a 裁判官 b 公共部門に期限の定めなく雇用されている者
カンボディア労働法 1997 年 3 月 13 日成立
(翻訳:xxxx 神戸大学名誉教授・大阪女学院大学名誉教授)
第 1 編 一般条項第1章 適用範囲
第1条 本法は、契約締結場所や契約当事者の国籍や居住地にかかわらず、カンボジア国内の領域で施行される労働契約から生じる使用者と労働者の関係を規律する。本法は、公的、準公的、民間の違い、宗教、非宗教の違い、専門教育、慈善的性格の違いを問わず、すべての企業、産業、鉱山、商業、手工業、農業、サービス業、陸上およびxx輸送業の事業所に適用し、さらに専門団体やいかなる性格の集団にも適用される。
本法は、一時的に任用される公共部門の職員と同様に、公務員法や外交法によって規律されないすべての者に適用される。
本法は、以下の者には適用されない。
a 裁判官
b 公共部門に期限の定めなく雇用されている者
c 個別の法律によって規律される警察、軍、軍警察の者
d 特別法によって規律される航空および海上輸送に従事する者、本法によって結社の自由に関する規定が適用になる者である。
e 家事労働者、本法に特別な明確な規定がある場合は除く。本法によって結社の自由に関する規定が適用になる者。
第2条 すべての自然人または法人は、公共部門であろうと民間部門であろうと、一時的であっても1人以上の労働者を雇用する限り、本法において企業を組織する使用者とみなす。
すべての企業は、使用者の管理監督のもと、工場、作業場、職場等々の定められた場所で共に働く人を雇用する複数の事業所から構成される。
前項の事業所は常に企業の監督のもとにある。事業所は 1 人だけ雇用することもできる。事業所が1つしかない場合や独立している場合、当該事業所を企業とみなす。
第3条 本法において、「労働者」は、性別や国籍に関係なく、自然人や法人、公共部門か民間部門を問わず、他の者の指揮監督のもとで、対価として報酬を受け取るという労働契約に署名をした者である。労働者の特徴を判断するにあたって、使用者や労働者の力がおよぶ範囲や報酬の額を考慮してはいけない。
第4条 「家事労働者」は、報酬を受ける代わりに、家主や家主の財産の世話をおこなう者である。
第5条 「従業員や補助者」は、報酬を受ける代わりに、他の者を援助することを契約し
た者をいう。ただし、完全に肉体労働だけに従事する者ではなく、偶然に肉体労働に従事する者を含む。
第6条 「労務者」は、家事労働者ではなく、使用者やその代理の者の指揮監督のもとで、報酬を受け取る代わりに主に肉体労働に従事する者をいう。労務者の地位は、報酬の支払方法とは関係なく、もっぱら仕事の性質によって決定される。
第7条 「職人」は、動力を使っているかどうか、看板を掲げる店を持っているかどうかを問わず、自宅やその外で、一人で、または配偶者や家族の無償の手伝いを受け、または従業員や徒弟の援助を受けて、自己の勘定で手仕事をおこなう者であり、主に自ら制作し販売する者をいう。その仕事場は自ら指揮のもとにある。
職人のために定期的に働く家族でない労働者の数は 7 人を超えてはならない。それを超えた場合は、職人の地位を失う。
第8条 「徒弟」は、徒弟に業務を教えることを契約した使用者または職人との間で徒弟契約を結んだ者をいう。その代わりに、徒弟は、契約の条件や文言に従って、使用者のために働かなければならない。
第9条 雇用の安定性に応じて、労働者は区分される。xx労働者
不安定な労働に従事する臨時労働者
xx労働者は、永続的に仕事をおこなう者である。臨時労働者は、次の契約を行った者である。
通常、短期間で完了する特別な仕事をおこなう一時的、周期的、かつ季節的な仕事をおこなう
第10条 臨時労働者は、別の定めがある場合を除き、xx労働者と同じ規則に従い、同じ義務や権利を有する。
第11条 労働者は、報酬の支払方法に応じて、次のように区分される。
(月、日、時間)単位で報酬が計算され、毎日、15 日毎または 1 か月を超えない間隔で報酬の支払いを受ける労働者
生産高や出来高によって報酬を受ける労働者歩合制で報酬を受ける労働者
第2章 非差別
第12条 女性と児童を保護する本法やその他の法律の規定や外国人の入国や居住に関する規定において別に定めがある場合を除いて、使用者は以下のことを考慮してはならない。
人種 肌の色性別
信条宗教
政治的意見出生
社会的出自
労働組合員または労働組合活動をしていること以下の決定をおこなう場合に、先の規定を準用する。
雇用
仕事の決定と割り当て職業訓練
昇級昇進賃金
社会的給付の付与
懲戒処分や雇用契約の終了
特定の業務に求められる資格に基づく区別、拒否または受容は、差別とはみなされない。
第3章 公共の秩序
第13条 本法の規定は、明確に例外が定められていない限り、公共の秩序の性質を有する。従って、一方的決定により定められた規則、本法や施行されている法律文書の規定を順守しない契約や合意は無効となる。
適用を制限できない本法の規定を除き、本法の公共の秩序の性質は、本法に定める利益や権利をうわまわる利益や権利を付与することを妨げないし、使用者や使用者団体の一方的決定、雇用契約、労働協約、仲裁裁定によって付与される利益や権利をうわまわる利益や権利を付与することを妨げない。
第4章 公表
第14条 使用者は、労働者代表のために、第 1 条に定めるすべての企業や事業所に、労働法の写しを少なくとも 1 部を備えなければならない。
第5章 強制労働
第15条 強制労働は、1969 年 2 月 24 日カンボジアが批准した強制労働に関する国際労働条約 29 号に従い、絶対に禁止される。
本条は、家事労働者や農業の企業や事業における労働者を含むすべての労働者に適用になる。
第16条 債務返済のための雇用は禁止される。
第 2 編 企業
第1章 企業の開設と閉鎖の申請
第17条 本労働法が適用されるすべての使用者は、企業または事業所を開設する際に労働担当省に申請しなければならない。この申請は、企業や事業所の開設の申請をいい、書面でおこない、その書面を開設前に労働担当省に提出されなければならない。
常時 8 名以下を雇用し、機械を使用しない使用者は、企業や事業所の開設した日
から 30 日以内に、申請を労働担当省に提出しなければならない。
第18条 企業閉鎖については、使用者は企業閉鎖後 30 日以内に労働担当省に申請しなければならない。
第19条 労働担当省令が、申請の様式と手続を定めるものとする。
第20条 すべての使用者は、労働監督官によって番号が付けられ、署名された事業所登録番号簿が保管される。登録簿のひな型は労働担当省令によって定められれる。
第 3 章 労働者の移動についての申請
第 21 条 すべての使用者は、労働者を雇用または解雇する毎に、労働担当省に申告しなればならない。
この申告は、雇用や解雇後遅くとも 15 日以内に、書面で行われなければならない。
この期限は農業企業では 30 日に延長される。
雇用および解雇の申告は、以下の場合には適用されない。
30 日未満の期間の臨時労働者
断続的に雇用され、連続した 12 か月のうち実際の雇用期間が 3 カ月を超えないもの
第 4 章 企業の就業規則
第 22 条 第 17 条に定める企業または事業所で、8 人以上の労働者を雇用するすべての使用者は、就業規則を作成しなければならない。
第 23 条 就業規則は、企業または事業所の形態に応じて本法の一般的条項や、さらに企業 または事業所の活動分野に関連する労働協約が定める一般的条項に適合させる。ここには雇用条件、賃金や諸手当の計算や支払方法、現物給付、労働時間、休 憩・休日、予告期間、労働者の健康・安全対策、労働者の義務および労働者に 科される罰則に関する条項を含む。
第 24 条 就業規則は、企業開設後3か月以内、またはすでに企業が開設されている場合本法公布後 3 か月以内に、労働者代表と協議した後、企業の管理者によって作成されなければならない。
就業規則は労働監督官の認証を得て、発効する。労働監督官は、60 日以内に認証を発行しなければならない。
第 25 条 本法や規則、または企業に適用になる協定や労働協約に定める労働者の権利を抑
制したり、制限する就業規則は無効とする。
労働監督官は、有効な法律や規則に基づく規定を就業規則に含むことを求めるものとする。
第 26 条 使用者またはその代表者の 1 人が労働者の非行を知ってから 15 日以上経過した場合、労働者を懲戒処分に付すことはできない。
使用者が労働者の重大な非行を知ってから 7 日以内に解雇しない場合、当該重大な非行を理由として解雇する権利を放棄したものとみなされる。
第 27 条 懲戒処分は非行の程度に比例したものでなければならない。労働監督官は懲戒処分の相当性を監督する権限を有する。
第 28 条 使用者は、罰金を科すことはできないし、非行に対して二重に処分を科すことはできない。罰金とは、通常の仕事に対して支払われる報酬を減額させることをあらゆる手段を意味する。
第 29 条 就業規則は、周知され、作業場内や作業場のドアで容易に閲覧できる適切な場所に掲示されなければならない。
就業規則は常時、判読できる良好な状態に維持しておかなければならない。
第 30 条 就業規則の改正は、企業または事業所に適用になる規定に従わなければならない。第 31 条 8 人未満の労働者を雇用し、就業規則を持たない企業または事業所において、使
用者は、労働者の重大な非行に対して、戒告、けん責、6 日を超えない期間の無給の停職、または予告のない解雇を申し渡すことができる。
第5章 雇用票
第 32 条 カンボジア国籍を有する者は、いかなる使用者の下で働いても、雇用票を所持しなければならない。
前項の規定に従わない労働者を雇用し続けることはできない。第 33 条 季節農場労働者は雇用票を保持することが任意とする。
第 34 条 雇用票は、保持者、契約した労働の性質、雇用期間、合意した賃金額、支払い方法、引き継がれる契約を確認することを目的とする。
雇用票を作成された目的以外に利用することは禁止される。
労働者が使用者の仕事から去る場合、使用者は雇用票にいかなる評価を書き加えてはいけない。
第 35 条 雇用票は、監督官庁が発行した身分証明書および使用者が発行する雇用証明書を提示する労働者の請求にもとづき、労働監督官によって作成され、発行される。
第 36 条 雇用票の発行に費用がいる。徴収された費用は国庫に入る。発行費用と徴収方法は財務省と労働担当省の共同の省令によって定められる。
第 37 条 労働者の採用および解雇、賃金と賃金増額は雇用票に記載されなければならない。使用者による前項の記録は、労働監督官の認証を受けるために、労働者の雇用および退職の日の翌日から 7 日以内に提出されなければならない。
第 38 条 雇用票の紛失は労働監督官事務所に申告しなければならない。雇用票発行時と同じ内容の複製が再発行される。
第5章 賃金台帳
第 39 条 第 17 条の適用を受ける企業または事業所のすべての使用者は、常時労働担当省令によって定められる様式で賃金台帳を備えなければならない。賃金台帳は。使用する前に、労働監督官によってすべての頁に番号を付け、署名されなければならない。
賃金台帳は、検査のときに直ちに利用できるように各企業の経理部または本部に保管しておかなければならない。使用者は、使いきった日から 3 年間、保管しておかなければならない。
労働監督官はいつでも賃金台帳を閲覧することができる。第 40 条 賃金台帳には以下の事項を記録しなければならない。
企業に雇用される労働者の情報
仕事、賃金、休暇に関するすべての指標
第 41 条 企業は、違う方式の賃金台帳に、同じ種類の情報を記載し、同じ方法で検査することを希望する場合、労働監督官事務所に申し入れることができる。
第6章 売店
第 42 条 「売店」とは、使用者が直接また間接に、労働者やその家族のために、個人的な需要にあわせて食品やその他の商品を販売する場所をいう。
売店は以下の条件のもとに認められる。
1 労働者がその店だけでのみ利用することが義務づけられていない
2 使用者またはその店の管理人が商品の販売から利益を上げることが認められない
3 売店の経理が企業の経理と完全に区分けされていること
4 商品の価格が見える形で表示されていること第 43 条 売店の開設は労働担当省令によって定められる。
労働監督官は、労働者代表が運営にかかわっている売店を監督する。労働監督官は、労働担当省の最終判断がなされるまで、売店を一時閉鎖することを命じる権限を有する。
第8章 保証
第 44 条 使用者は、雇用契約の署名や維持のために、金銭やいかなる形態の保証も求めてはならない。
第9章 労働請負の特徴
第 45 条 労働請負人は、事業主と契約し、特定の仕事の実施や決まった金額のもとで提供する仕事のために、自ら必要な人を募集する請負人という。
前項の契約は書面で行われる。
第 46 条 労働請負人や下請によって労働者を搾取または過小評価することは禁止される。第 47 条 労働請負人は、通常の使用者と同様に本法の規定を順守し、同じ義務を負う。 第 48 条 労働請負人が破産や債務不履行に陥った時、企業主または企業経営者は労働者へ
の義務履行のために、請負人の代わりを務めなければならない。
前項の場合、損害を受けた労働者は、事業主や企業経営者に直接訴訟を提起することができる。
第 49 条 労働請負人は、自らの地位、事業主の名前および住所を仕事がおこなわれる各作業場または職場に見やすい場所に掲示しなければならない。
第 50 条 事業主は、常時、契約した労働請負人のリストを閲覧できるようにしておかなければならない。労働請負人の名前、住所、地位を記載したリストを、労働契約を締結した日の翌日から 7 日以内に、労働監督官に送付しなければならない。
前項の期限は、農業企業や事業の場合は 15 日に延長される。
第 3 編 徒弟
第1章 徒弟契約の性質と様式
第 51 条 徒弟契約は、産業または商業の事業所の経営者、職人または職工が、合意した条件と期間のもとで、徒弟として労働することを契約した者に対して、労働の見代わりに、統一しかつ系統的な専門的訓練を提供することを内容とする契約をいう。この期間は 2 年を超えることはできない。
第 52 条 徒弟契約は 2 週間以内に履行されるxx証書や私的な協定によってなされ、そうでなければ無効となる。
第 53 条 労働監督官が定めた規則がない場合、徒弟契約は、その職業の慣習に従い、その職業の教えを受ける者の代表の同意を得て締結されなければならない。
徒弟契約には以下の事項が含まれなければならない。
1 指導者の名前、年齢、職業、住所
2 徒弟の名前、住所
3 徒弟の両親、保護者、両親から委任された者の名前、職業、住所
4 契約日、契約の期間、徒弟がうける職業
5 徒弟の報酬の条件、すべての現物給付、食事、宿泊施設その他両者が合意した物品
6 企業経営者が徒弟に教える約束した訓練の範囲
7 契約終了時に支払われる補償金
8 指導員および徒弟の主な義務
徒弟契約は指導員と徒弟が署名をしなければならない。徒弟が未xxの場合、徒弟の法定代理人と指導員が署名することができる。労働監督官は徒弟契約を審査
し、連署し、登録しなければならない。
第2章 徒弟契約の条件
第 54 条 21 歳未満の者、2 年以上技術者、訓練者、職工または熟練工としての経験のない者は指導者になることはできないし、徒弟を引き受けることはできない。
指導員が認定された学校や専門的訓練センターで理論的かつ実務的訓練の学位を持っている場合、訓練の期間は 1 年に短縮することができる。
第 55 条 使用者、徒弟担当訓練者は、女性の未xxの徒弟と同じ家に住むことはできない。徒弟指導者や徒弟訓練担当者には以下の資格を持たない者はなれない。
1 有罪判決を受けた者
2 地方の慣習に反して有罪となった者
3 窃盗、詐欺、横領、汚職の罪で刑務所に収監されたことがある者
第 56 条 労働担当省令は、18 歳以上の 10 代の者が徒弟となることができる職業や仕事の範囲を定める。
適切な職業訓練を受けた後、徒弟は労働者として扱われる。
第 57 条 60 人以上の労働者を雇用している企業では、徒弟の数を当該企業で働いている労
働者の 10 分の 1 としなければならない。
企業で雇用される徒弟の最大数は、労働者の総計に関係なく、人員および設備の可能範囲内で、労働担当省令によって決定する。
労働担当省令によって金額や支払い方法が定められた徒弟税の支払いを請求された企業に対して、労働監督官は決定によって本条1項の義務を免除することができる。
第3章 指導員と徒弟の義務
