土木技術者(Civil Engineer)とは
2022年 土木学会 契約管理技術セミナー
倫理・社会規範委員会 建設マネジメント委員会
建設契約に関する基礎知識
-なぜ、土木技術者に契約管理に関する知識が必要なのか-
第1回
2022.08.23.
x x x x
高知工科大学 名誉教授. 東京都市大学
2022/8/23
Shunji Kusayanagi
客員教授
11
1
1.建設技術者の使命を考える
土木学会 定款 目的及び事業
学会は、土木工学の進歩及び土木事業の発達並びに土木技術者の資質の向上を図り、もって 学術文化の進展と社会の発展に寄与することを目的とする。
土木学会 倫理綱領
土木技術者は、(・・・中略・・・)、国民および国家の安寧と繁栄、人類の福利とその持続的発展に、xxをもって貢献する。
土木技術者の使命は
国民および国の安全、安泰、社会の持続的発展に貢献することということになる。
社会の実態を知らなければ使命は果たせない。
2022/8/23 Shunji Kusayanagi 2
2
土木技術者(Civil Engineer)とは
“私は科学者なので,技術の問題は全く分りません”と社会科学者が言っても,だれも不思議には思わない。
しかし, “私は技術者なので,社会の問題は分りません”と土木技術者は言うことは出来ない。
社会の実態を知らなければCivil Engineerといえない。
(世界共通のCivil Engineerの概念)
土木技術者が使命を果たすために再考すべきこと
1)持続的社会に適合する社会基盤(Infrastructure)の概念
2)社会貢献を行う土木工学の概念
3)国民に信頼される透明性の高い社会基盤整備遂行スキーム
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Shunji Kusayanagi
3
3
1)社会基盤(Infrastructure)の概念
The new concept of infrastructure
土木技術者の活動範囲
Civil Engineering Field
社会活動
社会
Society
Social Activities政治 Politics
経済
Economy
生活
Living Life
文化
Culture
自然
Natural
人工的社会基盤
Artificial Infra.
制度インフラ
Soft Infra.
社会活動支援基盤
Social Supporting Base
施設インフラ
Hard Infra.
非人工的社会基盤
Non-artificial Infra.
自然インフラ
Natural Infra.
環境保全の考え方➡非人工的社会基盤(Non-artificial Infra.)
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4
Shunji Kusayanagi 4
4
今後の社会基盤整備事業への取り組み
建設に携わる者が持つべき活動理念
制度インフラ
Soft Infra.
社会基盤システム
Fundamental Social System
持続的社会に適合した社会基盤整備は、この3つの基盤フィ
2022/8/23
ールドを連動してSh考unjiえKusるxxxxこagiと不可欠となる
5
学
5
2)社会貢献を行う土木工学の概念
What is the real shape of Civil Engineering?
水理
地盤工学
環境工学
防災工学
建設工学は社会
科学から養分を得て生きている
鋼構造工学 建築意匠設計 土質工学
コンクリート工学
河川・海浜工学 交通工学
測量学
土木技術者としての知識・能力とは
(品質・コスト・時間)+(契約管理)
建設マネジメント
工学と社会科学の両方の知識・能力もつこと
政治学
経済学
社会学 法令法規
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芸術
社S会hun科ji Xxusayanagi
歴史・文化
66
6
3)社会基盤整備遂行スキーム
社会基盤整備は、発注者が“製品”の企画、性能、仕様決定し、建設コンサルタントが設計し、企業がその方針に従って製品
製造を担っている構造。
発注者、建設コンサルタント、建設企業が、それぞれのリスクを担い、協力し、一体となって生産機能を果たす産業構造
この構造は、世界中どの国でも同じ
他の産業には見られない生産構造
生産に携わる三者が、xxに、透明性を保持し、それぞれの機能を果たすためには“ルール”が必要となる。
標準契約約款はプロジェクト遂行のルールブック
2022/8/23 Shunji Kusayanagi 7
7
7
建設プロジェクトの遂行前提を考える
建設プロジェクトとは、発注者と受注者が互いにその機能を連結し、補完し合って成り立つもの。
諸外国の公共プロジェクト遂行システム前提
受発注者が、第三者を介在させ、契約条件に基づきプロジェクトを遂行し、透明性を確保する方法をとっている。
契約に基づくプロジェクト遂行は、建設産業の透明性確保の基本策日本の公共プロジェクトの遂行前提
発注者は決して間違いを犯さず、受注者をよく監視し、
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社会基盤整備を進めてい
Shunji Kusayanagi
きます。
8
発注者と請負者は互いに協力して国民の生活を守り、向上させる社会基盤整備を進めていきます。
8
2025年に向けてた英国政府の建設産業政策
Our vision for 2025
Working together, industry and Government have developed a clear and defined set of aspirations for UK construction.
