愛 知 県 E S C O 事 業導 入 マ ニ ュ ア ル
愛 知 県 E S C O 事 業導 入 マ ニ ュ ア ル
愛知県環境部
1.目的 | …………………………… | P.1 |
2.ESCO 事業とは | …………………………… | P.2 |
3.ESCO 事業の契約方式 | …………………………… | P.5 |
4.ESCO 事業と一般的な改修工事の違い | …………………………… | P.8 |
5.ESCO 事業に至るまで | …………………………… | P.10 |
6.施設の分類による契約方式 | …………………………… | P.17 |
7.施設の分類による省エネルギー手法 | …………………………… | P.19 |
8.事業実施スキーム | …………………………… | P.25 |
9.PFI 制度について | …………………………… | P.27 |
10.適用可能な補助金について | …………………………… | P.28 |
11.法的な解釈 | …………………………… | P.33 |
12.事業におけるリスクとその分担 | …………………………… | P.41 |
愛知県では、京都議定書発効に先立つ 2005 年 1 月に「あいち地球温暖化防止戦略」(愛知県地球温暖化対策地域推進計画)を策定し、様々な対策を積極的に推進しているところです。
戦略では「脱温暖化社会・持続可能な社会の構築」に向けて、地域において、特に重点的に取り組む25の施策・事業を「重点施策」として示しており、家庭部門、運輸部門と並び、二酸化炭素の排出量が大幅に増加している業務部門について、「E SCO 事業の展開」を重点施策の1つとして掲げて推進しています。
ESCO 事業は、専門事業者が設計から施工、運転、維持管理、計測・検証等のサービスを一括して請け負うという、まだ新しいビジネスモデルです。また、省エネルギー改修に要した費用は、改修により実現する経費削減分で賄われるため、新たな負担を必要としないという特徴があります。
本マニュアルは、今後の ESCO 事業の展開のため、ESCO 事業への理解を深めていただくとともに、実務上の手続きの参考としていただくために作成するものです。地方公共団体(以下「自治体」という。)の事例を中心に記載していますが、自治体はもとより、民間事業者にも活用していただければ幸いです。
なお、本マニュアルは、ESCO 事業の展開を推進するためのものであり、各実施団体が関連法令等に従って、各々の状況に応じた工夫による ESCO 事業の実施を妨げるものではありません。
ESCO(Energy Service Company) 事業は省エネルギー診断、設計・施工、運転・維持管理、資金調達等の工事に係る全てのサービス(包括的サービス)を提供する事業です。また、省エネルギーの保証
(顧客の利益保証)を含む契約形態(パフォーマンス契約)をとることにより、顧客の利益の最大化を図ることができるという特徴を持っています。
ESCO 事業の主な特徴は以下のとおりです。
(1) 省エネルギー効果を ESCO 事業者が保証
(2) 包括的サービスの提供
(3) 省エネルギー効果の検証の徹底
(4) 新たな財政負担を必要としない (シェアード・セイビングス契約の場合)
(資源エネルギー庁/これなら分かる ESCO 事業より)
図 2-1 ESCO 事業イメージ
2.1 省エネルギー効果の保証
ESCO 事業では、事業導入による省エネルギー効果を ESCO 事業者が保証することで、顧客の利益を保証します。万が一、省エネルギー効果が発揮できず、顧客が損失を被るような場合には、これを ESCO 事業者が補填します。
省エネルギー効果を保証するということは、従来の光熱水費以上の財政負担が発生しないことを ESCO 事業者が保証するということです。このような出来高契約は、一般的にパフォーマンス契約と呼ばれ、ESCO 事業の中でも非常に重要な要素になっています。
顧客の利益保証を行うことにより、計画・設計段階から施工、運転・維持管理に至る全ての工程に対して ESCO 事業者が責任を持って当たることになり、ESCO 事業者にとっては、省エネルギー効果の最大化を図る動機付けとなっています。
削減分で全経費を賄う
保証
パフォーマンス契約
事業収支の明確化
省エネ対策の
包括的検討
計測検証の徹底 包括的な提案
省エネ効果
の長期継続
運転管理の徹底
資金調達・運転管理方法 財務内容検討
の提案
新たな融資環境の整備
(省エネルギーセンター/自治体における ESCO 事業普及に関する調査報告書より)
図 2-2 ESCO 事業のコンセプトとパフォーマンス契約
2.2 包括的サービスの提供
ESCO 事業者は、省エネルギー診断に基づく改修計画を立案した後、施工、運転・維持管理に関し ても一括して責任を持ちます。これは顧客の利益保証を行う際に欠くことのできない条件となります。さらに、資金調達や、事業収支計算等、財務面の計画も行い、このような一括したサービスはワン・ストップ・サービス※と呼ばれています。
※ One stop services:スーパーマーケットのように1店で全ての用が間に合う店を One stop shopping という。これと同様に省エネルギー改修に係わる全てのサービスを提供すること。
2.3 省エネルギー効果の計測・検証
省エネルギー改修後の省エネルギー効果を把握する作業を、計測・検証(Measurement and Verification あるいは Monitoring and Verification: M&V)といいます。計測・検証手法は、導入される省エネルギー技術毎に、短・長期計測、統計解析、またはシミュレーションによる手法が適用され、 ESCO 事業者がパフォーマンス契約に基づく顧客の利益保証を行う際に、省エネルギー改修の効果を適正に評価するために導入されています。また、計測・検証を行わない通常の改修工事においては、改修後、期待される省エネルギー効果が低下していくことが指摘されていますが、計測・検証を行う
ESCO 事業の場合は、定期的に設備の稼働状況や省エネルギー効果の確認を行うため、期待される省エネルギー効果を持続させることが可能となります。
2.4 新たな財政負担を必要としない(シェアード・セイビングス契約の場合)
ESCO 事業をシェアード・セイビングス契約で実施する場合は、省エネルギー改修に係る全ての経費(建設費、金利、ESCO 事業者の経費)を省エネルギー改修で 実現する経費削減分で賄うことを基本としています。この中には顧客の利益も含まれ、省エネルギー改修工事により顧客が損失を被ることはないよう、事業採算性が重視されています。さらに、契約期間終了後の光熱水費の削減分は全て顧客の利益になります。
このようにシェアード・セイビングス契約の ESCO 事業は光熱水費、場合によってはエネルギー維持管理費の削減分で全ての改修経費を賄うことから、新たな財政支出を必要としないで、省エネルギーを推進し、温室効果ガスの排出量削減を実現することができる事業です。
ESCO 事業には、ESCO 事業者が省エネ改修の設備投資を行うシェアード・セイビングス契約と、顧客が省エネ改修の設備投資を行うギャランティード・セイビングス契約の 2 種類があります。
3.1 シェアード・セイビングス契約 (民間資金活用型)
シェアード・セイビングス契約は ESCO 事業者側が省エネ改修の設備投資を行う契約方式です。
ESCO 事業者が金融機関からの借り入れ等をして資金調達を行うため、顧客は一切の金融負担を負わないことになります。
ス料
シェアード・セイビングス契約の場合、ESCO 事業者が顧客に対して省エネルギー改修による光熱水費の削減を保証し、顧客は実現する光熱水費の削減分から一定割合を、初期投資分を含む ESCO サービスに対する報酬として ESCO 事業者に支払います。
事業者資金 | 初期投資 | ||||||||
ベースライン | 光熱水費支出 | 光熱水費支出 | 削減保証 | 顧客のメリット | 顧客のメリット | ||||
サービ | 返 | 金利 | |||||||
済分 | 初期投資 | ||||||||
ESCO の経費 | |||||||||
光熱水費支出 | 光熱水費支出 |
ESCO 事業実施前
契約初年度
(工事)
ESCO 事業実施後
(契約期間中)
契約期間終了後
図 3-1 シェアード・セイビングス契約の経費と利益配分
◆ ESCO 事業者が導入した施設のメンテナンス費は、サービス料に含みます。
◆ サービス料による事業費償還期間が ESCO 契約期間となります。
◆ サービス料が光熱水費削減分より安価な場合のみ事業が成立します。
3.2 ギャランティード・セイビングス契約(自己資金型)
ギャランティード・セイビングス契約は顧客側が省エネ改修の設備投資を行う契約方式です。 実際の省エネルギー改修に係る初期投資は顧客が行うが、E SCO 事業者が顧客に対して省エネルギ
ービス料
ー改修による光熱水費の削減を保証するため、光熱水費の削減分を原資としての回収が図れます。
自己資金 | 初期投資 | |||||||
ベースライン | 光熱水費支出 | 光熱水費支出 | 削減保証 | 顧客のメリット | 顧客のメリット | |||
返済分 | 金利 | |||||||
初期投資 | ||||||||
サ | ||||||||
ESCO の経費 | ||||||||
光熱水費支出 | 光熱水費支出 |
ESCO 事業実施前
契約初年度
(工事)
ESCO 事業実施後
(契約期間中)
契約期間終了後
図 3-2 ギャランティード・セイビングス契約の経費と利益配分
◆ 自己資金調達が可能な顧客のみが対象となります。
◆ 契約期間中のサービス料は、基本的に省エネ効果の検証費用及び ESCO 事業者の経費のみとなります。
◆ 省エネ検証期間が ESCO 契約期間となります。
3.3 契約方式の比較
シェアード・セイビングス契約とギャランティード・セイビングス契約の契約方式の比較を表 3-1
にまとめます。
表 3-1 ESCO 契約方式の比較
項 | 目 | シェアード・セイビングス契約 | ギャランティード・セイビングス契約 | |
概 | 要 | ESCO 事業者が事業資金を調達する方式です。したがって、ESCO 事業者は顧客から支払われるサービス料から、設備導入費用を回収します。 | 顧客が事業資金を調達する方式です。したがって、顧客は設備導入について初期投資を必要とします。 | |
資金調達者 ・設備所有者 | ESCO 事業者 | 顧 | 客 | |
サービス料に含まれる費目 | 設備導入費用、検証費用 メンテナンス費、金利、固定資産税、諸経費 | 検証費用、諸経費 | ||
資金フロー (財団法人省 エネルギーセ ン ター / ESCO事業のススメ より) | ●シェアード・セイビンス契約の資金フロー ESCO パフォーマンス契約 返済 支払い 融資 顧客 金融機関 | ●ギャランティード・セイビンス契約の資金フロー ESCO パフォーマンス契約 支払い 融資 顧客 金融機関 返済 | ||
利 | 点 | ・ 一括契約により、ESCO 事業者が包括的なサービスを提供します。 ・ 省エネ効果をESCO 事業者が保証します。 ・ 専門家による最適な省エネが実現できます。 ・ 検証により定量的な省エネ効果が把握でき、また省エネ意識向上にもつながります。 ・ 契約終了後は、省エネ効果はすべて顧客の取り分となります。 | ||
・ 顧客の初期投資が不要で、顧客は金融上のリスクを一切負いません。 ・ 省エネルギー設備のオフバランス化(資産の外部化)が図れます。 | ・ シェアード・セイビングス契約に比べ、契約が単純となります。 ・ 省エネルギー設備は、自己資産となります。 ・ シェアード・セイビングス契約に比べ、契約期間が短く、総事業費は安くなります。 | |||
問 題 点 | ・ 気象変動やエネルギー単価変動等の不可抗力的なリスクの分担が必要です。 ・ 省エネ設備使用について制約条件(空調温度・運転時間、照明点灯時間等)が発生します。 | |||
