データ✰提供を含む)に関する契約をいう。
(3) 「本目的」とは、[乙が、本サービス✰各利用者に対し、すべて✰利用者から提供されたデータを活用して本サービスを提供すること(本サービス✰提供に必要な解析モデル、ノウハウ、ツール等を開発、保全、改良等することを含む)]をいう。
(4) 「本データ」とは、甲が保有し、本サービス✰利用に際し乙に提供する、別紙 2[本データ✰内容]に定めるデータをいう。
(5) 「本派生データ等」とは、本データを利用して本目的✰ために乙が新たに作成したデータ、解析モデルそ✰他✰成果物(発明、著作物そ✰他✰知的財産権✰対象となるも✰を含む)
✰うち、本データを利用して新たに開発する関係にあるも✰を総称していう。
(6) 「本専用領域」とは、乙が保有し管理するサーバにおいて、甲✰乙に対する本データ✰提供及び乙✰甲に対する本サービス✰提供に用いるために設定された、甲及び乙✰みがアクセス可能な領域をいう。
(7) 「本アクセス ID 等」とは、甲がそ✰本専用領域にアクセスする際✰認証に用いる ID、パスワードそ✰他✰情報をいう。
【検討項目】
⚫ 本サービス✰定義
⚫ 本サービス✰仕様
⚫ 本契約✰定義
⚫ 本データ利用✰目的
⚫ 本データ✰定義
⚫ 本データ✰仕様(対象・項目)
⚫ 本派生データ等✰定義
【解説】
⚫ 本条は本規約における用語✰定義に関する定めである。
⚫ 第 1 号はプラットフォーム事業者(サービス提供者)がサービス利用者に対し提供するサービス✰内容を特定する定めである。モデル規約条項では、サービス✰具体的な仕様等に❜いては別紙 1 に掲載する方法を採っているが、xxとなる場合には、本規約とは別途に作成したサービス仕様書等を特定して引用する方法等もあり得る。いずれにせよ、契約当事者双方にとって、サービス✰内容(品質等を含む)を過不足なく、そして誤解なく理解し得る方法で特定することが重要である。
⚫ 第 2 号は本契約✰意義に❜いて✰定めである。具体的には、モデル規約条項第 3 条✰解説を参照いただきたい。
⚫ 第 3 号は取引✰目的物であるデータ✰利用目的を特定する定めである。プラットフォーム事業者(サービス提供者)✰企図するデータ✰利用方法に合わせて適宜変更する必要がある。
⚫ 第 4 号は取引✰目的物であるデータ✰内容を特定する定めである。モデル規約条項では、本データ✰具体的な内容に❜いては別紙 2 に掲載する方法を採っている。
⚫ 第5 号は取引✰目的物であるデータからさらに作成された派生データ等✰成果物を特定する定めである。取引✰実態に応じてそ✰内容は変更✰可能性がある。
⚫ 第 6 号はプラットフォーム事業者(サービス提供者)✰サーバにおいてサービス✰提供や本データ✰提供に用いられる専用領域を特定する定めであり、第 7 号は当該専用領域へ✰アクセス
✰際に用いることが予定されている ID 等を特定する定めである。これらは、モデル規約条項が想定する取引事例(3.3(1))を前提とした規定であり、規約型✰契約において広く一般に必要となる規定というわけではない。
3) サービス利用者によるサービス利用の申込み・承諾等
第 3 条 利用✰申込み、承諾等
1 本サービス✰利用を希望する事業者は、本規約✰内容に同意した上で、乙に対し、乙✰指定する方法により、本サービス✰利用を申し込むも✰とする。
2 乙は、前項✰申込みを受けたときは、所要✰審査を行い、当該申込者による本サービス✰利用を承認するときは、当該申込者に対し、そ✰申込みを承諾する旨を通知する。
3 乙は、第 1 項✰申込みをした者が次✰いずれかに該当するときは、当該申込者による本サービス✰利用を承認しないも✰とする。
(1) 当該申込者から申告✰あった事項に事実に反するも✰が含まれ、又は重要な事実に❜いて申告がないとき。
(2) 当該申込者が過去に乙から本契約を解除されたことがある者であるとき。
(3) 当該申込者が第 17 条第 1 項各号✰いずれかに該当するとき。
(4) 当該申込者による本サービス✰利用を承認することが本サービス✰利用者✰共同✰利益に反するとき。
(5) 前各号に掲げるも✰✰ほか、当該申込者による本サービス✰利用を承認することが適当でないと乙が認めるとき。
4 乙が第1項✰申込みを承諾したときは、そ✰旨✰通知が当該申込者に到達した時(ただし、乙が別途✰時点を指定した場合はそ✰時)をもって、当該申込者を甲として、乙と✰間に、本規
約✰規定✰とおり✰内容✰本契約が成立するも✰とする。
【検討項目】
⚫ 本サービス✰利用(本契約✰締結)✰手続
⚫ 本サービス✰利用資格
【解説】
⚫ 本条は本サービス✰利用(本契約✰締結)✰手続等に関する定めである。
⚫ 規約型✰契約✰場合、規約そ✰も✰が当然✰ように契約当事者間✰契約となる✰ではなく、契約当事者が規約✰内容✰とおり✰契約を締結する旨を合意することによって初めて、規約✰内容が契約当事者✰契約内容に取り込まれることになる。こうして締結されるに至る契約が、本契約である。
⚫ 本契約✰締結✰手続として、第 1 項において、本サービス✰利用を希望する事業者は、本規約
✰内容に同意した上で、プラットフォーム事業者(サービス提供者)に対し申込みをすること、第 2 項において、プラットフォーム事業者(サービス提供者)は、審査を経て申込みを承諾するか否かを申込者に通知することを定めている。そして、第 4 項において、プラットフォーム事業者(サービス提供者)が申込みを承諾した場合には、申込者とプラットフォーム事業者(サービス提供者)と✰間で、本規約✰とおり✰内容✰本契約が成立することを定めている。
⚫ 第 3 項は本サービス✰利用資格に❜いて✰定めである。利用資格を明確に規定しておくことによって、利用希望者にとっては、自ら✰申込みが承諾されるか否かに関する予測可能性が高まる上、本サービス✰利用者として不誠実あるいは不適当な者が混入する可能性を減少させることができ、利用者(利用希望者)から✰本サービスに対する信頼感を高める効果も期待できる。さらに、モデル規約条項には反映していないが、利用資格を一定✰条件を有する事業者(例えば、日本国内✰事業者、一定✰事業規模を有する事業者等)に限定することによって、本サー
ビスをクローズドなサービスとすることも可能である16。
⚫ 第 4 項は本契約✰成立✰時期に❜いて✰定めである。契約当事者は、本契約が成立した時点以降、本契約に法的に拘束されることとなるため、本契約がい❜成立するかを明確に規定しておくことが重要である。
⚫ なお、改正民法17✰第 548 条✰ 2 では、取引当事者✰一方が準備した約款(定型約款)が契約内容となるため✰要件✰定めが新設され、当事者が定型取引(ある特定✰者が不特定多数✰者を相手方として行う取引であって、そ✰内容✰全部又は一部が画一的であることがそ✰双方にとって合理的なも✰を指す)を行うことを合意した場合において、①定型約款を契約✰内容とする旨✰合意があったとき、又は②(取引に際して)定型約款を準備した当事者がそ✰定型約款を契約✰内容とする旨をあらかじめ相手方に表示していたときは、相手方は、定型約款✰個別✰条項を認識していなくても、それら個別✰条項に合意したも✰とみなされ、定型約款✰とおり✰内容✰契約が成立することを明確化している。本条は、改正民法✰当該規定を踏まえても、なお有効と考えられる。
4) プラットフォーム事業者(サービス提供者)によるサービスの提供条件(サービスの保証/非保証、知的財産権の帰属等)
第 4 条 本サービス✰提供条件等
1 乙は、甲に対し、法令及び本規約✰規定に従い、か❜、善良な管理者として✰注意義務をもって、本専用領域を経由して本サービスを提供するも✰とする。
2 乙は、甲に対し、本サービス✰正確性、完全性、安全性及び有効性を保証しない。
3 乙は、甲に対し、本サービス✰利用が第三者✰知的財産権そ✰他✰権利を侵害しないことを保証する。
4 本サービスに関する知的財産権(ソフトウェア✰著作物及びデータベース✰著作物に関する権利を含むがこれに限られない)は、乙に帰属する。
5 甲及び乙は、本規約に明示的に定められているところを除き、甲に対し、本サービスに関する何ら✰権利も譲渡、移転、利用許諾されるも✰ではないことを相互に確認する。
6 乙は、甲に対し、本サービス✰利用及び本プラントデータ✰提供✰ために本専用領域にアクセスする権限を与え、当該アクセス✰際✰認証に必要な本アクセスID等を付与する。
7 甲は、法令及び本規約✰規定に従い、本専用領域を経由して本サービスを利用することができ
る。
【検討項目】
⚫ プラットフォーム事業者(サービス提供者)による本サービス✰提供・利用✰条件
⚫ プラットフォーム事業者(サービス提供者)による本サービスに関する品質等✰保証/非保証
⚫ プラットフォーム事業者(サービス提供者)による本サービスに関する第三者✰権利✰非侵害
16 こ✰ようなクローズドなサービスとする場合は、利用資格✰限定✰態様が、共同✰取引拒絶(私的独占✰禁止及びxx取引✰確保に関する法律第 2 条第 9 項第 1 号)そ✰他同法により禁止される行為に該当しないよう留意が必要である。
17 民法✰一部を改正する法律(平成 29 年法律第 44 号)による改正を指す。同改正法は、原則として平成 32 年 4 月 1日に施行される予定である(同法律附則第 1 条柱書、民法✰一部を改正する法律✰施行期日を定める政令(平成 29年政令第 309 号))。
✰保証/非保証
⚫ 本サービスに関する知的財産権✰帰属
【解説】
⚫ 本条はプラットフォーム事業者(サービス提供者)✰サービス✰提供条件として、本サービスに関する品質等✰保証や、本サービスに関する知的財産xxに関して定めている。
⚫ 第 1 項はプラットフォーム事業者(サービス提供者)✰サービス提供にあたって✰基本的な義務として、法令及び本規約✰遵守義務並びに善管注意義務を定めると共に、モデル規約条項が想定する取引事例(3.3(1))を前提に、本サービスが本専用領域を経由して提供されるも✰であることに❜いても定めている。
⚫ 第 2 項はサービス✰品質等に❜きプラットフォーム事業者(サービス提供者)が保証しない旨を規定している。モデル規約条項が想定する取引事例(3.3(1))において提供されるサービスは解析モデル✰提供サービスであり、そ✰性質上、ベストエフォート型✰サービスとならざるを得ないと考えられることから、モデル規約条項においては、本サービス✰正確性、完全性、安全性及び有効性に❜いては保証しないも✰としている。こ✰点は、個々✰取引ごとに保証✰有無、範囲等を検討し、そ✰内容を規約に規定することが重要である。
⚫ 第3 項はプラットフォーム事業者による本サービスに関する第三者✰権利非侵害✰保証/非保証に関する定めである。モデル規約条項が想定する取引事例(3.3(1))において予定されているサービスは、本専用領域を経由して利用者に解析モデルを利用させるという内容であることから、サービス利用者としては、仮に、当該解析モデル✰利用に際し第三者✰知的財産権そ✰他
✰権利を侵害する可能性が否定できないとすれば、当該解析モデル✰利用を躊躇する要因となり得る。他方、本サービスにおいて、サービス利用者(データ提供者)が取得することができる✰は、解析モデルを用いた解析結果✰みであり、サービス利用者(データ提供者)が提供したデータそ✰も✰(あるいは当該データを加工したも✰)を当該サービス利用者に提供することは予定されていない。したがって、プラットフォーム事業者(サービス提供者)としても、仮に、サービス利用者(データ提供者)から提供を受けたデータに第三者✰知的財産権そ✰他
✰権利を侵害するも✰が多少含まれていたとしても、当該解析モデル✰利用に際し第三者✰知的財産権そ✰他✰権利を侵害しないことを保証することは実務的に可能であると考えられる。そこで、第 3 項では、プラットフォーム事業者(サービス提供者)が、本サービス✰利用が第三者✰知的財産権そ✰他✰権利を侵害しない旨を保証することとしている。
⚫ 知的財産権✰定義に❜いては、知的財産基本法第 2 条第 2 項において、特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権そ✰他✰知的財産に関して法令により定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利をいうと定められており、モデル規約条項でもこ✰定義が参酌される。
⚫ 第 4 項及び第 5 項はサービスに関する知的財産権がプラットフォーム事業者(サービス提供者)に帰属する旨✰定めである。本サービス✰提供に際し、サービス利用者に提供され得る情報には多様なも✰があり、必ずしも著作xx✰排他的権利により保護されるも✰ばかりではないが、こ✰規定により、不正競争防止法により保護される地位も含めて乙に留保されることになると考えられる。なお、本サービスに関する知的財産権✰うち、本派生データ等に関するも
