ロ.POG方式(PARTS =消耗部品、OIL =給油用オイル、GREASE =グリス等の略)
Ⅱ.マンション標準管理委託契約書コメント
1 全般関係
① この契約書は、マンションの管理組合(以下「管理組合」という。)とマンション管理業者の間で協議がととのった事項を記載した管理委託契約書を、マンションの管理の適正化の推進に関する法律(平成十二年法律第百四十九号。以下「適正化法」という。)第七十三条に規定する「契約成立時の書面」として交付する場合の指針として作成したものである。
② この契約書は、典型的な住居専用の単棟型マンションに共通する管理事務に関する標準的な契約内容を定めたものであり、実際の契約書作成に当たっては、個々の状況や必要性に応じて内容の追加、修正を行いつつ活用されるべきものである。
③ この契約では、適正化法第二条第六号に定める管理事務をマンション管理業者に委託する場合を想定しており、警備業法に定める警備業務、消防法に定める防火管理者が行う業務は、管理事務に含まれない。
2 第二条関係
① 本条でいう管理対象部分とは、管理規約により管理組合が管理すべき部分をいい、区分所有者が管理すべき部分を含まない。
② 専用使用部分(バルコニー、ベランダ、トランクルーム、専用庭等)については、管理組合が行うべき管理業務の範囲内においてマンション管理業者が管理事務を行う。
③ 管理事務の対象となるマンションが以下に掲げるものである場合、又は共用部分の設備等の故障等発信機器やインターネット等の設備等が設置され、当該設備等の維持・管理業務をマンション管理業者に委託するときは、本条を適宜追加、修正をすることが必要である。
一 単棟で、大多数の区分所有者がマンション外に住所地を有する「リゾートマンション」、専有部分の用途が住居以外の用途(事務所等)が認められている「複合用途型マンション」
二 数棟のマンションが所在する団地
3 第三条関係
① 第一号から第四号までの管理事務の具体的な内容及び実施方法は別表で示している。なお、実際の契約書作成に当たっては、次のような業務をマンション管理業者に委託する場合等個々の状況や必要性に応じて本条を適宜追加、修正するものとする。一 共用部分の設備等の監視・出動業務
二 インターネット、CATV等の運営業務
三 除雪・排雪業務
四 植栽管理業務(施肥、剪定、消毒、害虫駆除等)
五 管理組合から委託を受けて行うコミュニティー支援業務
② 第一号の事務管理業務には、適正化法第二条第六号に定める基幹事務が含まれている。
4 第四条関係
第一項は、適正化法第七十四条で基幹事務の一括再委託を禁止していることを踏まえ、第三条第一号の事務管理業務の一括再委託ができないよう定めたものである。
5 第五条関係
本条は、管理委託契約が民法第六百五十六条の準委任契約の性格を有することを踏まえ、同法第六百四十四条の善管注意義務を契約書上も明文化したものである。
本契約書の免責条項(第八条、第十条、第十一条、第十三条、第十七条)の規定により、マンション管理業者が免責されるには、各規定に適合するほか本条の善管注意義務を果たしていることが必要である。
6 第六条関係
① 第二項で定額委託業務費の内訳を明示することにより、第三条に規定する管理事務の範囲・内容と定額委託業務費の関係を明確化することとしたものである。
ただし、適正化法第七十二条に基づき管理委託契約締結前に行う重要事項説明等の際に、マンション管理業者が管理組合に対して見積書等であらかじめ定額委託業務費の内訳を明示している場合であって、当事者間で合意しているときは、管理委託契約に定額委託業務費の内訳を記載しないことができる。
② 甲は、管理事務として乙に委託する事務(別表第一から別表第四までに定める事務)のため、乙に委託業務費を支払う。この委託業務費は、実施する業務の性格によって、第二項で定める定額委託業務費(その負担が定額でかつ精算を要しない費用)と、第三項の定額委託業務費以外の費用(実施内容によって価額に変更が生じる場合があるため各業務終了後に甲乙で精算を行う費用)とに分けられる。
