Contract
(別 紙)
xx審答申第48号
(諮問第65号)
件名:蒲郡海洋開発㈱と㈱H.I.S.(又は㈱ラグーナテンボス)との吸収分割に関する情報で、事業検討に関する基本合意書、事業再構築に関する基本合意書、吸収分割契約書(写し)並びに蒲郡海洋開発㈱の4事業ごとの平成26年3月度のB/S及びP/Lの部分公開決定に関する件
答 申
蒲郡市長(以下「実施機関」という。)が、蒲郡海洋開発㈱と㈱H.I.S.(又は㈱ラグーナテンボス)との吸収分割に関する情報で、「事業検討に関する基本合意書(以下「文書1」という。)」について、部分公開により非公開とした部分のうち、次に掲げる部分については公開すべきであるが、その他の部分について非公開としたことは妥当である。
⑴ 第2条第1項第2号②「分割承継負債」のうち「買掛金等。」を除いた部分
⑵ 第2条第2項
なお、その他の部分である、第2条第1項第1号②及び同項第4号のうち、既に公知の情報については、現時点においては公開することが妥当である。
次に、「事業再構築に関する基本合意書(以下「文書2」という。)」について、実施機関が部分公開により非公開とした部分のうち、次に掲げる部分については公開すべきであるが、その他の部分について非公開としたことは妥当である。
⑴ 第1条第1項第4号の3行目及び4行目(3行目の1~22文字目を除く。)
⑵ 第1条第4項及び第5項
なお、その他の部分である、第1条第1項第4号、第5号、第6号、第8号、第
9号及び第10号のうち、既に公知の情報については、現時点においては公開することが妥当である。
次に、「吸収分割契約書(写し)(以下「文書3」という。)」については、実施機関は全面的に非公開としたが、部分的に公開すべきである。
最後に、「蒲郡海洋開発㈱の4事業ごとの平成26年3月度のB/S及びP/L
(以下「文書4」という。)」については、文書不存在のため非公開としたことは妥当であるが、実施機関が蒲郡海洋開発㈱の要職として当該文書を作成するよう指示をしていなかったことは遺憾である。
1 異議申立てに至る経過等
⑴ 公文書の公開の請求
異議申立人(以下「申立人」という。)は、平成26年7月22日(以下「請求日」という。)付けで実施機関に対して、蒲郡市情報公開条例(平成10年蒲郡市条例第1号。以下「条例」という。)第7条の規定により、文書1から文書
4までの公開の請求を行った。
⑵ 実施機関の処分
実施機関は、文書1について、法人の正当な利益を害するおそれがあり、及び県との協力関係及び信頼関係が損なわれるとし、文書2について、法人の正当な利益を害するおそれがあり、県との協力関係及び信頼関係が損なわれ、並びに市の事務事業に係る意思形成に支障を生ずるおそれがあるとし、文書3について、法人の正当な利益を害するおそれがあるとし、文書4について、文書を保有していないとして、平成26年9月4日付けで部分公開決定(以下「本件処分」という。)を行うとともに、その旨を申立人に通知した。
⑶ 異議申立て
申立人は本件処分を不服として、平成26年10月16日付けで行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定に基づく異議申立てを行った。
2 異議申立ての内容
⑴ 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、本件処分の取消しを求めるというものである。
⑵ 申立人の主張要旨
申立人が異議申立書、意見書及び口頭意見陳述で主張している理由は、次のとおり要約される。
ア 文書1及び文書2のそれぞれに「機密保持」という項目があり、当該文書の内容等が機密事項に指定されている。部分公開とされたのは、この「機密保持」の条項に原因があると考える。こういった条項を入れることによって、議会や市民に事実を説明することができなくなる。市と相手方にとって知られると都合の悪い契約には、恣意的に機密保持事項を入れるとなると、情報公開制度が形骸化してしまうおそれがある。このように市民の知る権利を抹殺する行為、こういう合意書等の締結は認められない。
イ 文書3についても「機密保持」条項が入っていると憶測する。もし入っているのであれば、問題である。
ウ 総務省通達の「第三セクター等の抜本的改革に関する指針」にあるように、第三セクターに関する情報は原則公開と明確にされている。今回の処分は通達 の精神に違反しており、条例の精神である市民の知る権利を踏みにじるもので、その解釈、運用を誤ったものである。
