Contract
サービス付き高齢者向け住宅の参考とすべき入居契約書
(食事その他の高齢者生活支援サービス提供契約)
兵庫県
【全般関係コメント】
○ 登録サービス付き高齢者向け住宅事業における入居契約については、高齢者の居住の安定確保に関する法律(以下「法」という。)において次のとおり規定されている。
①登録事業者は、入居契約に従い高齢者生活支援サービスを提供しなければならない(法第18条)。
②入居契約は書面によらなければならない(法第7条第1項第6号イ)。
③登録申請書には入居契約に係る約款を添付しなければならない(法第6条第2項)。
○ 本契約書は、兵庫県で登録を受けたサービス付き高齢者向け住宅(政令市及び中核市で登録を受けたものを除く。)における高齢者生活支援サービスの提供について、参考とすべき入居契約書の雛型として作成したものである。
登録事業者には本契約書の使用を強制するものではないが、コメント欄にも留意の上、ご活用いただくようお願いする。
○ 当事者間の合意により、本契約書に修正を加えて使用してもよい。
事業者 (以下「甲」という。)と入居者 (以下「乙」という。)とは、「 (住宅名)」(以下「本物件」という。)における高齢者生活支援サービス(状況把握及び生活相談サービス並びに介護保険給付の対象となるサービスを除く。以下「サービス」という。)の提供について、次のとおり契約
(以下「本契約」という。)を締結し、xxに従い、誠実にこれを履行する。
【前文関係コメント】
○ 状況把握及び生活相談サービスの提供は、本契約の対象から除外している。当該サービスの提供については、サービス付き高齢者向け住宅事業の登録上必須とされていることから、住まいの提供に係る契約と一体の契約として締結することが望ましいとしている(兵庫県サービス付き高齢者向け住宅運営指導指針第4章3(2))。
なお、住まいの提供と状況把握及び生活相談サービスの提供に係る契約を一体的に締結する入居契約書として、厚生労働省及び国土交通省から「サービス付き高齢者向け住宅の参考とすべき入居契約書(普通建物賃貸借契約・終身建物賃貸借契約)」が示されている。
○ サービス付き高齢者向け住宅事業として介護保険給付の対象となるサービスを提供できるのは、特定施設入居者生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護又は介護予防特定施設入居者生活介護の指定を受けた場合に限られる。
この場合、本契約書では特定施設入居者生活介護等の提供に係る契約を別に締結することとしている。
○ 状況把握及び生活相談サービス並びに食事サービス以外の高齢者生活支援サービスを提供しない場合は、①前文中「高齢者生活支援サービス(状況把握及び生活相談サービス並びに介護保険給付の対象となるサービスを除く。以下「サービス」という。)」とあるのは「食事」とし、②第1条、第5条から第8条まで、第 10 条及び第 11 条中「サービス」
とあるのは「食事」とする。
(契約の目的)
第1条 甲は、乙に対しサービスを提供することを約し、乙は、サービスの提供の対価として料金を甲に支払うことを約す。
(契約の期間)
第2条 本契約の期間は、○○年○月○日から○○年○月○日までとする。ただし、期間満了の日の1ヶ月前までに甲乙双方から何らの申し出がないときは、本契約は更に○年間自動的に更新されるものとし、その後も同様とする。
【第2条関係コメント】
○ 契約の始期及び終期並びに契約の更新方法を明示する。なお、本契約書では自動更新条項を設けている。
○ 契約の期間は、住まいの提供に係る契約と合わせるようにする。
(サービスの内容及び料金)
第3条 甲が乙に提供するサービスの内容及び料金の詳細は、別添の「登録事項等についての説明書(重要事項説明書)」に記載のとおりとする。
2 乙の入退去や入院等により生じた1ヶ月に満たない期間の月額定額部分の料金は、1ヶ月を 30 日として日割計算した額とする。
3 甲は、第1項のサービスの提供(食事の提供を除く。)を○○○に委託する。
【第3条関係コメント】
○ サービスの内容及び料金の詳細は、本契約書では兵庫県サービス付き高齢者向け住宅運営指導指針第4章1で定める「登録事項等についての説明書(重要事項説明書)」に記載することとしているが、xxxに記載したり、別紙に記載して綴じ込んだりしてもよい。
