Contract
2 労働時間に関する労使協定等
(1)時間外・休日労働協定(36 協定)
臨時的・一時的なやむを得ない必要がある場合には、使用者は、例外的に、労働者に法定時間(1 日 8 時間、1 週 40 時間)を超えて労働させたり(時間外労働)、法定休日に労働させる(休日労働)ことができます(労働基準法第 36 条第 1 項)。そのためには、非常時(労働基準法第 33 条)を除いて、労使協定の締結と労働基準監督署長への届出が必要になります(労働基準法第 36条第 1 項、労働基準法施行規則第 17 条)。この労使協定を、36(サブロク)協定と呼んでいます(ただし、36 協定によって直ちに労働者に残業義務が発生するわけではありません)。
しかし、これまで労働基準法には時間外労働の上限時間や上限回数を制限する規定はありませんでした。具体的な基準は、厚生労働省の告示(「労働時間の延長の限度等に関する基準」平成 10 年厚生労働省告示 154 号)で基準時間
(限度時間)(例えば一般の労働者の場合は 1 か月で 45 時間、1 年間で 360 時間)が定められているだけでした。しかも、限度時間を超えて働かせなければならない特別の事情(臨時的なものに限ります)が生じた場合に備えて特別条項を付することができ(特別条項付き 36 協定)、その場合の上限は告示には定められていませんでした。そうしたことから、長時間労働の問題はなかなか改善されませんでした。
そこで、働き過ぎを防ぐことによって労働者の健康を守り、ライフ・ワーク・バランスを実現するため、平成 30 年 6 月、「働き方改革関連法」の成立に伴い労働基準法が改正され、36 協定を締結する場合でも時間外労働時間等の上限時間や上限回数が定められ、刑罰規定が設定されました(原則として平成 31 年 4 月 1 日施行)。具体的には以下のとおりです。
ア 時間外労働の上限時間(限度時間)
原則 1 ヶ月 45 時間、1 年 360 時間(労基法第 36 条第 3 項、第 4 項)
(但し、1 年単位の変形労働時間制採用事業場で対象期間が 3 ヶ月超の場合、1 ヶ月 42 時間、1 年 320 時間)
この限度時間の原則が適用されるのは、時間外労働についてであり、休日労働を含みません。
イ 上記限度時間の例外として「事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に限度時間を越えて」時間外労働や休日労働をさせる必要がある場合(労基法第 36 条第 5,第 6 項)も、
80 第 3 部 労働関係法上の労使協定等
① 1 年 720 時間以下(休日労働は含まない、時間外労働のみ)
② 複数月(2 ~ 6 ヶ月)の平均が 80 時間以下(休日労働を含む)
③ 月 100 時間未満(休日労働を含む)でなければならないとされました。
そして、④時間外労働については、原則である 1 ヶ月 45 時間を越えることができるのは年間 6 回まで(休日労働は含まない)とされました。臨時的な特別の事情がある場合についても、36 協定はこれら①~④を全て満たす必要があります。また、上記②、③の違反に対しては、6 ヶ月以下の懲役又は 30万円以下の罰金が科されることになりました(労基法第119 条、第36 条第6 項)。
但し、中小企業については 2020 年 4 月 1 日から適用となり、また自動車運転の業務、建設事業、医師、鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造事業については施行から 5 年間適用が猶予され、新技術・新商品等の研究開発業務については適用が除外されていることに注意して下さい。
この改正に伴い、①労働時間を延長し、休日労働させることができる労働者の範囲、②対象期間(労働時間を延長し、休日労働をさせることができる期間)、
③労働時間を延長し、休日労働をさせることができる場合、④対象期間(1 年間に限る)における 1 日、1 ヶ月、1 年のそれぞれの期間について延長することができる労働時間、⑤厚生労働省令で定める事項(協定の有効期間、限度時間を超えて労働させる場合の具体的場合や健康福祉確保措置、割増賃金の率、手続など)を記載した協定届(様式第 9 号、第 9 号の 2)を、労働基準監督署長に届け出ることが必要です。