エ 文書1及び文書2について、「法人の正当な利益を害するおそれのある情報
(条例第6条第1項第3号に該当)」とし、非公開にされている部分は、前後の内容から、実施機関が主張する、法人の経営内容、資産内容等の信用に関する情報ではなく、吸収分割に付随した条件が記載されていると推定する。したがって、法人の経営内容、資産内容に関する情報でないと、非公開理由には該当しない。また、たとえ法人の経営内容、資産内容等の信用に関する情報であっても、将来にわたって市の発展、市の財政に影響を与えるかもしれない情報
を公開しないことは許されない。
オ 実施機関は、「法人の正当な利益を害するおそれ」に該当する事情として、「㈱ラグーナテンボスへの出資企業の社会的評価や株価に影響を及ぼすおそれ」と主張するが、情報公開後の株価などの影響は、株主や市場にまかせるべきで、市が関与すべきことではない。
カ 文書2について、「公開することで不正確な理解や誤解を与え、又は無用な混乱を招き、市の事務事業に係る意思形成に支障を生ずるおそれがある(条例第6条第1項第8号に該当)」とし、非公開にされている部分があるが、逆に公開しないことが不正確な理解や誤解を与え、又は無用な混乱を招くことになる。事実を公開することで不正確な理解や誤解又は無用な混乱を防ぐようにすることが実施機関の責務である。
キ 文書4について、非公開の理由が「請求に係る文書を保有していないため」となっているが、これは信じがたい。市長は、蒲郡海洋開発㈱の取締役副会長という要職についており、第三セクターの経営状態や資産、債務の状況について把握する立場にある。したがって、蒲郡海洋開発㈱の財務改善、今後の方向を課題に取り組んでいく状況の中で、重要な事業別の経営数値を保有していないとは信じられない。保有していないとしても、すぐにでも取り寄せられる情報であり、あえてこれを出さないのには別の理由があるのではないか。請求から40日も経った後で保有していないという返事は、納得できない。また、もし保有していたとしたら、公開されていたのか。
3 実施機関の説明
実施機関が、理由書及び口頭説明で主張している理由は、次のとおり要約される。
(文書1について)
⑴ 「法人の正当な利益を害するおそれのある情報」として非公開とした部分は、企業の意思決定の内容を含むものであり、本件処分までは企業の一部である上層 部しか知り得ない情報であった。企業が公表する前に市が公表することによって、その企業の株価や企業活動への多大な影響がある。
よって、法人の正当な利益を害するおそれがあるため、条例第6条第1項第3号に該当する。
(文書2について)
⑵ 「法人の正当な利益を害するおそれのある情報」として非公開とした部分は、事業譲渡先の新法人への出資比率の情報が含まれている。
⑶ 「市の事務事業に係る意思形成に支障を生ずるおそれのある情報」として非公開とした部分は、市が関わる事務事業の実施にあたり、利害関係者との交渉を伴う内容に関する情報が含まれており、その内容が公開されることによって、市と利害関係者のその後の協議が妨げられ、合意形成に支障を生ずる。
よって、法人の正当な利益を害するおそれがあり、及び市の事務事業に係る意思形成に支障を生ずるおそれがあるため、条例第6条第1項第3号及び第8号に
該当する。
(文書3について)
⑷ 全面的に非公開としたのは、当該文書が民間企業と民間企業との間で締結された契約内容であり、当該企業の将来的な事業運営に係るものであるため。
よって、法人の正当な利益を害するおそれがあるため、条例第6条第1項第3号に該当する。
(文書4について)
⑸ 市は、年度ごとに蒲郡海洋開発㈱の株主総会で事業報告を受けており、その際の資料として、全事業についての平成26年3月度のB/S及びP/Lは保有しているが、4事業に分かれた、事業ごとのB/S及びP/Lは渡されておらず、保有していない。
よって、文書不存在であるため、条例第8条第1項に該当する。
4 審査会の判断
⑴ 条例の基本的な考え方
条例の目的は、市民の公文書の公開を請求する権利を明らかにするとともに、市民の市政に対する理解と信頼を深め、xxで民主的な開かれた市政の発展に寄与する、というものである。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を公開することにより、個人のプライバシーや法人等の正当な利益を侵害したり、行政のxxかつ円滑な執行が阻害され、ひいては市民全体の利益を損なうものもある。このため、条例においては個人及び法人等の権利利益や公益と市民の公文書の公開を請求する権利との調和を図る観点から、原則公開の例外として公開しないことができる情報を定めている。
