Contract
3.4 経済性評価
3.4.1 基本ケース設定
初年度は昼間の需要が中心である公共施設 24 契約の需要に対して、xxx発電所と市場
から調達した電力を供給する。次年度は 48 契約(公共施設 30 契約、農業関係施設 15 契
約、林業関係施設 3 契約)の全てに対して木質バイオマス、xxx、市場から調達した電力を供給する設定とした。
小売電気事業の業務については、受給管理業務を外部委託とし、その他の業務(請求決済・顧客対応業務や法人運営など)は自社で内製化する事業スキームとした。
図 3-17 基本ケース設定
3.4.2 基本ケース試算結果
施設毎の月別販売電力量内訳を図 3-18 に示す。
需要には季節変動があるため、月別の販売電力量が変動する。
xx市は標高が高く(市役所:713m)、冬場の最低気温が-10℃を下回ることもある寒さが厳しい気候条件であるため、暖房需要による電力消費量が増大し、xxよりも冬季の電力使用量が多くなるという特徴がある。
図 3-18 販売電力量 の推移
表 3-5 に事業性試算結果(月別)を示す。
月別の販売電力量が変動に伴い、月別の売上が変動している。
-27-
表 3-5 事業性試算結果(月別)
金額単位:百万円(税抜) | 初年度 | 次年度 | |||||||||||||||||||
0月 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | |||
収入 | 0.0 | 4.9 | 5.2 | 5.9 | 7.1 | 8.4 | 7.4 | 23.4 | 23.1 | 23.8 | 26.4 | 26.6 | 25.1 | 23.4 | 22.9 | 23.9 | 25.2 | 26.2 | 25.2 | ||
売上(高圧) | 0.0 | 5.8 | 6.1 | 7.1 | 8.6 | 10.4 | 9.0 | 28.5 | 28.0 | 28.9 | 32.2 | 32.4 | 30.5 | 28.6 | 27.9 | 29.2 | 31.0 | 32.3 | 30.9 | ||
現行割引 | 0.0 | -0.1 | -0.1 | -0.1 | -0.1 | -0.1 | -0.1 | -0.4 | -0.4 | -0.4 | -0.4 | -0.4 | -0.4 | -0.4 | -0.4 | -0.4 | -0.4 | -0.4 | -0.4 | ||
燃料調達費 | 0.0 | -0.8 | -0.9 | -1.1 | -1.5 | -1.9 | -1.6 | -4.7 | -4.6 | -4.8 | -5.3 | -5.4 | -4.9 | -4.7 | -4.5 | -4.9 | -5.3 | -5.6 | -5.3 | ||
原価 | |||||||||||||||||||||
電力調達 | 0.0 | 1.8 | 2.4 | 2.9 | 3.9 | 4.3 | 3.3 | 10.0 | 9.6 | 11.5 | 13.9 | 14.2 | 12.0 | 10.9 | 11.6 | 11.9 | 13.3 | 12.5 | 11.3 | ||
木質バイオマス | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 19.4 | 9.7 | 19.4 | 19.4 | 19.4 | 19.4 | 9.7 | 19.4 | 19.4 | 19.4 | 19.4 | 19.4 | ||
xxx | 0.0 | 0.9 | 1.1 | 0.8 | 1.5 | 1.6 | 1.9 | 2.1 | 1.9 | 1.9 | 1.7 | 1.5 | 1.8 | 0.9 | 1.1 | 0.8 | 1.5 | 1.6 | 1.9 | ||
市場調達 | 0.0 | 1.6 | 2.1 | 2.6 | 3.4 | 3.8 | 2.8 | 4.7 | 6.8 | 6.3 | 8.5 | 8.9 | 6.5 | 8.3 | 6.6 | 6.9 | 8.1 | 7.4 | 6.1 | ||