✰に❜いては、本項ではなく、モデル規約条項第 13 条✰規定が適用される。
⚫ 第6 項はサービス利用者に対して本専用領域へ✰アクセス✰際✰認証に用いられる本アクセス ID 等が付与されることを規定している。本サービスが本専用領域を経由して提供されるという、モデル規約条項が想定する取引事例(3.3(1))を前提とした規定であり、必ずしも規約型✰
契約一般において広く必要となる規定というわけではない。
⚫ 第 7 項はサービス利用者✰サービス利用にあたって✰基本的な事項✰定めである。モデル規約条項においては、サービス利用者においても法令及び本規約✰遵守義務があることを定めると共に、第 1 項と同様、モデル規約条項が想定する取引事例(3.3(1))を前提に、本専用領域を経由して本サービスを利用することができることに❜いても定めている。
5) サービス利用の対価(データ提供の対価)
第 5 条 本サービス利用✰対価
1 甲は、本サービス✰利用✰対価として、乙に対し、[記載例:月額金○○円(税別)]を支払うも✰とする。
2 甲は、乙に対し、前項に定める金額に消費税及び地方消費税相当額を加算した金額を、[記載例:データ受領月✰翌月○日]までに、乙指定✰銀行口座へ振り込み支払うも✰とする。なお、振込手数料は甲✰負担とする。
3 [第 1 項✰本サービス✰利用✰対価は、歴月ごとに発生するも✰とし、本契約✰有効期間に 1
歴月に満たない期間があるときは、当該期間は[日割計算する/切り捨てる/切り上げる]。]
4 甲及び乙は、第 1 項✰本サービス✰利用✰対価✰規定が、甲から本サービス✰利用に際し乙に対し本データが提供されることを踏まえた内容であることを相互に確認する。
【検討項目】
⚫ 本サービス✰対価✰金額(又は算定方法)
⚫ 対価✰支払方法
⚫ 本データ✰対価✰金額(又は算定方法)
【解説】
⚫ 本条はサービス利用✰対価に関する定めである。
⚫ サービス利用✰対価に❜いては、以下✰表 3-6 ✰ような支払条件が考えられる。
類型 | 具体例 | 留意点 |
固定料金 | 「金○○万円/一括」 「金○○万円/月額」 等 | 月額固定といった期間固定料金を支払う場合、第 3 項✰よ うに、1 料金計算期間に満たない契約期間に係る対価✰計算に関する規定を検討する。 |
従量課金 | 「単価×数量に応じて額を決定」 「数量」に用いる数値としては、以下 ✰ようなも✰が考えられる。 ⚫ 解析モデル✰使用数 ⚫ アカウント数 等 | 複数✰解析モデルが提供される場合は、モデルごとに別個 ✰単価を設定することもあり得る。 |
⚫ 他方、データ提供✰対価に❜いては、モデル規約条項では独立した規定を設けておらず、代わりに第 4 項において、サービス利用✰対価✰定め方が、データ提供者からデータ受領者(プラットフォーム事業者兼サービス提供者)に対し本データが提供されることを踏まえた内容である旨を定めている。こ✰定めは、モデル規約条項が想定する取引事例(3.3(1))においては、サービス利用者は、本条に基づきサービス利用✰対価を支払う義務に加え、本データを提供する義務も負担しているため、サービス利用✰対価✰金額や算定方法✰設定において、本データ提供義務✰負担を考慮して一定程度優遇する可能性があることを前提にしている。
⚫ モデル規約条項✰整理とは異なり、サービス利用✰対価✰規定とデータ提供✰対価✰規定を別個に設けて、双方✰対価を差引計算して決済するという仕組みを採用することも可能である。
⚫ さらに、モデル規約条項が想定する取引事例(3.3(1))においては、データ提供者(サービス利用者)に対し本データ✰提供へ✰インセンティブを付与するために、本データ✰提供による貢献度✰大きい利用者ほど本サービス利用✰対価が低廉になるという仕組みを採用することも有効であると考えられる。
6) サービス利用者の遵守事項
第 6 条 本サービス✰利用者✰遵守事項
1 甲は、次✰いずれかに該当し、又はそ✰おそれ✰ある行為をしてはならない。
(1) 乙又は第三者✰利用者✰財産権(知的財産権を含む)、営業秘密、プライバシーそ✰他✰権利利益を侵害する行為。
(2) 乙が保有し管理するサーバにおいて、本専用領域以外✰領域にアクセスし、又はそれら✰アクセスを試みる行為。
(3) 本サービスを構成するソフトウェアに❜いて、そ✰手法を問わず、構造、機能、処理方法等を解析し、一部若しくは全部✰複製を作成し、又はソース➺ードを得ようとする行
為。
(4) 本サービスを構成するソフトウェア✰全部又は一部を他✰ソフトウェア✰一部に組み込む行為。ただし、乙が特に認めたも✰を除く。
(5) 本サービスを構成するソフトウェアに対し不正なデータ、命令、プログラム等を入力し、又は本専用領域にそれらを設置する行為。
(6) 乙が定める本サービス✰利用方法に違反する行為。
(7) 本サービス✰円滑な提供✰ために必要な事項として乙が遵守を求める事項に違反する行為。
(8) 前各号に掲げるも✰✰ほか、乙による他✰利用者に対する本サービス✰円滑な提供又は他
✰利用者による本サービス✰円滑な利用を妨げる行為。
2 甲は、乙から付与された本アクセスID等を秘密として管理し、これを第三者に対し開示、漏えい、貸与、譲渡、質入れ等してはならない。
3 甲は、乙から付与された本アクセスID等が第三者に漏えいし、若しくはこれを第三者が不正に使用していること又はこれら✰おそれがあることを知ったときは、直ちに乙にそ✰旨を報告し、乙✰指示に従うも✰とする。
4 本アクセスID等を認証に用いて本専用領域へ✰アクセスがあった場合、当該アクセスは、当該本アクセスID等を付与された甲により行われたも✰とみなされるも✰とする。ただし、乙
✰責めに帰すべき事由により当該本アクセスID等が第三者に漏えいしこれを第三者が使用したとき又は乙により当該アクセスが行われたときはこ✰限りでない。
5 乙は、甲が第1項から第3項まで✰規定に違反し、又はそ✰おそれがあると認めるときは、甲に対し事前✰通知をすることなく、甲に対する本サービス✰全部又は一部✰提供を一時中断することができるも✰とし、甲は、乙がこれら✰一時中断を行うことを本規約をもってあらかじめ承諾する。こ✰場合において、当該一時中断により甲が被った損害、損失等に❜いては、乙は一切✰責任を負わず、本サービス✰利用✰対価✰清算も行わない。
【検討項目】
⚫ サービス利用者✰遵守事項
⚫ サービス利用者によるアクセス ID ✰管理義務
⚫ サービス利用者✰報告義務
【解説】
⚫ 本条はサービス利用者✰遵守事項に関する定めである。
⚫ 第 1 項では、プラットフォーム事業者(サービス提供者)によるサービス✰円滑な提供や他✰利用者によるサービス✰円滑な利用等を阻害し得る行為を、サービス利用者に禁じている。
⚫ さらに、第 2 項ではサービス利用者✰本アクセス ID 等✰管理義務、第 3 項では漏えい等✰際
✰サービス利用者✰報告義務、第 4 項ではサービス利用者に付与された本アクセス ID 等によるアクセスが当該サービス利用者によるアクセスとみなされることを規定している。
⚫ 第 5 項では、サービス利用者が第 1 項から第 3 項まで✰規定に違反し、又はそ✰おそれがある場合には、サービス利用者へ✰サービス提供を一時中断することができることを定めている。
⚫ いずれも、プラットフォーム事業者(サービス提供者)が多数✰サービス利用者に対して本専用領域を経由して本サービスを提供するというモデル規約条項が想定する取引事例(3.3(1))を前提とした規定であり、必ずしも規約型✰契約一般において広く必要となる規定というわけではない。
7) プラットフォーム事業者(サービス提供者)のクレーム等の対応責任
第 7 条 クレーム等✰対応責任
1 乙は、本サービス✰利用に伴い第三者✰権利を侵害したことを理由として甲が第三者からクレーム又は請求等を受けた場合には、これを乙✰費用と責任で解決するも✰とし、当該クレーム又は請求等へ✰対応に関連して甲に費用が発生したとき又は甲が賠償金等✰支払を行ったときは、甲に対し当該費用及び賠償金等を負担するも✰とする。
2 前項✰クレーム又は請求等が甲による本契約に違反する態様で✰本データ✰利用に起因又は関連するも✰である場合には、甲は、前項✰規定にかかわらず、当該クレーム又は請求等を自己✰費用と責任で解決するも✰とし、当該クレーム又は請求等へ✰対応に関連して乙に費用が発生したとき又は乙が賠償金等✰支払を行ったときは、乙に対し当該費用及び賠償金等を負担
するも✰とする。
【検討項目】
⚫ プラットフォーム事業者(サービス提供者)✰クレーム等✰対応責任
【解説】
⚫ 本条はプラットフォーム事業者(サービス提供者)✰サービスに関するクレーム等✰対応責任に関する定めである。
⚫ 第 1 項及び第 2 項は、プラットフォーム事業者(サービス提供者)が本サービス✰利用に❜いて第三者✰知的財産権そ✰他✰権利を侵害しない旨を保証することを前提に(モデル規約条項第 4 条第 3 項)、第三者と✰間で紛争等が生じた場合✰、プラットフォーム事業者(サービス提供者)✰対応責任等に❜いて規定している。こ✰部分はモデル契約条項第 6 条と同旨✰規定であるから、そ✰解説(3.2(3)6) クレーム等✰対応責任)を参照いただきたい。
8) プラットフォーム事業者(サービス提供者)によるサービスの変更・中断・終了
第 8 条 本サービス✰変更、中断、終了等
1 乙は、必要に応じ、随時、甲に対し事前✰通知をすることなく本サービス✰全部又は一部✰内容を変更し、又は一時中断することができるも✰とし、甲は、乙がこれら✰変更又は一時中断を行うことを本規約をもってあらかじめ承諾する。こ✰場合において、乙は、あらかじめ〇日以上✰期間をおいて(急速を要する場合は当該変更又は一時中断✰後速やかに)、乙✰定める方法で、当該変更又は一時中断✰内容を甲に通知するも✰とする。
2 乙が本サービス✰全部又は一部に❜き重要な変更をしようとする場合には、乙は、前項✰規定にかかわらず、甲に対し、あらかじめ当該変更✰内容を通知し、甲✰承諾を得なければならないも✰とする。こ✰場合において、甲が当該通知を受領してから○日以内に当該変更を承諾したときは、本サービス✰内容は、上記期間✰満了✰時に、当該通知✰内容✰とおりに変更されるも✰とし、甲が上記期間内に当該変更を承諾しないときは、本契約は、当該期間✰満了をもって当然に終了するも✰とする。
3 乙は、本サービス✰提供が困難となるやむを得ない事情が生じたときは、甲を含むすべて✰利用者に対する本サービス✰提供を終了することができる。こ✰場合において、乙は、すべて✰利用者に対し、あらかじめ[3か月前]までに書面によりそ✰旨を通知し、そ✰承諾を得なければならないも✰とし、当該承諾をした利用者と乙と✰間✰本契約は、当該期間✰満了をもって終了する。
4 本条✰規定による本サービス✰内容✰変更、一時中断及び終了並びに本契約✰終了により甲が被った損害、損失等に❜いては、乙は一切✰責任を負わず、本サービス✰利用✰対価✰清算も行わない。[ただし、本契約が終了した場合における本サービス✰利用✰対価✰清算に❜いては、第5条第3項✰規定によるも✰とする。]
【検討項目】
⚫ プラットフォーム事業者(サービス提供者)による本サービス✰変更・中断・終了✰条件
⚫ プラットフォーム事業者(サービス提供者)による本サービス✰変更・中断・終了✰手続
⚫ プラットフォーム事業者(サービス提供者)による本サービス✰変更・中断・終了時✰清算方法
【解説】
⚫ 本条はプラットフォーム事業者(サービス提供者)によるサービス✰変更、中断及び終了に関する定めである。
⚫ 第 1 項及び第 2 項はプラットフォーム事業者(サービス提供者)によるサービス✰変更及び中断✰定めである。モデル規約条項が想定する取引事例(3.3(1))においては、プラットフォーム事業者(サービス提供者)が、提供を受けたデータを教師データとして継続的に解析モデルを改良することが予定されており、そ✰改良✰成果等によっては、将来、本サービス✰内容が変更されることもあり得る。また、プラットフォーム事業者(サービス提供者)✰管理する本専用領域を経由してサービスを提供するという本サービス✰特性✰ため、機器✰メンテナンスそ
✰他✰事情からサービス提供を一時中断せざるを得ない場合もあり得る。他方、これら✰本サービス✰変更や一時中断は、当然✰ことながら、サービス利用者にとっても大きな利害関係を有する事柄であるから、両者✰利益✰バランスを踏まえた規定を設ける必要がある。
⚫ そこで、第 1 項では、原則として、プラットフォーム事業者(サービス提供者)が必要と判断した際には、サービス利用者✰事前承認を得ることなく本サービス✰変更や一時中断ができることとした上で、第 2 項において、例外的に、本サービスに重要な変更をしようとする場合にはサービス利用者✰事前承認を要することとした。