申立人は、文書1等に「機密保持」条項を規定したこと及び当該条項が規定された合意書を締結していることが不適当で、実施機関の本件処分が総務省通達の
「第三セクター等の抜本的改革に関する指針」が求める第三セクターの情報を原則公開とする精神に違反する旨を主張している。しかし、当審査会は、条例上実施機関が行う公開決定等について非公開条項の適用の妥当性を判断する機関であるため、「機密保持」条項の規定の是非及び当該条項が規定された合意書の締結の是非についての観点並びに当該総務省通達に基づく公開が必要であったかどうかの観点ではなく、条例の規定に照らして、実施機関が本件処分を行ったことが妥当であったかどうかを判断する。
したがって、当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、申立人及び実施機関のそれぞれの主張から本件を具体的に検討した結果、以下のように判断する。
⑵ 文書1について
① 文書1の内容について
文書1は、第三セクターである蒲郡海洋開発㈱が運営するラグーナ蒲郡の発
展、地域の活性化を目指し、当該企業の主要事業を㈱H.I.S.が予め設立する承継会社(㈱ラグーナテンボス)に譲渡(吸収分割)するための検討事項等について合意するため、平成26年2月17日に㈱H.I.S.、蒲郡海洋開発㈱並びに同社の主要株主である愛知県、実施機関及びトヨタ自動車㈱(以下、
㈱H.I.S.及至トヨタ自動車㈱を「本当事者」という。)の間で締結されたもので、実施機関がその当事者として保有するものであり、次のような条項から構成されている。
前文
第1条 目的
第2条 検討事項第3条 機密保持第4条 公表等 第5条 損害賠償第6条 期限
第7条 残存条項
第8条 契約上の地位譲渡等第9条 独占交渉権
第10条 準拠法・管轄
第11条 協議事項
実施機関は、これらの条項のうち、「第2条 検討事項」の一部について、法人の経営内容、資産内容等の信用に関する情報であり、条例第6条第1項第3号(事業活動情報)に該当するため非公開としている。
これに対し、申立人は、第三セクターに関する情報は原則公開であり、非公開にされている部分は、法人の経営内容、資産内容等の信用に関する情報ではなく、吸収分割に付随した条件が記載されていることが推定できると主張しているので、条例第6条第1項第3号の該当性について、検討する。
② 条例第6条第1項第3号(事業活動情報)の該当性について
条例第6条第1項第3号は、法人等又は事業を営む個人の事業活動の自由を保障する必要があることから、事業活動に係る情報のうち、公開することにより、その競争上の地位その他正当な利益を害するおそれのあるものが記録されている公文書は、非公開とすることを定めたものである。
「競争上の地位その他正当な利益を害するおそれのあるもの」とは、生産技術や販売上のノウハウ等他の法人等や個人との事業競争上の立場が損なわれるおそれのある情報、営業方針や経理・人事等必ずしも他の競争に限定されない内部管理に関する事項などへの不当な干渉となるおそれのある情報、名誉や社会的評価を低下させるおそれのある情報等が挙げられる。
当審査会が文書1を実際に見分したところ、第2条第1項第1号②及び同項第4号の内容は、文書1を締結した本当事者(愛知県及び実施機関を除く。)の資産の内容等に関する情報であって、法人の意思決定の内容を含むものが記
載されている。これらの資産に関する具体的な情報は、通常公にされているものではなく、経営方針の決定等の事業活動に関わる、法人の財産管理上の情報であるので、一般に公開することになれば、当該法人等の事業運営上の地位が損なわれると認められることから、当該法人等の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあることは否定できない。
ただし、第2条第1項第2号②「分割承継負債」のうち「買掛金等。」を除いた部分については、蒲郡海洋開発㈱が従来より抱えていた負債に関する情報で、請求日前においても新聞報道等により公になっていたものであり、かつ、当該負債の処理等について具体的に記載したものでないことから、これを公開したとしても当該法人等の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるとは認められない。