第 58 条 指導員は、住居の内外で、徒弟の行動や態度を監視して徒弟との間に親子のように振る舞い、徒弟が重大な違反行為を犯し、間違った性向が示された場合には、その両親や法定代理人にその事実を報告しなければならない。さらに、指導員は、徒弟の病気、欠席その他の問題を直ちに両親が介入できるように、両親に報告しなければならない。
指導員は、徒弟を加重な労働や、徒弟の職業に関係のない仕事に従事させてはならない。
第 59 条 指導員は、徒弟に契約の目的になっている職業について徐々にかつ完全に教えなければならない。さらに、徒弟が職業訓練センターでの訓練を希望する場合、あらゆる便宜や機会を提供しなければならない。
徒弟期間が終了し、中立の試験委員会によって実施される公的試験の後、両当事者による契約履行および徒弟の専門技術に関する証明書が授与される。
第 60 条 徒弟は、徒弟として指導員に従い、尊敬しなければならない。徒弟は、最善を尽くして指導員を補助しなければならない。徒弟は、職務上の秘密を守らなけれ
ばならない。
第 61 条 徒弟に契約違反をそそのかした者は、徒弟が辞めた事業所または作業場の経営者に損害を賠償しなければならない。その賠償は、いかなる場合でも、前の使用者が実際に被った損害を上回ることはない。
徒弟契約の義務を履行する前や契約満了前になされる新しい徒弟契約が無効となる。
第4章 徒弟制度の監督
第 62 条 訓練計画の作成、徒弟期間中の監督、最終試験、試験委員会の設置方法などの徒弟監督体制は、労働担当省令によって定められる。
試用期間を含む徒弟の期間に関する規則は、徒弟の専門技能、技術や知識の程度、ならびに徒弟期間中に訓練してきた経験や専門的向上の程度に応じて、労働担当省令によって定められる。
第5章 徒弟契約の終了第 63 条 徒弟契約は次の場合に、合法に終了する。
1 指導員または徒弟の死亡
2 徒弟または指導員は軍に従事する場合
3 指導員または徒弟が重犯罪や軽犯罪で収監された場合
4 作業場や企業の閉鎖
第 64 条 徒弟契約は、一方当事者または双方当事者による申し出によって終了させることができる。
1 一方当事者が契約内容を履行しなかった場合
2 本章の規定に重大または恒常的に違反する場合
3 徒弟が、就業規則をまったく尊重しない場合
指導員が契約締結日の住所以外の県や郡に移動させた場合、ただし、この理由によって契約を終了させる請求は、移動の日から 3 か月以内の場合にのみ、認められる。
一方当事者が不当に徒弟契約の終了によって被害を受けた場合、他方当事者に補償を求めることができる。
第 4 編 労働契約
第1章 労働契約の署名と履行
第 65 条 労働契約は労働者と使用者の間に労働関係を生み出す。労働契約は一般法に従い、契約当事者の合意によって成立する。
労働契約は口頭または書面でなされる。地方の慣習に従い作成され、署名がなされる。登録が必要な場合、無償で登録がなされる。
口頭による契約は、明確に定められていない場合、使用者と労働者の間で黙示に同意がされたものとする。
第 66 条 すべての者は、期間を定め、または定めないで、特定の業務に雇用される。第 67 条 期間の定めのある労働契約には、明確に終了の日を含まなければならない。
期間の定めのある労働契約の期間は、2 年を超えることはできない。期間の定めのある労働契約は、2 年を超えない範囲で 1 回以上更新することができる。
前項の規定に違反する場合、期間の定めのない労働契約とする。 労働契約は、以下の定めの場合には、期間終了がするものとする。
一時的に欠勤している労働者の後任者が配置されたが、その労働者が復職しまたは労働契約が終了する場合
季節的に実施される仕事で、当該季節が終了
臨時の追加された仕事の終了や、企業で通常おこなわない仕事の終了労働契約署名の際に、使用者は労働者に重要な事項や適切な更新の期間について知らせなければならない。
明確な日付のない労働契約は、可能なかぎりなんどでも更新することができる。短期の仕事で 1 日単位や 1 週間単位で雇用され、1 日、1 週、隔週の終わりに支払いを受ける労働者の契約は、終了日の定めのない有期の労働契約とみなす。 有期の契約は書面でなければならない。そうでない場合は、無期の労働契約となる。
2 年未満の期間の有期の労働契約は、期間終了後も平穏に異議なく労働が継続している場合、当該労働契約は期間のない労働契約となる。
第 68 条 試用期間のための契約は、使用者が労働者の職業能力を判断するため、または労 働者が労働条件を具体的に知りうるために必要な期間を超えることはできない。ただし、試用期間は、xx労働者の場合は 3 か月、専門的仕事の場合は 2 か月、 専門性のない仕事の場合は1か月を超えることはできない。
居住地から離れた場所で勤務している場合、試用期間中の交通費は使用者が支払う。
第 69 条 労働者は、契約の範囲内で、企業のために、職業上の活動を実施しなければならない。労働者は、雇用された根拠となる仕事を、相当な注意を払っておこなわなければならない。
別段の合意が存在する場合を除き、労働者は、労働時間外に、自分の仕事と競合しない企業や、仕事に悪影響を与えない活動をおこなうことができる。
第 70 条 契約終了後に、労働者にいかなる活動をも禁止する契約内容は無効である。
第2章 労働契約の停止第 71 条 労働契約は以下の場合に、停止される。
1 使用者が兵役に就く、または、軍事訓練に参加するために事業所を閉鎖磨る場合
2 兵役や軍事訓練のために労働者が欠勤する場合
3 資格のある医師の診断する病気で労働者が欠勤する場合。この期間は最長 6
か月とする。ただし、後任者が現れるまで延長することができる。
4 労働災害や職業病によって仕事ができない期間
5 女性の妊娠出産および産後の疾病のための欠勤の期間
6 法律、労働協約、個別の合意により使用者が認めた労働者の欠勤の期間
7 就業規則に従って、正当な理由に基づく労働者の一時解雇
8 有給休暇とそれに付随して行われる旅行期間を含む欠勤
9 有罪判決前の拘留期間
10 最大 3 か月に及ぶ一方当事者による義務履行が不能となった期間
企業が重大な経済的困難、物質的困難、または特別にまれな困難に直面して、操業を停止した場合、この中止は2か月を超えてはならず、労働監督官の監督におかれる。
停止の理由がなくなり、法律に従って事前の予告があれば、使用者は停止した契約を終了させることができる。
第 72 条 労働契約の停止は、労働契約の主たる義務、つまり、労働者の労務提供義務、さらに、使用者の労働者への賃金支払義務に影響を与える。ただし、賃金支払を求める別の規定がある場合は除かれる。
使用者の宿泊施設提供義務、労働者の企業への忠誠義務、秘密保持義務は、労働契約停止中であっても効力を有する。
労働契約の停止は、労働組合の命令や労働者代表の権限を停止させない。
労働契約の停止は、雇用上の先任権を計算するときに考慮される。ただし、別の定めがある場合は除く。
第3章 労働契約の終了 A 有期労働契約
第 73 条 有期労働契約は、通常契約終了日に終了する。ただし、契約終了日以前に、両当事者が労働監督官の面前で両当事者が作成し、合意する場合、この限りでない。両当事者が合意しない場合、有期労働契約は、重大な非行や不可抗力の場合にのみ、契約終了日前に終了することができる。
前 2 つの理由以外で使用者の意思のみでの有期労働契約の終了日までの終了は、労働者に、少なくとも契約終了時までに得られる報酬に相当する額の賠償金を請求する権限を与える。
前2つの理由以外で労働者の意思のみで有期労働契約の終了日までの終了は、使用者に、発生した損害に対する賠償金を請求する権限を付与する。
有期労働契約の期間が6か月以上の場合、使用者は、契約期間終了の 10 日前に、労働者に対して契約の終了または更新しないことを予告しなければならない。予告期間は、1 年以上の契約期間の場合には、15 日とする。事前の予告がされない
場合、労働契約は以前の契約期間と同じ期間延長されるか、または 67 条の期間制限を超える場合には、無期労働契約とみなされる。
期間終了時に、使用者は、労働者に対して、賃金や契約期間に応じた退職金を支払わなければならない。その額は労働協約によって決められる。労働協約に定めがない場合、退職金額は少なくとも契約期間中に支払われた賃金の 5%相当の額とする。
有期労働契約が、期間の経過によって無期労働契約に転化した場合、労働者の雇用上の先任権は、両契約の期間が通算される。
契約終了時に、労働者は、使用者に対して、雇用証明書の交付を求めることができる。
B 無期労働契約
第 74 条 無期労働契約は、契約の一方当事者の意思によって終了させることができる。この場合、当事者は事前に相手方に書面で予告しなければならない。
労働者の意欲または態度に関係する正当な理由がない場合、または企業、事業所または団体の操業の必要性に基づく正当な理由がない場合、労働者を解雇することはできない。
第 75 条 | 事前の予告期間は以下のとおりとする。 | |
労働者の勤続期間が6か月未満の場合 | 7 日 | |
労働者の勤続期間が6か月以上 2 年以下の場合 | 15 日 | |
労働者の勤続期間が 2 年を超え、5 年以下の場合 | 1 か月 | |
労働者の勤続期間が 5 年を超え、10 年以下の場合 | 2か月 | |
労働者の勤続期間が 10 年を超える場合 | 3 か月 |
1か月単位で雇用されていない労働者の勤続期間の計算は、労働担当省令によって定められる。
第 76 条 前条の定める期間よりも短い期間を定める労働契約、就業規則、その他の個別の合意による期間は無効とする。
第 77 条 使用者が自分の意思で、事前の予告なく、または予告期間を順守しないで、労働者の契約を終了させた場合、予告期間中に受け取るはずの賃金およびすべての給付に相当する金額を使用者は補償しなければならない。
第 78 条 事前予告は、第 1 条に定める企業や事業所において、一方的に契約を終了させる労働者および使用者が順守すべき義務である。ただし、重大な非行以外の理由で解雇される労働者は、予告期間中に新しい仕事を見つけた場合には、予告期間前に企業を退職することができる。この場合、労働者は使用者に賠償金を払うことは求められない。
第 79 条 予告期間中、労働者は新しい仕事を探すために、週あたり 2 日の休暇を取ることができる。
この休暇は計算方法にかかわらず、通常の報酬額に応じて支払われる。この支払いにはその他の手当も含めなければならない。
第 80 条 請負や出来高払いの仕事の場合、労働者は、通常、仕事が完了するまで割り当てられた仕事を放棄してはならない。
ただし、1か月以内で終了しない長期の雇用については、重大な理由で契約上の義務を免れることを希望する一方当事者は、他方当事者に 8 日前の予告をすれば、契約上の義務を免れる。
第 81 条 事前予告期間中、使用者および労働者は、それぞれに課された義務を履行しなければならない。
第 82 条 契約当事者は、以下の場合に、事前の予告義務を免れる。
1 試用期間またはインターンシップの期間
2 一方当事者に重大な非行がある場合
3 不可抗力によって一方当事者が義務を履行できない場合第 83 条 以下が重大な非行に該当する。
A 使用者側
1 詐術を用いて労働者をだまし、労働者がそれに気付けば合意しない条件で契約を締結させる行為
2 賃金の一部または全部を支払わないこと
3 賃金支払いの繰り返される遅延
4 暴言、脅迫、暴力または暴行
5 出来高払いの労働者に十分な仕事を与えないこと
6 現行法に求められる職場の労働健康や安全の措置を講じないこと B 労働者側
1 窃盗、着服、横領
2 契約署名時の詐欺行為(偽造文書の提示)、雇用中の詐欺行為(怠業、雇用契約内容を順守しない行為、職業上に知りえた機密事項の暴露)
3 懲戒、安全、健康の規定に重大な違反行為
4 使用者または他の労働者への脅迫、暴言または暴行
5 他の労働者に重大な不履行をそそのかす行為
6 事業所における政治的プロパガンダ、活動またはデモ行為
第 84 条 労働裁判所が設置されるまで、一般裁判所が前条の重大非行以外について、判断する権限を有する。
第 85 条 使用者は、以下の場合に、第 82 条 3 項の義務を履行できないことになる。
1 当局による事業所の閉鎖
2 物質的破壊をもたらし、長期間労働に復帰することが不可能になる大惨事(洪水、地震、戦争)、使用者の死亡によって、事業所が閉鎖される場
合、事前予告期間中に受け取るべき補償額と同額の補償を労働者は受け取ることができる。
第 86 条 労働者は、以下の場合に、第 82 条 3 項にいう義務を履行できない状態にある。
1 慢性的病気、精神障害、永続的障害
2 刑務所への収監
使用者は、前号の事由の場合、事前の予告義務を免れることはない。
第 87 条 相続、承継、売却、合併、会社の資本移転によって使用者の法的身分に変動がおきた場合、すべての労働契約は、変動の日から、新たな使用者とそれ以前の企業の労働者間の有効な労働契約となる。
本章に定める以外の条件のもとでは契約を終了することはない。
不可抗力の場合を除き、使用者は、企業閉鎖を理由に、第 3 章に定める義務を免れることはできない。倒産や裁判所による清算は不可抗力とはみなさない。
第 88 条 労働担当省令によって定められるリストの中で季節的業務の場合に、期間終了によって労働者は解雇にはならず、賠償の義務は発生しない。ただし、使用者は、労働期間終了の 8 日前に書面でその旨を予告し、当該書面を各職場の主要な入口または船の上に作業場がある場合は各船にはり出さなければならない。
C 解雇補償
第 89 条 労働者の重大な非行以外で、使用者が労働契約を終了させる場合、本章に定められた事前の予告に加えて、次の解雇補償を支払わなければならない。
企業での継続勤務が 6-12 か月の場合 6 日分の賃金と付加給付 12 か月以上勤務の場合 1 年あたり 15 日分の賃金と付加給付最大の補償として6か月分の賃金と付加給付を超えてはならない。労働者の勤続期間が 1 年を超えている場合、6か月以上の勤務は 1 年とみなす。
健康を理由として解雇された場合、労働者は、補償金の支払を受ける権利を有する。
第 90 条 使用者は、解雇の補償金を労働者に支払う義務がある。使用者によって契約が終了されていなくても、使用者の悪意によって契約を終了せざるをえない場合においては、労働者は損害賠償を請求することができる。使用者が労働者を不xxに扱い、または、繰り返し契約に違反する場合に、使用者は労働者に対して、損害賠償を支払わなければならない。
第 91 条 正当な理由のない一方当事者による契約の終了は、他方当事者に損害賠償を請求する権利を与える。
損害賠償は、事前の予告にかわる補償および解雇補償とは異なる。ただし、労働者は一括で解雇補償金と同じ額の損害賠償金の支払いを求めることができる。この場合、損害額を立証する義務を負わない。
第 92 条 労働者が不法に労働契約を破棄し、新しい仕事に従事した場合、新しい使用者が、労働者に対してやめるように勧めたことが立証された場合には、新しい使用者と労働者は連帯して前の使用者に損害賠償を支払う義務を負う。
第 93 条 労務提供をおこなった労働者は、契約期間満了時、使用者に対して、雇用開始日、離職日、さらに仕事の種類、仕事の経歴、仕事の期間を記載した雇用証明書の発行を求めることができる。
証明書発行を拒否した場合、使用者は労働者に損害賠償を支払わなければならない。
雇用証明書に第 1 項に定めた事項以外のことを含めても、借用書、領収書、および従課税に従う合意が含まれないかぎり、雇用証明書は、印紙税や登録税は課せられない。
「債務を一切負わない」という文言、および通常の労働契約の期間、職業上の労働者の雇用に不利益な内容を雇用証明書に記載してはならない。
第 94 条 第 91 条に規定にかかわらず、正当な理由のない労働契約違反の場合の損害額は、
第 89 条の規定に基づく使用者の損害額と同様に、管轄権のある裁判所により、地方の慣習、提供された仕事の種類や重要性、労働者の先任権や年齢、退職金のための支払控除や支払い、さらに、生じた損害の有無や範囲を証明できる状況に基づいて決定される。
E 集団的解雇
第 95 条 事業所の業務の縮小、使用者が予見することができた内部組織の再編による解雇は、以下の手続に従う。
使用者は、事業所内での職業上の資格、先任権、家族の負担を考慮して解雇命令を出す。
・使用者は、主に従業員減少について事前に通知する手段や、影響を受ける労働者に解雇の影響を最小限にする手段についての助言を得るために、書面で労働者代表に通知しなければならない。
・最も職業上の能力の低い者、次いで、勤続年数の短い者から解雇される。既婚者には 1 年ごとに先任権が加算され、扶養している子どもの数だけの年数が加算される。