○ 入退去に伴う日割り計算のほか、入院等による不在時の料金の取扱いを記載する。
○ 月額定額部分の料金設定がなく、利用の回数又は時間による料金設定のみの場合は、第
2項を削除し、次項を繰り上げる。
○ サービスの提供を外部に委託する場合は、その旨を入居契約書に記載することとしている(兵庫県サービス付き高齢者向け住宅運営指導指針第3章1(2))。
○ 登録事業者が入居者に直接サービスを提供する場合は、第3項を削除する。
○ 状況把握及び生活相談サービス並びに食事サービス以外の高齢者生活支援サービスを提供しない場合は、本条を削除し、次条を繰り上げる。
(食事の提供)
第3条の2 甲が乙に提供する食事の料金は、次のとおりとする。朝食=○○円、昼食=○○円、夕食=○○円
2 食事の提供場所は、○○○とし、提供時間帯は次のとおりとする。朝食=○時~○時、昼食=○時~○時、夕食=○時~○時
3 食事のキャンセルは、朝食及び昼食については前日○時まで、夕食については当日○時までに、○○○に申し出るものとする。
4 甲は、食事の提供を○○○に委託する。
【第3条の2関係コメント】
○ 食事の料金、提供の場所及び時間帯、キャンセル方法、外部に委託する場合は委託業者名を明示する。
○ 登録事業者が入居者に直接食事を提供する場合は、第4項を削除する。
(料金の変更)
第4条 甲は、消費者物価指数、雇用情勢、その他の経済事情の変動により料金が不相当になった場合には、甲乙協議の上でその額を変更することができる。
2 甲は、料金を変更しようとするときは、あらかじめ運営懇談会を開催し、入居者の意見を聴くものとする。
3 甲は、料金を変更したときは、乙に対し、「登録事項等についての説明書(重要事項説明書)」その他その変更内容を記載した書面を交付して説明する。
【第4条関係コメント】
○ 料金改定のルールを入居契約書で明らかにしておくとともに、改定に当たってはその根拠を入居者に明確にすることとしている(兵庫県有料老人ホーム設置運営指導指針第10章2(4))。
○ 料金を改定する場合は、運営懇談会を開催し、その内容を説明し、十分に入居者の理解を得ることとしている(兵庫県有料老人ホーム設置運営指導指針第7章7)。
○ サービスの内容や料金を変更する場合は、あらかじめ入居者等に説明して同意を得ることとし、その結果を書面に残すこととしている(兵庫県サービス付き高齢者向け住宅運営指導指針第4章5(2))。
○ サービス付き高齢者向け住宅事業の登録事項であるサービスの内容や料金を変更した場合は、軽微な変更を除き、登録事項等についての説明書その他その変更内容を記載した書面を入居者に交付して説明することとしている(法第20条、国土交通省・厚生労働省関係高齢者の居住の安定確保に関する法律施行規則(以下「共同省令」という。)第22条第
2号、兵庫県サービス付き高齢者向け住宅運営指導指針第4章5(1))。
(料金の支払)
第5条 料金は、毎月○日締めの翌月○日払とし、甲は、サービスの提供実績に関する明細を付して毎月○日までに乙に請求する。
2 乙は、料金を本物件の入居契約書(建物賃貸借契約)に記載の賃料と同様の方法により甲に支払うものとする。
3 甲は、乙から料金の支払を受けたときは、乙に領収書を交付する。
【第5条関係コメント】
○ 料金の請求に当たっては、サービスの提供実績がわかる書類を作成し、確認を受けるようにする。
○ 料金は、本契約書では入居契約書(建物賃貸借契約)に記載の賃料と同様の方法により支払うこととしているが、具体的な支払方法(口座振替払、現金振込払、現金払等)を記
載してもよい。
(サービス提供の記録)
第6条 甲は、入居者ごとにサービスの提供内容を記録した帳簿を作成し、各事業年度終了後2年間保存する。
2 乙並びにその家族及び身元引受人等は、甲に対し、いつでも前項に規定する帳簿の閲覧を求めることができる。
【第6条関係コメント】
○ 登録事業者は、入居者に提供した高齢者生活支援サービスの内容を記録した帳簿を備え付け、各事業年度終了後2年間保存することとされている(法第 19 条、共同省令第 21 条)。
○ サービス内容を記録した帳簿は、入居者等による閲覧に備え、入居者ごとに作成するこ
とが望ましい。
(秘密保持)
