Contract
保険法
第1章 一般条項
第 1 条
本法律は,保険契約当事者の正当な権利を保護するために保険を規制し,保険事業に関する監督及び管理を強化し,保険業界の発展に貢献することを目的として制定する。
第 2 条
本法律は,カンボジア王国におけるすべての保険活動に適用される。
第 3 条
本法律において,保険という用語は,保険申込者が契約に従い保険料を保険者に支払い,事故が発生したとき,被保険者が死亡,傷害,後遺障害若しくは疾病に見舞われたとき,又は被保険者との契約が満期となったときに,保険者が保険契約の明細書に定めるところにより財産上の損害又は損失を補償する責任を負うことが両当事者によって合意されている商事契約をいう。
第 4 条
保険会社,保険代理店及び保険仲介業者のみが保険事業を行うことができる。
第 5 条
保険会社,保険代理店及び保険仲介業者は,保険事業を行うにあたり,本法律の規定の定めるところによりxx競争の原則に従わなければならない。
第 6 条
保険事業を行う義務を負う自然人及び法人は,カンボジア王国の法令を尊重しなければならない。
第 7 条
経済財政省は,本法律に従い保険事業の管理及び監督を行う責任を負う。
第2章 保険契約
第1節総則
第 8 条
被保険者たる自然人又は法人の利益となり,かつ被保険者の生命又は生命以外を保険の目的として被保険利益が存在する保険は,カンボジア王国で保険事業を行うことが許可された保険会社との間でのみ締結することができる。
第 9 条
保険契約とは,被保険者と保険者の権利と義務の関係を定めた契約である。
被保険者とは,保険者との間で保険契約を締結し,契約に従い保険料を支払うことを約束した者をいう。
保険者とは,被保険者との間で保険契約を締結し,損害を補償し,又は保険金を支払う責任を負う保険会社をいう。
第 10 条
申込者及び保険者は,保険契約を締結するにあたり,協議を通してxx,相互利益,双方合意の原則を遵守しなければならず,公共の利益を害してはならない。
第 11 条
各当事者は,保険契約を締結する際,支払期限到来前に当該保険契約を取り消すことができる。ただし,勧告書又は通知書を通じて事前に通知し,正式に受領されることを条件とする。
第 12 条
自然人又は法人が保険契約の申し出を行い,保険会社が当該申し出を承諾し,その後に契約の条項が合意に達した場合,保険契約が締結されたものとみなされる。保険会社は,保険証券を発行し,当該契約の両当事者が合意しうる重要な条件を定めて記載した保険証明書を添付しなければならない。
第 13 条
保険証明書には,次に定める事項を記載する。
1. 被保険者の氏名及び住所
2. 保険の目的
3. 保険金支払いの対象となる条件
4. 保険の始期日及び対象となる危険の位置(住所)
5. 保険価額
6. 保険料及び支払い方法
7. 請求方法及び請求の条件
8. 保険期間
9. 保険証券の無効化及び権利失効に関する条件,及び保険期間満了前に各当事者が保険契約を解除できる条件。
第 14 条
保険会社と被保険者の間に生じる責任については,保険証券又は保険引受証によってのみ,特定することができる。保険契約の申込のみでは,契約の両当事者に対する保険契約は有効とはならない。
留保中の保険契約を更新,変更又は再契約する旨の申込みがなされ,保険会社が
15 日以内にこれを拒否しない場合は,当該申込みを承諾したものとみなされる。
第 15 条
保険契約の期間は,保険証券において定める。当初の保険証券の条項への変更又は追加は,追加の条項(特約)を追加し,当該契約の両当事者がこれに署名して行わなければならない。
第 16 条
被保険者は,保険の目的との間で被保険利益を有していなければならない。被保険利益とは,被保険者が個人の財産,生命又は身体との関係で有する権利にかかる利益又は利得をいう。
第 17 条
被保険者は,保険契約締結後,合意に従い保険料を支払わなければならない。補償は,保険証券の定めに従い,保険料が支払われた日から有効となる。
第 18 条
保険料が期日通りに支払われない場合,保険契約締結日から 30 日を超えて保険契
約の有効性が留保されることはない。保険契約が締結されてから 20 日が経過した時点で,保険会社は,勧告書又は被保険者若しくは保険料支払を約束した代表者が正式に承諾した書面を通じて通知し,合意した場所で支払いを行うよう要求しなければならない。通知を受けた後 10 日以内に依然として被保険者が保険料の支払いを行わない場合,保険会社は,当該保険契約を取り消すことができる。
第 19 条
保険会社は,保険証券の明細書に補償対象として定められた危険に起因する損失又は損害を補償しなければならない。ただし,損失又は損害が被保険者の故意行為又は詐欺行為により生じた場合,保険会社はこれを補償する義務を負わない。
保険会社は,被保険者の責任下にある者が生じさせた損失又は損害についても,当該事案の種類又は重大性にかかわらず,これを補償しなければならない。
第 20 条
被保険者がxxを隠した,又は保険の目的が変わりうる重要な事実を故意に不実表示したと保険会社が判断する場合,保険契約は無効とみなされる。
