Contract
競馬ソフト購入契約に係る紛争案件報 告 書
(大 阪 市 消 費 者 保 護 審 議 会)
平 成 2 0 年 1 1 月
目 次
第1 紛争案件の概要
1 当 事 者 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
2 本件ソフトについて ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
3 紛争の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
(1)申出人 A
(2)申出人 B
(3)申出人 C
第2 審議会における処理の経過と結果
1 処理の経過 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
2 あっせんにおける当事者の主張 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
(1)申出人らの主張
(2)相手xxの主張
3 あっせんにあたっての苦情処理部会の考え方 ・・・・・・・・・・・・・4
(1)特定商取引法の適用について
(2)投資商品における説明義務及び適合性原則の類推適用について
(3)不実告知と断定的判断の提供
4 あっせんの結果成立した合意内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
(1)申出人Aについて
(2)申出人Bについて
(3)申出人Cについて
第3 その他、本件における問題点、今後の課題について
1 紹介料の扱い ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
2 不 当 表 示 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
3 大阪市消費者センターにおける事業者指導等について ・・・・・・・・8
資 料
大阪市消費者保護審議会苦情処理部会委員名簿(別紙1)
「競馬ソフト購入契約に係る紛争案件」処理経過(別紙2)
第1 紛争案件の概要
1 当事者
申出人Aは、30歳代の女性である。申出人Bは、20歳代の女性である。申出人Cは、20歳代の男性である。
相手方事業者(以下「相手xx」という。)は、本件競馬ソフトウェア「Z」(以下「本件ソフト」という。)などパソコンソフト等の販売を業とする株式会社である。
2 本件ソフトについて
本件ソフトは、日本中央競馬会(JRA)主催の勝馬投票券(以下「馬券」という。)の購入につき、JRAが運用するインターネット利用の購入サービスシステムと接続して、本件ソフトが自動的に一定の法則にしたがって馬券購入を行うというものである。
他の競馬ソフトウェアと異なる点は、相手方Ⅹの説明やパンフレット等の記載によれば、出走する馬の過去の個別のデータ等に基づく勝馬予想ソフトウェアではなく、各馬の個性とは無関係に統計的な確率論(一定範囲のオッズ(倍率)の馬の勝つ確率が高い、とするもの)に基づいて馬券を購入し、ある程度の回数の馬券購入を行えば、資金が増えるとされている。したがって、パンフレットなどの記載も、勝馬予想ソフトウェアではなく、「資産運用ソフトウェア 『Z』」とされており、その他の宣伝文言も、「新しい
資産運用のご提案」、「投資を始めようと思っている方へ こんな投資方法もあります。」、
「『Z』で安定した収益を確保するということ・・・」、「資産運用ソフトウェア『Z』。その最も大きな特徴は『お金(資産)を増やす』という投資本来の目的に特化した点です。」、「『Z』は日本中央競馬会(JRA)が主催する競馬を投資対象とした資産運用ソフトです。」などという表現が並べられている。
このように、ギャンブルの予想ではなく、資産運用のためのソフトウェアであることが強調されているうえに、投資や競馬に関する知識は必要がないことが謳われている。
