同書面には3枚目に「REAL スキルアッププログラム」の項目にてプロセス、方針等全容を記載しており、他のページには講師陣の情報を記載しています。
エキストラ応募後に結んだ レッスン契約に係る紛争案件
報告書
(xxx消費者被害救済委員会)
令和2年 11 月
xxx生活文化局
xxxは、6つの消費者の権利のひとつとして、「消費生活において、事業者によって不当に受けた被害から、xxかつ速やかに救済される権利」をxxx消費生活条例に掲げています。
この権利の実現をめざして、xxxは、都民の消費生活に著しく影響を及ぼ し、又は及ぼすおそれのある紛争について、xxかつ速やかな解決を図るため、あっせん、調停等を行う知事の附属機関としてxxx消費者被害救済委員会
(以下「委員会」という。)を設置しています。
消費者から、xxx消費生活総合センター等の相談機関に、事業者の事業活動によって消費生活上の被害を受けた旨の申出があり、その内容から必要と判断されたときは、知事は、委員会に解決のための処理を付託します。
委員会は、付託を受けた案件について、あっせんや調停等により紛争の具体的な解決を図り、個別の消費者の被害を救済するとともに、解決に当たっての考え方や判断を示します。
この紛争を解決するに当たっての委員会の考え方や判断、処理内容等は、xxx消費生活条例に基づき、広く都民の方々や関係者にお知らせし、同種あるいは類似の紛争の解決や未然防止に御活用いただいております。
本書は、令和2年1月9日に知事が委員会へ紛争処理を付託した「エキストラ応募後に結んだレッスン契約に係る紛争」について、令和2年11月18日に委員会から、審議の経過と結果について知事へ報告されたものを、関係機関の参考に供するために発行したものです。
消費者被害の救済と被害の未然防止のために、広く御活用いただければ幸いです。
令和2年11月
xxx生活文化局
第1 紛争案件の当事者 1
第2 紛争案件の概要 1
第3 委員会による処理開始と当事者の主張
1 申立人の主張 2
2 相手方甲の主張 4
3 相手方乙の主張 5
第4 委員会の処理結果 6
第5 報告に当たってのコメント
1 あっせん案の考え方 7
2 同種・類似被害の再発防止に向けて 12
■資 料
1 相手方があっせん案を受諾しなった理由 17
(xxxx案提示文書に対する回答書別紙)
2 相手方が調停案を受諾しなかった理由 19
(調停案受諾勧告文書に対する回答書別紙)
3 処理経過 22
4 xxx消費者被害救済委員会委員名簿 23
申立人 (消費者)1名 20 歳代男性
相手方甲(事業者)1社 株式会社アクターズステーション
(本件契約書における「販売店」)
相手方乙(事業者)1社 株式会社レアル
(本件契約書における「販売契約先」)
(契約書上の住所)xxxxxxxxxxx00 x0x
第2 紛争案件の概要
申立人の主張による紛争案件の概要は、次のとおりである。
令和元年7月下旬、アルバイトの情報サイトで、相手方甲が掲出したエキストラ募集の広告を見つけ応募した。甲からエキストラ登録のため来所するよう電話があり、出向いて登録をした際、短編映画出演のオーディションを受けるように勧められた。オーディションの翌日合格と言われ、「映画に出演するために8か月間、相手方乙での約 50 万円のレッスンが必要」と有料のレッスン契約が必要であることを初めて告げられた。もともと海外で俳優になりたいという夢があった。「今ここにチャンスがあるので逃さないほうがよい。」などと言われ、その場で契約をしなければならない雰囲気になり、乙とのレッスン契約をしてしまった。クレジットカードで 50 万円を支払ったものの、解約しようと思い、翌日SNSで
「相談させてほしい。仕事や他の習い事との掛け持ちは難しい。」と甲の従業員Aに送信した。Aから連絡が入り、事務所に出向いたら、「日本で信用を作ってから海外に行くべき。うちのレッスンは他と違ってレベルが高い」などと説得され、結局解約できず、2回レッスンを受けた。しかし解約したいという思いが強くなり、8月中旬に、消費生活センターに相談し、乙に解約を申し入れたが、入学金 28 万円の返金には応じないと言われた。消費生活
センターの交渉により 25 万円となったが、納得できない。受けたレッスン費用以外は返金してほしい。
第3 委員会による処理開始と当事者の主張
本件は、令和2年1月9日、xxx知事からxxx消費者被害救済委員会に付託され、同日、同委員会会長より、その処理が、あっせん・調停第二部会(以下「部会」という。)に委ねられた。
1 登記簿上及び本件契約書上の住所
2 登記簿上の住所
部会における事情聴取時の当事者の主張は、次のとおりである。
1 申立人の主張
(1) 令和元年7月下旬、アルバイト情報サイトから相手方甲のエキストラ募集広告を見つけ応募したところ、甲から電話があり、エキストラの登録のために来所を求められた。このときは、相手xxのことは聞いておらず、知らなかった。
(2) エキストラの登録のため、甲の事務所に行った際に、甲の従業員Aから、翌日に行われる短編映画に出演するためのオーディションの受験を勧められた。映画は、新宿やxxなどのシアターで関係者だけの間で放映するとのことだったが、題目は不明だった。
(3) オーディションは、甲の事務所が入っている建物の地下1階で受けた。オーディションを一緒に受けたのは、男女2名ずつの4名で、男女のペアになり、与えられた課題をアドリブで演じた。審査員は、俳優と映画監督の2名だった。終了後、甲の従業員Aから、翌日に合格発表があるので甲の事務所に来るようにと指示された。他の受験生も一人ずつ合格発表の日時を指定され、別々に帰るようにと指示された。このとき、有料レッスン契約の話は聞いていない。
(4) 翌日、指定された時間に甲の事務所に行き、甲の従業員Aから合格を告げられ、合格証を渡された。合格証には「選考の結果、映画出演に合格と決定し、ここに正式に映画出演者として出演が決定しましたことを証明します。」と書いてあった。その時、仕事や収入やその使い道を書く紙を渡されて記入したが、控えは渡されなかった。
(5) 収入や使い途を書いた後に、甲の事務所のパーテーションで区切られた一部屋で、甲の従業員Aから、初めて乙の有料レッスン契約の話をされた。このとき同席者はいなかった。パーテーションで区切られた向こう側には他の社員がいたようだが、一般の人が出入りするような場所ではなかった。
映画のオーディションには合格したが、乙の有料レッスンを全て受けないと映画に出演することはできない、キャストも決まらないということだった。レッスン期間は8か月で金額は 518,400 円だった。オーディションに受かって映画に出られると思って嬉しかったが、8か月のレッスンを受けないといけないというのは、本当に予想外だった。
(6) 金額の内訳 3は、聞いていないが、入学金が 28 万円で契約金額の半額以上を占めていた。契約する段階では入学金がなぜこんなに高いのかは聞かなかったが、後に甲の従業員Aに聞いたところ、入学金を高く設定しているのは、レッスンをやり遂げてもらいたいという気持ちと、映画に出演した後は乙が芸能事務所に紹介するので、ここでは人を育てる機関として高めに設定していると説明された。また、1つの映画を作るにも莫大な費用がかかっているので映画制作費用にも使うと聞いた。
(7) レッスンを受けて映画に出演すると、必ず芸能事務所に所属できると言われたので、芸能活動ができれば芝居で食べていくことができると思った。4
映画出演での報酬の話はなかったが、この業界に対してのクレジットができると言われたので、映画に出演するのはいいと思った。
3 契約書には、入学金¥280,000、受講料¥200,000、【総額¥518,400 (消費税込)】「※レッスン費用には、登録料、講師料、施設利用料が含まれます。」と記載されている。
4 事務局では、業界団体(2団体)から、「芸能事務所に入ること自体は非常に難しく、簡単に入ることはできない。『芸能事務所に所属させる』という言葉に期待を持つのは当然のことである。」という話を伺った。