被保険者による失念又は故意でない曖昧な申告があった場合には,それを理由として保険は解約されない。
第 21 条
被保険者が意図的に危険を生じさせたと判断される場合,請求の支払いが既に行われたか否かを問わず,保険会社が詐欺又は危険の創出があったと判断し,それを
証明し,かつ証拠を示すことができるならば,保険会社は,裁判所に対して,自らの法的責任を無効とするか,支払額を返還させるよう申し立てることができる。
第 22 条
被保険者が詐欺的行為を犯したと仲裁人が判断し,被保険者がこれを認めた場合,保険証券に記載された補償条件及び被保険者の権利は,無効とみなされる。
第 23 条
損害賠償責任保険については,被保険者が第三者に対して損失又は損害を被らせた場合,保険会社は,当該被害者に対して直接補償を行う。
損害賠償責任保険とは,第三者及び保険の目的に対して直接補償を行う種類の補償をいう。
第 24 条
再保険については,元受会社が引き続き被保険者に対する責任を負う。
再保険契約とは,元受会社が,危険の全部又は一部を引き受けて再保険契約を締結する保険会社の保険に加入する保険制度をいう。
第 25 条
保険金請求の時効期間は,保険証券で定めなければならない。ただし,時効期間は,請求権が発生した日から 3 年を超えてはならない。
本時効期間は,損害査定人による調査報告の完了後,両当事者が合意した場合に終了する。
第2節 対物保険
第 26 条
対物保険とは,危険が発生した場合に補償する契約をいう。保険会社から被保険者に対して支払われる保険金額は,保険契約において申告された保険の目的の価額を超えてはならない。ただし,両当事者間で別途合意した場合は,この限りではない。
第 27 条
保険証書に記載されていない危険の発生により保険の目的が全損した場合,当該保険は適法に終了となり,保険会社は,残りの期間の保険料の 90%を被保険者に払い戻さなければならない。
第 28 条
保険会社が保険金を支払った場合,被保険者は,当該請求を生じさせた第三者に対する代位請求権を保険会社に付与して,既に支払われた保険金を求償できるようにしなければならない。
保険会社は,婚姻により尊属及び卑属となった親族,婚姻により親族となった者の住居で生活している管理者及び従業員,被保険者の住居で生活している管理者及
び従業員に対しては,何ら請求することはできない。ただし,これらの者のいずれかの悪意に基づく場合は,この限りではない。
第3節 対人保険
第 29 条
対人保険については,保険証券で申告したxx合計額を補償価額の上限とする。対人保険には,生命保険,健康保険及び人身傷害保険が含まれる。
第 30 条
対人保険の支払いが行われた後,保険会社は,第三者を訴える目的で契約当事者又は受益者に代位請求権の付与を求めることはできない。
第 31 条
被保険者は,明確な保険金総額を申告して,自らの生命保険金又は第三者の生命保険金(当該第三者から書面により承諾を得ることを条件とする)の支払いを要求できる。
次の状態にある者が死亡した場合には,保険金の支払いを受けることができない。
1. 機能的神経疾患を患っている者
2. 精神科病院に入院している者
第 32 条
生命保険証券には,保険契約で必要な条件を定めることに加え,次の事項を記載しなければならない。
1. 申込者の氏名及び生年月日
2. 保険金受取人の氏名(該当する場合)
3. 保険料の払戻しに関して定める事由や規定
4. 契約書に定めがある場合は,例外の条件
第 33 条
被保険者が自殺をした場合,生命保険は無効とする。
第 34 条
保険金受取人が被保険者を故意に殺害し,又は殺害を共謀した場合,当該保険金受取人との関係では,当該保険契約は無効とする。
第 35 条
保険会社と被保険者との間で生じた紛争が和解又は仲裁により解決することができなかった場合,両当事者は,カンボジア王国の管轄裁判所に当該事案を付託できる。
第3章 強制保険第1節
自動車第三者損害賠償責任保険
第 36 条
カンボジア王国において商用自動車を所有して対価を得て運送業を営む個人又は法人は,保険会社と契約し,あらゆる種類のトレイラーを含む自動車の運用に起因して第三者に生じさせた損失又は損害を補償する保険に加入しなければならない。
この保険は,自動車の所有者のみならず,運転者及び管理者についても有効とする。
保険への加入が義務付けられる商用自動車の種類は,政令で定める。
第 37 条
第三者が交通規則に正しく従っていたにもかかわらず,商用自動車の運用を理由として身体に傷害を負い,又は財産上の損害を被った場合,保険会社は,その損害の程度に応じて,適時,損失又は損害に対する補償をしなければならない。
第 38 条
別段の合意がある場合を除き,自動車第三者損害賠償責任保険は,カンボジア王国の地理的領土外で生じた事由に起因する損失又は損害については適用されない。
第 39 条
この保険は,交通事故による傷害,後遺障害又は死亡の被害者に適用されるものであり,当該被害者が保険に加入していた当該商用自動車に乗車していたか否かにかかわらず適用される。
第2節
建設工事保険
第 40 条
建設者たる自然人又は法人は,損害賠償責任保険に加入しなければならない。
