Contract
工事請負契約における設計変更ガイドライン
平成 31 年3月
岸和田市総務部契約検査課
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目 次
1 | ガイドライン策定にあたって | ・・・・・1 |
2 | 建設工事の請負契約の原則 | ・・・・・1 |
3 | 設計変更の考え方 | ・・・・・1 |
4 | 発注者及び受注者の留意事項 | ・・・・・2 |
5 | 工期又は契約金額の変更対象となる主な事項・事例 | ・・・・・3 |
6 | 設計変更ができない事例 | ・・・・・4 |
7 | 設計変更の流れ | ・・・・・5 |
8 | 仮設、施工方法等の設計変更について | ・・・・・6 |
9 | 変更協議 | ・・・・・7 |
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1.ガイドライン策定にあたって
建設工事は、気候、地質、地形、地下水等の自然的条件および、住民や交通等の周辺環境等の社会的条件に対応するための制約等を著しく受けるものである。
これらの条件のもと、工事の目的となるものの使用目的に応じ用途・機能・構造等を勘案し、必要な調査・計画を行い最適な工法を選定し工事の設計がなされるものとなる。
工事現場毎に異なる複雑かつ多様な施工条件に対し、事前の調査・計画に基づく一定条件下で作成された設計図書により、発注者と受注者が締結する契約のもと建設工事の施工が履行されるものとなる。
しかしながら、現実の建設工事の施工にあたっては、当初の計画どおり工事が進行できない場合があり、必要に応じ工法等を含めた施工計画の変更を行い、それに伴う設計変更等が余儀なくされることが少なくない。
設計変更については、建設業法(昭和 24 年 5 月 24 日法律第 100 号)第 19 条第 5 項において、請負契約の内容の事項として設計変更に関する定めを記載することがうたわれている。
本市の工事請負契約書(以下「契約書」という。)においても、設計変更にかかわる手続き等について規定されており、本ガイドラインはそれらの各条項における適用指針等を示すことにより、設計変更における発注者及び受注者の認識の共有化と変更手続きの透明性の向上を図り、適切な設計変更の手続きを持って、一層の公共工事の品質確保に寄与すべく策定するものである。
2.建設工事の請負契約の原則
建設業法第 18 条において「建設工事の請負契約の当事者は、各々の対等な立場における合意に基いてxxな契約を締結し、xxに従って誠実にこれを履行しなければならない。 」と規定されている。
3.設計変更の考え方
契約書第1条第Ⅰ項の規定により発注者及び受注者は、設計図書に従いこの契約を履行することが規定されており、設計図書に記載の現場状況と実際の現場状況の不一致などの場合、契約書の関連事項に基づき必要であると認められる場合は、設計図書を変更し、変更契約を行うものとする。その際に設計図書の変更により、工期並びに請負金額に変更が生ずる場合は、これを変更するものとする。
なお、設計変更は、当初の設計図書に示される目的物の建設のために行うものであって、当初に示されてされていない単純な区域の変更、工作物・工種の追加等は、当該契約によるものではなく、別途発注により工事施工を行うべきものとなる。
4.発注者及び受注者の留意事項
(1)発注者の留意事項
≪設計図書の変更【契約書第 17 条第1~5項】≫
○ 契約書第 17 条第1項に該当する事実において、受注者より確認を請求されたとき、または自らが発見したときは、直ちに調査を行い発注者は調査の結果を受注者に報告しなければならない。 【第 17 条第1~3項】
○ 調査の結果、第 17 条第1項の事実が確認された場合においては、必要な訂正または変更を行う。 【第 17 条第4項】
○ 訂正または変更が行われた事項について、必要な工期または、請負金額の変更を行う。
【第 17 条第5項】
(2)受注者の留意事項
≪照査、事実の確認の通知及び確認請求【契約書第 17 条第1項】≫
○ 施工前および、施工中において受注者は契約書第 17 条第1項の各号に係る設計図書の照査を行う。
○ 工事施工にあたり契約書第 17 条第1項の各号に該当する事実を発見したときは、その旨を直ちに監督員に「通知」し、その確認を「請求」しなければならない。
(3)発注者及び受注者の留意事項
≪書面による行為【契約書第1条第5項】≫
○ 契約書に基づき行われる「請求」、「通知」、「報告」、「申出」、「承諾」及び「解除」は、書面により行わなければならない。
