Contract
各 位
株式会社東圧様と
2024 年 2 月 29 日株式会社北洋銀行
「サステナビリティ・リンク・ローン」の契約を締結しました
北洋銀行(頭取 xx xx)は、株式会社東圧様(北海道帯広市、代表取締役社長 xx xxx)と、
「サステナビリティ・リンク・ローン」(以下、「SLL」)の契約を締結しました。
SLL は、お客さまが設定した野心的なESG 関連目標(SPT※1)の達成状況に応じて金利等の条件が連動する融資です。融資を通じ、環境・社会面で持続可能な経済活動と成長を促進し支援することを目的としています。
本融資では、環境に配慮した鉄筋圧接工法である「高分子天然ガス圧接工法(エコスピード工法)」による
「圧接箇所数」を SPT として設定し、株式会社日本格付研究所様より、国際的な原則である「SLL 原則」等に整合している旨のセカンドオピニオン※2 を取得しています。高分子天然ガス圧接工法は、従来型の工法であるアセチレンガスを用いた工法と比較し LCA 評価で約 60%の CO2 排出量の削減が見込まれます。
株式会社東圧様は、環境負荷低減の観点から高分子天然ガス圧接工法(エコスピード工法)を 2010 年に導入して以来、同工法 100%にて鉄筋の圧接を行っており、圧接工事を通して環境負荷の低減に貢献しています。
当行は今後も、サステナビリティ・リンク・ローン等を通じ、北海道を営業基盤とする金融機関として環境問題・社会課題に前向きに取り組むお客さまを支援してまいります。
※1 サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(持続可能な経営目標)
※2 株式会社日本格付研究所様によるセカンドオピニオンは別紙をご参照ください
記
企 業 名 | 株式会社東圧 |
代 表 者 | 代表取締役社長 xx xx |
所 在 地 | xxxxxxx 00 xx 0 xx 00 xx 00 |
設 立 | 1986 年 7 月 |
事 業 x x | 鉄筋圧接工事、鉄筋工事 など |
【株式会社東圧様について】
【契約記念の様子】
左:株式会社東圧
代表取締役社長 xx xx x
中:株式会社東圧
代表取締役会長 xx 原理 様
右:北洋銀行帯広中央支店支店長 xx xx
以 上
北洋銀行グループは、2018 年 12 月「北洋 SDGs 宣言」 を表明し、地域の持続的成長支援と社会的課題の解決に取り組んでおります。なお、SDGs に関連するプレスリリースには、該当するSDGs のアイコンを明示しております。
【SDGs】2015 年の国連サミットで採択された、持続可能な世界を実現するための2030 年までの国際目標。17 のゴールと 169 のターゲットで構成される。
あ す
北洋銀行グループ経営理念:お客さま本位を徹底し、多様な課題の解決に取り組み、北海道の明日をきりひらく
23-D-1547
2024 年 2 月 29 日
株式会社北洋銀行が株式会社東圧に実施するサステナビリティ・リンク・ローンに係る第三者意見
株式会社日本格付研究所(JCR)は、株式会社北洋銀行が株式会社東圧に実施するサステナビリティ・xxx・xxxに対し、第三者意見書を提出しました。
<要約>
本第三者意見は、株式会社北洋銀行が株式会社東圧に実施するサステナビリティ・リンク・ローン
(本借入金)に対して、「サステナビリティ・リンク・ローン原則」及び「サステナビリティ・リンク・ローンガイドライン」(総称して「SLLP 等」)への適合性を確認したものである。株式会社日本格付研究所(JCR)は、SLLP 等で推奨されている評価の透明性及び客観性確保のため、独立した第三者機関として、東圧のサステナビリティ戦略、本借入金で定められたキー・パフォーマンス・インディケーター(KPI)、サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPT)、特性、レポーティング、検証について確認を行った。
東圧は、北海道帯広市に本社を構え、主に北海道において建設現場で圧接工事と鉄筋工事を請け負う事業会社である。東圧の売上は、鉄筋工事 6 割、圧接工事 4 割に大別される。事業活動を通じて持続可能な環境・社会・経済の実現に貢献することを目指しており、「株式会社 東圧 SDGs 宣言」という形で公表している。本宣言では、「環境にやさしいxx計画」「明日につながる挑戦を、ともに」
「目の前の一人を大切にする」「社会貢献活動と業界の人材育成」をテーマとして掲げ、具体的に取り組みを進めている。
東圧は、本借入金で以下の KPI 及び SPT を設定している。
KPI:高分子天然ガス圧接工法(エコスピード工法)の箇所数
SPT:各年度の高分子天然ガス圧接(エコスピード工法)の箇所数について下記のとおり。 2024 年度:79,000 箇所
2025 年度:86,000 箇所
2026 年度:93,000 箇所
2027 年度:101,000 箇所
今回選定された KPI は、建設業界の特性や方針を鑑みて重要なものであり、東圧の戦略・方針の中でも重要なものと位置付けられていることから、JCR は有意義と判断する。また、本 KPI は SLLP 等で示されている具備すべき条件の全てを満たしている、と JCR は評価している。また、本借入金の SPTについて、過年度実績等を踏まえ野心的であると評価している。
