ランク 状況 評価額 A 投資の短期的な状況について懸念がある場合 取得価額の 75% B 投資の長期的な状況について懸念がある場合 取得価額の 50% C 業績回復のため梃入れしなければ投資原価が回収できないと懸念される場合 取得価額の 25% D 投資原価が回収される見込みがなくなった場合 備忘価額
資料2-2
投資事業有限責任組合契約に関する法律(抄)
(旧「中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律」)
(財務諸表等の備付け及び閲覧等)
第八条 無限責任組合員は、毎事業年度経過後xx以内に、その事業年度の貸借対照表、 損益計算書及び業務報告書並びにこれらの附属明細書(第三項において「財務諸表等」という。)を作成し、五年間主たる事務所に備えて置かなければならない。
2 前項の場合においては、無限責任組合員は、組合契約書及び公認会計士(外国公認会計士を含む。)又は監査法人の意見書(業務報告書及びその附属明細書については、会計に関する部分に限る。次項において同じ。)を併せて備えて置かなければならない。
3 組合員及び組合の債権者は、営業時間内は、いつでも、財務諸表等並びに前項の組合契約書及び意見書の閲覧又は謄写を請求することができる。
中小企業等投資事業有限責任組合会計規則(抄)
(趣旨)
第一条 中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律(平成十年法律第九十号)(以下「法」という。)第八条第一項の貸借対照表、損益計算書、業務報告書及び附属明細書
(以下「財務諸表等」という。)の記載方法は、この会計規則の定めるところによる。
(投資)
第七条 投資は、株式、債券その他の資産の性質を示す適当な名称を付した科目に細分しなければならない。
2 投資は、時価を付さなければならない。ただし、時価が取得価額を上回る場合には、取得価額によることも妨げない。
3 前項の時価の評価方法は、組合契約に定めるところによる。
投資事業有限責任組合モデル契約(抄)
投資資産時価評価準則
※ 平成 10 年 5 月通商産業省「投資事業組合の運営方法に関する研究会報告書」資料 6「有限責任組合における、有価証券への評価基準モデル」(xxxx監査法人作成)によっている(なお、その後の法改正に伴う用語の修正を加えている。)。
無限責任組合員は、投資事業有限責任組合の財産及び損益の状況を算定するために、投 資先企業への投資資産について適正な評価額を付さなければならない。その評価額は、「市場性」ないしは「客観的な事象」に基づく価額とすべきである。但し、市場性のない有価証券を評価減とする場合、組合員が評価時点で受取れると合理的に期待できる金額(回収可能価額)と客観的な事象に基づく金額とを比較していずれか低い価額を付さなければならない。
市場性のある有価証券 | 市場性のない有価証券 | |
評価増 | 決算日の最終の価格等 | 直近ファイナンス価格 |
評価減 | 決算日の最終の価格等 | 直近ファイナンス価格又は回収 可能価額のいずれか低い価額 |
1.~7.(略)
8. 市場性のない有価証券を発行する投資先事業者等において、業績が見込みより悪化している場合には、評価減を検討する必要がある。また、投資直後においても、業績が見込みより著しく悪化している場合には、評価減を検討する必要がある。
9. 回収可能価額を下記の区分に応じた簡便的な方法により見積ることも認められる。
ランク | 状況 | 評価額 |
A | 投資の短期的な状況について懸念がある場合 | 取得価額の 75% |
B | 投資の長期的な状況について懸念がある場合 | 取得価額の 50% |
C | 業績回復のため梃入れしなければ投資原価が回 収できないと懸念される場合 | 取得価額の 25% |
D | 投資原価が回収される見込みがなくなった場合 | 備忘価額 |
10. 状況を具体的に例示すれば、下記のとおりである。なお、その他資産価値に影響を与えると思われる事象についても考慮する。
① 投資の短期的な状況について懸念がある場合としては、
● 業績が見込みより悪化
● 事業計画が達成されていない
