神戸市垂水区海岸通地先から東舞子町地先に至る約 800m
神 監 1 第 467 号
平成 24 年 10 月 18 日
A 様 | ||||
神戸市監査委員 | x | x | x | x |
x | x | x | x | x |
同 | x | x | x | x |
同 | x | x | x | x |
アジュールxx内施設の賃貸借契約に関する住民監査請求の監査結果について (通知)
平成 24 年 8 月 22 日に提出されました標記の住民監査請求について,地方自治法第 242 条第4項の規定により監査した結果を次のとおり通知します。
平成 24 年8月 22 日に提出された措置請求書によると請求の要旨は次のとおりと解される。
神戸市は,アジュールxx地区内に所有する西側利便施設用地( 神戸市xx区海岸通,地積 9,199.05 ㎡,以下「当該用地」という。)を株式会社ホロニック(以下「ホロニック」という。) に賃貸し, ホロニックは,当該用地上に鉄骨造コンクリート屋根3階建,延床面積約 5,300 ㎡の建物(以下「当該建物」という。)を所有し,温水ウォーキングプール
(以下,「当該温水プール」という。)やレストラン, ホテルを運営してきたが,平成 23年8月 23 日,xxxxxは当該温水プールの営業を同年 10 月 31 日をもって終了するとの通知を利用会員に送り,営業を終了した。
ホロニックとの土地賃貸借契約の締結は,平成 16 年 12 月 15 日に議会に提出した和解議案に基づいて作成された和解調書(被告人は当該ホテルを建築した建設会社X(建物所有者), 利害関係人はホロニック)に基づいた契約である。土地賃貸借契約の目的を変更する今回の和解条項の変更は,昭和 43 年2月 29 日神戸地裁判決や昭和 26 年 11 月 15 日行政実例(請求書の表記は,行政通達)をみても,再議決の必要があると考えるが,神戸市はこれに付していない。
営業終了に先立ちホロニックは,平成 23 年3月2日に神戸市に当該プール廃止の意向
を口頭で示し,その後同月 14 日に文書「増改築のお願い」を提出し,これを受けて神戸
市は同月 31 日に「承諾書」を出しているが,当該用地の賃貸借契約書には使用目的として当該温水プールが明記されているにもかかわらず,変更契約書を作成していない。またホロニックが提出した「増改築のお願い」には当該温水プールの閉鎖は明記されておらず,神戸市の「承諾書」には「改修する施設の内容は,市民及び利用者に対して不利益となることが無いよう留意すること。」とあるが,プール閉鎖ほど利用者に不利益になることはない。このようなことから,xxxxxが変更契約書作成以前に利用会員に営業終了を通知する行為は契約違反である。
また,アジュールxx西地区の土地賃貸借契約に関しては,平成9年のアジュールxx施設オープン時には,土地賃貸料は月額 500 円/㎡であったものを,平成 16 年度のホロニ
ックとの土地賃貸借契約にあたっては月額 300 円/㎡に軽減して実質的に助成する政策をとった。これは神戸市が議会で実勢価格と言明しているが,当該温水プールを含む福祉施設としての特別な実勢価格を意味している。ホロニックが当該温水プールを運営しないのであれば,土地賃貸借契約書の使用目的の更改と共に地代を更新しなければならない。
よって次のとおり必要な措置を講ずるよう求める。
( 1) ホロニックから当該温水プールの閉鎖が口頭で持ち出されたとき,神戸市担当者は,使用目的は変更できない点や市議会への報告の必要性(和解調書に「賃借人は本件土地の使用目的を変更するとができない」という記載のある点や,議決された和解の議案に記載・説明された内容に齟齬を来たす点)に正しい方針を示しながら,なぜその後豹変
(あまりにも性急に事務的に,ホロニックからの増改築についてのお願いとそれに対す
る市の増改築承諾書だけで処理)したのか調査し明らかにされたい。
(2)神戸市はホロニックに対し,施設の改造計画を中止し当該温水プールを再開・継続するよう要求すること。
(3)ホロニックが再開・継続に同意しないならば,神戸市は当該契約を破棄し,当該温水プールを買い取り,神戸市の責任で再開すること。
(4)神戸市は,ホロニックに対し当該契約書第 18 条による 24 か月分契約違約金を請求すること。
(5)神戸市は,平成 23 年 11 月1日に遡って,地代を軽減した当該契約を取り止め,ア
ジュールxxオープン時の地代 500 円/㎡で契約更新すること。
理 x
1 当該温水プールの閉鎖は,当該契約の前提となった和解条項の変更であり,再議決が必要と考えられるがこれに付さない神戸市の手続きは地方自治法違反である。
2 当該温水プールの閉鎖は,当該契約の変更問題として措置すべきであったにも拘わらず,単なる増改築問題として扱った。当該契約の更改を行わず放置している。また,xxxxxは当該契約書の更改のないまま営業終了通知を利用会員に送付しており契約違反である。
3 当該温水プールを運営することで福祉施設としての地代が設定されていたのに,当該温水プール閉鎖後賃料更新を行わず放置している。
第2 監査の実施
1 監査の対象
