Key Words : bidding contract system, local government, major general contractor, Great East Ja- pan Earthquake, CM method
入札契約制度から見た地方公共団体における通常時・災害時の大手ゼネコンの役割
xx xx1・ xx x2・xx xx3
1学生会員 xx建設株式会社 土木本部土木設計部(x000-0000 xxxxxxxxx0-00-0)
E-mail:xxxxxx00@xxx.xxxxxx.xx.xx
2 正会員 東北工業大学名誉教授 工学部都市マネジメント学科
(x000-0000 xxxxxxxxxxxx 00-0) E-mail:xxxxxx.xxxxxxx@xxxxx.xxx
3 正会員 政策研究大学院大学客員教授 政策研究科(x000-0000 xxxxxxxx 0-00-0) E-mail:x-xxxxx@xxxxx.xx.xx
地方公共団体の建設工事において,入札参加要件の設定により大手ゼネコンの入札参加は制限されてい るが,大規模災害時には復興工事に大手ゼネコンが参入している.本研究では通常時・災害時における大 手ゼネコンの役割を確認し,将来の在り方を考察することを目的として,公共工事の入札契約制度・発注 実績等の調査を行い,通常時の大手ゼネコンの地方への参入制限状況,災害時の入札参加要件の緩和状況,東日本大震災時の復興CM方式の有用性と課題を明らかにした.
地方公共団体の土木技術者が減少している中,今後の大規模災害時においてもCM方式の導入は有効であるといえるが,復興事業をマネジメントする人材が不足する可能性が高い.そのため,通常時からの CM方式の導入による人材育成および災害時の協力体制の事前検討が必要であると考えられる.
Key Words : bidding contract system, local government, major general contractor, Great East Ja- pan Earthquake, CM method
1. 序論
(1) 研究の背景
建設業は全国で業者数が約47万存在し,就業者数も 500万人を超え1),地方の市町村にとっては基幹産業である.このため都道府県や市町村のみならず,国においても建設業の過度な競争を排除し,中小企業の保護と健全な発展を支えるため,建設事業に様々な入札制度を導入し,大手ゼネコンの無制限な参入を制限している.
しかし,東日本大震災においては,地方を拠点とする企業の施工能力をxxxに超える,膨大な復興事業が発生し多くの入札不調が発生した.各県が発注する復興工事においては,入札に参加できる要件等を緩和することで受注業者を確保し対応しているが,市町村においては事務能力・技術能力をxxxに超える復興事業に対し,事業の適切な計画・設計・発注も困難な状況であった.そこで,市町村はUR都市機構(以下,URと記載)へ一部事業を委託し,URは復興CM方式により大手ゼネコンと建設コンサルの共同企業体とCM契約を行っている.
復興CM方式は通常のCM(コンストラクション・マネジメント)方式をもとに,当時の状況に合わせて制度設計されたものであり,これによって市町村は通常時をxxxに超える量の事業を実施することが可能となった.一方,地方公共団体の土木技術者が減少している状況 下で,南海トラフ巨大地震などのこれまで以上の規模の災害が到来する可能性を想定すると,過去の大規模災害時における関係組織の対応の記録,問題点の洗い出しは
重要であると考えられる.
表-1 南海トラフ巨大地震の概要
発生確率2) | M8-9クラスの発生確率 30年以内に70~80% | |
想定被害3) | 死者・行方不明者数 | 約23.1万人 (冬・深夜に発生) |
全壊焼失棟数 | 約209.4万棟 (冬・夕方に発生) | |
資産等への被害 | 約171.6兆円 |
(2) 既往の研究
1990年代後半~2000年代前半ごろに,現在の一般競争入札を中心とする入札契約制度への整備は行われたが, 2000年代にはこれらの効果の検証が多数行われている.盛武 4)は入札制度の歴史的変遷や入札制度整備前後の入札結果を確認するとともに,地域要件の設定状況について分析している.xxら 5)は総合評価方式による入札の実態を分析し,その利点や課題を整理している.xx 6)は入札制度の多様化を進めるべきという中で CM 方式の導入も評価している.
2010年代においては,入札制度等を一部変更することで公共調達の効率性や,受注者の行動がどのように変化するかを確認している研究が多くみられる.入札制度において中小企業の保護を目的とした施策の一つの柱は工事等級区分による大手建設会社の排除であるが,xx 7)
は 2013 年度の中国地方整備局における一般土木工事の工事等級区分が統合されたことによる効率性の影響分析を行い統合による効果が示されている.xxら 8)は 2006年の大手xxxxによる脱談合宣言により,入札者の行動として競争的行動をとるようになったことを入札結果の分析から確認している.
地方公共団体における,地元建設業の保護策として,最も影響が大きい入札参加要件は地域要件であるが,xxら 9)は地域要件について,国際比較等を実施し,地域振興のための地域要件の設定は控え,競争性を確保することで,財政支出を削減するとともに,業界の非効率性を改善すべきだと論じている.
また,災害時の発注者側の対応についての研究として,xxら 10)は東日本大震災の漁港の復旧工事の受発注にお ける対応とその課題について議論しており,災害直後か らの工事,受発注体制の整備,資機材・技術者の確保に ついて検討している.
CM 方式について,米国では1960 年代から導入され始めているが,日本で検討の必要性が指摘されてきたのは 1990年代になってからである.2000年代以降は国土交通省による CM 方式研究会の設置を契機として本格的な議論がなされている.xxら 11)は日本で適用された CM 方式を事例とし,発注者支援方策の導入効果を評価する手法を提案している.
また,CM 方式は発注者と受注者の線引きがあいまいになるため,お互いの役割分担が不明確になってしまう
入札方式 | 適用工事 | |
一般競争入札 (原則実施) | 一般競争入札(WTO案件) | 予定価格22.9億円以上の工事 (都道府県及び政令市の場合) |
条件付き一般競争入札 | 予定価格22.9億円未満の工事 (都道府県及び政令市の場合) | |
指名競争入札 | 一般競争入札によることが不利な工事予定価格が少額である工事 | |
随意契約 | 緊急を要する工事 契約の性質・目的が競争を許さない場合予定価格が少額である工事 |
12)
ている.CM の導入は担い手不足や生産性向上(コスト縮減,任質向上)に寄与しているとする一方で,CM 方式における業務の中の暗黙の了解のようなことも特記仕様書に書くべきであると論じている.