● 業績が改善する見込みが不明
● 資金繰りが悪化
② 投資の長期的な状況について懸念がある場合とは、
● 事業計画の実現が困難で、大幅な見通しが必要と判断される
● 投資時点より純資産が半分以下となっている
● 業績が回復する見込みが乏しい
● 資金繰りが不透明
③ 業績回復のため梃入れしなければ投資原価が回収できないと懸念される場合とは、
● 債務超過の状態が 3 年以上継続
● 業績が回復する見込みがない
● 事業計画の実現は不可能である
● 資金繰りがいきづまる見込みがある
④ 投資原価が回収される見込みがなくなった場合とは、
● 民事再生法・会社更生法申請
● 銀行取引停止
● 営業停止
● 経営者と音信不通
● 破産
【別紙 3 解説】
1. 別紙 3 は、第 22 条第 2 項の規定に基づき、組合の附属明細書の記載に関して、組合が保有する投資資産の時価評価の準則を規定する。
2. 組合会計規則第 19 条は、組合の附属明細書において、投資の明細及び投資の時価の明細を記載することとしている。その投資の時価の評価方法については、貸借対照表の記載に関する組合会計規則第 7 条において、原則として組合契約に定めるところによる こととされている。従って、組合の投資資産の時価の評価方法については、各組合員の合意により、組合契約において自由に決定することができる。
本契約では、組合の投資資産の時価評価方法として、別紙 3 において有価証券の時価評価方法を規定している。なお、組合の投資資産としては、有価証券のほかにも金銭債権、匿名組合出資、知的財産xxが含まれることがある。その場合には、別紙 3 においてそれらの資産の時価評価方法についても規定しておく必要があろう。
3. なお、投資資産に属さない余裕金等その他の資産の時価評価方法については、一般にxx妥当と認められる企業会計の基準に従うこととなる。
日本公認会計士協会 業種別委員会実務指針第 38 号
投資事業有限責任組合における会計処理及び監査上の取扱い(抄)
(平成 23 年 11 月 17 日最終改正)
Ⅰ 全般事項
3.有責組合に関わる会計及び監査の特徴
(3)保証業務リスクの相違
7. 有責組合会計規則の時価評価は組合契約ごとに定められるものであるため、そ の監査報告書は組合契約で定められた投資の評価基準への準拠性についての意見表明であり、投資の評価額の妥当性を含めた意見を表明するものではない。金融商品会計基準に準拠した財務諸表(金融商品取引法に基づく財務諸表及び中間財務諸表を含む。)に対しては、当然に投資の評価額の客観的な妥当性を含めた意見を表明している点が大きく相違している。
Ⅱ 会計処理及び表示方法
2.有責組合法に基づく財務諸表等
(2)有責組合会計規則に準拠した場合の会計処理と表示方法
22.有責組合会計規則第7条において、投資は時価を付さなければならないとし、その評価方法は組合契約に定めるところによるとされている。なお、平成 10 年6月通商産業省「投資事業組合の運営方法に関する研究会報告書」の資料「有限責任組合における有価証券の評価基準モデル」(以下「評価基準モデル」という。)において、「その評価額は、「市場性」ないしは「客観的事象」に基づく価額とすべきである。但し、市場性のない有価証券について、評価減を検討する場合には、組合員が評価時点で受取れると合理的に期待できる金額(回収可能価額)を見積もる必要があり、その価額と客観的な事象に基づく金額とを比較していずれか低い価額を付さなければならない。」とされている。
評価基準モデルは、市場性のない有価証券の評価に当たって、回収可能価額を斟酌していることに留意する(第 53 項参照)。
Ⅲ 監査手続及び留意事項
1.有責組合法監査における投資の評価基準と保証業務
53.評価基準モデルは、市場性のない有価証券の評価に当たって、回収可能価額を斟酌している(第 22 項参照)。評価基準モデルは、各組合の会計実務を拘束するものではないとされているが、少なくとも投資回収の局面で重要な損失の発生が見込まれる場合に、この損失を財務諸表に反映することができないような評価基準が設定されているときは、保証業務に関する規準の客観性の観点から問題が生じる可能性があることに留意が必要である。
