「国際協同組合年」とされたことを契機として、協同組合の価値・役割の再評価が行われており、その実践の一端を担う共済事業の存在意義と事業展開のあり方も改めて検証す ることが求められている。2011年に入り、TPPを巡る議論の本質の一端が共済・簡保に対する法規制の問題にあることが明らかになる2)とともに、3月に発生した東日 本大震災を受けて、被災者への支援と地域の再生に関する協同組合の貢献のあり方とそのなかで共済事業の果たす役割が問われることとなり、協同組合ないし共済事業の今日的 な価値と役割の
JA共済に関する法制整備の意義と今後の事業展開のあり方
目次
1.はじめに
全国共済農業協同組合連合会 全国本部東日本引受センター 建物契約室 室長
たけ だ
x x
xx xx
x x
2.2005年施行の農協法改正
3.保険法の制定
4.今後の事業展開のあり方
5.おわりに
1.はじめに
近年、保険業法及び各種協同組合法の改正や保険法の制定によって、共済事業に対する法規制の体系・内容が大きく変更されつつあり、今後の規制のあり方に関しても様々な議論が行われている1)。各協同組合においては、いわゆる「行き過ぎた市場原理主義」に対する危機感の高まりや、国連において2012年が
「国際協同組合年」とされたことを契機として、協同組合の価値・役割の再評価が行われており、その実践の一端を担う共済事業の存在意義と事業展開のあり方も改めて検証することが求められている。2011年に入り、TPPを巡る議論の本質の一端が共済・簡保に対する法規制の問題にあることが明らかになる2)とともに、3月に発生した東日本大震災を受けて、被災者への支援と地域の再生に関する協同組合の貢献のあり方とそのなかで共済事業の果たす役割が問われることとなり、協同組合ないし共済事業の今日的な価値と役割の
問題は、一層具体的で切迫したものとなりつつある。
本稿は、JA共済事業に対する現行の法規制の根幹となった法制整備として、組織法・監督法分野の規制の抜本的変更を行った2005年施行の農業協同組合法(以下「農協法」という)の改正と、契約法分野の基本的規制を導入した2010年施行の保険法の制定をとりあげてその背景と影響を概括するとともに、それらを踏まえたJA共済の事業展開のあるべき方向性にかかる私見を述べ、これからの共済事業がその社会的使命をさらに果たし続けるための検討に資することを試みるものである。
2.2005年施行の農協法改正
(1)法改正の背景・趣旨
2005年4月1日に施行された農協法の改正は、2004年10月の第23回JA全国大会において定められた、次のJA改革の重点事項への自主的取組みを支援することを趣旨として行
われた。
① 安全・安心な農産物の提供と地域農業の振興
② 組合員の負託に応える経済事業改革
③ 経営の健全性・高度化への取組みの強化
④ 協同活動の強化による組織基盤の拡充と地域の活性化
JA共済事業に関する法規制は、それまで、 1954年に改正された農協法とそれに伴って整備された政令・省令・通知(かつては「通達」と呼ばれていた)を基本的な枠組みとして一部改正を重ねてきていた。その枠組みの下では、協同組合の自主的運営を尊重する考え方から、全国の各JAと全国共済農業協同組合連合会(以下「全共連」という)がそれぞれ自治的に定める「共済規程」を中心として、行政庁はその審査・承認を通じて事業の全国統一性・健全性・組合員保護を確保していく方式を基本としていたが、2005年の法改正においては、以下のような事業環境の変化と新たな社会的要請に対応するため、共済事業の全般にわたって、半世紀ぶりとなる抜本的な法制度の整備が行われた。
① JA共済の事業量が伸長し、大手の保険会社に肩を並べる規模となったことにより、事業を健全に継続し、長期にわたる共済契約上の債務を確実に履行していく社会的責任も重大になった。一方、1997年の日産生命をはじめ複数の保険会社が破綻するとともに、2001年以降4つのJAが自主的に解散したことを踏まえ、事業の健全性の確保と、事業の継続が困難になった場合の組合員
保護に関する制度の整備が強く求められていた。
② 行政全般にわたって、行政機関の内部文書である通知による行政から、国民にとって透明性の高い法令による行政への移行がすすめられていた。一方、 2003年に全共連が共栄火災と共栄火災しんらい生命(現・フコクしんらい生命)を子会社化したことに伴い、保険業界に与える影響力に対する関心・警戒が大きくなりつつあるとともに、銀行等における保険窓販に関する規制と平仄を合わせるため、「信用事業を行う組合」でもある全国の各JAの行う保険代理業務に対する同等の規制が求められていた。こうした環境変化を受けて、透明性の高い法制度の下で事業運営を行うことが、外部からの無用な疑念・批判を避け、事業の信頼性を確保するための不可欠の要件となっていた。
③ いわゆる「法律上の根拠のない共済=無認可共済」に対する保険業法の適用や簡易保険の民営化に関する検討が並行してすすめられており、協同組合法に基づく共済事業としてJA共済事業が存続していくために、社会的に要請される健全性確保・組合員保護・透明性の水準を満たした法制度を早急に構築する必要があった3)。
(2)法改正の意義
2005年施行の農協法改正の主な内容は資料
1のとおりであり4)、JA共済事業にとってこの改正は、以下のような意義があったと集
資料1 共済事業に関する農協法改正の概要
(注)「組合」はJA及び全共連をさす。
項 目 | 改 正 前 | 改 正 後 |
Ⅰ 組合員保護の充実及び組合員ニーズへの対応に関する事項 | ||
1 共済代理店 | (代理権のない「取次」の方式により実施している。) | ● 共済代理店を法制化する。 ● 共済代理店の設置を届出制とし、共済代理店についても、クーリングオフ制度や、不適正な推進行為の禁止の対象とする。 ● 引き続き、自動車共済・自賠責共済を取り扱う。 |
2 子会社 | ● 信用事業を行う組合の子会社及び議決権保有を規制している。 | ● 共済事業を行う組合についても、子会社及び議決権保有を規制する。 ● 全共連は、保険会社・外国保険会社等を子会社とし得ることを明確化する。 |
3 推進上の禁止行為及び事業の健全な運営の確保措置 | 〔行政通知で指導、組合の自治的規制〕 | ● 以下の内容を法定化する。 ・ 共済契約の推進・締結に際し、共済契約者に対して虚偽のことを告げる等の不適正な行為を禁止する。 ・ 共済事業を行う組合に契約者への重要事項の説明等を義務付ける。 |
4 クーリングオフ | 〔行政通知で指導、組合の自治的規制〕 | ● クーリングオフ制度を法定化する。 |
5 保険会社の業務代理・事務代行 | 〔共済事業に附帯する事業として保険会社の業〕 務代理を実施している。 | ● 共済事業を行う組合は、保険会社の業務代理・事務代行ができることを明確化する。 |
6 既契約の契約条件の変更 | (新設) | ● 共済契約者の保護を図るため、組合・共済契約者間の自治的な手続により、契約条件の変更(予定利率の引下げ)を可能とする制度を導入する。 |
Ⅱ 事業運営の健全性の確保に関する事項 | ||
1 経営情報の開示 | ● 信用事業を行う組合に業務及び財産の状況を記載した説明資料の公衆への縦覧を義務付けている。 〔全共連に対しては行政通知で指導〕 | ● 新たに全共連に開示を義務付ける。 |