交付金 | 0.0 | -0.6 | -0.8 | -0.6 | -1.1 | -1.2 | -1.4 | -16.2 | -8.8 | -16.1 | -15.7 | -15.6 | -15.8 | -8.0 | -15.5 | -15.3 | -15.8 | -15.9 | -16.1 | ||
託送料金 | 0.0 | 1.1 | 1.2 | 1.3 | 1.6 | 1.9 | 1.6 | 5.5 | 5.4 | 5.5 | 5.9 | 5.9 | 5.6 | 5.5 | 5.4 | 5.6 | 5.9 | 6.1 | 5.9 | ||
インバランス | 0.0 | 0.0 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.2 | 0.2 | 0.2 | 0.3 | 0.3 | 0.3 | 0.2 | 0.2 | 0.2 | 0.3 | 0.3 | 0.3 | ||
需給管理委託費 | 0.0 | 0.2 | 0.2 | 0.3 | 0.4 | 0.5 | 0.4 | 1.3 | 1.3 | 1.3 | 1.5 | 1.5 | 1.4 | 1.3 | 1.2 | 1.3 | 1.5 | 1.6 | 1.5 | ||
事業収支割 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.2 | 0.2 | 0.2 | 0.2 | 0.2 | 0.2 | 0.2 | 0.1 | 0.2 | 0.2 | 0.2 | 0.2 | ||
売上総利益 0.0 | 1.7 | 1.3 | 1.4 | 1.1 | 1.6 | 1.9 | 6.2 | 6.4 | 5.1 | 4.8 | 4.5 | 5.8 | 5.4 | 4.3 | 4.7 | 4.3 | 5.6 | 6.2 | |||
粗利益率 - | 34% | 25% | 23% | 16% | 19% | 26% | 27% | 28% | 21% | 18% | 17% | 23% | 23% | 19% | 20% | 17% | 21% | 25% | |||
販売管理費 | 4.3 | 1.4 | 1.4 | 1.4 | 1.4 | 1.4 | 1.4 | 1.4 | 1.4 | 1.4 | 1.4 | 1.4 | 1.4 | 1.4 | 1.4 | 1.4 | 1.4 | 1.4 | 1.4 | ||
人件費 | 2.2 | 0.7 | 0.7 | 0.7 | 0.7 | 0.7 | 0.7 | 0.7 | 0.7 | 0.7 | 0.7 | 0.7 | 0.7 | 0.7 | 0.7 | 0.7 | 0.7 | 0.7 | 0.7 | ||
その他経費 | 2.1 | 0.7 | 0.7 | 0.7 | 0.7 | 0.7 | 0.7 | 0.7 | 0.7 | 0.7 | 0.7 | 0.7 | 0.7 | 0.7 | 0.7 | 0.7 | 0.7 | 0.7 | 0.7 | ||
営業利益 | -4.3 | 0.3 | -0.1 | 0.0 | -0.3 | 0.2 | 0.5 | 4.8 | 5.0 | 3.7 | 3.4 | 3.1 | 4.4 | 4.0 | 2.9 | 3.3 | 2.8 | 4.2 | 4.8 | ||
営業利益率 | - | 6% | -2% | -1% | -4% | 3% | 7% | 21% | 22% | 15% | 13% | 12% | 17% | 17% | 13% | 14% | 11% | 16% | 19% |
表 3-6 に事業性試算結果(年間)を示す。
初年度においては、事業開始にあたって初期費用が発生するため、営業利益率はマイナスとなるが、外部委託を活用した事業スキームを採用し、販売管理費を最小限に抑えることにより、次年度は年間売上約 3 億円、営業利益 4, 650 万円、営業利益率 16%程度となる見込みである。
表 3-6 事業性試算結果(年間)
(金額単位:百万円) | 初年度 | 次年度 | |
収入 | 38.9 | 295.3 | |
売上(高圧) | 46.9 | 360.4 | |
現行割引 | -0.3 | -5.0 | |
燃料調達費 | -7.7 | -60.2 | |