(1)住民監査請求の対象となる財務会計上の行為等については,監査請求書及びこれに 添付された事実を証する書類の各記載,監査請求人が提出したその他の資料等を総合 すれば,監査委員において住民監査請求の対象の特定のために調査を要することなく,当該請求において具体的にいかなる財務会計上の行為等が問題とされているかを理 解することができ,当該行為等について違法・不当を判断するだけでよい程度まで特 定されていることが求められる。
監査委員が監査を実施するために,その対象を選択しなければならないようなものや,監査委員が住民監査請求の対象を探索しなければ,監査を実施することができないようなものは,請求の特定を欠くものとして不適法である。(同趣旨:平成2年6月5日最高裁判決,平成 16 年 11 月 25 日最高裁判決)
この点,請求人は,この土地賃貸借契約の前提とする和解に関して措置請求書の資料1で「第 82 号議案要約(平成 16 年 12 月 15 日)」「和解調書要約(平成 16 年 12月 24 日)」と記述しているので,これらの和解調書,議案議決の取扱は,違法・不当で,それにより神戸市に損害が発生しているか否かを監査の対象とする。
このほか,請求人は,措置請求書において,ホロニックとの土地賃貸借契約について,本文では「平成 16 年,神戸市はホロニックとの賃貸借契約に当って」と記述し
ているが資料1で「土地賃貸借xx証書要約 平成 17 年2月8日」と記述して関係 条文を抜粋するとともに,契約に関する事実証明書として平成 23 年3月 31 日xx公管第 762 号付けで株式会社ホロニック代表取締役に対して発出された神戸市長の「建物増改築承諾書」などを添付しているので,当該温水プールの閉鎖に関する契約手続は違法・不当でそれにより神戸市に損害が発生しているか否かを監査の対象とする。さらに,土地賃貸料月額に関して請求人は,措置請求書の資料1で「建設委員会で
のxx建設局長の説明(平成 16 年 12 月 16 日)」として,賃料月額を 2,759,715 円と
引用し,事実証明書として添付した平成 22 年 12 月8日付け神戸市とホロニックとの
先述の土地賃貸借契約の変更契約書(期間の改定)記載の目録の面積を 9,199.05 ㎡
と引用している。引用された賃料月額を面積で除すと 300 円/㎡となっているので,この地代が福祉施設としての設定かどうか,当該温水プールの閉鎖後,賃料更新を行わないことが違法・不当で,それにより神戸市に損害が発生しているか否かを監査の対象とする。
加えて,請求人は求める措置として,神戸市はホロニックに対し,施設の改造計画を中止し当該温水プールを再開・継続するよう要求することを挙げているが,これについては上記の監査の結果,是正の措置が必要か否かが判断されるものである。
なお,地方自治法第 242 条第2項は,住民監査請求は,「当該行為のあった日又は
終わった日から 1 年を経過したときは,これをすることができない。ただし,正当な理由があるときは,この限りでない。」と規定している。
請求人は,措置請求書で平成 23 年8月 23 日付けのホロニックの営業終了通知で初
めて当該温水プールの閉鎖を知ったと記述しており本件措置請求は平成 24 年8月 22日に提出されていることから,これらについては監査の対象とする。
(2)なお,請求人の求める措置の中には,当該温水プールを買い取り,神戸市の責任で再開することを求める事項もあるが,住民監査請求は,住民に対し,当該普通地方公共団体の執行機関又は職員による一定の具体的な財務会計上の行為又は怠る事実に限って,その監査と非違の防止,是正の措置とを監査委員に請求する権能を認めたものであって,普通地方公共団体の事務全般を監督する制度ではないため,一般的な施策の実行を求める当該主張については監査の対象外とする。
2 監査の実施
建設局公園砂防部の関係職員から事情聴取を実施したほか,関係書類等について監査を実施した。
請求人に対しては,地方自治法第 242 条第6項の規定に基づき,平成 24 年9月 27日に陳述の機会を設けた。なお新たな証拠の提出はなかった。
第3 監査の結果
1 事実の確認
以下,(1)と(2)は平成9年8月「神戸・舞子海岸東地区利便施設提案競技」(公募のxxx)による。
(1)舞子海岸整備事業(概要)について
① 位 置
xxxxxxxxxxxからxxx町地先に至る約 800m
② 目 的
「海岸防災機能の向上」と「ふれあいの海辺づくり」を目的に,xxxxの海浜に復元し,海水浴やxx海峡xxのxxな景観を楽しめる海洋性レクリエーションゾーンを創出する。
③ 規 模
・公有水面埋立地 約 11.3ha
公園緑地等 8.1ha(緑地,駐車場,地区内道路等)
利便施設用地 3.2ha(飲食・物販施設,スポーツ・レクリエーション施設等)
・内水面 約 5.0ha(最大幅 幅約 100m)
・養浜 約 4.5ha(砂浜,幅約 60m)
④ 整備方針(略)
⑤ 事業主体
埋立造成事業 ・・・・・・神戸市
海岸保全施設整備事業・・・建設省及び神戸市公園緑地・・・・・・・・・神戸市
利便施設・・・・・・・・・民間事業者
⑥ 事業スケジュール(略)
(2)神戸・舞子海岸東地区利便施設提案競技
アジュールxxは,「地域の自然や特性を生かしながら,様々な機能を備えた海洋性レクリエーションの場として整備し,人々が気楽に海と親しみ,集い,憩える海浜空間を創出する CCZ(コースタル・コミュニティ・ゾーン)事業」により形成された。