JCR は、事前に設定された SPT が達成されるか否かに応じて、金利が変化すると定められていることを確認した。また、周辺環境、KPI の方法論、SPT の測定に重大な変更があった場合、JCR が当該変更内容について SLLP 等への適合性について確認を行ったうえで、北洋銀行と東圧が書面で変更内容について合意すること、本借入金の KPI に係る実績等について、東圧は外部機関より第三者検証を受けたうえで、書面又はウェブサイトで年に 1 回以上北洋銀行に報告する予定となっていることを JCR は確認した。
以上より、JCR は、本借入金が SLLP 等に適合していることを確認した。
*詳細な意見書の内容は次ページ以降をご参照ください。
第三者意見
評価対象:サステナビリティ・xxx・xxx借入人:株式会社東圧
貸付人:株式会社北洋銀行
2024 年 2 月 29 日
株式会社 日本格付研究所
目次
<要約> . - 3 -
I. 第三者意見の位置づけと目的........................................................................................................... - 4 -
II. 第三者意見の概要............................................................................................................................. - 4 -
III. SLLP 等への適合性について............................................................................................................ - 5 -
1. 東圧のサステナビリティ戦略 ....................................................................................................... - 5 -
2. KPI の選定.................................................................................................................................... - 7 -
2-1. 評価の視点................................................................................................................................ - 7 -
2-2. KPI の選定の概要と JCR による評価........................................................................................ - 7 -
3. SPT の測定.................................................................................................................................... - 9 -
3-1. 評価の視点................................................................................................................................ - 9 -
3-2. SPT の測定の概要とJCR による評価 ...................................................................................... - 9 -
i. 過年度実績との比較...................................................................................................................... - 9 -
ii. 同業他社との比較....................................................................................................................... - 10 -
iii. 業界水準の確認.......................................................................................................................... - 10 -
iv. SPT 達成に向けた取り組み........................................................................................................ - 10 -
