算 定 方 法 ①一定金額 (ランプサム) ②変動金額 算定方法の 適 性 年間配水量が経年的に安定している事業体 年間配水量の経年的な変動が大きい事業体 メリット 委託費がわかりやすい。 水量変動のリスクが軽減できる。 デ メ リ ッ ト 年間配水量の実績量と想定量との相違が大きい場合、委託費が過大(or 過小)となるリスクがある。 委託費計算が、ランプサム方式と比較して煩雑となる。
受託者
水道事業者
x 約 書 ・ 仕 様 書
受託者
水道事業者
実行計画書
●緊急事態対応方針・計画
・緊急配備・連絡・支援体制
・予防管理・事後対応方針
・外部機関連絡先
●教育訓練計画
【 事故・緊急時対応マニュアル 】
承 認
反映
本対応
●水質事故対応 ●緊急連絡
●災害・事故対応
初動対応
●水質事故対応 ●緊急連絡
●災害・事故対応
緊急事態発生
確認
提出
マニュアル
に反映
月間業務計画書
●予防管理計画
●教育訓練計画
確認
提出
マニュアル
確認
マニュアル
に反映
に反映
第1報
報告
指示
必要に応じ指示
必要に応じ指示
マニュアル
に反映
確認
提出
修正・変更
確認
提出
マニュアル見直し提案
提出、保管
緊急事態対応報告
●水質事故情報報告
●災害及び事故情報報告
報告・指示
図 2.3.3 事故・緊急時対応マニュアル活用手順例
2.3.4 損失リスクの分担
第三者委託の契約締結時点では、事業期間中における、事故、災害、事業計画や法令の変更、物価上昇等の、当初想定していた支出以外の追加的な支出の必要を生じる事象を正確には予測できない。こうした事象により損失が発生する可能性について、ここでは損失リスクという。そして、損失リスクの分担とは、これらの損失が発生した場合に水道事業者と受託者のどちらが損失に対する支出を負担するかをあらかじめ定めることであり、損失を生じた事象に応じて分担を定めている場合が多い。
損失リスクの分担の検討にあたっては、まず委託業務内において考えられる損失リスクを洗い出す。第三者委託において考えられる損失リスクの例として、表 2.3.2 に示すものが考えられる。
次にそれらについて、水道事業者・受託者のどちらが負担するかを決定する。原則として、損失リスクの原因となる行為に責任を有する者又は損失リスクを最もよく管理することができる者が負担することが合理的と考えられる。例えば、水道事業者又は受託者の過失により発生する損失の可能性も損失リスクの一つと考えられ、このような過失による責任については、その過失者が負担することとなる。
また、自然災害や渇水など、委託業務の行為に因るものではない緊急を要する事故
(自然災害など)は、住民に対する最終責任が水道事業者側にあることから、水道事業者側で対応する事例が多く見られている。
損失リスクの分担を定める場合、入札説明書等で水道事業者の案を入札前に示し、受託候補者との間で質問と回答を行い、双方が納得できる損失リスクの分担を構築し ていくことが必要である。その際、水道事業者は施設に関する情報を積極的に開示し、 受託しようとする者が損失リスクの分析をより正確に行えるよう配慮する必要がある。具体的には施設・設備の実態や課題、各種トラブル発生の可能性などの情報を開示す ること等が考えられる。
なお、損失リスクの分担表作成の方法としては、表 2.3.2 のように損失リスクの内容の表の右側に分担者の欄を設け、水道事業者および受託者の損失リスクの分担を○印などで明示する方法が多く用いられている。
さらに、より詳細な損失リスクの分担を行う場合には、リスク分析の手法などにより可能な限り損失リスクを定量化した上で、分担者を決定する方法も考えられる。
なお、本項における損失リスクの分担は、あくまでも費用に関するリスクの分担であり、委託業務における責任範囲の分担については、前項を参考として、水道事業者と受託者との間で別途定めておく必要がある。
表 2.3.2 委託の際に想定される損失リスクの例
損失リスクの種類 | 損失リスクの内容 | 損失リスクの分担 | |
水道事 業者 | 受託者 | ||
入札説明 | 入札説明書等の誤り、入札説明内容の変更に関するもの | ||
事業範囲変更 | 委託事業の業務範囲の縮小、拡充等 | ||
契約締結時 | 契約の締結不能、又は契約の延期 | ||
法令等の変更 | 委託事業に直接関係する法令等の変更 | ||
行政指導 | 規制、指導 | ||
第三者への賠償 | 水質・水量・水圧・給水等の悪化、騒音・振動・地盤沈 下等によるもの | ||