・ 長期債務負担行為が必要となります。 ・ 顧客と ESCO 事業者との資産区分が複雑化します。 ・ 事業が成立するためには、短期間での投資回収が条件となります。 ・ ギャランティード・セイビングス契約に比 べ、契約期間が長くなり、総事業費は高くなります。 | ・ 初期投資が必要となります。 ・ 導入設備の維持管理を顧客が行う必要があります。 |
省エネ設備の導入を、ESCO 事業で実施した場合と一般的な改修工事として実施した場合の違いについて、実施フロー、資金、省エネ効果の観点から整理します。
4.1 実施フロー
ー
ー
ESCO 事業と一般的な改修工事との実施フローの比較を図 4-1 に示します。2つを比較して大きく異なるのは、一般的な省エネ改修事業が設計、工事および運転についてそれぞれ契約するのに対し、 ESCO 事業では、一括契約によるトータルサービス提供により、省エネ効果を検証・保証できる点です。
ESCO事業による包括的なサービス
予備診断
保エ
省
設計契約
既設設備調査
証ネ
詳細エネルギー診断
を ル
省
考ギ
慮
設計・見積り
保エ
個別契約
証ネ
のル
実施計画書の立案
な 果
し 効
合ギ
意効果
いの
契約
ESCOサービス契約
管工理事
一括契約
改修工事
工事業者まかせ
工事契約
改修工事
個別契約
省 エ 確ネ認ル
・ ギ保 証効
果の
省エネルギー効果の計測・検証
設備の運転管理保守・点検
を 省確エ認ネし ルな ギい
効果
運転
設備の運転
個別契約
個別契約
一括契約
一般的な省エネルギー改修工事
E S C O 事 業
ー
ー
(財団法人 省エネルギーセンター/ESCO 事業のススメより)
図 4-1 ESCO 事業と一般的な改修工事との実施フローの比較
4.2 資金面と省エネ効果
ESCO 事業と一般的な改修工事との資金面と省エネ効果の比較を表 4-1 に示します。以下の場合に ESCO 事業を導入した方が有利であると考えられます。
◆ 大規模な省エネ改修工事が必要だが、初期投資費用の調達が難しい。
◆ 顧客側に省エネの専門技術者がいない。
◆ 省エネ保証を含んだトータルサービスを享受したい。
表 4-1 ESCO 事業と一般的な改修工事との資金面と省エネ効果の比較
項 目 | ESCO 事業 | 一般的な改修工事 | |
資金面 | メリット | ・ 顧客の初期投資を不要とすることができる。 ・ 一括発注によるトータル的な コスト削減が期待できる。 | ・ ESCO 事業者への経費を支払う必要がない。 |
デメリット | ・ 設備投資費に加えESCO事業としての経費(ESCO 事業者の利益、計測・検証、メンテナンスコストなど)を事業者に支 払う必要がある。 | ・ 分離発注方式により、一括発注に比べ、トータル的なコスト削減が期待できない。 | |
省エネ効果 | メリット | ・ 一括したサービスの享受により、ESCO 事業者のトータル的な省エネ設備の導入が可能となることから、省エネ効果が高い。 ・ 全ての段階において、ESCO 事業者の責任で省xxが実施されるとともに、改修後の省エ ネ効果が保証される。 | ・ ESCO 事業が成立しにくい改修事業において、省エネが実現できる。 |
デメリット | ・ 省エネ効果が小さい事業では、事業が成立しにくい。 | ・ 設計、工事、運転の各段階での請負者が異なるため、改修による総合的な省エネ効果に ついて顧客が責任を負う。 |
ESCO 事業を導入する際の実務フローとその概要について示します。
5.1 ESCO 事業までの実務フロー
1.事業化の決定(11ページ参照)
ESCO導入可能性調査
■省エネ診断やESCO導入可能性調査を実施する。
NO 実施決定
YES
■調査結果に基づき実施の判断を下す。
実施体制の確立
2.公募準備(12ページ参照)
中 止
公募資料等の作成
■庁内組織推進体制
■委員会・検討会等の発足
■募集要項、審査基準、契約書素案等の作成
3.事業の予算化・ESCO事業者選定(13ページ参照)
事業提案・審査
■ESCO事業者公募
NO ■ESCO事業者による提案
■最優秀提案者の決定(交渉優先順位の決定)
優秀提案者と次の協議を開始
YES
詳細診断・設計協議
■最優秀提案者との協議開始
■ベースライン、サービス料等の再精査
■補助金が交付された場合と交付されない場合を想定する。
■補助金が交付されない場合の取決めについても合意する。
NO
合 意
YES
NO 予算化・議会承認 YES
■自治体とESCO事業者が事業実施について合意する。
■合意に至らない場合は、次の優秀提案者との協議に移行する。
■債務負担行為の設定
4.補助金(15ページ参照)
補助金申請
■最新の交付要件を把握し、可能性があれば申請する。 (「10.適用可能な補助金について」を参照)
交付決定
5.ESCO事業契約(16ページ参照)
契約書作成
x 約
6.現場施工(16ページ参照)
x x
■施工終了後、省エネ検証
7.ESCOサービス開始(16ページ参照)
ESCOサービス開始
■省エネ保証サービス享受
■サービス料支払い開始
図 5-1 ESCO 事業実務フロー
5.2 事業化スケジュール
事業化のスケジュールは、以下の2つのケースが想定されるが、どちらのケースも議会の承認や補助金申請などの時期に配慮する必要があります。
①最優秀提案により事業費を設定する場合
募集 | 7 月 |
提案 | 9 月 |
事業者選定 | 9 月 |
議会承認 | 2 月 |
補助金申請 | 5 月(翌年度) |
補助金交付決定 | 8 月(翌年度) |
ESCO 契約締結 | 9 月(翌年度) |
工事期間 | 9 月~3 月(翌年度) |
ESCO サービス期間 | 4 月~(翌々年度) |
②事業費の上限を予め設定する場合
募集 | 1 月 |
議会承認 | 2 月 |
提案 | 3 月 |
事業者選定 | 3 月末 |
補助金申請 | 5 月(翌年度) |
補助金交付決定 | 8 月(翌年度) |
ESCO 契約締結 | 9 月(翌年度) |
工事期間 | 9 月~3 月(翌年度) |
ESCO サービス期間 | 4 月~(翌々年度) |
5.3 実施手順 1)事業化の決定
予め ESCO 事業の可能性を調査し、この結果に基づき、顧客が事業化を決定します。
⚫ 自治体は保有施設が多いため、全ての施設に対して現地調査を伴う省エネルギー診断をするのは現実的ではありません。施設の規模や用途、エネルギー消費量などを参考に省エネルギー効果が大きいと考えられる施設を予め絞り込み、簡易の省エネルギー診断を行うのが一般的です。その結果充分な効果が見込めると判断される場合は、当該施設を ESCO 事業導入の対象施設として以降の手続きを進めます。
⚫ 簡易の省エネルギー診断は、無料の省エネルギー診断サービス(省エネルギーセンター)、自主財源による調査、国の補助事業による調査(NEDO)があります。(表 5-1)
⚫ 省エネルギー診断の結果に基づき、事業収支計画の試算を行います。
表 5-1 省エネルギー診断の実施方法と比較
項目 | 省エネルギー診断サービス (省エネルギーセンター) | 自主財源による調査 | 国の補助事業による調査 (NEDO※1) |
メリット | ■ 無料で実施可能 ■ ソフト面(管理運用)でのアドバイスが充実 | ■ 一度に多くの施設を診断可能 ■ ESCO 事業収支計算まで委託可能 | ■ 無料で実施可能※2 ■ 一度に多くの施設を診断可能 ■ ESCO 事業収支計算まで委託可能 ■ 有識者による委員会 (設置は必須)からア ドバイスを受ける。 |
デメリット | ■ 必ずしも省エネルギー改修工事を前提としたアドバイスではない。 ■ 一度に多くの施設を診断できない(年間数施設程度) ■ ESCO 事業収支計算は 行わない | ■ 調査費用を捻出する必要がある | ■ 補助事業の申請が採択されないと実施できない恐れがある。 |
※1 NEDO:独立行政法人 エネルギー・産業技術総合開発機構の略。
※2 予め、自主財源にて調査事業を予算化しておく必要がある。(立替払いしておき、事業終了後に補助金を受領)
(一部、省エネルギーセンター/ESCO 事業のてびき(自治体向け)を整理)
2)公募準備
⚫ 事業方針検討や ESCO 事業者の選定等を目的とした委員会を設立します。委員会は学識経験者、施設所轄部署及び営繕関係部署等による構成とします。
⚫ 公募における提示条件(表 5-2)を整理します。
⚫ 募集要項、審査基準及び契約書案等の作成をします。
表 5-2 公募における主な提示条件
■ 工事完成時期、試運転調整時期、ESCO 事業サービス提供時期
■ 事業の遂行に関する留意事項
■ 事業資金計画に関する官民費用負担の考え方
■ 法制上及び税制上の措置、ならびに財政上及び金融上の支援・優遇策
■ ESCO 提案の作成に必要な施設概略データ
■ ベースラインや光熱水費削減保証額の設定に関する条件
■ ESCO サービス料の支払いに関する条件
■ 運転及び維持管理に関する条件
■ 計測・検証に関する条件
■ ESCO 事業実施に関わる予算化がされなかった場合の措置(例えば、補助金獲得を前提にした事業計画で、補助金を獲得できなかった場合)
■ その他、包括的エネルギー管理計画書の位置づけ、契約条件など
3)事業の予算化
(省エネルギーセンター/自治体における ESCO 事業普及に関する調査報告書より)
ESCO 事業実施に係る予算措置を講じます。
⚫ 光熱水費は、「歳出予算に係る節の区分」では「需用費」に該当しますが、省エネルギーサービスに対する対価である省エネルギーサービス料は一般的に「委託料」として扱われており、節が異なることになり、予算要求が必要になります。
⚫ ESCO 事業では、長期間継続して契約することを保証する必要があります。そこで、長期契約を
結ぶための「債務負担行為」を設定する必要があります。
⚫ 予算措置には、試算結果に基づき事業費の上限額を予め設定する方法と、公募に係る事務費のみを予算化し最優秀 ESCO 事業者の提案に基づく金額により事業費を設定する方法が考えられます。 (表 5-3)
表 5-3 予算化の手続き方法と比較
項目 | 最優秀提案により事業費を設定する方法 | 事業費の上限額を予め設定する方法 |
概要 | 初年度の予算は提案公募にかかる自治体内部の事務費のみを予算化しておき、提案公募を実施した後、最優秀提案の金額によって事業費の予算を 決定する方法 | 調査での事業収支計画等により、事業規模や契約期間の目安を決定し予算要求を行い、その金額を上限額とし、提案公募を実施する方法 |
メリット | ■ 最も優れた提案を実施可能 | ■ 自治体が実施するほかの事業と同 じ手順であり、事務処理が容易 |
デメリット | ■ 自治体が実施するほかの事業と異 なる手順であり、事務処理に調整が必要 | ■ 省エネ効果の高い提案内容であっ ても、設定した上限額より高い提案については採用ができない |
(省エネルギーセンター/ESCO 事業のてびき(自治体向け)を整理)
4)ESCO 事業者選定
①事業提案・審査
⚫ 記者発表やホームページ等で事業者公募を公表します。(公告)
⚫ 参加表明書及び資格確認書類を受け付けます。この書類に基づいて、公募参加企業の信頼性(財務力、技術力)を担保するための予備審査を実施します。
⚫ 予備審査を通過した事業者に対し、ESCO 事業者の提案に必要な施設データ等の配布や、現場ウォークスルー調査予定の調整等の段取りを行います。(現場ウォークスルー前に、施設データを配布して事前の検討時間を設けるほうが望ましい)
⚫ 現場ウォークスルー調査を実施します。事業者からの質問に回答するために、施設の稼動状況(各
部屋の使われ方、稼動状況)、設備の運転状況(運転時間や制御設定)等が分かる施設担当者を配置します。
⚫ 現場ウォークスルー調査実施後、ESCO 事業者の提案に要する検討期間を 2 ヶ月程度考慮します。
⚫ ESCO 事業者の提案を、委員会にて審査します。必要であれば、事業者から提案内容についてのヒアリングを実施します。