東日本大震災の復興事業においては UR が導入した復興 CM 方式を含め様々な事業主体により CM 方式が導入されている.xxら 14)は,東日本大震災の復興事業における CM 方式の導入事例を分析し,事業特性,事業者特性,CM導入時期,CMRのマネジメント能力,専門業者の技術力と,導入された CM 方式のタイプを関連付け, CM 方式導入検討時の客観的な考え方を示している.
また,東日本大震災の復興 CM 方式による事業についてはあらかた収束を迎えており,復興 CM 方式の検証がなされ始めている.UR15)は復興事業の工期短縮を中心とした復興 CM 方式の効果分析を実施している.
(3) 研究の目的
こうした背景のもと本研究では以下の4点を研究の目的とする.
1) 通常時における建設工事の入札制度では大手ゼネコンの参入がどのように制限されているかを,東北地方を中心として明らかにする.
2) 東日本大震災に加え,熊本地震や広島の豪雨災害においては地元の施工能力を超える復興事業がどの程度発生したか.また,その際どのように入札参加要件を緩和したのかを明らかにする.
3) 東日本大震災で導入された復興CM方式における地方公共団体,UR,建設コンサルタント,大手ゼネコンの役割と問題点を明らかにする.
4) 今後の大規模災害に対する大手ゼネコンの在り方を考察する.
2. 通常時の公共工事の入札契約制度の現状
(1) 入札参加要件の構成要素
表-2 に,入札方式の一覧を示す.地方公共団体における公共調達の方法については,会計法(第 29 条)お
表-2 入札方式の一覧
恐れがある.xxx は CMR(コンストラクション・
マネージャー)の役割分担の明確性の重要性とあり方を 4 つの実際例から考察するとともに,CMR の特記仕様書上の業務内容と実際に実施した業務内容の差異の実態も明らかにしている.xxx 13)は実際に CM 方式が用いられた事業を対象にヒアリングを行い,CM 方式の導入の効果と受発注者間の業務の寄与度の認識の違いを評価し
よび地方自治法(第 167 条,第 234 条)によって定められており,原則として,公告して申し込みさせることにより競争に付すこと(一般競争入札)とされている.一方で,入札に参加できるものが少数の場合や競争に付すことが不利と認められる場合は指名競争入札,緊急である場合や契約の性質又は目的が競争を許さない場合は随意契約によるとされている.また,予定価格が少額である場合は指名競争入札,随意契約を選択することもできるとされている.
原則,公共工事の発注は一般競争入札で行うこととなっているが,入札参加要件が各発注者により定められており,入札の参加は制限されている.表-3 に入札参加要件の構成要素を示す.
これらの構成要素の内,大手ゼネコンの参入を主に制限しているのは,①等級区分と②地域要件であり,本研究においては,①②を中心に扱うこととする.
(2) 国土交通省東北地方整備局の入札参加要件
表-4 に東北地方整備局における平成 31,32 年度の一般土木工事の入札参加要件を示す.総合点数は経営事項評価点数に受注した公共工事の工事実績と工事成績をもとにして算出した技術評価点を加えることで算出し,こ
表-3 入札参加要件の構成要素
構成要素 | 内容 |
① 等級区分 | 工事の予定価格ごとに,入札に参加できる等級を制限.等級については,各社の経営事項審査点に各発注者 独自の主観点数を加算したものをもとに決定される. |
② 地域要件 | 本店・支店・営業所等の所在地による制約. |
③ 対象工事に対する施工実績 | 対象工事に対する建設会社としての過去の施工実績による制約. |
④ 配置技術者の資格および施工実績 | 対象工事に配置するxx技術者、管理技術者の資格や施工実績による制約. |
⑤ その他 | JVの構成について,過去の工事の工事成績 等 |
表-4 東北地方整備局の入札参加要件16), 17)
(H31,32 年度 一般土木)
等級 | 工事予定価格 | 総合点数 (経審点+技術評価点) | 地域要件 | 主な 企業形態 |
A | 7.2億円以上 | 3,500点以上 | 設定なし | 全国企業 |
B | 3.0億円以上 7.2億円未満 | 2,860~3,499点 | 本支店・営業所本支店管内 | |
C | 6000万円以上 3.0億円未満 | 1,700~2,859点 | 本支店・営業所県内(地域内) | 地域企業 |
D | 6000万円未満 | 1,700点未満 | 県内本店かつ 地域xx支店・営業所 |
表-5 東北地方整備局の入札結果(H30 年度 一般土木)
等級 | 県内業者 | 県外業者 | ||
件数 | 平均落札価格(円) | 件数 | 平均落札価格(円) | |
A | 0 | 0 | 11 | 7,794,972,727 |
B | 43 | 376,243,256 | 35 | 423,316,571 |
C | 366 | 152,696,530 | 14 | 139,287,857 |
D | 7 | 36,342,857 | 1 | 42,500,000 |
※東北地方整備局にて一般公開されている入札結果のデータを使用
れをもとに建設会社の等級を決定している.
地域要件については,C 級以下については,県内もしくは地域内に本支店・営業所がなければ工事を受注できないようになっており,地元企業が優先して工事を受注できるようになっている.
表-5 に東北地方整備局の平成 30 年度の一般土木工事の入札結果を示す.これより,C 級以下の工事についてはほぼ県内業者しか受注できていないことがわかる.また,工事の件数は圧倒的にC等級が多い.これは,分割発注により,3 億円以下の規模にして,地域企業に工事が発注されていることが多いためであると考えられる.
(3) 都道府県における入札参加要件(xx県)
表-6 にxx県における土木一式工事の工事等級区分を示す.総合点数は経営事項評価点数に地域への貢献度等を考慮した主観点数を加えたものである.
xx県における入札参加時の地域要件は,「建設工事執行規則取扱要領」(令和元年 10 月 1 日改正)に工事執行者は事業所の所在地に関することを入札参加資格として設けることができるものとすると記載されており,案件ごとに設定されている.
