Contract
建政 ― 9 4 5令和3年12月13日
各建設業関係団体の長 様
秋田県建設部長
下請契約及び下請代金支払の適正化並びに施工管理の徹底等について(通知)
建設業法(昭和24年法律第100号)をはじめとする関係法令により、建設工事の請負契約において遵守すべき事項が定められているほか、建設業者には、技術者や技能労働者等に係る賃金その他の労働条件、安全衛生その他の労働環境の改善に務めるとともに、建設工事従事者の安全及び健康の確保のため必要な措置を講ずること等が求められています。
県においても、県発注工事の入札参加者に対して「建設産業における生産システム合理化指導要綱」(平成4年2月20日監-1640)の遵守を求めるとともに、県発注工事の受注者に対する「建設工事下請負等実地調査」の実施や施工に係る監督・点検等を通じて、元請下請取引の適正化と工事現場における事故の防止等を図ってきたところです。
加えて、「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律」(令和元年法律第30号)が令和元年6月に公布され、令和3年4月1日から完全施行されました。本改正においては、建設業における働き方改革を踏まえ、著しく短い工期による請負契約の締結の禁止、労務費相当分を現金で支払うよう配慮する規定が新たに追加されたところです。
ついては、今後、資材や原油の価格高騰が続く中、資金需要の増大が予想される冬期を控え、下請代金の適切な支払等の十分な配慮が求められるとともに、今般の新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止措置の影響により、下請建設企業や技能労働者の事業や生業の継続に支障が生じることがないよう特段の配慮が必要となるほか、降雪時や低温下での作業が増える時期を迎え、転倒等による労働災害の発生も懸念されることから、関係法令、「工期に関する基準」(令和2年7月20日中央建設業審議会決定)、「建設業法令遵守ガイドライン」や企業として社会通念上守るべき企業倫理等を遵守するとともに、別紙に記載する事項に十分留意し、下請契約における適切な工期の確保、請負代金の適切な設定・支払等、元請負人と下請負人の間の取引の適正化と施工管理のより一層の徹底等に努めるよう、貴会会員に周知してくださるようお願いします。
担 当 建設部建設政策課
電 話 018(860)2425
別 紙
下請契約及び下請代金支払の適正化並びに施工管理の徹底等について
1 見積りについて
下請代金の設定については、次の事項に留意すること。
① 施工責任範囲、施工条件等を反映した合理的なものであること。
② 書面(電磁的方法を含む。)による見積依頼及び建設業法施行令(昭和31年政令第2
73号)第6条で定める見積期間の設定を行っていること。
③ 明確な経費内訳を示した見積書の書面(電磁的方法を含む。)による提出があること。
④ ②・③を踏まえた双方の協議等の適正な手順を徹底すること。
⑤ 見積り条件の提示に当たっては、建設業法(昭和24年法律第100号)第19条第
1項各号に掲げる事項(工事内容、着工及び完工の時期等)のうち、請負代金の額を除く事項について具体的に行うこと。
⑥ 見積りに当たっては、工事現場における工程管理や品質管理及び安全管理等の施工管理が適切に行われるよう、労働災害防止対策の実施者及びその経費の負担者の区分を明確化するとともに、必要な経費に十分留意すること。また、労務費、法定福利費、一般管理費等の必要な諸経費を適切に考慮すること。なお、労務費については、建設業法第2
0条の規定により、工事内容に応じ、工事の種別ごとに材料費や労務費その他の経費の内訳を明らかにして建設工事の見積りを行うよう努めなければならないこととされていることから、この趣旨を踏まえ、各業種の実情に応じて、労務費の総額や、可能な場合においてその根拠となる想定人工の積上げによる積算を明示することが望ましい。さらに、今後建設キャリアアップシステムの普及により、建設技能者の能力評価が進展することを見据え、建設技能者の地位や技能を反映した具体的な労務費の見積りとすることが望ましい。このほか、同条の規定により、工事の工程ごとの作業及びその準備に必要な日数を明らかにして見積りを行うよう努めなければならないことにも留意すること。
