一、OEM 及び ODM の違い 87 一、AGENT 及び DISTRIBUTOR の違い 97 一、MOU について 132
特許庁委託
台湾における知的財産関連契約の留意点
2020 年 3 月
公益財団法人 日本台湾交流協会
※本報告は、台北市日本工商会/知的財産委員会/戦略G会議/コンテンツG会議の台湾における知的財産関連契約の留意点のプロジェクトチームの協力により作成された。
【プロジェクトチーム メンバーリスト】
(敬称略)
●知的財産委員会・委員長 台灣三菱商事(股)公司 | 董事長特別助理 | xx | x |
●知的財産委員会・副委員長台灣恩xx(股)公司 | 副総経理 | xx | x |
●参加者(順不同) 百樂文具(股)公司 | 総経理 | xx | xx |
台灣美津濃(股)公司 | 副総経理 | xx | x |
台象(股)公司 | 副総経理 | xx | x |
台象(股)公司 | 商品管理部 | x xx | |
台象(股)公司 | 商品管理部 | x x庭 | |
台灣山葉機車工業(股)公司 | 部長 | xx x | |
台灣兄弟國際行銷(股)公司 | 董事長 | xx xx | |
飛龍文具(股)公司 | 工場長 | xx xx | |
台灣xxx夢宮有限公司 | 総経理 | xx xx | |
台灣佳能資訊(股)公司 | 副総裁 | xx xx | |
台灣卡西歐(股)公司 | 協理 | xx xx | |
台灣卡西歐(股)公司 | 協理 | xx x | |
xx育樂(股)公司 | 董事長 | xx xx | |
x雅育樂(股)公司 | 経理 | xx xx | |
台灣華可貴(股)公司 | 経理 | xx xxx | |
虎記(股)公司 | 総経理 | x xx | |
台灣xxx(股)公司 | 総監 | xx xxx | |
台灣瑞翁(股)公司 | 総経理 | xx x | |
台塑勝高科技(股)公司 | 資深管理師 | xx x | |
黑田日本外國法事務律師事務所 | 弁護士 | xx xx |
●講師(萬國法律事務所)
萬國法律事務所 シニアパートナー弁護士 x xx
萬國法律事務所 | アソシェイトパートナー弁護士x | xx |
萬國法律事務所 | 弁護士 x | xx |
萬國法律事務所 | 弁護士 x | xx |
萬國法律事務所 | 弁護士 x | xx |
萬國法律事務所 | 弁護士 x | xx |
●戦略G・コンテンツG会議事務局
日本台湾交流協会 | 経済部xx | xx x |
日本台湾交流協会 | 経済部知財専門家 | xx xx |
目次
第xx
序言 1
第xx 近年における各国企業の台湾進出の状況 1
第二節 近年における日系企業の台湾進出の形態 4
第二章
台湾での契約において留意すべき法律、規則 7
第xx 契約に関する基本原則:民法 7
第二節 契約に関する知的財産権関連法 10
一、専利法(特許法) 10
二、営業秘密法 13
三、著作xx 14
四、商標法 17
五、科学技術基本法 18
第三節 その他の法律 20
一、外国からの投資に関する法 20
二、個人情報保護法 26
第三章
知財上の留意点 32
第xx 会社内部の知財管理 32
一、知的財産権の秘匿化 33
二、出願権利化 37
第二節 第三者権利の調査 40
一、第三者権利の調査 40
二、第三者権利を発見した際の対応 40
1. 先取り登録商標を発見した場合、権利をどう主張するのか 41
2. 先取り登録特許を発見した場合、権利をどう主張するのか 42
第三節 商談などの場での注意点 44
第四章
契約類型ごとの留意事項 47
第xx 秘密保持契約 47
一、一般条項の紹介 47
二、その他の一般契約に追加する秘密保持条項 54
三、事例 57
1. 背景 57
2. 裁判所の判断 58
3. 分析 59
第二節 開発委託契約/共同開発契約 61
一、開発委託か共同開発かの選択(共同開発のリスク) 61
二、一般条項の紹介 62
三、大学等との契約条項の紹介 75
四、事例 1 79
1. 背景 79
2. 裁判所の判断 80
3. 分析 81
五、事例 2 83
1. 背景 83
2. 裁判所の判断 84
3. 分析 86
第三節 製造委託契約 87
一、OEM 及び ODM の違い 87
二、一般条項の紹介 87
三、事例 94
1. 背景 94
2. 裁判所の判断 95
3. 分析 96
第四節 代理店契約 97
一、AGENT 及び DISTRIBUTOR の違い 97
二、一般条項の紹介 98
三、事例 1 105
1. 背景 105
2. 裁判所の判断 106
3. 分析 108
四、事例 2 109
1. 背景 109
2. 裁判所の判断 110
3. 分析 111
第五節 技術供与契約(ライセンス契約) 114
一、一般条項の紹介 114
二、事例 1 123
1. 背景 123
2. 裁判所の判断 124
3. 分析 125
三、事例 2 127
1. 背景 127
2. 裁判所の判断 129
―ii―
3. 分析 130
第六節 資本提携契約/合弁会社設立契約 132
一、MOU について 132
二、一般条項の紹介 134
三、事例 144
1. 背景 144
2. 裁判所の判断 145
3. 分析 146
第七節 データ利用契約 148
一、企業のデータ収集について 148
二、一般条項の紹介 148
第八節 その他の留意事項 153
一、一般懲罰的な賠償条項 153
二、契約の言語の選択又は優先効力 154
三、準拠法、紛争解決手段 155
1. 準拠法について 155
2. 紛争解決手段について 157
四、両岸メカニズム 159
第五章
まとめ 162
知財プロジェクト会議 質疑応答 164
問題①:NDA の有効期間を半永久的に有効にする方法は有るか? 164
問題②:販売代理店保護法に関して、失った販路に係る在庫の引き取りを旧代理店から要求された場合、台湾法を準拠法とする契約では、引き取り義務はないと考えてよいか? 164
問題③:代理店(Distributor)、販売店(卸業者)、小売店の中国語表記は? 164
問題④:NDA の違約金について、被害額が推定できない場合でも青天井の違約金を請求できるのか? 165
問題⑤:代理店契約において、許諾地域を台湾と規定しても、第三者を介して再輸出した場合
には、知らなかったと言い逃れされて立証が難しい。有効な手立てはないか? 165
問題⑥:権利者にロイヤルティーを支払って特定地域で商品を販売している場合、「権利者に対価を支払って特定地域で商品を販売している」ということを、並行輸入されたことに対抗する、合理的な理由と言えるか? 台湾の業者が正当なロイヤルティーを支払わずに並行輸入品を販売していることを止められるか? 166
問題⑦:開発委託契約に関して、開発成果を委託元に帰属する規定とした場合、委託先が開発した成果を委託元に無償で譲渡できるのか? また、委託元が日系企業で委託先が台湾企業の場合ではどうか? 167
問題⑧:OEM 製造委託契約に関して、委託先が第三者の権利技術を勝手に使用して製品を製
造したために第三者との紛争になるケースがある。事前にどのように対応しておくべきか?
............................................................................................................................................................... 167
問題⑨:ハードウエアではなくシステム開発をソフトウエア会社に委託する場合の留意点を教えてほしい。 168
問題⑩:開発委託契約において開発成果は委託元に帰属すると規定していたにもかかわらず、
委託先が勝手に開発成果を特許出願して特許庁が審査して特許権が認められた場合に、委託元はどのような対応が考えられるか? 168
問題⑪:開発委託先の研究開発の自由を、契約終了後も長期間にわたり制限することは、不正競争行為として問題にならないのか? 169
問題⑫:商標権、著作権の帰属について、日本の製品を台湾企業に委託して中文化するケースで、委託元は中文名称の台湾商標権登録はしたが、著作権は委託先と契約していなかった場合にどうなるか? 台湾企業が著作権者であることを根拠に委託元に商標権移転を要求できる か? 169
問題⑬:日本と台湾で複数の人が共同で技術権利を持っている製品を、台湾の権利者に製造委託して販売したら、別の日本の権利者から抗議を受けた事例がある。問題の所在はいかに?
............................................................................................................................................................... 170
xx交易委員会が技術ライセンス協議の案件を取り扱う際の処理原則 171
個人情報保護声明 178
個人情報取り扱い許諾書 180
第xx
序言
日系企業が台湾企業をパートナーとして台湾に進出する際、例えば、販売、製造委託、技術供与等の契約を行うことがある。台湾のパートナー企業と協業することは、現地の商慣習や市場の開拓の面で有利であるものの、パートナー企業との関係において、技術情報の流出や商標権の利用の範囲等、知的財産上の留意すべき事項は多岐に渡るので、日系企業が台湾パートナー企業と契約を行う際、知財面でどのような点に留意すべきなのかをよく考える必要がある。
また、近年 IoT、AI などの ICT 技術の急速な進歩により、ビックデータ等を活用した新たな産業が発展しつつあり、収集したデータの扱い等、従前の契約ではそれほど重要視していないものが大きな価値を生むようになり、契約上、適切に保護、活用することが求められている。
本報告書では、パートナー企業を活用した台湾への進出形態(製造委託、資本提携、技術供与等)に応じた契約の留意点、関連法令や判例、その他紛争防止のための留意点を体系的に調査する。
本章では、まず近年の各国企業の台湾進出の状況及び日系企業の台湾進出の形態の概要を紹介する。
近年における各国企業の台湾進出の状況
第xx
グローバル化の中で、これまで台湾は優秀な安い労働力と当局に
よる多くの優遇措置により、海外から多くの投資と企業進出を誘致し、就業機会を創造し、海外技術移転を促進することで競争力向上を図ってきた。後に、台湾はエレクトロニクス関連の大企業からの委託加工業により関連産業の世界的なサプライチェーンの中でも
名を上げ、エレクトロニクス関連製品の生産と輸出で優位性を有し、さらには海外投資を誘引する重要なニッチ産業を形成し、好循環を 生み出した。下図は台湾経済部投資審議委員会が 2019 年 5 月まで に統計した台湾への海外投資の図表である:
※経済部投資審議委員会ホームページの統計資料より
台湾経済部投資審議委員会の「2018 年海外投資及び中国投資事業の運営状況調査分析報告」によると、2017 年のグローバル経済情勢はすでに徐々に不景気から脱却し、国際通貨基金(IMF)のデータでは 2017 年の世界経済の成長率は 3.7%であり、2016 年の 3.2%を上回った。また、米国(2.3%)、EU(2.4%)及び日本(1.8%)の経済成長率はいずれも 2016 年を上回り、米国、EU、日本等の先進
国の景気は軒並み拡大した。台湾のxx総処も 2017 年の台湾経済成長率は 2.86%であり、2016 年の 1.48%を上回ったと公布した。しかし、2018 年に米国と各国(特に中国)との貿易摩擦が高まったことにより、2018 年の海外からの直接投資には多少影響が出ている。