表-7 にxx県における平成 30 年度の土木一式工事の入札結果を示す.これより,結果として 9 割以上の工事が県内業者に発注されていることが分かる.
(4) 市町村における入札参加要件 (仙台市)
仙台市における土木工事の工事等級区分を表-8 に,地域要件を図-1 に示す.
表-6 xx県における工事等級区分(土木一式)18)
等級 | 工事予定価格 | 総合点数 (経審点+主観点数) |
S | 1億円以上 | 950点以上 |
A | 3000万円以上 1億円未満 | 700点~849点 |
B | 1000万円以上 3000万円未満 | 550点~699点 |
C | 1000万円未満 | 550点未満 |
表-7 xx県における入札結果(H30 年度,土木一式)
等級 | 県内業者 | 県外業者 | ||
件数 | 平均落札価格(円) | 件数 | 平均落札価格(円) | |
S | 231 | 329,763,351 | 21 | 276,581,238 |
A | 164 | 57,190,591 | 11 | 60,363,636 |
B | 133 | 18,590,960 | 8 | 16,400,000 |
C | 88 | 5,543,261 | 4 | 5,775,000 |
※xx県庁のWebサイト上で公開されている,入札情報サービスのデータを使用
表-8 仙台市における工事等級区分(土木工事) 19), 20)
等級 | 契約予定価格 (指名基準) | 総合点数 (経審点+主観点数) |
A | 1億円以上 | 950点以上 |
B | 5000万円以上 1億円未満 | 800点~949点 |
C | 5000万円未満 | 800点未満 |
⮚ 仙台市の入札参加要件(地域要件)
・「工事請負契約に係る競争入札実施要綱」(平成29 年4 月1 日)次に掲げる事項の内から,選定して設定するものとする.
① 本市の区域内に営業所を有すること
② xx県内に本店を有すること
③ 本市の区域内に本店を有すること
・「工事請負契約に係る競争入札実施要綱取扱要領」(平成31 年4 月1 日)予定価格1000 万円以上3 億円未満の工事に関しては,
③ 本市の区域内に本店を有することを適用しなければならない.
※③では対象工事の施工できるものがいない,入札を行うに足りる入札参加者数を確保できない恐れがある場合は①②としてもよい.
表-11 東日本大震災後の国交省の対応
適用時期 | 工事内容 | 入札契約方式 | 発注件数 | ||
特徴等 | 競争参加者の設定方法 | 契約相手の選定方法 | 標準的な手続日数 (公告~契約) | ||
発災~2か月 H23.3~23.5 | 応急復旧 (断面補修、がれき撤去、道路清掃、 堤防復旧等) | 随意契約 | ※災害協定締結会社であり、かつ直轄工事での実績がある者を選定 | 即時着工 ※協議が整い次第速やかに着手 | 約220 |
・暫定契約書の締結による前払金の支払い | |||||
2~6か月 H23.5~23.9 | 本復旧 | 指名競争 | ※施工体制審査のみの総合評価を実施 | 約1か月 | 約50 |
・xx期前に完了させる必要がある工事などで適用 | |||||
6か月~ H23.9~ | 本復旧 | 一般競争 (WTOを除き、地域要件を設定) | 総合評価落札方式 | 約2か月 | 約190 ※H23年度 |
・等級区分において、一般土木C等級の予定価格の上限金額の変更(3億円→4.5億円) ・分任支出負担行為担当官が契約できる範囲の拡大(3億円→WTO対象額) ・事業促進PPPの導入 |
図-1 仙台市の地域要件
表-9 仙台市における入札結果(平成30 年,土木工事)
等級 | 市内 | 市外(県内) | 市外(県外) | |||
件数 | 平均落札価格 (円) | 件数 | 平均落札価格 (円) | 件数 | 平均落札価格 (円) | |
A | 36 | 187,757,747 | 0 | 0 | 1 | 321,000,000 |
B | 28 | 72,174,782 | 0 | 0 | 0 | 0 |
C | 114 | 13,701,456 | 0 | 0 | 1 | 18,490,000 |
※仙台市役所のWebサイト上で公開されている,入札情報サービスのデータを使用
表-10 東日本大震災後の入札不調の状況21)
事業主体 | 入札不調発生割合 | |
件数 | 金額 | |
東北地方整備局 | 15.40% | 5.00% |
xx県 | 27.20% | 16.60% |
xx県管内の7市町 | 35.00% | 37.40% |
※調査期間:H23.10~H24.9
表-9 に平成 30 年度の仙台市の土木工事の入札結果を示す.以上より,仙台市から発注されている工事もほとんどは,市内業者に発注されていることが分かる.
3. 災害時の入札契約制度と受注業者分布
(1) 東日本大震災後の工事入札における入札不調の発生について
東日本大震災後の工事入札においては,地方を拠点とする企業の施工能力をxxxに超える工事が発注されたこと,資機材や技術者に係る金額の高騰による採算性の悪化等により,入札不調が多数発生した.表-10 に東日本大震災後の入札不調の状況について,会計検査院が発表した調査結果を示す.
これらの状況に合わせて,各事業主体は入札契約制度を一部見直し対応している.
(2) 東日本大震災後における国交省地方整備局の対応
国交省としては,表-11 のような対応をしている.応急復旧工事については随意契約,速やかに行うべき本復旧については指名競争入札,その後一般競争入札に戻す
(出典:国交省「災害復旧における入札契約方式の適用ガイドライン」22))
図-2 事業推進PPP の実施体制
(出典:xxら「事業推進PPP の導入効果について」23))
といった対応によりタイムリーに工事を発注している.また,その他の対応としては,地域企業の参加可能枠の拡大,復興 JV の活用,実態を踏まえた積算の導入等の地域企業の受注環境の改善と受注者の確保が図られている.また,地域要件の緩和についても,入札不調が予測される場合は実施している 21).
