融資先:Banco Cooperativo Sicredi S.A.
海外投融資用
事業事前評価表
国際協力機構民間連携部海外投融資課
1.基本情報
国名:ブラジル連邦共和国
案件名:分散型xxx発電システム導入事業融資契約締結日:2020 年 3 月 31 日
融資先:Banco Cooperativo Sicredi S.A.
2.事業の背景と必要性
(1)当該国におけるエネルギーセクターの開発の現状・課題及び本事業の位置付けブラジルの 2019 年の最大電力需要は約 91GW であるが(ブラジル鉱山エネル ギー省、2019 年 8 月時点)、ブラジル政府「10 ヵ年エネルギー拡張計画 2027」によれば、人口増加及び経済成長により、最大電力需要は 2027 年に約 125GW に達する見込みである。2019 年 12 月現在の電力会社の大型発電電源による発電容量は約 168GW と将来的な需要増加に対して一定の余裕があり、また電源構成は水力 60.9%、風力 8.7%、バイオマス 8.5%、天然ガス 7.6%、石油 5.1%、xxx 1.4%(ブラジルxxx発電協会、2019 年)と比較的温室効果ガスの排出が少ない構成となっている。しかし、水力発電への高い依存は、旱魃等発生時に、停電や価格の高騰といった電力供給の不安定化をもたらすことが懸念される。今後、中長期的な気候変動の影響に鑑みると、電源構成の多様化等による電力供給の安定
化は同国にとって重要な課題である。
かかる背景を踏まえ、ブラジル政府は、「自国が決定する貢献(NDC)」において、電源構成における水力発電を除いた再生可能エネルギーの比率を 2030 年までに 28-33%に増加させることを掲げている。そのために、2012 年以降、電力会社による大型電源開発に加えて、個人及び法人(商業施設・工場等)による分散型電源(xxx・バイオマス・風力等による自家発電)の導入を積極的に推進しており、多様な自家発電方法の認可、発電者と配電会社との電力売買に関する規制といった、法的基盤を整備してきた。
こうした中、xxx発電システムの導入コストの著しい低下によって、同国では近年、分散型電源の中でも特にxxx発電システムの導入が拡大している。ブラジルxxx発電協会によれば、分散型xxx発電の発電容量は 2018 年 5 月時点で約 0.25GW であったが、2020 年 1 月時点では約 1.93GW と大幅な伸びを示している。また、「10 ヵ年エネルギー拡張計画 2027」によれば、現状分散型電源の 82%をxxxが占めると推定されている。ブラジル政府は、個人及び法人による分散型電源の発電容量を 2027 年までに最大 21GW まで拡大するものと見込んでおり、総消費電力量の約 10%を賄う計画を策定している。
このような中、同国最大規模の信用組合連合体であり、農村部に広いネットワークを有する Sistema de Credito Cooperativo Sicredi(以下、「Sicredi システム」という。「システム」は「連合体」の意。)は、2016 年 1 月より分散型xxx発電システムの機器購入に必要な長期資金を融資するプログラム「Solar Energy Financing(以下、「SEF」という。)」を積極的に展開しており、今後もブラジル全土において拡大する方針を掲げている。分散型電源の導入には、設備投資のために長期融資が必要となるが、同国において個人及び法人に対して長期融資を供与できる民間金融機関は限定的な状況である。Sicredi システムとしても、SEFの更なる地域的・量的拡大にあたって裏付けとなる長期資金の調達が重要な課題となっている。
本事業は、Sicredi システムの中で資金調達を担う Banco Cooperativo Sicredi S.A.(以下、「借入人」又は「Sicredi 銀行」という。)への融資を通じて、個人 及び法人による分散型xxx発電システムの導入に必要な資金を供給することで、同国の電源多様化を通じた電力供給の安定化や気候変動対策の更なる推進を図る ものであり、同国のエネルギー開発政策に合致する。