解雇された労働者は、2 年間、企業の同じ地位に復職する優先権を有する。 優先的に再雇用される労働者は、解雇後住所変更を使用者に通知しなければならない。
職に空席がある場合、使用者は、該当する労働者に、配達記録付または書留郵便で、当該労働者の最新の住所に通知しなければならない。通知を受け取った労働者は1週間以内に事業所に出なければならない。
労働監督官は、本条の手続についての連絡を受け取る。労働者代表の求めを受
けて、労働監督官は予定された解雇の影響およびその影響を最小にするための措置を調査するために、当事者を 1 回または複数回呼び出すことができる。 例外的に、労働担当大臣は、当事者が解決をみいだせるように支援するために、
解雇を 30 日を超えない期間延期する旨の省令を出すことができる。この延期は、
省令により、さらにもう 1 度くりかえすことができる。
第 5 編 労働協約
第 96 条 労働協約の目的は、労働者の雇用条件を決定し、使用者、労働者、およびそれぞれの組織の関係を規律することである。労働協約は、法的に認められている役割を労働組合組織に拡大し、労働者を社会的リスクから保護を向上させることができる。
労働協約は第 96 条 1 項に定められる事項についての書面による協定である。労働協約は以下の者が署名する。
a 使用者、使用者団体、または使用者を代表する1つ以上の組織
b 労働者を代表する 1 つ以上の組織。
上記の原則の例外として、企業や事業所に労働者を代表する組織がない時期には、労働協約は、使用者と第 11 編第 3 章に定める条件によって適法に選出される職場委員の間で締結される。
労働協約には、期間の定めがある場合と期間の定めのない場合がある。
期間の定めがある場合は、3 年を超えることができない。期間の終了時に取り消されない限り、一方当事者が3か月の予告を続けることを条件に効力を継続させるものとする。本条第 2 項の例外的条件のもとで職場委員によって労働協約が締結
された場合、その協約の期間は 1 年を超えてはならない。労働協約に期限の定めがない場合、労働協約を取り消すことができる。ただし、取り消しに不服を申し立てた当事者には、1 年間の効力を継続させる。取り消しの予告は、一方当事者である署名者による協約の履行を妨げるものではない。
労働協約は適用範囲を特定しなければならない。企業、企業グループ、産業、産業の一部門、または経済活動の 1 つ以上の分野に適用することができる。
第 97 条 労働協約の条項は関係する使用者に適用になり、労働協約が特定する企業に雇用されているすべての分野の労働者に適用される。
第 98 条 労働協約の条項は、現行の法律や規則より労働者に有利であってもかまわない。ただし、労働協約は、法律や規則に定める公共の秩序に反することができない。労働協約が適用になる労使間の労働契約において、労働協約に定める規定より 不利な条項がある場合、それは無効となり、労働協約に定める規定が自動的に 適用になる。
企業または事業所の労働協約は、当該の企業または事業所の特定の条件のもとで、当該企業の適用される広い適用範囲を持つ労働協約の条項に適合させなけ
ればならない。企業または事業所の労働協約は、労働者に有利となる新しい条項を含むことができる。
労働協約が企業または事業所に広い範囲に適用になる場合、当該労働協約の条項は、企業又は事業所の労働協約に適合させなければならない。
第 99 条 労働協約が適用される範囲を代表する労働者または使用者の職業上の組織の要望または労働担当省の判断で、労働担当省は、労働諮問委員会に諮問したのち、労働協約の全部または一部を当該労働協約に含まれる職業の範囲のすべての使用者および労働者に適用を拡張することができる。
第 100 条 労働担当省は、労働協約がない場合、労働諮問委員会の承認を得て、特定の職業の労働条件を定めるための省令を出すことができる。
第 101 条 労働担当省令は、以下のことを決める。
a. 第 99 条に規定される適用範囲を拡大する手続を履行するための条件と方
法
b. 第 100 条に定める規制手続を履行するための条件と方法
c. 労働協約の登録、届け出、公開および掲示の方法
d. 必要な場合、労働協約の履行を監視する方法
第 6 編 一般的労働条件第1章 賃金
A 賃金決定
第 102 条 本法の目的のために、「賃金」とは、その決定や計算方法に関係なく、現金で換算でき、または協定や国家法によって定められ、書面または口頭による労働契約に基づきすでになされたまたはなされる予定の仕事に対して、使用者から労働者に支払われる報酬を意味する。
第 103 条 賃金は次のものを含む。
・実際の賃金または報酬
・残業手当
・手数料
・ボーナスおよび補償
・利益分配
・祝儀
・現物支給品
・法律に定める額を超えて支払われる家族手当
・有給休暇またはその代わりの補償
・障害および産前産後の休暇期間中に使用者から労働者に支払われる金額次のものは賃金に含まない。
・健康ケアのためのもの
・法律に定める家族手当
・交通費
・労働者の仕事を助けるためにのみ支払われる手当
B 最低保障賃金
第 104 条 賃金は、少なくとも最低保障賃金と同額でなければならない。賃金は、人間の尊厳を保つに適切な生活水準をすべての労働者に保障しなければならない。
第 105 条 最低保障賃金を下回る報酬を労働者に支払うという書面や口頭の合意は、無効となる。
第 106 条 同じ条件、専門的技能および成果を示す労働に対しては、出自、性別、年齢に関係なく、法律に基づきすべての労働者に同じ賃金額でなければならない。
第 107 条 最低保障賃金は、職業や仕事の区別なく決定される。生活水準を決める経済的要因に基づき地域ごとに異なりうる。
最低保障賃金は、労働諮問協議会からの勧告を受けて、労働担当省令によって定められる。賃金は、経済状況や生活水準の変化にともなって適宜調整される。最低賃金決定に際し考慮すべき要素は、できるかぎり、以下を含むべきである。 a 国の一般的給与水準、生活費、社会保障手当、その他の社会的グループ
の生活水準と比較して、労働者とその家族の必要性
b 経済発展、生産性の必要性および高い水準の雇用を達成、維持する利点を含む経済的要素
第 108 条 請負や出来高払いの仕事では、作業場であろうと自宅であろうと、賃金は、平均的労働者が同じ時間、通常の労働をしたときに、少なくとも労働者に認められた最低保障賃金と同額が支払われるように算定されなければならない。
第 109 条 本法の最低賃金は、職場、支払い場所、募集のための事務所に常時張り出しておかなければならない。
第 110 条 解雇の際に有給休暇や解雇手当のため、さらに予告のない労働契約終了や労働 契約の濫用的違反のさいの損害賠償のために報酬計算をおこなうときに、手数 料や祝儀は含まなければならない。この計算は、契約終了日までに 12 か月を超 えない期間中に受けとった月の手数料または祝儀の平均額に基づいておこなう。
第 111 条 政府や公共機関の職員の労働契約の様式は、最低保障賃金や一般的労働規則に 関する本法の規定の履行を確保するために必要な条項を含まなければならない。
第 112 条 使用者は、労働者に、次の内容を、正確かつ容易に理解できる方法で知らせなければならない。
a 仕事の割り当てがなされる前、または賃金条項が変更されるときはいつでも、労働者に適用なれる賃金の内容
b 賃金支払い日毎に、賃金の項目に変更があるときは、その項目
C 賃金支払い
第 113 条 賃金は、労働者が別の方法で支払いを受けることに合意していないかぎり、労働者に直接支払わなければならない。別の定めがないかぎり、賃金は、合法的に流通している硬貨または紙幣で支払われなければならない。
第 114 条 使用者は、労働者が自由に裁量で利用することを制限してはならない。
第 115 条 不可抗力の場合を除き、賃金は、職場または職場の近くにある使用者の事務所で支払われなければならない。
酒や薬物で賃金を支払ってはならない。賃金支払いは、酒店、小売店、遊び場で働いている場合を除いて、それらの場所でなされてはならない。
賃金支払いを休日にしてはならない。賃金支払い日は休日の場合、前日に支払わなければならない。
第 116 条 労働者の賃金は少なくとも月 2 回、最大 16 日の間隔をあけて支払わなければならない。
従業員の賃金は少なくとも月 1 回支払われなければならない。
販売代理または商業代表への手数料は少なくとも 3 か月ごとに支払われなければならない。
15 日以上の作業が必要な請負や出来高払いの仕事の場合、支払い日は合意で決
定される。ただし、労働者は 15 日毎に一部の支払を受け、仕事の引き渡しの翌週に全額の支払いを受ける。
労働契約終了の場合、賃金およびあらゆる補償金は、仕事の最終日から 48 時間以内に支払われなければならない。
第 117 条 正当な理由のない賃金支払いの遅延の場合、労働監督官は、支払い日を設定して、労働者に賃金を支払うことを通知しなければならない。
期日までの賃金支払いがない場合、労働監督官は、無償で報告書を書いて、管轄の裁判所に提出しなければならない。そこで、臨時の行政官任命を含めて、労働者の財産を守るための措置を講じることができる。
労働監督官は、労働者および従業員に対する使用者の義務を順守するようにあらゆる措置を講じることができる。
第 118 条 賃金支払いをめぐる紛争がある場合、使用者は、すでに支払ったという証明をおこなう義務がある。
その証明は、使用者に保存することが求められている賃金台帳への労働者の受領の署名によってできる。または文字を書くことができない場合は 2 人の証言者の署名によって証明できる。
第 119 条 労働契約履行中または終了後に、「すべての賃金や報酬がすでに支払われた」という確認またはそれに類似した確認をすることは、労働者が契約の全部または一部を放棄したことを意味することとは矛盾しない。
労働者が異議なく賃金を受領した場合でも、賃金、手当、法律、規則や契約上
の定めによって労働者に認められたその他の給付の全部または一部の支払いを受ける権利を放棄したものとはならない。
D 賃金請求の出訴期限
第 120 条 賃金請求の出訴期限は賃金支払い日から 3 年である。
出訴期限をうける請求は、実際の賃金、臨時収入、その他労働契約によって生じる労働者の請求に適用され、さらに解雇補償金にも適用される。
E 賃金請求権の保障と優先権
第 121 条 請負人が支払をうけるべき未払債権は、労働者の賃金支払いに影響を与えないために、差し押えることができず、または異議申し立てできない。
労働者への賃金は、建設資材の供給業者への支払いより先に支払わなければならない。
第 122 条 家事労働者を含む労働者の賃金請求権は、使用者の破産申し立てまたは裁判所の命令による清算の前6か月分については、債務者の動産や不動産に対して、優先される。
販売代理および商業代表者は、破産申し立て、または裁判所の命令による清算の前6か月分の手数料や送金額について優先権を有する。
本条による優先権は、労働者の有給休暇、予告期間の補償金、解雇補償金にも適用になる。
第 123 条 第 122 条に定める優先権は、国庫の優先権を含む一般的優先権および特別優先権に対抗することができる。
賃金支払いが中止したときから使用者の為替から国庫に差し引かれた金額は、債務者(債権者の下位の者)に返還されなければならない。
第 124 条 破産申したてまたは裁判所の命令による清算の前、15 日間の労働者の賃金、30日間の従業員の賃金、90 日間の商業代表の得る賃金については、すべての債権者の債権に優先する。
破産申し立てまたは裁判所の命令による清算後 10 日以内に、破産申したまたは清算命令日に残っている資金または利用可能となった最初の資金から、その他の債権より優先して、前項に定める一部が労働者に支払われる。
第 125 条 第 124 条の規定の履行に際し、賃金総額を決定するために、実際の賃金だけ
でなく本法第 103 条に規定するその他の報酬、契約不履行によって生じる損害賠償額も考慮される。
E 賃金からの控除
第 126 条 使用者、その代表者または人材供給が禁止されている仲介人に、直接的にまたは間接的に提供される職業斡旋のために、賃金控除ができない。
第 127 条 使用者は、以下の場合を除き、いかなる種類の供給物に対する請求金額を労働者の賃金から相殺することはできない。
1 労働者が離職するときに、返還を求められない道具および装置
2 労働者が管理しおよび利用する品目や材料
3 品目を購入するための前払い金
4 会社の売店で購入品の前払い金
ただし、いかなる場合でも、賃金控除総額は、労働者とその家族が基本的に生活に必要な額を超えてはならない。
第 128 条 労働者が管理し利用する道具、装置、品目および材料の購入以外に労働者に対して前払いを行った使用者は、賃金債権の譲渡可能または差し押え可能な金額を超えない範囲で、分割して労働者の賃金から売る子はできる。
控除できる額は、現行法が定める賃金債権の差し押え額と混同してはならない。第 116 条に定める分割払い金額および完成した仕事に支払われる支払いの一部を賃金支払い日以前に支払われた額は、次回の賃金支払い時から完全に控除することができる。
第 129 条 前 2 つの条文に定める以外の控除を認める労働協約は無効となる。
ただし、労働者は自分の所属する労働組合の組合費を賃金から控除することを認めることができる。その許可は文書でおこなわれ、いつでも撤回することができる。
G 労働者および家事労働者の賃金債権の差し押さえ譲渡第 130 条 以下の場合に、賃金債権を差し押さえまたは譲渡できる。
1 最低保障賃金に相当する額を下回る部分は差し押えや譲渡はできない。
2 最低保障賃金に相当する額からその三倍の額までの 20%までは差し押えや譲渡が可能である。
3 最低保障賃金に相当する額から10 倍の額までの30%までは差し押えや譲渡が可能である。
4 最低保障賃金の 10 倍以上の 50%までは差し押えや譲渡が可能である。この計算の際に考慮されるのは月給である。
第 131 条 第 130 条に定められる制限は、労働者が家族を養うためのものであるので、食品の債権者には適用されない。ただし、食品の債権者は、毎月の食糧手当のみに請求できる。その他の債権については、他の債権者と同じに、差し押えや譲渡できる部分について参加できる。
第132 条 家族手当は、食品についての債務への返済以外には差し押えや譲渡はできない。第 133 条 賃金の差し押えや譲渡は現行法の手続にしたがって実施される。
H チップ チップの管理と分配
第 134 条 チップは、ホテル、レストラン、カフェ、バーおよびヘアサロンで顧客から事業所の従業員に支払われ、顧客への請求書に「サービス料」として追加される義務的割合として使用者が受領する報酬である。チップは使用者によって集め
られ、顧客に接するすべての従業員に配分される。
第 135 条 使用者は、前条に定めるチップの支払いや従業員の受領について明らかにしなければならない。
第 136 条 チップの分配方法やチップを受け取る従業員の範囲を決定する方法は、職業の慣習や、それがない場合には労働担当省令によって決定される。
第2章 労働時間 日および週単位の労働時間
第 137 条 事業所が職業訓練を提供し、慈善的性質や自由業的性質を有しているかどうかにかかわりなく、すべての事業所において、労働者の労働時間は 1 日 8 時間、
週 48 時間を超えてはならない。
第138 条 仕事のスケジュールは、各企業によって仕事の性質や業務組織の性質に応じて、異なる仕事ごとに設定される。企業経営者は通常2つのシフト、午前と午後のシフトを組むことができる。
第 139 条 労働者が例外的または緊急の場合に残業を求められる場合、残業時間に通常の 50%の割増賃金が支払われる。残業が夜間や休日になされる場合、100%の割増賃金が支払われる。
第 140 条 労働担当省は、偶発的要因、不可抗力、悪天候、または休日、地方の祭、地方の行事のために、大規模な業務中断や通常の業務の遅れによって失われた時間を埋め合わせるために、以下の場合に、労働時間の延長が省令によって認められる。
a 1 年につき 30 日以上の時間の埋め合わせはできない。業務再開後 50 日以内におこなわれなければならない。農業企業の場合は、1 月に延長される。
b 1 日あたりの延長労働時間は 1 時間を超えてはならない。
c 1 日あたりの労働時間は 10 時間を超えてはならない。第 141 条 労働担当省令によって、次の事項が決められる。
1 土曜日の午後を休暇とし、または同様な措置をとるために、追加の時間が通常の勤務に 1 時を間超えないという条件のもとで、週 48 時間の枠内で労働時間の分配