過半数代表(事業場に労働者の過半数を組織する労働組合があるときはその労働組合(過半数労働組合)、過半数を組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者(過半数代表者 )は、真に労働者の意思が反映されるよう民主的な手続で選出されなければなりません。使用者が指名したり選出手続に干渉するなどして使用者の意向に基づき選出された者であってはなりません(労働基準法施行規則第 6 条の 2 の第 1 項 2 号)。
36 協定を締結するかどうかは、各事業場ごとに労使自治に基づいて決めるべきことです。長時間労働を抑制し、労働者の健康等を確保するため、特に臨時的に限度時間を超えて労働させる場合を含む 36 協定を締結する場合には、時間外労働などの上限時間(80 時間や 100 時間は、脳心臓疾患や精神疾患の労災認定における過重労働の時間的基準に相当するものです)や臨時的に限度時間を超えて労働させる場合(できるだけ具体的に定めなければならず、「業務上の都合上必要な場合」や「業務上やむを得ない場合」など恒常的な長時間
第 3 部 労働関係法上の労使協定等
81
労働を招くおそれがある抽象的な定め方は認められないとされています。平成 30 年 9 月 7 日厚生労働省告示第 323 号第 5 条)、健康福祉確保措置(同告示第
8 条)などについて、慎重かつ厳格に定めることが必要です。
月 60 時間を超える時間外労働の割増賃金率は50%以上と定められていますが(労働基準法第 37 条第 1 項但書)、中小企業については適用が猶予されていました。しかし、中小企業で働く労働者の長時間労働を抑制し、健康確保等を図る観点から、この猶予措置が 2023 年 4 月 1 日から廃止され、中小企業にも適用されることになっています。なお、月 60 時間を超える時間外労働に対しては、過半数組合などとの協定により、その割増賃金を支払う代わりに有給の休暇を付与する制度(代替休暇)を設けることができます(労働基準法第 37 条第 3 項)。
規定例
(対象者及び期間)
○ 代替休暇は、賃金計算期間の初日を起算日とする 1 ヶ月において、 60 時間を超える時間外労働を行った者のうち半日以上の代替休暇を取得することが可能な者(以下「代替休暇取得可能労働者」という)に対して、当該代替休暇取得可能労働者が取得の意向を示した場合に、当該月の末日の翌日から 2 ヶ月以内に与えられる。
(付与単位)
○ 代替休暇は、半日又は 1 日単位で与えられる。この場合の半日とは、午前(8:00 ~ 12:00)又は午後(13:00 ~ 17:00)の 4 時間のことをいう。
(代替休暇の計算方法)
○ 代替休暇の時間数は、1 か月 60 時間を超える時間外労働時間数に換算率を乗じた時間数とする。この場合において、換算率とは、代替休暇を取得しなかった場合に支払う割増賃金率 50%から代替休暇を取得した場合に支払う割増賃金率 30%を差し引いた 20%とする。また、会社は、労働者が代替休暇を取得した場合、取得した時間数を換算率(20%)で除した時間数については、20%の割増賃
82 第 3 部 労働関係法上の労使協定等
金の支払を要しない。
(代替休暇の意向確認)
○ 会社は、1 か月に 60 時間を超える時間外労働を行った代替休暇取得可能労働者に対して、当該月の末日の翌日から 5 日以内に代替休暇取得の意向を確認するものとする。この場合において、5 日以内に意向の有無が不明なときは、意向がなかったものとみなす。
(賃金の支払日)
○ △△会社は、前記の意向確認の結果、取得の意向があった場合には、支払うべき割増賃金額のうち代替休暇に代替される賃金額を除いた部分を通常の賃金支払日に支払うこととする。ただし、当該月の末日の翌日から 2 か月以内に取得がなされなかった場合には、取得がなされないことが確定した月に係る割増賃金支払日に残りの 20%の割増賃金を支払うこととする。
○ △△会社は、前記の意向確認の結果、取得の意向がなかった場合には、当該月に行われた時間外労働に係る割増賃金の総額を通常の賃金支払日に支払うこととする。ただし、当該月の末日の翌日から 2 か月以内に労働者から取得の意向が表明された場合には、会社の承認により、代替休暇を与えることができる。この場合、取得があった月に係る賃金支払日に過払分の賃金を清算するものとする。
(2)時間単位の有給休暇
事業場単位での過半数代表との労使協定の締結により、1 年に 5 日分を限度として、労使協定に定める日数分の年次有給休暇を時間単位で取得できることになりました(労働基準法第 39 条第 4 項)。