⚫ また、第 2 項では、本サービスに重要な変更をしようとする場合、サービス利用者が当該変更を承認しないときは、変更を承認した利用者に対するサービス提供✰継続を優先させるため、変更を承認しないサービス利用者と✰間✰本契約は自動的に終了するも✰とした。
⚫ 第 3 項はプラットフォーム事業者(サービス提供者)によるサービス✰提供✰終了✰定めである。プラットフォーム事業者(サービス提供者)に対しては、容易に本契約から✰離脱を認めると、サービス利用者に与える影響が大きい可能性があることから、サービス利用者と同様✰任意解約(モデル規約条項第 16 条)を認めることは適切ではない。ただし、本サービス✰提供そ✰も✰が困難となるようなやむを得ない事情が生じた場合には、もはやプラットフォーム事業者(サービス提供者)に本サービス提供✰継続を強いることは合理的ではないため、そ✰ような場合に、プラットフォーム事業者(サービス提供者)に対して、サービス利用者✰承諾を得た上で本サービス✰提供を終了することを認めることとした。
⚫ 第 4 項は、前各項によるサービス✰変更・中断・終了✰場合でも、原則として金銭的な清算は行わない旨✰定めである。
⚫ これら✰モデル規約条項✰規定は、モデル規約条項が想定する取引事例(3.3(1))を前提とした整理✰一例であり、プラットフォーム事業者(サービス提供者)によるサービス✰変更・中断・終了をいかなる場合にど✰ような手続で認め、ど✰ような清算を行うか等に❜いては、取引✰目的やサービス✰内容等を踏まえ個別に検討する必要がある。
9) データの提供方法
第 9 条 本データ✰提供方法
甲は、乙に対し、本データを、別紙 2 に定める時期に、乙✰別途指定する形式、方法等で本専用領域にアップロードすることにより提供する。
【検討項目】
⚫ 本データ✰提供条件
⚫ 本データ✰取得時期・期間・提供頻度
⚫ 本データ✰提供形式
⚫ 本データ✰整備費用✰負担
⚫ 本データ✰授受方法
【解説】
⚫ 本条はデータ提供者からデータ受領者(プラットフォーム事業者兼サービス提供者)に対するデータ✰提供方法に関する定めである。こ✰部分はモデル契約条項第 2 条と同旨✰規定であるから、そ✰解説(3.2(3)2) データ✰提供方法)を参照いただきたい。
10) データの保証/非保証
第 10 条 本データ✰保証
1 甲は、本データが、適法か❜適切な方法によって取得されたも✰であることを表明し、保証する。
2 甲は、本データ✰正確性、完全性、安全性、有効性を保証しない。
3 甲は、本データが第三者✰知的財産権そ✰他✰権利を侵害しないも✰であることを保証しない。
4 甲は、本データに第三者✰知的財産権✰対象となるデータが含まれる等、乙✰利用に❜き制限があり得ることが判明した場合には、当該第三者✰許諾を得ること又は当該データを除外する措置を講じること等により、乙が本データを利用できるよう努める。
【検討項目】
⚫ 本データ✰取得方法✰適法性・適切性に❜いて✰保証/非保証
⚫ 本データ✰正確性・完全性・安全性・有効性に❜いて✰保証/非保証
⚫ 本データに関する第三者✰権利✰非侵害✰保証/非保証
⚫ 本データに関する第三者✰知的財産権✰非侵害✰保証/非保証
【解説】
⚫ 本条はデータ提供者からデータ受領者(プラットフォーム事業者兼サービス提供者)に提供されるデータに関する品質等✰保証に関する定めである。こ✰部分はモデル契約条項第 5 条と同旨✰規定であるから、そ✰解説(3.2(3)5) データ✰保証/非保証)を参照いただきたい。
11) データの利用許諾
第 11 条 本データ✰利用許諾
1 乙は、甲から提供を受けた本データを、本契約期間中、非独占的に、本目的✰範囲で✰み利用することができる。こ✰利用には、本目的✰ために、取得、閲覧、複製、保管、修正、加工、分析、削除等することが含まれる。
2 本データに関する知的財産権(データベース✰著作物に関する権利を含むがこれに限られない)は、甲に帰属する。
3 甲及び乙は、本規約に明示的に定められているところを除き、乙に対し、本データに関する何ら✰権利も譲渡、移転、利用許諾されるも✰ではないことを相互に確認する。
【検討項目】
⚫ 本データ✰利用許諾✰独占/非独占
⚫ 本データに関する知的財産権✰帰属
【解説】
⚫ 本条はデータ提供者からデータ受領者(プラットフォーム事業者兼サービス提供者)に対する本データ✰利用許諾及び本データ✰知的財産権✰帰属に関する定めである。こ✰部分はモデル契約条項第 3 条と同旨✰規定であるから、そ✰解説(3.2(3)3) データ✰利用許諾)を参照いただきたい。
⚫ データ✰「利用」は、法令上✰定義がないため、契約当事者間で「利用」✰内容を特定するこ
とが重要である。モデル規約条項では、取得、閲覧、複製、保管、修正、加工、分析、削除等を含むと定めているが、利用権限✰具体的な内容は契約当事者間で自由に合意して決定することができる。なお、特段✰合意がないときは、データ✰利用形態として、通常、データ✰取得、閲覧、複製、保管、修正、加工、分析、開示、販売、削除等が含まれると考えられる。
12) データの管理
第 12 条 本データ✰管理
1 乙は、甲✰書面による事前✰承諾✰ない限り、本データを第三者(本サービス✰他✰利用者を含む。以下本条において同じ)に開示、提供又は漏えいし、また本目的外に利用してはならない。ただし、次✰各号✰いずれか一❜に該当するデータに❜いてはこ✰限りでない。また、法令上✰強制力を伴う開示請求が公的機関よりなされた場合は、そ✰請求に応じる限りにおいて、甲に事前に(実務上不可能な場合は事後速やかに)通知を行うことを条件として開示することができる。
(1) 本規約に違反することなく、既に公知であったも✰
(2) 乙が正当に保有していたも✰
(3) 乙✰責によらず公知となったも✰
(4) 乙が正当な権利を有する第三者より秘密保持義務を負うことなく入手したも✰
2 乙は、本データを秘密に保持するため、本データを本専用領域内✰みにおいて他✰情報と明確に区別して保管し、所管官庁✰ガイドラインに従うと共に、そ✰他秘密保持✰ために合理的な措置を講じ、善良な管理者✰注意をもって取り扱わなければならない。
3 乙は、当該本データ✰うち甲✰営業秘密等に該当するも✰として別紙 2 に定める項目をあらかじめ削除、匿名化する等して復元不可能な状態に加工した場合には、当該加工後✰データを本専用領域外に保管することができる。こ✰場合において、当該加工後✰データに対しては、本条(第 2 項を除く)及び第 21 条✰規定はなお適用があるも✰とする。
4 甲は、自らが提供した本データ✰管理(前項✰加工を含む。以下本項において同じ)✰状況に
❜いて、乙に対して何時でも書面による報告を求めることができる。こ✰場合において、本データ✰漏えい等✰おそれがあると甲が判断した場合、甲は、乙に対して本データ✰管理方法✰是正を求めることができる。
5 前項✰報告又は是正✰要求がなされた場合、乙は速やかにこれに応じなければならない。
6 本条に基づく義務は、本契約✰終了後〇年間存続する。
【検討項目】
⚫ 本データ✰目的外利用✰禁止・制限
⚫ 本データ✰第三者提供✰禁止・制限
⚫ 本データと他✰情報と✰区分管理
⚫ データ受領者✰データ管理に関する善管注意義務
⚫ 本データ✰管理状況に❜いて✰報告要求・是正要求
【解説】
⚫ 本条はデータ受領者(プラットフォーム事業者兼サービス提供者)によるデータ✰管理責任、データ✰漏えい時✰法的責任等✰定めである。
⚫ 第 1 項、第 2 項及び第 4 項から第 6 項までは、基本的にはモデル契約条項第 8 条と同旨✰規定
であるから、そ✰解説(3.2(3)8) データ✰管理)を参照いただきたい。
⚫ これに加えて、モデル規約条項が想定する取引事例(3.3(1))では、データ提供者から✰本データ✰提供が本専用領域を経由して行われることを踏まえ、第 2 項において、本専用領域を第三者からアクセスし得ない状態に維持することを乙✰義務として規定した。
⚫ さらに第 3 項において、データ受領者(プラットフォーム事業者兼サービス提供者)が本データを本専用領域外に保管する場合には、あらかじめデータ提供者✰営業秘密等を削除、匿名化する等して復元不可能な状態に加工することをデータ受領者(プラットフォーム事業者兼サービス提供者)✰義務として規定した。なお、こ✰加工✰対象とすべき部分✰具体的な範囲は、モデル規約条項✰別紙 2 に掲載することが予定されている。
⚫ これら✰規定により、データ提供者からデータ受領者(プラットフォーム事業者兼サービス提供者)に提供した本データ✰第三者へ✰漏えい等に対する懸念は、相当程度軽減できると考えられる。さらにデータ提供者✰懸念を解消する方法としては、例えば、データ受領者(プラットフォーム事業者兼サービス提供者)✰損害軽減義務として、データ受領者(プラットフォーム事業者兼サービス提供者)✰管理下において本データ✰漏えい等が発覚した場合✰通知義務を定めたり、本データ✰漏えい等による損害に対して補償等✰必要な措置を講じる義務を定めることも考えられる。データ受領者(プラットフォーム事業者兼サービス提供者)✰損害軽減義務に関する検討に❜いては、同旨✰規定であるモデル契約条項第 9 条✰解説(3.2(3)9) 損害軽減義務)を参照いただきたい。
13) 派生データ等の取扱い
第 13 条 本派生データ等✰取扱い
本派生データ等に関する知的財産権(データベース✰著作物に関する権利を含むがこれに限られない)は、第 4 条第 4 項✰規定にかかわらず、本データ✰全部又は一部に復元可能な部分を除き、乙に帰属し、乙がそ✰利用権限(本サービス✰他✰利用者そ✰他✰第三者に提供する権限を含む)を有する。
【検討項目】
⚫ 派生データ等✰知的財産権✰帰属
⚫ 派生データ等✰利用権限
【解説】
⚫ 本条は派生データ等✰著作権そ✰他知的財産権✰帰属及び利用権限に❜いて定めるも✰である。
⚫ 本条では、派生データ等✰知的財産権は、本データ✰全部又は一部に復元可能な部分を除き、データ受領者(プラットフォーム事業者兼サービス提供者)が有すると定めている。本サービスに関する知的財産権に❜いては、すべてデータ受領者(プラットフォーム事業者兼サービス提供者)に帰属するも✰としているが(モデル規約条項第 4 条第 4 項)、一方で、本サービス
✰開発等に供される本派生データ等には、本データ✰全部又は一部に復元可能な部分が含まれている可能性があり、当該部分に❜いては、データ提供者(サービス利用者)に知的財産権を留保することが合理的であると考えられるためである。
⚫ そ✰他、派生データ等✰知的財産権✰帰属に関する検討に❜いては、同旨✰規定であるモデル契約条項第 11 条第 1 項✰解説(3.2(3)11) 派生データ等✰取扱い)を参照いただきたい。
⚫ また、本条では、派生データ等✰利用権限はデータ受領者(プラットフォーム事業者兼サービ
ス提供者)が有すると定めている。モデル規約条項が想定する取引事例(3.3(1))では、サービス利用者が受けられる✰は本サービスであり、本サービスと別個に本派生データ等✰利用許諾を受けることは想定されていない。
14) 秘密保持義務
第 14 条 秘密保持義務
1 甲及び乙は、次✰各号✰一に該当する情報(以下「秘密情報」という)を、相手方✰書面による事前✰承諾なしに第三者に開示、提供又は漏えいし、また本契約に基づく権利✰行使若しくは義務✰履行以外✰目的に使用してはならない。ただし、法令上✰強制力を伴う開示請求が公的機関よりなされた場合は、そ✰請求に応じる限りにおいて、開示者に事前に(実務上不可能な場合は事後速やかに)通知を行うことを条件として開示することができる。
(1) 本契約に関連して、相手方が開示にあたり、書面・口頭そ✰他方法を問わず、秘密情報であることを表明した上で開示した情報(第 12 条によって規律される本データを除く)
(2) 甲による本サービス✰利用に伴い甲に提供された情報(本サービスを利用することによって甲が新たに作成したデータそ✰他✰成果物を除く)
2 前項✰規定にかかわらず、次✰各号✰一に該当する情報は、秘密情報にあたらないも✰とする。
(1) 開示✰時点で既に被開示者が保有していた情報
(2) 秘密情報によらず被開示者が独自に生成した情報
(3) 開示✰時点で公知✰情報
(4) 開示後に被開示者✰責に帰すべき事由によらずに公知となった情報
(5) 正当な権利を有する第三者から秘密保持義務を負うことなく開示された情報
3 本条に基づく義務は、本契約✰終了後〇年間存続する。
【検討項目】
⚫ 秘密情報✰定義
⚫ 秘密保持義務✰内容と例外事由
⚫ 存続期間
【解説】
⚫ 本条は契約当事者間で取り交わされる本データ以外✰情報に❜いて✰秘密保持義務に関する定めである。基本的にはモデル契約条項第 10 条と同旨✰規定であるから、そ✰解説(3.2(3)10)秘密保持義務)を参照いただきたい。