産業と政府は共に働き、英国の建設のための明確なそして確かな2達022/8成/23 目標を築き上げる。
Sh
Kusayanagi 9
unji
(兆円) 2.日本の発展を支えてきた建設産業 (ドル/人)
140.0
低所
得国
低中
所得国
xx所得国
高所得国
社会保障給付金
120.0
GDP/Capita
100.0
80.0
60.0
バブル崩壊
建設投資額(実質値)
第1次
オイルショック
建設冬の時代
40.0
9665ドル
20.0
3,125ドル
0.0
785ドル
50000
45000
40000
35000
30000
25000
20000
15000
10000
5000
0
2022/8/23 1$=360円 1$=300円
Shunji Kusay変ana動gi 相場制
10
9
1960
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1964
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1980
1982
1984
1986
1988
1990
1992
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1996
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2000
2002
2004
2006
2008
2010
2012
2014
2016
2018
2020
10
1990年以降の建設投資額の推移
建設投資額
90.0
80.0
70.0
60.0
今後の建設投資額(実質値)は40兆円程度予測
大震災による増加
50.0
40.0
30.0
20.0
10.0
0.0
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Shunji Kusayanagi
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1990
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1995
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2014
2015
2016
2017
2018
2019
2020
2021
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投資額から見た日本の建設産業
■ 2015年以降、2020年迄の5年間の建設投資額平均55兆円(政府投資約22兆)となり、GDP:国内総生産の約10%に相当。
■ アメリカ(人口2.5倍、国土25倍)の2020年度建設投資額は1兆
3600億ドル(150兆円相当.1ドル=110円)。 対GDP約7.7%
■ 中国(人口11倍、国土25倍)の2020年度の建設投資額は6兆
5,300 億元(110兆円相当)。 対GDP約9%
■ 欧州連合主要3ヵ国(人口2.1億、面積2.5倍)の合計建設投資額は日本の建設投資額の1.4倍程度。(2020年度比較)
ドイツ(35兆円、人口82百万)+イギリス(25兆円、人口65百万)
+フランス(30兆円、人口64百万) 。3国の対GDPは約6%前後。
日本の社会基盤整備が先進国パターンにあることを前提と考えれば、今後の建設投資はGDPの8%程度、40兆円程度となる。
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Shunji Kusayanagi
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資(実質値・兆円)
国内建設投
9665ドル
3,125ドル
785ドル
ブル崩壊
0.0
0.0
0.0 第
オイル
0.0
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(兆円)
発展途上国から先進国型建設投資へ
(ドル/人)
低所
90.0 得国
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低中
所得国
xx所得国
高所得国
GDP/Capita
7
バ
先進国型建設投資
6
5
1次
ショック
4
建設冬の時代
3
20.0
10.0
建設冬の時代は
途上国型建設投資から先進国型への移行期間
0.0
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40000
35000
30000
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5000
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Shunji Kusay変ana動gi 相場制
