知的財産契約業務は、基本的には文書業務、また、ミニマムリクワィアメントとしての法律業務、あるべき業務としては総合的戦略業務である。そして、法的情報・知識、契約 実務の情報・知識が、最終的には、方針・戦略に基づいて、契約自由の原則の範囲内でWin-Win的に対応することになる。
連 載
知的財産契約の実務(第20回)
企業経営における知的財産契約の活用戦略
─ライセンス契約の戦略的活用の重要性を考慮して─
xx学院大学法学部特別招聘教授
xx xx
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はじめに
Ⅰ 企業経営における知的財産契約
1.企業経営における知的財産契約
2.企業経営に資する知的財産契約
3.企業経営における知的財産契約・戦略の考え方
4.知的財産契約における戦略の創り込み
Ⅱ 知的財産ライセンス契約
1.ライセンス契約の種類
2.特許ライセンス契約の契機・目的・効果
3.ライセンス、ライセンシングポリシー
4.ライセンス契約書のチェックポイント
5.特許ライセンス契約の戦略
Ⅲ 知的財産契約の活用
1.知的財産の活用形態
2.知的財産活用の考え方
3.知的財産の活用戦略
4.知的財産活用の基本、応用、戦略
5.知的財産ライセンス契約の交渉
6.ライセンス契約による企業経営に資する知的財産化まとめ
知的財産契約の実務(第20回)
はじめに
知的財産制度は、経済・産業、文化の発展のための政策法制であり、企業経営においては、知的財産を戦略的に活用して、イノベーションの促進を図り、知的財産経営の定着を図ることが期待されている。特に、戦略的知的財産契約に適切に対応した企業経営に資する知的財産化が重要である。
知的財産契約の種類は、多種多様である。知的創造サイクル的観点から知的財産契約の種類を整理すると、創造段階における共同研究開発契約、保護・権利化段階における譲渡契約、活用段階におけるライセンス契約が重要である。
企業経営における知的財産契約に戦略的に対応するためには、技術力、知的財産力、人間力が必要不可欠な要素である。そして、企業経営に資する知的財産のポイントは、質の良い知的財産と具体的な戦略及び人材の存在であり、特に、契約による企業経営に資する知的財産化が重要である。いわゆる、「企業経営に資する知的財産」とは、特定の知的財産自体ではなく、企業が保有する知的財産の機能を十分に発揮させる戦略及びそれを実行する人材・組織により経営戦略に練り込まれた位置付けにおける知的財産、即ち、「企業経営に資する知的財産化された知的財産」と解すべきである。
Ⅰ 企業経営における知的財産契約
1.企業経営における知的財産契約
⑴ 知的財産契約の基本的要素
知的財産契約業務は、基本的には文書業務、また、ミニマムリクワィアメントとしての法律業務、あるべき業務としては総合的戦略業務である。そして、法的情報・知識、契約実務の情報・知識が、最終的には、方針・戦略に基づいて、契約自由の原則の範囲内でWin-Win的に対応することになる。
⑵ 知的財産契約の実務
一般的に知的財産契約には、契約自由の原則、すなわち、締結の自由、相手方選択の自由、内容の自由、方式の自由が適用される。また、そのチェックポイントは、明確性、適合性、適法性特に独占禁止法上の問題点、履行強制の可能性と妥当性、完全性が重要である。
そして、知的財産契約の内容は、専用実施権許諾者の設定登録応諾義務等法律上の義務、ノウハウライセンシーの秘密保持義務のような基本的・本質的義務、ライセンシーの改良技術に関するフィードバック義務等の約定義務等によって構成される。
⑶ 知的財産契約の総合戦略
知的財産契約を企業経営における経営戦略の観点から検討する場合には、総合戦略的に配慮する必要がある。そして、配慮すべき事項は一定不変ではないが、次の事項が重要である。①当事者間のxx、xxx、インセンティブ、戦略、方針、利益、信頼、秩序 ②xx性、xx競争、経済政策 ③経済効率性、産業の発展等。
2.企業経営に資する知的財産契約
知的財産を企業経営に資する化するためには、多くの場合、戦略的知的財産契約が必要であ
る。特に、オープンイノベーション対応においては、知的財産ライセンス契約が必要不可欠である。以下に企業経営に資する知的財産契約について、その考え方、戦略等について考察する。
⑴ 企業経営における知的財産契約の機能
知的財産は、戦略的に活用することにより、企業経営に寄与することになり、知的財産契約が必要不可欠である。特に、契約による企業経営に資する知的財産化が重要である。
① 知的財産戦略は、知的財産活用、特に知的財産契約が不可欠である。
② 特許xxに関する知的財産契約は一般的には、特許xxが完全無欠を前提とした当事者の認識ではないところで検討され、成立する。
③ 知的財産の活用、企業経営に資する化は、契約によって実効性が担保される。契約の合理性、妥当性が検討される。
④ 多くの知的財産は、完全無欠ではない。Win-Winに合意する契約条件に従って、合理的に活用されることが期待される。
⑤ 知的財産には、公信力がなく、現実には不完全・不確定なものがある。無効審判制度、特許法第104条の3、独占禁止法による制限、強制実施権制度等。従って、許諾者の瑕疵担保責任論が問題になる。国が完全性を保証する、又は、瑕疵担保責任を負う制度にはなっていない。
⑥ 独占禁止法は、知的財産制度の下で、技術に権利を有する者が、他の事業者がこれを利用することを拒絶したり、利用することを許諾するに当って許諾先事業者の事業活動を制限する行為は、知的財産制度の趣旨を逸脱し、又は同制度の目的に反する場合には、私的独占に該当するものとする。
⑦ 知的財産基本法第8条1項は事業者の責務として「事業者は、…当該事業者若しくは他の事業者が創造した知的財産又は大学等で創造された知的財産の積極的な活用を図るとともに、当該事業者が有する知的財産のてきせつな管理に努めるものとする。」と規定している。
⑧ 従って、企業経営に資する知的財産の観点から、クローズ、オープンイの使い分け、組合せが必要かつ有益な戦略となる。その場合、知的財産の機能を正しく把握し、知的財産戦略経営の考え方に基づいて戦略的知的財産契約を実行して行くことが必要不可欠である。
⑨ なお、営業秘密は、秘密管理性が重要な管理要件であるが、秘密管理が目的ではなく、活用を考慮した秘密管理であるべきであり、従って、例えば、ノウハウライセンス契約における秘密管理のように、契約による秘密管理が重要である。
⑩ 要は、企業経営における知的財産戦略の実効性は、まず知的財産ありきではなく、まず事業、ビジネスありきから、事業、ビジネス戦略にどのように知的財産戦略を練り込んで対応するかである。特に、知的財産を企業経営に資する化するためには、多くの場合、戦略的知的財産契約が必要となる。
⑵ 対価的条件は、Win-Winを考慮する。
知的財産には、無効審判制度、特許法第104条の3、独占禁止法による制限等により公信力がなく、また、ライセンス契約の交渉において、先使用権の主張、無効の抗弁対応が考えられる。保有知的財産が完全無欠ではないことも考慮して、対価条件はWin-Winに対応する。
⑶ 知的財産の戦略的・有効活用はタイミングが重要である。
多くの知的財産は、過去の開発成果であり、有効寿命がある。知的財産の戦略的・有効活用は