Contract
Ⅰ. PFI事業における契約手続きの簡素化・円滑化
- Ⅰ.PFI事業における契約手続きの簡素化・円滑化 -
【 目次 】
Ⅰ-1.PFI事業契約手続きの簡素化・円滑化の基本的な考え方 Ⅰ-1
Ⅰ-2.各段階における主な留意事項.......................................... Ⅰ-5
1.民間発案への対応..................................................... Ⅰ-5
2.簡易VFMの算定..................................................... Ⅰ-6
3.事業所管部局及び庁内関係課等による協力体制の構築 ..................... Ⅰ-8
4.アドバイザーの選定・委託発注........................................ Ⅰ-10
5.債務負担行為の議会議決.............................................. Ⅰ-13
6.特定事業の選定・公表(PFI事業の選定の公表) ...................... Ⅰ-14
7. 入札手順、方法の検討................................................ Ⅰ-16
8.PFI事業者選定委員会(審査委員会)の開催.......................... Ⅰ-18
9. 契約交渉段階における入札説明書(事業契約書案含む)等の変更について .. Ⅰ-24
Ⅰ-1.PFI事業契約手続きの簡素化・円滑化の基本的な考え方
現在、PFI事業の契約等に関する手続き(以下、「契約手続き」という。)については、内閣府の各種ガイドラインに基づき整理されているが、実際の運用に際しては、各発注者の裁量に委ねられているのが現状である。これまでの実績からPFI契約手続きにおいて、P FI方式固有の負担や労力に関する以下のような課題が明らかになってきた。
⮚ 従来型事業に比べ、発注に要する作業が多く、事業実施に至るまでの期間が長期化
⮚ 応募者からの提案の審査においては、選定委員(審査委員)が過度に作業負担している例の存在
⮚ PFIの募集から契約までの手続きに関するノウハウが発注者側に不足していることにより、円滑な手続きが行われず、民間事業者の負担となっている例の存在 等
以上を踏まえ、特に、小規模あるいは事業内容が定型的な事業、又は発注者内で同種の先行事例がある事業については、以下の事項に配慮した契約手続きの簡素化を図ることができるよう留意事項を整理した。これらに基づき、PFI事業の発注に係る負担を減らし、より効率的な契約手続きを実現することが重要である。
□契約手続きの簡素化のポイント
【導入可能性調査の簡素化】
⮚ 従来、一般的に行われている導入可能性調査を発注者自らが行うか、導入可能性調査とアドバイザリー業務を同一年度に予算化することにより、発注手続期間の短縮化が可能となる。 (詳しくはⅠ-10 頁参照)
【PFI事業者選定委員会(審査委員会)による審査の簡素化】
⮚ 落札者決定基準を定めるときのみ学識経験者から意見聴取を行う方法や、学識経験者への意見聴取事項を絞る方法等、事業特性(評価内容)、事業規模に応じ、学識経験者への意見聴取手続きを簡素化することが可能である。
(詳しくはⅠ-18 頁参照)
また、民間発案に関する取扱いや発注者側の体制の問題等、契約手続きの円滑化に資するための主要な項目についても改めて整理を行っている。これらに基づき契約手続き全体の円滑化を図ることが重要である。
□契約手続きの円滑化のポイント
【民間発案の積極的な採用】
⮚ 民間事業者の発案については、発案者に対するインセンティブ付与、公募段階での競争性の確保に留意した上で、積極的に取り上げていくことが望ましい。
(詳しくはⅠ-5 頁参照)
【関連部局との協力体制の早期構築】
⮚ 事業所管部局のみならず、全庁的な関連部局との連携による協力体制を早期に構築することが重要である。 (詳しくはⅠ-8 頁参照)
【支払額の変動に対応した債務負担行為】
⮚ 債務負担行為の設定に際しては、サービス対価の変動(金利・物価変動、利用量の変動に伴う支払額の変動等)にも対応できるように議会への説明を行うことが必要である。 (詳しくはⅠ-13 頁参照)
【VFM及びその算定根拠の開示】
⮚ 民間事業者の積極的な参加を促し、良好な競争環境を形成するためには、特定事業の選定までに算定したVFM1)及びその算定根拠を可能な範囲で開示することが望ましい。 (詳しくはⅠ-14 頁参照)
【応募段階での民間事業者の負担軽減】
⮚ 多段階方式による事業者の絞込みや提案書の簡素化等の民間事業者の応募段階での負担軽減への配慮が必要である。 (詳しくはⅠ-16 頁参照)
【入札説明書等の条件の見直し】
⮚ xx性、競争性に留意した上で、円滑な事業の実施のために、入札前の応募者との対話を通じた入札説明書等の条件の見直し、落札者決定後の契約書(案)、入札説明書等の変更についても適切に実施することが重要である。
(詳しくはⅠ-24 頁参照)
以上を踏まえた「PFI事業契約手続きフロー例」を次頁以降(Ⅰ-3 頁~Ⅰ-4 頁)に示す。なお、主な項目の詳細については、Ⅰ-5 頁以降の「Ⅰ-2.各段階における主な留意事項」において説明している。
1) VFM(Value for Money):PFI事業における最も重要な概念の一つで、支払(Money)に対して最も価値の高いサービス(Value)を供給するという考え方のこと。 VFMの評価は、同一の公共サービス水準の下で評価する場合、PSC(従来型で実施した場合の事業費)とPFI事業のLCC(ライフサイクル・コス ト)との比較により行う。この場合、PFI事業のLCCがPSCを下回ればPFI事業の側にVFMがあり、上回ればVFMがないということになる。一方、公共サービス水準を同一に設定することなく評価する場合は、PSCとPFI事業のLCCが等しくても、PFI事業において公共サービス水準の向上が期待できるとき、 PFI事業の側にVFMがあるといえる。発注者が事業を実施するに当たり、事業手法を選択する際の判断基準となるもので、VFMがあると見込まれた場合、PFIが適切であると考えられる。
表 PFI事業契約手続きフロー例(総合評価一般競争入札方式の場合)
※(斜字部)も含めたフローがこれまでの一般的な契約手続きであるが、
・実施計画(基本構想、基本計画)の作成
・PFIを含めた実施手法の検討
・民間発案に対する対応 ・・・・・・【Ⅰ-5 頁参照】
1-①事業の発案
民間発案
特に(斜字部)は、簡素化する場合に省略可能な手続きである。
発 注 者
事 業 者
(導入可能性調査委託契約)
STEP2
(PFIの導入可能性の検討)
・PFI導入可能性調査業務の委託発注
・PFIの導入可能性の検討
・PFI基本適性についての検討
簡易VFMの算定に基づく庁内検討
・簡易VFMの算定
・・・・・・【Ⅰ-6 頁参照】
1-②庁内における方針検討
・事業所管部局及び庁内関係課等による協力体制の構築 ・・・・・・【Ⅰ-8 頁参照】