三陸沿岸道路を中心とする復興道路・復興支援道路に おいては事業推進 PPP が実施されている.事業推進 PPP は官民の技術者が連携し多様な知識・経験を融合させる ことにより,調査及び設計のxx段階から効率的に事業 をマネジメントする手法であり,CM 方式の一つである. 13 事業約183kmの区間23)で実施され,これにより膨大な 事業量をスピーディーに実施することが可能となった. 図-2 に事業推進PPP の実施体制を示す.
(3) 東日本大震災後における県の対応(xx県)
xx県では東日本大震災後,平成 23 年 6 月 24)と平成
24 年4 月25)において入札契約制度に特例措置を設けている.対応は大きく以下の4 種類に分けられる.
第一に,発注作業の迅速化ということで,随意契約・
指名競争入札の活用および,特別簡易型の総合評価方式の導入などが挙げられる.
第二に,受注環境の改善ということで,実態を踏まえ た積算の導入,配置技術者の要件緩和などが挙げられる.
第三は,発注工事の大ロット化で,大ロット化するこ とで,発注に係る事務手続きを少なくすることができる.ただし,発注ロットの大きい工事は受注できる業者が限 定されてしまうので,県内業者のみもしくは県内業者+ 県外業者からなる復興 JV 制度の創設や,工事等級にお ける入札への参加可能額の拡大等が行われている.
第四は,地域要件の緩和であり,入札参加者の募集範囲を増やすことで,入札参加者を確保するものである.また,平成 30 年度からはxx県においても CM 方式 が活用されており,港湾施設整備事業,河川災害復旧事業,道路災害復旧・復興道路事業,橋梁災害普及事業等の 15 事業 14)においてピュア型の CM 方式が活用されている.図-3 に,xx県におけるCM方式の実施体制を示す.発注者が各専門業者と直接契約を結び,CMRは中立xx性を保ちつつ,発注者の立場で事業マネジメントを行う.この際,事業に対するリスクは発注者が負う.ただし,CM 方式の導入段階としては施工段階からが主
工事を発注しているかを確認する.ここでは,東日本大震災(xx県)に加え,熊本地震,広島県の豪雨災害についても確認する.
得られたデータの関係上,xx県については入札方式の区分の推移および一般競争入札による発注工事の受注業者(県内・県外)による区分の推移を示す.熊本県,広島県についてはすべての発注工事の受注業者(県内・県外)による区分の推移を示す.
図-4 よりxx県においては,災害発生から平成 26 年度までは工事金額が増加しているのに対して,工事件数はほぼ増加していない.これは,発注単位を大ロット化
(全工事) 工事件数の推移(件)
1,232
309
279
402
231 215
367 264 341
167 149 144
312
67
286 333
22 20
1,063
992 998 951 976 958
1,125 1,074
1,003
3,000
2,500
2,000
1,500
1,000
500
0
H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30
一般競争 指名競争 随契
(全工事) 合計落札金額の推移(百万円)
流であり,調査計画,設計については,主に発注者によ
り実施された.27)
(4) 地元の施工能力を超える復興事業の発生状況
次に,大規模災害の発生時に,どの程度域外の業者に
表-12 東日本大震災後のxx県による特例措置
目的 | 手段(一部) |
発注者が工事の発注を迅速にできるように | 随意契約・指名競争入札の活用 |
総合評価方式(特別簡易型)の導入 | |
建設会社が工事を受注しやすいように (受注環境の改善) | 実態を踏まえた積算の導入 |
前払い金の引き上げ | |
現場代理人の常駐緩和 | |
xx技術者の専任要件の緩和 | |
発注工事の大ロット化 | 復興JVの活用 |
地域企業の参加可能額の拡大 | |
入札参加者の募集範囲を増やす | |
地域要件の緩和 |
400,000
350,000
300,000
250,000
200,000
150,000
100,000
50,000
0
123
224
194
137
294
284
216
209
216
940
901
880
698 714
735
767
866
742
1,200
1,000
800
600
400
7,374
5,984
6,894
7,458
12,285
4,895
6,915
356,402
40,856 11,315
6,611
9,993
244,167
490
48,136
169,211
204,155177,731150,678
96,448
130,945
H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30
一般競争 指名競争 随契
(一般競争入札) 工事件数の推移(件)
200
0
H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30
県内業者 県外業者
図-3 xx県のCM 方式の実施体制
(出典:xx県土木部「CM業務活用ガイドライン(案)」26))
400,000
350,000
300,000
250,000
200,000
150,000
100,000
50,000
0
(一般競争入札) 合計落札金額の推移(百万円)
77,992 197,742
73,990
66,240
41,838
38,461 19,175
40,218
8,487
39,649 56,230
102,971
166,175158,660130,165135,893112,217111,770
H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30
県内業者 県外業者
図-4 xx県における工事発注実績28)
3,500
3,000
2,500
2,000
1,500
1,000
500
0
120,000
100,000
80,000
60,000
40,000
20,000
0
106
73
92
88
85
79
62
57
56
2,050
1,698
1,436
1,374 1,350
1,241
1,080
1,214
1,082
2,500
2,000
1,500
(全工事) 工事件数の推移(件)
43
78 70
44
54
52
46
40
62
2,839
2,622
3,162 2,854
2,923
2,543
2,448
2,379 2,333
H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30
県内業者 県外業者
(全工事) 合計落札金額の推移(百万円)
4,296
6,303
2,664
5,595
3,938
7,803
3,520
3,350
4,401
101,794
65,570
76,652
82,307
51,531 58,125
73,955 67,188
53,841
H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30
県内業者 県外業者
※熊本県庁より受領したデータを基に作成
図-5 熊本県における工事発注実績
(全工事) 工事件数の推移(件)
しているためである.また,合計落札金額が 1500 億円あたりを超えると,県内業者では対応できず,県外業者の受注額が増加していることが分かった.
一方,熊本県および広島県においては,図-5,図-6より災害後に大きく県外業者の受注が増えるといったことはなかった.広島県では,一部県外業者の受注額が増える年度があるが,これは,比較的大規模なトンネル工事等の専門性の高い工事が県外業者に発注されているためであり,災害とは大きく関係がないものである.
