JICA が「コンサルタント等契約」として分類している契約(以下「コンサルタント等契約」)の経費の取扱いについては、2011 年度に大幅な積算基準の改正を行いましたが、2019 年度、コンサルタント業界の協力を得て改めて経費実態調査を行い、その結果に基づき、今般再度積算基準の改定を行いました。
コンサルタント等契約における経理処理ガイドライン
2020 年 4 月
独立行政法人国際協力機構調達・派遣業務部
目 次
はじめに
はじめに
JICA が「コンサルタント等契約」として分類している契約(以下「コンサルタント等契約」)の経費の取扱いについては、2011 年度に大幅な積算基準の改正を行いましたが、2019 年度、コンサルタント業界の協力を得て改めて経費実態調査を行い、その結果に基づき、今般再度積算基準の改定を行いました。
本「経理処理ガイドライン」では、従来から実施している企画競争(価格加味)を適用した契約の経理処理を解説しています。2019 年 4 月に導入を開始した QCBS
(Quality- and Cost- based Selection)を適用している契約については、本ガイドラインとは別に「コンサルタント等契約における経理処理ガイドライン(QCBS 方式対応版)」(2020 年 4 月)を作成していますので、そちらを参照してください。
なお、従来型企画競争(価格加味)も QCBS も同じ企画競争であり、適用される積算基準が大きく異なるものではないこと、また、今後コンサルタント等契約における選定方式は QCBS に統一されていく予定であることから、QCBS と同じ経理処理・積算基準となる部分は、「コンサルタント等契約における経理処理ガイドライン
(QCBS 方式対応版)を参照」として、記述を簡素化しています。
また、従来「業務実施契約(単独型)」にかかる積算基準についても解説していましたが、これを分離しています。「業務実施契約(単独型)」積算基準、JICA ウェブサイト「調達情報」>「公告・公示情報」>「コンサルタント等契約案件公示(業務実施契約(単独型))」に掲示していますので参照願います。
本ガイドラインで解説している「積算基準」は、従来型企画競争(価格加味)での選定の結果優先契約交渉権者となった者との価格交渉において、業務の価格、すなわち契約金額の積算方法として準拠することを求める基準です。このため、技術プロポーザルとともに提出される見積書においても同じ基準で積算されていることが契約交渉を円滑にすることとなりますので、見積書作成の段階から、本ガイドラインを参照し、適切に見積書を作成していただけると幸いです。
契約金額の構成については、QCBS における内容と同一となりますので、「コンサルタント等契約における経理処理ガイドライン(QCBS 方式対応版)」(2020 年 4月)の「Ⅰ.契約金額の構成」を参照願います。
なお、これまで「直接人件費」、「その他原価」及び「一般管理費等」に分離していた費目を「報酬」として統一し、報酬単価(月額上限額)として提示していますので、ご留意ください。
「報酬」についても、QCBS における内容と同一となりますので、「コンサルタント等契約における経理処理ガイドライン(QCBS 方式対応版)」(2020 年 4 月)の
「Ⅱ.報酬」を参照願います。
なお、今般の積算基準の改定に伴い、「直接人件費」、「その他原価」及び「一般管理費等」が「報酬」に統合され、報酬単価(月額上限額)が提示されていますが、その「報酬単価」を積算する方法も改訂されています。その積算方法が、上記ガイドラインの「別添資料1:コンサルタント等契約に係る報酬単価について」に解説されていますので、参照してください。
また、従来と比較して、本邦から通訳を同行させる場合の「通訳にかかる人件費」が「直接人件費」から「直接経費」に分類変更されていることにもご留意ください。
「直接経費」についても、その大部分が QCBS における内容と同一となりますので、「コンサルタント等契約における経理処理ガイドライン(QCBS 方式対応版)」
(2020 年 4 月)の「Ⅲ.直接経費」を参照願います。
以下においては、QCBS とは異なる取扱いとなる「旅費(航空賃)」、「一般業務費」及び「報告書作成費」についてのみ解説します。
1.旅費(航空賃)
従来型企画競争(価格加味)においては、旅費(航空賃)を別見積りとしていることから、その取扱いを QCBS の場合と区別しています。QCBS の取扱いと差異がある部分については、赤字で記載しています。なお、従来の「コンサルタント等契約における経理処理ガイドライン」(2018 年 5 月)から、所要フライト時間の対象国・地域をアップデートしていますので、ご留意ください。