(2)エネルギーセクターに対する我が国及び JICA の協力方針と本事業の位置づけ本事業は、分散型再生可能エネルギーの導入を支援するものであり、対ブラジ ル国別協力方針「都市問題と環境・防災対策」において、気候変動対策を推進する JICA の重点協力プログラム「気候変動対策プログラム」に合致する。また、2016年 10 月に日本・ブラジル間で締結された「日本国及びブラジル連邦共和国との間のインフラ分野における投資及び経済協力の促進のための協力覚書」において、エネルギーは二国関係上の優先分野と位置付けられている。以上より、本事業は、
我が国及び JICA の対ブラジル協力方針に合致する。
さらに、Sicredi システムは、女性の雇用や働きやすい職場・制度の整備を積極的に推進しているため、本事業は、2018 年 6 月の G7 シャルルボワ・サミットで 2020 年までに 30 億米ドルの資金動員を目指すことが合意された「G7 2X Challenge:女性のためのファイナンス」への貢献も期待される(カテゴリ 3
「employment」に該当見込み)。
3.事業概要
(1)事業目的:本事業は、ブラジル全土において Sicredi システムが展開する融資事業への支援を通じ、分散型xxx発電システムの普及拡大を図り、もって同国のエネルギー供給の安定化及び気候変動の影響緩和に寄与するもの。
(2)対象地域:当国全土。
(3)事業概要:本事業の融資は、Sicredi グループの中で資金調達を担う Sicredi 銀行から、Sicredi グループに加盟する信用組合に転貸され、各信用組合から組合員
である個人・法人に対して分散型xxx発電システムの導入を目的として融資される。
(4)環境社会配慮・横断的事項・ジェンダー分類
1)環境社会配慮
① カテゴリ分類:C
② カテゴリ分類の根拠:本事業は「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」
(2010 年 4 月公布。以下、「JICA 環境ガイドライン」という。)上、本事業による環境への望ましくない影響は最小限と判断されるため。
③ その他・モニタリング:JICA 環境社会配慮ガイドラインのカテゴリ C に該当する事業のみをサブプロジェクトとする。
2)ジェンダー分類: ■GIS(ジェンダー活動統合案件)
<活動内容/分類理由>Sicredi システムの従業員における女性比率は 58%。女性の働き方を議論する女性委員会の設置、女性職員による集会を開くなど、組織におけるジェンダー主流化に取り組んでいる。2018 年にはWorld Council of Credit Unions から、女性のリーダーシップの推進に取り組む信用組合に与えられる Athena 賞を受賞している。以上より、女性の雇用や女性の働きやすい職場・制度の整備を積極的に推進していると評価できるため。
(5)その他特記事項
本事業は、シティバンク、エヌ・エイとの協調融資。
4. 事業効果
(1) 定量的効果
Solar Energy Financing によって導入された累計発電設備容量等を測定する。
(2) 定性的効果
エネルギー供給の安定化及び気候変動の影響緩和。
5. 過去の類似案件の教訓と本事業への適用
(1) 類似案件の評価結果
インド向け「新・再生可能エネルギー支援事業」(円借款・ツーステップローン)では、実施機関のモニタリング体制が不十分であるために必要な開発指標が報告されていなかったとされている。その事後評価では、案件形成準備調査の段階において、JICA は実施機関のモニタリング体制・能力を分析し、必要に応じてモニタリング体制を強化するための支援等を行うことが望ましいとの教訓が抽出されている。
(2) 本事業への教訓
本事業では、審査を通じ、Sicredi システムの中央モニタリングシステムや、Sicrediシステムの中で SEF の融資残高が最大である加盟信用組合の現場オペレーション
の状況を確認し、十分なモニタリング能力を保持していることを確認した。
6. 評価結果
7. 今後の評価計画
本事業は、ブラジルの開発課題、開発政策、並びに、我が国及び JICA の協力方針・分析に合致し、当国のエネルギーの安定化及び世界的な気候変動対策に資することから、ゴール 7(エネルギー)、13(気候変動)及び 17(パートナーシップ)に貢献するものであり、海外投融資による支援の意義は高い。
(1)今後の評価に用いる指標:4.(1)のとおり。
(2)今後の評価スケジュール:貸付実行から 5 年後(予定)
以 上