1-③庁内体制の構築
STEP1
事業の発案
導入可能性調査~アドバイザリー業務への移行の簡素化・円滑化
・アドバイザーの選定、委託発注
・・・・・・【Ⅰ-10 頁参照】
2-①アドバイザーの選定
・特定事業の選定、入札説明書等の説明等
(選定委員会の開催)
選定委員会の簡素化
(発注者の役割の明確化)
・特定事業の評価
・PFI事業の選定の公表 ・・・・・・【Ⅰ-14 頁参照】
3-②特定事業の選定・公表
・債務負担行為の議会承認
・・・・・・【Ⅰ-13 頁参照】
3-①債務負担行為の議会議決
※特定事業の選定・公表後に議会に諮る場合もある。
概算事業費の把握
STEP3
特定事業の評価・選定、公表
(選定委員会の開催) ・事業概要の説明、実施方針の説明等
選定委員会の簡素化
・事業スキ-ムの検討(事業の範囲、事業方式等)
・事業リスクの抽出、最適なリスク分担者の検討
(リスクワークショップの開催等)
・市場調査の実施
・モニタリング原案の検討
・実施方針案の作成
・実施方針の公表
・要求水準書(案)、契約書(案)〔公共側モニタリング原案〕等の公表
・・・・【「Ⅱ.PFI事業における事業契約書例」参照】
・・・【「Ⅲ.モニタリング(業績監視)について」参照】
・・・・・【Ⅰ-10 頁参照】
・施設計画の概略検討
2-②実施方針等の策定・公表
・事業者意向
・参画可能性
実施方針の策定及び公表
(発注者の役割の明確化)
・質問受付、回答、意見招請
・実施方針等の見直し、修正
2-③実施方針等に係る質問回答・意見招請
実施方針等の質問、意見
・委員会の進め方の確認
・入札手続きの確認
・要求水準書の確認
選定委員会の簡素化
(発注者の役割の明確化)
・落札者決定基準の意見聴取
・提案書審査方法の意見聴取
・・・・・・【Ⅰ-18 頁参照】
○選定委員会の開催
・入札手順、方法の検討 ・・・・・・【Ⅰ-16 頁参照】
4-①入札説明書等の策定
※対話方式を導入する場合もある。
審査書類提出
審査書類提出
・入札、提案書の受付
4-⑥入札
・第2回質問受付、回答
4-⑤入札説明書等に係る質問回答(第2回)
・資格審査の実施
・(事業概要書の審査による応募者の絞込み)
・・・・・・【Ⅰ-16 頁参照】
4-④資格審査(第一次審査)の実施
※入札と同時期に実施する場合もある。
・第1回質問受付、回答
・(入札説明書等の修正)
4-③入札説明書等に係る質問回答(第1回)
発 注 者
・入札説明書、要求水準書、落札者決定基準、契約書(案)、基本協定書(案)、提案書様式集等の公表
4-②入札説明書等の公表
入札説明書等
の質問
STEP4
事業参画検討
・コンソーシアム組成
提
案 書 x x
入札説明書等
の質問
民間事業者の募集、評価・選定、公表
事 業 者
・(分野別の部会審査の実施)
・提案審査、優秀提案の選定
・・・・・・【Ⅰ-18 頁参照】
○選定委員会の開催
※学識経験者が不要と判断した場合、発注者のみで開催することも可
・落札者の選定、公表
4-⑧落札者の決定・公表
4-⑦提案審査
・提案書類の審査対象項目の整理
・対話的ヒアリングの実施
・(提案書類の仮評価の実施)
S P C
契約交渉
選定委員会の簡素化
(発注者の役割の明確化)
・金融機関との直接協定(DA)締結
・・・【「Ⅲ.モニタリング(業績監視)について」参照】
5-⑤直接協定の締結
・選定事業者との契約締結、公表
5-④事業契約の締結
・仮契約の議会承認
5-③仮契約書の議会議決
・選定事業者との交渉 ・・・・・・【Ⅰ-24 頁参照】
・仮契約の締結
・・・【「Ⅱ.PFI事業における事業契約書例」参照】
5-②仮契約の締結
・選定事業者との基本協定の締結
5-①基本協定の締結
STEP5
事
業
実
施
設立
協定等の締結
STEP6 | :事業の実施、監視等 | |
STEP7 | :事業の終了 |
・・・【Ⅲ.モニタリング(業績監視)について参照】
Ⅰ-2.各段階における主な留意事項
1.民間発案への対応
【要点】
⮚ 民間事業者の発案については、発案者に対するインセンティブ付与、公募段階での競争性の確保に留意した上で、積極的に取り上げていくことが望ましい。
「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(平成 11 年法律第 117 号。(以下「PFI法」という。))」第4条は民間事業者の発案による事業も想定している。この場合には、発注者の事業計画との整合性、公共事業としての妥当性・必要性等を検
討し、実施することが適当であると認められる事業については積極的に取り上げていくことが望ましい。
民間企業からのPFI事業の提案に積極的に対応するためには、
① 民間事業者の発案に適切に対応できる体制(民間発案の受付要領の作成、公表等)
② 通常のPFI事業と同じ手続きの実施
【参考】「民間資金等の活用による公共施設等の整備等に関する事業の実施に関する基本方針、平成 12 年3月 13 日、総理府告示第 11 号」より抜粋
一 民間事業者の発案による特定事業の選定その他特定事業の選定に関する基本的な事項
(中略)
4 民間事業者の発案に対する措置
国等は、PFI事業の促進にとって有益な民間事業者からの活発な発案を促すため、民間事業者からの発案に関し、次の点に留意して対応するものとする。
(1)公共施設等の管理者等は、民間事業者の発案に係る受付、評価、通知、公表等を行う体制を整える等、適切な対応をとるために必要な措置を積極的に講ずること。
(2)民間事業者からの発案に対してこれを実施に移すことが適当であると認めたときは、実施方針の策定等について、公共施設等の管理者等が発案したPFI事業の場合と同じ手続を行うこととすること。
(3)民間事業者の発案による事業案について相当の期間内に実施方針の策定までに至らなかった場合には、その判断の結果及び理由を発案者に速やかに通知すること。さらに、これらの事業案の概要、公共施設等の管理者等の判断の結果及び理由の概要につき、当該事業者の権利その他正当な利益及び公共施設等の整備等の実施に対する影響に留意の上、適切な時期に適宜公表すること。
③ 判断の結果・理由の通知及び公表が必要である。
また、民間事業者からの活発な発案を促すために、民間発案に対するインセンティブの付与が有効である。インセンティブとして以下の例が想定されるが、発案者も含めた公募段階の競争性が確保(例えば、特定の特許使用を条件にしないこと等)できるかに留意し、受付要領に規定する等の検討が必要である。
【民間発案に対するインセンティブ(例)】
・ 民間発案に必要な提案事項を概略提案に留めることによる発案の負担軽減
・ 発案者にとって自らの提案内容が活用できるような公募条件の設定(提案概要は原則として公表することが必要であるが、発案者が希望する独自のノウハウに係る提案内容は、非公開とすることが望ましい。)
・ 発案者に対する審査上の優遇措置(発案者加点)の付与 等
2.簡易VFMの算定
【要点】
⮚ 庁内検討の段階で簡易VFMを算定し、PFI適用可能性に見通しを持った上で、次の段階である実施方針の作成に進むことができる。