旅費(航空賃)は、業務従事者(本邦から帯同する通訳を含む。以下同じ。)が業務遂行のため、業務従事者の居住地又は滞在地(出発地)から業務対象国
(業務対象国内で乗り継ぎがある場合には、最終到着地まで)への移動、業務対象国間の移動、及び業務遂行後に業務対象国から業務従事者の居住地又は滞在地(帰着地)に戻るための航空賃です。
航空賃は、航空券代の他に、週末・特定曜日料金加算、航空保険料、燃油特別付加運賃、空港税、国際観光旅客税、旅客サービス施設使用料、旅客保安料、発券手数料を含むことができます。
<補足説明>
(1)旅費(航空賃)の計上対象
✓ 業務従事者の出発地と帰着地は原則同一とします(本邦居住者は日本を発着地(下図①)、海外居住者(本邦以外の国で住民登録をしている者)は居住地を発着地(下図②)、海外滞在者は滞在地を発着地(下図③)とします)。ただし、業務従事者が滞在地を出発地とし、居住地を帰着地(下図④⑤)とする場合に限り、その往復路を航空賃の計上対象とすることを認めます。
・ケース③の航空賃は、本邦居住者の場合はケース①の日本発着往復料金、海外居住者の場合はケース②の海外居住地発着往復料金を上限とします。
・ケース④の航空賃は、ケース①の日本発着往復料金を上限とします。
・ケース⑤の航空賃は、ケース②の海外居住地発着往復料金を上限とします。
✓ 業務従事者が業務対象国で引き続き別業務に従事する場合は、復路の計上は認めません。これとは逆に、業務対象国での別業務に引き続き、当該契約業
務に従事する場合は、往路の計上は認めません。
✓ 本邦以外に居住する者を業務従事者として提案する場合は、契約交渉時や業務従事者確定・交代時に際し、その妥当性を確認します。
✓ 海外居住者、海外滞在者については、見積書や契約金額内訳書等に居住国又は滞在国を明記してください。
✓ 業務対象国内における航空賃は一般業務費の旅費・交通費で計上します。ただし、業務従事者が発着する航空券に、業務対象国内の航空賃が含まれている場合は、旅費(航空賃)として扱います。
(2)航空券クラス
✓ 航空券クラスについては、表1に基づき、ビジネスクラスの利用が認められるものはビジネスクラスxx割引運賃を、エコノミークラスの利用が認められるものはエコノミークラスxx割引運賃を上限として契約金額を確定します。以下の地域別の所要フライト時間表と実際のアイテナリーで所要フライト時間が異なる場合は、地域別の所要フライト時間表を優先させることとします。
✓ なお、プレミアムエコノミークラスはエコノミーとしては認めません。表1:航空券クラス種別の判断xx表
学歴年次 (大学卒) | 所要フライト時間 | |||
8 時間未満 | 8 時間以上 16 時間未満 | 16 時間以上 24 時間未満 | 24 時間以上 | |
30 年以上 | C | C | C | C |
18 年以上 | Y | C | C | C |
12 年以上 | Y | Y | C | C |
12 年未満 | Y | Y | Y | C |
注1)C:ビジネスクラス、Y:エコノミークラス
注2)学歴年次の起算は大学卒業翌年度の 4 月 1 日とし、公示日時点での年次を「学歴
年次」とする。必ずしも 3 月が卒業時期ではない海外の大学等を卒業した場合にお
いても、4 月 1 日から起算する。なお、業務を複数の契約期間に分割して契約書を締結する場合に第2期以降の契約期間に業務従事者が確定する場合は、該当期間の契約締結日時点での年次を「学歴年次」とする。
注3)「所要フライト時間」(複数のフライト旅程がある場合は当該所要フライト時間を合算するが、中継地での宿泊がある場合には前後のフライト時間を合算しない。)の分類は、原則として下表によるものとする。
所要フライト時間 | 対象国・地域 |
8 時間未満 | 東アジア 東南アジア(東ティモールを含む。)xx州(パラオ、ミクロネシア) |
8 時間以上 16 時間未満 | 南アジア xx州(パラオ、ミクロネシアを除く。)中央アジア・コーカサス 中東(マグレブ諸国を除く。)欧州・xxx・カリブ諸国 アフリカ(スーダン、エチオピア、ジプチ、ケニア、セー シェル) |
16 時間以上 24 時間未満 | マグレブ諸国(リビア、チュニジア、アルジェリア、モロッコ) アフリカ(スーダン、エチオピア、ジプチ、ケニア、セーシェルを除く。) 注)マグレブ諸国及びアフリカについて、欧州経由とする場合は、8 時間以上 16 時間未満に分類する。 南米(ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ を除く。) |