当地を利用する方々の利便に供するための施設を設けることとしたが,この利便施設について,民間のノウハウを導入することとし,施設の建設・運営・管理を行う事業者を,平成9年8月に事業コンペを実施して公募した。
① 主催者神戸市
② 提案競技の対象
所在地 神戸市xx区海岸通地先からxxx町地先
対象面積 全体面積 約 3.2ha のうち今回の募集応募対象西側施設用地・・・約 9,200 ㎡
提案内容 上部施設の建設,管理及び運営を含む具体的な事業計画とする。
③ 土地使用方式
契約方法は,事業用定期借地権(存続期間 10 年)による貸付とする。
貸付期間満了をもって当該貸付地を原状回復のうえ,神戸市に返還するものとする。
ただし,神戸市が承認した場合はこの限りではない。
④ 土地賃貸借契約条件
土地賃貸料単価は,月額 500 円/㎡とする。
賃貸料は,年 2 回払いとし,神戸市長が定める期日までに支払うものとする。なお,賃貸料は,社会経済情勢の変動等を考慮して,不相応と認められる場合
には見直しを行うものとする。以下略
⑤ 建築要綱
・整備施設の基本コンセプト
「海辺の新しいまち,潮騒のまち」を基本テーマに「新・生活発見・・・・宴,遊,食」をコンセプトとすること。
・施設内容
民間による提案内容に自由度を大きく持たせた
「施設内容が基本コンセプトの趣旨にふさわしいこと」や「当該地の利用者のサービス機能をもたせること」,「レクリエーションゾーンに相応しいこと」
「飲食施設,健康スポーツ施設,低層商業施設等を基本とするが,利用者の利便を図る施設の範疇であれば,他の施設を計画しても良い」等
(3)和解調書
平成 16 年 12 月 15 日に市議会に提出され議決された議案に基づき,平成 16 年
12 月 24 日に神戸地方裁判所で成立した和解の調書の概要は次のとおりである。
① 和解当事者
原告 神戸市
被告 建設会社X(建物所有者)利害関係人 ホロニック
② 和解条項
(第1項)被告は,原告に対し,本件建物(当該建物を指す。以下同様。) が被告の所有であること及び本件土地(当該用地を指す。以下同様。)につき何ら占有権原を有しないことを認め,平成 17 年2月 10 日限り,本件建物を収去して本件土地を明け渡す。
(第2項)被告は,原告に対し,本件土地の占有に係る損害金として,平成 16 年 12
月 24 日から平成 17 年2月 10 日まで1か月金 2,759,715 円の割合による金員を,平成 17 年2月 10 日限り,原告代理人方事務所に持参又は送金して支払う。
(第3項)被告は,平成 17 年1月 20 日限り,本件建物を,利害関係人に譲渡し,利害関係人はこれを譲受する。原告は,被告が本件建物につき利害関係人に所有権を譲渡することを承認する。
(第4項)原告は,利害関係人に対し,以下の条件を骨子として,本件土地を賃貸する。
①賃借権の種類 事業用借地権
②賃借の目的 本件建物の所有並びに本件建物での飲食,温水ウォーキングプール(歩行浴),宿泊及びそれに関連する事業
③賃貸借の期限 賃借xxxの日から 15 年間
④賃料 月額 2,759,715 円
⑤保証金 33,116,580 円
⑥特約(抜粋)
事業用定期土地賃貸借契約xx証書が作成されることを契約効力発生の条件とする。
賃借人は本件土地の使用目的を変更することはできない。
賃借人は本件事業用定期土地賃貸借契約xx証書作成後 100 日以内に営業を開始しなければならない。
賃借人が営業を開始しない場合,本件建物を収去して本件土地を明け渡すと共に,本件建物の所有権取得後はその収去及び土地の明渡しにxxxまで,1か月金 8,279,145 円の割合による損害金を支払う。
賃借人において賃料の支払につき支払期限より3か月以上遅れたとき,賃貸人は,何らの通知・催告なしに賃貸借契約を解除できる。賃借人は,本件土地の賃貸借契約が解除された場合,原告に対し,直ちに,本件建物を収去して本件土地を明け渡し,かつ,1か月金 8,279,145 円の割合による損害金を支払う。
(第5項)略
(第6項)平成 17 年2月 10 日までに,被告において本件建物の所有権を利害関係人に移転登記せず,原告と利害関係人との間において第4項の事業用定期土地賃貸借契約が成立せず,保証金及び当初の賃料が納付されない場合,被告及び利害関係人は,原告に対し,直ちに,本件建物を収去して本件土地を明け渡し,かつ,連帯して平成 17 年2月 11 日から明渡済みまで1か月金 8,279,145 円の割合による損害金を,原告代理人方事務所に持参又は送金して支払う。
(第7項)原告及び利害関係人は,第4項によって締結された事業用定期土地賃貸借契約については,誠意を持って履行するものとし,各条項に違反した場合は,契約書の各条項に定めるとおり対応するものとする。利害関係人は,第4項によって締結された事業用定期土地賃貸借契約による賃料の支払を支払期限より3か月以上遅れ,原告より,本件事業用定期土地賃貸借契約を解除された場合,原告に対し,直ちに,本件建物を収去して本件土地を明け渡し,且つ,1か月金 8,279,145 円の割合による損害金を支払う。
(第8項以下 略)
(4)土地賃貸借契約