加えて、第2条第2項については、同条第1項各号で掲げる検討事項を実行するに当たっての一般的な条項であって、その内容は具体的でなく抽象的であり、当該法人等の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるとは認められない。
よって、文書1において非公開とされた情報は、第2条第1項第2号②「分割承継負債」のうち「買掛金等。」を除いた部分及び第2条第2項を除き、条例第6条第1項第3号に該当すると判断する。
③ 本件処分後の事情の変化について
文書1のうち、第2条第1項第1号②及び同項第4号については、本件処分後に、㈱ラグーナテンボスの適時開示情報のうちの一部として公開された情報及び愛知県の記者発表により公開された情報が含まれており、現時点では、既に公知となったこれらの情報は条例第6条第1項第3号に該当せず、公開することが妥当であると判断する。
⑶ 文書2について
① 文書2の内容について
文書2は、本当事者が、平成26年2月17日付で締結した文書1に基づき検討を行い、その結果として蒲郡海洋開発㈱の事業再構築の内容について合意するため、平成26年6月24日付で締結されたもので、実施機関がその当事者として保有するものであり、次のような条項から構成されている。
前文
第1条 事業再構築の内容第2条 機密保持
第3条 損害賠償
第4条 契約上の地位譲渡等第5条 準拠法・管轄
第6条 残存条項第7条 協議事項
実施機関は、これらの条項のうち、「第1条 事業再構築の内容」の一部について、法人の経営内容、資産内容等の信用に関する情報及び人事等に関する情報であり、条例第6条第1項第3号(事業活動情報)に該当するため、及び市の意思形成の過程における情報であって、公開することにより不正確な理解や誤解を与え、又は無用な混乱を招くおそれのある情報であり、条例第6条第1項第8号(意思形成過程情報)に該当するため、非公開としている。
これに対し、申立人は、第三セクターに関する情報は原則公開であり、非公開にされている部分のうち、実施機関が法人の事業活動情報に該当するという主張に対しては、法人の経営内容、資産内容等の信用に関する情報ではなく、吸収分割に付随した条件が記載されていることが推定できると主張している。また、実施機関が、市の事務事業に係る意思形成過程の情報に該当するという主張に対しては、逆に公開しないことが不正確な理解や誤解を与え、又は無用な混乱を招くことになると主張しているので、条例第6条第1項第3号及び第8号の該当性について、検討する。
② 条例第6条第1項第3号(事業活動情報)及び第8号(意思形成過程情報)の該当性について
条例第6条第1項第3号の意義については、前述のとおりである。
条例第6条第1項第8号は、市又は国等の行う事務事業が、審議、検討、協議等を繰り返しながら、最終的な意思が形成されるものであることから、このような過程における情報は、未成熟、不確定、流動的であるため、公開することにより、市民の誤解と混乱を招き、あるいは、行政内部の会議等における自由な意見交換が妨げられ、事務事業に係る適正な意思形成に支障を生ずるものが記録されている公文書については、非公開とすることを定めたものである。
当審査会が文書2を実際に見分したところ、第1条第1項第3号の内容については、本当事者(愛知県及び実施機関を除く。以下同じ。)のうち一部の法人の人事等の内部管理事項に関する情報が、同項第4号から第6号までの内容については、本当事者及び本当事者の関連企業の資本に関する情報が記載されている。社会通念上秘匿する必要がある内部事項に属する情報及び経営方針の決定等の事業活動に関わる法人の財産管理上の情報であるこれらの情報を公開することになれば、当該法人等の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあることは否定できない。
また、第1条第1項第8号及び第10号の内容は、蒲郡海洋開発㈱の事業譲渡先の新法人(㈱ラグーナテンボス)の今後の事業展開及び当該事業展開に係る実施機関の事務事業の不確定な情報が記載されている。これは、実施機関内部の意思形成を図り、最終の意思決定を図ろうとするものであるため、意思形成過程にある不確定な情報であるといえ、この情報が公開されれば、市民の間に無用の誤解や混乱を招くおそれが十分に予想される。
さらに、第1条第1項第9号及び第3項の内容は、本当事者の資産の内容等