規定例
(対象者)
○ すべての労働者を対象とする。
第 3 部 労働関係法上の労使協定等
83
(日数の上限)
○ 年次有給休暇を時間単位で取得することができる日数は 5 日以内とする。
(1 日分の年次有給休暇に相当する時間単位年休)
○ 年次有給休暇を時間単位で取得する場合は、1 日分の年次有給休暇に相当する時間数を 8 時間とする。
(取得単位)
○ 年次有給休暇を時間単位で取得する場合は、 1 時間単位で取得するものとする。
(3)みなし労働時間制に関する労使協定等
みなし労働時間制とは、労働時間を実時間で算定する実労働時間原則の例外として、実際働いた労働時間と関わりなく、あらかじめ労使の合意で定めた時間を働いたものとみなす制度です。労働基準法では、専門業務型裁量労働制(労働基準法第 38 条の 3)、企画業務型裁量労働制(労働基準法第 38 条の 4)、事業場外労働のみなし労働時間制(労働基準法第 38 条の 2)の 3 種類が定められています。
みなし労働時間制とは、労働時間を実時間で算定する実労働時間原則の例外として、実際働いた労働時間と関わりなく、あらかじめ労使の合意で定めた時間を働いたものとみなす制度です。労働基準法では、専門業務型裁量労働制(労働基準法第 38 条の 3)、企画業務型裁量労働制(労働基準法第 38 条の 4)、事業場外労働のみなし労働時間制(労働基準法第 38 条の 2)の 3 種類が定められています。
みなし労働時間制は、実際の労働時間よりも少なく定められる危険性も高く、その場合は実際にみなし労働時間を超えて働いても、その分の時間外の割増賃金を請求することができなくなります。使用者にとっては残業代の「節約」になりますが、労働者にとっては無限定な長時間労働を強いられることにもなり
84 第 3 部 労働関係法上の労使協定等
かねません。そこで労働基準法は、これらの制度を導入するに当たって厳格な要件を定めています。
なお、みなし労働時間制に関する規定が適用される場合でも、休憩、深夜労働、休日労働に関する規定は適用されます。
ア 専門業務型裁量労働制(労働基準法第 38 条の 3)
専門業務型の対象業務としては、新商品若しくは新技術の研究開発、情報処理システムの分析又は設計の業務など、現在 19 業務が定められています
(労働基準法施行規則第 24 条の 2 の 2、労働省告示第 7 号(平 9.2.14 )。対象業務が高度の専門性、裁量性を持つものであるかどうか、業務の遂行について労働者が自主的に決定することができるものであるかどうかなどについて、厳格にチェックすることが必要です。
またこの制度を導入するためには、①対象業務、②当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し当該業務に従事する労働者に対し具体的な指示をしないこととすること、③みなし労働時間、④健康福祉確保措置、⑤苦情処理措置、⑥有効期間などを定めた労使協定を締結することが必要です(但し労使委員会等の決議で代替も可能)。また労使協定は、協定届(様式第13 号)によって労働基準監督署長に届け出ることが求められています。
規定例
株式会社○○と○○労働組合は、 専門業務型裁量労働に関し、次のとおり協定する。
(適用対象者)
○ ◇◇研究所で研究業務に従事する者とする。但し、 裁量性のない補助的業務は除く。
(みなし労働時間)
○ 所定労働日に勤務した場合は、○時間労働したものとみなす。
(深夜労働・休日労働)
○ 業務の都合で、やむを得ず深夜又は休日に労働する場合は、原則
第 3 部 労働関係法上の労使協定等
85
として事前に所属長の許可を得るものとし、その勤務時間はみなし労働には含めない。
深夜又は休日における労働については、通常の勤務者と同様賃金規定○条の割増賃金を支給する。
(健康及び福祉確保措置)
○ △△会社と○○労働組合は、労使各○名からなる労使委員会を設置し、専門職の裁量労働従事者の健康及び福祉の確保のための措置を講ずる。
(苦情処理)
○ △△会社と○○労働組合は、前条の労使委員会内に、苦情処理小委員会を設置し、専門職の裁量労働従事者からの苦情の処理のための措置を講ずる。
(記録の保存)
○ 裁量労働従事者の健康福祉確保、苦情処理に関して講じた措置の記録は、本協定の有効期間及びその期間満了後 3 年間保存する。
