2022 年 1 月 REV.4 CHAdeMO 協議会
電気自動車用急速充電器の設置・運用に関する手引書
2022 年 1 月 REV.4
CHAdeMO 協議会
内容
1.背景と目的
車両の電動化は世界的な環境政策の主流となっており,欧州諸国に続いてわが国でも 2030 年代にはガソリン車の販売を禁止する目標を設ける見通しである。
電気自動車(EV)は、日常の走行では自宅での充電で支障がないが、一充電走行距離を超える遠出には移動途中で追加充電が必要になることがある。今後ますます EV が普及するためには、ユーザーが持つ電欠への不安を解消するため、駐車場・商業施設などの公共施設における充電インフラ整備が望まれる。国内の急速充電施設数は、電気自動車の普及による充電器の設置要望の拡大に加え、購入補助金制度による後押しもありこれまでに 7,600 基を超えている。
今後、充電インフラ整備を維持・継続するためには、補助金に頼るだけではなく充電サービスを持続的なビジネスモデルとして成立させることが必要となる。すでに複数の充電会社により充電サービス課金の取り組みが進められ、面的なインフラ整備は全国で一定水準に達しているとが、これからの本格的な EV 普及促進とユーザーの利便性向上のためは、主に長距離ドライブ制約を解消する高速道路のサービスエリアなどの公共施設における大規模な充電ステーションの整備が求められよう。本手引書が急速充電器の導入時などに活用され、少しでもお役に立てれば幸いである。
2.CHAdeMO 方式の急速充電器
(1) CHAdeMO 方式とは
電気自動車には車種ごとに異なる電池システムが搭載されており、さらに技術革新による電池自体の性能も変化する。そのため、公共の充電インフラには、電池メーカーや電池の種類によらず、安全で短時間で充電できることが求められる。
CHAdeMO 方式に対応する電気自動車には、電池状況を常に監視する ECU(Electronic Control Unit)が搭載されており、時々刻々と変化する電池の状態に応じ適切な充電電流を算出し、充電ケーブルの通信線を介して急速充電器にその値を伝送する。急速充電器には指令値に応じた直流電流を出力する役割のみを担わせることにより、急速充電器が電池の状態監視やその変化に伴う制御から解放されるとともに、電池のメーカーや種類によらず、充電インフラとしての汎用性を確保することが可能となる。
車両
(指示送信)
・充電許可信号
・充電電流指令値
動作
テータス
急速充電器
(指示受信)
ECU
車載電池
接触式コネクタ
直流電流出力
交流
三相 200V
図 2-1-1 CHAdeMO 方式の特長
CHAdeMO 方式急速充電器の入力電圧には、三相 200V と単相200Vの2つがある。三相入力の急速充電器は多くのメーカーから販売されており、出力容量は 20kW 程度のものから 50kW までがラインナップされている。一方、単相入力の急速充電器は出力容量が 30kW 程度までが多く、電気料金面で有利なことから導入する事例が増えている。
三相入力が主であるのは、一般に出力容量の大きい機器で電流を抑えられること、高圧や特別高圧で契約されている施設が主な設置場所と想定されていたことからである。
急速充電器の導入にあたっては、契約する需要場所、工事費、契約に伴う電気料金、充電器の使用頻度などを勘案し、出力容量を選定することになる。EV は電池の充電率、温度などにより充電電流値を計算するが、充電の経過とともに充電率が上がっていくと電池が受け入れられる電流が除々に小さくなる。
CHAdeMO 協議会では、運用の互換性を確保する目的で独自の認証制度を設けており、認証に合格した急速充電器にはCHAdeMO のロゴステッカーが貼られている。認証方式については CHAdeMO ホームページ>活動内容>認証 を参照されたい。
急速充電器は、多数のメーカーから製品化されており、CHAdeMO ホームページ>製品>急速充電器で確認できる。また、急速充電器の安全性設計については、CHAdeMO ホームページ>テクノロジー>技術概要 で解説されている。別紙2に、国際標準化の動向についてまとめているので、あわせて参照されたい。
(2) 急速充電器の設置状況
2021 年 12 月現在で、CHAdeMO の急速充電器は日本国内 7,700 基、海外 33,210 基、合計 40,910 基が設置されている。充電スタンドの位置情報は、CHAdeMO ホームページ>活動内容>発信情報>充電設備位置情報 で一般の充電スタンド情報提供サイトを含む情報が公開されている。
92 か国
7010
North America
194035260
Europe
70 Africa
200
South America
5440
Asia
7700
Japan
40,910 か所
570
AU & Oceania
(3) 充電器の大出力化とインフラ整備拡充
EV に搭載する電池の大容量化とともに,2019 年から国内市場でも 90kw~150kW の大出力充電器の設置が進んでいる。欧州・北米など海外では 1 か所に 10 台以上の充電器を備える大規模充電ステーションが建設されている。国内でも海外に後れを取っているものの、充電待ち解消のため複数台充電器設置や大出力化が徐々に進んでおり,高速道路の SA では複数台の充電器を設置するところが増えている。(写真 2-1)また,テスラのスーパーチャージャーでは 8 基充電ポストを設置した事例(写真 2-2)もある。今後このようなインフラ整備の拡充が望まれる。
写真 2-1 出展 xxxxx://xx.xxxx.xx/ 写真 2-2 出展 xxxxx://xxxx.xxxxxxx.xxx/
(4) CHAdeMO 対応車両
国内市場向けに販売されている CHAdeMO 対応車両は、一般社団法人次世代自動車振興センターホームページ>CEV 補助金対象最新車両(EV および PHV)で公開されている。
3.急速充電器の導入と電力契約
電気を使用する場合、電力会社の設備から需要場所への引込み線は1需要場所1引込みが原則である。契約電力が 50kW 未満は低圧引込み、50kW 以上は特別高圧または高圧引込みとなる。既に高圧で電気を受電している需要場所では、急速充電器導入後も契約電力のみ変更することになる。高圧受電の場合、実量制や電力会社との協議などもあり、導入する急速充電器容量分がそのまま契約に上乗せされるわけではない。一方、低圧で受電している需要場所で、導入する急速充電器の出力容量を 20kW や 30kW などのものにし、既存の設備と合わせ契約電力が 50kW 未満であれば低圧受電のままでよいが、50kW 以上となると高圧受電に変更となり、需要家側で新たに受変電設備を用意する必要があった。平成 24 年からは、1需要場所2引込みの特別措置を選択することが可能となっており、高圧受電設備導入を回避できる。特別措置を受ける場合は、幾つかの要件を満たさなければならないので、3.3 項を参照されたい。
低圧電力契約には、単相 100/200V入力の従量電灯契約、三相 200V入力の低圧電力契約があり、電気料金に違いが出る。
電力量計電力量計
開閉器開閉器222255AAFF//220000AATT
電力会社の引込線と契約者の電気設備との接続点(図 3-1 の矢印の箇所)を責任分界点と呼ぶ。一般的な契約では、責任分界点から引込開閉器に至るまでの配線および引込小柱等の補助支持物は、契約者所有で契約者の負担で施設することになる。特別措置を適用した場合は、表 3-3 Ⅱにあるとおり、電力設備から責任分界点までの引込線などに要する工事費も負担することになるので注意が必要である。いずれの場合も、計器類は電力会社の負担で施設する。
責任分界点
配電線
引込ポール
道路
計器用変成
電線管
電力量計、開閉器
道路
ケーブル
急速充電器
専用駐車場
急速充電器基礎
3.