⑦ 昨今においては、資材や原油の価格が高騰している状況にあることから、材料費や燃料費等については、市場価格を参考に適切な価格設定となるよう十分留意すること。
⑧ 納期の長期化が見られる場合には、工期設定や工程管理においても十分配慮するとともに、当初の契約どおり工事が進行せず、工事内容に変更が生じ、工期又は請負代金の額に変更が生じる場合には、双方の協議による適正な手順により、追加工事または変更工事(以下「追加工事等」という。)の着工前に書面(電磁的方法を含む。)による見積依頼及び見積書の提出を徹底すること。
⑨ 工期内に賃金又は物価の変動により請負代金の額が不適当となり、これを変更する必要があると認められるときは、元請負人と下請負人とが協議して請負代金の額を適切に変更すること。さらに、元請負人が請け負った建設工事について、賃金又は物価の変動を理由にして請負代金の額が変更されたときは、元請負人又は下請負人は、相手方に対し協議を求めることができることにも留意すること。なお、下請契約の適正化確保の観
点から、発注者と元請負人の関係においても、昨今の資材等の価格高騰を踏まえ、適切に対応することが重要であることに留意すること。
⑩ 建設業法第20条の2の規定により、建設工事の注文者(元請負人又は直近上位の下請負人)は、当該建設工事に関し、地盤の沈下等の工期又は請負代金の額に影響を及ぼす事象が発生するおそれがあると認めるときは、請負契約を締結するまでに、建設業者に対して、必要な情報を提供しなければならないことに留意すること。
➃ 下請代金の決定に当たって公共工事設計労務単価を参考資料として取り扱う場合の留意事項については、別添のとおり国土交通省が通知しているので、その内容についても徹底を図ること。
2 社会保険加入の徹底について
建設業法の改正により、建設業の許可・更新申請に際して、社会保険に加入していることが許可要件となる点に留意すること。さらに、施工体制台帳の記載事項として、工事に従事する者に関する事項が追加され、工事に従事する者の社会保険の加入状況等も記載事項となる点に留意すること。加えて、元請負人は下請負人を選定する際に、登録時に社会保険加入確認を行っている建設キャリアアップシステムに登録している事業者を選定することが推奨されるとともに、元請負人による社会保険加入状況の確認及び指導については、建設キャリアアップシステムの登録情報の活用を原則とする方針を周知徹底すること。なお、建設キャリアアップシステムを使用せず、社会保険の加入確認を行う場合は、社会保険に加入していることを証する関係書類のコピー(電子データ可)を提示させるなど、情報の真正性の確保に向けた措置を講ずること。
3 適正な法定福利費及び労務費の確保について
建設業法第19条の3に規定する「通常必要と認められる原価」には、建設業者が義務的に負担しなければならない法定福利費が含まれると同時に、法定福利費の算出元である労務費においても「通常必要と認められる原価」に含まれているものであることから、法定福利費と労務費は必要経費として、次の事項に留意の上、適正に確保することが必要である。
① 元請負人においては、受注時における社会保険料の事業主負担分及び本人負担分を含んだ適正な法定福利費及び労務費の確保に努めること。また、下請負人が必要な法定福利費及び労務費を確実に確保することができるよう、下請負人に対し、見積条件に明示すること等により、法定福利費に加え、労務費の総額、またその根拠となる想定人工を内訳明示した見積書の提出を促すとともに、提出された見積書を尊重して法定福利費及び労務費を適正に含んだ額により下請契約を締結するほか、下請契約に当たっては、社会保険料の本人負担分についても適切に請負代金に反映すること。
② 下請負人においては、注文者に対し、法定福利費に加え、労務費の総額、また可能な場合においてその根拠となる想定人工を内訳明示した見積書を提出するとともに、再下請負人に対し、法定福利費に加え、労務費の総額、また可能な場合においてその根拠とな