2 週単位の労働時間が週 48 時間を超えないで、1 日の労働時間が 10 ン時間を超えず、延長時間が 1 日 1 時間を超えないという条件のもとで、週以外の単位で労働時間の分配
3 事業所の通常の労働時間外で行われる予備的業務や補充的業務、または本来的に断続的な業務に従事する特定の労働者の部門に対して、恒常的に労働時間規制の免除
4 一時的な規制免除が、季節的業務や産業、以下に定める特定の企業に認められる。
a 重大または緊急な事故、不可抗力、機械や設備のための緊急の業務、ただし、企業の日常の業務への重大な混乱を避けるための範囲に限られる。
b 腐敗しやすい材料の損失防止、または業務の技術的結果が損なわれることの防止
c 資産目録、貸借対照表の作成、締切の設定、清算や決算の特別な仕事を認めること
使用者によりとりうる別の手段を持てない例外的事態の場合、企業に超過労働を認めること
5 労働時間、休憩時間、総労働時間の監督方法、および労働時間規制免除の許可手続
6 労働時間規制免除を認める地域
第 142 条 労働担当省令は、断続的な業務または職業に適した出勤時間および実労働時間についての基準を設定する。
第 143 条 本章の規定は、戦争または国家の安全を脅かす事態が発生した場合には、停止する。
第3章 夜間勤務
第 144 条 本法の目的のために、「夜間」とは、22 時か 5 時までを含む少なくとも連続 11
時間をいう。
時に応じて、昼間および夜間に勤務するチームのシフトによって継続的に仕事がおこなわれる場合、企業での仕事に常時夜間勤務を設定することができる。夜間勤務は本法第 139 条の割増賃金が支払われなければならない。
第4章 週休
第 145 条 本章の規定は、本法第 1 条に特定されたすべての種類の企業に適用される。 ただし、これらの規定は、特別規定が定められている鉄道労働者には適用されない。
第 146 条 週 6 日以上働く労働者には週休制は禁止されている。
第 147 条 週休は最低連続して 24 時間続く。すべての労働者は原則として日曜日が休日となる。
第 148 条 すべての従業員が日曜日に休むことによって、公衆に不利益を与え、または企業の日常業務に支障をきたす場合、休日を以下のように調整しなければならない。
a 日曜日以外の日に休日を付与する。
b 日曜日から月曜日の正午までを休日とする。
c シフト制で全員に休日を付与する。この場合、労働省の許可申請が必要となる。
第 149 条 シフト制による週休の付与は、以下の事業所に認められている。
1 生鮮食料品の製造
2 ホテル、レストラン、バー
3 生花店
4 病院、ホスピス、保護施設、退職者の家、精神病院、保健所、診療所、薬局
5 公衆浴場
6 新聞発行、情報や芸能、美術館や展示場
7 車両貸出業
8 電気、水、機械動力の供給業
9 鉄道以外の陸運業
10 劣化しやすい材料を使う産業
11 作業中断によって製品が腐ったり劣化する産業
12 安全、衛生または公共に有用な仕事をおこなう産業
労働担当省令は、10 および 11 に該当する産業の種類の一覧表を作成し、さらに週休をシフト制にすることによって利益を得る事業所の種類の一覧表を作成しなければならない。
第 150 条 労働担当省令は 24 時間操業の工場、または 24 時間操業に雇用される専門家のために週休の取得方法を決定しなければならない。
第 151 条 救助作業、緊急事故、事業所の材料、設備や建物の修理のためにただちにおこなわなければならない緊急時に、当該緊急作業をおこなう従業員に、週休制を停止することができる。
この週休を停止する権利は、緊急作業が必要な企業の労働者だけでなく、当該企業の利益のために修理をおこなう他の企業の労働者にも適用になる。後者の企業の場合、各労働者は、維持や修理を担当する前者の企業の労働者と同様に失った週休と同じだけの代休を与えられなければならない。
本条の規定は、18 歳未満の未成年者と女性には適用されない。
第 152 条 日曜日に週休をとれない工業や商業施設の警備や管理人は、週の別の日に有休をとらなければならない。
第 153 条 食品小売店では、週休を日曜日の午後から月曜日の午後まで、または 1 週のう
ちの 1 日を交代で休むことができる。
第 154 条 小売店では、週休は、地方の休日と一致する場合、労働監督官の許可によって取り消すことができる。
週休を取り消された各労働者は、翌週に代休を取得しなければならない。
第 155 条 悪天候のために休日になった企業の場合、月の最大 2 日間、週休を減らすことができる。
第 156 条 季節産業または傷みやすい物または悪天候の影響をうける食品を加工する産業では、週休は、労働監督官の許可を得て、例外として停止することができる。
第 157 条 労働担当省令は、代休の規定に加えて、第 155 条および第 156 条における一般的な分類に入る特定に産業の一覧表を作成しなければならない。
第 158 条 週休が労働者に集団的に付与される場合、週休の日や時間を知らせる通知をみやすい場所に掲示しなければならない。
第 159 条 週休が労働者に集団的に付与されない場合、特定の休日の対象となる労働者の名前や休日を示す一覧表を掲示しなければならない。
新規に雇用された労働者は、6 日後に一覧表に追加される。
一覧表は絶えず更新され、労働監督担当者が訪問時に閲覧できるようにしておかなければならない。
第 160 条 週休の停止を望む企業所有者、経営者、管理者は、不可抗力の場合を除いて労働監督官の許可を申請し、仕事が始まる前にも申請しなければならない。
企業所有者等は週休停止を正当とする状況を労働監督官に説明し、週休停止の日や期間を示し、さらに停止が適用になる労働者の名前を示し、さらに代休の計画を示さなければならない。労働監督官が、週休停止の許可をしない場合、申請受領後 4 日以内に文書で企業所有者、経営者、管理者に通知しなければならない。その通知がない場合、週休の停止が許可されたものとする。
第5章 有給の祝日
第 161 条 毎年、労働担当省は、省令ですべての企業の労働者のために有給の祝日を発布しなければならない。
当該有給の祝日は、年次有給休暇を得るために必要な勤続期間の妨げとはならないし、この種類の休暇を減少させるものではない。
第 162 条 祝日が日曜日と重なった場合、労働者は、翌日が休みとなる。祝日の休みは、1月、半月または 1 週間の賃金を減らす理由にはならない。
第 163 条 時給、日給または生産量に応じて賃金が支払われる労働者は、第 161 条に定義される休日の結果失われる賃金と同じ額の補償を受ける権利を有する。この補償は使用者によって支払われる。
第 164 条 祝日中でも労働者が仕事をしなければならない仕事の性質上、仕事を中断できない事業所または企業の場合、労働者は、提供した労働に対する賃金のほかに補償金を受け取る権利を有する。使用者が払う補償金の額は、労働担当省令によって定められる。
第 165 条 上記の祝日のために失われる労働時間は、現行法に定める条件に従って、埋め合わすことができる。その埋め合わせは、通常の労働時間とみなされる。
第6章 年次有給休暇
第 166 条 労働協約、個別の労働契約に有利な条項がない場合、すべての労働者は、1か
月継続勤務して 1 日半の割合で有給休暇を受ける権利を有する。
2か月未満の継続勤務の労働者は、労働契約終了時に、企業で働いた時間に応じて計算された有給休暇に相当する額を受け取る権利を有する。
年間を通じて定期的に勤務できない仕事の場合、1 月平均 21 日勤務している場合は、継続勤務したものとみなされる。
上記に述べた有給休暇日数は、労働者の勤続に合わせて、勤続 3 年間ごとに 1
日が追加される。
祝日および病気休暇は、年次有給休暇には数えられない。第 167 条 有給を利用する権利は、勤続 1 年後に取得する。
労働者が有給休暇の権利を取得する前に、労働契約が終了する場合、第 166 条に基づいて計算される補償金が労働者に支払われる。
有給休暇の権利を放棄または免除するという合意と同様に、有給休暇の代わりに補償をおこなうという労働協約は無効とされる。
有給休暇の権利の全部や一部を労働契約終了まで留保するという労働者の合意は放棄とはみなされない。休暇の留保は連続して 3 年間を超えることはできず、
年間 12 日超える日数分の有給休暇についてのみ適用になる。
第 168 条 労働者が有給休暇を取る以前に、使用者は、少なくとも平均賃金、ボーナス、給付や補償と同額の手当を労働者に支払わなければならない。それには現物も含むが、有給休暇を取る前 12 か月間に労働者が立て替えた費用の返還は免れる。手当は、労働者が実際に働いて得た手当の額を下回ってはならない。
第 169 条 第 166 条に定める継続勤続の長さは、たとえ契約の終了なくして仕事が停止しても、使用者との労働契約を締結している全期間が含まれる。
毎年労働者が有給休暇を取得する期間には、以下のものが含まれる。
・週休
・祝日
・病気休暇
・産前産後
・年次有給休暇および通知期間
・労働者の直接の家族に影響する出来事の期間中最大 7 日の特別休暇
個人的理由による特別休暇は、その埋め合わせがおこなわれない場合、有給休暇の期間を計算するうえで、その期間は含まれない。
第 170 条 原則として、年次有給休暇は、使用者と労働者間に異なる合意がにないかぎり、クメール正月の時期に与えられる。その場合、使用者は労働監督官にその合意について通知しなければならない。
年次有給休暇が 15 日を超える場合、使用者は残りの休暇を他の時期に取得させることができる。ただし、18 歳未満の子供や徒弟の場合は除く。
第7章 特別の休暇
第 171 条 使用者は、労働者に対して、直接の家族に影響を与える出来事の期間中、特別休暇を与える権利を有する。
労働者が年次有給休暇を取得しない場合、使用者は労働者の年次有給休暇日数から特別休暇日数を差し引くことができる。
労働者がすべての年次有給休暇を消化してしまった場合、使用者は、労働者の有給休暇日数から特別休暇日数を差し引くことはできない。
特別休暇によって失われる労働時間は、労働担当省令の定める条件に従って、埋め合わせることができる。
第8章 児童労働と女性労働
A 共通事項
第 172 条 18 歳未満未成年者、徒弟、女性が働く事業所のすべての使用者および経営者は、かれらの振る舞いを監視し、公衆の面前で品位をたもたなければならない。すべての性的暴力(いやがらせ)は厳しく禁止される。
第 173 条 労働担当省令は、18 歳未満の子どもに禁止される危険または重労働を伴う種類の労働を決定しなければならない。
省令は、従業員が健康を害する不衛生または有害な事業所において、未成年者が雇用される条件をさだめなければならない。
第 174 条 18 歳見未満の未成年者は、地下鉱山または採石場で雇用されてはならない。
労働担当省令は、地下で働く 16 歳以上 18 歳未満の未成年者のために仕事や徒弟の特別な条件を定めなければならない。
第 175 条 18 歳未満の未成年者、従業員、労働者、徒弟は本法第 1 条の適用を受ける企業で夜間勤務のために雇用されてはならない。
労働担当省令は、16 歳を超える 10 歳代の者に認められる特別の除外のための条件を決定しなければならない。
a 性質上、昼夜継続して操業しなければならない以下の産業での労働
・製鉄業
・ガラス工場
・製紙工場
・砂糖工場
・金の精錬場 b事業所での通常の操業を妨害する避けられない事態
第 176 条 男女の未成年者の夜間の休憩は、最低 11 時間連続でなければならない。
B 児童労働
第 177 条 1最低の雇用年齢は15歳とする。
2年少者の健康、安全、道徳に有害な雇用または労働が認められる最低年齢は
18 歳とする。本項の適用を受ける雇用や労働の種類は、労働諮問協議会の諮問を受けて、労働担当省令によって決定される。
3前項の規定にかかわらず、労働担当省は労働諮問協議会の諮問を受けて、健康、安全、道徳が十分に保護され、さらに活動領域に合わせて、特別かつ適切な指示や職業訓練を受けることを条件に、15 歳以上の未成年者に職業や雇用の創出を許可することができる。
4第 1 項の規定にかかわらず、12 歳から 15 歳の未成年者は、以下の条件のもとで軽度な労働に雇用される。
a 健康や精神的および身体的発達に有害でない労働
b 学校への定期的な通学、ガイダンスプログラムへの出席、または所管の機関の承認を得た職業訓練への出席に影響を与えない労働
5労働担当省令が、労働諮問協議会の諮問を得て、雇用形態や労働条件、特に第 4 項に定める労働時間の上限を定める。
6 労働諮問協議会の諮問を得たのち、労働担当省は、特定の職業や雇用において、本条の履行が相当な困難を伴う場合、当該職業や雇用の全部または一部を履 行から免除することができる。
第 178 条 労働監督官は、公務員である医師に、18 歳未満の未成年者の仕事が身体的能力を超えていないことを証明するために、検査することを求めることができる。超えている場合には、労働監督官は、仕事を変更することを求め、または両親が反対した場合には、医師の助言や検査を受けて、事業所をやめさせることができる。
第 179 条 すべての使用者は、18 歳未満の未成年者の誕生日を含む登録簿を保管しなければならない。この登録簿は労働監督官に提出して、認証や監査を受け、警告を受けなければならない。
第 180 条 初等教育をおこなっている孤児院および慈善施設で、14 歳未満の未成年者への職業訓練は 1 日 3 時間を超えてはならない。誕生日、未成年者の労働条件、学習時間や労働、休憩および食事時間のスケジュールを記録しなければならない。その記録は、労働監督官に提出されて、毎年末に認証、検査および警告を受けなければならない。
第 181 条 18 歳未満の男女の父権から解放された者は、保護者の同意なくても労働契約を締結することができる。
C 女性労働
第 182 条 本法第 1 条が適用されるすべての企業において、女性は 90 日の産前産後の休暇を取得する権利を有する。
産前産後休暇後、仕事に復帰してから 2 か月間は、軽度の労働のみに従事する。産前産後休暇中、または予告期間の最後の日が産前産後休暇中に到来する場合、
使用者は女性を解雇してはならない。
第 183 条 前条に定める産前産後休の休暇中に、女性は諸手当を含む賃金の半額を使用者から支払われる。
女性は現物給付を完全に受け取る権利を有する。それに反する労働協約は無効とする。
ただし、本条第 1 項に定める賃金給付は、企業に継続して最低 1 年勤務した女性のみに支払われる。
第 184 条 子どもの誕生から 1 年間、母乳で育児をおこなう母親は、勤務時間中に、授乳のために、1 日 1 時間の受ける権利を有する。
この時間は 2 回に分けられ、午前と午後にとることができる。実際の授乳時間は母親と使用者の合意による。合意がなければ、各仕事のシフトの中間の時点とする。
第 185 条 授乳のための休憩は、本法、事業所の就業規則、労働協約、または同じ種類の他の労働者が享受する地方の慣習によって定められる通常の休憩時間とは区別され、通常の休憩時間から差し引かれてはならない。
第 186 条 最低 100 名の女性および少女を雇用する企業経営者は、事業所またはその近くに、授乳室および保育所を設置しなければならない。
会社がその敷地に 18 か月以上の子どものための保育所を設置できない場合、女性労働者は、どこかの保育所に子どもを預け、その費用は使用者から支払われる。
第 187 条 労働担当省令は、衛生環境の整備条件や授乳室や保育所ヲを監督する条件を決定しなければならない。
第9章 職場外で雇用される労働者
第 188 条 職場の外で雇用され、職場までの旅費が使用者によって支払われたすべての労働者は、労働契約終了時または休暇期間中、最初の旅費と同じ条件で、使用者の負担で、採用された場所までもどる売る費用を取得する権利を有する。
仕事の中断、企業の閉鎖、個人的な解雇の結果、離職する場合、使用者は前項と同じ義務を有する。解雇理由が労働者側の重大な非行の場合、労働者が企業で働いた期間に比例して旅費を補償しなければならない。
第 189 条 前条の定めによって仕事が終了した労働者は、仕事を停止した日から最高 1 年間に前の使用者に帰郷旅費を請求できる。
第 190 条 労働担当省令は、本章を履行うるための手続を決定しなければならない。
第 7 編 農業労働者の特別な労働女権
第 191 条 本法に定める一般規定に追加して、以下の規定は農業労働者に適用される。第 192 条 農業労働者は、以下に雇用される労働者である。
・プランテーション
・農場(穀物の栽培や動物の飼育)