建屋
入力入力:4:499kkWW以下以 下
電圧電圧::三相三相200V200V
図 3-1 急速充電器の低圧供給の一例
一般に、低圧動力の負荷は長時間使用を前提としているため、従量電灯に比べ基本料金は高いが従量料金は低く設定されている。急速充電器ではほとんどの場合、従量電灯契約の方が料金的に有利である。
平成 24 年 3 月、経済産業省が各電力会社からの電気自動車専用急速充電器の同一敷地内複数契約を可能とする特別措置の申請に対し認可したことで特別措置の適用が開始された。この結果、電気自動車専用急速充電器の電気需給契約においては、同一敷地内に特例区域を設定し、個別に電気需給契約を結ぶことが可能となった。ただし、図 3-2 および表 3-3 を満足するものに適用される。
当該措置は、急速充電器を新たに設置する際に、電力会社への電気使用申込とともに「電気自動車専用急速充電設備(QC)の特例適用に関する確認書」を提出し、必要要件が満足していることを確認する必要がある。同確認書は、各電力会社のホームページから取得できる。
出展:経済産業省 資源エネルギー庁
図 3-2 需要場所についての特別措置の概要
特別措置を受ける場合は、以下を電力会社と事前に協議する。
○契約種別
特別措置は複数契約を可能とするものであり、契約自体は契約を結ぶ電力会社のメニューから選ぶ。(急速充電器や付帯設備の仕様に合わせ、従量電灯、低圧電力などから選択する)
○急速充電器の台数
特例区域に設置する急速充電器の台数は1台でも複数台でも良い。
○引込み
従来の契約と同様に、設置台数によって決まる契約容量が 50kW未満であれ低圧引込み、超過する場合は高圧引込みとなる。
○特例区域
特例区域の見直しはできない恐れがあるため、今後、急速充電器の増設があり得る場合は特例区域の設定に注意する。
表 3-3 需要場所についての特別措置の要件
Ⅰ.保安上の支障がないこと | ||
ⅰ | 電気自動車専用急速充電器を使用する特例区域内には、急速充電設備等以外の負荷設備がない こと。 | |
特例区域の周辺に外灯等 の負荷がある場合 | 保安上の問題から「明らかに区分できていること」が条件とされる。(配 線設備も、相互に分離されていること。) | |
急速充電設備等とは | 電気自動車専用急速充電器(三相 200V 又は単相 200V・動力)を利用する際に必要となる「認証・精算機等(単相 100V・電灯)」を含む。この場合は、通常の低圧供給同様に「電灯と動力の 2 口を契約すること」に なる。 | |
急速充電器を複数設置するなどして、電力契約が50kW 以上となる場合に設置するキュービクル(変圧器等)を含む。この場合は高圧供給とな ることから、電気xx技術者の選任・保安規程の届出が必要となる。 | ||
ⅱ | 原需要場所の土地所有者から、以下の承諾を得ていること。 ・ 特例区域と非特例区域を設定することで需要場所をわけて定めること。 ・ 特例区域のお客さまの設備調査や検針作業を実施する際に、非特例区域の土地または建物に立ち入ることを承諾していただくこと。 | |
ⅲ | 特例区域と非特例区域の間が外観上区分されていること。 ・ 特例区域は、線等で区画するか、図面上でその領域を指定する。 | |
ⅳ | 特例区域と非特例区域の配線設備が相互に分離して設置されていること。 ・ 設備点検や工事に際して、保守・保安の確保ができること。 (遮断器により電力を停止して点検・工事を実施したつもりが、別引込みであることに気づかず感電事故が発生する恐れがないこと。) | |
ⅴ | 特例区域の設備調査や検針作業による立ち入りが可能であること。 | |
Ⅱ.工事に関する費用は、需要家が負担すること | ||
当該措置による電気自動車専用急速充電器の工事費は、工事に必要な変圧器や電線の材料費と工 事施行の費用を需要家が全額負担すること。(計量器類は除く) | ||
Ⅲ.一定の技術水準の急速充電器であること | ||
CHAdeMO 方式の急速充電器は、同協議会の認証試験に合格することが技術水準の要件の一つで ある。経済産業省のホームページ「CHAdeMO 協議会のホームページに記載の一定の規格(当協議会が提案する標準規格)を満たす製品の型式一覧」が対象とされている。 |
充電時間の差
50kW
(a)
20kW
(b)
4.急速充電器の選定とコスト
流
4.1 充電時間 電
一般的に EV の電池は、残量ゼロ状態から電池残量50~60% (
A
前後までは電池が本来受け入れられる最大電流で充電することが )
できるが、充電量の回復に従って受け入れられる電流は低下する。そのため、電池残量が大きい状態では EV が急速充電器の出力を生かすことができず、充電時間短縮効果を得られないことがある。
時間(分)
また、電池容量の小さい小型車などはもともと受け入れることができる電流値が小さいので大出力の充電器でも時間短縮にはつながらないことがある。
図 4-1-1(ア)では、電池残量が少ない状態から充電を開始した場合の、急速充電器の出力する充電電流と充電時間の違いを、充電終了時点を基準に示している。1回の充電量(電流と時間の積)をグラフの面積で表しており、(a)20kW 充電器と(b)50kW 充電器を比べると、充電開始から時間が経過すると急速充電の効果が減少することがわかる。充電時間は充電器の出力容量比にはならない。同図(イ)は、電池残量が多い状態で充電を開始した場合を示しているが、充電時間の差はさらに小さいことが分かる。
(ア)電池残量が少ない充電イメージ
充電時間の差
(a)
(b)
電流
( A
)
時間(分)
(イ)電池残量が多い充電イメージ
図 4-1-1 充電器出力容量と充電終了時間
4.2 容量選定とコスト
充電器の容量選定は、「利用形態」と「コスト」の両面で考える必要がある。容量を大きくすればサービス性は向上するがコストは増加する。「コスト」は、初期コストとランニングコストの両方を考慮しなければならない。
また、急速充電器の製品には蓄電池を内蔵することで必要な電源容量を下げることができる(ランニングコストの低減)ものや、1台の急速充電器本体から別置きの複数の充電スタンドをもつタイプ(充電待ち解消によるサービス性向上)もあり、状況に応じて活用することができる。
(1)利用形態
「利用形態」には、次の2つのケースがあると考えられる。1つ目は、充電器の設置場所自体が目的地であり、滞在時間の間で充電するケース(目的地充電)。2つ目は、充電器の設置場所自体は目的地ではなく、次の目的地に向かうための補充のために充電するケース(経路充電)である。
第 1 のケースでは、必ずしも急いで充電する必要がないため、普通充電や小容量 20kW~30kW 程度の充電器でも問題はないと考えられる。
第2のケースでは、少しでも早く充電をおこなうことが求められるため、出力容量最低 50kW 以上、高速道路の
SA など需要の大きい箇所では 100kW 超出力でかつ複数台 EV を同時充電できる設備が望ましいと考えられる。
(2)初期コスト
急速充電器導入の初期コストは、充電器本体のほかに電源供給設備のコストを考慮する。
⮚ 高圧で電力契約をしているケースでは、既存の受変電設備に導入する充電器の容量に見合う余力があ
れば、充電器設置と受変電設備からの配線の費用で済む。容量に余裕がない場合は、受変電設備の取替えまたは余力を増やす工事を行う等の対応が必要となる。
なお、いずれの場合も、3.3 項「同一敷地内複数契約を可能とする特別措置」を申請することは可能であるため、費用の比較したうえで設備形成を決めてよい。
⮚ 低圧で電力契約をしているケースでは、既存の契約と導入する充電器の容量の合計が 50kW 未満であれば、初期費用は充電器設置と分電盤などからの配線の工事費用だけでよい。
低圧の場合も、3.3 項「同一敷地内複数契約を可能とする特別措置」を申請できる。特に、導入後の設備容量が 50kW を超える場合は、高圧での契約に切り換えるために受電設備の新設工事を行う方法、または特別措置により複数の低圧電気需給契約を結ぶ方法の2つがある。高圧への切り換えには受変電設備の新設に伴う多額の費用が必要であるが、電気料金の電力料金単価が下がることから負荷率によっては全体コストが低下することもある。
(3)ランニングコスト
ランニングコストは、電気料金と充電器のメンテナンスコストの2つを考えなければならない。
電気料金は、電力契約が三相と単相とでは毎月の基本料金の差が大きいため、充電器の容量と想定される充電回数からコストが変動することに留意する。
5.急速充電器の電源設備
高圧母線
電源供給は電気工事店やxx技術者に相談すれば問題ない。ここでは、高圧受電の場合における電源設計の要点について示し、低圧受電の場合は必要な箇所のみ参考にして頂きたい。なお、必要に応じ、別紙 4 で電源設計の流れや配管配線のチェックポイントを確認して欲しい。