「VFM」(Value For Money)は、「支払に対して最も価値の高いサービスを供給する」という考え方である。PFIの採否については、PFIを適用して事業を実施することによって、公共部門が自ら実施する場合に比べて、支払に対する価値の高いサービスが供給される(VFMがある)かを基準として判断する。したがって、VFMの有無が、PFI事業の採否を決める指標となる。
国土交通省ホームページ
(URL:xxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxxxxxxxxx/xxxxxx/XXXxxxxxxx/xxxxx.xxxx)では、簡易にVFMを計算するツールを掲載している。発注者は、事業化検討の初期である庁内検討段階において、PFI適用可能性に見通しを持って、次の段階である実施方針の作成(P FIアドバイザリー業務の予算要求、業務委託)に進むことができる。
【簡易VFM計算ツールの概要】
○適用対象
⮚ BTO又はBOTのサービス購入型を対象(選択可能)。
⮚ 発注者として、国、都道府県、市町村を対象とする(選択可能)。
⮚ 事業期間(施設整備期間、維持管理・運営期間)は、自由に設定が可能。
○ツールの特徴
⮚ 同一の公共サービス水準を仮定し、公共の財政負担の比較評価を行う。公共サービス水準の向上、リスク移転効果は考慮しない。
○ツールの入力データ、出力結果
⮚ データは画面上から入力が可能となっている。施設整備費・維持管理費等の支出項目及び補助金・起債額等の収入項目以外は、デフォルト値が予め入力されている。
⮚ 本ツールの入出力画面は、主に以下のシートから構成される。
・ 基本入力情報シート
・ PSCシート(公共が自ら事業を実施する場合の財政負担額の算定)
・ PFI-LCCシート(PFI導入時における公的財政負担額の算定)
・ SPCシート(PFI導入時における民間事業者の収支の算定)
・ 算定結果シート 等
【参照】「VFM」の概念、計算の前提条件や計算方法について
・ 「VFM(Value For Money)に関するガイドライン(平成13年1月22日(平成19年6月29日改定) 内閣府)」
・ 「国土交通省所管事業を対象としたVFM(バリュー・フォー・マネー)簡易シミュレーション(平成15年12月 国土交通省)」を参照すること。
○簡易VFM計算ツールの主要画面
「基本入力情報」シート
「算定結果」シート
3.事業所管部局及び庁内関係課等による協力体制の構築
【要点】
⮚ 事業所管部局のみならず、全庁的な関連部局との連携による協力体制を早期に構築することが重要である。
PFI事業は、従来型事業に比べ、施設整備、維持管理・運営に関する技術分野、財務分野及び法務xxxの幅広い専門的知見が必要となる。このため、従来型以上に関連部局との全庁的な連携のもとでの実施が不可欠である。また、公募資料のフォーマット化や提案審査実績の記録等PFIに関する庁内でのノウハウの蓄積も必要である。
主な関係部局(例) | 主な役割 |
事業所管部局 | 個別事業に係る事務を所掌し、事業の発案段階から事業者との契約段階まで、関係各課と協議しながら事業を推進する。 ・事業の発案 ・アドバイザーの選定、委託 ・実施方針の策定、特定事業の評価・選定、事業者の募集・評価・選定公表 ・事業者契約、直接協定の締結 ・当該事業に係る関係部局及び関係省庁等との連絡・調整 等 ・PFI事業者選定委員会(審査委員会)の運営 |
(PFI担当部局) | PFI担当部局が設置されている場合は、事業所管部局との協議や支援等、庁内のPFIを総括する。 ・PFIに関するノウハウ蓄積、共通課題の整理 ・PFI共通課題に関する関係部局及び関係省庁等との連絡・調整 (・PFI事業者選定委員会(審査委員会)の運営) |
技術担当部局 (事業所管部局で全ての技術部門をカバーできない場合) | PFI導入対象事業に係る技術的事項について、事業所管部局へ助言・支援を行う。 【事業発案段階】 ・事業規模(施設整備費等の初期投資費用)の把握 【実施方針・要求水準書公表~落札者決定】 ・公表資料作成のうち技術的事項に関すること ・事業者への質疑回答のうち技術的事項に関すること ・提案書類の審査に係る技術的事項に関すること 【落札者決定後~供用開始】 ・契約協議における提案内容等の技術的事項に関すること ・設計・建設段階におけるSPCとの協議、調整、確認等の技術的事項に関すること 【供用開始後~事業期間終了】 ・維持管理業務における技術的事項のモニタリングに関すること ・大規模修繕・更新等の実施における事業者との協議、調整、確認等に関すること ・施設の状況(要求水準との適合性、劣化状況等)、修繕の必要性等の判断に関すること |
財政関係部局 | ・当該事業における補助金・交付金・起債等の適用可能性、発注者としての後年度の財政負担能力(アフォーダビリティ)の確認に関する協議、検討が必要である。 ・債務負担行為設定が必要になるため、事業費の想定、予定価格の設定及びサービス対価の支払方法等について、PFI導入可能性調査段階から協議を行う必要がある。 ・必要に応じ、財務状況のモニタリングに関する支援を行う。 |
契約関係部局 | ・庁内における従来型の契約上の取り決め等との整合を図るために入札説明書等の規定について、必要に応じて協議する必要がある。 ・PFI事業契約の締結は、議決事案であるため、必要に応じ、事前調整が必要である。 ・債務負担行為を検討する場合、当該措置の可否及びスケジュール等の確認が 必要となる。 |
開発関係部局 | 各種許認可、その他各種法規制・条例等にかかる場合は、事業への影響、手続 きの方法等について、確認が必要となる。 |
税務関係部局 | 地方税の課税標準の特例が適用される可能性のある事業については、適用を 受けるために必要な要件及び庁内手続きについて、実施方針公表前の段階から協議が必要になる。 |
4.アドバイザーの選定・委託発注
【要点】
⮚ 従来、一般的に行われている導入可能性調査を発注者自らが行うか、導入可能性調査とアドバイザリー業務を同一年度に予算化することにより、発注手続期間の短縮化が可能となる。
4-1.アドバイザーの活用
PFI事業の検討にあたっては、PFIの趣旨に則り、事業者にとって十分なインセンティブと積極的かつ良質な提案を誘導する事業体系の構築を目指していく必要がある。
このためには、PFIの性格や仕組みに精通するとともに、民間の同種事業や事業経営、資金調達等に関する知見等の専門知識を有する者(アドバイザー)を活用し、PFI事業の体系を検討・構築する上で必要となる情報や資料の収集・整理、更には専門的見地からの助言等を得て検討を行うことが有効である。
アドバイザーは、通常、PFIの導入可能性の検討から選定事業者との契約締結までの間に、以下のような助言、支援を各事業段階で行う。
○(施設計画の概略検討)
○(事業スキ-ムの検討〔事業の範囲、事業方式等〕)
○(事業リスクの抽出、最適なリスク分担者の検討〔リスクワークショップの開催等〕)
○(市場調査の実施)
○ モニタリング原案の検討
○ 実施方針(案)の作成
○ 特定事業の選定(案)作成