2.監査手続及び留意事項
(5) 投資先情報入手の間接性
59.投資先の事業自体は、当然に投資先の経営者の意思決定に基づいて行われているため、無限責任組合員は投資先の情報及び成果を直接的に入手できるわけではなく、 あくまで間接的に入手しているに過ぎない。また、未公開会社が対象となるため全般的に情報の収集が容易に行い得ない。
したがって、無限責任組合員は、入手可能な投資先情報の網羅的な収集、分析及び報告を可能とする内部統制を構築している。
(6) 投資先に関する情報
73.投資先の事業概況、経営者の資質、資本関係、役員構成、財務情報、投資状況、 事業計画の遂行度、金融機関との関係等の入手可能な情報を収集し、それらを総合的に勘案した上で、査定を実施していることを確かめる。
上記のうち、事業計画の遂行度は、経済環境の変化によって、投資先の事業計画の実現可能性が短期間に大きく変動することがあり、特に投資先がベンチャー・ビジネスであればより大きく変動する可能性が高いため、特に重要と考えられる。また、金融機関からの支援を前提とした事業計画等が策定されている投資先については、投資先の事業予測に加えて、支援の実現可能性や進捗状況を総合的に判断していることも確かめる。
なお、必要に応じて、監査人自らが入手した投資先に関する重要な情報と査定にお ける判断に不整合がないかどうかについても確かめる。
4.有責組合における監査手続及びその他留意事項
(3) 投資の監査手続の例示
85.投資の評価の準拠性、あるいは投資の評価の妥当性を除く投資に関連した経営者の主張ごとの虚偽表示のリスクに適合する監査手続を例示すれば、次のとおりとなる。
(1) 投資実行に関する審査資料のほか関連資料等を閲覧し、所定の手続に従って投資が実行されていることを確かめる。
(2) 投資の売却に関する帳簿・関連資料等を閲覧し、投資の売却が事実に基づき適切に処理、記帳されていることを確かめる。
(3) 売買損益の会計処理の妥当性を確かめる。
(4) 株式分割、新株予約権の付与、増資、清算配当等の会計処理の妥当性を確かめる。
(5) 無限責任組合員が保管する有価証券は実査を行い、外部の保管先に預けてある有価証券は保管先に確認し、必要と認めた場合には実査を行う。
(6) 株券等不発行の場合は、不発行証明等を入手し、現物がないことの妥当性を確かめる。
(7) 投資償却損については関連資料を閲覧し、処理の妥当性を確かめる。
付録2 有責組合会計規則に準拠した財務諸表等に対する監査報告書の文例
独立監査人の監査報告書
○○○○投資事業有限責任組合無限責任組合員
○○○○株式会社 取締役会 御中(注1)
平成×年×月×日
○ ○ 監 査 法 人指定社員
業務執行社員 公認会計士 ○○○○ 印指定社員
業務執行社員 公認会計士 ○○○○ 印
(注2)当監査法人(注3)は、「投資事業有限責任組合契約に関する法律」(以下「法律」
という。)第8条第2項の規定に基づき、○○○○投資事業有限責任組合の平成×年×月×日から平成×年×月×日までの第×期事業年度の財務諸表等、すなわち、貸借対照表、損益計算書、重要な会計方針、その他の注記及び業務報告書(会計に関する部分に限る。)並びに附属明細書(会計に関する部分に限る。)について監査を行った。なお、業務報告書及び附属明細書について監査の対象とした会計に関する部分は、業務報告書及び附属明細書に記載されている事項のうち、有限責任組合の会計帳簿の記録に基づく記載部分である。
財務諸表等に対する経営者の責任
経営者の責任は、貸借対照表に計上されている投資を組合契約で定められた評価基準に準拠して処理し、法律、「中小企業等投資事業有限責任組合会計規則(平成10年8月 20日中小企業庁公示、10・08・07 企庁第2号)」(以下「会計規則」という。)及び組合契約に従い財務諸表等を適正に作成することにある。これには、不正又は誤謬による重要な虚偽表示のない財務諸表等を適正に作成するために経営者が必要と判断した内部統制を整備及び運用することが含まれる。
監査人の責任