に関する情報であって、企業の意思決定の内容を含むものが記載されている。これらの情報についても、やはり、経営方針の決定等の事業活動に関わる法人の財産管理上の情報であることから、公開することになれば、当該法人等の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあることは否定できない。
ただし、第1条第1項第4号の3行目及び4行目(3行目の1~22文字目を除く。)については、請求日よりも前に、平成26年6月24日付けで、㈱H. I.S.の適時開示情報のうちの一部として公表されているため、当該法人等の競争上の地位その他正当な利益を保護するための条例第6条第1項第3号に該当せず、公開すべきものであったと考える。
加えて、第1条第4項については、請求日前の平成26年6月23日に制定された「ラグーナ蒲郡運営事業支援交付金に関する条例」の定めに従って交付される交付金に関連した法人の一般的な実施事項が記載された条項であって、当該法人等の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるとは認められない。
また、第1条第5項については、第1条第1項第8号及び第10号で定める蒲郡海洋開発㈱の事業再構築の内容の実施の前提条件となる実施機関の行為についての記載がされた条項であって、公開することにより不正確な理解や誤解を与え、又は無用な混乱を招くおそれがある意思形成過程の情報であるとは認められない。
よって、文書2において非公開とされた情報は、第1条第1項第4号の3行目及び4行目(3行目の1~22文字目を除く。)並びに第1条第4項及び第5項を除き、条例第6条第1項第3号及び第8号に該当すると判断する。
③ 本件処分後の事情の変化について
文書2のうち、第1条第1項第4号(前述で公開すべきと判断した部分を除 く。)、第5号、第6号、第8号、第9号及び第10号については、本件処分後 に、㈱ラグーナテンボスの適時開示情報のうちの一部として公開された情報や、市の議会において議決された議案の内容に係る情報などが含まれており、現時 点では、既に公知となったこれらの情報は条例第6条第1項第3号及び第8号 に該当せず、公開することが妥当であると判断する。
⑷ 文書3について
① 文書3の内容について
文書3は、ラグーナ蒲郡の発展、地域の活性化を目指し、蒲郡海洋開発㈱の主要事業を㈱ラグーナテンボスに譲渡(吸収分割)することについて、平成2
6年6月27日付で蒲郡海洋開発㈱及び㈱ラグーナテンボスの間で締結された契約書の写しで、実施機関が蒲郡海洋開発㈱の主要株主として、当該法人の株主総会の資料として保有するものである。
実施機関は、この文書について、当事者となる法人の将来的な事業運営に係る情報であり、条例第6条第1項第3号(事業活動情報)に該当するため、
全面的に非公開としている。
これに対し、申立人は、第三セクターに関する情報は原則公開であり、実施機関は、条例の解釈と運用を誤っていると主張しているので、条例第6条第1項第3号の該当性について、検討する。
② 条例第6条第1項第3号(事業活動情報)の該当性について
条例第6条第1項第3号の意義については、前述のとおりである。
当審査会が文書3を実際に見分したところ、当該法人の資産、負債、権利x xの承継や人事等の細かな情報であって、事業活動を行う上での内部管理に関 する情報が記載されており、これらの情報を公開することになれば、当該法人 等の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあることは否定できない。
一方で、文書3には、請求日時点においても既に公表されている情報や、条例第6条第1項第3号に該当する情報でない、契約書に記載される一般的な条項が含まれていることも認められるため、文書3の部分公開について検討する。
③ 条例第6条第2項(部分公開)について
条例第6条第2項は、「実施機関は、公文書に前項各号のいずれかに該当する情報とそれ以外の情報とが併せて記録されている場合において、当該該当する情報に係る部分とそれ以外の部分とを容易に分離することができ、かつ、その分離により公文書の公開の請求の趣旨が損なわれることがないと認められるときは、同項の規定にかかわらず、当該該当する情報に係る部分を除いて、公文書の公開をしなければならない。」として、可能な限り部分公開をするよう規定している。