○ PFI事業者選定委員会(審査委員会)の運営補助
○ 入札説明書(案)の作成
○ 落札者決定基準(案)の作成
○ 各種質疑回答関係業務
○ 入札者の適格性の評価、入札提案書の整理、審査支援
○ 契約条件の整理、契約書案の作成、契約交渉
※(括弧書き)部分は、発注者内で同種の先行事例がある場合や PFI 事業に関するノウハウが蓄積されている場合は、発注者自ら実施することも想定される。また、それ以外の部分についても、発注者に十分なノウハウが蓄積されていれば、発注者自らが実施することも可能である。
【参考】アドバイザーの選定に係る留意事項について
・「官庁施設のPFI事業手続き標準(第1版)、平成 15 年 10 月、国土交通省大臣官房官庁営繕部」
第2編コンサルタント等の選定
第1章 総則 2-1-1 目的
第2章 基本的事項 2-2-1 基本的な考え方
2-2-2 金融分野に係るコンサルタント等の選定
2-2-3 法務分野に係るコンサルタント等の選定
2-2-4 技術分野に係るコンサルタント等の選定
2-2-5 アドバイザリー業務の内容第3章 アドバイザリー業務の契約
第4章 選定方法第5章 業務履行
4-2.事業発案段階の簡素化・円滑化
PFI事業において、事業実施に至るまでの期間の長期化の課題が指摘されている。
特に、これまでの実態として、発注者はPFI導入方針を決定するための説明責任を果たすために、「導入可能性調査」を委託発注する例が多く見られるが、導入可能性調査では、事業スキームの検討、市場調査等を行うことにより事業の具体化ができる等一定の効果はある一方で、事業スケジュールがその分遅くなる実態が生じている。また、PFIの導入方針を決定した後に、次年度業務として次のステップである「アドバイザリー業務」の予算措置がなされる場合も見られ、「導入可能性調査」から「アドバイザリー業務」への移行期間が長期化している例も見られる。
「PFI事業実施プロセスに関するガイドライン、内閣府民間資金等活用事業推進委員会、H19.6.29」においては、PFI事業の実施有無の判断は「特定事業の選定」までに行うこととなっており、「導入可能性調査業務」の位置付けはなされていない。
このため、導入可能性調査を簡略化できれば、手続きが迅速化されることを目指し、導入可能性調査からアドバイザリー業務への移行について、以下の様な取組みを提案する。
ⅰ)導入可能性の検討を発注者自ら実施
以下の前提条件を満たしている場合は、発注者は簡易VFMの算定等PFI導入可能性調査を自ら行った上で、アドバイザリー業務の委託発注を行う。
(Ⅰ-12 頁:上段ⅰ)図参照)
【導入可能性の検討を発注者自らが行う上での前提条件】
⮚ 発注者において、PFI事業に関するノウハウが蓄積されているか。
⮚ 事業内容が定型的あるいは比較的小規模な事業、又は発注者内で同種の先行事例がある事業等の事業特性を鑑み、導入可能性調査に相当する検討を自らできるか。
⮚ PFIの導入決定についての合意形成、説明責任は果たせるか。
ⅱ)導入可能性の検討とアドバイザリー業務を同一年度に予算化
上記の「導入可能性の検討を発注者自らが行う上での前提条件」を満たしていない場合は、以下の様な取組みが有効である。特に、上記の前提条件を満たしている場合においても対外的な説明責任を果たすために「導入可能性調査」を委託発注する場合は、以下の a.の方法をとることができる。
a.発注者は事前に簡易VFMを把握しPFI実施の見通しを持った上で、「導入可能性調査」に加え「アドバイザリー業務」についても、初年度に予算化する。
(Ⅰ-12 頁:下段ⅱ)図参照) b.導入可能性調査によりPFI導入方針の説明が改めて可能となった段階で、同一年度
内に別途予算措置をし、「アドバイザリー業務」の委託発注を行う。
年次
庁内検討段階
1年度目
2年度目~
アドバイザリー業務
検討
概要
・事業の発案
・方針決定
・簡易VFMの算定
・施設計画の概略検討
・事業スキーム検討
・事業リスクの抽出 等
・事業スキーム等の精査
・市場調査の実施
・モニタリングの検討
・実施方針等の検討
・入札説明書等の公表
・募集・評価・選定
・契約交渉支援
・特定事業の選定
主な
手続
ⅰ)導入可能性の検討を発注者自らが実施する場合
▲事業契約の締結
▲入札説明書等の公表
アドバイザリー委託契約アドバイザリー予算措置
▲特定事業の選定
◇
導入の決定
▲実施方針等の公表
◇
導入方針の検討
アドバイザリー委託契約
アドバイザリー予算措置
PFI
PFI
ⅱ)導入可能性の検討とアドバイザリー業務を同一年度に予算化する場合
・施設計画の概略検討
・事業スキームの検討
・事業リスクの抽出
・市場調査の実施
・VFMの算定
・モニタリングの検討
・入札説明書等の公表
検討
概要
・実施方針等の検討 ・募集・評価・選定
・特定事業の選定
・契約交渉支援
主な
手続
・事業の発案
・方針決定
・簡易V F Mの算定
1年度目
庁内検討段階
アドバイザリー業務
導入可能性調査
年次 2年度目~
▲事業契約の締結
▲入札説明書等の公表
アドバイザリー委託契約アドバイザリー予算措置
▲特定事業の選定
◇
導入の決定
▲実施方針等の公表
アドバイザリー委託契約
◇
導入方針の決定
導入可能性調査委託契約
アドバイザリー予算措置
導入可能性調査及び
PFI
PFI
※上記の各業務期間は例示であり、これまでも事業特性に応じ、スケジュールが設定されている。また、事業によっては、アドバイザリー業務期間が1年程度に短縮されている例2)もある。
2) 国土交通省所管のPFI 事業61 事業の実施方針公表~契約締結の期間は、平均11 ヶ月程度である。これにアドバイザリー業務期間として、実施方針策定までの検討期間2~3ヶ月程度が加わることが通常である。なお、全 61 事業のうち、16 事業は実施方針公表~契約締結の期間が9ヶ月以内で実施されている。
5.債務負担行為の議会議決
【要点】
⮚ 債務負担行為の設定に際しては、サービス対価の変動(金利・物価変動、利用量の変動に伴う支払額の変動等)にも対応できるように議会への説明を行うことが必要である。
地方公共団体におけるPFI事業においては、一般的に以下の段階で議会の承認が必要となる。
① 債務負担行為の設定に関する議決(地方自治法第 214 条)
② 事業契約に関する議決(地方自治法第 96 条1項5項、PFI法第9条)
事業者の選定方法に「総合評価一般競争入札方式」を用いる場合、入札公告を含む一連の契約行為は支出負担行為の範疇に含まれると解されている(地方自治法第 232 条の3、及び4)ため、予め債務負担行為の設定が必要である。
なお、PFI事業における債務負担行為の設定にあたっては、以下の点に留意して議会に説明する必要がある。
ⅰ)PFI事業における支払額は、長期間に渡るため将来変動する要素を考慮することが一般的である。債務負担行為の設定に際しては、このような変動にも対応できるよう、債務負担行為の変更や新たな債務負担行為の設定の可能性について議会等に十分説明しておくことが重要である。
⮚ 金利変動(基準金利の変動を基に算定した増減額)
⇒Ⅱ-77 頁「金利変動による改定」参照