当該報告の 2017 年までに許可した海外投資の金額と出所の地区の統計によると、オランダの 18.95 億 US ドル(25.23%)が最も多く、次にイギリス領カスピ海(イギリス領ヴァージン諸島、イギリス領ケイマン諸島)の 17.12 億 US ドル(22.80%)、第三はイギリスの 11.29 億 US ドル(15.04%)、第四は日本の 6.40 億 US ドル
(8.53%)、第五はサモアの 3.86 億 US ドル(5.15%)であり、これらのトップ 5 の海外投資合計総額は、許可された海外投資総額の約 76.75%を占める。
産業別に見てみると、2017 年の海外投資金額のトップ 5 の産業は、電子部品製造業が 21.34 億 US ドル(28.41%)、情報及び通信放送業が 12.08 億 US ドル(16.09%)、金融及び保険業が 9.39 億 USドル(12.51%)、卸売り及び小売業が 8.78 億 US ドル(11.69%)、そして不動産業が 7.17 億 US ドル(9.54%)であり、その合計は海外投資総額の 78.24%を占めている。
台湾当局は近年、さらに海外投資を呼び込むために、「外国人投資条例」及び「華僑回国投資条例」の改正に着手した。1997 年以降一度も改正されてこなかったが、外僑商会(海外の商工会議所等)の白書において、海外投資の審議手続きを簡便化するよう何度も提案された。また、xx TIFA(xx貿易及び投資枠組み協定)では、米国は台湾に対して外国人投資審議の透明性と予測可能性を強化するよう求めた。これを踏まえ、台湾行政院は今回の改正を進めることになった。改正がされれば、将来、外国人と華僑1の投資は、少数の案件を除いて、「事前審査制」から「事後申告制」となり、外
1ここでいう華僑は、華僑身分証明条例第 3 条によると、「国外に居住している国民」をいう。但し、大陸地区の人民、香港、マカオの居住身分を有する、または大陸地区が発行したパスポートを保持する者には適用しない、と規定されている。
国企業の台湾に対する投資の拡大が期待される。2
第二節
近年における日系企業の台湾進出の形態
日系企業が台湾に進出する場合、単独でビジネスを一から興す方法と、パートナー企業と協業して、その技術、ノウハウ、製造設備、販売インフラなどを利用して進出する方法が考えられる。後者のケースでは、開発委託、製造委託、販売委託、ライセンス供与、合弁会社設立などの進出形態がある。
開発委託は、日系企業と台湾企業(大学等の公的研究機関を含む)の其々が持つ技術を融合して開発スピートを速めるために行われ、開発委託契約や共同開発契約が結ばれる。製造委託は、台湾企業が有する製造設備や購買力を活用することで低コスト、高品質化を目的に行われ、製造委託契約が結ばれる。販売委託は、台湾企業が有する顧客ネットワークや販売インフラを活用して、販売促進を狙うものであり、代理店契約や商品販売契約が結ばれる。自社の経営資源に限りがある場合には合弁会社を設立することが考えられ、資本提携契約や合弁会社設立契約が結ばれる。
企業が協業するにあたっては、商業機密や技術資料を開示しなけ ればならない場合がある。これらの資料が協業目的以外のために使 用されることを避けるため、または一方が任意に開示することによ り他方に損失が生じることを避けるため、秘密保持契約が結ばれる。
各種契約では知財の価値を守るため、知財の取扱いに関する取り決めをするべきである。契約における知財の取扱いについて、日系企業は台湾現地の法規を理解し、適切な契約を締結する必要性があ
2 関連記事:xxxxx://xxx.xxxxxxxxxxx.xxx/xxxxxxx/000000(最終閲覧日:2019/8/12)
る上、過去の不適切な契約条項により生じた争議を理解し、将来に争議が発生することを防ぐための参考となるよう、本報告書を作成する。
前述の台湾経済部投資審議委員会「2018 年海外投資及び中国投資事業の運営状況調査分析報告」では、2017 年は、投資案件数または投資額を問わず、日本はいずれもトップ 5 に入っている。しかしながら、2017 年の投資総額トップで案件あたりの投資平均額トップのオランダと比べると(2016 年は 67.08 億 US ドル、36 件)、日本の投資案件数は多いものの、総投資額は低く、平均投資額も比較的少額であった(2016 年は 3.46 億 US ドル、458 件)。ところが、 2018 年の台湾経済部投資審議委員会の統計では、2018 年の日本からの投資金額は 15.2 億 US ドルにも上り、2007 年以来の最高額であり、史上二番目に高い水準となった。
また、日本が投資して台湾に進出する産業の業種にも変化が現れている点にも注目が必要である。台湾経済部投資審議委員会によると、以前、日本から台湾へは、製造業での投資が中心であったのに対し、近年では明らかに多様化しており、サービス業の案件数と投資金額が伸びている。2018 年の日本からの台湾投資を見ると、産業別では金融保険業が投資額トップであり、卸売・小売業と宿泊・飲食業が投資案件全体の半数以上(283 件)を占めている。
日本の多くのサービス業が台湾に進出した背景として、日本の少子化、高齢化が台湾よりも進んでいて、日本の国内需要が弱まっていることが考えられる。台湾を市場として選択する原因としては、まず日本と台湾は、過去の貿易を通じて長期協業してきた基礎があり、民間の日台交流も活発であること、次に、台湾人は飲食と娯楽に金銭を使う傾向があり、中流階級以上の世帯の購買力は高く、これも台湾投資の誘因となっている。第三に、台湾は特性上、中国や
その他のアジア市場に進出するステップに適した発展性を持っている。とくに、台湾の環境は中国との間に一定の類似性と連動性がある。中国投資が順調ではない日系企業も少なくないが、中国市場は非常に大きいビジネスチャンスであるため、容易に放棄することができない。日系企業は、台湾市場進出を通じて、経験を重ね、サービスの調整や新商品の開発を行い、アジア市場進出の準備をすることができる。このため、日系企業が台湾市場で台湾本土の企業と協業することで、更なる発展を期待することができる。
第二章
台湾での契約において留意すべき法律、規則
前述の背景のもと、日系企業は台湾企業と適切な契約を締結するために、台湾の現地の法規や関連規則を把握しておく必要がある。本章では、契約締結における一般的な法律の概要と、知的財産関連法規を紹介する。
第xx 契約に関する基本原則:民法
契約は、当事者の相互の意思表示が一致することにより成立すると台湾民法第 153 条第 1 項に定められている。即ち、契約内容は先に申し込みが確定し、この申し込みに対し相手方が同意の表示を行うことで成立する3。
契約の内容が必要な事項に該当するのか否かを問わず、双方はいずれも意思表示をしなければならない。この意思表示が有効であるようにするため、契約締結に当たり双方は次の事項を確認しなければならない。
一、契約締結者が行為能力を有すること。自然人の場合、原則としてxx(満 20 歳がxx)していれば行為能力を有する。法人の場合、会社法は民法の特別法であり、外国法人は自国法人と同一の権
3 ただし、契約内容について当事者間でいくら詳細に話し合ったとしても、不明確または不完全なときがある。この時、契約が不完全であることにより成立せず、直ちに問題となるのかについて、民法第 153 条第 2 項に「必要な事項について当事者の意思が一致したときは、必要でない事項について未だ意思表示がないときであっても、その契約は、成立したものと推定する。その必要でない事項に関して当事者の意思が一致しないとき、裁判所は、その事件の性質によって定めなければならない。」と規定されている。このことから、契約が成立するか否かは、必要な事項につき双方が一致した表示をしたかにより判断されることが分かる。この必要な事項とは通常、売買契約における目的物と代金のように、契約の類型上不可欠な部分を構成する部分を指す。
利能力を有するよう会社法第 4 条規定を改正した。ただし、法人の場合、当該法人に代わって実際に意思表示をする者が行為能力を有し、その代理権限があることを確認しなければならない。
二、意思表示をする者に錯誤がないこと、または詐欺や脅迫等の事情がないこと。民法第 88 条第 1 項に「意思表示の内容に錯誤がある、または表意人がその事情を知って意思表示をしない場合、表意人はその意思表示を取消しすることができる。但し、その錯誤または知らなかった事情が、表意人自身の過失によるものではない場合に限る。」、民法第 92 条に「詐欺または脅迫により意思表示をした場合、表意人はその意思表示を取消しすることができる。但し、詐欺が第三者によって行われた場合、相手方がその事情を明らかに知っていた、または知ることができた場合に限り取消しすることができる。」と規定されており、これらの法規に合致する時,表意人は意思表示を取消しすることができる。
契約内容は基本的に、契約自由の原則により、双方の実際の需要に応じて契約内容を定めて締結することができる。しかし、契約の自由にも一定の線引きがされている。最も基本的なものとして、債権の目的は、「可能である(初めから給付が不能であるものではない)」、「確定しうる(初めから確定しており、又は確定することができる)」、「適法である(強行規定に違反しない)」、「妥当である(民法第 72 条の公序良俗に違反しない、又は民法第 74 条の暴利行為に該当しない)」ものでなければならない。
また、近年では消費者に対する保護につき、社会的道徳と契約xxの観点から多く討論されている。その議論の中心となっているのが「普通取引約款(定型化契約)」の効力である。普通取引約款とは企業経営者が不特定多数の人と契約を締結するべく、事前に定めた内容を他方当事者に渡して締結する契約のことである。このよう
な形態の契約は、民法第 247 条の 1 に「当事者の一方があらかじめ用意して、同種類の契約に使用する条項に基づいて締結された契約において、次の各号に掲げる約定をして、その事情が明らかにxx性を失うとき、当該部分の約定は無効である:
一、予定された契約条項の当事者の責任を免除又は軽減するとき;
二、相手方当事者の責任を加重するとき;
三、相手方当事者に権利を放棄させる、又はその権利行使を制限するとき;
四、その他相手方当事者に対して重大な不利益があるとき。」と規定されており、すなわち、約定内容に明らかにxxさに欠ける場合は契約が無効となる。
ただし、民法第 247 条の 1 の規定は、主に契約当事者双方の交渉地位が対等ではないことを考慮して契約自由原則を調整するものである。このような背景のもと、普通取引約款を締結する当事者の双方がいずれも企業経営者であり、双方の経済力が対等である等により、調整の必要がない場合もある。この点につき、裁判所は「双方とも法人であり、被告は原告と比べ経済的に弱い立場 にあるわけではなく、交渉する能力を有する」との見解を示している(高雄地方裁判所 103 年度xx字第 491 号判決)。よって、消費者と締結した契約ではなく、法人間で締結した普通取引約款は、民法第 247 条の 1 を根拠に無効と主張することがやや困難となる。
第二節
契約に関する知的財産権関連法
本節では、以下各知的財産権に関する法律を紹介する。特に、日系企業が台湾パートナー企業と契約する際、知的財産権をどのような配分で保持するかが重要になるので、権利の帰属規定にフォーカスして説明する。
一、専利法(特許法)
台湾の特許法は専利法といい特許、実用新案、意匠に関して規定している。以下、台湾での名称「専利法」を用いて紹介する。他社との契約又は従業員との雇用契約での現行の専利法に関する特許権の帰属問題は、「一方が出資し、他人を招聘する関係」と
「雇用関係」とに分けられ、雇用関係における発明については、更に「職務上の発明」と「職務外の発明」に分けられる。