また、この委託業務費のほか、甲は、乙が管理事務を実施するのに必要となる共用部分の水道光熱費や通信費等の費用も負担するものとしている。
③ 第三項の定額委託業務費以外の業務費とは、例えば、業務の一部が専有部分内で行われる排水管の清掃業務、消防用設備等の保守点検業務などが想定される。
なお、管理委託契約上定額委託業務費以外の業務費が存在しないときは、本項は不要である。
7 第七条関係
① 管理員xxは、通常、管理組合がマンション管理業者にマンションの管理事務を行わせるのに不可欠であるため、無償で使用させるものとしている。
② 第二項は、管理員xxの使用に係る諸費用(水道光熱費、通信費、備品、消耗品費等)の負担区分について、その内容を規定するものとする。
③ 管理員xxの資本的支出が必要となった場合の負担については、別途、管理組合及びマンション管理業者が協議して決定することとなる。
8 第八条関係
① 本条で想定する災害又は事故等とは、天災地変による災害、漏水又は火災等の偶発的な事故等をいい、事前に事故等の発生を予測することが極めて困難なものをいう。
② 第一号及び第二号に規定する災害及び事故の例等については、当該マンションの地域性、設備の状況等に応じて、内容の追加・修正等を行うものとする。
9 第九条関係
① 第一項の「甲の会計の収支の結果を記載した書面」は、別表第一1(1)②に定める
「収支決算案の素案」を提出することで代えることができる。
② 第二項の報告については、当事者間の合意により、あらかじめ期日を定めて行う方法とすることも考えられる。
10 第十条関係
第二項のマンション管理業者の協力について、事前に協議が整っている場合は、協力内容(甲の名義による配達証明付内容証明郵便による督促等)、費用の負担等に関し、具体的に規定するものとする。
11 第十三条関係
第一項に規定する管理事務は、その都度管理組合の承認の下で行われるものであり、管理組合の協力が不可欠なものである。
組合員等が、正当な理由なく、マンション管理業者(又は再委託先の業者)の立入りを拒否したときは、第二項によりマンション管理業者はその部分に係る管理事務の実施が不可能である旨を管理組合に通知するものとする。
12 第十四条関係
① 本条は、宅地建物取引業者が、媒介等の業務のために、宅地建物取引業法施行規則第十六条の二に定める事項について、マンション管理業者に当該事項の確認を求めてきた場合の対応を定めたものである。
本来宅地建物取引業者への管理規約等の提供・開示は管理組合又は売主たる組合員が行うべきものであるため、これらの事務をマンション管理業者が行う場合には、管理規約等においてその根拠が明確に規定されていることが望ましい。
② 管理規約が電磁的記録により作成されている場合には、記録された情報の内容を書面に表示して開示することとする。
③ 開示する情報としては、管理費等の改定の予定及び修繕一時金の徴収の予定並びに大規模修繕の実施予定(理事会で改定等が決議されたものを含む。)がある場合にはこれを含むものとする。
④ マンション管理業者が受託した管理事務の実施を通じて知ることができない過去の修繕の実施状況等がある場合には、マンション管理業者は管理組合から情報の提供を受けた範囲でこれらの事項を開示することとなる。
⑤ 管理規約の提供等に係る費用については、誰が負担するのか(宅地建物取引業者等)、その金額、負担方法等について、別途、明かにしておくことが望ましい。
13 第十六条関係
本条は、適正化法第八十条及び第八十七条の規定を受けて、マンション管理業者及びその使用人の守秘義務を定めたものである。
14 第十九条関係
本条は、民法第六百五十一条の規定を踏まえ、契約当事者双方の任意解除権を規定したものである。解約の申入れの時期については、契約終了に伴う管理事務の引継等を合理的に行うのに通常必要な期間を考慮して設定している。
15 第二十条関係
契約の有効期間は、管理組合の会計期間、総会開催時期、重要事項説明時期等を勘案して設定することが必要である。
16 第二十一条関係