当監査法人(注3)の責任は、当監査法人(注3)が実施した監査に基づいて、独立の立場から財務諸表等に対する意見を表明することにある。当監査法人(注3)は、我が国において一般にxx妥当と認められる監査の基準に準拠して監査を行った。監査の基準は、当監査法人(注3)に財務諸表等に重要な虚偽表示がないかどうかについて合理的な保証を得るために、監査計画を策定し、これに基づき監査を実施することを求めている。
監査においては、財務諸表等の金額及び開示について監査証拠を入手するための手続が実施される。監査手続は、当監査法人(注3)の判断により、不正又は誤謬による財務諸表等の重要な虚偽表示のリスクの評価に基づいて選択及び適用される。財務諸表監査の目的は、内部統制の有効性について意見表明するためのものではないが、当監査法人(注3)は、リスク評価の実施に際して、状況に応じた適切な監査手続を立案するために、財務諸表等の適正な作成に関連する内部統制を検討する。また、監査には、経営者が採用した会計方針及びその適用方法並びに経営者によって行われた見積りの評価も含め全体としての財務諸表等の表示を検討することが含まれる。なお、貸借対照表に計上されている投資は、組合契約で定められた評価基準に準拠して処理されていることを確かめる監査手続を実施した。
当監査法人(注3)は、意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手したと判断している。
監査意見
当監査法人(注3)は、上記の貸借対照表に計上されている投資が、組合契約で定め られた評価基準に準拠して処理されており、また、上記の財務諸表等が、法律、会計規則及び組合契約に従い適正に作成されているものと認める。
強調事項
重要な会計方針○○及び○○に記載されているとおり、投資の評価方法は、・ ・・ ・・
(注4)、また、期末における未実現損益の金額から期首における未実現損益の金額を控除した額を未実現損益調整額として損益計算書に計上している。これらの評価又は処 理の方法は、一般にxx妥当と認められる企業会計の基準に準拠した方法とは異なるものである。(注5)
なお、損益計算書の注記○○に、有価証券を「金融商品に関する会計基準」による評価方法で評価した場合の当期利益(注6)の額が記載してある。(注7)
当該事項は当監査法人(注3)の意見に影響を及ぼすものではない。
利害関係
無限責任組合員及び有限責任組合と当監査法人又は業務執行社員(注3)との間には、公認会計士法の規定により記載すべき利害関係はない。
以 上
(注1)文例では宛先は無限責任組合員が株式会社の場合であるが、無限責任組合員が個人の場合には、以下の宛先とすることも考えられる。
(宛先)無限責任組合員
○○○○ 殿
(注2)① 監査人が無限責任監査法人の場合で、指定証明であるときには、上記の記載例とする。
② 監査人が無限責任監査法人の場合で、指定証明でないときには、以下とする。
○ ○ 監 査 法 人代表社員
業務執行社員 公 認 会 計 士○ ○ ○ ○印
業務執行社員 公 認 会 計 士○ ○ ○ ○ 印
③ 監査人が有限責任監査法人の場合は、以下とする。
○ ○ 有 限 責 任 監 査 法 人指定有限責任社員
業務執行社員公認会計士 ○○○○ 印指定有限責任社員
業務執行社員公認会計士 ○○○○ 印
④ 監査人が公認会計士の場合には、以下とする。
○○○○ 公認会計士事務所公認会計士 ○○○○ 印
○○○○ 公認会計士事務所公認会計士 ○○○○ 印
(注3)監査人が公認会計士の場合には、「私」又は「私たち」とする。
(注4)投資の評価方法については、重要な会計方針に記載されている該当部分を参照若しくは要約、又はそのまま引用して記載する。
(注5)投資の評価方法及び未実現損益の処理方法は、一般にxx妥当と認められる企業会計の基準に基づく方法とは異なるものであることについての追記情報の文例である。当該追記情報は一般にxx妥当と認められる企業会計の基準に基づく方法との差異に重要性が乏しい場合を除いて記載するものとする。
(注6)当期損失の場合は、当期損失とする。
(注7)有責組合会計規則に準拠した財務諸表等とあわせて、金融商品会計基準に準拠した財務諸表を作成し、かつ適正意見の監査報告書が付されている場合の追記情報の文例である(第96項参照)。