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連載 第 198 回
らの解除の意思表示を受ける代理権を受任者に授与するものです。
※本契約における受任者を、以下「解除事務受任者」といいます。
残置物関係事務委託契約は、賃貸借契約の存続中に賃借人が死亡した場合に、賃貸物件内に残された動産
3 賃貸借期間中の対応
1.指定残置物の指定
①残置物の分類とそれぞれの取扱い
残置物(委任者が死亡した時点で本物件内、または
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残置物の処理等に関するモデル契約条項について
~手続きの流れに即した解説~
弁護士 xx xx
単身の高齢者である賃借人が相続人不明で死亡するなどのケースを想定した、賃貸借契約の終了や物件内の残置物の処理に関するモデル契約条項等が、国土交通省および法務省から公表されています。
本稿では、このモデル契約条項の概要と実際の取扱いにつき解説いたします。
賃貸借契約を終了させるための代理権を受任者に
類(残置物)の廃棄や指定された送付先への送付等の事務を受任者に委託するものです。
※本契約における受任者を、以下「残置物事務受任者」といいます。
2.受任者の選定
賃借人は、以下の順位に従い、受任者を選任します。
①賃借人の推定相続人
推定相続人を受任者とすることが困難な場合(所在不明・受任意思がない場合など)
その敷地内に存する動産および金銭)は、次の3つに分類され、それぞれにつき取り扱いが異なります。
指定残存物の3 つの分類
分 類 | 原則的な処理方法 | 対 象 | |
ア | 指定残置物 | 指定送付先に送付 | 賃借人が指定する動産(第三者の所有物を含む) |
イ | 非指定残置物 | 一定期間経過後廃棄 | 上記以外の動産(第三者の所有物は含まない) |
ウ | 金銭 | 相続人に送金 | 金銭(アイで換価した場合の代金を含む) |
1 モデル契約条項作成の趣旨等
1.モデル条項作成の趣旨
近時、賃貸用建物の所有者が単身の高齢者(60歳以上の者)に対して建物を賃貸することを躊躇し、そのために単身の高齢者が居住用物件を賃借しようとしても借りることができないという問題が生じています。これは、賃貸借契約の継続中に賃借人が死亡した場合に、相続人の有無や所在がわからなかったり、相続人との連絡がつかなかったりすると、賃貸借契約を終了させ、また物件内に残された動産(残置物)を処理することが困難になるというリスク(以下「残置物リスク」という)を賃貸人が感じていることが主な理由と考えられています。
そこで、残置物リスクを軽減することが、単身の高齢者が賃貸物件に入居する機会を拡大することにつながると考えられることから、国土交通省および法務省は、令和3年6月に残置物の処理等に関するモデル契約条項を公表しました。
2.モデル条項が対象とする賃貸借契約
モデル契約条項は、上記1の趣旨から60歳以上の単身高齢者が賃借人となるケースを対象として想定しています。
3.モデル契約条項の構成
モデル契約条項は、次の3つから構成されています。ア.解除関係事務委任契約に関するモデル条項
賃借人が賃貸借契約の存続中に死亡した場合に、
授与する委任契約の条項
イ.残置物関係事務委託契約に関するモデル条項 賃貸借契約の終了後に残置物を物件から搬出して廃棄する等の事務を委託する準委任の条項
ウ.賃貸借契約に設ける上記(準)委任契約に関連する条項
※ アとxは、同一の受任者との間で締結する場合には、その形式を 1通の契約書として差し支えありません。
※ 以下、3つのモデル条項を引用等する場合は、解除関係事務委任契約(上記ア)は「解除〇条」と、残置物関係事務委任契約(上記イ)は「残置物〇条」と、賃貸借契約に設ける条項(上記ウ)は「賃貸借〇条」と、それぞれ表記します。
4.本稿の指針
このモデル条項はコメントも詳細であり(実際のモデル条項は国土交通省HP参照)、なかなか全体像を把握することは困難です。そこで本稿では、このモデル条項を実際に使用した場合に、関係者(賃貸人・賃借人・受任者等)が具体的にどのようなことをしていくのかを、時系列に沿って説明しながら、モデル条項の概要や、実際の取扱いなどを確認いただくこととします。
2
解除関係事務委任契約および 残置物関係事務委託契約の締結
1.2 つの事務委任契約
①解除関係事務委任契約
解除関係事務委任契約は、賃貸借契約の存続中に賃借人が死亡した場合に、合意解除の代理権、賃貸人か
②居住支援法人・居住支援を行う社会福祉法人
③賃貸人から委託を受けて物件を管理している管理業者(賃貸人の利益を優先することなく、委任者である賃借人〔の相続人〕の利益のために誠実に対応する必要があります)