実際、本件ソフトの利用者は、本件ソフトの提示する予想を参考にして馬券を購入するのではなく、予め、投資資金の限度額や「コース」(オッズの範囲の違いのようである。
「ブロンズコース」「シルバーコース」「ゴールドコース」の3種類がある。)を設定しておき、ソフトを起動させてJRAのシステムにネット接続しておけば、特段の行為を行わなくても、本件ソフトが自動的に馬券を購入するようになっている。
なお、大阪市消費者保護審議会苦情処理部会(以下「苦情処理部会」という。)では、相手方Ⅹ及び本件ソフト開発業者に対して、本件ソフトのメリットの根拠となる上記の確率論等の説明を求め、統計的なデータの提供を求めたが、具体的な説明はなく、また、データの提供もなされなかった。したがって、この本件ソフトが自動的に購入する馬券の当たる確率が、本件ソフトを使わなかった場合に比して高いか否か、また、仮に高いとしても、投資額を上回る利得を得る可能性がどの程度なのか、といった、本件ソフトの有効性については実証されていない。苦情処理部会としては、この重要な前提問題についても強い疑問を持つものであることを付け加えておきたい。
3 紛争の概要
(1) 申出人A
職場の同僚に連れられて、平成18年4月20日に、相手方Ⅹの営業所を訪れ、深夜に及ぶ長時間勧誘を受けて、本件ソフト及びノートパソコンを信販契約で購入した(契約書上の代金内訳:本件ソフト89万2500円、パソコン10万500
0円。月3万2200円60回払。)。
月に5万円ほどはもうかるという話であり、2週間後に商品を受け取りに行った際、馬券を購入する資金がないと話したところ、友人を勧誘すれば紹介料がもらえると説明されたため、友人3名を紹介してそれぞれに買ってもらい、紹介料として合計28万円を受領した。
しかし、実際にソフトによって馬券を購入したが利益は出ず、4万1300円(通信料等費用除く)の損失を出したため、平成18年11月6日付で契約解除の通知を送付した。なお、特定商取引に関する法律(以下「特定商取引法」という。)第3
7条第1項及び第2項の書面は受領していない。
しかし、相手方Ⅹは、この契約解除を認めないため、大阪市消費者センター(以下「センター」という。)があっせんを行うこととなった。
センターは、販売目的隠匿による営業所での契約であり、不実告知、断定的判断の提供などを理由に契約解除による解決を求めたが、相手方Ⅹは、紹介者が申出人 Aを営業所に連れてきた後に勧誘したものであって販売目的隠匿ではなく、また、利益が出ない場合があることの説明はしているとして解決に応じず、センターによるあっせんは成立しなかった。
(2) 申出人B
平成18年12月22日、直近に知り合った男性(いわゆる交際関係にはない)と待ち合わせをして会ったところ、仕事場を見に来ないかと誘われて相手方Ⅹの営業所に連れて行かれ、本件ソフト購入の勧誘を受けた。資産運用になって、エステティックのために既に負っている他のローンについても1年で返済できるなどと説明され、いったん信販で購入する契約をしたが、信販会社の審査が通らず、同月2
6日に別の信販会社による契約をした(本件ソフト代金99万7500円。月2万
7680円60回払。)。その後、相手xxに対して質問をするなどしても答えがあいまいだったりしたため、解約を希望したが、相手にしてくれず、信販会社に対して、平成19年1月17日にクーリング・オフの葉書を送った。なお、商品は受領していない。
しかし、期間が経過しているとのことで、相手方Ⅹはクーリング・オフを認めないため、センターがあっせんを行うこととなった。
しかし、本件でも、相手方Ⅹは、販売目的隠匿ではなく、また不実告知等もないとして、解約するならば、信販手数料の半額2万4937円の支払を条件とするとの回答であり、申出人の希望する無条件解約には応じなかったため、あっせんは成立しなかった。
(3) 申出人C
平成18年3月14日、自宅に見知らぬ男性がやってきて、世間話の後、仕事や収入の話などを聞かれたうえで、競馬の知識がなくても本件ソフトの運用益で月々