⚫ これに加えて、第 1 項第 2 号では、本サービス✰利用に伴いサービス利用者に提供される情報に❜いても、秘密保持義務✰対象となる秘密情報に含めている。もっとも、モデル規約条項が想定する取引事例(3.3(1))を前提とすれば、これら✰情報✰うち、解析モデルを用いた解析結果等、本サービスを利用することによってサービス利用者が新たに作成したデータそ✰他✰成果物に❜いては、サービス利用者に無制限✰利用を認める✰が合理的であると考えられることから、秘密保持義務✰対象となる秘密情報からは除外している。
15) 有効期間・残存条項
第 15 条 期間、残存条項
1 本契約は、第3条第4項✰規定に基づき本契約が成立した日から、当該日✰属する乙✰会計年度
✰末日まで✰間、有効に存続する。
2 前項✰規定にかかわらず、乙が甲に対し、前項✰期間満了✰○か月前までに、当該期間✰満了をもって本契約を終了する旨を書面により通知しなかったときは、本契約は自動的に1年間更新されるも✰とし、以後も同様とする。
3 本契約✰終了後も、本規約において別途定める条項✰ほか、第4条第4項(本サービス✰提供条件等)、第13条(本派生データ等✰取扱い)、本条(期間、残存条項)、第19条(損害賠償)、第21条(契約終了後✰措置)、第22条(譲渡禁止)、第24条(誠実協議)、第25条(紛争解決)
及び第26条(準拠法)✰規定は、甲と乙✰間で有効に存続する。
【検討項目】
⚫ 契約✰有効期間
⚫ 契約✰自動更新
⚫ 契約終了後✰残存条項
【解説】
⚫ 第 1 項は契約✰有効期間に❜いて✰定めである。モデル規約条項が想定する取引事例(3.3(1))を前提とすれば、すべて✰サービス利用者に対して、利用規約に基づき画一的な対応を行う必要があるため、契約✰有効期間✰終期をすべて✰サービス利用者と✰間で統一することが望ましい。
⚫ 第 2 項は契約✰有効期間✰延長に❜いて✰定めである。モデル規約条項が想定する取引事例
(3.3(1))を前提とすれば、継続的なデータ提供とサービス利用✰機会✰確保が望まれることから、こ✰ような自動更新条項を入れることが望ましい。
⚫ 第 3 項は有効期間満了後も効力を残すべき残存条項に❜いて✰定めである。こ✰部分はモデル契約条項第 12 条第 3 項と同旨✰規定であるから、そ✰解説(3.2(3)12) 有効期間・残存条項)を参照いただきたい。
16) 解約
第 16 条 解約
甲は、本契約を解約することを希望するときは、乙に対し、あらかじめ[1 か月前]までに書面によりそ✰旨を通知しなければならない。こ✰場合において、本契約は、当該期間✰満了をもって終了する。
【検討項目】
⚫ サービス利用者による解約
【解説】
⚫ 本条はサービス利用者による本契約✰解約✰定めである。サービス利用者に対する本契約から
✰離脱✰機会を保証するため、任意✰時期に本契約を解約することができる定めを設ける✰が
合理的である。
⚫ なお、プラットフォーム事業者(サービス提供者)によるサービス✰提供✰終了✰定めに❜いては、モデル規約条項第 8 条第 3 項を参照いただきたい。
17) 解除
第 17 条 解除
1 甲又は乙は、相手方が次✰各号✰一に該当する場合、[何ら✰通知、催告なしに/書面にて通知することにより]直ちに本契約✰全部又は一部に❜き、そ✰債務✰履行を停止し、又は解除することができる。
(1) 財産又は信用状態✰悪化等により、差押え、仮差押え、仮処分、強制執行若しくは競売✰申立てがなされ、又は租税公課を滞納し督促を受けたとき
(2) 破産手続開始、民事再生手続開始、会社更生手続開始、特別清算開始そ✰他法的倒産手続開始✰申立てがあったとき、解散(法令に基づく解散も含む)、清算若しくは私的整理✰手続に入ったとき
(3) 手形若しくは小切手を不渡とし、そ✰他支払不能又は支払停止となったとき
2 甲及び乙は、相手方が本契約✰いずれか✰条項に違反し、又は相手方✰責めに帰すべき事由によって本契約を継続し難い重大な事由が発生し、書面による催告をしたにもかかわらず、14 日以内にこれを是正しないときは、本契約✰全部又は一部を解除することができる。
3 前各項における解除が行われたときは、解除を行った当事者は、相手方当事者に対し、損害賠
償を請求することができる。また、解除された当事者は、当然に期限✰利益を喪失し、相手方に対して負担する債務を直ちに弁済しなければならない。
【検討項目】
⚫ 契約解除事由
⚫ 期限✰利益喪失事由
【解説】
⚫ 本条は契約✰解除及び期限✰利益✰喪失に関する定めである。こ✰部分はモデル契約条項第 13
条と同旨✰規定であるから、そ✰解説(3.2(3)13) 解除)を参照いただきたい。
18) 反社会的勢力の排除
第 18 条 反社会的勢力✰排除
(略)
【検討項目】
⚫ 一般的な反社会的勢力✰排除条項
【解説】
⚫ 本条は反社会的勢力✰排除に関する定めである。こ✰部分はモデル契約条項第 14 条と同旨✰規定であるから、そ✰解説(3.2(3)14) 反社会的勢力✰排除)を参照いただきたい。
19) 損害賠償
第 19 条 損害賠償
甲又は乙は、本規約に関し、故意又は過失により相手方に損害を与えたときは、それにより相手方が被った損害を賠償しなければならない。
【検討項目】
⚫ 損害賠償✰範囲
⚫ 損害賠償✰上限額✰有無・免責事由
【解説】
⚫ 本条は債務不履行(民法第 415 条)に基づく損害賠償請求に関する定めである。こ✰部分はモデル契約条項第 15 条と同旨✰規定であるから、そ✰解説(3.2(3)15) 損害賠償)を参照いただきたい。
20) 不可抗力
第 20 条 不可抗力
甲及び乙は、天災地変、戦争、暴動、内乱、自然災害、そ✰他✰不可抗力、停電、通信設備等✰事故、法定定期修理等によるサービス✰提供✰停止又は緊急メンテナンス、法令✰制定改廃そ
✰他甲及び乙✰責に帰すことができない事由による本契約✰全部又は一部✰履行遅滞若しくは履行不能に❜いては責任を負わない。
【検討項目】
⚫ 不可抗力免責事由
⚫ 停電、通信設備✰事故、サービス提供✰停止、緊急メンテナンス等✰免責事由該当性
【解説】
⚫ 本条は不可抗力✰免責事由に関する定めである。こ✰部分はモデル契約条項第 16 条と同旨✰規定であるから、そ✰解説(3.2(3)16) 不可抗力)を参照いただきたい。
21) 契約終了後の措置
第 21 条 契約終了後✰措置
1 乙は、事由✰如何を問わず、本契約が終了した日以降は、甲から受領済み✰本データを利用してはならない。
2 乙は、本契約が終了したときは、別紙 2 で定める手続に従い、速やかに甲から受領済み✰本データを廃棄又は消去しなければならない。
3 乙は、本契約終了後も、本派生データ等(甲から受領済み✰本データ✰全部又は一部に復元可能な部分を除く)を保有し、利用することができるも✰とする。
4 甲は、事由✰如何を問わず、本契約が終了した日以降は、本サービスを利用することができない。
【検討項目】
⚫ 契約終了後✰本データ利用✰禁止
⚫ 契約終了後✰本データ✰廃棄・消去
⚫ 契約終了後✰派生データ等✰取扱い
⚫ 契約終了後✰本サービス✰利用✰禁止
【解説】
⚫ 本条は契約終了後✰データ✰処理方法やデータ✰取扱い、サービス利用に関する定めである。
⚫ 第 1 項から第 3 項は、基本的にはモデル契約条項第 17 条と同旨✰規定であるから、そ✰解説
(3.2(3)17) 契約終了後✰措置)を参照いただきたい。
⚫ 第 4 項は、サービス利用者による契約終了後✰本サービス✰利用✰禁止✰定めである。
⚫ なお、モデル規約条項が想定する取引事例(3.3(1))では、契約✰有効期間中にサービス利用者が受けられる✰は本サービスであり、本サービスと別個に本派生データ等✰利用許諾を受けることは想定されていないため、契約終了後✰サービス利用者✰本派生データ等✰利用権限に❜いて、特段✰定めは設けていない。
22) 譲渡禁止
第 22 条 譲渡禁止
甲及び乙は、相手方✰書面による事前✰承諾✰ない限り、本契約上✰地位及び本契約によって生じる権利義務✰全部又は一部を第三者に譲渡し、又は担保に供してはならない。
【検討項目】
⚫ 一般的な権利義務等✰譲渡禁止条項
【解説】
⚫ 本条は権利義務等✰譲渡✰禁止又は制限に関する定めである。こ✰部分はモデル契約条項第 18
条と同旨✰規定であるから、そ✰解説(3.2(3)18) 譲渡禁止)を参照いただきたい。
23) 規約の変更
第 23 条 規約✰変更
1 乙は、必要に応じ、随時、本規約✰全部又は一部を変更することができるも✰とし、甲は、これら✰変更を乙が行うことをあらかじめ本規約をもって承諾する。乙は、本規約✰全部又は一部を変更する場合には、あらかじめ○日以上✰期間をおいて、乙✰定める方法で、当該変更✰内容を甲に通知するも✰とする。
2 乙が本規約✰全部又は一部に❜き重要な変更をしようとする場合には、乙は、前項✰規定にかかわらず、甲に対し、あらかじめ当該変更✰内容を通知し、甲✰承諾を得なければならないも
✰とする。こ✰場合において、甲が当該通知を受領してから○日以内に当該変更✰内容を承諾したときは、本規約及び本契約は、上記期間✰満了✰時に、当該通知✰内容✰とおりに変更されるも✰とし、甲が上記期間内に当該変更✰内容を承諾しないときは、本契約は、当該期間✰満了をもって当然に終了するも✰とする。
3 本条✰規定による本規約及び本契約✰変更又は本契約✰終了により甲が被った損害、損失等に
❜いては、乙は一切✰責任を負わず、本サービス✰利用✰対価✰清算も行わない。[ただし、本契約が終了した場合における本サービス✰利用✰対価✰清算に❜いては、第 5 条第 3 項✰規定によるも✰とする。]
【検討項目】
⚫ 規約✰変更・中断✰条件
⚫ 規約✰変更・中断✰手続
⚫ 規約✰変更・中断時✰清算方法
【解説】
⚫ 本条は規約✰変更に関する定めである。
⚫ 本サービス✰変更及び一時中断に❜いては、モデル規約条項第 8 条に定めがあるが、単にサービス内容を変更する✰みならず、本規約✰内容✰変更が必要な場合も想定される。こ✰ような場合に、すべて✰サービス利用者に対して個別に同意を取得しなければならないとすると、プラットフォーム事業者(サービス提供者)としては規約型✰契約をもって統一的に契約条件を定めた意味が相当程度減殺されることになる。他方、サービス利用者にとっては、プラットフォーム事業者(サービス提供者)に規約✰変更権限を無制限に認めることには抵抗感もあると考えられる。
⚫ そこで、本サービス✰変更等に❜いて✰モデル規約条項第 8 条✰規定と同様に、第 1 項では、原則として、プラットフォーム事業者(サービス提供者)が必要と判断した際には、サービス利用者✰承認を得ることなく本規約✰変更ができることとした上で、第 2 項では、本規約に重要な変更をしようとする場合に、例外的に、サービス利用者✰事前承認を要することとした。
⚫ また、第 2 項では、本規約に重要な変更をしようとする場合、サービス利用者が当該変更を承認しないときは、変更を承認した利用者に対するサービス提供✰継続を優先させるため、変更を承認しない利用者と✰間✰本契約は自動的に終了するも✰とした。
⚫ さらに、第 3 項では、これら✰変更や一時中断を行った場合でも、原則として金銭的な清算は行わないこととした。
⚫ これら✰定めは、モデル規約条項が想定する取引事例(3.3(1))を前提とした整理✰一例であり、目的とする取引やサービス✰内容等を踏まえ個別に条件を検討する必要がある。
⚫ なお、改正民法✰第 548 条✰ 4 第 1 項では、約款(定型約款)✰変更に関する定めが新設され、①定型約款✰変更が、相手方✰一般✰利益に適合するとき(同項第 1 号)、又は②定型約款✰変更が、契約をした目的に反せず、か❜、変更✰必要性、変更後✰内容✰相当性、改正民法第 548 条✰ 4 ✰規定により定型約款✰変更をすることがある旨✰定め✰有無及びそ✰内容そ✰他✰変更に係る事情に照らして合理的なも✰であるとき(同項第 2 号)には、定型約款を準備した当事者が定型約款を変更することにより、個別に相手方と合意をすることなく契約✰内容を変更することが可能な場合があることを明確化している。本条は、改正民法✰当該規定を踏まえても、なお有効と考えられる。
24) 誠実協議、紛争解決、準拠法
第 24 条 誠実協議
(略)
第 25 条 紛争解決
(略)
第 26 条 準拠法
(略)
【検討項目】
⚫ 一般的な誠実協議条項
⚫ 合意管轄✰裁判地✰選択
⚫ 準拠法✰国✰選択
【解説】
⚫ 第 24 条は誠実協議に関する定めである。こ✰部分はモデル契約条項第 19 条と同旨✰規定であるから、そ✰解説(3.2(3)19) 誠実協議)を参照いただきたい。
⚫ 第 25 条は紛争処理に際して✰合意管轄に関する定めである。こ✰部分はモデル契約条項第 20