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2016
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2020
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3.建設産業の構造的変化
「協調の原理」から「競争の原理」へ
■ 2006年4月、日本土木工業協会(土工協)が「透明性のある入札・契約制度に向けて‐改革姿勢と提言‐」を発表。
■ 提言内容は談合離脱宣言であった。
■ この時より日本の建設産業は、産業理念を「協調の原理」から「競争の原理」へと移行させたといってよい。
■ 問題は、この提言の直後から、受注のための“ダンピング合戦”が始まったこと。
■ 対応策は「契約の重要性認識と管理能力の向上策」であった。
注:2011年に日本土木工業協会、日本建設業団体連合会、建築業協会の
3団体が合体し日本建設業連合会となった。
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Shunji Kusayanagi 14
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「競争の原理」の捉え方
■ 「競争の原理」とは、単に入札・契約等の調達プロセスにのみ適用される論理ではない。プロジェクトの入手から完成に至る全過程に及ぶもの。
■ 「競争の原理」とは“適正な利益を確保して生き抜く”こと。
■ 建設企業の純利益率は契約額の2~3%程度。利益確保は入札価格で決まるわけではない。(純利益率:証券会社25%前後
、大手金融業15%前後、製造業10%前後)
■ 建設事業は追加費用精算や工期延伸が適正に成されなければ容易に赤字に陥る。この技術がなければ生き抜けない。
■ 国際建設プロジェクトの「競争の原理」の実態は、追加費用精算や工期延伸への対応が主体。
■ 契約管理能力がなければ「競争の原理」に対応出来ない。
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Shunji Kusayanagi
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追加費用積算の単価の構成
(100)
(85)
低入札価格調査基準価格
物価版
価格での積算
予定価格
Profit(利益)
Home office OH
(本社経費)
Site office OH
(現場経費)
Labor Cost
(労務費)
物価版価格積算
Equip. Cost
(機械費)
従来の契約額
物価版価格積算
Material Cost
(材料費)
2022/8/23 物価版価格積算
Profit(利益)
Home office OH
(本社経費)
Site office OH
(現場経費)
Labor Cost
(労務費)
追加工事対応額
Equip. Cost
(機械費)
追加工事対応額
Material Cost
(材料費)
S追hun加ji K工us事aya対nag応i 費
現状の契約額
追加費用受領がなければ赤字
Profit (利益)
Home office OH
(本社経費)
Site office OH
(現場経費)
Labor Cost
(労務費)
Equip. Cost
(機械費)
Material Cost
(材料費)
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追加費用請求額
追加工事対応額
追加費用請求額
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品確法改定 2019年6月 第7条(発注者等の責務)
1.発注者は、基本理念にのっとり、現在及び将来の公共工事の品質が確保されるよう、公共工事の品質確保の担い手の中長期的な育成及び確保に配慮しつつ、公共工事等の仕様書及び設計書の作成、予定価格の作成、入札及び契約の方法の選択、契約の相手方の決定、工事等の監督及び検査並びに工事等の実施中及び完了時の施工状況又は調査等の状況(以下「施工状況等」という。)を、次に定めるところによる等適切に実施しなければならない。
1)公共工事等を施工する者が、公共工事の品質確保の担い手が中長期的に育成され及び確保されるための適正な利潤を確保することができるよう、適切に作成された仕様書及び設計書に基づき、経済社会情勢の変化を勘案し、市場における労務及び資材等の取引価格、健康保険法等の定めるところにより事業主が納付義務を負う保険料、公共工事等に従事する者の業務上の負傷等に対する補償に必要な金額を担保するための保険契約の保険料、工期等、公共工事等の実施の実態等
を的確に反映した積算を行うことにより、予定価格を適正に定めること。