3-3. JCR によるインパクト評価..................................................................................................... - 11 -
4. 借入金の特性............................................................................................................................... - 13 -
4-1. 評価の視点.............................................................................................................................. - 13 -
4-2. 借入金の特性の概要と JCR による評価................................................................................. - 13 -
5. レポーティング・検証................................................................................................................ - 13 -
5-1. 評価の視点.............................................................................................................................. - 13 -
5-2. レポーティング・検証の概要と JCR による評価.................................................................. - 13 -
6. SLLP 等への適合性に係る結論................................................................................................... - 13 -
<要約>
本第三者意見は、株式会社北洋銀行が株式会社東圧に実施するサステナビリティ・リンク・ローン(本借入金)に対して、「サステナビリティ・リンク・ローン原則」1及び「サステナビリティ・リンク・ローンガイドライン」2(総称して「SLLP 等」)への適合性を確認したものである。株式会社日本格付研究所
(JCR)は、SLLP 等で推奨されている評価の透明性及び客観性確保のため、独立した第三者機関として、東圧のサステナビリティ戦略、本借入金で定められたキー・パフォーマンス・インディケーター(KPI)、サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPT)、特性、レポーティング、検証について確認を行った。
東圧は、北海道帯広市に本社を構え、主に北海道において建設現場で圧接工事と鉄筋工事を請け負う事業会社である。東圧の売上は、鉄筋工事 6 割、圧接工事 4 割に大別される。事業活動を通じて持続可能な環境・社会・経済の実現に貢献することを目指しており、「株式会社 東圧 SDGs 宣言」という形で公表している。本宣言では、「環境にやさしいxx計画」「明日につながる挑戦を、ともに」「目の前の一人を大切にする」「社会貢献活動と業界の人材育成」をテーマとして掲げ、具体的に取り組みを進めている。
東圧は、本借入金で以下の KPI 及び SPT を設定している。
KPI :高分子天然ガス圧接工法(エコスピード工法)の箇所数 SPT :各年度の高分子天然ガス圧接(エコスピード工法)の箇所数について下記のとおり。 2024 年度:79,000 箇所 2025 年度:86,000 箇所 2026 年度:93,000 箇所 2027 年度:101,000 箇所 |
今回選定された KPI は、建設業界の特性や方針を鑑みて重要なものであり、東圧の戦略・方針の中でも重要なものと位置付けられていることから、JCR は有意義と判断する。また、本 KPI は SLLP 等で示されている具備すべき条件の全てを満たしている、と JCR は評価している。また、本借入金の SPT について、過年度実績等を踏まえ野心的であると評価している。
JCR は、事前に設定された SPT が達成されるか否かに応じて、金利が変化すると定められていることを確認した。また、周辺環境、KPI の方法論、SPT の測定に重大な変更があった場合、JCR が当該変更内容について SLLP 等への適合性について確認を行ったうえで、北洋銀行と東圧が書面で変更内容について合意すること、本借入金の KPI に係る実績等について、東圧は外部機関より第三者検証を受けたうえで、書面又はウェブサイトで年に 1 回以上北洋銀行に報告する予定となっていることを JCR は確認した。