る想定人工を内訳明示した見積書の提出を促し、提出された見積書を尊重すること。あわせて、自ら雇用する技能労働者に対し、社会保険料の本人負担分を適切に含んだ額の賃金を支払い、法令が求める社会保険に加入させること。
4 契約について
(1)書面(電磁的方法を含む。)による契約締結
建設工事に先立ち、次のいずれかを用いて契約を締結すること。
① 建設工事標準下請契約約款
② ①に準拠した内容による契約書
(2)契約書に特に明記すべき内容
① 具体的な工事内容(施工責任の範囲及び施工条件等)、適正な請負代金の額及び支払方法、着工及び完工の時期、工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときはその内容、出来高払の定めをするときはその時期及び出来高払割合等の方法、設計変更・工期の変更・請負代金の変更に関する定め等
② 建設工事が「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」(平成12年法律第1
04号)の対象建設工事の場合は、分別解体等の方法、解体工事に要する費用並びに再資源化等をするための施設の名称及び所在地、再資源化等に要する費用
(3)契約における留意点
① 下請代金の支払時に、建設廃棄物等の処理費用や一方的に提供・貸与した安全衛生保護具等の労働災害防止対策に要する費用等を相殺する(いわゆる赤伝処理)場合には、当該事項の具体的内容を、請負契約の両当事者の対等な立場における合意に基づき、契約書面に明記すること。
② 請負代金の額を決定する際、下請負人と十分な協議をせず、又は下請負人の協議に応じることなく、元請負人が一方的に決めた請負代金の額を下請負人に提示し、その額で下請負人に契約を締結させる行為(いわゆる指値発注)を行うことがないようにすること。
③ 建設業法第19条の5の規定による、著しく短い工期による請負契約の締結の禁止は、発注者と受注者の間のみならず、元請負人と下請負人の間でも適用されることに留意すること。
(4)変更契約における留意点
① 当初の契約どおり工事が進行せず、工事内容に変更が生じ、工期又は請負代金を変更する場合には、双方の協議等の適正な手順により、追加工事等の着工前に書面(電磁的方法を含む。)による契約をもってこれを変更すること。
② 工事状況により、追加工事等の全体数量等が直ちに確定できない場合には、元請負人は、下請負人に追加工事等として施工を依頼する工事の具体的な作業内容、当該追加工事等が契約変更の対象になること及び契約変更等を行う時期並びに追加工事等に係る契約単価の額を記載した書面を追加工事等の着手前に下請負人と取り交わすこととし、契約変更等の手続については、追加工事等の全体数量等の内容が確定した時点
で遅滞なく行うこと。
5 建設業の働き方改革に向けた適正な工期設定や週休2日の推進等について
「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(平成30年法律第71号)による改正後の労働基準法(昭和22年法律第47号)で定める罰則付きの時間外労働規制の一般則が建設業について適用されるまでの間においても、「建設工事における適正な工期設定等のためのガイドライン」(平成29年8月28日建設業の働き方改革に関する関係省庁連絡会議申合せ。第1次改訂平成30年7月2日)や建設業法の改正等の趣旨を踏まえ、下請契約の場合においても、適正な価格による契約、適正な工期設定、元請負人と工事の進捗状況の共有及び予定された工期で工事を完了することが困難な場合における適切な工期変更を行い、下請建設企業を含めた週休2日など休日の確保や長時間労働の是正などに努めること。
6 施工管理の徹底について
施工管理に当たっては、次の事項に留意すること。
① 公衆災害や労働災害の防止及び建設生産物の安全性や品質を確保するため、見積・契約時における労働災害防止対策の実施者及びその経費の負担者の明確化、適切な施工計画の作成、工事現場における施工体制の十分な確保、工事全体の工程管理や工事目的物・工事用資材等の品質管理及び工事現場における安全管理等の施工管理のより一層の徹底に努めること。