表-13 より,熊本県や広島県の災害の県内被害の規模は東日本大震災に比べて,半分以下であり概ね地元業者で対応が可能であったと考えられる.
(5) 災害時の各事業主体の対応のまとめ
国交省や県は,東日本大震災後に入札契約制度の特例を設けることで,入札不調を防ぎ,復旧・復興に関わる工事の受注者を確保していることが分かった.
これに対して,市町村は復興まちづくり事業の事業主体であり,これまで 1 年当たりに発注してきた工事費の数十倍の復興工事を発注しなければならなかった.事務能力・技術能力をxxxに超える復興事業に対し,事業の適切な計画・設計・発注も困難な状況であった.そこで,復興 CM 方式が導入されることとなった.
1,000
500
0
H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30
4. 東日本大震災の復興CM方式における関係組織の役割と問題点
県内業者 県外業者
100,000
80,000
60,000
40,000
20,000
0
(全工事) 合計落札金額の推移(百万円)
19,026
8,073 8,411
8,380 5,126
10,548
16,388 7,274
3,153
68,401
47,220 44,066
48,415 54,544
36,581
35,481 40,366 37,431
H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30
県内業者 県外業者
※広島県庁より受領したデータを基に作成
図-6 広島県における工事発注実績
表-13 各大規模災害の被害規模
(1) 復興CM方式の概要
CM 方式とは,米国で多く用いられている建設生産・管理システムの一つであり,発注者の利益を確保するため,発注者の下で CMR が,設計・発注・施工の各段階において,設計の検討や,工程管理,品質管理,コスト管理などの各種のマネジメント業務の全部または一部を行うものである 29)が,復興 CM 方式は東日本大震災の復興事業における様々な課題を解決するために,UR が中心となり制度設計したものであり,図-7 および表-14 のように,12 市19 地区で導入されている.
前述の通り,市町村においては,圧倒的にマンパワーや経験が不足しており,それを補うためにニュータウン
①xx県 | 平成23年3月 | 地震 | 主に沿岸地域 | 被害概要(県内のみ) 死者10565名,行方不明1221名, 家屋全壊83004戸,半壊155130戸, 一部破損224202戸 ※1 | 被害額(県内のみ) 9兆円 ※3 |
②熊本県 | 平成28年4月 | 地震 | 益城町,南阿蘇村,xx村,熊本市,嘉島町 | 死者270名,家屋全壊8657戸, 半壊34491戸,一部破損155095戸他 ※1 | 3兆7850億円 ※4 |
③広島県 | 平成26年8月 | 豪雨 | 広島市,安芸xx市,三次市,xx市 | 死者77名(災害関連死3名含む),家屋全壊133戸,半壊122戸, 一部損壊175戸他 ※2 | 444億円 ※5 |
平成30年7月 | 豪雨 | 広島市,呉市,xx市, 東広島市,熊野町,坂町他 | 死者108名,行方不明者6名, 家屋全壊1029戸,半壊2888戸,一部損壊1898戸他 ※2 | 3447億円 ※5 |
県 発生年月 要因
主な被災地
事業等のまちづくり事業の経験が豊富な UR に事業委託をする必要があった.さらに UR 自身も膨大な復興事業のすべての発注者業務に対応し得るほど人材が十分ではなかったため,アットリスク型の CM 方式で大手ゼネコンとコンサルを含む CMR に工事及び工事に関連する調
※1:内閣府防災情報のページより
※2:広島県庁HPより
※3:xx県庁HPより
※4:熊本県庁HPより
※5:国交省HPより
査設計及びマネジメント業務を一括して発注することとなった.
図-7 復興CM 方式の導入位置図
(出典:UR都市機構「復興CM方式の効果分析報告書」15))
表-14 復興CM 方式の導入地区一覧
市町村 | 地区名 | CMR | 面積 (ha) | 契約済額 (億円) | 契約日 |
宮古市 | 田老地区 | 鹿島・大日本コンサルタント | 00 | 00 | 00.00.00 |
xx町 | xx地区 | xx・xx・xx総合・ウエスコ | 00 | 00 | 00.00.00 |
xx町 | xx・xx地区 | xx・戸田・飛島・ 建設技術研究所・復建技術 | 00 | 000 | 00.00.00 |
大槌町 | xx地区 | xx・日本国土・日特・パスコ・応用地質 | 00 | 000 | 00.00.00 |
釜石市 | xx・鵜住居地区 | xx・xx・東洋・ 復建エンジニアリンク・中部復建 | 00 | 000 | 00.00.00 |
大船渡市 | 駅周辺地区 | 東急・東洋・xx・日本測地・ CPC | 00 | 000 | 00.00.00 |
陸前xx市 | xx・xx地区 | xx・xx・xxxxxx・ オリエンタルコンサルタンツ・国際航業 | 299 | 1,000 | 00.00.00 |
気仙沼市 | 南気仙沼・鹿折地区 | 清水・xx・xx・パスコ・アジア航測 | 00 | 000 | 00.00.00 |
南三陸町 | 志津川地区 | 飛島・大豊・ 三井共同建設コンサルタント | 109 | 302 | 25.07.24 |
女川町 | 中心部・離半島部地区 | 鹿島・オオバ | 276 | 1,000 | 00.00.00 |
xx市 | 新xx地区 | xx工務店・xx土木・xxxエンジニアリング | 00 | 00 | 00.00.00 |
東xx市 | 野蒜北部丘陵地区 | xx・フジタ・xx・国際開発・エイト日技 | 00 | 000 | 00.00.00 |
いわき市 | 薄磯・xx地区 | xxハザマ・五洋・西武・xx総合・基礎地盤 | 00 | 000 | 00.00.00 |
(平29. 3時点)
(出典:UR都市機構「復興CM方式の効果分析報告書」15)より作成)
また,早急な復興への要望や資機材,技術者の不足へ対応するために,大手ゼネコンを含む CMR へ大ロットで設計施工一括方式により発注された.また,設計が完了したところから,工事に取り掛かるファストトラックが採用された.