① 第一項は、管理委託契約を更新しようとする場合の申入れ期限及び方法を規定したものである。マンション管理業者は、適正化法第七十二条により、管理委託契約を更新しようとするときは、あらかじめ重要事項説明を行うと定められていることを踏まえ、xx前までに更新の申入れを行うこととしたものである。
② 契約の有効期間が満了する日までに更新に係る協議がととのわない場合、既存の契約は終了し、当該マンションの管理運営に支障を及ぼすため、第二項では暫定契約の手続きを定めている。ただし、この場合にも適正化法第七十二条に規定する、同一の条件で契約を更新しようとする場合の重要事項説明等の手続は必要である。
17 第二十二条関係
本条は、設備の維持管理に関する法令、消費税法等の税制等の制定又は改廃により、第三条の管理事務の内容や第六条の委託業務費の額の変更が必要となった場合について定めたものである。
18 第二十四条関係
少額訴訟の提起又は支払督促を申し立てる裁判所については、本条の規定にかかわらず、民事訴訟法の定めるところにより、債務者の住所地等を管轄する簡易裁判所においてするものとする。
19 別紙一関係
定額委託業務費の構成は一様ではないので、内訳明示の方法を三つ例示している。
20 別紙二関係
定額委託業務費以外の業務費については、各々独立性を有する業務ごとに業務費を計上することとしている。
21 別表第一関係
① マンション管理業者が管理組合の出納業務の全部を受託していない場合においては、収入及び支出のxxについても、マンション管理業者が受託した出納業務に係る範囲で行うものとする。
② マンション管理業者が管理費等の滞納金の収納事務を行う場合は、その旨記載するものとする。
○ 甲の組合員等が甲に支払うべき水道料、冷暖房料、給湯料等(以下「水道料等」という。)の計算、収納
甲の管理規約等の定めに基づき、○月ごと に、甲の組合員等別の水道料等を計算し、甲の管理規約第○条に定める預金口座振替の方法により、甲の組合員等の口座から、甲の口座に振り替える。
③ 出納業務として、各専有部分の水道料等の計算、収納を委託する場合は、本表に以下の規定を加えるものとする。
④ 滞納者に対する督促については、マンション管理業者は組合員異動届等により管理組合から提供を受けた情報の範囲内で督促するものとする。また、督促の方法(電話若しくは自宅訪問又は督促状)については、滞納者の居住地、督促に係る費用等を踏まえ、合理的な方法で行うものとする。
⑤ 財産の分別管理の方法については、原則方式、収納代行方式、支払一任代行方式の
別に本表を作成するものとし、各方式の具体的な内容(集金代行会社委託、電子取引による決済等)を記載するものとする。
⑥ 収納代行方式又は支払一任代行方式を採用する場合、マンション管理業者は保証契約を締結することが必要なことから、保証契約の内容等を記載するものとする。
⑦ 甲の収納口座及び甲の保管口座については、適正化法第七十六条の規定に則り、乙の口座と明確に分別して管理しなければならない。
⑧ マンション管理業者が損害保険証券を保管する場合については、適正化法施行規則第八十七条に規定する有価証券の分別管理の規定に鑑み、掛け捨て型の保険契約に係る証券に限るものとする。
⑨ 収納代行方式における乙の収納口座からの支払、支払一任代行方式における甲の収納口座からの支払については、乙は甲からの支払委託により包括的に承認を受けていると考えられる。なお、甲の保管口座から支払う場合は、原則方式と同様、個別に甲の承認を得て支払うことが必要となる。
⑩ 甲の会計に係る帳簿等とは、管理費等の出納簿や支出に係る証拠書類等をいう。
⑪ (3)①の「大規模修繕」とは、修繕積立金を充当して行う計画的な修繕又は特別な事情により必要となる修繕等をいう。
⑫ (3)②の「本マンションの維持又は修繕(大規模修繕を除く修繕又は保守点検等。)を外注により乙以外の業者に行わせる場合の企画又は実施の調整」とは、管理組合が自ら本マンションの維持又は修繕(日常の維持管理として行われる修繕、保守点検、清掃等)を第三者に外注する場合において、マンション管理業者が管理組合に代わって行う維持又は修繕の企画又は実施の調整(見積りの精査、発注、履行確認等)をいう。