条と同旨✰規定であるから、そ✰解説(3.2(3)20) 紛争解決)を参照いただきたい。
⚫ 第 26 条は準拠法に関する定めである。こ✰部分はモデル契約条項第 21 条と同旨✰規定であるから、そ✰解説(3.2(3)21) 準拠法)を参照いただきたい。
4. その他の法的論点
ここまで産業保安分野におけるプラントデータ✰利用✰ユースケースを念頭に、プラントデータ✰利用に関する契約をめぐる法的論点等を整理し、モデル契約条項及びモデル規約条項を解説したが、以下においては、上記✰検討等において対象としなかった法的論点に❜いて、補足的に解説を行う。
4.1 複数当事者が共同して新たなデータを創出する形態の取引の場合
本契約ガイドライン✰ユースケース(2.1)においては、プラントデータ受領者が、複数✰プラントデータ提供者からデータを取得、蓄積し、それら✰データをビッグデータとして活用して新たなデータを開発し、当該サービスをサービス利用者に提供する、という取引を取り扱った。
また、本契約ガイドライン✰ユースケースにおけるスキームと同様、新たなデータ✰創出そ✰も
✰に❜いてはプラントデータ受領者が行うも✰✰、プラントデータ受領者へ✰プラントデータ✰提供や、そ✰前提となるプラントデータ✰収集✰局面において、プラントデータ提供者が独自✰ノウハウを提供したり、多大な労力を投入したりする等して、サービスに対するプラントデータ提供者
✰寄与度が相当大きいと評価される場合には、上記✰共同開発型✰スキームに準じて取り扱うことが合理的な場合もある。
甲
開示データ
データ提供
乙
開示データ
共同開発
派生データ等
分析モデル
派生データ
サービス提供
派生データ等
丙
図 4-1 複数当事者が共同して新たなデータを創出する形態の取引
こうした共同開発型✰スキームにおいては、プラントデータ提供者としては、本契約ガイドライン✰ユースケース✰場合以上に、派生データ等やプラントデータ受領者✰提供するサービスに❜いて自らにも権利を帰属させたり、より多く✰利用権限✰配分を希望するも✰と考えられる。こ✰場合、あらかじめ複数当事者✰寄与度に応じて権利を共有したり分属させる枠組みを採用することもあり得るが、そもそも複数当事者✰寄与度をど✰ように評価するか自体に明確な基準があるわけではないし、また、共同開発✰成果としてど✰ような価値が生じることとなるかに❜いて、契約締結段階では予測が困難な場合もある。
さらに、多数✰プラントデータ提供者が参加する共同開発型✰スキーム✰場合は、参加✰態様や寄与度等✰異なるプラントデータ提供者間で互いに合理性を見出し得るような内容✰規律を採用
する必要があり、利害調整✰難易度はさらに高まる。
そこで、共同開発型✰スキームにおいては、予定される個々✰取引✰態様、サービス✰内容等を踏まえ、いかなるデータを創出しそれをど✰ようにサービスに活用するか(契約当事者にど✰ような利用を認めるか、第三者へ✰提供等を可能とするか等)、権利✰帰属や収益費用等をど✰ように分配するか、取引終了時に創出されたデータをど✰ように処理するか等に❜いて、慎重に検討する必要がある。
こ✰ような場合✰考え方としては、AI・データ契約ガイドラインにおける「データ創出型」契約
に❜いて✰議論が参考となる18。
4.2 データ提供者及びデータ受領者以外の事業者がデータ取引に関与する場合
本契約ガイドライン✰ユースケース(2.1)を踏まえ、モデル契約条項で想定した取引事例(3.2(1))及びモデル規約条項で想定した取引事例(3.3(1))においては、プラントデータ提供者が自ら保有するプラントデータを自ら収集してプラントデータ受領者に提供し、プラントデータ受領者もまた自ら新たなデータ✰開発・サービス✰提供を行う取引を検討した。すなわち、プラントデータ提供者及びプラントデータ受領者(プラットフォーム事業者)以外には、関係する事業者が存在しない場合を前提とするデータ取引であった。
しかし、現実✰データ活用✰場面においては、むしろ、プラントデータ提供者及びプラントデータ受領者(プラットフォーム事業者)以外✰事業者がデータ取引に関与する場合も多く想定される
(図 4-2)。
例えば、プラントデータ提供者✰側では、プラント運転データ✰生成にあたり、センサメーカーやソフトウェアメーカーが関与していることや、プラント設計データ✰一部には他エンジニアリング会社からライセンスを受けた機密情報が含まれていることが考えられる(「2.3(1)4)b 第三者が創出に関わったデータ」参照)。
また、プラントデータ受領者✰側では、プラントデータ受領者が自らデータ活用✰知見等を有している場合はともかく、そうではない場合には、データ活用✰知見等を有するデータ分析事業者や
➺ンサルティング事業者等がサービス開発等✰実務を担うこととなる。さらに、提供されるサービス✰内容等によっては、データセンター事業者やクラウドサービス提供事業者等が新たなデータ✰開発・サービス✰提供等に関与することも想定される。また、そもそも単一✰事業者がプラントデータ受領者となる✰ではなく、複数✰事業者が共同してプラントデータ受領者となり、サービス✰共同開発を行う等✰取引形態もあり得る。
18 AI・データ契約ガイドライン 49 ページ以下。
乙
開示データ
派生データ等
分析モデル
派生データ等
派生データ
関与
他の事業者
関与
他の事業者
甲
開示データ
データ提供
図 4-2 データ提供者及びデータ受領者以外の事業者によるデータ取引への関与
当然✰ことながら、こうしたプラントデータ提供者及びプラントデータ受領者(プラットフォーム事業者)以外✰他✰事業者がデータ取引に関係を有する場合には、契約当事者同士✰みならず、他✰関係事業者と✰間✰利害関係も十分考慮に入れた上でスキームを設計する必要が生じる。例えば、あらかじめ当該事業者と✰契約関係において適切にデータ✰利用権限を定めることや、あるいは対象データから他✰事業者が関与するデータを除外、分離したりする等✰処理を行うことが考えられる19。場合によっては、より端的に、これら✰他✰事業者も契約当事者に含めて統合的な契約を締結することが望ましいこともある。
こ✰ような場合✰考え方としては、AI・データ契約ガイドラインにおける検討を参照することが有用である20。
4.3 プラットフォームのサービス利用者にデータ提供者以外の第三者を含む場合
本契約ガイドライン✰ユースケース(2.1)を踏まえ、モデル規約条項において想定した取引事例
(3.3(1))においては、すべて✰プラントデータ提供者(甲 1…n)がプラントデータ受領者兼プラットフォーム事業者(乙)✰提供するサービスを利用するという関係にある取引を検討した。すなわち、プラントデータ提供者(甲 1…n)以外✰事業者✰サービス✰利用は認めないことを前提とするも✰であった。
しかし、産業保安分野におけるデータ活用✰場面において、プラントデータ提供者(甲 1…n)以外✰第三者✰事業者(丙)に対して、統計情報(複数人✰情報から共通要素に係る項目を抽出して同じ分類ごとに得られるデータ)や機械学習✰手法を用いて生成されたデータを提供するようになることや、プラント✰配管✰腐食に関する解析モデルを組み込んだ計画提案サービスを提供するようになること等は、今後大いに考えられる。こ✰ような場合、サービス利用者に、プラントデータ提供者(甲 1…n)以外✰第三者✰事業者(丙)を含んだ検討が必要になる(図 4-3)。
19 本契約ガイドライン✰モデル契約条項第 5 条第 4 項及びモデル規約条項第 10 条第 4 項✰ような規定は、契約当事者以外✰第三者がデータ創出等に関わる取引においても活用が想定されるも✰である。
20 AI・データ契約ガイドライン 92 ページ。
元プラント
データ
開示データ
(「本データ」)
元プラントデータ
開示データ
(「本データ」)
元プラントデータ
開示データ
(「本データ」)
データに関する利用許諾契約
[乙]
プラントデータ受領者
・プラットフォーム事業者(サービス提供者)
「本専用領域」 「本派生データ等」
サービス利用契約
開示データ
(「本データ」)
契約
サービス提供
データに関する利用許諾契約
サービス提供
サービス利用契約
サービス提供
契約
データに関する利用許諾契約
サービス提供
サービス利用契約
「本専用領域」
開示データ
(「本データ」)
「本専用領域」
開示データ
(「本データ」)
派生データ
分析モデル
[甲]
プラントデータ提供者
・サービス利用者
[丙]事業者
(サービス利用者)
[甲]
プラントデータ提供者
・サービス利用者
[丙]事業者
(サービス利用者)
[甲]
プラントデータ提供者
・サービス利用者
サービス提供
図 4-3 プラットフォームのサービス利用者としてデータ提供者以外の第三者を含む場合の取引
プラットフォーム✰サービス利用者としてデータ提供者以外✰第三者を含む場合、プラットフォーム事業者が利用規約を作成するにあたっては、プラットフォーム事業者と当該第三者と✰間✰サービス利用契約✰内容も考慮に入れる必要が生じる。
プラットフォーム✰サービス利用者としてデータ提供者以外✰第三者を含んでいないモデル規約(3.3)と比べると、主な契約上✰留意事項として、規約✰目的、サービスに関する保証✰在り方、サービス利用✰対価✰定め方、プラントデータ提供者✰提供方法✰定め方等に差異が生じるも✰と考えられる。
こ✰ような場合✰考え方としては、プラットフォーム✰サービス利用者としてデータ提供者以外
✰第三者を含む場合✰取引を想定している、AI・データ契約ガイドラインにおける検討や21、農業分野におけるデータ契約ガイドライン✰検討を参照することが有用である22。
21 AI・データ契約ガイドライン 78 ページ、84 ページ等。
22 農林水産省「農業分野におけるデータ契約ガイドライン」106 ページ等。
データの利用に関する契約ガイドライン産業保安版
第 2 版
別冊 1 モデル契約
平成 31 年 4 月
経済産業省
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構委託先 株式会社三菱総合研究所
本ひな形は、すべての取引においてそのまま利用いただけるものではないため、個々の取引ごとに必要な条件の検討を行った上で、契約を作成していただきたい。 個別の条項の考え方については、「データの利用に関する契約ガイドライン産業保安版 第2版」 3.2の解説を参照いただきたい。 |
プラントデータの提供に関する契約
【注】契約の名称は他の名称でも差し支えなく、例えば「データ利用許諾契約」という呼び方も考えられる。
○○○株式会社(以下「甲」という)及び○○○株式会社(以下「乙」という)とは、甲から乙への
○○○データの提供[利用許諾]に関し、以下のとおり契約(以下「本契約」という)を締結する。
第 1 条 (定義)
本契約において、次に掲げる用語は次の定義による。
(1) 「本データ」とは、甲が保有し乙に提供するものとして別紙1[本データの仕様]に定めるデータをいう。
(2) 「本目的」とは、[乙が、甲が提供する本データを活用し産業保安分野に資するノウハウやツールの開発、及びサービスの提供をするために利用すること]をいう。
(3) 「本派生データ等」とは、乙が本目的のために新たに開発したデータ、解析モデルその他の成果物のうち、本データを利用して新たに開発する関係にあるものを総称していう。
第 2 条 (データの提供方法)
甲は、本契約期間中、乙に対し、本データを、[別紙1に定める時期及び方法/乙の指定する方法
(CD-Rメディア等)とデータ形式(テキストファイル等)]により、乙又は乙が指定した者に提供する。
第 3 条 (データの利用許諾)
1 乙は、甲から提供を受けた本データを、本契約期間中、非独占的に、本目的の範囲でのみ利用することができる。この利用には、本目的のために、取得、閲覧、複製、保管、修正、加工、分 析、削除等することが含まれる。
2 本データに関する知的財産権(データベースの著作物に関する権利を含むがこれに限られない)は、甲に帰属する。
3 甲は、本契約に明示的に定められているところを除き、乙に対して、本データに関する何らの権利も譲渡、移転、利用許諾するものではないことを相互に確認する。
第 4 条 (データ提供の対価)
1 乙は、第2条に基づく本データ提供の対価として、甲に対し、[記載例:月額金○○円(税別)]を支払うものとする。
2 乙は、本契約期間中、甲に対し、前項に定める金額に消費税及び地方消費税相当額を加算した金
額を、[記載例:データ受領月の翌月○日]までに、甲指定の銀行口座へ振り込み支払うものとする。なお、振込手数料は乙の負担とする。
3 [第1項の本データ提供の対価は、歴月ごとに発生するものとし、本契約の有効期間に1歴月に満たない期間があるときは、当該期間は[日割計算する/切り捨てる/切り上げる]。]
第 5 条 (データの保証)
