弁護士 茂木紀子| nmotegi@ballonstoll.com | 212.603.9281
家賃交渉のポイントや支援・救済措置
2020年04月30日
弁護士 xxxx| xxxxxxx@xxxxxxxxxxx.xxx | 212.603.9281
自己紹介
xxxx 弁護士（ニューヨーク州、日本）
2004年より日本の弁護士として都内の渉外法律事務所にて、日本内外での事業進出、国際商取引案件に携わった。外務省国際法局に出向後、2009年に渡米。
現在はニューヨーク州弁護士として、商業不動産リース・投資を始め、事業承継・売却、フランチャイズ等の事業提携、各種取引に必要となる契約書の作成・交渉、米国・日本 間を含む国際取引・海外進出サポートを含む企業法務（各州への法人登録業務、コンプ ライアンス、社内マニュアル作成等）を主に扱う。
事務所の紹介：
バロン・ストール法律事務所／創業1931年の総合法律事務所
取扱分野：各種契約・交渉、会社法、労務、移民法、倒産法、各種訴訟、 相続・家族法、商標登録、エンターテイメント法、税法、保険法など
住所：000 0xx Xxxxxx, 00xx Xxxxx, Xxx Xxxx, XX 00000 USA
目次
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商業賃貸契約への影響契約に基づく対応方法
経済的支援策
今後の対応に向けて
商業賃貸契約への影響
01
契約上の対応策
02
法理論上の対応策
03
行政上の対応策
契約に基づく対応策
• 契約の中途解除
▪ テナントの都合による中途解約
契約書中では一般的に認められていない
▪ 現状下で、新たなテナントを見つけることは困難家主が応じることも難しい
• 契約譲渡（Assignment）または転貸（Sublease）
▪ 認められている場合でも、事実上不可能
• 賃料支払い拒絶の可否
▪ 契約書中で支払い拒絶を認める条項がないか
▪ Force Majeure Clause （不可抗力条項）
▪ Force Majeure (不可抗力条項)
• 当事者によるコントロールが及ばない、極端かつ合理的に予測できない出来事の発生によって契約上の義務履行が困難となった場合に、債務不履行を免れる
• 適用の有無は、契約上の文言に依存：債務不履行を免れることができる出来事が例示されている
• 履行が免除されるのは、不可抗力事由の発生している期間中のみ
• 裁判所による解釈は、州によって異なる。ニューヨーク州
o 厳格に解釈する傾向 – pandemic（パンデミック）, epidemic（伝染病の大流行）の明記があるか
o 当該出来事によって、問題とされる債務が完全に履行できなくなった場合に限定
• 家賃支払い義務については、債務不履行として扱われる可能性があるので注意
▪ Force Majeure Clause (不可抗力条項)
規定例：
“Any prevention, delay, or stoppage due to strikes, labor disputes, acts of God, including inability to obtain labor or materials, or reasonable substitutes therefor, governmental restrictions or requirements, governmental regulations, inability to timely obtain governmental approvals, failure of power, riots, insurrection, war or other enemy or hostile government action, civil commotion, fire or other casualty, and other causes beyond the reasonable control of the party obligated to perform, shall excuse the performance by such party for a period equal to any such prevention, delay, or stoppage, including the obligations imposed with regard to rental and other charges to be paid by Tenant pursuant to this Lease and the obligation of Landlord to deliver the Leased Premises.”