原価 | |||
電力調達 | 18.4 | 142.4 | |
木質バイオマス | 0.0 | 213.3 | |
xxx | 7.7 | 18.7 | |
市場調達 | 16.3 | 85.2 | |
交付金 | -5.7 | -174.7 | |
託送料金 | 8.7 | 68.1 | |
インバランス | 0.4 | 3.0 | |
需給管理委託費 | 2.1 | 16.6 | |
事業収支割 | 0.2 | 2.0 | |
売上総利益 | 9.0 | 63.3 | |
粗利益率 | 23% | 21% | |
販売管理費 | 12.7 | 16.8 | |
人件費 | 6.6 | 8.8 | |
その他経費 | 6.1 | 8.0 | |
営業利益 | -3.7 | 46.5 | |
営業利益率 | -9% | 16% |
基本ケースの電力需給と金銭の流れの状況を図 3-19 に整理した。
電源別の調達割合は市場 58%、木質バイオマス 39%、xxx 3%であり、地域の再生可能エネルギーからの調達割合は 42%となっている。
なお、損失率を考慮しているため、調達電力量の方が需要施設での電力使用量よりも多くなっている。
図 3-19 電力需給の状況(次年度)
3.4.3 環境変化が事業性に及ぼす影響
小売電気事業を取り巻く環境変化によって、事業性が大きく変化する可能性が予想される。そのため、電力の調達価格や需要家獲得規模などのリスク要素が事業の収益性に与えるインパクトを把握した上で持続可能性のある事業計画を作る必要がある。
市場調達価格、燃料価格、低圧需要家の契約数、高圧需要家の獲得規模の 4 つの変動要因について、基本ケースの設定条件を変化させて事業性の試算を行い、小売電気事業を行う上での環境変化が事業性に及ぼす影響を確認した。基本ケースの営業利益(4, 650 万円)から条件変化に伴う変化額を以降に記載する。
① 市場調達価格の変動
図 3-20 に示すように JEPX のスポット市場のシステムプライスは、2013 年度冬季をピークとして下降傾向であったが、燃料価格上昇等の影響を受けて 2016 年 6 月以降は上昇傾向にある。
試算に計上した費用項目のうち、市場調達費(JEPX スポット市場エリアプライス(中部)の単価)を変動させ、事業性に与える影響を確認した。基本ケースで設定した単価から 1 円
/kWh 上昇すると、営業利益は 720 万円減少する。
出所:第 14 回制度設計専門会合(平成 28 年 12 月 19 日) 配布資料 4 自主的取組・競争状態のモニタリング報告
図 3-20 スポット市場システムプライスの推移(2012 年 4 月 1 日~2016 年 9 月 30 日)
表 3-7 基本ケースで設定したスポット市場エリアプライス(中部)の単価
季節 | 曜日 | 時間帯 | 基本ケースに設定した 単価(円/kWh) |
その他季 | 平日 | 昼 | 9.03 |
ピーク | 9.41 | ||
夜間 | 6.76 | ||
休日 | 昼 | 7.05 | |
ピーク | 6.60 | ||
夜間 | 6.57 | ||
xx | 平日 | 昼 | 10.29 |
ピーク | 13.00 | ||
夜間 | 5.56 | ||
休日 | 昼 | 6.91 | |
ピーク | 7.03 | ||
夜間 | 5.40 |
② 燃料価格の変動
試算に計上した費用項目のうち、燃料調整費(燃料費調整単価)を変動させ、事業性に与えるインパクトを確認した。
化石燃料(石炭、石油、LNG)の輸入価格の変動を電力会社が月ごとに算出して電気料金に反映する燃料費調整単価は、中部電力では 2015 年度にマイナスに転じ、以降はマイナス
単価5が続いているものの、石油輸出国機構(OPEC)の減産合意の影響による原油価格の上昇や、円安の進行の影響を受け、2016 年秋ごろから上昇傾向の兆しがある。
燃料価格の下落が更に進んだ状況を想定し、燃料調整費が基本ケースの設定(-3.63 円/
kWh)の 1.5 倍(マイナス燃調が進む)となると、営業利益は 3,000 万円減少する。