「一方が出資し、他人を招聘する関係」で発明を完成する場合において、双方の法律関係は請負、委任又は委任に類似する契約関係の可能性があるため、被招聘者はその仕事に対し基本的に相当高い自主性と独立性があり、特に請負関係の被招聘者は、仕事完成時に始めて報酬が得られるため(民法第 490 条第 1 項を参
照)、リスクが比較的高い。このため、専利法第 7 条第 3 項に特別に「一方が出資し、他人を招聘して研究開発に従事させるときは、その特許出願権及び特許権の帰属は双方の契約の約定に従 う。契約に約定がない場合、発明者又は創作者に帰属する。但 し、出資者はその発明、実用新案又は意匠を実施することができる。」と規定され、即ち会社が、出資して他人を招聘する関係に
おける職務上の発明の特許出願権及び特許権を会社に帰属させた
いとき、契約で明確に約定しなければならない。
また、「雇用関係」において、現行の専利法では「職務上の発明」と「職務外の発明」に分かれている。雇用関係の下の職務発明と職務外発明について、下記の通り説明する。
専利法第 7 条第 2 項に「職務上の発明、実用新案又は意匠は、被用者が雇用関係中の職務の遂行において完成した発明、実用新案又は意匠を言う」とxxで定めており、1993 年 6 月 1 日台湾高等裁判所刑事法律課題研究(六)の法律意見では更に「所謂『被用者の職務上の発明』とは、被用者が使用者の権利義務の約定のもと、使用者の製品開発及び生産に参加または執行していることを言う」と指摘している。よって、「職務上の発明」とは、従業員が雇用契約の約定又は会社の指示により、会社の製品開発及び生産の仕事又はイベントに参加又は執行した成果であり、創作又は発明の進行や完成した時間が勤務時間又は勤務時間外、場所がオフィス又は自宅であろうと、職務上の発明であることに変わりない。
従業員の「職務上の発明」について、専利法第 7 条第 1 項に は、「被用者が職務により完成した発明、実用新案又は意匠について、その特許出願権及び特許権は使用者に属し、使用者は被用者に適当な報酬を支払わなければならない。」と規定されているため、雇用関係における職務上の発明の特許出願権及び特許権は会社に帰属される。また、会社は従業員に適当な報酬を支払わなければならない(例えば:発明奨金)。
雇用関係における「職務外の発明」とは、従業員が職務範囲以外で且つ会社の指示でなく、自ら発明又は創作に従事したことを指す。多くの場合は、従業員が勤務外の時間を使って行った発明であるが、勤務時間に職務範囲以外の個人的な発明や創作を行うこともありえ、この場合、発明が勤務時間内又はオフィス内で完
成したからといって、職務上の発明又は創作とされることはな い。ただし、職務外の発明が会社の資源や経験を利用したものである場合、専利法第 8 条第 1 項の特別規定「但し、その発明、実用新案又は意匠は使用者の資源又は経験を利用したものであるときは、使用者は合理的報酬を支払った上で、当該事業において、その発明、実用新案又は意匠を実施することができる。」によ り、当該発明が職務外の発明であると認定されていても、会社は合理的な報酬を支払い、その事業に実施する権利を取得することができる。
上記専利法の規定を図により説明する:
出資又は 招聘関係 | 雇用関係: 職務上発明 | 雇用関係: 非職務発明 | |
特許出願権及び特許権の帰属 | 原則-双方の契約の約定。 | 原則-使用者に属し、使用者は被用者に適当な報酬を支払わなければ ならない。 | 原則-被用者に属する。 |
例外-約定がない場合、被招聘者に属し、出資者は実施することができる。 | 例外-契約に別段の約定がある。 | 例外-使用者の資源又は経験を利用したものであるときは、使用者は合理的報酬を支払ったうえで、実施することができ る。 | |
氏名表示 権 | 被招聘者に属 する。 | 被用者に属す る。 | 被用者に属す る。 |
二、営業秘密法
営業秘密は、事業の内部人員又は一方が出資して招聘された者が完成する可能性があり、且つ営業秘密の経済的効果は特許権に類似しているので、営業秘密法における営業秘密の帰属は専利法のように、「一方が出資し、他人を招聘する関係」と「雇用関 係」とに分けられ、「雇用関係」は更に「職務上の営業秘密」と
「職務外の営業秘密」に区別される。
「一方が出資し、他人を招聘して研究又は開発を従事させる場合」において、営業秘密法第 4 条に「出資して研究又は開発に従事するよう他人を招聘して得た営業秘密の帰属は、契約の約定に従う。契約に約定のない場合、被招聘者に属する。しかし、出資者は業務xxx営業秘密を使用することができる。」と規定されており、この規定は専利法第 7 条第 3 項と同様に、会社が出資 し、他人を招聘した関係において、職務上で得た営業秘密を会社 に帰属させる場合、契約に明確に約定しなければならない。
「雇用関係」での営業秘密について、営業秘密法には従業員の職務上の研究又は発明であるかによりそれぞれ異なる規定があ る。
「職務上で得た営業秘密」について、営業秘密法第 3 条第 1 項に「被用者が職務上研究又は開発した営業秘密は使用者に属す る。但し契約に別段の約定がある場合はその約定に従う。」と規定されており、これは専利法第 7 条第 1 項の規定と同一である。
また、「職務外で得た営業秘密」については、同条第 2 項に
「被用者が職務上研究又は開発したのではない営業秘密は被用者に属する。しかし、その営業秘密が、使用者の情報又は経験を利
用して得たものである場合、使用者は合理的報酬を支払って該事業にその営業秘密を使用することができる。」と規定されてお り、これも専利法第 8 条の規定に類似している。
上記営業秘密法の規定を図により説明する:
出資又は招聘関係 | 雇用関係:職務上営業秘密 | 雇用関係:職務外営業秘密 | |
営業秘密 | 原則-双方の契 約の約定。 | 原則-使用者が 所有するもの | 原則-被用者 が所有するも |
とする | のとする。 | ||
例外-約定がな い場合、被招 | 例外-契約に別 段の約定があ | 例外-使用者 の資源又は経 | |
聘者に属し、 | る場合、被用 | 験を使用して | |
出資者はその | 者が享有す | 得たものであ | |
営業秘密を業 | る。 | るときは、使 | |
務に使用する | 用者は合理的 | ||
ことができ | な報酬を支払 | ||
る。 | ってその営業 | ||
秘密を当該事 | |||
業に使用する | |||
ことができ | |||
る。 |
三、著 作xx
雇用関係において、台湾現行の著作xxは従業員の「職務上の創作」につき、創作者保護原則を採っている。即ち、実際に創作を完成した従業員を著作者とし、これは著作xx第 11 条第 1 項に
「被用者が職務上完成した著作は、被用者を著作者とする。」と
規定されている。また、従業員と会社間の利益を調和するために同条第 2 項に「前項の規定により、被用者を著作者とするとき は、その著作財産権は使用者が享有する。但し、契約に著作財産権は被用者が享有する旨の約定があるときは、その約定に従
う。」と規定されている。なお、著作xx第 11 条第 1 項のただし書に「但し、契約に使用者を著作者とする旨の約定があるとき
は、その約定に従う。」と規定されているため、会社は特約を利用して直接著作権(著作財産権及び著作者人格権)を全て会社に帰属させると約定することができる。
「職務外の創作」について、著作xxにxxで定められておらず、学者のxxxxによると、解釈上、著作財産権及び著作者人格権は何れも従業員に帰属する、即ち従業員を著作者とし、従業員が完全な著作権を享有し、会社は如何なる権利を享有しない。且つこのとき従業員は専利法の規定のように通知義務を負う必要がない。ただし、xxの規定がないため、会社が職務外の創作を享有することを事前に約定した場合にも(特に著作財産権につき権利帰属の約定をした場合)、強制規定に違反したことにより禁止されることはないはずである。
また、「一方が出資し、他人を招聘した関係における創作」について、著作xx第 12 条に「出資して他人を招聘し、著作物を完成させたときは、前条の事由を除き、当該被招聘者を著作者とする。但し、契約に出資者を著作者とする旨の約定があるときは、その約定による。前項の規定により、被招聘者を著作者とする場合、その著作財産権は契約の約定により、被招聘者若しくは出資者が享有する。著作財産権の帰属につき約定がない場合、その著作財産権は被招聘者が享有する。前項の規定により、著作財産権は被招聘者が享有するときは、出資者は当該著作物を利用するこ
とができる。」 と規定されているため、一方が出資し、他人を招聘した関係において、著作権の帰属は特約により約定し、約定がない場合、被招聘者を著作者とする。雇用関係と異なる箇所は、 著作財産権の帰属につき約定がない場合、原則として被招聘者が享有するが、出資者は使用権を享有することができる。
しかし、著作権の帰属に対して契約の約定がない場合、出資者は著作を利用できるが、著作者人格権(公開発表権、氏名表示 権、同一性保持権)が被用者に帰属するので、制限されるかもしれない。又著作者人格権(公開発表権、氏名表示権、同一性保持権)が被用者に帰属する約定がある場合、出資者は著作財産権があっても、制限される可能性がある。従って、著作者人格権と著 作財産権の帰属が分かれることを避けるため、先に契約にて著作
者人格権と著作財産権はすべて出資者に帰属すると約定したほう
がいい。
上記著作xxの規定を図により説明する:
出資又は招聘関係 | 雇用関係:職務上の創作 | 雇用関係:職務外の創作 | |
著作 財産権 | 原則-双方の契約の約定。 | 原則-使用者の 享有に属する。 | 被用者に属する。 |
例外-約定がない場合、被招聘者に属し、出資者は利用することがで きる。 | 例外-契約に別段の約定がある場合、被用者が享有す る。 | ||
著作者人格権 | 被招聘者に属する。 | 被用者に属する。 | 被用者に属する。 |
なお、AI を利用して完成した著作物は AI に著作権が帰属するかという点も注意が必要である。これに対して、経済部の智著字第 10700038540 号によると、「自動作曲システム」を利用して作成された楽曲の著作権の扱いについて、作成された曲はただ当該機械又はシステムが自動計算することによって生み出されたものに過ぎず、人間の「独自性」と「創作性」が認められない場合 は、著作xxによって保護される著作物に該当しないものと思われる。ただし当該機械又はシステムはただ創作者の創作道具に過ぎない場合は、作成された曲に創作者の「独自性」と「創作性」が認められ、単に機械又はシステムによって生み出されたものではないことから、当該楽曲は著作xxによって保護される著作物
に該当する。従って、AI は人間の「独自性」と「創作性」がないため著作権を所有することができない。
四、商標法
商標法第 2 条によると、台湾における商標権の保護は、「登録主義」を採用している。商標権を取得するためには、まず主務官庁に登録出願をし、登録査定がされ、かつ登録手続きを済ませなければならず、原則として商標の登録出願者が商標権者となる。台湾は互恵主義原則の下、商標法第 4 条に「外国人の所属する国が、台湾と商標に関する相互保護条約又は協定を締結しておら ず、又はその国の法令により台湾国民による商標登録出願を受理しない場合は、該外国人の商標登録出願を不受理とすることができる。」と規定しているが、台湾はすでに WTO に加盟しているため、日本を含む WTO 各加盟国はいずれも台湾で商標登録の出願をして商標権を取得することができる。また、商標法は前述の特許法、営業秘密法及び著作xxと異なって権利帰属に関する約定がないため、雇用関係又は出資関係に関わらず、いずれも契約
当事者双方で商標権の帰属について約定することができる。
五、科学技術基本法