⚫ 最優秀提案者を選定します。また、必要であれば次の交渉相手先として優秀提案者も選定します。
表 5-4 公募における留意事項
■ 応募資格要件を整理し、事業者の信頼性を確保します。
■ 事業者からの提案の審査は、順位付けが可能な方法で行い、最優秀提案者との交渉が決裂した場合でも、次点の提案者と交渉可能としておきます。
■ 詳細診断以降は、最優秀提案者の提案内容の範囲内で実施します。(コンプライアンス遵守のため、不採用になった事業者の提案内容を付加しない。)
■ 審査方法については出来るだけあらかじめ開示しておき、顧客の意向に沿
った提案がなされるようにします。
②詳細診断・設計協議
⚫ 最優秀提案者に、詳細診断、設計及び包括的エネルギー管理計画書の作成を実施させます。これらに基づき、顧客と ESCO 事業者間で契約のための協議を行います。
⚫ 詳細診断の結果に基づき、包括エネルギー計画書を作成します。包括エネルギー計画書が ESCO
事業提案書の内容と大きく乖離する場合には、優秀提案者と次の交渉を開始します。
⚫ 最優秀提案者との交渉が決裂した場合には、優秀提案者と次の交渉を開始します。
表 5-5 包括エネルギー計画書の内容
■ 設計・施工に関する事項
設計、施工に関する技術提案書を作成します。
■ ベースライン、削減保証額の設定
過去 3 年程度のエネルギー消費及び料金データ等から、省エネルギー改修計画の基礎となるベースラインを設定します。
■ 運転及び維持管理に関する事項
最適な運転管理指針(案)を作成します。
また、定期点検計画書を提出し、計画に基づいて定期点検を実施し、報告する体制を確立します。
■ 計測検証に関する事項
光熱費が削減されていることを計測・検証するための手法を予め提示し、契約期間中は計測検証結果を顧客に報告します。
5)補助金
省エネルギー量や CO2 削減量が大きい事業の場合には、補助金を獲得できる可能性が有る。事業性の向上(契約期間の短縮等)を図るためにも補助金獲得について検討することが望ましい。補助金の申請を行う場合は通常、申請は 5 月頃のため、事業スケジュールを調整する必要がある。(補助金の詳
細は第 10 章参照)
表 5-6 自治体が利用可能な補助事業の方式別適用
所轄 | 事業名称 | S | G | 一般 |
NEDO | エネルギー使用合理化事業者支援事業 | ○ | ○ | ○ |
住宅・建築物高効率エネルギーシステム導入促進事業(BEMS※導入支援事業) | ○ | ○ | ○ | |
住宅・建築物高効率エネルギーシステム導入促進事業(建築物に係るもの) | ○ | ○ | ○ | |
エネルギー供給事業者主導型総合省エネルギー連携推進事業(建築物に係るもの) | ○ | ○ | ○ | |
環境省 | 対策技術率先導入事業 | × | ○ | ○ |
備考) S : シェアード・セイビングス契約、G : ギャランティード・セイビングス契約、一般 : 一般の省エネ改修
※BEMS:ビルエネルギーマネジメントシステムの略で、室内環境・エネルギー使用状況を把握し、かつ室内環境に応じた機器または設備の運転管理によりエネルギー消費量の削減を図るシステムのこと
6)ESCO 事業契約
ESCO 事業は複数年にわたる契約となることが一般的であり、事業環境の変化等を勘案した契約を結ぶ必要があります。
⚫ ESCO 事業に関わるリスクを協議します。維持管理、計測・検証、保証関連の各段階において想
定されるリスク項目を洗い出し、それぞれの責任分担のあり方を検討し、明確化しておくことが求められます。(リスク分担例は第 12 章参照)
⚫ 必要な保険を検討します。事業者から必要と考えられる保険を提案し、保険料のコストとリスク
回避のメリットを評価します。
⚫ ESCO 事業者と顧客で契約書を作成し、契約を行います。
7)現場施工
以下の項目の遵守を条件に、ESCO 事業者に現場施工を許可します。
⚫ 施設の運営について最大限影響を与えないよう協力するとともに、影響を及ぼす事項については事前に関係者との調整を行うこと。
⚫ 工事中及び工事終了後の騒音・排ガス等について、該当区域の規制を遵守すること。
⚫ 施設利用者、近隣住民、職員及び作業員の安全を確保すること。
⚫ その他必要な事項は顧客の指示に従うこと。
8)ESCO サービスの開始
⚫ 現場施工完了後、計測・検証を実施し、所定の省エネルギーが確保できることを確認します。
⚫ 改修により施設運営、安全性等に影響がないことを確認します。
⚫ 上記の確認をもって ESCO サービスの開始とし、契約に基づくサービス料の支払いを始めます。
第 2 章から第 4 章で説明した通り、E SCO 事業は省エネルギー設備を導入して、削減された光熱費 から投資を回収する事業形態であることから、投資対効果と施設の稼働率には密接な関係があります。
また、事業には計測検証やメンテナンス、保険料などの事業に関わる諸費用が固定費として含まれるため、一定規模以上の削減効果・施設規模が必要です。
自治体が有する施設を分類し、施設の特徴から見て、適する契約方式の一般的な傾向を表 6-1 に示します。
①シェアード・セイビングス契約に適する施設
シェアード・セービングス契約は、ESCO 事業者が初期投資及びxxの分割払いを完了するまで契約を結ぶために、比較的長期になります。また、事業費には契約期間中のメンテナンス費や計測検証の費用が必要となります。
そのため、シェアード・セイビングス契約では、ある程度規模が大きくかつ稼働率の高い施設において成立する可能性が高くなります。
病院・福祉施設や文化・展示施設は、施設の性格上高品質の空調や照明が必要なことが多く、一般的に省エネルギー設備を導入したときの効果が高いために、ESCO 事業の導入が期待できます。
庁舎や集会所、宿泊所等も施設の稼働率と規模によっては、シェアード・セイビングス契約が成立することもありますが、ESCO 事業の導入の見込みとしては小さいといえます。
工場施設は、稼働時間が長く施設規模が大きいことが多いために、一般的に省エネルギー設備を導入したときの効果が高く、シェアード・セイビングス契約が期待できます。但し、自治体の場合はメーカーが限定される場合があり、事業者の選定に注意が必要です。(工場はプラント部分のエネルギー消費の割合が高いために、プラント部分でのエネルギー削減が鍵となることが多いが、現メーカー以外は改修に伴うリスクを補償しにくい。)
②ギャランティード・セイビングス契約に適する施設
ギャランティード・セイビングス契約は、省エネルギーの効果が確認できる 5 年程度の短期契約になることが多く、シェアード・セイビングス契約に比べて事業経費の額が相対的に低くなる傾向にあります。
そのため、病院・福祉施設や文化・展示施設は、シェアード・セイビングス契約は難しい場合でもギャランティード・セイビングス契約では、可能な場合があります。
また、庁舎や集会所、宿泊所等は施設の稼働率と規模によっては、十分に ESCO 事業の導入の見込みが有ります。
③ESCO 事業に適さない施設
学校施設は、施設規模が大きいが、稼働率が低いことが多く、あまり ESCO 事業にはなじみません。また、研究施設も、庁舎と同じような稼働率で、施設規模がそれほど大きくないことが多いため、
あまり ESCO 事業にはなじみません。但し、学校施設・研究施設も施設の老朽化などに併せて省エネルギー改修を実施する方策が考えられます。
表 6-1 施設の分類による契約方式(参考)
施設分類 | 例 | 特 徴 | 契約方式 | ||
S | G | ||||
① | 庁舎 | 市役所、区役所等 | 主に事務室が多く、稼動日数、時間が一定です。暦通りに運用されることが多い。 | △ | ○ |
② | 庁舎(24 時間系) | 消防署、警察等 | 主に事務施設が多いが、365 日 24 時間通して使用される部分がある。 | △ | ○ |
③ | 病院・福祉施設 | 病院、 老人ホーム等 | 給湯や蒸気等の熱の消費があり、エネルギーの消費量が多い。24 時間通しての空調や、照明が有る。 | ○ | ○ |
④ | 集会所 | スポーツセンター、 市民xx | 集客スペース、貸しスペースが多く、稼動が人の集まるときに集中する。 | △ | ○ |
⑤ | 学校 | xx高等学校等 | 稼動日数、時間が短く全体的にエネルギーの消費が少ない。 | × | △ |
⑥ | 研究施設 | 検査所、試験場等 | 事務室でのエネルギー消費のほか、実験設備等でのエネルギー消費が一定量ある。 | × | △ |
⑦ | 宿泊施設 | 職員寮等 | 給湯等の熱の消費がある。昼間のほかに、夜間にもエネルギー消費のピークがあることが多い。 | △ | ○ |
⑧ | 文化・展示施設 | 美術館等 | 展示のために一定の稼動があり、かつ展示品、収蔵品等の管理上、高品質の空調が求められる。 | ○ | ○ |
⑨ | 工場 | 浄水場、 ク リ ー ン セ ンター等 | 工業プロセスのための設備が多く、エネルギー消費量の過半を占める事が多い。 事業化に向け特殊要素が多く、個別的対応の必 要性が高い。 | ○ | ○ |
⑩ | その他 | 倉庫等 | ①~⑨に適合しない施設。 稼働率の低い施設が多く ESCO 事業になじまないことが多い。 | × | × |
凡例 S…シェアード・セイビングス契約、G…ギャランティード・セイビングス契約
○…検討に値する △…導入出来る可能性がある ×…導入出来る可能性が少ない
7.1 一般的な省エネルギー手法
①蛍光灯の効率化
従来の照明器具より効率が高い HF 型というインバータ蛍光灯器具へ交換する(リニューアル)ことで、省エネを図る手法です。また、リニューアルに比べて安価な蛍光灯の安定器のみをインバータタイプに変更する方法もあります。
リニューアルした場合、安定器交換をした場合のどちらも器具単体で20%程度の省エネルギーが図れますが、リニューアルした場合は器具全体の交換になるために、コストが高くなります。しかし、蛍光灯の器具は20年~30年程度経過するとソケット部(蛍光管をはめ込む部分)や内部配線が劣化してくるので、リニューアルをしたほうがよい場合もあります。
②センサー制御
センサー(人感、昼光)を設置し、明るxx点灯時間を必要に応じて変化させることにより省エネを図る手法です。
人感センサーの場合、通常は消灯しており、人が接近したことをセンサーで感知して点灯し、その後、一定時間が経つとまた消灯します。必要時のみ、点灯することで省エネが図れます。通常、階段やトイレ、廊下などの共用部で用いられることが多いです。
昼光センサーの場合は、昼間などである程度明るさが確保されている場合には照度(明るさ)が低く、夕方になると照度(明るさ)を高くと周りの明るさに応じて照明の出力を制御します。必要な明るさに応じて、照明出力を変化させることにより省エネが図れます。外灯や事務室の窓際の照明などで用いられることが多いです。
センサー制御は、定量的に効果を算出することが難しいために、導入には十分な検討が必要となります。
③冷陰極管(非常用誘導灯)
従来の照明器具より効率が高い、省エネタイプの冷陰極ランプを利用した非常用誘導灯へ交換することで、省エネを図る手法です。
非常用誘導灯を高輝度タイプに交換することにより、器具単体で70~90%程度の省エネルギーが図れます。
ただし、器具の単価が高いために、投資回収は長期になる傾向があり、導入には注意が必要となります。また、消防法に基づいて設置される設備であるので、法との整合(設置場所と仕様)に注意が必要です。
④白熱灯の蛍光灯化
白熱灯を蛍光灯タイプの電球に交換することで省エネを図る手法です。
白熱灯を蛍光灯化することにより、器具単体で 70~90%程度の省エネルギーが図れます。 非常に導入効果が高いですが、現在白熱灯をまだ使用している場合には施設運営上の理由があ
ることが多いので、一概に取替えが可能とは言えません。例えば、美術館等では、絵の劣化損傷を防止するために、紫外線を出さない蛍光灯や白熱灯を利用しています。
⑤水銀灯の高効率化