(8) 断りたいという気持ちと映画に出たいという気持ちで迷っていたが、合格証をもらって、芝居を評価されたという思いと映画に出演したいという気持ちが強くなっていた。もともと海外で俳優になりたいという夢があった。「今ここにチャンスがあるので逃さないほうがよい。」などと言われ、その場で契約をしなければならない雰囲気になっていった。レッスンを受けないと映画に出演できないのであれば、契約をするべきだという判断をしてしまった。
しかし、必ず契約しないといけないという甲の従業員Aからの強い圧力がなければ、契約をしなかったと思う。
(9) 契約書は一読するように言われたが、裏面の半分くらいしか読む時間はなかったし、契約書の内容についての説明はなかった。クーリング・オフや解約の説明は受けていない。
契約時に、契約書のほかに講師の紹介やレッスン参加についての注意事項が記載されているパンフレットのようなもの 5と8月のレッスンスケジュールをもらった。レッスン期間8か月とは、契約書に「レッスン期間令和元年8月~令和2年4月」と記載されているのみだったので、最初にレッスンを受けた日から始まるのではないかと思った。レッスン受講にあたっては、毎月スケジュールをもらい、自分が受けたいレッスンを連絡するシステムになっているが、希望通りには受けられない可能性もあった。
映画に出演するために、絶対に必要なコマ数とか、この講師の講義を何コマ取っておかなければいけないという指示はなかった。実際にレッスンを受けないと内容は全く分からないようだった。
(10) 支払いについては、クレジットカードでないとできないと言われ、甲の従業員Aにクレジットカードを渡したところ、50 万円を2口に分けて決済された。残金は、後日現金で支払うこととなった。
(11) 家に帰って冷静になって考えると、仕事もあり、土日は別の勉強もしているので、レッスンに充てる時間を作るのが難しいと思った。
クーリング・オフをするつもりで、契約した翌日に、SNSで、甲の従業員Aに、
「昨日の今日で申し訳ないのですが、相談させてほしい。仕事や他の習い事との掛け持ちは難しい。」と連絡をした。甲の従業員Aからも、「えっ、昨日の今日なのにですか。」と返事がきた。相談したいという表現を使ったが、続けることができないと話をして、クーリング・オフをしてもらおうとした。クーリング・オフするために、はがきや書面で出す方法があることは知らなかった。
数日後、甲の従業員Aと会って私が行きたい養成所の話をし、「日本で役者をやるよりは、海外でお芝居をやってから日本に戻ることを希望している。」と話をしたが、
「日本で信用を作ってから海外に行くべき。うちのレッスンは他と違ってレベルが高い。」などと説得されてクーリング・オフができなかった。
(12) その後レッスンを2日受講したが、やはり、契約をやめたいという気持ちは変わらなかった。どうしたらよいか分からず、8月中旬に消費生活センターに相談をし、乙宛てに解約通知書を出した。
(13) 現金で支払うこととなっていた残金 18,400 円は、甲の従業員Aに支払ったと思うが、
5 部会がパンフレットを確認したところ、「プロフェッショナルな講師陣の指導の元、一人ひとりの可能性を開花させる特別スキルアッププログラム」との説明と講師予定者のプロフィール紹介があるが、講義内容は具体的に記載されていなかった。
領収書が見当たらず、よく覚えていない。
(14) 乙とのレッスン契約に関しては、契約から解約まで一貫して、甲の従業員Aを通じて話が進んでいき、乙とは一度も話をしたことはなかった。甲の従業員Aから、解約金についてはAが乙と交渉すると言われたため、申立人が乙と話をすることはなかった。
(15) エキストラについては、10 件以上はメールで案内がきている。甲で登録したので、甲からメールで案内がきているとばかり思っていたが、確認したところ、全て乙からの案内だった。
(16) 消費生活センターの交渉で、乙は、受講料はいいから入学金は全額払ってほしいと言っていると聞いたが、契約金額の半額以上の入学金の支払いというのは、納得がいかない。受けたレッスン費用だけは払う。
2 相手方甲の主張
(1) 当社は、エキストラを募集して派遣業務を行っている。
(2) 申立人が当社のエキストラに応募したので、電話をしてエキストラの登録に来るように言った。電話の段階で、オーディションの話はしていないし、有料のレッスンの話もしていない。
(3) エキストラの登録に来た申立人に対し、当社の従業員Aが口頭でオーディションに誘った。
(4) オーディションを主催しているのは乙で、xが懇意にしている監督の映画のオーディションだった。乙から、役者志望や芸能の世界にチャレンジしたいと思っている方をオーディションに紹介してほしいと言われており、申立人は役者になりたいという意向が強かったので、オーディションを勧めた。
(5) 乙とは業務委託契約は結んでいない。
(6) 従業員Aが、オーディションを勧めた際に、有料のレッスン契約の話をしたかについ ては、従業員Aに確認はしていないが 6、レッスンを受けずに映画に出演する場合もあれ ば、レッスンを受けてもらう場合もある、という話はしていると思う。レッスンが有料 であり、入学金を一切返還しないことは、オーディションに行く前には告げていないが、ほとんどの人が予測しているはずだ。レッスンが必要か必要でないかは、オーディショ ンをしてみないと分からないし、合格するかしないかも分からない時点で説明すること 自体が疑問である。
(7) オーディションの合格発表は、当社が紹介した人については、乙からその結果について細かく教えてもらい、個別に来所を求めて当社から告げる。乙がオーディションで得たその結果など応募者の個人情報を、当社が本人の許可なく聞くことがおかしいとは思わない。
(8) オーディションの結果を聞きに来た申立人に対し、当社の従業員Aが対応した。申立 人は、レッスンを受けないと映画に出せないレベルだった。合格証は、きちんとレッス ンを受けたら映画にキャストとして出すという証明書として出しているので、合格証は、レッスン契約を結んだ後に渡したはずだ。合格証を持っていても、映画に出られるとは 限らない。
6 部会では、従業員Aから事情を聞きたいと考え、相手方甲に対しヒアリングを行うに当たり、また、あっせん案の考え方を示し意見交換を行う際にも従業員Aの同席を求めたが、いずれも出席できないとのことであった。
申立人に、きちんと有料のレッスン契約の話をしたのはオーディション後である。レッスン契約の手続は、当社の従業員Aがした。レッスン契約に乙は同席をしていないと思う。
合格者を集めて話をするのではなく、1対1でレッスン契約の話をするのは、合格者の中でもレッスンを受けなくていい人もいれば、これだけのレッスンを受けなければいけないという人もいて、人によって違うからである。
(9) レッスンを受けて映画に出演した後には、必ず芸能事務所に所属できるということを従業員Aは言っていないと思うが、「芸能事務所」という言葉は出ていると思う。映画の出演料は発生しない。
(10) 契約書に関しては、金額やクーリング・オフの説明、返金 7に関する項目のほか休校や盗難、損害賠償など、内容の約50%は、従業員Aが説明をしていると思う。
(11) レッスンは1コマ 90 分で、年間を通して運営しているが、入学の時期は皆それぞれ違う。レッスンスケジュールは、毎月 20 日前後に翌月のスケジュールが出ると乙から聞いている。
(12) 契約日の翌日に、申立人が従業員Aに相談したいとSNSで送ったことは聞いていないが、契約日の5日か6日後に従業員Aが申立人と話をしたと聞いた。xxxはやめたいとは言っておらず、芸能の勉強はしたいが、別の養成所に行くことと迷っていたので、xxxxの見学を促したと従業員Aから聞いた。その結果、やることとなり、実際にレッスンを4コマ受けている。当社としては、従業員Aが、申立人に、クーリング・オフ期間中に判断できるように見学をさせたのだと思っており、従業員Aがレッスン契約を強要するようなことはしていないし、落ち度はない。申立人の我儘であり、無責任だと思う。クーリング・オフは、電話でも受け付けており、全部無条件で応じている。契約者は、改めて乙に申し出る必要はないことになっている。申立人がやめると言ったのは、消費生活センターに相談をする直前ぐらいだと思う。