以上より、JCR は、本借入金が SLLP 等に適合していることを確認した。
1 Asia Pacific Loan Market Association (APLMA), Loan Market Association (LMA), Loan Syndications and Trading Association (LS TA). Sustainability-Linked Loan Principles 2023. (xxxxx://xxx.xxxx.xxx/xxxxxxx/xxxxxxxxxxxxxx-xxxxxx-xxxx-xxxxxxxxxx-xxxx/)
2 環境省 サステナビリティ・xxx・xxxガイドライン 2022 年版(xxxxx://xxx.xxx.xx.xx/xxxxxxx/000000000.xxx)
I. 第三者意見の位置づけと目的
JCR は、本借入金に対して SLLP 等に沿って第三者評価を行った。サステナビリティ・xxx・xxxとは、借入人が予め定めた意欲的な SPT の達成にインセンティブを設けることで、借入人が持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとした借入金をいう。SLLP 等は、KPI の選定、SPT の測定、借入金の特性、レポーティング、検証という 5 つの核となる要素で構成されている。本第三者意見の目的は、 SLLP 等で推奨されている評価の透明性及び客観性確保のため、JCR が独立した第三者機関として、本借入金の SLLP 等への適合性を確認することである。
II. 第三者意見の概要
本第三者意見は、東圧が 2024 年 2 月 29 日に北洋銀行との間で契約を締結する本借入金に対する意見表明であり、以下の項目で構成されている。
1. 東圧のサステナビリティ戦略
2. KPI の選定
3. SPT の測定
4. 借入金の特性
5. レポーティング・検証
6. SLLP 等への適合性に係る結論
III. SLLP 等への適合性について
1. 東圧のサステナビリティ戦略
<会社概要>
東圧は北海道帯広市に本社を構え、主に北海道において建設現場で鉄筋工事と圧接工事を請け負う事業会社である。従業員は 40 名(取締役を含む、2024 年 1 月時点)で、資本金は 1,000 万円である。1986年に有限会社東圧として創業し、1992 年に株式会社に変更を行った。その後東京や札幌に営業所を設置するなど業務拡大を進めてきた。東圧の売上は、鉄筋工事 6 割、圧接工事 4 割に大別される。
<東圧における圧接工事>
東圧における圧接工事とは、建設現場に搬入された鉄筋を接合する技術である鉄筋継手のうち、主にガス圧接継手のことを指す3。ガス圧接継手とは、鉄筋をガスで加熱して接合面を溶かすことなくふくらみを形成して接合する技術4である。一般に、鉄筋は輸送や現場での作業性などを考慮して、一定の長さに切断されて現場に搬入されるため、現場で適切な長さに接合する必要がある。そのため、鉄筋継手は建設施工のプロセスにおいて必要不可欠な技術だと言える。東圧は、北海道で唯一 A 級継手圧接施工会社認定5を受ける6など、高い技術力を持った企業と認められている。
鉄筋継手を行う圧接工事の主な対象は鉄筋コンクリート造の建物である。圧接工事の規模は圧接工事を行った箇所数で表現されることが一般的である。圧接工事の箇所数は、主に鉄筋コンクリート造の建物の工事量に左右される。
建設スケジュールにおいて、まず建設物の構造が決定され、その次にその他工法に関する詳細が確定され、その後ようやく圧接工事の有無が決まる。圧接工事業者にとっては、工事受注から工事実施までの時間が比較的短く、将来の受注量の見込みを立てるのが難しい。
<東圧の社訓>
1. 一人一人の無限の可能性を信じる
2. 目の前の一人を徹底して大切にする
3. 共に偉大な力を発揮し成長していく
東圧は、人材への積極的な投資を行うことを意識して社訓を制定している。東圧の属する建設業界は、人材確保の難易度が相対的に高い傾向にある。また、鉄筋継手は職人による技術であることから、人材定着が課題の一つである。上記背景を踏まえて、東圧の社訓には、会社全体で社員の成長をサポートしていくことと、従業員一人一人を大切にして働きやすい職場環境を整備していくこと、そして全従業員で力を合わせて会社の拡大を目指していく、という想いが込められている。
図表 1 東圧の社訓7
3 公益社団法人日本鉄筋継手協会 HP(xxxxx://xxxx.xx/xxxx-000/)
4 一般財団法人建材試験センターHP(xxxxx://xxx.xxxxx.xx.xx/xxx/xxxxx/000/Xxxxxxx.xxxx)
5 A級継手圧接施工会社認定制度とは、優良圧接会社の中で更にある一定の条件を備えた会社を認定する制度のこと(https://xxxx.xx/%e 5%9c%a7%e6%8e%a5%e6%96%bd%e5%b7%a5%e4%bc%9a%e7%a4%be%e8%aa%8d%e5%ae%9a%e5%88%b6%e5%ba%a6/)。
6 2023 年 7 月 1 日時点
7 東圧提供資料
<東圧のサステナビリティ>