台湾当局が助成、依頼、又は出資した研究によって得た知的財産権の帰属と運用について、従来は国有財産法第 2 条第 1 項「国家が法律規定に基づき又は権利行使に基づき又は予算支出、若しくは寄贈により取得した財産は、国有財産に該当する。」との規定に従った。ここにいう国有財産には特許権、著作権、商標権及びその他財産上の権利が含まれる。よって、上記規定に違反しないように、従来の実務では、台湾当局機関が出資さえすれば必ず係る知的財産権の取得を要請していた。然しながら、これら知的財産権が本来の価値を発揮できるよう、台湾当局は 1999 年に「科学技術基本法」を定め、国有財産法の規制を緩和し、当局が助
成、依頼又は出資した研究によって得た成果が研究開発機構に帰属できるようにした。2011 年にさらに「科学技術基本法」第 5 条規定を改正し、公立学校、公立研究機関・機構、公営事業を規制の範囲に取り入れ、それと同時に、第 6 条において、当局の助
成、委託、出資により、又は公立研究機関・機構が法により割り当てられた科学技術研究発展の予算で行った科学技術の研究発展について、その成果の全て又は一部は、研究発展を行った機構の所有に帰属し又はライセンスにより使用することができ、国有財産法の制限を受けないこと及び研究発展の成果とその収入が公立学校、公立機関・機構又は公営事業者に帰属する場合、その保 管、使用、収益及び処分は、国有財産法の制限を受けないことを規定している。
また、科学技術基本法第 6 条第 3 項の規定により、各当局機関は各々のライセンス弁法を定めている。例えば、科技部、衛生福
利部等はそれぞれの成果帰属及び運用弁法を定めている。「政府科学技術研究発展成果帰属及び運用弁法」を例にとると、補助金を受けている機関によって国に帰属すると認定されたものを除 き、研究開発を実施する機関に帰属し、また、その成果の生み出した収益の 40%は出資者に配分しなければならない(第 3 条第 1項、第 17 条)。なお、当局機関からの補助金が全体経費の 50%以上を占める場合、研究開発を実施する機関の成果について、出
資者は国内外において無償で非独占的な通常実施権を有するもの
とされている(第 4 条第 1 項)。よって、日系企業が台湾当局と連携するとき、「科学技術基本法」及び各部門が定める弁法に留意しなければならない。
第三節
その他の法律
日系企業と台湾企業が契約を締結する時、前述の契約に関する基本原則を規定する民法及び知的財産関連法のほかにも、なお留意すべき法令がある。その中でも、よく取り上げられている投資奨励法及び個人情報保護法について説明する。
一、外国からの投資に関する法
台湾当局は投資を奨励するため、所得税法及びその他特別法において税負担軽減措置を規定している。日系企業が契約締結する時の参考となるように、税負担軽減措置に関する法令規定をいくつか取り上げて下表のとおり整理した:
1 | 「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための公益財団法人交流協会と亜東関係協会との 間の取決め」(略して日台租税協定という)45 |
⚫ 使用料が生じた一方の地域においても、当該一方の地域の法令に従って租税を課することができ る。その租税の額は、当該使用料の受益者が他方の地域の居住者である場合には、当該使用料の額の 10%を超えないものとする。(第 12 条) (この条において、「使用料」とは、文学上、芸術上若しくは学術上の著作物(映画フィルム及びテ |
4台日租税協定は 2017 年 6 月 13 日より発効し、2017 年課税年度より適用されるが、源泉徴
収税 (例えば、配当金、利息、使用料)につき、台湾では 2017 年 1 月 1 日以降に支払われる
所得に適用する。日本では 2017 年 1 月 1 日以降、実際に給付された所得に適用する。
5台湾の税捐稽徴法第 5 条及び所得税法第 124 条規定によると、租税協定に法的効力があり、その法律の順位は国内法より優先する。
レビジョン放送用又はラジオ放送用のフィルム又はテープを含む。)の著作権、特許権、商標権、意匠、模型、図面、秘密の方式または工程の使 用、もしくは使用権の対価として又は産業上、商業上若しくは学術上の経験に関する情報の対価と して受領される全ての種類の支払金をいう。) | |
2 | 所得税法 |
⚫ 営利事業が新しい生産技術や製品を取り入れ、または製品の品質を改良し、生産コストを軽減するために、外国の営利事業が所有する特許権、商標権及び各種の特許権利を使用し、政府の主務官庁によりプロジェクトとして容認された場合、外国事業に給付したロイヤルティー、及び政府の主務官庁により容認された重要な生産事業の工場設立のために外国事業に支払った技術サービス報酬を控除することができる。6 (第 4 条第 1 項第 21号) (営利事業が外国営利事業に支払ったロイヤルティーまたは技術サービス報酬は、所得税法第 4 条第 1 項第 21 号の規定により所得税の免除が容認された場合、その適用期間を三年とする。許諾を取る時間または工場設立の期間が短い場合、当該期間に 準じる。この容認された免税適用期間が満了する |
6外国営利事業技術サービス報酬及びロイヤルティー免税証明の申請に必要な書類につき、つ
ぎを参照してください。 xxxxx://xxx.xxxxxxx.xxx.xx/xxxxxxxx/xxxx?XXXxxxxxxxxxxxx.XxxxxxxxxxxXxxx&xxx00 (最終閲覧日:2019/11/12)
前に、企業は所得税法第 4 条第 1 項第 21 号の規定により再度申請することができる。) ★留意事項:技術的な細部規定は『外国営利事業收取製造業技術服務業與發電業之権利金及技術服務報酬免稅案件審查原則(外国営利事業が、製造業、技術サービス業及び発電業のロイヤルティー及び技術サービス報酬を収受する案件の免税審査原則)』を参照のこと。 ⚫ 台湾域外に本部を構える営利事業が台湾域内で技術・サービスを提供し、その費用分担額の計算が困難であるものは、台湾域内に支部又は代理人を置いているか否かに関わらず、財政部に申し出て承認を求めるか、又は財政部の査定により、台湾域内の営業収入の 15%を台湾域内で課税されるべき営利事業所得額とする。(第 25 条) (通常外国の営利事業が本項優遇措置を申し出て承認を得たとき、技術・サービスの提供による報酬の税率が 20%から 3%に下げられ、即ち技術サービス料金の 15%を課税されるべき所得金額とし て、15%に 20%の税率をかけると 3%になる) ★留意事項:技術的な細部規定は『外国営利事業申請適用所得税法第 25 条第 1 項規定計算所得額案件審査x x(外国営利事業が所得税法第 25 条第 1 項により所得額を計算することを申請する案件に関する審査x x)』を参照のこと。 | |
3 | 産業創新条例(産業イノベーション条例) |
⚫ 研究開発と租税優遇措置:直近 3 年間環境保全、労働又は食品の安全と衛生に関する法令への違反がなく、且つ重大な過失がない会社又は有限合資会社が研究発展に投資する際の支出について、 「税額控除率 15%、控除期間 1 年」又は「税額控除率 10%、控除期間 3 年」のいずれかの方案を選択して、当年度納めるべき営利事業所得税額(法人税額)の 30%の限度内で、納めるべき営利事業所得税額を控除することができる。(第 10 条) ⚫ 従業員に対する株式報酬の課税繰延規定:従業員が報酬や自己株式の引受等で自社株を取得したとき (報酬を自社株で従業員に支給する場合、自社株を時価で従業員に購入させる場合、自社株を買い戻して従業員に支給する場合、ストックオプション及び権利確定条件付き新株予約権を従業員に付与する場合)、取得した自社株について時価に基づき計算 し、年間合計金額ニュー台湾ドル 5 百xxの限度内 で、課税を 5 年間繰り延べることができる。(第 19 条之 1) | |
4 | 生技新薬産業発展条例(バイオテクノロジー新薬 産業発展条例) |
⚫ バイオ・製薬企業は、研究開発及び人材育成に投資した金額について、35%の限度内で、営利事業所得税の納付があった年度から 5 年以内で、各年度納めるべき営利事業所得税額から控除することができ る。年間研究開発費又は人材育成費が前 2 年間の年 |
平均額を超えた場合は、超過分については 50%により控除することができるが、原則として当該年度当該企業が納めるべき営利事業所得税額の 50%を超えてはならない。(第 5 条) ★留意事項:バイオ・製薬企業による研究開発費及び人材育成費に関する技術的な細部規定は『投資抵減弁法』を参照のこと。 ⚫ 営利事業がバイオ・製薬企業の創立又は事業拡大に投資し、且つ当該会社の記名株式の株主になって 3年以上経つ場合、その投資額の 20%の限度内で、営利事業所得税の納付があった年度から 5 年以内 で、各年度納めるべき営利事業所得税額から控除することができる。(第 6 条) | |
5 | 促進民間参与公共建設法(民間事業者による公共 事業参与促進法) |
⚫ 民間事業者が参与した重大な公共事業を運営し始 め、課税所得が生じた年から、最長 5 年の営利事業所得税が免除される。(第 36 条) ★留意事項:詳細、技術性の規定は「民間機構参与重大公共建設適用免納営利事業所得税弁法(民間事業者による公共事業参与が適用する営利事業所得税免除法)」を参照のこと。 ⚫ 民間機構は重大な公共事業を建設する際に使用する建設機器、施工道具、訓練機器及び部品を輸入する |
場合、経済部により台湾にそれらを製造、提供するメーカーがないことを証明されたのであれば、輸入関税が免除される、または分割払いができる。(第 38 条) ★留意事項:詳細、技術性の規定は「民間参与重大公共建設進口貨物免徴及分期繳納関税弁法(民間事業者による公共事業参与における輸入貨物の関税の免除及び分割払い法)」を参照のこと。 | |
6 | 中小企業発展条例7 |
⚫ 中小企業の研究開発を促進するために、中小企業が研究開発に投資した支出につき、次の方法を選ん で、当該会社の当年度の営利事業所得税額の 30%を限度に控除することができる。選定後は変更することができない。1.支出した金額の 15%を限度に当年度の営利事業所得税から控除する。2.支出した金額の 10%を限度に当年度から 3 年以内の各年度の営利事業所得税額を控除する。(第 35 条) ★留意事項:技術的な細部規定は『中小企業研究発展支出適用投資抵減辦法』を参照のこと。 ⚫ 研究開発の成果の流通と応用を促進するために、中小企業が所有する知的財産権を上場公開事業や新興株式市場での上場企業ではない会社に譲渡したことにより取得した新しく発行された株式は、当該企業の当年度の営利事業所得税額から免除される。(第 |
7産業創新条例の中に中小企業発展条例と同じ性質の租税優遇がある場合、中小企業に適用で
きる選択肢は一つのみであることに留意しなければならない。
35-1 条) |
二、個人情報保護法(仮訳:個人情報保護法、原文:個人資料保護法)最近のビッグデータの活用技術の発展により、多かれ少なかれ 各企業が消費者の情報を収集するようになった。これらの情報の
収集方法や収集後の運用等につき、欧州連合が GDPR(General Data Protection Regulation)を頒布してから、各企業はますます注意を払わなければならなくなった。台湾の個人情報保護法が定めた個人情報の定義、個人情報処理原則、当事者の権利等を GDPR と比較して紹介する。まずは、企業が個人情報を収集するよりどころを詳しく説明する。
個人情報保護法第 19 条第 1 項において「非公務機関による個人
情報の収集又は処理は、第 6 条第 1 項で規定された情報以外、特定目的を有しなければならず、且つ次の各号の一に該当しなければならない。
1.法律にxxで規定している。
2.当事者との間に契約又は契約類似の関係があり且つ既に適当な安全措置を採っている。
3.当事者が自ら公開している又はその他既に合法的に公開された個人情報。