24 時間以上 | 南米(ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ) |
注4)安全対策上等の必要性に基づき、企画競争説明書において、xx運賃を上限とすることを認める場合がある。
注5)契約履行期間途中での学歴年次上昇による航空券クラスのアップグレードは認めない。ただし、以下の場合を除く。
∙ 業務従事者が交代するとき(エコノミークラス渡航の団員からビジネスクラス使用資格のある団員に交代する場合には、ビジネスクラス利用を認める。)
∙ 複数の契約期間に分割して契約書を締結する場合、新たな継続契約書において、継続契約締結時点での学歴年次を反映するとき
注6)業務従事者が確定していない場合、特号~2号の業務従事者は「大学卒 18 年以
上」、3号は「大学卒 12 年以上」、4~6号は「大学卒 12 年未満」の学歴年次として、航空賃を算出すること。
(3)渡航経路・航空会社の設定
✓ 航空券の渡航経路・航空会社の設定に当たっては、効率的かつ経済的な経路、 航空会社であること(契約交渉において、安全性・効率性を勘案した上でより経済的な航空会社への変更をお願いする場合があります。)に留意してください。
(4)旅費(航空賃)の内訳
✓ 発券手数料は、税抜で航空券代の5%までを上限とします。
✓ 空港施設使用料は国際線のみ計上可能であり、国内線は計上できません。
✓ 査証代金、予防接種経費、海外旅行保険料は計上できません。
(5)契約履行期間中の留意事項
✓ 旅費(航空賃)については、契約で合意された航空賃単価、渡航回数、航空券クラス、渡航経路、航空会社の範囲内で手配することが原則です。
✓ しかしながら、航空賃については、価格の変動が大きいこと、座席確保が困難となりやむを得ず渡航経路や航空会社を変更する可能性があること、場合によってはフライトの変更やキャンセルの可能性もあることから、以下については、正当な理由(会社都合、自己都合は認められません。)がある場合、当該変更等に係る経費を精算対象とすることを認めます。また、その結果、契約金額を超えた場合にも、契約金額を超えて精算金額を確定します(契約約款第 14 条参照)。
∙ 航空賃の価格上昇(契約金額単価の超過)
∙ 渡航経路の変更
∙ 航空会社の変更
∙ フライトの変更またはキャンセルによる手数料の発生
✓ 渡航予定日において、xx割引運賃の座席に空席がない場合等においても、普通運賃の利用は原則認めません。渡航予定日の変更、渡航経路の変更、航空会社の変更等により、座席を確保してください。このため、航空券の予約はできるだけ前もって手続きしてください。
✓ 精算できる航空賃は、実際に使用したものに限ります。払戻不可、日程変更不可等の航空券を利用した際に搭乗ができなくなり、新規に航空券を買い直した場合においては、搭乗できなかった航空券については精算の対象となりません。
✓ 本邦発券よりも安価となるとの前提で、現地発券・現地購入を認めます。ついては、現地発券・現地購入する場合、為替レートの急激な変動等により本邦発券より高額にならないか、常時確認してください。なお、利用の条件は本邦発券の場合と同一とします。すなわち、本邦発券エコノミー運賃を下回る現地発券ビジネス運賃があったとしても、「安価」を理由としたビジネスクラスの利用は認められず、現地発券エコノミー運賃を利用いただくことが原則です。
(6)精算に際しての留意事項
✓ 精算に際しての証拠書類としては、e-ticket と旅行代理店等からの領収書が必要です。領収書には、旅費(航空券)の内訳(航空券代、週末・特定曜日料金加算、航空保険料、燃油特別付加運賃、空港税、旅客サービス施設使用料
(税抜)、旅客保安料(税抜)、発券手数料(税抜))が明記(又は添付)されていることが必要になります。航空券の内訳を明示した領収書を提出できる旅行代理店を利用してください。
✓ なお、e-ticket については、金額の記載のないものは認めません。包括旅行(IT:
Inclusive Tour)チケットなどは、e-ticket に金額の記載がないため、旅行代理店が発行する領収書があったとしても、価格の妥当性が確認できないため、証拠書類として認めません。また、旅行代理店が発行する領収書の金額(発券手数料等を除く。)が e-ticket の記載金額を超える場合、超えた金額は精算対象外とします。