CM 契約を行うときは,一部の早期整備エリアを除い
図-8 復興CM 方式の制度設計
図-9 復興CM 方式の関係組織の役割
て,工事の仕様や数量も十分には決まっていない状態で あった.また,材料費の高騰等の恐れもあったため,受 注者にとってリスクが非常に高い状態であった.これに 対応するために,実際にかかった原価にフィーを加えて 対価が支払われるコストプラスフィー契約により契約が 行われ,原価を正確に把握するために,CMR のすべて の支払記録を開示するオープンブック方式が採用された.コストプラスイー契約は,CMR のコスト縮減の意識が 働きにくいため,VE 提案が認められれば,コスト縮減 額の 1/2 をインセンティブとして受け取ることができる 制度も取り入れられた.
なお,専門業者としては地元企業優先で採用するルー ルが設けられており,地域経済への配慮もなされている.
図-8 に復興事業における課題と,復興CM方式の各制度(パーツ)の関係性について示す.
(2) 復興CM方式の関係組織の役割
図-9 に復興 CM 方式の関係組織の役割を示す.
あくまで,事業主体は市町村であり,復興計画の策定や,最終的な地権者との合意形成,復興庁への事業計画の説明(交付金の申請)は市町村が行う.
UR は事業全体の管理を行い,換地・補償計画,基本設計,CMR の管理,市町村業務の補助等を行う.
CMR は通常の元請け業務に加えて,工事全体のマネジメントを行う.調査測量・設計・施工を専門業者に発
注し管理するだけでなく,計画の修正・改善提案を行う.なお,CMR にコンサル,調査会社が入っていること
が多いが,CMR 自身は調査・設計の管理のみしか行うことはできないため,施行だけでなく調査・設計も専門業者に発注する必要があることに,注意が必要である.
(3) 復興CM方式の具体例(東xx市,南三陸町)
ここでは,復興 CM 方式の具体例を紹介する.復興 CM 方式全体を通して言えることとしては,発注者側の マンパワーや資機材,技術者が不足している状況下でも,一般的な工事契約方式と比べて,工程を大幅に短縮でき たということである.資機材や技術者の早期確保により,工程遅延を最小限にして,ファストトラックにより工事 への着工を可能な限り早くする.また,工程に最もイン パクトの大きい運土に関しては,運搬土量を最小限にで きる設計にしたり,取り組むエリアの優先順位をつけた りして,CMR が工事全体をマネジメントし最適化を図 っている.
1) 東xx市野蒜地区の事例(図-10)
東xx市野蒜地区の事業は,高台を切土により切り開き新たな市街地および宅地等を造成する事業であり, CMR の業務内容としては,他に道路(市道)の整備,鉄道用地整備,公園整備,上下水道・雨水排水整備等が含まれる.
JR xx線の移設が工程的に最優先であり,鉄道用地 の造成を最優先して事業全体が進められた.また,設計 施工一括方式による大ロットの発注であることを生かし,切土量や土砂の搬出が最小限になるような道路の線形, 造成計画高を設計するとともに,大型重機の使用やベル トコンベアによる土砂運搬等を行い工程を短縮した.
図-10 東xx市野蒜地区の事業概要図
(出典:東日本復興CM方式の検証と今後の活用に向けた研究会
「UR都市機構の復興市街地整備事業支援地区概要」30)より作成)
2) 南三陸町志津川地区(図-11)
南三陸町志津川地区の事業は,切土によって高台に宅地を造成し,発生した土を非居住地区となる低地部のかさ上げ(10m 程度)に用いるといったものである.
事業の特徴としては,①地域の主要幹線である国道 45 号線は切り回し道路を常に確保する必要があったこと,②隣接する事業が,国道・県道・県河川・県防潮堤・各種インフラ事業などと大変多かったということなどが挙げられる.関係組織は 16 組織以上にのぼり,多数の関係者との面的な調整が非常に重要となった.これに対して,町,UR,CMR は連携して,各事業間の調整を主体的に行い,事業の円滑化と手戻りの防止を図っている.
また,いち早く住民が志津川地区に戻って来ることができる環境を整えるため,町からの要望をもとに,メリハリを持った工程をたてて工事を進めた.高台における宅地造成や,町の基幹産業である観光交流と水産加工等の施設の土地造成を最優先して工事を進め,他事業との調整の中で土砂の仮置き(+2 次運搬)をしない当初の計画の修正を行ったり,造成した土地の引き渡しを要望に合わせて時には月単位で細かく行ったりと,臨機応変な対応を行っている.
(4) 復興CM方式の問題点
復興 CM 方式は概ね完了し,大規模災害からの復興という難しい状況であるにもかかわらず,UR による過去のニュータウン事業と比べて,平均して 4 割程度以上の工程短縮が可能であったと発表されている 31).
しかし,細部で問題点や,CMR から不満が発生している部分が存在する.ヒアリングを通して,明らかになった復興 CM 方式の問題点を,以下に5 点挙げる.
なお,xxxxxはゼネコンから 5 名,UR から 1 名の計6 名の復興 CM 方式関係者に対して実施した.
図-11 南三陸町志津川地区の事業概要図
(出典:東日本復興CM方式の検証と今後の活用に向けた研究会
「UR都市機構の復興市街地整備事業支援地区概要」30)より作成)
①フィー率の設定について
復興CM方式のフィー率は10%を目安とされており,技術提案による優先交渉権を得たのちに,URとCMRの交渉によりフィー率を決定することとなっているが,どの地区も最終的に 10%前後に落ち着いている.10%は UR の積算基準の一般管理費をもとに決定した数字であるが,復興工事が最盛期を迎え,東京五輪が決定した後の,ゼネコンの利益率と比べると 10%は大変低いものとなってしまっている.東日本大震災直後のゼネコンの利益率と,現在の利益率では大きな開きがあるため, CMR からフィー率が低いという不満が上がる事態となってしまった.ただし,今回は UR も CMR も手探り状態でスタートしたため,先が見通せなかった部分はあるのは確かである.また,最初一律だったフィー率を CM業務・施工と設計業務それぞれで分けてフィー率を再設定するなどの制度改善はCMRからの要望に合わせてURにより行われているのも事実である.