一方、燃料価格が上昇に転じた場合を想定し、燃料調整費が 0 円となると、営業利益は
6,000 万円増加する。
図 3-21 中部電力 燃料費調整単価(税込)の推移(高圧)
③ 低圧需要家の契約数
基本ケースでは、一定規模を有する高圧需要家のみへの供給を想定しているが、将来的な供給拡大を想定し、低圧需要家の拡大が 100 件程度の低調であった場合と 1,000 件程度ま
で契約獲得に至った場合の影響を確認した。なお、低圧需要家 1,000 件とはxx市の場合、
全世帯(平成 29 年 2 月 1 日現在:26,548 世帯)の約 4%に相当する。
低圧需要家に供給を行う場合、契約件数(需要家数)の増加に伴い料金計算や請求決済などの顧客対応業務が増加し、業務担当者の人件費をはじめとする販売管理費が増加するため、電力事業担当の従業員は高圧のみの供給の場合は 0.5 人(他業務との兼務者)、低圧へ
の供給する場合には 2 人を想定し、人件費を計上して試算を行った。
契約件数 100 件の場合は販売管理費の増加が売上の増加を上回るため、営業利益は約
1,000 万円減少する。
一方、契約件数が 1,000 件まで増加した場合には、営業利益は 2、000 万円増加する。
④ 高圧需要家の契約規模
5 燃料費調整単価がマイナスの場合、小売電気事業者は単価に使用電力量を乗じた金額を引いた電気料金を需要家に請求する。
基本ケースでは、xx市の公共施設、農林業関係施設の 48 の高圧需要家(契約電力 8,057kW)に電力を供給することを想定しているが、需要家の獲得が想定よりも低調となり、想定の半分程度の 4,000kW であると、営業利益は約 3,200 万円減少する。一方想定の倍の 16,000kW まで獲得した場合には、営業利益は 6,300 万円増加する。
図 3-22 環境変化が事業性に及ぼす影響
4 信州しおじり地域電力供給事業推進協議会における協議について
4.1 小売電気事業で得られる収益の還元策
事業収支試算によって確認された小売電気事業で得られる収益の還元策について協議を行った。需要家、発電事業者、地域、小売電気事業体への還元策と利点・懸念点に関して整理した内容を以降に示す。
(1) 需要家への還元
<還元策>
⬝ 料金プランの割引
✓ 公共施設:電力コスト削減により市の歳出削減に寄与
✓ 農業・林業関係施設:電力コスト削減により事業者の収支改善に寄与
✓ 地元事業者:電力コスト削減による企業活動支援
✓ 市民:地域小売電気事業者と契約した地域住民へ安価な料金プランの提供
⬝ 電気料金とのセット割りなど特色ある料金メニューの提供
✓ ペレットストーブ導入世帯へのセット割や県産木材住宅への料金メニュー提供
<利点>
⬝ 現行契約先から変更する理由の 1 つとなる
⬝ 需要家の電力コスト削減に寄与する
<懸念点>
⬝ 売上の減少
⬝ コストメリットの訴求は取組の主趣旨ではない
木質
バイオマス
xxx
再生可能
エネルギー買取費用
収益
小売電気
事業者
県内山林
電気料金
電気料金
販売
手数料
エネルギー
コスト削減
電気
料金
エネルギー
コスト削減
xx市
エネルギー
コスト削減
電気料金との
セット割など 特色ある料金 メニューの提供
(公社等)
安価な料金
プランの提供
民間
事業者
農林業事業者
市民 地域内
消費
地域外
収益還元 お金の流れ
需要
販売
小売
発電
図 4-1 還元策のイメージ(需要家)
(2) 発電事業者への還元
<還元策>
⬝ FIT 買取制度よりも上乗せした価格での電気の買取
<利点>
⬝ 現行売電先から変更する理由の 1 つとなる
⬝ 発電事業者が地元事業者の場合、地域の資金循環となる
<懸念点>
⬝ 電源調達コストの上昇
⬝ 特定事業者への還元に対する説明・理解が必要
木質
バイオマス
xxx
FIT買取制度よりも上乗せし
た価格での電気の買取
再生可能
エネルギー買取費用
収益
小売電気
事業者
県内山林
電気料金
電気料金
販売
手数料
電気
料金
xx市
(公社等)
民間
事業者
農林業事業者
市民
地域内
消費
地域外
収益還元 お金の流れ
需要
販売
小売
発電
図 4-2 還元策のイメージ(発電事業者)
(3) 地域への還元