3万円のローンは返せるというような勧誘を受け、信販契約で購入した(本件ソフト代金99万7500円。月3万2200円60回払。)。なお、支払金総額の説明や書面記載はなかった。
その後、本件ソフトを使用して、10万円の資金で指示通りの設定で馬券を購入したものの、8月にはその10万円が無くなってしまった。そのため、平成18年
11月3日付で契約取消、無効、クーリング・オフの主張を記載した書面を相手方
Ⅹに送付したが、相手方Ⅹはこれを認めないため、センターがあっせんを行うこととなった。
しかし、相手xxは不実告知を否定し、解約を認めないと主張したため、あっせんは成立しなかった。
第2 審議会における処理の経過と結果
1 処理の経過
上記のとおり、申出人らは、いずれもセンターにおけるあっせんが不調となったため、大阪市消費者保護審議会(以下「審議会」という。)によるあっせん・調停の申し出をしたものであり、市長が付託要件を満たすものと判断し、平成19年5月21日に付託された。
そして、苦情処理部会委員8名のうち4名を当該案件の担当委員(別紙1)として、別紙2のとおり処理が進められた。
その結果、平成20年2月26日の第9回あっせんにおいて、相手xxが苦情処理部会の考え方に基本的に同意したため、その後、平成20年6月に各当事者間で書面による合意が成立した。
2 あっせんにおける当事者の主張
(1) 申出人らの主張
申出人Aの主張は、会社の同僚が相手xxからの紹介料取得目的で、申出人Aを相手方Ⅹ営業所に連れて行ったもので、販売目的隠匿として特定商取引法の適用がある。そして、勧誘に際してリスクの説明がなされていないので不実告知を理由に契約を取り消す。したがって、本件ソフト及びノートパソコンの既払代金(19万
3200円)は全額返還すべきであり、相手方Ⅹから受領した紹介料については、各紹介客が契約解除した場合に返還する、というものである。
申出人Cの主張も、リスクの説明がなされていないので不実告知を理由に契約を取り消すとともに、クーリング・オフにより契約を解除するので、既払金全額(1
9万3200円)を返還すべきとするものである。
申出人Bの主張も(既払金なし)、リスクの説明がなかったので不実告知を理由に契約の取消を認めるべきであるとするものである。
(2) 相手xxの主張
以上の申出人らの主張に対して、相手xxの当初の主張は、クーリング・オフの主張並びに不実告知及び断定的判断の提供に基づく取消の主張は認めない、とするものであった。
ただし、解決案としては、申出人Bに関しては、解約は同意するが、信販手数料
(一部)の負担は求めるとした。
申出人Aに関しては、ノートパソコンの代金についての主張は認めず、不実告知等の主張も認められないとして、仮に解決するとしても既払金放棄、違約金及び紹介料は一括返還を求めるとした。
また、申出人Cに関しても、既払金放棄に加え違約金を請求するというものであった。
3 あっせんにあたっての苦情処理部会の考え方
(1) 特定商取引法の適用について
相手xxは、申出人Aについては、相手方Ⅹの従業員に勧誘されたのではなく勤務先の同僚に誘われて営業所に来ただけであって店舗販売である旨主張し、特定商取引法の適用を争っている。
しかし、相手xxは、申出人Aに対して、本件ソフトを購入した後に、紹介料を支払うので顧客を紹介してほしい旨依頼しており、その際「商品のことは一切説明しないで、よい話があるから一緒に行かないかと言って誘うように」と指示していたのであるから、申出人Aの同僚に対しても同様にして顧客の紹介を依頼していたものと思われる。そうだとすると、申出人Aの同僚は、顧客を相手xxに紹介することで紹介料をもらえることを期待していた者であり、しかも商品のことは一切説明しないよう指示された結果、申出人Aが相手方Ⅹの店舗に連れてこられて勧誘を受けることになったのである。これは、単に友人が好意で誘ったのとは著しく状況が異なり、相手方Ⅹが主導的に販売目的を隠匿して誘引した場合と同様の弊害が認められるのであるから、特定商取引法の定める販売目的隠匿型の販売方法(特定商取引法第2条第1項第2号、同法施行令第1条第1号)に該当すると考えられる。