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Shunji Kusayanagi
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17
品確法改定 2019年6月
6) 公共工事等に従事する者の労働時間その他の労働条件が適正に確保されるよう、公共工事等に従事する者の休日、工事等の実施に必要な準備期間、天候その他のやむを得ない事由により工事等の実施が困難であると見込まれる日数等を考慮し、適正な工期等を設定すること。
7) 設計図書(仕様書、設計書及び図面をいう。以下この号において同じ。
)に適切に施工条件又は調査等の実施の条件を明示するとともに、設 計図書に示された施工条件と実際の工事現場の状態が一致しない場合、設計図書に示されていない施工条件又は調査等の実施の条件について予期することができない特別な状態が生じた場合その他の場合において必要があると認められるときは、適切に設計図書の変更及びこれに伴い必要となる請負代金の額又は工期等の変更を行うこと。
この場合において、工期等が翌年度にわたることとなったときは、繰越明許費の活用その他の必要な措置を適切に講ずること。
公共工事標準請負契約約款請の第18条と同じ内容。
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品確法改定 2019年6月
8) 公共工事等の監督及び検査並びに施工状況等の確認及び評価に当たっては、情報通信技術の活用を図るとともに、必要に応じて、発注者及び受注者以外の者であって専門的な知識又は技術を有するものによる、工事等が適正に実施されているかどうかの確認の結果の活用を図るよう努めること。
改正品確法をどの様に解釈するか
■ 改定品確法の「発注者責任」は契約に則り、是是非非で追加費用や工期延伸を取り扱うと述べているもの。
■ 支払いは請求に基づき行うもの。本来、“受注者の請求” なしに、“発注者が支払い” を行うことはない。受注者が適正な請求技術を身に着けない限り、是是非非で追加費用や工期延伸を取り扱うシステムは確立されない。
■ 改定品確法に記された方針の実現には、発注者と受注者の双方の契20約22/8管/23 理に関する知識と技術向上が必須条件。
19
4.建設産業が進むべき道
■ 第2次世界大戦後、日本の建設産業は国家と一体になって “本当に国民が必要とするものを造って来た”。
■ “20世紀の奇跡”と言われた日本の産業発展の基盤整備を建設産業は迅速に、そして確実に行ってきた。
「先進諸国型建設投資」の形態に入って40年が経過し、
建設産業は新たな行動指針を求めれている。
「先進諸国型建設投資」の形態における最重要課題は、
国民(納税者)や資金提供者に対する説明責任
国民(納税者)や資金提供者へ説明責任を果たすには事業実行の基本ルール(標準契約約款)に従って仕事をすること
202こ2/8/れ23 が確立出来なけれSばhun、ji K国usay民anagのi
信頼は得れない
20
20
1)プロジェクトの遂行管理体制
日本 発注者と請負者による二者執行構造
受発注者の役割だけで、コンサルタントの役割に
ついては記述無し
②設計・役務契約
①建設契約
発注者
請負者
建設コンサルタント
xxx
監修・監理
発注者のお手伝い役
日本の建設事業遂行構造
■ 契約理念の代わりに受発注者間の「xxx」を働かす構造
■ 「xxx」は契約当事者間の信頼関係。
■ 契約202当2/8/2事3
者間の「xxx」はSh第unji 三Kus者ayanaにgi とってはブラックボック21ス
21
FIDIC契約約款Red Book(単価・数量精算契約)
基本構造は3者構造執行形態
コンサルタント
の機能は建設契約に明記
①建設契約
発注者
設計・役務契約
契約に基づく
工事遂行理念
(時間・コスト・品質)
受注者
監修・監理
コンサ
ルタント
(プロ集団)
契約紛争委員会(DAB; Dispute Adjudication Board)
契202約2/8/2管3
理能力の具備はプSロhunjジi Kuェsayクanagトi 遂行者の必須条件
22
②
22
「経過の管理」を基盤とした執行形態の出現
資金提供者・納税者との“契約”
◆発注者; 執行監督者から“調達者”へ。プロジェクトの経過観察、納税者への伝達
◆専門技術者集団
プロジェクトの過程管理・監督
プロジェクト
の経過管理
◆ 受注者;第三者の参画により、結果だけでなく、プロジェクトの経過をみせるが求められる
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23
23
2022年4月現在、「インフラシステム海外展開戦略 2025 」
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となり54回の会議が行われている。