水銀灯器具を効率が高い省エネタイプの器具へ交換することで省エネを図る手法です。水銀灯を高効率化することにより、器具単体で40~50%程度の省エネルギーが図れます。
高天井の部屋やスペースでは、水銀灯を使用していることが多く、導入の可能性があります。
⑥熱源更新(高効率化)
空調熱源を効率が高い最新の機種に取替えることで、エネルギー消費量を削減する手法です。熱源の更新は、既設の機器仕様と運転状況により効果の度合いが変わり、定量的に効果を算出
することが難しいために、導入には十分な検討が必要となります。
熱源の更新は、機器の導入コストが高いために、稼働率が高い施設、もしくは熱源がかなり老朽化していて最新の省エネ機器との効率差が大きい施設で、導入の可能性があるといえます。
⑦熱源搬送動力の効率化
空調にともなう熱源搬送用の動力(ポンプ、ファン等)について、高効率モータへの変更やインバータによるモータ回転数制御により、動力に関わる電気消費量を削減する手法です。
高効率モータを導入することにより機器単体で5~10%程度、インバータによるモータ回転数制御により機器単体で50~60%程度の省エネルギーが図れます。
特にインバータによるモータ回転数制御は、効果が高く、空調を利用している施設のほとんどで検討の価値があります。
⑧変風量制御(VAV)の導入
各室の供給ダクトにモーターダンパーを取付け、不使用時に給気をしないように自動制御設備を設置します。また、インバータを利用したファン回転数制御を行います。これにより、空調エリアの温度ムラが軽減でき、また、熱搬送動力の省エネが図れます。
⑨外気導入量制御
室内換気用の外気導入量を制限することで、冷暖房に必要な熱源用燃料を削減する手法です。通常、呼吸等の要因で二酸化炭素の濃度が上昇するのを防止するために、建物外の空気(外気) を絶えず取り入れて換気しています。竣工後の調整運転期間に外気導入量を調節していますが、
建設当初に比べ施設利用者数が大幅に減少し、必要な外気導入量が減少した場合には、その分だけ余計な空調負荷になっている恐れがあります。
在室人員に応じて、外気導入量を制御することにより、省エネルギーを図ることができます。
⑩女子トイレの擬音装置導入
女子トイレに擬音装置を取りつけることにより、これまでマスキングのために流していた水を削減する手法です。直接のCO2削減には繋がらないものの、投資費用が比較的安価なため、特に水道料単価が高い地域においては経済効果が高いとされています。
⑪コージェネレーションシステムの導入
ガス、灯油、重油等の燃料で発電機を運転することで電力を供給し、さらに発電機からの排熱で熱を供給する電熱併給システムです。
コージェネレーションシステムの導入のためには、発電機と廃熱回収装置を新たに設置する必要があるので、設置場所の確保が問題となる場合があります。また、機器の導入費用のみならず、導入後に定期的にオーバーホールするための費用が発生するので、検討に注意が必要です。
⑫BEMS の導入
業務用ビル等において、室内環境・エネルギー使用状況を把握し、かつ、室内環境に応じた機器又は設備等の運転管理によってエネルギー消費量の削減を図るためのシステムをBEMS(ビル管理システム:Building Energy Management System)といいます。BEMSは計測・計量装置、制御装置、監視装置、データ保存・分析・診断装置などで構成されます。BEMSの導入によって、運転の最適化と管理者に対する判断材料の提供が可能となり、室内環境を維持しつつ、より一層の省エネルギー化が図れ、さらにBEMSの普及啓発によって、xx部門におけるエネルギー原単位の管理意識を高める効果も期待できることから、N EDOではBEMS導入に対する補助事業も実施しています。
BEMSは各施設への導入のみならず、優れた拡張性により、各施設のデータをイントラネット等により配信することで、例えば市役所でのxx管理等も可能となります。
⑬地下水の利用
地下水が利用できる場所においては、安価の浄化システムの設備を導入することで、空調や散水等の飲料以外で利用することで上水道料金を削減することが可能です。
直接のCO2削減には繋がらないものの、水を大量に消費する施設においては、水道費の削減が図れるために検討の価値があります。
ただし、都市部では地下水の利用が制限されている場合があり、注意が必要です。
7.2 施設の分類による省エネルギー手法
各施設の分類により、どのような手法がxxかについて、整理します。
①蛍光灯の効率化
多くの施設でxxな手法です。特に病院や工場、庁舎(24時間系)など24時間連続して稼動する施設では、導入の効果が高いといえます。また、地下駐車場などを併設している施設も照明の稼働時間が長いために、導入の効果が高いといえます。しかし、学校では稼働時間が短いために、投資回収が難しい場合が多いです。
②センサー制御
病院、集会場、文化展示施設などの共用部では、導入の効果があるといえます。
庁舎などの施設は、必要時のみスイッチで点灯していることが多く、導入のメリットがない場合があります。
③冷陰極管(非常用誘導灯)
非常用の誘導灯は、ある程度大きな施設では使用されているが、小規模な施設では設置されていない場合もあります。病院・福祉施設、集会場、文化展示施設などは、既設の誘導灯が大型の場合があり、導入効果が高いといえます。
④白熱灯の蛍光灯化
白熱灯は、集会所、宿泊施設、文化展示施設などで使用されていることがあります。
これらの施設の特に共用部では取替えの可能性が高いと思われます。その他の箇所では、施設 運用上の理由があって、白熱灯が使用されている場合もあるので十分に確認する必要があります。
⑤水銀灯の高効率化
水銀灯は、学校の体育館や工場・集会所の高天井の照明で適用できる可能性が高いといえます。文化・展示施設にも水銀灯が使われている場合がありますが、意匠と係る場合があり、導入の際はよく検討する必要があります。
⑥熱源更新(高効率化)
熱源の更新は、初期投資が高くなるために、稼働率が高い施設に限られます。24時間空調している施設もしくは、熱源がかなり古く効率が悪くなっている施設を対象に検討するのが妥当です。
⑦熱源搬送動力の効率化
おおよそ、どの施設でも可能性があります。
しかし、学校は空調自体が設置されていない場合があり、設置されていても稼働率が非常に低いために、可能性は少ないといえます。
また、工場は空調自体が設置されていない、もしくは設置されていても制御室、事務xxの常時人がいる箇所でのパッケージ空調で対応していることが多く(熱源搬送動力の設備がない)、可能性は少ないといえます。
⑧変風量制御(VAV)の導入
各部屋に入る風量を変動させるので部屋が細かく分かれている施設において有効といえますが、各部屋のダクトの入口に風量を制御するためのモータ等を設置する必要があるために、稼働率の高い施設でなければコスト回収が難しいといえます。
病院や庁舎(24 時間系)などでは病室や事務室が細かく分かれており稼働率も高い傾向があるために、効果が見込めます。庁舎、研究施設は事務室が細かく分かれていますが、稼働率が低いことが多くあまり期待できません。
宿泊施設は、宿泊室が多いので、稼働率によっては効果が見込めることもあります。
⑨外気導入量制御
在館人員が変動しやすい病院・福祉施設、集会場、文化・展示施設などで可能性があります。
⑩女子トイレの擬音装置導入
どの施設でも可能性があります。但し、女性が少ない工場は効果が低いことになります。
⑪コージェネレーションシステムの導入
病院・福祉施設や宿泊施設、工場などの給湯や蒸気の熱需要がある施設への導入が効果的です。
⑫BEMS の導入
複数の建物が施設内にあり、エネルギー管理が難しい施設で効果的です。
⑬地下水の利用
病院・福祉施設、学校、宿泊施設、工場などでは水を大量に使用することが多く、効果が見込まれます。
表7-1 施設の分類によるxxな省エネルギー手法
設備種別 | 省エネルギー手法 | 庁 | 庁(24) | 病・福 | 集 | 学 | 研 | 宿 | 文・展 | 工 |
照明設備 | 蛍光灯の高効率化 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
センサー制御 | ○ | ○ | ○ | |||||||
冷陰極管(非常用照明) | ○ | ○ | ||||||||
白熱灯の蛍光灯化 | ○ | ○ | ○ | |||||||
水銀灯の高効率化 | ○ | ○ | ○ | |||||||
空調設備 | 熱源更新(高効率化) | ○ | ○ | |||||||
熱源搬送動力の効率化 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||
変風量制御(VAV)の導入 | ○ | ○ | ||||||||
外気導入量制御 | ○ | ○ | ○ | |||||||
給水設備 | 女子トイレ擬音装置 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
その他 | コージェネレーションシステムの導入 | ○ | ○ | ○ | ||||||
BEMSの導入 | ○ | ○ | ||||||||
地下水の利用 | ○ | ○ | ○ | ○ |
凡例 庁 …庁舎
庁(24)…庁舎(24時間系)病・福…病院・福祉施設集 …集会所
学 …学校
研 …研究施設
宿 …宿泊施設
文・展…文化・展示施設工 …工場
本実施体制は標準的なものとし、実情にあわせて適宜設定します。
8.1 シェアード・セイビングス契約の事業スキーム
ESCO事業者
議会
自治体
金融機関
返済
承認
債務負担行為
サービス料
資金調達
設備導入
削減メリット
対象施設
省エネ検証
省エネ保証
包括的サービス
施設管理者
設備維持管理
委託契約も可能とする
図 8-1 事業実施スキーム(シェアード・セイビングス契約)
⚫ ESCO 事業者は、資金調達、設備導入、省エネ検証、省エネ保証および設備維持管理等の包括的サービスを顧客に提供します。
⚫ 顧客は、包括的サービスの対価(サービス料)を契約期間中 ESCO 事業者に支払います。また、複数年にわたるサービス料の支払いに対する債務負担行為について議会の承認を得ます。
⚫ ESCO 事業者が所有権を有する設備についてはESCO 事業者が維持管理することが前提となります。
8.2 ギャランティード・セイビングス契約の事業スキーム
ESCO事業者
議会
自治体
承認
債務負担行為
予算確保
サービス料
(省エネ検証費用)
設備導入
削減メリット
対象施設
省エネ保証
包括的サービス
施設管理者
省エネ検証
運転管理マニュア ルによる助言
図 8-2 事業実施スキーム(ギャランティード・セイビングス)
⚫ ESCO 事業者は、設備導入、省エネ検証および省エネ保証等の包括的サービスを顧客に提供します。
⚫ 顧客は設備導入後、導入費用を ESCO 事業者に支払います。また、契約期間中、検証費用等をサービス料として支払います。
⚫ 顧客は導入費用に対する予算確保と、複数年にわたるサービス料の支払いに対する債務負担行為について議会の承認を得ます。
⚫ 導入設備は各施設の設備管理員が維持管理するが、省エネ効果が維持管理により大きく異なる場合があるため、ESCO 事業者が運転管理マニュアル等を作成し、必要に応じて助言できる権限を与えます。
PFI(Private Finance Initiative )制度とは、公共施設等の整備等に関する事業を、民間の資金、経営能力および技術的能力を活用することにより、効率的かつ効果的に実施する事業手法です。
公共施設において ESCO 事業のシェアード・セイビングス契約を採用した場合の事業スキームは
PFI 事業と似ており、場合によっては PFI 制度を活用して ESCO 事業を実施することも可能です。
9.1 PFI 制度を利用した ESCO 事業
PFI 制度を活用した事業もシェアード・セイビングス契約の ESCO 事業も、民間の資金を活用し、一括発注による包括的な役務を調達するという点で同じです。