第7条 甲及び甲の従業員は、サービスを提供する上で知り得た乙並びにその家族及び身元引受人等(以下「乙等」という。)に関する秘密について、本契約中及び本契約終了後において第三者に漏らさないこととする。
2 甲は、甲の従業員が退職後、在職中に知り得た前項の秘密を漏らすことがないよう必要な措置を講じる。
3 甲は、乙等の個人情報について、個人情報の保護に関する法律(平成 15 年法律第 57 号)及び個人情報の保護に関する条例(平成8年兵庫県条例第 24 号)を遵守してその保護に努める。
4 甲は、乙等の個人情報を第三者に提供する必要があるときは、あらかじめ本人の同意を得ることとする。
(身体的拘束等の原則禁止)
第8条 甲は、乙へのサービスの提供に当たっては、乙又は他の入居者等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束その他乙の行動を制限する行為(以下「身体的拘束等」という。)を行わないこととする。
2 甲は、乙に対し、緊急やむを得ず身体的拘束等を行う場合には、その態様及び時間、その際の乙の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由を記録する。
【第8条関係コメント】
○ 身体的拘束等は、①入居者等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き行わないこと、②緊急やむを得ず行った場合は、その態様、時間、入居者の心身の状況及び理由を記録に残すことについて、入居契約書で明らかにしておくこととしている(兵庫県有料老人ホーム設置運営指導指針第7章10(1)~(3))。
(緊急時の対応)
第9条 甲は、乙に緊急な事態が生じた場合又は必要があると判断した場合は、緊急時対応マニュアルに応じて対応し、必要な措置を講じる。
【第9条関係コメント】
○ 緊急時の対応方法等についてマニュアルを定めるとともに、職員の業務分担を明確にし、これらの理解及び周知を徹底することとしている(兵庫県有料老人ホーム設置運営指導指針第7章2(2))。
(賠償責任)
第 10 条 甲は、サービスの提供に伴って、甲の責めに帰すべき事由により乙の生命、身体又は財産に損害を及ぼした場合は、乙に対してその損害を賠償する。
2 前項の場合において、乙の側に重大な過失がある場合は、賠償額を減額することがある。
【第10条関係コメント】
○ 登録事業者側に故意又は重大な過失がある場合にのみ責任を負うこととしたり、損害賠償額に上限を設けたりしてはならない。
(相談・苦情対応)
第 11 条 甲は、窓口を設置し、入居者の相談、サービスに係る要望、苦情等に対し、誠実かつ迅速に対応する。
【第11条関係コメント】
○ 入居者の苦情に対し迅速かつ円滑な解決を図るため、「苦情窓口」を設置するとともに、
「苦情処理マニュアル」を作成する等、登録事業者において苦情処理体制を整備することとしている(兵庫県有料老人ホーム設置運営指導指針第11章1(1))。
(契約の解除)
第 12 条 甲は、乙が法令違反、公序良俗に反する行為その他著しく常識を逸脱する行為をなし、その被害が深刻であり、かつ、通常の生活支援方法ではこれを防止することができず、本契約を将来にわたって継続することが社会通念上著しく困難であると考えられる場合に、本契約を解除することができる。
2 甲は、前項の規定による契約の解除に当たり、次の手続を行う。
(1) 一定の観察期間をおくこと。
(2) 1ヶ月以上の予告期間をおいて契約の解除を通告すること。
(3) 前号の通告に先立ち、乙の意思を確認するとともに、家族、身元引受人、主治医等の意見を聴くこと。
3 甲は、乙が正当な理由なく甲に支払うべき料金を3ヶ月以上滞納した場合において、乙に対し、1ヶ月以上の期間を定めて催告したにも関わらず、なおその期間内に滞納額の全額が支払われないときは、本契約を解除することができる。
【第 12 条関係コメント】
○ 入居契約書に定める登録事業者の契約解除の条件は、信頼関係を著しく害する場合に限るなど入居者の権利を不当に狭めないこととしている(兵庫県有料老人ホーム設置運営指導指針第 10 章2(5))。
○ 入居者の病院への入院や入居者の心身の状況の変化を理由に居住部分を変更し、又はその契約を解除することは、当該理由が生じた後に、入居者及び登録事業者が合意した場合に限り可能とされている(法第7条第1項第6号ヘ、共同省令第 13 条)。