履行不能（Impossibility）
• 契約締結の時点で合理的に予測不可能な予期しない出来事により、契約上の義務の履行が客観的に不可能となった場合、債務不履行にならない
• ニューヨーク州裁判所は厳格に解釈する傾向
目的達成不能（Frustration of Purpose）
• 当事者の過失ではなく、当事者の契約上の権利および義務の性質を大幅に変更する合理的に予測不可能な事象が発生した場合
• 当事者がそもそも取引を行う意味がなくなった場合
• ニューヨーク州裁判所は厳格に解釈する傾向
• これらの主張が可能かについては、弁護士の意見も確認する
その他の救済
• 保険契約に基づく補償
▪ 商業リース契約中でxxxxによる加入が義務付けられていることが多い
▪ 保険内容にも拠るが、賃料補償などが認められる場合がある
行政による救済措置
• ニューヨーク州知事による行政命令No. 202.8 （2020年3月20日発効）
▪ テナントに対する強制退去、または物件の差押えを禁止
▪ 居住用または商業用を問わない
▪ 期間：2020年6月20日まで
• ニューヨーク州裁判所 （2020年3月15日付け通知）
▪ 2020年3月16日以降、強制退去命令の実行を州レベルで禁止
▪ 期限は未定
行政による救済措置
不動産ローン支払猶予制度（CARES ACT）
連邦政府による保証等を受ける住宅ローンの利用者に対する支払い猶予
1世帯～4世帯用の居住用物件 5世帯以上の居住用物件
申請から最長30日間。さらに2回延長できる。
申請から最長180日間。さらに180日間延長可
ローン提供者は、2020年3月18日から60日間は差押え禁止
猶予期間中はテナントの立退き強制は禁止
期間経過後にテナントを立ち退かせる場合、30日間の事前通知が要求される
全ての家主（支払い猶予申請の有無を問わない）
2020年3月27日から120日間、家賃やその他の費用の滞納を理由にテナントを退去させることは禁止。
期間経過後も、退去させるには30日前に通知する必要がある。
行政による救済措置
連邦住宅金融抵当公庫（Freddie Mac)による新型コロナウイルス救済措置
• 対象：5世帯以上の住居が入っている居住物件賃貸物件の所有者
• 新型コロナウイルスの感染拡大によって物件の管理上影響を受けた場合、同公庫によるマルチファミリーローンを利用している物件所有者に対し、最長 90日間の支払い猶予
• 条件：猶予期間中、ウイルスの影響（テナントまたは家族の感染、失業など）を理由にテナントを退去させないことに同意しなければならない
• 申込期限：連邦政府による緊急事態宣言の終了日、または2020年12月31日のいずれか早い日
当事者協議による解決
• 家主の置かれた状況
▪ 賃料収入の減少
▪ 立退きを強制できない
▪ 賃貸契約上、適切な管理義務を果たす義務があるが、負担が増している
▪ 物件にモーゲージが付されている場合、家主に収入がなければ、物件の差押えを受けるリスクがある
• 一方的に支払いを拒むことは必ず避ける
▪ xxxxが法人でも、保証人への責任追及の可能性
▪ 将来の訴訟リスク
▪ 賃料支払いを援助する救済措置の利用も検討
• それぞれの具体的な状況に照らし、両当事者が納得できる解決策をめざす
▪ 誰もが想定していなかった状況
• 検討事項
▪ 賃料免除、減額、または延納か
▪ 支払いの対象項目（例：不動産税、管理費、光熱費のみ払う、など）
▪ 対象期間
▪ 事業の再開が許されるまでの間の契約を締結する、など
• 具体的な事例
▪ 優良テナント（有名チェーン店）が、個人家主に対して、3ヵ月分の賃料免除を要求してきたが、当事者間の協議により、賃料1.5カ月分の免除とした例（家主側代理）
▪ 飲食店が著しい業績不振により、貸主に対し、家賃の3ヵ月分の滞納を要求し認められた例（テナント側代理）
• 商業不動産を扱う弁護士からのアドバイスを受ける
• 契約書の変更には書面化が必要
契約書上、合意内容の変更には書面化が求められているのが通常
• 合意書作成までの間、債務不履行の通知を発行しないよう確認
経済的支援制度
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01
連邦政府によるもの
02
各州その他によるもの
事業者に対する支援
・3月27日
コロナウイルス支援・救済・経済安全保障法（ Coronavirus Aid, Relief and Economic Security Act ）いわゆるCARES Act 成立
① 給与保護プログラム Paycheck Protection Program (PPP)
予算は3,490億ドル（$349 billion）
➁ 経済的損害災害融資プログラム Economic Injury Disaster Loan Program（EIDL）米国中小企業庁（SBA）による災害時の企業救済制度
5,620億ドル（$562 million）拡充された
いずれも、新型コロナウイルスにより経済的な被害を受けている中小企業の支援を目的
4月16日
米国中小企業庁（SBA）は給与保護プログラム（PPP）と経済的損害災害融資
（EIDL）について、財源の枯渇を理由に新規受付の停止を表明。
4月24日
追加支援として＄484 Billion（4千840億ドル）が提供された