(13) 最終的な判断は、乙に任せているが、ある程度の線引きが必要であり、例えば、入学金というところだと思う。
3 相手xxの主張
(1) 当社の主たる業務は、レッスンの提供である。映画の制作をしているが、利益はあまり考えていない。
(2) 甲には当社が制作する映画に、エキストラを提供してもらったり、映画のオーディションに人材を紹介してもらっている。
映画のオーディションの案内、xxxx契約の勧誘と契約の説明、解約に関しては、基本的に甲に任せている。
レッスン契約については、xが説明をすることになっており、説明に問題があるときは、甲にクレームを入れるが、最終的には当社が責任を持つ。レッスン契約が成立したら、甲に紹介料を払うという仕組みだが、甲とは、業務委託契約は結んでいない。
(3) オーディションは当社の制作している自主映画の出演者を選ぶもので、当社が主催しており、毎月実施している。令和元年8月はオーディションを3回か4回実施した。1
7 契約書には、「第九条(返金) いかなる理由で本契約を途中で解除・解約した場合であっても、入学金は一切返還しないこととする。」「第二十一条(解約規定) 解約に際して入学金及び受講料、諸費用の返金はありません。但し、諸事情がある特別な場合は誠意ある双方の合意の上、速やかに手続きを行うものとする。」と記載されている。
回あたり7名か8名が受験するが、多い時は15 名くらいが受験する。
(4) 自主映画は、オーディションの合格者だけで作る。具体的な企画やストーリーは、オーディションの段階では決まっておらず、レッスンの仕上がり具合で決めていく。映画の出演料はない。
(5) オーディションの合格証は、当社が発行する。レッスンを受けて、きちんとコマ数をクリアすれば、映画に出しますという約束の証である。
(6) レッスン費用には、登録料、講師料、施設利用料が含まれるとあるが、契約金額の明細はない。会社運営にかかる年間費用を考えて出している数字であり、映画の制作費用も含まれている。
(7) レッスンの受講可能回数とは、レッスン期間8か月の間に必要なコマ数を消化してく ださいという意味であり、当社のレッスンのコマ割りでは、消化し切れないこともある。月・火・水曜日はレッスンを行っていない。スタジオは当社のスタジオなので、いつで もレッスンができるような環境はある。
(8) レッスンの入学時期は、決まっているわけではなく、随時やっており、ここが始まりとか終わりとかの区切りはない。
1か月分のカリキュラムは、前月の 20 日前後までに教えており、1コマは 20 人か 25
人で定員がいっぱいになったらメールを送っている。
また、レッスン契約を結んだ人には、現場を勉強するという一つのお手伝いとして、うちにエキストラの依頼がきた案件についてエキストラの募集メールを送っている。
(9) レッスンを受けて映画に出演したからといって、必ず芸能事務所に所属させるということはない。
(10) 契約金額のうち、クレジットカード決済分は、甲の従業員Aが決済したのか、当社の社員がAからクレジットカードを渡されて決済したのか、確認しないと分からない 8。現金で支払うことになっていた 18,400 円は受け取っていない。契約金を甲に払うというルールは存在せず、領収書は乙の経理からしか発行されない。
(11) 申立人は、他に行きたい学校があり、迷っていたので、当社のレッスンを見学してから判断することを許可した。最終的には、こちらでやるということで、その後レッスンを4コマ受講している。
正式にクーリング・オフの依頼が甲にあったのなら、当社はクーリング・オフをする。また、念のため、はがきを当社に出してくれと言ったと思う。申立人から解約の申出が あった時期については、消費生活センターから電話で解約したいという意向が伝えられ た時という認識である。
(12) 受講料については、全額返金するが、入学金は返さない。入学金は、クーリング・オフの期間内だったら全額返金するが、クーリング・オフ期間が過ぎた段階で全額を頂いている。入学が決定したら、どこの学校でも入学金は返還していないと思う。
第4 委員会の処理結果
部会は、令和2年2月14 日から令和2年8月27 日までの6回にわたって開催された(処
8 部会が領収書を確認したところ、加盟店名:株式会社レアルと記載されていた。
理経過は資料3のとおり)。
部会において、あっせん案を作成したが、申立人の債権債務は、相手方甲との間にはなく、相手方乙との間にしかないため、あっせん案は、相手方乙のみを当事者とした。同年6月 26 日、申立人及び相手方乙へ提示したところ、申立人からはあっせん案を受諾する旨の回答が あったが、相手方乙からは、受諾しない旨の回答と共に、書面での説明を受けてその上で判 断したいとの要望があった。そのため、部会は、同年7月 22 日、あっせん案の考え方の補 足説明を送付し、再度受諾について回答を求めたが、相手方乙は、これを受諾しなかった。
このため、部会は調停案を作成し、同年8月7日付けで相手方乙に受諾を勧告した。調停案を示すに当たり、部会は、あっせん案と同じ内容で解決することが社会的に公正かつ妥当であると判断し、調停案はあっせん案と同様のものとなった。相手方乙からは、受諾しない旨の回答があった。
部会は、「あっせん」及び「調停」のいずれもが、相手方乙の拒否により不調となったため、令和2年10 月15 日、紛争解決の処理手続を終えることとした。
【あっせん案・調停案の内容】
申立人と相手方乙との間で令和元年8月〇日に締結されたレッスン受講契約(以下「本件契約」という。)に係る取引は、訪問販売(特定商取引に関する法律第2条第1項第2号)に該当することから、以下のとおり合意する。
1 申立人と相手方乙は、本件契約が、令和元年8月〇日付けの申立人による申出により、特定商取引に関する法律第9条に基づき解除(クーリング・オフ)されたことを確認する。
2 申立人と相手方乙の間には、本件契約に関して、本あっせん条項以外に、相互に何ら債権債務のないことを確認する。
【相手方乙が示したあっせん案及び調停案に不同意であった主な理由等】
〇 そもそも本件取引はアポイントメントセールスに該当するものではない。
〇 仮に該当するとしても契約書等の記載内容に不備はなく、申立人がクーリング・オフを主張することはできない。
〇 あっせん案を受諾することはできないが、申立人が中途解約を希望するのであれば、清算方法については相談に応じる。
〇 申立人より、契約から6日後に「契約を履行するか、クーリング・オフをするかは、レッスンを見学した上で判断したい」との申し出を受けた。見学の結果、申立人は契約をした。よって、再度のクーリング・オフは理解しがたい。申立人の責任はないのか。
第5 報告に当たってのコメント
1 あっせん案の考え方
あっせん案は、①本件レッスン契約(令和元年8月〇日締結、契約金額 518,400 円)に係る取引は、特定商取引に関する法律(以下「特定商取引法」という。)に規定する訪問販売
(アポイントメントセールス)に該当する、②その契約書には、同法で記載することが求め
られる事項が記載されていない、③本件レッスン契約は、②を理由として、令和元年8月〇日付けの申立人による申出により、同法に基づき解除(クーリング・オフ)されたことを確認する、④申立人と相手方事業者の間には、本件契約に関して、相互に何ら債権債務のないことを確認する、というものであった。以下では、このようなあっせん案に至った理由について述べる。
(1) 取引類型 訪問販売(アポイントメントセールス)について(前記①関連)
ア 本件レッスン契約に係る取引が、特定商取引法の類型である訪問販売のアポイントメントセールスに該当する(特定商取引法2条1項2号、政令1条1号)か否かについては、次のように考えた。
