Contract
2015年度民法第4部「債権各論」第12回 役務提供型契約
第12回 役務提供型契約
【各種の役務提供型契約】(249頁)
2015/11/13
xx xx
・雇用:従属的・一般的・定型的な労働力の有償提供(双務有償契約・結果は問題外)
・請負:独立性・仕事結果と報酬の交換(双務有償契約)- 結果債務
・委任と準委任: 独立性・専門性・裁量性(原則無償)- 手段債務(努力が債務内容)
・寄託:物の保管のみを役務内容とする特殊型(原則無償)
・ほかに商法上、仲立・問屋・運送・運送取扱・商事寄託などが役務提供型の特別類型
【請負契約】(250-258頁)
1 請負契約の意義・法的性質・社会的作用と成立要件
ことば
・定義(632条) 「下請」と「下請負」の違い
・建設関係の特別法: 建設業法、下請代金支払遅延防止法、住宅品質確保法等
・約款の多用:公共工事標準約款、民間連合協定工事請負契約約款
・製作物供給契約=請負+売買の混合契約(255頁コラム○79 )
2 請負契約の効果
(1) 請負人の義務-仕事完成義務
・履行期前の契約解除の可能性
・下請の原則的許容(ただし建設業22条は丸投げを禁止)と履行補助者の責任
(2) できあがった物の所有権の帰属
Case 12-01 XはAから分譲住宅6棟の建築を請け負い、登記申請に必要な建築確認通知書をAに交付し、完成した4棟をAに引き渡した。これらはAから分譲を受けた者にxx引き渡された。ところが、Aが振り出していた手形が不渡になったので、Xが残りの2棟の引渡しを拒絶したところ、Aから分譲を受けたと称するYらがその2棟に強引に入居した。XはYらに対してどのような請求ができるか。
イ 報酬債権の担保方法と難点
・約定担保権( 保証・抵当権・質権・譲渡担保)、同時履行の抗弁権(533条)、留置権(295
条・商521条等)、動産保存の先取特権( 320条)、不動産工事の先取特権( 326条・327条)
ロ 請負人と注文者の間- 請負代金回収の問題
・材料基準説(判例)と注文者帰属説(有力説)の対立と接近
判例
P238(請負人が材料を提供した建物は完成後の引渡しで注文者に所有権移転) P239(代金完済・引渡し前に担保権設定のために所有権を移転する特約は可能) P240(材料の主要部分を注文者が提供した場合は注文者が所有権を原始取得)
P241( 完成前に代金を完済していれば完成時に注文者に所有権を帰属させる特約と認定)
P242(代金完済前でも注文者に所有権を帰属させる意思であったとされた事例)
ハ 注文者と下請負人の間
Case 12-02 下請負人Xは、材料を提供して建物建築工事を行ったが、元請負人Aが倒産したため、建前状態で工事を中止した。注文者YがAとの契約を解除し、別の業者Bと結んだ別の請負契約によって建物を完成したが、請負代金はAにもBにも未払である場合、建物所有権は誰に帰属するか。YがBに代金を支払っていればどうか。
・YA・YB間に特約がなければ、所有権は246条によりXかBのいずれかに帰属
判例
P243( 下請負人は、元請負人の履行補助者的立場にあり元請負人と異なる権利関係を主張できる立場にないから、出来形を注文者帰属とする特約に拘束される)
・交渉促進(xx280-281頁の「請負人帰属説の妙味」)?