2 最低出資金 | ● 信用事業を行う組合の出資総額は、一定額以上が必要とされている。 〔全共連に対しては行政通知で指導〕 | ● 新たに全共連の最低出資金を規定し、その額を100億円とする。 |
3 支払余力比率に応じた早期是正措置 | 〔全共連に対して行政通知で指導〕 | ● 共済金等の支払能力の充実の状況の基準(支払余力比率基準)を定め、これに応じて、業務改善命令等を発する制度を導入する。 |
4 共済計xx | 〔全共連に対して行政通知で指導〕 | ● 全共連における共済計xxの選任・職務・要件に関する規定等を設ける。 |
5 割戻準備金・支払備金・価格変動準備金の積立て | ● 責任準備金の積立てを義務付けている。 〔他の準備金は行政通知で指導〕 | ● 全共連に対して新たに支払備金、価格変動準備金及び割戻準備金の積立てを義務付ける。 |
6 特別勘定 | 〔全共連に対して行政通知で指導〕 | ● 全共連に対して特定の共済契約について特別勘定を義務付ける。 |
7 業務報告書の行政庁への提出 | ● 信用事業を行う組合に義務付けている。 〔全共連に対しては行政通知で指導〕 | ● 新たに全共連に提出を義務付ける。 |
8 員外監事・常勤監事の設置義務 | ● 信用事業を行う組合(一定の貯金残高未満は除く。)に員外監事及び常勤監事の設置を義務付けている。 | ● 新たに全共連に設置を義務付ける。 |
Ⅲ その他の事項 | ||
1 共済規程の変更手続の簡素化 | ● 共済規程の設定・変更・廃止は行政庁の承認事項となっている。 | ● 共済規程の変更のうち軽微な事項は行政庁への届出事項とする。 |
● 共済規程変更手続で、「共済責任を保有しない組合は定款で総会決議不要(定款で理事会決定)とし得る」となっている。 | ● 共済規程変更手続で、「軽微な事項について総会決議不要とし得る」とする。 | |
2 全共連の会員資格 | (新設) | ● 子会社である保険会社・外国保険会社は会員になれないこととする。 |
3 利益準備金の積立基準 | ● 毎事業年度の剰余金の「10分の1以上」を「出資総額の2分の1まで」積み立てることが義務付けられている。 (信用事業を行う組合は、毎事業年度の剰余金の「5分の1以上」を「出資総額まで」積み立てることが義務付けられている。) | ● 全共連の積立基準を信用事業を行う組合と同様に以下のとおり引き上げる。 ・ 毎事業年度の剰余金の「5分の1以上」を「出資総額まで」積み立てることを義務付ける。 |
4 罰則 | (新設) | ● 上記の改正に関連して罰則規定の整備が行われる。 |
約できる。
① 共済代理店制度が法制化されるとともに、共栄火災との一体的事業運営にかかる根拠規定が明文化されるなど、組合員の保障ニーズに積極的・機動的に対応するための法制上の基盤が整備された。
② 不適正な推進行為の禁止、クーリングオフなど、組合員を守る制度が法制化されるとともに、全共連の破綻を未然に防ぎ、保障の継続を確実にするための契約条件の変更手続が新たに設けられ、組合員保護が充実した。
また、全共連の最低出資金規制、経営情報の開示義務、支払余力比率基準による早期是正措置、全共連における共済計xxの設置、割戻準備金・支払備金・価格変動準備金の積立て等の諸制度が法制化され、事業運営の健全性を確保するための法制上の基盤が整備された。
③ それまで、JA・全共連の自治規範と通知に基づく行政指導を中心として行われてきた②の諸規制が、協同組合法である農協法を頂点とする法体系のなかに明文化されたことにより、協同組合の行う事業としての理念・位置付けを堅持することが可能になるとともに、その結果として、JAにおける総合事業の実施、生命・損害両分野の共済の実施、員外利用制度が存続したことや、保険募集人に対する規制に匹敵する募集主体規制を導入しなかったことに見られるように、協同組合の行う共済事業の独自性・優位性に関する基本的条件は維持された。
農協法の下で、組合員保護と健全性の確保に向けた透明性の高い法制度が構築されたことは、JA共済事業に対する新たな社会的要請に応え、内外からの信頼を高めていくうえでの法制上の基盤が、根拠法を他の法律に替えることなく整備されたことを意味する5・6)。
④ 社会全体において法令遵守に対する意識が高まりつつあるなか、従来よりも詳細で透明性の高い法規制が行われることになったことを受け、全国のJAと全共連が一体となって法令に則した事業運営・組合員対応を徹底する必要性が一層高まった。
⑤ 協同組合共済に対する保険業法の適用と金融庁の監督を求める国内外からの圧力・攻撃が、農協法が改正された後も継続することが想定されたことから、これに対抗するためにも、保障・サービスの提供をはじめとする具体的な事業活動の面で、JA共済事業の理念・独自性を発揮し、組合員と地域社会に貢献する必要性が一層高まった。
(3)共同元受方式の導入
2005年4月1日には、農協法改正の施行に併せて、共済契約の締結に関する事業実施方式の変更が行われた。それまでは、JAが組合員との間に共済契約(再共済契約と区別して「元受共済契約」と呼ばれることもあった)を締結し、その契約に基づく共済責任に関して全共連との間で再共済契約を締結するという方式で共済事業を実施してきたが、この方式の下で仮にJAが破産した場合、次の問題
があると指摘されていた7)。
① 組合員との間に結ばれていた共済契約を破産管財人が解除することによって保障が強制的に終了する懸念がある。
② 組合員のJAに対する共済金・返戻金等の請求権が破産債権となり、他の一般債権者と平等に配当を受けるにとどまる結果、共済約款に定められた金額の一部しか受け取れなくなる懸念がある。
このような事態が生じることを防ぐため、仮にJAが破綻しても組合員保護を確保し得る事業実施方式として、JAと全共連が共同で組合員との共済契約を締結し、JAが破産等の事態に陥った場合には、自動的に全共連が単独で締結する共済契約に変更され、全共連がその後共済期間の満了まで共済約款の規定に従って共済契約上の責任を果たすことのできる制度が導入された8)。この新たな事業実施方式は、一般的に「共同元受方式」と呼ばれており、その概要は資料2のとおりである9)。
JA・全共連による共済契約の締結の方式については、農協法で規制ないし特定すべき事項ではなく、組合員・会員の意思に基づいて自らの共済規程で定め、行政庁の承認を受けるべき事項であると判断された。
農協法の改正に併せてこの共同元受方式が導入されたことにより、「JAの破綻の際には共同元受方式により組合員を保護し、全共連の破綻は新たに法制化された契約条件の変更(具体的には、予定利率の引下げ)の手続によって未然に防ぐ」という形で、経営の継続が困難になった場合の組合員保護の制度
が整備されたことになる。
また、大数の法則を機能させるべき共済事業において全国規模のリスク分散を図り、事業の健全性を確保する観点から、実質的な共済責任はすべて全共連が負担し、JAは負担部分を持たない形で機能分担を行う10)こととした。このことによって、農協法に定められた諸規制を、JA・全共連の双方に適用されるもの(共済代理店、推進上の禁止行為に関する規制等)と、全共連のみに適用されるもの(他業禁止、支払余力比率基準、共済計xxの設置義務に関する規制等)に分けて合理的に運用することが可能となった。
これらの点に加えて、全共連がJAとともに共済契約の当事者となる事業実施方式には、次のようなメリットがあると整理された。
① 従来からのJA共済の強みであるJAの自主性や地域特性に基づく創意工夫を活かしながら、全共連が現場での問題点を把握し、JAをより適切に支援することが可能となる。