アポイントメントセールスとは、事業者が、政令で定める方法により、勧誘目的を明示せずに営業所等へ呼び出し、売買契約や役務提供契約を締結する商法をいう(政令1条1号)。政令で定められた方法とは、電話、郵便、SNS等により呼び出すものである。これらの方法で呼び出した者に対し、対面で別の日に営業所等へ再度の来訪を要請した場合も、本来の勧誘目的を告げない状態であるときは、何度営業所等へ呼び出し来訪していても、アポイントメントセールスに該当することになる。
イ 本件レッスン契約に至った経緯は、次のとおりである。
・相手方甲の従業員は、アルバイト情報サイトを見てエキストラに応募してきた申立人に対し、電話で、エキストラの登録のために甲の事務所に呼び出した。
・相手方甲の従業員は、エキストラの登録のために来訪した申立人に対し、相手方乙のオーディションに勧誘した。
・相手方甲の従業員は、相手方乙のオーディションを受験した申立人に対し、合格発表の結果を聞きに来るようにと甲の事務所への来訪を要請した。
・相手方甲の従業員は、オーディションの合格発表を聞きに来た申立人に対し、相手方乙のレッスン契約を勧誘し、本件レッスン契約を締結した。
・相手方甲の従業員は、本件レッスン契約の締結の時点に至るまで、申立人に対し、本件レッスン契約が有料であるということを告げていなかった。
ウ 本件については、申立人と相手方乙との間で締結されたレッスン契約に関し、相手 方甲の従業員が申立人を相手方甲の事務所に呼び出したことが、訪問販売(アポイン トセ-ルス)であることを否定する理由となるのか否かが第1に問題となる。そして、訪問販売に該当するとした場合に、本件レッスン契約に当たり申立人に交付された書 面について、法所定の事項の記載がされているか否かが第2の問題となる。
第1の点については、政令1条1号は、アポイントメントセ-ルスの勧誘方法として、「役務提供契約の締結について勧誘をするためのものであることを告げずに営業所その他特定の場所への来訪を要請すること」としているところ、たしかに、エキストラの募集に応じた申立人を電話でエキストラの登録のために呼び出したのは、相手方乙ではなく、相手方甲の従業員である。しかし、その後、相手方甲の従業員は、相手方乙のオ-デションを受けることを勧誘し、その合格発表や相手方乙の有料の本件レッスン契約の勧誘、そして、最終的には、申立人との間での本件レッスン契約の締結を自ら一人で行っており、本件レッスン契約に係る相手方乙の「レッスン申込書兼
契約書」には、販売店として相手方甲の名称及び同従業員の氏名、並びに販売契約先として相手方乙の名称及び代表取締役の氏名が記載されている。相手方乙は、相手方甲のエキストラの募集業務について十分に認識したうえで、役者志望や芸能の世界にチャレンジしたい者の紹介を相手方甲に依頼しており、また、そのような者の紹介を受けた相手方乙は、自らで主催するオ-デションに係る業務、及び前記契約書に相手方甲従業員の氏名が記載されているとおり本件レッスン契約の締結業務のすべてを相手方甲の従業員に委託し、担当させていた。
以上のことから、相手方乙は、エキストラ募集業務をしている相手方甲に対し、本件レッスン契約の締結業務を委託していたとみることができ、政令1条1号にいう
「役務提供契約の締結について勧誘をするためのものであることを告げずに営業所その他特定の場所への来訪を要請する」行為に関して、本件のように、相手方甲が、反復継続しているエキストラ募集業務の一環として、相手方乙のためにレッスン契約の締結に尽力し、相手方乙もその尽力を承認している事実(相手方甲の連れてきた顧客の受け入れ、手数料の支払い等)が認められるときは、相手方甲と相手方乙との間に媒介が成立していると考えられ、消費者契約法5条により、抗弁の接続が認められると解される。
これを消費者たる申立人の側からみると、エキストラの登録のために来訪したのに、不意打ち的に有料かつ高額の本件レッスン契約の締結をしたことになった。ここにお いては、本件レッスン契約の締結に至るまでの申立人と相手方甲の従業員との間の前 記の経緯からみて、申立人が、訪問販売によることなく、もっぱら自らの任意の判断 に基づいて本件レッスン契約の締結をしたとみることはできない。
したがって、本件レッスン契約は、特定商取引法の訪問販売のアポイントメントセールスに該当するとした。
(2) 書面交付義務とクーリング・オフ(前記②③関連)
ア 以上で述べたとおり、本件レッスン契約は、訪問販売(アポイントメントセールス)に該当するが、その場合に、特定商取引法は、契約時もしくは申込の時に、事業者に書面の交付を義務付けており、その書面に記載する事項を規定している(特定商取引法4条、5条)。上記(1)ウにおいて第2の問題として述べたように、本件レッスン契約に当たり申立人に交付された書面について、法所定の記載事項が適正に記載がなされているか否かが問題となる。
事業者と消費者では、情報の質、量及び交渉力には格差があるとして、特定商取引 法により、書面交付義務やクーリング・オフなどを定めているところ、消費者が、契 約内容を十分理解して契約の可否を判断するためには、正確な情報を与えられなけれ ばならず、事業者は、不備のない書面を交付する義務がある。消費者は、訪問販売に おいては、この書面を受領した日から8日間は、クーリング・オフをすることができ る。ただし、同法で定められた事項が書面に記載されていない場合は、消費者は、不 備のない法定書面が交付されるまで、いつでもクーリング・オフをすることができる。
本件レッスン契約において申立人に交付された契約書においては、法令で定められた次のイ~エの事項について記載がされていない。以下、記載事項の不備について順番に述べる。
イ 役務の種類
特定商取引法4条1号は、訪問販売における交付書面には「役務の種類」を記載しなければならないとしているが、ここでの「種類」とは、役務が特定できる事項をいう。本件レッスン契約においては、相手方乙の製作する映画に出演し俳優を志望する申立人にとって、本件契約締結時において、どのようなレッスンを受けるのかについて、その内容が認識できる程度に、契約書に明確に示されていなければならない。
本件契約書には「全 72 コマ受講可能」と記載されているが、これでは、どのようなレッスンを受けるのかについて認識することはできず、具体的な提供役務の内容は記載されていない。契約書などに記載しきれない場合は、「別紙による」旨を記載した上で、別途、役務の提供を記載した書面を交付することが必要であることとされている。また、この場合、別紙書面は、契約書などとの一体性が明らかとなるように同時に交付することも必要である。
申立人は、契約をした際に8月のレッスンスケジュールは受け取ってはいるが、それ以降のレッスンスケジュールは受け取っていない。申立人にとって、契約期間の具体的なレッスンスケジュールは、実際にどのような講義を契約期間中にどのくらい受けることができるかについて認識したうえで本件レッスン契約を締結するか否かを判断するための重要な事項である。
8月より後のレッスンスケジュ-ルについては、講師陣のスケジュ-ルの調整がされ、前の月の 20 日から 25 日になって初めて担当講師と講義内容が受講生に分かり、しかも、定員により受講できない場合があるというのでは、到底、「役務の種類」が明らかであるとは言えない。なお、本件レッスン契約の交付書面には、「カテゴリ映画出演者」となっているが、この記載をもってしても、レッスン受講後にどのような映画にどのようなキャストで出演できるかという具体的な条項ではなく、同法が要求する「役務の種類」の記載とは言えない。
ウ 役務の対価
特定商取引法4条2号は、「役務の対価」として、当該役務の対価そのものを記載することになっている。本件レッスン契約に係る契約書には、「入学金¥280,000、受講料¥200,000、総額¥518,400、(消費税込み)」と記載されており、「レッスン費用には、登録料、講師料、施設利用料が含まれます。」とあるが、具体的な費用の明細はなく、また、当該経費が入学金に含まれるのか、受講料に含まれるのかも不明である。