※なお、賃貸借契約の解除等をめぐって賃貸人と賃借人(の相続人)の利害が対立することがあり得ますので、賃貸人を受任者とすることは避けるべきであるとされているところです。
3.委任者死亡時通知先の確保
賃借人の相続人との間の紛争をできるだけ防ぐためには、残置物事務受任者が委任者である賃借人の死亡を知った場合に、相続人やそれに近い者にその旨および受任者の受任事務内容を通知することが大切と考えられます。
そこでモデル条項では、その通知の相手方として、
「委任者死亡時通知先」(残置物5条1項)を賃借人に指定してもらうことを想定しています。
4.契約の締結
モデル条項を使用し、賃借人と受任者との間で2つの事務委任契約を締結します。
※受任者が同一の場合には、2つの内容をまとめて1通の契約書としてもかまいません。
また、事務委任契約を前提とした賃貸借契約を締結する際には、賃貸借契約書に以下の条項を追記等しておきます。
①賃貸借契約期間中に事務委任契約が終了した場合の措置(賃貸借1 条)
②賃貸人の通知義務(賃貸借2 条)
②指定残置物の指定(残置物4条)
上記①のように、動産は指定残置物としての指定の有無によりアとイに区分されることから、廃棄しないで相続人等に相続させることを想定している動産や他の所有者の動産については、指定残置物として指定することが必要です。
指定残置物の指定の方法は次の2つのいずれかであり、委任者がいずれかの方法を選択します。
ア.指定残置物リストへの掲載
イ.指標を貼付するなど、当該動産が指定残置物であることを示す適宜な措置を講ずる方法
③指定残置物の送付先の決定とリスト等への記載
(残置物4 条)
指定残置物については送付先を明示しなければなりません。
・指定残置物リストに掲載 ⇒ 当該指定残置物リストに送付先を記載
・動産自体に指標を貼付 ⇒ 当該指標に送付先を記載
なお、賃借人が指定残置物の遺贈につき遺言執行者または遺言執行者の指定を第三者に委託しているときは、その者をその指定残置物の送付先としなければなりません。
2.受任者の変更
①新たな事務委任契約締結の努力義務(賃貸借1条)
賃貸借契約の存続中に事務委託契約が終了した場
合、賃借人は速やかに同内容の契約を新たに締結する
は、賃借人または賃借人の地位を承継したその相続人
換価して得られた代金は、賃借人の相続人に返還し
8. 費用の精算
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ように努める必要があります(賃貸借1条)。
②賃貸人への通知(賃貸借2 条)
従前の事務委任契約が終了し、新たな事務委任契約が締結された場合には、賃貸人が受任者を把握できるように、賃借人は賃貸人に対し、その旨を通知することが必要です。
③委任者死亡時通知先の変更(残置物5 条3 項)
賃借人は、いつでも委任者死亡時通知先を変更することができますが、この場合、賃借人が残置物事務受任者に対し、その旨を通知しなければなりません。
4 賃借人が死亡したときの対応
1.死亡事実の通知
賃貸人は、解除事務受任者に対し、賃借人の死亡の事実を通知します(賃貸借2条1項)。また、残置物事務受任者が委任者の死亡を知った場合には、ただちにその旨および受任事務内容を委任者死亡時通知先に通知します(残置物5条1項)。
2.解除事務受任者の義務(解除2 条)
解除事務受任者は、賃借人または賃借人の地位を承継したその相続人の意向(「子の○○が住みたいと言えば住ませてあげてほしい」などの、賃借人の生前の意向など)を考慮し、その利益のために委任事務を処理する必要があります。
3.賃貸借契約の解除
賃貸人と解除事務受任者は、合意により賃貸借契約を解除することができます。
また賃貸人は、賃借人に家賃の滞納等があった場合には、解除事務受任者に対し意思表示をすることにより、賃貸借契約を債務不履行解除することもできます。
これらにより賃貸借契約が終了した場合、賃貸人は、残置物事務受任者にその旨を通知します(賃貸借 2条2項)。
5 残置物の処理
1.残置物事務受任者の義務
残置物事務受任者が委任事務を処理するにあたって
の意向(相続人の一人による非指定残置物の一部の引取りの希望〔ただし形見分けのようなものに限定〕)を考慮し、その利益のために委任事務を処理する必要があります。
2.物件内への立ち入り(残置物9 条1 項・2 項)
(残置物事務受任者)
残置物事務受任者は、賃貸物件内に残置された物の廃棄等を行うため、賃貸物件への立ち入ることができます。賃貸物件の入口は施錠されているような場合には、賃貸人に協力(賃貸人が保有するマスターキーによるxxなど)を求めることができます。
3.残置物の状況の確認・記録