② 発注者から直接建設工事を請け負った建設業者は、公共工事においては下請契約を締結したとき、民間工事においては下請契約の請負代金の額が4,000万円(建築一式工事は6,000万円)以上となるときは、契約書等の写しなど定められた書類を添付した施工体制台帳及び施工体系図の作成、工事現場ごとの備え置き等を徹底すること。
特に、公共工事については、受注者は、当該工事を施工するために下請契約を締結したときは、当該下請契約の請負代金の額にかかわらず、施工体制台帳を作成し、その写しを発注者に提出するとともに、施工体系図を工事関係者が見やすい場所及び公衆が見やすい場所に掲げる必要があるので、適切に対応すること。
また、公共工事に係る施工体制台帳に添付すべき請負契約書の写しについては、二次以下の下請契約についても請負金額を明示することとされているので、このことに留意すること。
加えて、建設業法施行規則(昭和24年建設省令第14号)の改正により、建設工事の従事者の氏名や有する資格等の情報を施工体制台帳に記載することとなる点に留意すること。なお、施工体制台帳への記載に代えて、建設キャリアアップシステムに当該情報を登録し、必要に応じて書面に打ち出せるようにすることにより代替できることとされていることから、同システムを活用されたい。
③ 建設工事のxx技術者の専任等に係る取扱いについては、「建設工事の技術者の専任等に係る取扱いについて」(平成26年2月3日付国土建第272号)及び「xx技術者又
は監理技術者の「専任」の明確化について」(平成30年12月3日付国土建第309号)に十分留意すること。
7 検査及び引渡しについて
元請負人は、下請負人から建設工事が完成した旨の通知を受けたときは、当該通知を受けた日から20日以内で、かつ、できる限り短い期間内に検査を完了すること。
また、検査によって建設工事の完成を確認した後、下請負人からの申し出があったときは、特約がされている場合を除いて、直ちに当該建設工事の目的物の引渡しを受けること。
8 下請代金の支払について
下請代金を支払う場合は、次の事項に留意すること。
① 請求書提出締切日から支払日(手形の場合は手形振出日)までの期間をできる限り短くすること。
② 元請負人が注文者から部分払(出来高払)や完成払を受けた時は、出来形に対して注文者から支払を受けた金額の割合に相応する下請代金を、当該支払を受けた日から一月以内で、かつ、できる限り短い期間内に支払うこと。
③ 特定建設業者においては、注文者から支払を受けたか否かにかかわらず、建設工事の完成を確認した後、下請負人が工事目的物の引渡しの申し出を行った日から起算して5
0日以内で、かつ、できる限り短い期間内に下請代金を支払わなければならない旨の規定があること。
④ ②及び③から、特定建設業者の下請代金の支払期限は、注文者から部分払(出来高払)や完成払を受けた日から一月を経過する日か、下請負人が工事目的物の引渡しの申し出を行った日から起算して50日以内で定めた支払期日のいずれか早い期日となること。
⑤ 「下請中小企業振興法第3条第1項の規定に基づく振興基準」(昭和46年通商産業省告示第82号)及び「下請代金の支払手段について」(令和3年3月31日20210322中庁第2号・公取企第25号)の趣旨に鑑み、下請代金の支払はできる限り現金払すること。手形等で支払う場合には、当該手形等の現金化にかかる割引料等のコストについて、下請負人の負担とすることのないよう、これを勘案した下請代金の額を元請負人と下請負人で十分協議して決定すること。当該協議を行う際、元請負人と下請負人の双方が、手形等の現金化にかかる割引手数料等のコストについて具体的に検討できるように、元請負人は、支払期日に現金により支払う場合の支払代金の額並びに支払期日に手形等により支払う場合の下請代金の額及び当該手形等の現金化にかかる割引料等のコストを示すこと。なお、割引料等のコストについては、実際に下請負人が近時に割引をした場合の割引料等の実績等を聞くなどの方法により把握することが考えられる。
手形期間については60日以内とすること。また、発注者も含めて関係者全体で、手形の利用廃止等に向けて、前払金等の充実、振込払及び電子記録債権への移行、支払期間の短縮等の取組を進めていくよう努めることが重要であることについても留意すること。