(3) 仕事の滅失・毀損の場合- 債務不履行と危険負担
Case 12-03 Yの注文に応じて、請負人Xが建物建築工事に取りかかったが、建物は地震によって半壊してしまった。XはYに請負代金を請求できるか。
滅失・損傷時期 | 完成前・完成可能 | 完成前・完成不能 完成後・引渡前 | |
仕事完成請求権 | 存続 | 消滅 | |
帰責事 由 | 注文者に有 | 請負人に報酬請求権+ 損害賠償請求権(415条) | 報酬請求権存続( 536条2項) |
請負人に有 | 遅滞の場合には注文者に遅延賠償請求権(415条) | 注文者の解除権( 543条) *および損害賠償請求権(415条) | |
両者とも無 | 報酬増額請求権(約款による) | 報酬請求権消滅(536条1項) |
*判例
最判昭56・2・17判時996号61頁(注文者 vs. 請負人の債権者: 可分な既施工部分につき注文者が利益を有するときは、その部分は解除できない)
(4) 瑕疵担保責任
・法的性質と特異性
①瑕疵修補請求権(634条1項)
②損害賠償請求権(634条2項)
③解除権とその制限及び制限の克服(635条)
判例
P235(欠陥住宅について建直し費用の賠償を肯定。635条を実質的に骨抜きに)
④短期期間制限( 637条以下、約款では2年に短縮、品確94条1項で主要部分につき10年に延長)
判例
P236( 期間経過前に相殺適状にあれば508条類推適用により期間経過後にも相殺可能)
⑤注文主の材料や指示に起因する瑕疵(636条);請負人の告知義務
⑥無担保/ 責任制限特約の効果(640条)-売買の572条前段と同趣旨
(5) 注文者の権利・義務
①報酬支払義務(632条)
引渡しや損害賠償債権との同時履行関係(634条2項)
判例
P233( 相殺がされない場合、報酬債権と損害賠償債権は同時履行の関係にあり、注文者は、全額拒絶がxxxに反しない限り、遅滞責任を負わない←修補請求との均衡)
P234( 相殺がされた場合、差額の遅滞責任は相殺適状時に遡及しない←同時履行関係)
②協力義務
③目的物引取義務
3 請負契約の終了
・未完成の間の注文者の解除権と損害賠償義務(641条)
判例
大判明37・10・1民録10輯1201頁(損害賠償の提供は解除の要件ではない)
P237( 請負工事が可分であってその給付につき当事者が利益を有するときは、すでに完成した部分を除き、注文者は、未完成の部分についてのみ解除することができる)
・注文者の破産の場合の解除権(642条)
4 改正案
・新634条は判例に沿って割合的報酬請求権を肯定
・瑕疵担保責任(634条)と担保責任を負わない特約(640条)を削除
←売買の新562-564・572条の準用、新412条の2第1項、新533条で足る
※新636条も契約不適合に表現を変更、新637条は売買の規定と整合するように変更(引渡時から1
年⇒不適合を知った時から1年内の通知)
xxxx://xxx.xxxxxxxx.xxx.xxxxx-x.xx.xx
2015年度民法第4部「債権各論」第12回 役務提供型契約
・解除とその制限(635条)も削除←新564条の準用(⇒新541・542条)、P235の趣旨
・土地工作物の場合の責任存続期間の特則(638・639条)も削除
←638条は新637条1項でカバー、639条の伸張の必要性も前提を喪失
・注文者破産の場合の請負人の解除権を制限(新642条1項ただし書)。他は実質同内容
【委任契約・準委任契約】( 258-263頁)
Case 12-04
①Xは交通事故の後始末をYに一任した。Yは、A進物店で1万円の見舞用盛りかごを買ってZを訪れ、「X はZに対し解決金100万円を払い、Xは一切の請求を放棄する」との示談をしてきた。Xは、100万円が被害者の怪我の程度などから見て高すぎると不満である。Xは示談契約に従ってZに100万円を支払う必要があるか。盛りかご代1万円はどうなるか。また、XはYの責任を追及できるか。
②上記の委任については、XY間では報酬について何も定めていなかったところ、 Yが10万円の報酬を請求してきた。Xは支払う義務があるか。Yが弁護士かそうでないかで結論が異なるか(xxx=xxxx『ワークブック民法』136頁〔xx〕から)。
③Yが弁護士であるとして、YがZとの示談交渉を継続している間に、XがZとの間で直接話をつけてしまった場合、YはXから報酬を請求できるか。