東圧は、社訓に基づき、事業活動を通じて持続可能な環境・社会・経済の実現に貢献することを目指しており、2021 年にはその考え方を「株式会社 東圧 SDGs 宣言」という形で公表している。本宣言では、「環境にやさしいxx計画」「明日につながる挑戦を、ともに」「目の前の一人を大切にする」「社会貢献活動と業界の人材育成」をテーマとして掲げ、具体的に取り組みを進めている。
図表 2 「株式会社 東圧 SDGs 宣言8」
8 東圧 HP(xxxxx://xxxxxx.xx.xx/xxxxxxx/)
2. KPI の選定
2-1. 評価の視点
本項では、本借入金の KPI について、東圧の事業全体で関連性があり中核的で重要か、東圧の現在・xxにおける事業運営上の戦略的意義は大きいか、一貫した方法論に基づく測定・定量化は可能か、ベンチマークは可能か、適用範囲等を含め定義は明確か等を確認する。
2-2. KPI の選定の概要と JCR による評価
〈評価結果〉 本借入金の KPI は、SLLP 等で示されている具備すべき条件の全てを満たしている。 |
東圧は、本借入金で以下の KPI を設定している。
KPI :高分子天然ガス圧接工法(エコスピード工法)の箇所数 |
<エコスピード工法>
東圧の圧接工事は、前述の通り、主にガス圧接継手である。ガス圧接継手は、アセチレンガス圧接工法と天然ガス圧接工法に区分される。
エコスピード工法とは、天然ガス圧接工法の一種である。PS リングと呼ばれる還元剤を用いることで還元炎を使用しない特徴をもつ9。エコスピード工法は、図表 3 に示した通り、従来のアセチレンガス圧接工法の施工結果と比較して、LCA 評価で約 60%の CO2 排出量削減が見込まれる10。したがってエコスピード工法の普及が進むことで、建設の施工プロセスにおける CO2 排出量の削減が期待される。また、従来工法で使用されるアセチレンガスは、石灰と石炭石を原料として製造されるカルシウムカーバイドに水を反応させて製造される。アセチレンガスと比較すると、自然界から算出される天然ガスは、CO2 以外の環境負荷の削減も期待できる 10。
5
4.5
4
3.5
3
2.5
2
1.5
1
0.5
天然ガス アセチレンガス
削減率 63.3%
削減率 62.3%
削減率 61.1%
削減率 62.7%
削減率 62.7%
0
(kg-CO2/箇所)
<鉄筋径別>
D19 D25 D32 D38 D51
図表 3 LCA 評価におけるCO2 排出量の比較 10
(鉄筋径)
9 エコウェル協会 HP(xxxx://xxxxxx.xxx/Xxxxxxxxxx%00xxxxxx%00xx/Xxxxxxxxxx%00xxxxxx%00xx.xxxx)
10 公益社団法人日本コンクリート工学会発行のコンクリート工学誌 2015.3 号テクニカルレポート『環境にやさしい天然ガスと高分子還元剤で酸化防止するガス圧接工法の開発「高分子天然ガス圧接継手工法(エコスピード工法)」』。xxxは同レポートより作成。
本来は、気候変動の緩和のため、圧接工事のプロセスにおいて CO2 排出量がゼロとなる工法が実施されることが望ましい。他方、現時点の圧接業界において、そのような工法が確立されているわけではない。以上を踏まえれば、現時点において、エコスピード工法は、CO2 排出量削減に関する最善手の一つと考えられる。
<東圧と KPI の関係>
東圧の総売上高のうち、圧接工事の売上が約 4 割を占めており、かつ東圧の圧接工事の 100%がエコスピード工法である。したがって、KPI であるエコスピード工法の箇所数は、東圧の事業の中核に位置するものと言える。
東圧が公表している SDGs 宣言において、「環境にやさしいxx計画」の具体的な取り組みとして、「天然ガス圧接(エコスピード工法)の積極的導入」「天然ガス圧接の推進・普及活動」が挙げられている。本KPI はまさにこの取り組みの成果を表すものであり、東圧が掲げる SDGs 宣言に沿ったものと言える。
<業界の方針>
建設業界の業界団体である日本建設業連合会は環境自主行動計画11を策定している。その中で「環境経営の実践」「LCCO212の削減」「建設副産物対策」「生物多様性の保全」の 4 つをテーマとして定めている。
「LCCO2 の削減」では、具体的な目標として「軽油代替燃料または革新的建機の普及を前提として施工段階における CO₂排出量を 2030 年度に 40%削減(2013 年度比)」を掲げている。建設業では資材の調達から施設の設計・施行、さらには運用・改修・解体とそのフェーズは多岐にわたる。その中でも特に建設会社以外の多くの協力会社が関わる建設現場での施工プロセスに関して、建設業界として CO2 排出量削減目標を設定して着実に取り組みを進めることで、国のカーボンニュートラル宣言に貢献することを目指している。圧接工事は施工プロセスの一つであり、圧接工事における CO₂排出量の削減の意義は大きい。
以上より、今回選定された KPI は、建設業界の特性や方針を鑑みて重要なものであり、東圧の戦略・方針の中でも重要なものと位置付けられていることから、JCR は有意義と判断する。また、本 KPI は SLLP 等で示されている具備すべき条件の全てを満たしている、と JCR は評価している。
11 建設業の環境自主行動計画第 7 版(xxxxx://xxx.xxxxxxxxx.xxx/xxxxxxx/xxxxxxxxx/xxxxxxx.xxxx?xxxxxx0000000000000)