⮚ 物価変動(企業向けサービス価格指数及び消費者物価指数等の変動を基に算定した増減額) ⇒Ⅱ-76 頁「物価変動による改定」参照
⮚ 税制変更
⮚ 利用量の変動(利用者数等の利用量の実績に応じて支払額が変動するスキームの場合)
⮚ 設計変更に伴う費用の増加(事業契約書において発注者の負担と規定される増加費用) 等
ⅱ)PFI方式の場合、入札公告から契約締結まで長期間を要することも多く、定めた当該債務負担行為の翌年度に契約を締結せざるを得ない場合がある。地方自治体の債務負担行為の執行力は設定年度に限られるため(地方自治法第 211 条)、各自治体において債務負担行為の取り直しが可能かを踏まえ、事業スケジュールを設定する必要がある。
6.特定事業の選定・公表(PFI事業の選定の公表)
【要点】
⮚ 民間事業者の積極的な参加を促し、良好な競争環境を形成するためには、特定事業の選定までに算定したVFM及びその算定根拠を可能な範囲で開示することが望ましい。
特定事業の選定は、PFI事業における重要な法的手続きであり、議会、住民に対し、当該事業をPFI事業として実施する説明責任を果たすこととあわせて、その公表内容が民間事業者の参画検討、提案内容に有益な資料となるため、VFMの評価及びその前提条件の設定について、十分留意して進めることが必要である。
【特定事業の選定・公表の民間事業者にとっての意義】
⮚ 試算の前提条件が明らかになることで公共施設等の管理者等が想定している費用の範囲や各種の事業条件を確認すること。
⮚ 事業のスケジュールを再確認すること。
⮚ VFM評価の結果及びその前提条件を知ることで、自らが提案を想定している事業内容・水準との相違点を見極めること。
⮚ VFM評価の結果及びその前提条件をもって、参画するか否かの判断を行うこと。
※官庁施設のPFI事業手続き標準(第1版)、平成 15 年 10 月、国土交通省大臣官房官庁営繕部」より要約抜粋
このため、民間事業者の積極的な参加を促し、良好な競争環境を形成するためには、特定事業の選定において試算した内容について、可能な限り、開示することが望ましい。
⮚ 要求水準に即したPSC及びPFI-LCCの開示
⮚ (参考価格※1 又は予定価格※2 の開示)※3
⮚ (参考価格又は予定価格の具体的な算定根拠の開示)※3
※1:「参考価格」:民間事業者の提案に期待する「PFI-LCC」の目安であるが、あくまでも参考であり、入札時には参考価格を超過しても失格とはならない。
※2:「予定価格」:入札時の上限価格である。
※3:今後、ガイドラインにおいても位置付けが想定される。
【参考①】「PFI推進委員会報告―真の意味の官民のパートナーシップ(官民連携)実現に向けて―、平成 19 年 11 月 15 日、民間資金等活用事業推進委員会」より要約抜粋
1)要求水準の明確化
(中略)
(3)コストと要求水準書の内容(サービスの質)との関係を明確化する必要性
本来、性能発注の仕様である要求水準に見合ったコストが検討され、これがいわゆる「予定価格」として設定されるべきであるが、現実には必ずしもこのような検討の過程を経て要求水準書が作成されておらず、結果として、入札参加者に当該「予定価格」では実現不可能な過大な内容の要求水準書を示している事例が見受けられることが指摘されている。PFIは行政の最終的な責任をアウトプット仕様である要求水準書により明確に示すところに意義があるが、その前提としてインプット仕様において価額を積み上げる必要があり、その意味で両者は不即不離の関係にある。しかしながら、一定のインプットを投入すると必ず想定し
たアウトプットが達成できるとは限らず、そこにリスクが生じることとなる。
いずれにしても、このリスクを最小化していくために、コストと要求水準書の内容を可能な限り整合性のとれたものとする必要がある。
コストと要求水準書の内容を整合性のとれたものとするには、
① 要求水準の内容をまとめた上でPSC、PFI-LCCを積み上げ、要求水準に即した
「予定価格」を設定すること
② 可能な限り要求水準の明確化をはかった上で、上限拘束性のない参考価格を提示する、または、「予定価格」の算定根拠を示すこと等が、具体的な対応策として提示されたところである。これらの選択肢を検討し、現行制度の枠組みの中で可能なものから「プロセスのガイドライン」等に位置付け、公表していく必要がある。
なお、この際、あわせて、「予定価格」について、PSC、PFI-LCCいずれの数値を使用するべきかについての考え方を統一し「プロセスのガイドライン」等に位置付け、公表する必要がある。
なお、予定価格の公表有無については、「公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針、平成 18 年5月 23 日、閣議決定」を踏まえ、検討することが必要である。ただし、国の実施する事業においては、予算決算及び会計令の規定により予定価格の公表はしないこととしている。
【参考②】「公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針、平成 18 年 5 月 23日、閣議決定」より要約抜粋
第2 入札及び契約の適正化を図るための措置
1 主として入札及び契約の過程並びに契約の内容の透明性の確保に関する事項
(1)入札及び契約の過程並びに契約の内容に関する情報の公表に関すること
(前略)予定価格については、入札の前に公表すると、予定価格が目安となって競争が制限され、落札価格が高止まりになること、建設業者の見積努力を損なわせること、談合が一層容易に行われる可能性があること等にかんがみ、国においては、入札の前には公表しないこととしている。このため、各省各庁の長等は、契約締結後に、事後の契約において予定価格を類推させるおそれがないと認められる場合において、公表するものとする。なお、地方公 共団体においては、法令上の制約はないことから、各団体において適切と判断する場合には、事前公表を行うこともできるが、事前公表の実施には上記弊害が生じうることを踏まえ、事前公表の実施の適否について十分検討した上で、上記弊害が生じることがないよう取り扱うものとし、弊害が生じた場合には、事前公表の取りやめを含む適切な対応を行うものとする。
(後略)
【参照】VFMの計測についての一般論
・ 「VFM(Value For Money)に関するガイドライン(平成 13 年7月 27 日)の一部改定及びその解説、平成 19 年6月、内閣府」
7. 入札手順、方法の検討
【要点】
⮚ 多段階方式による事業者の絞込みや提案書の簡素化等の民間事業者の応募段階での負担軽減への配慮が必要である。
7-1.民間事業者の応募しやすい環境の整備(応募者の負担軽減)
民間事業者がPFI事業に応募する場合、提案書作成費用として膨大な費用3)を要することが多く、特に施設設計に係る費用が大きな割合を占めることが多い。提案書の作成方法等は応募者のノウハウに拠るものではあるが、結果的に基本設計レベルの検討を実施しなければ、入札価格の基礎となるコストの的確な算定ができない場合もあり、応募者の負担となっている例が見られる。このため、発注者としては、多段階方式を用いて入札の参加資格審査の段階で事業計画の概要を提案させ、応募者を絞り込むこと等により、提案書作成段階での応募者の負担軽減に配慮することが必要である。