✓ 日程や渡航経路を変更した場合、変更前後両方の e-ticket を提出してください。
✓ 会社都合や自己都合等によるビジネスクラスやxx運賃の利用、渡航経路の変更、航空会社の変更等を行った場合、実際の搭乗日のxx割引運賃に係る
「運賃証明書」を証拠書類として提出頂き、当該運賃を上限に精算します。なお、会社都合や自己都合等によりフライトを変更した場合の手数料等については、精算対象とはなりません。
✓ 変更手数料及び取消手数料については、航空会社による手数料の他に、旅行代理店の手数料が発生する場合があります。旅行代理店の手数料については、当該代理店の規定に基づくものとしますが、上限を 5,000 円(税抜)とします。
✓ 本邦の発着がxx空港/羽田空港の間で変更する場合は、渡航経路の変更とは位置づけませんので、証拠書類附属書への理由の記載を不要とします。
2.一般業務費
QCBS の対象となっている契約においては、車両関連費について「合意単価方式」を採用していますが、従来型企画競争(価格加味)の対象契約では完全な価格競争となっていないとの判断から、車両関連費に対する「合意単価方式」は採用していません。
それ以外は、両者の差異はありませんので、詳細は「コンサルタント等契約における経理処理ガイドライン(QCBS 方式対応版)」(2020 年 4 月)を参照してください。
なお、従来型企画競争(価格加味)の直接経費で「合意単価方式」が採用されているのは、日当・宿泊料と戦争特約保険料となります。
3.報告書作成費
QCBS の対象となっている契約においては、報告書作成費についても「合意単価方式」の採用が可能ですが、同じ理由で、従来型企画競争(価格加味)の対象契約で「合意単価方式」は採用していません。それ以外の差異はありません。
見積書作成に当たっての留意事項についても、その大部分が QCBS における内容と同一となりますので、「コンサルタント等契約における経理処理ガイドライン
(QCBS 方式対応版)」(2020 年 4 月)の「Ⅳ.見積書作成に当たっての留意事項」を参照願います。
以下においては、QCBS とは異なる取扱いとなる「価格交渉」についてのみ解説します。
1.価格交渉(見積額の確認)
契約交渉において、見積書に基づき、契約金額の交渉を行います。
契約交渉における「契約金額の交渉」の発注者としての基本姿勢を以下のとおり考えています。
(1)報酬の額について
①業務従事者の配置計画及び総人月が業務の内容を反映したものとなっているかを確認する。JICA 側の配置想定及び総人月と相当程度の差異がある場合、「業務の内容・範囲」そのものについて、双方の認識に差異があると考えられるため、JICA と契約交渉権者双方の考え方を整理・確認する。特に、総人月が JICA側の想定を超えている場合、業務の内容・範囲(情報収集の範囲や分析レベル等を含む。)を踏まえ、その妥当性を確認する。
②上記①を踏まえたうえで、各専門(業務)分野を担当する業務従事者の格付について、格付の目安1と乖離がないか確認する。
③各格付に対する報酬単価が、JICA が設定する月額上限額の範囲内であることを確認する。
④業務従事予定者が、各専門(業務)分野の格付の標準経験年数を満たしているか確認する。標準経験年数を満たしていない場合、格付確認・認定の運用の範囲内であるかを確認する。
⑤契約交渉を経てもなお、報酬額が JICA 側の予定価格を相当程度上回る場合、
JICA は契約交渉を打ち切ることができる。
(2)直接経費の額について
①直接経費についても、積上げが業務の内容を反映したものとなっているか(業務に関連して発生すると想定される経費であるか)を確認する。
②各費目において、「Ⅲ.直接経費」で設定する上限額や範囲を超えていないか確認する。また、JICA だけでは、見積もられている単価の妥当性が確認できない場合や、当該費目の総額が数百万円規模になる場合には、見積書又はそれに代わる積算根拠2の提示を求め、価格の妥当性を確認する。
精算に当たっての留意事項については、QCBS における内容と同一となりますので、
「コンサルタント等契約における経理処理ガイドライン(QCBS 方式対応版)」(2020年 4 月)の「Ⅴ.精算に当たっての留意事項」を参照願います。
1 「コンサルタント等契約におけるプロポーザル作成ガイドライン(2018 年 4 月)」の「別添資料5:コンサルタント等契約における業務内容と業務従事者の格付目安」を参照。
2 現地企業とのメール等の写しやインターネット上の情報、過去の実績等でも構いません。