・林業
・漁業
第1章 プランテーション
第 193 条 本法の目的ために、「プランテーション」は、定期的に賃金労働者を雇用し、主に、ココア、茶、砂糖、ゴム、バナナ、ココナッツ、ピーナッツ、タバコ、柑橘類、パーム・オイル、パィナップル、胡椒、木綿、ジュート、その他の商業作物を商業目的のために栽培や生産しているすべての農業事業を意味する。
A 労働時間
第 194 条 プランテーション労働者の通常の労働時間は、1 日 8 時間、1 週 48 時間である。特定の労働者の場合は、週 48 時間を超えない限りで、通常の労働時間が 1 日 9時間まで延長することができる。
第 195 条 企業の宿泊施設に住む正規の労働者の場合、職場と家庭の移動に必要な 1 時間以上は、労働時間とみなされる。
臨時労働者や住み込みでない正規の労働者の場合は、勤務した時間によって労働時間が決定される。
第 196 条 特定の作業のために、最大 2 時間は、労働者が、労働現場で待機するために通常の時間に追加することができる。その作業は、労働担当省令が一覧表によって決まる。労働現場での待機の 2 時間中には、労働者はなんらかの仕事を強制されてはならず、自由に使うことができる。
第 197 条 1 日 8 時間以上の労働時間の場合、超過した時間には残業手当が支払われる。残業時間は、災害防止や災害によって発生する損害の復旧作業の場合を除き、同一の日に実労働時間に加えて、合計 10 時間を超えることはできない。
B 現物の一部支給
第 198 条 賃金の一部に現物を支給できるが、それを強制してはいけない。
使用者が現物を支給する場合、各正規の労働者は、現金で支給される部分に加えて、1 日あたり 900 グラムのお米を支給しなければならない。
第 199 条 前条が定めるお米による現物支給は、当事者が合意すれば現金による支給に変更することができる。
支給される現物の貨幣価値は、いつも、正確に計算されて、賃金台帳に記録されなければならない。
C 家族手当
第 200 条 すべての正規の労働者は、妻、および嫡出子であるか非嫡出子であるかを問わず 16 歳未満の子に、以下の条件で米を毎日支給される権利を有する。
・妻に 800 グラム
・2 歳未満の子に 200 グラム
・2 歳から 6 歳未満の子に 400 グラム
・6 歳から 10 歳未満の子に 600 グラム
・10 歳から 16 歳未満の子に 750 グラム
この手当は、世帯主として毎日働き、賃金の支払を受ける労働者、または入院や正当な疾病のために労働が中断されても支払われる。
16 歳以上 21 歳未満で公立または認定を受けた私立の中学校や高等学校で勉強
している者、徒弟として働いている者は 16 歳未満の子と同様に同じ家族手当を受け取ることができる。
家族手当を受けるために、妻は以下の要件を満たさなければならない。
a 妻は賃金を得る雇用をされてはならない。
b 妻は、夫が住み込みの正規の労働者の場合はプランテーションで、住み込みでない場合は自宅、またはプランテーションの外の通常の住居で、夫と一緒に生活していなければならない。
家族手当を受けるために、未成年の子は、世帯主が住み込み労働者の場合はプランテーションで、住み込みの労働者でない場合は、プランテーションの外の自宅または通常の住居に、世帯主と一緒に生活していなければならない。ただし、遠隔地の学校や徒弟として働いているために、両親と一緒に生活できない場合、公立または認定を受けた私立学校が発行する現状を説明する申立書があれば、手当を受けることができる。私立学校の場合は、所管の省庁の認証を受けなければならない。
第 201 条 家族手当は、使用者がすべての必要な書類を受け取ったことを条件に、雇用された日から労働者に支払われる。
第 202 条 本章の規定から手当受給を希望する労働者は、つぎの必要書類を提出しなければならない。
a 婚姻証明書の抄本
b 各子の出生証明書の抄本
c 世帯主が妻が賃金を得る雇用に従事していないことを自らの責任でおこなう宣誓書
d 第 200 条に定める学校や徒弟の証明書
第 203 条 労働者が、第 202 条 a および b に定める証明書を入手できない場合、裁判所の決定または民事上の地位を規律する法律や規則に定める宣誓書にかえることができる。
D 住居
第 204 条 常勤の正規の労働者は、労働担当省令が定める条件のもとで、使用者から無料の住居(母屋または離れ)の提供を受ける権利を有する。
第 205 条 家族と同居する既婚の労働者の住居(母屋)は、最低 24 平方メートルの広さが
なければならない。このサイズの住居は、4 人の同性の独身労働者に提供することもできる。
第 206 条 住居は、所管の省庁が発行する衛生や公衆衛生規則に従って建設されなければならない。この目的のために、企業は、直接助言をおこなう労働監督局に 1 つ以上のタイプの住居の計画および仕様書を提出し、州または市当局に送付しなければならない。提出後 30 日以内に当局が異議を述べない場合、企業は、提出した計画にしたがって建設を開始することができる。準備期間または敷地の整地期間中の仮設住宅の建設には特別の許可が必要となる。その場合、3 年以上は仮設住宅を使用できず、所管の省庁の定める衛生および健康上の一般規則に従わなければならない。
第 207 条 労働者は、使用者の別の許可がある場合を除き、使用者に登録された妻や嫡出 子か非嫡出子化を問わず子以外の者を裁量によって住まわせることはできない。
第 208 条 労働者は、常に、住居、離れ、中庭、庭園を清潔に保持しなければならない。提供された住居に損害を与えた場合責任を負う。
E 住宅手当
第209 条 プランテーションが常勤の正規の労働者に住居を提供できない場合、使用者は、労働諮問協議会の勧告を得て、労働担当省が決定する条件のもとで、住宅手当を毎月支払うことが求められている。
F 水
第 210 条 労働者は、すべての季節に、可能なかぎり良好な状態で、労働者が必要とする水が供給されなければならない。
第 211 条 水源を見つけて保護されなければならない。水は消費のために分配されなければならない。
第 212 条 水が汚染されている疑いがある場合、使用者は、保健所から勧告されたあらゆる必要な手段を講じられなければならない。
G 物資の供給
第 213 条 常設の市場から離れ、十分な物資の提供ができないプランテーションや職場では、使用者は、お米、魚の干物、燻製の魚、塩、茶などを提供する店を設置することができる。その店は、本法の第 42 条、43 条に定義する条件に従って、運営されなければならない。
H 便所
第 214 条 労働者の居住区では、住宅の数の少なくとも 4 分の 1 以上の便所を設置ければならない。便所は周囲が囲まれ、常に清潔な状態で維持されなければならない。
第 215 条 家庭の廃棄物やすべてのゴミは、水源から離れた場所に掘った穴に捨てられ、毎日燃やすか埋めるかしなければならない。
第 216 条 動物の死骸は、水源、井戸、貯水池、および住宅地域から離れた場所で埋葬し
なければならない。
I 死亡―土葬または火葬
第 217 条 死亡は、所管の省庁によって証明されなければならない。土葬または火葬は、現行規則の定めによって行われなければならない。
第 218 条 使用者は、各正規の労働者の死亡に際しては、以下の物を用意しなければならない。
・棺桶
・白い布
・棺桶を墓地または火葬場に輸送する手段
・死亡した労働者の1か月以上の賃金に相当する額の葬儀費用
J 託児所
第219 条 プランテーションが100 人以上の正規の住み込みの女性労働者を雇用した場合、労働監督官は、保健所や州や市の長の助言のもとに、使用者に対して、労働者住宅の近くに託児所を建設して、それを維持することを求めることができる。 託児所は、女性管理者によって運営され、子ども数に応じて、1 人以上の補助者を付ける。牛乳や米のような必需品が提供される。
2 歳以上の子のために、プランテーションの所有者は、米に追加して、さまざまな食品を提供しなければならない。その割り当ては、企業の保健担当係が監督する。
第 220 条 託児所へ入所できる最高年齢は 6 歳とする。
第 221 条 託児所は、10 人以上の登録がある場合、上記に定める条件に従って開所し、運営される。
K 学校
第 222 条 プランテーションで正規の住み込み労働者に 6 歳以上の子が少なくとも 20 人いる場合、使用者は、労働者住宅の近くで必要な数の学校を自費で建設し、維持しなければならない。
第 223 条 使用者は、所管の行政機関の指示に従い、自費で家具や教材を用意にしなければならない。
第 224 条 教員の給与はプランテーションの負担である。
第 225 条 学校が村から 1500 メートル以上離れている場合、使用者は、太陽や雨をしのげる車での通学手段を自費で提供しなければならない。
第 226 条 正規の住み込みの労働者の子どもはプランテーションの学校に入学できる。使用者は、その通学手段には責任をもたない。
第2章 その他の農業労働
第 227 条 プランテーション以外の農業企業における特別な労働条件は、労働諮問協議会との協議の上で、労働担当省の提案によって定められなければならない。
第 8 編 労働者の健康と安全適用範囲
第 228 条 本編の規定は、第 1 条に定めるすべての種類の企業に適用になる。ただし、ボイラー、機械または電機による動力を使わない仕事であり、または危険または非衛生的な産業と分類されない限り、父、母または保護者の指示のもとで、家族構成員だけが雇用されている作業場には、本編の規定は適用されない。
第1章 一般規定
第 229 条 すべての事業場および職場は、常に清潔で衛生基準を維持し、または労働者の健康に必要な労働条件が維持されなければならない。
労働担当省および関連する省は、本編の規定が対象となるすべての事業所において、本条、特に以下に定める事項について履行を監督するための省令を定めなければならない。
・建物の質
・清掃
・従業員の希望に即した衛生上の措置
・食事
・従業員の宿舎
・作業台と椅子の整備
・換気と衛生
・個々の防護服と作業着
・職場の照明と騒音の程度
第 230 条 すべての事業所および作業所は、労働者の安全を保障するよう配置されなければならない。機械、装置、伝動装置、道具、設備、および器具は、可能なかぎり安全な状態で維持されなければならない。道具、設備、器具または使用された製品を利用する技能者の管理は、労働者の安全保証のために適切に組織されなければならない。
第 229 条の省令は、本条、特に以下の事項を履行するための手段を定めなければならない。
・落下の危険性
・重量物の移動
・危険な機械や器具からの防護
・閉鎖された地区や隔離された環境売での仕事に対する予防措置
・液体漏出の危険性
・防火
第 231 条 第 229 条および第 230 条の規定やそれらを履行するための規則に関係なく、労働担当省は、必要に応じて、特定の職業または特定の作業についての特定の規
則に関する同じ立法措置を履行するために省令を発布することができる。
第 232 条 第 229 条から 231 条に定める省令は、労働諮問協議会の諮問を得たのち、発布される。
第2章 検査
第 233 条 事業所への訪問、および健康、労働条件、安全に関する法令や規則の履行状況の検査は、労働監督官および労働監視員によって行われなければならない。労働医療監督官および労働安全の専門家はこれらの検査に協力しなければならない。
検査ののち、違反が発見された場合、労働監督官は、事業所の管理者に、本編の規定や履行のための省令に即していないすべての点を示して、通知を出さなければならない。
第 234 条 労働監督官と労働監視員は、公式の報告書を作成する前に、必要ならば、第 229
条から 231 条を履行するための省令の規定に従うように事業所の管理者に通知しなければならない。
先の規則に従わないで、労働監督官および労働監視員は、労働者の健康や安全に重大な危険性や緊急の危険性があると判断する場合、先の通知なく、公式の報告書を作成することができる。
第 235 条 危険な事態が認識され、危険な状況が一般的条項に違反から生じている場合、その状況が特定の規定の履行の対象となっていない場合であっても、通知手続が使われなければならない。
第 236 条 通知は書面で、事業所の記録簿または受け取り確認の配達証明または書留郵便でおこなわれなければならない。通知には日付と署名がなされ、違反または認識された危険を特定し、改善のための期限を記載しなければならない。
違反が期限までに改善されない場合、労働監督官または労働監視員は公式報告書に記載することができる。
第 237 条 期限到来までに、使用者は、労働担当省に苦情を申し立てることができる。この苦情は、通知と矛盾しない。大臣は、正当性を示して 30 日以内にこれに対して判断を下すことができる。この判断が書面で一定期日内に示されない場合、異議申し立てが認められたものとみなされる。
第3章 労働衛生業務
第 238 条 本法第 1 条が適用になる企業および事業所は、労働者に基本的な健康管理を提供しなければならない。
第 239 条 労働衛生業務は、産業医と呼ばれ、仕事に悪影響を与える労働者の健康の悪化防止のための治療と予防の役割を担う1人以上の医師が主導するものである。特に、産業医は、労働の衛生基準、感染症の危険性、および労働者の健康状態を検査する。
医療従事者によって集められた労働者の健康の記録は、秘密であり、そこにある情報は、従業員を特定できる方法で、使用者、組合、または第三者に提供されてはならない。ただし、個人を特定できないデータは労働衛生や公衆衛生の研究のために利用できる。
前項の規定は、労働衛生監督官や労働監督官に記録の提供を妨げるものではなく、要求に基づいて、いつでもその記録を閲覧することができる。
第 240 条 企業の必要に基づき、労働衛生業務は、1 企業または複数の企業が共同で提供される。
労働衛生業務の組織や運営の費用は使用者側の負担となる。企業間のサービスは、各企業の従業員の数に応じて、その費用は分配される。
第 241 条 労働担当省および保健担当省に共同省令に定める期限までに、産業医として従事する労働衛生を専門とする医師を配置されなければならない。
第 242 条 本法第 238 条が適用になり、50 人以上雇用するすべての企業および事業所は、事業所の敷地、作業場、および職場に常設の医務室を設置しなければならない。医務室には、労働者の数に応じて、1 人の医師と、それを補助する 1 人以上の男女の看護師で運営される。
勤務時間中は昼夜に、少なくとも 1 人の看護師が配置されなければならない。医務室には、勤務時間中の事故、職業病または疾病の場合に労働者に緊急の治療を提供するために適切な器具、包帯および薬が供給されていなければならない。
医務室の組織や運営の費用は、使用者の負担となる。
第 243 条 第 228 条の適用を受ける企業が、主たる職場から 5 キロメートル以上離れた場
所に 1 つ以上の支店または職場を持っており、各支店に 50 人以上を雇用している場合、使用者は、その支店や職場に、主たる職場と同様に労働者を支援し手助けするための措置を講じなければならない。それには、医療従事者、建物、包帯および薬品が含まれる。
第 244 条 200 人以上の労働者がいる場合、医務室には、薬品や包帯に追加して、疾病者や病人が、病院への搬送や隔離される前に、必要に応じて、入院させることができる区域が設置されていなければならない。その区域は、その職場で雇用されている従業員の 2%の者を収容できなければならない。
医務室に入院させる疾病者や病人の治療、手当および食事は使用者側の責任である。
第 245 条 前条の手段とは別に、使用者は、以下の費用を負担することが求められている。
1 職場における化学的な予防措置
2 伝染病へのワクチン接種
伝染病の場合、保健省は職場における非常予防措置を命じることができる。
第 246 条 労働担当省および保健省は、共同で以下の事項について共同で省令を発布することができる。
a 労働衛生業務の組織と運営
b 労働者の数、業務の性質、および医師の義務的業務に応じて、事業所で産業医が勤務する最大の時間
c 労働衛生組織、運営、財政についての企業経営者または複数企業の代表者による報告の頻度と内容
第 247 条 労働担当省は、以下の事項を決定する省令を発布することができる。 a 雇用前、再雇用時に、定期的および特別な健康診断の条件 b 雇用される医療従事者の数、資格、および義務
c 使用者が自己負担で、設置し提供する事項
1 第 242 条に特定する医務室
2 20 人から 50 人の労働者のための治療室