⑬ 管理事務として以下の業務をマンション管理業者に委託するときは、必要な年度に特別に行われ、業務内容の独立性が高いという業務の性格から、本契約とは別個の契約とすることが望ましい。
一 建物等劣化診断業務
二 大規模修繕工事実施設計業務三 マンション建替え支援業務
⑭ 理事会及び総会の議事録は、管理組合の活動の重要な資料となることを踏まえ、マンション管理業者に議事録の案の作成を委託する場合は、その内容の適正さについて管理組合がチェックする等、十分留意する。
⑮ 総会等の決議や議事録の作成を電磁的方法により行う場合には、事務処理の方法等について具体的に記述することが望ましい。
⑯ 2(3)③一の設計図書とは、適正化法施行規則第百二条に規定する設計図書その他の管理組合が宅地建物取引業者から承継した図書及び管理組合が実施したマンションの修繕等に関する図書であって管理組合から管理を依頼された図書をいう。
⑰ 管理組合の管理者は、建物の区分所有等に関する法律(昭和三十七年法律第六十九
号)(以下「区分所有法」という。)第三十三条及び第四十二条第三項により、管理規約及び総会議事録の保管、利害関係人に対する閲覧を義務付けられている。マンション管理業者は、管理者の依頼の下にこれらの図書の保管業務を行うものである。
⑱ マンション分譲業者はマンションの分譲に際し、あらかじめ規約共用部分等につい て区分所有法第三十二条に基づき、単独でxx証書により規約設定することができる。マンションの管理規約は、本来、このxx証書規約と一覧性を有するよう作成すべきであるが、マンションによっては、xx証書規約とそれ以外の管理規約の両方の保管が必要な場合も想定される。
22 別表第二関係
① 別表第二は、管理員の勤務形態で最も多い「管理員通勤方式」の勤務・業務態様を規定しているので、これ以外の方式(住込方式又は巡回方式等)による場合は、適宜本表を修正するものとする。
② 夏期休暇、年末年始休暇の対象日、有給休暇の日数等について、あらかじめ特定できる場合は、事前に書面で提示する等、できるだけ具体的に明示することが望ましい。
③ 宅配物の預かり、引渡しについては、宅配ボックス等設備の設置状況、管理員の勤務時間等により、実質的に不要又は実施困難な場合も想定され、その場合は適宜修正を行う。
④ 管理事務実施の必要上、管理員の勤務日以外の日に、外注業者が業務を行う場合、管理員による業務の着手、履行の立会いが困難な場合が想定される。このような場合、管理組合への連絡、事後の確認等により、適切な対応を行うことが望ましい。
23 別表第三関係
① 本仕様書は、予想される清掃業務のほとんどを網羅しているが、実際の契約書作成に当たっては、契約の実態に合わせて適宜追加・修正・削除を行う。
② 作業回数の記入に当たっては、当該欄に「一回/日」「三回/週」「一回/月」等の例により記入する。
③ 本仕様書でいう日常清掃とは床の掃き拭きやちりはらい等を中心とした清掃をいい、特別清掃とは定期に床の洗浄やワックス仕上げ等を行うことをいい、いずれも、清掃員が作業を行うこととしている。
24 別表第四関係
① 本仕様書は、予期される建物・設備管理業務のほとんどを網羅しているが、実際の契約書作成に当たっては、当該マンションの設備の状況や本契約の契約期間内に実施される業務かどうかに応じて、適宜追加・修正・削除を行う。
② エレベーター設備の保守管理方式については、一般的にフルメンテナンス方式とP
OG方式の二種類があるため、両方式を例示した。イ.フルメンテナンス方式
ⅰ 部品の予備品、修繕計画、故障時の原因に対する処理、官庁検査の手続及び対策等については、メンテナンス会社が実施又は代行する。
ⅱ エレベーターの計画修繕(ただし意匠・建築面は除く)に関してはメンテナンス会社が負担実施する。
ロ.POG方式(PARTS =消耗部品、OIL =給油用オイル、GREASE =グリス等の略)
ⅰ 点検保守を主体としたメンテナンス条件であり、定められた消耗部品、給油等はメンテナンス会社が負担する。
ⅱ ⅰ以外の修繕費用は管理組合が負担する。
具体の契約に当たっては、両方式の特性、金額等を明確化した上で、契約することが望ましい。