Shunji Kusayanagi
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日本のインフラ輸出戦略
■ 3013年3月から首相官邸に「経協インフラ戦略会議」が設置されインフ輸出に関する方策検討が議論されている。
「経協インフラ戦略会議」の概要
■ 我が国企業によるインフラ・システムの海外展開や、エネル ギー・鉱物資源の海外権益確保を支援し、海外経済協力に関する重要事項を議論し、戦略的かつ効率的な実施を図る。
■ 会議の構成員。
■ 議長:内閣官房長官
■ 構成員:副総理兼財務大臣、総務大臣、外務大臣、経済産業大臣、国土交通大臣、経済再生担当大臣
■ 事務局:内閣官房
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建設冬の時
90.0
-国内建設投資額
80.0
-海外受注額
70.0
代
60.0
バブル経
済の海外資産精算
国内建設投資
の低迷対応策アフリカ・中東での受注
2.50
2.00
50.0
1.50
40.0
30.0
20.0
国内建設投資
の低迷対応策で海外事業へ
1.00
10.0
0.0
■ 産業発展には海外事業展開は必須。
■ 2019年に初めて2兆円を超えた。
■ 今後も増加していくのか。
0.50
0.00
兆円
日本の建設産業の内外事業量
兆円
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40年間経ても1.5兆円レベルまでしか成長していない
1960
1963
1966
1969
1972
1975
1978
1981
1984
1987
1990
1993
1996
1999
2002
2005
2008
2011
2014
2017
2020
25
スカンスカ:SKANSKA の海外事業量
(SEK billion. 1SEK = ¥12.24)
(スウェーデン)
兆円 SEK bn ■ 1990年代初頭の事業量は約3,500億、海外事業量は1000億円程度であった。2001年度は全事業量1.6兆円となった。
2.0 200.0
1.8 180.0
1.6 160.0
1.4 140.0
1.2 120.0
■ 国内0.4兆円
■ +海外1.4兆円。
Sweden USA Other markets
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
100.0
80.0
60.0
40.0
20.0
0.0
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26
26
2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
2,436 2,358 2,528 2,495 3,022 2,000 0000 0000 0000 1293 1389
18144 21222 22756 19978 26605 22739 29443 23995 23036 20257 23421
20580 23580 25284 22473 29627 25,000 00000 00000 00000 21550 24810
00000 00000 00000 20,554 27,109 23,082
1740 3,192 2,549 1,919 2518 2,286
20560 23509 25284 22473 29627 25,368
2017 2018 2019
884 1226 1357
29559 26875 30429
5,000
0,000
5,000
0,000
5,000
0,000
5,000
0
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1997
1999
2001
2003
2005
2007
2009
2011
2013
2015
2017
2019
億€
国内
工程管理 コスト管理
相互信頼でのマネジメント領域
労
相互不信頼が存在するマネジメント領域
ドイツ建設企業HOCHTIEFの国内外事業量
国内 海外
45,000
35,000
40,000
30,000
35,000
国内外比率
国内5%以下、海外95%
30,000
25,000
25,000 20,000
20,000
15,000
15,000
10,000
10,000
5,000
5,000
0
0
億円 EURO mil
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
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2012
2013
2014
2015
2016
2017
2018
2019
