Contract
輸入貨物に係る関税評価上の取扱い等に関する照会
買手が、ライセンス契約に基づき、売手に支払う契約金等の評価上の取扱いについて
x 会 | ||
照会内容等 | ① 輸入貨物の品名 | 医薬品・原薬(税表分類:第 30・29 類) |
② 照会の趣旨 | ライセンス契約に基づき、買手が売手に支払う契約金等が、輸入貨物の課税価格に算入されるか否かを照会するものです。 | |
③ 取引の概要及び関税評価に関する照会 者の見解とその理由 | 別紙1のとおり。 | |
④ 関係する法令条項等 | 関税定率法第4条第1項第4号 | |
⑤ 添付書類 | 照会の趣旨及びその理由等の照会事項に関する参考資料 |
回 答 | |||
回答年月日 | 平成 25 年 10 月 25 日 | 回答者 | 大阪税関業務部首席関税評価官 |
回答内容 | 別紙2のとおり。 ただし、次のことを申し添えます。 (1) 回答内容は、あくまで照会に係る事実関係を前提としたものであり、具体的な事例において異なる事実がある場合や新たな事実が生じた場合には、回答内容と異なる課税関係が生ずることがあります。 (2) 回答内容は、税関としての見解であり、事前照会者の申告内容等を拘束するものではありませんのでご留意ください。 |
(別紙1)
1.取引形態図
供給契約・ライセンス契約
輸入者・買手
B社
(本邦)
仕入書、輸入貨物
貨物代金、契約金等
輸出者・売手
S社
(X国)
製造委託契約
貨物
A社
(Y国)
2.取引の概要
(1) B社(輸入者及び買手、以下「買手」という。)は、X国所在のS社(輸出者及び売手、以下
「売手」という。)と供給契約を締結し、売手から医薬品及びその原薬(以下「輸入貨物」という。)を輸入しています。なお、取引当事者間に特殊関係はありません。
(2) 売手は、Y国所在のA社(以下「製造者」という。)と製造委託契約を締結し、製造された輸入貨物を購入しています。なお、取引当事者間に特殊関係はありません。
(3) 売手は、買手とライセンス契約を締結し、以下の独占的権利を買手に付与しています。
① 本邦他国において、原薬及び医薬品を開発、製造及び事業化する権利
② 本邦他国での事業化を目的として、世界中で原薬及び医薬品の開発及び製造を行う権利
(4) 買手は、売手に対し、ライセンス契約により許諾された「技術の独占的使用権、レポートやデータ等」の対価として、以下の支払い(以下「契約金等」という。)を行います。
① 契約金(支払い済)
② 開発マイルストーン(臨床試験等の開発段階に応じて支払い)
③ 販売マイルストーン(一定の年間総売上額を超える毎に支払い)
④ ロイヤルティ(年間総売上額に利率を掛けて計算)
(5) 輸入貨物の供給に関しては、ライセンス契約において以下のように規定されています。
① 臨床用サンプル
買手は、ライセンス契約により付与された権利を行使することにより、いつでも必要な分量の原薬及び医薬品を製造又は委託製造することができます。別途合意しない限り、売手は、買手の開発活動のため、臨床試験用の原薬及び医薬品の製造に責任を有します。
② 事業用製品
買手は、ライセンス契約に従い、本邦他国で販売させる原薬及び医薬品の製造に責任を有します。
(6) 原薬には物質特許と用途特許が登録されていますが、医薬品は原薬に一般的な添加物を加えて製剤化されるものであることから、原薬及び医薬品は複雑なものでなく、通常の製造工程で製造されるものです。
(7) 買手は、ライセンス契約において、自ら原薬及び医薬品を製造すること又は他者に製造委託することができますが、時間短縮のため、以下のとおり、売手と供給契約を締結して、売手から購入することとしました。
・ 売手は、ライセンス契約により、開発を行うために必要な範囲で、輸入貨物の製造に責任を有します。
・ 売手は、輸入貨物の製造、供給及び他の関連する開発業務の調達を自ら又は製造者に行なわせ、輸入貨物に関する売手の義務を実行します。売手は、買手の費用負担にて、製造に必要なすべての資材と労力を提供します。
(8) なお、買手は、臨床試験の終了後、事業用製品が販売される際の輸入貨物の調達方法をまだ決めていません。
3.関税評価に対する照会者の見解
輸入貨物は、将来的に当社で製造可能と考えていますが、早期に開発を開始するために、一時的に売手に供給責任を負わせております。そのため、ライセンス契約と供給契約において、当社への供給義務の期間を明記していません。また、当社の製造権をライセンス契約で規定していることから、貨物を輸入しなくとも、当社で製造可能な権利関係となっています。
したがって、関税定率法第4条第1項第4号及び同法施行令第1条の5に照らし、契約金等は輸入貨物に係る取引の状況その他の事情からみて、当該輸入貨物の輸入取引をするために支払われるものではないと考えます。
(別紙2)
【回答内容】
輸入貨物に係る契約金及び開発マイルストーンのうち、当該輸入貨物に関連のある部分については、関税定率法第4条第1項第4号に掲げる特許xxの使用に伴う対価に該当し、当該輸入貨物の課税価格に算入されます。なお、販売マイルストーン及びロイヤルティについては、事業用製品に係る取引の概要が確定した後、再度、照会願います。
【理由】
1.関税定率法(以下「法」という。)第4条第1項において、輸入貨物の課税価格は、当該輸入貨物に係る輸入取引がされた場合において、当該輸入取引に関し買手により売手に対し又は売手のために、当該輸入貨物につき現実に支払われた又は支払われるべき価格に、その含まれていない限度において運賃等の額を加えた価格とすると規定されています。