<還元策>
⬝ 農林業を切り口とする地域活性化策への原資
✓ 農産物の付加価値化への検討
✓ 林業の再生へむけた活動費
⬝ 地域事業への出資による地域活性化策への原資
✓ 地域のスポーツチームへの出資
<利点>
⬝ 地域活性化策への貢献
⬝ 還元理念に賛同する需要家確保につながる
⬝ 地域における小売電気事業への取組について理解促進につながる
<懸念点>
⬝ 特定領域への便益となる
⬝ 市民をはじめとするステークホルダーの理解が必要
木質
バイオマス
xxx
再生可能
エネルギー買取費用
林業の再生
収益
小売電気
事業者
県内山林
電気料金
電気料金
販売
手数料
電気
料金
地域
活性化策
xx市
(公社等)
地域
活性化策
民間
事業者
地域事業への
出資による地
域活性化策
農林業事業者
市民 地域内
消費
地域外
収益還元 お金の流れ
需要
販売
小売
発電
図 4-3 還元策のイメージ(地域)
(4) 事業体制の強化
<還元策>
⬝ 内部留保
⬝ 人材育成や雇用拡大へ活用
<利点>
⬝ 事業体としての経営安定化につながる
<懸念点>
⬝ 事業体の利益確保は取組の主趣旨ではない
木質
バイオマス
xxx
再生可能
エネルギー買取費用
内部留保
人材育成
雇用拡大
収益
小売電気
事業者
県内山林
電気料金
電気料金
販売
手数料
電気
料金
xx市
(公社等)
民間
事業者
農林業事業者
市民
地域内
消費
地域外
収益還元 お金の流れ
需要
販売
小売
発電
図 4-4 還元策のイメージ(事業体制の強化)
(5) 出資者への還元
<還元策>
⬝ 出資者へ配当金として分配
<利点>
⬝ 出資者が出資決定する理由の 1 つとなる
<懸念点>
⬝ 事業体の利益確保は取組の主趣旨ではない
図 4-5 にxx市(公社等)が主体となり、小売電気事業者を設立した場合のエネルギー地産地消・資金循環スキームを示す。
木質
バイオマス
循環型地域社会の形成
省エネルギーの促進
xxx
再生可能
エネルギー
買取費用
雇用創出
林業振興
収益
小売電気
事業者
県内山林
電気料金
電気料金
エネルギー
コスト削減 税収の増加 PR効果
xx市
(公社等)
販売
手数料
エネルギー
コスト削減 経済活性化農業の振興雇用創出 PR効果
電気
料金
エネルギー
コスト削減 経済活性化産業の振興雇用創出 PR効果
民間
事業者
住民サービス
向上
地域への愛着
意識の醸成
農林業事業者
市民 地域内
消費
地域外
収益還元 お金の流れ
需要
販売
小売
発電
図 4-5 xx市(公社等)主体の場合のエネルギー地産地消・資金循環スキーム
4.2 地域に根差した小売電気事業者の取組事例
地域に根差した小売電気事業者が取組んでいる収益還元策の事例について整理した。需要家への還元策としては料金プランの割引事例、地域への還元策としては地域のスポーツチームへの出資事例を挙げた。
協議会にて提示した内容を以降に示す。
(1) 料金プランの割引事例
• xx市・香取市の2市が共同で平成28年7月に設立
• ベース電源はxx市のごみ発電から、日中は香取市のxxxから電気調達
• 市の発電設備から高い単価で買い取り、両市の公共施設に安い単価で電気を供給
• 小売電力事業者は収益を追求せず、市の財政面におけるメリットを重視
• 電力コスト削減分の還元策として、体育館などの利用料引き下げを検討
xx県 xx香取エネルギー 自治体出資比率:xx市 40%、 香取市 40%
• 地元企業を含めた官民連携により平成27年10月に設立
• 浜松市の出資割合は8.33%であり、民間が主導
• 市内の企業(高圧需要家)に電力を供給し、「市内の企業に安い電力を供給して、企業活動を⽀援し
たい」との狙い
静岡県 xxx電力 自治体出資比率:浜松市 8.33%
• 自治体として初めての新電力として、平成25年10月に設立
• 平成28年7月には家庭を含む低圧需要家への電力販売受付を開始
• 中之条町居住者の場合、東京電力より1%割引の低圧料金プランを提供
群馬県 中之条パワー 自治体出資比率:中之条町 60%※
※:中之条電力の出資比率。中之条電力は平成 27 年 12 月から中之条パワーに特定規模電気事業者としての事業を継承している
