Contract
ホクネット検討会勉強会
消費者法による契約の取消し・無効
2009年1月15日
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Ⅰ概観
1.立法の経緯
平成12年の制定 第1章総則と、第2章消費者契約の部分を規定平成18年の改正 第3章差止請求 を追加。
2.消費者契約法の構成
第1章 総則(第1条~第3条)第2章 消費者契約
第1節 消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し(第4条~7条)第2節 消費者契約の条項の無効(第8条~第10条)
第3節 補則(第11条)第3章 差止請求
第1節 差止請求権(第12条)第2節 適格消費者団体
第1款 適格消費者団体の認定等(第13条~第22条)第2款 差止請求関係業務等(第23条~第29条)
第3款 監督(第30条~第35条)第4款 補則(第36条~第40条)
第3節 訴訟手続等の特例(第41条~第47条)第4章 雑則(第48条)
第5章 罰則(第49条~第53条)附則
3.目的・趣旨第1条
1.民法の 意思表示の瑕疵による取消し
公序良俗違反等による無効 の限界を克服。
制限無能力者:未xx者、被後見人(精神障害による事理弁識能力の恒常的な欠如)、被保佐人(精神障害による事理弁識能力の著しい欠如)、被補助人(精神障害による事理弁識能力の不十分。痴呆症)
錯誤(取消し的無効) 95条 相手方の行為は要らない。しかし、動機の錯誤は原則として無効事由とならない。
詐欺・強迫 96条 相手方の故意が必要。公序良俗違反した場合は無効 90条
公序に関しない法規と異なる意思表示は有効。91条
公序良俗違反行為は限定されている。
①性道徳・家族秩序・刑罰規範等、人倫に反する行為:妾契約、賭博契約、賭け金債務負担契約、密輸契約、芸娼妓契約等。
②憲法的価値・公法的政策に違反する行為:男女差のある定年年齢。
③経済・取引秩序に反する行為:過大な競業避止義務、暴利行為、談合。消費者契約はこの部分を、取消しの対象として拡大。
2.消費者契約法の取消しの対象たる勧誘行為、無効の対象たる条項の使用に対し、適格消費者団体の差止請求を認める。
4.適用範囲
消費者 2条1号事業者 2号
消費者契約=消費者と事業社の間で締結される契約に適用。3号
Ⅱ消費者契約の内容1――第2章
1.消費者契約の申込み・承諾の取消し――第1節
消費者・事業者間の契約一般について、詐欺・強迫に当たらない誤認・困惑の場合にも取消しを認める。 4条
根拠は、「消費者と事業者の間の情報の質及び量並びに交渉力の格差」であるが、具体的には、攻勢的なセールスでなされる事実の隠蔽・断定的判断、押し売り行為である。
(1)事業者の一定の行為により、消費者が誤認してなした申込み・承諾の取消し事業者の一定の行為として
①重要事項の不実告知 1項1号
②将来の不確実な事項に関する断定的な判断の提供 1項2号
③重要事項・重要事項関連事項につき、利益事実の告知かつ不利益事実の不告知
2項
重要事項とは、 4項
契約目的となるものの質、用途その他の内容あるいはその対価その他の取引条件に関し、消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきもの
(2)事業者の一定の行為により、消費者が困惑してなした申込み・承諾の取消し 3項不退去による場合 1号
監禁による場合 2号
(3)媒介受託者・代理人が消費者契約を締結した場合
事業者からの媒介受託者の行為により消費者を誤認・困惑させた場合も同じ。
5条1項 消費者契約を消費者が代理人により締結する場合には、代理人の誤認・困惑は消費
者の誤認・困惑と考える。
事業者・事業者からの受託者が代理人により締結する場合には、代理人の重要事項の不実告知、断定的な判断の提供、重要事項等に関する利益事実の告知かつ不利
益事実の不告知、不退去、監禁は、事業者・事業者からの受託者の行為と考える。例:常口アトムの場合 5条2項
(4)民法96条との関係 6条 (5)取消権の行使期間等 7条
追認できるときから6ヶ月間で、時効により消滅する。契約締結の時から5年で、時効により消滅する。 1項
株式・出資の引受け、基金の拠出を内容とする契約は、詐欺・強迫を理由とする取消しが会社法等により認められないときは、消費者契約法によっても取消すことができない。 2項