住民訴訟・苦情(断水、水質悪化等に伴う訴訟・苦情に 伴うもの) | |||
事故・災害 | 水道事業者または受託者の責めによる事故の発生 | ||
不可抗力による事故の発生 | |||
施設・設備の劣化等による事故 | |||
契約不履行 | 施設・設備の機能・性能不足によるもの | ||
受託者の作成する業務履行計画書等の不備、施設・設備 との不適合によるもの | |||
水道事業者による指示書等の内容の不備によるもの | |||
受託者側の労使間における労働争議によるもの | |||
業務遂行上の不備(監視制御、補修、管理、記録、連絡 調整の不備等)によるもの | |||
契約終了時の業務引継の不備によるもの | |||
不可抗力(天災等)によるもの | |||
水道事業者・受託者の責によらない水質事故によるもの | |||
財務 | 委託側のデフォルト(支払遅延、不払等) | ||
受託側のデフォルト(倒産等) | |||
物価変動 | 契約期間中のインフレ・デフレ | ||
従 事 者 の 不 正、犯罪 | 情報漏洩、横領等 | ||
環境問題 | 環境規制違反、環境汚染等による事業の制限 | ||
事業の中止 | 事業の中止 | ||
計画変更 | 事業内容の変更 | ||
費用増加 | 原水の条件の変動により、施設の機能・性能上、要求水 準を満足できないことに係る費用 |
※水道事業者、受託者間で協議の上、損失リスクの分担を決定する。
2.3.5 施設更新に関する業務分担の考え方
水道施設の運転管理や水質管理を第三者委託により実施する場合、委託するのはあくまでも水道施設の管理に関する技術上の業務であって、その範囲を除く水道施設そのものの管理は水道事業者の責任となる。したがって、施設の構造や機能が常時適正に維持されるよう、施設の更新や修繕等を行うことは水道事業者の責務である。このため、第三者委託をより円滑に実施するため、水道事業者が施設の劣化状況などを把握した上で大規模補修や施設の更新計画を策定しておくことが求められる。
第三者委託開始後は、日常の運転、維持管理を通して施設の状態を把握している受託者から水道事業者が施設の補修・更新の判断材料とするために施設の劣化状況について情報提供を受けることが有効である。ただし、初期段階では受託者側に十分な知見がないと考えられるため、水道事業者自ら調査を行うことが適当と考えられる。また、受託者が受託業務遂行のために水道事業者に提案する施設の修繕や整備といった資本的投資に対しては、当該施設の状況を踏まえて検討するなど、その対応について規定しておくことが望ましい。
なお、第三者委託では、施設更新は業務の対象ではないが、軽微な補修や消耗品交換については、受託者が行う日常の保守点検業務に含むケースが多い。
このため、更新計画のほか、更新マニュアル等により、施設更新の内容を明確にしておき、受託者が行う簡易な補修と水道事業者が行う施設更新・修繕を明確に区別しておく必要がある。
また、委託契約終了後における機能の原状回復を含めた契約(返還時の施設状態を規定)とすることも考えられる。
2.3.6 施設の運転費用(ユーティリティ)負担区分
施設の運転費用(ユーティリティ)の負担については、過去の実績に基づきユーティリティ調達費を委託費に含めた方が、水道事業者における調達費の変動リスク回避や受託者による調達の柔軟化等による業務の効率化等のメリットがあることが予想され、また、受託者が省エネや薬品の最適注入などへ取り組む上でのインセンティブを働かせやすいとともに、水道事業者の事務量削減も可能となる。この場合、契約上どのように委託費として反映させるかの検討が必要である。
しかし、実際の業務におけるユーティリティ使用量の把握が困難である場合には、当面の間は水道事業者負担とした上で、使用量把握ができてから負担区分を決定することも考えられる。
なお、ユーティリティを受託者負担とする場合には、使用薬品の品質レベルなどの基準を定め、その質に関する要件を規定しておくことも考えられる。
また、現場事務所及び机、イス、水質検査機器などの備品の取り扱いについても、その負担区分を明確に区分しておくことが有効と考えられる。
2.3.7 委託期間の検討
委託期間については、その委託対象業務や範囲、あるいは期間の長短によるメリット・デメリットなどを勘案して設定する。最終的には実情を踏まえて各事業体で判断することになるものの、第三者委託のメリットを極力発揮させるため、複数年とすることが基本になると考えられる。