本契約は,上記の和解条項第4項に基づき,借地借家法第 24 条に規定する事業用借地権を設定するものでxx証書により締結されており,その概要は以下のとおりである。
① | 賃貸人・代表者 | 神戸市・市長 |
賃借人・代表者 | 株式会社ホロニック・代表取締役 | |
② | 契約締結日 | 平成 17 年2月8日 |
(変更契約日平成 22 年 12 月8日) | ||
③ | 契約期間 | 平成 17 年2月8日から平成 32 年2月7日まで |
(変更契約後平成 37 年2月7日まで) |
④ 目的(第1条)
本件土地(当該用地を指す。以下同様。)について,借地借家法第 24 条に規定する事業用借地権を設定する。
⑤ 使用目的(第2条)
本件土地を専ら飲食,温水ウォーキングプール(歩行浴),宿泊等の事業の用に供する建物を所有するため使用するものとし,居住の用に供する建物を建築してはならない。
(第2項 略)
⑥ 賃料(第5条) 月額 2,759,715 円。
⑦ 事前承諾事項(第9条)
賃借人は次の各号の一に該当する行為をしようとするときは,あらかじめ賃貸人に書面による承諾を得なければならない。
(第1号)別紙目録2に定める建物(当該建物を指す。)につき,当初の改修工事以降に増改築又は再築をしようとするとき,第2条に定める使用目的の変更をしようとするとき,もしくは法令上の規則等により変更が必要となったとき。
(第2号)別紙目録2に定める事業内容等(構造(略),規模(略),事業内容(レストラン, ホテル,温水ウォーキングプール(歩行浴),別棟店舗)を変更しようとするとき。
(第3号)本件土地の区画形質を変更しようとするとき。
⑧ 違約金(第 18 条)
賃借人は,第2条(使用目的),第9条(事前承諾事項),第 10 条(遵守事項),
第 11 条(譲渡,転貸の禁止)の規定に違反したときは,違約金として月額賃料の
24 か月分に相当する金額を,賃貸人の指定する期限までに,納入通知書により納付して支払う。
(第2項,第3項 略)
⑨ 本契約の解除(第 20 条)
賃貸人は,賃借人が次の各号の一に該当するときは,催告することなしに本契約を解除することができる。
(第1号)賃借人が,第4条第2項の規定に反し,本契約締結後 100 日以内に営業を開始しないとき。
(第2号)賃料の支払が,第6条で規定する支払期限より3ヶ月以上遅れたとき。 (第3号)賃借人が,第2条(使用目的),第9条(事前承諾事項),第 10 条(遵守事
項),第 11 条(譲渡,転貸の禁止)又は第 13 条(保全義務)の規定に違反したとき。 (第4号)賃借人が,主務官庁から営業又は免許について取消又は停止の処分を受
けたとき。
(第5号)賃借人が,破産,清算,会社整理,会社更生,民事再生開始の申立てを自ら行い,もしくは申立を受けたとき,手形交換所の取引停止処分等を受けたとき又は賃借人の経営状態が債務超過の状態にあり,好転の見通しが立たないと賃貸人が判断したとき。
(第6号)賃借人又は賃借人の使用人が,賃貸人の信頼を失墜し,もしくは秩序を
害すると認められる行為をし,その他著しく不当な行為があったとき。
(第7号)営業内容,信用状態等の重要な事項に関し,賃借人の事前の説明に虚偽があったとき。
(第8号)その他賃借人又は賃借人の使用人に,本契約が継続しがたい重大な背信行為があったとき。
(5)「ホテル内施設の増改築についてのお願い」について
① | 申請年月日 | 平成 23 年3月 14 日 |
② | 申請者 | 株式会社ホロニック代表取締役名 |
③ | 増改築の場所 | 温水ウォーキングプール(歩行浴)施設全般 |
④ | 工事予定時期・期間 |
平成 23 年 12 月1日から平成 24 年2月 28 日をめどに施行工事期間中は,一部施設利用を休業する。
⑤ 増改築の内容
平成9年8月「神戸・舞子海岸東地区利便施設提案競技」の施設要綱に準じ,
「健康スポーツ施設」として改築する。
今回の増改築の概要については,次のとおり
・地域住民向け多目的・多機能的施設としての再リニューアル
(アスレチックスポーツ・ウォーキングコース・ヨガ・フリースペース等)
⑥ 増改築の理由
プール運営によるエネルギーコスト(水道光熱関連費用),が非常に高く,年間プール施設での収支での損失が 20,000 千円程度となっている。
暫時改修工事を行いながら運営しているため,いずれ大掛かりな改修が必要となる。
ウォーキングプールとしての特定利用目的(リハビリ,湯治等)の傾向の強い施設であるため,特定・限定的な利用者が主である。
より多くの近隣地域住民に利用してもらうために,より多目的を持たせた施設運営が不可欠である。
⑦ その他
現在の会員への対応については,次のとおりとする。
・内容告知は各会員にスタッフが対応し,説明する。
・現在のプール内のウォーキングにて比較的利用の多い足腰を鍛える・リハビリするなどの使用については,ウォーキングコースを残存させることで継続して利用可能とする。
(6)建物増改築承諾書について
① | 承諾日 | 平成 23 年3月 31 日(xx公管第 762 号) (同日建設局長専決) |
② | 承諾者名 | 神戸市長(株式会社ホロニック代表取締役あて) |
③ | 承諾条件 |