応募者の負担軽減方策として、以下のような検討が必要である。
・ 多段階方式による事業者の絞込み (【参考①】参照)
・ 提案項目の絞込み、要求水準の明確化※
・ 提案書様式の簡素化(枚数や部数の軽減)※
・ 発注者による応募費用の一部負担
※応募者にとって提案書作成に関する直接的な費用の低減にはなるが、検討過程に必要な費用の低減には必ずしもならない場合もある。また、発注者は、簡素化する際でも、適正な評価を行うために必要不可欠な提案内容を踏まえた提案書様式の作成が必要である。
【参考①】「PFI 事業に係る民間事業者の選定及び協定締結手続きについて、平成18 年11 月22 日、民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する関係省庁連絡会議幹事会申合せ」より要約抜粋
1.適用対象事業について
本申合せは、すべてのPFI事業に適用することが想定されているものではなく、発注者のみの能力では要求水準書等を作成することが困難な事業について適用することを想定している。なお、実際に適用が想定される事業としては、病院や刑務所のように、運営の比重が 高く、かつ運営内容を規定するために民間事業者の知見が重要となる事業や、複合施設、意匠性の高い建物等、発注者の意図を明確に伝えるのが困難と考えられる事業があげられる。
2.民間事業者の選定方法について
(1)PFI事業における競争入札の資格審査
PFI事業においては、民間事業者の創意工夫を最大限活用するために、具体的な仕様の特定を必要最小限にして発注を行うことから、発注者は、民間事業者の負担、審査の精度の観点から当該事業を適切に実施できる能力を有する民間事業者のみに詳細な事業計画を作成させ、一般競争入札に参加させることが適当である。このため、一般競争入札の参加資格の 審査において事業計画の概要を提案させ、審査を行うことで、最終的に入札に参加する応募者を絞込むことが有益である。
(2)事業計画の概要の審査方法
資格審査の審査基準の作成に当たっては、できるだけ絞込みの効果が出るような方法、例
3) 総務省調査(行政評価報告書)によると2~3千万円/件とされている。
えば、予め定める基準により事業計画の概要提案を点数化し、一定の点数に満たない提案を欠格とするといった方法を採用することが望ましい。また、例えば、必要に応じて学識経験者等の意見を聴取することといった、公正な審査を行うための措置を取り入れることが望ましい。なお、この場合においても、民間事業者の選定に対する意思決定の責任、説明責任は発注者にあることに留意する必要がある。なお、具体的な事例としては、事業の基本的な考 え方や取組体制、事業遂行についての考え方、類似の事業の実績等について、それぞれ1枚から3枚程度の資料の提出を求めて提案審査を行った例※1 や、地方自治体では、形式的な資格の確認のみではなく、経営体制やマネジメント能力等の実質的な能力に関しての資格審査を行い、絶対評価基準に満たない応募者を欠格とした例※2 がある。
(3)審査結果の説明
応募者がより発注者のニーズに沿った入札提案を作成できるようにするため、資格審査における事業計画の概要提案の評価結果を応募者に説明することも考えられる。
(4)審査に当たって留意すべき事項
①予算決算及び会計令第 73 条の競争参加資格は、競争を適正かつ合理的に行うために特に必要な限度において設定されるものであることに留意する必要がある。
②資格審査により絞込む応募者の数は、EU及び欧州諸国の規定や発注者の審査精度等を考慮すれば最低3者程度が妥当と考えられるが、資格審査において相対的な評価を行うことは、入札前に能力のある応募者を排除することにもなるため、絞込みの数を予め指定することはできないことに留意する必要がある。
③応募者が資格審査において提出した事業計画の概要について、発注者の評価結果を踏まえて、入札提案書の提出に際して当初示した提案の内容を変更する場合も考えられるが、変更は当該資格審査の公平性が損なわれない範囲に限定されるものでなければならない。
※1:主な例として、「衆議院赤坂議員宿舎整備等事業」では、事前審査として資格審査と合わせて提案審査(「a)本事業の基本的考え方」「b)取組体制・実績」「c)本事業の考え方と特色」「d)事業遂行についての考え方」「e)その他の特記事項」を行っている。
※2:主な例として、「江坂駅南立体駐車場PFI事業」では、一次審査で 16 者から5者、「竹の塚西自転車駐車場整備運営事業」では5者から3者に絞込みを行っている。
8.PFI事業者選定委員会(審査委員会)の開催
【要点】
⮚ 事業内容が定型的あるいは比較的小規模な事業については、落札者決定基準を定めるときのみ学識経験者から意見聴取を行う方法や、学識経験者への意見聴取事項を絞る方法等、事業特性(評価内容)、事業規模に応じ、学識経験者への意見聴取手続きを簡素化することが可能である。
PFI事業者選定委員会(以下、「選定委員会」という。)は、PFI事業の総合評価一般競争入札方式等の事業者選定手続きに際し、客観性、公平性、透明性を確保しながら、専門的見地から最も優秀な提案を行った事業者を選定するために組織する委員会である。当然ながら、最終的な事業者の決定機関は発注者であり、発注者は選定委員会の意見等に基づき事業者を決定することになる。
ここでは選定委員会を上記の目的に沿って組織される委員会とし、最終決定機関として発注者が庁内で行う指名委員会や入札契約手続委員会等とは別組織として整理する。
これまでの選定委員会の一般的な例としては、まず発注者が資格審査を実施し資格審査の通過者を確定した上で、学識経験者等で構成される選定委員会において、各委員が定められた評価項目に基づき自ら審査し選定委員会として優秀提案を選定して、その結果に基づき最終的に発注者が落札者を決定するケースが比較的多く見られる。
こうした審査手法は、応募グループの数や、求める提案内容、様式の枚数にもよるが、多大な時間と労力を要することとなり、選定委員会に参画する学識経験者への負担は非常に大きなものとなっている。また、学識経験者との日程調整に時間がかかる等により、手続きの長期化も懸念されている。さらに、学識経験者がその専門以外の内容についても審査を行う場合には、提案に対する適正な評価がなされていない可能性も指摘されている。
(Ⅰ-23 頁【参考②】参照)
PFI事業における選定委員会にはこのような実態がある一方で、一般的な総合評価一般競争入札方式では、学識経験者の関与を審査でなく意見聴取の範囲に止めることもできる。このため、選定委員会を設置せず、学識経験者の意見聴取を別に行うことで簡素化を図ることも可能である。学識経験者等からなる選定委員会で学識経験者から意見聴取を行う場合は、複数の学識経験者が一堂に会する必要があるため、日程調整に時間を要する可能性があるが、選定委員会を設置しない場合は、別途一堂に会して行う方法、個別に意見聴取を行う方法、Eメール等により意見聴取を行う方法、これらを組み合わせる方法等、様々な手法をとることができる。