実際の委託契約期間は、水道事業者にとっては委託事務量の軽減等のメリットがあり、受託者にとっては維持管理ノウハウ構築のインセンティブ、安定的な業務の遂行等のメ リットがあることから、3~5年間で契約が結ばれているケースが多い。また、委託期 間に業務引継期間を含めることが考えられ、事例にはそうした期間に5ヶ月をあてたも のがある。
なお、水道事業は一定方針のもとに長期にわたって計画的に経営されるものであることから、水道施設の更新計画を含めた事業計画を考慮して、委託期間を定めるのが望ましい。また、複数年契約を締結する場合は、予算で債務負担行為として定めておく必要がある。
表 2.3.3 委託期間の長短に伴うメリット・デメリットの比較
委託期間 | ~1年 | 2年 | 3年 | 4年 | 5年~ |
受託者の創意工夫に よる事業効果の向上 | 小さい | 大きい | |||
水道事業者の事務量 (委託期間1年当り) | 多い | 少ない | |||
債務負担行為の設定 | 不要 | 必要 | |||
予算の均一化 | 各年変動大 | 各年変動小 | |||
受託者の契約不履行 | リスク低 | リスク高 |
2.3.8 委託費用の試算
委託費用の試算は、第三者委託の実施可能性を検討する上で、最も重要な要素の一つであると考えられる。このことから、委託範囲、期間等の条件を整理の上、現在実施している業務における実績も踏まえ、費用の試算を行うことが重要である。
(1)委託費の試算方法
委託費の試算に当たっては配置予定人員からの人件費の積算、業者の見積もりを参考にした事業費の積み上げ等を踏まえて可能な限り適正となる費用を見積もる。
委託対象に修繕業務を含めた場合、保守点検との一体的な実施による効率化、修繕の発注、管理に係る人件費の削減が期待される。その際、費用削減による利益が受託者にも還元される仕組みにすることで、受託者側に効率化への取組のインセンティブを働かせるようにする必要がある。
委託費の算出方法としては、処理水量を事前に想定して一定金額(ランプサム)とする方法と、実績水量によって変動する費用(ユーティリィティ等)・変動しない費用に分類し、その合計金額とする方法が考えられる。特に第三者委託では複数年契約が一般的であることから、スライド条項やインフレ条項を勘案して、予め設定したルールのもとで、毎年委託費の調整を行うのが望ましい。表 2.3.4 に、両者の比較を示す。
表 2.3.4 委託費算定方法の比較
算 x | x | x | ||
①一定金額 | (ランプサム) | ②変動金額 | ||
算定方法の 適 性 | 年間配水量が経年的に安定している事業体 | 年間配水量の経年的な変動が大きい事業体 | ||
メリット | 委託費がわかりやすい。 | 水量変動のリスクが軽減 できる。 | ||
デ メ リ ッ ト | 年間配水量の実績量と想定量との相違が大きい場合、委託費が過大(or 過小)となるリスクが ある。 | 委託費計算が、ランプサム方式と比較して煩雑となる。 |
<参考>
・ 下水道事業における参考知見として、「性能発注の考え方に基づく民間委託のためのガイドライン」(平成 13 年 4 月国土交通省作成)では、下水道事業における予定価格等の決定方法として下記の①から③の方法があると記載されている。
① 自らの処理場の実績に基づいて決定する。
② 他の処理場のデータを参考に決定する。
③ 積算要領に基づき決定する。(但し、この場合実際の業務を実施する人員数は、積算要領と異なってもよいことに留意すること。)
(2)委託費の構造
委託費は、以下の算式で計算できる。先述の一定金額方式と変動金額方式との差異は、浄水量を一定と想定して算出するか、または実績の変動に基づいて算出するかである。
固定費は人件費や電力基本料金等、固定的に要する費用、変動費単価は薬品や電力従量料金等、変動する費用の単価である。固定費と変動費の算出例として、図 2.3.4の方法が挙げられる。
委託費=(固定費)+(変動費単価)×(浄水量)
費 目 | 金 額 | 区分(例) |
人件費 | 円 円 円 円 円 円 円 円 円 円 円 円 円 ・ ・ | 固定費 |
点検委託費 | 固定費 | |
薬品費 | 変動費 | |
燃料費 | 変動費 | |
電気基本料金 | 固定費 | |
電気従量料金 | 変動費 | |
水道基本料金 | 固定費 | |
水道従量料金 | 変動費 | |
消耗品費 | 固定費 | |
環境整備費 | 固定費 | |
保険料 | 固定費 | |
その他諸経費 | 固定費 | |