PFI 制度を活用した事業は、PFI 法による財政上・法制上の優遇措置を受けられる半面、通常の ESCO 事業より煩雑な手続きとなり、これらの費用を顧客メリットの中から捻出するためには、一定の事業規模が必要となります。
9.2 PFI 制度を活用する場合の留意点
PFI 特有の事務手続きがあること、事前の議会承認が必要な場合があることに留意する必要があります。
1)PFI 特有の事務手続き
PFI 事業で実施した場合には、実施方針の策定などを経る必要があります。
表 9-1 PFI 事業特有の事務手続き
■ 実施方針の公表
■ 実施方針に関する意見の受付
■ 特定事業の選定結果の公表
■ 事業コストの定量評価
2)議会承認を必要とする事業規模
予め議会承認を必要とする場合があります。
予め議会承認を必要とする事業規模は、表 9-2 の通りです。
表 9-2 議会承認を必要とする事業規模
自治体 | 事業規模 |
都道府県 | 5.0 億円 |
政令指定都市 | 3.0 億円 |
市(政令指定都市を除く) | 1.5 億円 |
町村 | 0.5 億円 |
(財団法人 省エネルギーセンター/ESCO 事業のススメより)
現時点(平成 17 年 11 月時点)において、適用可能な補助金を以下に整理します。
表 10-1 エネルギー使用合理化事業者支援事業
(平成 17 年度予算額:114 億円)
所 | 轄 | NEDO | ||
事 業 の 概 要 | 事業者が計画した総合的な省エネへの取り組みであって、省エネルギー効果が高く、費用対効果が優れていると認められるものに係る設備導入費等について補助を行う。なお、総合資源エネルギー調査会省エネルギー部会報告書 に沿った事業等政策的意義の高い事業の取り組みを重点的に支援する。 | |||
対 象 事 業 者 | 全業種を対象とする。ただし、ESCO 事業者及びリース事業者が申請する場合は、設備設置事業者との共同申請とする。また、複数事業者連携事業の場合は、連携全事業者の共同申請とする。 | |||
対 | 象 事 | 業 | ①事業者単独事業 既設の工場、事業所における省エネルギー設備・技術の導入事業であって、省エネルギー効果が高いと見込まれ、費用対効果が優れていると認められるもの。 ②複数事業者連携事業 複数事業者による複数の工場事業所間において、エネルギーの需給バランスを最適化するために、エネルギーの相互融通等により省エネルギーを行うための設備・技術の導入であって、省エネルギー効果が高く費用対効果が優れていると見込まれ、モデル性が高いと認められるもの。 | |
補 | 助 | 率 | 事業者単独事業 複数事業者連携事業 | 1/3(補助金の上限額:5 億円) 1/2(補助金の上限額:5 億円) |
H17 公募受付 | 平成 17 年 3 月 14 日~5 月 10 日 |
表 10-2 住宅・建築物高効率エネルギーシステム導入促進事業(BEMS 導入支援事業)
(平成 17 年度予算額:28.7 億円)
所 轄 | NEDO | ||||
事 業 の 概 要 | エネルギー需要の最適な管理を行うための BEMS※を導入する場合に、その経費の一部を補助する。 | ||||
対 象 事 業 者 | BEMS を既築、新築、増築及び改築のxx用の建築物に導入する際の建築主等 (所有者)。ESCO(シェアード・セービングス契約)事業者、エネルギー管理事業者、リース事業者。 | ||||
対 | 象 事 | 業 | ① BEMS を既築、新築、増築及び改築の建物に導入すること。 ② BEMS の導入によって、エネルギー消費量を削減できること。但し、エネルギーの使用の合理化に関する法律に基づき、新築、増築及び改築の建築物については「建築物に係るエネルギーの使用の合理化に関する建築主の判断の基準」(平成 15 年 2 月 24 日経済産業省・国土交通省告示第 1号)に準じた性能を満たすものであること。 ③ 熱源(冷凍機、ヒートポンプ、冷却塔)、ポンプ、照明コンセント、その他の設備区分ごとにエネルギー計量ができること。 ④ 計測・計量のデータを収集し、保存できるエネルギー管理体制が整備されていること。 ⑤ 補助事業の遂行能力を有し、BEMS 導入後、3 年間継続して省エネルギー に関する報告が可能なこと。 | ||
補 | 助 | 率 | 1/3 以内(1 件あたりの上限 1 億円) ただし、経費区分(設計費、設備費、工事費、諸経費)のうち工事費への補助金の上限は、[1]2,700 万円、 [2]機器の製造・購入等に要する費用の 35%、 [3]実際の工事費のうちで最小額の 1/3 とします。 | ||
H17 公募受付 | 平成 17 年 3 月 16 日 | ~ | 4 月 27 日 |
※ BEMS とは、ビルエネルギーマネジメントシステムの略。業務用ビル等において、室内環境・エネルギー使用状況を把握し、かつ、室内環境に応じた機器又は設備等の運転管理によってエネルギー消費量の削減を図るためのシステム。
表 10-3 住宅・建築物高効率エネルギーシステム導入促進事業(建築に係るもの)
(平成 17 年度予算額:14.5 億円)
所 轄 | NEDO | ||||
事 業 の 概 要 | 建築物に係る高効率エネルギーシステムを事業者(建築主等)が導入する際 の費用を補助する。 | ||||
対 象 事 業 者 | 住宅・建築物高効率エネルギーシステム(空調、給湯、照明及び断熱部材等で構成)(以下「当該システム」という。)を既築、新築、増築又は改築の建 物に導入する際の建築物の建築主等。 | ||||
対 | 象 事 | 業 | ①当該システムを建築物に導入すること。 ②新築、増築及び改築の場合、建築物の消費エネルギー量を 15%程度削減できること。ただし、エネルギーの使用の合理化に関する法律に基づき、「建築物に係るエネルギーの使用の合理化に関する建築主の判断の基準」(平成 15 年 2 月 24 日経済産業省・国土交通省告示第 1 号)に準じた性能を満たすものであること。 ②既築の建築物の場合、消費エネルギー量を 25%程度削減できること。 ③エネルギー管理体制・補助事業の遂行能力を有すること ④当該システム導入後、3 年間継続して省エネルギーに関する報告が可能なこと。 | ||
補 | 助 | 率 | 1/3 | ||
H17 公募受付 | 平成 17 年 3 月 16 日 | ~ | 5 月 27 日 |
表 10-4 エネルギー供給事業者主導型総合省エネルギー連携推進事業(建築に係るもの)
(平成 17 年度予算額:11.7 億円)
所 轄 | NEDO | ||||
事 業 の 概 要 | 既築、新築、増築、又は改築のxx用の建築物に省エネルギーシステムを導 入する事業を実施する、エネルギー供給事業者、地方公共団体及び建築主(所有者)等からなる共同申請者に対し、その費用の一部を補助する事業。 | ||||
対 象 事 業 者 | 既築、新築、増築又は改築のxx用建築物等に省エネルギーシステムを導入する事業及びその事業に関する広報普及活動を実施するエネルギー供給事業者、地方公共団体及び建築主(所有者)等。シェアード・セイビングス契約のESCO事業の場合は、ESCO事業者を、リースを利用する場合にはリ ース事業者を、共同申請者とする。 | ||||
対 | 象 事 | 業 | ①2 以上の建築物に対して省エネルギーシステムを導入する事業であること。 ②エネルギー消費量が、1建築物あたり原則として原油換算削減量で100 kl程度/年以上及び削減率で10%程度/年以上削減されること。 ③当該システム導入後3年間継続して省エネルギーに関する報告が可能なこと。 | ||
補 | 助 | 率 | 1/2 | ||
H17 公募受付 | 平成 17 年 6 月 1 日 | ~ | 6 月 30 日 |
表 10-5 対策技術率先導入事業
(平成 17 年度予算額:20.4 億円)
所 | 轄 | 環境省 | |||
事 業 の 概 要 | 地方公共団体が行う地球温暖化対策事業に対し、必要な経費を国が補助することにより、地方公共団体による地球温暖化対策の強化と速やかな普及を図ることを目的とする。 平成 15 年 10 月より実施されている事業。 | ||||
対 象 事 業 者 | 過去 2 年以内に、地球温暖化対策推進法に基づく地球温暖化対策実行計画の策定又は改訂を行っている地方公共団体が対象。なお、その内容に公共施設 への代エネ・省エネの導入が方針として掲げられているものが望ましい。 | ||||
対 | 象 事 | 業 | 地方公共団体が、地球温暖化対策の推進に関する法律(平成 10 年法律第 117号)第21条に規定する地方公共団体の事務及び事業に関する実行計画に基づき地方公共団体の施設・設備として代エネ・省エネ施設又は設備を整備する事業 | ||
補 | 助 | 率 | 1/2 | ||
H17 公募受付 | 平成 17 年 1 月 | ~ | 2 月 |
※ 代エネ・省エネとは、天然ガス、水素、アルコール、太陽熱、地中熱、排熱その他のエネルギーであって石油に代替することによりエネルギー起源二酸化炭素の排出を抑制するもの及びエネルギー使用の合理化のこと。
自治体での ESCO 事業の導入に関する法的課題・解釈等を本項に整理します。
表 11-1 自治体での ESCO 事業導入に関する法的な課題と解釈
No. | 課題・問題点 | 契約方式 | 解 釈 | 根拠法令等 | |
シェア ード | ギャラン ティード | ||||
(1) | 建設に要した経費を長期にわたって支出する | ○ | 自治体は特定役務に対する対価を支出しているのであり、建設に要した経費を長期にわたって支出しているのではない。よって、x x局長通知に抵触しない。 | ・ 自治導第 139 号 | |
(2) | ESCO 事業者と随意契約を締結する | ○ | ○ | ESCO 事業は契約の性質が競争入札に適さない。特定役務の調達の場合の特例と解釈することも可能。よって、地方自治法に抵触しない。 入札方式、落札者の決定については法令上の規定は無く、自治体の内規に従う。 | ・ 地方自治法第 234 条 ・ 地方自治法施行令第 167 条の 2 ・ 地方自治法施行令第 167 条 10 の 2 ・ 「地方公共団体の物品または特定役務の調達手続きの特例を定める政令」第 10 条 ・ 「構造改革特区の提案に対する各省庁からの回答等」(管理コー ド 4111) |
(3) | 建築物の所有者と建築付帯物の所有者が異なる | ○ | 一般的に不動産の所有者が付属物の所有権を有するが、設置権原を有する者が付属物を所有することは認められている。よって、民 法の規定に反しない。 | ・ 民法第 242 条 | |
(4) | ESCO 事業者の倒産等により、第三者が省エネルギー設備の所有権を主 張する恐れ | ○ | ESCO 事業者が設置する省エネルギー機器等は、不動産ではないため「抵当権」の設定はできないが、競売等により第三者が所有権を取得する可能性もあり、契約等で対 応できないか、検討が必要。 | ・ 民法第 370 条 | |
(5) | 省エネルギー設備設置のために、行政財産を使用する | ○ | 行政財産の目的を妨げない限度において使用を許可される。但し、行政財産の使用につき使用料を徴収される可能性もある。 | ・ 地方自治法第 225 条 ・ 地方自治法第 238 条の 4 ・ 「構造改革特区の提案に対する各省庁からの回答等」(管理コード 4108) | |
(6) | 契約終了後の設備所有権の移転 | ○ | 総務省は、契約書での所有権の移転に関する明記は避け、募集要項などにおいて、所有権の移転に関する協議を行うことを謳うこと で対応するように指導している。 | ・ 自治導第 139 号 ・ 「構造改革特区の提案に対する各省庁からの回答等」(管理コード 4850) |
参考資料) これなら分かる「ESCO 事業」-大阪府にみる導入事例(資源エネルギー庁)自治体におけるESCO 事業普及に関する調査報告書(省エネルギーセンター) ESCO 事業のてびき(自治体向け) (省エネルギーセンター)
(1)建設に要した経費を長期にわたって支出する