3 20 人未満の労働者のための応急治療備品、特に医務室の場合、企業の中で自主的な医療サービスがるかどうかを問わず、健康診断が行わる場合、労働者の数に基づき部屋の数、広さ、装備および目的
4 第 a 項に定める労働者の健康診断
第9編 労働災害
第 248 条 労働災害とは、労働者の過失があるかどうかを問わず、労務提供中または労働時間中に発生した事故をいう。賃金の有無、その能力や場所のいかんを問わず、使用者または企業経営者のために働く労働者または徒弟の身体に損傷を負わせる事故を労働災害という。
住居から勤務場所に移動中に発生する事故は、通勤の途中で個人的または労働に関係ない理由で、中断や迂回がなされないかぎり、労働災害とみなされる。
法律で定義されるすべての職業病は、労働災害とみなされ、同様に補償されなければならない。
第 249 条 企業経営者は、各労働者の地位に関係なく、本章で定める労働災害の責任を負う。
同じ責任は以下の者にも適用される。
・私立病院の理事は、雇用している労働者のみに責任を負う。
・専門家は、その従業員にのみ責任を負う。
・工芸店は、妻や子ども以外の従業員にのみ責任を負う。
・不動産所有者は、家事労働者にのみ責任を負う。
・農業企業は、その従業員に責任を負う。
先に明確に述べた範囲以外にも、特別な臨時的労働に従事する労働者の業務
を管理する者は、事故への備えや勤務中の労働者への補償が求められる。 第 250 条 企業のすべての経営者は、労働災害を防止するあらゆる措置を講じ、または他
の者にあらゆる措置を講じさせなければならない。
第 251 条 通常1人で働く労働者は、一時的に1人以上の仲間と作業を行った場合でも、本章の規定または規則が適用されない。
第 252 条 被害者またはその受益者は、労働災害によって被害を受けて一時的に労働不能になった場合、企業経営者または使用者から補償を受ける権利を有する。ただし、この補償は、労働災害によって4日を超える労働不能をひきおこし他という条件の場合に支払われる。労働災害によって4日以下の労働不能をひきおこす場合は、被害者は通常の賃金の支払いを受ける権利を有する。
意図的に労働災害をひきおこす被害者は、補償を受けることができない。所管の審判所は、以下のことをおこなう。
・事故が被害者の言い訳のできないミスの結果であることが立証された場合に、補償を減額する。
・事故が使用者または仕事管理をおこなう者の言い訳のできない結果であることが立証された場合には、補償を増額する。
第 253 条 重大事故または永久的労働不能をひきおこす事故への補償は、被害者またはその受益者に年金が支払われる。
補充的補償が、他の者からの介護を必要とする被害者に支払われる。
労働不能の場合、事故後50日以内に補償が支払われなければならない。 第 254 条 労働災害の被害者は医療補助(入院費用、現物支給、治療および投薬)および
事故後必要な手術を受け、人工装具を取得する権利を有する。
第 255 条 前条の規定に関係なく、労働災害の被害者は、当事者間の合意があれば、有利な条件による利益を受けることができる。
第 256 条 労働災害に関する強制保険制度が設立されなければならない。この制度は国家社会保障基金の保険によって運営される。
第 257 条 現行の規定は、職業病のリスクへの社会保険の規則が公布されるまで、効力を有する。
ただし、移行期間中、労働担当省は、本篇の規定を実施方法を決定する省令を発行することができる。つまり、
1事故の申告と調査
2保証およびその他の必要な規定
3労働不能の程度と補償額
第10編 労働者の職業紹介と募集第1章 職業紹介
第 258 条 求職活動するすべての者は、労働担当省の職業紹介所または州や市の職業紹介
所に登録することが求められている。
すべての使用者は、企業の欠員または新規採用について、労働担当省または州や市の職業紹介所に通知することが求められている。
すべての使用者は、企業のために直接労働者を採用することができる。ただし、本法第 21 条に定める要件を満たす必要がある。
第 259 条 使用者は、職業紹介所から紹介された労働者を受け入れる必要はない。特定の種類の労働者の受け入れの優先権は、特別の規定や規則によって決定される。
第 260 条 職業紹介所の職員は、紹介のために、いかなる支払いを要求してはならないし、受け取ってもいけない。
第2章 外国人の雇用
第 261 条 外国人は、労働担当省が発行する労働許可と雇用カードを保有しなければ、働くことはできない。外国人は以下の条件を満たさなければならない。
a 外国人はあらかじめカンボジアで適法に働くことができる許可を保有しなければならない。
b 外国人は有効な旅券を保有しなければならない。
c 外国人は有効な在留許可を保有しなければならない。
d 外国人は、適した仕事を持ち、伝染病に感染していてはならない。その条件は労働担当省の合意を得て保健省令によって決定される。
e 労働許可は1年有効であり、在留許可の5年を超えないかぎりで延長が可能である。
第 262 条 労働担当省は以下の場合に、労働許可を取り消すことができる。
a 保有者が第 161 条第2項 a, b, c, d および e の各号の条件を満たさない場合。
b 保有者のカンボジアでの仕事が延長されるときに、カンボジア人の求職者と競合する場合。この場合の取り消しは、再発行または延長された労働許可の期間満了時におこなわれる。
c 保有者が1か月以上雇用なれなかったとき、または別の使用者に雇用されたとき。
労働担当省は、外国人に労働許可と雇用カードを発行するために省令を発行しなければならない。
労働担当省と経済財務省は共同で労働許可と雇用カードの発行費用を設定しなければならない。
第 263 条 すべての企業、およびその職業で仕事をおこなうために職員を雇用する必要がある弁護士、管財人、および公証人の専門家は、最初にカンボジア人に働きかけをしなければならない。
第 264 条 第 261 条の規定にかかわらず、第 263 条の適用をうける各企業で雇用できる外
国人の最大の割合は、以下の職種の職員に基づいて、労働担当省令によって決定される。
・事務職員
・専門職員
・非専門職員
各企業は、企業存続期間中、先の 3 種類の職員が少なくともカンボジア人の最低の割合を満たしていることが求められている。
第 265 条 例外的場合として、企業操業に不可欠な専門家を雇用するために、労働監督官の助言を受けて、外国人の割合が労働担当大臣の許可する限界を超えることができる。
第 11 編 結社の自由と企業の労働者代表第 1 章 労働組合の結成
第 266 条 労働者および使用者は、差別もなく事前の許可もなくても、組織の規約が適用される者の、集団および個人として道徳的物質的利益と同様に、研究し、利益を促進し、かつ権利を守ることを主要な目的として、自らの選択によって職業組織を結成する権利を有する。
労働者の職業組合は労働組合という。 使用者の職業団体は使用者団体という。
本法の目的のために、使用者と労働者の両方を含む労働組合は禁止される。第 267 条 労働組合および使用者団体は以下の権利を有する。
・法律や公共秩序に違反しないかぎりで、規約や運営規則を制定する権利
・自由に代表を選出する権利
・事業計画を策定する権利
第 268 条 職業組織の設立者は、本法に認められた権利や利益を享受するために、規約を制定し、管理運営責任者の名前の一覧表を労働担当省に登録しなければならない。登録のためのすべての要件は組織規約の声明文に添付されなければならない。
労働担当省が登録申請から2か月以内に回答しない場合、その職業組織は登録されたものとみなされる。
規約の写しと管理運営責任者の一覧表は、その組織が結成された労働監督官、閣僚会議事務所および内務省に送付される。
規約や運営に変更がある場合、登録された情報は更新されなければならない。第 269 条 職業組織の管理運営責任者は以下の要件を満たさなければならない。
1 25 歳以上であること
2 クメール語の読み書きができること
3 有罪判決を受けていないこと
4 少なくとも 1 年以上職業や仕事に従事したこと
第 270 条 使用者団体の管理運営担当責任者として選出資格を持つ外国人は以下の要件を満たさなければならない。
1 25 歳以上であること
2 カンボジア王国の移民法によって永住する権利を持っていること
3 カンボジアで連続して 2 年以上勤務したこと
労働組合の管理運営担当責任者として選出資格を持つ外国人は以下の要件を満たさなければならない。
1 25 歳以上であること
2 クメール語の読み書きができること
3 カンボジア王国の移民法によって永住する権利を持っていること
4 カンボジア王国で連続して2年以上勤務したこと
第 271 条 性別、年齢、国籍に関係なく、すべての労働者は、自己の選択で労働組合員になることができる。
第 272 条 組合員のすべての構成員は、第 269 条および 270 条の要件を満たす限り、管理運営に参加することができる。ただし、組合規約は退職者の管理運営への参加条件を制限することができる。
第 273 条 個人の組合活動の自由は、組合や使用者団体へ加入しない自由を含み、さらに加入した組織からいつでも脱退できる自由を含む。
第 274 条 第 266 条の適用を受ける職業組織は民事上の権利を有する。訴訟を提起する権利を持ち、許可なくして、財産や不動産を無料または有料で入手する権利を有する。さらに、契約を締結する能力も有する。
第 275 条 第 266 条に定める労働組合および使用者団体は、自由に道徳的部物質的利益の研究や保護についてお互いが相談することができる。第 266 条、267 条、269条および 270 条の規定は、職業組織の連合体が、その構成する労働組合や使
用者団体の名称や本部を第 268 条に定める方法で通知をするという条件のもとに、連合体に適用される。
第 276 条 労働組合および使用者団体の解散の場合、財産は規約に従って配分され、規約がない場合には、総会の決議によって配分される。規約も総会の決議もない場合、財産は寄付の形で、他の類似する合法に組織された組織、救援組織または社会活動団体に移転される。
第277 条 職業組織やその職業組織連合体の代表は、地理別または職業別枠組みにおって、または登録された組織のタイプに応じて、承認される。代表者は以下の条件によって決定される。
a 第268条の規定によって法的に登録されていること
b 他の組織より多くの構成員カードを保有していること。最大または2
番目に多くの構成員を持っている組合が企業内で代表組合とみなされる。ただし、全労働者の 51%以上を占める労働組合は、もっとも代表的組合となる。
c 少なくとも 33%の構成員から組合費を徴収していること
d 本法の第 266 条の規定によって、組合が職業、文化、教育活動を構成員に提供できることを示す計画や活動を有していること
職業組織の代表の承認を求める様式を受領してから 60 日以内に、労働担当省は前項に定める基準を満たす職業組織の代表の承認の公的な決定をしなければならない。
労働法の規定は、本条1項の規定に定める基準に従って、労働担当省が承認する職業組織の代表に対して、以下に掲げる利点を与えることができる。
・労働法に定める特定の組織に役職の割り当て
・団体交渉能力
・職場委員の選出の1回目の投票において候補者の指名
職業組合の代表的性質を決定する、またはその持続可能性を確認する必要がある場合、労働担当省がその調査を実施することができる。
問題となる職業組織は、検査する職員からの要請によって、証拠書類を提出しなければならない。
証拠書類が利用できない場合または不十分である場合、代表の承認は、必要な情報が得られるまで否定または停止される。その結果、職業組合に与えられる代表の持つ利点は取り消されるか停止される。
第 278 条 8 人以上の労働者を雇用する企業または事業所では、代表組合は、公的な労働者代表から職場委員を指名することができ、または交代で、企業または事業所の管理者に対して労働組合を代表することができる。代表は自分を指名した組織のために、企業や事業所と労働協約を締結する権限を有する。この指名は、職場委員に任期期間中有効である。
第1章 組合結成の自由
第 279 条 使用者は、募集、仕事の管理や運営、昇進、報酬、給付の付与、懲戒処分および解雇を決定する際に、組合員であること、組合活動に参加していることを考慮することは禁止されている。
第 280 条 干渉行為は禁止される。本条において、干渉行為は、使用者または使用者団体の支配のもとに置く目的をもって、使用者または使用者団体によって支配された労働者組織の結成や、財政的その他の方法で、労働者組織を支援することをいう。
第 281 条 使用者は、労働者の賃金から組合費を控除することが禁止され、労働者のために組合費を支払うことも禁止されている。
第 282 条 職場委員または解任されて6か月以下の前職場委員は、職場委員の解任、再任、異動に関する第 292 条、293 条および 294 条に定める利益を得る権利を有する。労働監督官、労働担当省は、解任の許可申請や不服申し立てに関する勧告をおこなう場合、その措置が現職の職場委員と元職場委員の権限移譲と関係あるのかどうかを調査しなければならない。
第2章 企業の労働者代表
第 283 条 常時 8 人以上の労働者を雇用するすべての企業または事業所では、労働者は職場委員を企業又は事業所で投票権を有するすべての労働者の唯一の代表として選らばなければならない。
本章の適用範囲は、以下の場合を除き、第 1 条に定める適用範囲と同じである。
・第 1 条第 3 項が適用される労働者は、職場委員を選出する権利を有する。ただし、その履行については別の政令で決定される。
・航空や海運に従事する者は、本章の規定に従う。ただし、職場委員の選出の場合、企業内で、1 つ以上の選挙人団にグループ分けされなければならない。
・本章は家事労働者には適用されない。
企業内に、前記に定める労働者の人数が、いくつかの事業所に存在するとしても、労働者の人数を本条の適用を免れない。
職場委員の選出に必要な事業所の員数について代表組合と使用者の間に合意がない場合、その紛争は個別の企業の性質を知る管轄権を有する労働裁判所に付託しなければならない。
第 284 条 職場委員の任務は以下である。
・賃金および労働法や規則の履行、企業に適用になる労働協約についての個人的または集団的苦情を使用者に提起すること
・労働監督官が監督の責任を負う労働法や規則の履行に関する苦情および批判を労働監督官に付託すること
・健康および安全に関する規定に履行状況を確認すること
・企業の中での健康、安全および労働者の労働条件、特に労働災害や疾病の改善に貢献する措置を提案すること
職場委員は、本法第 24 条の規定による就業規則の草案、またはその修正案に相談を受け、さらに文書で意見を提出しなければならない。
職場委員は、業務の縮小、企業または事業所の再編対策について相談にのり、さらに文書で意見を提出しなければならない。
第 285 条 職場委員の数は以下のように企業での労働者の数によって決まる。
・8 人から 50 人の場合、1 人の職場委員と 1 人のその補佐
・51 人から 100 人の場合、2 人の職場委員と 2 人のその補佐
・100 人以上の場合、100 人の労働者ごとに 1 名の職場委員と 1 人のその補佐を追加する。
第 286 条 18 歳以上で 3 か月以上勤務し、選挙法で投票権を奪われていない労働者は、投票権を有する。
25 歳以上で企業に 6 か月以上勤務している者は候補者になる。この条件に追加して、候補者になる資格を持つ外国人は、求められる期間までにカンボジア王国に在留する権利を持たなければならない。
第 287 条 投票は勤務時間中になされる。投票は秘密投票でおこなわれる。職場委員とその補佐の投票は別々の投票用紙で行っても、同時期におこなわれなければならない。個別の職種について、別個の選挙人名簿を必要とする選挙前の合意、労働協約または規定がある場合、選挙は異なる場所で、別々におこなわれなければならない。
第 288 条 職場委員は、各事業所の代表組合によって指名される候補者から選ばれる。 労働組合は次期の職場委員の数以上の候補者を指名することはできない。必要な場合には、これが各選挙単位に適用になる。
第 289 条 より多くの投票を獲得した候補者が、議席を満たすまで当選者となる。1 議席に複数の候補者が同じ得票数を得た場合、年齢の高い候補者が選ばれる。投票は、登録された選挙人の過半数以上が投票した場合に有効となる。