しかし、可能な限り部分公開をすることを規定している一方で「当該該当する情報に係る部分とそれ以外の部分とを容易に分離することができ、かつ、その分離により公文書の公開の請求の趣旨が損なわれることがないと認められるとき」を条件としている。「請求の趣旨が損なわれることがない」とは、請求の趣旨から判断して、非公開情報の部分を除いても、公開することのできる場合である。
前述のとおり、文書3には請求日時点においても既に公表されている情報や、契約書に記載される一般的な条項が含まれているものであり、条例第6条第1項第3号に該当する情報である部分を除いても、公開は可能である。
また、実施機関は、部分公開とすることによって、非公開とされた部分についての様々な憶測が世間に流布され、結果として当該法人の事業活動に影響を及ぼすおそれがあると主張するが、そのような漠然とした蓋然性だけで全てを非公開とすることは、市民の市政に対する理解と信頼を深め、xxで民主的な開かれた市政の発展に寄与するという条例の趣旨に反するものである。
したがって、当審査会は文書3のすべてを公開することに支障を生ずるとは認めることはできない。実施機関は条例第6条第2項の規定に従って、文書3の部分公開を検討すべきである。
⑸ 文書4について
① B/S及びP/Lについて
蒲郡海洋開発㈱の全事業についてのB/S(貸借対照表)及びP/L(損益計算書)については、実施機関は、年度ごとに当該法人の株主総会で事業報告を受けており、その際の資料として取得してきたと説明している。当審査会が、実施機関に対し、平成26年3月度の蒲郡海洋開発㈱の全事業のB/S及びP
/Lの提出を求めたところ、当該資料の存在が確認できた。
しかし、申立人が請求した、蒲郡海洋開発㈱から㈱ラグーナテンボスへの事業譲渡(吸収分割)に係る、当該事業ごとのB/S及びP/Lの存在について実施機関に確認したところ、本件処分時の理由と同様、実施機関は当該文書を保有していないという。そうであれば、実施機関は、蒲郡海洋開発㈱がその一部の事業を譲渡するにあたって、当該事業ごとの状況をどのように把握していたのかと問うと、事業ごとの状況は、蒲郡海洋開発㈱の取締役会副会長である実施機関が、取締役会において、スライドを使用した口頭での説明を受けるのみで、事業ごとのB/S及びP/Lは提供されていないという。
確かに、申立人が主張するように、実施機関が蒲郡海洋開発㈱の取締役会副会長という要職にありながら、公金を出資している当該法人の事業の再構築という課題に取り組んでいる状況の中で、重要な事業別経営数値の分かる資料(事業別のB/S及びP/L)を保有せずして、その後の㈱ラグーナテンボスとの事業譲渡(吸収分割)に関して合意していることは、信じ難いと言わざるを得ない。スライド等で各事業の大まかな状況を把握し、その後の合意等に至ったという説明は、説得力に欠けているように思われる。そういった意味では、実施機関が当該法人に対して文書4を提出させるよう指示すべきとする申立人の主張も理解できる。
しかしながら、平成26年12月31日をもって、既に蒲郡海洋開発㈱が解散され、文書4の存否について確認することができないという現在の状況においては、実施機関の処分は妥当と言わざるを得ない。
② 付言
上記のとおり、文書4について不存在を理由として非公開としたことは認め る旨を述べたものの、実施機関が公金を出資した蒲郡海洋開発㈱の要職であり、文書4について当該法人に作成をさせ、提出させることができる立場であった にもかかわらず、それをしなかったということに関しては、情報公開制度の趣 旨に照らして望ましいものではなく、遺憾である。
当然ながら文書を保有していないのであれば、何も公開することはできない。情報公開制度の大前提は、市政に関する重要な事項をもれなく正確に記録し、透明性をもって市民に公開していくことであり、それらが市政に対する市民の 理解と信頼を深め、xxで民主的な開かれた市政の発展に寄与することである。
今後は、実施機関において、情報公開制度の趣旨に照らして、市民の市政に対する理解と信頼を確保するためにも、公文書を適正に取得し、及び保有する体制を整えるよう強く望むものである。
5 結論
以上のことから、当審査会は冒頭のとおり判断する。
○審査会の処理経過
年 月 x | x x |
平成26年11月26日 | 実施機関からの諮問(企画部企画広報課) |
平成26年12月26日 | 実施機関から理由書収受 |
平成27年 1月21日 | 申立人から意見書収受 |
平成27年 2月27日 | 申立人による口頭意見xx |
xx27年 3月20日 | 実施機関の口頭説明 審議 |
平成27年 6月18日 | 審議及び答申の検討 |