相手xxは、申出人Bについては、事務所へ誘ったのが相手方Ⅹの従業員であったとしても仕事とは関係なくたまたま友人となって、休日に仕事場へ連れてきたのであるから、従業員が営業所へ誘引したことにはならない旨主張して、特定商取引法の適用を争っている。
しかし、申出人Bと当該従業員とがまだ知り合ったばかりであることや、知り合った経緯も路上で信号待ちをしているときに声をかけられたことからすると、当該従業員が休日にたまたま事務所近くに来たので事務所を覗いたというよりも、申出人Bを勧誘するために事務所へ誘引したと見るのが合理的であり、相手方Ⅹの弁解は特定商取引法の適用を逃れるための口実であるとしか考えられない。したがって、この場合も特定商取引法の定める販売目的隠匿型の販売方法(特定商取引法第2条第1項第2号、同法施行令1条1号)に該当すると考えられる。
なお、相手方Ⅹの事務所は通常のテナントビルの6階にあり、商品の陳列もない
閉鎖された空間であるため、特定商取引法上の「営業所」「店舗に類する場所」とはいえない可能性も高いと考えられるので、仮に販売目的隠匿でないにしても、そもそも店舗または営業所での勧誘とは言えないとも考えられ、この点からも特定商取引法の適用があると言える。
申出人Cの場合、同人の自宅を訪問して勧誘したものであり、特定商取引法の適用については、相手方Ⅹにおいても争いはなかった。
したがって、申出人らの各契約については、いずれも特定商取引法が適用される。
(2) 投資商品における説明義務及び適合性原則の類推適用について
(ア)本件ソフトは、冒頭に記載したように、勝馬の予想ではなく、一定の法則にしたがってソフトが自動的に馬券を購入するものであり、ギャンブルとしての競馬を楽しむ者が利用する意味合いはなく、競馬の知識・経験とは関係なく、資産を増やすことが目的のソフトであり、顧客の勧誘についても、パンフレットの内容や口頭での説明も、投資目的が強調されているものである。
本件ソフトの販売自体が、投資商品の取引とはいえないが、本件ソフトを購入する顧客が目的とするのは、利殖がほぼ唯一の目的であることは明らかである。利殖の目的を達成するためには、馬券購入に必要な資金だけではなく、本件ソ
フトに要する費用として、信販手数料を除いても100万円に近い金額を「投資」しなければならない。
したがって、本件ソフトの購入者に対する勧誘については、投資商品などと同様の配慮が必要と考えられ、「金融商品の販売等に関する法律」や「金融商品取引法」などにおける投資商品販売におけるリスクの説明義務や適合性原則に準じた業者の注意義務が存在すると考えられる。
(イ)申出人らは、3名とも株式等の投資経験がなく、競馬等のギャンブルについての知識や経験もほとんどない者であり、年齢も2名が20歳代、1名が30歳代で、収入や資産も比較的低い層に属する者である。また、他の既存のローンの支払いがある者もいるなど経済的に余裕資金を有するような者でない。このように申出人らは、本件ソフトの購入をすることによって毎月約3万円のローン返済を続けていくことは容易ではなく、本件ソフトの活用によって一定額の収入がなければローン返済が困難になる可能が高い。このような経済状況にある申出人らによる本件ソフト購入については、適合性の原則に抵触すると考えられる。
これらの事実は、相手方Xが勧誘時点に認識しているところである。
このような者を勧誘対象とすること自体が問題であるが、さらに相手方Ⅹの説明によれば、本件の申出人らに限らず、これらの顧客階層を主な勧誘対象として営業していることが認められ、営業方法としては問題が多いと言わざるを得ず、不適正な勧誘であるというべきである。
(3) 不実告知と断定的判断の提供
本件ソフトに関して、出資金(馬券購入の限度枠)が少なければ資金が早く枯渇する可能性が高いことは相手方Ⅹも認めている。また、商品代金は約100万円で