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国内工事と国際工事の相違
情報管理
務管理
契約を基盤して動くシステムが必要となる領域
サブコン管理
資機材調達
技術管理
在庫管理
相互信頼の領域は“相互不信頼の領域”を経過して形成される
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国際建設事業におけるリスク管理と契約管理
リスク
管理
契約
管理
建設プロジェクトの特徴は、リスク管理と
契約管理が相互補完関係にあること
日本のインフラ輸出にこの論理が組み込まれているか。
■ 国際事業では、契約条項は“ルールであり、共通言語” となる。
■ 建設産業の国際事業展開は契約管理能力向上が必須条件。
■ 国内建設産業を契約論理で動く環境にすることが必要。
2022/8/23
Shunji Kusayanagi
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29
2)入札・契約システムに関する問題
国際建設市場での建設契約の成立過程
入札の成立
発注者側のアイディア
入札者側のアイディア
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30 30
契約の成立
Shunji Kusayanagi
契約合意書の成立
(双方の意図が合致)
交渉の成立
入札者が示した “応札図書”
(入札者側の理解と意図を示したもの)
発注者が提示した “入札図書”
(発注者側の意図を示したもの)
30
国際建設プロジェクトの入札図書構成
■ Instruction to Tenderer(入札指示書)
■ Conditions of Contract (契約条件書)
■ Part I General Conditions
■ Part II Particular Conditions
■ Technical Specifications(技術仕様書)
■ Form of Tender, Appendix to Tender, Tender Security, List of Eligible Countries(関連様式)
■ Sample Form of Agreement(契約合意書サンプル)
■ Sample Form of Securities(保証書サンプル)
■ Schedules of Supplementary Information(補足情報)
■ Drawing(設計図面)
発注者が用意する図書は日本国内もほとんど同じ。
2022/8/23 Shunji Kusayanagi 31
31
31
これら20の22/8/図23 書は入札者によってShu作nji Xxusayさanaれgi 入札時に提出される。
入札者が補足情報図書として提出する書類
( Supplementary Information Documents)
■ 施工計画書
■ 工程表
■ 単価内訳書
■ 主要要員の略歴書
■ 組織図
■ 主要労働力の時系列投入予定量
■ 主要建設資材の時系列投入予定量
■ 建設機械のリスト
■ 提出図面(主に仮設工)のリスト
■ 保険・保証の調達先
3322
■ キャシュフロー
入札では、提出が義務付けられているこれらの図書の内容の
良否が評価され、 1つでも欠落(部分欠落も含む)
した場合、即、失格となる。
32
国際標準請負契約約款の基本精神
■ 入札時に施工計画書、代金内訳書、工程表の提出が義務付けられている。
■ 施工計画書、代金内訳書、工程表は準契約図書として契約構成図書となる。
■ 単価数量精算契約(Re-measurement Contract )が基本形であるため、“契約総額”は単価×工事数量の積であり、数量の変化に従い契約額は変化する。
■ “完成期日”は契約時の条件に従い決められたものであり、契約条件変化により完成期日も変化する。
■ 相手に見せる“過程の管理”は求められる構造。
2022/8/23
Shunji Kusayanagi
33
33
日本の公共工事契約の成立過程
発注者が提示した
“入札図書”
(発注者側の意図を示したもの)
入札の成立
入札者が示した
“総価の提示”
(入札者側の理解と意図を示した書類はなし)
交渉の成立
実態は発注
者側の意図に基づく契約
発注者の入札図書に従った契約
成約後に入札者側の意図を示した書類を提出する
入札者側の経験
値や技術が働き難い方式
総価主義・予定価格上限拘束制等が造りさしているシステム
2022/8/23 Shunji Kusayanagi 34
34
34
応札時
契約時
契約図書の実態
国際建設プロジェクト
■ 契約書+特記契約書
■ 契約図面+仕様書
■ 入札保証書
■ 入札額内訳書
■ 工程表
■ 入札条件書
■ 契約書+特記契約書
■ 契約図面+仕様書
■ 契約条件変更書
■ 入札額内訳書
■ 工程表+施工計画書
■ 各種保証書・その他
日本国内プロジェクト