(1)机上検討
電源設備容量の調査にあたっては、図 5-1-1 等による各変圧器✎らの負荷容量、そして変圧器の負荷容量の総和を確認する。負荷容量の総和✎ら、急速充電器を加えても変圧器容量を満足できる✎否
✎を判断することになる。既存の変圧器
LBS
7.2kV 100A
F:40A
LBS
7.2kV 100A
F:50A
LBS
7.2kV 100A
F:100A
で不足する場合には、新たに変圧器を設
三相変圧器
3φ
単相変圧器
1φ
ける✎既設の変圧器容量より大きい変
x相用コンデンサ
300kVA
6600/210V
300kVA
6600/210-105V
圧器へと取替となる。
急速充電器に電気を送る変圧器が確認できたら、MCCB (配線用遮断器: Molded-Case Circuit Breaker)の予備回
低圧動力
F PT
VS 300V
V
AS 1200/5A
W A
低圧電灯
F PT
VS 300V
V
AS 2000/5A
W A
路又は設置するスペースがあることを確認する必要がある。(図 5-1-2)
電気設備は、使用する負荷の入力で設計しているため、単線結線図に急速充電器の入力電流を満足する容量の
MCCB
MCCB MCCB MCCB
MCCB MCCB
MCCB
MCCB MCCB MCCB
MCCB MCCB MCCB
予備
予備
MCCB の予備回路がある場合は、設置できる可能性が高い。
図 5-1-1 単線結線図の一例
ちなみに、MCCB は、急速充電器までのケーブルの保護を目的として設置するものである。急速充電器は、装置内部の短絡事故や地絡事故を踏まえ漏電遮断器を設置している。
(2)受変電設備(現地)の調査
最終的な判断は、受変電設備(低圧動力盤:図 5-1-2、3など)の負荷電流あるいは巡視記録を確認して判断する必要がある。現地調査では、次の事項を確認する。
a.デマンド(最大電流置針(赤))表示の確認
デマンドはクリアボタンにより初期設定に戻すことがあること✎ら、年間最大を表示している✎を確認する必要がある。
b.巡視記録の確認
毎月の巡視記録の電流計読値より最大負荷を確認する。(一般的には、夏・冬季のピーク使用量が年間を通
して一番大きい値になることが多い。) c.計測
記録計をセットし、実電流を測定する。負荷需要の多い日を複数回測定するのが理想である。
※ 電流測定値あるいは巡視記録の実負荷電力を算出する。
(実負荷電力(W)= 電流値(A)×200(V)×√3×力率)
(3)三相 200V急速充電器の出力容量 50kW を確保する場合
急速充電器の入力が、変圧器の出力で変圧器✎ら電気を送る量の実負荷になる。出力容量 50kW であれば、入力は 50 数 kVAとなる。
a.実負荷電力 kW+ 50 数 kW < 動力変圧器容量 ⇒ であれば容量的に設置可能 b.実負荷電力 kW+ 50 数 kW > 動力変圧器容量 ⇒ であれば容量的に設置不可
設置不可の場合は、既設変圧器を容量の大きい変圧器に取り替える、又は動力変圧器を新たにもう1台設置することになる。電気設備によっては、高圧開閉器、低圧動力盤の新設も必要になることもある。
(4)MCCBの調査
低圧動力盤(図 5-1-2)に MCCB の予備の有無を確認する。
予備の MCCB が有り、MCCB 容量が急速充電器の入力容量に見合う時は急速充電器用として使用できる。ただし、変圧器の容量は確認のこと。MCCB 容量が急速充電器の入力電流より小さい場合は、他の回路の負荷との入替、あるいは1つの MCCB の2次側にまとめるなどを検討すると良い。
予備回路が無い場合には、MCCB を新たに設けることになる。設置可能なスペースがあれば MCCB の増設を行う。無い場合には、電気xx技術者と相談し対応されたい。
(5)電力需給契約の変更および電源設備の増容量の検討
図 5-1-2 図 5-1-3
調査結果✎ら、電力需給契約の変更や電源設備の新増設が必要となった場合には、電気xx技術者に相談すると共に電気工事店へ工事見積もり依頼し、電源の増強工事と契約変更手続きを実施する。
また、電気設備の容量が確保できない場合には、急速充電器の出力容量を小さくする、または3.3の特別措置により契約するなども検討すると良い。
(6)電源ケーブルルート a。布設ルートの検討
急速充電器の電源配線は、受変電所が屋内(屋上)にある場合と屋外にある場合では、配線ルートが異なる。電源ケーブル布設ルートの検討(調査)で重要なポイントをとして配管配線チェックポイント表としてまとめ別紙5としている。
b.施工方法の検討
急速充電器の電源配線工事は、電源ケーブル布設ルートの条件により施工方法を選択または組合せにより行う。主な電源配線工事の施工方法は以下のとおりである。
○金属管工事
ネジなし電線管・薄鋼電線管・厚鋼電線管を利用して行う工事で、屋内・屋外(屋側)などさまざまな場所で適用できる。
○ケーブルラック工事
ケーブルラックに配線する工事で、屋内の電気パイプシャフト(EPS)・電気室・機械室で主に適用されている。その他に屋上外部・屋側でも適用されている。
○埋設xx式工事
地中にxxを布設する工事で、埋設用配管には波付硬質ポリエチレン管やライニング鋼管を利用して行う場合が多い。需要場所における屋内工事では、主に木柱・コンクリート柱・鋼管柱などの構内の支持物✎ら受変電設備(最近では、キュービクルが多い)へのケーブルの引込や受変電設備✎ら構内の機器へと電源を供給する箇所に適用されている。
○架空電線工事
木柱・コンクリート柱・鋼管柱などの支持物を活用し電線を架設する工事である。埋設xx式工事と同様、主に電力引込や構内の電源供給する場所に適用されているが、コスト✎らルートの距離の長い場合に選択される。
各種電気工事における主な配管・ケーブルラックの布設適用箇所と種類は、下表のとおりである。
表 5-1-1 配管適用表
配管の種類 | 布設適用箇所 | 備 考 | ||
屋外(屋側) | 屋内 | 地中埋設 | ||
薄鋼電線管(ネジなしを含む) | △ | ○ | × | 屋外は錆による耐久性に難有り。 |
厚鋼電線管 | ○ | △ | × | 塩害地域は必ず適用。 |
ライニング鋼管 | △ | × | ○ | 耐荷重を重視する場合は最適。 |
波付硬質ポリエチレン管 | × | × | ○ | 布設が容易。 |
ケーブルラック | ○※ | ○ | × | ※屋外布設は錆止加工品を適用。 |
○:適正 △:使用可 ×:不適
6 急速充電器の設置
6.1 設置の留意点
急速充電器は、高速道路の PA・SA、道の駅、商業施設などに設置されており、今後も公共インフラとして整備が進められると予測される。不特定多数の方が利用できる環境に設置されること✎ら、以下の点に留意して設置場所を選定する。
a.明るく人目の多い場所
b.車の動線に配慮し、衝突事故を予防できる場所
c.利用者が利用しやすい場所(商業施設であれば建物の近く等) d.人の流れ・動線の邪魔にならない場所
e.EV 優先ペインティングなど、EV 充電スペースと認識できる措置
f.同じ時間帯に利用者が重なった場合を想定した待機スペースの確保 g.充電時に発生する騒音への配慮
h.火災予防条例の準拠(8.2 火災予防条例 を参照)
6.2 設置例
初期の急速充電器の充電ケーブルの長さは、ケーブルの操作性を重視し 3~5m が主流であったが、EV の車種により充電口の位置が異なることため、駐車スペースや急速充電器の位置を踏まえ、購入前に充電器メーカーに相談し十分に余裕をもったケーブル長とすることが望ましい。
(1)車止め付近に設置する場合
既存の駐車スペース(車止め後方)に急速充電器を設置する場合の代表例を図 6-2-1 に示す。車止めのセンター位置に急速充電器の充電ケーブルの引出し口を配置している。充電ケーブル引出し口を車止めのセンターへ配置することにより左右どちら方向へも平均してコネクタが届き易くなるためである。
この例では、充電口が前にある車両は、前向駐車しなければいけないため、万が一駐車場の出入りに制約があると充電できないこともある。
車両の駐車位置にもよるが、充電ケーブル長のマイナス1m の半円に入らない場合は、コネクタが充電口に届✎ないおそれもあるので、充電ケーブル長を見直すことになる。充電ケーブルは、急速充電器の引出し口✎ら真っ直ぐ車両の充電口には届✎ず、“遊び”となる長さが存在する。充電ケーブルとして使用できる目安は、(充電ケーブル長 - 1)メートルである。
各電気自動車の充電口の位置
リーフ:車両前中央 ステラ:車両後右側 アイミーブ:車両後左側
半径 4m:ケーブル長 5m 相当
図 6-2-1