(協定の有効期間)
○ 平成○年○月○日から平成○年○月○日までの 1 年間とする。
イ 企画業務型裁量労働制(労働基準法第 38 条の 4)
企画業務型裁量労働制は、事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務を行う労働者であって、業務の遂行手段や時間配分等を自らの裁量で決定し使用者から具体的な指示を受けない者(ホワイトカラー)を対象とするもので、労使委員会の決議・届出がされ、労働者本人の同意を得た場合には、労使委員会決議で定めた時間を労働したとみなすものです。
この場合も、対象事業場や対象業務、対象労働者の担当業務などが法の定める要件を充たすものであるかどうかについて、厳格にチェックすることが必要です。
この制度を導入するためには、①労働基準法に定める要件を充たす労使委
86 第 3 部 労働関係法上の労使協定等
員会を設置することと、②対象業務、対象労働者の範囲、みなし労働時間など 8 項目について出席委員の 5 分の 4 以上の多数による労使委員会決議をし、その決議内容を所定の様式(様式第 13 号の 2)で労働基準監督署長に届け出ることが必要です。
また、実際に適用するには、対象労働者の個別同意が必要です。
規定例
株式会社○○と○○労働組合は、企画業務型裁量労働制の導入、運用に関する労使委員会の運営規定を、以下のとおり定める。
(労使委員会の設置)
○ 会社は、労働基準法第 38 条の 4 に基づき、企画業務型裁量労働制の導入、運用に関する決議及び調査、審議を行うため、対象事業場ごとに労使委員会を設置する。
(労使委員会の構成)
○ 労使委員会は、対象事業場における労使各○名の代表委員で構成する。
使用者側代表委員は会社が任命する。
労働者側代表委員は、労働組合に指名された者とする。ただし、労働組合が過半数労働組合でなくなったときは、過半数代表者を選出する。
(労使委員会の決議事項)
○ 労使委員会は、次の事項について決議を行う。
1 対象業務
2 対象従業員の範囲
3 みなし労働時間数
4 対象従業員の健康福祉確保に関する具体的措置
5 対象従業員の苦情処理に関する具体的措置
6 対象従業員の労働時間、健康福祉確保措置、苦情処理に関する措置や個別同意に関する記録を保存すること
第 3 部 労働関係法上の労使協定等
87
7 対象従業員からの同意の確認とその手続、同意しなかった従業員に対する不利益取扱いの禁止
8 決議の有効期間
(有効期間)
○ この規定の有効期間は平成○年○月○日から平成○年○月○日までの 1 年間とする。
ウ 事業場外労働のみなし労働時間制(労働基準法第 38 条の 2)
営業マンなどの外勤業務については、事業場から離れたところで行われるため、xxx労働時間を使用者が把握し算定することは物理的に困難です。そこで、このような外勤業務について「労働時間を算定し難い」場合は、①原則として所定労働時間(就業規則等で定める時間)働いたものとみなすか、
②その業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要な場合は、その業務の遂行に「通常必要とされる時間」働いたものとみなすこととしています。これが、事業場外労働のみなし労働時間制です。②の場合は、過半数労働組合等との労使協定によって「通常必要とされる時間」を定めることができ、その労使協定は労働基準監督署長に届け出なければなりません。
従って、事業場外での労働であっても、使用者が労働時間を算定できる場合にはこの制度は適用されません。この場合は、原則に戻って実労働時間で計算して割増賃金を支払う必要があります。
適正なみなし労働時間(通常必要とされる時間)を定めるために、労働者代表は労使協定の締結に向け積極的に努力することが望まれます。
規定例
株式会社○○と○○労働組合は、事業場外労働をさせる場合に関し、次のとおり協定する。
88 第 3 部 労働関係法上の労使協定等
(適用対象者)
○ 労働時間の全部又は一部につき事業場外で業務に従事し、専ら営業業務に従事するため、労働時間を算定し難いと認められる営業部所属の従業員とする。
(みなし労働時間制)
○ 前条の営業業務遂行のため通常必要とされる労働時間は 1 日につき 9 時間とする。
(適用除外)
○ 次の各号に該当する場合は、前条の規定は適用しない。