4.学術研究機構が公共の利益に基づき統計又は学術研究のために必要があり、且つ情報は提供者が処理した後、又は収集者の開示方式により、特定の当事者を識別できない。
5.当事者の同意を得た。
6.公共の利益の増進のために必要である。
7.一般的に取得できる出所から個人情報を取得する。但し、当該情報の処理又は利用の当事者による禁止の方が、更に保護に値
する重大な利益を明らかに有するときは、この限りではない。8.当事者の権益を侵害しない。」と規定されている。この中でも企業の個人情報収集のよりどころとされることが多いのは第 1 項第
2 号及び第 5 号である。
第 2 号の契約又は契約類似の関係があるかにつき、個人情報保
護法施行細則第 26 条及び第 27 条によると、個人情報保護法が改正、施行された後、成立したものに限らない。且つ契約関係と は、本契約並びに非公務機関と当事者の間での当該契約の履行に関わる必要な第三者の接触、協議または連絡行為および給付または当該第三者への給付行為を含む。契約類似の関係とは、下記のいずれか一つを指す。
1.非公務機関と当事者の間で契約成立前に、契約締結の準備もしくは交渉または取引の目的のため行った接触または協議行為。 2.契約が無効、取消、解除、解約のため消滅した又は履行が完
成した場合に、非公務機関と当事者が権利行使、義務履行又は個人情報の完全性を確保する目的のため行った連絡行為。
また第 2 号にいう適当な安全措置とは、公務機関または非公務機関が個人情報の窃取、改竄、毀損、滅失又は漏洩を防止するために採る技術上および組織上の措置を指す。この措置は下記事項を含むことができ、且つ達成しようとする個人情報保護の目的との間で、適当な関係を有することを原則とする。
1.管理人員および相当なリソースの配置。
2.個人情報の範囲の画定。
3.個人情報のリスク評価および管理システム。
4.事故の予防、通報および対応システム。
5.個人情報の収集、処理および利用の内部管理手続。
6.情報安全管理および人員管理。
7.広報および教育訓練。
8.設備安全管理。
9.情報安全監査システム。
10.使用記録、履歴情報および証拠保存。
11.個人情報安全保護の全体的で持続的な改善。
上記第 2 号の要件の条文は「且つ」であるため、企業は契約又は契約類似の関係があることだけ、または企業内部が安全措置を講じているだけでは要件を満たさず、個人情報を収集できると主張することはできない。8
第 5 号の当事者の同意を得たとは、個人情報保護法第 7 条第 1項によると、本法に定める告知すべき事項を収集者から告知されたことに対して当事者がこれを許可する意思表示のことをいう。個人情報保護法に定められた告知すべき事項は、第 8 条に規定されていて次の事項が含まれる。1.会社名称 2.利用目的 3.個人情報の類別 4.個人情報の利用期間、地域、対象、方法 5.個人情報に対し行使できる権利 6.個人情報を提供するか否かが任意であった場合、提供しないとき、その権益に及ぼす影響。これらの告知事項は前述第 2 号の場合にも適用される。
また、個人情報保護法第 19 条に違反し、かつ自己若しくは第三者の不法利益を意図し又は他人の利益を侵害した場合、企業に刑事
8 実務において、A 生命保険会社は保険業務を行う際、個人情報を削除する作業を行うため、所定の保存期限に従わずに文書を削除または処理したために記録に不完全な部分があ
り、ならびに自ら監査作業を行ったため、ある部門は個人情報安全保護作業の項目を遵守できていなかった。これに対して、金融監督管理委員会(金管会)はすでに 2017 年 12 月に、 A 生命保険会社に対し一ヶ月の期限を定めて是正を命じた。規定により、期限までに是正されない場合、金管会は一回につき 2 xx以上、20 xx以下の罰金を処することができる。同時にその内部管理作業の有効性を監視し、制定されていない、または実行されていない場
合、60~600 万の罰金を処することができる。
責任があることに留意しなければならない。
なお、最近、台湾の国家発展委員会は GDPR に応じて「個人情報保護専案弁公室」を設立し、2018 年 7 月 4 日に正式に運営を開始した。主に二つの重要な作業を行う:1. GDPR 対応の関連事項をまとめ、EU に十分性認定を申請する。2.個人情報保護法を検討し、各部署が個人情報保護法を確実に実行するよう強化、協力する。
個人情報保護法と GDPR を以下の通り比較する。
比較 | 個人情報保護法 | GDPR |
域外での個人情報の処理の適用の有無 | 台湾の公務及び非公務機関が境外で国民の個人情報を収集、処理及び利用する場合も、適用される。(第 51 条第 2 項) | EU の域外企業がEU の域内の当事者に商品、役務を提供する場合、またはEU の域内で個人情報の処理を監視する場合、 適用される。 |
個人情報の定義 | ⚫ 一般:直接的または間接的な方法で当該個人であると識別しうる情報。 ⚫ 特種:病歴、医 療、遺伝子、性生活、健康診断。 ⚫ 刑事:前科及び犯罪記録 (第 2 条) | ⚫ 一般:直接的または間接的の方法で識別しうる当事者のあらゆる情報、IP アドレス、閲覧履歴からのデジタル‐フットプリント、特定当事者の身分を追跡、識別できる情報を含 む。 ⚫ 特種:人種、血統、 |
政治に関する意見、宗教、哲学信仰、組合における身分、遺伝子、生理学的な特徴、健康、性生活、及び性的指向を開示する情報。 ⚫ 刑事:前科及び犯罪記録。 | ||
個人情報処理原則 | xxxxの方法に従 い、特定目的の必要範囲を超えてはならず、収集の目的と正当で合理的な関連がなくては ならない。(第 5 条) | 合法性、xx性及び透明度、使用目的の制限、資料最小限の収集、正確 性、保存制限、完全性及び秘密保持性等に適合し なければならない。 |
当事者の権利 | 訂正権、削除権、拒否権、複製本作成供与の請求権。(第 3 条) | 訂正権、削除権、拒否 権、個人情報の携行性。 |
越境移転 | 原則上容認する、例外として禁止する場合が ある。(第 21 条) | 原則上禁止、例外として容認する場合があ る。 |
管理機関 | 分散型管理制度で、各中央目的事業主務官庁が検査、改正、裁罰権を執行する。(第 22- 25 条、第 47-49 条) | 少なくとも一つの独立の公務機関が管理す る。GDPR の適用。 |
企業責任 | ⚫ 個人情報のリスクの検討 ⚫ 管理者の配置 ⚫ 使用記録、履歴及び証拠保存 ⚫ 事故報告及び対応の仕組み ⚫ 設備の安全管理 (中央目的事業主務機関は個人情報保護法第 27 条第 3 項により方法を定める際の参考事 項) | ⚫ 個人情報保護への影響の調査 ⚫ 個人情報保護の最高責任者の指定 ⚫ 書類記録 ⚫ 個人情報侵害の認識後から 72 時間以内に監督機関に報告すること ⚫ 個人情報保護の設計およびプリセット |
第三章
知財上の留意点
日系企業が台湾企業と契約を締結する前に、知的財産権の面でいくつかの点に留意すべきである。会社が所有する知的財産権の数と質を確認するだけでなく、たとえ日系企業が日本で知的財産権を取得していたとしても、台湾においても出願して知的財産権を取得しなければならない。知的財産権は原則として属地主義を採用しているためである。出願する過程で、他人が先取り出願していることを発見することがある。この場合、必要な対策を講じなければならない。また、日系企業がビジネスチャンスを求めて台湾企業と商談する初期の頃、会社内の知的財産権をある程度開示しなければならないことがある。このとき、自身の知的財産権が他人に奪われてしまわないように、一定の対策を講じる必要がある。このため、本章では会社内部の知財管理、第三者の権利の調査と第三者の権利を発見した際の対応、商談などの場での注意点に分けて説明していく。
会社内部の知財管理
第xx
知的財産権を取得、活用する効果はいくつかある。例えば、有
利な事業展開、技術開発力の向上、販売力の向上や社内活性化などの利点がある。しかし、実際には、企業内でどのように知的財産を管理すべきなのか、実に難しい問題である。産業、企業によって所有する知的財産権の種類も異なり、会社の規模や従業員 数、管理コスト等の要因から、全ての企業に適した知財管理制度というものはないが、参考となる方針として以下のとおり例を挙げる。
一、知的財産権の秘匿化
一般的に知的財産権の秘匿化は、営業秘密の秘密保護措置に大きく関係するほか、専利法に規定されている特許要件の一つである新規性について、台湾では絶対的新規性を採用し、新規性を失う状況について規定している。9
このため、企業として特許出願するつもりがあれば、特許出願前に技術資料が漏洩しないようにし、また特許出願するまで、製造委託や商品の発売をしないように注意しなければならない。製品の外観デザインの漏洩は容易なので、意匠出願する場合は特に注意する必要がある。
このことから、営業秘密、技術又はデザインが事前に公開されることを避けるため、企業内では以下の二つの面から知的財産の管理を行うことを検討できる10:
9 即ち、特許は専利法第 22 条、実用新案は専利法第 120 条、意匠は専利法第 122 条にそれぞれ規定されている事情がある場合、その事情の発生場所が国内または国外であるかを問わ ず、新規性を失う。特許及び実用新案の新規性が喪失する事情は同じである(即ち、一、出願前にすでに出版物に見られているもの。二、出願前すでに公開使用されていたもの。三、出願前に公衆に知られていたもの)。意匠について要求される新規性は、特許、実用新案とほぼ同じであるが、特許と実用新案は「同じ」技術が出願前の刊行物に見られるもの、または公開使用された場合に新規性を喪失するのに対して、意匠では出願前に「同じ」または
「類似」するデザインが刊行物に見られるもの、または公開使用された場合に新規性を喪失する。ただし、上記の新規性喪失に対し、専利法第 22 条第 3 項に「出願人が本意または不本
意により公開の事実になってしまった場合、例外として、公開の事実があって 12 ヶ月以内に特許出願するなら、新規性喪失にならない」と規定されている。新規性有無の判断につき、原則上、形式的に判断される。出願特許の技術は先行技術と差異があるか否か、どういう差があるか、及び当該先行技術は特許請求項の技術特徴を明示または暗示したかを比較する。また、進歩性の判断と異なり、単一の先行技術をもって判断する。
10 参考資料:智慧財産局、営業秘密保護実務教戦手冊(2013 年)
一、物の管理 | |
機密レベルの表示と判別 | ⚫ 会社にとっての重要性と機密性の程度により、異なるレベルに区別し表示する。 (1) 書面文書:押印 (2) 電子データ:パスワードの強度で区別 ⚫ 機密文書を特定の保管エリアに保存する。 ⚫ 従業員が機密文書を無断で持ち出そうとすると、金属センサーを取り付けたドアを通るときに検出されるように、機密文書の印刷は、必ず金属成分を含有する紙を使用しなければならない。 |
設備の管理 | ⚫ 専門担当者が機密文書の保存、ダウンロー ド、複製、回収及び廃棄の時間、送付先、回数を記録する。 ⚫ 電子データは暗号化し、ライセンスシステムを構築し、パスワードを定期的に変更し、会議後直ちに廃棄する。 |
区域管理 | ⚫ 「無断立入禁止」等の警告表示を貼り、警備システムまたは監視カメラを設置する。 ⚫ 機密性の高い認証システムを設置する。例えば IC カードによる認証、生体認証(指紋 等)。 |
コンピュー | ⚫ システムが自動的に従業員の email と印刷記 |
ターシステム管理 | 録、及びファイルの内容をスキャンしてチェックする。 ⚫ ログインのパスワードを設定し(強度が高いもので、重複使用してはならない)、管理者が退職した後、直ちに新しい ID 及びパスワードを再設定する。 ⚫ ファイアウォールとセキュリティソフトを強化する。 |