② 事故後の処理や共済契約の保全管理に関するサービスの面でのJA間の格差を改善し、組合員の満足度を向上させることができる。
③ 組合員のニーズや保障提供上の課題について、JAと全共連が同じ視点から一体的に取り組むことにより、協同組合のあるべき姿が実現できる。
3.保険法の制定
(1)保険法制定の背景・趣旨
2010年4月1日に保険法が施行される前の商法第2編第10章(以下「旧商法」とい
資料2 共同元受方式の概要
【変更前(2005年3月31日まで)】
全共連
JA
組合員
〔共済契約〕 〔再共済契約〕
共済掛金 再共済掛金
共済金・返戻金
再共済金・返戻金
(共済契約によりJAが負うすべての責任を再共済)
【共同元受方式(2005年4月1日から)】
● 通常時
共済掛金
〔共済事業の共同実施に関する契約〕
全共連が収納すべき共済掛金の払込み
共済金・返戻金
支払うべき共済金・返戻金の引渡し
〔共済契約(共同元受)〕
組合員
全共連
JA
● JA・全共連がともに共済者となり、連帯して共済責任を負う。
→ 連帯債務の負担割合は、JA:全共連=0:100とする。
● 共済契約に関する行為はJAを窓口として行う。
JA破綻の際に自動的に変更
破綻処理後、全共連から新JA
への一部事業譲渡により共同元受へ復帰
→ 復帰後は、新JAが窓口となる
組合員
● JA破綻後
全共連
〔共済契約(全共連単独元受)〕
共済掛金
共済金・返戻金
う)に規定されていた保険契約に関するルールは、1899年の商法制定後、1911年に一部の規定が改正されただけで、約100年にわたって実質的な改正が行われておらず、表記もカタカナ文語体のままであった。この間、社会経済情勢が大きく変化したことを受け、規定の内容をこれに適合したものに改めるとともに、表記をひらがな口語体に改める必要があることから、旧商法の規定を削除し、保険契約に関するルールを定める独立の民事法として保険法が制定された。旧商法からの主な改正点は、以下のとおりである11)。
① 旧商法の規定が、JA・生協等による共済契約を適用の対象としてこなかった点を改め、適用範囲に共済契約を含めることとし、保険契約と共済契約に共通する契約ルールとして整備された。
② 旧商法には損害保険・生命保険の規定しかなく、入院保険・がん保険等に関する契約ルールがなかった点を改め、傷害疾病定額保険契約に関する規定を新設した。
③ 旧商法では、保険契約者等は自発的に告知すべきとされていたり、保険金の支払時期に関する規定がなく、約款の定めに委ねられたりしているなど、加入者側の保護が十分ではなく、また、旧商法のほとんどが任意規定であり、これと異なる約款の定めも有効と解されていた点を改め、契約締結時の告知は保険者からの質問に回答すればよいこととし、保険金の支払時期についての規定を整備し、また、保険法の規定よりも加入者側に不利な内容の約款の定めを無効と
へんめん
する「片面的強行規定」を導入するなど、加入者の保護を強化した。
④ 旧商法には責任保険に関する一般的な規定がなく、加害者が倒産した場合には、保険金が加害者の債権者への配当に充てられてしまうという問題があった点を改め、被害者が保険金から優先的に被害の回復を受けることができる権利を付与した。
⑤ 旧商法には生命保険契約の保険金受取人の変更について意思表示の相手方や遺言による変更に関する規定がなかった点を改め、保険金受取人の変更の意思表示の相手方は保険者であることや、遺言による保険金受取人の変更も可能であることについて、xxで規定した。
こうした旧商法の契約ルールの整備が必要であった点に加えて、保険法が制定された社会的背景として、次の点も挙げられる。すなわち、2005年以降、不当な保険金の不払いや請求漏れの問題が表面化し、一部の共済においても請求漏れのあることが判明したことを契機として、共済掛金・保険料が高額になるケースが多いにもかかわらず、複雑な共済・保険の商品内容に関する知識・情報・交渉力において事業者と加入者の間に大きな格差があることもその一因とされ、共済・保険に関する契約ルールの整備にあたって、加入者保護に重点を置くことが強く求められていた。
(2)保険法に対する評価
保険法の主な内容とJA共済の対応は資
料3のとおりであり、JA共済としてはこの保険法を基本的に以下のように評価している。JA共済以外の主要な協同組合共済においても、これらの評価はほぼ共通している12)。
① 共済事業が今日の規模まで成長し、多くの国民が共済契約を締結している現状を踏まえ、保険法は、加入者保護を目的として、共済契約の内容にかかる基本的ルールを設けた。こうした新たな根拠法を得たことにより、共済契約の内容の透明性・予見可能性が高まるとともに、共済に加入する組合員が保険の加入者と同等の保護・メリットを享受することが可能になった。したがって、保険法は、共済事業に対する組合員の信頼・安心感を高めるとともに、国民の共済に対する理解を促進する意義を持つものとして肯定的に評価すべきである。
② 共済事業には、組合員参加による自主的・自律的運営、非営利性といった、保険会社とは異なる理念や組織特性があり、そうした独自性を否定する趣旨・内容の法規制が行われることは望ましくないが、保険法はその定義規定において、保険契約とは別個の独立した類型として共済契約を位置付けており13)、この点でも意義のある法制度となったと評価できる。保険法があくまで契約ルールを規律するものであり、組織法・監督法の一元化を図るものでない点については、国会審議において、また、衆参両院の法務委員会の附帯決議において確認されている14)。
③ 実務的・技術的な面で、JA共済には、
上述の共同元受方式を採用している点、建物分野では満期共済金を有する長期共済である「建物更生共済」が主力である点、JAと組合員は共済以外にも様々な取引による権利義務関係を有している点、といった保険にはない特性があり、保険を前提として作られた契約ルールが適用されることによる混乱や紛争を防ぐ必要があったが、保険法の個々の条項を強行規定とすべきか任意規定とすべきかについての検討が行われた結果、概ね妥当な範囲で各共済団体の意思決定を反映できるよう配慮された。
(3)保険法制定の意義
JA共済事業にとって、保険法が制定され、その適用を受けたことには、以下のような意義があったと集約できる。
① 共済に加入する組合員の保護の強化を目的として設けられた契約ルールに則して共済約款を改訂し、実務を処理することによって、組合員保護が一層徹底された。実務上の効果が特に大きいのは、共済金等の支払処理の迅速化・適正化である。
② 各共済種類の共済約款が同時期に改訂されるとともに、新たな契約ルールに対応する実務処理の手続が整備されるのを好機として、「組合員がより理解しやすく、共済金等の請求漏れが生じるおそれのない、安心して加入できる仕組みの提供」と「JAにおいて普及推進・契約保全にあたる職員の活動の効率化と負担軽減」を目指す次の取組みが可
資料3 保険法の概要とJA共済の対応内容
項 目 | 保険法の概要 | JA共済における対応 |
1 告知義務 (損害4条・28条、生命37条・55条、 傷害疾病66条・84条) | ● 旧商法:「保険契約者等の告知義務者が自発的に重要な事実を告知しなければならない」 → 保険法:「保険者からの質問に応答すれば足りる」 ● 保険法:「保険募集人等が保険契約者等から告知を受ける権限を有しない場合であっても、告知を妨害したり、告知をしないこと等を勧めたりした場合には、保険者は告知義務違反を理 由に契約を解除することができない」 | ● 各共済約款の告知義務に関する規定を保険法の内容に合わせて整備 ● 共済契約申込時の告知事項の範囲を明確化 |