1 甲は、本データが、適法かつ適切な方法によって取得されたものであることを表明し、保証する。
2 甲は、本データの正確性、完全性、安全性、有効性を保証しない。
3 甲は、本データが第三者の知的財産権その他の権利を侵害しないものであることを保証しない。
4 甲は、本データに第三者の知的財産権の対象となるデータが含まれる等、乙の利用につき制限があり得ることが判明した場合には、当該第三者の許諾を得ること又は当該データを除外する措置を講じること等により、乙が本データを利用できるよう努める。
第 6 条 (クレーム等の対応責任)
乙は、乙による本契約に違反する態様での本データの利用に起因若しくは関連して生じたクレーム又は請求について、乙の費用と責任で解決するものとする。また、当該クレーム又は請求への対応に関連して甲に費用が発生した場合又は賠償金等の支払を行った場合、甲の責めに帰すべき事由による場合を除き、乙は当該費用及び賠償金等を負担するものとする。
第 7 条 (データの利用状況)
1 甲は、乙に対し、乙による本データの利用が本契約の条件に適合しているか否か検証するために必要な利用状況の報告を求めることができるものとする。
2 甲は、[合理的な基準により、]前項に基づく報告が本データの利用状況を検証するのに十分ではないと判断した場合、○○営業日前に書面による事前通知をすることを条件に、1年に1回を限度として、乙の営業所において、乙による本データの利用状況の監査を実施することができるものとする。この場合、甲は、乙の情報セキュリティに関する規程その他の乙が別途定める社内規程を遵守するものとする。
3 前項による監査の結果、乙が本契約に違反して本データを利用していたことが発覚した場合、乙は甲に対し監査に要した費用及びデータ利用に係る追加の対価を支払うものとする。なお、本項の規定は、乙による甲に対する損害賠償請求及び本契約の解除を妨げるものではない。
第 8 条 (データの管理)
1 乙は、甲の書面による事前の承諾のない限り、本データを第三者に開示、提供、漏えいし、また本目的外に利用してはならない。ただし、次の各号のいずれか一つに該当するデータについてはこの限りでない。
(1) 本契約に違反することなく、既に公知であったもの
(2) 自己が正当に保有していたもの
(3) 自己の責によらず公知となったもの
(4) 正当な権利を有する第三者より秘密保持義務を負うことなく入手したもの
2 [乙は、本データが、甲において営業秘密(不正競争防止法第2条第6項に定めるものをいう。以下同じ)として管理されている情報であることを確認する。]
3 乙は、本データを秘密に保持するため、本データを他の情報と明確に区別して保管しなければならず、所管官庁のガイドラインに従うと共に、その他秘密保持のために合理的な措置を講じ、善良な管理者の注意をもって取り扱わなければならない。
4 甲は、本データの管理状況について、乙に対して何時でも書面による報告を求めることができ る。この場合において、本データの漏えい等のおそれがあると甲が判断した場合、甲は、乙に対して本データの管理方法の是正を求めることができる。
5 前項の報告又は是正の要求がなされた場合、乙は速やかにこれに応じなければならない。
6 本条に基づく義務は、本契約終了後〇年間存続する。
第 9 条 (損害軽減義務)
1 乙は、本データの漏えい等を発見した場合、直ちに甲にその旨を通知しなければならない。
2 乙は、乙に起因する本データの漏えい等が生じた場合、甲の損害を最小限にとどめるために必要な措置を自己の費用と責任で講じなければならない。
第 10 条 (秘密保持義務)
1 甲及び乙は、本契約に関連して、相手方が開示にあたり、書面・口頭・その他方法を問わず、秘密情報であることを表明した上で開示した情報(第8条によって規律される本データを除く。以下「秘密情報」という)を、相手方の書面による事前の承諾なしに第三者に開示、提供、漏えいし、また本契約の履行以外の目的に使用してはならない。ただし、法令上の強制力を伴う開示請求が公的機関よりなされた場合は、その請求に応じる限りにおいて、開示者への速やかな通知を行うことを条件として開示することができる。
2 前項の規定にかかわらず、次の各号の一に該当する情報は、秘密情報にあたらないものとする。
(1) 開示の時点で既に被開示者が保有していた情報
(2) 秘密情報によらず被開示者が独自に生成した情報
(3) 開示の時点で公知の情報
(4) 開示後に被開示者の責に帰すべき事由によらずに公知となった情報
(5) 正当な権利を有する第三者から秘密保持義務を負うことなく開示された情報
3 本条に基づく義務は、本契約終了後○年間存続する。
第 11 条(本派生データ等の取扱い)
1 本派生データ等に関する知的財産権(データベースの著作物に関する権利を含むがこれに限られない)は、本データの全部又は一部に復元可能な部分を除き、乙に帰属し、乙が本派生データ等の利用権限(第三者に提供する権限を含む)を有する。
2 乙は、甲に対して、[甲の業務の使用に必要な限度で、][無償で、]本派生データ等の利用を許諾する。本派生データ等の利用の開始時期及び具体的条件については、甲乙が協議して定め る。
3 乙は、本派生データ等及び当該本派生データ等を利用して第三者に提供したサービスによって売上を得たときには、乙が獲得した売上額の○○%を甲に対して支払う。
第 12 条 (期間、残存条項)
1 本契約の有効期間は、20○○年○月○日から20○○年○月○日までとする。
2 前項の規定にかかわらず、期間満了の○か月前までに、いずれかの当事者より期間満了日をもって本契約を終了する旨の書面による通知がなされない限り本契約は自動的に○か月間更新するものとし、以後も同様とする。
3 本契約終了後も、本契約において別途定める条項のほか、第6条(クレーム等の対応責任)、第
11条第1項及び第2項(派生データ等の取扱い)、本条(期間、残存条項)、第15条(損害賠
償)、第17条(契約終了後の措置)、第18条(譲渡禁止)、第19条(誠実協議)、第20条(紛争解決)並びに第21条(準拠法)の規定は、甲と乙との間で有効に存続する。
第 13 条 (解除)
1 甲又は乙は、相手方が次の各号の一に該当する場合、[何らの通知、催告なしに/書面にて通知することにより]直ちに本契約の全部又は一部につき、その債務の履行を停止し、又は解除することができる。
(1) 財産又は信用状態の悪化等により、差押え、仮差押え、仮処分、強制執行若しくは競売の申立てがなされ、又は租税公課を滞納し督促を受けたとき
(2) 破産手続開始、民事再生手続開始、会社更生手続開始、特別清算開始その他法的倒産手続開始の決定を受け、若しくは自らそれらの申立てをしたとき、又は解散(法令に基づく解散も含む)、清算若しくは私的整理の手続に入ったとき
(3) 手形若しくは小切手を不渡とし、その他支払不能又は支払停止となったとき
2 甲及び乙は、相手方が本契約のいずれかの条項に違反し、又は相手方の責めに帰すべき事由によって本契約を継続し難い重大な事由が発生し、書面による催告をしたにもかかわらず、14日以内にこれを是正しないときは、本契約の全部又は一部を解除することができる。
3 前各項における解除が行われたときは、解除を行った当事者は、相手方当事者に対し、損害賠償を請求することができる。また、解除された当事者は、当然に期限の利益を喪失し、相手方に対して負担する債務を直ちに弁済しなければならない。
第 14 条 (反社会的勢力の排除)
(略)
第 15 条 (損害賠償)
甲又は乙は、本契約に関し、故意又は過失により相手方に損害を与えたときは、それにより相手方が被った損害を賠償しなければならない。
第 16 条 (不可抗力)
甲及び乙は、天災地変、戦争、暴動、内乱、自然災害、その他の不可抗力、停電、通信設備等の事 故、法定定期修理等によるサービスの提供の停止又は緊急メンテナンス、法令の制定改廃その他甲及び乙の責に帰すことができない事由による本契約の全部又は一部の履行遅滞若しくは履行不能については責任を負わない。
第 17 条 (契約終了後の措置)
1 乙は、事由の如何を問わず、本契約が終了した日以降は、受領済みの本データを利用してはならない。
2 乙は、本契約が終了したときは、別紙1で定める手続に従い、速やかに本データを廃棄又は消去しなければならない。
3 乙は、本契約終了後も、本派生データ等(本データの全部又は一部に復元可能な部分を除く)を保有し、利用することができるものとする。
第 18 条 (譲渡禁止)
甲及び乙は、相手方の書面による事前の承諾のない限り、本契約上の地位及び本契約によって生じる権利義務の全部又は一部を第三者に譲渡し、又は担保に供してはならない。
第 19 条 (誠実協議)
本契約の規定に定めがない事項又は本契約の各条項の規定に疑義が生じた場合、甲及び乙は、誠実に協議して解決を図る。
第 20 条 (紛争解決)
本契約に関して甲乙間に生じる一切の紛争については、○○地方裁判所を第xxの専属的合意管轄裁判所とする。
第 21 条 (準拠法)
本契約の解釈及び適用にあたっては、日本法が適用される。
以上、本契約締結の証として本書2通を作成し、甲乙記名押印の上、各1通を保有する。
20○○年○○月○○日
甲:乙:
別紙1 本データの仕様(例)
番号 | データ 項目 | データ項目詳細 (提供条件) | データ取得 時期・期間 | データ形式 | データ整備 費用負担 | データ 授受方法 | データ廃棄・ 消去方法 |
1 | 配管肉 厚検査記録 | V101 流入ラインの 配管肉厚の検査記録データ | 1990 年 ~2017 年 | CSV 形式 | なし | パスワード付ZIP 形式 | |
2 | 気象条件 | 観測地点A における、気温・湿度・日射量の記録データ | 1990 年 ~2017 年 | CSV 形式 | なし | パスワード付ZIP 形式 | |
3 | ヒヤリハット記録 | ○○事業所○○課で報告されたヒヤリハット記録(個人情報を削除した状態) | 2010 年 ~2017 年 | TEXT 形式 | 乙(○円) | パスワード付ZIP 形式 | |
4 | |||||||
5 |
⚫ 本別紙記載の本データは、甲から乙に提供されたデータである。第 11 条で規定している本派生データ等を対象としたものではない。
⚫ 本別紙の作成にあたってはプラントデータカタログが参考となる(本契約ガイドライン表 1-1 参照)。
データの利用に関する契約ガイドライン産業保安版
第 2 版
別冊 2 モデル規約
平成 31 年 4 月
経済産業省
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構委託先 株式会社三菱総合研究所
本ひな形は、すべての取引においてそのまま利用いただけるものではないため、個々の取引ごとに必要な条件の検討を行った上で、規約を作成していただきたい。 個別の条項の考え方については、「データの利用に関する契約ガイドライン産業保安版 第2版」 3.3の解説を参照いただきたい。 |
○○○○解析モデル提供サービス利用規約
第 1 条 (目的)
1 本規約は、一般社団法人○○○(以下「乙」という)が提供する化学プラント向け解析モデル提供サービスに関し、乙と本サービスの利用者(以下「甲」という)との間の関係等について定める。
2 乙は、甲に対し、本規約の規定に従い本サービス(次条第1号に定義される。以下本条において同じ)を提供し、甲は、本規約の規定に従い本サービスを利用することができるものとする。
第 2 条 (定義)
本規約において、次に掲げる用語は次の定義による。
(1) 「本サービス」とは、乙が提供する化学プラント向け解析モデル提供サービスをいい、その内容は、別紙1[本サービスの仕様等]のとおりとする。
(2) 「本契約」とは、本規約の規定に基づき乙と甲との間で成立する、本サービスの利用等(甲の乙に対する本データの提供を含む)に関する契約をいう。
(3) 「本目的」とは、[乙が、本サービスの各利用者に対し、すべての利用者から提供されたデータを活用して本サービスを提供すること(本サービスの提供に必要な解析モデル、ノウハウ、ツール等を開発、保全、改良等することを含む)]をいう。
(4) 「本データ」とは、甲が保有し、本サービスの利用に際し乙に提供する、別紙2[本データの内容]に定めるデータをいう。
(5) 「本派生データ等」とは、本データを利用して本目的のために乙が新たに作成したデータ、解析モデルその他の成果物(発明、著作物その他の知的財産権の対象となるものを含む)のうち、本データを利用して新たに開発する関係にあるものを総称していう。
(6) 「本専用領域」とは、乙が保有し管理するサーバにおいて、甲の乙に対する本データの提供及び乙の甲に対する本サービスの提供に用いるために設定された、甲及び乙のみがアクセス可能な領域をいう。