特定建設業者については、一般の金融機関による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付しないこと。
一括決済方式及び電子記録債権を用いる際の決済期間についても同様に、できる限り短い期間に努めること。
⑥ 下請代金のうち少なくとも労務費相当分(社会保険料の本人負担分を含む。以下同じ。)については、現金払いとするよう支払条件を設定することとし、手形等による支払は慎むこと。労務費相当分以外の支払いにおいて、現金払と手形払を併用する場合には、支払代金に占める現金の比率を高めることに留意すること。
⑦ 元請負人が前払金の支払を受けた場合で、次に該当するときは、下請負人に対して速やかに相当額を現金で前金払いするよう十分配慮すること。
ア 下請負人が資材を購入する場合
イ 下請負人に建設労務者の募集その他建設工事の着手のための必要経費がある場合
⑧ 公共工事に係る前払金については、下請負人、資材業者等に対する前払金の適正かつ確実な支払を確保するため、保証事業会社と保証契約を締結した元請負人は、前払金支払時においては、下請負人、資材業者等の口座への直接振込の方法が基本とされていることを踏まえ、直接振込の実施の徹底を図ること。
⑨ 下請代金の支払保留については、工事が完成し、元請負人の検査及び引渡しが終了した後に、正当な理由なく長期間にわたり保留金として下請代金の一部を支払わないことがないよう留意すること。
9 下請負人への配慮等について
元請負人は、下請負人への配慮等として、次の事項に留意すること。
① 発注者から直接工事を請け負った元請負人は、全ての下請負人に対し、建設工事の請負代金・賃金の不払等の不測の損害を与えることのないよう十分配慮すること。
② 公共工事については、「下請セーフティネット債務保証事業」及び「地域建設業経営強化融資制度」を利用した資金調達も可能となっており、その活用による下請負人への支払の適正化に配慮すること。
③ 建設工事に従事する建設技能者がその能力や経験に応じた適切な処遇を受けられるようにする建設キャリアアップシステムの活用について、建設キャリアアップカードを保有している建設技能者が適切かつ確実に就業履歴を蓄積できるよう、元請負人は事業者登録を行った上、現場・契約情報の登録、施工体制登録、カードリーダーの設置等の就業履歴の蓄積が可能な環境整備を図ること。その工事に従事する下請負人に対しては事業者登録及び施工体制への登録、所属技能者の登録及び能力評価を受けるよう指導し、一人ひとりの建設技能者が各現場でのカードタッチ等により就業履歴を蓄積し、蓄積した就業履歴と保有する資格によって適切な処遇を受けられるよう、環境整備を図ること。
④ 建設業退職金共済制度(以下「建退共制度」という。)について、建退共制度の加入事業者、すなわち共済契約者は、中小企業退職金共済法の規定に基づき、その雇用する者全てに対して賃金を支払う都度、掛金を納付しなければならない義務があり、その掛金
は工事の施工に直接従事する建設労働者にかかる必要経費であることに鑑み、建設業法第19条の3に規定する「通常必要と認められる原価」に含まれるものとして元請負人及び下請負人において必要経費として適正に確保されるべきものと解される。公共工事においては、普及が進んではいるが、現場の技能労働者一人ひとりに証紙の交付・貼付が徹底されるよう、元請負人と下請負人の間における建退共制度関係事務を適切に行うとともに、改めて、元請負人は、下請負人が他の退職金制度を活用している場合等に慣用的に用いられてきた辞退届を使用せず、下請負人から提出される建設業退職金共済制度加入労働者数報告書を踏まえ、工事に従事する予定の労働者数、対象労働者数及びその就労予定日数の把握に努めること。また、民間工事においても、元請負人は、掛金納付に係る額を適切に見込んだ工事の見積りを行い、発注者に適切に請求することで事業所負担額分を確保する取組を推進する等、建設技能者が民間工事に従事する場合でも、公共工事と同様に退職金が受け取れるような環境の整備に努め、下請負人の資金繰りや雇用確保に十分配慮すること。