写真 6-2-1 の例は、横並び駐車枠 2 個の中央車止め奥に急速充電器を設置したことで、両サイドの駐車枠に駐車した車両に充電コネクタが届きやすくなる。
急速充電器の設置位置が同じでも、ケーブル引出し口が右側と左側の違いで充電口にコネクタが届✎ないケースがあるので、注意が必要である。
(2)充電ケーブル長の検討
写真 6-2-1
図 6-2-2 に充電ケーブルの必要な長さを検討した事例を紹介する。電気自動車は充電口の取り付け位置に関し規格・基準がないため、新しい車種が登場するたびに充電ケーブル長の見直しが必要になる事例が発生している。この問題は、急速充電器に限らず普通充電スタンドでも指摘されている。
ここでは、充電ケーブルが地面に触れないことを重視してケーブル長を3mとした充電器において、MINICAB- MiEV が急速充電を使用する際に発生した不都合について紹介する。
① 急速充電器の設置状況
写真 6-2-2
ケーブル長は約 3m であるが、LEAFは問題なく使用できる。
② 前向き駐車
図 6-2-2
駐車位置に前向きで駐車した場合、車種によっては約 1m ケーブルを長くする必要がある。
写真 6-2-3
③ 後ろ向き駐車
xxの駐車位置に後ろ向きで駐車し充電する場合、車種によってはケーブル長が足りないことがある。
写真 6-2-4
充電ケーブルを長くした場合、車両等がケーブルを踏まないように巻き取り方法や車止めとの距離、利用ユーザーへの注意喚起等が必要である。写真 6-2-5 は、10m の充電ケーブルを設置した例である。
写真 6-2-5
充電ケーブルが長くなると、充電時に取扱いにくくなるうえ、使用後にケーブルがxxの位置に戻されずそのまま放置される傾向にあり、つまずきや車両の乗り上げによるケーブル損傷などのリスクも増えることになる。
(3) 駐車場所の横に設置する場合
図 6-2-3 のように車が進入・退出するための場所が確保されている場合には、充電口の位置が異なる電気自動車が来ても駐車位置を前後に調整することで比較的対応は容易である。急速充電器を車の流れに対し横方向に設置しており、衝突防止にもなる。電気自動車の駐車位置✎ら急速充電器までの距離が取りやすいこともあり、利用者の充電操作など使い勝手の良さにつながるといえる。
一方、車両の大型化や充電口の位置の違い✎ら、充電ケーブル長は長くなる傾向にある。また、この設置方法は入退出などに多くのスペースを要することになる。
写真 6-2-6 は前後方向に駐車枠を広く取って対応している例である。
車が進入・退出するためのスペースに余裕が
図 6-2-3
ない縦列駐車枠においても、左右どちら✎らでも進入できる場合は問題になることは少ない。ただ、図 6-2-4 の
ように左✎ら右への車路の流れし✎許されない場合には、縦列駐車時の切返しと充電口と急速充電器の近接に、前後方向に大きく駐車枠を取る必要がある。
写真 6-2-6 図 6-2-4
(4)保守用スペース
急速充電器は、交流の周波数を変換するインバータという機器を内蔵している。充電の有無に✎✎わらずインバータ✎ら発する熱をファンで冷却し続けるため、吸排気の空間(スペース)が必要となる。また、定期点検などでは、扉を開けての作業となるため、急速充電器の周囲に保守用のスペースを確保することになる。(図 6-2-5)
スペースの寸法は、急速充電器の取扱説明書に記載されている。万が一、メーカーが推奨するスペースを確保できない時は、メーカーに相談すると良い。
保守スペースを考えるときには、車止めや衝突防止ポールなどが、メンテナンス時に開いた扉と干渉しない✎、干渉するときはポールなどが取り外し可能である✎にも注意する。
写真 6-2-7 は、建物の壁と車止めの距離が短く十分な設置スペースがない例である。車止めの脇に急速充電器を設置しているが、充電ケーブルを長くすることで充電を可能としている。ただし、ケーブルを長くする場合には引きずりによるケーブルの摩耗が懸念されるため、プロテクタ(スパイラルなど)によりケーブルを保護することが望ましい。
扉
必要なスペース
急速充電器
図 6-2-5
写真 6-2-7
コンビニエンスストアへの急速充電器の設置例(写真 6-2-8)では、壁との距離が小さいため、吸排気口に配慮し背面をフェンス(金網)にしている。
急速充電器の周囲が植え込みとなることで利用者や点検保守員が入りにくいことがある(写真 6-2-9)ので、基礎の周りに砂利をまくなどしてメンテナンススペースを確保することが望ましい。
課金システムを設置する場合には、上記のスペースに加え課金装置のスペースを確保する必要がある。(写真
6-2-10)
写真 6-2-8 写真 6-2-9 写真 6-2-10
6.3 設置工事
急速充電器の設置工事概要を解説する。なお、普通充電設備の設置については経済産業省および国土交通省からガイドブックが公開されているので参照されたい。
(1)コスト
設置工事のコストは、100万円✎ら数100万円程度まで設置場所や条件によって異なる。コストに影響を与える主な要因は、受変電設備の新増設、受変電設備と急速充電器までのケーブルルートの距離、架空配線✎地中配線(配管経路の掘削、舗装)✎などである。
受変電設備の設置場所が屋上や地下にあるようなケースでは、工事費が追加になる可能性がある。
50~100mm
(2)留意事項 a.嵩上げ
急速充電器への浸水対策として、基礎をGL面より高く設置することが望ましい。高くなり過ぎるとコネクタが扱いにくくなったり、操作画面などが見づらくなったりする。通常は、図6-3-1のようにGL+50~100mm程度を推奨している。
b.基礎工事
急速充電器の据付は、アンカーボルトにて強固な基
礎への固定が前提である。基本的に以下の指針およびマ
図 6-3-1
ニュアルに基づき施工する場合は、基礎ボルトや施工アンカーなどの種類は問わない。また、具体的なアンカーボルトのサイズなどは各メーカー型式などにより異なるため、その都度確認する必要がある。
① 建築電気設備の耐震設計・施工マニュアル(社団法人日本電設工業協会)
② 建築設備耐震設計・施工指針(財団法人日本建築センター)
(3)基礎工事の施工例
a.基礎、チャンネルベース
写真6-3-1は、チャンネルベースの標準的な施工例である。コンクリート基礎上部にエフレックス管などを用い
て電源ケーブルを立ち上げている。電源ケーブルは、急速充電器の最大電流✎ら60sq~150sqとなり通線が煩雑となる。そのため、写真6-3-2の箱穴式やピット方式を適用すると、基礎工事には手間が✎✎るがケーブルの施工が容易になる。また、万が一に備えた“巻きだめ”もできる。
基礎をとおしてケーブルルートを確保する方法で施工する場合には、基礎に至るまでに掘削工事が伴うこと✎ら工事費が高くなる。写真6-3-3のように露出配管でチャンネルベースに横入れすれば、工事費を安くすることができる。スペースを活✎した配線であるが人がつまず✎ぬ配慮が必要である。
写真 6-3-1
写真 6-3-2
写真 6-3-3
写真6-3-4~5のような地下駐車場の例では、壁面を配管で通線することができるため、掘削する場合に比べて工事費を安くすることができる。
写真 6-3-4 写真 6-3-5
b.手元開閉器盤
急速充電器は一般的に駐車場の端など受変電設備✎ら遠い場所に設置されることが多い。仮に装置を停止させる場合には、受変電設備のMCCBを切ることになり煩雑といえる。急速充電器の近くに開閉器盤を設置することができれば、停止操作、メンテナンスだけでなくバックアップ用200Vコンセントも用意できるなどのメリットがある
(写真6-3-6~7)。
写真 6-3-6 写真 6-3-7
6.4 付帯設備と留意事項
a.車止め
車止めは、急速充電器に車両が衝突させず、充電器操作に支障を来さない距離を確保する位置に設置することが好ましい。ただ、急速充電器の充電ケーブル長を考慮し、余り離し過ぎないように注意する。
乗用車タイプの電気自動車では、車止めの位置は急速充電器の正面✎ら 1m ほどが目安になるが、電気自動車の充電スペースに他の乗用車が止める可能性がある場合は、1m以上(大型のセダン車)確保するなど駐車枠の運用に合わせた配慮が必要である。(図 6-4-1)
写真 6-4-2 はトラックが駐車する場合を想定し、急速充電器と駐車枠との距離を大きく取った高速道路 PA
の例である。このような場合は、スペースに合わせて充電ケーブルを長くする必要がある。
図 6-4-1
写真 6-4-2
b.樹脂製ポール・鉄製パイプ
車止めと同じく衝突防止に樹脂製ポール(写真 6-4-3)や鉄製パイプ(写真 6-4-4)を設置するとさらに安全であるが、操作時やメンテナンス時に邪魔にならないように設置する必要がある。充電器メーカーが定めるメンテナンススペースは現場が状況により確保しづらいこともあるため、メーカーへ問い合わせると良い。(図 6-4-5)