2 遡及保険 (損害5条、生命39条、傷害疾病68条) | ● 保険法:「保険契約の申込みの時以前に保険者の責任が開始する保険契約において、その申込みの時に、保険者が、保険事故が発生していないことを知っていたとき(保険料を受け取るのが不当なケース)、保険契約は無効」 | ● 長期共済の約款では、これまで、「申込みのあった日の午前0時から保障を開始」 → 「共済契約の申込みの時から責任が開始」に変更(「申込日の午前0時から申込みの時までの間に共済事故が発生していないことを組合が知っていたときには共済契約が無効となる」とすると、共済契約を有効に成立させる ことができない) |
3 保険証券 (損害6条、生命40条、傷害疾病69条) | ● 旧商法:「保険契約者から請求があった場合に保険証券を交付しなければならない」 → 保険法:「請求の有無にかかわらず交付しなければならない」 ● 保険法:新たな記載事項「告知事項の内容の変更について通知義務を課す場合には、その旨 保険証券に記載すべき」 | ● 従来どおり、請求の有無にかかわらず共済証書を交付。併せて、通知義務に関する事項を共済証書に記載 |
4 第三者のためにする保険契約 (損害8条、生命42条、傷害疾病71条) | ● 旧商法:「損害保険に関して、契約者と被保険者(受取人)が異なる場合、契約者が被保険者の委任を受けず、かつそのことを保険者に伝えなかった場合には、保険契約は無効」 → 保険法:「その被保険者は、当然に保険契約 による利益を享受する」(無効にはならない) | ● 損害共済の共済約款を変更し、「他人を被共済者とする共済契約を締結する場合、被共済者の同意を得なかったときは無効とする」規定を削除 |
5 超過保険 (損害9条・10条) | ● 旧商法:「損害保険契約の締結時に、保険金額が保険価額を超えている場合、超過部分は無効」 → 保険法:「超過保険も有効。ただし、契約者は超過部分の契約を取り消して保険料の返還を 受けることができる」 | ● 損害共済の共済約款を変更して超過部分を有効とし、超過部分の取消請求に関する規定を新設 |
6 事故発生にかかる通知 (損害14条、生命50条、 傷害疾病79条) | ● 保険法「通知義務者:損害保険は保険契約者または被保険者、生命保険は保険契約者または保険金受取人、傷害疾病保険は保険契約者、被 保険者または保険金受取人」 | ● 各共済種類の共済約款に定められた通知義務者の範囲を、保険法に合わせて変更 ● また、この通知を怠った場合の免責規定を 削除(保険法上認められていない) |
7 重複保険 (損害20条) | ● 保険法「被保険者はそれぞれの契約で定められた内容に従って各保険者に保険金を請求することが可能。保険金を支払った保険者は、他の保険者の負担部分を求償」(被保険者が複数の保険者に一部ずつの保険金を請求しなければな らないという不利益の解消) | ● 建物更生共済・火災共済の共済約款を変更: 「他の共済・保険契約に加入している場合であっても、約款所定の共済金の全額を支払う」 (ただし、実務においてはモラルリスクの排除や多重請求の回避が必要) |
8 保険給付の履行期 (損害21条、生命52条、傷害疾病81条) | ● 保険法:「適正な保険金の支払いのために不可欠な調査に客観的に必要な期間を経過した後は遅滞に陥る」 ● 国会審議における附帯決議「保険法施行前の約款の支払期限である、生命保険5日、損害保険・傷害保険30日が目安」 | ● 共済約款上の期限(請求書類が組合に到着した日以後1か月以内、特に調査を要する場合は無期限)を変更し、生命共済に関して特に調査を要しない場合の支払期限を「8日」に短縮し、また、生命・損害の共済種類を通じて、必要な調査を行った場合の支払期限を、調査の類型ごとに「30 ~ 180日」に短縮 ● 実務における共済金支払事務の迅速化・適 正化についても併せて措置 |
項 目 | 保険法の概要 | JA共済における対応 |
9 責任保険についての先取特権 (損害22条) | ● 保険法:「加害者が破産した場合、加入していた責任保険から支払われる保険金は、他の債権者に優先して被害者に支払われる」(従来、加害者の受け取る保険金は、債権者に平等に配 当) | ● 自動車共済等の共済約款においても、保険法の内容に合わせた規定を新設 |
10 請求権代位 (損害25条) | ● 旧商法:「損害保険において、第三者の行為によって損害が発生した場合、保険者が支払った額のすべてについて加害者に代位請求できる」 → 保険法:「被害者に生じた損害額までは被害者が優先して加害者に請求できる。保険者は、その残額についてだけ加害者に代位請求でき る」(被害者の損害の全額回収が可能に) | ● 保険法施行前の共済約款は「被共済者の権利を害さない範囲内で請求権代位を行う」と規定(保険法と同様の実務) → 保険法の規定を踏まえ、組合が代位できる金額を明確に定める |
11 危険の増加 (損害29条、生命56条、傷害疾病85条) | ● 旧商法:「危険が増加した場合には、契約は効力を失う」 → 保険法:「故意・重過失による契約者等の通知義務違反の場合のみ解除・免責」(それ以外 の場合には、保険料を増額して継続) | ● 通知の時期や解除の要件に関する共済約款の規定を保険法に合わせて整備 |
12 重大事由による解除 (損害30条、生命57条、傷害疾病86条) | ● 保険法:「保険金取得目的で保険事故を発生させた(未遂を含む)等の場合、保険者に解除権」 | ● 組合側からの解除に関する共済約款の規定 (調査妨害による解除、相当理由による解除等)を、保険法に合わせて整備 |
13 他人を被保険者とする保険契約 (生命38条・45条、 傷害疾病67条・74条) | ● 保険法:「生命保険の場合、保険契約者と被保険者が異なる契約については、常に被保険者の同意がなければ契約が有効に成立しない。傷害疾病保険の場合、原則として、被保険者またはその相続人が保険金受取人である場合には被保険者の同意がなくても契約が有効に成立する」 | ● 生命共済の共済約款を変更し、被共済者が死亡共済金受取人である場合であっても、共済契約者と被共済者が異なる場合には、一律に同意を取得 ● 傷害共済の共済約款を変更し、原則として被共済者を受取人としたうえで、共済契約者と被共済者が異なる場合には、一律に同意を 取得(生命共済と取扱いを統一) |
14 保険金受取人の変更 (生命43条・44条、 傷害疾病72条・73条) | ● 保険法:「保険金受取人の変更は、保険者に対する意思表示によってする。遺言によっても 可能」 | ● 共済約款を、保険法に合わせて整備 |
15 保険金受取人の意思による保険契約の存続 (生命60 ~ 62条、 傷害疾病89 ~ 91条) | ● 保険法:「生命保険契約や傷害疾病保険契約が、差押債権者等によって解除されそうになった場合に、被保険者の親族等である保険金受取人が差押債権者等に対して解約返戻金相当額を支払うことによって解除の効力の発生を阻止し、契約を存続(介入権)」(少額の債権回収のために親族の生活保障が失われる不合理を回 避) | ● 共済約款に、保険法に合わせた規定を新設 |