(残置物6 条3 項・7 条3 項)
本物件内にどのような動産があったか、その処分方法が適切であったかなどを巡って後日紛争が生ずることもあり得ることから、残置物事務受任者は、廃棄・送付・換価・保管のために搬出する前の残置物の状況を、第三者(相続人、委任者死亡時通知先などのほか、賃貸人や管理会社、仲介業者等でもかまいません)の立会いの下、確認・記録(写真撮影等)しておきます。
4.非指定残置物の廃棄等(残置物6 条)
①保管に適したもの(残置物6 条1 項本文)
非指定残置物のうち保管に適したものについては、賃借人の死亡から契約で定められた期間(モデル条項では3カ月)経過後に、委任者死亡時通知先に2週間前までに通知のうえ(残置物5条2項)、廃棄することになります。
なお、廃棄に着手するまでに相続人や利害関係者が非指定残置物の引き取りを希望した場合には、客観的な価値は小さいがその第三者が主観的価値を見いだしているものを社会通念の範囲内で交付することに限って(いわゆる形見分けのようなもの)、その者に対して交付することが可能です。
②価値等に照らし廃棄が適切でないと思われるもの(残置物6 条1 項但書)
非指定残置物のうち、その価値等に照らして廃棄す
ることが適切でないと思われるもの(たとえば高価な宝石や衣服など)を発見した場合には、委任者死亡時通知先に2週間前までに通知のうえ(残置物5条2項)、換価可能なものはできるだけ換価するよう努めます。
ます(残置物第8条)。
③保管に適しないもの(残置物6 条3 項)
非指定残置物のうち保管に適しないもの(食料品など)については、ただちに廃棄します。
5.指定残置物の送付(残置物7条)
①指定先への送付(残置物7条1項本文)
指定残置物で、指定残置物リスト等において第三者への送付が指定されているものについては、委任者死亡時通知先に2週間前までに通知のうえ(残置物5条 2項)、当該リスト等において指定された第三者に対し、残置物事務受任者が選択する方法(たとえば国内であれば郵便や宅配便、海外であればクーリエや国際宅配便などが考えられる)により送付します。
②指定先への送付が不可能又は困難な場合(残置物7 条1 項但書)
リスト等において指定された第三者に送付したとこ
ろ転居していて、転居先が判明しない場合には、賃借人の死亡後3カ月経過後で、かつ本賃貸借契約終了後に、以下の措置をとることができます。
・換価可能な場合 ⇒ 換価(代金は相続人に返還)
・換価が不可能または困難な場合 ⇒ 廃棄
6. 金銭の相続人への返還(残置物8 条)(受任者)
本物件内に残されていた金銭は指定残置物にも非指定残置物にも該当しないことから、賃借人の相続人に返還します。相続人の存否や所在が明らかでなく、残置物事務受任者がこれを過失なく知ることができないときは、供託することになります。
7. 残置物の移動・一時的な保管(残置物9 条3 項)
画
説
解
動
残置物事務受任者は、委任者死亡時通知先に2週間前までに通知のうえ(残置物5条2項)、残置物を本物件またはその敷地から搬出し、別の場所(倉庫やトランクルームなど)に保管することもできます。
本契約に基づく委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、賃借人の相続人に対し、その費用およびその支出の日以後における利息の償還を請求できます(残置物10条1項)。
また、上記費用は、賃貸人が残置物事務受任者に対し第三者弁済したうえで、当該求償権の額を賃貸借契約上の敷金から差し引くことも可能です。
6 事務委任契約の終了
解除関係事務委任契約が終了するのは、賃貸借契約が終了した場合と、受任者が委任者(賃借人)の死亡を知ってから一定期間の間に賃貸借契約の解除がされない場合です(解除3条)。
また、残置物関係事務委託契約が終了するのは、賃貸借契約が終了したときに賃借人が死亡していない場合と、解除関係事務委任契約が終了するまでの一定期間の間に賃貸借契約の解除がされない場合です(残置物11条)。
7 まとめ
以上、残置物処理モデル条項を使用した場合の実際の流れに即して、モデル条項で定めている内容を解説してきました。モデル条項はコメントを含めかなり詳細に規定・記載されており、なかなかその内容を読み解くことは難しいかもしれませんが、実際にこれを使用した場合、以上のような流れに従い、契約の終了および残置物の処理をすることができます。
一人暮らしの高齢者の方に賃貸住宅を提供するにあたり、あらかじめ相続人が連帯保証人等になれないようなケースでは、このようなモデル条項を積極的に活用することが期待されます。
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