(第1号)改修にあたっては「神戸・舞子海岸東地区利便施設提案競技」の建設要綱に留意し,施設建築条件及び施設計画条件に則った施設として改装すること。
(第2号)改修する施設の内容は,市民及び利用者に対して不利益となることがない
よう留意すること。
(第3号)施工前には必ず実施計画等を提出すること,また,施工にあたっては,関係法令等を遵守することはもちろん,関係行政機関に対して遺漏無く許認可申請等を行うこと。さらに,周辺住民等に対しては事前に計画・工事内容の説明を行うとともに周辺環境対策等についても,事業者の責任において適切に処理すること。
(第4号)施工に当っては,周辺の安全確保に十分配慮すること,また,工事期間中の工事用車両等については,アジュールxx西側利便施設の敷地内又は公共駐車場等に駐車することとし,周辺道路への違法駐車は厳に慎むこと。
(第5号)アジュールxxの夜間閉園に関し,平成 16 年 12 月 24 日付で締結した「アジュールxx西側施設に関する基本協定書」第7条第3項に基づき,本件改修にあたっては,夜間(23 時から翌6時)の砂浜への立ち入りを禁止するための措置を施すものとし,その方法については本市(神戸市を指す。)及び財団法人神戸市公園緑化協会と十分協議して対応すること。
(第6号)施工が完了したときは,記録写真を添付して完了届を提出すること。
(7)神戸市の不動産貸付料算定基準と本件に関する賃料算定経過
借地借家法の適用を受ける貸付物件に関して一律に適用する貸付料基準はないことから,本件に関する土地の賃貸料の算定にあたっては,以下のように,一時貸付の算定基準を準用している。
① 平成9年度の土地賃貸借契約に関係する基準
・土地貸付料月額=固定資産評価見込額(以下「価格」という。) ×5/1000×面積
・ただし,土地の価格は
① 当該年度の価格が平成 5 年度価格の 5 倍以下の場合
当該年度の価格は,平成 5 年度価格×1.1(当該年度数-5)とする。
② 当該年度の価格が平成 5 年度の価格の 5 倍を超える場合
当該年度の価格は,平成 5 年度価格×1.15(当該年度数-5)とする。
③ ①,②により求められた価格が当該年度の固定資産評価見込額を超える場合(略)
監査注釈:「(当該年度数-5)」は,乗数である。
(平成9年度賃貸料参考値)
評価見込額(xxx地区整備事業公有水面埋立地 113,221.86 ㎡)
(平成9年6月 18 日付け垂市市第 3064 号の2 xxxx発)平成9年度 26,041,027,800 円≦平成5年度 7,104,931,236 円×5
また, 26,041,027,800 円>7,104,931,236 円×(1.1)4 であるから
7,104,931,236 円×(1.1)4×5/1000÷113,221.86 ㎡=459.38 円/㎡
② 平成 16 年度の土地賃貸借契約に関係する基準
1 普通財産の貸付料算定における貸付基準価格については 土地貸付料月額=固定資産評価見込額×0.6×5/1000×面積
2 平成 16 年度貸付料算定上の指針
(1)平成 16 年度からの新規貸付物件
「16 年度の固定資産評価見込額×0.6」を時価等として算出した額とする。
3 留意事項
(4)本基準は(中略)借地借家法(旧借地法を含む)の適用を受ける貸付物件には適用しない。
(平成 16 年度賃貸料参考値)
評価見込額(当該用地 9,199.05 ㎡)
(平成 16 年9月6日神垂ま市第 5149-1 号 xxxx発)
平成 16 年度 867,621,279 円×0.6×5/1000÷9,199.05 ㎡=282.95 円/㎡
以上の各基準は,平成6年3月 11 日理用第 826 号「神戸市不動産貸付料算定基準
の一部改正について(通知)」並びに平成 16 年 3 月 1 日行財管第 806 号「許可使用料及び貸付料の算定における時価等について(通知)」より。
2 当局の説明
建設局からは,次のとおり説明があった。
(1)和解調書において土地使用の目的を変更することができないと記載されているが,当該温水プールが廃止されたことの違法性について
・ 法律上の考え方ということで言えば,平成 16 年の和解は,当該建物を,権限によらずに本市所有土地上に有する(土地を占有する)建築会社に対して,建物撤去と土地明け渡しを求める訴訟を,あくまでその時点において,和解によって終結させることの合意となっている。
・ 和解調書の内容は,和解調書を作成するまでの紛争に関して当事者が合意をするものとなっており,和解以降に生じた紛争や事情までを拘束するものではない。
・ 従って,和解成立後,本市と利害関係人であるxxxxxが,和解の内容に沿った土地賃貸借契約を行うこととなるが,当事者双方が和解以降の合意内容で契約を締結することも妨げられないこととなる。
・ 建物を所有し,最長 20 年もの長期にわたり事業を行う事業用定期借地契約では,その間に生じる事情変更に対応することが求められることも事実であり,契約書中にもあらかじめ土地の使用目的を変更する手続きを定めているものである。
(2)和解調書が議会の議決を経ているが,本件は再議決を要しないとすることについて
・ 昭和 26 年 11 月 15 日の行政実例は,議会の議決により契約を締結することが法定されている工事請負契約に関し,契約の内容を議会の議決を経ずに変更できるかという点に関するものである。