xxx
xxx
写真 6-4-3 写真 6-4-4
図 6-4-5
c.雨天・積雪対策
急速充電器は、屋外仕様が標準であるため、通常の風雨で使用不能になることはない。ただ、コネクタの操作を両手で行うケースが多いことを考えると、雨天時にEVユーザーが傘を差しながらの操作は勝手が悪い。よって軒下付近への設置や、雨避け程度の屋根があることが望ましい。(写真6-4-6・7)
積雪の多い地域では、周辺の建物✎ら落雪に影響を受けない場所に設置する。降雪時には、急速充電器の周囲を雪で覆われることも考えられるため、吸排気用の空間を確保できる大きさの屋根が必要である。雪の重みで屋根は力を受けるため、この力に耐えられるように注意する。また、屋根ではなく、完全に囲いの中に収納するという例もある。(写真6-4-8・9)
なお、屋根や囲いを設置する際は、当該地域を所轄する審査機関または役所へ建築確認申請書を必要に応じて提出する。
写真 6-4-6 写真 6-4-7
写真 6-4-8 写真 6-4-9
d.バックアップ電源
急速充電器が故障した場合は、連絡先が故障連絡を受けたとしても保守担当者が現地到着までに数時間を要することがある。xxxなケースのバックアップ電源(充電設備)として100V/200Vコンセントもしくは普通充電器を設置することも考えられる。ただし、急速充電器の入力側が三相の場合は、急速充電器の電源✎らは100Vのコンセントを取ることはできないので注意する。
3.3の特別措置を受ける場合では、コンセント用に単相の電灯契約も必要となるため、詳細は各電力会社に問い合わせておくことが大切である。
e.夜間・いたずらへの対応
夜間などの対応として、適切な照明やインターホンの設置(管理者が近くに待機できる場合)などは有効である。
明るく人目の多い場所への設置が望ましいが、完全に無人になる状況が想定される場所に設置する場合には、防犯・いたずら防止のため監視カメラの設置も考慮する。
充電コネクタを急速充電器の収納部で施錠することも可能だが、利用者が解錠できる運用も検討しなければいけない。(図6-4-10)
図 6-4-10 夜間・いたずらへの対応例
f.案内表示
高速道路や大規模駐車場などでは、電気自動車の利用者が迷わずに急速充電器の設置場所へ到着できるよう、案内表示を設置する例が多い。(高速道路の例:写真6-4-11~13)
表示は、急速充電器までの距離を示した予告表示、設置施設への入口表示、設置場所における表示が主であり、設置場所まで順番に誘導していく表示が望ましい。なお、道路上に予告表示等を設置する場合には、行政との調整が必要となる。
写真 6-4-11 写真 6-4-12 写真 6-4-13
現在広く使われている案内表示の一例として CHARGING POINT サイン(図6-4-14)がある。同サインは、東京電力HD(株)の登録商標であるため、使用の際は同社へ事前に申し込みを行う必要がある。申し込み、使用条件など詳細は、東京電力HD㈱のホームページで確認できる。
使用においては、不特定多数者のアクセスが可能である充電器の設置場所表示に限られるなど条件がある。
図 6-4-14 CHARGING POINT サイン
7.ユーザーへの配慮
7.1 注意事項などの掲示
充電コネクタメーカーごとに、操作方法が異なることもあり、充電の開始
✎ら終了までの操作説明が必要になる。急速充電器メーカーによりその表示も異なり、急速充電器の操作パネル(図7-1-1)への表示や、図7-1- 2にある急速充電器本体正面への掲示などがある。
また、充電に伴う課金・認証方法、メンテナンスによる充電器の停止など設置場所独自の注意事項がある場合には、急速充電器本体の脇に掲示板を設けて表示する、Webサイトを活用するなどにより利用者への周知に心掛ける。注意事項等の表示では、英語などの併記もあると良い。
図 7-1-1 パネル表示例
図 7-1-2 操作方法の表示例
7.2 急速充電器の故障(エラー)発生時の対応
急速充電器の故障発生時には、速や✎に充電器メーカーに連絡することが基本で、その連絡ルートは以下のケースが考えられる。「b.c.」のケースは、利用者が直接連絡できる連絡先を表示しておくことが重要である。
a.設置管理者(設置者も含む) → 充電器メーカー
b.利用者(EV ユーザー) → 設置管理者 → 充電器メーカー c.利用者(EV ユーザー) → 充電器メーカー
(1)連絡先表示
故障時に急速充電器の利用者が連絡できる窓口を、急速充電器本体の見やすい場所に表示するようメーカーと相談する。図 7-2-1 のように操作画面への表示例の他に、急速充電器本体に連絡先を記載したステッカー等を貼るこ
とでも良い。
図 7-2-1 画面での表示例
急速充電器メーカーとメンテナンス契約が交わされていれば、設備管理者を介さずに直接メーカーによる対応が可能となる。交わされてない場合は設備管理者や管理会社の連絡先を表示することになる。
特に、24時間急速充電器が利用できる場合には、24時間連絡が取れる窓口を用意する。メーカーによっては 24時間コールセンターサービスの提供などもあるので、設置管理者が対応できない場合には、このようなサービスの活用が有効である。
(2)故障時の連絡の促し
急速充電器には、通常の充電停止のストップボタンの他に非常停止ボタンがある。このボタンを押すことでメインのブレーカが切れ装置が停止する。
車両の衝突などにより扉が開いている状態を発見した場合は、利用者に非常停止ボタンを押した後に、メーカーへの連絡を促す必要がある。また、図7-2-2のような表示パネルでは、ストップボタンを3秒以上押し復帰した場合でも、必ず状況を連絡する必要がある。
非常停止ボタン
(緊急停止用)
表示パネル
図 7-2-2 表示パネルにおける異常停止の表示例
7.3 ユニバーサルデザインの採用
火災予防条例で定める安全対策に「車止め、鉄製又は樹脂製のポール等による自動車等の衝突防止を講ずること」という項目があり、前述のように車止め、樹脂製ポール・鉄製パイプなどを設ける対策が取られているが、設計・施工あたってユニバーサルデザインを取り入れることが必要である。
既存の充電器では、衝突防止パイプのために車いす利用者が非常停止ボタンの操作やカードリーダーでの読み取り操作がしづらい事例が数多く指摘されている。新設の充電器には操作位置までの段差がないようにする、衝突防止パイプを設ける場合およそ 80cm の
間隔をあけて車いすが通ることができるようにする、ま
車椅子が通れる
幅員限界:800mm 以上
車椅子ユーザーが読める
高さの限界:1500mm 以下
車椅子ユーザーが触れる高さの限界:1400mm 以下
た、充電開始・停止ボタン、カードリーダーなどを操作
図 7-3 出展 xxxxx://xxx.x-xxxxxxxxx.xx.xx/
しやすい高さに配置するなどの改善が求められる。図 7-3 にユニバーサルデザインを反映した充電スタンドの例を示す。
また、今後電気自動車の普及が一層進むことを考えると、新規設備だけでなく高速道路 SA/PA などの公共性が高い施設では既存設備の改良も進めていくことが望まれる。
7.4 植込み型心臓ペースメーカ等への対応
急速充電器および普通充電器✎ら生じる電磁波が、植込み型心臓ペースメーカおよび除細動機能なし植込み型両心室ペーシングパルスジェネレータに対し影響を与える可能性があるとの試験結果が得られた。これを踏まえ、平成25年3月に厚生労働省✎ら各都道府県に対し「電気自動車の充電器の電磁波による植込み型心臓ペースメーカ等への影響に係る使用上の注意の改訂について」が通知された。
この通知では、植込み型心臓ペースメーカなどを取り扱う製造販売業者に対する充電器による影響について注意喚起を行う指示が出されている。あわせて、経済産業省、国土交通省に、電気自動車と充電器の製造、販売者へ充電器が植え込み型心臓ペースメーカなどに与える影響について取扱説明書などにて購入者に周知するよう依頼されている。さらに、経済産業省では、急速充電器メーカーに対し「充電中は急速充電器本体に近付
✎ない」という内容の注意喚起を充電器本体に掲示するよう求めている。
7.5 急速充電器の利用マナーの啓発
今後、急速充電器の利用者が増加していくと、利用時のマナーがより重要になると考えられる。後述する利用時のマナーを急速充電器脇の掲示板に表示したり、パンフレットを配布したりする等により、利用者のマナー啓発に努めて欲しい。
a.急速充電器の充電待ち
急速充電器が充電を終えるまでの時間は、充電開始前の電池残量、電池容量や車種による停止条件で異な り、60 分に渡るケースもある。利用頻度の高い充電施設では EV ユーザーが複数待機(充電待ち)している時に、充電時間により待機している EV ユーザーに不満が発生するケースがある。