≪工期、請負金額の変更方法【契約書第 22 条、第 23 条】≫
○ 工期及び契約金額の変更は、発注者と受注者との協議により定める。ただし、14 日以内に協議が整わない場合は、発注者が定め、受注者に通知する。
5.工期又は契約金額の変更対象となる主な事項・事例
変更の対象となる主な事項は次に示すものであり、併せて代表的な事例を示す。
変更等の内容 契約条項
優先順位が定められていない図面、仕様書等での相互に一致
しない設計図書の訂正
①
第 17 条第 1 項第 1 号
[事例] ◇ 図面、仕様書、設計書に記載のある材料の寸法、数量が一致しない。
◇ 図面のうち平面図と詳細図の寸法、規格等が一致しない。
誤謬(ごびゅう)又は脱漏がある設計図書の訂正 第 17 条第1項第2号 [事例] ◇ 施工に必要な土質又は地下水位に関する条件明示がない。
②
◇ 交通誘導員の必要な工事において交通誘導員に関する条件明示がない。
◇ 設計数量が誤った図面表記に基づき算出されている。
表示が明確でない設計図書の訂正 第 17 条第 1 項第3号
③
[事例] ◇ 明示された土質柱状図において地下水位が不明確である。
実際の工事現場と一致しない施工条件が示された設計図書の
訂正又は変更
第 17 条第 1 項第4号
④ [事例] ◇ 設計図書に示された土質又は地下水位が現場条件と一致しない。
◇ 設計図書に示された交通誘導員数が交通管理者との協議結果と一致しない。
当初には明示されていない施工条件について予期することの
できない特別な状態が生じたことによる設計図書の変更
⑤
第 17 条第 1 項第5号
[事例] ◇施工により想定外の地中障害物や埋蔵文化財が発見され対応が必要となった。
◇想定外の軟弱地盤層が存在し、地盤改良が必要となった。
発注者が必要と認める場合の設計図書の変更 第 18 条 [事例] ◇ 現場周辺住民との協議により、変更が妥当であると認める場合。
⑥
◇ 関連工事との調整の結果、変更が妥当と認める場合。
◇ 法令改正、関係官公署の行政指導等により変更の必要があると認めた場合。受注者の責によらない事由による工事の一時中止、工期の延
長に伴う設計図書の変更
第 19 条、第 20 条
⑦ [事例] ◇ 天候不良、災害発生等の影響により工事施工が困難となった場合。
◇ 関係管理者間協議が未了もしくはその結果により工事着手の延期又は施工できない期間が設定された場合。
特別の理由により発注者が請求する工期の短縮に伴う設計図
書の変更
第 21 条
[事例] ◇ 発注者が行政運営の必要性から工事費の増嵩等をも考慮して、工期の短縮等を行う必要性があると判断した場合(いわゆる突貫費用の等の負担)
※ 設計図書とは、別冊の図面、仕様書、金額を記載しない設計書、現場説明書及び現場説明に対する質問回答書をいう。
6.設計変更ができない事例
次のような場合は、原則として設計変更の対象とならない。ただし契約書第 25 条(臨機の措置)に該当する場合は除かれる。
◇ 設計図書に条件明示のない事項において、発注者と「協議」を行わず受注者が独自に判断して施工を実施した場合
◇ 発注者と「協議」をしているが、協議の回答がない時点で施工を実施した場合
◇ 「承諾」で施工した場合
◇ 工事請負契約書(以下「契約書」という。に定められている所定の手続きを経ていない場合(契約書第 17 条~第 23 条)
◇ 正式な書面によらない事項(口頭のみの指示・協議等)の場合
「承諾」:受注者自らの都合により施工方法等について監督職員に同意を得るもの設計変更不可
「協議」:発注者と書面により対等な立場で合意して発注者の「指示」によるもの設計変更可能
意 見
「通知」を受理
事実を発見
受注者の立会の上調査を実施
【第 17 条第2項】
事実を発見
事実を発注者に「通知」し、その確認を
「請求」する 【第 17 条第1項】
7.設計変更の流れ
発 注 者
受 注 者
事実の存在
【第 17 条第1項各号】
① 図面、仕様書、金額を記載しない設計書、現場説明書及び現場説明に対する質問回答書とが一致しないこと。
② 設計図書に誤謬又は脱漏があること。
③ 設計図書の表示が明確でないこと。
④ 工事現場の形状、地質、湧水等の状態、施工上の制約等設計図書に示された自然的又は人為的な施工条件と実際の工事現場が一致しないこと。
⑤ 設計図書に明示されていない施工条件について予期することのできない特別な状態が生じたこと。
【第 17 条第3項】
※ 点線内は他の条項による
変更の場合も同様の流れとなる。
