Contract
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任意後見〈法令の表記〉(略称)任意後見(法令名)任意後見契約に関する法律
1 任意後見
弁護士
xx xxx
い事由がある者等については、任意後見人になることができない(任意後見4条1項3号、民法847条)。
文中に掲げる法令については次の略記とする。任意後見 任意後見契約に関する法律
Q1-1 任意後見制度
私には、身寄りがありません。将来、私の判断能力が衰えた時のために、財産管理等を任せる人(任意後見人)をあらかじめ選んでおく任意後見制度という制度があると聞いたのですが、どのような制度でしょうか。
A1-1
任意後見制度とは、ご本人が十分な判断能力を有している時に、あらかじめ、任意後見人となる方やその方に委任する事務の内容をxx証書による契約で定めておく制度です。ご本人の判断能力が不十分になった後に、任意後見人が委任された事務をご本人に代わって行います。
解説
1 「任意後見制度」とは、本人が十分な判断能力を有する時に、あらかじめ任意後見人や任意後見人に委任する事務の内容を契約で定めておき、判断能力が不十分になった後に、任意後見人が委任された事務を本人に代わって行う制度である。
xx後見制度のうち法定後見制度は、判断能力が衰えるなど、自分で後見人を選ぶことが困難となった場合に、家庭裁判所が後見人を選ぶ制度であるのに対し、任意後見制度は、自分の意思で後見人を選ぶことができる制度である。したがって、自分が信頼する人に確実に後見人になって欲しいという場合は、任意後見制度を利用するとよい。また、任意後見制度であれば、任意後見人に委任する事務の範囲や任意後見人に付与する代理権の範囲についてもあらかじめ自分で決めておくことができる。
2 成人であれば、誰でも、任意後見人になることができる。何らかの資格が必要ということはないし、親族や知人でも問題はない。ただし、不適任事由があり、不正な行為、著しい不行跡(品行がはなはだしく悪いこと)、その他任意後見人の任務に適しな
Q1-2 任意後見契約
信頼できる人が見つかりましたので、任意後見制度を利用したいと思いますが、どうすればよいのでしょうか。
A1-2
任意後見人となる方との間で、任意後見契約を締結します。任意後見契約を締結するには、ご本人の真意に基づく契約であることを担保する趣旨から、xx証書で行う必要があります。
解説
1 任意後見制度を利用したいという場合は、まずは任意後見契約を締結する必要がある。
任意後見契約とは、任意後見人に対し、精神上の障害により判断能力が不十分な状況における自己の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務の全部又は一部を委託し、その委託に係る事務について代理権を付与する契約である(任意後見2条1号)。任意後見契約は委任契約のひとつであり、契約の内容は当事者間で自由に定めることができる。
2 任意後見契約は、本人の真意に基づく契約であることを担保する趣旨から法律で方式が定められており、xx証書によってしなければならない(任意後見3条)。任意後見契約が締結されると、公証人の嘱託により、法務局で登記される。
Q1-3 任意後見人の職務
子供のいない叔母から任意後見人になって欲しいと頼まれました。任意後見人になった場合、どのような仕事をすることになりますか。
A1-3
任意後見人の職務は、「財産管理」と「身上監護」になります。
解説
1 任意後見人の職務は、「財産管理」と「身上監護」とに分けることができる。
具体的には、「財産管理」とは、自宅等の不動産、預貯金、有価証券等の管理、年金等の収入の管理、税金や公共料金の支払い等が想定される。また、「身上監護」とは、介護その他の福祉サービス契約の締結、要介護認定の申請等に関する諸手続、治療・入
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院等の医療契約の締結、入院の手続等が想定される。
2 介護行為等の事実行為や、葬儀・埋葬等の死後の事務は任意後見契約の対象とはならない。この点は、法定後見制度と同じである。ただし、これらの事実行為や死後の事務を委任する旨の契約を締結し、これを任意後見契約とともに1通のxx証書に記載することは可能である。
3 任意後見人に報酬を支払うかどうかは自由である。特約がなければ無報酬となるので(民法648条1項)、任意後見人に報酬を支払いたいという場合は、当事者で合意をして、任意後見契約の中に金額等を定めておく必要がある。
Q1-4 任意後見契約の効力発生時期
子供のいない叔母と任意後見契約を締結しましたが、いつから任意後見人の仕事が開始しますか。
A1-4
任意後見人の仕事は、将来、本人の判断能力が低下し、任意後見監督人が選任されたときから開始します。解説
1 任意後見契約は、家庭裁判所によって任意後見監
督人が選任された時から効力が生ずる(任意後見2条 1号)。よって、本人が精神上の障害により判断能力が不十分な状況になったときは、任意後見人とされている者は任意後見監督人の選任の審判申立てを行い(任意後見4条1項本文)、任意後見監督人を家庭裁判所に選任してもらう。
2 このように、任意後見人の職務が開始するのは、本人の判断能力が低下し任意後見監督人が選任された時であるため、安全のため判断能力が低下する前から信頼できる人に財産管理を任せておきたいという場合は、任意後見契約の締結と同時に財産管理等に関する契約を締結しておくとよい。いわゆる「移行型」と言われる利用形態であり、判断能力が十分ある間は委任契約に基づく財産管理等を行い、判断能力が低下した後は任意後見監督人の選任を行って任意後見契約に移行することになる。
Q1-5 任意後見人の監督
任意後見人を選んだ場合、きちんと財産管理をしてくれるのかが心配です。任意後見人を監督する仕組みはありますか。
A1-5
任意後見監督人が選任され、任意後見人の仕事が適正になされているか否かをチェックします。また、家庭裁判所も任意後見監督人からの報告を通じて、間接的に任意後見人を監督します。
解説
1 任意後見人は、家庭裁判所ではなく、任意後見監督人に対し、自らの後見事務について報告を行う必要がある。任意後見監督人は、任意後見人に財産目録を提出させるなどして、任意後見人の職務が適正に行われているか監督を行う(任意後見7条1項1号、同条3項)。任意後見監督人に対する報告の頻度や時期については、あらかじめ任意後見契約で定めておくとよい。
2 任意後見監督人には、親族等ではなく、弁護士や司法書士といった専門職の第三者が選ばれることが多い。また、任意後見監督人には、本人の財産の中から、家庭裁判所が決定した報酬が支払われる(任意後見7条4項、民法862条)。なお、報酬の額については、東京家庭裁判所のホームページで目安が公開されており参考になる(xxxxx://xxx.xxxxxx.xx.xx/ tokyo-f/vc-files/tokyo-f/file/0102.pdf)。
また、本人と任意後見人との利益が相反する法律行為を行うときには、任意後見監督人が本人を代理する(任意後見7条1項4号)。例えば、本人の不動産を任意後見人が購入する場合や、任意後見人が金融機関から借り入れるにあたって本人の不動産に抵当権を設定する場合、本人と任意後見人との間で遺産分割協議を行う場合等がこれにあたる。
3 任意後見監督人は、任意後見人の事務に関し、家庭裁判所に定期的に報告を行う(任意後見7条1項2号)。家庭裁判所は、このような任意後見監督人からの報告を通じて、間接的に任意後見人を監督する。また、家庭裁判所は、任意後見人に、不正行為、著しい不行跡、その他任務に適しない事由が認められたときは、本人や任意後見監督人等からの請求により、任意後見人を解任することができる(任意後見8条)。
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