契約後
■ 詳細工程表
■ その他
発注者と受
注者の契約合意条件に
■ 契約書
(標準契約約款をそのまま使用)
■ 設計図書
■ 特記仕様書
■ その他
■ 工事履行保証書
■ 入札額内訳書
■ 工程表
2022/8/23
従ったS図hunj書i Kusayanagi
■ 施工計画書
■ その他
受注者側の意図を示す書類の提出35
発注者側の意図を示す書類に合意する契約
■原則は入札総額を記した用紙を提出するのみ
発注者側の意図を示す書類に従った入札
発注者と受注者の意図を統合した書類に基づく契約
発注者の意図に答え、且つ入札者の意図を提示する入札
35
(1)施工計画書
プロジェクトマネジメントの基盤は適切な施工計画書の作成
■ 品質管理・安全管理・コスト管理・工程管理・契約管理は“施工計画書”を管理基準とする
自組織管理基準
安全管 時間管 コスト管理基準 理基準 理基準
品質管理基準
施工計画書
作202成2/8/2手3 順は普遍、どの企業Shun、ji K世usa界yanag各i 国においても同じ
36
工事仕様書
現場条件調査
設計図面集
契約条件書
各種工業規格
法令・法規
36
プロジェクトマネジメントの構造
自組織管理基準
安全管理基準 時間管理基準 コスト管理基準 品質管理基準
法令・法規
施工計画書
各種工業規格
設計図面集
現場条件調査
プロジェクトマネジメント構造設計
コスト管理項目設定
WBS構築
契約図書
工事内訳書
施工計画書(提出)
工程表
施工計202画2/8/23書の作成手順は各Xxxxxji Ku共xxxxxxagi のものである。
37 37
工事積算
工事資源設定
スケジュール管理項目設定
工事仕様書
契約条件書
37
建設企業の積算能力の実態
■ 日本の公共工事では、工事入手のために受注者に発注者の「予 定価格」を高精度で推測するための積算能力が必要となっている。
■ 海外工事では、予算額は有っても、「予定価格」といったシステムがないので、工事遂行に必要なコストの積算が必要となる。
■ 工事遂行に必要なコストは施工計画書と工程表がなければ積算できない。
■ 日本の大手建設は工事遂行に必要なコストを積算する能力が著しく低下している。
■ 若い技術者は自身の生産性データ「歩掛り」を集積していない。
■ 自身の歩掛を持たなければ施工計画書が立てられず、工程表も書けない。従って、積算もできない。
■ 問題は工期延伸と追加費用請求能力が脆弱となっていること。
2022/8/23 Shunji Kusayanagi 38
38
38
(2)コスト管理の実態
公共工事では出来高に応じた支払いが成されない。
前払い金、契約金額の40%。残金(60%)は完成一括支払を原則としている。支払業務を軽減策。
大型民間工事では完成一括払いが通常化している
毎月“出来高に応じた支払い”がない
■ この支払システムでは、発注者も受注者も“経過を見せるコスト管理”を行う意識が生まれない。
■ 完成一括支払契約の場合、発注者の支払能力が疑われても、受注者には工事を完成するまで解約解除権はない。
2022/8/23 Shunji Kusayanagi 39
39
39
出来高支払のキャシュフロー(Cash Flow)
出来高■、支出金■、と受入金(支払額)■の比較
120
100
80
1)月毎出来高払い
(経過のコスト管理)
2)受入金と支出金の相関管理
1)月毎出来高
2)支出金
3)受入金
発注者からの支払い
60 の確保はプロジェクトマネジャーの仕事
40
前渡金15%の場合
出来高
支出額支払額
20
キャッシュフローは技術者でなければ作成できない
0
120月22/8/223 月 3 月 4 月 5月 6S月hunji K7us月ayanagi8月 9月 10月 11月 12月 40 40
40
完成一括支払のキャシュフロー(Cash Flow)
1)前渡金+完成一括払い(結果のコスト管理)
2)支出金を如何に抑えるかの管理
現場担当者は発注者からの支払確保が自身の仕事という意識が希薄
出来高
支出額支払額
支払いの伴わない出来高
60
支出金に視点を置
いたコスト管理
40
前渡金40%の場合
20
■ 工事継続資金は本社が用意
■ 現場は工事継続資金を発注者から獲得するという概念がない。
0
120月22/8/232 月 3 月 4 月
5月
6S月hunji K7us月ayanagi8月 9月 10月 11月 12月
41
120
100
80
41
毎月出来高支払v.s. 前渡金40+完成60)
■ どちらが資金運営xxxか
■ 日建連の試算結果
■ 毎月出来高支払の方が資金運営xxx。
■ 下請支払、資機材支払等考えると健全な資金運営が可能。
■ 現状のシステムの問題点
■ 資金調達力が高くなければ工事遂行が出来ない。
■ 発注者は受注者に下請への毎月支払を義務付けている。
■ 何故、国土交通省は毎月出来高支払に切り替えないのか。
■ 発注者も受注者も請求・支払業務が繁忙かつ複雑となる。