あり、5年間のクレジット手数料やローン金利を含めれば、約2倍の200万円近くの費用を支払わなければならないことになり、もし、資産運用、利殖を目的とするのであれば、少なくともローン返済費用(月額約3万円)及び通信費等のコスト分も利得しなければならないことも明らかである。
相手xxの説明によっても、実際にこのようなコストも負担したうえでの利殖が一般的に可能か否かについては、極めて強い疑念がある。相手xxは、苦情処理部会での聴き取りで、本件ソフトによる利殖と、この代金等コスト負担は別であり、そのような負担は、購入者において別途に考えてもらうものであると説明した。また、相手方Ⅹの説明でも、申出人らのような投資に用意できる資金が10万円程度では、せいぜい月に2万円もうかればよいほうだという認識であり、つまり、本件ソフトの利用では、商品購入のためのローン支払いまでカバーしきれないことを認めているのである。
すなわち、月額約3万円の返済分を埋めることすら、ほとんど期待できないということになるが、このような説明が顧客に対してなされていなかった。逆に、このような説明がなされておれば、本件申出人らのような経済状態にある者が本件ソフトを購入する可能性はほとんどないことも明らかである。
したがって、本件勧誘では、申出人らに知識経験がなくとも資産運用でき、クレジット(ローン)の返済等の経費の出費分を含めて、利殖の目的が達せられることを説明していたものと思われるところ、事実はこれと異なるものであるから、相手方Ⅹには、本件ソフト販売契約の重要な事項に関して、「不実告知」(特定商取引法第6条第1項、第9条の2第1項、消費者契約法第4条第1項第1号)に該当する。また、リスクの高い賭け方の設定をしなければ確実に利益が得られるかのような
説明をしている点は、「断定的判断の提供」(消費者契約法第4条第1項第2号)に該当する。
以上により、申出人らによって契約取消が可能であると考えられる。
4 あっせんの結果成立した合意内容
当部会は、上述したような見解に基づいて、原状回復をはかる方向での解決に向けてあっせんを試みた結果、申出人らと相手方Ⅹとの間で概要以下のような内容の合意が成立した。
(1) 申出人Aについて
① 相手xxは、申出人Aが、本件ソフトの購入契約を解除したことを確認する。
② 相手方Ⅹは、本件に関する提携ローンの貸主から申出人Aに対する貸金請求権が残存していないことを確認し、万一、同請求権が残存している場合には、速やかに立替金を返還して消滅させるものとする。
③ 相手方Ⅹは、申出人Aに対して、契約を解除したことによる返還金として、既払金19万3200円の支払義務があることを認める。
④ 申出人Aは、相手方Ⅹに対して、紹介料として受領した金28万円の内、本件商品使用に伴い損失を受けた金4万1300円を控除した金23万8700円を返還する義務があることを認める。
⑤ 申出人A及び相手方Ⅹは、③④の支払については対等額において相殺することに合意し、申出人Aは、差額4万5500円を以下の通り分割して、相手方Ⅹ指定の金融機関口座に送金して支払う。ただし、振込手数料は相手方Ⅹの負担とする。
平成20年6月末日限り 2万2750円平成20年7月末日限り 2万2750円
⑥ 申出人Aは、相手方Ⅹに対して、本件ソフトのCD、ライセンスキー及びノートパソコンを、本合意後速やかに返還する。
⑦ 申出人Aと相手方Ⅹの間には、本合意書の各条項に定める以外に何らの債権債務がないことを確認する。
(2) 申出人Bについて
① 相手xxは、申出人Bが、本件ソフトの購入契約を解除したことを確認する。
② 相手方Ⅹは、本件に関する提携ローンの貸主から申出人Bに対する貸金請求権が残存していないことを確認し、万一、同請求権が残存している場合には、速やかに立替金を返還して消滅させるものとする。
③ 申出人Bと相手方Ⅹの間には、本合意書の各条項に定める以外に何らの債権債務がないことを確認する。
(3) 申出人Cについて
① 相手xxは、申出人Cが、本件ソフトの購入契約を解除したことを確認する。