エ 役務の提供時期
特定商取引法4条4号でいう「役務の提供時期」については、役務の提供が複数回にわたる場合には、回数、期間等が明確になるように記載しなければならない。本件レッスン契約に係る契約書においては、レッスン期間として「令和元年8月~令和2年4月」となっているのみで、レッスン提供日が8月何日から4月何日までなのかの記載がない。申立人のような受講生にとって、各レッスンが何月何日、または毎週何曜日の何時から何時まで開講されるのかについて、本件レッスン契約締結時において明確でなく、前記のように、開講日の前の月の 20 日から 25 日になって初めて明らかになるというのでは、自己の仕事その他の用務の障害となり得ることから、同法で要
求する「役務の提供時期」についての記載があったとは言えない。オ クーリング・オフ
以上のイからエで述べたことから、本件レッスン契約については、申立人に交付した書面に不備があったことになる。
したがって、申立人のクーリング・オフの起算日は進行しないところ(特定商取引法9条)、申立人は、令和元年8月〇日付け書面で本件契約を解約したい旨を申し出たため、本件レッスン契約については、クーリング・オフが成立する。
(3) クーリング・オフが成立した時の効果について
ク-リング・オフが成立したことにより、両当事者は、原状回復義務を負う(民法 703
条、特定商取引法9条)ことから、相手方乙は、受領した金銭を返還する必要がある
(特定商取引法9条6項)。契約金額 518,400 円の支払い方法は、50 万円を申立人が所有していたクレジットカードで2回に分けて、25 万ずつ決済し 9、残金 18,400 円を現金払いとしたことについては双方争いがないところ、申立人は、18,400 円は、相手方甲の従業員に支払ったと思うと述べるが、支払った日時の記憶が曖昧で、領収書はない。相手方乙は部会において、契約金を相手方甲に払うというルールは存在しないとし、領収書は相手方乙の経理からしか発行されない旨述べている。申立人の元に領収書がない以上18,400 円の授受に関しては、乙の主張を採用した。
なお、この場合に、相手方乙は、提供済の役務の対価を請求することはできず(特 定商取引法9条5項)、また、損害賠償や違約金の請求もできない(同法9条3項)。
(4) その他
以上で述べたように本件レッスン契約は、特定商取引法の訪問販売(アポイントメントセ-ルス)に該当し、相手方乙は、受領した金銭全額を返還する義務を負う。また、仮にアポイントメントセールスに該当しないとしても、消費者契約法9条により、相手方乙は、既に申立人から支払われた入学金(280,000 円)の返還を拒むことは認められない。
以下、その理由を述べる。
相手方乙のレッスン申込書兼契約書では、「いかなる理由で本契約を途中で解除・解約した場合であっても、入学金は一切返還しないこととする。」と定めるところ、入学金に関しては、大学の在学契約における学納金の返還請求に関する最高裁判決(平成 18
年 11 月 27 日民集 60 巻9号 3437 頁)がある。同判決は、①大学の入学金は、原則として、その入試の合格者が当該大学に入学し得る地位を取得するための対価であり、②合格者 と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料・入学金等を返還しない旨の特 約は、在学契約解除に伴う損害賠償の予定又は違約金の定めの性質を有し、③入学金等 に係る当該大学と合格者との契約は消費者契約法2条3項所定の消費者契約に該当する ところ、当該大学と合格者との間の在学契約に納付済みの授業料・入学金等を返還しな い旨の特約がある場合に、消費者契約法9条1号の規定によって、同種の契約の解除に 伴う平均的な損害及びこれを超える部分については無効とされる(その主張立証責任は
合格者が負う。)と判示した上で、④大学においては、一般的に、同解除の意思表示が
9 後日、申立人がクレジット会社宛てに支払停止等の申出書を提出したことにより、請求保留となっていた。
大学の入学年度が始まる4月1日の前の日である3月 31 日までにされた場合には、原則として、当該大学に生ずべき消費者契約法9条1号所定の平均的な損害は存在しないものとして、同号によりすべて無効となり、当該大学は入学金等全額の返還を拒むことはできず、他方、同解除の意思表示が同日よりも後にされた場合には、原則として、上記授業料・入学金等が初年度に納付すべき範囲にとどまる限り、上記平均的な損害を超える部分は存しないものとして、すべて有効となる、と判示した。
最高裁判所の事案は、「大学に入学し得る地位を取得する対価」が問題とされたものであり、本件レッスン契約のように、教育やレッスンを提供する契約一般については、特段の事情のない限り、同じように考えることはできない。すなわち、本件レッスン契約においては、上記①でいう「入学し得る地位」の取得に伴う対価としての「入学金」について、大学における場合(学校教育法でいう「大学」に在籍し得る地位の取得に伴う対価)と同様に考えることはできず、また、本件レッスン契約については、入学時期も定まっておらず、オーディションも随時行われていることから、上記④で問題とされたような、大学の場合の学生定員との関係での解除の時期による大学の損害(4月1日以降に解除がされた場合には、他の学生を入学させて対価を得ることはできないことによる損害)の発生が問題となることもない。
したがって、本件レッスン契約に係る「入学金」については、同契約の解除に伴う、消費者契約法9条1号所定の平均的な損害が存在するとは言えず、同号によりすべて無効となり、相手方乙は、入学金全額の返還を拒むことはできない。
2 同種・類似被害の再発防止に向けて
(1) 事業者に対して
本件は、相手方甲の従業員が、アルバイトとして相手方甲のネット上のエキストラ募集に応募してきた申立人に対し、相手方甲の事務所で、映画出演の機会だからと相手方甲と同じ場所に営業所を置く相手方乙のオーディションを受けるよう勧め、さらにオーディション後は合格発表のため来社するよう指示して、相手方甲ないし相手方乙内で合格を告げるのと同時に相手方乙の有料レッスン契約の勧誘をし、その場で契約書に署名捺印をさせた事案である。
オーディションを契機に有料のタレント養成契約を結ばせる事業者の例は多く報告されており、タレントや俳優になりたいと夢見る社会経験の乏しい多数の若年者らが、十分な考慮や契約内容の吟味をせずに契約してしまい、高額な費用負担をさせられる被害に遭っている。本件もそれらの例に類似し、アルバイト募集サイトを見てエキストラ登録をしようとしたことを機に、オーディションに誘われ、続いて有料のレッスン契約を勧誘されて契約締結にいたり、当初予想しなかった高額な費用負担をさせられている。
ア エキストラの応募とオーディションがそれぞれ別会社の事業であること
本件では、相手方乙と申立人との間で有料のレッスン契約が締結されるについて、相手方乙の従業員は一切関わっておらず、全て相手方甲の従業員が勧誘し、オーディションの結果を発表し、契約締結事務まで行っている。
このことはエキストラ募集・登録を行う相手方甲が、相手方乙の有料レッスン契約勧誘にいたる過程で重要な役割を果たしていたことを指し示している。少なくとも、申立人は相手方甲のエキストラ募集がなければ、相手方乙と接点を持つ機会は全くな
かったし、アルバイトの登録先と認識している相手方甲の従業員が熱心に勧誘しているのでなかったら、自分の意思だけでは相手方乙のオーディションを受けたり、その後の有料レッスン契約を締結したりする可能性はほとんどなかった。
相手方甲乙は互いに、両社間には業務委託契約はなかったといっているが、しかし、相手方甲は、相手方乙から役者志望や芸能の世界にチャレンジしたいと思っている方 を紹介してほしいといわれていたといっており、エキストラに応募する人の中には役 者志望の人が平均より高い割合でいたと思われるから、相手方甲が相手方乙に紹介す る機会はこれまでも多数あったものと推認される。その上、申立人の例から伺われる ように、相手方乙のオーディションであったにも関わらず、その合格発表や有料レッ スン契約の勧誘まで相手方甲の従業員が行っていたというのであるから、相手方甲の 従業員はオーディション等の手順に慣れていて、日頃から、本来相手方乙の行うべき 業務を一部肩代わりしていたことが伺われる。