二、人の管理 | |
教育訓練 | ⚫ 専門担当者が教育研修内容を設計し、有益で適切な教材を作成し、学習の成果を評価す る。 ⚫ 従業員が集まる各種集会を利用して、営業秘密の重要性について随時呼びかけをする。 |
契約管理 | ⚫ 従業員と秘密保持契約を締結する。 ⚫ 秘密保持契約を締結するタイミング:入職 時、在職中(例えば特定のプロジェクトに参加した時)、退職時。 |
責任の追及 | ⚫ 営業秘密と機密情報の定義を定め、秘密保持と関連義務の範囲を明確にし、罰則を明確化する。例えば、義務違反の処理方法として、違約金や損害賠償を定める。 ⚫ 従業員が退職するとき、コンピューターシス テムが自動的に従業員退職直前半年間の電子 |
メールをスキャンして、営業秘密保護法に違反する行為、又は技術情報の転送や送付等刑法の背任罪等を構成する事由があるか否かをチェックする。 | |
退職後の競業避止に関 する条項 | ⚫ 知的財産関連法規だけではなく、労働基準法の関連規定及び実務判決の最新傾向にも留意 する11。 |
11 労働基準法第 9 条の 1「雇用者と従業員が離職後の競業避止を約定するとき、次の要件を満たさなければならない。①雇用者に保護を受けるべき正当な営業利益があるこ と。②従業員が雇用者の営業秘密に接触または使用できる職務を担当していたこと。③競業避止の期間、区域、職業活動範圍及び就業対象は、合理的な範囲を超えてはならない。④雇用者は従業員に対して、競業行為に従事しないことによる損失を合理的に補償する。前項第 4 号で定められる合理的保障は、従業員が在職期間中に受領した給付を含まない。これらの規定のいずれか一項を満たしていない場合、雇用者と従業員の間で約定した条項は無効である。退職後の競業避止条項の有効期間が、2 年を超えてはなら
ず、2 年を超えている場合は、2 年に短縮される。」(発効日:2015/12/18)、労働基準法施行細則第 7 条の 1「退職後の競業避止の約定は、書面をもって行わなければならず、また労働基準法第 9-1 条第 1 項第 3 号及び第 4 号の規定内容を詳しく記載し、雇主と労
働者が署名捺印をした上で締結の証として 1 部ずつ保有しなければならない。」;労働
基準法施行細則第 7 条の 2「本法第 9 条の 1 第 3 号で定められる合理的な範囲を超えない約定は、次の規定に合致しなければならない:①競業避止の期間は、合理的な範疇を超えてはならず、最長 2 年を超えてはならない。②競業避止の地域は、元事業主の具体的な営業活動地域範囲に限る。③競業避止の職業活動範囲及び就職先は、具体的かつ明確でなければならず、また元事業主と同一または類似する、かつ競争関係にある者に限る。④競業避止の就業先対象は具体的明確でなければならず、原事業主と同じまたは類似する営業活動を行い、競争関係にある者に限る。」;労働基準法施行細則第 7 条の 3
「本法第 9 条の 1 第 1 項第 4 号に定める合理的な補償は、次の事項を総合的に考慮して判断しなければならない:①毎月の補償金額は、労働者退職時の平均月給の 50%を下回らないものか。 ②補償金額は、労働者退職後の競業避止期間の生活を維持できるものか。 ③補償金額は、競業避止の期間、地域、職業活動の範囲及び就職 先の範囲に相当するものか。 ④その他補償基準の合理性に関する事項。 前項の合理的な補償は、一括先払いまたは月払いかを約定しなければならない。」(発効日:2016/10/07)
⚫ 従業員が退職後に競合他社へ転職した場合、どのようにして主張すべきか。 |
また、営業秘密の保護意識と管理ニーズが高まってきていることに伴い、工業情報推進機構である資策会( Institute for Information Industry)の科法所創智中心では、長期にわたって推進してきた「台湾知的財産管理規範」(TIPS)において培った国際法制政策の研究分析や指導経験をもとにオンラインでの自己判断表や「営業秘密管理指針」等を提供しているほか、営業秘密保護管理に関する教材の開発や実地検査などの指導カウンセリングサービスなども行っているので参考にしていただきたい。1213
二、出願権利化
特許、商標等は属地主義をとっており、現地で出願、登録されて始めて権利を取得することができる。日系企業が台湾への輸出又は進出を検討しているのであれば、商標について台湾で登録出願をしなければならない。また、日系企業の所有する技術について、日本でまだ特許出願されていないときは、営業秘密として保護し、すでに日本で特許出願されているときは、新規性欠如や進
12 関連記事-資策会科法所による裁判判決の解析企業が営業秘密を守るための手引き xxxx://x.xxx.xxx/Xxxxxxx/00000000000000?xxxxxxxXxXX0Xx0xX0XXX- khw59Hpnf1RapO1G4BkyLQLIFAsn3yaEuLNa_cGtKSAu7g (最終閲覧日:2019/10/2)
13資策会の科法所創智中心は、これまでの経験を訴訟証拠保全の戦略と組み合わせ、2019 年
10 月に「從産業秘辛和實務數據探索営業秘密管理(仮訳:産業秘密と実務のデータから営業秘密の管理を探索する)」を出版する。これは、営業秘密管理の向上、漏洩リスクの低減、産業の国際競争力を強固なものにするべく、台湾の四大産業の営業秘密の管理の現状や、代表的な裁判所の判決を分析し、具体的な案例をもとに営業秘密に関する裁判所の認定、および合理的な秘密保護措置に必要な管理項目を読者に認識させるとともに、「営業秘密管理指針」とあわせて訴訟前の秘密保護管理方法を教示するものである。
歩性欠如として台湾での特許出願が拒絶されることにならないように、「優先権」を主張して台湾に出願する。台湾専利法における「優先権」の規定を以下のとおり整理する:
内容 | 注意 | |
優先権 | 出願人が、同一の発明について、台湾と相互に優先権を承認する国又は WTO 加盟国において最初に法律により特許出願 し、並びに最初の特許出願の日から 12 ヶ月以内に、台湾に特許出願をする場合、優先権を主張することができる。(専利法第 28 条) | ⚫ 優先権を主張するとき、特許出願と同時に次の事項を声明しなければならない:一、最初の出願の出願日。二、当該出願を受理した国又は WTO 加盟地域。三、最初の出願の出願番号。 ⚫ 出願人は最も先の優先日から 16 ヶ月以内に、前項の国又は WTO 加盟国が発行した出願受理証明書類を提出しなければならない。 ⚫ 生物材料又は生物材料を利用した発明を出願するとき、最も先の優先権日から 16 ヶ月以内に寄託証明 |
書類を提出しなければならない。 |
出願が登録されると、特許 20 年、実用新案 10 年、意匠 15 年
の権利存続期間が与えられる。商標の存続期間は 10 年間で、更
新ごとに 10 年の延長が可能である。
なお、日本で開発した技術を特許等の出願をせず営業秘密として保護する場合には、後に出願された第三者の特許権に対抗して
「先使用権」の主張ができるように、研究日誌などの関連証拠を社内で適切に保管しておく方がよい。1415
14 参考資料:「台湾における先使用権と公証制度(2014 年 3 月公益財団法人交流協会)」
xxxx://xxx.xxxxxx.xx/xxxxxx.xxx?xxxx_xxxx0 (最終観覧日:2019/11/18)
15 先使用権について、詳しくは本章第二節二、第三者権利を発見した際の対応をご参照ください。
第二節
第三者権利の調査
一、第三者権利の調査
市場競争を勝ち抜き、競合製品と区別できる商品を開発するには、企業は他企業の開発動向及び事業の技術分野において既に関連特許が存在するか否かを事前に調査する必要がある。商品に使用予定の名称が台湾で第三者の商標権を侵害しないかも調査する必要がある。
二、第三者権利を発見した際の対応
商品開発の初期段階で知的財産権の有無について完全な調査を行うことは、企業にとって、他社特許を回避しつつ技術開発を行え、また他社から使用許諾を受ける、もしくは登録を受ける権利を取得する準備ができるという利点がある。しかしながら、商品開発は時代と共に変化するものであり、また、世界中の全ての知的財産を徹底的に調査し尽くすことも不可能であることから、企業が特定の市場に進出しようとしたときになってから、他社によって既に特許又は商標が登録出願されていることを発見する場合がある。そこで、商品の製造販売又は宣伝広報が権利侵害として訴えられることに
よって、企業の運営が妨害されないようにする必要がある:
1. 先取り登録商標を発見した場合、権利をどう主張するのか
商標が他人に先取り登録されたことを発見したとき、日系企業は次の二つの方法で権利主張することができる:
2003 年の法改正に伴って、台湾商標法は「商標権付与後の登録異議申立制度」を採用するように改められ、登録商標に不登録事由があると思うとき、商標登録公告日後 3 ヶ月以内に、「何人」でも異議申立をすることができる。
異議申立期間を過ぎた後、登録商標に不登録事由があると発見した場合、「商標登録無効審判請求」により商標登録を取り消すことができる。無効審判の不登録事由は異議申立と同じであるが、利害関係者又は商標審査官に限って商標主務官庁に商標登録に対する無効審判請求をすることができる。また、商標権者と無効審判請求人の権益均衡を保ち、及び法的安定性を確保するため、特定の不登録事由について無効審判を請求できる期間は、商標の登録公告日から 5 年以内(除斥期間)である。但し、悪意で他人の周知・著名商標を模倣して先取り登録した場合は、除斥期間の制限を受けない。16
16 商標法第 58 条第 1 項「商標の登録が第 29 条第 1 項第 1 号、第 3 号、第 30 条第 1 項第 9
上記の異議申立又は無効審判請求の手続きにより、他人に先取り登録された商標を取り消すほか、企業が以下の要件を満たした場合は、「先使用権」を主張することにより、他人の商標権による拘束を受けないことができる。「先使用」とは、善意により先使用した者は、他人が商標登録出願したことを知らなかったために、すでに市場で継続使用した事実がある場合、たとえ他人が商標権を取得した後であったとしても、善意による先使用者の利益は保障されるべきであり、商標権の効力は及ばないことである。但し、商標権者は先使用者に適当な区別する表示を付加するよう要求することができる。「先使用」の要件は次のとおりである:
1.善意かつ先使用の事実発生が他人の商標出願日よりも前である。
2.継続使用の事情が中断していないうえ、これまで使用してき た商品または役務と同じ場合に限る(商標法第 36 条第 1 項第 3号)。
2. 先取り登録特許を発見した場合、権利をどう主張するのか
特許が他人に先取り登録されたことを発見したとき、日系企業は
号ないし第 15 号、又は第 65 条第 3 項に規定する情況に違反するとしても、登録公告日から
5 年間経過している場合には、無効審判を請求又は提起することができない。」
商標法 58 条第 2 項「商標の登録が第 30 条第 1 項第 9 号、第 11 号に規定する情況に違反し、それが悪意でなされたものである場合、前項の期間の制限を受けない。」
次の二つの方法で権利主張することができる;
「無効審判請求」は、以下に記載する事由がある場合に請求できる。 (1)専利法に規定される特許要件に違反した、即ち、産業上の利用性、新規性、進歩性(専利法第 21 ないし 24 条)、(2)一発明一
出願の原則に違反した(専利法第 31 条第 32 条第 1 項)、(3)明細書の内容は十分に開示されていなく、または、当該発明が属する技術分野の通常知識を有する者がその内容を理解し、それに基づいて実現することができない(専利法第 26 条)、(4)分割、修正または更正、補正後の出願または外国語書類が、出願の際の明細書、特許請求の範囲又は図面が開示した範囲を超えた(第 34 条第 4 項、第 43 条第