12 CO2 の排出量を建築物のライフサイクル(建設、運用、更新、解体、処分)を通して足し合わせた指標。一般社団法人日本建設業連合会
「2022 年度 省エネルギー計画書および CASBEE 対応状況調査報告書」より引用(xxxxx://xxx.xxxxxxxxx.xxx/xxxxxxxxxxx/xxxxxx.xxxx?xx
=372)
3. SPT の測定
3-1. 評価の視点
本項では、本借入金の SPT について、選定されたKPI における重要な改善を表し Business as Usualの軌跡を超える等の野心的なものか、東圧の過年度実績や同業他社、業界水準、科学等のベンチマークに基づいているか、目標達成へのスケジュール等は開示されるか等を確認する。
3-2. SPT の測定の概要とJCR による評価
〈評価結果〉 本借入金の SPT は、SLLP 等で示されている具備すべき条件の全てを満たしている。 |
東圧は、本借入金で以下の SPT を設定している。
SPT :各年度の高分子天然ガス圧接(エコスピード工法)の箇所数について下記のとおり。 2024 年度:79,000 箇所 2025 年度:86,000 箇所 2026 年度:93,000 箇所 2027 年度:101,000 箇所 |
なお、本 SPT は、東圧が直接発注元から依頼を受けるxxxと、既に発注元から受注した別の圧接工事業者から依頼を受けるケースの二通りが想定される。今回は前者のみを対象としている。
i. 過年度実績との比較
本 SPT の過年度実績は図表 4 に記載の通りであり、年度によって変動があるものの、横ばいの状況である。 一方、本 SPT は、2022 年度と 2023 年度の圧接箇所数の平均を起点とし、毎年 8.5%程度の増加する設定となっている。本 SPT は、過年度実績と比較して、野心的である。
140
(千箇所)
実績
SPT
120
100
80
60
40
20
15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27(年度)
図表 4 東圧の圧接箇所実績及びSPT13
13 東圧提供資料よりJCR 作成。2023 年度は想定値。
ii. 同業他社との比較
東圧と競合する同業他社において、類似の KPI/SPT や CO2 削減目標を公表している企業は現時点で見当たらない。したがって、本 SPT を設定し公表することについて野心的である。
iii. 業界水準の確認
図表 5 は、北海道における着工建築物の推移を表したものである。着工建築物全体で見ると緩やかに減少傾向にあり、圧接工事の主な対象となる鉄筋コンクリート造建築物で見ても横ばい傾向である。今後も同様の傾向が続くことが想定される。鉄筋コンクリート造の建築物が増加しない中、東圧が本 SPT を毎年達成する難易度は相応に高く、野心的である。
(百万m2) <床面積ベース>
その他
鉄筋コンクリート造
鉄骨造
8
7
6
5
4
3
2
1
0
11 12
13 14
15 16
17 18 19
20 21
22(年度)
図表 5 北海道における着工建築物床面積(構造別)14
iv. SPT 達成に向けた取り組み
上述した通り、鉄筋コンクリート造建築物のマーケットが横ばいで推移している中、東圧は本 SPT 達成に向け、建設工事の発注者であるゼネコンにエコスピード工法の環境改善効果を真摯に説明することで SPT 達成を目指していく計画である。
SPT 達成のために圧接工事の受注を拡大するにあたり、専門技術を持った作業員の確保も必要になる。東圧は、過去、建設会社からの発注があった場合でも、作業員の確保ができず受注を断念した場合もあった。専門技術を持った作業員を確保するため、東圧は社内教育を強化・推進していく予定である。
以上より、本 SPT について野心的なものが設定されていると JCR は評価している。
14 建築物着工統計よりJCR 作成
3-3. JCR によるインパクト評価
社会 | 人格と人の安全保障 | 紛争 | 現代奴隷 | 児童労働 | |
データプライバシー | 自然災害 | ||||
健康および安全 | |||||
資源とサービスの入手可能性、アクセス可能性、 手ごろさ、品質 | 水 | 食糧 | 住居 | 健康と衛生 | |
教育 | エネルギー | 移動手段 | 情報 | ||
コネクティビティ | 文化と伝統 | ファイナンス | |||
生計 | 雇用 | 賃金 | 社会的保護 | ||
平等とxx | ジェンダー平等 | 民族・人種平等 | 年齢差別 | その他の社会的弱者 | |
社会経済 | 強固な制度・平和・安定 | 市民的自由 | 法の支配 | ||
健全な経済 | セクターの多様性 | 零細・中小企業の繁栄 | |||
インフラ | |||||
経済収束 | |||||
自然環境 | 気候の安定性 | ||||
生物多様性と 生態系 | 水域 | 大気 | 土壌 | ||
生物種 | 生息地 | ||||
サーキュラリティ | 資源強度 | 廃棄物 |