今後は長期的な事業であることを考慮し,建設需要をある程度見越してフィー率交渉を行う必要がある.ただし,ローリスクである分ローリターンな契約方式であることはお互い十分理解しておく必要がある.
②VE 提案の認定について
今回,VE 提案として受け入れられたのが,非常に少ない CMR が多く存在している.早期整備エリアについては,基本設計がある程度終了した段階で発注されているが,次期整備エリアについては CMR が基本設計(もしくは基本設計の修正)から詳細設計まで実施していることが多い.以下の2つの理由で,特に大部分を占める次期整備エリアにおいて,VE 提案が認められにくい状況が発生してしまっている.
1 つ目は,早急な復興が求められていたため,スピード重視で事業が進められたが,基本設計と詳細設計を区別なく(基本設計を行うことなく詳細設計を)実施せざるを得ない地区も存在したということである.基本設計が完了していない状態では,VE 提案による減額幅が計算できないため,VE 提案は認められない.
2 つ目は,CMR が基本設計と詳細設計の両方を行うため,基本設計の段階で CMR が持つノウハウやアイデアが盛り込まれ,詳細設計の段階ではさらなるコスト縮減は難しい状態になっているということである.時間的,マンパワー的に余裕があれば標準的な設計がどのようなものかを考えて,VE 提案として受け入れるべきかどうかを考えることができるが,これを考える工程的な余裕はなく,URとしてもVE提案を受け入れるのが難しい.
③CMR の人材不足について
東日本大震災の復興事業においては,前述の通り様々
なリスクが大きいため,受注者としては被災地の復興に貢献したいという思いがあっても,コストプラスフィー
+オープンブック方式でなければ安心して受注することはできなかったといえる.しかし,他事業者から発注される工事も膨大な量があるため,発注者側だけでなく,受注者側もマンパワーは不足していたといえる.このような状況の中で,今回のオープンブック方式は事務作業が非常に多く発生する方式であり,CMR にとって大きな負担となり,さらに多大なお金や時間もかかってしまっている.今回の経験をもとに,すべての経費を積み上げでるのではなく部分的に%でカウントするなど,できるだけ事務作業量を減らす取り組みが必要であると考えられる.
④市町村の対応について
UR への事業委託によって,市町村は意思決定や復興庁への事業説明,もしくは他の直轄事業に集中して取り組むことができたといえる.ただし,土地の引き渡しが当初示した工程より遅れてしまっている場合などは,市町村として個別の要望を受け入れがちであることが十分に想像できるが,ある一か所の土地の引き渡しの工程が早まるだけでも,場所によっては全体の計画が大きく崩れ,工程が大きく遅延する危険性が存在する.また,個別の要望により,時には毎月のように土地の引き渡しを行う必要が生じ,竣工検査を何度も実施しなければならず,CMR の負担が増加することとなってしまう.そのため,UR・CMR と市町村が必ず交渉してから個別の要望を受け入れるかを決定するなどといったルール作りが必要であると考えられる.
⑤UR の人員数の制限
東日本大震災の復興事業においては,最大で約 450 人 の UR 職員が派遣されているが,ニュータウン事業の収 束により,大規模宅地造成を経験している UR 職員が減 少している.今後,数十年後に南海トラフ巨大地震など の,大規模災害が起こっても,東日本大震災と同等の規 模で,UR 職員を派遣することができない可能性が高い.
東日本大震災では,大槌町とxx市の比較的小さな事業で,事業管理を UR が行うのでなく,建設コンサルタントが行う大槌町方式の CM 契約が試行的に実施されているが(図-12),今後はこの方式のような,より少な
図-12 大槌町方式のCM 契約
い UR 職員で事業を遂行できる方法を模索する必要があるといえる.
また,オープンブック方式の膨大な事務作業については CMR だけでなく UR についても,復興時の業務量が多い状況においては特に大きな負担となるため,軽減することが必要である.
5. 結論
(1) まとめ
本研究におけるまとめは以下の通りである.
① 地域要件による制限により,通常時に大手ゼネコンは三大都市圏を除く地方公共団体において,受注できる工事は非常に少なく,受注できるのはトンネルや橋梁などの専門性の高い工事のみである.
② 東日本大震災の規模の災害における復興時には,入札参加要件の緩和により,地方公共団体から域外業者への工事発注も増加した.
③ 熊本地震や広島県の豪雨災害においては,大きく県外業者への工事発注は増加しなかった.これには,災害の規模が影響していると考えられる.
④ 復興 CM 方式により,東日本大震災の復興事業にお ける発注者のマンパワー不足を中心とした様々な課 題を解決し,大規模な工程短縮を図ることができた.
⑤ フィー率の設定,VE 提案の認定,事務作業量の多さ,市町村の対応等,復興 CM 方式の部分的な課題は存 在する.
⑥ 今後大規模災害が起こると,URの人員不足により,東日本大震災時と同等の規模では復興 CM 方式を適応できない可能性があるため,大槌町方式の CM 方式の本格導入を検討する必要がある.
(2) 南海トラフ巨大地震を想定して
市町村の技術者不足を考えると CM 方式の適用は必要となるが,東日本大震災の復興 CM 方式における UR の働きを補うことのできる人材が不足することが懸念される.
理想としては,コンサル業界の拡大や大手ゼネコンが建設マネジメントを専門とする別会社を設立する等により,大槌町方式での管理 CMR として活躍できる組織を作ることが必要であるが,このような対応には時間がかかることに加え,大規模災害時だけのために,上記対応を行うということには無理があるといえる.
直近の対応としては,災害時に実施する CM 方式において,多くの優秀な技術者をもつ地方整備局の技術者を中心とした管理CMRに,UR職員,大手ゼネコンや建設コンサルの技術者,他の地方公共団体からの応援土木職
員等が参加し事業全体のマネジメントを行うという対応が考えられる.このような枠組みを事前検討すべきであるといえる.
