輸入貨物、仕入書(CIF)
輸入貨物に係る関税評価上の取扱い等に関する照会
貴金属回収契約に基づき輸入される貨物の課税価格について
照 会 | ||
照会内容等 | ① 輸入貨物の品名 | 貴金属含有物(税表分類:第71類) |
② 照会の趣旨 | 貴金属回収契約に基づき輸入される貨物の課税価格について、関税評価上の取扱いを照会するもの。 | |
③ 取引の概要及びx x評価に関する照会者の見解とその理由 | 別紙1のとおり。 | |
④ 関係する法令条項等 | 関税定率法第4条の4 | |
⑤ 添付書類 | 照会の趣旨及びその理由等の照会事項に関する参考資料 |
回 答 | |||
回答年月日 | 令和5年3月20日 | 回答者 | 神戸税関業務部首席関税評価官 |
回答内容 | 別紙2のとおり。 ただし、次のことを申し添えます。 (1) 回答内容は、あくまで照会に係る事実関係を前提としたものであり、具体的な事例において異なる事実がある場合や新たな事実が生じた場合には、回答内容と異なる課税関係が生ずることがあります。 (2) 回答内容は、税関としての見解であり、事前照会者の申告内容等を拘束するものではありませんのでご留意ください。 |
内容
3.関税評価に関する照会者の見解 4
貴金属回収契約
輸入貨物、仕入書(CIF)
輸出者 B社
(E国)
輸入者 A社
(本邦)
処理費用
計算書
貴金属製品
業務委託費用
業務受託者 X社
(E国)
業務委託契約
輸入者であるA社(以下「輸入者」という。)は、E国所在の子会社であるX社を通じて、E国所在の B社(以下「輸出者」という。)から、CIF 条件で貴金属含有物(貴金属a、貴金属b 及び貴金属 c を含有するもの)を輸入しています。輸出入者間に特殊関係はありません。
当該輸入貨物は、輸出者から貴金属回収依頼を受けて無償で輸入されるもので、輸入者の分析によっ て輸入貨物に含まれる貴金属重量を算出して当該重量相当分の貴金属製品を輸出者に返却し、輸入者の 処理分析等にかかった費用(以下「処理費用」という。)を輸出者に請求する取引です。輸入貨物は前処 理、貴金属重量の分析、精製及び成形の工程を経て貴金属製品(地金)に加工されますが、輸出者への 貴金属製品返却までの時間を短縮させるため、貴金属重量の測定結果が確定次第、当該輸入貨物から回 収される貴金属製品の返却に代えて、輸入貨物に含まれる貴金属重量相当の輸入者所有の貴金属製品を 輸出者に返却しています。また、処理費用として輸出入者間で取り決めた請求項目の前工程費用及び精 製費用を輸出者に請求しますが、これらの費用には輸入貨物が最終的に製品化されるまでの費用のほか、回収工程において輸入貨物から発生する残渣を処分するための費用及び輸出者へ貴金属製品を返却す るための費用が含まれています。
(1)本件取引にあたり、輸入者と輸出者は、貴金属回収契約を締結し、貴金属の収率や処理費用、返却条件等を取り決めています。貴金属回収契約の記載内容に変更がない限りは、当該契約書は有効なものとして取り扱われます。なお、輸入者はX社と業務委託契約を締結して本件取引の仲介を委託しています。
(2)輸出者から、X社を通じて、メールにて個別に依頼があり、輸入者が同意すれば、輸出者から CIF 条件で貨物が輸出され、本邦到着後に輸入者工場に搬入します。なお、輸入貨物に含まれる貴金属重量相当の貴金属製品を回収・返却する取引であり、輸入貨物の所有権が移転するとの認識はなく、輸出入者間における所有権の取り決めはありません。
(3)輸入者は、搬入した貨物の内容の確認と重量測定等の検品を行います。
(4)輸入者は、貴金属含有量測定用のサンプルを採取するために、輸入貨物全体を均一状態にする前処理を行います。
(5)次に、採取したサンプルを分析して輸入貨物全体に含まれる貴金属の含有量を測定します。当該測定値に収率を乗じた重量を輸出者へ返却する重量(以下「返却重量」という。)(返却重量=測定値×収率)として決定します。収率とは、輸入貨物から貴金属を抽出する工程において回収できない微量の生産ロスが発生するため、このロス分を見込んだ数値を輸出者との貴金属回収契
約において取り決めているものです。輸入貨物の貴金属の含有割合によって収率は異なっています。
(6)輸入者は測定結果に基づき、輸出者あてに計算書を作成し、返却重量と処理費用について、輸出者の合意を得ます。合意が得られない場合には第三者機関による分析を行い、当該結果に基づき双方が合意します。
(7)輸出者の合意後三週間以内に、当該輸入貨物から回収される貴金属製品の返却に代えて、返却重量相当の輸入者保有の貴金属製品を CIF E国条件で輸出者に返却し、E国の空港において輸出者に貴金属製品を引き渡した時点で輸出者との取引が完了します。なお、輸出インボイス価格は、輸出者からの依頼に基づき、貴金属回収契約において取り決めた相場価格を採用することとなっています。