JCR は、本借入金の SPT に係るポジティブなインパクトの増大及びネガティブなインパクトの回避・管理・低減の度合いについて、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が策定したポジティブ・インパクト金融原則の第 4 原則で例示されているインパクト評価基準の 5 要素(多様性、有効性、効率性、倍率性、追加性)に沿って確認した。
① 多様性:多様なポジティブ・インパクトがもたらされるか (UNEP FIの定めるインパクト、事業セグメント、国・地域、バリューチェーン等) |
本借入金のSPTに係るインパクトは、以下のとおりUNEP FIの定めるインパクト・エリア/トピックに幅広く該当している。 また、本借入金のSPTは、東圧の事業セグメントの中核を担うものであり、そしてバリューチェーンのうち以下の段階でのインパクトが期待される。 【調達】 【製造】 【流通】 【使用】 【廃棄】 |
② 有効性:大きなインパクトがもたらされるか (対象となる事業の売上構成比や国内外マーケットシェア、野心度等) |
本SPTの対象となる圧接工事は、多様な会社が関与する施工プロセスの一つである。そのため、CO2排出量の削減に資するSPT達成に向けた取り組みは、施行プロセスに携わる他の会社にも影響を与えることが期待される。 東圧の売上において、本SPTの対象となる圧接工事はおよそ4割を占め、その100%がエコスピード工法である。したがって本SPTは東圧の事業の中核の一つであると言える。 以上より、本SPTは、東圧に加えて建設業界にも一定のインパクトをもたらすことが期待される。 |
③ 効率性:投下資本に比して大きなインパクトがもたらされるか (事業全体における重要性、戦略的意義等) |
本借入金のSPTは、前述のとおり、CO2排出量の削減という環境負荷低減効果が期待される工法の圧接箇所数である。SPT達成に向けた投下資本について、東圧の事業全体に対するインパクトの効率 的な発現が期待される。 |
➃ 倍率性:公的資金や寄付に比して民間資金が大きく活用されるか |
本借入金のSPTに係るインパクトについて、本項目は評価対象外である。 |
⑤ 追加性:追加的なインパクトがもたらされるか (対応不足の持続可能な開発ニーズへの取り組み、SDGs達成に向けた前進等) |
本借入金のSPTは、以下にリストアップしたとおり、SDGsの17目標及び169ターゲットのうち複 数の目標・ターゲットに対して、追加的なインパクトが期待される。 |
目標 8:働きがいも経済成長も
ターゲット 8.3 生産活動や適切な雇用創出、起業、創造性及びイノベーションを支援する開発重視型の政策を促進するとともに、金融サービスへのアクセス改善などを通じて中小零細企業の設立や成長を奨励する。
目標 13:気候変動に具体的な対策を ターゲット 13.1 全ての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエン
ス)及び適応の能力を強化する。
4. 借入金の特性
4-1. 評価の視点
本項では、本借入金の特性について、予め設定された SPT が達成されるか否かによって、本借入金の金利等は変化するか等を確認する。
4-2. 借入金の特性の概要と JCR による評価
〈評価結果〉 本借入金の特性は、SLLP 等で示されている具備すべき条件の全てを満たしている。 |
JCR は、本借入金の契約書類において、事前に設定された SPT が達成されるか否かに応じて、金利が変化すると定められていることを確認した。また、周辺環境、KPI の方法論、SPT の測定に重大な変更があった場合、JCR が当該変更内容について SLLP 等への適合性について確認を行ったうえで、北洋銀行と東圧が書面で変更内容について合意することについて、契約書に記載されていることを確認した。
5. レポーティング・検証
5-1. 評価の視点
本項では、本借入金で定められたレポーティングについて、選定された KPI の実績に係る最新情報や SPT の野心度を判断できる情報等が、年に 1 回以上開示されるか等を確認する。また、本借入金で定められた検証について、選定された KPI の実績に対する独立した外部検証は実施されるか、当該検証内容は開示されるか等を確認する。
5-2. レポーティング・検証の概要と JCR による評価
〈評価結果〉 本借入金で定められたレポーティング・検証は、SLLP 等で示されている具備すべき条件の全てを満たしている。 |
東圧は、本借入金の KPI に係る実績等について、書面又はウェブサイトで年に 1 回以上北洋銀行に報告する予定である。その際、SPT の実績については外部機関より第三者検証を受け、その検証内容も併せて報告する予定である。
6. SLLP 等への適合性に係る結論
以上より、JCR は本借入金が SLLP 等に適合していることを確認した。
(担当)xx xx・xx xx
本第三者意見に関する重要な説明
1. JCR 第三者意見の前提・意義・限界
日本格付研究所(JCR)が付与し提供する第三者意見は、Asia Pacific Loan Market Association(APLMA)、Loan Market Association(LMA)、Loan Syndications and Trading Association(LSTA)が策定したサステナビリティ・リンク・ローン原則及び環境省が策定したサステナビリティ・リンク・ローンガイドラインへの評価対象の適合性に関する、JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該評価対象がもたらすポジティブなインパクトの程度を完全に表示しているものではありません。