(2) 地域のスポーツチームへの出資事例
• プロサッカーチーム「湘南ベルマーレ」と小売電気事業者「エナリス」が共同出資
• xx市はベルマーレの株主
• 事業収益の一部を「湘南ベルマーレ」に還元し、地域活動・活性化資金として活用
• 電気料金の1%が湘南ベルマーレの活動資金に還元される「湘南ベルマーレ」応援プランを用意
神奈川県 湘南電力 自治体直接出資なし
• プロサッカーチーム「水戸ホーリーホック」と看板スポンサーの「スマートテック」が共同出資
• 「水戸ホーリーホック」はホームタウンである水戸市の出資を受ける
• 契約が一定数に到達すると地元のプロサッカーチームが特別試合を開催したり、水戸電力地域貢献アドバイザーである元サッカー日本代表xxxxxによる「水戸電力presentsサッカー教室」開催など草の根レベルの交流を実施
茨城県 水戸電力 自治体直接出資なし
4.3 設立を目指す小売電気事業者の会社内部事項
小売電気事業者の設立に向け、資本金、出資者、出資各者の出資額、役員、会社組織などの会社内部事項について協議を行った。議決権保有割合と経営上の権利について整理した内容を表 4-1 に示す。
自治体が関与する小売電気事業者の中で、自治体の出資比率が過半数を超える事業者は、みやまスマートエネルギー(55%)中之条パワー(60%)などである。自治体が筆頭株主である事業者は、北九州パワー(24.17%)、ネイチャーエナジーxx(37.8%)などがある。少数株主の事業者には、とっとり市民電力(10%)、xxx電力(8.33%)などがある。出資はないものの、事業に対して自治体が支援している事例にはxx県湯沢市のローカルでんきがある。
表 4-1 議決権保有割合と経営上の権利
議決権保有割合 | 権利の内容 |
過半数(50%超) | ⬝ 議決権に応じて決議の成立が単独でが可能 ✓ 50%超:普通決議(取締役・監査役など経営者の選任) ✓ 2/3 超:特別決議(定款変更、監査役の解任、事業の譲渡) ⬝ 過半数の議決権保有者の経営方針に沿った決議が可能 |
筆頭株主 | ⬝ 33 %以上を保有すると経営上の拒否権を得る ⬝ 筆頭株主となれば自社のしたい方向に経営方針を誘導することが可能 |
少数株主 | ⬝ 少数株主権として以下の権利が行使可能 ✓ 会計帳簿閲覧等請求権 ✓ 役員の解散請求権 ✓ 株主招集請求権 ✓ 解散請求権 |
出資なし | ⬝ なし |
xx市または公社等が議決権の過半数を保有(筆頭株主)し、民間事業者と共同出資により設立した場合の小売電気事業者のイメージを図 4-6 に示す。
xx市
支援
人材派遣
市が直接参加し、
自治体主導の小売電気事業者
公共施設
随意契約
行政のネットワークと事業者のノウハウを相互に活用し、官民協働で事業運営
【代表】
過半数の議決権を保有してい
る市の選任者が就任※
【業務】
事業者:営業活動を中心とする
事業運営を担当
市:情報発信や事業の周知を担当
民間施設
農林業施設
(公社等) 出資 (50%超) | |
A社 | |
出資 | |
B社 | |
出資 | |
C社 | |
出資 |
契約
契約
図 4-6
※:出資者の協議により決定する
自治体主導の小売電気事業者のイメージ
自治体の出資はなく、民間事業者のみで設立した場合の小売電気事業者のイメージを図
4-7 に示す。
側面支援
市と小売電気事業者が連携協定を結び随意契約
民間のノウハウを生かした事業者主導の事業運営
【代表】
事業者の協議により決定
【業務】
事業者:事業運営全般を担当市:関係者のコーディネートな
どの側面支援を担当
民間主導の
小売電気事業者
公共施設
xx市
連携協定
農林業施設
A社
出資
B社
契約
民間施設
出資
C社
契約
出資
図 4-7 民間主導の小売電気事業者のイメージ
5 まとめ
5.1 平成 28 年度事業成果概要
◼ 導入可能性調査
設立を目指す小売電気事業者の経済性評価を実施した。xx市の公共施設や協議会構成員の農林業関係施設の需要家データや試算の前提条件の整理を行い、小売電気事業者の事業収支を試算した。