多くの急速充電器は、1回の充電における最大利用時間を設定できる。事前に設定することで、満充電になる前に充電を停止させ、充電待ちの時間を減らすことが可能となる。
b.啓発したい急速充電器の利用マナー
① 急速充電器利用後は、必ず充電コネクタとケーブルを充電器の所定の場所にもどし、次の利用者のために速や✎に車を移動させる。
② 電池残量が80%で充電が終了する車種では、充電終了後に再度スタートボタンを押すと満充電まで充電が可能であるが、他に充電待ちの利用者がいる場合には「継ぎ足し充電」は控える。
③ 故障等により利用できない場合には、表示されている連絡先に状況を連絡する。
充電待ち対策を行なっている一例として、NEXCO 中日本の SA では、急速充電器の最大充電時間を 30 分に設定し、充電終了後には速や✎に車両を移動するよう利用者に呼び✎けている(図 7-5-1)。
図 7-5-1 NEXCO 中日本ホームページ
8.法令等
8.1 電気事業法
(1)電気工作物の種類(電気事業法第 38 条)
電気事業法では、電気工作物を「事業用電気工作物」と「一般用電気工作物」の二つに大別しており、電気事業目的(電力会社等)以外の事業用電気工作物は「自家用電気工作物」と定義されている。
a.一般用電気工作物
600V以下の電圧で受電し、その受電の場所と同一の構内においてその受電に係る電気を使用するための電気工作物であって、その構内以外の場所にある電気工作物と電気的に接続されていないもの。
一般のご家庭や小規模の事務所等の屋内配線であり、従量電灯や低圧電力で契約するお客さまの電気設備
(急速充電器)は、一般用電気工作物となる。
b.自家用電気工作物
600Vを超えて受電する需要設備等で、電気事業の用に供しない事業用電気工作物。
工場やビル等の電気設備であり、高圧電力で契約する需要家の急速充電器は、自家用電気工作物となる。 自家用電気工作物については、電気事業法第43条において、電気工作物の工事・維持・運用に関する保安の
監督をさせるため、電気xx技術者の選任が義務付けられている。
(2)電気工事に必要な資格等(電気工事士法、電気工事業法、電気事業法)
急速充電器のための電気設備を設置する際には、下記の資格を有した者でなければ施工できない。さらに、一般用・自家用とも電気工事業を営む者に対しては、電気工事業法において、その登録や規制により保安の確保がなされている。
a.一般用電気工作物に係る電気工事
第一種電気工事士または第二種電気工事士免状の交付を受けている者
b.自家用電気工作物(500kW 以上を除く)に係る電気工事第一種電気工事士の免状の交付を受けている者
8.2 火災予防条例
(1)経緯
急速充電器は 2012 年、「対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令の一部を改正する省令」により、出力 20kW 以下と 50kW を超えるものを除き、省令に急速充電器が加えられることになった。この結果、各市町村で定める火災予防条例で規制を受けることになり、設置時の届出は不要だが、条例に謳われている安全対策を遵守することになった。条例は自治体ごとに定めるため、この安全対策の最終的な判断、例えば、「e.自動車等の衝突防止を講ずること」では車止めだけとする✎、ポールもあわせて設置する✎は所轄の消防署により異なることがある。総務省消防庁も、設置者✎ら所轄の消防署へ事前にその内容を説明し指導を仰ぐことを求めていることあり、後々の改善とならぬ対応をす
べきである。さらに 2020 年、大出力の急速充電器の普及が始まったことを受け、対象の最大出力が 200kW まで拡大された。50kW 超により新たな対策が求められることはないが,ケーブルが重量化する場合など安全面・操作性面での配慮が求められる。
(2)商業施設等に急速充電設備を設置する場合
ガソリンスタンドを除く、一般的な場所に設置するものが該当する。CHAdeMO 方式の急速充電器であれば特段の配慮は不要であり、本手引書を参考に工事を進めてよい。なお、出力 20kW 以下の急速充電器はこの制約を受けないが、これに準じて設置しておくことが望ましいといえる。
<安全対策>
a.筐体は不燃性の金属材料で造り、床、壁、支柱等に堅固に固定すること。
b.絶縁及び接続状況等に異常がある場合は、充電を開始しない措置を講ずること。
c.漏電、制御機能の異常、電圧又は電流の異常を検知及び異常な高温を検知した場合は自動的に停止すること。
d.手動で緊急停止させることができる措置を講ずること。 e.自動車等の衝突防止を講ずること。
(車止め、鉄製又は樹脂製のポール等)
f.筐体内に蓄電池を内蔵するものにあっては、異常な高温の検知及び電圧又は電流等の異常を検知した場合は自動的に停止すること。
g.周囲の換気、整理整頓に関すること。
h.「急速充電設備」と記した標識の設置に関すること。(例:写真 8-2-1) i.点検、補修、記録及び保存に関すること。
写真 8-2-1 標識の一例
点検、補修は、「消防長が指定する者」が実施することになるが、別途「告示」等で定められている自治体が多い。一般的には電気xx技術者、電気工事士、充電器メーカーの技術者が該当する。記録様式は、「火災予防条例施行規則」等で具体的に指定している場合もあるため、事前確認が必要となる。
(3)給油取扱所に急速充電設備を設置する場合
総務省消防庁は、給油取扱所における急速充電設備の設置に係る安全対策について、「給油取扱所における電気自動車用急速充電設備を設置する場合における技術上の基準の運用について」(消防危第 77 号 平成 24
年 3 月 16 日)」より、全国の消防本部に通達している。詳細は、総務省消防庁のホームページ「消防防災関係者の方へ - 消防関係法令 通知・通達 - 平成 24 年度一覧」による。
通達は、以下の4項✎らなる。
第1 急速充電設備の定義について
第2 急速充電設備に係る安全対策について
第3 急速充電設備を給油取扱所に設置する場合の安全対策について第4 その他
第2 「急速充電設備に係る安全対策について」で、急速充電設備本体に対し 11 の安全対策が求められてい
る。この対策を講じた急速充電設備を給油取扱所に設置する際の安全対策が、第3 「急速充電設備を給油取扱所に設置する場合の安全対策について」で謳われている。この安全対策は、急速充電設備の電源を緊急に遮断できる装置を設ける場合と設けない場合で大別され、緊急に遮断できる装置を設ける場合は以下のとおりとなる。(抜粋)
① 急速充電設備の電源を緊急に遮断できる装置(以下「緊急遮断装置」という。)は、xxxx等の流出事故が発生した場合に容易に操作することが可能な場所(例えば、事務所等)に設けること。
急速充電設備の電源を遮断できる装置を設ける場合における可燃性蒸気が滞留するおそれのある範囲
② 次に掲げる範囲は可燃性蒸気が滞留するおそれのある範囲であること✎ら、急速充電設備はこの範囲以外の場所に設置すること。
なお、この場合において、急速充電設備を設置する場合は給油又は注油に支障のない場所である必要があること。
ア 懸垂式以外の固定給油設備あっては、固定給油設備の端面✎ら水平方向 6m までで、基礎又は地盤面✎らの高さ 60 ㎝の範囲、✎つ固定給油設備の周囲 60 ㎝までの範囲
また、懸垂式の固定給油設備にあっては、固定給油設備のホース機器の引出口✎ら地盤面に下ろした垂線✎ら水平方向6mまでで、地盤面✎らの高さ 60 ㎝のまでの範囲、✎つ固定給
油設備✎ら水平方向 60 ㎝までで、地盤面までの範囲であること。
イ 通気管の先端の中心✎ら地盤面に下ろした垂線の水平方向及び周囲 1.5m までの範囲
③ 急速充電設備を設置した給油取扱所では、ガソリン等の給油・注油等の作業状況に加え、急速充電設備の使用状況も、常時適切に監視する必要があること。したがって、従業員等が目視により急速充電設備の使用状況を監視することができない場合には、監視カメラの設置等により適切な管理体制を構築することが必要であること。
④ 流出事故発生時には急速充電設備の電源を速や✎に遮断する必要があること✎ら、③に記載の管理体制、従業員への教育及び緊急遮断装置の操作方法等について予防規定に明記すること。
9.運用・保守
高圧需要家におけるユーザーの日常点検(月 1 回程度実施)と電気xx技術者の定期点検(年 1 回程度実
施)について、必要な点検項目と確認内容を整理し表 9-1-1 にまとめている。地震時の対応は、日常点検の実施や設置ボルトの緩み、建付けのゆがみ等も確認する。
低圧供給の場合も急速充電器メーカーと相談してこれに準じた点検をすることが望ましい。
また、8.2 火災予防条例で、点検、補修ならびに点検の記録を求めているので、所轄消防署への指導を仰いでおくことが大切である。