16 保険者の免責 (損害17条、生命51条、傷害疾病80条) | ● 保険法:「故意・重過失や戦争・変乱により 支払事由が生じた場合には、保険者は免責される」 | ● 共済約款の免責規定を、保険法に合わせて整備(医療共済・傷害共済に重過失免責を追加) |
17 保険金請求xxの消滅時効 (95条) | ● 保険法:「保険金請求権、保険料返還請求xxの消滅時効期間は3年」(旧商法の2年を延 長) | ● 保険法に合わせて、共済約款上の消滅時効期間を3年に変更(保険法施行前は2年) |
18 未経過期間にかかる保険料の返還 (旧商法655条の廃止) | ● 保険法:「長期の保険契約において、保険料の計算の基礎とされた期間の途中で保険契約が終了した場合、受け取っていた保険料のうち、未経過期間に相当する部分を保険契約者に返還 すべき」との解釈 | ● 長期共済の共済約款を変更:「年払いの共済契約が共済年度の途中で終了した場合には、未経過の月数に応じて共済掛金を払い戻す」 (保険法施行前は、共済掛金積立金部分の返 戻のみ) |
能となった。JA共済では、普及推進、共済契約の締結から共済金の支払、契約の終了に至る一連のプロセスの改善を
「業務品質の向上」と位置付け、保険法の施行後も継続してこれに取り組むこととしている。
ア 各共済種類の共済約款の文章表現をわかりやすくするとともに、製本・印刷の仕様を見直して読みやすくする15)。
イ 仕組みの統廃合と事務処理の簡素化を行う16)。
ウ 普及推進にかかる組合員保護の観点から近年複雑化した、仕組みの説明や組合員の意向確認の手順・方法を再整理する。
エ 普及推進・契約保全や各種研修に用いる資材・帳票を、わかりやすく、使いやすく改善する17)。
③ 共済事業が、保険と肩を並べる独立の事業として法制上の位置付けを得たことを踏まえ、2005年の農協法の改正後と同様に、具体的な事業活動の面でも、 JA共済事業の理念・独自性を発揮し、強化していくことがさらに強く求められることとなった。
これらに加えて、共済者側の実務に与える影響という観点から次の2点を指摘することができよう。
④ モラルリスク対策や重複加入案件の処理を通じて、保険会社や他の共済団体との連携を従来以上に強化することが必要になった。
⑤ 実務処理や仕組開発にあたる職員が、共済・保険に関する契約法分野の法令・判例に関する知識や分析力を従来以上に高めることが必要になった。
4.今後の事業展開のあり方
これまで述べてきたように、近年の法制整備を受けて、JA共済の今後の事業展開において、その理念・独自性を発揮し、組合員と地域社会に貢献する必要性が従来に増して高まっている。その基本的な方向性と具体的な取組みとして考えられる点は、以下のとおりである。
(1)組合員に対する保障提供
組合員に対する保障提供に関しては、基本的な事柄ではあるが、一人ひとりのニーズ・状況に応じた保障とサービスを、協同組合の行う共済事業の特長を活かした形で提供することをさらに追求すべきである。
① 現在、多くの組合員のくらしと保障ニーズは、高齢化の進展によって大きな影響を受けている。JA共済では、近年、満期到来契約の増加や退職者の大量発生により生ずる資産の安定運用のニーズに対応する仕組み18)や終身にわたって医療保障を行う仕組みの提供に力を入れて取り組んでいるが、今後は、介護や年金に関する保障とサービスの提供のあり方が重要なテーマになると考えられる。
② JA共済の中心的利用者の多くは、かねてから必要保障額に基づく保障提案を受け、すでに一定の保障を確保して
いる。したがって、今後は、これまで蓄積してきた共済掛金積立金を将来に向けた保障の原資として活用することも含め、それぞれの組合員の加入状況と掛金負担力に応じた柔軟な保障の設計・見直しを行うことが求められ、それを可能にする仕組みを準備する必要がある。
③ 組合員の多くが、わかりやすい内容の保障を求めている。組合員が保障内容を正しく理解することは、共済加入に対する納得・満足・安心だけでなく、請求漏れの防止にもつながる。組合員にとってのわかりやすさは、共済契約の内容自体が簡素かつ合理的であるかどうかだけではなく、推進関係資材の出来栄えや推進にあたる職員の説明力によっても左右されることから、複線的な取組みの継続が必要となる。
④ JA共済はこれまで、農家組合員の生産とくらしの単位である「世帯」を重視し、総合事業のなかでその生産・くらしの状況とニーズを幅広く把握したうえで保障を設計・提案し、提供してきた
(資料4は、2人のJAの管理者がこの点に触れた発言を抜粋したものである)。また、JAが地域に基盤を置く協同組合であることの帰結として、共済事業により生じた収益が、契約者である組合員に割り戻されるほか、JAを通じて組合員のくらす「郷土」に還元されることも、JA共済事業の特長である。こうした事業特性を「組合員が共済に加入することの意義」として組合員・職員の間で改めて共有し、そうした意識を希
薄化させることなく日常の事業活動において実践していくことが必要である。
⑤ 個々の組合員にとってJAは、自らが出資し運営する協同組合であり、営利
(株主への配当)を目的としない事業体であり、同じ地元の生産者・生活者が役職員となって事業を行っており、決して地元から離れることのない存在であり、総じて「ライフステージの進展に応じて、我が家に適した保障を提案してくれる」身近で、長期にわたって信頼できる組織である19)。また、組合員が、共済加入や共済金の受取経験を通じて、「全国の組合員とその家族が、長い生涯にわたって、時には世代を超えて、それぞれの生産とくらしを互いに支え合う」ことを実感できるという点で、共済事業は、
「組合員が自治的に運営する経済施設による相互扶助」という協同組合の理念・効用の一端を体現した事業となり得ている20・21)。④の事業特性に加え、こうした「組合員にとってのJA共済事業の意義」を組合員・職員の間で共有し、実践していくことも必要である22)。
(2)地域における「食と農」に関わる保障提供
農業の経営形態の多様化に伴い、新たな担い手の経営安定に資する保障提供をすすめるとともに、地域に基盤を置くJAの行う事業の一環として、「食と農」に関わるより広い範囲のリスクに対する保障提供に積極的に取り組むべきである(資料5は、こうした観点からの近年の取組みをまとめたものである)。
資料4 総合事業における共済事業の役割に関するJA管理者の発言
共済事業の一番いいところは、JAの総合事業のなかでの最終業務であることだ。
JAである以上、「まず生産ありき」である。組合員の生産基盤の拡充、生産性の向上、これと並行した肥料・農薬・生活購買の利用、これらを車の両輪のように協同組合運動としてやっていく。
生産・販売・購買の歯車が効果的に回ると、農畜産物の販売代金が入ってきて貯金に反映する。
そして最後に、信用・共済という金融相談事業を通じて、高い専門知識に基づいて組合員に融資や運用や保障を総合的に提供していく。
まず、貯金と貸付が表玄関となって、販売・再生産に結びつき、循環していく。そのようにして組合員の生活に入り込んだうえで、将来を考えて、保障を提供していく。保障というのは、将来に向けた蓄積であり、経済的な福祉であり、自己年金でもある。20年、30年先まで組合員の生活を考え、計画できる。これが共済事業の意義であり、あるべき姿である。ここに大きな意味がある。
地域の組合員の総合農協として、共済事業を推進することは農協運動を実践することである。農協運動の実践を通じて組合員に将来を含めて満足や幸せを提供する手段の1つが共済である。