2 項、第 44 条第 2-3 項、第 67 条第 2-4 項、第 108 条第 3 項)、(5)特許権者が特許出願権者ではない (第 71 条第 1 項第 3 号、第 71 条 第 2 項)。
無効審判請求は公衆審査制度であり、原則として一般人は誰でも無効審判を請求することができる。但し、下記事由の場合、利害関係者のみ無効審判を請求できる:(1)特許権者が特許出願権者でない場合、(2)特許出願権は共有にもかかわらず、共有者全員で出願していない場合。
上記の無効審判請求の手続きにより、他人に取得された特許を取り消すほか、企業が次の要件を満たした場合、「先使用」として特
許権者による特許権の主張に対抗できる。先使用の要件は次のとおりである:
1. 特許出願日前、2.係争特許を有する製品、3.既に国内で実施されていたもの、または必要な準備を既に完了していたもの (特許法第 59 条第 1 項第 3 号)。17
第三節
商談などの場での注意点
第xx及び第二節で知的財産権の取得及び第三者権利の調査を含めて、企業がどのように知的財産権を管理するのかについて説明した。企業は、よりよい技術開発や市場開拓のために他の企業と提携する場合に、正式な契約関係を結ぶ前にも多くの交流がある。ここでは、今後の提携についての商談、展示会への出展、工場見学等の場での注意点を挙げる。
今後の提携についての商談や契約交渉、展示会あるいは工場見学などで、知財情報が流出する事例が多くある。例えば、商談において、不用意に内部文書、図面のコピー、マニュアル類、商品サンプルなどを提供したり、新製品の商品名、製造技術ノウハウ、材料購
17 実務において、「すでに必要な準備を完了していた」との証拠証明について、いくつかの注意点がある:(1)「すでに必要な準備を完了していた」との証拠の Logo のドラフトに時間の表示がない、包装の箱の写真に撮影日が表示されていないか製品の部品の購入証明を提出
できないなら、裁判所は「すでに必要な準備を完了していた」との要件に適合しないと判断する可能性がある。(智慧財産法院 103 年度民専訴字第 23 号民事判決)(2)「すでに必要な
準備を完了していた」との証拠の第三者との会議記録が第三者との会議において確かにはっきりと技術に関する製造工程が開示されていたなら、裁判所は「すでに必要な準備を完了していた」との要件に適合すると判断する可能性がたかい。(台北地方法院 97 年度智字第 12号民事判決)(3)「すでに必要な準備を完了していた」との証拠のネットの販売資料が捏造の
可能性が低く、具体的な反論の証明がない限り裁判所はネット情報に記載される時間がxxであると推定し、「先使用」の証拠とみなされる。(智慧財産法院 105 年度民専訴字第 98 号
民事判決)。
入情報などを口頭で話してしまう。また、展示会や工場見学を受け入れた際に、アピールに熱心になってしまい、必要以上に情報を開示してしまいがちになる。
このような意図しない流出を防ぐために、予め社内で保有している情報を棚卸した上で明文化、リスト化しておき、社外に流出できない守るべき情報を重要度に応じてランク付けすることが重要でなる。また、商談や展示会などの前に、どこまでの情報を開示するかの方針を策定しておくことも有効である。ランク付けは、1.いかなる場合でも他社に出せない情報、2.秘密保持契約を締結すれば出せる情報、3.想定顧客など相手を特定して出してよい情報等に層別するとよい。
具体的な対応方法を以下に例示する;
(1)商談等の相手とは事前に秘密保持契約を締結した上で、サンプルや資料を提供する。
(2)まだ開示すべきでない情報は黒塗りや削除をした上で資料を提供する。
(3)商談や工場見学の際の写真撮影を禁止することはもちろん、メモ取りや板書から流出することにも留意する。
(4) 工場見学の場合、見学の範囲又はルートを事前に企業の駐在員、管理部門、営業部門向けに説明し、秘密性がある資料を隠したり製 造装置にカバーをかけるなど秘密化を図る。
(5) 展示会の製品展示やプレゼンテーションにおいて、特許の新規
性喪失18に注意し、事前に特許出願を行う。 (5)商品名を開示する前に、台湾で商標出願を行う。
18 本章第xxの一、知的財産権の秘匿化をご参照ください。
第四章
契約類型ごとの留意事項
秘密保持契約
第xx
秘密保持契約(Non-disclosure agreement,NDA)は、双方が正式
な契約交渉に入る前、相手方が開示する企業情報の機密性を維持するために締結されることが多いが、実際には商談のどの段階においても秘密保持契約を締結する必要がある。秘密保持契約を締結する主な場合を以下に挙げる:
1.契約交渉前に締結意思を打診する
2.契約締結の ため、お互い に情報開示し、開示した情報 に秘密保持x xを課す
3.開示された情報を各自検討し、正式な契約締結に進む際に、正式な契約にてもう一度秘密保持義務を課す
秘密保持契約は企業が一番よく利用する契約とも言える。秘密保持契約は、片方の当事者のみが相手方に対して秘密情報を開示する場合に締結される「片務的秘密保持契約」と、当事者双方が互いに秘密情報を開示する場合に締結される「双務的秘密保持契約」の二種類に分けられている。実務上、商談の場に備えるに は、多くの企業は上記二種類の秘密保持契約のテンプレートを事前に用意しておいた方がよい。
一、一般条項の紹介
実務上「片務的秘密保持契約」より「双務的秘密保持契約」の方が一般的であるため、双務的秘密保持契約においてよく見られる条項を以下に挙げる:
「当事者」 | XX 株式会社 | YY 株式会社 |
「目的」 | 操作部の採用可能性の検討および開発・製造 | |
「有効期間」 | 発効日:YYYY 年 MM 月 DD 日 | 満了日:YYYY 年 MM 月 DD 日 |
「守秘期間」 | 本契約の満了日又は終了日から XX 年間 | |
「定義」 | 1.1 本契約で使用される「秘密情報」とは、 (a) 書面若しくは有形の形式で開示者から受領者へ開示され、開示者により秘密又は専有の旨を明記される、又は (b)口頭、デモンストレーション若しくはその他の無形の形式で開示者から受領者へ開示され、開示の際に開示者により秘密又は専有の旨を明確に示され、かつ、開示から 30 日以内にその要約が受領者に書面で交付される全ての情報を意味する。電子的手段により受領又は伝送された「秘密情報」は、有形の形式で開示されたものとみなされる。 1.2「関係会社」とは、(a)当事者に支配される、(b)当事者を支配する、又は (c)当事者と共通の支配下に置かれる会社又はその他の法的団体を意味する。本定義において、「支配」とは、かかる会社又はその他の団体に対して議決権を有する 50%超(過半数)の株式又は持分が、支配者により直接的又は間接的に保有されることを意味する。当該会社又は事業体は、かかる所有権又は支配が存続する限り、「関係会社」と みなされる。 | |
「秘密情報の例外」 | 本契約の他の規定に拘わらず、以下のいずれかの情報は 「秘密情報」とはみなされない:(a) 受領者による本契約の違反に起因する場合を除き、一般に知られ若しくは入手できる情報、(b) 開示の際に、受領者が既に所有し |
ていた情報、(c) 受領者が独自に開発した情報、及び (d) 受領者が守秘義務を負うことなく第三者から取得した情報。 | |
「守秘義務」 | 「有効期間」中及び「守秘期間」中において、受領者は、(a) 類似の性質を有する自己の秘密情報に払う注意と同等以上の注意(但し、善良なる管理者の注意を下回らない)をもって、他方の当事者の「秘密情報」を秘密に保持し、(b) 開示者により書面で明確に許可されない限り、当該「秘密情報」を第三者に開示せず、かつ(c)他方の当事者の「秘密情報」を「目的」以外に使用してはならない。 受領者は、秘密情報の漏洩を防止するため、秘密情報管理責任者を選任し、当該責任者をして、秘密情報を自己の情報と明確に区分のうえ厳重に保管・管理し、個人のパソコンに秘密情報を保管させない等、適切な措置を講 じさせるものとする。 |
「使用の範囲」 | 各当事者は、他方の当事者の「秘密情報」を、「目的」を達成するために「秘密情報」を知る必要のある自己及び 「関係会社」の役員、従業員にのみ開示することができる。但し、かかる「関係会社」は本契約の条件に拘束されることを書面によって合意していなければならない。各当事者は、自己の「関係会社」による本契約の違反につい て責任を負うものとする。 |
「強制開示」 | 受領者が、法律又は裁判所若しくは当局機関の命令により、他方の当事者の「秘密情報」を開示するよう法的に要求された場合、受領者は、他方の当事者が適切であると判断する「秘密情報」の保護を求める機会を与えるた めに、法により禁じられていない限り、他方の当事者に |
その旨を直ちに通知する。かかる開示は、本契約の違反 とはみなされない。 | |
「解約及び延長」 | 「有効期間」中といえども、本契約は、いずれかの当事者により、如何なるときでも、理由を問わず、他方の当事者に書面で通知することにより解約でき又は相互の書 面による合意により延長できる。 |
「返却」 | 本契約の満了若しくは解約後直ちに又は開示者の書面による要請に応じて、受領者は、本契約に基づいて受領した全ての「秘密情報」及びその全てのコピー並びに(もしあれば)「秘密情報」に含まれる情報から作成された全ての記録及び分析した資料を返却又は廃棄する。さらに、受領者は、全ての当該「秘密情報」が返却又は廃棄 されたことを表明する文書を開示者に交付する。 |
「保証」と 「非保証」 | 各当事者は、本契約に基づく開示をなす権限を有することを表明し、保証する。前述の規定にかかわらず、いずれの当事者も、「秘密情報」の正確性又は完全性を表明するものではない。「秘密情報」は、現状有姿のまま提供される。各当事者は、その「秘密情報」に関して、商品性の黙示保証、特定目的への適合性及び権利の非侵害を含む(但し、必ずしもこれらに限定されない)如何な る明示、黙示又は法令上の保証を否認する。 |
「他の権利義務の否定」 | 本契約の如何なる規定も、(a)「目的」のために「秘密情報」を使用する限定的な権利を除き、いずれかの当事者に他方の当事者の「秘密情報」の権利を許諾し、(b)いずれかの当事者に如何なる契約若しくは取引関係を結ぶ義務を課し、又は(c) いずれかの当事者が、他方の当 事者の製品、サービス若しくは技術と競合する製品、サ |
ービス若しくは技術を独自に開発若しくは第三者から取 得するのを妨げるものと解釈されない。 | |
「エクイティー上の救済手段」 | 開示者及び受領者の双方当事者は、「秘密情報」が個性と価値を有する情報であり、受領者によって本契約に反してなされる開示が金銭的賠償のみでは救済手段として不十分な回復不可能な結果を開示者にもたらす可能性があることを承認する。従って、双方当事者は、秘密保持義務違反があった場合、開示者が差止命令又はその他のエクイティー上の救済を救済手段として請求する権利を有することに合意する。これらの救済手段は、金銭賠償による適切な救済手段と併せて請求できるものであり、 それに代わるものではない。 |
「損害賠償」 | 一方は機密情報漏洩、その他本契約のいずれかの条項に違反したことにより他方に生じた損害を賠償しなければならない。なお賠償の対象となる損害は直接侵害のみとし、他方の逸失利益等の間接損害、信用毀損により発生した損害、他方における漏洩等への内部的・外部的対応費用、第三者に対して必要となった損害賠償を含まな い。但し、一方の故意又は悪意による機密漏洩の場合は 前段の間接損害も賠償対象となる。 |
「懲罰的違約金」 | 受領者が本契約の約定に違反した場合、または受領者に責任が帰属する事由により開示者の機密情報が漏洩された場合、開示者は他方に対して懲罰的違約金としてニュ ー台湾ドル 元を別途請求することができる。 |