■地方自治体におけるPFI事業の選定委員会と学識経験者の関係
学識経験者の位置付け | 選定委員会の構成 | 学識経験者の関与 |
選定委員会の委員 | 学識経験者及び行政職員 ※学識経験者のみで構成する場合もある。 | 審査 (評価点を付ける等自ら審査を実施) 意見聴取 (発注者の作成した案に対する意見) |
選定委員会とは別 | なし (発注者が庁内組織のみで事業者を決定) | 意見聴取 (発注者の作成した案に対する意見、手法は様々) |
また、今般、地方自治法施行令が改正(平成 20 年3月1日施行)され、総合評価一般競争入札における学識経験者からの意見聴取手続きの簡素化が可能となった。当該改正は、総合評価一般競争入札による契約の規模、内容等の個別特性に応じた運用を図るべきであるが、PFI事業においても、その事業特性に応じた柔軟な落札者決定方法の検討余地が広がったものといえる。
【参考①】地方自治法施行令の一部を改正する政令の概要
総合評価一般競争入札を行う場合における学識経験者からの意見聴取手続きについて、地方自治法施行令第 167 条の10 の2 第4項の規定においては、①当該入札を行おうとするとき、②落札者決定基準を定めようとするとき、③落札者を決定しようとするときに意見を聴かなければならないとしていたものを、①落札者決定基準を定めるときに意見を聴かなければならないこととし、当該手続きを簡素化す ること。
ただし、当該意見聴取の際に落札者決定基準に基づいて落札者を決定しようとするときに改めて学 識経験者の意見を聴く必要があるかどうかについて、学識経験者の意見を聴かなければならないこととし、落札者を決定しようとするときに改めて学識経験者の意見を聴く必要があるとの意見が述べられたときは、当該落札者を決定しようとするときに、あらかじめ学識経験者の意見を聴かなければならないこととすること。
以上を踏まえ、効率的かつ効果的な審査のため、事業特性(評価内容)、事業規模に加え、発注者における総合評価方式やPFI事業の経験に基づくノウハウの蓄積状況に応じて、学識経験者の意見聴取方法について簡素化することが可能である。
なお、この場合においても、公平性、透明性を確保することは不可欠であり、総合評価一般競争入札、公募型プロポーザル方式等の事業者選定方法に関らず、公平性、透明性を担保する仕組みを構築することが重要となる。
【公平性、透明性を担保する仕組み(例)】
・裁量の余地を少なくするため、審査基準(審査項目及びその採点基準)の定量化、明確化を図る。
・審査結果と明確な理由の公表を行う。
・選定されなかった応募者に対して、事後説明の機会を設ける。
・事前あるいは事後に、複数事業をまとめて学識経験者からの意見聴取に図る等チェック機能を確保する。
・学識経験者に意見を聴く範囲をそれぞれの専門分野に応じて明確にする。(Ⅰ-22 頁参照)等
また、いずれの手法を採用するにしても、選定委員会の所掌する役割、つまり、発注者への報告事項やその位置付け、学識経験者の関与等については、予め明確にしておくことが必要である。
8-1.簡素化した選定委員会の役割の考え方
(1) 基本的な考え方
選定委員会における学識経験者の役割については、以下の視点から整理することとし、少なくとも学識経験者が自ら審査を行うことのない様にすることが望ましい。
○「意見聴取事項」:発注者の考え方を提示し、学識経験者に意見を聴取する事項
○「説明事項」:審議事項とはしないものの学識経験者の理解を深める観点から説明を行う事項
なお、学識経験者を選定委員会の正規の委員とする場合は、選定委員会が開催される度に、委員たる学識経験者にも出席頂き意見聴取等を行う必要がある。このため、以下の簡素化の際には、学識経験者を正規の委員とせず(委員は発注者の職員等で構成)、専門委員、臨時委員として、必要な時にのみ学識経験者に出席して頂くという方法がある。
地方自治法施行令の改正を踏まえると、基本的には、落札者決定基準の決定時にのみ学識経験者の意見聴取を行うという方法をとることができる。ただし、事業内容が複雑あるいは大規模な事業等については、実施方針の公表段階から選定委員会を開催し、当該事業に対する発注者と学識経験者の共通認識を図ることも考えられる。
■簡素化した選定委員会の開催(専門委員、臨時委員としての学識経験者への意見聴取)
スケジュール
事業者選定段階から委員会を開催する場合 | 実施方針公表段階から委員会を開催する場合 【事業内容が複雑 あるいは大規模な事業等】 | |
実施方針に関する事項 | - | 説明 |
特定事業の選定に関する事項 | - | 説明 |
落札者決定基準に関する 事項※1 | 意見聴取 | 意見聴取 |
提案内容の審査 | (必要に応じ、意見聴取)※2 | (必要に応じ、意見聴取)※2 |
その他、事業者選定に関し必要な事項 | (必要に応じ、意見聴取)※2 | (必要に応じ、意見聴取)※2 |
※1:審査項目、配点及び採点基準、総合評価の算定方法等の設定。
※2:(必要に応じ、意見聴取)は、地方自治法施行令に基づき必要な場合に実施。
(2) 最も簡素化した審査手法の考え方
一層の簡素化を図るためには、選定委員会を設置せず、発注者において落札者決定基準(案)等の資料を作成し、その内容について2名以上の学識経験者への意見聴取を任意の手法で行い、手続きを進めることも可能である。ただし、この手法はPFI事業においても対外的に選定委員会を開催する必要がない場合等のケースに限られる。
8-2.簡素化された選定委員会の協議内容(例)
※選定委員会を設置し、専門員、臨時委員としての
学識経験者の意見聴取を行う場合
ここでは、Ⅰ-20 頁8-1(1)に示すケースとして効率化を図った選定委員会の協議内容(例)を以下に示す。委員会の協議内容等については、事業規模や事業特性を踏まえ、決定する必要がある。
段階 | 開催回 | 協議内容 |
入札公告前 | 第1回選定 委員会 | ■落札者決定基準に関する審査 ・これまでの経緯説明(これまでの公表資料の状況ついて) 【事務局】※1 ・入札説明書(案)等の提示、説明 【事務局】※1 ・発注者の落札者決定基準(案)の提示、説明 【事務局】※1 ・落札者決定基準(案)に対する意見聴取及び審査【学識経験者及び委員】 |
■落札者決定時における学識経験者への意見聴取の必要性【学識経験者】 ・第2回選定委員会の審議内容についての学識経験者への意見聴取有無の決定 | ||
【必要と決定された場合の主な協議事項】 ・審査方法(提案書の取扱い、審査体制、採点方法)の決定。 ⇒Ⅰ-22 頁8-3参照 ・ヒアリングは実施するか。実施する場合、選定委員会として実施するか。また、学識経験者も同席するか。 等 |
※地方自治法施行令の改正を踏まえ、学識経験者から意見聴取せずに実施することも可能。
提案書受付後 | 【第2回選定委員会までに事務局が実施する作業】 ・提案書に関する基礎審査(要求水準を満たしているかの確認、入札価格の算定根拠の確認等)の実施 ・提案書の加点審査対象項目の整理(庁内関係部署への確認等) ・提案書の仮評価の実施(事業者への確認事項の整理) ◇ヒアリングを実施する場合 ・ヒアリング方法(対話的ヒアリング)の確定、ヒアリング事項の取りまとめ ・ヒアリングの実施※2 | |