長期にわたって経費を支出する場合には、債務負担行為の運用に関し、建設完了後に経費を長期にわたり支出することを戒めた総務省財務局長通知(以下、財務局長通知と呼ぶ)に抵触する恐れがあります。
表 11-2 法的課題・解釈-1(長期支出に対する課題)
ESCO | 事業の特徴 | 契約が複数年となり、長期の支出となる。 | |
課 | 題 | ■財務局長通知に抵触しないか 数年にわたる債務負担行為を禁じた通達がある。 | |
解 | 釈 | ■ESCO 事業は「省エネルギーサービス」 自治体における ESCO 事業は一般の工事調達ではなく、省エネルギーサービスという役務調達と解釈する。ESCO 事業を役務調達と解釈するために、ESCO事業、設備、資金調達を以下のように解釈する。 ・ ESCO 事業は省エネルギー、エネルギー管理、省エネルギー保証、計測・検証など、省エネルギーを達成するための一連の役務を提供する事業。 ・ ESCO 事業者が設置する省エネルギー設備は上記の役務を提供するために必要な道具であり、省エネルギー設備を設置することが本来の目的ではない。 ・ ESCO 事業者が行う資金調達は、上記役務の提供を行うために必要な道具に投資されるもので、ESCO 事業者の経営資産への投資を目的としている。 | |
そ | の | 他 | 設計・施工は役務提供に必要な事前の作業となることから、ESCO 事業者への支払いは竣工払いではなく、設備の運転が開始された以降となる。 |
法 令 等 の 抜 粋 | ■自治導第 139 号「債務負担行為運用に係る総務省財務局長通知」 建設工事にかかわるものについては、債務負担の原因となる事実が数年にわたって継続する場合に設定することがその本来の趣旨であり、もっぱらその財源調達の手段として債務負担行為を設定し、当該施設の建設完了後その建設に要した経費を長期にわたり支出することは厳に慎むべきである。 |
(2)ESCO 事業者と随意契約を締結する
公共調達における事業者選定の基本的な入札・契約方式は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約の 3 つに分けられる。特別な理由が無ければ、一般競争入札で業者が選定されます。
表 11-3 法的課題・解釈-2(随意契約の可否に対する課題)
ESCO | 事業の特徴 | 金額の入札ではなく、自治体にとってもっとも好ましい提案を行った業者と契約する。 | |
課 | 題 | ■一般競争入札を基本としている地方自治法に抵触しないか 地方自治法では政令で定める場合に該当するときに限り、一般競争入札以外の契約方法を認めている(地方自治法第 234 条)。 | |
解 | 釈 | ■ESCO 事業は目的が競争入札に適さない 地方自治法施行令第 167 条の 2 のなかで、随意契約を結ぶことができる場合を規定しており、性質または目的が競争入札に適しないときには、随意契約を結ぶことができる。近年の規制緩和の流れの中で、随意契約要件の制限緩和が自治体から提案されたが、総務省の回答としては現行法制の中で実現可能としている。 | |
そ | の | 他 | 近年の省エネルギーセンターの調査報告書においては、公募に係る各参加事業者の作業負担が大きいうえ、採用される提案は 1 社のみであるために多くの労力が無駄になっていることに注意を喚起している。 そして、その解釈として非競争的提案を経た随意契約方式を提案している。現行法制においては地方自治法による制約があるが、新たな法を制定する等の方法により、簡易な事業者選定方式が望まれる。 |
法 令 等 の 抜 粋 | ■地方自治法第 234 条(契約の締結) 1 売買、貸借、請負その他の契約は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約又はせり売りの方法により締結するものとする。 2 前項の指名競争入札、随意契約又はせり売りは、政令で定める場合に該当するときに限り、これによることができる。 3 普通地方公共団体は、一般競争入札又は指名競争入札(以下本条において「競争入札」という。)に付する場合においては、政令の定めるところにより、契約の目的に応じ、予定価格の制限の範囲内で最高又は最低の価格をもつて申込みをした者を契約の相手方とするものとする。ただし、普通地方公共団体の支出の原因となる契約については、政令の定めるところにより、予定価格の制限の範囲内の価格をもつて申込みをした者のうち最低の価格をもつて申込みをした者以外の者を契約の相手方とすることができる。 ■地方自治法施行令 第 167 条の 2(随意契約) 地方自治法第 234 条第2項の規定により随意契約によることができる場合は、次の各号に掲げる場合とする。 (1) 売買、貸借、請負その他の契約でその予定価格(貸借の契約にあつては、予定賃貸借料の年額又は総額)が別表第5上欄に掲げる契約の種類に応じ同表下欄に定める額の範囲内において普通地方公共団体の規則で定める額を超えないものをするとき。 (2) 不動産の買入れ又は借入れ、普通地方公共団体が必要とする物品の製造、修理、加工又は納入に使用させるため必要な物品の売払いその他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき。 (3) 緊急の必要により競争入札に付することができないとき。 (4) 競争入札に付することが不利と認められるとき。 (5) 時価に比して著しく有利な価格で契約を締結することができる見込みのあるとき。 (6) 競争入札に付し入札者がないとき、又は再度の入札に付し落札者がないとき。 (7) 落札者が契約を締結しないとき。 ■地方自治法施行令 第 167 条の 10 の 2 普通地方公共団体の長は、一般競争入札により当該普通地方公共団体の支出の原因となる契約を締結しようとする場合において、当該契約がその性質又は目的から地方自治法第 234 条第3項本文又は前条の規定により難いものであるときは、これらの規定にかかわらず、予定価格の制限の範囲内の価格をもつて申込みをした者のうち、価格その他の条件が当該普通地方公共団体にとつて最も有利なものをもつて申込みをした者を落札者とすることができる。 ■「地方公共団体の物品または特定役務の調達手続きの特例を定める政令」第 10 条(随意契約) 特定調達契約については、地方自治法施行令第 167 条の2第1項第3号、第 6号又は第7号の規定によるほか、次に掲げる場合に該当するときに限り、地方自治法第 234 条第2項の規定により随意契約によることができる。 (1) 他の物品等若しくは特定役務をもって代替させることができない芸術品その他これに類するもの又は特許xxの排他的権利若しくは特殊な技術に係る物品等若しくは特定役務の調達をする場合において、当該調達の相手方が特定されているとき。 ■「構造改革特区の提案に対する各省庁からの回答等」管理コード 4111制度の現状 随意契約ができる場合として、「その性質又は目的が競争入札に適していないもの」が規定されており、現行制度の枠内で実現可能。 |
(3)建築物の所有者と建築付帯物の所有者が異なる
ESCO 事業で設置される機器類は、ほとんどが建築物付帯設備です。一般的には、不動産の所有者が不動産に附合する物の所有権を得るので、シェアード・セイビングス契約が現実の法理論上可能であるかを確認しておく必要があります。
表 11-4 法的課題・解釈-3(設備の所有権に対する課題)
ESCO 事業の特徴 | シェアード・セイビングス契約の場合には顧客の建築物の中に ESCO 事業者の建築付帯設備を据付、設置する。 |
課 題 | ■不動産の付属物の所有権を不動産の所有者に帰している民法との整合 民法では、不動産ノ所有者ハ其不動産ノ従トシテ之ニ附合シタル物ノ所 有権ヲ取得スとあり、不動産の所有者が不動産の付属物の所有権を有する ことになっている。 |
解 x | ■不動産の付属物の所有権を別に設定可能 民法第 242 条の「但し、」に権原をもつ他人の権利を妨げないとなっていることから、所有権の設定が可能である。 |
法 令 等 の 抜 粋 | ■民法第 242 条 不動産ノ所有者ハ其不動産ノ従トシテ之ニ附合シタル物ノ所有権ヲ取得ス但権原ニ因リテ其物ヲ附属セシメタル他人ノ権利ヲ妨ケス |
(4)ESCO 事業者の倒産等により、第三者が省エネルギー設備の所有権を主張する恐れ
ESCO 事業者の倒産などにより、省エネルギー設備の所有権が第三者に渡り、使用が継続できなくなるなどのケースについても考慮する必要があります。
表 11-5 法的課題・解釈-4(設備の質権に対する課題)
ESCO 事業の特徴 | シェアード・セイビングス契約の場合には顧客の建築物の中に ESCO 事業者の建築付帯設備を据付、設置する。 |
課 題 | ■ESCO 事業者の倒産などにより、運用継続できなくなる恐れは無いか 設備に質xxが設定されていると、ESCO 事業者の倒産などにより設備が運用できなくなる恐れがある。 |
解 x | ■省エネルギー機器に抵当権は設定できない ESCO 事業者が設置する省エネルギー機器等は、不動産ではないため「抵当権」の設定はできない。 |
そ の 他 | 予測できないトラブルが発生する恐れがあるため、「健全で優良な ESCO 事業者を選定すること」が重要である。 |
法 令 等 の 抜 粋 | ■民法第 370 条 抵当権ハ抵当地ノ上ニ存スル建物ヲ除ク外其目的タル不動産ニ附加シテ之ト一体ヲ成シタル物ニ及フ但設定行為ニ別段ノ定アルトキ及ヒ第四百二十四条ノ規定ニ依リ債権者カ債務者ノ行為ヲ取消スコトヲ得ル場合ハ此限ニ在ラス |
(5)省エネルギー設備設置のために、行政財産を使用する
自治体において ESCO 事業を実施する場合には、庁舎や博物館、公立病院などの公共施設の内部に機器を設置することになります。こうした行政財産は、公共の用に供されているものであるから、ESCO事業のための使用が認められるか確認する必要があります。
表 11-6 法的課題・解釈-5(公共財産使用の可否に対する課題)
ESCO 事業の特徴 | シェアード・セイビングス契約の場合には顧客の建築物の中に ESCO 事業者の建築付帯設備を据付、設置する。 |
課 題 | ■公共財産に私権を設定できないとする地方自治法に抵触しないか 公共財産は、公共の用に供されているものであるから、一般的には貸付や私権の設定ができない。 |
解 釈 | ■公共財産の目的を妨げない場合には使用が認められる 地方自治法第 238 条の 4 の 4 項に定められているように目的を妨げない限度で使用が認められているので、別に定められた使用許可申請をすれば使用可能である。 |
そ の 他 | ESCO 事業者が公共財産の使用時に、料金が徴収されるかについては各自治体において対応が異なる。 |
法 令 等 の 抜 粋 | ■地方自治法第 225 条 普通地方公共団体は、第 238 条の 4 第 4 項の規定による許可を受けてする行政財産の使用又は公の施設の使用につき使用料を徴収することができる。 ■地方自治法第 238 条の 4 4 行政財産は、その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができる。 ■「構造改革特区の提案に対する各省庁からの回答等」管理コード 4108制度の現状 民間企業による行政財産の占有・使用については、現行制度の下においても、目的外使用の許可ができることとなっており、十分対応可能。 |
(6)契約終了後の設備所有権の移転
契約終了後も自治体としては省エネルギー機器を使用する必要があるために、設備をそのままの状態にしておくことが望ましい。ESCO 事業者側としても撤去の費用を考慮すれば、設備をそのままの状態にしておくことが望ましい。
しかしながら、契約終了時等一定期間が経過した時点で事業資産の所有権を自治体に移管する場合には、割賦払いと同様の行為とみなされ、先に述べた財務局長通知に抵触する恐れがあるので自治体に所有権を移転してもよいかを確認する必要があります。
表 11-7 法的課題・解釈-6(所有権移転に対する課題)