企業は自らの需要に応じて上記の条項を調整することができるが、以下の事項について更に補足説明をする:
1.「目的」:秘密保持契約において、通常、当事者双方が開示した
秘密情報を目的以外の用途に利用してはならない旨が規定されていることから、後になって解釈をめぐって争いが生じないように、契約の目的が明記されなければならない。
2.「秘密情報の定義」:最近は人の記憶に残った残存記憶を対象外とするかどうかで当事者間の見解が異なり交渉になることが多
い。「残存記憶」とは、無体的な形式のアイディア、コンセプト、ノウハウ及び技術であって、本秘密情報にアクセスした人の助力を受けない記憶により保持されたものをいう。
3.「守秘期間」:守秘期間と契約の有効期間は違う。契約の有効期間は、当事者間で秘密情報を開示する期間をさすのに対して、守秘期間は契約終了日から数年、時には永久と設定することもあ
る。だが、守秘期間を永久に設定しても、保護しようとする情報が守秘義務に違反しない形で公知の情報となった場合や秘密保持する経済価値を失った場合、その守秘義務を負う必要がなくな る。また、受領者側は、将来的に類似の事業を行う場合の制限になることや、閲覧記録などの情報保管の管理負担があることを理由に、短く設定することを希望する場合がある。よって、秘密保持契約の期間について、自社の立場でどちらがよいのか考えなければならない。
4.「使用の範囲」:役員や従業員が知る必要がある場合、秘密保持のため、指導監督義務を規定する(受領者が秘密情報管理責任者を選任するなど)。また、ソフトウエアや装置を提供する場合の目的外使用を禁止するため、以下のような条項を設ける事も有効である。
「受領者は、開示者が本契約に基づき提供したソフトウエアのコード及び/又は発表前のハードウエア機器の「秘密情報」(もしあ
れば)をリーバスエンジニアリング、逆コンパイル、逆アセンブル又は分析をしてはならない。」
5.「保証」と「非保証」:台湾では秘密情報の正確性又は完全性を保証するかどうかで当事者間の見解が異なり、争いになることが多いので、受領者からの損害賠償の請求を防ぐために規定する。
6.「他の権利義務の否定」:他の権利義務の否定の条項に、開示された秘密情報に関する知的財産権の帰属について開示者に帰属することを確認することを規定されることも多い。最近では、フィードバック情報の権利の帰属や使用許諾についても交渉の対象となっている。
7.「エクイティー上の救済手段」:契約違反に対する最も一般的な救済手段は、事後的に金銭によって行われる損害賠償請求であ
る。しかし、契約相手が営業秘密を侵害しているような場合は、事後的に損害賠償を請求するよりも、ただちに侵害している営業秘密の使用をやめさせることが有効な対応策となる。このように一定の行為をやめさせるよう裁判所から出す命令はエクイティー上の救済手段という。秘密保持契約において、契約違反の取り扱いに有効な措置として、よく見られる。
8.「損害賠償」:この規定案では、損害の拡大を防ぐために用いた弁護士費用や外部企業への支払費用などを除外するために直接侵害の賠償に限定している。但し、場合によって、間接損害等19も賠償対象に含めることもある
9.「懲罰的違約金」:台湾法には、損害賠償的違約金と、懲罰的違
19 例えば、相手方の逸失利益等の間接損害、信用毀損により発生した損害、相手方における漏洩等への内部的・外部的対応費用、第三者に対して必要となった損害賠償。
約金の 2 種類がある。損害賠償的違約金は被害者側が損害額を立証する必要があるが、懲罰的違約金は立証する必要がない。秘密漏洩の損害額は立証が不可能な場合が多く、低額の賠償金しか請求できないケースが多い。そこで、一定額の懲罰的違約金を契約に規定しておくのがよい。被害額が証明できなくても、又はゼロであっても懲罰的違約金を請求できる。被害額がそれ以上であることを立証できた場合には、懲罰的違約金に加えて損害賠償的違約金も請求できる20。
10.その他:
(1)「輸出管理」:国境を越えて秘密情報が送信されるのを避けるため、契約に「本契約の各当事者は、『秘密情報』の輸出に適用される全ての法律、規則及び規制に従い、当該法律、規則及び規制に基づいて要求される承認又はライセンスを取得することな
く、当該『秘密情報』を輸出又は再輸出してはならない。」と定めることがある。
(2)「引き抜き禁止」:協業の過程で互いの従業員に接触する可能性があり、秘密情報を得ようとして協業対象の会社の従業員を引き抜くことを避けるため、契約に「本契約期間の満了後 1 年間、各当事者は他方当事者の従業員もしくは契約者を直接、間接を問わず、それを知りながら引き抜きの勧誘を行ってはならない。」と定めることがある。
二、その他の一般契約に追加する秘密保持条項
前述のとおり、商談のいずれの段階においても個別に秘密保持
20 「第八節 一、一般懲罰的な賠償条項」を合わせて参照の事。
契約を締結することが可能であるが、ライセンス契約や開発委託契約等のような具体的な連携の内容を定めた契約書(以下、略して「主契約」という。)を併せて締結する場合もある。この場
合、当事者双方が主契約に、秘密保持条項の特約21を付加すると、このような条項は明らかに、主契約発効前の交渉期間中に開示された情報をも秘密情報として扱うため、先に締結された又は同時に締結された秘密保持契約と範囲が重り、秘密保持契約が無効と判断された判例がある。22
対策1
秘密保持契約と主契約が相次いで締結された場合、先に締結された秘密保持契約は主契約と契約の目的が同じであるとして、裁
21 例えば「甲乙いずれか一方が、使用許諾期間及び本契約発効前の交渉期間中に相手方から取得するあらゆる情報(営業、財務、業務、ロイヤルティー及びロイヤルティー率等を含むが、これらに限らない)(併せて「秘密情報」という。)について秘密保持をしなければならず、本契約の目的の範囲内に合理的に使用するものとし、相手の事前の書面による同意を得ずに、第三者に漏えいしてはならず、且つ秘密情報の漏えいを防ぐべく合理的な保護措置を講じなければならない。いずれか一方がこれに違反したとき、これにより相手方が受けた損害を賠償しなければならない。甲乙双方は、その従業員、代理人、又は相手方の事前の書面による同意を得た第三者等が本条の守秘義務を遵守するよう確保しなければならず、その従業員、代理人、又は相手方の事前の書面による同意を得た第三者等が守秘義務に違反し、これにより相手方に損害をもたらした場合は、これら者の所属する一方は相手方に対して、損害賠償責任を負わなければならない。」との特約を付加することがある。
22 台湾新北地方裁判所 107 年度訴字第 552 号民事判決(未確定判決);原告は被告と相次いで秘密保持契約、共同開発契約を締結した後、被告が秘密保持契約に違反したとして違約金の請求がなされた事例では、裁判所は以下の理由に基づき、共同開発契約が優先的に適用さ れ、以前の秘密保持契約が無効となる、という判断を下した: 1.当事者双方が秘密保持契約又は共同開発契約を締結する最終的な目的は、いずれも被告が引き合わせた第三者と製品の共同研究開発を行うことにより利益を得ることから、これら二つの契約は目的が同じであ る。2.共同開発契約においても守秘義務に関する規定が定められている。3. 共同開発契約の規定と NDA の規定が重複する上、共同開発契約が NDA より遅れて締結されたとき、NDAが無効となる。
判所によって無効と判断されることにならないように、「甲乙いずれか一方が本契約発効前の交渉期間中に締結した秘密保持契約は、本契約の締結により影響を受けることがなく、当事者双方は当該秘密保持契約で定められた守秘義務を引き続き履行することに同意する。」旨の規定を主契約に盛り込むことを提案する。
対策2
先に個別で締結された秘密保持契約に、「本秘密保持契約は契約締結日をもって発効し、以後 1 年間有効とする。ただし、検討を踏まえて当事者双方間で連携が成立し、秘密保持義務に関する条項を含むライセンス契約又はその他業務提携契約が締結された場合、本契約はライセンス契約又はその他業務提携契約が締結され た時点をもって終了するものとする。」旨の規定もよく見られているが、このような規定が定められたとき、後に当事者双方が主契約を締結することになれば、秘密保持義務が解除されることにより、先般開示した秘密情報が機密性を喪失することにならないように、引き続き主契約にも秘密保持義務の条項を定めることを提案する。
三、事例23
背景
1.
原告会社は、被告会社から IC センサー用「指紋認証センサー回路シリコン IP」の開発委託を受けており、開発完了後に、被告会社に成果物の製造許諾を与えたこと、及び当事者双方が、開発委託契約の効力発生後に一期目の開発費用を支払うと約定しているが、被告会社に支払いを請求したところ拒否されたことを主張し、裁判を起こして被告会社に対して一期目の開発費用を支払うよう請求した。それに対して、被告会社は、原告会社が会社案内プレゼン資料において、被告会社に薄膜型指紋認証モジュールサプライチェーン制御 IC の製造許諾を与えたことを言及している上、当該プレゼン資料を複数の投資法人、提携先又は潜在的な提携先等に流布し、契約の存在を漏えいしたため、既に契約に定
23 台湾台北地方法院 105 年度智字第 29 号民事判決
められた秘密保持義務に違反し、被告会社に損害をもたらしたことから、民法により契約を解約又は終了することができ、原告に開発費用を支払う必要がない云々と抗弁している。
裁判所の判断
2.
係争契約第 6 条第 6 項に、「秘密保持義務:当事者双方が本契約の許諾対象物の未公表情報について、秘密情報として取り扱うものとする。乙は、善良な管理者の注意義務をもって、本契約に関連して知りえた、又は保有した本許諾対象に関する情報又はその他関連情報を適切に管理しなければならず、いかなる第三者に漏えい又は交付してはならず、又はいかなる第三者に知らせてはならない。…いずれか一方が本条の秘密保持義務に違反したと き、相手方に対してその損失を賠償しなければならない。いずれか一方が相手方の事前の書面による同意を受けずに、いかなる第三者に本契約の存在及びその内容を漏えいしてはならない。」と
明記されており、原告会社が負うべき秘密保持義務の範囲に、係争契約の存在及びその内容が含まれていることがxxで規定されている上、原告会社も、前記会社案内プレゼン資料に係争契約の存在が示されていることについて争わない以上、原告は確かに被告の事前の書面による同意を得ずに、係争契約の存在及びその内容を第三者に漏えいし、係争契約第 6 条第 6 項の秘密保持義務の規定に違反することになる。よって、被告会社の主張を認め、被告会社は開発費用を支払う必要がないと判決した。
分析
3.
本件事例を踏まえ、裁判所が契約解釈上の争いについて判断を下す際に、判断の根拠として、原則として「xx」が優先的に考慮されることが分かる。即ち、契約の文言の明確性が非常に重要である。本件において、契約の文言はすでに、「いずれか一方」が「本契約の存在及びその内容」を「いかなる第三者」に漏えいしてはならないことをxxで規定していることから、裁判所がこれに基づいて、原告会社が秘密保持義務に違反したとの判断を下したのは妥当である。また、本件判決から、秘密情報、秘密保持義務の範囲、開示又は使用制限等に関する約款は、秘密保持契約の要点であることも示唆される。現在多くの企業は他社との業務提携に備えて、秘密保持契約のテンプレートを用意しているものの、異なる提携先、提携内容並びに今後想定されるビジネスモデル等に応じて適度な修正・調整が必要となる。さもなくば、本件のように、原告会社は本来、被告会社との業務提携等情報を利用して、広報 PR を行い、業務推進を図っていたが、秘密保持契約の規定を検討せず、もしくは当該テンプレートに修正の必要がないと認定したばかりに、秘密保持義務に違反することになるので
注意が必要である。