(6)クーリング・オフとの比較
・消費者契約法の取消しと違って、理由を問うことなく契約の解消を認める。しかし、契約締結から一定期間内に限り、また、認められる契約を法律で限っている。
・古典的なxxxxx・xx
勧誘攻勢に対し消費者が冷静さを取り戻して安定した判断をする時間を確保するもの。期間は8日間。
その1:特定商取引法の訪問販売・電話勧誘のクーリング・オフ
a 事業者の不意打ち的・圧迫的・巧妙な勧誘に対するもの。
その2:割賦販売・ローン提携販売・割賦購入あっせんのクーリング・オフ
b 信用供与をもってなされる契約誘引に対抗するもの。
借主が将来の返済能力を考慮せずに安易に契約を締結してしまうリスクを根拠とする。
わが国では、割賦販売等によるb のクーリング・オフを店舗外での契約締結に限定し、a と区別していない。しかし、今日、比較法的には、信用売買のクーリング・オフは店舗での契約締結でも認める国が多いことを考えると、a とは別のものと考えるべきである。
・新しい型のクーリング・オフ
その1:特定商取引法の特定継続的役務提供(エステ、外国語会話、学習教室など)のクーリング・オフ(8日間)
........................
c 当該消費者自身にとっての相性や有益性を判断させるためである。
長期間の、目的実現が不確実な役務提供で、その対価が高額(支払金額が5万円以上)であるときに認められる。契約締結への圧迫等が理由ではない(このクーリング・オフは店舗外の締結に限定されない)。
その2:一定の投資勧誘に認められるクーリング・オフ投資者自身の事業への投資を勧誘する場合
特定商取引法の連鎖販売取引(マルチ商法など)、業務提携誘引販売取引
(内職商法、モニター商法など)のクーリング・オフ
d 不確実な収益で誘引し、また、商品購入等の負担が大きいことを理由とする。商品等の指定はなく、店舗外の締結に限られない。期間が長い(2 0日間)のは、不意打ち性ではなくて、取引の複雑性と催眠状態での契約締結が理由だから。
他者の事業への投資を勧誘する場合
海外先物取引、現物まがい預託取引、商品投資契約、不動産特定共同事業契約、投資顧問契約、金融商品取引契約、特定預金等契約、特定信託契約などのクーリング・オフ(8~14日間)。
d 変動の大きな投資リスクであることと、事業の状況把握が一般人には難しいから。店舗外での締結を要件としない。
2.消費者契約の条項の無効――第2節
(1)事業者の損害賠償責任を免除する条項は無効 8条1項
債務不履行による損害賠償責任 1号、2号例:免責約款
不法行為による損害賠償責任 3号、4号例:
賠償責任全部を免除条項
賠償責任一部を免除条項 無効とするのは、故意又は重大な過失による場合のみ目的物の隠れた瑕疵による損害賠償責任を全部免除する条項 5号
一部免責条項は本号では無効にならない。しかし、10条で無効とされることがある。
代換責任、修補責任がある場合には、無効とならない。2項1号
他の事業者が代換責任、修補責任を負う場合には、無効とならない。2項1号
(2)消費者の損害賠償責任予定額の制限(一部無効) 9条
消費者契約の解除の場合に消費者が条項により負う損害賠償額・違約金が、同種の契約の同種の解除で事業者が負う平均的な損害額を超える部分 1号
消費者の金銭債務不履行の場合に消費者が条項により負う遅延損害金・違約金が、不履行の額の年14.6%を超える部分 2号
(3)消費者の利益を一方的に害する条項 10条
広く消費者の利益を一方的に害する条項を無効とする一般条項。
実際の裁判例は、建物賃貸借契約の原状回復条項、敷金引き条項、進学塾の受講料不払戻し条項、紛争が生じたときの合意管轄条項などである。
参照重要条文
民法
第90条(公序良俗)
公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。第91条(任意規定と異なる意思表示)
法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思に従う。
第95条(錯誤)
意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。
第96条(詐欺又は強迫)
詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。