さらに、相手方乙のレッスン申込書兼契約書には、販売店として相手方甲の社名とその従業員の名前が販売担当者として記載されている。
このことから、相手方乙と相手方甲との間には、正式な業務委託基本契約に係る書面を交わしていたのか否かに関わらず、業務委託契約が結ばれていたものと認定できる。
なお、このように、契約の当事者と勧誘を行う者を形式上分離させるのは、勧誘の際の瑕疵を顧客が契約当事者に対抗するのを防止するためかと推認される。しかし、ある事業者が、反復継続して、契約当事者である第三者のために契約締結に尽力し、契約当事者もその尽力を承認していると認められる事実があるとき(当該事業者の連れてきた顧客の受け入れ、手数料の支払い等)は、当該事業者と契約当事者である事業者との間に媒介が成立していると考えられる。その場合は、消費者契約法5条により、抗弁の接続が認められる。
イ 目的を告げずに事業者の営業所等に呼び寄せ、契約をさせる場合
エキストラ登録のため事務所に来た者に対し、オーディションを受けるよう勧誘するのも不意打ち的であるが、オーディション終了後、「合格した。映画に出るためには有料のレッスン契約を結ばなければならない。」などと勧誘しているのも不意打ち的である。
申立人は、事前に有料のレッスン契約を締結することになるとの説明を受けておら ず、あくまでもオーディションを受け、その合格発表を聞きに行くつもりで、相手方 甲ないし相手方乙を訪問し、そこで契約の勧誘をされ、締結にいたっているのである。
申立人が、事業者の営業所等を訪ねたのは、有料のレッスン契約を結ぶためではなく、別の目的で出かけて行っていることから、契約締結が相手方乙の営業所内であったとしても、いわゆるアポイントメントセールスに該当し、特定商取引法2条1項2号、施行令1条1号により訪問販売に該当する。
ウ 訪問販売に該当する契約において交付すべき書面の記載について
訪問販売に該当するレッスン契約を結ぶに当たっては、特定商取引法4条・5条に定める法定書面の交付が義務づけられている。
本件の場合は、提供される役務の内容、役務の対価、その提供時期について、一部
のみ記載され、レッスン契約が履行される全期間を通しての記載が欠けている。
エ 締結された契約の債務の内容は確定しているのか。あるいは対価に見合うものなのか
本件の契約でもそうであるが、一般にタレント養成契約とかレッスン契約などと称する本件同種の契約では、事業者が顧客に提供する役務の内容やその提供された役務がどれほど実益のあるものなのかが必ずしも明確でない場合が多い。
おそらく、このレッスンを受けさえすれば、必ず俳優として活躍できるようになるなどという確立された教育方法はないというべきなのであろう。
そうであるなら、ある事業者が俳優を養成しようとするときは、当社はこのような 方針で、それに従いこのような方法を採用している、そしてこれが他とは違って有用 な方法なのだと考える、という一定の思想に基づいて養成教育を行うしかないはずで ある。提供される養成のためのレッスンは、自社の方針、方法論とどう関連するのか、その説明がされる必要がある。
結局、顧客は、結果が不確かな中で、事業者の提供した方針や方法論を吟味し、それに基づいて提供される具体的なレッスンが、自身の判断としても、受け入れられるかどうかをチェックすることになる。
本件では、そうした相手方乙の養成の方針や方法論が全く説明されず、それにしたがって提供されるはずの具体的レッスンの中身も、近接する時期のものに限定されていて、養成コースの全体が示されていなかった。顧客としては、ただ、表題が「レッスン契約」と称する契約書を見せられても、その契約名だけで中身が確定・特定されるわけではない。
この点について、相手方乙は、契約書とともに詳細なパンフレットを交付したと主張するのでパンフレットの内容を検討した。しかし、パンフレットもその主要な部分は講師予定者のプロフィール紹介であって、当該講師予定者がどのような講義をするのかは全く記載されていないなど、レッスン内容を詳細に説明するものとはいえないものであった。
また契約締結をしようとする顧客は、契約締結の当否を判断するには、なんらかの
「レッスン」が受けられるというだけでは足りず、なんのレッスンを受けることになるのか明確なメニューが提示され、そのレッスンを受けることにより、俳優として活躍できるということに近づいていけるのかどうかを判断できなければ、それに対して対価を支払うことの当否を決定できない。
そうだとすると、このレッスン契約を締結するとどのような内容のレッスンを受け られて、それを受けることで俳優として活躍できるような力がついてくるのかどうか、それを判断できるようにするために、予め内容が全て確定していて契約締結前に開示 されていなければならない。
本件のように、契約締結時には次月、次々月のスケジュールが確定しておらず、契約締結をしようとする者が、なんのレッスンを受けられるのかが分からない場合は、当該レッスンを受けることで俳優としてのどのような力がつくのか判断もできないのであれば、契約締結をすべきかどうか意思決定ができないし、そもそもなんの役務提供契約なのか、内容の特定さえできていないのであれば、契約意思の合致があったのかどうか疑問が残ることになる。
なお、本件では、「レッスン費用には映画の製作費用が含まれている」との乙の発言があった。そうだとすると、その点が明確になるよう、予め顧客に説明をしなければならない。レッスン契約と銘打ちながら、それとは異なる役務の対価も含まれているのだとすると、その事実は、顧客が契約を締結するかどうかを決める際の重要な事実に該当するはずだからである。
オ 提供される役務により獲得される成果が、目に見えないものである契約の問題点
俳優の養成という、役務提供契約としては非常に高度な獲得目標を掲げて締結を勧誘する場合は、提供される役務が俳優として活躍できるような力をつけるのに有用であると考える理由を明確に示さなければならない。しかし、他方、その説明は、断定的判断提供に陥らないよう、過度に効果を強調してはならない。
さらに大切なことは、継続的に役務提供をする契約の場合、中途解約に関する公平な規律を設けることである。実際にレッスンを受け始めてから、「このレッスンでは役に立たない。」「自分はこれに向いていない。」などと考えたときに、顧客が契約関係から離脱し、支払った対価を合理的に清算してもらえるよう契約内容に定めをおくべきである。
(2) 消費者に向けて
オーディションを利用して、俳優志望などの若年者を集め、オーディションの結果
「才能がある」などと持ち上げて、有料のレッスン契約などを結ばせる商法は、広範に広がっている。将来の美しい夢を見るのは若年者の特権であるが、そうした夢を食い物にする悪質事業者が多数存在することには常に注意を怠らない必要があることを、知ってもらいたい。
オーディションの結果、才能があるなどとほめられると有頂天になりやすく、冷静な判断ができにくくなる心情は理解できる。また一般的な傾向として、熱心に働きかけて来る人物に対し、断る方法が思いつかないという、若年者ならではの社会経験の乏しさから、相手のペースに引きずられるように契約締結にいたってしまう例もみられる。
しかし、高額な契約の締結を即座に決断するのは止めてもらいたい。支払が容易では ない高額の契約は、一度契約書を持ち帰ってじっくりと考えてから締結するかどうかを 決めるべきである。事業者が、持ち帰らず、今すぐ決断するよう迫った場合は、契約を やめて帰ってくるべきである。持ち帰ることができたときは、1人になってから、契約 書を隅々まで読み、長期間レッスンを受け続けることができるのか、支払いは間違いな く無理せずに続けられるのか、慎重に、周囲に相談するなどしてから締結すべきである。