・ 和解に関しては,地方自治法第 96 条第1項第 12 号で議会の議決事項として法定さ
れているが,法律上の考え方ということで言えば,平成 16 年の和解に関する第 82号議案は,本件建物を権限によらずに本市所有土地上に有する建築会社に対して建物撤去と土地明け渡しを求める訴訟を,あくまでその時点において,和解によって終結させること,これの可否を議会にお諮りしたものとなる。
・ 議会の議決の対象が,「契約を締結すること」である行政実例と,議決の対象が「和解の可否」である本件では事例が異なっており,和解の議決は,その後の事情の変化による将来における変更について法的拘束力を持つものではなく,将来の時点で
変更するに際しては,再議決は要しないということになるものと考えている。
(3)当該温水プールの閉鎖の経緯
・ 平成 23 年3月2日にホロニックの担当者が来庁し,プール事業についてはコストがかかっているので(年間 2,000 万円の赤字)やめてアスレチッククラブ等に転用したいとの相談があり,神戸市が書面による承諾を行った場合は可能であると説明。
・ 平成 23 年3月 14 日,ホロニックから神戸市長あて「ホテル内施設の増改築についてのお願い」を提出。
・ 平成 23 年3月 31 日,神戸市からホロニックへ「建物増改築承諾書」を条件を付して交付。
・ 平成 23 年8月 23 日,ホロニックから会員に対して「営業終了のお知らせ」を送付。
・ 平成 23 年9月4・5日,ホロニックから利用者への説明会を実施。
・ 平成 23 年 10 月6日,ホロニックから利用者への第2回説明会を実施。
・ 平成 23 年 10 月 28 日,ホロニックから利用者への第3回説明会を実施。
・ 平成 23 年 10 月 31 日,温水ウォーキングプールが閉鎖された。
① 「増改築のお願い」には,温水ウォーキングプール閉鎖は明記されていないことについて
・ 土地賃貸借契約書第 9 条には,本市に対する申し出の様式について定めがないところであるが,ホロニックから提出された「増改築のお願い」には「温水ウォーキングプール閉鎖」という文言自体はないものの,「1.増改築の場所」として「温水ウォーキングプール(歩行浴)施設全般」をあげ,「3.増改築の内容」で「新たな健康スポーツ施設(地域住民向け多目的・多機能的施設(アスレチックスポーツ・ウォーキングコース・ヨガ・フリースペース等))に再リニューアルする」となっており,温水ウォーキングプールを他の「健康スポーツ施設」に転換することは明確になっている。
・ また,温水ウォーキングプールの閉鎖に関しては,xxxxxの担当者からの相談や,「増改築のお願い」を受け取る際に内容についての説明を受けており,温水ウォーキングプールの閉鎖に関して,当事者間の意識に齟齬は生じていない。
・ 本市としては,温水ウォーキングプールを廃止して別の健康スポーツ施設に再リニューアルすることは,「使用目的の変更」及び「施設の増改築」にあたることから,土地賃貸借契約書第 9 条の規定に基づき,平成 23 年 3 月 31 日付けの公文書として「建物増改築承諾書」を交付したものである。
② 承諾条件とした,xxxxxの利用者への説明について把握している状況
・ 温水ウォーキングプール廃止に伴う手続きとして,土地賃貸借契約書上には利用者への説明等を具体的に定めた規定はないが,本市が,平成 23 年3月 31 日にホロニックに交付した「建物増改築承諾書」では,「周辺住民に対して事前に計画・工事内容を事業者の責任において適切に行うこと」についても承諾の条件とした。
・ これを受けて,xxxxxは温水ウォーキングプールの会員全てへ送付した,ダイレクトメール(「ウェルネス&スパ シエスタ」営業終了のお知らせ)において説明会を実施するとの案内を行い,平成 23 年9月4日及び5日の2日間にわたって,プール利用者である会員に対して事業者が行っている。その後,同社からは,
2日間で延べ 122 名(9月4日:74 名,9月5日:58 名,2日間とも出席された人もいた様子)の出席があったとの報告をもらっている。
・ 説明会は 10 月6日および 28 日にも開催され,その上で 10 月末でプールが閉鎖されたものである。
・ ただ,その後も,利用者の求めに応じて,11 月から今年2月にかけてホロニックと利用者代表(5名)が,プールの再開に向けた話し合いを行い,テナントになる企業を探したが,最終的には条件面やリスク面の問題があり,実現できなかったと聞いている。
③ 承諾条件とした,改修する施設の内容は,市民及び利用者に対して不利益となることが無いよう留意することについて
・ この承諾条件は,プールが廃止されることを前提に付した条件であるから,改装後の施設において,利用者の利便を確保するために付した条件であることは明らかである。温水プールが廃止されること自体については,その対象とはならない。
・ なお,事業者は,近郊において水中ウォーキングが可能なスポーツ施設を含め,入会金の特典を用意しながら複数のスポーツ施設を斡旋するなどの配慮をしている。
(4)当該温水プールの閉鎖に関する土地賃貸借契約書上の手続きについて