JAの仕事は組合員の「営農」と「生活」を豊かにすることであり、そのための指導支援・サービス・取引を活発に行うことで、JAの様々な事業が活発になる。
これからのJAは、「農業・営農」を基幹としながら、「生活=くらし」の面で組合員との日常の接点を強化していく必要がある。信用・共済、販売・購買、医療・介護、葬祭等は生活事業であり、助けあい活動や教育広報・文化情報活動等は生活活動である。組合員との接点ができれば、JAの幅広い生活事業・活動の利用を高め、組合員を元気にすることができる。
信用・共済は組合員の生活基盤を守る事業であり、れっきとした生活事業である。信用事業も経済事業も共済事業も、JA職員が熱心に訪問活動をしているが、これは生活指導、くらしの活動の一部である。介護事業も、やがて独り立ちした生活事業になる。くらしの活動を通じて組合員・地域住民との接点を作り、JA事業の利用促進を図ることが、2009年の JA全国大会のスローガン「JA経営の変革」の具体策の1つではないか。
資料5 「食と農」に関わる保障提供の取組み
共済・保険の種類 | 実施時期 | 保障の内容 | |
イベント共済【JA共済】 (傷害共済+賠償責任共済) | 2007.10 | 地域における環境保全活動中の怪我・賠償損害 | |
定期生命共済【JA共済】 | 2008. 4 | 経営者の死亡保障と退職金資金等形成を目的とし て、共済期間を最長99歳まで延長 | |
建物更生共済【JA共済】 | 2008. 4 | 外壁のない畜舎等を共済の対象として追加 | |
農業者賠償責任保険 【共栄火災】 | 施設危険 | 2008. 6 | 農業用施設の所有・使用・管理、農作業に起因す る事故による賠償損害 |
生産物危険 | 農業用施設で製造・加工・販売された財物の第三 者への引渡し後の賠償損害 | ||
保管物危険 | 農業用施設における保管物に関する賠償損害 | ||
残留農薬危険 | 農薬散布による賠償損害、基準値以上の残留農薬 による回収費用損害 | ||
農家民泊保険 | 体験農業を目的とする宿泊サービス・飲食物提供・ 宿泊者の荷物の保管に起因する賠償損害 | ||
「JAこども交流プロジェクト」向け商品 【共栄火災】 | 体験農業保険 | 2008. 9 | 体験農業指導に起因する賠償損害 |
農家民泊保険 | 体験農業を目的とする宿泊サービス・飲食物提供・ 宿泊者の荷物の保管に起因する賠償損害 | ||
農業インスト ラクター保険 | 体験農業の指導・援助等の業務に起因する賠償損 害 | ||
農産物直売所保険 【共栄火災】 | 2010.10 | 出荷者の賠償損害、直売所の店舗休業損害 | |
JA物流保険【共栄火災】 | 2011. 1 | JAが取り扱う食品加工品の輸送・保管・加工中 に生じた火災や盗難、異物混入等による損害 |
(3)国際協同組合年と地域の再生に向けて
冒頭に述べたとおり、2012年の国際協同組合年に向けて、あるいは東日本大震災で被災した地域の再生に向けて、今日の社会における協同組合の価値・役割の再評価がすすめられており23)、それを踏まえたJAのあり方やJA共済事業の意義も改めて検証されることになると考えられる。
いわゆる「私的セクター」が過度な市場原理主義に陥った結果、資源・環境の問題が深刻化し、食の安全・安心が脅かされ、人間性
(倫理、生きがい、つながり、教育)の喪失がすすみ、新たな格差と貧困が生まれ、医
療・福祉・雇用・防災・治安といった人々のくらしの基本的な要素が機能不全に陥りつつあり、その総体としての地域社会が危機に瀕している。一方、財政難の「公的セクター」はそれを補完・解決する力を失っており、その結果、「共的セクター」の果たすべき役割の重要性は増しつつあるが、現在の協同組合は、その存在と理念が十分に認知されず(信頼性の危機)、経営状態は厳しい状況にあり
(経営の危機)、真の目的・役割を果たしているかが省みられていない(思想的な危機)、という複合的な危機を迎えており、共的セクターの中心的存在として果たし得る役割に対
する国民的な認識・期待が共有されているとは言い難い。このような状況のなかで東日本大震災が発生し、多くの地域に深刻な被害が生じた。
それぞれの協同組合は、その今日的な価値・役割を改めて共有し、人々のくらしと地域社会のあるべき姿に向けた実践の枠組みを再構築するとともに、それを外部に向けて積極的に発信していかなければならない。これからの協同組合は、共的セクターに属する他の協同組合・NGO等との連携を図るだけでなく、私的セクターや公的セクターとも必要に応じて歩調を合わせることによって、現代社会の諸課題に力を結集して立ち向かうべき状況にあると指摘されている。JAも例外ではなく、地域社会と農業がいま迎えている危機的な状況のなかで、1995年の協同組合原則(資料6)を受けて1997年の第21回JA全国大会で決議された「JA綱領」(資料7)がどのような意義を持ち、JAの総合事業を通じて地域社会と農業の将来展望をどう開いていくのかを組合員・職員が改めて確認し、その実現に取り組むことが求められている24)。そして、その実現の基礎には、地域社会と農業の課題の解決に向けた日常の地縁的活動や市民活動のなかで、女性・若者・役職員を含めた多様な参加者が、かつて集落単位の農作業において維持されてきた人と人とのつながりに替わる今日的な「絆」で結びついているという協同組合の姿がなければならない25)。
国際協同組合年は、協同組合がその存在意
義を高め、活動を活性化させる好機であると同時に、それぞれの協同組合やその事業の将来を左右する重要な節目でもある。その直前
に発生した東日本大震災により、その重要性はさらに決定的なものとなり、具体的な解答と成果が一層強く求められることになったといえよう。
5.おわりに
個人情報の保護、飲酒運転の厳罰化、刑事裁判への市民参加等の例に見られるように、法制度は、その時代の何らかの社会的要請を反映して整備されるものである。近年、取引の国際化、消費者保護の高まり、規制緩和(自由化)、IT化の進展等の環境変化を受けて、様々な分野の法制度が大きく改革されており26)、金融をめぐる各種業法等の改正もその一環として位置付けられるものである。本稿では、2005年の農協法改正と2010年の保険法施行の背景にあった社会的要請と、それらがJA共済事業に対して与えた影響の概略を述べたが、JAに対する法規制のあり方については、これらの法制整備が行われた後も、他業態との競争条件の統一や総合事業の解体を企図した国内外からの執拗な批判・攻撃が続けられており、民主党政権におけるTPPへの対応や農業政策の推移と併せて、その動向から目を離せない状況にある。
国際協同組合年に関して国連が定めた目標の1つとして、「協同組合の設立や発展につながる政策や法制度を定めるよう政府に働きかける」ことが明確に謳われている。わが国における地域社会と第一次産業の将来展望が模索され、また東日本大震災後の地域再生の取組みが動き出し、協同組合がその真価を問われるなか、JA共済が、協同組合の行う
資料6 21 世紀の協同組合原則に関する国際協同組合連盟の声明
定義
協同組合とは、人々が自主的に結びついた自律の団体です。人々が共同で所有し民主的に管理する事業体を通じ、経済的・社会的・文化的に共通して必要とするものや強い願いを充すことを目的にしています。
価値