表 9-1-1 急速充電器メンテナンス基準(例)
① 急速充電器設置ユーザーによる日常点検 (頻度=1 回/月程度)
No | 項目 | 確認内容 |
1 | 外観 | 充電コネクタのコード部分(ケーブル)やコネクタ部、ケーブルのプロテクタの破損、磨耗等。 その他外観の異常等。 |
2 | 異常音や異臭 | 異常音や異臭の有無。 |
3 | 清掃 | 外観汚れ、排気口付近のスペース確保状況。 取り外し可能なフィルターの汚損。 |
② 電気xx技術者による定期点検 (頻度=1 回/年程度)
No | 項目 | 確認内容 |
1 | 設置状況 | 変形、発錆、異音、異臭、振動等の異常の有無。 |
2 | 清掃 | フィルター、ファン等。 |
3 | 外観 | 充電コネクタ、操作ボタン等の破損等。 |
4 | 動作確認 | 通常動作、xxxx、表示等。 |
5 | 性能確認 | 絶縁試験、漏電遮断器等。 |
③ メーカーによる精密点検
・ 精密点検は、故障発生時などにメーカーと相談し、必要に応じて実施する。
10.充電サービス事業
ガソリンスタンドやコンビニエンスストアなどの敷地内で電気自動車への充電事業を行う場合は、電気事業法における事業規制の対象外と判断されており、充電サービスの提供に対し顧客に課金を行うことは可能である。現在は、後述する課金サービス会社への会員制度をとおした課金、または1回の充電に対しサービス提供者が予め決めた料金による課金が一般的となりつつある。一方、充電した電力量(kWh)に応じて充電料金を徴収する場合は計量法より検定に合格したメーター(電力量計)を設置して電力量を計測しなければいけない。また、同法では、使用できる期限を定めており、有効期限が切れる前に、検定を取り直す✎検定に合格した新たなメーターを取り付けることになる。
図 10-1-1 充電サービス事業のイメージ (資源エネルギー庁 HP 電気事業制度 各種資料・情報等より抜粋)
(1)課金の方法
主な課金方法として以下の4つがあり、設置者の考え方に応じて選択することになる。
方法 | 内容 | 備考 |
1.現金 | 充電器コネクタを鍵箱などで管理し、鍵を貸し出し時に課金する | ・領収書の発行が必要 ・管理人が必要 |
2.現金/現金引き落とし | 1.と同様に鍵式であるが、鍵を利用者に貸し出し(集合住宅などの場合)とし、 単価/回、単価/月、充電時間などで請求 | ・領収書の発行が必要 ・料金計算など管理する手間がかかる。 |
3.パスワード認証 | パスワードを入力して認証する。単価/月などの運用となる | ・現金運用もある ・預金引き落としが一般的 |
4.コイン課金機カード課金機 | (2)課金システムによる | ・機器の追加費用がある ・カード式は毎月の利用料が発生するケースが多い |
(2)課金システム
①パーキングシステムとの連携
通信により充電許可などの制御
充電器
②カード認証
充電器
①ITメーカーの認証機による課金カード会員方式
②同上、クレジットカード
③充電器での自己認証→カード発行がオリジナル
③コイン課金
通信により充電許可などの制御
コイン課金機 充電器
(3)充電サービス事業者
EV向け充電サービスを行っている事業者を以下に示す。詳しくは各社のHPにて確認されたい。
○ (株)e-Mobility Power xxxxx://xxx.x-xxxxxxxxx.xx.xx/
○ ジャパンチャージネットワーク(株) xxxxx://xxx.XXxxxxxxx-xxxxxxx.xxx/
〇 エネショップ (ファブスコ) xxxx://xxx-xxxx.xxx/
〇 エコQ電 (株)エネゲート xxxxx://xxxx.xxxxxxx.xx/xxxxxxx/xx/
11.急速充電器に対する補助金・助成制度
(1)次世代自動車振興センター CEV補助金・充電インフラ補助金
経済産業省の2020年度事業として、「クリーンエネルギー自動車導入事業費補助金(CEV補助金)」、「電気自動車・プラグインハイブリッド自動車の充電インフラ整備事業費補助金」が実施されている。補助金の対象・条件は毎年見直されているので、一般社団法人次世代自動車振興センターのホームページで詳細を確認すること。
(2)中小企業庁 中小企業経営強化税制
中小企業・小規模事業者や中堅企業は、経営力向上のための人材育成や財務管理、設備投資などの取組を記載した「経営力向上計画」を申請し、認定されることにより中小企業経営強化税制(即時償却等)や各種金融支援が受けらる。支援対象には急速充電器も指定されており、申請書はCHAdeMO協議会事務局に提出する。詳細は以下で確認のこと。
xxxxx://xxx.xxxxxx.xxxx.xx.xx/xxxxx/xxxxx/xxxxxxxxxx.xxxx
別紙1 電気自動車の環境性
東日本大震災による福島第一発電所の事故以降、原子力発電所の運転再開が見通せない状況で、電力供給に占める火力発電の比率が大幅に増加している。この結果、電気自動車の環境性評価に対しても影響が生じているが、電気自動車はガソリンエンジンに比べてエネルギー効率が高いため、他のエコカーに比べても環境性が高いことに変わりはない。(図1)
「今後、原子力発電が再稼動できず電気自動車が大量普及した場合、充電電力需要を満たせなくならない✎」と心配する声もあるが、電気自動車の充電電力需要の大半は普通充電が占めている。普通充電は急速充電とは異なり緊急性が低いため、料金メニューなどのインセンティブで充電時間をオフピークにシフトすることが容易である。
また、「原子力が再稼動できないと現状の安価な夜間電力を維持できなくなるのではない✎」という意見もある。さらに、xxx発電などの再生可能エネルギーが大量に導入されると、出力が不安定な電源の発電余剰分をどのように吸収(消費)する✎という問題も生じる。
電気自動車には、このような問題の解決に大きく貢献することが期待されている。今後、電気自動車が社会に浸透した場合には、日常的に通勤や買い物などに使う人、もっぱら休日に使う人など、利用形態が多様化するとともに、同時に普通充電の利用時間も様々になる。また、V2H(Vehicle to Home) のような充放電機能を有する設備が増えると、電気自動車がもつ大容量蓄電池を活用することでさらに柔軟に充電電力需要をコントロールすることができるようになると期待されている。
エコカー比較 1km走行当たりのCO2排出量[gCO2/km]
LEAF e+ G(東日本大震災前)
LEAF e+ G(2019年実績)
アウトランダーPHEVプリウス(Eグレード)ノートe-POWER X
ホンダN-BOX G
0.00
20.00
40.00
60.00
80.00 100.00 120.00
【計算条件】
ガソリン燃 :JC08モードカタログ値
CO2排出係数
ガソリン 2.3 kgCO2/L
系統電力CO2排出係数
(震災前) 0.33 kgCO2/kWh
(令和2年電気事業者別排出係数代替値)0.488 kgCO2/kWh
ガソリン価格 125.2円/L
電灯料金(第2段階従量料金) 26.48円/kWh夜間電力 (おトクなナイト10) 12.73円/kWhアウトランダーPHEV電動走行比率 80% JC08モード燃 [km/L]:
NBOX G 21.8
ノートe-POWER X 34.0
エコカー比較 1か月(500km走行)の燃料 (電気代)
LEAF(夜間電力) LEAF(電灯料金)
アウトランダーPHEVプリウス(Eグレード)ノートe-POWER X
ホンダN-BOX G
0
500
1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500
プリウス(Eグレード) 39.0
アウトランダーPHEV 16.0
電動走行性能 [Wh/km]:
アウトランダーPHEV 13500/65
リーフ G 120
図1 電気自動車とエコカーの環境性・経済性比較
別紙 2 国際標準化の動向
2014年3月、IEC(国際電気標準会議)においてCHAdeMO仕様を含むDC充電器に関する国際標準規格が成立,DC充電のシステム,充電制御通信,コネクタ規格としてIEC61851-23/24,IEC62196-3として発行された。更に,このIEC規格の地域規格化も進んでおり、国際規格と地域規格を整合するということは,国際的に標準化された技術・製品がその国内で仕様変更することなく使えることを意味し,国際的な貿易の発展,円滑化に寄与する。国際規格化したCHAdeMO規格は各国地域規格としての採用が進んでいる。
日本では,2014年10月に国際規格と整合したJIS規格(日本工業規格)が,IEC規格の番号を引き継いだJIS D61851-23/24,JIS D62196-3として発行された。