1 会社が個別的な業務指示をしたり、 労働者が電話連絡等により業務の状況等を会社に報告することなどにより、 会社が事業場外での
労働時間を把握できる場合
2 1 日の労働時間の全部について事業場内で業務に従事した場合
3 欠勤、年次有給休暇の取得により業務に従事しなかった場合
(深夜労働・休日労働)
○ 深夜又は休日における労働については、通常の勤務者と同様、賃金規定○条の割増賃金を支給する。
(協定の有効期間)
○ 平成○年○月○日から平成○年○月○日までの 1 年間とする。
(4)フレックスタイム制(労働基準法第 32 条の 3)
フレックスタイム制は、一定期間(清算期間)の総所定労働時間を定めておき、労働者がその範囲内で各日の始業及び終業の時刻の双方を自分で決定できることにして、労働者がその生活と業務との調和を図りながら効率的に働くことを可能にする制度です。
この制度を導入するためには、①就業規則等で始業及び終業の時刻をその労働者の決定に委ねる旨を規定すること、②労使協定で次の事項について締結することが必要です。
第 3 部 労働関係法上の労使協定等
89
ア 対象労働者の範囲
イ 清算期間(起算日を明確にする)
ウ 清算期間における総所定労働時間(法定労働時間を超えない範囲)エ 標準となる 1 日の労働時間
オ コアタイム(必ず労働しなければならない時間帯)を定めるときは、その開始・終了時刻
カ フレキシブルタイム(選択により労働することができる時間帯)に制限を設ける場合は、その開始・終了時刻
規定例
株式会社○○と○○労働組合は、労働基準法第32 条の3 に基づき、フレックスタイム制に関し、次のとおり協定する。
(適用対象者)
○ ○○業務に従事する従業員とする。
(清算期間)
○ 毎月 1 日から末日
(清算期間における総労働時間)
○ ① | 1 か月 31 日の月 | 177 時間 |
② | 1 か月 30 日の月 | 171 時間 |
③ | 1 か月 29 日の月 | 165 時間 |
④ | 1 か月 28 日の月 | 160 時間 |
(標準となる 1 日の労働時間)
○ 1 日の標準労働時間は、8 時間とする。
(コアタイム)
○ コアタイムは、午前○時から午後○時までとする。
90 第 3 部 労働関係法上の労使協定等
(フレキシブルタイム)
○ フレキシブルタイムは、次のとおりとする。
1 始業の時間帯 午前○時から午前○時まで
2 終業の時間帯 午後○時から午後○時まで
(時間外・休日労働手当)
○ 1 清算期間内における総所定労働時間を超えて労働した場合 は、賃金規定に定めるところにより、時間外労働手当を支払う。
2 休日に労働した場合は、振替、変更等の措置をとらない限り、賃金規定に定める休日労働手当を支払い、本協定上の取扱い をしない。
(協定の有効期間)
○ 平成○年○月○日から平成○年○月○日までの 1 年間とする。
平成 30 年 6 月の労働基準法改正により、より利用しやすい制度となるよう、労働時間の清算期間の上限を従来の 1 ヶ月から 3 ヶ月に延長できるようになりました(第 32 条の 3 第 4 項)。清算期間を延長することによって、2 ヶ月、 3 ヶ月といった月をまたいだ労働時間の調整により柔軟な働き方が可能になります。この場合、就業規則等での定め及び労使協定の締結に加えて、労使協定に有効期間の定めをするとともに労使協定を労働基準監督署長への届出が必要です(第 32 条の 3 第 4 項)。詳細は、厚生労働省の「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」を参照してください。
「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」
xxxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxxxxx/000000000.xxx
(5)高度プロフェッショナル制度(労働時間規制の適用除外)
高度な専門的知識を持ち高い収入を得ている自律的で創造的な働き方を希望する労働者が、メリハリのある働き方をできるよう希望に応じた自由な働き方の選択肢を設けることを目的として、「働き方改革関連法」の成立に伴う労働
第 3 部 労働関係法上の労使協定等
91
基準法の改正により、「高度プロフェッショナル制度」が新設されました(労働基準法第 41 条の 2。平成 31 年 4 月 1 日施行)。