「契約書の記載」が難しく、意味が分からないなら、周囲の消費生活センターへ相談して欲しい。
(3) 行政に対して
この種の、タレント養成を標榜する事業者が多数存在するが、現状では行政が実態を十分把握できていない可能性が高く、仮に違法な業務があったとしても、これを是正させるのも容易ではない。
被害は若年で社会経験に乏しい者に集中しており、速やかに規制を強化することを考えるべきである。とくに、今後、成年年齢が引き下げられたときには、18 歳、19 歳の若
年者が被害に遭っても、未成年者取消による救済がされないため、現在よりさらに被害件数が増加することが懸念される。
救済の方法としては、たとえば、特定商取引法の特定継続的役務提供の指定役務に、タレント・俳優育成契約を加え、債権債務の内容を適正に記載した書面交付義務、クーリング・オフ制度、中途解約と契約金の清算に関する規定など、多発する若年者被害を効果的に防止する手だてが必要だと考える。
あっせん案提示文書に対する回答書別紙
弊社は、御会より頂きました令和2年7月 22 日付「エキストラ応募後に結んだレッスン契約にかかる紛争」の解決に関するあっせん案の考え方の補足説明について」と題する書面を確認しました。
同書面にて御会は、本件取引が特定商取引に関する法律の類型である訪問販売のアポイントメントセールスに該当すると指摘されています。
その理由として、本件取引は「電話で、勧誘目的(レッスン契約)を明示されずに営業所等へ呼び出され、その後、対面で営業所等に再度の来訪を要請されて出向き、ここで初めてレッスン契約の勧誘をうけ同契約を締結」したものであることを挙げられています。
しかし本件契約締結に至る経緯ですが、そもそも弊社が電話にて申立人と接触したわけではなく、申立人が求人雑誌に掲載されていたアクターズステーションのエキストラのアルバイト募集記事をみて、応募するために申立人自身がアクターズステーションに連絡をしてきました。
そのアルバイト登録のために後令和元年7月〇日に来社された時に、志望動機を確認したところ申立人は役者志望であるとのことでしたので、レアルでショートムービー、映画の出演オーディションを開催している旨の案内をしたところ、「是非、参加したい」とおっしゃいました。そのため、オーディションに選ばれたとしてもノーギャラであり、人によってはレッスンを受けてもらう場合もある旨を伝えました。
申立人は弊社の説明を確認した上でオーディションに参加することを決め、同年8月〇日のオーディションに参加しました。翌〇日に最終面接のために再度来社され、担当スタッフとの話し合いの結果、本件契約をすることになりました。
本件契約締結に至る経緯はこのようなものであり、御会がおっしゃるように本件取引はアポイントメントセールスに該当するものではありません。
本件取引はアポイントメントセールスに該当するものではありませんが、仮に該当するとしても、以下に述べる通り本件契約に関しまして御会が指摘されるような不備はありません。
① 「役務の種類」について
御会は、本件契約書に「全コマ 72 コマ受講可能」と記載されているのみで、提供役務の内容が記載されておらず、また、プロセス、方針等全容を記載した書面を交付する必要があり、それらの内容を契約書に記載、あるいは契約書と一体性が明らかになるように別紙書面を契約書と同時に交付する必要がある点を挙げられ、本件では申立人が8月のレッスンスケジュールしか受けとっておらず、よって記載内容に不備があると指摘されています。
この点に関しまして、弊社は「REAL PROMOTION ~Grasp Your Dream~」と題する書面を契約時に契約書と一緒に申立人に配布しており、この書面は契約書と一体をなすものであります。
同書面には3枚目に「REAL スキルアッププログラム」の項目にてプロセス、方針等全容を記載しており、他のページには講師陣の情報を記載しています。
レッスンスケジュールに関しましては、講師陣のスケジュール調整が必要なため、契約時に全コマのスケジュールを確定することができず、毎月 20 日から 25 日の間に翌月のレッスンスケジュールを案内する旨の説明を契約時に申立人にしております。
② 「役務の対価について」
御会は、契約書に記載されています役務の対価に関しまして具体的な費用の明細はなく、登録料、講師料、施設利用料等の経費が入学金に含まれるのか、受講料に含まれるのかが不明であり、よって記載内容に不備があると指摘されています。
この点に関しまして、本件契約書には「役務の対価の記載がレッスン費用には、登録料、講師料、施設利用料が含まれます。」と記載されており、レッスン費用は受講料を言い換えたものであり、よって経費は受講料に含まれます。
レッスン費用の中に各種経費が含まれますが、各種費用はそれぞれに料金を設定しているものではなく全体で 20 万円と設定しているため、各種経費個別の費用の明細を記載することはできません。
③ 「役務の提供時期」について
御会は、役務の提供時期に関しまして、回数、期間等が明確になるよう記載しなければならないが、本件契約書の「令和元年8月~令和2年4月」との記載ではレッスン提供日が8月何日から4月何日までの記載がなく、よって記載内容に不備があると指摘されています。
これは契約日である令和元年8月〇日以降~令和2年4月末日までの最終レッスン日ということであり、契約時に申立人に説明もしています。また、弊社は、契約時に申立人に令和元年8月のスケジュールを配布しております。その中には、各講師のレッスン日時が記載されております。同書面によりレッスン開始日は明らかです。また、役務提供期間の末日は令和2年4月の最終レッスン日になりますが、既述の通り各講師のレッスン日は前月 20 日から 25 日の間に決定されるため契約時に特定することはできません。
以上のように、そもそも本件取引はアポイントメントセールスに該当するものではありませんが、仮に本件取引がアポイントメントセールスに該当するとしても、契約書等の記載内容に不備はなく、申立人がクーリングオフを主張することはできません。
しかし、弊社としましては申立人がクーリングオフできないからと言って契約通りの金銭を支払えと主張するつもりはございません。
この度の御会からのあっせん案を受諾することはできませんが、申立人が中途解約を希望されるということでありましたら、その清算方法につきまして相談に応じるつもりです。
調停案受諾勧告文書に対する回答書別紙
弊社は、御会より頂きました令和2年7月 22 日付「エキストラ応募後に結んだレッスン契約にかかる紛争」の解決に関するあっせん案の考え方の補足説明について」と題する書面を確認しました。
同書面にて御会は、本件取引が特定商取引に関する法律の類型である訪問販売のアポイントメントセールスに該当すると指摘されています。
その理由として、本件取引は、「電話で、勧誘目的(レッスン契約)を明示されずに営業所等へ呼び出され、その後、対面で営業所等に再度の来訪を要請されて出向き、ここで初めてレッスン契約の勧誘をうけ同契約を締結」したものであることを挙げられています。
しかし本件契約締結に至る経緯ですが、そもそも弊社が電話にて申立人と接触したわけではなく、申立人が求人雑誌に掲載されていた弊社のエキストラのアルバイト募集記事をみて、応募するために申立人自身が弊社に連絡をしてきました。
そのアルバイト登録のために後令和元年7月〇日に来社された時に、志望動機を確認したところ申立人は役者志望であるとのことでしたので、弊社でショートムービー、映画の出演オーディションを開催している旨の案内をしたところ、「是非、参加したい」とおっしゃいました。そのため、オーディションに選ばれたとしてもノーギャラであり、人によってはレッスンを受けてもらう場合もある旨を伝えました。
申立人は弊社の説明を確認した上でオーディションに参加することを決め、同年8月〇日のオーディションに参加しました。翌〇日に最終面接のために再度来社され、弊社担当スタッフとの話し合いの結果、本件契約をすることになりました。