長期的には,東日本大震災の復興事業において一定の成功を収めた CM 方式を通常の工事に対しても適用していくべきであると考える.特に発注者の調査・計画・設計等のxx業務を代理で行うことのできる,管理 CMRの役割を担う組織を少しずつでも育成し,将来の地方公共団体の土木技術者の減少および南海トラフ巨大地震等の大規模災害に備えるべきである.
謝辞:本研究はxxが政策研究大学院大学に在籍中の研究成果の一部をまとめたものである.本研究を進めるにあたって,多くの皆様にご指導およびご協力いただきましたことに心より感謝申し上げます.ここに示して,感謝の意を表します.
参考文献
1) 一般社団法人 日本建設業連合会:建設業ハンドブック2019,2019. 9.
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4) xxxx :入札の実施状況に基づく入札・契約制 度の現状と課題,土木学会論文集,No. 749/VI-61, pp.87-98,2003.
5) xxxxx,xxx,xx xx:公開入札情報を用いた総合評価方式の実態分析,建設マネジメント研究論文集,Vol.15,pp.273-280,2008.
6) xxxx:入札契約方式の多様化と解決すべき課題に関する研究,建設マネジメント研究論文集, Vol.13,pp.189-200,2006.
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10) xxxx,xxxx,xxxx,xxx:東日本大 震災の漁港災害復旧工事受発注における対応と課題,土木学会論文集 B3(海洋開発),Vol.72,No.2, pp.I_515-I_520,2016.
11) xxx,xxxx,xxxx,xxxx,xxxx:CM方式等による発注者支援方策の導入効果の
計測・評価手法の一提案,土木学会論文集 F4(建設マネジメント),Vol.67,No.4,pp.I_191-I_202,2011.
12) xxx,xxxx,xxxx,xxxx,xxxx:発注者支援型 CM 方式における CMR 等の役割について,土木学会論文集 F4(建設マネジメント),Vol.67,No.4,pp.I_203-I_212,2011.
13) xxx,xxxx:CM 業務の価値向上と計量化手法に関する基礎的調査,第 35 回建設マネジメント問題に関する研究発表・討論会講演集,pp.37-40, 2017.12
14) xxxx,xxx:東日本大震災復興事業における CM 方式導入事例に基づく CM タイプ選定と実施体制の検討,第 37 回建設マネジメント問題に関する研究発表・討論会講演集,pp.83-97,2019.12
15) UR 都市機構:復興 CM 方式の効果分析報告書,
2018.10.
16) 国土交通省:平成 31,32 年度 等級区分がある工種の発注標準等,2020.2.16 閲覧. xxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxxxx/000000000.xxx
17) 国土交通省東北地方整備局:平成 31・32 年度 工事種別及び等級区分等一覧表,2020.2.16 閲覧. xxxx://xxx.xxx.xxxx.xx.xx/xxxxxxxxx/xxxxxxx/xxxxx00-00.xxx
18) xx県:xx県建設工事に係る競争入札の参加登録等に関する規程,2016.9.16.
19) 仙台市:工事請負契約に係る競争入札実施要綱,
2017.4.
20) 仙台市: 仙台市競争入札参加資格登録要綱,2019.4.
21) 会計検査院:東日本大震災からの復旧・復興事業に
おける入札不調について,2013.7. xxxx://xxxxxx.xxxxxxx.xx.xx/xxx/x00/0000-x00-0000-0.xxx
22) 国土交通省:災害復旧における入札契約方式の適用ガイドライン,2017.7.
23) xxxx,xxxx,xxxx,xxxx:事業推 進 PPP の導入効果について,建設マネジメント技術, 2015 年7 月号,pp.45-55,2015.7.
24) xx県:東日本大震災に伴うxx県発注工事等の特例措置について,2011.6.1.
25) xx県:東日本大震災に伴う県発注工事の追加特例措置等について,2012.4.1.
26) xx県土木部:CM業務活用ガイドライン(案),
2018.5.
27) xx県:平成 30 年度建設関連業務(CM業務)発注予定一覧(平成 30 年6 月時点),2018.6.7.
28) xx県:平成 30 年度 建設工事等の入札結果について,2019.7.
29) 国土交通省:CM 方式活用ガイドライン-日本型C M方式の導入に向けて-,2002.2.6. xxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxxxxxxxxxxx/xxxxx/0_0_xx_000000.xxxx
30) 東日本復興 CM 方式の検証と今後の活用に向けた研究会:第2回資料2-2 UR 都市機構の復興市街地整備事業支援地区概要,2016.11.11
31) 日刊建設工業新聞:都市機構/復興CM方式の効果分析報告書公表/平均4割の工期短縮効果, 2018.10.11.
(2020. ?. ? 受付)
ROLES OF MAJOR GENERAL CONTRACTORS DURING NORMAL AND DISASTER TIMES FROM THE VIEW POINT OF BIDDING CONTRACT SYSTEM
FOR CIVIL WORK PROJECT IN LOCAL GOVERNMENT
Xxxx XXXXXX, Xxxxxx XXXXXXX, Xxxxxxx XXXXX
In the construction works of local governments, bidding participation of major general contractors is restricted by bidding participation requirements. However, the situation changed in reconstruction works after the Great East Japan Earthquake, and major general contractors could participate in biddings. The purposes of this study are to confirm the past works of major general contractors during normal and disaster situations and to consider future vision of major general contractors. For this purpose, the bidding contract system and ordering results for public works were investegated. As a result, the following three points were shown: (1) restrictions on entry of major general contractors into local construction during normal times,
(2) relaxation of restrictions on bidding participation after large-scale disasters, and (3) usefulness and problems of the reconstruction CM method after the Great East Japan Earthquake. While civil engineers at local governments are decreasing, it is necessary to use the CM method in the future larger scale disaster, but there will be insufficient human resources to manage whole of each reconstruction project. Therefore, it is important to introduce the CM method even in normal times to create an organization that can manage the construction works, and also to consider the cooperation system in the larger scale disaster.