高圧 48 契約(契約電力 8,057kW)に対して木質バイオマス、xxx、市場から調達した電力を供給する事業スキームの場合、専門性が必要となる需給管理業務を外部委託して販売管理費を最小限に抑えることにより、年間約 3 億円の売上に対して営業利益 4, 650 万円、営業利益率 16%程度となる見込みであり、一定規模の事業採算性が確保できる試算結果となった。
◼ 協議会における検討内容
xx市を中心にエネルギー事業者、xx県、学識経験者、市内金融機関、発電事業者・需要家となる地域の企業等が参加して「信州しおじり地域電力供給事業推進協議会」を設立した。平成 28 年度は協議会を 4 回開催し、協議会が目指す事業の計画を説明し、導入可能性調査の結果を提示して設立を目指す小売電気事業者の業務や小売電気事業収益の活用方法について検討を行った。事務局と協議会構成員との間で意見交換を行い、事業への協力の呼びかけを行った。
5.2 今後の課題と対策
平成 28 年 4 月 1 日開始の電力小売全面自由化に先立ち、経済産業省においては、平成 27
年 8 月 3 日から小売電気事業を営もうとする者の事前登録の申請受付を開始した。平成 29
年 2 月 28 日の時点では 442 件の申請があり、うち 383 件の事業者が登録となっている。これまでに LP ガス、都市ガス、通信、放送、鉄道関係など異業種から多数の事業者が小売電気事業に参入している。
地域密着型で小売電気事業を展開する事業者には、自治体が出資を行って事業に参画する事例も増えており、資源エネルギー庁・電力ガス取引監視等委員会調べでは平成 28 年 10
月 11 日の時点で 18 者が存在している。自治体の出資はないものの、事業体設立への協力や地域で行うエネルギー事業へのサポートなど、官民連携の事例もある。
地域に根差した小売電気事業者は、地域内の企業や商店街、自治体などと連携し、地域密着の強みを活かした特色のあるサービスの開発や提供に取組んでいる。
出所:第 15 回制度設計専門会合(平成 29 年 1 月 26 日) 配布資料 6 「電力市場における競争環境の評価」の概要について
図 5-1 受付開始後の小売電気事業登録申請及び登録事業者数の推移
出所:第 15 回制度設計専門会合(平成 29 年 1 月 26 日) 配布資料 6 「電力市場における競争環境の評価」の概要について
図 5-2 自治体から出資を受けた小売電気事業者
CHIBAむつざわエナジー(千葉県睦沢町)
• 睦沢町と地元の民間企業・団体などが設立した地域電力会社
• 商工会議所会員が顧客(一般家庭)を獲得する「代理店」の役割を担う
• 代理店には契約手数料が支払われる仕組み
• 町役場にて切替時の電気料金計算や顧客の管理方法などを商工会議所会員に説明する「代理店研修会」を開催
• 「小さな町(人口7,200人)でも町や商工会のPRにつながる」商工会議
所会長コメント
出所:千葉日報(2016年10月5日)
ひの新選組ポイント運営事務局(東京都日野市)
• 株式会社イーネットワークシステムズ(小売電気事業者)の電気の販売窓口(取次事業者)
• 電気代の1%~6%を市内加盟店での買い物で「ためる」
「使える」地域共通ポイントとして還元
• 地域共通ポイントは商業振興および地域コミュニティーの活性化を目的として行政参加型でスタート
• ポイント運営事務局は日野市商工会議所より委託を受けた一般社団法人Herstoryが運営
出所:ひの新選組ポイントHP
図 5-3 小売電気事業者と連携した地域活性化につながる取組事例
塩尻市においても、地域で自立した電力需給モデルを実現するための中核となる小売電気事業設立に係る事業整備を行うために、本協議会を設置して検討と協議を進めている。
平成 28 年度に小売電気事業者の事業スキームを検討し、経済性の評価を行った結果、一定規模の事業採算性の確保が確認されたが、事業体の設立に向けての課題も明らかとなった。以降に 4 つの課題と現時点で想定している対応策を示す。
小売電気事業者や再生可能エネルギーを取り巻く政策動向や事業環境変化に関する情報収集を行い、次年度以降、協議会にて具体的な対応策について検討しながら合意形成を進める必要がある。