・ 土地賃貸借契約書第 2 条は,土地の使用目的に関し「本件土地を専ら飲食,温水ウォーキングプール(歩行浴),宿泊等の事業の用に供する建物を所有するため使用するものとし,居住の用に供する建物を建築してはならない」と定めており,温水ウォーキングプールの廃止は使用目的の変更に当たる内容となっている。
・ 一方,同時に第9条では事前に本市の書面による承諾を得なければならない行為として,建物の増改築・再築や第2条に定める使用目的の変更等を定めており,使用目的の変更も可能な契約書となっている。
・ ホロニックは本市に対して「増改築のお願い」という形の書類を提出したが,これは,温水ウォーキングプールを別の健康スポーツ施設として再リニューアルするために,ホテル内の施設の増改築を行うことについて,本市の書面による承諾を得ようとしたものであり,内容的には「建物の増改築」と「使用目的の変更」について合わせて承諾を求めたものとなっている。
・ この願い出に対し, 本市は土地賃貸借契約書に定める手続きに従い,「増改築承諾書」を交付したものであり,当事者間における合意を書面で行っていることから,土地賃貸借契約書第2条にいう使用目的の変更は有効に行われている。
・ 契約の内容は有効に変更されていることから,請求人の言う「ホロニックが会員に営業終了を通知することは契約違反であり,違約金を請求すべきだ」という主張は当たらないと考えている。
(5)ホロニックとの土地賃貸料月額について平成9年のアジュールxxオープン時の土地賃貸料月額 500 円/㎡を平成 16 年度月額 300 円/㎡に改定した根拠及び理由
・ アジュールxxの利便施設について,民間のノウハウを導入することとし,「飲食施設」「健康スポーツ施設」「低層商業施設」等を基本の公募条件として,平成9年8月に事業コンペを実施した。
・ その結果,温水ウォーキングプールやレストラン等を備えたホテルの提案が採用され,施設の運営者との間に,平成 10 年1月に土地賃貸借契約を締結したが,単価については,その時点で本市(神戸市を指す。以下同じ。)の賃料算定基準に基づいて算定し,㎡当たり月額 500 円としたものである。
・その後,事業者が倒産したことからホロニックに契約相手方が変更になったが,当該 地の位置づけを本市として利便施設用地から変更したことはなく,また事業者も従前 の利便施設としての事業を継続しており,福祉施設への用途変更をしたものではない。
・土地賃料の改定は,契約相手方が変わったことから行ったものであり, その単価は,本契約時点での本市の賃料算定基準に基づいて算定を行ったものである。
・これらのことから,温水ウォーキングプール事業を廃止し,運営しないことを理由とした地代変更は必要が無いと考えている
3 判 断
請求人の主張について,前記事実関係の確認,建設局公園砂防部の説明及び関係資料の調査に基づき,次のように判断する。
理 由 1 「当該温水プールの閉鎖は,当該契約の前提となった和解条項の変更であり,再議決が必要と考えられるがこれに付さない神戸市の手続きは地方自治法違反である。」について
ホロニックとの土地賃貸借契約の前提となった,平成 16 年 12 月 24 日に神戸地方裁判所で成立した和解調書は,原告である神戸市が当該用地上に当該温水プールを含む当該建物を建設した被告である建設会社Xに対し,当該建物が被告の所有であること及び当該用地について何ら占有権限を有しないことを認め,当該建物を収去して当該用地を明け渡すことを求めた訴訟を終結させるための裁判上の手続きである。
和解条項では,神戸市は,建設会社Xが当該建物を利害関係人であるホロニックに譲渡することを認めるとともに,ホロニックと当該用地に係る土地賃貸借契約を締結するとしている。また,神戸市はホロニックに,賃借の目的の一つに当該温水プールを含めることや,「ホロニックは本件土地の使用目的を変更することはできない」「事業用定期土地賃貸借契約xx証書が作成されることを契約効力発生の条件とする」などの条件を骨子として賃貸する,としている。
裁判上の手続きの和解は法的拘束力を伴うが,それは和解調書に和解条項が履行されない場合の対処についてどう記載されているかによる。本件和解調書についてこれらを履行しない場合の条項についてみると,神戸市と利害関係人ホロニックとの間の土地賃貸借契約の成立並びに保証金及び当初の賃料の納付の不履行に関しては,当該建物の収去と当該用地の明け渡しかつ損害金の支払が明記されている。しかしながら,契約成立後に使用目的の変更があった場合に一方に何らかの義務を課す条項は見当たらない。このような場合,契約成立後の使用目的の変更に関してどのように対処するのかは,神戸市とホロニックとの土地賃貸借契約の内容に委ねられるものとされている。
裁判上の手続きである和解は,その裁判に至った紛争に関して,当事者が合意を為す
ことにより紛争を終結する手続きであり,和解条項は契約変更のように改められることはない。さらに和解成立後,契約を締結し和解条項の具体化が図られるが,当事者が合意のもとに和解条項と異なる内容を含む契約を締結することは妨げられておらず,本件では和解調書に基づく土地賃貸借契約は有効に成立している。従って,契約成立後の使用目的の変更について土地賃貸借契約第9条の規定に基づき処理されていることから,違法・不当とはいえない。