本第三者意見は、依頼者から供与された情報及び JCR が独自に収集した情報に基づく現時点での計画又は状況を評価するものであり、将来における状況への評価を保証するものではありません。また、本第三者意見は、サステナビリティ・xxx・xxxによるポジティブな効果を定量的に証明するものではなく、その効果について責任を負うものではありません。設定されたサステナビリティ・パフォーマンス・ターゲットの達成度について、JCR は借入人又は借入人の依頼する第三者によって定量的・定性的に測定されていることを確認しますが、原則としてこれを直接測定することはありません。
2. 本第三者意見を提供するうえで参照した国際的なイニシアティブ、原則等
本第三者意見を提供するうえで JCR は、APLMA、LMA、LSTA、環境省及び国連環境計画金融イニシアティブが策定した以下の原則及びガイドを参照しています。
・サステナビリティ・xxx・xxx原則
・サステナビリティ・リンク・ローンガイドライン
・ポジティブ・インパクト金融原則
3. 信用格付業に係る行為との関係
本第三者意見を提供する行為は、JCR が関連業務として行うものであり、信用格付業に係る行為とは異なります。
4. 信用格付との関係
本件評価は信用格付とは異なり、また、あらかじめ定められた信用格付を提供し、又は閲覧に供することを約束するものではありません。
5. JCR の第三者性
本評価対象者と JCR との間に、利益相反を生じる可能性のある資本関係、人的関係等はありません。
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、借入人及び正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、又はその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、又は当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCR は、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。本第三者意見は、評価の対象であるサステナビリティ・リンク・ローンに係る各種のリスク(信用リスク、価格変動リスク、市場流動性リスク等)について、何ら意見を表明するものではありません。また、本第三者意見は JCR の現時点での総合的な意見の表明であって、事実の表明ではなく、リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするものでもありません。本第三者意見は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、又は撤回されることがあります。本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。本文書の一部又は全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■用語解説
第三者意見:本レポートは、依頼人の求めに応じ、独立・中立・xxな立場から、サステナビリティ・xxx・xxxについて、XXXXX、LMA、LSTA
によるサステナビリティ・xxx・xxx原則への適合性に対する第三者意見を述べたものです。
■サステナブル・ファイナンスの外部評価者としての登録状況等
・国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブインパクト作業部会メンバー
・環境省 グリーンボンド外部レビュー者登録
・Climate Bonds Initiative Approved Verifier (気候債イニシアティブ 認定検証機関)
・ICMA (国際資本市場協会に外部評価者としてオブザーバー登録) ソーシャルボンド原則、Climate Transition Finance 作業部会メンバー
■その他、信用格付業者としての登録状況等
・信用格付業者 金融庁長官(格付)第 1 号
・EU Certified Credit Rating Agency
・NRSRO:JCR は、米国証券取引委員会の定める NRSRO(Nationally Recognized Statistical Rating Organization)の 5 つの信用格付クラスのうち、以下の 4クラスに登録しています。(1)金融機関、ブローカー・ディーラー、(2)保険会社、(3)一般事業法人、(4)政府・地方自治体。米国証券取引委員会規則 17g- 7(a)項に基づく開示の対象となる場合、当該開示は JCR のホームページ(xxxxx://xxx.xxx.xx.xx/xx/)に掲載されるニュースリリースに添付しています。
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部 TEL:00-0000-0000 FAX:00-0000-0000