(8)輸出者との取引完了後、輸入者は輸入貨物から貴金属を回収します。貴金属回収後の残渣に価値はなく、輸出者に返却することなく輸入者が処分します。
輸入貨物は、輸入申告時に貴金属含有量が確定しておらず、課税価格が決定されないため、輸出者からのプロフォーマインボイスにより輸入許可前引取承認申請を行い、輸入者の測定結果と処理費用が確定次第、輸出者の合意を得た計算書に基づいて輸入者が輸入許可前引取貨物の輸入申告用に作成した納税申告用インボイスにより申告を行い輸入許可を受けています。
プロフォーマインボイス価格については輸出者から価格の算出根拠が開示されないため具体的な計算方法はわかりません。
本件取引の輸入申告においては、国際相場価格に基づいて課税価格を算出していますが、本件取引は売買価格がなく、どの貴金属国際相場を用いるか取り決める必要がないため、当該課税価格算出のために採用している国際相場は輸出入者間で合意されたものではありません。
本件取引において輸入者は、商習慣上用いる相場として貴金属 a 及び貴金属 b については「国際相場 y」、貴金属 c については「国際相場 z」を採用しています。
なお、X社との業務委託契約に基づき輸入者が支払う業務委託費用は、輸入取引に関して支払われる手数料であることから、当該手数料を加算して申告しています。
3.関税評価に関する照会者の見解
本件取引の場合、輸入者から輸出者に対する支払いは発生せずに処理費用を請求することとなり、課税価格については関税定率法第4条第1項に規定する原則的な方法により決定することはできないため、同法第4条の4に基づき計算します。この場合において、輸入貨物に含まれる貴金属重量に基づいて取引を行っていることから、輸出者と合意した返却重量に商習慣上使用している相場価格を乗じた価格から、処理費用を控除した価格に、輸入取引に関して支払われる手数料を加算した額を課税価格とすることが適切であると考えます。
本件輸入貨物は、輸出者から貴金属回収の依頼を受けて無償で輸入されるもので、関税定率法第4条第1項に規定する「輸入取引」により輸入されるものとは認められないことから、同条同項の規定を適用して課税価格を計算することができず、同法第4条の2以下の規定により課税価格を計算することとなります。
本件の場合、同法第4条の4、同法施行令第1条の 12 第2号の規定により課税価格を計算することとなります。具体的には、貴金属が相当量含有されている輸入貨物について、課税物件確定の時の属する日後に成形作業等が行われて貴金属製品に加工されており、その貴金属製品には国際相場価格が存在することから、当該相場価格から当該加工による処理費用を控除して、輸入港到着までの運賃・保険料を加算した額により計算することが妥当です。なお、X社に輸入者が支払う業務委託費用について、輸入者が課税価格に算入する必要があると認識していることから当該費用の加算の要否については検討しません。
(1)関税定率法(以下「法」という。)第4条第1項本文において、輸入貨物の課税価格は、当該輸入貨物に係る輸入取引がされた場合において、当該輸入取引に関し買手により売手に対し又は売手のために、当該輸入貨物につき現実に支払われた又は支払われるべき価格に、その含まれていない限度において運賃等の額を加えた価格とすると規定されています。
また、法基本通達4-1(1)において、「輸入取引」とは、本邦に拠点を有する者が買手として貨物を本邦に到着させることを目的として売手との間で行った売買であって、現実に当該貨物が本邦に到着することとなったものをいうとされており、さらに、現実に貨物が本邦に到着することとなった取引が売買以外のものである場合には輸入取引に該当せず、法第4条の2以下の規定により課税価格を計算するとされています。
(2)法第4条の2において、同種又は類似の貨物に係る取引価格があるときは、当該輸入貨物の課税価格は、同種又は類似の貨物に係る取引価格とすると規定されています。
(3)法第4条の3第1項において、法第4条第1項及び法第4条の2の規定により課税価格を計算することができない場合、当該輸入貨物の課税価格は、当該貨物の課税物件確定の時の属する日又はこれに近接する期間内に、売手と特殊関係のない買手に国内で販売された当該貨物、若しくは同種又は類似の貨物に係る国内販売価格から、同類の貨物の国内販売に係る通常の手数料又は利潤及び一般経費、輸入港到着後から国内販売までの通常の運賃、保険料その他の運送関連費用、並びに本邦で課された関税その他の公課の額を控除して得られる価格とすると規定されています
(同項第1号)。
また、課税物件確定の時の属する日後加工されたものである場合は、国内販売価格から同項第1号にかかる費用に加えて当該加工により付加された価額を控除して得られた価格とすると規定されています(同項第2号)。