そして、当該運賃等の一つとして、同項第4号において、当該輸入貨物に係る特許権、意匠権、商標権その他これらに類するもので政令で定めるものの使用に伴う対価で、当該輸入貨物に係る取引の状況その他の事情からみて当該輸入貨物の輸入取引をするために買手により直接又は間接に支払われるものが規定されています。
2.法基本通達(以下「通達」という。)4-1(1)において、「輸入取引」とは、本邦に拠点を有する者が買手として貨物を本邦に到着させることを目的として売手との間で行った売買であって、現実に当該貨物が本邦に到着することとなったものをいい、通常、現実に貨物を輸入することとなる売買がこれに該当するとされています。
3. 通達4-13(3)において、「輸入貨物に係る」特許xxの使用に伴う対価とは、輸入貨物に関連のあるものをいい、同(3)イにおいて、例えば、特許権については、輸入貨物が特許発明である物品である場合、特許製法による生産物である場合、方法特許を実施するための物品である場合における対価であるとされています。
また、同(4)において、「輸入貨物に係る取引の状況その他の事情からみて当該輸入貨物の輸入取引をするために買手により支払われるもの」とは、当該輸入貨物に係る特許xxの使用に伴う対価であって、買手が当該対価を特許権者等に支払わなければ、実質的に当該輸入貨物に係る輸入取引を行うことができないこととなる又は行われないこととなるものをいうとされています。
そして、同(4)イにおいて、例えば、輸入貨物に係る特許権者等が当該輸入貨物の売手である場合において、買手が当該売手に対して支払う当該特許xxの使用に伴う対価は、輸入貨物に係る取引の状況その他の事情からみて当該輸入貨物の輸入取引をするために買手により支払われるものに該当するものとして取り扱われるとされています。
4.本事例において、本邦に拠点を有する輸入者は、輸出者と供給契約を締結し、製品名、数量、配
送日付等が記載された発注書に基づき、輸入貨物を実際に購入しています。
よって、当該取引は、本邦に拠点を有する輸入者が買手として貨物を本邦に到着させることを目的として輸出者との間で行った売買であって、現実に当該貨物が本邦に到着することとなったものと認められることから、法第4条第1項に規定する「輸入取引」に該当し、輸入者が買手、輸出者が売手になると解されます。
5.買手は、売手とライセンス契約を締結し、①本邦他国において、原薬及び医薬品の開発、製造及び事業化する独占的な権利、②本邦他国での事業化を目的として、世界中で原薬及び医薬品の開発及び製造を行う独占的な権利を許諾されています。
そして、買手は売手に対し「技術の独占的使用権、レポートやデータ等」の対価として、開発及び事業化の段階に応じ、契約金等を支払います。
6.輸入貨物は、臨床試験の前段階のサンプルとして輸入される原薬と、臨床試験用サンプルとして輸入される医薬品であることから、上記5の権利の対価のうち、契約金及び開発マイルストーンが当該輸入貨物の課税価格に算入されるか否かを以下のとおり検討します。
なお、販売マイルストーン及びロイヤルティは、事業用製品に係る具体的な取引内容が確定していないことから、現時点では事前教示の対象とすることができません。
7.契約金及び開発マイルストーンには、世界中で原薬及び医薬品を開発する独占的な権利といった、当該輸入貨物と関連のないものが含まれていますが、当該輸入貨物と関連のない部分は法第4条第
1項第4号に規定する特許xxの使用に伴う対価に該当しないことから、当該輸入貨物の課税価格に算入する必要はありません。
8.ライセンス契約において、原薬は、売手が開発し、特許権を登録した化学構造の物質(物質特許)を有するものであることと、医薬品は、原薬を主成分として含んでいることが定義されています。
また、同契約において、売手の特許権は原薬又は医薬品を製造、開発等を行うために使用されると規定されています。
さらに、医薬品は、原薬に一般的な添加物を加えて製剤化されるという通常の製造工程で製造されるものです。
よって、原薬は通達4-13(3)イに掲げられた「特許発明である物品」に該当し、また、医薬品は原薬と本質的に同一のものと解されることから、契約金及び開発マイルストーンのうち、輸入される原薬及び医薬品に関連のある部分については「輸入貨物に係る」ものとなります。
9.ライセンス契約において、買手は、原薬及び医薬品を自社で製造すること、又は第三者に製造を委託することができることと、売手は、原薬及び医薬品の製造に責任を有することが規定されてお
り、供給契約においても、当該契約がライセンス契約を受けて締結されたことが規定されています。また、買手は、早期に開発を開始するためには、売手から輸入貨物を調達するしかないことを説
明しています。
さらに、供給契約において、売手は、ライセンス契約の規定に関わらず、売手が製造者に支払った、製造に関するマイルストーンを発注時、製造開始時及び発送時の3段階に分けて、買手に請求すると規定しています。
よって、買手は、供給契約に基づき、また、早期に開発を開始するために、契約金及び開発マイルストーンを売手に支払わなければ、実質的に輸入貨物に係る輸入取引を行うことができないこととなると解されます。
したがって、契約金及び開発マイルストーンのうち、輸入貨物に関連のある部分については、通達4-13(4)イの例と同様に、「輸入貨物に係る取引の状況その他の事情からみて当該輸入貨物の輸入取引をするために買手により支払われるもの」となります。
10.以上より、契約金及び開発マイルストーンのうち、輸入貨物に関連のある部分は、法第4条第1項第4号に掲げる特許xxの使用に伴う対価に該当し、輸入貨物の課税価格に算入されます。