1 委任契約の法的性質など
・片務・無償・諾成契約。報酬は特約による(643条)←沿革的理由
・委任と準委任の違い(委任事務が法律行為か事実行為か)と同質性
2 委任契約の成立
参考判例
最判昭38・6・13民集17巻5号744頁(弁護士法72条違反は無効)
3 委任契約の効力
(1) 受任者の義務 ←高度の人的信頼関係の特殊性
①事務処理義務(程度は善管注意義務。644条)
例外
判例
最判昭53・7・10民集32巻5号868頁( 売主の移転登記手続の委任契約は買主のためにも必要書類を保管する義務を生じ、売主から任意に解除することはできない)
原則
・ 履行の代行は不可(自己執行義務)
104・105条類推による復委任
改正法
105条を削除。復xxにつき新644条の2を新設
・重いxx義務・誠実義務? ←信認義務 fiduciary relation
②重い付随的義務と責任(645-647条、654・655条)
(2) 委任者の義務
①委任事務処理費用の負担と損害賠償責任(649・650条)
②特約による報酬支払義務(648条)
・黙示の合意・慣習や商512条等によっても特約認定がありうる
判例 最判昭37・2・1民集16巻2号157頁(弁護士報酬の合意が認定できない場合)
・請負的要素の強い不動産仲介契約の場合
判例
最判昭45・10・22民集24巻11号1599頁(故意の条件成就妨害。約定報酬額)
改正法 履行割合型・成果完成型の割合報酬の規定を新設(新647条3項・648条)
(3) 委任契約と代理権の関係
4 委任契約の終了
(1) 任意解除権(+損害賠償義務。651条)
判例
P246-248(変遷後、受任者の利益をも目的とする委任も解除可能に帰着)
改正法 新648条はこの判例法理を明文化
判例
(2) 特別の終了原因( 653条)
・死後も存続する契約の可否
最判平4・9・22金法1358号55頁
【寄託契約】(263-265頁)
Case 12-05 XがY銀行A支店で預金をしようと窓口に現金100万円・預金通帳・入金票を差し出したところ、折悪しく銀行強盗Bが入り、カウンター上にあった100万円をも盗んで逃走した。その後Bは逮捕された。しかし、強奪金は事情を知らなかったサラ金業者Zへの借金の返済や遊興費・生活費に充てられ、Bは無資力となっていた。 XはYに対して、100万円の預金払戻請求ができるか。Bが強奪したのが、XがCDの前で入金直前だった場合だとしたら、結論が変わるか。
1 寄託契約の意義と成立要件(657条)
・保管を役務内容とする要物契約、報酬は特約構成
判例
大判大12・11・20新聞2226号4頁(上記類似の窃盗事例で契約の成立を否定)
・賃貸借との境界線
・特別の寄託:商事寄託(商593条以下)、倉庫営業(商597条以下)、消費寄託( 666条)、混蔵寄託- 株券等の保管及び振替に関する法律14条1項
2 寄託契約の効果
(1) 受寄者の義務等
①有償・無償による保管義務の程度の区別(659条、400条・商593条)
②保管場所( 664条)
③使用や第三者による保管(658条1項。104条も参照)
④委任規定の準用
⑤訴訟・差押えについての通知義務(660条)
(2) 寄託者の義務
①損害賠償義務(661条)
②特約がある場合の報酬支払義務
3 寄託契約の終了
・寄託者からの随時返還請求(=解約、662条・666条2項)
・受寄者からの返還の制限(663条)
・保管場所変更の場合の返還場所(664条ただし書)
4 改正案
・要物契約を諾成契約化し、物の受取前の解除権・損害賠償請求権で調整( 新657・658条)
※無償寄託の場合には書面の有無で扱いが異なることに注意
・新658条は、再寄託ができる場合を拡張し(復委任の新644条の2と整合)、受寄者の責任の制限を修正(105条の基準を廃止。債務不履行の一般規定による)。
・新660条は、通知義務を負わない場合を追加(1項ただし書。615条と整合)、受寄者の寄託
者に対する責任を重視した対第三者のルールを整備(2項・3項)
・約定返還時期前の返還による損害賠償請求権を追加( 新662条2項。新591条3項等と整合)
・損害賠償・費用償還請求権の期間制限を追加(新664条の2。新600条と整合)
・混合寄託の規定を新設(新665条の2)
・消費寄託の準用規定を再検討(新666条)