一般管理費 | 固定費 | |
・ | ・ | |
・ | ・ |
受託者選定時に、実績などから想定される処理水量から委託費総額の見積金額を提示
⇒ 固定費の合計金額÷委託期間(月)
=1ヶ月当たりの固定費(α)
⇒ 変動費の合計金額÷計画浄水量
=1m3当たりの変動費単価(β)
契約後はα、βの数値とともに委託費算定式を契約書別紙に明記して支払額を決定委託費(1ヶ月当たり)=α+β×当該月の浄水量(m3)
上記の見積金額を踏まえて入札、落札者の決定
受託者選定要項にて、実績値などに基づき委託者から計画浄水量を提示
図 2.3.4 委託費(固定費・変動費)の算出例
(3)委託費の見直し
契約期間を複数年契約とした場合、物価変動等の調整を契約に組み込む必要があると考えられる。具体的には、受託者が作成する費用内訳書の中の費目ごとに、何らかの物価指数に基づき調整する。
法令変更や技術革新等による委託内容に変更が生じた場合、予め契約において定めた手続きに則って、受託者は事業実施計画及び費用内訳の変更を提案し、合意のうえ変更する。
なお、委託費改定の算出根拠となる指標、算出方法は次のものがある。ア 各費用が主として人件費により構成されているもの
毎月勤労統計調査結果速報(厚生労働省)、若しくは産業別名目賃金指数イ 各費用が主として物件費により構成されているもの
物価指数月報(日本銀行)、若しくは国内企業物価指数
(4)改定率計算の実施事例
各指標が本契約締結日時点の指標から上方又は下方のいずれか、水道事業者が定める一定の基準以上に変動した場合、次の算式などにより算出された改定率を適用し、委託費の改定が考えられる。
委託費の改定率=1 + 各指標の変動率(本契約締結日時点の各指標を基準値とする)
2.3.9 第三者委託導入の判定
(1)メリット・デメリットの抽出
第三者委託導入の判定に際しては、予想されるメリット、デメリットを可能な限り抽出、整理する。具体的には表 2.1.2 実施可能性の判断基準を参考に、それをさらに補足、充実させることが考えられる。
判断基準として整理する項目は事業体の状況や第三者委託の内容により様々と考えられるが、例えば、コストについては委託業務の予定価格と現行の総支出との比較を行うことや、今後の事業展開に向けて、第三者委託の業務を通じた受託者とのパートナーシップの構築、受託者が施設・設備状況を常時把握できる状況であることから、施設改善計画の企画立案などのコンサルタントとしての役割への期待といった項目も考えられる。
(2)評価項目の定量化
次に、抽出・整理したメリット・デメリットを、第三者委託導入の目的にあったもの であるかどうか、メリットがデメリットより大きく水道事業経営の上で効果があるか等、総合的に評価する。評価に際しては、各事項を定量化(点数化)することにより行うこ とが考えられる。
定量化にあたっては、各事業体によって重要視するポイントが異なることから、その配点バランスなどは各事業体の実情に応じて決定していくことになる。一方、定量化することが困難な事項が発生することも考えられ、完全な定量化は現実的ではないため、最終的な判定の際には定性的な評価も勘案することが必要であるが、可能な限り定量化しておくことで客観性の向上を図ることが重要である。
判定を行う際には各検討の概要を把握するための資料として、表 2.3.5 に示す各検討項目の評価表のようなものを作成することが有用であると考えられる。
第三者委託を導入した(導入を予定している)事業体では、実施の判定においては、コスト面よりも技術者確保や施設の維持管理体制の面を重視している事業体が多く見られている。また、緊急事態発生時の対応について、受託者側での近隣事業所からの支援体制を含め、広域的なバックアップ体制が確立されているかを判断の材料とすることも考えられる。
表 2.3.5 第三者委託における各検討項目の評価表の例①
各検討項目 検討項目の具体的内容 委託に伴う効果など 備 考
2.3.1 水道法の責務 水道事業者と受託者の水道法上の規定の分担 問題 無 若干 多
委託対象施設・委託業務の選定
委 託 範 囲 適切な委託範囲の設定
職場環境面 水道事業者・受託者とで独立した職場スペース確保管理目標設定 水質・水量等の管理目標値設定
問題 無 若干 多
問題 無 若干 多
問題 無 若干 多
2.3.2
技術力や人事への影響
技 術 技術力向上
事業体職員の技術力維持
人 員 維持管理要員の充実、事業体職員の削減
効果 x x x
効果 x x x
効果 大 中 小