ESCO 事業の特徴 | シェアード・セイビングス契約の場合には顧客の建築物の中に ESCO 事業者の建築付帯設備を据付、設置する。公共施設での ESCO 事業の場合、契約期間後に設 備の所有権の移転を求める事例が主流。 |
課 題 | ■財務局長通知に抵触しないか 数年にわたる債務負担行為を禁じた通達がある。契約終了時等一定期間が経過した時点で事業資産の所有権を自治体に移管する場合には、割賦払いと同様の行為とみなされる恐れがある。 |
解 釈 | ■公共財産の目的を妨げない場合には使用が認められる ESCO サービス料は、毎年提供される役務への対価の支払いであり、ESCO 事業者への支払いと所有権の移転とは一括して扱う事項ではないことから、財務局長通知には抵触せず、総務省からも「現行制度で対応可能なもの」という解釈が示されている。 |
そ の 他 | 総務省は、契約書での所有権の移転に関する明記は避け、募集要項などにおいて、所有権の移転に関する協議を行うことを謳うことで対応するように 指導している。 |
法 令 等 の 抜 粋 | ■自治導第 139 号「債務負担行為運用に係る総務省財務局長通知」(再掲) 建設工事にかかわるものについては、債務負担の原因となる事実が数年にわたって継続する場合に設定することがその本来の趣旨であり、もっぱらその財源調達の手段として債務負担行為を設定し、当該施設の建設完了後その建設に要した経費を長期にわたり支出することは厳に慎むべきである。 ■「構造改革特区の提案に対する各省庁からの回答等」管理コード 4850制度の現状 ESCO 事業をシェアード・セイビングス契約で実施する場合、ESCO 事業者が投資回収を終了するまでの期間、設備の所有権は ESCO 事業者のものとなる。契約期間終了後にESCO 事業者の財産の所有権を移転することを契約締結時点で明確にすることは、「債務負担行為運用について」(昭和 47 年 9 月 30 日付け自治導第 139 号)に抵触するか疑義があり、H12.10 当時の三鷹市の ESCO 事業については PFI で実施することが望ましいとの見解を示したが当時の企画室の見解はすべての ESCO 事業に言及したものではなく、また、制度的な規制があるわけではないので、現行法制で対応可能である。 |
ESCO 事業におけるリスクは ESCO 事業者の提案内容や諸状況に応じて、適宜決定することが望ましい。以下に参考として、(財)省エネルギーセンターが作成した「予想されるリスクと責任分担表」を掲載するため、実施においては、これを参考とし、事業化検討段階で適宜決定します。
表 12-1 予想されるリスクと責任分担表(参考)
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(省エネルギーセンター)
リスクの 種類 | リスクの内容 | 負担者 | 対応方法 | 書類等 | ||||
自治体 | 事業者 | 募集要項 | 契約書 | その他 | ||||
共通 | 募集要項の誤り | 募集要項の記載事項に重大な誤りのあるもの | ○ | 募集要項に重大な誤りがあった場合は自治体が責任を持って対応する。 | ○ | |||
効果保証の未達 | ESCO 提案の低減が達成できない場合 | ○ | 光熱水費削減保証額とその検証方法を計画書に示し、これが得られない場合はESCO 事業者が補填する。補填を行う範囲、条件、支払額の計算方法、支払い方法については契約書、計画書に明記する。 | ○ | ○ | 計画書 | ||
予定以上の 削減分の分配 | - | - | ボーナスの有無、分配方法を定めておく必要がある。 | ○ | ○ | |||
安全性の確保 | 設計・建設・維持管理における安全性の確保 | ○ | 事業者の責任において安全性を確保することを明記する。 | ○ | ○ | |||
環境の保全 | 設計・建設・維持管理における環境の保全 | ○ | 事業内容によって保全すべき環境の内容を特定する必要がある。騒音・振動・大気汚染・水質汚濁・光・臭気に関するものがあげられる。ただし、これらは第三者賠償の対象項目と重複することがあることに 留意する。 | ○ | ○ |
凡例 ○…分担 ▲…協議 計画書…包括的エネルギー管理計画書
リスクの 種類 | リスクの内容 | 負担者 | 対応方法 | 書類等 | ||||
自治体 | 事業者 | 募集要項 | 契約書 | その他 | ||||
共通 | 制度の変更 | 法令・許認可・税制の変更 | ○ | ○ | 制度の変更により稼働状況、収益性等が変化した場合は、ベースラインの見直しを行う。ベースラインの見直しにより生じる損失については、当該自治体が行う制度変更の場合及び事業実施そのものに関する制度変更については自治体が負担し、これ以外の一般的な制度変更の場合はESCO 事業者が負担する。制度変更の内容を細分化する必要がある。 <自治体がリスクを分担すべき項目> 法人税等の収益関係以外の税の税率変更新規に導入される税 <事業者がリスクを負うべき項目>法人税等の収益関係税の税率変更 社会福祉の事業所負担の変更 事業遂行に必要な有資格者の変更 | ○ | ○ | |
事業の中止・延期 | 施設建設に必要な許可等のうち、事業者が取得すべきものの取得 遅延によるもの | ○ | サービスの開始、終了時期を変更し、この間に発生する自治体の損失については事業者が負担する。 | ○ | ○ | |||
自治体の不注意等による建設許可等の遅延によ るもの | ○ | サービスの開始、終了時期を変更する。 | ○ | ○ | ||||
事業者の事業放棄、破綻によるもの(ギャランティード・セイビング ス契約の場合) | ○ | サービスが継続されるためには、事業権の移転をする必要がある。事業権の移転については、自治体が主体となって選定するが、事業者が責任を持って引き継ぐ事業者を紹介する。この際、サービスの引き 継ぎに係る費用については事業者の負担とする。 | ○ | ○ | ||||
事業者の事業放棄、破綻によるもの(シェアード・セイビングス契約の場合) | ○ | サービスの継続と、事業資産の保全の必要がある。サービスが継続されるためには、事業権の移転をする必要がある。事業権の移転については、自治体が主体となって選定するが、事業者が責任を持って引き継ぐ事業者を紹介する。この際、サービスの引き継ぎに係る費用については事業者の負担とする。 事業資産の保全のためには、契約時に保全しておく 必要がある。 | ○ | ○ | 金融機関か らの関心x x書等(SPCとの契約の 場合) | |||
自治体の事業放棄によるもの、及び自治体の責に よるもの | ○ | 建設期限の延長、サービスの一時停止に係る経費及び損失、あるいは事業中止により発生する全ての経費を自治体が負担する。 | ○ | ○ |
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凡例 ○…分担 ▲…協議 計画書…包括的エネルギー管理計画書
リスクの 種類 | リスクの内容 | 負担者 | 対応方法 | 書類等 | ||||
自治体 | 事業者 | 募集要項 | 契約書 | その他 | ||||
計画・設計段階 | 不可抗力 | 天災等による設計変更・中止・延期 | ○ | ▲ | 一定額あるいは一定割合(1/100)を事業者が負担し、これ以外を自治体が負担する。あるいは協議事項とする。 不可抗力終結迄の間、権利・義務を留保する。 | ○ | ○ | |
物価の変動 | 急 激 な イ ン フ レ・デフレ(設計費に対して影響のあるもののみ を対象とする) | ○ | ○ | 計画の変更を行う場合、事業が継続可能であれば計画・設計に要する増分経費は双方で負担し、事業を中止する場合は、それまでかかった経費を双方話し合いの上負担する。 | ○ | ○ | ||
設計変更 | 自治体の提示条件、指示の不備によるもの | ○ | 設計変更に関わる経費を自治体が負担する。また設計変更に伴う、施工費、運転管理内容及びその経費、省エネルギー保証を変更する部分については、事業者が提案内容の修正を行い、この結果を自治体と協議し、施工、運転管理、省エネルギー保証に関する 契約内容の変更を可能とする。 | ○ | ||||
ESCO 事業者の指示・判断の不備によるもの | ○ | 設計変更に関わる経費を事業者が負担する。設計変更に伴う施工内容及びその経費、運転管理内容及びその経費、省エネルギー保証の変更については、自治体が認める範囲での変更を行うことができるが、これ以外についての変更は認められない。ただし、契約内容の合意ができない場合は、自治体は契約交渉を終了することができ、設計に要した経費を事業 者が負担する。 | ○ | |||||
応募コスト | 応募コストの負担 | ▲ | ○ | 次点以下の優秀提案の応募コストの一部(定額)を自治体が支給する。 | ○ | |||
資金調達 | 必要な資金の確保に関すること (ギャランティ ード・セイビングス契約の場合) | ○ | 資金調達は計画書に基づき自治体の責任で確保する。 | ○ | 計画書 | |||
必要な資金の確保に関すること (シェアード・セ イビングス契約の場合) | ○ | 資金調達は計画書に基づき事業者の責任で確保する。 | ○ | 計画書 | ||||
予定した補助金等が獲得できない | ○ | 補助金の確保ができない場合に契約交渉を終了あるいは、工事内容を変更する場合は、これに要する経費を自治体が負担する。また、施工内容及びその経費、運転管理内容及びその経費の変更が必要な場合 は計画書を修正する。 | ○ | 計画書 |
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凡例 ○…分担 ▲…協議 計画書…包括的エネルギー管理計画書
リスクの 種類 | リスクの内容 | 負担者 | 対応方法 | 書類等 | ||||
自治体 | 事業者 | 募集要項 | 契約書 | その他 | ||||
建設段階 | 第三者賠償 | 調査・建設における第三者への損害賠償義務 | ○ | 事業者の責任により、交渉、賠償の責務を負う。 | ○ | ○ | ||
不可抗力 | 天災等による設計変更・中止・延期 | ○ | ▲ | 一定額あるいは一定割合(1/100)を事業者が負担し、これ以外を自治体が負担する。 不可抗力終結迄の間、権利・義務を留保する。 一定期間経過後に終結しない場合は契約解除とし、双方は互いに義務を負わない。 | ○ | ○ | ||
物価の変動 | 急 激 な イ ン フ レ・デフレ(建設費に対して影響のあるもののみ を対象とする) | ○ | ○ | 建設の変更を行う場合、事業が継続可能であれば変更にともなう増分経費は双方で負担し、事業を中止する場合は、それまでに要した費用を双方話し合いの上負担する。 | ○ | ○ | ||
用地の確保 | 設置場所の確保 | ○ | 設置場所については自治体の責任で確保し、行政財産の使用許可に関する手続きを行う。 | ○ | ○ | |||
立入り許可 | 必要な施設への立ち入り許可 | ○ | 現場への立ち入り許可。ただし、立ち入り範囲、届け出などの条件をつける。 | ○ | ○ | |||
設計変更 | 自治体の提示条件、指示の不備によるもの | ○ | 設計変更に関わる経費を自治体が負担する。また設計変更の伴い、施工費、運転管理内容及びその経費、省エネルギー保証を変更する部分については、事業者が提案内容の修正を行い、この結果を自治体と協議し、施工、運転管理、省エネルギー保証に関する契約内容の変更を可能とする。ただし、変更内容の合意ができない場合は、事業者は契約を終了することができ、設計・施工に要した経費及び契約終了に 伴う経費を自治体が負担する。 | ○ | ○ | |||