協同組合は、自助、自己責任、民主主義、平等、xx、連帯という価値観に基づいています。組合員は、創始者達の伝統を受け継いで、xx、公開、社会的責任、他者への配慮という倫理的な価値を信条としています。
原則
協同組合は、その価値を実践していくうえで、以下の原則を指針としています。
第1原則:自主的で開かれた組合員制
協同組合は、自主性に基づく組織です。その事業を利用することができ、また、組合員としての責任を引き受けようとする人には、男女の別や社会的・人種的・政治的あるいは宗教の別を問わず、誰にでも開かれています。
第2原則:組合員による民主的な管理
協同組合は、組合員が管理する民主的な組織です。その方針や意思は、組合員が積極的に参加して決定します。代表として選ばれ役員を務める男女は、組合員に対して責任を負います。単位協同組合では、組合員は平等の票決権(一人一票)を持ち、それ以外の段階の協同組合も、民主的な方法で管理されます。
第3原則:組合財政への参加
組合員は、自分達の協同組合にxxに出資し、これを民主的に管理します。組合の資本の少なくとも一部は、通例、その組合の共同の財産です。加入条件として約束した出資金は、何がしかの利息を受け取るとしても、制限された利率によるのが通例です。
剰余は、以下のいずれか、あるいはすべての目的に充当します。
・ できれば、準備金を積立ることにより、自分達の組合を一層発展させるため。なお、準備金の少なくとも一部は、分割できません。
・ 組合員の利用高に比例して組合員に還元するため。
・ 組合員が承認するその他の活動の支援に充てるため。
第4原則:自主・自立
協同組合は、組合員が管理する自律・自助の組織です。政府を含む外部の組織と取り決めを結び、あるいは組合の外部から資本を調達する場合、組合員による民主的な管理を確保し、また、組合の自主性を保つ条件で行います。
第5原則:教育・研修、広報
協同組合は、組合員、選ばれた役員、管理職、従業員に対し、各々が自分達の組合の発展に効果的に寄与できるように教育・研修を実施します。協同組合は、一般の人々、――なかでも若者・オピニオンリーダー――にむけて、協同の特質と利点について広報活動します。
第6原則:協同組合間の協同
協同組合は、地域、全国、諸国間の、さらには国際的な仕組みを通じて協同することにより、自分の組合員に最も効果的に奉仕し、また、協同組合運動を強化します。
第7原則:地域社会への係わり
協同組合は、組合員が承認する方向に沿って、地域社会の持続的な発展に努めます。
(出典)全国農業協同組合中央会編『JA教科書 農業協同組合論』(1996・家の光協会)
共済事業としての今日的な価値・役割を提示できるか、また、それに相応しい事業活動を実践して国民的な理解と共感を得ることができるかどうかは、今後の法制度のあり方に関する議論にも大きく影響することとなろう。東日本大震災はJA共済史上例のない大 きな被害をもたらしたが、震災に直面した多くの被災者や市民が見せた忍耐強さ、郷土のコミュニティへの愛着や、互いを思いやり、譲り合い、助け合う心性は、かつて集落に存在した人と人との「絆」に培われてきたわが国の伝統的な精神風土とその規範性が健在であったことを明らかにして世界を驚かせた。このことは、市場原理主義者が想定しているとされる「他人を顧みることなく自己の利益を追求する」という人間像が、いかにわが国の地域に生きる人々の姿と相容れないもので
あるかを浮き彫りにするとともに、地域に基盤を置く人的共同体であり、「連帯」という価値観や「他者への配慮」という倫理を信条とする協同組合には、そうしたわが国の精神風土を将来に向けて体現していく基盤となる社会的システムとしての可能性があることを強く示唆している27)。国際協同組合年を目前にしてこうした試練を経験したことも1つの糧として、私たちは、JAと共済事業のあり方を真摯に検討し、様々な課題に立ち向かうことを通じて、xxに向けた展望をより確かなものとしなければならない。
(本稿は、2011年3月5日に開催された第
4回共済研究会シンポジウムにおける報告内容に加筆したものである。)
資料7 JA綱領
わたしたちJAの組合員・役職員は、協同組合運動の基本的な定義・価値・原則(自主、自立、参加、民主的運営、xx、連帯等)に基づき行動します。そして地球的視野に立って環境変化を見通し、組織・事業・経営の革新をはかります。さらに、地域・全国・世界の協同組合の仲間と連携し、より民主的でxxな社会の実現に努めます。
このため、わたしたちは次のことを通じ、農業と地域社会に根ざした組織としての社会的役割を誠実に果たします。
わたしたちは、
1.地域の農業を振興し、わが国の食と緑と水を守ろう。
1.環境・文化・福祉への貢献を通じて、安心して暮らせる豊かな地域社会を築こう。
1.JAへの積極的な参加と連帯によって、協同の成果を実現しよう。
1.自主・自立と民主的運営の基本に立ち、JAを健全に経営し信頼を高めよう。
1.協同の理念を学び実践を通じて、共に生きがいを追求しよう。
注
1) xxxx「共済事業に対する法規制の内容とその影響」協同組合研究29巻1号103頁(2010年・日本協同組合学会)参照。
2) xx x『間違いだらけのTPP』140頁(2011年・朝日新聞出版)及びxxxx『恐るべきTPPの正体』164頁(2011年・角川マーケティング)参照。
3) 農協法全体の整備という観点では、金融各業態の業法改正がすすめられるなか、2002年施行の農協法改正でJAの信用事業(JAバンク)に関する法制整備が行われていたことも、JA共済事業に関する法制整備が急がれた背景にあった。
4) 2005年の農協法改正の趣旨・内容について、xxxx「農協法の改正について」JA金融法務2004年9月号4頁(2004年・経済法令研究会)及びxxxx「共済事業に関する農協法改正の概要について」共済と保険2004年7月号26頁(2004年・共済保険研究会)参照。
5) 改正農協法案の採決が行われた2004年4月8日の衆議院本会議において、民主党のxxxx議員が「そもそも、これだけ保険業法の規定の趣旨を導入するのであれば、380兆円の規模を誇る共済事業の監督自体を金融庁に委ねるべきと考えますが、……お答えください」と質問したのに対し、xxxx農林水産大臣は「農協の共済事業は保険とは異なり、相互扶助の理念の下で組合員を対象として行われるものであり、今回の改正においても、その性格は何ら変わることがないことから、従前どおりとしているところであります」と答弁し、xxxx金融担当大臣は「農業協同組合の行う共済事業につきましては、農業協同組合法の規定に基づき、相互扶助の理念の下で、農家組合員を対象として、主務官庁の適切な監督を受けて行われております。したがいまして、農水大臣の答弁にもありましたように、現行制度の趣旨を踏まえれば、今回の改正によって、直ちにこうした共済事業を監督するといった必要が生ずるわけではないと考えている次第でございます」と答弁した。
6) 2005年の農協法改正による共済事業に関する規定の整備を単に「保険との同質化」と捉えるのは表面的・一面的であろう。協同組合共済として事業を存続させたことをはじめとして、事業の健全性や組合員保護の拡充が組合員の利益に適い、事業に対する安心感や信頼をもたらす面もあること、保険と同一の監督を求める国内外からの圧力・攻撃に対する防御としての意義もあること、全国の各JAに対しては必要な規制に限られていることなどを含めて、それぞれの規制の内容・適否を踏まえて評価されるべきである。