設計図書の訂正又は変更にともなう
工期又は請負金額の変更を行う
協議
発注者及び受注者は、「協議」により
工期及び請負金額を定める
【第 17 条第4項】
協議
成立
【第 22 条、第 23 条】
協議が整わない等により発注者と受注者にとの間に紛争が生じた場合は、建設業法による大阪府建設工事紛争審査会のあっせん又は調停によりその解決を図る。 【第 42 条】
変更契約を締結
調査結果に基づき、必要な設計図書の訂正又は変更を行う
【第 17 条第 4 項】
結果を書面により「通知」する
調査結果の取りまとめ
注: 軽微な変更については、上記によらず「工事打合せ簿」により確認の上、工事を進めることができる。
8.仮設、施工方法等の設計変更について
(1)基本事項
○ 仮設、施工方法その他工事目的物を完成するために必要な一切の手段(以下「施工方法等という。」については、この契約書及び設計図書に特別の定めがある場合を除き、受注者がその責任において定める 【第1条第3項】
⇒ 施工方法等は特別の定めがある場合は「指定」、その他は「任意」である。
⇒ 「任意」については、その施工方法等を自らの責任において受注者が選択する。
(2)注意事項
⇒ 「任意」については、その施工方法等に変更があっても原則として設計変更の対象としない。
⇒ 「任意」において、設計図書に明示された施工条件と実際の現場条件が一致しない場合は設計変更の対象となり得る。
⇒ 「指定」は、設計変更の対象とする。
⇒ 発注にあたり、「指定」と「任意」の部分を明確にする必要がある。
(3)「指定」の事例
◇ 特許工法や特殊工法を採用する場合
◇ 関係機関等との協議により、施工条件等が制約される場合
◇ 環境対策等、施工方法等の選択に当たり特段の配慮が必要な場合
◇ 他の工事などに使用するため、仮設物を工事完成後も存置する必要がある場合
(4)「任意」における不適切な事例
◆ 「○○工法で積算しているので、ほかの工法での施工は不可」との対応。
◆ 「標準歩掛りではバックホウなので、クラムシェルでの掘削は不可」との対応。
9.変更協議
(1) 設計変更事案のうち、軽微な設計変更については書面「工事打合せ簿」(別紙様式1)により工事を施工させることができる。
(2) 軽微な設計変更とは、設計変更により生じた請負金額の変更額の累計が当初の請負金額の20%に相当する額(20%に相当する額が1000万円を超える場合は1000万円)以内の設計変更とする。
<工事打合せ簿の数量、金額について>
工事打合せ簿に記載される数量及び変更予定額は概算であり、速やかに変更契約を行うものとする。
① 工事打合せ簿には、変更にかかる数量及び金額等を記載し、双方確認の上、取り交わすものとする。
② 数量等は、工事打合せ簿を取り交わした後、速やかに精査を行い変更契約できるようにする。なお、工事打合せ簿に記載する金額はあくまで概算であるので、変更契約時において増減が 生じることがある。
<変更協議書の決裁>
変更契約が必要となった場合、発注者は「協議書」に必要な事項を記載し受注者と協議を行う。
協議書は、発注者(写し)と受注者(原本)でそれぞれ保管する。
<変更契約手続きの時期>
軽微な設計変更に係る変更契約手続きは、速やかに行うことを原則とし、遅くとも次に示す時期の内、最も早い時期までに行うものとする。
① 設計変更金額の累計額が限度額(20%・1000万円)を超える設計変更を行うとき。
② 工期末
③ 債務負担工事における各会計年度末
④ 工期を変更するとき。
⑤ 受注者から申し出があった場合。
<変更契約の対象外>
設計変更後により請負金額が当初請負金額の30%を超える増額となる工事は、原則として新たに契約を締結しなければならない。(既契約工事と分離して施工することが著しく困難と認められる場合を除く。)
<変更契約のタイミング>【契約書第 17 条~第 23 条】
① 【条件変更等の発生】受注者が発見し直ちに監督員に確認の請求をする。
【契約書第 17 条第 1 項】
② 【調査】発注者、受注者立会の上、調査する。 【契約書第 17 条第2項】
③ 【調査の結果を通知】発注者は調査終了後、10 日以内に結果を受注者に通知する。
【契約書第 17 条第3項】
④ 【設計図書の訂正又は変更】事実が確認された場合は、訂正又は変更を行う。
【契約書第 17 条第4項5項】
⑤ 【変更契約協議】変更事由を生じた日から 7 日以内に協議を開始する。
【契約書第 22 条、第 23 条】
⑥ 【変更契約締結】協議を開始してから 14 日以内に協議を整える。
【契約書第 22 条、第 23 条】