ESCO 事業者の指示・判断の不備によるもの | ○ | 設計変更に関わる経費を事業者が負担する。設計変更に伴う施工内容及びその経費、運転管理内容及びその経費、省エネルギー保証の変更については、自治体が認める範囲での変更を行うことができるが、これ以外についての変更は認められない。ただし、変更内容の合意ができない場合は、自治体は契約を終了することができ、設計・施工に要した経費及び 契約終了に伴う経費を事業者が負担する。 | ○ | ○ |
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凡例 ○…分担 ▲…協議 計画書…包括的エネルギー管理計画書
リスクの 種類 | リスクの内容 | 負担者 | 対応方法 | 書類等 | ||||
自治体 | 事業者 | 募集要項 | 契約書 | その他 | ||||
建設段階 | 工事遅延・未完工 | 自治体の責による工事遅延・未完工による引き渡しの延期 | ○ | 自治体の責により、工事遅延及び未完工により引き渡しが延期される場合は、サービス開始・終了時期の延期を行う。遅延に伴い経済的な損失が生じた場合は自治体が負担する。 | ○ | ○ | ||
ESCO 事業者の責に よ る 工 事 遅 延・未完工による引き渡しの遅延 | ○ | ESCO 事業者の責による、工事遅延及び未完工による引き渡しの遅延に要する工事費は事業者が負担する。遅延に伴い自治体が被る損失については事業者は誠意をもってその対応を行うとともに、経済的な 損失が生じた場合は事業者が負担する。 | ○ | ○ | ||||
工事費増大 | 自治体の指示・承諾による工事費の増大 | ○ | 工事費の増加分は自治体が負担する。この際、シェアード・セイビングス契約にあっては、事業者が受け取るサービス料の見直しを行い、これを自治体が負担する。ただし、省エネルギー保証などに関わる計画書の大幅な変更が必要な場合は、双方誠意をも って協議する。 | ○ | ○ | |||
ESCO 事業者の判断の不備によるもの | ○ | 工事費の増加分は事業者が負担する。この際、シェアード・セイビングス契約にあっては、事業者が受け取るサービス料の見直しを行い、これを事業者が負担する。ただし、省エネルギー保証などに関わる計画書の大幅な変更が必要な場合は、双方誠意をも って協議する。 | ○ | ○ | ||||
性能 | 要求仕様不適合 (施工不良を含む) | ○ | 事業者は要求仕様を満たす工事変更を行い、これに要する経費を負担する。 | ○ | ○ | |||
一時的損害 | 引き渡し前に工事目的物に関して生じた損害 | ○ | 事業者は工事目的物を計画仕様に適合するよう補修あるいは取り替えを行い、これに要する経費を負担する。 | ○ | ○ | |||
引き渡し前に工事に起因し施設に生じた損害 | ○ | 事業者は自治体の資産の現状復帰を行い、これに要する経費を負担する。 | ○ | ○ |
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凡例 ○…分担 ▲…協議 計画書…包括的エネルギー管理計画書
リスクの 種類 | リスクの内容 | 負担者 | 対応方法 | 書類等 | ||||
自治体 | 事業者 | 募集要項 | 契約書 | その他 | ||||
支払関連 | 金利の変動 | 金利の変動(ギャランティード・セイビングス契約 の場合) | ○ | 建設期間中の金利変動リスクは自治体が負う。 | ○ | ○ | 計画書 (M&V) | |
金利の変動(シェアード・セイビングス契約の場合) | ○ | 建設・運営期間中の金利変動リスクは事業者が負う。金利変動が事業採算性に影響する場合にあっても、自治体が支払うサービス料の計算は計画時の金利を適用する。ただし、自治体は、適正な時点での金利 見直し制度を設けるなど、事業者に配慮する。 | ○ | ○ | 計画書 (M&V) | |||
支払遅延・不能 | 自治体の責による、支払の遅延・不能によるもの | ○ | 支払いが遅延する場合は当該未払い金額につき、年 X パーセントの割合で計算して得た額の遅延利息を自治体が支払う。また。この間の省エネルギー保証は 免責されるものとする。 | ○ | ○ | |||
計測・検証報告の遅延により支払いを留保する場 合 | ○ | 事業者の責務において計測・検証報告が遅延する場合は、自治体は事業者へのサービス料の支払いを留保することができる。この際、サービス料の支払い の留保に伴う事業者の損失は事業者が負担する。 | ○ | ○ | ||||
省エネルギー保証行為の不履行 | ○ | 事業者から自治体への省エネルギー保証未達成に係る支払いが遅延した場合には当該未支払い金額につき、年 X パーセントの割合で計算して得た額の遅延 利息を事業者が支払う。 | ○ | ○ | ||||
維持管理関連 | 計画変更 | 用途の変更等、自治体の責による事業内容の変更 | ○ | 当該施設の用途変更などにより、計画した経費削減が実現しない場合はベースラインの見直しを行うことができる。この際、ベースラインを見直した結果、計画した事業採算性が失われる場合であっても、事 業者が受け取るサービス料の変更は行わない。 | ○ | ○ | 計画書 (M&V) | |
ESCO 事業者が必要と考える計画変更 | ○ | ESCO 事業者は、省エネルギー保証を達成する為に再改修工事が必要と認められる場合は、ESCO 事業者の負担により、再改修工事を行うことができる。この際の設計・施工及び管理に係る契約条件は当初契約 内容と同等とする。 | ○ | ○ | ||||
立入り許可 | 合理的な事由に因らない場合であって、必要な施設への立ち入り許可がおりない場合の事業未遂 行 | ○ | 必要な立ち入り許可がおりないことにより事業が停止した場合の自治体及び事業者が被る損害は自治体の責務とし、自治体は事業者にサービス料を定められた期日に支払う。 | ○ | ○ |
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凡例 ○…分担 ▲…協議 計画書…包括的エネルギー管理計画書
リスクの 種類 | リスクの内容 | 負担者 | 対応方法 | 書類等 | ||||
自治体 | 事業者 | 募集要項 | 契約書 | その他 | ||||
維持管理関連 | 維持管理費の上昇 | ESCO 事業者の責による維持管理費用の増大 | ○ | 事業者の責により維持管理費用が増大した場合、事業者は増加分を自治体に請求することができない。ただし、急激なインフレ等特別な事情がある場合はこの限りではない。 | ○ | ○ | ||
第三者賠償 | 維持管理における第三者への損害賠償義務 | ○ | ○ | 自治体の責による場合と、事業者の責による場合に分類し、各々責を負う主体の責任において交渉、賠償の義務を負う。 | ○ | ○ | ||
設備の損傷 | 自治体の過失または自治体の施設 に 起 因 す る ESCO 設備の損傷 | ○ | 自治体の責によるESCO 設備の損傷は事業者が責任をもってこれを修復し、これに要する経費は自治体が負担する。 | ○ | ○ | |||
ESCO 事業者の故意・過失に起因する ESCO 設備の損 傷 | ○ | 事業者の責によるESCO 設備の損傷は事業者が責任をもってこれを修復し、これに要する経費は事業者が負担する。 | ○ | ○ | ||||
自治体の施設の損傷 | ESCO 事業者の故意・過失または、 ESCO 設備に起因する自治体の施 設・設備の損傷 | ○ | 事業者の責に帰する自治体の施設・設備の損傷は、事業者が責任をもってこれを修復し、これに要する経費は事業者が負担する。 | ○ | ○ | |||
不可抗力以外のその他の原因による自治体の施 設・設備の損傷 | ○ | 自治体の責に帰する自治体の施設・設備の損傷・傷害は、自治体が責任をもってこれを修復し、これに要する経費は自治体が負担する。 | ○ | ○ | ||||
瑕疵担保 | ESCO 設備に関する隠れた瑕疵の担保責任 | ○ | 隠れた瑕疵が確認された場合、事業者は計画書の仕様に従ってESCO サービス設備等の補修・改修を行う。その際、当該設備等の補修・改修に要する経費は事 業者が負担する。 | ○ | ○ | |||
不可抗力 | 火災・天災・戦争などの不可抗力による自治体の 施設の損傷 | ○ | 火災・天災・戦争などの不可抗力により自治体の施設が損傷し、事業の継続が不可能な場合は双方話し合いの上、契約を解除することができる。この際、 契約終了時の事業者の残債は自治体が負担する。 | ○ | ○ | |||
火災・天災・戦争などの不可抗力による ESCO 設備 等の損傷 | ○ | ▲ | 一定額あるいは一定割合(1/100)を事業者が負担し、これ以外を自治体が負担する。あるいは協議事項とする。 不可抗力終結迄の間、権利・義務を留保する。 | ○ | ○ |
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凡例 ○…分担 ▲…協議 計画書…包括的エネルギー管理計画書
リスクの 種類 | リスクの内容 | 負担者 | 対応方法 | 書類等 | ||||
自治体 | 事業者 | 募集要項 | 契約書 | その他 | ||||
計測・検証 | 設備の不良 | ESCO 設備が所定の性能を達成しない場合 | ○ | ESCO 設備が計画書に示された性能を達成しない場合は事業者の責任でこれを補修し、これに要する経費は事業者が負担する。 | ○ | ○ | ||
計測・検証 | 計測・検証報告への疑義 | ○ | 計測・検証報告に疑義が認められる場合は、双方協議した上で、自治体は第三者に計測・検証業務を業務委託することができる。 | ○ | ○ | |||
計測・検証に必要な自治体からの情 報 提 供 の 遅 延・不能 | ○ | 計測・検証に必要な自治体からの情報提供が遅延あるいは不可能な場合、自治体は定められたサービス料を事業者に支払う。 | ○ | ○ | ||||
光熱水費単価の変動 | 光熱水費単価の変動 | ○ | 光熱水単価が変動した場合は、計画書で定めた条件で事業者に支払うサービス料を算定する。 | ○ | ○ | 計画書 (M&V) | ||
ベースラインの調整 | 機器の使用状況、稼働率の顕著な変動や運転管理方法の顕著な変 更 | ○ | 機器の使用状況及び稼働率あるいは運転管理方法の顕著な変更・変動が認められた際はベースラインを変更することができる。 | ○ | ○ | 計画書 | ||
気候の大幅な変動 | ○ | 気候が大幅に変動した場合は双方話し合いの上ベースラインを変更することができる。 | ○ | ○ | 計画書 | |||
上記以外の変動要因の場合 | ○ | 上記以外の事由により計画書に示す経費削減の大幅な変化が認められた場合は、双方誠意をもって対応方法を協議する。 | ○ | ○ | 計画書 | |||
保証関連 | 住民サービス提供 | 要求仕様不適合 (施工不良を含む)による施設・設備への損害 | ○ | 要求仕様が適合しないために自治体の施設・設備及びESCO 設備等が損害を被る場合、事業者が責任をもってこれを補修あるいは改修し、これに要する経費 は事業者が負担する。 | ○ | ○ | ||
仕様不適合による、自治体の施設運営・業務への障害 | ○ | 要求仕様が適合しないために住民サービス等自治体の業務に支障を及ぼす場合、その原因となる自治体の施設・設備及びESCO 設備等を事業者は責任をもって補修あるいは改修し、これに要する経費は事業者が負担する。ただし、これによって生じた二次的損 害については免責とする。 | ○ | ○ |
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凡例 ○…分担 ▲…協議 計画書…包括的エネルギー管理計画書
■参考文献
自治体における ESCO 事業普及に関する調査報告書 省エネルギーセンター ESCO 導入のてびき(自治体向け) 省エネルギーセンター自治体における ESCO 事業導入に関する調査事業報告書 省エネルギーセンター
『これなら分かる「ESCO事業」-大阪府に見る導入事例-』 資源エネルギー庁