2.3.3
事故・緊急時対応
体 制 人員配置、受託者の緊急支援体制の充実適切な緊急対応体制整備
対 応 計 画 事故・緊急時対応マニュアル等の作成
効果 x x x
問題 無 若干 多
効果 大 中 小
2.3.4
リスク分担
引 受 能 力 受託者のリスク引受能力リスク分担 適切なリスク分担の設定
問題 無 若干 多
問題 無 若干 多
2.3.5
施設更新の方針
施 設 把 握 施設状況の把握、施設診断補 修 適正な補修の実施
更新計画立案 施設更新計画の作成
効果 x x x
効果 x x x
効果 x x x
※各事業体で、適宜修正して用いるものである。
各検討項目
検討項目の具体的内容
委託に伴う効果など
備
考
2.3.6
施設運転費用
(ユーティリティ)負担区分
x x コ ス ト ユーティリティ調達コストの低減
x x 事 務 水道事業者のユーティリティ調達事務の低減
効果
大
中
小
効果
大
中
小
2.3.7 委 託 効 果 受託者の創意工夫による事業効果の向上
委託期間の検討 予 算 x x 化 初期投資の受託者負担等を見込んだ予算平準化
効果
効果
大
中
小
大
中
小
x 約 保 証 委託期間中の、受託者の契約不履行など
リスク
大
中
小
委 託 事 務 量 事業体の委託に関する事務量
負担
x
x
x
2.3.8
委託費用の試算
効
率 化 効率化による費用の低減
効果
大
中
小
試 算 の 精 度 見積り、類似業務実績参考、他
精度
x
x
低
表 2.3.5(続き) 第三者委託における各検討項目の評価表の例②
2.4 第三者委託導入の意思決定
第三者委託導入の意思決定については、前述した評価を受けて、技術力の確保、官民の役割分担や責任分担の明確化、およびコスト縮減効果等の観点から、第三者委託導入の目的に適ったものとなるかどうかを、構築した検討体制の下で判断し、決定する。
その際、以後の事業運営がより円滑に進むよう、予算関連部局、首長、議会、住民等に対し事前に説明し、調整を図っておくことが重要と考えられる。
3.契約手続き編
3.1 契約の手順
受託者の選定手順は、選定方式により異なるが、おおよそ以下のような流れになると考えられる。受託者の選定方式については、「3.2.1 受託者の選定方式の検討」を参照すること。
なお、導入決定後から契約締結までのスケジュールについては、「表 3.1.1 第三者委託導入決
定後の手順(参考)」、「表 3.1.2 総合評価競争入札による事業者選定のスケジュール(実施例)」を参照されたい。
(1)水道事業者による施設機能の確認
受託者選定要項に添付する施設機能報告書や参考資料等を作成するため、委託の対象となる施設の機能や維持管理状況についての調査を行い、次の資料を整備する。①施設の図面、②各設備の補修履歴等、③施設機能を表す資料、④過去の水質、水量、水圧等の必要なデータ等。
(2)受託者選定要項の作成
受託者の業務内容や契約条件をまとめた受託者選定要項(入札説明書、契約(条件)書、業務要求水準書(仕様書)、施設機能報告書、補修等工事予定書等)を作成する。
特に重要なものは、契約(条件)書と業務要求水準書であり、十分に検討する必要がある。また、総合評価競争入札で選定する場合には、評価の基準を示すこと等が必要になる。
施設機能報告書は、応募者が提案の作成や適切な見積を行うために重要なものであり、可能な限り明確なものを作成することが望ましい。この内容に不足や、誤りがある場合は、契約変更等の手続きが必要になることもあり、十分に留意する必要がある。
ア 入札説明書
受託者選定の手続きやスケジュールを示したものである。入札説明書において明らかにすべき事項としては、次のようなものが考えられる。
① 提出すべき資料の内容
② 申請書及び資料の提出期限、提出場所、提出方法
③ 申請書及び資料の作成要領
また、総合評価競争入札を採用する場合や、公募型プロポーザルによる場合は、評価の基準や方法等も提示する。
イ 契約(条件)書
契約(条件)書は、リスク分担や対応策等の契約条件を規定したものである。ウ 業務要求水準書(仕様書)
業務要求水準書は、受託者の満たすべき業務の水準(要求水準)及び受託者の遵守すべき事項を定めたもので、水質、水量、水圧等について、これまでの実績に基づいて定めることが有効である。また、水道法上の規定により高めに基準を設定することも可能である。
① 水質の管理
原水の水質に応じた浄水処理を行い、その水道水が常に要求水準を満足するように浄水処理工程の水質を管理すること。