さらに、元請負人においては、公共工事、民間工事の別を問わず建退共制度の掛金納付を一括して代行しこれを適切に下請負人に交付等を行うことが、合理的かつ効率的な事務処理のみならず、建設労働者の福祉の増進と雇用労働条件の向上に資するものであるので、適切な運用を行えるように努めなければならないことに留意すること。建退共制度の手続については、本年4月から、電子申請方式の本格実施及び証紙方式の履行確認強化の運用を開始しているため、元請負人は建設キャリアアップシステムの積極的な活用及び建退共制度の適切な運用を行うことに特に留意するとともに、下請負人は、元請負人と連携し、建設技能者の就業実績の把握と掛金充当の徹底に努めること。
また、元請負人は、建退共制度関係事務を受託する場合、工事ごとに、電子申請方式と
証紙貼付け方式のいずれかを選択した上で、下請契約を締結し、又は再下請負通知を受ける際に、全ての下請負人に対して、当該元請負人が選択した方式によって行うよう求めること。
⑤ 発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者は、下請負人が建設業法第19条、第24条の3、第24条の5等の規定及び労働基準法等の建設工事に従事する労働者の使用に関する法令のうち一定の規定等に違反しないよう指導に努めるとともに、同法第
41条第2項及び第3項の適用があることも踏まえ、下請契約の関係者保護に特に配慮すること。
10 技能労働者への適切な賃金の支払いについて
各団体及び建設企業においては、発注者からの適切な価格での受注、見積依頼・提出を踏まえた双方の協議による適正な手順を経た適切な価格での下請契約の締結、適切な水準の賃金の支払いに関する下請負人や再下請負人への要請、重層下請構造の改善などの具体的な取組を展開するとともに、公共工事設計労務単価の上昇を十分に踏まえ、現場を支える技能労働者の隅々まで適切な水準の賃金が支払われるよう最大限努めること。
また、国土交通省が開設している「建設業フォローアップ相談ダイヤル」では、公共工事
の品質確保の促進に関する法律に基づく「発注関係事務の運用に関する指針」(平成27年
1月30日公共工事の品質確保の促進に関する関係省庁連絡会議申合せ、令和2年1月3
0日改正)に関する情報、公共工事設計労務単価改定後の請負契約に係る情報、社会保険加入対策に係る情報などを受け付けているので、当該相談窓口を積極的に活用すること。
11 新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止措置の影響による下請建設企業等への配慮等について
今般の新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止措置の影響による建設工事の一時
中止・延期等に際しては、下請契約においても、適切な工期の見直しや一時中止等の措置、それに伴う適切な手順による書面(電磁的方法を含む。)による契約締結、下請代金の設定及び適切な代金の支払等を実施するため、上記1から10までの事項に十分留意し、元請負人と下請負人の間の取引の適正化の徹底等に努めることに加え、引き続き「駆け込みホットライン」及び「建設業法令遵守ガイドライン」の周知に努めること。
また、「建設業における新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン(令和2年5月1
4日(令和3年5月12日改訂版))」を踏まえ、建設現場における「三つの密」対策及び対策に伴う熱中症リスク軽減等を徹底すること。
12 xx県知事等への通報を理由とする不利益取扱いの禁止について
建設業法第24条の5の規定により、不当に低い請負代金での契約締結、不当な使用資材等の購入強制、正当な理由がない長期の支払い保留など、建設業法上の義務違反行為を元請負人が行ったという事実を下請負人がxx県知事等に通報したことを理由として、当該下請負人に対して、取引の停止その他の不利益な取扱いをしてはならないことに留意すること。
13 関係者への配慮について
資材業者、建設機械又は仮設機材の賃貸業者、警備業者、運送事業従事者等に対しても、上記1から12までの事項に準じた配慮をすること。