(4)法第4条の3第2項において、当該輸入貨物の製造原価を確認できるとき(当該輸入貨物を輸入しようとする者と当該輸入貨物の生産者との間の当該輸入貨物に係る取引に基づき当該輸入貨物が本邦に到着することとなる場合に限る)は、当該製造原価に基づき課税価格を計算すると規定されています。
(5)法第4条から法第4条の3の規定により課税価格を計算することができない場合、法第4条の
4の規定による、特殊な輸入貨物に係る課税価格の決定方法を適用することとなり、同法の規定を受けた法施行令第1条の 12 第1号又は第2号の規定に基づいて課税価格を計算することとなります。
本件輸入貨物については、貨物に含まれる貴金属を回収することを目的として、輸出者が輸入者に処理費用を支払うことにより輸入されるものであり、売買によらない貨物であることから、法第4条の2
以下で課税価格を決定することとなります。
輸入貨物の同種又は類似の貨物に係る取引価格はないことから、法第4条の2を適用し課税価格を決定することはできず、また、本件取引は返却取引のため輸入貨物は国内販売されるものではなく、生産者との取引でないことから、法第4条の3を適用して課税価格を決定することはできません。
したがって、本件輸入貨物は法第4条の4により課税価格を決定することとなりますが、法施行令第
1条の 12 第1号により、「合理的な調整」を加えても、法第4条から法第4条の3の規定により課税価格を計算することができないことから、同条第2号に規定する「税関長が定める方法」により課税価格を計算することになります。
輸入貨物の輸入申告の時における価値については判明しないものの、貴金属が相当量含有されている輸入貨物について、課税物件確定の時の属する日後に前処理、貴金属重量の分析、精製及び成形の工程を経て貴金属製品に加工されており、その貴金属製品には国際相場価格が存在することから、当該相場価格から当該加工による処理費用を控除して、輸入港到着までの運賃・保険料を加算した額により計算することが妥当です。
なお、本件取引に関して、輸入者は業務委託先であるX社に業務委託費用を支払っていますが、輸入取引に関して業務を行う者に対し支払っている手数料であり、輸入者が課税価格に算入する必要があると認識していることから加算の要否については検討しません。
本件について、上記3.による方法で課税価格を計算する場合に適用する国際相場価格の市場、国際相場価格の時期、処理費用及び輸入港到着までの運賃・保険料の取扱いについては以下のとおりです。
(1)適用する国際相場価格の市場について
適用する国際相場価格の市場は、貴金属 c については、輸入者が商習慣上用いている国際相場価格の市場である国際相場z を採用することが妥当と考えます。貴金属 a 及び貴金属 b については、現物の売値相場としてその業界で多く使用されている国際相場価格である国際相場 y を採用することが妥当と考えます。
なお、他の客観的資料等により、上記以外の取引市場の相場価格に基づき計算することが妥当と認められる場合においてはその限りではありません。
(2)適用する国際相場価格の時期について
本件において、国際相場価格に基づき輸入貨物の課税価格を計算する場合、客観的資料等により確認できる日付のうち、輸入者により輸入貨物の購入が行われたとした日に最も近いと思われる日付として、船荷証券で確認できる船積みの日を採用し、当該日付の国際相場価格を適用することが適当と考えます。
なお、輸入者により輸入貨物の購入が行われたとした日に最も近いと思われる日付として、他に客観的資料等により確認できる日付がある場合、船積みの日以外の日付を採用することは妨げません。
(3)処理費用の取扱いについて
輸入者は輸出入者間で取り決めた処理費用を輸出者に請求しますが、これらの費用は輸入貨物が最終的に製品化されるまでの費用のほか、回収工程において輸入貨物から発生する残渣を処分するための費用が含まれているとのことです。
したがって、輸出者へ請求される処理費用は輸入貨物が貴金属製品に加工されるまでに必要な費用と考えられ、当該加工により価値が付加されていることから、当該処理費用を加工による付加価値として控除して計算することが妥当と考えます。
なお、処理費用のうち、輸出者へ貴金属製品を返却するための費用は、輸入貨物に含まれる貴金属重量相当分の貴金属製品を輸出者に返却するために輸入者が負担した輸出にかかる運送費用等であり、輸入貨物とは関連のない費用であることから控除することはできません。
(4)輸入港到着までの運賃・保険料の取扱いについて
貴金属地金の国際相場価格に基づき課税価格を計算する場合、当該価格には本邦到着までの運賃等が含まれていないことから、本件においては輸出者が負担した運賃及び保険料を加えて課税価格を計算します。