② 相手方Ⅹは、本件に関する提携ローンの貸主から申出人Cに対する貸金請求権が残存していないことを確認し、万一、同請求権が残存している場合には、速やかに立替金を返還して消滅させるものとする。
③ 相手方Ⅹは、申出人Cに対して、契約を解除したことによる返還金として、既払金19万3200円の支払義務があることを認める。
④ 申出人Cは、相手方Ⅹに対して、本件ソフトのCD、xxxxxxxを本合意後速やかに返還する。ただし、返還にかかる送料は、相手xxの負担とする。
⑤ 相手方Ⅹは、第3項の支払として、前項記載の本件商品の受領後、10日以内に金19万3200円を一括して、申出人Cの指定する金融機関口座に振り込んで支払う。ただし、振込手数料は相手方Ⅹの負担とする。
⑥ 申出人Cと相手方Ⅹの間には、本合意書の各条項に定める以外に何らの債権債務がないことを確認する。
第3 その他、本件における問題点、今後の課題について
1 紹介料の扱い
申出人Aについては、前記のとおり、本件ソフト購入後に自らの友人3名を相手xxに紹介し、紹介料名目で合計28万円の現金を受領している。
なお、この紹介料については、そもそも、申出人Aが馬券購入資金がないと話したのに対して相手xxが紹介料を得て投資すればよい、と申し向けたものであった。
本件の解決にあたり、この紹介料の精算が問題となった。申出人Aについて契約解除を認めると、その友人らも契約解除をする可能性があり、その場合には、紹介料を返還
するという合意も考えられたが、本来、このような紹介料は、相手方Ⅹの不当な勧誘行為に協力した対価であり、それを申出人側に利得させたままとすることは好ましくないものと思われた。
そこで、紹介料の受領額から、申出人Aが馬券購入にあてた金額を差し引いた金額を、相手方Ⅹに返還するものとして相殺勘定を行う内容での和解となったものである。
2 不当表示
本件ソフトについてのパンフレット類の宣伝文言は前記の通りであり、相手xxによる勧誘の文言もこれに則ったものであった。今回のあっせんにおいては、これを不実告知及び断定的判断の提供として捉えたものであるが、このような表示は、同時に不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」という。)第4条第1項第1号の「優良誤認表示」として不当表示に該当する疑いがある。また、苦情処理部会が、本件ソフトの有効性の根拠を提出するよう依頼しても、データ類は一切出てこなかったものであるから、景品表示法第4条第2項のxx取引委員会における不実証広告の考え方からしても、不当表示性の疑いは強い。
このように、景品表示法違反の疑いが強い案件や、場合によっては、刑法上の詐欺に該当する可能性のある案件が審議会に付託された場合、xx取引委員会や警察などの関係機関に通知するなどの連携が必要な場合もあるのではないか、と考えられる。今後の課題として検討されるべきであると考える。
3 大阪市消費者センターによる事業者指導等について
消費者センターが受け付けた相手方Ⅹに関する消費者からの相談件数は、平成1
4年度から平成19年6月までの間に79件であったと確認している。(相手xxが以前行っていた化粧品や美顔器の販売、エステに関する相談件数を含む。)
平成19年5月に当該苦情処理が当審議会に付託され、苦情処理部会によるあっせんにおいて相手方Ⅹに対し数々の問題点を指摘してきたが、この間の相手方Ⅹに関する相談は減少する傾向がなく、勧誘の方法についてはさらに悪質化しているものも見受けられた。
また、大半が路上でのキャッチセールスによる勧誘であることから20歳代の者からの相談となっており、収入や資産が比較的低い層に属する者であるとともに、競馬等のギャンブルの経験がなく、社会経験についても未熟である者が多いと考えられる。