本件契約締結に至る経緯はこのようなものであり、御会がおっしゃるように本件取引はアポイントメントセールスに該当するものではありません。
本件取引はアポイントメントセールスに該当するものではありませんが、仮に該当するとしても、以下に述べる通り本件契約に関しまして御会が指摘されるような不備はありません。
① 「役務の種類」について
御会は、本件契約書に「全コマ 72 コマ受講可能」と記載されているのみで、提供役務の内容が記載されておらず、また、プロセス、方針等全容を記載した書面を交付する必要があり、それらの内容を契約書に記載、あるいは契約書と一体性が明らかになるように別紙書面を契約書と同時に交付する必要がある点を挙げられ、本件では申立人が8月のレッスンスケジュールしか受けとっておらず、よって記載内容に不備があると指摘されています。
この点に関しまして、弊社は「REAL PROMOTION ~Grasp Your Dream~」と題する書面を
契約時に契約書と一緒に申立人に配布しており、この書面は契約書と一体をなすものであります。
同書面には3枚目に「REAL スキルアッププログラム」の項目にてプロセス、方針等全容を記載しており、他のページには講師陣の情報を記載しています。
レッスンスケジュールに関しましては、講師陣のスケジュール調整が必要なため、契約時に全コマのスケジュールを確定することができず、毎月 20 日から 25 日の間に翌月のレッスンスケジュールを案内する旨の説明を契約時に申立人にしております。
② 「役務の対価について」
御会は、契約書に記載されています役務の対価に関しまして具体的な費用の明細はなく、登録料、講師料、施設利用料等の経費が入学金に含まれるのか、受講料に含まれるのかが不明であり、よって記載内容に不備があると指摘されています。
この点に関しまして、本件契約書には「役務の対価の記載がレッスン費用には、登録料、講師料、施設利用料が含まれます。」と記載されており、レッスン費用は受講料を言い換えたものであり、よって経費は受講料に含まれます。
レッスン費用の中に各種経費が含まれますが、各種費用はそれぞれに料金を設定しているものではなく全体で 20 万円と設定しているため、各種経費個別の費用の明細を記載することはできません。
③ 「役務の提供時期」について
御会は、役務の提供時期に関しまして、回数、期間等が明確になるよう記載しなければならないが、本件契約書の「令和元年8月~令和2年4月」との記載ではレッスン提供日が8月何日から4月何日までの記載がなく、よって記載内容に不備があると指摘されています。
これは契約日である令和元年8月〇日以降~令和2年4月末日までの最終レッスン日ということであり、契約時に申立人に説明もしています。また、弊社は、契約時に申立人に令和元年8月のスケジュールを配布しております。その中には、各講師のレッスン日時が記載されております。同書面によりレッスン開始日は明らかです。また、役務提供期間の末日は令和2年4月の最終レッスン日になりますが、既述の通り各講師のレッスン日は前月 20 日から 25 日の間に決定されるため契約時に特定することはできません。
以上のように、そもそも本件取引はアポイントメントセールスに該当するものではありませんが、仮に本件取引がアポイントメントセールスに該当するとしても、契約書等の記載内容に不備はなく、申立人がクーリングオフを主張することはできません。
しかし、弊社としましては申立人がクーリングオフできないからと言って契約通りの金銭を支払えと主張するつもりはございません。
この度の御会からのあっせん案を受諾することはできませんが、申立人が中途解約を希望されるということでありましたら、その清算方法につきまして相談に応じるつもりです。
なお、申立人より、契約から6日後に契約を履行するか、クーリングオフにて解約する
かの判断をレッスン見学した上で、判断したいという申し出がありました。
理由としては、申立人が他社の養成所と弊社、どちらにするのかを選択する為との事でした。
弊社としては、申し出を受け見学の上で、最終判断をしていただきました。その後レッスンにも参加していただいてます。
以上の事から、弊社といたしまして再度クーリングオフ無条件解約は理解しがたいと考えております。
申立人様には、何の落ち度もなく、契約者の責任は無いのでしょうか。
「エキストラ応募後に結んだレッスン契約に係る紛争」処理経過
日 付 | 部会開催等 | 内 容 |
令和2年 1月 9日 | 【付託】 | ・紛争の処理を知事から委員会会長に付託 ・あっせん・調停第二部会の設置 |
2月14日 | 第1回部会 | ・紛争内容の確認 ・申立人からの事情聴取 |
3月 6日 | 第2回部会 | ・相手方甲社・乙社からの事情聴取 |
4月 6日 | 第3回部会 | ・法的問題点の整理 ・あっせん案の考え方の検討 |
6月24日 | 第4回部会 | ・相手方にあっせん案の考え方等を示し、意見交換 ・あっせん案、合意書案の確定 |
6月26日 | (あっせん案) | ・あっせん案を紛争当事者双方に提示 (申立人は受諾、相手方乙社からは受諾しないとし、あっせん案の補足文書の説明要求の要望あり。) |
7月22日 | 第5回部会 | ・あっせん案提示後の対応の検討 ・報告書の検討 |
7月22日 | (あっせん案の補足説明) | ・あっせん案補足説明文書の提示と再度のあっせん案回答の要請(相手方は拒否) |
8月7日 | (調停案) | ・調停案提示(相手方は拒否) |
8月27日 | 第6回部会 | ・報告書の検討 |
10月15日 | 【通知】 | ・当事者双方に処理手続打切り通知を送付 |
11月18日 | 【報告】 | ・知事への報告 |
東京都消費者被害救済委員会委員名簿 | ||||||
令和2年11月18日現在 | ||||||
氏 名 | 備 | 考 | ||||
学識経験者委員 | (16名) | |||||
石 | 川 博 | 康 | 東京大学社会科学研究所教授 | |||
大 | 迫 惠 美 | 子 | 弁護士 | 本件あっせん・調停部会長 | ||
大 | 澤 | 彩 | 法政大学法学部教授 | |||
角 | 紀 代 | 恵 | 立教大学名誉教授 | |||
鎌 | 野 邦 | 樹 | 早稲田大学大学院法務研究科教授 | 本件あっせん・調停部会委員 | ||
後 | 藤 巻 | 則 | 早稲田大学大学院法務研究科教授 | 会長代理 | ||
菅 | 富 美 | 枝 | 法政大学経済学部教授 | |||
髙 | 木 篤 | 夫 | 弁護士 | |||
中 | 野 和 | 子 | 弁護士 | |||
野 | 田 幸 | 裕 | 弁護士 | |||
平 | 野 裕 | 之 | 慶應義塾大学法科大学院教授 | |||
洞 | 澤 美 | 佳 | 弁護士 | |||
宮 | 下 修 | 一 | 中央大学大学院法務研究科教授 | |||
村 | 千 鶴 | 子 | 東京経済大学現代法学部教授/弁護士 | 会長 | ||
山 | 口 | 廣 | 弁護士 | |||
山 | 口 由 紀 | 子 | 相模女子大学 副学長・人間社会学部教授 | |||
消費者委員 | (4名) | |||||
佐 | 野 真 理 | 子 | 主婦連合会 参与 | |||
西 | 澤 澄 | 江 | 東京都地域消費者団体連絡会 参与 | |||
星 | 野 綾 | 子 | 東京都生活協同組合連合会 常任組織委員 | |||
山 | 下 陽 | 枝 | 特定非営利活動法人東京都地域婦人団体連盟 副会長 | |||
事業者委員 | (4名) | |||||
佐 | 藤 成 | 知 | 一般社団法人東京工業団体連合会 専務理事 | |||
湊 | 元 良 | 明 | 東京商工会議所 理事・産業政策第二部長 | |||
傳 | 田 | 純 | 東京都商工会連合会 専務理事 | |||
加 | 藤 | 仁 | 東京都中小企業団体中央会 常勤参事 |
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