第 290 条 第 289 条の規定に反する場合、または代表組合が一定期日までに候補者を指名しない場合、代表組合の指名のあるなしに関係なく、15 日以内に、再投票をおこなって、すべての候補者に投票できるようにしなければならない。再投票では定足数の要件は求められない。
第 291 条 職場委員およびその補佐は 2 年間の任期で、再任される。その職務は死亡、辞職、労働契約の終了で終わる。職場委員が離職または欠勤をしている間、同一の選挙母体から選ばれた補佐が代理を務める。その代理は、同一の労働組合から指名され、もっとも多くの票を獲得した職場委員補佐が優先される。
第 292 条 選挙の実施は使用者の責任である。職場委員がいない場合、使用者は、選挙日を設定し、労働者、組合、または、労働監督官の要望を受けて 15 日以内に公表
しなればならない。選挙は要望を受理して 45 日以内に実施しなければならない。
すべて新しい職場委員を選ぶ場合、現委員の期限満了の 15 日前までに投票をおこなわなければならない。
第 293 条 職場委員や職場委員候補の解雇は、労働監督官の承認が必要である。任期後 3
か月たたない職場委員や選挙結果が公表されて 3 か月までの期間の落選した候補者にもこの保護措置が適用になる。職場委員の任期を終わらせる可能性のある配転や異動にも、同様に保護措置が適用になる。
本条の適用を受ける労働者の解雇承認申請を受けた労働監督官は、受理後 1 か月以内に、その決定を使用者、当該労働者、さらに労働者が所属する労働組合に通知しなければならない。
その決定を受けて、使用者、当該労働者、当該労働者が所属する労働組合は、労働担当省に異議を、2 か月以内に、申し立てることができる。労働担当省は、労働監督官の決定を取り消しや覆すことができる。
一定の期間内に、労働監督官の決定通知がない場合、または異議申し立てから
2か月以内に労働担当省の決定通知がない場合、許可申請および異議申し立ては棄却されたものとみなされる。
第 294 条 労働担当大臣または控訴行政裁判所が職場委員の解雇承認決定を取り消した場合、職場委員は行政決定を受けて 2 か月以内に控訴した場合、原職に復帰または同等の地位に復帰する権利を有する。職場委員の任期が終了していなければ、原職に復帰する。そうでない場合、職場委員は、次期の選挙まで第 293 条に定める規定によって保護を受ける権利を有する。
第 295 条 重大な非行の場合、企業経営者は、労働監督官の決定を待つ間、当該当事者を直ちに停職を命じることができる。労働監督官が解雇を棄却した場合、停職は無効となり、その効果は法的に取り消される。
第 296 条 選挙実施後 8 日以内に、使用者は選挙結果について労働監督官事務所への報告書を作成しなければならない。さらに、使用者は報告書の写しを事業所に掲示しなければならない。
第 297 条 企業または事業所での職場委員の存在は、直接使用者またはその代理に苦情を申し立てる労働者の権利を妨害するものではない。
第 298 条 職場委員選挙、選挙資格および公平性に関する紛争は、労働裁判所 または労働裁判所がない場合、控訴の可能性がなく、迅速に判断する権限を持つ通常裁判所に付託される。
第 299 条 労働担当省は、特に以下の事項について、本条の履行方法を定める省令を発布しなければならない。
a 投票手続および労働者を選挙人団に分ける方法
b 職場委員が使用者またはその代理人に承認を受ける手続
c 労働時間を含む、職場委員がその任務を実施する方法
d 選挙母体が職場委員を退任させる手続
第 12 編 労働紛争の解決
第1章 個別紛争、個別紛争の事前調停
第 300 条 個別紛争とは、使用者と 1 人以上の労働者と間で、個人的に生じる紛争であって、労働契約や徒弟契約内容の解釈や履行に関する紛争、または現行法や労働協約の規定をめぐる紛争をいう。
個別紛争は、訴訟提起前に、一方当事者の申し立てによって、州や市の労働監督官への事前調停に付託することができる。
第 301 条 申し立てを受理して、労働監督官は、紛争の争点を聞き出すために両当事者に聴取し、関連する法律、規則、労働協約、個別労働契約に基づいて、当事者間の調停を試みる。
このために、申し立てを受理して 3 週間以内に、労働監督官は、聴聞の機会を設定しなければならない。
当事者は聴聞の際に援助を受け、代理人を立てることができる。
調停の結果は、労働監督官が書く文書での報告書に、調停成立または不成立を記載される。報告書は労働監督官とその写しを受け取る当事者が署名しなければならない。
労働監督官の前での合意は法律上強行される。
調停が失敗した場合、利害関係者は、2 か月以内に、所管の裁判所に提起することができる。この期間がすぎれば、訴訟は却下される。
第2章 集団紛争
第 302 条 集団紛争は、1 人以上の使用者と複数の労働者との間で、労働条件、職業組織の承認を受けた権利、企業の中の職業組織の承認を受けた権利、労使間の問題についての生じる紛争をいう。この紛争は企業の効果的な操業または社会的平和を危うくする。
第 303 条 労働協約に紛争処理手続を定めていない場合、当事者は、州または市の労働監督官に紛争を通知しなければならない。ただし、労働監督官は、正式に通知を受けていなくても、集団紛争を認識したときには、調停手続に入ることができる。
第 304 条 労働担当大臣は、紛争の通知を受けたとき、または認識したときから 48 時間以内に調停官を任命しなければならない。
第 305 条 調停官は、労働担当大臣が任命したときから 15 日以内に活動しなければならない。紛争当事者の共同の要請により、当該期間を延長できる。
第 306 条 調停手続期間中、紛争当事者は紛争への対抗措置を控えなければならない。調停官が招集するすべての会合に出席しなければならない。正当な理由なく会合に欠席することは第 16 編の規則によって罰金を科せられる。
第 307 条 当事者が署名し、調停官が承認した調停合意書は、当事者間の労働協約と同じ法的効力を有する。ただし、労働者を代表する当事者が労働組合でない場合、合意は組合および労働者も拘束しない。
第 308 条 合意が成立しない場合、調停官は、調停が失敗した争点を記録し、紛争についての報告書を作成しなければならない。調停官は、調停手続終了後 48 時間以内に、労働担当大臣に記録と報告書を送付しなければならない。
仲裁
第 309 条 調停失敗の場合、労使紛争は以下の手続で処理される。
a 労働協約に仲裁手続が定められている場合、その仲裁手続
b すべての紛争当事者が合意するその他の手続
c 本章に定める仲裁手続
第 310 条 第 309 条第 c 項が適用になる事例の場合、労働担当大臣は、第 308 条に特定する調停官からの報告書を受理した日から 3 日以内に仲裁委員会に事例を付託しなければならない。
仲裁委員会は、事例を受け付けた後 3 日以内に会合を開催しなければならない。第 311 条 仲裁委員会の委員は、治安判事、労働諮問協議会の委員、道徳的に優れ、経済社会問題に精通した有識者から選ばれる。毎年、労働担当省令が準備する一覧
表に名簿が記載されていなければならない。
第 312 条 仲裁委員会は、調停不調に終わった報告書に記載されている問題、報告書の後に生じた紛争の直接の結果以外の問題について調査する義務はない。
仲裁委員会は、法律、規則、労働協約の解釈や履行に関する紛争について判断を示す。その判断は、他のすべての紛争にも影響を与える。
仲裁委員会は、企業の経済状況や紛争に巻き込まれた労働者の社会状況を調査するに相当な権限を有している。
仲裁委員会は、企業や職業組織を調査する権限を有するとともに、任務を果たすのに役にたつ書類、経済、会計、統計、財務、管理情報を提出するよう求める権限を有する。委員会は専門家の援助を求めることができる。
仲裁委員会の委員は、調査のために提供された情報や記録について秘密を保持する義務を有し、さらに、任務を果たすために注意を引いた事実の秘密を守らなければならない。
仲裁委員会の会合は、非公開で開催される。
第 313 条 事件を受理した日から 15 日以内に、仲裁委員会は、労働担当大臣に裁定を通知しなければならない。大臣は、直ちに当事者に裁定を通知しなければならない。当事者は、通知を受領した日から 8 日以内に、書留郵便またはその他の信頼野おける方法で労働大臣に通知をして、裁定に対して異議を申し立てる権利を有する。
第 314 条 いずれの当事者によっても異議申し立てられない場合、確定した裁定は、直ちに履行されなければならない。
すでに執行された仲裁は、労働協約と同様に保管および登録される。
第315 条 調停で合意された報告書および異議申し立てされない仲裁についての報告書は、紛争にかかわる企業の職場や、州および市の労働監督官事務所に掲示される。
第 316 条 調停および仲裁手続は無料で行われる。
第 317 条 労働担当省は、本条を履行する方法を決定するために省令を定めなければならない。
第 13 編 ストライキとロックアウト第1章 一般条項
第 318 条 ストライキは、労働者の団体が、企業又は事業所で、労務提供再開の条件とし て使用者から要求を勝ち取るためにおこなう労務提供の集団による停止をいう。ロックアウトは、労働紛争中、使用者による全部または一部の企業または事業 所の閉鎖をいう。
第 319 条 ストライキおよびロックアウトをおこなう権利は保障されている。仲裁裁定が拒否された場合に、紛争の一方当事者によって実施される。
第 320 条 ストライキ権は、仲裁委員会が、第 12 編に定める期間内に、仲裁裁定を出さない場合、または通知を出さない場合に、おこなうことができる。
ストライキ権は、労働者を代表する組合が、労働協約または法律を順守させるために、これを行使しようと判断するときに、行使することができる。
ストライキ権は、労働者の経済的社会的職業的利益を守るために、一般的方法としておこなうことができる。
ストライキ権は、使用者との紛争処理のためのすべての平和的方法を尽くした場合にのみ、おこなうことができる。
第 321 条 ストライキ権は、現行法、労働協約、当事者が受け入れた仲裁裁定に関する規則についての法的規定の解釈をめぐって集団紛争がおきた場合には、行使することはできない。
ストライキ権は、労働協約や仲裁裁定が有効期間中に、労働協約や仲裁裁定の改定を目的とするために、行使することはできない。
第 322 条 ロックアウト権は、ストライキ権と同じ規定のもとで行使することができる。
第2章 ストライキに関する事前手続
第 323 条 ストライキは、秘密投票によってストライキ決議が採択されるという組合規約の手続によって宣言されなければならない。
A 事前の通知
第 324 条 ストライキは少なくとも 7 日前の通知と、企業または事業所への届け出がなさ
れなければならない。ストライキがある産業や操業の 1 部門に影響を与える場
合、事前の通知はその産業や 1 部門にかかわる使用者団体になされなければならない。事前の通知には、ストライキをおこなう理由となる要求を正確に特定しておかなければならない。
事前の通知は、労働担当省にも送付されなければならない。
第 325 条 事前の通知期間中に、労働担当省は、他の関係する省と協力して、紛争当事者間を調整するためのあらゆる手段を模索しなければならない。
B 最低限の業務
第 326 条 事前の通知期間中、紛争当事者は、ストライキがおこなわれる企業の施設や機材を保護するために、企業内で最低限の業務をおこなうために、会合に出席することが求められる。当事者間の合意がない場合、労働担当省は、最低限の業務を決定しなければならない。
本条が適用される最低限の業務を提供することを求められる労働者がその労務提供に従事しない場合、重大な非行に該当する。
C 必要不可欠な業務
第 327 条 ストライキが必要不可欠な業務に影響を与える、つまり、業務の中断が人々の全部または一部に生命、安全、健康を危うくするおそれがある場合、第 324 条
の事前の通知は、最低 15 日労働日に延長される。
第 328 条 事前の通知期間中、労働担当省は、ストライキに影響される人の生命、健康、安全を危うくしないために維持されるべき最低限の業務を決定しなければならない。ストライキを宣言した組合は、維持されるべき業務についての意見を述べる機会を与えられるべきである。
本条の適用される最低限の業務の提供を求められる労働者が、労務提供に従事しない場合には、重大な非行があったとみなされる。
第 329 条 第 328 条に定める必要不可欠な業務をおこなう企業の一覧表は、労働担当省野省令に記載されなければならない。必要不可欠な業務の資格に関するすべての紛争は、労働裁判所で処理される。労働裁判所がない場合には、普通の裁判所で処理される。
第3章 ストライキの効果
第 330 条 ストライキは平和におこなれなければならない。ストライキ中の暴力行為は、休職や懲戒解雇を含む、処罰の対象となる重大な非行とみなされる。
第 331 条 ストライキに参加しない者の労働の自由は、すべての強制や脅迫から保護されなければならない。
第 332 条 ストライキは労働契約を停止される。ストライキ中、手当や賃金は支払われない。
労働者はストライキ終了後、現職に復帰させなければならない。
労働者代表の権限は、使用者代表との接触を維持するために、ストライキ期間中も停止されない。
第 333 条 使用者は、ストライキ参加を理由に労働者に制裁を課すことはできない。制裁は無効となり、使用者は本 16 編の第 369 条の定めに従って罰金を科せられる。
第 334 条 ストライキ中、使用者は、ストライキ参加者の代わりに新規の労働者を雇用してはならない。第 326 条および 328 条に定められる最低限の業務の提供を求められた労働者がこれに従事しない場合に、最低限の業務を維持する場合は例外
である。これに違反する場合、使用者はストライキ期間中のストライキ参加者の賃金を支払わなければならない。
第 335 条 本規定に違反して行われるロックアウトの場合、使用者は、労務提供できなかった各 1 日に労働者に賃金を払わなければならない。
第4章 違法ストライキ
第 336 条 違法ストライキは、本章に定める手続を順守しないストライキをいう。平和でないストライキは違法である。
第 337 条 労働裁判所、それがないときは通常の裁判所は、ストライキの合法または違法を判断する権限を有する。
ストライキが違法な場合、ストライキ参加者は、違法の宣言がなさてから 48 時間以内に、仕事に復帰しなければならない。正当な理由なく、この期間終了までに仕事に復帰しない労働者は、重大な非行に該当する。
第 14 編 労働行政機関第1章 一般的規定
第 338 条 労働行政機関は、主に、国家の労働政策を準備し、実施し、調整し、監督し、評価する責任を有している。特に、行政機構の中で、労働政策を実現するために立法を策定し、履行する任務を負う。
労働行政機関は、常に、労働条件、雇用や職業生活についての国家法や慣行に照らして、被用者、失業者、潜在的失業者の状況を研究する。この領域の不適切な所や弊害な所に注意を払って、救済措置のための方法について提案し、決定を求める。
労働行政機関は、使用者、労働者、さらにそれぞれの団体からの技術援助の要望にこたえる。
労働行政機関は、個別紛争または集団紛争の解決を支援するために、使用者および労働者、さらにそれぞれの団体に調停手続を実施する。
第 339 条 労働行政機関は、すべての利害関係者に便宜を提供するために、永続的に、充分な人材、物資、輸送手段、事務所および施設を維持しなければならない。
労働行政機関の職員は、それぞれ任務を果たすために、適切な訓練を受けなければならない。
雇用期間中に職員に提供される永続的な訓練を保障するために、労働担当省は省令によって関連する措置を講じなければならない。
第 340 条 労働行政機関の職員は、与えられた任務を果たすための充分な資格を持ち、必要な訓練を受け、さらに外部の影響から自由でなければならない。
すべての職員は、法律に定められた任務を効率的に果たすために物質的手段および財政的資金が与えられなければならない。
第341 条 労働担当省は、労働行政機構の構造を決定する省令を発布しなければならない。
特に以下の業務を特定する。
・責任のある職員の任務および職務
・労働行政機関内で、他の業務との組織、関連や協力
・国の州や市における最善の業務を提供するための職員の配置
・責任のある職員の仕事の方法
第 342 条 労働行政機関でのさまざまな職員のための特別な規則や労働条件は、政令によって決定される。
第2章 労働監督
第 343 条 労働監督の任務は労働監督官および労働監視要員によって担われる。
労働監督官および労働監視要員は、任命前に、職務を完全に遂行することを誓い、辞任したのち、仕事中に知りえた製造、営業秘密、運営方法を暴露しないことを誓わなければならない。