■ 理由はこれだけか・・・・・・
2022/8/23 Shunji Kusayanagi 42
42
42
(3)約定工程表の実態
国土交通省の“約定工程表”のフォーマットはA4サイズ1枚。この工程表では追加費用や工期延伸の分析は不可能。
この程度の精度の約定
工程表では契約約款の条項に対応出来ない。
地方自202治2/8/2体3
(都道府県・市町村)も同じファーマットを使用している
Shunji Kusayanagi
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43
契約変更(工期延伸と追加費用請求)関連条項
第16条(工事用地の確保等)
1.発注者は、工事用地その他設計図書において定められた工事の施工上必要な用地(以下「工事用地等」という。)を受注者が工事の施工上必要とする日(設計図書に特別の定めがあるときは、その定められた日)までに確保しなければならない。
第18条(条件変更等)
4.工事現場の形状、地質、湧水等の状態、施工上の制約等設計図書に示された自然的又は人為的な施工条件と実際の工事現場が一致しないこと。
5.設計図書で明示されていない施工条件について予期することのできない特別な状態が生じたこと。
第19条(設計図書の変更)第20条(工事の中止)
第22条(受注者の請求による工期の延長) 第23条(発注者の請求による工期の短縮等)
2022/8/23
詳細な施工計画書、
工程表、工事内訳書工程表がなければこれらの条項は機能しないことは明白。
44
Shunji Kusayanagi
44
(
契
盤)
準
工事費内訳書
15. クリティカルパスをバーチャート上に表示 #1
P-45
プロジェクトマネジメントソフトウェアー
MSプロジェクトは各アクティビティーに100以上の作業資源(Resources)を組み込むことが可能
2022/8/23 Shunji Kusayanagi 45
MicrosoftProject2000Demonstration
45
プロジェクトマネジメントの基盤
プロジェクト遂行管理標準
時間管理
施工計画書
生産性管理基
約管理標
コスト管理
安全管理
スケジュール表
(時間管理基盤
品質管理
コスト管理基盤)
①施工計画書、②工事内訳書、③約定工程表の3図書の充実と高い連
携精度を持っていることがプロジェクトマネジメント(基盤ことが質品・安全・生産性確保)の基盤であり、同時に契約監理の基盤となる。
入札時の根幹評価対象項目はこれら3図書の充実度と連携精度となる。
2022/8/23 Shunji Kusayanagi 46
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) (
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建設工事契約の基盤に関する認識
■ 建設工事の調達は完成物品の売り買いとは異なり、目的物を適正に、的確に完成させる方法論を提示する行為。入札金額は提示した方法論に従って算出されたものに過ぎない。
■ 入札評価の第1義対象は、目的物を完成させる方法論が適正か否かがであり、入札金額は2義対象に過ぎないと云うこと。
■ 国際建設工事では、各入札者に施工計画書、工程表、工事単価内訳書(一位代価)等を提出させるシステムが確立している。
■ 入札順位は、これらの書類(応札図書)の充実度、精度、相関性を精査して順位を決められることになる。
■ 応札図書は、契約後に発生する追加費用精算や工期延伸問題に不可欠なもの。
■ 日本の公共工事調達方式は、入札者の作成する
「応札図書」の重要性認識が欠如している。
■ 「応札図書」がしっかりし作成されていなければ
2022/8/23 工期延伸と追加費用請求はできない。
Shunji Kusayanagi 47
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まとめ
■ 建設事業の契約とは、スポーツでいえば「競技規則:ルール」。
■ 競技規則を尊重しない競技はメジャースポーツにはならない。
■ 発注者、受注者、建設コンサルタントが契約管理意識が希薄な状態で社会基盤整備を進めることは、国民からするとルールを尊重しない集団競技を見せられていることと同じ。
■ この状態を是正しなければ永遠に国民の信頼が得れない
■ 建設工事の契約管理は契約の知識だけではできない。施工計画、コスト管理、工程管理が論理的にできていないと行えない。
■ 世界で、法学部に建設契約の講座のある大学はほとんどない。
■ 他の先進国では契約管理は建設工学で学ぶ。
国際社会では契約管理技術を持たないCivil Engineer はいない。
2022/8/23
Shunji Kusayanagi 48
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