7) それまで実際に行われたJAの破綻処理においては、他のJAによる吸収合併、他のJAへの事業譲渡、他のJAへの共済契約の移転といった自主的手続によって共済契約の継続と共済金等の全額支払いは保障されており、ここで述べたような事態ないし紛争が現実化したことはなかった。
8) 組合員保護を徹底するために、すでにJAとの間に
締結されていた共済契約についても、JAと全共連が共同で締結する方式に改めた。
9) 共同元受制度の趣旨・内容について、xxxx「JA共済の共同元受について」共済と保険2008年5月号16頁
(2008年・共済保険研究会)参照。
10) 事業実施方法の変更前は「JAは、(元受)共済契約により負う共済責任のすべてを全共連の再共済に付す」という形をとっていたが、共同元受方式においては「共済約款における共済金等の支払債務はJAと全共連が連帯して負うと定め、その負担割合は、JA:全共連=0:100とする」という形をとっている。
11) 旧商法の改正の必要性と主な改正点については、保険法案の国会審議の際に法務省が作成した資料に準拠して記述した。
12) 日本共済協会としての保険法に対する評価について、xx x「保険法と共済との関係」xxxx・xxxx編『別冊金融・商事判例 新しい保険法の理論と実務』60頁(2008年・経済法令研究会)参照。
13) 保険法第2条第1号は「保険契約、共済契約その他いかなる名称であるかを問わず、当事者の一方が……財産上の給付……を行うことを約し、相手方が……保険料(共済掛金を含む。……)を支払うことを約する契約」(傍線筆者)と規定している。
14) 2008年4月25日衆議院法務委員会における「保険法案及び保険法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案に対する附帯決議」においては、政府及び関係者が格段の配慮をすべき点の1つとして「本法が、保険契約、共済契約等の契約に関する規律を定める法であって、組織法や監督法の一元化を図るものではないことを確認すること」が謳われている。同年5月29日参議院法務委員会においても、ほぼ同一の文言による附帯決議が行われた。
15) 共済約款の文章表現と仕様の改善の具体的内容について、xxxx「JA共済における共済約款のxx化と今後の展望」共済総研レポート113号10頁(2011年・農協共済総合研究所)参照。
16) JA共済においては、2010年4月の保険法施行と同時に実施した仕組改訂において、医療保障分野における既存の「医療共済」、「定期医療共済」、「健康祝金支払特則付定期医療共済」「、全入院特約」及び「通院特約」を新たな「医療共済」に一本化するとともに、他の共済種類による保障と重複する「死亡給付金」を廃止するなど、保障内容を簡素化した。
17) 代表的な例として、共済約款とともに共済契約者に配付する「ご契約のxxx」の全面的な見直しや、普及推進の際の仕組みの説明に用いられる「保障設計書」の改善に取り組んでいる。
18) 資産の安定運用のニーズに対応する仕組みとして、
「一時払生存型養老生命共済」と「積立型終身共済」の提供に取り組んでいる。仕組みの内容については、 JA共済ホームページ参照。
19)「総合事業を通じて各世帯の生産とくらしの状況を把握した組合の担当者が、長期にわたり、組合員の立場に立って、ライフステージの進展(例えば、次世代へ
の経営委譲)に合わせて最新・最適の保障を提案する」という共済事業のすすめ方は、長期にわたる契約期間中に保障の意義・効果が変化して、加入時と共済金受取時の評価・満足度に大きな質的な違いのある共済の性格に適したものであるだけでなく、共済契約の内容に関する知識・情報・交渉力の格差を継続的に埋める効果も有しており、組合員の希望・利益に沿うものである。近年、加入先や保障内容の選択に関して、「家計のリストラ」などと称して、加入時の保険料・掛金の安さだけで判断することが合理的であるかのような“節約志向”の内容の書物や報道に触れることが増えたが、保障設計を、あたかも一過性の消費財の購入のように “目先の損得”だけで判断するよう消費者を誘導することが、共済・保険の性格や役割に適したアプローチであるとは考えにくい。
20) 全共連が2010年にとりまとめた「JA共済きずなストーリー」のなかでは、組合員が、共済加入や共済金の受取りに際して、保障や共済金を残してくれた(残していく)家族とのつながり、必要な保障を提案し、事故の際に窮地から救ってくれたJA職員とのつながり、受け取った共済金の原資を拠出してくれた全国の組合員とのつながりを感じた様子が表現されている。
21) JAの実施している「建物更生共済」は、最長30年にわたる保障期間を設定することができ、1,100万件を超える保有契約を持つ主力の共済種類である。1961年に自然災害保障を開始して以来、地震・津波・噴火、風・雹・雪害、水害のすべてに対する保障を、加入したすべての組合員に提供するなど、損保の火災保険・地震保険とは異なった開発思想に基づく協同組合の保障制度として独自の発展を遂げた建物更生共済は、自然災害で被災した組合員の生活・営農の再建に大きな役割を果たしてきた。自然災害の被災者の財産的損害に対する国・自治体の救済制度が極めて限定的であるのに対し、JAの建物更生共済をはじめとする各種協同組合の共済制度と損害保険という民間の2つの保障制度が並立する形で被災者の生活再建の柱となっているのが、現在のわが国の姿であり、JAの建物更生共済がその先導役を果たし、今回の震災に対しても6,600億円を超える共済金を支払い(9月7日時点)、1事業体としては最大規模の貢献をなし得ていることは、銘記に値しよう。
22) こうした試みの1つとして、JA共済では、2010年から、共済契約者に配付する「ご契約のxxx」の表紙の裏面に「JA共済の事業理念」の解説を掲載している。
23) 国際協同組合年全国実行委員会では、協同組合発展のための基本的な理念・原則・行動指針を簡潔に示すことによって、協同組合運動に対する社会と政府の認識を高めるとともに、法制度を整備・充実させるための指針となる「協同組合憲章」の策定に取り組んでいる。xxxx「共済団体の結集力」共済と保険2011年
6月号6頁参照。
24) 共的セクター、協同組合及びJAの現状とあり方を論じたものとして、xxxx『いまJAの存在価値を
考える』(2010年・家の光協会)及びxxxx『協同組合の時代と農協の役割』(2010年・家の光協会)参照。
25) この点を指摘したものとして、xx x「ありがとうの社会目指して」日本農業新聞2011年4月6日~6月29日連載参照。
26) 東京大学のxxxx名誉教授は、現代を「明治の法典編纂期、第二次大戦後の法律改正期に次ぐ第三の法制改革期とも呼ぶべきもの」と位置付けている。保険法の施行後も、JA共済に関連の深い法制整備として、 2010年10月に金融ADR(裁判外紛争解決)制度がスタートし、また、民法(債権法)の大幅な改正が検討されている。xx x『債権法の新時代』17頁(2009年・商事法務)参照。
27) 被災地で生活してきた人々の思いを無視した「これを機に創造的復興」という発想・主張の背景に市場原理主義があり、そうした考え方とTPP推進が結びついていることを指摘したものとして、xxxx「「創造的復興」の背景には市場原理主義」2011年6月30日付農業協同組合新聞9面及びxxxx・xxxx『震災復興とTPPを語る 再生のための対案』23頁(2011年・筑波書房)参照。