プロジェクト開始段階で,建設者は,自らが保険会社と契約して損害賠償責任保険に加入したことの証明を受けなければならない。
保険への加入が義務付けられるプロジェクトの種類は,政令で定める。
第 41 条
第 40 条に従い加入する損害賠償責任保険契約では,当該プロジェクトの完了後の保守期間に関する条件を定めなければならない。
第3節 旅客保険
第 42 条
多様な移動手段により旅客輸送業を営む自然人又は法人は,道路,海路,xx,空路又は線路を利用して自らが輸送する乗客を対象とする損害賠償責任保険に加入しなければならない。
保険への加入が義務付けられる輸送手段の種類は,政令で定める。
第4章
保険会社及び国家管理第1節
保険会社
第 43 条
すべての保険会社は,商業登記を行い,経済財政省の監督及び管理に従わなければならない。
第 44 条
保険会社は,窃盗罪,背任罪,故意による不渡り小切手の振り出し,国家の信用に影響を及ぼす行為,詐欺行為,違法に取得した物品の隠匿で有罪判決を受けた者に対し,経営権並びに運営及び清算の役割を委託してはならない。
上記の犯罪の未遂又は共犯として有罪判決を受けたこと,又は犯罪の内容にかかわらず 1 年以上の拘禁刑に処されたことは,不適格の根拠とする。
第 45 条
すべての保険会社は,国有,民間又は合弁企業のいずれであるかにかかわらず,カンボジア王国内では,公開有限責任会社(匿名会社)の形式でのみ運営できる。
第 46 条
保険会社は,次に定める種類の保険を取り扱う会社を営むことができる。
a- 生命保険を扱う会社は,許可取得日の為替レートで少なくとも 500 万 SDR に相当する登記資本金をリエル通貨で有していることが義務付けられる。
b- 損害保険を扱う会社は,許可取得日の為替レートで少なくとも 500 万 SDR に相当する登記資本金をリエル通貨で有していることが義務付けられる。
c- 生命保険及び損害保険を扱う会社は,許可取得日の為替レートで少なくとも 1000 万 SDR に相当する登記資本金をリエル通貨で有していることが義務付けられる。
第 47 条
次の事項に該当する保険会社は,カンボジア王国で保険事業を営むことはできない。
a- 管轄機関から許可を受けていない場合
b- 本法第 46 条の規定に従い保険の種類を登録していない場合。第 48 条
許可を受けた保険会社は,保険事業を開始する前に,経済財政省の要請に従い次の手続きをすべて履践しなければならない。
- 登記資本金の 10%がカンボジア王国の国庫に預託されたことを証明する書類又は文書を提出する。この預託金は,当該会社がカンボジア王国内での事業運営を停止するまで保持される。
- 支払余力がカンボジア王国の認定銀行で保持されていることを証明する書類又は文書を提出する。この支払余力は,各保険会社の種類に応じて決定される。ただし,支払余力の最低金額は,登記資本金の 50%を下回ってはならない。
第2節 国家管理
第 49 条
国家管理は,被保険者,申込者及び保険金受取人,並びに株式資本に資するように実施する。
国有の会社,及び国が 51%以上の持分を有する合弁企業は,公社の一般規則に関する法律に従わなければならない。
民間の保険会社は,経済財政省が付与する許可に従わなければならない。
第5章
保険代理店及び保険仲介業者
第 50 条
保険代理店とは,保険会社から保険手数料を受け取り,その明示的な指示に基づき保険会社に代わって保険事業に関する処理を行う自然人又は法人をいう。
保険仲介業者とは,被保険者の利益のために保険事業を行い,被保険者と保険会社を仲介して保険契約を締結させ,適法に仲介料を得る法人をいう。
第 51 条
保険代理店及び仲介業者の活動に関する手続き及び条件は,政令で定める。
第6章 刑事処分
第 52 条
本法第 36 条,第 40 条又は第 42 条に違反した者は,15 万リエル以上 150 万リエル以下の罰金刑に処するほか,保険に加入する義務を負う。
第 53 条
本法第 44 条又は第 48 条に違反した会社は,1000 万リエル以上 5000 万リエル以下の罰金刑に処するほか,その許可を取り消す。
第 54 条
本法第 47 条に違反した者は,5000 万リエル以上の罰金刑に処する。この者が当該違反行為を引き続き行う場合,1 年以上 5 年以下の拘禁刑に処する。
第7章 経過規定
第 55 条
本法第 40 条に定める事業を行う者は,本法律が効力を生じた後,2001 年 6 月 30
日を期限として,保険会社と契約し保険に加入しなければならない。
本法第 36 条又は第 42 条に定める事業を行う者は,本法律が効力を生じた後,
2001 年 12 月 31 日を期限として,保険会社と契約し保険に加入しなければならない。
上記の 2 つの期限が経過した場合,本法第 52 条の定めに従い刑事処分が適用される。
第8章 最終規定
第 56 条
本法律に抵触する規定は,すべて無効とみなされる。
2000 年 6 月 20 日,第 2 期国会の第 4 会期中にカンボジア王国の国民議会により可決された。
国民議会議長署名及び押印 Xxxxxxx Xxxxxxxx