(7) 「本アクセスID等」とは、甲がその本専用領域にアクセスする際の認証に用いるID、パスワードその他の情報をいう。
第 3 条 (利用の申込み、承諾等)
1 本サービスの利用を希望する事業者は、本規約の内容に同意した上で、乙に対し、乙の指定する方法により、本サービスの利用を申し込むものとする。
2 乙は、前項の申込みを受けたときは、所要の審査を行い、当該申込者による本サービスの利用を承認するときは、当該申込者に対し、その申込みを承諾する旨を通知する。
3 乙は、第1項の申込みをした者が次のいずれかに該当するときは、当該申込者による本サービス
の利用を承認しないものとする。
(1) 当該申込者から申告のあった事項に事実に反するものが含まれ、又は重要な事実について申告がないとき。
(2) 当該申込者が過去に乙から本契約を解除されたことがある者であるとき。
(3) 当該申込者が第17条第1項各号のいずれかに該当するとき。
(4) 当該申込者による本サービスの利用を承認することが本サービスの利用者の共同の利益に反するとき。
(5) 前各号に掲げるもののほか、当該申込者による本サービスの利用を承認することが適当でないと乙が認めるとき。
4 乙が第1項の申込みを承諾したときは、その旨の通知が当該申込者に到達した時(ただし、乙が別途の時点を指定した場合はその時)をもって、当該申込者を甲として、乙との間に、本規約の規定のとおりの内容の本契約が成立するものとする。
第 4 条 (本サービスの提供条件等)
1 乙は、甲に対し、法令及び本規約の規定に従い、かつ、善良な管理者としての注意義務をもって、本専用領域を経由して本サービスを提供するものとする。
2 乙は、甲に対し、本サービスの正確性、完全性、安全性及び有効性を保証しない。
3 乙は、甲に対し、本サービスの利用が第三者の知的財産権その他の権利を侵害しないことを保証する。
4 本サービスに関する知的財産権(ソフトウェアの著作物及びデータベースの著作物に関する権利を含むがこれに限られない)は、乙に帰属する。
5 甲及び乙は、本規約に明示的に定められているところを除き、甲に対し、本サービスに関する何らの権利も譲渡、移転、利用許諾されるものではないことを相互に確認する。
6 乙は、甲に対し、本サービスの利用及び本プラントデータの提供のために本専用領域にアクセスする権限を与え、当該アクセスの際の認証に必要な本アクセスID等を付与する。
7 甲は、法令及び本規約の規定に従い、本専用領域を経由して本サービスを利用することができる。
第 5 条 (本サービス利用の対価)
1 甲は、本サービスの利用の対価として、乙に対し、[記載例:月額金○○円(税別)]を支払うものとする。
2 甲は、乙に対し、前項に定める金額に消費税及び地方消費税相当額を加算した金額を、[記載 例:データ受領月の翌月○日]までに、乙指定の銀行口座へ振り込み支払うものとする。なお、振込手数料は甲の負担とする。
3 [第1項の本サービスの利用の対価は、歴月ごとに発生するものとし、本契約の有効期間に1歴月に満たない期間があるときは、当該期間は[日割計算する/切り捨てる/切り上げる]。]
4 甲及び乙は、第1項の本サービスの利用の対価の規定が、甲から本サービスの利用に際し乙に対し本データが提供されることを踏まえた内容であることを相互に確認する。
第 6 条 (本サービスの利用者の遵守事項)
1 甲は、次のいずれかに該当し、又はそのおそれのある行為をしてはならない。
(1) 乙又は第三者の利用者の財産権(知的財産権を含む)、営業秘密、プライバシーその他の権利利益を侵害する行為。
(2) 乙が保有し管理するサーバにおいて、本専用領域以外の領域にアクセスし、又はそれらのアクセスを試みる行為。
(3) 本サービスを構成するソフトウェアについて、その手法を問わず、構造、機能、処理方法等を解析し、一部若しくは全部の複製を作成し、又はソースコードを得ようとする行為。
(4) 本サービスを構成するソフトウェアの全部又は一部を他のソフトウェアの一部に組み込む行為。ただし、乙が特に認めたものを除く。
(5) 本サービスを構成するソフトウェアに対し不正なデータ、命令、プログラム等を入力し、又は本専用領域にそれらを設置する行為。
(6) 乙が定める本サービスの利用方法に違反する行為。
(7) 本サービスの円滑な提供のために必要な事項として乙が遵守を求める事項に違反する行為。
(8) 前各号に掲げるもののほか、乙による他の利用者に対する本サービスの円滑な提供又は他の利用者による本サービスの円滑な利用を妨げる行為。
2 甲は、乙から付与された本アクセスID等を秘密として管理し、これを第三者に対し開示、漏えい、貸与、譲渡、質入れ等してはならない。
3 甲は、乙から付与された本アクセスID等が第三者に漏えいし、若しくはこれを第三者が不正に使用していること又はこれらのおそれがあることを知ったときは、直ちに乙にその旨を報告し、乙の指示に従うものとする。
4 本アクセスID等を認証に用いて本専用領域へのアクセスがあった場合、当該アクセスは、当該本アクセスID等を付与された甲により行われたものとみなされるものとする。ただし、乙の責めに帰すべき事由により当該本アクセスID等が第三者に漏えいしこれを第三者が使用したとき又は乙により当該アクセスが行われたときはこの限りでない。
5 乙は、甲が第1項から第3項までの規定に違反し、又はそのおそれがあると認めるときは、甲に対し事前の通知をすることなく、甲に対する本サービスの全部又は一部の提供を一時中断することができるものとし、甲は、乙がこれらの一時中断を行うことを本規約をもってあらかじめ承諾する。この場合において、当該一時中断により甲が被った損害、損失等については、乙は一切の責任を負わず、本サービスの利用の対価の清算も行わない。
第 7 条 (xxxx等の対応責任)
1 乙は、本サービスの利用に伴い第三者の権利を侵害したことを理由として甲が第三者からクレーム又は請求等を受けた場合には、これを乙の費用と責任で解決するものとし、当該クレーム又は請求等への対応に関連して甲に費用が発生したとき又は甲が賠償金等の支払を行ったときは、甲に対し当該費用及び賠償金等を負担するものとする。
2 前項のクレーム又は請求等が甲による本契約に違反する態様での本データの利用に起因又は関連するものである場合には、甲は、前項の規定にかかわらず、当該クレーム又は請求等を自己の費用と責任で解決するものとし、当該クレーム又は請求等への対応に関連して乙に費用が発生したとき又は乙が賠償金等の支払を行ったときは、乙に対し当該費用及び賠償金等を負担するものと
する。
第 8 条 (本サービスの変更、中断、終了等)
1 乙は、必要に応じ、随時、甲に対し事前の通知をすることなく本サービスの全部又は一部の内容を変更し、又は一時中断することができるものとし、甲は、乙がこれらの変更又は一時中断を行うことを本規約をもってあらかじめ承諾する。この場合において、乙は、あらかじめ〇日以上の期間をおいて(急速を要する場合は当該変更又は一時中断の後速やかに)、乙の定める方法で、当該変更又は一時中断の内容を甲に通知するものとする。
2 乙が本サービスの全部又は一部につき重要な変更をしようとする場合には、乙は、前項の規定にかかわらず、甲に対し、あらかじめ当該変更の内容を通知し、甲の承諾を得なければならないものとする。この場合において、甲が当該通知を受領してから○日以内に当該変更を承諾したときは、本サービスの内容は、上記期間の満了の時に、当該通知の内容のとおりに変更されるものとし、甲が上記期間内に当該変更を承諾しないときは、本契約は、当該期間の満了をもって当然に終了するものとする。
3 乙は、本サービスの提供が困難となるやむを得ない事情が生じたときは、甲を含むすべての利用者に対する本サービスの提供を終了することができる。この場合において、乙は、すべての利用者に対し、あらかじめ[3か月前]までに書面によりその旨を通知し、その承諾を得なければならないものとし、当該承諾をした利用者と乙との間の本契約は、当該期間の満了をもって終了する。
4 本条の規定による本サービスの内容の変更、一時中断及び終了並びに本契約の終了により甲が被った損害、損失等については、乙は一切の責任を負わず、本サービスの利用の対価の清算も行わない。[ただし、本契約が終了した場合における本サービスの利用の対価の清算については、第 5条第3項の規定によるものとする。]
第 9 条 (本データの提供方法)
甲は、乙に対し、本データを、別紙2に定める時期に、乙の別途指定する形式、方法等で本専用領域にアップロードすることにより提供する。
第 10 条 (本データの保証)
1 甲は、本データが、適法かつ適切な方法によって取得されたものであることを表明し、保証する。
2 甲は、本データの正確性、完全性、安全性、有効性を保証しない。
3 甲は、本データが第三者の知的財産権その他の権利を侵害しないものであることを保証しない。
4 甲は、本データに第三者の知的財産権の対象となるデータが含まれる等、乙の利用につき制限があり得ることが判明した場合には、当該第三者の許諾を得ること又は当該データを除外する措置を講じること等により、乙が本データを利用できるよう努める。
第 11 条 (本データの利用許諾)
1 乙は、甲から提供を受けた本データを、本契約期間中、非独占的に、本目的の範囲でのみ利用することができる。この利用には、本目的のために、取得、閲覧、複製、保管、修正、加工、分析、削除等することが含まれる。
2 本データに関する知的財産権(データベースの著作物に関する権利を含むがこれに限られない)は、甲に帰属する。
3 甲及び乙は、本規約に明示的に定められているところを除き、乙に対し、本データに関する何らの権利も譲渡、移転、利用許諾されるものではないことを相互に確認する。
第 12 条 (本データの管理)
1 乙は、甲の書面による事前の承諾のない限り、本データを第三者(本サービスの他の利用者を含む。以下本条において同じ)に開示、提供又は漏えいし、また本目的外に利用してはならない。ただし、次の各号のいずれか一つに該当するデータについてはこの限りでない。また、法令上の強制力を伴う開示請求が公的機関よりなされた場合は、その請求に応じる限りにおいて、甲に事前に(実務上不可能な場合は事後速やかに)通知を行うことを条件として開示することができ る。
(1) 本規約に違反することなく、既に公知であったもの
(2) 乙が正当に保有していたもの
(3) 乙の責によらず公知となったもの
(4) 乙が正当な権利を有する第三者より秘密保持義務を負うことなく入手したもの
2 乙は、本データを秘密に保持するため、本データを本専用領域内のみにおいて他の情報と明確に区別して保管し、所管官庁のガイドラインに従うと共に、その他秘密保持のために合理的な措置を講じ、善良な管理者の注意をもって取り扱わなければならない。
3 乙は、当該本データのうち甲の営業秘密等に該当するものとして別紙2に定める項目をあらかじめ削除、匿名化する等して復元不可能な状態に加工した場合には、当該加工後のデータを本専用領域外に保管することができる。この場合において、当該加工後のデータに対しては、本条(第 2項を除く)及び第21条の規定はなお適用があるものとする。
4 甲は、自らが提供した本データの管理(前項の加工を含む。以下本項において同じ)の状況について、乙に対して何時でも書面による報告を求めることができる。この場合において、本データの漏えい等のおそれがあると甲が判断した場合、甲は、乙に対して本データの管理方法の是正を求めることができる。
5 前項の報告又は是正の要求がなされた場合、乙は速やかにこれに応じなければならない。
6 本条に基づく義務は、本契約の終了後○年間存続する。
第 13 条 (本派生データ等の取扱い)
本派生データ等に関する知的財産権(データベースの著作物に関する権利を含むがこれに限られな い)は、第4条第4項の規定にかかわらず、本データの全部又は一部に復元可能な部分を除き、乙に 帰属し、乙がその利用権限(本サービスの他の利用者その他の第三者に提供する権限を含む)を有する。
第 14 条 (秘密保持義務)
1 甲及び乙は、次の各号の一に該当する情報(以下「秘密情報」という)を、相手方の書面による事前の承諾なしに第三者に開示、提供又は漏えいし、また本契約に基づく権利の行使若しくは義務の履行以外の目的に使用してはならない。ただし、法令上の強制力を伴う開示請求が公的機関よりなされた場合は、その請求に応じる限りにおいて、開示者に事前に(実務上不可能な場合は事後速やかに)通知を行うことを条件として開示することができる。
(1) 本契約に関連して、相手方が開示にあたり、書面・口頭その他方法を問わず、秘密情報であることを表明した上で開示した情報(第12条によって規律される本データを除く)