第2回選定 委員会 | ■基礎審査結果等の説明 ・資格審査及び基礎審査結果の説明 【事務局】※1 ・各提案概要の説明 【事務局】※1 | |
■提案審査、優秀提案の選定 ・発注者による評価結果(案)の提示、説明 【事務局】※1 ・発注者の評価結果(案)に対する意見聴取及び審査 【(学識経験者及び)委員】 | ||
第2回選定委員会以降 | ・選定委員会の意見聴取結果を踏まえた落札者の決定 【発注者】 ・審査結果の作成、公表 【発注者】 |
※1:事務局は、発注者の事業所管担当部局を中心に、多くの場合、アドバイザーも加えて構成される。
※2:ヒアリングの実施については、選定委員会として実施する場合も想定される。第1回選定委員会で決定しておく必要がある。
8-3.提案書受付後の学識経験者の意見聴取方法の例
※選定委員会を設置する場合で、落札者決定時において専門員、臨時委員としての
学識経験者への意見聴取が必要とされた場合
一般的に以下のような意見聴取方法が考えられ、事業特性、事業規模、学識経験者の構成、委員の意見等を踏まえ、実施する事業に見合った意見聴取方法を第1回選定委員会の開催時に選定することが重要である。(【参考②】参照)
○提案書の取扱いのレベル
ⅰ)事務局において提案書の評価対象箇所を整理した基礎資料及び評価結果(案)を作成し、学識経験者に意見聴取
ⅱ)事業者に、提案書に加え要約版の提出を求め、要約版及び評価結果(案)を元に学識経験者に意見聴取(提案書は、事務局の基礎資料とする。ただし、事業者の負担軽減への配慮が必要。)
ⅲ)提案書原本及び評価結果(案)を元に、学識経験者に意見聴取(ただし、提案書のボリュームが多い場合や、少数の学識経験者のみに意見聴取する場合は負担が大きくなる可能性がある。)
○意見聴取体制のレベル
ⅰ)各学識経験者の専門分野を考慮して、学識経験者別に担当項目の意見聴取を実施
⇒事業内容が定型的、又は比較的事業規模が小さい場合:【参考③】参照
ⅱ)専門分野毎に部会を設置し、部会毎に担当項目の意見聴取を実施
⇒事業内容が複雑、又は比較的事業規模が大きい場合:【参考③】参照
なお、各学識経験者から全項目の意見聴取を実施するケースは、学識経験者の専門分野以外への負担がかかるため、好ましくないが、総合的見地から意見を述べることができる学識経験者を委員にすることを妨げるものではない。
【参考②】「PFI推進委員会報告―真の意味の官民のパートナーシップ(官民連携)実現に向けて―、平成 19 年 11 月 15 日、民間資金等活用事業推進委員会」より要約抜粋
4)より透明性が高く民間の創意工夫が生かせる入札プロセスの実現
(中略)
(1)透明性の確保
民間事業者からは、行政側で組織されている事務局と審査委員会との役割分担が不明確であり、「プロセスのガイドライン」に示されている「民間事業者の選定に対する意思決定の責任、説明責任は公共施設等の管理者等にあることに留意する」との趣旨が浸透していない事例があること、提案の審査には高い専門性が求められるが審査委員が専門外の事項を審査する事例が見受けられ、適正な評価になっていない可能性があること、さらに、非選定理由について非選定事業者に対し、十分な説明が行われていないこと等の指摘がある。
これらについては、本年6月に改定した「プロセスのガイドライン」において、「審査委員
会で審査する事項のうち専門性の高いものについては、当該事項の専門性を踏まえた審査委 員を選定し、専門分野ごとに審査を行う等、事業の規模等に応じ、当該事項の専門性にふさわしい審査のプロセスを確保すること」と新たに明記したほか、審査委員会の位置付け及び審査委員会で審査をするべき事項を明確にし、事前に公表すべきこと、また、非選定事業者に対し、非選定理由の説明機会を設けることは必要との趣旨が従来より明記されている。しかしながら、これらの趣旨が必ずしも管理者等に周知徹底されていないと考えられることから、様々な手段を講じ、管理者等の現場にガイドラインの趣旨を浸透させていくことが必要である。(後略)
【参考③】「PFI事業における総合評価等入札手続の実態の把握及び今後の在り方に関する調査、平
成 19 年3月、(内閣府民間資金等活用事業推進室委託)」より要約抜粋
・ PFI事業の審査は多岐に渡るため、審査の合理性を確保するため、専門分野ごとに審査を行うプロセスを設計する必要がある。
・ 事業規模が大きい場合は専門員会を設けて分野ごとに審査する「専門部会方式」、事業規模が大きくない場合は、分野ごとに審査委員を決める「専門委員方式」が考えられる。
【専門部会方式の例(事業規模が大きい場合)】
【専門委員方式の例(事業規模が小さい場合)】
9. 契約交渉段階における入札説明書(事業契約書案含む)等の変更について
【要点】
⮚ 公平性、競争性に留意した上で、円滑な事業の実施のために、入札前の応募者との対話を通じた入札説明書等の条件の見直し、落札者決定後の契約書(案)、入札説明書等の変更についても適切に実施することが重要である。
総合評価一般競争入札の場合には、提示した事業契約書(案)を前提に提案がなされていることから、契約内容の変更はできないとされていた。しかし、この総合評価一般競争入札の硬直性については、これまでに実施されてきたPFI事業においても実務上の課題として挙げられてきた。これを踏まえ、「平成 18 年 11 月 22 日、民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する関係省庁連絡会議幹事会申合せ」により、入札前の契約書(案)の変更、落札者決定後の契約書(案)の変更の可能性について一定の取りまとめがなされたところである。(以下、関連記載を抜粋)
■落札者決定後の応募条件の変更について
【参考①】「PFI 事業に係る民間事業者の選定及び協定締結手続きについて、平成18 年11 月22 日、民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する関係省庁連絡会議幹事会申合せ」より要約抜粋
(1)変更の最小化について
落札者決定後において、契約書案、入札説明書等、応募条件の変更を行うことは、競争性を損なうおそれがあることから、落札者の決定の前段階において対話を行うことで、できる だけ発注者と応募者の認識の不一致を解消し、落札者決定後に契約書案、入札説明書等の内容の変更を最小化するよう努めることが重要である。
他方、PFI 事業においては、個々の事業者の事業提案内容が、必ずしも予め発注者が契約書案、入札説明書等を作成する段階で想定し得る範囲内のものであるとは限らないため、落札者決定後の契約書案、入札説明書等の内容の変更は一切許容されないものでなく、競争 性の確保に反しない場合に限り変更は可能である。
(2)競争性の確保に反しない例
同じコストで質が向上する場合や、質が同じでコストが低減できる場合は、競争性の確保 に反するものとはいえない。なお、要求水準書に関しては、その変更により競争性に影響する可能性が高いことから、落札者決定後から契約締結の間に変更が生じないよう留意するべ
きである。