和解の前提となった議会の議決に関し,請求人は和解条項の変更に該当することから再議決が必要であると主張するが,和解はあくまで和解の時点において紛争を終結する手続きでその後変更されるものではないため,和解の再議決という手続きはそもそも存在しない。
和解条項の具体化はその後の当事者の合意のもと契約を締結することにより図られるという和解の性質に照らし,和解自体の変更としてではなく,その後締結する個々の契約が議決対象となるのかどうかによって,議決事件としての議会の判断が為されていくものと考えられる。
なお,神戸市において議決事件となる契約は,地方自治法第 96 条の規定に基づき条例(市会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分に関する条例)で工事又は製造の請負契約で予定価格が5億円以上のものと定められ,また,土地に関しても同条例で
1件1万㎡以上で予定価格 8,000 万円以上の買入れ若しくは売払いと定められているが,当該契約については議決事件とすべき契約にはあたらない。
理 由 2 「当該温水プールの閉鎖は,当該契約の変更問題として措置すべきであったにも拘わらず,単なる増改築問題として扱った。当該契約の更改を行わず放置している。また,xxxxxは当該契約書の更改のないまま営業終了通知を利用会員に送付しており契約違反である。」について
土地賃貸借契約第9条では,事前承諾事項として,賃借人は,次の各号の一に該当する行為をしようとするときは,あらかじめ賃貸人の書面による承諾を得なければならないとされている。その内容は,①別紙目録2に定める建物(当該建物を指す。)につき,当初の改修工事以降に増改築又は再築をしようとするとき,第2条に定める使用目的の変更をしようとするとき,もしくは法令上の規則等により変更が必要となったとき。②別紙目録2に定める事業内容等(事業内容に温水ウォーキングプールの表示あり)を変更しようとするとき。③当該用地の区画形質を変更しようとするとき等である。この規定に則って,ホロニックは神戸市に対して,上記のとおり平成 23 年3月4日に株式会社ホロニック代表取締役名で「ホテル内施設の増改築についてのお願い」を提出している。これに対し神戸市は,平成 23 年3月 31 日に神戸市長名で「建物増改築承諾書」(x
x公管第 762 号)を送付し,ホテル内施設の増改築について承諾している。
この「ホテル内施設の増改築についてのお願い」の中で,ホロニックは増改築の場所において,「温水ウォーキングプール(歩行浴)施設全般」としたうえで, 増改築の理由に「暫時改修工事を行いながら運営しているため,いずれ大掛かりな改修が必要となる。」,その他の事項として「現在のプール内のウォーキングにて比較的利用の多い足腰
を鍛える・リハビリするなどの使用については,ウォーキングコースを残存させることで」と記述しており,神戸市とホロニックはともに当該温水プールを閉鎖し,他の施設に転換する認識を持っていた。また,神戸市の「建物増改築承諾書」には,承諾条件第
2号に「市民及び利用者に対して不利益となることがないよう留意」との記述があるが,上記のとおり,当該温水プール閉鎖の意図を認識した神戸市が示した条件であり,求める範囲で近郊において水中ウォーキングが可能なスポーツ施設を含め,入会金の特典を用意しながら複数のスポーツ施設を斡旋するといった条件の実施状況の確認も行っており契約に反するものではない。
変更契約の締結は事業内容を変更する手順のひとつでxxxxxの方法ではない。本件は事業内容の変更が契約に位置づけられた手順で為されており,土地賃貸借契約の更改を行わず放置しているという事実は認められない。従って,営業終了通知を利用会員に送付したホロニックの行為も契約違反にはあたらない。
理 由 3 「当該温水プールを運営することで福祉施設としての地代が設定されていたのに,当該温水プール閉鎖後賃料更新を行わず放置している。」について
当該用地の土地賃貸料月額の算定は,平成9年のアジュールxxオープン時,平成
16 年度のホロニックとの和解及び土地賃貸借契約の締結時ともに,当該用地の固定資産評価見込額に,神戸市が普通財産の一時貸付における貸付料の算定に用いることとしている定率を乗じて算定した値とほぼ同水準に決定されており,その算定過程には,福祉施設として貸付料を軽減するような要素は認められなかった。
以上のことから,当該用地の地代算定にあたって,当該温水プールを運営することで福祉施設としての地代が設定されていた事実は見当たらない。
第4 結 論
以上のことから,当該温水プールの閉鎖に関して,神戸市はホロニックとの土地賃貸借契約書の更改を行わず放置し,また,ホロニックが当該契約書の更改のないまま営業終了通知を利用会員に送付したことは契約違反であるという請求人の主張には理由がない。
また,当該契約の前提となった和解条項の変更に該当し,必要な再議決に付さない神戸市の手続きは地方自治法違反であるという請求人の主張についても理由がない。
さらに,当該温水プールを運営することで福祉施設としての地代が設定されていたのに,神戸市は当該温水プール閉鎖後に賃料更新を行わず放置しているという請求人の主張に ついても理由がない。
よって,措置の必要を認めない。