欧州では,上記IEC規格がEN規格として採用され,さらにDIN規格(✲)やBS規格(英)として各国規格としても採用されている。
アメリカでもIEC規格に沿ったDC充電規格,IEEE SA – P2030.1.1が2016年3月に発行されており,続いて IEEE の認証制度( ICAP )制定するプロジェクト、CHAdeMO の拡張機能(高出力化 V2H )の改訂作業が進行中である。
IEC 国際標準として規格化された充電システム
別紙 3 電力の安全
電気工作物の保安
電気工作物とは発電、変電、送電、配電又は電気の使用のために設置する受電設備(機械、器具、ダム、水路、貯水池、電線路など)をいい、事業用電気工作物、一般用電気工作物があります。
電気工作物の区分
出典: 経済産業省ホームページ
別紙 4 急速充電器の電源設計の考え方
(1)高圧受電の場合
フローチャート | 内容確認・検討事項他 | 特記・注意事項 |
①契約の確認及び充電器の選択 ②電源の調査 ③設置場所の調査 ④ 電源容量、配線ルートの調査 ⑤ 電力会社との事前協議 ⑤配線設計 | 電気xx技術者に連絡し、相談のこと。 a.電力需給契約の契約種別・契約容量の確認 b.急速充電器の選択 ・電源の種類(1φ・3φ)、出力容量 ・付加機能・デザイン・コスト ・機器の大きさ、設置方法の確認 a.竣工図や電気設備図面にて、電気設備を把握 b.低圧配電盤(3φ:動力変圧器または 1φ:電灯変圧器)の稼動状況の確認、負荷曲線の把握 c.変圧器に余力がある場合は、低圧配電盤に充電器専用のブレーカが増設できるスペースを確認 d.変圧器に余力がない場合は、低圧配電盤(3φ:動力変圧器または 1φ:電灯変圧器)の増設できるスペースを確認 a.充電器の設置場所の選定 b.点検など設置するスペースの確認 a.変圧器容量の決定(変圧器容量が足りない場合) b.ケーブルルート、布設方法の検討 ・盤✎らの距離、ケーブル径など c.受変電設備✎らの距離 d.ケーブル径、配線ルート及びケーブル布設方法の選定 a.電力会社と事前協議 ・契約種別・契約容量 ・内線(電線径、開閉器容量など) ・引込線張替工事、受電希望日 a.電気工事の発注仕様書、概要図面の作成 b.受変電設備の改修が変圧器、低圧配電盤の増設に及ぶ場合は、変電所設置の変更届が所轄消防に必要。 | a.検針票や電力会社に問い合わせ b.充電器仕様書やメーカーに問い合わせ b.最大電流値や点検記録を確認 a.EV ユーザー✎ら見た場所選定を。 a.配線ルートに支障がない✎を確認充電器の配線は単✲配線を。 電圧降下を考慮し最短ルートが望ましい。配線設計は電気設備の技術基準、内線規定に準じて行う。また、充電器メーカーの工事仕様書も参照のこと。 |
(2)低圧受電の場合
既設の低圧需要家における場合を想定している。特別措置を適用する場合は必要な箇所のみ参照のこと。
フローチャート | 内容確認・検討事項他 | 特記・注意事項 |
①契約の確認及び充電器の選択 ② 電源、負荷の調査 ③設置場所の調査 ④配線ルートの選定 ⑤ 電力会社との事前協議 ⑤配線設計 | a.電力需給契約の契約種別・契約容量の確認 b.急速充電器の選択 ・電源の種類(1φ・3φ)、出力容量 ・付加機能・デザイン・コスト ・機器の大きさ、設置方法の確認 a.電気設備図面にて、電気設備を把握 b.既設負荷(分電盤・動力盤)の内訳と設備容量や使用量の把握 a.充電器の設置場所の選定 b.点検など設置するスペースの確認 a.責任分界点✎らの内線設備の確認 b.急速充電器用回路や手元開閉器の検討 c.ケーブルルート、布設方法の検討 ・盤✎らの距離、ケーブル径など a.電力会社と事前協議 ・契約種別・契約容量 ・内線(電線径、開閉器容量など) ・引込線張替工事、受電希望日 ・特別措置 a.電気工事の発注仕様書、概要図面の作成 | a.検針票や電力会社に問い合わせ b.充電器仕様書やメーカーに問い合わせ a.図面がない時は、調査しても良い b.使用量は電流値の測定でも可 a.EV ユーザー✎ら見た場所選定を。 a.配線ルートに支障がない✎を確認 b.充電器の配線は単✲配線を c.電圧降下を考慮し最短ルートが望ましい。配線設計は電気設備の技術基準、内線規定に準じて行う。また、充電器メーカーの工事仕様書も参照のこと。 d.電気工事店にお願いしても良い |
電力会社との事前協議は、既設設備への導入と特例措置による導入の比較もあり得るため、検討当初✎ら行っておくと良い。
(3)低圧受電✎ら高圧受電に変更になる場合
フローチャート | 内容確認・検討事項他 | 特記・注意事項 | ||
①契約の確認及び充電器の選択 ② 電源、負荷の調査 ③設置場所の調査 ④配線ルートの調査 ⑤受変電設備の設計 ⑥ 電力会社との事前協議 | 電気xx技術者を選任し、相談のこと a.電力需給契約の契約種別・契約容量の確認 b.急速充電器の選択 ・電源の種類(1φ・3φ)、出力容量 ・付加機能・デザイン・コスト ・機器の大きさ、設置方法の確認 a.電気設備図面にて、電気設備を把握 b.既設負荷(分電盤・動力盤)の内訳と設備容量や使用量の把握 a.充電器の設置場所の選定 b.点検など設置するスペースの確認 a.高圧電源の引込線✎ら新設予定の受変電設備まで (a) 電力引込用の1号柱やキャビネットの位置 (b) 受変電設備の設置場所 (c) 既設負荷への電源ルート b.受変電設備✎ら急速充電器まで (a)急速充電器用回路や手元開閉器の検討 (b)ケーブルルート、布設方法の検討 ・盤✎らの距離、ケーブル径など a.受変電電設備の設計 (a) 電圧別の変圧器容量の選定 (b) 高圧、低圧の保護協調の検討 b.低圧幹線設備の設計 (a) 電気室✎らの距離、配電用遮断器の選定 (b) ケーブル径・配線ルート・ケーブル布設方法の選定 a.電力会社との事前協議 ・契約種別・契約容量、電気xx技術者 ・内線協議、引込線張替工事、受電希望日 a.電気工事の発注仕様書、概要図面の作成 | a.検針票や電力会社に問い合わせ b.充電器仕様書やメーカーに問い合わせ a.図面がない時は、調査しても良い b.使用量は電流値の測定でも可 a.EV ユーザー✎ら見た場所選定を。 b.配線布設ルートに支障がないこと充電器の配線は単✲配線を推奨 b.電圧降下を考慮し最短ルートが望ましい。配線設計は電気設備の技術基準、内線規定に準じて行う。また、充電器メーカーの工事仕様書も参照のこと。 | ||
⑦配線設計 |
別紙 5 配管配線チェックポイント
電路 | NO | チェック項目 |
配管 | 1 | 電線サイズに適合する電線管サイズを選定しているか |
2 | プルボックスでの電線接続・通線・ケーブル曲げ半径・配管の本数を想定したサイズか | |
3 | 横引き配管の場合、ボックスは 30m以内に設置できるか | |
4 | ボックス間の屈曲は 3 直角以内を満足できるか | |
5 | 立上配管のプルボックスは電線サイズに見合う間隔で設置できるか | |
6 | ボックスは点検できる場所に設置できるか | |
7 | 電線管の支持間隔は適正にとれるか | |
8 | 盤回り・EPS 付近の配管相互の間隔は確保できるか | |
9 | 外壁の貫通箇所は防水対策を施せる位置か | |
10 | 厨房・機械室など水を使用する部屋を避けて布設できるか | |
11 | 建屋にエキスパンジョイント部※4はあるか | |
12 | 塩害・雪害・風水害の影響があるかエリアか | |
ケーブルラック | 1 | ケーブルサイズ・本数・布設場所に見合うケーブルラックに布設できるか |
2 | ケーブルラックはケーブル布設間隔を考慮した幅が布設できるか | |
3 | 床・壁(特に EPS 内)を貫通する場所は防火区画処理が容易に行えるか | |
4 | ケーブルラックの支持間隔は適正間隔で布設できるか | |
5 | 塩害・雪害・風水害の影響があるエリアか | |
埋設配管 | 1 | 埋設深さは規定以上を確保できるか |
2 | 構内通路など大型車の通行が予想されるか | |
3 | 他設備の埋設配管が予想されるか | |
4 | 充電器付近にハンドホールが設置できるか | |
5 | その他設備の架空線や建物に影響はないか | |
架空配線 | 1 | 外壁引留め部分の納まりに影響はないか |
2 | 引込柱、構内柱、支線設置場所付近に障害はないか | |
3 | 構内の施設有効高さに制限はないか | |
4 | 塩害・雪害・風水害の影響があるエリアか |
※4:エキスパンジョイント:地震で掛かる力を逃がし、地震時の建物の変形に対応する部材
発行
一般社団法人チャデモ協議会
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