消費者センターにおいては、消費者保護条例に規定している不当な取引行為について、当該事業活動が行われている場合は、さらに事業者への指導を積極的に進めるべきであり、指導によって是正されないときは勧告、勧告においても是正されないときは当該事業者の氏名等の公表を行い、不当な取引行為についての是正措置を求めていくべきである。同時に、同様の事業活動によって事業者と消費者の間に新たな紛争が起こることがないよう、消費者に対して同様の事業活動の問題点を周知する方策をとることも検討されるべきである。
一方、社会経験が未熟であるが故、契約行為により負う自らの債務等に関し、消費者自身の意識が希薄であると思われる。多重債務問題が深刻な社会問題となっていること
に鑑み、消費者センターが行う消費教育・啓発事業についても、より一層積極的に進められるべきである。
別紙1
大阪市消費者保護審議会 苦情処理部会委員名簿
氏 | 名 | 職 業 等 | 担当委員 | ||||
部 | 会 | 長 | xx | xx | 大阪大学大学院法学研究科教授 | ○ | |
部会長代理 | xx | xx | 大阪弁護士会 | ○ | |||
xx xxxxx | 帝塚山大学法政策学部教授 | ||||||
xx | xx | 大阪弁護士会 | ◎ | ||||
x | xx | (社)消費者関連専門家会議(ACAP) | |||||
xx | xx | 日本チェーンストア協会関西支部参与 | |||||
xx | xxx | (社)全国消費生活相談員協会 | 常任理事 | ○ |
◎xx担当委員 ○担当委員
別紙2
「競馬ソフト購入契約係る紛争案件」処理経過
年 | 月 | 日 | 会 | 議 | x | x | x |
平成 19 年 5 月 21 日 | 紛争案件の処理の付託 | ||||||
平成 19 年 5 月 28 日 | 担当委員打合せ会 | 処理方針の検討 紛争内容の確認等 | |||||
平成 19 年 6 月 13 日 | 競馬ソフト購入契約に係る紛争案件 (平成19年度第2号案件) 第1回 | 申出人A及びBからの事情聴取 | |||||
平成 19 年 6 月 18 日 | 競馬ソフト購入契約に係る紛争案件 (平成19年度第2号案件) 第2回 | 申出人Cからの事情聴取相手方Ⅹの事情聴取 | |||||
平成 19 年 7 月 5 日 | 競馬ソフト購入契約に係る紛争案件 (平成19年度第2号案件) 第3回 | 問題点の整理 あっせん案(考え方)の検討 | |||||
平成 19 年 8 月 3 日 | 競馬ソフト購入契約に係る紛争案件 (平成19年度第2号案件) 第4回 | 相手方Ⅹの事情聴取 あっせん案の検討・確認あっせん案の提示 | |||||
平成 19 年 9 月 3 日 | 競馬ソフト購入契約に係る紛争案件 (平成19年度第2号案件) 第5回 | 相手方Ⅹへあっせん案の提示 申出人A及びBへあっせん案の提示 | |||||
平成 19 年 9 月 14 日 | 相手xxからあっせん案の送付 | ||||||
平成 19 年 9 月 21 日 | 競馬ソフト購入契約に係る紛争案件 (平成19年度第2号案件) 第6回 | 相手xxの事情聴取 本件ソフトの商品説明 | |||||
平成 19 年 10 月 23 日 | 通知書の送付(紛争の問題点とあっ せん案の再検討について) | ||||||
平成 19 年 11 月 19 日 | 競馬ソフト購入契約に係る紛争案件 (平成19年度第2号案件) 第7回 | 相手方Ⅹの事情聴取 | |||||
平成 19 年 11 月 13 日 | 通知書に対する回答 | ||||||
平成 20 年 1 月 18 日 | 競馬ソフト購入契約に係る紛争案件 (平成19年度第2号案件) 第8回 | 苦情処理部会からあっせん案の 提示 | |||||
平成 20 年 1 月 18 日 | 法的論点における検討メモの送 付 | ||||||
平成 20 年 2 月 25 日 | 相手xxからあっせん案の送付 | ||||||
平成 20 年 2 月 26 日 | 競馬ソフト購入契約に係る紛争案件 (平成19年度第2号案件) 第9回 | あっせん案の確定 |