第 344 条 労働監督官は以下の任務を持つ。
a 現行の労働法や規則、さらに成文化されていないが、労働組織に関連するその他の法規の履行を確実にすること
b 法的規則を順守する効果的な方法を使用者および労働者に情報や技術的助言を提供すること
c 現行法の規定が適用されない不正や弊害を所管に機関に注意を喚起すること
d 行政機関によって許可され、かつ本法第 1 条の適用される企業および組織の調整や再編についての諸問題について助言すること
e 労働者とその家族の生活条件についての規定の履行を監視すること
第 345 条 労働監督官および労働監視要員は、任務を果たすために、労働者の健康や安全に関する規定の履行を確保するために、さらに、労働者の健康や安全に関する方法や道具の効果、さらにその規定を調査するために、関連する省庁や外部の機関の製薬、機械、電機、化学、環境に関する資格を有する専門家や技術者から援助を受けることを要求することができる。技術的援助は労働監督官または労働監視要員の監査のもとで、関連する省庁の協力を得て行われる。
専門家や技術者は、労働健康や安全の規定を履行するにあたって、労働監督官や労働監視要員の協力のもとで、宣誓をおこなわなければならない。専門家や技術者は、第 346 条および 347 条に認められている労働監督官と同じ権限を有している。
援助にともなう費用は労働担当省が負担する。
第 346 条 身分証明書を有する労働監督官および労働監視要員は、以下の権限を持っている。
a 事前の通知なく、夜昼に関係なく、管轄区域の企業に自由に入ること
b 監督官事務所の検査の実施が合理的にあると思われる職場に昼間に立ち入る
c 規定が効果的に順守されていることを確認するに必要な調査や検査をおこなう。特に以下のことを検査する。
・単独または証言者の面前で、法の執行に関する事項について使用者や従業員に質問すること
・労働条件に関する法律に規定されている使用者に保管が義務づけられている書類、原簿、記録を閲覧して、それらが法律に従って作成されているかを確認するために、書類、原簿をコピーし、聞き出すこと
・法律によって掲示が求められている通知や書類の掲示を求めること
・使用者やその代理人が材料や原料が分析目的のために採取されることを認識している場合、使用された材料や原料のサンプルを採取すること
検査期間中、労働監督官または労働監視要員は、使用者またはその代理人に通知をすることによって検査の効率性が妨害されないと判断される場合には、通知しなければならない。
労働監督官および労働監視要員は、検査中、1 人以上の職場委員がこれに立ち会う必要がある。
第 347 条 労働監督官および労働監視要員は、その任務を遂行するにあたって、以下の権限を有する。
1 使用者またはその代理人および労働者に意見を述べること
2 一定の期限内に、法律順守について使用者およびその代理人に警告をおこなうこと
3 法令を順守していないことについての公式の報告書について注意すること
4 労働者の健康や安全に緊急かつ重大な危険性があると信じ、結論づける理由がある時、ただちに取られるべき措置を命じること
5 本法の規定および関連する規定に違反に対して罰金を科すこと
第 348 条 労働監督官、労働医療監督官、労働監視要員は、検査の管轄内の企業屠いかなる利害を持ってはならない。
労働監督官、労働医療監督官、労働監視要員は、施設内での違反や法律違反についての苦情や情報提供源の秘密を保持し、検査が苦情の結果なされたことは使用者やその代理人には明らかにしてはならない。
第3章 労働医療監督
第349 条 労働医療監督は、職場における労働者の健康保持のために永続的に実施される。
監督の任務は、労働医療サービスの組織や運用に重点をおく労働医療監督官にゆだねられる。
労働医療監督官は、労働監督官と共同で業務をおこない、労働者の健康に関する規定の履行を共同で実施する。
第 350 条 本法の第 343 条 2 項、346 条、347 条 1,2,3,4 に定められる労働監督官の権限と義務についての規定は、前条の枠組の中で、労働医療監督官にも準用される。
第 15 編 労働諮問協議会
第 351 条 労働諮問協議会は労働担当省のもとに組織される。以下の者から構成される。
・議長となる労働担当大臣またはその代理人
・関連する省庁の代表者
・全国レベルでの労働組合の代表と、それと同数の全国レベルでのもっとも代表的な使用者団体の代表
労働者側の代表者および使用者側の代表者 1 人ずつで、合計 2 名の副議長第 352 条 労働諮問協議会の構成を任務は、政令によって決定される。
第 353 条 労働諮問協議会は少なくとも年に 2 回会合を開催しなければならない。ただし、労働担当大臣の発議または副議長1人の要望で、開催することができる。
議長は、副議長と相談の上で、労働諮問協議会の議題を設定する。
第 354 条 労働諮問協議会は、労働担当省の責任の下に事務局をもたなければならない。第 355 条 議長または 1 名の副議長の要請によって、主に経済、医学、社会または文化的
な問題についての資格を有する職員または著名人を労働諮問協議会の会合に招聘することができる。
第 356 条 労働諮問協議会の委員は無報酬である。
労働諮問協議会の委員が労働者として雇用している使用者は、会合に出席できる時間を与えることが求められる。
労働諮問協議会の会合期間は、通常の労働時間であり、先任権の計算や休暇取得の権利においては通常の労働時間とみなされる。
労働諮問協議会の委員である労働者は、職場委員や組合役員に付与されているのと同じ保護が認められる。
第 357 条 労働諮問協議会は、主に、労働、労働者の雇用、賃金、職業訓練、国内野労働移動、移民、労働者の物質的道徳的条件の改善、労働健康や安全に関する問題について研究する使命を持っている。
労働諮問協議会は、以下の義務を持っている。
・最低保障賃金への助言をおこなうこと
・労働協約の適用範囲を拡大するために事前に助言すること、もし労働協
約がない場合は、職業や特定の活動分野での雇用条件に関する規則に最終的な助言を与えること
第 358 条 カンボジア王国の国際労働機関への参加は、労働諮問協議会の委員である使用者および労働者代表と相談しなければならない。
第 16 編 罰則
第 359 条 本法第 16 編の規定に違反した者は、罰金または禁錮、またはその両方を課せられる。
罰金は労働監督官および労働監査要員によって課せられる。
第 360 条 罰金は日給をもとにその何倍かで決められる。日給は、労働担当省および司法省の共同による省令で決定される。
第 361 条 第 14 条、20 条、22 条、24 条、29 条、30 条、34 条、37 条、42 条、43 条、 72 条、112 条、134 条、187 条、214 条、222 条、253 条、255 条の規定に違反する者は、日給の 10 日分から 30 日分の罰金に処せられる。
第 362 条 労働者に週休をみとめず、延期させる使用者、または、本法第 6 編第 4 章または本法施行のための省令に違反する条件で週休を付与している使用者は、日給の 10 日分から 30 日分の罰金に処せられる。
この罰金は、必要な許可を得ないで週休を停止し、または先の規定による条件で代休を付与しない使用者にも適用になる。
第 363 条 第 21 条、28 条、44 条、45 条、49 条、50 条、57 条、59 条、106 条、139 条、
144 条、162 条、163 条、164 条、166 条、167 条、168 条、169 条、170 条、
179 条、180 条1項および 2 項、182 条 2 項および 3 項、184 条、194 条、198条、200 条、204 条、205 条、206 条、210 条、249 条、296 条、306 条野規定に違反する者は、日給の 31 日分から 60 日分の罰金に処せられる。
第 364 条 第 93 条に定める条件で雇用証明書の付与を無視し、拒否する使用者は、日給の
31 日分から 60 日分の罰金に処せられる。
第 365 条 第 113 条、114 条、115 条および 116 条の規定に違反する者は、民事責任とは別に、日給の 31 日分から 60 日分の罰金に処せられる。
第 366 条 第 127 条、128 条および 129 条に定められる規則に違反して賃金からの相殺、
分割払い、減額をおこなう使用者は、日給の 31 日分から 60 日分の罰金に処せられる。
第 367 条 労働時間に関する第 137 条、138 条 2 項、140 条および 141 条、これらの規定
を履行するための省令の規定に違反する使用者は、日給の 31 日分から 60 日分の罰金に処せられる。
第 368 条 本法の第 173 条、174 条、175 条、176 条、177 条および 178 条の規定に違反する条件で、18 歳未満の未成年者を雇用する使用者に、日給の 31 日分から 60日分の罰金に処せられる。
第 369 条 第 12 条、15 条、17 条、18 条、39 条、46 条、104 条、126 条、260 条、264条、281 条、292 条、331 条、333 条、334 条および 335 条の規定に違反する者は、日給の 61 日分から 90 日分の罰金または 60 日から1か月の禁固に処せられる。
第 370 条 本法第 16 条の規定に違反する使用者は、日給の 61 日分から 90 日分の罰金に処せられる。
第 371 条 労働監督官への通知なく、第 95 条 1 項および 2 項に定める理由によって従業員
を解雇し、または、第 95 条 7 項の規定に違反して労働担当大臣が定める解雇猶
予期間中に解雇を行った使用者には、日給の 61 日分から 90 日分の罰金、また
は 6 日から1か月の禁固に処せられる。
第 372 条 カンボジア王国で報酬を得る仕事を許可する雇用カードを保有していない外国人を雇用し、仕事に従事させている者は、日給 61 日分から 90 日分の罰金、ま
たは 6 日から 1 か月の禁固に処せられる。再犯の場合には、1か月から 3 か月の禁固に処せられる。
第 373 条 第 278 条、279 条および 280 条の規定に違反する者は、日給で 61 日分から 90
日分の罰金、および 6 日から1か月の禁固、それらのうちの 1 つに処せられる。
労働組合結成や組合組織に加入する自由または加入しない自由についての第 11
編第 1 章の規定に違反し、または違反を試みる者、特に第 266 条、267 条およ
び 273 条が脅迫や強制によって違反する者は、同じ罰則に処せられる。
第 374 条 最低賃金に関する規則に違反する者は、日給で 30 日分から 120 日分の罰金に処せられる。
第 375 条 第 229 条、230 条および 231 条またはこれらを履行するための省令の違反する
会社社長、役員、管理者または役職者は、日給で 30 日分から 120 日分の罰金に処せられる。
第 376 条 前条の規定に違反し、他の者の健康や安全を脅かす者は、日給で 30 日分から
120 日分の罰金に処せられる。
第 375 条および 376 条の罰則は、本法第 9 編に定める労働災害および職業病に対する補償に関する規定とは別個に独立したものである。
第 377 条 第 240 条、241 条、242 条、243 条、244 条、245 条、246 条および 247 条の規定、または労働健康を指示する省令に違反する者は、日給で 120 日分から 360
日分の罰金および 1 か年から 3 か年の禁固、または、そのうちの一方に処せられる。
第 378 条 本法第 266 条に定める職業組織または職業組織連合の指導者や管理者で、排他
的な目的に無関係な活動に従事するよう誘導する者は、日給で 61 日分から 90
日分の罰金に処せられる。
前項に定める違法行為を職業組織や職業組織連合がおこなう場合、または、特
に労使関係の分野で、法律や規則に重大な、かつ繰り返す違反行為が行われる場合、労働裁判所は、職業組織や職業組織連合の解散を命じることができる。
第 379 条 第 268 条、269 条および 270 条の規定に違反する者は、日給で 61 日分から 120
日分の罰金に処せられる。
第 380 条 組合役員の自由な辞任を妨害し、または妨害を試みる者、独立的または定期的な職務を妨害し、または妨害を試みる者、または、組合役員の解任、再任、異動に関する第 282 条の規定に違反する者は、日給で 61 日分から 90 日分の罰金
および 6 日から1か月の禁固、またはそのうちの1つの罰則に称せられる。 第 381 条 第 283 条、286 条、287 条および 291 条の規定を順守しない者および職場委員
の選任や定期的な職務の遂行を妨害し、または妨害しようと試みる者は、日給で 61 日分から 90 日分の罰金および 6 日から1か月の禁固、またはそのうちの
1つの罰則に処せられる。
第382 条 労働監督官または労働監視要員、または労働医療監督官の職務の執行を妨害し、妨害を試みる者は、日給で 120 日分から 360 日分の罰金、または1か月から1か年の禁固に処せられる。
第 383 条 本法によって同じ罰則が科せられるいくつかの違反行為がある場合、罰金額は違反の数に比例する。ただし、罰金総額は、最高の罰金額の 5 倍を限度とする。前項の規定は、特に、複数の労働者が本法に違反する条件のもとで雇用されている場合に適用になる。
再犯の場合には、罰金額は 3 倍になる。
第384 条 企業経営者は、権限を有する代表者や担当職員に対して出された判決について、民事上の責任を負う。
第 385 条 調停で解決できなかった本法第 12 編が適用になる労使紛争は、労働裁判所に付託される。
紛争解決のために、労働裁判所は、以下の必要な措置を講じることができる。
1 解雇された労働者の復職を命じ、もとの職に復帰させ、さかのぼって賃金の支払を命じる。
2 組合選挙または職場委員の選出の取り消し
3 使用者に組合との交渉を命じ、または組合役員や職場委員との協力御命じる。
4 労働紛争に勝った当事者に損害賠償支払いを決定する。
第 386 条 秘密や生産過程を漏えいする労働監督官、労働監視要員および労働医療監督官は、退職後漏えいした場合であっても、行政法規による懲戒処分とは別に、6 日から 1 か月の禁固に処せられる。
第 17 編 労働裁判所
第 387 条 労働裁判所は、労働契約や徒弟契約について労使間に起きる個別紛争を管轄す
るために創設される。
第 388 条 労働裁判所の組織と機能は法によって決定される。
第 389 条 労働裁判所が創設されるまでの間、本法が適用になる紛争は通常裁判所に付託される。
第 18 編 雑則
第 390 条 本法の規定は、現に存在する個別の労働契約に適用になる。ただし、すでに存在する契約上の利益が、本法に定めるより労働者にとって有利な場合、労働者は、契約上の利益を享受することができる。
本法の規定は、契約終了の理由とすることはできない。
第 391 条 すでに存在する契約が本法の規定に反する場合、本法の公布から 6 か月以内に修正されなければならない。
第 392 条 労働担当省令によって設定される日までの経過期間中、すべての労働組合は、代表性を証明しなくても、第 1 回目の職場委員の候補者を指名することができる。
前項の期間中、職業または地理的領域における代表となることを求める労使の職業組織は同じ管轄を有する労働協約に署名することができる。ただし、労働協約の有効性は、第 1 回目の選出についての省令が発布されてから 1 年以内に
終了する。労働協約の更新または新しい労働協約の締結は、第 96 条の枠組みの範囲でおこなうことができる。
職業組織が全国レベルで代表性を認められるのを待っている間、労働担当大臣は、社会問題や職業および雇用に関する領域で優れた功績を持つと認められる人物(職員)を選任するものとする。
第 393 条 労働監督官、労働医療監督官、労働監視要員が空席の場合、労働担当大臣によって調査実施を任命された職員は、本法の労働監督官、労働医療監督官および労働監視要員と同じ機能と任務を持つものとする。
第 394 条 本法施行前にすでに結成された労働組合や使用者団体は、本法の規定を順守して結成されなければならない。
第 19 編 最終規定
第 395 条 本法に違反するすべての規定は無効とする。
第 396 条 本法は、緊急事項として公布されなければならない。
本法は 1997 年 1 月 10 日、カンボジア王国国会、第 1 議会 7 期に採択され、1997
年 3 月 13 日に公布された。