（配分の内訳）
PPPに対し新たに$310 Billion（3千100億ドル） EIDL 資金として新たに$60 Billion （600億ドル）
連邦政府による支援
給与保護プログラム（PPP ）
目的
中小企業の雇用維持
受給資格
従業員数500人未満の企業（飲食事業、ホテル業等のホスピタリティ事業に対しては事業所ごとに判断）
支給額
従業員への月平均給与の2.5倍（従業員1人あたり100,000ドルを超える場合は）、最大
1,000万ドル
例：過去12か月の月間平均給与（給与が高い従業員を除く）が10,000ドルの場合、支給額の上限は25,000ドル
連邦政府による支援
給与保護プログラム（PPP）
融資期間、利息
最長2年、利息１％
最初の6か月は支払いが猶予される
利用目的
給与、住宅ローン、賃料支払、公共料金等に利用可能
返済免除制度
支給日から8週間内に、給与支払い（75％相当額まで）および不動産ローンの利息、家賃、および公共料金（ローンの最大25％）に利用された場合、返済が免除される
申請方法
認定金融機関を通じて申請する
経済的損害災害融資（EIDL)
目的
自然災害等の有事によって経済的損害を負った中小企業に対して運転資金ローンを提供。
受給資格
従業員数500名未満の中小企業
フランチャイズやホスピタリティ事業について、1か所あたりで判断する例外はなし。
（PPPとの違い）
支給額
最大200万ドル
融資額は、個別の事情に基づきSBAが決定。10,000ドルの前払いについて返済免除
経済的損害災害融資（EIDL)
利用目的
給与やその他の運営費に充てることが許される
借り換え、他の連邦債務のローンの支払い、物理的損傷の修復、IRSへの納税、または配当金支払いには使用できない
融資期間最長30年
金利3.75％（非営利団体の場合は2.75％）元本および利息の支払いは、最長1年間延期
申請方法
SBAのウェブサイト上で申請
NEW YORK
• NYC Business Continuity Loan Fund
従業員数100名未満で、売上げの25％以上が減少した企業に対し、最大75,000ドルの無利子xxxが認められる
• NYC Employee Retention Grant Program
従業員数が5人未満の企業に対し、2か月間の給与支払い費用の40％相当額について、上限27,000ドルまで助成（返済義務なし）
注：現在は申請受付を一時停止中
NEW JERSEY
・Small Business Emergency Assistance Grant Program
小売、宿泊施設、飲食業等の分野で従業員数10名以下の中小企業向けに、上限5,000ドルを補助
・Small Business Emergency Assistance Loan
年間収益500万ドル未満の中小企業に対し、運転資金として最大10万ドルのローンを提供
・NJ Entrepreneur Support Program
25名以下の従業員数を抱える事業者への運転資金のローンの80％（上限20万ドル）に対し保証を提供
・Small Business Emergency Assistance Guarantee Program
年間収益500万ドル未満の中小企業がNJ EDAの既存スキーム等によって借り入れ中のローンに関し、運転資金のローンの50%に対して保証を提供し、かつ手数料を免除
CONNECTICUT
Connecticut Recovery Bridge Loan Program
Connecticut Department of Labor’s Shared Work Program
CALIFORNIA
California Capital Access Program for Small Business
California Infrastructure and Economic Development Bank (IBANK) Disaster Relief Loan Program
IBANK Jump Start Loan Program
今後に向けて
01
事業再開にあたっての注意
02
事業閉鎖にあたっての検討事項
• 事業再開が認められる兆し？
• 再開が許される事業とは
▪ Social Distancing （社会的距離の維持）が可能かどうか
▪ レストラン
▪ オフィス
▪ 美容院、サロン、ジム等は時期尚早とされる可能性
• 再開にあたっての留意点
従業員または顧客に対する法的責任政府のガイドラインの遵守
▪ 顧客との一定間隔の維持
▪ 従業員に対するPPEの提供
▪ 勤務時間の調整
▪ 新たな雇用関連法の遵守
• 撤退の是非
▪ 現状、家主が新たなテナントを見つけることは困難
▪ 保証人に対する責任追及のリスク
▪ 関連会社も訴えられる可能性
• 倒産
免責事項
今回ご提供した情報はあくまでも教育目的として扱われるべきものであり、法的なアドバイスとして扱われるべきものではありません。内容についてはできるだけ正確性を期しておりますが、これを保証するものではありません。具体的なご事情に基づく事項については、別途弁護士にご相談下さい。
本日はご清聴頂き、誠にありがとうございました
弁護士 xxxx
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