事業場の労使同数の構成員からなる労使委員会において対象業務、対象労働者など 10 の項目を 5 分の 4 以上の多数で決議し、対象労働者から書面等による同意を得た場合に、対象労働者を対象業務に就かせたときは、労基法が定める労働時間規制(労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する労基法の規定)がすべて対象労働者には適用除外となるものです。
労使委員会で決議すべき事項
① 対象業務
高度の専門的知識等を必要とし、労働時間と成果との関連性が通常高くない性質の業務であって、厚労省が定めた対象業務のうち、労働者に就かせることとする業務
② 次のいずれにも該当する対象労働者ア 職務要件
書面その他の厚生労働省令で定める方法による合意に基づき職務が明確に定められていること
イ 年収要件
労働契約により使用者から支払われると見込まれる賃金の額を一年間当たりの賃金の額に換算した額が基準年間平均給与額(*)の三倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額(= 1075 万円)以上であること
*基準年間平均給与額 厚生労働省において作成する毎月勤労統計における毎月きまって支給する給与の額を基礎として厚生労働省令で定めるところにより算定した労働者一人当たりの給与の平均額
③ 対象労働者の健康管理時間を把握する措置を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。
*健康管理時間 当該対象労働者が事業場内にいた時間と事業場外において労働した時間との合計の時間
④ 年間104日以上、かつ、4週間を通じ4日以上の休日を与えること
⑤ 対象労働者に対し、次の4つの措置のうちいずれかの措置を講ずることア 一定時間以上の勤務間インターバルと深夜労働の回数制限をすることイ 健康管理時間を1ヶ月又は3ヶ月について、それぞれ厚生労働省令で
定める時間を超えないこととすること
ウ 1 年に 1 回以上継続した 2 週間の休日を与えること
92 第 3 部 労働関係法上の労使協定等
エ 週 40 時間を超える健康管理時間が月 80 時間を超えた場合等に健康診断を実施すること
⑥ 健康管理時間の状況に応じて有給休暇(年次有給休暇を除く)付与や健康診断の実施その他の厚生労働省令で定める措置を講ずること
⑦ 対象労働者の同意の撤回に関する手続き
⑧ 苦情処理措置を講じること
⑨ 同意しなかった労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと
⑩ その他厚労省が定める事項
高度プロフェッショナル制度については、働き過ぎ防止の流れに反して長時間過重労働を助長し、労働者の健康及び福祉を害するものとの懸念が指摘されています。労使委員会で導入について議論する際には、本人同意の手続きにおいて真に制度適用を望む労働者のみが対象とされているか、対象業務につき真に高度の専門的知識等を必要としその性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものであるか、労働者に労働時間の裁量権が与えられているか、健康確保措置が十分なものかなどについて慎重な検討が望まれます。また、高度プロフェッショナル制度が導入された場合には、健康管理時間の活用により適切な労働実態を把握するだけでなく、対象労働者の適切な苦情処理が講じられるようにするなど、高度プロフェッショナル制度導入による健康被害を生じさせない措置をとる必要があります。
3 育児・介護休業等に関する労使協定等
(1)より良い育児・介護休業等の制度を作るための労働協約
少子化対策の観点から、喫緊の課題となっている仕事と子育ての両立支援等を一層進めるため、男女ともに子育てなどをしながら働き続けることができる雇用環境の整備を目的とした改正育児・介護休業法が、平成 24 年 7 月 1 日から全面施行されました。改正のポイントは、①子育て中の短時間勤務制度及び所定外労働(残業)の免除の義務化、②子の看護休暇の拡充、③父親の育児休業取得促進、④介護のための短期休暇の創設、⑤勧告に従わない場合の公表制度などの法の実効性確保の制度創設、などです。
法律が定める休業等の権利は法律上保障されたものですから、たとえ就業規則の規定や労働協約がなくても、法律の定める条件を充たせば、法律が定める
第 3 部 労働関係法上の労使協定等
93