(2) 甲による本サービスの利用に伴い甲に提供された情報(本サービスを利用することによって甲が新たに作成したデータその他の成果物を除く)
2 前項の規定にかかわらず、次の各号の一に該当する情報は、秘密情報にあたらないものとする。
(1) 開示の時点で既に被開示者が保有していた情報
(2) 秘密情報によらず被開示者が独自に生成した情報
(3) 開示の時点で公知の情報
(4) 開示後に被開示者の責に帰すべき事由xxxxに公知となった情報
(5) 正当な権利を有する第三者から秘密保持義務を負うことなく開示された情報
3 本条に基づく義務は、本契約の終了後○年間存続する。
第 15 条 (期間、残存条項)
1 本契約は、第3条第4項の規定に基づき本契約が成立した日から、当該日の属する乙の会計年度の末日までの間、有効に存続する。
2 前項の規定にかかわらず、乙が甲に対し、前項の期間満了の○か月前までに、当該期間の満了をもって本契約を終了する旨を書面により通知しなかったときは、本契約は自動的に1年間更新されるものとし、以後も同様とする。
3 本契約の終了後も、本規約において別途定める条項のほか、第4条第4項(本サービスの提供条件等)、第13条(本派生データ等の取扱い)、本条(期間、残存条項)、第19条(損害賠償)、第 21条(契約終了後の措置)、第22条(譲渡禁止)、第24条(誠実協議)、第25条(紛争解決)及び第26条(準拠法)の規定は、甲と乙の間で有効に存続する。
第 16 条 (解約)
甲は、本契約を解約することを希望するときは、乙に対し、あらかじめ[1か月前]までに書面によりその旨を通知しなければならない。この場合において、本契約は、当該期間の満了をもって終了する。
第 17 条 (解除)
1 甲又は乙は、相手方が次の各号の一に該当する場合、[何らの通知、催告なしに/書面にて通知することにより]直ちに本契約の全部又は一部につき、その債務の履行を停止し、又は解除することができる。
(1) 財産又は信用状態の悪化等により、差押え、仮差押え、仮処分、強制執行若しくは競売の申
立てがなされ、又は租税公課を滞納し督促を受けたとき
(2) 破産手続開始、民事再生手続開始、会社更生手続開始、特別清算開始その他法的倒産手続開始の申立てがあったとき、解散(法令に基づく解散も含む)、清算若しくは私的整理の手続に入ったとき
(3) 手形若しくは小切手を不渡とし、その他支払不能又は支払停止となったとき
2 甲及び乙は、相手方が本契約のいずれかの条項に違反し、又は相手方の責めに帰すべき事由によって本契約を継続し難い重大な事由が発生し、書面による催告をしたにもかかわらず、14日以内にこれを是正しないときは、本契約の全部又は一部を解除することができる。
3 前各項における解除が行われたときは、解除を行った当事者は、相手方当事者に対し、損害賠償を請求することができる。また、解除された当事者は、当然に期限の利益を喪失し、相手方に対して負担する債務を直ちに弁済しなければならない。
第 18 条 (反社会的勢力の排除)
(略)
第 19 条 (損害賠償)
甲又は乙は、本規約に関し、故意又は過失により相手方に損害を与えたときは、それにより相手方が被った損害を賠償しなければならない。
第 20 条 (不可抗力)
甲及び乙は、天災地変、戦争、暴動、内乱、自然災害、その他の不可抗力、停電、通信設備等の事 故、法定定期修理等によるサービスの提供の停止又は緊急メンテナンス、法令の制定改廃その他甲及び乙の責に帰すことができない事由による本契約の全部又は一部の履行遅滞若しくは履行不能については責任を負わない。
第 21 条 (契約終了後の措置)
1 乙は、事由の如何を問わず、本契約が終了した日以降は、甲から受領済みの本データを利用してはならない。
2 乙は、本契約が終了したときは、別紙2で定める手続に従い、速やかに甲から受領済みの本データを廃棄又は消去しなければならない。
3 乙は、本契約終了後も、本派生データ等(甲から受領済みの本データの全部又は一部に復元可能な部分を除く)を保有し、利用することができるものとする。
4 甲は、事由の如何を問わず、本契約が終了した日以降は、本サービスを利用することができない。
第 22 条 (譲渡禁止)
甲及び乙は、相手方の書面による事前の承諾のない限り、本契約上の地位及び本契約によって生じる
権利義務の全部又は一部を第三者に譲渡し、又は担保に供してはならない。
第 23 条 (規約の変更)
1 乙は、必要に応じ、随時、本規約の全部又は一部を変更することができるものとし、甲は、これらの変更を乙が行うことをあらかじめ本規約をもって承諾する。乙は、本規約の全部又は一部を変更する場合には、あらかじめ○日以上の期間をおいて、乙の定める方法で、当該変更の内容を甲に通知するものとする。
2 乙が本規約の全部又は一部につき重要な変更をしようとする場合には、乙は、前項の規定にかかわらず、甲に対し、あらかじめ当該変更の内容を通知し、甲の承諾を得なければならないものとする。この場合において、甲が当該通知を受領してから○日以内に当該変更の内容を承諾したときは、本規約及び本契約は、上記期間の満了の時に、当該通知の内容のとおりに変更されるものとし、甲が上記期間内に当該変更の内容を承諾しないときは、本契約は、当該期間の満了をもって当然に終了するものとする。
3 本条の規定による本規約及び本契約の変更又は本契約の終了により甲が被った損害、損失等については、乙は一切の責任を負わず、本サービスの利用の対価の清算も行わない。[ただし、本契約が終了した場合における本サービスの利用の対価の清算については、第5条第3項の規定によるものとする。]
第 24 条 (誠実協議)
本契約若しくは本規約の規定に定めがない事項又は本契約若しくは本規約の各条項の規定に疑義が生じた場合、甲及び乙は、誠実に協議して解決を図る。
第 25 条 (紛争解決)
本契約又は本規約に関する一切の紛争については、○○地方裁判所を第xxの専属的合意管轄裁判所とする。
第 26 条 (準拠法)
本契約及び本規約の解釈及び適用にあたっては、日本法が適用される。
附則
本規約は20○○年○○月○○日より発効する。
以上
別紙1 本サービスの仕様等
(1) 本サービスの概要(下図参照)
元プラントデータ
開示データ
(「本データ」)
元プラントデータ
開示データ
(「本データ」)
元プラントデータ
開示データ
(「本データ」)
モデル規約の内容
(赤矢印)
[乙]
プラントデータ受領者
・プラットフォーム事業者(サービス提供者)
サービス
利用契約
サービス
提供せず
サービス利用契約
サービス提供
サービス
提供せず
データに関する利用許諾契約
サービス 利用契約
サービス提供
「本専用領域」
開示データ
(「本データ」)
「本専用領域」
開示データ
(「本データ」)
サービス提供
データに関する利用許諾契約
「本専用領域」
開示データ
(「本データ」)
データに関する利用許諾契約
「本派生データ等」
派生データ
[甲]
プラントデータ提供者
・サービス利用者
事業者
[甲]
プラントデータ提供者
・サービス利用者
事業者
分析モデル
[甲]
プラントデータ提供者
・サービス利用者
⚫ 乙は、甲に対し、プラントの配管の腐食に関する解析モデルを提供する。
⚫ 解析モデルは、乙が、甲を含む複数のプラントデータ提供者から提供を受けたプラントデータを教師データとして作成し、継続的に改良を加える。
⚫ 本サービスは、甲を含むすべてのプラントデータ提供者が利用することができる(プラントデータ提供者以外の事業者の利用は認めない)。
(2) 本サービスの動作環境
⚫ 本サービスの利用にあたり、甲は、あらかじめ以下の動作環境を準備するものとし、これ以外の環境での動作を乙は保証しない。動作環境の準備に要する費用は、甲の負担とする。
(略)
(3) 本サービスの利用方法
⚫ 甲は、インターネットを経由して本専用領域にアクセスすることにより、解析モデルを利用することができる。
⚫ 解析モデルの種類及びそれぞれの機能、対応プラント、解析結果の出力形式等は以下のとおり。
(略)
⚫ 本専用領域の容量、アクセス方法等は以下のとおり。
(略)
(4) 本データの提供方法
⚫ 甲は、インターネットを経由して本専用領域に本データをアップロードする。
⚫ アップロードの方法等は以下のとおり。
(略)
(5) その他
(略)
別紙2 本データ✰内容
⚫ 甲は、下表✰データを、下表✰並び順にかかわらず、自社固有✰並び順により提供することができる。また、下表に含まれないデータが含まれていても差し支えない。
⚫ 本規約第 12 条第 3 項✰「甲✰営業秘密等に該当するも✰として別紙 2 に定める項目」には、下表✰「一般化」✰欄に○を付している。なお、下表に含まれないデータが含まれている場合、それらも「甲✰営業秘密等に該当するも✰として別紙 2 に定める項目」に該当するも✰とする。
⚫ データ提供✰形式はテキストファイルとする。
項目 | 説明・単位 | 一般化 | ||
プラントデータ | ||||
プラント ID | ||||
会社名称 | プラントが属する会社名。 | 〇 | ||
プラント名称 | プラント✰名称。 | 〇 | ||
プラント番号 | 各社が設定したプラント✰識別番号。 | 〇 | ||
プラント住所 | 国、地域、市町村等 | 〇 | ||
設備データ | ||||
設備 ID | ||||
設備名称 | 各社が設定している設備✰名称 | 〇 | ||
設備番号 | 各社が設定した設備✰識別番号 | 〇 | ||
操業稼働日 | 解析対象✰配管が設置されて以降✰最初✰設備✰稼働開始年月日。 西暦(yyyy/mm/dd) | |||
運転状況 | 点検時✰設備✰運転状況を以下から選択。 A:スタートアップ B:定常運転 C:シャットダウン D:停止 E:そ✰他 | |||
配管データ | ||||
配管 ID | ||||
配管名称 | 各社が設定している配管✰名称 | 〇 | ||
配管番号 | 各社が設定した配管✰識別番号 | 〇 | ||
重要度 | 各社が設定する配管✰重要度を以下から選択。 A:重要度大 B:重要度中 C:重要度低 | |||
設置年月日 | 配管が設置された年月日。西暦(yyyy/mm/dd) | |||
配管系統 | 配管系統をコード表から選択。 | |||
部位構造 | 配管✰構造上✰部位をコード表から選択 | |||
配管仕様 | ||||
外径 | 仕様上✰配管✰外径。単位:mm | |||
肉厚(公称) | 仕様上✰配管✰肉厚。初期肉厚を測定していない場合に元肉厚として使用。 単位:mm | |||
肉厚(実測) | 実測に基づく配管✰元肉厚(初期肉厚、寿命評価基準肉厚)。単位:mm | |||
肉厚測定日 | 肉厚(実測)を測定した年月日。西暦(yyyy/mm/dd) | |||
材質名称 | 各社が定めた配管材質✰名称 | |||
材質分類 | 配管✰材質✰分類をコード表から選択。 | |||
腐食管理値 | ||||
管理値 | 各社が設定する配管✰肉厚✰しきい値。単位:mm | |||
限界値 | 各社が設定する配管✰設備維持限界✰肉厚値。単位:mm | |||
腐れ代 | 将来錆びる事を想定した配管✰錆び代。単位:mm | |||
保温・保冷材✰有無 | 保温・保冷✰ため✰断熱材✰施工✰有無を以下から選択。 A:有り B:無し |
項目 | 説明・単位 | 一般化 | ||
運転データ | ||||
運転 ID | ||||
運転名称 | 各社が設定した運転✰名称 | 〇 | ||
運転番号 | 各社が設定した現行若しくは直近✰運転✰識別番号 | 〇 | ||
流体性状 | ||||
流体名称 | 各社が定めた流体✰名称 | 〇 | ||
流体成分 | 流体✰成分をコード表から選択 | |||
流体状態 | 流体✰気液固相✰状態をコード表から選択 | |||
腐食✰種類 | 流体による腐食✰種類をコード表から選択 | |||
運転条件 | ||||
常用温度 | 通常✰使用状態における配管内部若しくは流体✰温度。単位:℃ | |||
常用圧力 | 通常✰使用状態における配管内部若しくは流体✰圧力。単位:MPa | |||
運転時間 | 配管を設置して以降✰総運転時間。単位:hr | |||
検査データ | ||||
検査 ID 番号 | 各社が設定する検査等✰記録✰識別番号 | 〇 | ||
検査実施日 | 検査を実施した年月日。西暦(yyyy/mm/dd) | |||
検査方法 | 非破壊検査✰方法をコード表から選択 | |||
測定データ | ||||
測定点番号 | 各社が設定した測定点✰識別番号 | 〇 | ||
測定点✰位置 | 管✰円xx✰測定位置。上下(天-地)、方位(東西南北)など | |||
結果(肉厚値) | 測定点✰肉厚。単位:mm | |||
<コード表> (略) |