○ 本契約の解除により転居を余儀なくされる場合もあることから、十分な予告期間(滞納
料金の支払期日までの期間)を設けるよう留意する。
(乙からの解約)
第 13 条 乙は、甲に対して、1ヶ月の予告期間をおいて文書で通知することにより、本契約を解約することができる。
【第 13 条関係コメント】
○ 入居者、登録事業者双方の契約解除条項を入居契約書上定めておくこととしている(兵庫県有料老人ホーム設置運営指導指針第 10 章2(5))。
○ 入居者からの解約予告期間を設定する場合は、1ヶ月程度とすることとしている(兵
庫県サービス付き高齢者向け住宅運営指導指針第4章3(8))。
(契約の終了)
第 14 条 本契約は、次の各号のいずれかに該当する場合に終了する。
(1) 本物件に係る甲乙間の建物賃貸借が終了したとき。
(2) 乙が死亡したとき。
(3) 甲が第 12 条第2項第2号に基づき、乙に本契約の解除を通告し、同号に規定する予告期間が満了したとき。
(4) 甲が第 12 条第3項に基づき、乙に本契約の解除を通告したとき。
(5) 乙が前条に基づき、甲に本契約の解約を通知し、同条に規定する予告期間が満了したとき。
【第14条関係コメント】
○ 本契約が終了する時点を明らかにする。
○ 借家契約については、賃貸人は「正当な事由」がなければ更新を拒絶し又は解約の申し入れをすることができず(借地借家法第28条)、当該規定に反する特約で賃借人に不利なものは無効とされている(借地借家法第30条)。
なお、ここでいう「正当な事由」の有無は、①賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情、②建物の賃貸借に関する従前の経過、③建物の利用状況、④建物の現況並びに⑤立ち退き料の申出を考慮して判断される(借地借家法第28条)。
これらに照らし、サービスの提供に係る契約が終了したときに建物賃貸借も終了するも
のとすることはできない。
(連帯保証人)
第 15 条 連帯保証人(以下「丙」という。)は、乙と連帯して、本契約から生じる乙の債務を負担するものとし、本契約が更新された場合も同様とする。
2 前項の丙の負担は、記名押印欄に記載する極度額を限度とする。
3 丙の請求があったときは、甲は、丙に対し、遅滞なく、料金の支払状況や滞納金の額、損害賠償の額等、乙の全ての債務の額等に関する情報を提供しなければならない。
【第 15 条関係コメント】
○ 紛争防止の観点から、本契約が更新された場合には、登録事業者は連帯保証人へ通知することが望ましい。
○ 極度額とは保証の限度額をいう。極度額を記名押印欄に記載することで連帯保証人が契約時に認識できるようにしている。
平成 29 年民法改正で、個人の保証人は極度額を限度として責任を負うこと、極度額の定
めのない保証契約は無効となることとされた(民法第 465 条の2第1項・第2項、※平成 32 年4月1日施行)。
○ 平成 29 年民法改正で、保証人の請求があった場合、債権者に債務の額や履行状況等に関する情報提供義務が課されることとなった(民法第 458 条の2、※平成 32 年4月1日施行)。
○ 連帯保証人を立てることができない高齢者も入居できるよう配慮することが望ましい。
○ 連帯保証人が必要ない場合は、本条を削除し、次条以下を繰り上げる。
(管轄裁判所)
第 16 条 本契約に係る訴訟の提起については、本物件の所在地を管轄する裁判所をもって合意による専属的管轄裁判所とする。
(協議)
第 17 条 甲及び乙は、本契約書に定めがない事項及び本契約書の条項の解釈について疑義が生じた場合は、民法その他の法令及び慣行に従い、誠意をもって協議し、解決するものとする。
本契約締結の証として本書3通を作成し、甲乙丙記名押印の上、各自その1通を保有する。
年 月 日
事 業 者 住 所 〒
(甲) 商号、名称又は氏名 印
電話番号
入 居 者 住 所 〒
(乙) 氏 名 印
電話番号
連帯保証人 住 所 〒
(丙) 氏 名 印
電話番号
(極度額 円)
【後文・記名押印欄関係コメント】
○ 事業者欄は、代表者が記名押印する。
○ 連帯保証人が必要ない場合は、「本書3通」とあるのは「本書2通」、「甲乙丙」とあるのは
「甲乙」とし、連帯保証人の記名押印欄を削除する。