(1) 供給電力に占める再生可能エネルギー比率
◼ 課題
事業目標「供給電力に占める地産の再生可能エネルギー率を 5 割以上」に対し、試算結果は 47%であった。
◼ 対応策
現在想定している地域の再生可能エネルギー発電所(木質バイオマス、太陽光)に加え、近隣の太陽光発電所からの電力調達を行う。平成 29 年度以降に新規調達先の開拓を行う。
(2) 契約電力
◼ 課題
事業目標「小売電気事業の総契約電力 10,000kW」対し、現在の想定契約は 8, 000kW に留まる。
◼ 対応策
協議会構成員以外の需要家への供給を検討するとともに、将来的には商工会議所を中心とした代理店による営業スキーム構築や一般家庭を含む低圧への供給拡大も視野に入れて検討を行う。
(3) 電気料金メニュー
◼ 課題
設立を目指す小売電気事業者が提供する電力の価格について、需要家から現状(中部電力)よりも安価であることが求められている。
◼ 対応策
事業収支試算を行った結果、一定規模の事業採算性が確認されたため、収益の活用方法について協議を行う。先行事例や同時期に採択された他地域(秋田県湯沢市、長崎県五島市、熊本県小国町)の事例を参考として協議を継続し、事業趣旨を反映した提供メニューの検討を行う。
(4) 収益の活用方法
◼ 課題
収益の活用方法は小売電気事業者の設立趣旨(事業体が目指す方向)、出資者及び出資割合(趣旨賛同者への参画)につながる。地域に根差した小売電気事業者の他地域の事例を参考に還元策の利点・懸念点を提示して協議を行ったが、現時点では結論に至っていない。
◼ 対応策
平成 29 年度においても協議を継続し、協議会設立目的である「行政、地域関係者などの関係主体が連携してエネルギーの地産地消を地域の活性化に結び付ける」を反映した活用方法を検討する。
5.3 平成 29 年度の実施予定事項
平成 29 年度は、前年度に行った事業採算性の結果を踏まえ、事業の整備や各種手続きを中心に事業化に向けての検討を推進することとしている。小売電気事業者の設立に向け、資本金、出資者、出資各者の出資額、役員、会社組織などの会社内部事項の決定から着手する予定である。
また、農山漁村再生可能エネルギー法に基づく基本計画の策定にむけた検討を開始する予 d 定である。基本計画には、協議会で議論した地域活性化に資する様々な施策を反映する意向である。
平成 29 年度に実施を予定している事項を表 5-1 に示す。
表 5-1 平成 29 年度の実施予定事項
項目 | 内容 |
会社内部事項の決定 | ⬝ 小売電気事業者の設立に向け、資本金、出資者、出資各者の出 資額、役員、会社組織などを決定する |
サービスメニューの設計 | ⬝ 需要家に販売する電力のサービスメニューや販売料金、各種オプション・割引を設計する ⬝ 発電事業者から購入する電力に対するインセンティブの設計 (プレミアム買取や需要側での割引など)を行う |
導入システムの選定 | ⬝ 需給管理システムや請求・決済システムなど、必要となるシス テムを選定する |
小売電気事業者の運 営体制の検討 | ⬝ 事業を運営するにあたって発生する実務、および必要な人材要 件を整理したうえで、実質的な組織・体制を検討する |
ファイナンスの検討 | ⬝ 事業計画をアップデートしつつ必要となる初期投資および運営後の運転資金などの資金計画を作成し、金融機関を含めて調達 方法を検討する |
地域活性化策の検討 | ⬝ エネルギーの地産地消の取組から波及する地域活性化策(農産物の高付加価値化、林業の再生、地域ブランド化など)を検討する。 ⬝ チャネルを担う団体(農業協同組合だけでなく生活協同組合な どの流通チャネルを含む)への意見聴取や協業の検討を行う |
地域関係者への説明・協議 | ⬝ 事業への実質的な参加者の他に、地域関係者に対して事業説明および意見交換会などを実施し、事業実現にあたっての合意形 成を図る |
再生可能エネルギー基本計画の検討 | ⬝ 農山漁村再生可能エネルギー法に基づく基本計画の策定に向けて、協議する ⬝ 本事業の協議会で議論した地域活性化に資する様々な施策を反 映できるよう、協議する |